説明

画像形成装置の接地機構及びこれを備えた画像形成装置

【課題】接地用側板の取付孔に錆が発生しても、安価で簡単な構成により軸受と側板との導通を図った画像形成装置の接地機構を提供する。
【解決手段】回転ローラの金属製軸を担持する導電性軸受と、該軸受を嵌合する取付孔を有した金属製側板とを備える接地機構において、軸受と側板の対向面間に、回転ローラの軸方向に弾性変形可能な金属弾性材を挟んで配置する。これにより、側板の取付孔に錆が発生しても、軸受および側板の対向面が金属弾性材を介して接続されるため、両者の電気的導通が確保されるのである。また、金属弾性材の弾性によって、回転ローラがスラスト方向にずれたときでも、確実に上記の導通が確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタや複写機、複合機等の画像形成装置及びこれに適用される接地機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オフィスのみならず一般家庭においても、プリンタや複写機、複合機等の画像形成装置が普及してきている。これらの画像形成装置の内部には、原稿や搬送するための搬送ローラや、トナーを攪拌するための攪拌ローラ、トナーを印刷用紙に定着させるための定着ローラなど、多数の回転ローラが備えられている。
【0003】
これを、例えば、自動給紙装置(ADF:Auto Document Feeder)についてみてみることにする。図3は、一般的な自動給紙装置30の内部構造図である。原稿トレイ31に載置された原稿は、ピックアップローラ32及び分離ローラ33により自動給紙装置30の内部に取り込まれ、レジストローラ34により搬送方向のずれが調整される。そして搬送ローラ35の下部を通過する際にCCD(Charge Coupled Device)などの画像読取手段36によって読取られ、排出ローラ37によって排出トレイ38上に排出される。
【0004】
なお、ここでは説明の簡単のために、ピックアップローラ32、分離ローラ33、レジストローラ34、搬送ローラ35、排出ローラ37の5つの回転ローラを取り上げたが、実際の自動給紙装置では、他にもいくつかの回転ローラが備えられている。
【0005】
ところで、これら回転ローラの表面には、その回転に起因する摩擦によって静電気が発生する。このように各種の回転ローラが帯電すると、CPUその他の電子部品の誤動作の原因となり、所定の作業ができなくなるおそれがある。また、上記各種のローラに接する原稿や用紙が帯電することになって、ジャムが発生する確率が高くなる。
【0006】
この静電気を除去するには、何らかの方法で上記回転ローラを接地(アース)してやればよい。一般的には、図4(a)に示すような回転ローラ41の金属製回転軸51は、図4(b)に示すような導電性軸受42を介して、側板44に設けた取付孔43に取り付けられ、この側板42を接地する方法が採られる。
【0007】
この構造について図5を参照しながら、さらに詳しく説明する。導電性軸受42に対して回転ローラの回転軸51が嵌挿され、上記導電性軸受42が、側板44に設けられた取付孔に嵌挿される。さらにギア52が上記導電性軸受42の外側から導電性軸受42を被覆する態様で軸に嵌挿される。そしてこのギア52が他の回転するギア53と噛合することで、当該回転軸51も回転する構成となっている。
【0008】
上記において、導電性軸受42は回転軸51を嵌挿する円筒部と、当該円筒部の端部に設けられたフランジとで構成され、上記側板44に穿設された取付孔43の内周に接することで、あるいは、フランジが上記側板44に接することで回転軸51は側板44と電気的に導通がとれ、回転ローラ41が接地されることになる。
【0009】
なお、このほかにも種々の接地方法が下記の特許文献に開示されている。
【特許文献1】特開2003−95463号公報
【特許文献2】特開平5−297647号公報
【特許文献3】特開2004−359443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、軸受42が導電性である場合であっても、側板44を形成する際の工程に起因して、上述の技術では不十分な状況が発生することがある。
【0011】
即ち、側板44に取付孔43を穿設する工程は、一般に板金をプレス加工して行われる。この板金は、錆防止のためにメッキされているのが通常であるが、プレス加工により取付孔43を穿設すると、取付孔43の内周はメッキがされていない状態(むき出しの状態)で空気に接することになる。このため、取付孔43の内周に錆が発生して、導電性軸受42と側板44との間の電気的な導通がとれなくなり、回転ローラ41が接地されなくなるのである。
【0012】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、接地用側板の取付孔の内周に錆が発生しても、安価で簡単な構成により導電性軸受と側板との導通を図って接地が可能な画像形成装置の接地機構、及びその接地機構を採用した画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明では、以下のような手段を採用している。
【0014】
まず本発明では、回転ローラの金属製軸を担持する導電性軸受と、該軸受を嵌合する取付孔を有した金属製側板とを備える画像形成装置の接地機構を前提としている。
【0015】
そして、このような接地機構において、上記軸受と上記側板との対向面間に、回転ローラの軸方向に弾性変形可能な金属弾性材を配置している。金属弾性材を介して側板と軸受の対向面が電気的に接続されるため、側板の取付孔の内周面に錆が発生しても、電気的動通が確保されるのである。また金属弾性材の弾性によって、回転ローラがスラスト方向にずれたときでも、確実に上記の導通が確保される。
