説明

画像形成装置の帯電体及びその製造方法

【課題】 製造が簡単で経時的な形状変化を抑制することができ、長期に亘ってグリッドを高精度に位置決めすることのできる帯電体を提供する。
【解決手段】 画像形成装置の感光体Dに対向して配置され、感光体Dの電位を制御するグリッド121を備え、グリッド121が感光体Dの表面に沿って円弧状に形成された帯電体において、グリッド121の周囲に、グリッド121と一体に形成され、グリッド121を支持する平板状のグリッド支持部122を有する構成とした。グリッド121の両端とグリッド支持部122とを、グリッド121及びグリッド支持部122と一体に形成された連結部123で連結してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ等の画像形成装置に用いられ、感光体表面の電位を制御するグリッドを備えた帯電体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ等の画像形成装置では、感光体表面を帯電させるために、帯電体が用いられる。帯電体は、コロナ放電を行う放電電極と感光体との間に配置され、感光体表面の帯電電位を制御するグリッドと、このグリッドを支持する支持部材とを有している(例えば特許文献1参照)。
しかし、前記グリッドは、その全幅にわたって感光体の表面から均一距離であるのが好ましく、例えば特許文献2では、グリッドを感光体の表面に沿った湾曲形状としたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−15956号公報(例えば図1参照)
【特許文献2】特許第4309704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記文献に記載されているような湾曲グリッドを形成する方法としては、一般に、グリッドを形成した金属製の帯電体をプレス成形等して湾曲状にする方法や、帯電体となる金属板を湾曲させた後にグリッドを形成する方法を挙げることができる。
しかし、上記した従来の方法では以下のような問題がある。
(i) 前者の方法のようにグリッドを形成した後にプレス成形等を行うと、グリッドが変形して感光体に対するグリッドの距離が均一にならないほか、グリッドを構成する格子孔の大きさや形状がばらついて、帯電性能を低下させる。
(ii) 前者及び後者の方法は、プレス成形時に残留する内部応力や自重等により経時的に帯電体に歪みが生じやすい。
(iii) 帯電体の両端をばね等で引っ張って保持させると、当該ばね等により帯電体を変形させる力が作用し、帯電体を感光体に対向させて取り付ける際に、グリッドの距離を均一にするのが困難になる。
(iv) 特許文献2に記載のグリッドは弾性材料で形成されており、グリッドの両側縁を第1壁部及び第2壁部の溝に、該両壁部を弾性的に押圧するように湾曲させているため、湾曲面の全体に亘って曲率が一定にならず、グリッドと感光体上面の距離にばらつきが生じて性能が低下する。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、上記(i)〜(iii)の問題を一挙に解決することができ、かつ、上記(iv)に挙げたような不具合も生じず、簡単な方法かつ低コストで量産が可能で、長期に亘ってグリッドと感光体との距離を均一に保ち、その性能を長期に亘って高品質に維持することのできる帯電体及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、画像形成装置の感光体に対向して配置され、前記感光体の電位を制御するグリッドを備え、前記グリッドが前記感光体の表面に沿って円弧状に形成された帯電体において、前記グリッドの周囲に前記グリッドと一体に形成され、前記グリッドを支持する平板状のグリッド支持部を有する構成としてある。
この構成によれば、グリッドは感光体の曲率に従った円弧状に形成されているので、感光体に対するグリッドの荷電状態を均一にすることができる。
また、グリッドの周囲は平板状のグリッド支持部により支持されているので、このグリッド支持部によってグリッドの形状が長期に亘って維持される。さらに、グリッド支持部の両端をばね等で引っ張っても、グリッドには力が作用しないようにすることができ、グリッドを歪ませることなく、グリッドの形状を長期に亘って保つことができる。
【0007】
請求項2に記載に記載するように、前記グリッドの両端と前記グリッド支持部とを、前記グリッド及び前記グリッド支持部と一体に形成された連結部で連結してもよい。この連結部の形状は種々のものを選択することができるが、請求項3に記載するように、例えばグリッドの曲率に合わせたドーム状のように立体状にすることで、その剛性を高くすることができる。
