説明

画像形成装置の積算熱量検査方法

【課題】画像形成装置から被記録材が受ける積算熱量を表示し、被記録材が受ける幅のある温度範囲での熱分布を、連続する面領域で表示可能な画像形成装置の積算熱量検査方法を提供する。
【解決手段】支持体上に、静発色開始温度TAが85℃〜100℃、かつTAと静発色終了温度TBとの差が7℃〜25℃である積算熱量表示層を有する積算熱量表示体を、静電潜像保持体と、静電潜像現像用現像剤を用いて、静電潜像保持体上に静電潜像を現像してトナー像を形成させる現像手段、トナー像を被記録材に転写する転写手段、転写されたトナー像を被記録材に熱定着する熱定着手段を、少なくとも有する画像形成装置内を搬送させ、積算熱量表示体が画像形成装置内を搬送される過程において、積算熱量表示体の積算熱量表示層が、搬送中に画像形成装置内から受ける熱により発色することで、画像形成装置内の熱量授受を可視化する画像形成装置の積算熱量検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置の積算熱量検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置では、トナー像が現像又は転写された被記録材が定着ローラ等の定着手段によって、被記録材にトナー像が定着される。トナー像を定着する際、定着ローラ表面が被記録材に均一に接触していることが望ましいが、例えば、定着ローラ表面が被記録材に接触しない面領域があると、被記録材の一部にトナー像が定着しなかったり、トナー像表面の光沢にムラが生じるなどの画像欠陥が生じることがある。光沢ムラは定着ローラ等の定着手段に主に起因する問題ではあるが、定着前後での他のローラーとの接触などにも依るため、画像形成装置全体の問題として捉える必要がある。
【0003】
かかる画像欠陥等の画像形成装置内の問題点の有無を確認するため、画像形成装置において被記録材が熱を付与される画像形成装置の各部材に熱電対や放射温度計を設置して加熱温度を測定することが行なわれている。
しかしながら、熱電対や放射温度計による温度測定は、熱電対や放射温度計を設置した一部分での温度測定が可能であるに過ぎない。また、被記録材が、たとえば定着ローラに挟まれた部分においては、ローラが移動体であるために従来の熱電対や放射温度計で加熱温度を測ることは非常に困難である。
【0004】
このため、示温塗料を紙等に付与した転写材を用いて、加熱部材の温度を測定する方法が種々開示されている。
例えば、熱プレス面の全範囲において連続した温度分布を局所的な影響を与えずに計測することを目的として、加工対象物品またはその材料中に感熱シートを重ね、対向する熱プレス面の間に供給し、熱プレスを行う熱プレス過程と、前記熱プレスを行った後の感熱シートにおける計測個所の濃度を計測する濃度計測過程と、前記計測した濃度に基づいて前記熱プレスの加熱温度を演算する温度演算過程とを有することを特徴とする温度計測方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、簡単な手法で、加熱定着装置のニップ部の温度測定をすることを目的として、電子写真装置や静電記録装置などの画像形成装置に用いられる定着部材により紙、OHT等の転写材ニップ部で挟み込み少なくとも1方から加熱および加圧することにより未定着のトナーを転写材に定着させる加熱定着装置において、不可逆性の示温塗料をコーティングした転写材を通し、示温塗料の色変化を見ることにより転写材ニップ部の温度を測定することを特徴とする加熱定着装置ニップ部の温度測定方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−117145号公報
【特許文献2】特開2003−162176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、感熱シートを用いバッチ式で定着ローラ等の温度測定を行なう必要があり簡便とはいえない。また、特許文献2に記載の方法では、対象物の有する熱が、特定温度以上であるか、該特定温度未満であるかで知り得るに過ぎない。すなわち、感熱シートが発色するかしないかのON−OFFによって、対象物の熱を知り得るに過ぎず、熱分布表示の解像度が低かった。また、いずれの方法も、感熱シートを接触させた限られた範囲内(例えば、画像形成装置等の装置内の特定のローラのニップ部)の定着温度を知ることを目的としており、装置内全体での移動熱量を知りうるものではなかった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、画像形成装置から被記録材が受ける積算熱量を表示し、被記録材が受ける幅のある温度範囲での熱分布を、連続する面領域で表示可能な画像形成装置の積算熱量検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する為の本発明の手段は、以下の通りである。
