説明

画像形成装置および画像形成方法、並びにプロセスカートリッジ

【課題】感光体に金属石鹸を塗布する際の金属石鹸の塗布量を安定させ、画像品質や信頼性品質に優れる画像形成装置及びプロセスカートリッジ並びに画像形成方法を提供する事。
【解決手段】感光体1と、帯電手段2と、露光手段と、トナーで現像する現像手段4と、転写手段5,6と、前記感光体1上に残留したトナーをクリーニングするクリーニング手段と、前記感光体1表面に滑剤12を供給する滑剤供給手段11とを備え、感光体1は、導電性支持体、電荷発生層、電荷輸送層、及び特定のラジカル重合性モノマーと特定のラジカル重合性化合物とが硬化されてなる架橋型電荷輸送層を有し、前記クリーニング手段は、1つは不織布10を有する複数のクリーニング部材を具備し、該不織布10は、前記複数のクリーニング部材の中で最も上流に配置されず、且つ前記感光体1に当接配置され、前記滑剤供給手段11は、前記不織布10より下流に配置されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属石鹸を含む滑剤を感光体に供給しながら画像形成を行う画像形成装置、及び該画像形成装置に対して着脱自在に備えられるプロセスカートリッジ並びに画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンター等に広く使用されている電子写真方法に用いられる電子写真感光体(以下、単に感光体と言うことがある)としては、安価、大量生産性、無公害性等の利点から、有機系の感光材料が汎用されてきている。しかしながら、有機感光体は無機感光体と比較して耐摩耗性が低く、耐久性の点で劣っていた。
さらに近年では、電子写真システムのフルカラー化、高速化が望まれるようになり、各色毎に感光体を備えたタンデム方式のフルカラー画像形成装置が実用化されている。このタンデム方式の画像形成装置を小型化するには感光体の小径化が必須であるが、小径化に伴って感光体の単位長さあたりの印刷枚数が増加するため、感光体の耐摩耗性を主とする機械的耐久性の向上がさらに強く要望されるようになってきた。
【0003】
有機感光体の耐摩耗性を向上させる方法として、金属あるいは金属酸化物からなるフィラーを含有する保護層を設けるものが、特許文献1(特開平1−170951号公報)に開示されている。
さらに、感光体表面に保護層を設けて感光体そのものの耐摩耗性を向上させる以外に、潤滑剤により感光体の表面エネルギーを低下させる方法が知られている。感光体への潤滑剤の供給方法としては、ブラシなどの塗布手段により固形の潤滑剤を塗布する(特許文献2:特開2000−162881号公報)、トナーに滑剤を外添し感光体に供給する(特許文献3:特許第2859646号公報)等の各種の方法が知られている。また、潤滑剤により感光体の表面エネルギーを低下させることで、感光体の摩耗を低減させるだけでなく、転写率を向上させたり、転写中抜け等の異常画像の発生を防止することもできる。
【0004】
しかしながら、これら従来技術においても、充分な感光体の耐久性(耐摩耗性)を有しておらず、近年更に高まる高画質化・高信頼性(安定化)の要求を充分に満たすには至っていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
滑剤塗布機構により感光体表面に金属石鹸を塗布することで、感光体の表面エネルギーを低減し、さらにはコロナ帯電等の強烈な帯電負荷から感光体を保護し、摩耗を低減することは可能である。
ところが、金属石鹸を塗布する画像形成装置には以下の解決しなければならない不具合点のあることが判明した。
金属石鹸の塗布量は画像形成装置の使用初期から寿命時まで一定であることが望まれる。しかしながら、作像する画像面積率や使用環境の変化により、金属石鹸の塗布量や消費量は変動を来たし、転写時に生じる転写中抜けや転写率などの画像品質、感光体摩耗量や金属石鹸の交換頻度などの信頼性品質が低下するなどの不具合が発生することがあった。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、感光体に金属石鹸を塗布する際の金属石鹸の塗布量を長期に渡り安定させると共に、従来よりも飛躍的に感光体の耐久性(耐摩耗性)を向上させることができ、画像品質や信頼性品質を飛躍的に向上させた画像形成装置および画像形成方法、並びに、プロセスカートリッジを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは種々検討した結果、クリーニング手段でクリーニングしきれないトナーやトナー外添剤があると、それらは金属石鹸(滑剤)を供給する領域に進入し、金属石鹸の塗布量に大きな影響を与える。更に詳しく述べると、作像する画像面積率が変化した場合や画像形成装置の環境が変動した場合には、金属石鹸を供給(塗布)する領域の前のクリーニング手段の性能が変動し、クリーニング手段でとりきれないすり抜けトナー量やすり抜け外添剤量が変動する。これらは次に金属石鹸を供給する領域に進入するため、すり抜けトナー量が変動すると金属石鹸から供給できる金属石鹸量も変動する。
このすり抜けトナー量の変動を少なくすることが金属石鹸を含有する滑剤の供給手段からの供給量の変動を少なくすることに対して大きく効果があり、本発明における不織布と感光体との組合せによりその効果を著しく発揮できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
しかして、上記課題を解決するために本発明に係る画像形成装置およびプロセスカートリッジ、並びに画像形成方法は、具体的には下記記載の技術的特徴を有する。
【0009】
即ち、本発明に係る画像形成装置は、所定の回転方向に回転する感光体と、該感光体を帯電させる帯電手段と、前記感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を前記感光体から転写材に転写する転写手段と、該転写手段により前記トナー像が前記感光体に転写された後の当該感光体上に残留したトナーをクリーニングするクリーニング手段と、前記感光体表面に金属石鹸を含有する滑剤を供給する滑剤供給手段と、を備え、前記感光体は、導電性支持体と、該導電性支持体上に順次積層されてなる電荷発生層、電荷輸送層及び架橋型電荷輸送層と、を有し、前記架橋型電荷輸送層は、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物と、を硬化することにより形成されてなり、前記クリーニング手段は、複数のクリーニング部材を具備し、前記複数のクリーニング部材の中の少なくとも1は、不織布を有し、該不織布は、前記複数のクリーニング部材の中で前記感光体の所定の回転方向に対して最も上流に配置されず、且つ、前記感光体に当接配置されてなり、前記滑剤供給手段は、前記感光体の所定の回転方向に対して前記不織布より下流に配置されてなることを特徴とする。但し、前記感光体の所定の回転方向において、前記帯電手段の配置位置が最も上流であり、当該感光体が最も上流から1周分回転する直前の位置が最も下流である。
【0010】
また、本発明に係るプロセスカートリッジは、上記画像形成装置に対して着脱自在に備えられるプロセスカートリッジであって、少なくとも感光体と、前記感光体に当接配置されてなる不織布を有するクリーニング部材と、を備えることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明に係る画像形成方法は、所定の回転方向に回転する感光体を帯電させる帯電工程と、前記感光体を露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像工程と、前記トナー像を前記感光体から転写材に転写する転写工程と、該転写工程により前記トナー像が前記感光体に転写された後の当該感光体上に残留したトナーをクリーニングするクリーニング工程と、前記感光体表面に金属石鹸を含有する滑剤を供給する滑剤供給工程と、を備え、前記感光体は、導電性支持体と、該導電性支持体上に順次積層されてなる電荷発生層、電荷輸送層及び架橋型電荷輸送層と、を有し、前記架橋型電荷輸送層は、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物と、を硬化することにより形成されてなり、前記クリーニング工程は、複数のクリーニング部材で前記感光体上に残留したトナーをクリーニングし、前記複数のクリーニング部材の中の少なくとも1は、不織布を有し、該不織布は、前記複数のクリーニング部材の中で前記感光体の所定の回転方向に対して最も上流に配置されず、且つ、前記感光体に当接配置されてなり、前記滑剤供給工程は、前記感光体の所定の回転方向に対して前記不織布より下流に配置されてなることを特徴とする。但し、前記感光体の所定の回転方向において、前記帯電手段の配置位置が最も上流であり、当該感光体が最も上流から1周分回転する直前の位置が最も下流である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、安定して滑剤が感光体に供給され、更に、感光体に当接配置させている不繊布自体による感光体の摩耗自体も長期に渡り抑制することができ、転写中抜けや転写率などの画像品質、感光体摩耗量や金属石鹸の交換頻度などの信頼性品質が飛躍的に向上した画像形成装置および画像形成方法、並びに、プロセスカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る画像形成装置の第1の実施の形態における構成を示す断面模式図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の第2の実施の形態における構成を示す断面模式図である。
