説明

画像形成装置、画像形成方法及びプロセスカートリッジ

【課題】より小型で高速な画像形成プロセスに適用しても、安定した転写性能により高画質な画像を長期にわたって安定して実現する耐久性を有する画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも、像担持体、該像担持体を帯電する帯電手段、1200dpi以上の解像度で該像担持体の帯電面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段、該静電潜像をトナー画像として現像する現像手段を有する、正規現像方式の画像形成装置において、該像担持体上の任意の位置が、該静電潜像形成手段に正対する位置から該現像手段に正対する位置まで移動する時間をTed(ms)、該像担持体のトランジットタイムをtT(ms)とすると、Tedが下記式(A)を満足することを特徴とする画像形成装置。 Ted<tT<1.3×Ted…式(A)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した複写機、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置による画像形成では、像担持体(以下、電子写真感光体、感光体ともいう)の表面を帯電装置によって一様に帯電し、帯電された感光体の表面を原稿画像あるいは入力した画像信号に対応して露光して静電潜像を形成する。そして、この静電潜像を現像装置で現像してトナー像を形成し、このトナー像を転写装置によって転写材に転写して、定着装置によりトナー像が転写材上に永久固着画像として定着され、出力される。
【0003】
上記画像形成後に感光体の表面に残留した転写残トナーは、クリーニング装置によって除去される。このクリーニング装置によるクリーニング工程は、クリーニング部材を感光体に押し当てて転写残トナーをせき止め、廃トナー容器に掻き落として捕集させる工程であり、ブレード型のクリーニング部材が用いられている。このようなクリーニング部材は、直接感光体に当接させるので転写残トナーの捕集性に優れ、長期的にクリーニング性が持続し、多量の転写残トナーが発生した場合でも良好なクリーニング性を発揮する。
しかしながら、その一方では、感光体の摩耗(短命化)、廃トナーの処理が必要になること、クリーニング容器を具備するために装置が必然的に大きくなってしまう、等の指摘もあった。
【0004】
そこで、エコロジー、感光体寿命、装置の小型化、更にはトナーの有効活用などの観点から、廃トナーレスのシステムとして現像同時クリーニング(又はクリーナーレス)が提案されている。
現像同時クリーニングは、転写後に感光体上に残留したトナーを次工程以降の現像時にかぶり取りバイアス(現像器に印加する直流電圧と感光体の表面電位間の電位差であるかぶり取り電位差Vback)によって回収する方法である。簡便に述べると、これはクリーナーをなくし、転写後の感光体上の転写残トナーは現像器(現像装置)によって現像同時クリーニングで感光体上から除去し現像器に回収・再用する装置構成にしたトナーリサイクルプロセスの画像形成装置である。この方法によれば、転写残トナーは現像器に回収されて次工程以後に再用されるため、廃トナーをなくし、メンテナンスを容易にすることができる。またクリーナーレスであることで、スペース面での利点も大きく、画像形成装置をより小型化できるようになる。
【0005】
ところが、斯かる現像同時クリーニング方式においては、現像方法としてトナー極性と感光体帯電極性が同極性である反転現像が用いられているため、従来の正規現像を用いたアナログ式の複写装置等については現像同時クリーニング方法を適用することが原理的に不可能であった。また、露光手段としてレーザーやLEDアレイを用いる場合、背景部に相当する部位を露光するいわゆるバックスキャンに対しては、従来の現像同時クリーニング方法を適用することは原理的に不可能であった。
【0006】
そこで、トナー帯電極性と感光体の帯電極性が逆極性である正規現像を用いたシステムに対しても適用可能な現像同時クリーニング方法が望まれていた。
例えば特許文献1では、像担持体の弾性変形を利用した現像同時クリーニングが提案されている。この現像同時クリーニングでは、転写残り現像剤を現像ニップにおける像担持体の微少変形と現像剤、転写残り現像剤間の速度差により転動させて、付着力を低下させるものであり、転写残り現像剤の電荷を遮蔽するために転写残り現像剤周囲を現像剤で囲んだ凝集体が形成されている。この場合、像担持体の弾性変形だけでは高品位な画質の長期的な維持は困難である。
【0007】
一方、このような現像同時クリーニング方式における像担持体摩耗の技術的課題を解決するために、第1帯電手段と第2帯電手段を使用した画像形成装置が、特許文献2に記載されている。特許文献2では、第2帯電手段を設けることにより、像担持体の電位の極性を変化させることなく残留トナーをトナー像の帯電極性と同極性に帯電することができるので、現像部に突入する転写残トナーは総じてマイナス極性に帯電することがなくなり、黒字部からは取り去られ、白地には残留するという現象が起こらず、正規現像を用いた現像同時クリーニングを成立させることができる旨の記載がある。
しかし、本方式においては、装置のコンパクト化は改善されてはおらず、像担持体周りに2個の帯電極性制御部材が存在するため、部材大に装置の大型化が必要となり、クリーナーが不要で廃トナーの生じないクリーナーレスの小型画像形成装置という本来の技術コンセプトを逸脱してしまっている。
【0008】
上記したような像担持体の弾性変形や、帯電極性制御による現像同時クリーニングのようなシステムでは、画像形成装置の小型化は未達成であるというのが現状である。また、本質的にクリーニング装置を有さない現像同時クリーニングにおいては、感光体表面をトナー及びトナー担持体により擦る構成が必須であり、このために長期間使用によるトナー劣化、トナー担持体表面劣化、感光体表面劣化又は磨耗等を引き起こし、耐久特性の劣化が生じ易いことから、従来技術では充分な解決がなされず、定着性と耐久特性の両立が望まれていた。同時に画像形成のスピードアップが望まれる今日、よりプロセススピードの速い装置の現像同時クリーニングでは、現像での転写残トナーの回収性を高めるための回収前転写残トナーの帯電制御、回収されたトナーを再利用するにあたっての現像の安定性保持の面でも従来技術では充分な解決がなされていない。
【0009】
以上より、エコロジー、コスト対応のために、感光体のクリーナーが本質的に不要で廃トナーの生じない、コンパクトな画像形成装置は、未だ知られていないのが現状である。加えて、正規現像方式の画像形成方法において、高速な画像形成装置を小型化する際の問題点について十分な解決がなされた従来技術は未だ見当たらない。
【特許文献1】特開2001−175084号公報
【特許文献2】特許第3155915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、より小型で高速な画像形成プロセスに適用しても、安定した転写性能により高画質な画像を長期にわたって安定して実現する耐久性を有する画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することにある。
本発明の目的は、転写性に優れ、転写残トナーが少なく、正規現像方式においても転写不良が発生しないか、又はこれらの現象が抑制された画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することにある。
本発明の更なる目的は、本質的にクリーニング装置を有さない画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は下記の手段構成を特徴とする画像形成方法、画像形成装置およびプロセスカートリッジである。
(1) 少なくとも、像担持体、該像担持体を帯電する帯電手段、1200dpi以上の解像度で該像担持体の帯電面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段、該静電潜像をトナー画像として現像する現像手段を有する、正規現像方式の画像形成装置において、
該像担持体上の任意の位置が、該静電潜像形成手段に正対する位置から該現像手段に正対する位置まで移動する時間をTed(ms)、該像担持体のトランジットタイムをtT(ms)とすると、Tedが下記式(A)を満足することを特徴とする画像形成装置。
ed<tT<1.3×Ted…式(A)
【0012】
(2) 少なくとも、像担持体、帯電手段、静電潜像形成手段、現像手段を有する画像形成要素を複数個用いることを特徴とする(1)に記載の画像形成装置。
(3) 前記静電潜像形成手段が、複数のレーザ光束を前記像担持体上に結像させる走査光学手段を有するマルチビーム走査光学系であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の画像形成装置。
(4) 前記マルチビーム走査光学系が有する光源が、3つ以上の面発光レーザアレイであることを特徴とする(3)に記載の画像形成装置。
(5) 前記マルチビーム走査光学系が有する光源が、3つ以上の面発光レーザアレイであって、複数の発光点が2次元的に配置されている面発光レーザアレイであることを特徴とする(4)に記載の画像形成装置。
【0013】
(6) 前記像担持体が、少なくとも、電荷発生物質を含有する感光層を有し、該電荷発生物質は、下記一般式(1)で示されるアゾ化合物を含有することを特徴とする(1)乃至(5)の何れか1つに記載の画像形成装置。
【化1】

(一般式(1)中、X及びYは、それぞれ独立に、下記一般式(2)
【化2】

(一般式(2)中、R3は、水素原子、アリール基又はアルキル基であり、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、ジアルキルアミノ基、ニトロ基、ハロゲン基、又はハロゲン化アルキル基であり、Zは、置換基を有してもよい炭素環式芳香族又は置換基を有してもよい複素環式芳香族を構成するのに必要な原子団である。)
で示されるカプラー残基であり、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基又はハロゲン基である。
【0014】
(7) 前記アゾ化合物のX及びYが、互いに異なるカプラー残基であることを特徴とする(6)に記載の画像形成装置。
(8) 前記像担持体が、少なくとも電荷発生物質を含有する感光層を有し、該電荷発生物質が、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)9.4゜、9.6゜及び24.0゜の位置に強い回折ピークを有し、27.2°の位置の回折ピークが最も強く、最低角度の回折ピークとして7.3°の位置に回折ピークを有し、該7.3°の回折ピーク、該9.4°の回折ピーク間に回折ピークを有さず、26.3゜の位置に回折ピークを有さないチタニルフタロシアニンの結晶であることを特徴とする(1)乃至(5)の何れか1つに記載の画像形成装置。
【0015】
(9) 前記像担持体が、最外層に保護層を有することを特徴とする(1)乃至(8)の何れか1つに記載の画像形成装置。
(10) 前記保護層が、1010Ω・cm以上の比抵抗を有する無機顔料及び金属酸化物から選択される少なくとも1種類以上含有することを特徴とする(9)に記載の画像形成装置。
(11) 前記保護層が、少なくとも電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性化合物と電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とを硬化することにより形成されることを特徴とする(9)に記載の画像形成装置。
【0016】
(12) 前記電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物は、下記一般式(3)及び(4)で示される化合物の一種以上であることを特徴とする(11)に記載の画像形成装置。
【化3】

【化4】

(一般式(3)及び(4)中、R1は、水素原子、ハロゲン基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、一般式
−COOR2
(式中、R2は、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアラルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基である。)
で示される官能基、一般式
−COY
(式中、Yは、ハロゲン基である。)
で示される官能基又は一般式
−CONR34
(式中、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアラルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基である。)
で示される官能基であり、
Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、置換又は無置換のアリーレン基であり、Ar3及びAr4は、それぞれ独立に、置換又は無置換のアリール基であり、Xは、単結合、置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のシクロアルキレン基、置換若しくは無置換のオキシアルキレン基、酸素原子、硫黄原子又はビニレン基であり、Z1は、置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のオキシアルキレン基又は一般式
−COOR6
(式中、R6は、アルキレン基である。)
で示される官能基であり、mは、それぞれ独立に、0以上3以下の整数である。)
【0017】
(13) 前記電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物は、下記一般式(5)で示される化合物の一種以上であることを特徴とする(11)に記載の画像形成装置。
【化5】

(一般式(5)中、o、p及びqは、それぞれ独立に、0又は1であり、R2は、水素原子又はメチル基であり、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数が1以上6以下のアルキル基であり、s及びtは、それぞれ独立に、0以上3以下の整数であり、Z2は、単結合、メチレン基、エチレン基又は構造式
【化6】