<1> 支持体上に、電子供与性染料前駆体を含有する有機高分子複合体と、該電子供与性染料前駆体を発色させる電子受容性化合物と、バインダーとを含有し、静発色開始温度が85℃〜100℃であり、かつ静発色開始温度と静発色終了温度との差が7℃〜25℃である積算熱量表示層を有する積算熱量表示体を準備し、前記積算熱量表示体を、静電潜像保持体と、静電潜像保持体を帯電させる帯電手段と、帯電した静電潜像保持体を露光して、該静電潜像保持体上に静電潜像を形成させる露光手段と、静電潜像現像用現像剤を用いて、静電潜像保持体上に静電潜像を現像してトナー像を形成させる現像手段と、トナー像を被記録材に転写する転写手段と、転写されたトナー像を被記録材に熱定着する熱定着手段とを、少なくとも有する画像形成装置内を搬送させ、前記積算熱量表示体が前記画像形成装置内を搬送される過程において、前記積算熱量表示体の前記積算熱量表示層が、搬送中に前記画像形成装置内から受ける熱により発色することで、前記画像形成装置内の熱量授受を可視化する画像形成装置の積算熱量検査方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像形成装置から被記録材が受ける積算熱量を表示し、被記録材が受ける幅のある温度範囲での熱分布を、連続する面領域で表示可能な画像形成装置の積算熱量検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の画像形成装置の一実施形態の基本構成を示す概略断面図である。
【図2】比較例1の示温塗料コーティング材の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の画像形成装置の積算熱量検査方法は、支持体上に、電子供与性染料前駆体を含有する有機高分子複合体と、該電子供与性染料前駆体を発色させる電子受容性化合物と、バインダーとを含有し、静発色開始温度が85℃〜100℃であり、かつ静発色開始温度と静発色終了温度との差が7℃〜25℃である積算熱量表示層を有する積算熱量表示体を準備し、
前記積算熱量表示体を、静電潜像保持体と、静電潜像保持体を帯電させる帯電手段と、帯電した静電潜像保持体を露光して、該静電潜像保持体上に静電潜像を形成させる露光手段と、静電潜像現像用現像剤を用いて、静電潜像保持体上に静電潜像を現像してトナー像を形成させる現像手段と、トナー像を被記録材に転写する転写手段と、転写されたトナー像を被記録材に熱定着する熱定着手段とを、少なくとも有する画像形成装置内を搬送させ、前記積算熱量表示体が前記画像形成装置内を搬送される過程において、前記積算熱量表示体の前記積算熱量表示層が、搬送中に前記画像形成装置内から受ける熱により発色することで、前記画像形成装置内の熱量授受を可視化する。
【0013】
本発明に用いられる積算熱量表示体は、静発色開始温度が85℃〜100℃であることで、積算熱量表示体が85℃以上となる熱源を有する対象物に対して積算熱量を表示することができ、静発色開始温度と静発色終了温度との差が7℃〜25℃であることで、一定の温度幅のある対象物の熱分布(熱ムラ)を1つの積算熱量表示体で示すことができる。
【0014】
ここで、静発色開始温度とは、10連型熱特性試験機(新東科学社製)にて加圧500g/cmで1秒間任意の温度に加熱した熱源を積算熱量表示層に接触し、マクベス濃度計(RD−19I型、マクベス社製)により光学濃度が未発色部の光学濃度+0.1となる温度をいい、TAとも称する。
一方、静発色終了温度とは、積算熱量表示層に加熱や加温等の外部からの熱エネルギー付与の処理をして発色した発色部の最大の光学濃度(Dmax)から0.1を引いた濃度に達する温度をいい、TB〔℃〕とも称する。
なお、本発明では、積算熱量表示層に加熱や加温等の外部からの熱エネルギー付与の処理をして発色した発色部の光学濃度を、発色濃度とも称する。
【0015】
前記積算熱量表示体が含有する成分や積算熱量表示体の製法等、積算熱量表示体の詳細については後述する。
【0016】
本発明においては、画像形成装置内を、積算熱量表示体を搬送させて画像形成装置内で積算熱量表示体に与えられる熱量により、積算熱量表示体の積算熱量表示層が発色し、積算熱量表示層の発色により画像形成装置内の熱量授受を可視化することができる。
また、画像形成装置内において熱源が複数ある場合、例えば、二次転写されたトナー像を定着ローラで被記録材に熱定着した後、トナー像が定着された被記録材をさらに定着ローラよりも高温の加熱ローラに通す場合、積算熱量表示体は、定着ローラから与えられた熱量に加えて、加熱ローラから与えられた熱量を追加的に発色して表示することができる。したがって、積算熱量表示体は、画像形成装置から与えられる積算熱量を、積算熱量表示層が発色することにより可視化することができる。
【0017】