【図3】本発明に係る画像形成装置の第3の実施の形態における構成を示す断面模式図である。
【図4】本発明に係る画像形成装置の第4の実施の形態における構成を示す断面模式図である。
【図5】(a)不織布ローラ10の平面図である。(b)図5(a)に示すIIb−IIb断面線における不織布ローラ10の拡大断面図である。
【図6】本発明に用いられる感光体の一実施の形態における構成を示す断面模式図である。
【図7】本発明に係るプロセスカートリッジの一実施の形態における構成を示す断面模式図である。
【図8】実施例で作像した画像のパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る画像形成装置は、所定の回転方向に回転する感光体1と、該感光体1を帯電させる帯電手段2と、前記感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する現像手段4と、前記トナー像を前記感光体1から転写材に転写する転写手段5,6と、該転写手段5,6により前記トナー像が前記感光体1に転写された後の当該感光体1上に残留したトナーをクリーニングするクリーニング手段9,10と、前記感光体1表面に金属石鹸を含有する滑剤12を供給する滑剤供給手段11と、を備え、前記感光体は、導電性支持体と、該導電性支持体上に順次積層されてなる電荷発生層、電荷輸送層及び架橋型電荷輸送層と、を有し、前記架橋型電荷輸送層は、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物と、を硬化することにより形成されてなり、前記クリーニング手段9,10は、複数のクリーニング部材を具備し、前記複数のクリーニング部材の中の少なくとも1は、不織布10を有し、該不織布10は、前記複数のクリーニング部材の中で前記感光体1の所定の回転方向に対して最も上流に配置されず、且つ、前記感光体1に当接配置されてなり、前記滑剤供給手段11は、前記感光体1の所定の回転方向に対して前記不織布10より下流に配置されてなることを特徴とする。但し、前記感光体1の所定の回転方向において、前記帯電手段2の配置位置が最も上流であり、当該感光体1が最も上流から1周分回転する直前の位置が最も下流である。
【0015】
また、本発明に係る画像形成方法は、所定の回転方向に回転する感光体を帯電させる帯電工程と、前記感光体を露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する現像工程と、前記トナー像を前記感光体から転写材に転写する転写工程と、該転写工程により前記トナー像が前記感光体に転写された後の当該感光体上に残留したトナーをクリーニングするクリーニング工程と、前記感光体表面に金属石鹸を含有する滑剤を供給する滑剤供給工程と、を備え、前記感光体は、導電性支持体と、該導電性支持体上に順次積層されてなる電荷発生層、電荷輸送層及び架橋型電荷輸送層と、を有し、前記架橋型電荷輸送層は、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物と、を硬化することにより形成されてなり、前記クリーニング工程は、複数のクリーニング部材で前記感光体上に残留したトナーをクリーニングし、前記複数のクリーニング部材の中の少なくとも1は、不織布を有し、該不織布は、前記複数のクリーニング部材の中で前記感光体の所定の回転方向に対して最も上流に配置されず、且つ、前記感光体に当接配置されてなり、前記滑剤供給工程は、前記感光体の所定の回転方向に対して前記不織布より下流に配置されてなることを特徴とする。但し、前記感光体の所定の回転方向において、前記帯電手段の配置位置が最も上流であり、当該感光体が最も上流から1周分回転する直前の位置が最も下流である。
【0016】
次に、本発明に係る画像形成装置およびプロセスカートリッジ、並びに画像形成方法についてさらに詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であるから技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は以下の説明において本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0017】
<画像形成装置、画像形成方法>
図1は本発明に係る画像形成装置の第1の実施の形態における構成を示す断面模式図である。
作像プロセスとしてはまず、所定の回転方向(図1中反時計回りの矢印方向)に回転する感光体1は帯電手段である帯電ローラ2により帯電される(帯電工程)。
次いで、不図示の露光手段より発せられる書き込み光3により感光体1が露光されて静電潜像が形成され(露光工程)、現像手段である現像ローラ4によって静電潜像をトナー像として現像する(現像工程)。
感光体1上のトナー像は転写手段である転写ローラ5によって中間転写体6上に転写され、さらに図示しない転写紙(転写材)上に再度転写される(転写工程)。
トナー像の載った転写紙は図示していない定着部へ搬送され、トナー像は転写紙上に固定され(定着工程)、画像が得られる。
【0018】
感光体1上から中間転写体6へ転写されなかった残留トナーは複数のクリーニング部材の中の1であるクリーニングブレード9で清掃される。次いで、複数のクリーニング部材の中の他の1である不織布10が感光体に当接配置されているので、クリーニングブレード9で清掃できなかった残留トナーやトナー外添剤が不織布10によってさらに清掃される(以上、クリーニング工程)。なお、図1に示す例では、クリーニングブレード9と不織布10とからなる2のクリーニング部材によりクリーニング手段が構成されている。
このようにして清掃された感光体1表面に、金属石鹸を含有する滑剤を保持した滑剤供給手段である滑剤塗布ブラシ11が感光体1に接触することにより、滑剤12を摺擦して当該感光体1表面には滑剤が供給される(滑剤供給工程)。
最後に感光体の残留電荷を除電手段であるQLランプ13の照射により取り除き(除電工程)、次の作像に備える。
【0019】
この画像形成プロセスにおいて滑剤は、感光体のトナークリーニング性を向上させる潤滑機能、帯電による負荷から感光体を保護する保護機能、感光体からのトナー転写性を向上させるためのトナー離型機能を併せ持つ物である。このため、滑剤は近年の高画質化の潮流の中にあって画像形成の際に非常に重要な役割を果たしている。
【0020】
図1に示す本発明に係る画像形成装置の構成においては、クリーニング工程の最後に不織布10が当接配置されているので、クリーニングブレード9をすり抜けてきたトナーやトナー外添剤を不織布10が取り除くことが出来る構成となっている。その結果、滑剤塗布ブラシ11はトナーやトナー外添剤で汚染されることが抑制され、滑剤12の消費量、感光体1への滑剤供給量、滑剤12の感光体1上での塗布状態や被覆率を安定させることが出来る構成となっている。作像したい原稿が著しく高画像濃度である、或いは低画像濃度であるなど、原稿の画像濃度が異なる場合や、画像形成装置の使用環境が低温でクリーニングブレードのゴム特性が変化する環境などで特にその効果を発揮することが出来る。
【0021】
なお、本発明における画像形成プロセスは、帯電、露光、現像、転写、クリーニング、滑剤塗布、必要に応じて除電、の順で、当該画像形成プロセスが流れることが好ましい。従って、帯電ローラ2の配置位置が画像形成プロセスにおける最上流であり、画像形成プロセスにより感光体1が1周回転した際に、次の画像形成プロセスの最上流となる。即ち、帯電ローラ2の配置位置が最も上流であり、この最上流の位置から感光体1の回転方向に1周回転した位置の直前が最も下流である。
【0022】
図2は本発明に係る画像形成装置の第2の実施の形態における構成を示す断面模式図である。
クリーニング手段がクリーニングブラシ8、クリーニングブレード9、不織布ローラ10の3部材の構成となっている。
不織布ローラ10は、クリーニング手段の最終位置で且つ滑剤塗布ブラシ11の直前に配置されている。図2に示す画像形成装置の例において、不織布はローラ形態で感光体1に当接している。不織布がローラ形態である場合、不織布の感光体との接触可能な面積を板状形態よりも大きくすることが出来るため、そのクリーニング性能や耐久性能を向上させることが出来る。
不織布ローラ10は、φ5〜30mmの円柱状金属のシャフトの外周面を1〜30mm厚みの不織布で被覆したものが、感光体への押圧力やニップを調整することが容易になり、好適である。
【0023】
図3は本発明に係る画像形成装置の第3の実施の形態における構成を示す断面模式図である。
クリーニング手段はクリーニングブラシ8、クリーニングブレード9、不織布ベルト10の3部材による構成となっている。また、図3に示す画像形成装置の構成では、クリーニング手段を補助する目的で、PCLランプによりクリーニング前露光を行う。
不織布ベルト10は、クリーニング手段の最終位置で且つ滑剤塗布ローラ11の直前に配置されている。不織布ベルト10の構成では感光体1と接触させることが出来る面積が拡大でき、図2のローラ形態よりもクリーニング性能や耐久性能を向上させやすい。
【0024】
図2に示す不織布ローラ及び図3に示す不織布ベルトは回転体であり、その回転方向は感光体1に対して順方向であっても、感光体に対して逆方向であってもかまわないが、順方向の場合は感光体と周速差を設けることが好ましい。
【0025】
図4は本発明に係る画像形成装置の第4の実施の形態における構成を示す断面模式図である。
クリーニング手段はクリーニングブラシ8、クリーニングブレード9、不織布ブラシ10a、不織布ブラシ10bの4部材による構成となっている。