【0016】
この金属製弾性材としては、複数の弾性舌片を備えるリング状金属板を採用することができる。そのリング状金属板は、弾性舌片を軸受側に向けて配置され、リング状金属板の本体は側板に面接触する。これによって、軸が動いたり、側板の一部に導通不良部があったりしても、確実に回転ローラを接地することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上により、本発明では、側板の取付孔の内周面に錆が発生しても、安価で簡単な構成により導電性軸受と側板との導通を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明の接地機構及びこれが適用される画像形成装置の構成を示す図である。この図1では、自動給紙装置10の側板部を示している。回転ローラの金属製回転軸51、導電性軸受42、側板44及び側板44の取付孔43、並びにギア52については、上記背景技術と同様であるので、説明を省略する。
【0020】
本発明の接地機構は、上記側板44と導電性軸受42との間に金属製弾性材11を介在させることを特徴とする。
【0021】
図2は、図1における円C1で囲まれた部分の拡大図である。図2(a)に示す通り、従来と同様回転軸51が矢印付き点線を貫くように、導電性軸受42に嵌挿される。本発明ではさらに、導電性軸受42のフランジ42bと側板44との間に金属製弾性材11が介挿され、上記導電性軸受42のフランジ42b側にギア52が取り付けられるようになっている。
【0022】
上記金属製弾性材11は、リング状金属板の内周面からL字に切り込んで複数の弾性舌片12を形成している。この弾性舌片12を軸51の方向に(側板44と直角に)反らせることにより弾性を持たせる構成としている。弾性舌片12の反りの方向は、側板44側であっても導電性軸受42のフランジ42b側であってもよい。
【0023】
弾性舌片12の反りの方向を軸受42側に向ければ、図2(b)に示すように、金属製弾性材11の本体は側板44と面接触するとともに、弾性舌片12の先端部が導電性軸受42のフランジ42bと複数点で接触することになり、更に、金属製弾性材11は導電性軸受42のフランジ42bと側板44との間で付勢された状態となる。これにより、導電性軸受け42および金属製弾性材11を介して、金属製回転軸51から側板44の接触面への電気的導通が確保される。従って、側板44の取付孔43の内周面に錆が発生しても、金属製回転軸51と側板44とは常に電気的導通が確保されることになる。
【0024】
また、弾性舌片12の弾性により、回転ローラが軸方向(スラスト方向)にずれたときでも、確実に上記の導通が確保される。
【0025】
なお、図1及び図2において、上記弾性舌片12の数を3つとして描いたが、これは一例であって弾性舌片12の数は任意でよい。しかし、実際に金属製弾性材11を製造する工程があまり煩雑にならず、且つ上記導通を確保するためには、弾性舌片12の数は3つ程度が最も理想的と考えられる。
【0026】
また、金属製弾性材11としては、上記のような複数の弾性舌片12を備えるリング状金属板の代わりに、ウェーブワッシャーを採用することもできる。
【0027】
以上により、接地用側板の取付孔に錆が発生しても、安価で簡単な構成により軸受と側板との導通を図った接地機構、及びこれを用いた画像形成装置を提供することができる。
【0028】
なお、本発明の接地機構は、画像形成装置の自動給紙装置に適用されることを前提として説明したが、画像形成装置のほかの部分に採用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明にかかる接地機構及び画像形成装置は、接地用側板の取付孔に錆が発生しても、安価で簡単な構成により軸受と側板との導通を図ることが可能であり、プリンタや複写機、複合機等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の接地機構及びこれが適用される画像形成装置の構成を示す図。
【図2】本発明の接地機構を示す図。
【図3】自動給紙装置の内部構造の一例を示す図。
【図4】従来の接地機構の様子を示す図。
【図5】従来の接地機構の様子を示す図。
【符号の説明】
【0031】
11 金属製弾性材
12 弾性舌片
41 回転ローラ
42 導電性軸受
43 取付孔
44 側板
42b フランジ
51 回転軸
52 ギア


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ローラの金属製軸を担持する導電性軸受と、該軸受を嵌合する取付孔を有した金属製側板とを備える画像形成装置の接地機構において、
上記軸受と上記側板の対向面間に挟んで配置され、上記回転ローラの軸方向に弾性変形可能な金属弾性材
を備えることを特徴とする画像形成装置の接地機構。
【請求項2】
上記金属弾性材が、複数の弾性舌片を有するリング状金属板であって、該弾性舌片を上記軸受側に向けて配置され、該リング状金属板の本体が、上記側板と面接触する請求項1に記載の画像形成装置の接地機構。
【請求項3】
請求項1または2記載の接地機構を備える画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−178518(P2007−178518A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374278(P2005−374278)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】