そして、剛性の高い連結部によってグリッドの両端を支持させることで、グリッドの変形をさらに長期に亘って抑制することができ、荷電状態の均一性をより長期に亘って維持することができる。
さらに、グリッド支持部の剛性を高めるために、請求項4に記載するように、その少なくとも一部に隆起部を形成してもよい。この隆起部は、例えば長方形に形成されたグリッド支持部の対向する長辺の一方又は両方に形成してもよいし、短辺の一方又は両方に形成してもよく、グリッド支持部の全周に亘って形成してもよい。隆起部の形態としては、例えば、グリッド支持部の側縁を折り曲げたもの、グリッド支持部に凸状の隆起を形成したもの等を挙げることができる。
【0008】
上記構成の帯電体は、以下の方法で製造することができる。
すなわち、請求項5に記載の方法では、画像形成装置の感光体に対向して配置され、前記感光体の電位を制御するグリッドを備え、前記グリッドが前記感光体の表面に沿って円弧状に形成された帯電体の製造方法であって、帯電体の材料となる導電性の平板を準備し、この平板に形成すべき帯電体の形取りを行う工程と、前記平板の形取りされた領域の中に、絞り加工によって、前記感光体の表面に沿った曲率半径を有する膨出部を形成する工程と、この膨出部にグリッドを形成する工程と、前記グリッドの周囲に前記平坦状のグリッド支持部を残して帯電体を取り出す工程とを有する方法である。
【0009】
また、請求項6に記載の方法は、前記膨出部の形成工程で、前記膨出部の両端と前記グリッド支持部とを連結する連結部を前記膨出部と同時形成し、前記膨出部にグリッドを形成する方法である。前記したドーム状を含む立体状の連結部は、この工程で膨出部と同時かつ一体に形成される。
さらに、請求項7に記載の方法は、前記膨出部の内側形状に沿った治具を予め準備し、前記グリッドを形成する際に、少なくとも前記膨出部を前記治具によって内側から支持させた方法である。請求項8に記載するように、前記グリッド支持部となる前記平板の少なくとも一部に、剛性を高めるための隆起部を形成した後に、絞り加工を行うようにしてもよい。
また、グリッドを形成する方法としては種々のものを挙げることができ、その形成の順序は膨出部を形成する前でも後でもよいが、例えば、請求項9に記載するように、前記平板に、前記グリッドの形状になるように予めパターン決めされたマスキング処理を施し、絞り加工を行った後にエッチング処理により前記グリッドを形成するようにしてもよい。
なお、本発明では、グリッド及びグリッド支持部は内部応力(残留応力)が0であるのが理想的であり、必要に応じて、膨出部や隆起部を形成した後に加熱処理等を施して内部応力を除去するのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば製造が簡単で経時的な形状変化を抑制することができ、長期に亘ってグリッドを高精度に位置決めすることのできる帯電体及びその製造方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
[第一の実施形態]
図1は、本発明の第一の実施形態にかかる帯電体の説明図で、(a)は帯電体の一部を省略した斜視図、(b)は(a)の帯電体を取り付けた帯電装置の概略構成と感光体との関係を説明する図である。
図1(a)に示すように、帯電体12は、画像形成装置の感光体Dの電位を制御するグリッド121と、このグリッド121の周囲にグリッド121と一体に形成された平板状のグリッド支持部122とを有している。
帯電体12は、図1(b)に示すように、感光体Dの表面に対峙して配置された帯電装置1のケース10の開口部に取り付けられる。そして、帯電体12とケース10の底部との間には、コロナ放電を生じさせるワイヤ11が配置される。
【0012】
グリッド121は、前記感光体の曲率に合わせて曲面状に形成され、前記感光体の表面とグリッド121との距離がその全幅に亘って均一になるように、ケース10に取り付けられる。
また、グリッド支持部122は、内部応力を有しないように平板状に形成されていて、かつ、グリッド121を周囲から支持することで、グリッド121の曲率が、経時的に又は自重により若しくは曲面形成によって残留する可能性のある内部応力により、縮径方向又は拡径方向に変化しないように抑制する。
【0013】
グリッド支持部122の両端には、複数個(図1(a)の例では両端に各々二カ所ずつ、合計四個)の係合孔123が形成されている。この係合孔123は、帯電装置1のケース10内で、帯電体12の両端を引っ張って直線状に支持させるための図示しないばねの一端を係合するためのものである。
グリッド支持部122は、上述したように平板状に形成されているので、係合孔123にばねを係合させて、グリッド支持部122を両端側から引っ張っても、グリッド支持部122を変形させるような力は作用せず、従って、グリッド121にもこれを変形させるような力が作用しない。