不織布ブラシ10bは、クリーニング手段の最終位置で且つ滑剤供給ローラ11の直前に配置されている。
【0026】
不織布ブラシが2段構成となっている場合、不織布ブラシ10aと不織布ブラシ10bの不織布の繊維材質は異なっていることが好ましい。例えば、感光体の最表層の結着樹脂がポリカーボネート樹脂であるとすると、不織布ブラシ10aにはポリメタクリル酸メチル、羊毛、ナイロンなどのポリカーボネートよりも帯電列が+側の繊維を用い、不織布ブラシ10bにはポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、テフロン(登録商標)などのポリカーボネートよりも帯電列が−側の繊維を用いるとよい。このようにすれば残留トナー、残留外添剤の極性が異なっても、良好なクリーニング性能が得られる。
【0027】
〔不織布〕
次に、本発明に係わる不織布について説明する。
本発明に係わる不織布は、繊維シート、ウェブ又はバットであり、繊維が一方向またはランダムに配向してなり、交流、及び/又は融着、及び/又は接着によって繊維間が結合されたものである。なお、本発明においては縮絨(しゅくじゅう)フェルトも不織布としてみなす。
【0028】
不織布は、ポーラス(多孔質)構造であり、通気性・ろ過性・保温性などの基本的な特徴がある。加えてこの不織布は、目的や用途に合わせてこの特徴を引き出して機能を高めたり、多様な原料や製法の組み合わせによって布状・レザー状・綿状・紙状などさまざまな形状にしたり、しなやかなものから強靭なものまでつくることができる物である。つまり、必要に応じて機能と形状を自由自在に設計できることが最大の特徴である。
【0029】
本発明に係わる不織布に用いられる繊維材料としては綿、羊毛、麻、ケナフ、バンブー、バナナ、パルプ、絹、などの天然繊維、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリル繊維、ビニロン、アラミド繊維などの化学繊維、ガラス繊維などが使用できる。
天然繊維、合成繊維をはじめガラス・金属・セラミックス・パルプ・炭素繊維など、およそ繊維と呼ばれるもののほとんどを原料にすることが可能で、一般的には、ポリエステルなどの合成繊維が多く使用される。
本発明においても、様々な繊維が使用可能である。
【0030】
さらに前述したように、感光体上に残留しているトナーや外添剤の帯電列に対して逆極性の帯電列から繊維を選定することが好ましい。
またさらに、不織布が2段構成となっていて、感光体の最表層の結着樹脂がポリカーボネート樹脂或いはそれに類似した樹脂が用いられる場合、一方の不織布にはポリメタクリル酸メチル、羊毛、ナイロンなどのポリカーボネートよりも帯電列が+側の繊維を用いたり、他方の不織布にはポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、テフロン(登録商標)などのポリカーボネートよりも帯電列が−側の繊維を用いたりすることが出来る。このようにすれば残留トナー、残留外添剤の極性が異なっても、良好なクリーニング性能が得られる。
【0031】
不織布の製造工程には、(1)フリース形成と(2)繊維間結合の2工程がある。まず、フリースとよばれる繊維の集積層を形成し、次に繊維同士を結合させる。
【0032】
・(1)フリース形成
フリース形成には乾式法、湿式法、スパンボンド法の3つの形成方法がある。
乾式法は短繊維(15〜100mm)を、カードと呼ばれる機械やエアレイと呼ばれる空気流で一定方向またはランダムに並べて形成する。
湿式法は紙を作る場合と同じように、ガラス繊維やパルプ原料のようなごく短い繊維(6mm以下)を水中に分散し網状のネット上に漉き上げてフリースを形成する。この方式で形成すると厚さが均一で、目付け(単位面積当たりの質量)を自由に変えることが可能となる。
スパンボンド法は溶かした原料樹脂を直接ノズルの先から溶出・紡糸させ、連続した長い繊維でフリースを形成する方法である。広幅、高速生産などにも対応可能な特徴がある。
【0033】
・(2)繊維間結合
繊維間結合にはケミカルボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、水流絡合法の4つの方法がある。
ケミカルボンド法はエマルジョン系の接着樹脂を含浸あるいはスプレー等の方法でフリースに付着させ、加熱・乾燥させて繊維の交点を接着する方法であり、柔軟性とドレープ性に富む特徴がある。
サーマルボンド法は低融点の熱融着繊維を混合したフリースを、熱ロールの間を通して熱圧着する、または熱風を当て繊維同士を接着させる方法であり、接着剤を使用しないため、繊維の特徴が結合後も維持されやすい特徴がある。
ニードルパンチ法はフリースを、高速で上下するニードル(針)で繰り返し突き刺し、ニードルに刻まれたバーブという突起により繊維を絡ませる方法であり、バルク性に富み繊維間の剥離がない特徴がある。
水流絡合法はフリースに高圧の水流を柱状に噴射して繊維を絡ませる方法であり、柔軟でドレープ性に富み、毛羽立ちしない特徴がある。
【0034】
本発明においては、不織布の厚さの均一性、繊維単体の特徴が活かせることから、フリース形成には湿式法、繊維間結合にはサーマルボンド法が適している。
【0035】
本発明に係わる不織布に用いられる繊維の繊度は、以下の手順で求められる。
先ず、繊維フリースの任意部位10箇所からサンプリングした試験片の切断面が観察できるように蒸着して、走査型電子顕微鏡にて繊維軸を横切る方向にほぼ直角に切断されている任意の繊維10本について写真撮影する。次いで、各繊維の断面から直径を求め、それらの値を平均して繊維の直径を算出する。この直径と繊維の固形密度を用いて長さ10000mでの重量を算出し、繊度(dtex:デシテックス)を求めことが出来る。
【0036】
繊度は0.1〜20dtex(比重1.1g/cmの繊維の場合で繊維径3〜50μm)が好適である。繊度が0.1dtex未満では繊維の耐久性が低く、繰り返し使用によって不織布の摩耗が進行しやすく、不織布自身が発塵し画像形成装置にとって好ましくない。また、繊度が20dtexを超えると残留トナーや特にトナーに外添している10nm程度のシリカ等の外添剤の清掃性が低下し、本発明の効果が低くなる。
【0037】
図5を参照して、クリーニング部材としての不織布ローラ10について、より具体的に説明する。
図5(a)は不織布ローラ10の平面図であり、図5(b)は図5(a)に示すIIb−IIb断面線における不織布ローラ10の拡大断面図である。
【0038】
図5(a)に示すように、不織布ローラ10は、芯材110と、その芯材110を被覆する被覆層120とによって構成されている。また、この被覆層120は、図5(b)に示すように、被覆層120の表面を構成する表面層120aと、その表面層120aと芯材110との間に形成されている下地層120bとによって構成されている。
尚、表面層120aと下地層120bとの間、および、芯材110と下地層120bとの間には、図示しない接着層が備えられている。また、芯材110は円柱状金属シャフトである。
【0039】
表面層120aは、感光体1の表面に接触し、感光体1の表面に付着している残留トナーや、トナーの流動性及び帯電性を制御する外添剤や、紙粉等の微粒子を掻き取り、捕獲するものであり、上述した不織布よって構成されている。
【0040】
また、表面層120aは、シート状の織布を下地層120bに巻回して構成されているので、表面層120aの表面には継ぎ目T1が形成されている。
継ぎ目が感光体に対して同時に当接されることが問題である場合は、不織布の裁断を細長い形態として、下地層120bにらせん状に巻いて、継ぎ目もらせん状になるように形成することも出来る。図5に示す例では、継ぎ目T1は直線状に形成されている。
【0041】
下地層120bは必要に応じ形成される物で、下地層の目的は、感光体に対する押圧力、ニップ、食い込み量などの調整が必要な場合に形成される。
図5に示す例では、下地層はクッション層として作用し、柔軟性を有するウレタン製である。具体的には、ポリイソシアネートとポリオール(ポリエーテル型またはポリエステル型のポリオール)とを反応させ、重合体生成反応と発泡反応とを同時に開始させたものであり、ポリエーテル系とポリエステル系とのいずれをも使用することができる。
尚、ポリイソシアネート、ポリオールとしては、その種類には特に制限されない。例えば、ポリイソシアネートとしては、TDI(トルエンジイソシアネート)、MDI(ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート)、TDIとMDIとの混合物等を使用できる。ポリオールとしては、アルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオール、カルボン酸とグリコール等を重縮合して得られたポリエステルポリオール、開環重合により得られる付加重合型ポリエステルポリオール等を使用できる。
【0042】
〔金属石鹸〕
次に金属石鹸を含む滑剤を供給する工程について説明する。
本発明に係る画像形成方法では、滑剤塗布工程を備えている。図1に示すように、滑剤塗布ブラシ11は、感光体1と滑剤12に同時に接触してなり、感光体1回転時には感光体1と逆回転もしくは周速差をもって順方向に回転する。このようにすると、滑剤塗布ブラシ11によって滑剤12は掻き取られ、滑剤塗布ブラシ11上に保持され、次いで感光体1に滑剤12が供給される。滑剤12は、滑剤塗布ブラシ11に対して均一に、且つ、繰り返し使用によっても同じ圧力で当接されるべきものであるので、図1には記していないが、滑剤12には滑剤塗布ブラシ11と対向する側に板バネなどの押圧機構を有することが好ましい。
【0043】