で示される官能基である。)
【0018】
(14) 前記保護層の硬化手段が、加熱又は光エネルギー照射手段であることを特徴とする(11)乃至(13)の何れか1つに記載の画像形成装置。
(15) 少なくとも、像担持体、帯電手段、静電潜像形成手段、現像手段を有する画像形成要素が、像担持体クリーニング装置を有さないクリーナーレス画像形成要素であることを特徴とする(1)乃至(14)の何れか1つに記載の画像形成装置。
(16) 像担持体、帯電手段及び現像手段からなる群より選ばれた少なくとも一つの手段を一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジであって、(1)乃至(15)の何れか1つに記載の画像形成装置に用いることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【0019】
(17) 少なくとも、像担持体、該像担持体を帯電する帯電工程、1200dpi以上の解像度で該像担持体の帯電面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程、該静電潜像をトナー画像として現像する現像工程を有する、正規現像方式の画像形成方法において、
該像担持体上の任意の位置が、該静電潜像形成手段に正対する位置から該現像手段に正対する位置まで移動する時間をTed(ms)、該像担持体のトランジットタイムをtT(ms)とすると、Tedが下記式(A)を満足することを特徴とする画像形成方法。
ed<tT<1.3×Ted…式(A)
【0020】
(18) 少なくとも、像担持体、帯電工程、静電潜像形成工程、現像工程を有する画像形成要素を複数個用いることを特徴とする(17)に記載の画像形成方法。
(19) 前記静電潜像形成工程が、複数のレーザ光束を前記像担持体上に結像させる走査光学工程を有するマルチビーム走査光学系であることを特徴とする(17)又は(18)に記載の画像形成方法。
(20) 前記マルチビーム走査光学系が有する光源が、3つ以上の面発光レーザアレイであることを特徴とする(19)に記載の画像形成方法。
(21) 前記マルチビーム走査光学系が有する光源が、3つ以上の面発光レーザアレイであって、複数の発光点が2次元的に配置されている面発光レーザアレイであることを特徴とする(20)に記載の画像形成方法。
【0021】
即ち本発明は、正規現像方式の画像形成方法又は画像形成装置において、像担持体上の任意の位置が、静電潜像形成手段に正対する位置から現像手段に正対する位置まで移動する時間をTed(ms)、該像担持体のトランジットタイムをtT(ms)とすると、下記の式(A)
ed<tT<1.3×Ted…式(A)
を満足させることにより、転写工程における転写不良を抑え、画像不良の発生を防止したものである。
【0022】
本発明者らの検討によれば、転写電圧を上げる必要がなく、前記の式(A)を満足しうるように制御されれば、感光体へのトナーの残留は長期的に防止される。またそれは、感光体の均一帯電が可能となり、その効果として、転写残トナーを回収するクリーナー装置を持たない場合においても高画質を達成することができる。
【0023】
一般の有機感光体は、画像形成装置内で露光−現像間時間を短縮すると、多少なりとも露光部電位が上昇する。この露光部電位の露光−現像間時間依存性には、屈曲点と見られる傾きの異なる時間依存性が観測できる。この時間の短時間側ほど、露光−現像間時間の短縮により急激な露光部電位の上昇が観測される。発明者はこの時間依存性とトナー転写性との間に良好な対応関係があることを見出した。そして、この露光部電位上昇の時間依存性を特定の範囲内で使用することでカブリなど不良画像の出力を防止できることを見出した。このような不良画像は、プリント速度を速めることで解消されることが多いことから、感光体の表面電位光減衰の時間応答性に起因するものと考えられる。
【0024】
ここで、電子写真感光体の表面電位光減衰の時間応答性評価について説明する。
電子写真感光体の表面電位光減衰の時間応答性を評価する手法としては、例えば特開平10−115944号公報や特開2001−312077号公報に見られる電荷輸送材料またはこれとバインダー樹脂からなる樹脂膜をタイムオブフライト(TOF)法から見積ることが多い。これは感光体の処方を設計する上で有用な方法である。しかしながら、装置内で使用される感光体の電荷輸送とTOF法による電荷輸送の条件は、前者が露光後、時々刻々と膜中の電界強度が変化していくのに対して、後者は電界強度が一定である違いが指摘される。また、積層型感光体に対しては、露光による電荷発生層からの電荷発生および電荷発生層から電荷輸送層への注入挙動が電荷輸送にもたらす影響もTOF法では計測値に反映されることは無い。
【0025】
また、感光体の応答性を直接評価する手法として、例えば特開2000−305289号公報に見られるパルス光照射後の感光体の表面電位変化を高速表面電位計を用いて高速記録し、所定の電位に到達するのに要する応答時間を測定する手法が提案されている。この手法は一般にゼログラフィックタイムオブフライト(XTOF)法と称されている。この手法はTOF法の不具合を解消する評価手段として有用といえる。しかしながら、この手法では測定に用いる光源が画像形成装置に使われる露光手段と異なるケースが多く、直接的な測定方法とは言い切れない側面を有する。
【0026】
これに対して、特開2000−275872号公報に記載の感光体の特性評価装置を用いることで、感光体の任意の位置が、該静電潜像形成手段に正対する位置から該現像手段に正対する位置まで移動する時間Ted(ms)(以下、簡単のため、プロセス時間と称す。)を設定し、LD等の静電潜像形成手段から出力される感光体の露光量に対する露光部電位の関係(光減衰カーブ)を把握することが可能である。
この装置において、プロセス時間を変えた場合の現像手段に正対する位置における露光部電位の変化を計測すると、プロセス時間に対する露光部電位の関係に屈曲点を見出すことができる。便宜上、この屈曲点におけるプロセス時間を実機トランジットタイムtT(ms)と称する。この具体例を図1に示す。これによれば、プロセス時間と露光部電位の関係、すなわち電子写真感光体の表面電位光減衰の時間応答性を正確に把握することが可能となる。尚、トランジットタイムは、書き込み光照射前の感光体表面電位および感光体膜厚に依存する(言い換えると、感光体に印加される電界強度に依存する)。従って、トランジットタイムの測定の際には、実際に使用する感光体と同じ組成、同じ膜厚の感光体を用い、書き込み光照射前の感光体表面電位は、感光体が使用される画像形成装置の未露光部表面電位と同一にして評価する必要がある。
【0027】
また、図2に本発明のプロセス時間を判定するための一方法を示す。図2中、1は判定対象の感光体であり、2は帯電手段のスコロトロン帯電装置であり、3はレーザダイオードおよびNDフィルターを備える露光装置であり、3Lは光(露光光)であり、14は現像手段に正対する位置に設けられた感光体の表面電位を測定する(読み取る)ための電位計(電位プローブ)である。感光体1は矢印方向に回転駆動される。また、図2には、直径が30mmの電子写真感光体を例示している。
図2において、光3Lが照射される位置すなわち露光位置および電位計14による電位測定位置は45°に設定されている。
【0028】
図2においては、感光体1の直径は30mmであり、露光位置と電子写真感光体中心と電位測定位置とがなす角度は45°であるから、該感光体の表面の移動速度を270[mm/s]になる速度に設定した場合、求めるプロセス時間は、
(30π/270)×(45°/360°)≒44ms
となる。
【0029】
感光体上のトナー像は転写器に向かうクーロン力が作用し、トナー像は転写材に移動すると共に、転写材裏に付与された負電荷により、電気的に転写材上に拘束される。
一方、トナーが小径化するに従い、転写でトナー粒子にかかる上記クーロン力に比して、トナー粒子の感光体への付着力(鏡像力やファンデルワールス力など)が大きくなってきて、結果として転写残トナーが増加する傾向がある。本発明では、式(A)を満足するように、トランジットタイムをプロセス時間と関係づけることにより、結果としてクリーナーレス機で高画質画像を出力することができる。
【0030】
本発明の画像形成装置は、トナーの帯電極性と感光体の帯電極性が逆極性である正規現像を用いている。
正規現像系においては、感光体の未露光部に現像剤が転移する。転写プロセスにおいて、現像剤は被転写体に転写されることになるが、前記式(A)の範囲に感光体のトランジットタイムを規定することにより、トナー粒子を被転写体に転写する量を多くすることができ、トナー転写性を安定に制御することができた。
【0031】
反転現像法においては、帯電工程で残留トナーが現像トナーと同じ帯電極性に揃えられるため、現像同時クリーニングが可能となる。しかしながら、正規現像の場合には現像同時クリーニングプロセスは成立しない。この理由を負帯電した未露光部へ正帯電トナーを付着させる場合で説明すると、正極性の転写残トナーがあるとき、コロナ帯電で負に帯電させると、転写残トナーの極性は逆(負)極性となり、ここでレーザ露光し、現像バイアスをかけて正帯電トナーで現像したとき、非画像部に付着している逆(負)極性の転写残トナーは除去できず、現像同時クリーニングを繰り返すと、転写残トナーが増加して正帯電トナーが転写残トナー部へ電気的に引き付けられて付着してかぶりを生じてしまう。
未露光部のトナーが転移した高電位部の転写残トナー(正極性)の周囲を転移した負極性のトナーが囲む。一方、露光部における転写残トナー(正極性)は、その鏡像力が電荷の絶対値により定まるため、反転現像の場合と同等の付着力をもって付着する。
【0032】
ところで、感光体トランジットタイムをプロセス時間に比してより大きくした場合、現像工程において最初大きな負電荷を有する転写残トナーは、現像工程から転写工程までの間に露光部電位がわずかでも低下すればそれだけ一層、正味の負電荷は小さくなる。
こうして、転写残トナーの保持電荷が見かけ上小さくなると、感光体への鏡像力が低下し、付着力が小さくなる。現像トナーと転写残トナーとの間には吸引するクーロン力が働き、現像トナーの電荷が転写残トナーの電荷と比較して大きくなると、鏡像力にトナー同士の吸引力が打ち勝ち、このため現像トナーにより転写残トナーが感光体から引き剥がされる。
以上のプロセスにおいて、正規現像の場合では現像同時クリーニングを繰り返したとき転写残トナーが同極性で積み重なって過帯電となり、強い鏡像力が働いて転写できなかったが、本発明では、前記式(A)の範囲に感光体のトランジットタイムを規定することにより、転写残トナーは転写工程において感光体への鏡像力が低下するため一方の帯電列で積み重なることがなく、転写残トナーを容易に引き剥がすことができる。
【0033】
さらに、このシステムは、転写プロセスと帯電プロセスとの間にクリーニングプロセスを配設しない、クリーナーレスシステムであることが好ましい。換言すれば、エコロジー、コスト対応のために、感光体のクリーナーが本質的に不要で廃トナーの生じない、コンパクトな正規現像方式の画像形成装置とすることが、本発明の効果を認識する上で好ましい。
【0034】
プロセス時間(Ted)は感光体ドラム径、ラインスピード等により変化する。一方、トランジットタイム(tT)は感光体の電荷輸送層の膜厚、樹脂バインダーに対するドナーの添加量等を替えることによって変化する。このようにプロセス、感光体をそれぞれ独立に設計することで、式(A)を満足するような画像形成装置とすることが可能となる。これまでの画像形成装置は、Ted>tTの関係を満足するように設計されており、この点で本発明と異なる。
【0035】
静電潜像形成手段は、複数のレーザ光束を像担持体上に結像させる走査光学手段を有するマルチビーム走査光学系であることが好ましい。これにより、プロセススピードが速い高速機でも長期的に高画質が維持される。