このように、本発明の帯電体12は、平板状のグリッド支持部122によってグリッド121を周囲から支持することで、グリッド121の変形を抑制することができるだけでなく、グリッド121を帯電装置1に取り付ける際にも、グリッド121に力が作用しないようにすることができ、グリッド121の形状を長期に亘って一定に維持することができる。
【0014】
図1(a)の帯電体12は、図2に示すような手順で製造することができる。
まず、帯電体12を形成する材料となるステンレス等の金属板Pを準備する。この場合、大きめの金属板Pに複数の帯電体12を形成した後又は後述の膨出部Pbを複数形成した後に、個々の帯電体12の大きさに切り出す又は打ち抜くようにしてもよいが、後工程で塑性加工の工数が増えるほど帯電体12に内部応力が残留する可能性が高まることから、金属板Pは、図示の例のように、予め帯電体12に合わせた大きさに形成しておくのが好ましく、必要に応じて加熱処理等を行い、内部応力を除去しておくのが好ましい。
【0015】
なお、図2の例では、金属板Pには、グリッド121の両端となる部分に開口を形成するための切り込みPaを予め形成している。また、この実施形態では、金属板Pにグリッド形成のためのマスキングを予め施している。マスキングの形成は、次に説明する膨出部Pbを形成した後でもよいが、平板状態の方が、既存の設備を利用して容易に行うことができ、大量生産も可能になる。ただし、この場合は、グリッドを構成する各格子の大きさ及び形状が均一になるように、膨出部Pbの曲率に応じて各格子の形状及び大きさを予め決定した上で、マスキングを形成する必要がある。
【0016】
この金属板Pを、絞り加工機にセットし、金属板Pの周囲を押さえつつ中央部に絞り加工を施して、図2(b)に示すように曲面状の膨出部Pbを形成する。なお、このとき、同時に係合孔123を形成してもよい。
膨出部Pbを形成した後は、必要に応じて加熱処理を行い、内部応力を除去する。
この後、図2(c)に示すように膨出部Pbにエッチング処理等の処理を施し、グリッドを形成する。
なお、加熱処理を行う際やグリッド形成を行う際には、必要に応じて、膨出部Pbの形状に合わせて形成された図2(c)に示すような治具15を用い、膨出部Pbが自重で変形しないように支持させるとよい。
以上により、図1に示す帯電体12が形成される。
【0017】
図3は、本発明の第二の実施形態にかかる帯電体の説明図で、(a)は帯電体の一部を省略した斜視図、(b)は(a)の折り曲げ部の断面図である。
この実施形態の帯電体22は、曲面状のグリッド221の両端に、鉛直面状の連結部224が形成され、平板状のグリッド支持部222とグリッド221の両端とを連結している。
また、グリッド支持部222の長辺側の周縁を折り曲げて、隆起部である折り曲げ部222aを形成し、グリッド支持部222の剛性を高めている。折り曲げ部222aは、グリッド221の膨出側と反対側に折り曲げて形成したものであってもよいが、感光体Dとは反対側、すなわち、グリッド221の膨出側と同じ側に折り曲げて形成したものであるのが好ましい。
この実施形態の帯電体22は、先の実施形態の帯電体12とほぼ同じ手順で形成することができるが、連結部224を形成するために金属板Pには切り込みPaは形成しない。また、折り曲げ部222aは、絞り加工を行う前に形成しておくのが好ましい。
【0018】
図4は、本発明の第二の実施形態にかかる帯電体の全体構成を説明する一部を省略した斜視図である。
この実施形態の帯電体32は、曲面状のグリッド321の両端に、ドーム状の連結部324が形成され、平板状のグリッド支持部322とグリッド321の両端とを連結している。
連結部324には、連結部324の剛性を高く維持するために、グリッドは形成しないのが好ましい。
【0019】
上記構成の帯電体32は、先の実施形態の帯電体12と同様の絞り加工によって、グリッド321,グリッド支持部322及び連結部324を一体に形成することができる。
この実施形態の帯電体32は、ドーム状の連結部324を有している分だけ、先の実施形態の帯電体12よりも帯電体32の全長が長くなる可能性があるが、グリッド321の両端を剛性の高いドーム状の連結部324で支持しているため、先の実施形態の帯電体12よりもグリッド321の形状を長期に亘って安定的に維持できるという利点がある。
【0020】
本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記の第二の実施形態の説明では、隆起部の一例として折り曲げ部222aを挙げたが、グリッド支持部の剛性を高めることができるのであれば、隆起部はグリッド支持部の一部に膨出形成した凸部であってもよい。また、隆起部はグリッド支持部222の一部に限らず、例えば全周に亘って形成するものとしてもよい。