本発明に係わる金属石鹸は、脂肪酸とアルカリ金属以外の金属との金属塩を指す。金属石鹸の性質は、構成する脂肪酸と金属の両者で決まり、脂肪酸分子間の疎水結合に関連する物性と金属間結合に関連する物性と化学的性質を併せ持っている。
本発明における金属石鹸の目的は、感光体への被覆による保護と感光体表面の低表面エネルギー化による離型性向上であるから、金属石鹸の脂肪酸の炭素数はC18以上の長鎖の物が好適であり、また、金属についてはBa、Al、Zn等の接触角が高い金属塩が好ましい。
【0044】
滑剤の塗布工程は以上の構成を採っているので、滑剤塗布ブラシは常時同じ状態であることが好ましい。即ち、滑剤の塗布領域(滑剤塗布ブラシ)に清掃しきれないトナーやトナー外添剤が混入することは、金属石鹸の掻き取り力や塗布能力に影響を与えるため、不織布が滑剤塗布ブラシの直前に存在する構成が特に有効である。
【0045】
〔感光体〕
次に、本発明の画像形成装置で用いられる感光体について述べる。
感光体は、導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層及び架橋型電荷輸送層を順次積層した構成であり、放電により帯電される。また、架橋型電荷輸送層が、光重合開始剤を含み、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を光照射により硬化することにより形成されることが好ましい。
本発明に用いられる架橋型電荷輸送層塗布液の構成材料について説明する。
【0046】
《電荷輸送性を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー》
本発明に用いられる電荷輸送性を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとは、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しておらず、且つラジカル重合性官能基を3個以上有するモノマーを指す。このラジカル重合性官能基とは、炭素−炭素2重結合を有し、ラジカル重合可能な基であれば何れでもよい。
これらラジカル重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基等が挙げられる。
【0047】
(1)1−置換エチレン官能基としては、例えば以下の式で表される官能基が挙げられる。
【0048】
【化1】

【0049】
(ただし、式中、Xは、置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CON(R10)−基(R10は、水素、メチル基、エチル基等のアルキル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を表わす。)、または−S−基を表わす。)
【0050】
これらの置換基を具体的に例示すると、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオエーテル基等が挙げられる。
【0051】
(2)1,1−置換エチレン官能基としては、例えば以下の式で表される官能基が挙げられる。
【0052】
【化2】

【0053】
(ただし、式中、Yは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基あるいはエトキシ基等のアルコキシ基、−COOR11基(R11は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、または−CONR1213(R12およびR13は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、ナフチルメチル基、あるいはフェネチル基等のアラルキル基、または置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基を表わし、互いに同一または異なっていてもよい。))、また、Xは上記式(1)のXと同一の置換基または単結合、アルキレン基を表わす。ただし、Y,Xの少なくとも何れか一方がオキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、または芳香族環である。)
【0054】
これらの置換基を具体的に例示すると、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基等が挙げられる。
【0055】
なお、これらX、X、Yについての置換基にさらに置換される置換基としては、例えばハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0056】
電荷輸送性構造を有しない3官能以上の具体的なラジカル重合性モノマーとしては、以下のものが例示されるが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
すなわち、本発明において使用する電荷輸送性を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性(以後EO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変性(以後PO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパンカプロラクトン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、グリセロールエピクロロヒドリン変性(以後ECH変性)トリアクリレート、グリセロールEO変性トリアクリレート、グリセロールPO変性トリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、リン酸EO変性トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられ、これらは、単独又は2種類以上を併用しても差し支えない。
【0057】
《1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物》
本発明における架橋型電荷輸送層に用いられる1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とは、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しており、且つ1個のラジカル重合性官能基を有する化合物を指す。このラジカル重合性官能基としては、上記式(1)又は式(2)で示される官能基が挙げられる。さらに具体的には、先のラジカル重合性モノマーで示したものが挙げられる。
【0058】
本発明における架橋型電荷輸送層は、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を硬化したものであるが、これ以外に塗工時の粘度調整、架橋型電荷輸送層の応力緩和、低表面エネルギー化や摩擦係数低減などの機能付与の目的で1官能及び2官能のラジカル重合性モノマー及びラジカル重合性オリゴマーを併用することができる。これらのラジカル重合性モノマー、オリゴマーとしては、公知のものが利用できる。
【0059】
1官能のラジカルモノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマーなどが挙げられる。
【0060】
2官能のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノールA−EO変性ジアクリレート、ビスフェノールF−EO変性ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。
【0061】
機能性モノマーとしては、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレートなどのフッ素原子を置換したもの、特公平5−60503号公報、特公平6−45770号公報記載のシロキサン繰り返し単位:20〜70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル、ジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチルなどのポリシロキサン基を有するビニルモノマー、アクリレート及びメタクリレートが挙げられる。
【0062】
ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系オリゴマーが挙げられる。但し、1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーやラジカル重合性オリゴマーを多量に含有させると架橋型電荷輸送層の3次元架橋結合密度が実質的に低下し、耐摩耗性の低下を招く。このためこれらのモノマーやオリゴマーの含有量は、3官能以上のラジカル重合性モノマー100重量部に対し50重量部以下、好ましくは30重量部以下に制限される。
【0063】
また、本発明における架橋型電荷輸送層は少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を光照射によって硬化したものであるが、この硬化反応を効率よく進行させるために架橋型電荷輸送層塗布液中に光重合開始剤を含有させる。
【0064】