画像の解像度を高めるためには、トナーの小粒径化を図ると共に、像形成用のレーザ光のスポット径を小さくすることが有効である。特に、高画質写真などのピクトリアル画像のプリントをターゲットとした超高画質機においては、解像度として1200dpi以上が要求され、スポット径としては、30μm以下にまで小さくする技術が要求される。レーザ光のスポット径を小さくする手段として、静電潜像形成手段にマルチビーム方式を採用した、プロセススピードが速い高速機を用いた場合においても、プロセス時間とトランジットタイムの関係を本発明の範囲内とすることにより、高画質な画像を長期にわたって得ることができる。
【0036】
像担持体は、最外層に保護層を有することが好ましい。これにより、耐摩耗性を向上させることができる。
【0037】
したがって、本発明の画像形成装置によれば、形成する画像の高画質化、画像形成速度の高速化、および装置の小型化が容易に実現可能であり、しかも長期にわたり画像形成プロセスを繰り返しても良好な品質の画像を得ることができる。例えば、本発明の画像形成装置によれば、記録密度1200dot/inch(dpi)以上の高解像度の画像品質を長期にわたり形成することも可能である。
【0038】
レーザビームプリンターやデジタル複写機などに用いられる露光手段としては、画像信号に応じたレーザビームを半導体レーザから出力させ、それを回転多面鏡(ポリゴンミラー)に反射させて電子写真感光体表面に照射させることにより静電潜像を形成する方法が挙げられる。
このようなレーザビームを用いた露光手段の場合、1本のレーザビームによって出力画像の高精細化(高画質化)、高速化を実現するにはレーザビームの走査速度を高めることが必要となる。しかし、回転多面鏡の回転速度には限界があるため、出力画像の高精細化および高速化を図ることが困難であった。
【0039】
このような問題を改善するために、複数本のレーザビームを電子写真感光体上に走査させる方法(以下、「マルチビーム方式」という)が提案されている。そして、このマルチビーム方式の画像形成装置は、以下の1)〜3)の利点から、画像形成プロセスの高速化に有効であると考えられている。
1) n(nは自然数)本のレーザビームを用いた画像形成装置の場合には、レーザビームの走査速度とプリントスピードとを単一のレーザビームを用いた場合と等しく設定した場合は、走査線の密度をn倍にすることができ、高解像度の画像記録が可能となる。
2) レーザビームの走査速度と走査線の密度を単一の場合と等しく設定した場合は、プリントスピードをn倍に高速化することが可能となる。
3) プリントスピードとレーザビームの走査密度を単一の場合と等しく設定した場合は、各レーザビームの走査速度を低めること(つまり、レーザビームを反射して反射ビームを電子写真感光体表面に照射させることにより静電潜像を形成するための回転多面鏡の回転数を1/n倍にすること)ができるため、回転多面鏡を回転駆動するための機構を簡略化してコストダウンが可能となる。
【0040】
このようなマルチビーム方式の画像形成装置としては、半導体基板の基板面に直行する端面よりレーザビームを射出する端面発光レーザを用いた画像形成装置が知られている(例えば、特開2002−107988号公報、特開2002−303997号公報参照)。しかしながら、端面発光レーザは、走査線の間隔を微小に調整することが困難であるという問題を有しており、レーザビームの本数を増やすことが容易ではなく、画像の高画質化および画像形成速度の高速化が不十分であった。
【0041】
そこで、マルチビーム方式の画像形成装置として、複数本のレーザビームをそれぞれ偏向して電子写真感光体などの被走査体上で同時に走査させ、1回の主走査で複数本の走査線の走査を行うことで画像を形成する構成の画像形成装置であって、露光装置の光源としてアレイ化が容易な面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)を用い、同時に走査させるレーザビームの本数(レーザビームによって同時に走査される走査線の本数)を増加させることで、画像の高画質化および画像形成速度の高速化を達成することができる。(例えば、特開平5−294005号公報参照)。
【発明の効果】
【0042】
以上説明したように本発明では、少なくとも像担持体と、該像担持体の面を帯電する帯電手段と、1200dpi以上の解像度で該像担持体の帯電面に静電潜像を形成する潜像形成手段と、その静電潜像をトナー像として現像する現像手段とを備えた正規現像方式の画像形成装置、およびこのような画像形成装置に搭載されるプロセスカートリッジにおいて、該像担持体のトランジットタイムを制御することにより、トナーの像担持体への残留を防止する共に、転写手段でのトナー転写性を向上させた。その結果、長期的に均一な帯電が持続し、高画質が達成された。
さらに、プロセススピードの速い画像形成方法に対しても、現像同時クリーニングプロセスを付加することなく低コストで適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下本発明の画像形成装置及び画像形成方法について説明する。
本発明の画像形成装置は、少なくとも、像担持体、該像担持体を帯電する帯電手段、1200dpi以上の解像度で該像担持体の帯電面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段、該静電潜像をトナー画像として現像する現像手段を有する、正規現像方式の画像形成装置であって、該像担持体上の任意の位置が、該静電潜像形成手段に正対する位置から該現像手段に正対する位置まで移動する時間をTed(ms)、該像担持体のトランジットタイムをtT(ms)とすると、Tedが下記式(A)を満足する。
ed<tT<1.3×Ted…式(A)
【0044】
本発明の画像形成方法は、少なくとも、像担持体、該像担持体を帯電する帯電工程、1200dpi以上の解像度で該像担持体の帯電面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程、該静電潜像をトナー画像として現像する現像工程を有する、正規現像方式の画像形成方法において、該像担持体上の任意の位置が、該静電潜像形成手段に正対する位置から該現像手段に正対する位置まで移動する時間をTed(ms)、該像担持体のトランジットタイムをtT(ms)とすると、Tedが上記式(A)を満足する。
【0045】
本発明の画像形成方法は、本発明の画像形成装置により好適に実施することができ、前記帯電工程は前記帯電手段により行うことができ、前記静電潜像形成工程は前記静電潜像形成手段により行うことができ、前記現像工程は前記現像手段により行うことができる。
【0046】
(1)画像形成装置例
実質的に同様の機能を有する部材には、全図面通して同じ符号を付与して説明する。
1)モノクローム画像形成装置100
図3は本発明の一実施形態に係る画像形成装置の一例であるモノクロームプリンタの要部構成図である。本例の画像形成装置は、転写式電子写真プロセス利用、接触帯電方式、正規現像方式、プロセスカートリッジ方式、のレーザービームプリンタ(デジタル複写機)である。
図3に示した画像形成装置100は感光体1を備えるもので、感光体1は、駆動装置(図示せず)により所定の回転速度で矢印Aの向きに回転可能となっている。感光体1の略上方には、感光体1の外周面を帯電させる帯電手段として帯電器2が設けられている。
また、帯電器2の略上方には静電潜像形成手段として露光装置(レーザビーム走査装置)3が配置されている。詳細は後述するが、露光装置3は、光源から射出される複数本のレーザビームを、形成すべき画像に応じて変調するとともに、主走査方向に偏向し、帯電器2により帯電した感光体1の外周面上を感光体1の軸線と平行に走査させる。
【0047】
感光体1の側方には現像手段として現像装置4が配置されている。現像装置4にはトナーカートリッジに収容されたブラックのトナーが供給可能である。
また、感光体1の略下方には無端の中間転写ベルト5が配設されている。中間転写ベルト5はローラ10,11,12に巻掛けられており、外周面が感光体1の外周面に接触するように配置されている。ローラ10〜12はモータ(図示せず)の駆動力が伝達されて回転し、中間転写ベルト5を矢印Bの向きに回転させる。
【0048】
中間転写ベルト5を挟んで感光体1の反対側には転写器6が配置されている。感光体1の外周面上に形成されたトナー像は転写器6によって中間転写ベルト5の画像形成面に転写される。
また、中間転写ベルト5を挟んでローラ12の反対側には転写器7が配置されている。ローラ対13、ローラ(図示せず)によって搬送された記録材料としての用紙Pは、中間転写ベルト5と転写器7の間に送り込まれ、中間転写ベルト5の画像形成面に形成されたトナー像が転写器7によって転写される。転写器7よりも用紙Pの搬送方向下流側には、定着ローラ対を備えた定着器8が配置されており、トナー像が転写された用紙Pは、転写されたトナー像が定着器8によって溶融定着された後に画像形成装置100の機体外へ排出され、排紙トレイ(図示せず)上に載置される。
また、感光体1を挟んで現像装置4の反対側には、感光体1の外周面を除電する機能を備えた除電器9が配置されている。
【0049】
図3に示した画像形成装置100では、感光体1が1回転する回転過程においてモノクローム画像の形成が行われる。すなわち、帯電器2は感光体1の外周面の帯電、除電器9は外周面の除電を行い、露光装置3は、形成すべきモノクローム画像を表すブラックの画像データに応じて変調したレーザビームを感光体1の外周面上で走査させることを、感光体1が1回転する毎にレーザビームの変調に用いる画像データを切替えながら繰り返す。また、現像装置4は、感光体1の外周面に対応している現像器(図示せず)を作動させ、感光体1の外周面に形成された静電潜像をブラックの色に現像し、感光体1の外周面上に特定色であるブラックのトナー像を形成させることができる。
これにより、感光体1が1回転する毎に、感光体1の外周面上には、ブラックのトナー像が繰り返し形成されることになり、モノクロームの画像が形成されることになる。
【0050】
2)フルカラー画像形成装置200
また、本発明の画像形成装置は、図3に示した白黒画像用の画像形成装置のほか、タンデム式のカラー画像形成装置としてもよい。次に、タンデム式のカラー画像形成装置について説明する。なお、「タンデム式画像形成装置」とは、以下の画像形成ユニットを2以上有する画像形成装置を指す。
【0051】
図4は本発明の一実施形態に係る画像形成装置の一例であるフルカラープリンタの要部構成図である。
図4に示す画像形成装置200は、帯電装置2(a〜d)が接触帯電装置であり、転写装置が中間転写方式を採用する構成を有しており、かつ、帯電装置2(a〜d)、露光装置3(a〜d)、および現像装置4(a〜d)を少なくとも備える画像形成ユニットを2以上有するタンデム式画像形成装置である。
より具体的には、このタンデム式画像形成装置200は、ハウジング300内において4つの感光体1(a〜d)(例えば、感光体1aがイエロー、感光体1bがマゼンタ、感光体1cがシアン、感光体1dがブラックの色からなる画像をそれぞれ形成可能である)が中間転写ベルト5に沿って相互に並列に配置されている。
【0052】
ここで、画像形成装置200に搭載されている感光体1(a〜d)は、それぞれ後に述べる本発明の感光体の構成を有するものである。
感光体1(a〜d)のそれぞれは所定の方向(紙面上は時計回り)に回転可能であり、その回転方向に沿って帯電ロール2(2a〜2d)(感光体を帯電させる接触帯電装置)、現像装置4(a〜d)(露光装置により形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置)、1次転写ロール6(a〜d){現像装置により形成されたトナー像を後述の中間転写ベルト5(中間転写体)に1次転写するための転写装置}が配置されている。現像装置4(a〜d)のそれぞれにはトナーカートリッジ(図示せず)に収容されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーが供給可能であり、また、1次転写ロール6(a〜d)はそれぞれ中間転写ベルト5(1次転写像を被転写媒体Pに転写する中間転写体)を介して感光体1(a〜d)に当接している。