さらに、連結ぶ224,324の形状は、第二の実施形態では鉛直面状のもの、第三の実施形態ではドーム状のものとして説明したが、グリッドの両端とグリッド支持部とを一体に連結してグリッドの剛性を高めることができるのであれば、その形態は上記のものに限られず、他の形態の平面状のもの又は立体状のものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の帯電体は、プリンタに限らず、コピー機やFAXのように、感光体とグリッドを備えて画像形成を行うあらゆる種類の画像形成装置に適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一の実施形態にかかる帯電体の説明図で、(a)は帯電体の一部を省略した斜視図、(b)は(a)の帯電体を取り付けた帯電装置の概略構成と感光体との関係を説明する図である。
【図2】帯電体の製造方法の一例を示す図である。
【図3】本発明の第二の実施形態にかかる帯電体の説明図で、(a)は帯電体の一部を省略した斜視図、(b)は(a)の折り曲げ部の断面図である。
【図4】本発明の第三の実施形態にかかる帯電体の全体構成を説明する一部を省略した斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1 帯電装置
10 ケース
11 ワイヤ
12 帯電体
121 グリッド
122 グリッド支持部
123 係合孔
22 帯電体
221 グリッド
222 グリッド支持部
222a 折り曲げ部(隆起部)
224 連結部
32 帯電体
321 グリッド
322 グリッド支持部
324 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置の感光体に対向して配置され、前記感光体の電位を制御するグリッドを備え、前記グリッドが前記感光体の表面に沿って円弧状に形成された帯電体において、
前記グリッドの周囲に、前記グリッドと一体に形成され、前記グリッドを支持する平板状のグリッド支持部を有すること、
を特徴とする帯電体。
【請求項2】
前記グリッドの両端と前記グリッド支持部とを、前記グリッド及び前記グリッド支持部と一体に形成された連結部で連結したことを特徴とする請求項1に記載の帯電体。
【請求項3】
前記連結部がドーム状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の帯電体。
【請求項4】
前記グリッド支持部の少なくとも一部に、剛性を高めるための隆起部を形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の帯電体。
【請求項5】
画像形成装置の感光体に対向して配置され、前記感光体の電位を制御するグリッドを備え、前記グリッドが前記感光体の表面に沿って円弧状に形成された帯電体の製造方法であって、
帯電体の材料となる導電性の平板を準備し、この平板に形成すべき帯電体の形取りを行う工程と、
前記平板の形取りされた領域の中に、絞り加工によって、前記感光体の表面に沿った曲率半径を有する膨出部を形成する工程と、
この膨出部にグリッドを形成する工程と、
前記グリッドの周囲に前記平坦部を残して帯電体を取り出す工程と、
を有することを特徴とする帯電体の製造方法。
【請求項6】
前記膨出部の形成工程で、前記膨出部と前記膨出部の両端の連結部とを同時形成し、
前記膨出部又は前記膨出部及び前記連結部にグリッドを形成すること、
を特徴とする請求項5に記載の帯電体の製造方法。
【請求項7】
前記膨出部の内側形状に沿った治具を予め準備し、前記グリッドを形成する際に、前記膨出部を前記治具によって内側から支持させたことを特徴とする請求項5又は6に記載の帯電体の製造方法。
【請求項8】
前記平板に、前記グリッドの形状になるように予めパターン決めされたマスキング処理を施し、絞り加工を行った後にエッチング処理により前記グリッドを形成することを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の帯電体の製造方法。
【請求項9】
前記グリッド支持部となる前記平板の少なくとも一部に、剛性を高めるための隆起部を形成した後、絞り加工を行うことを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の帯電体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−215276(P2011−215276A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81895(P2010−81895)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(594054782)株式会社西村金属 (5)
【Fターム(参考)】