光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1,2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、などのアセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、などのベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン、などのベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、などのチオキサントン系光重合開始剤、その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物、が挙げられる。また、光重合促進効果を有するものを単独または上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、などが挙げられる。
【0065】
これらの重合開始剤は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性を有する総含有物100重量部に対し、0.5〜40重量部、好ましくは1〜20重量部である。
【0066】
更に、本発明における架橋型電荷輸送層塗工液は必要に応じて各種可塑剤(応力緩和や接着性向上の目的)、レベリング剤、ラジカル反応性を有しない低分子電荷輸送物質などの添加剤が含有できる。これらの添加剤は公知のものが使用可能であり、可塑剤としてはジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものが利用可能で、その使用量は塗工液の総固形分に対し20重量%以下、好ましくは10%以下に抑えられる。また、レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが利用でき、その使用量は塗工液の総固形分に対し3重量%以下が適当である。
【0067】
本発明における架橋型電荷輸送層は、少なくとも上記の電荷輸送構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を含有する塗工液を後に記載の電荷輸送層上に塗布、硬化することにより形成される。かかる塗工液はラジカル重合性モノマーが液体である場合、これに他の成分を溶解して塗布することも可能であるが、必要に応じて溶媒により希釈して塗布される。
【0068】
このとき用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテルなどのエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテートなどのセロソルブ系などが挙げられる。これらの溶媒は単独または2種以上を混合して用いてもよい。溶媒による希釈率は組成物の溶解性、塗工法、目的とする膜厚により変わり、任意である。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができる。
【0069】
本発明においては、かかる架橋型電荷輸送層塗工液を塗布後、外部からエネルギーを与え硬化させ、架橋型電荷輸送層を形成するものであるが、このとき用いられる外部エネルギーとしては光である。
【0070】
光のエネルギーとしては主に紫外光に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプなどのUV照射光源が利用できるが、ラジカル重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。照射光量は50mW/cm以上、1000mW/cm以下が好ましく、50mW/cm未満では硬化反応に時間を要する。1000mW/cmより強いと反応の進行が不均一となり、架橋型電荷輸送層表面に局部的な皺が発生したり、多数の未反応残基、反応停止末端が生ずる。また、急激な架橋により内部応力が大きくなり、クラックや膜剥がれの原因となる。反応速度制御の容易さ、装置の簡便さから光のエネルギーを用いたものが有用である。
【0071】
架橋型電荷輸送層塗工液の組成物としては、前述した電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー及び1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物以外に、ラジカル重合性官能基を有しないバインダー樹脂、酸化防止剤、可塑剤等の添加剤を多量に含有させると、架橋密度の低下、反応により生じた硬化物と上記添加物との相分離が生じ、有機溶剤に対し可溶性となる。具体的には塗工液の総固形分に対し上記総含有量を20重量%以下に抑えることが重要である。また、架橋密度を希薄にさせないために、1官能または2官能のラジカル重合性モノマー、反応性オリゴマー、反応性ポリマーにおいても、総含有量を3官能ラジカル重合性モノマーに対し20重量%以下とすることが望ましい。さらに、2官能以上の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を多量に含有させると、嵩高い構造体が複数の結合により架橋構造中に固定されるため歪みを生じやすく、微小な硬化物の集合体となりやすい。このことが原因で有機溶剤に対し可溶性となることがある。化合物構造によって異なるが、2官能以上の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の含有量は1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物に対し10重量%以下にすることが好ましい。
【0072】
架橋型電荷輸送層塗工液の希釈溶媒に関しては、蒸発速度の遅い溶剤を用いた場合、残留する溶媒が硬化の妨げとなったり、下層成分の混入量を増加させることがあり、不均一硬化や硬化密度低下をもたらす。このため有機溶剤に対し、可溶性となりやすい。具体的には、テトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとメタノール混合溶媒、酢酸エチル、メチルエチルケトン、エチルセロソルブなどが有用であるが、塗工法と合わせて選択される。また、固形分濃度に関しては、同様な理由で低すぎる場合、有機溶剤に対し可溶性となりやすい。逆に膜厚、塗工液粘度の制限から上限濃度の制約をうける。具体的には、10〜50重量%の範囲で用いることが望ましい。
【0073】
架橋型電荷輸送層の塗工方法としては、同様な理由で塗工膜形成時の溶媒含有量、溶媒との接触時間を少なくする方法が好ましく、具体的にはスプレーコート法、塗工液量を規制したリングコート法が好ましい。また、下層成分の混入量を抑えるためには、電荷輸送層として高分子電荷輸送物質を用いること、架橋型電荷輸送層の塗工溶媒に対し不溶性の中間層を設けることも有効である。
【0074】
架橋型電荷輸送層の硬化条件としては、光照射のエネルギーが低いと硬化が完全に終了せず、有機溶剤に対し溶解性があがる。逆に非常に高いエネルギーにより硬化させた場合、硬化反応が不均一となり未架橋部やラジカル停止部の増加や微小な硬化物の集合体となりやすい。このため有機溶剤に対し溶解性となることがある。有機溶剤に対し不溶性化するには、UV光照射による硬化条件としては50〜1000mW/cm、5秒〜5分で且つ温度上昇を50℃以下に制御し、不均一な硬化反応を抑えることが望ましい。
【0075】
以下、本発明に用いられる電子写真感光体をその層構造に従い説明する。
<電子写真感光体の層構造について>
本発明に用いられる電子写真感光体を図面に基づいて説明する。
図6は、本発明に用いられる電子写真感光体を表わす断面図であり、導電性支持体(31)上に、電荷発生機能を有する電荷発生層(35)と、電荷輸送物機能を有する電荷輸送層(37)とさらに架橋型電荷輸送層(39)が積層された積層構造の感光体である。
【0076】
<導電性支持体について>
導電性支持体(31)としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体(31)として用いることができる。
【0077】
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体(31)として用いることができる。
この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、また、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
【0078】
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、ポリテトラフロロエチレン系フッ素樹脂などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体(31)として良好に用いることができる。
【0079】
<感光層について>
(電荷発生層)
電荷発生層(35)は、電荷発生機能を有する電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂を併用することもできる。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
【0080】
無機系材料には、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファス・シリコン等が挙げられる。アモルファス・シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
【0081】
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0082】