【0053】
更に、ハウジング300内の所定の位置にはレーザ光源となる露光装置3(a〜d)(帯電装置により帯電される電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光装置)が配置されており、レーザ光源(図示せず)から出射されたレーザ光を帯電後の感光体1(a〜d)の表面に照射することが可能となっている。なお、この露光装置3(a〜d)は後述する露光装置3と同様の構成を有するものである。
これにより、感光体1(a〜d)の回転工程において帯電、露光、現像、1次転写の各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト5上に重ねて転写される。
【0054】
このように、複数本のレーザビームを感光体上に走査させて静電潜像を形成させるマルチビーム方式の露光装置3(a〜d)とともに、後に述べる構成を有する感光体1(a〜d)を用いることによって、画像の画質の向上、画像形成速度の高速化、及び装置の小型化が容易に実現可能であり、しかも長期にわたり画像形成プロセスを繰り返しても良好な画質の画像を得ることができる。
【0055】
(2)画像形成装置の各構成要素
A:露光装置3
画像の解像度を高めるためには、トナーの小粒径化を図ると共に、像形成用のレーザ光のスポット径を小さくすることが有効である。特に、高画質写真などのピクトリアル画像のプリントをターゲットとした超高画質機においては、解像度として1200dpi以上が要求され、スポット径としては、30μm以下にまで小さくする技術が要求される。レーザ光のスポット径を小さくする手段としては、レーザ光を光導電層に照射する光学系の精度を向上させたり、結像レンズの開口率を大きくしたりすること等が挙げられるが、本発明の露光装置3は、マルチビーム方式を採用する構成を有していることが好ましい。
次に、露光装置3について説明する。露光装置3はn本(nは少なくとも8以上)のレーザビームを射出する面発光レーザアレイ(図示せず)を備えていることが好ましい。なお、面発光レーザをアレイ化してなる面発光レーザアレイ(図示せず)は、例えば数十本のレーザビームを射出するように構成することができ、また、面発光レーザの配列{面発光レーザアレイ(図示せず)から射出されるレーザビームの配列}についても、1列に配列する以外に、2次元的に(例えばマトリクス状に)配列することも可能である。
【0056】
レーザビーム発生源である発光点が2次元的に配列されたレーザアレイとしては、例えば、所定の間隔で、主走査方向に3行、副走査方向に3列の計9個の発光点が2次元的に配置されているものが挙げられる。また、主走査方向に並んだ発光点は、副走査方向に隣り合う発光点との距離を4等分した距離を1ステップとし、副走査方向に1ステップずつ段階的にずれるように配置されている。すなわち、副走査方向に限ってみれば、1ステップ毎に発光点が配置されていることになる。このように副走査方向に段階的にずらして発光点を配置することにより、全ての発光点が異なる走査線を走査することができるようになっている。これにより、レーザアレイは9本の走査線を同時に走査することができる。
また、面発光レーザアレイの発光点は、上述のように3行以上×3列以上に並んでいることが好ましく、4行以上×4列以上に並んでいることがより好ましく、6行以上×6列以上に並んでいることが特に好ましい。これにより、形成する画像の高画質化(高解像度化)および画像形成速度の高速化をより確実に実現することが可能となる傾向がある。
【0057】
さらに、露光装置3は、上述のとおり8本以上のレーザビームをそれぞれ独立に感光体1上に走査させるものであることが好ましいが、上記効果(高画質化および高速化)をより有効に得る観点から、ビーム数を16本以上とすることがより好ましく、32本以上とすることが特に好ましい。
これにより、面発光レーザアレイからは、変調信号に応じたタイミングでオンオフされるとともに、オン時の光量が駆動量設定信号に対応する光量とされたn本のレーザビームが射出され、このn本のレーザビームが感光体1の外周面上をそれぞれ走査・露光されることで、電子写真感光体1の外周面上に静電潜像が形成される。この静電潜像が現像装置4によりトナー像として現像され、このトナー像が転写器6,7による転写を経て用紙Pに転写され、定着器8によって用紙Pに溶融定着されることで、用紙Pに画像が記録されることになる。
【0058】
B:帯電装置2
帯電装置2(帯電用部材)は、帯電ロール、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電チューブなどによる接触帯電方式、コロトロン、スコロトロンなどの非接触方式を採用することができる。なかでも帯電手段2が感光体表面に対して適度な空隙を有しつつ、感光体近傍に近接配置されたものなど接触帯電方式の帯電装置は、画像形成装置100,200の小型化を図る観点から好ましい。接触帯電方式は、感光体表面に接触させた導電性部材に電圧を印加することにより感光体表面を帯電させるものである。導電性部材の形状はブラシ状、ブレード状、ピン電極状、或いはローラ状など何れでもよいが、特にローラ状部材が好ましい。ローラ状部材は、感光体に接触させることにより特に駆動手段を有しなくとも感光体と同じ周速度で回転し、帯電手段として機能する。しかし、ローラ部材に何らかの駆動手段を取り付け、感光体とは異なる周速度で回転させ、帯電させてもよい。
【0059】
また、この接触帯電用部材への印加電圧は、直流、交流いずれも用いることができる。また、直流+交流の形(直流電圧と交流電圧とを重畳したもの)で印加することもできる。
本発明においては、感光体1が優れた機械的強度を有しているため、斯かる接触帯電方式を用いた場合であっても、優れた耐久性を示すことができる。
【0060】
C:現像装置4
上記現像装置4としては、一成分系、二成分系などの正規現像剤を用いた従来公知の現像装置を用いることができる。このような現像剤のうち画質の向上という理由から、二成分現像剤を用いる二成分現像方式を用いて行うことが好ましい。この場合、静電潜像の可視化のために用いる現像剤は、トナーとキャリアとで構成される。また、使用されるトナーの形状は特に制限されず、例えば粉砕法による不定形トナーや重合法による球形トナーが好適に使用される。
【0061】
D:転写装置6,7
転写手段としては、例えば、電子写真感光体上のトナー像を被転写媒体に直接転写する直接転写方式、電子写真感光体上のトナー像を中間転写体に転写した後、さらに被転写媒体に転写する中間転写方式が挙げられる。
転写装置6,7としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレードなどを用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器、コロトロン転写帯電器などのそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。これらの中でも、転写帯電補償能力に優れる点で接触型転写帯電器が好ましい。なお、本発明においては、上記転写帯電器のほか、剥離帯電器などを併用することもできる。
【0062】
E:除電装置9
本発明の画像形成装置はイレース光照射装置などの除電装置をさらに備えていてもよい。これにより、電子写真感光体が繰り返し使用される場合に、電子写真感光体の残留電位が次のサイクルに持ち込まれる現象が防止されるので、画像品質をより高めることができる。
光除電装置としては、例えば、タングステンランプ、LEDが挙げられ、該光除電プロセスに用いる光質としては、例えば、タングステンランプなどの白色光、LED光などの赤色光が挙げられる。該光除電プロセスにおける照射光強度としては、電子写真感光体の半減露光感度を示す光量の数倍乃至30倍程度になるよう出力設定される。本実施形態においては、除電露光のための開口部からこのような光除電装置からの光を取り込み、感光体を除電する。
【0063】
このように感光体1の回転工程において、帯電、露光、現像、転写、除電の各工程を順次行うことによって画像形成が繰り返し行われる。ここで、感光体1は、後述する感光体1であり、耐摩耗性と電気特性との双方が充分に高水準で達成されたものであるため、接触帯電装置2とともに用いた場合であってもカブリなどの画質欠陥を生じることなく良好な画像品質を得ることが可能となる。従って、本実施形態により、長期にわたり繰り返し使用される場合であっても、感光体における摩耗の発生が充分に防止され、画像品質の優れたカラー画像を高速で形成できる画像形成装置100,200が実現される。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図4に示した装置は、感光体1、接触帯電装置2、現像装置4を含んで構成されるプロセスカートリッジを備えるものであってもよい。かかるプロセスカートリッジを用いることによって、メンテナンスをより簡便に行うことができる。
【0064】
(3)プロセスカートリッジ400
次に、本発明のプロセスカートリッジについて説明する。図5は、本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。プロセスカートリッジ400は、感光体1とともに、帯電装置2、現像装置4、中間転写体6(中間転写装置)、露光のための開口部402、および除電露光のための開口部401を、取り付けレール(図示せず)を用いて組み合わせ、そして一体化したものである。また、プロセスカートリッジ400は、転写装置7の転写方式が、トナー像を中間転写体6を介して被転写媒体Pに転写する中間転写方式を採用する構成を有している。なお、感光体1は、後述する本発明にかかる電子写真感光体の構成を有するものである。また、プロセスカートリッジに搭載されている帯電装置2、現像装置4、中間転写体6は、それぞれ先に述べた本発明の各要素の構成を有するものである。
【0065】
そして、このプロセスカートリッジ400は、転写装置7と、定着装置8と、図示しない他の構成部分とからなる画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。
このような本発明のプロセスカートリッジは、先に述べた面発光レーザアレイを有する露光装置が搭載された画像形成装置に装着されるものであり、上記電子写真感光体を搭載していることにより、画像の高画質化、画像形成速度の高速化、および感光体の長寿命化を達成することができる。
【0066】
(4)感光体1
図6,7は、それぞれ感光体1の好適な一例を示す模式断面図であり、導電性基体500と感光層504との積層方向に沿って感光体1を切断したときの部分断面図である。本発明の感光体は、導電性基体上に少なくとも感光層が形成され、このような感光層は電荷発生層と電荷輸送層を積層してなるが、それぞれの層を構成する電荷発生物質および電荷輸送物質を同一層化した単層型でもよい。
図6に示す感光体1は、導電性基体500上に下引き層501、感光層504、保護層505が順次積層された構造を有するものである。
図7に示す感光体1は、導電性基体1上に下引き層501、電荷発生層502、電荷輸送層503、保護層505が順次積層された構造を有するものである。
【0067】
以下、このような感光体1を構成する各要素について詳述する。
始めに、感光層について説明する。
1)電荷発生層
A:電荷発生物質
例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料があり、これらを単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。なかでも下記一般式(1)で示されるアゾ系顔料(特に、XとYが相異なるアシンメトリーなアゾ系顔料)が感光体感度を本発明に適合する感度に調整するうえで好ましい。
【0068】
【化7】

(一般式(1)中、X及びYは、それぞれ独立に、下記一般式(2)
【化8】

(一般式(2)中、R3は、水素原子、アリール基又はアルキル基であり、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、ジアルキルアミノ基、ニトロ基、ハロゲン基、又はハロゲン化アルキル基であり、Zは、置換基を有してもよい炭素環式芳香族又は置換基を有してもよい複素環式芳香族を構成するのに必要な原子団である。)
で示されるカプラー残基であり、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基又はハロゲン基である。)
【0069】
また、フタロシアニン系顔料、特に、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)9.4゜、9.6゜及び24.0゜の位置に強い回折ピークを有し、27.2°の位置の回折ピークが最も強く、最低角度の回折ピークとして7.3°の位置に回折ピークを有し、該7.3°の回折ピーク、該9.4°の回折ピーク間に回折ピークを有さず、26.3゜の位置に回折ピークを有さないチタニルフタロシアニンの結晶が、感光体感度を本発明に適合する感度に調整するうえで好ましい。
【0070】
電荷発生物質及び結着樹脂を溶媒に分散させる方法としては、例えば、ボールミル、アトライター、サンドミルなどの一般的に用いられている分散手段が挙げられる。この場合、電荷発生物質の結晶形が分散過程により変化しないような条件で行うことが好ましい。また、電荷発生物質の粒径は、好ましくは、0.5μm以下、より好ましくは0.3μm以下、最適には、0.15μm以下である。
【0071】
B:結着樹脂
例えば、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの熱可塑性または熱硬化性樹脂などの高分子化合物のほか、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、フェノキシ樹脂樹脂などの付加重合型樹脂、重付加型樹脂、重縮合型樹脂、スチレン−アクリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂などの絶縁性共重合体樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾールなどの高分子有機半導体などの高分子化合物があり、これらを単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。電荷発生層中に含有される結着剤の量は、電荷発生物質100重量部に対して、好ましくは、0〜500重量部、最適には、10〜300重量部である。
【0072】
C:溶媒
例えば、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロインがあり、これらを単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。なかでも、非ハロゲン溶媒が、環境に対する負荷低減などの観点から好ましい。非ハロゲン溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサンなどの環状エーテル、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0073】
電荷発生層の塗工は、樹脂分散液をスプレーコーティング、ビームコーティングあるいはディッピングコーティングなど一般的に用いられている手段を利用することによって行うことができる。
上記電荷発生層は、電荷発生物質、溶媒、及び必要に応じ結着樹脂の適当な溶液、又は分散溶液を導電性基体上に塗布乾燥することにより得られ、この膜厚は、好ましくは、0.01〜5μm、最適には、0.1〜2μmである。
【0074】
2)電荷輸送層
A:正孔輸送物質(電荷輸送物質)
例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメート及びその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物及びその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジエン誘導体、ピレン誘導体、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体などの電子供与性物質があり、これらを単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0075】
B:電子輸送物質(電荷輸送物質)
例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体などの電子受容性物質があり、これらを単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。
電荷輸送層中に含有される電荷輸送物質の量は、結着樹脂100重量部に対して、好ましくは、20〜300重量部、最適には、40〜150重量部である。
【0076】
C:結着樹脂
電荷輸送層に用いる結着樹脂としては、先の電荷発生層で述べたものを挙げることができ、これらを単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。
上記電荷輸送層は、結着樹脂、電荷輸送物質、及び必要に応じ添加剤の適当な溶液、または分散溶液を導電性基体上に塗布乾燥することにより得られ、この膜厚は、好ましくは、5〜30μm、最適には、10〜25μmである。
【0077】
D:添加剤
電荷輸送層のガスバリアー性向上、および耐環境性に対する改善を目的として滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの低分子化合物およびレベリング剤を添加してもよく、これらを単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。
この場合、低分子化合物の添加量は、好ましくは、高分子化合物100重量部に対して、0.1〜50重量部、最適には、0.1〜20重量部であり、レベリング剤の添加量は、好ましくは、高分子化合物100重量部に対して、0.001〜5重量部の範囲であることがよい。
【0078】
E:溶媒
電荷輸送層に用いる溶媒としては、先の電荷発生層で述べたものを挙げることができ、これらを単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。
電荷輸送層の塗工は、樹脂分散液をスプレーコーティング、ビームコーティングあるいはディッピングコーティングすることによって行うことができる。
【0079】
3)感光層
キャスティング法等で単層の感光層を設ける場合、前述した電荷発生物質ならびに、電荷輸送物質(正孔輸送物質、電子輸送物質)、バインダー樹脂等の材料を用いて単層構成とすればよい。単層の感光層の膜厚は、5〜100μm程度が適当であり、好ましくは、10〜30μm程度が適当である。
また、本発明においては、さらに滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの低分子化合物およびレベリング剤を添加してもよい。この場合、低分子化合物の添加量は、好ましくは、高分子化合物100重量部に対して、0.1〜50重量部、最適には、0.1〜20重量部であり、レベリング剤の添加量は、好ましくは、高分子化合物100重量部に対して、0.001〜5重量部の範囲であることがよい。
【0080】
本発明における像担持体としての感光体は、感光層の表面に保護層を設けることができる。これにより、耐摩耗性が向上するので、膜厚の変動が抑えられ長期的に均一な画像が得られる。
次に、保護層について説明する。
本例における保護層は、フィラー分散型と有機架橋保護膜の2つのタイプに大別される。
先ず、フィラー分散型について説明する。これを「保護層A」とする。
【0081】
4)保護層A
A:電荷輸送物質
保護層に用いる電荷輸送物質としては、先の電荷輸送層で述べたものを挙げることができ、これらを単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。なかでも高分子電荷輸送物質が感光体の機械的耐久性および電荷輸送能を高めるうえで好ましい。
【0082】
B:結着樹脂
例えば、ABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂、あるいはこれらの樹脂の硬化剤が単独あるいは2種以上組み合わされて用いられる。
【0083】
C:導電性微粒子(フィラー)
導電性微粒子の例としては、無機顔料、金属又は金属酸化物が挙げられる。好ましくは、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化スズ被膜酸化チタン、スズ被膜酸化インジウム、アンチモン被膜酸化スズ又は酸化ジルコニウムの無機顔料又は金属酸化物の超微粒子がある。これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
一般的に保護層に粒子を分散させる場合、分散粒子による入射光の散乱を防ぐために入射光の波長よりも粒子の粒径の方が小さいことが必要であり、保護層に分散される導電性、絶縁性粒子の粒径としては0.5μm以下であることが好ましい。
【0084】
導電性微粒子の分散性向上、結着樹脂との接着性、あるいは成膜後の塗膜平滑性の向上を目的として、種々の添加剤を加えることができる。また、分散性の向上に関しては、カップリング剤、あるいはレベリング剤などにより、導電性微粒子の表面改質を行うことは非常に有効である。さらには、分散性向上の点から、結着樹脂として硬化型樹脂を用いることが効果的である。
保護層中での含有量は、保護層総重量に対して5〜50重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましい。10重量%未満では、感光体の耐摩耗性を十分に発揮できないことがあり、40重量%を超えると、感光体の感度などが低下する傾向にある。
【0085】
フィラーの体積平均径は、好ましくは、0.1μm〜2μm、最適には、0.3μm〜1μmである。0.1μm未満では、機械的耐久性が十分でないため、高画質な画像を長期にわたって安定して実現できないことがあり、また、2μmを越えると、膜特性の低下、または膜の形成を困難にする傾向にある。
【0086】
本発明に使用されるフィラーの比抵抗としては、1010Ω・cm以上であることが好ましい。このようなフィラーとしては、例えば、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、シリカが挙げられる。なかでも、六方最密構造であり、熱安定性および硬度特性が高いα−アルミナが画像ボケなどの画像品質の低下を抑制する観点から好ましい。
フィラーの比抵抗は、例えば、特開平5−94049号公報(第1図)、特開平5−113688号公報(第1図)に開示されたものと同様の構成の測定装置を用いて、求めることができる。
【0087】
D:溶媒
例えば、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブなどのエーテル類、トルエン、キシレンなどの芳香族類、クロロベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類があり、これらを単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。
フィラー及び結着樹脂を溶媒に分散させる方法としては、例えば、ボールミル、アトライター、サンドミルなどの一般的に用いられている分散手段が挙げられる。
【0088】
E:添加剤
感光層のガスバリアー性向上、および耐環境性に対する改善を目的として滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの低分子化合物およびレベリング剤を添加してもよい。これらを単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。
この場合、低分子化合物の添加量は、好ましくは、高分子化合物100重量部に対して、0.1〜50重量部、最適には、0.1〜20重量部であり、レベリング剤の添加量は、好ましくは、高分子化合物100重量部に対して、0.001〜5重量部の範囲であることがよい。
【0089】
F:その他
ここで上記保護層Aには、滑材粉末を含有させてもよい。感光体と帯電部材との摩擦、または感光体と記録材などの転写材との摩擦が低減され、画像形成装置の力的負荷が軽減できる。また、感光体表面の離型性が向上するため、現像剤の付着が防止できる。このような滑材粒子としては、臨界表面張力の低い、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、又はポリオレフィン樹脂を用いるのが好ましい。
特に好ましくは、4フッ化ポリエチレン樹脂である。この場合、滑材粉末の添加量は、保護層総重量に対して、好ましくは、2〜50重量%、より好ましくは、5〜40重量%である。2重量%未満では、滑材粉末の量が十分でないため、帯電性の向上効果を十分に発揮できないことがあり、また、50重量%を越えると、画像の分解能、または感光体の感度が低下する傾向にある。
【0090】
上記保護層Aは、結着樹脂、電荷輸送物質、溶媒、及び必要に応じフィラーの適当な粉砕溶液、又は分散溶液を感光層上に塗布乾燥することにより得られ、この膜厚は、好ましくは、1〜15μm、最適には、1〜9μmである。1μm未満では、耐久性が十分でないため、高画質な画像を長期にわたって安定して実現できないことがあり、また、15μmを越えると、解像度の低下、または感光体の感度が低下する傾向にある。
保護層の塗工は、樹脂分散液をスプレーコーティング、ビームコーティングあるいは浸透(ディッピング)コーティングすることによって行うことができる。
【0091】
次に、有機架橋保護膜について説明する。これを「保護層B」とする。
5)保護層B
保護層Bとしては、少なくとも電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性化合物と電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とを硬化することにより形成される保護層が好ましい。
A:電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性化合物
本発明において、電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性化合物のラジカル重合性官能基は、アクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基であることが好ましい。
3個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば、3個以上の水酸基を有する化合物、アクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル化反応又はエステル交換反応させることにより得られる。また、3個以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得られる。なお、電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モ化合物のラジカル重合性官能基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0092】
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、ECH変性グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0093】
また、電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性化合物は、有機架橋保護層中に緻密な架橋構造を形成するために、ラジカル重合性官能基数に対する分子量の割合が250以下であることが望ましい。250を超えると、有機架橋保護層は柔化、感光体の耐摩耗性が低下する傾向にある。このため、上記例示した化合物中、HPA、EO、POなどの変性基を有する化合物においては、極端に長い変性基を有するものを単独で用いることは好ましくない。
【0094】
また、電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性化合物の添加量は、有機架橋保護層の総量に対して、好ましくは、20〜80重量%、最適には、30〜70重量%である。20重量%未満では、有機架橋保護層の3次元架橋密度が小さいため、耐摩耗性が低下することがあり、80重量%を超えると、電荷輸送性化合物の含有量が低下して、電気特性が劣化不十分となる傾向にある。
【0095】
B:電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物
本発明で用いられる電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物は、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有することが好ましい。また、電荷輸送性構造としては、例えば、トリアリールアミン構造、ヒドラゾン構造、ピラゾリン構造、カルバゾール構造などの正孔輸送性構造又は縮合多環キノン構造、ジフェノキノン構造、シアノ基、ニトロ基などを有する電子吸引性芳香環の電子輸送性構造が挙げられるが、なかでも、トリアリールアミン構造が好ましい。
【0096】
本発明において、電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物は、下記一般式(3)及び(4)で示される化合物の一種以上を用いることが好ましい。これにより、感度、残留電位などの電気特性を良好に持続することができる。
【化9】

【化10】

(一般式(3)及び(4)中、R1は、水素原子、ハロゲン基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、一般式
−COOR2
(式中、R2は、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアラルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基である。)
で示される官能基、一般式
−COY
(式中、Yは、ハロゲン基である。)
で示される官能基又は一般式
−CONR34
(式中、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアラルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基である。)
で示される官能基であり、
Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、置換又は無置換のアリーレン基であり、Ar3及びAr4は、それぞれ独立に、置換又は無置換のアリール基であり、Xは、単結合、置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のシクロアルキレン基、置換若しくは無置換のオキシアルキレン基、酸素原子、硫黄原子又はビニレン基であり、Z1は、置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のオキシアルキレン基又は一般式
−COOR6
(式中、R6は、アルキレン基である。)
で示される官能基であり、mは、それぞれ独立に、0以上3以下の整数である。)
【0097】
以下に、一般式(3)及び(4)で示される化合物における置換基の具体例を示す。
1の中で、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が挙げられ、これらは、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基により置換されていてもよい。中でも、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0098】
Ar3及びAr4のアリール基としては、本発明においては、縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基、複素環基が含まれる。
縮合多環式炭化水素基は、環を形成する炭素数が18以下であることが好ましく、例えば、ペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基などが挙げられる。
【0099】
非縮合環式炭化水素基としては、ベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ジフェニルスルホンなどの単環式炭化水素化合物の1価基、ビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、ポリフェニルアルケンなどの非縮合多環式炭化水素化合物の1価基又は9,9−ジフェニルフルオレンなどの環集合炭化水素化合物の1価基が挙げられる。
複素環基としては、例えば、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、チアジアゾールなどの1価基が挙げられる。
【0100】
また、Ar3及びAr4の置換若しくは無置換のアリール基は、以下に示すような置換基を有してもよい。
(1)ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基など
(2)アルキル基
1〜C12、好ましくは、C1〜C8、さらに好ましくは、C1〜C4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、さらに、フルオロ基、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン基、C1〜C4のアルキル基若しくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有してもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−フェニルベンジル基が挙げられる。
【0101】
(3)アルコキシ基(−OR)
(式中、Rは、(2)で定義したアルキル基である。)
具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基などが挙げられる。
(4)アリールオキシ基
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基が挙げられ、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基又はハロゲン基を有していてもよい。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基などが挙げられる。
【0102】
(5)アルキルメルカプト基又はアリールメルカプト基
具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基が挙げられる。
(6)アミノ基(−NR12
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、(2)で定義したアルキル基又はアリール基である。アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基が挙げられ、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基又はハロゲン基を有してもよい。また、R1及びR2は、共同で環を形成してもよい。)
具体的には、アミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリールアミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基が挙げられる。
【0103】
(7)アルキレンジオキシ基又はアルキレンジチオ基など
具体的には、メチレンジオキシ基又はメチレンジチオ基が挙げられる。
(8)置換又は無置換のスチリル基、置換又は無置換のβ−フェニルスチリル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジトリルアミノフェニル基など。
【0104】
Ar1及びAr2のアリーレン基としては、Ar3及びAr4のアリール基から誘導される2価基が挙げられる。
Xのアルキレン基は、C1〜C12、好ましくは、C1〜C8、さらに好ましくは、C1〜C4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であり、さらに、フルオロ基、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン基、C1〜C4のアルキル基若しくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有してもよい。具体的には、メチレン基、エチレン基、n−ブチレン基、イソプロピレン基、t−ブチレン基、s−ブチレン基、n−プロピレン基、トリフルオロメチレン基、2−ヒドロキシエチレン基、2−エトキシエチレン基、2−シアノエチレン基、2−メトキシエチレン基、ベンジリデン基、フェニルエチレン基、4−クロロフェニルエチレン基、4−メチルフェニルエチレン基、4−ビフェニルエチレン基が挙げられる。
【0105】
Xのシクロアルキレン基は、C5〜C7の環状アルキレン基であり、フルオロ基、水酸基、C1〜C4のアルキル基又はC1〜C4のアルコキシ基を有してもよい。具体的には、シクロヘキシリデン基、シクロへキシレン基、3,3−ジメチルシクロヘキシリデン基が挙げられる。
Xのオキシアルキレン基としては、例えば、チレンオキシ基、プロピレンオキシ基などのオキシアルキレン基、エチレングリコール、プロピレングリコールなどから誘導されるアルキレンジオキシ基、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールなどから誘導されるジ(オキシアルキレン)オキシ基又はポリ(オキシアルキレン)オキシ基が挙げられる。オキシアルキレン基のアルキレン基は、ヒドロキシル基、メチル基、エチル基などを有してもよい。
【0106】
Xのビニレン基としては、一般式
【化11】

(式中、R5は、水素原子、アルキル基((2)で定義されるアルキル基と同じ)又はアリール基(Ar3及びAr4のアリール基と同じ)であり、aは、1又は2であり、bは、1〜3の整数である。)
で示される置換基が挙げられる。
【0107】
1のアルキレン基及びオキシアルキレン基としては、Xと同様のものが挙げられる。また、Z1の一般式
−COOR6
(式中、R6は、アルキレン基である。)
で示される官能基としては、カプロラクトン変性基が挙げられる。
【0108】
本発明において、電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物は、下記一般式(5)で示される化合物であることがさらに好ましい。
【化12】

(一般式(5)中、o、p及びqは、それぞれ独立に、0又は1であり、R2は、水素原子又はメチル基であり、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数が1以上6以下のアルキル基であり、s及びtは、それぞれ独立に、0以上3以下の整数であり、Z2は、単結合、メチレン基、エチレン基又は構造式
【化13】

で示される官能基である。)
なお、s又はtが2又は3である場合は、複数のR3又はR4は、異なってもよい。一般式(5)で表わされる化合物の中でも、R3及びR4が、それぞれ独立に、メチル基又はエチル基である化合物が特に好ましい。
【0109】
本発明において、一般式(3)及び(4)、特に(5)で示される化合物は、電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーと共重合することにより、硬化樹脂の主鎖中に組み込まれると共に、主鎖−主鎖間の架橋鎖中に組み込まれる。なお、架橋には、1つの高分子と他の高分子との間に形成される分子間架橋と、1つの高分子内で折り畳まれた状態の主鎖のある部位と他の部位とが架橋される分子内架橋とがある。このとき、電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーが主鎖中に存在する場合であっても、架橋鎖中に存在する場合であっても、鎖部分から懸下するトリアリールアミン構造は嵩高い。しかしながら、トリアリールアミン構造は、鎖部分に直接結合しておらず鎖部分からカルボニル基などを介して懸下しているため、立体的位置取りに融通性がある状態で固定されており、硬化樹脂中で相互に程よく隣接する空間配置とすることが可能である。このため、分子内の構造的歪みが少なく、架橋型電荷輸送層中で、電荷輸送経路の断絶を比較的免れた分子内構造を採りうるものと推測される。
【0110】
本発明で用いられる電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性モノマーの具体例を以下に示すが、これらの化合物に限定されるものではない。
【化14】