電荷発生層(35)に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。また、電荷発生層のバインダー樹脂として上述のバインダー樹脂の他に、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送物質、例えば、アリールアミン骨格やベンジジン骨格やヒドラゾン骨格やカルバゾール骨格やスチルベン骨格やピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂等の高分子材料やポリシラン骨格を有する高分子材料等を用いることができる。
【0083】
また、電荷発生層(35)には低分子電荷輸送物質を含有させることができる。電荷発生層(35)に併用できる低分子電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
電子輸送物質としては、たとえばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
正孔輸送物質としては、以下に表わされる電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。正孔輸送物質としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0084】
電荷発生層(35)を形成する方法には、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。
前者の方法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられ、上述した無機系材料、有機系材料が良好に形成できる。
また、後述のキャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。また、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができる。
以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
【0085】
(電荷輸送層について)
電荷輸送層(37)は電荷輸送機能を有する層で、電荷輸送機能を有する電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層(35)上に塗布、乾燥することにより形成させる。
電荷輸送物質としては、前記電荷発生層(35)で記載した電子輸送物質、正孔輸送物質及び高分子電荷輸送物質を用いることができる。前述したように高分子電荷輸送物質を用いることにより、架橋型電荷輸送層塗工時の下層の溶解性を低減でき、とりわけ有用である。
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
電荷輸送物質の量は結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。但し、高分子電荷輸送物質を用いる場合は、単独でも結着樹脂との併用も可能である。
【0086】
電荷輸送層の塗工に用いられる溶媒としては前記電荷発生層と同様なものが使用できるが、電荷輸送物質及び結着樹脂を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2種以上混合して使用しても良い。また、電荷輸送層の下層部分の形成には電荷発生層(35)と同様な塗工法が可能である。
【0087】
また、必要により可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。
電荷輸送層に併用できる可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂100重量部に対して0〜30重量部程度が適当である。
電荷輸送層に併用できるレベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、結着樹脂100重量部に対して0〜1重量部程度が適当である。
【0088】
電荷輸送層の膜厚は、5〜40μm程度が適当であり、好ましくは10〜30μm程度が適当である。このようにして形成された電荷輸送層上に、前述の架橋型電荷輸送層塗工液を塗布、必要に応じて乾燥後、熱や光照射の外部エネルギーにより硬化反応を開始させ、架橋型電荷輸送層が形成される。
【0089】
<中間層について>
本発明に用いられる感光体においては、電荷輸送層と架橋型電荷輸送層の間に、架橋型電荷輸送層への電荷輸送層成分混入を抑える又は両層間の接着性を改善する目的で中間層を設けることが可能である。このため、中間層としては架橋型電荷輸送層塗工液に対し不溶性または難溶性であるものが適しており、一般にバインダー樹脂を主成分として用いる。これら樹脂としては、ポリアミド、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。中間層の形成法としては、前述のごとく一般に用いられる塗工法が採用される。なお、中間層の厚さは0.05〜2μm程度が適当である。
【0090】
<下引き層について>
本発明に用いられる感光体においては、導電性支持体(31)と感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
【0091】
これらの下引き層は、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の下引き層には、Alを陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO、SnO、TiO、ITO、CeO等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
【0092】
<各層への酸化防止剤の添加について>
また、本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、架橋型電荷輸送層、電荷輸送層、電荷発生層、下引き層、中間層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。
本発明に用いることができる酸化防止剤として、下記のものが挙げられる。
【0093】
(フェノール系化合物)
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類など。
【0094】
(パラフェニレンジアミン類)
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
【0095】
(ハイドロキノン類)
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
【0096】
(有機硫黄化合物類)
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
【0097】
(有機燐化合物類)
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
【0098】
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
本発明における酸化防止剤の添加量は、添加する層の総重量に対して0.01〜10重量%である。
【0099】
<プロセスカートリッジ>
本発明の画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態でそれら装置内に組み込まれ、着脱自在としたものであってもよい。
即ち、本発明に係るが画像形成装置は、少なくとも感光体と、該感光体に当接配置されてなる不織布を有するクリーニング部材と、を備えるプロセスカートリッジを、着脱自在に備える構成としてもよい。このプロセスカートリッジは、この他、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、滑剤供給手段、他のクリーニング部材(クリーニングブレード等)から選ばれる1以上をさらに備えても良い。
プロセスカートリッジの一例を図7に示す。
【0100】
画像形成装置用プロセスカートリッジとは、感光体(101)を内蔵し、他に帯電手段(102)、現像手段(104)、転写手段(106)、クリーニング手段(107)、除電手段(図示せず)の少なくとも一つを具備し、画像形成装置本体に着脱可能とした装置(部品)である。
図7に例示される装置による画像形成プロセスについて示すと、感光体(101)は、矢印方向に回転しながら、帯電手段(102)による帯電、露光手段(103)による露光により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成され、この静電潜像は、現像手段(104)でトナー現像され、該トナー現像は転写手段(106)により、転写体(105)に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の感光体表面は、不織布(図示せず)を有するクリーニング手段(107)によりクリーニングされ、さらに滑剤供給手段(図示せず)により滑剤が感光体に供給され、最後に除電手段(図示せず)により除電されて、再び以上の操作を繰り返すものである。
本発明は、耐摩耗性及び耐傷性が非常に高く、且つクラックや膜剥がれが生じにくい架橋型電荷輸送層を表面に有する積層型感光体と不織布を有するクリーニング手段と、必要に応じて帯電、現像、転写、滑剤供給、除電手段を一体化した画像形成装置用プロセスカートリッジを提供するものである。
【0101】