【0111】
【化15】

【0112】
【化16】

【0113】
【化17】

【0114】
【化18】

【0115】
【化19】

【0116】
【化20】

【0117】
【化21】

【0118】
【化22】

【0119】
【化23】

【0120】
【化24】

【0121】
【化25】

【0122】
本発明において、電荷輸送性構造を有する単官能のラジカル重合性化合物は、有機架橋保護層に電荷輸送能を付与するために重要であり、有機架橋保護層中の含有量は、好ましくは、20〜80重量%、最適には、30〜70重量%である。20重量%未満では、有機架橋保護層の電荷輸送性が十分でないため、感度の低下、または残留電位の上昇などの電気特性が低下することがあり、80重量%を超えると、電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性化合物の含有量とともに、架橋密度が低下して、耐摩耗性が不十分となる傾向にある。
【0123】
C:重合開始剤
また、本発明において、有機架橋保護層を形成する場合、硬化反応を効率的に進行させるために、必要に応じて、重合開始剤を添加してもよい。
重合開始剤としては、例えば、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどの過酸化物系開始剤、アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸などのアゾ系開始剤が挙げられる。
【0124】
光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどのアセトフェノン系又はケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニルエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼンなどのベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントンなどのチオキサントン系光重合開始剤が挙げられる。その他の光重合開始剤としては、例えば、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物が挙げられる。また、光重合反応を促進させる効果を有する化合物を単独又は光重合開始剤と併用して用いることもできる。このような化合物としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノンが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
重合開始剤の添加量は、ラジカル重合性を有する化合物の総重量100重量部に対して、好ましくは、0.5〜40重量部、最適には、1〜20重量部である。
【0125】
D:溶媒
例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテルなどのエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテートなどのセロソルブ系が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0126】
保護層の塗工は、樹脂分散液をスプレーコーティング、ビームコーティングあるいはディッピングコーティングすることによって行うことができる。なかでもスプレーコート法が膜中の残留溶媒量を適度に調整することができる観点から好ましい。
【0127】
本発明においては、斯かる有機架橋保護層塗布液を塗布したのち、外部エネルギーにより硬化させ、有機架橋保護層を形成させるものであるが、このとき用いられる外部エネルギーとしては、例えば熱、光、放射線が挙げられる。熱エネルギーを加える方法としては、空気、窒素などの気体、蒸気、あるいは各種熱媒体、赤外線、電磁波を用い、塗布表面側あるいは支持体側から加熱することによって行われる。加熱温度としては、100℃〜170℃の範囲であることが好ましい。100℃未満では、反応速度が小さいため、完全に硬化反応が終了しない傾向にある。170℃を超えると、高温では硬化反応が不均一に進行するため、有機架橋保護層中に大きな歪みや多数の未反応残基、反応停止末端が発生する傾向にある。硬化反応を均一に進めるために、100℃未満の比較的低温で加熱したのち、さらに100℃以上に加温して反応を完結させる方法も効果的である。光エネルギーとしては、主に紫外光領域に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプなどのUV照射光源が利用できるが、ラジカル重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。照射光量としては、50m〜1000mW/cm2の範囲であることが好ましい。50mW/cm2未満では、硬化反応に時間を要する。1000mW/cm2を超えると、反応の進行が不均一となるため、有機架橋保護層表面には局部的な皺の発生、多数の未反応残基、反応停止末端が生ずる傾向にある。また、急激な架橋により内部応力が大きくなり、クラックや膜剥がれの原因となる。放射線のエネルギーとしては、例えば電子線が挙げられる。これら外部エネルギーのなかでも、反応速度制御の容易性、装置の簡便性の観点から熱及び光のエネルギーが好ましい。
【0128】
有機架橋保護層の膜厚は、好ましくは、1〜10μm、最適には、2〜8μmである。1μm未満では、膜厚ムラによって耐久性が変動することがあり、また、10μmを超えると、電荷輸送層及び有機架橋保護層の総膜厚が大きくなるため、電荷の拡散から画像の再現性が低下する傾向にある。
【0129】
5)導電性基体
導電性基体としては、例えばアルミニウム又はステンレスの如き金属;アルミニウム合金又は酸化インジウム−酸化錫合金による被膜層を有するプラスチック;導電性粒子を含侵させた紙又はプラスチック;導電性ポリマーを有するプラスチック;の円筒状シリンダー及びフィルムなどが挙げられる。
【0130】
6)下引き層
これら導電性基体上には、感光層の接着性向上、塗工性改良、基体の保護、基体上に欠陥の被覆、基体からの電荷注入性改良および感光層の電気的破壊に対する保護を目的として下引き層を設けてもよい。
A:樹脂
前記一般的な有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウムなどの水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロンなどのアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂など三次元網目構造を形成する硬化型樹脂があり、これらを単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0131】
B:金属微粉末
例えば、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物などの微粉末があり、これらを単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0132】
この膜厚は、好ましくは、0.1〜10μm、最適には、0.1〜5μmがよい。
これらの下引き層は、前述の感光層と同様、適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。
【0133】
さらに、下引き層としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤などを使用して、例えばゾル−ゲル法などにより形成した金属酸化物層も有用である。この他に、アルミナを陽極酸化により設けたもの、ポリパラキシリレン(パリレン)などの有機物、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化チタン、ITO、セリアなどの無機物を真空薄膜作製法にて設けたものも下引き層として良好に使用できる。
【実施例】
【0134】
以下、実施例により本発明について詳細に説明するが、本発明は、下記実施例に何ら限定されるものではない。
(1)分散液調製例
[顔料分散液1の調製]
(結着樹脂) ポリビニルブチラール樹脂(XYHL、UCC社製) 0.25質量部
(溶媒) シクロヘキサノン 200質量部
(溶媒) 2−ブタノン 80質量部
ボールミル分散機中に、予め混合した上記材料と、下記電荷発生物質2.5質量部と、直径10mmのPSZボールとを投入し、85rpmにて7日間分散した。これを、「顔料分散液1」とする。
(電荷発生物質) 下記構造式(7)のアゾ系化合物
【化26】

【0135】
[顔料分散液2の調製]
(電荷発生物質) XDスペクトル(図8)を有するチタニルフタロシアニン 8質量部
(結着樹脂) ポリビニルブチラール樹脂(XYHL、UCC社製) 5質量部
(溶媒) 2−ブタノン 400質量部
上記処方を均一に溶解し、分散した。これを、「顔料分散液2」とする。
【0136】
以下、感光体およびトナーの具体的な製造方法を示す。
(2)感光体製造例
[下引き層塗布液の調製]
(結着樹脂) アルキド樹脂 3質量部
(ベッコゾール 1307−60−EL、大日本インキ化学工業社製)
(結着樹脂) メラミン樹脂 2質量部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業社製)
(フィラー) 酸化チタン 20質量部
(タイペークCR−EL、石原産業社製)
(溶媒) 2−ブタノン 100質量部
を分散混合し、下引き層塗布液を調製した。
【0137】
[電荷発生層塗布液の調製]
電荷発生層塗布液として、顔料分散液1又は2を用いた。
【0138】
[電荷輸送層塗布液の調製]
(電荷輸送物質) 下記構造式(8)のトリフェニルアミン系化合物 7質量部
【化27】

(結着樹脂) ポリカーボネート樹脂(ビスフェノールZ型) 10質量部
{パンライトTS−2050(帝人化成社製)、粘度平均分子量5万}
(レベリング剤) 反応性シリコーンオイル(1質量%のテトラヒドロフラン溶液)
0.2質量部
(KF50−100CS、信越化学工業社製)
(溶媒) テトラヒドロフラン 80質量部
を分散混合し、電荷輸送層塗布液を調製した。
【0139】
[フィラー分散型保護層塗布液の調製]
(電荷輸送物質) 上記構造式(8)のトリフェニルアミン系化合物 3質量部
(結着樹脂) ポリカーボネート樹脂(ビスフェノールZ型) 4質量部
{パンライトTS−2050(帝人化成社製)、粘度平均分子量5万}
(フィラー) 酸化アルミニウム 0.7質量部
{スミコランダムAA−03(住友化学工業社製)、平均一次粒径0.3
μm、屈折率1.7、比抵抗1010Ω・cm以上}
(溶媒) テトラヒドロフラン 280質量部
(溶媒) シクロヘキサノン 80質量部
を分散混合し、フィラー分散型保護層塗布液を調製した。これを、「保護層塗布液1」とする。
【0140】
[有機架橋保護層塗布液の調製]
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性化合物 5質量部
{トリメチロールプロパントリアクリレート
(KAYARAD TMPTA、日本化薬社製) 分子量 296、
官能基数3、分子量/官能基数=99}
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性化合物 5重量部
{カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(KAYARAD DPCA−120、日本化薬社製)、分子量1947、
官能基数6、分子量/官能基数=325}
電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物 10重量部
(例示化合物No.54)
光重合開始剤 1重量部
{1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(IRGACURE 184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)}
反応性シリコーン化合物 0.02重量部
(BYK−UV3570、ビックケミー・ジャパン社製)
テトラヒドロフラン 120重量部
を分散混合し、有機架橋保護層塗布液を調製した。これを、「保護層塗布液2」とする。
【0141】
[感光体の製造例1]
直径30mm、長さ340mmのアルミニウムシリンダーを基体とした。この基体に、次に示す第1層から第3層までを順次浸漬塗布し、第4層はスプレー塗布により積層して、感光体1を作製した。
第1層(下引き層):上記下引き層塗布液の調製で得られた塗布液を用いて作製した。
膜厚3.5μm。
第2層(電荷発生層):上記顔料分散液1を用いて作製した。膜厚0.2μm。
第3層(電荷輸送層):上記電荷輸送層塗布液の調製で得られた塗布液を用いて作製
した。膜厚22μm。
第4層(保護層):上記保護層塗布液1を用いて作製した。膜厚5μm。
【0142】
[スプレー塗布条件]
スプレーガン開度 : 3/8
塗布液吐出圧 : 2.0kgf/cm2
被塗布物回転数 : 120rpm
塗布速度 : 7.14mm/s
スプレーガンヘッド−被塗布物間距離 : 50mm
塗布回数 : 2回
【0143】
[感光体の製造例2]
電荷発生層塗布液として、顔料分散液2を使用することを除いては、[感光体の製造例1]と同様にして感光体2を作製した。
【0144】
[感光体の製造例3]
保護層塗布液の処方として、保護層塗布液2を用い、保護層塗布液2の塗布及び硬化条件を以下に示すとおり、変更することを除いては、[感光体の製造例2]と同様にして感光体3を作製した。得られた保護層の膜厚5μm。
[スプレー塗布条件]
スプレーガン開度 : 3.7/8
塗布液吐出圧 : 3.0kgf/cm2
被塗布物回転数 : 168rpm
塗布速度 : 10.7mm/s
スプレーガンヘッド−被塗布物間距離 : 50mm
塗布回数 : 1回
[紫外線硬化条件]
光源 : メタルハライドランプ
光源パワー : 160W/cm 100%
光源−被塗布物間距離 : 110mm
被塗布物回転数 : 25rpm
照射時間 : 240s
被塗布物温度制御 : 30℃
【0145】
[感光体の製造例4]
電荷発生層塗布液として、顔料分散液1を使用することを除いては、[感光体の製造例3]と同様にして感光体4を作製した。
【0146】
(3)粉砕トナーの製造例
[ポリエステル樹脂の製造]
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
4.0モル
ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
1.0モル
テレフタル酸 4.5モル
無水トリメリット酸 0.5モル
酸化ジブチル錫 4g
上記処方を230℃、8.3kPa、窒素雰囲気下において、8時間反応させ、軟化点120℃のポリエステル樹脂を得た。
【0147】
[トナーの製造]
(結着樹脂) 上記ポリエステル樹脂 100質量部
(着色剤) カーボンブラック(MA100、三菱化学社製) 5質量部
(電荷制御剤) スチレンアクリル系ポリマー(FCA−201−PS、藤倉化成社製)
4質量部
(離型剤) ワックス(ユーメックス110TS、三洋化成工業社製) 4質量部
上記材料を予め混合し、2軸押出機にて溶融混錬を行った。この溶融混練物を粗砕し、トナー粗砕物を得た。さらにこの粗砕物を衝突式気流粉砕機で微粉砕したのち、風力分級し、平均径約9μmのブラックトナー粒子を得た。得られたブラックトナー粒子100質量部に対して、シリカ微粒子(RA200HS、日本アエロジル社製)を1.05質量部外添し、トナーを得た。
【0148】
[正帯電2成分現像剤の製造]
体積平均径40μmのフェライトにシリコーン樹脂をコートした現像キャリア100質量部に、上記トナー5質量部を混合して現像剤を得た。これを「現像剤1」とする。
【0149】
(4)重合トナーの製造例
[重合トナーの製造例1]
[外層用樹脂粒子分散液の調製]
スチレン 70.1質量部
n−ブチルアクリレート 19.9質量部
メタクリル酸 10.9質量部
上記処方を均一に溶解し、分散した。これを「重合性単量体溶液1」とする。次に攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、冷却管を備えた5000mL用のセパラブルフラスコ中のイオン交換水3010gに、非イオン界面活性剤(ナロアクティーN200、三洋化成工業社製)7.08gを投入し、窒素気流下において攪拌しつつ、80℃に昇温し、界面活性剤溶液を調製した。この界面活性剤溶液に、イオン交換水200gに重合開始剤(過硫酸カリウムKPS)9.2gを溶解させた重合開始剤溶液を加え、75℃に加温したのち、上記重合性単量体溶液1を1時間かけて滴下し、滴下終了後、この系を75℃にて2時間加熱、攪拌することにより重合(第1段重合)を行い、樹脂粒子を調製した。これを、「樹脂粒子1」とする。
【0150】
スチレン 122.9質量部
n−ブチルアクリレート 49.7質量部
メタクリル酸 16.3質量部
攪拌装置を備えたフラスコ中の上記材料に、下記離型剤{エステル系化合物(9)}96.0質量部を投入し、80℃に加温、均一に溶解し、分散した。
【化28】

これを「重合性単量体溶液2」とする。
【0151】
次に攪拌装置、温度センサー、冷却管を備えた5000mL用のセパラブルフラスコ中のイオン交換水1340gに、非イオン界面活性剤(ナロアクティーN200、三洋化成工業社製)5.7gを溶解し、界面活性剤溶液を調製した。この界面活性剤溶液を80℃に加温したのち、循環経路を有する機械式分散機{クレアミックス(CLEARMIX)、エム・テクニック社製}を用いて、上記重合性単量体溶液2を2時間分散混合し、分散粒子径646nmの乳化粒子(油滴)を含む分散液(乳化液)を調製した。次にこの分散液(乳化液)にイオン交換水1460mLとイオン交換水254mLに重合開始剤(過硫酸カリウムKPS)6.51gを溶解させた重合開始剤溶液と、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル0.75gとを樹脂粒子1に加え、この系を80℃にて3時間加熱、攪拌することにより重合(第2段重合)を行い、樹脂粒子1を原料とした樹脂粒子を調製した。これを、「樹脂粒子2」とする。
【0152】
スチレン 322.3質量部
n−ブチルアクリレート 121.9質量部
メタクリル酸 35.5質量部
下記アミノアクリル(メタ)アクリルアミド系化合物(10) 4.5質量部
【化29】

n−オクチルメルカプタン 6.4質量部
前記樹脂粒子2に、イオン交換水346mLに重合開始剤(VA−057、和光純薬工業社製)8.87gを溶解させた重合開始剤溶液を添加し、さらに上記処方を95℃で1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間加熱、攪拌することにより重合(第3段重合)を行ったのち、28℃に冷却、樹脂粒子2を原料とした樹脂粒子の分散液を得た。これを、「外層用樹脂粒子分散液A」とする。
【0153】
[内部粒子用樹脂粒子分散液の調製]
スチレン 172.9質量部
n−ブチルアクリレート 55.0質量部
メタクリル酸 23.1質量部
攪拌装置を備えたフラスコ中の上記材料に、離型剤{エステル系化合物(8)}96.0質量部を投入し、80℃に加温、均一に溶解し、分散した。これを「重合性単量体溶液3」とする。次に攪拌装置、温度センサー、冷却管を備えた5000mL用のセパラブルフラスコ中のイオン交換水1340gに、下記アニオン性界面活性剤(11)2.5gを溶解し、界面活性剤溶液を調製した。
【化30】

【0154】
この界面活性剤溶液を80℃に加温したのち、循環経路を有する機械式分散機{クレアミックス(CLEARMIX)、エム・テクニック社製}を用いて、上記重合性単量体溶液3を2時間分散混合し、分散粒子径482nmの乳化粒子(油滴)を含む分散液(乳化液)を調製した。次にイオン交換水1460mLを添加したのち、イオン交換水142mLに重合開始剤(過硫酸カリウムKPS)7.5gを溶解させた重合開始剤溶液と、n−オクタンチオール6.74gとを加え、この系を80℃にて3時間加熱、攪拌することにより重合(第1段重合)を行い、樹脂粒子を調製した。これを、「樹脂粒子3」とする。
【0155】
スチレン 291.2質量部
n−ブチルアクリレート 132.2質量部
メタクリル酸 42.9質量部
n−オクタンチオール 7.51質量部
前記樹脂粒子2に、イオン交換水220mLに重合開始剤(過硫酸カリウムKPS)11.6gを溶解させた重合開始剤溶液を添加し、さらに上記処方を80℃で1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間加熱、攪拌することにより重合(第2段重合)を行ったのち、28℃に冷却、樹脂粒子3を原料とした樹脂粒子(これを、「樹脂粒子4」とする。)の分散液を得た。
【0156】
[着色剤分散液の調製]
イオン交換水1600mLにアニオン性界面活性剤(11)59.0gを溶解させたのち、この溶液を攪拌しつつ、イエロー顔料C.I.Pigment Yellow74、280.0gを徐々に添加し、さらにクレアミックス(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤分散液を調製した。これを、「着色剤分散液B」とする。
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、冷却管を備えた四つ口フラスコ中に、樹脂粒子4、259.3g(固形分換算)と、イオン交換水1120gと、上記着色剤分散液B、237gとを投入し、攪拌した。さらに30℃に加温したのち、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加え、pHを10に調整した。そののち、30℃で攪拌しつつ、イオン交換水55.3mLに塩化マグネシウム・6水和物55.3gを、10分間かけて投入した。3分間静置したのち、この系を60分間かけて徐々に昇温させながら最終的に90℃で、樹脂粒子4と着色剤との塩析、融着を行った。加熱、攪拌を続けながら、コールターカウンターTA−II(ベックマン・コールター社製)にて内部粒子となる粒子径を測定し、体積平均径が5.5μmになったところで、イオン交換水100mLに塩化ナトリウム15.3gを溶解させた水溶液を添加し、粒子の成長を停止させ、内部粒子となる着色粒子分散液を得た。これを、「着色粒子分散液C」とする。
樹脂粒子分散液A、87.5g(固形分換算)を、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加え、pHを8に調整した。
【0157】
一方、内部粒子となる着色粒子分散液Cを約1時間以上加熱、攪拌することにより形状制御を行い、円形度が0.944になったところで、上記樹脂粒子分散液Aを添加し、内部粒子表面に外層用樹脂粒子を融着し、外層を形成した。次にイオン交換水500gに塩化ナトリウム123.9gを溶解させた水溶液を加え、95℃にて2時間攪拌した。さらに、8℃/分の条件で徐々に冷却させながら最終的に30℃で、塩酸を添加してpH2に調整し、攪拌を停止した。これをトナー粒子の分散液とする。トナー粒子の円形度の平均値は0.964であった。
【0158】
[固液分離、洗浄工程]
トナー粒子の分散液を遠心脱水機にかけたのち、固形分に対して、20倍質量のイオン交換水を用いて洗浄し、トナーケーキを得た。
[乾燥工程]
洗浄して得られたトナーケーキを減圧乾燥機で、水分量が4質量%になるまで乾燥してトナー粒子を得た。
[外添混合工程]
上記トナー粒子に、疎水性シリカ(R805、日本アエロジル社製)0.8質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(三井三池化工社製)の回転翼の周速を30m/秒に設定し25分間混合した。そののち、目開き45μmのフルイを用いて粗粒を除去し、トナーを作製した。これを、「重合トナー1」とする。
[正帯電2成分現像剤の製造]
体積平均径40μmのフェライトにシリコーン樹脂をコートした現像キャリア100質量部に、上記重合トナー1、6質量部を混合して現像剤を得た。これを「現像剤2」とする。
【0159】
(5)実施例と比較例
以下、実施例と比較例により本発明の効果を示す。
[実施例1]
図3に示す正規現像方式、クリーナーレス検討機として1200dpiレーザービームプリンタを用意し、プロセス時間(Ted)は65msに改造した。すなわち、露光装置に、面発光レーザアレイ(発光点が3×3の二次元に配列、レーザビーム数が8本)を備え、その走査線数を1200dpiに改造した。
プロセスカートリッジにおけるクリーニングゴムブレードを取りはずし、装置の帯電方式を、ゴムローラーを当接する接触帯電とした。
ここで、現像剤は粉砕トナーからなる「現像剤1」、感光体はフィラー分散型の保護層を有する「感光体1」を使用した。
これらのプロセスカートリッジの改造に適合するよう画像形成装置の改造及びプロセス条件設定を行った。なお、感光体帯電電位は暗部電位を−800Vとした。
【0160】
次に評価は、初期より印字面積比率6%文字原稿をA4横送りで10k(=10000)枚連続画出し耐久を行い、画像濃度、転写性、帯電ローラ汚れ及びゴースト、帯電不良により発生する画像カブリについて行った。
【0161】
1) 感光体トランジットタイム
上記作製した感光体を用い、本願明細書記載の測定方法で感光体のトランジットタイムを測定した。すなわち、特開2000−275872号公報に記載の感光体の特性評価装置を用いて、プロセス時間の多点計測により、光減衰カーブを得た。次に、得られた光減衰カーブにおいて、感光体表面電位の急峻な光減衰が生じなくなるような露光量を決定する。さらに、この露光量について、露光部電位をプロセス時間に対してプロットし、プロセス時間の短時間側で露光部電位が立ち上がり始める時間(感光体トランジットタイム)を求めた。
【0162】
なお、測定条件は以下の条件で行った。
ラインスピード(mm/s) 270
書き込み光波長(nm) 655
副走査方向解像度(dpi) 1200
除電電圧 8(V)
感光体帯電電位 −800(V)
【0163】
プロセス時間(Ted)の調節は、現像部に相当する表面電位プローブの露光ステーションに対する設置角度を変化させることで調整した。
また、本願明細書記載の測定方法でプロセス時間(感光体上の任意の位置が、静電潜像形成手段に正対する位置から現像手段に正対する位置まで移動する時間)を測定した。すなわち、感光体ドラムの円周長をL[mm]、感光体のラインスピードをv[mm/s]、感光体中心からみたときの露光位置と現像位置がなす角度をθ[°]とすると、求めるプロセス時間Ted[s]は、
ed=L/v×[θ/360]
となる。
評価方法に基づいた結果を表1に整理した。
【0164】
【表1】