以上の説明から明らかなように、本発明に用いられる電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンタ、CRTプリンタ、LEDプリンタ、液晶プリンタ及びレーザー製版等の電子写真応用分野にも広く用いることができるものである。
【0102】
本発明においては、その他、トナー、帯電用部材(帯電手段)、現像部材(現像手段)、転写部材(転写手段)、不織布以外のクリーニング部材(クリーニング手段)、除電部材(除電手段)などは従来から公知の技術が利用できる。
【実施例】
【0103】
以下、本発明を実施例及び比較例にて更に詳細に説明する。なお、本発明は、ここに例示されるものに限定されない。実施例中の部は重量部を表わす。
【0104】
〔実施例1〕
繊度2dtex、繊維長51mmのナイロン繊維を湿式法によりフリース形成し、次にサーマルボンド法で繊維間結合を行い、目付け1000g/m、厚さ5mmの不織布を得た。
この不織布を幅10mm、長さ320mmに裁断してクリーニング部材を得た。
【0105】
[感光体a]
φ30mmのアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布、乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、18μmの電荷輸送層を形成した。この電荷輸送層上に下記組成の架橋型電荷輸送層用塗工液をスプレー塗工し、20分自然乾燥した後、メタルハライドランプ:160W/cm、照射距離:120mm、照射強度:500mW/cm、照射時間:60秒の条件で光照射を行ない塗布膜を硬化させた。更に130℃で20分乾燥を加え8.0μmの架橋型電荷輸送層用を設け、感光体aを得た。
【0106】
〔下引き層用塗工液〕
・アルキッド樹脂 6部
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業製)
・メラミン樹脂 4部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業製)
・酸化チタン 40部
・メチルエチルケトン 50部
【0107】
〔電荷発生層用塗工液〕
・下記構造式(I)のビスアゾ顔料 2.5部
・ポリビニルブチラール(XYHL、UCC製) 0.5部
・シクロヘキサノン 200 部
・メチルエチルケトン 80 部
【0108】
【化3】

【0109】
〔電荷輸送層用塗工液〕
・ビスフェノールZポリカーボネート 10部
(パンライトTS−2050、帝人化成製)
・下記構造式(II)の低分子電荷輸送物質(D−1) 7部
・テトラヒドロフラン 100部
・1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 0.2部
(KF50−100CS、信越化学工業製)
【0110】
【化4】

【0111】
〔架橋型電荷輸送層用塗工液〕
・電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 10部
トリメチロールプロパントリアクリレート(KAYARAD TMPTA、日本化薬製)分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基数=99
・1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物 10部
(下記構造式(III))
・光重合開始剤 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
・テトラヒドロフラン 100部
【0112】
【化5】

【0113】
得られた不織布クリーニング部材と感光体aを図1に示す構成の画像形成装置の10不織布と感光体1として組み込み画像形成装置を得た。
【0114】
〔実施例2〕
繊度2dtex、繊維長51mmのナイロン繊維を湿式法によりフリース形成し、次にサーマルボンド法で繊維間結合を行い、目付け500g/m、厚さ2.5mmの不織布を得、この不織布を幅10mm、長さ800mmの長帯状に裁断した。
次にφ6mm、40mm長のステンレス製円筒芯材を準備し、この上に両面接着テープを貼った。
最後に、前述の長帯状の不織布をこの円筒芯材の上に隙間無く螺旋状に巻いて不織布ローラを得た。
得られた不織布ローラと感光体aを図2に示す構成の画像形成装置の不織布ローラ10と感光体1として組み込み画像形成装置を得た。
【0115】
〔実施例3〕
繊度2dtex、繊維長51mmのナイロン繊維を湿式法によりフリース形成し、次にサーマルボンド法で繊維間結合を行い、目付け600g/m、厚さ3mmの不織布を得、この不織布を幅320mm、長さ250mmにシート状に裁断した。
このシート状不織布の320mmの2辺を合わせて編みこみにより接合し、幅320、周長250mmの不織布ベルトを得た。
得られた不織布ベルトと感光体aを図3に示す構成の画像形成装置の不織布ベルト10と感光体1として組み込み画像形成装置を得た。
【0116】
〔実施例4〕
繊度0.05dtex、繊維長51mmのナイロン繊維を湿式法によりフリース形成し、次にサーマルボンド法で繊維間結合を行い、目付け500g/m、厚さ2.5mmの不織布を得、この不織布を幅10mm、長さ800mmの長帯状に裁断した。
次にφ6mm、40mm長のステンレス製円筒芯材を準備し、この上に両面接着テープを貼った。
最後に、前述の長帯状の不織布をこの円筒芯材の上に隙間無く螺旋状に巻いて不織布ローラを得た。
得られた不織布ローラと感光体aを図2に示す構成の画像形成装置の不織布ローラ10と感光体1として組み込み画像形成装置を得た。
【0117】
〔実施例5〕
繊度を0.1dtexに変更した以外は実施例4と同様にして、図2に示す構成の画像形成装置を得た。
【0118】
〔実施例6〕
繊度を5dtexに変更した以外は実施例4と同様にして、図2に示す構成の画像形成装置を得た。
【0119】
〔実施例7〕
繊度を20dtexに変更した以外は実施例4と同様にして、図2に示す構成の画像形成装置を得た。
【0120】
〔実施例8〕
繊度を50dtexに変更した以外は実施例4と同様にして、図2に示す構成の画像形成装置を得た。
【0121】
〔実施例9〕
繊維材質をナイロンからポリエステルに変えた以外は実施例2と同様にして図2に示す構成の画像形成装置を得た。
【0122】
〔実施例10〕
繊度1dtex、繊維長51mmのナイロン繊維を湿式法によりフリース形成し、次にサーマルボンド法で繊維間結合を行い、目付け500g/m、厚さ2.5mmの不織布を得、この不織布を幅10mm、長さ800mmの長帯状に裁断した。
次にφ6mm、40mm長のステンレス製円筒芯材を準備し、この上に両面接着テープを貼った。
最後に、前述の長帯状の不織布をこの円筒芯材の上に隙間無く螺旋状に巻いてナイロン繊維の不織布ローラを得た。
更に、繊度1dtex、繊維長51mmのポリエステル繊維を湿式法によりフリース形成し、次にサーマルボンド法で繊維間結合を行い、目付け500g/m、厚さ2.5mmの不織布を得、この不織布を幅10mm、長さ800mmの長帯状に裁断した。
次にφ6mm、40mm長のステンレス製円筒芯材を準備し、この上に両面接着テープを貼った。
最後に、前述の長帯状の不織布をこの円筒芯材の上に隙間無く螺旋状に巻いてポリエステル繊維の不織布ローラを得た。
得られた不織布ローラと感光体aを図4に示す構成の画像形成装置の不織布ローラ10aとしてナイロン繊維の不織布ローラ、不織布ローラ10bとしてポリエステル繊維の不織布ローラをそれぞれ組み込み図4に示す構成の画像形成装置を得た。
【0123】
〔実施例11〕
繊度1dtex、繊維長51mmのナイロン繊維50%と、繊度1dtex、繊維長51mmのポリエステル繊維50%と、を混合・湿式法によりフリース形成し、次にサーマルボンド法で繊維間結合を行い、目付け500g/m、厚さ2.5mmの不織布を得た。さらに、この不織布を幅10mm、長さ800mmの長帯状に裁断した。
次にφ6mm、40mm長のステンレス製円筒芯材を準備し、この上に両面接着テープを貼った。
最後に、前述の長帯状の不織布をこの円筒芯材の上に隙間無く螺旋状に巻いてナイロン/ポリエステル繊維からなる不織布ローラを得た。
得られた不織布ローラと感光体aを図2に示す構成の画像形成装置の不織布ローラ10と感光体1として組み込み画像形成装置を得た。
【0124】
〔実施例12〕
実施例11のナイロン繊維を繊度約10の羊毛に、ポリエステル繊維を繊度5、繊維長5.1mmの塩化ビニルに変え、目付け量320g/m.厚さ3mmに変えた他は実施例11と同様にして図2に示す構成の画像形成装置をえた。
【0125】
〔比較例1〕
不織布ローラ10を組み込まない以外は実施例2と全く同様にして画像形成装置を得た。
【0126】
〔比較例2〕
実施例2の8クリーニングブラシと不織布ローラ10を入れ替えて取り付け、クリーニング工程の最初に不織布ローラ、最後にクリーニングブラシが配置された画像形成装置を得た。
【0127】
〔比較例3〕
感光体aを感光体bに変えた以外は実施例1と全く同様にして画像形成装置を得た。
[感光体b]
感光体aの架橋型電荷輸送層を設けず、電荷輸送層の膜厚を25μmとした以外は感光体aと同様に感光体を作製した。
【0128】
実施例および比較例で作成した画像形成装置の構成を表1に整理する。
【0129】
【表1】

【0130】
以上の様にして得られた画像形成装置を用いて複写試験を行った。試験モードは図8に示す画像を原稿として、矢印の方向に作像し感光体の長手方向手前側から奥側へ3段階で画像濃度が異なる加速劣化試験とし、100,000枚のプリント試験を行った。
上述の実施例、比較例で記した以外の構成および試験条件は以下のようにした。
【0131】
(画像形成装置の構成と試験条件)