【0165】
2) 画像濃度
一辺が5mmの正方形のベタ黒画像を形成し、Macbeth社製画像濃度測定機RD918を用いて、ベタ黒画像の画像濃度を測定した。以下の評価基準に基づいて評価を行った。
A:非常に良好(1.3以上)
B:良好(1.2以上1.3未満)
C:普通(1.1以上1.2未満)
D:悪い(1.1未満)
【0166】
3) 画像汚れ
画像汚れは定着後の画像を目視で観察し、以下の評価基準に基づいて評価を行った。
A:未発生
B:かすかに発生
C:ある程度発生
D:発生が著しく悪い
【0167】
また、転写性、カブリ、解像度及び帯電ローラ汚れについて評価を行った。
4) 転写性
転写性はベタ黒画像形成時の感光体上の転写残トナーを、マイラーテープによりテーピングしてはぎ取り、はぎ取ったマイラーテープを紙上に貼ったもののマクベス濃度から、マイラーテープのみを紙上に貼ったもののマクベス濃度を差し引いた数値で評価した。したがって、数値の小さいほど転写性が良好である。
A:非常に良好(0.05未満)
B:良好(0.05以上0.07未満)
C:普通(0.07以上0.1未満)
D:悪い(0.1以上)
【0168】
5) カブリ
カブリはベタ白画像形成時の感光体上の転写残トナーを、マイラーテープによりテーピングしてはぎ取り、はぎ取ったマイラーテープを紙上に貼ったもののマクベス濃度から、マイラーテープのみを紙上に貼ったもののマクベス濃度を差し引いた数値で評価した。したがって、数値の小さいほどカブリ抑制が良好である。
A:非常に良好(0.05未満)
B:良好(0.05以上0.07未満)
C:普通(0.07以上0.1未満)
D:悪い(0.1以上)
【0169】
6) 解像度
解像力は潜像電界によって電界が閉じやすく、再現しにくい1200dpiの21μm小径孤立ドットの再現性によって評価した。
A:100個中の欠損が5個以下
B:100個中の欠損が6〜10個
C:100個中の欠損が11〜20個
D:100個中の欠損が20個以上
【0170】
7) 帯電ローラの汚染量
帯電ローラの汚れは、帯電ローラ上の単位面積当たりのトナー重量(mg/cm2)を測定し、以下の評価基準に基づいて評価を行った。
A:未発生(0.1mg/cm2未満)
B:かすかに発生(0.1mg/cm2以上0.3mg/cm2未満)
C:ある程度発生(0.3mg/cm2以上0.5mg/cm2未満)
D:発生が著しく悪い(0.5mg/cm2以上)
【0171】
さらに、現像ローラ、感光体ドラム及び定着装置のそれぞれに対するマッチングについては、以下の通り評価を行った。
8) 現像ローラとのマッチング
プリントアウト試験終了後、現像ローラ表面への残留トナーの固着の様子とプリントアウト画像への影響を目視で評価した。
A:非常に良好(未発生)
B:良好(ほとんど発生せず)
C:普通(固着があるが、画像への影響が少ない)
D:悪い(固着が多く、画像ムラを生じる)
【0172】
9) 感光体ドラムとのマッチング
プリントアウト試験終了後、感光体ドラム表面の傷や残留トナーの固着の発生状況とプリントアウト画像への影響を目視で評価した。
A:非常に良好(未発生)
B:良好(わずかに傷の発生が見られるが、画像への影響はない)
C:普通(固着や傷があるが、画像への影響が少ない)
D:悪い(固着が多く、縦スジ状の画像欠陥を生じる)
【0173】
10) 定着装置とのマッチング
プリントアウト試験終了後、定着ローラ表面の傷や残留トナーの固着状況を目視で評価した。
A:非常に良好(未発生)
B:良好(わずかに固着が見られるものの、画像への影響はない)
C:普通(固着や傷があるが、画像への影響が少ない)
D:悪い(固着が多く、画像欠陥を生じる)
【0174】
評価レベルに基づいた結果を表2に整理した。
本実施例では、1.0<tT/Ted<1.3、つまりTed<tT<1.3×Tedを満足させることによりトナーの残留は長期的に防止され、高濃度でカブリのない高品質の画像が得られた。その結果、クリーナーレスプロセスが達成された。
【0175】
[実施例2及び3]
プロセス時間を、70、80msに改造することを除いては、実施例1と同様な評価を行った。結果は表2に示すように、概ね良好な結果を得た。
[比較例1〜4]
プロセス時間を、50ms、60ms、90ms、110msに改造することを除いては、実施例1と同様な評価を行った。結果は表2に示すように、Ted<tT<1.3×Tedではないため、良好な結果が得られなかった。
【0176】
[実施例4〜6]
感光体としては(感光体の製造例2)で製造した感光体2を用い、現像剤は現像剤2を用い、図4に示す画像形成装置のプロセス時間を、65、75、80msに改造した以外は実施例1と同様に評価を行った。結果は表2に示すように、概ね良好な結果を得た。
[比較例5〜8]
プロセス時間を、55ms、60ms、90ms、100msに改造することを除いては、実施例4と同様な評価を行った。結果は表2に示すように、Ted<tT<1.3×Tedではないため、良好な結果が得られなかった。
【0177】
[実施例7〜9]
感光体としては(感光体の製造例3)で製造した感光体3を用い、現像剤は現像剤2を用い、帯電手段としてスコロトロン帯電装置を用いた画像形成装置(図5)のプロセス時間を、65、70、80msに改造した以外は実施例1と同様に評価を行った。評価結果は表2に示すように、画像濃度やカブリ抑制ともに安定して良好であり、クリーナーレスプロセスも達成され、優れた画像品質を得た。
[比較例9〜12]
プロセス時間を、50ms、60ms、90ms、110msに改造することを除いては、実施例7と同様な評価を行った。結果は表2に示すように、Ted<tT<1.3×Tedではないため、良好な結果が得られなかった。
【0178】
[実施例10〜12]
感光体としては(感光体の製造例4)で製造した感光体4を用い、現像剤は現像剤1を用い、帯電手段としてスコロトロン帯電装置を用いた画像形成装置(図5)のプロセス時間を、65、75、80msに改造した以外は実施例1と同様に評価を行った。評価結果は表2に示すように、画像濃度やカブリ抑制ともに安定して良好であり、クリーナーレスプロセスも達成され、優れた画像品質を得た。
[比較例13〜16]
プロセス時間を、55ms、60ms、90ms、100msに改造することを除いては、実施例10と同様な評価を行った。結果は表2に示すように、Ted<tT<1.3×Tedではないため、良好な結果が得られなかった。
【0179】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】プロセス時間に対する感光体露光部電位の変化を示した図である。
【図2】プロセス時間を判定するための一方法を示した図である。
【図3】本発明の画像形成装置の一実施形態例の模式断面図である。
【図4】本発明の画像形成装置の一実施形態例の模式断面図である。
【図5】本発明のプロセスカートリッジの一実施形態例の模式断面図である。
【図6】本発明における感光体の一実施形態例の模式断面図である。
【図7】本発明における感光体の一実施形態例の模式断面図である。
【図8】実施例で用いたチタニルフタロシアニンのXDスペクトル図である。
【符号の説明】
【0181】
1,1a〜1d…感光体
2,2a〜2d…帯電装置(帯電器)
3,3a〜3d…露光装置(レーザビーム走査装置)
3L…露光(書き込み)光
4,4a〜4d…現像装置
5…中間転写ベルト
6,6a〜6d,7…転写装置(転写器)
8…定着器
9…除電器
10,11,12…ローラ
14…感光体の表面電位を測定する(読み取る)ための電位計(電位プローブ)
P…用紙(被転写媒体)
100…モノクローム画像形成装置
200…フルカラー画像形成装置
300…ハウジング
400…プロセスカートリッジ
401…除電露光のための開口部
402…露光のための開口部
500…導電性基体
501…下引き層
502…電荷輸送層
503…電荷発生層
504…感光層
505…保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、像担持体、該像担持体を帯電する帯電手段、1200dpi以上の解像度で該像担持体の帯電面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段、該静電潜像をトナー画像として現像する現像手段を有する、正規現像方式の画像形成装置において、
該像担持体上の任意の位置が、該静電潜像形成手段に正対する位置から該現像手段に正対する位置まで移動する時間をTed(ms)、該像担持体のトランジットタイムをtT(ms)とすると、Tedが下記式(A)を満足することを特徴とする画像形成装置。
ed<tT<1.3×Ted…式(A)
【請求項2】
少なくとも、像担持体、帯電手段、静電潜像形成手段、現像手段を有する画像形成要素を複数個用いることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記静電潜像形成手段が、複数のレーザ光束を前記像担持体上に結像させる走査光学手段を有するマルチビーム走査光学系であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記マルチビーム走査光学系が有する光源が、3つ以上の面発光レーザアレイであることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記マルチビーム走査光学系が有する光源が、3つ以上の面発光レーザアレイであって、複数の発光点が2次元的に配置されている面発光レーザアレイであることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記像担持体が、少なくとも、電荷発生物質を含有する感光層を有し、該電荷発生物質は、下記一般式(1)で示されるアゾ化合物を含有することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【化1】

(一般式(1)中、X及びYは、それぞれ独立に、下記一般式(2)
【化2】

(一般式(2)中、R3は、水素原子、アリール基又はアルキル基であり、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、ジアルキルアミノ基、ニトロ基、ハロゲン基、又はハロゲン化アルキル基であり、Zは、置換基を有してもよい炭素環式芳香族又は置換基を有してもよい複素環式芳香族を構成するのに必要な原子団である。)
で示されるカプラー残基であり、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基又はハロゲン基である。)
【請求項7】
前記アゾ化合物のX及びYが、互いに異なるカプラー残基であることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記像担持体が、少なくとも電荷発生物質を含有する感光層を有し、該電荷発生物質が、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)9.4゜、9.6゜及び24.0゜の位置に強い回折ピークを有し、27.2°の位置の回折ピークが最も強く、最低角度の回折ピークとして7.3°の位置に回折ピークを有し、該7.3°の回折ピーク、該9.4°の回折ピーク間に回折ピークを有さず、26.3゜の位置に回折ピークを有さないチタニルフタロシアニンの結晶であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記像担持体が、最外層に保護層を有することを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記保護層が、1010Ω・cm以上の比抵抗を有する無機顔料及び金属酸化物から選択される少なくとも1種類以上含有することを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記保護層が、少なくとも電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性化合物と電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とを硬化することにより形成されることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物は、下記一般式(3)及び(4)で示される化合物の一種以上であることを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【化3】

【化4】

(一般式(3)及び(4)中、R1は、水素原子、ハロゲン基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、一般式
−COOR2
(式中、R2は、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアラルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基である。)
で示される官能基、一般式
−COY
(式中、Yは、ハロゲン基である。)
で示される官能基又は一般式
−CONR34
(式中、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアラルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基である。)
で示される官能基であり、
Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、置換又は無置換のアリーレン基であり、Ar3及びAr4は、それぞれ独立に、置換又は無置換のアリール基であり、Xは、単結合、置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のシクロアルキレン基、置換若しくは無置換のオキシアルキレン基、酸素原子、硫黄原子又はビニレン基であり、Z1は、置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のオキシアルキレン基又は一般式
−COOR6
(式中、R6は、アルキレン基である。)
で示される官能基であり、mは、それぞれ独立に、0以上3以下の整数である。)
【請求項13】
前記電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物は、下記一般式(5)で示される化合物の一種以上であることを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【化5】

(一般式(5)中、o、p及びqは、それぞれ独立に、0又は1であり、R2は、水素原子又はメチル基であり、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数が1以上6以下のアルキル基であり、s及びtは、それぞれ独立に、0以上3以下の整数であり、Z2は、単結合、メチレン基、エチレン基又は構造式
【化6】

で示される官能基である。)
【請求項14】
前記保護層の硬化手段が、加熱又は光エネルギー照射手段であることを特徴とする請求項11乃至13の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
少なくとも、像担持体、帯電手段、静電潜像形成手段、現像手段を有する画像形成要素が、像担持体クリーニング装置を有さないクリーナーレス画像形成要素であることを特徴とする請求項1乃至14の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項16】
像担持体、帯電手段及び現像手段からなる群より選ばれた少なくとも一つの手段を一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジであって、請求項1乃至15の何れか1項に記載の画像形成装置に用いることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項17】
少なくとも、像担持体、該像担持体を帯電する帯電工程、1200dpi以上の解像度で該像担持体の帯電面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程、該静電潜像をトナー画像として現像する現像工程を有する、正規現像方式の画像形成方法において、
該像担持体上の任意の位置が、該静電潜像形成手段に正対する位置から該現像手段に正対する位置まで移動する時間をTed(ms)、該像担持体のトランジットタイムをtT(ms)とすると、Tedが下記式(A)を満足することを特徴とする画像形成方法。
ed<tT<1.3×Ted…式(A)
【請求項18】
少なくとも、像担持体、帯電工程、静電潜像形成工程、現像工程を有する画像形成要素を複数個用いることを特徴とする請求項17に記載の画像形成方法。
【請求項19】
前記静電潜像形成工程が、複数のレーザ光束を前記像担持体上に結像させる走査光学工程を有するマルチビーム走査光学系であることを特徴とする請求項17又は18に記載の画像形成方法。
【請求項20】
前記マルチビーム走査光学系が有する光源が、3つ以上の面発光レーザアレイであることを特徴とする請求項19に記載の画像形成方法。
【請求項21】
前記マルチビーム走査光学系が有する光源が、3つ以上の面発光レーザアレイであって、複数の発光点が2次元的に配置されている面発光レーザアレイであることを特徴とする請求項20に記載の画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−3157(P2009−3157A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163584(P2007−163584)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】