帯電:AC帯電にDCを重畳した接触帯電方式
書き込み:780nmLD
現像:2成分現像方式
トナー:重合トナー、平均粒径5.3μm、円形度0.96、平均粒径10nmと100nmのシリカと平均粒径15nmの酸化チタンを外添
転写:ポリイミド製中間転写ベルト方式
クリーニングブラシがある場合:ポリエステル製ブラシ
クリーニングブラシ:ウレタンゴムブレード
滑剤塗布:ポリエステルブラシ
滑剤:ステアリン酸亜鉛8×8×320mmブロック形状
除電:波長660nmLED
システム線速:400mm/sec
プリント画像:A4サイズの図8画像パターン
プリント枚数:100,000枚
プリント環境:15℃30%
【0132】
以上のプリント試験の評価は次のようにした。
虫食い転写:100,000枚後に通常の文字画像をプリントし、文字の中抜けが発生しているか。
クリーニング性:100,000枚のプリント試験後に画像形成装置から感光体を取り出して、クリーニング工程以降の部分の感光体上を観察し、クリーニング不良が発生しているか。
滑剤消費状況:100,000枚のプリント試験後に滑剤を取り出し、その消費量(残存する滑剤厚み)にプリント画像濃度差に起因する長手方向で偏りがあるか。なお、やや偏りがあるという程度であれば実使用に耐えうるレベルである。
感光体偏摩耗:100,000枚のプリント試験後に感光体を取り出し、感光層の摩耗(残存膜厚)に長手方向でプリント画像濃度差に起因する偏りがあるか。
【0133】
以上の評価結果を下記表2に記す
【0134】
【表2】

【0135】
以上より明らかなように、本発明による実施例1〜12の画像形成装置は低温環境で、かつ画像濃度に著しい差が連続して与えられる過酷なクリーニング条件であっても、安定したクリーニング品質が保てるので、次工程の滑剤供給が安定し、そのため虫食い転写画像、クリーニング不良などの発生が起こりにくく良好な画像を示すものであることが分かる。画像濃度差に起因する滑剤の消費偏りや感光体の偏磨耗は抑制されるので、長期に渡った信頼性が確保できるものである。
また、不織布の繊度は0.1〜20dtexの範囲が良好であることが判った。
更に、不織布の配置はクリーニング工程の最終位置で、滑剤塗布の直前に配置することが好ましく、クリーニングブラシ、クリーニングブレード、クリーニング不織布の順にクリーニング強度が次第にあがる様に配置することがクリーニング性、滑剤塗布をより安定させる方法であることが判る。
従って、本発明にかかる構成によれば、不織布を感光体に当接配置したクリーニング手段と、導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層及び架橋型電荷輸送層を順次積層しており、該架橋型電荷輸送層が少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を硬化することにより形成されている感光体との相乗効果により、感光体への金属石鹸塗布機構を備えた画像形成装置の金属石鹸の塗布量を長期に渡り安定させると共に、従来よりも飛躍的に感光体の耐久性(耐摩耗性)を向上させることができ、画像品質や信頼性品質を飛躍的に向上させることができることが判明した。
【符号の説明】
【0136】
1 感光体
2 帯電ローラ(帯電手段)
3 書き込み光
4 現像ローラ(現像手段)
5 転写ローラ(転写手段の一部)
6 中間転写体(転写手段の一部)
7 PCLランプ
9 クリーニングブレード(クリーニング手段の一部)
10 不織布(クリーニング手段の一部)
11 滑剤塗布ブラシ(滑剤塗布手段)
12 滑剤
13 QLランプ(除電手段)
110 芯材
120 被覆層
120a 表面層
120b 下地層
T1 継ぎ目
【先行技術文献】
【特許文献】
【0137】
【特許文献1】特開平1−170951号公報
【特許文献2】特開2000−162881号公報
【特許文献3】特許第2859646号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の回転方向に回転する感光体と、
該感光体を帯電させる帯電手段と、
前記感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
前記静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を前記感光体から転写材に転写する転写手段と、
該転写手段により前記トナー像が前記感光体に転写された後の当該感光体上に残留したトナーをクリーニングするクリーニング手段と、
前記感光体表面に金属石鹸を含有する滑剤を供給する滑剤供給手段と、を備え、
前記感光体は、導電性支持体と、該導電性支持体上に順次積層されてなる電荷発生層、電荷輸送層及び架橋型電荷輸送層と、を有し、
前記架橋型電荷輸送層は、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物と、を硬化することにより形成されてなり、
前記クリーニング手段は、複数のクリーニング部材を具備し、
前記複数のクリーニング部材の中の少なくとも1は、不織布を有し、
該不織布は、前記複数のクリーニング部材の中で前記感光体の所定の回転方向に対して最も上流に配置されず、且つ、前記感光体に当接配置されてなり、
前記滑剤供給手段は、前記感光体の所定の回転方向に対して前記不織布より下流に配置されてなることを特徴とする画像形成装置。
但し、前記感光体の所定の回転方向において、前記帯電手段の配置位置が最も上流であり、当該感光体が最も上流から1周分回転する直前の位置が最も下流である。
【請求項2】
前記不織布は、前記複数のクリーニング部材の中で前記感光体の所定の回転方向に対して最も下流に配置されてなることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記不織布は、繊度が0.1以上20以下dtexであることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記不織布は、円柱状金属シャフトの外周面を不織布で覆った不織布ローラ部材であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記不織布は、前記感光体表層を構成する樹脂との摩擦帯電列がマイナス側にある繊維が主成分であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記不織布は、前記感光体表層を構成する樹脂との摩擦帯電列がプラス側にある繊維が主成分であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記複数のクリーニング部材のうち2つのクリーニング部材は、いずれも不織布を有し前記感光体に当接配置されてなり、
一方が有する不織布は、前記感光体表層を構成する樹脂との摩擦帯電列がプラス側である繊維が主成分であり、
他方が有する不織布は、前記感光体表層を構成する樹脂との摩擦帯電列がマイナス側にある繊維が主成分であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記不織布は、前記感光体表層を構成する樹脂との摩擦帯電列がプラス側である繊維と、前記感光体表層を構成する樹脂との摩擦帯電列がマイナス側にある繊維と、の2種を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の画像形成装置に対して着脱自在に備えられるプロセスカートリッジであって、
少なくとも感光体と、前記感光体に当接配置されてなる不織布を有するクリーニング部材と、を備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項10】
所定の回転方向に回転する感光体を帯電させる帯電工程と、
前記感光体を露光して静電潜像を形成する露光工程と、
前記静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記トナー像を前記感光体から転写材に転写する転写工程と、
該転写工程により前記トナー像が前記感光体に転写された後の当該感光体上に残留したトナーをクリーニングするクリーニング工程と、
前記感光体表面に金属石鹸を含有する滑剤を供給する滑剤供給工程と、を備え、
前記感光体は、導電性支持体と、該導電性支持体上に順次積層されてなる電荷発生層、電荷輸送層及び架橋型電荷輸送層と、を有し、
前記架橋型電荷輸送層は、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物と、を硬化することにより形成されてなり、
前記クリーニング工程は、複数のクリーニング部材で前記感光体上に残留したトナーをクリーニングし、
前記複数のクリーニング部材の中の少なくとも1は、不織布を有し、
該不織布は、前記複数のクリーニング部材の中で前記感光体の所定の回転方向に対して最も上流に配置されず、且つ、前記感光体に当接配置されてなり、
前記滑剤供給工程は、前記感光体の所定の回転方向に対して前記不織布より下流に配置されてなることを特徴とする画像形成方法。
但し、前記感光体の所定の回転方向において、前記帯電手段の配置位置が最も上流であり、当該感光体が最も上流から1周分回転する直前の位置が最も下流である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−20012(P2013−20012A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152072(P2011−152072)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】