なお、一旦加熱された積算熱量表示体は発色しなくなる温度以下に冷却されるまでは発色反応を続ける。例えば、加熱ローラに接触した後、静発色開始温度未満のローラに接触した積算熱量表示体を、積算熱量表示体A、加熱ローラに接触した後、静発色開始温度未満のローラに接触しなかった積算熱量表示体を、積算熱量表示体Bとしたとき、積算熱量表示体Aは積算熱量表示層の発色が止まり、積算熱量表示体Bは積算熱量表示層が発色し続ける。その結果、積算熱量表示体Aは積算熱量表示層の発色濃度がうすく表示され、積算熱量表示体Bは積算熱量表示層の発色濃度が濃く表示されることとなる。そのため、積算熱量表示体定着ローラ通過後に接触する搬送ローラに熱を奪われる様子も可視化することができる。
【0018】
また、一旦静発色開始温度以上に加熱された積算熱量表示体の一部が、静発色開始温度未満の部材に接触した場合は、当該部材に接触した積算熱量表示層のみが発色を終了し、結果的に、積算熱量表示体のうち、当該部材に接触した箇所のみが発色濃度の低い状態、すなわち、色が薄く表示される。
さらに、まだ加熱されずに積算熱量表示層が発色していない積算熱量表示体についても同様のことが考えられる。つまり、積算熱量表示層が未発色の積算熱量表示体のある一部分が冷却された場合には、当該積算熱量表示体全体が熱定着ローラに接触しても、予め冷却された一部分は、冷却されていない部分に比べて発色が遅く、発色濃度が薄くなることが考えられる。例えば、定着ローラ通過前に部分的に冷却された(例えばサクションされた搬送コンベアベルトの空気孔部)ことに起因する移動熱量ムラを可視化することができる。
このように、定着前後での被定着物への熱移動量を一度に可視化することができる。
以下、積算熱量表示体を、画像形成装置内を搬送させて、画像形成装置から与えられる積算熱量を積算熱量表示層が発色することにより可視化する工程を説明する。
【0019】
〔画像形成装置〕
まず、積算熱量表示体が搬送される画像形成装置について、図面を参照しつつ説明する。
本発明において用いられる画像形成装置は、静電潜像保持体と、静電潜像保持体を帯電させる帯電手段と、帯電した静電潜像保持体を露光して、該静電潜像保持体上に静電潜像を形成させる露光手段と、静電潜像現像用現像剤を用いて、静電潜像保持体上に静電潜像を現像してトナー像を形成させる現像手段と、トナー像を被記録材に転写する転写手段と、転写されたトナー像を被記録材に熱定着する熱定着手段とを、少なくとも有する。
本発明に用いられる画像形成装置は、電子写真法、静電記録法等において静電潜像の現像のために使用する装置である。
前記画像形成装置は、さらに、静電潜像保持体上にトナー像を現像後、該トナー像を被記録材に転写する前に、該トナー像を一次転写体(例えば、一次転写ベルト)に転写してから、転写されたトナーを被記録材に転写する一次転写手段を有していてもよい。
【0020】
図1は、本発明において用いられる画像形成装置(4連タンデム方式のフルカラー画像形成装置)の一実施形態の基本構成を示す概略断面図である。
本発明の実施形態に係る画像形成装置は、図1に示すように、矢印Aで示すように、時計回り方向に回転する静電潜像保持体である感光体ベルト2と、感光体ベルト2の横に、感光体ベルト2に相対して設けられ、感光体ベルト2の表面を負に帯電させ、帯電した感光体ベルト2の表面に、例えばレーザー光線で露光して静電潜像現像用現像剤で形成しようとする画像を書き込み、潜像を形成する帯電・露光装置4と、感光体ベルト2の上方に設けられ、帯電・露光装置4で形成された潜像にトナーを付着させて帯電・露光装置4の表面にトナー画像を形成する現像装置6(6Y、6M、6C、6K)と、感光体ベルト2に当接しつつ矢印Bで示す方向に走行するとともに、感光体ベルト2の表面に形成されたトナー画像を転写するエンドレスベルト状の中間転写体である中間転写ベルト8とを備える。
【0021】
さらに、必要に応じて中間転写ベルト8にトナー画像を転写した後の感光体ベルト2の表面を除電して、表面に残った転写残トナーを除去し易くする除電装置や、感光体ベルト2の表面を清掃して前記転写残トナーを除去するクリーニング装置を備えてもよい。
また、帯電手段と露光手段とを分けて、帯電・露光装置4は、例えば、感光体ベルト2の表面を負に帯電させる帯電ロールと、帯電ロールにより帯電した感光体ベルト2の表面に、静電潜像現像用現像剤で形成しようとする画像を書き込み、潜像を形成する露光装置とに分離して用いてもよい。
【0022】
帯電・露光装置4、現像装置6、及び中間転写ベルト8は、感光体ベルト2の外周上に、時計周り方向に配設されている。帯電・露光装置4を帯電ロールと露光装置とに分けて用い、さらに除電装置及びクリーニング装置を追加して用いる場合には、感光体ベルト2の外周上に、時計周り方向に配設することが好ましい。
【0023】
中間転写ベルト8は、内側から、張架ローラ8a、張架ローラ8b、サクションローラ8c、及び張架ローラ8dによって緊張され、保持されるとともに、サクションローラ8cの回転に伴い矢印Bの方向に駆動される。中間転写ベルト8の内側における感光体ベルト2に相対する位置には、中間転写ベルト8を正に帯電させて中間転写ベルト8の外側の面に感光体ベルト2上のトナーを吸着させる1次転写ローラ10が設けられている。中間転写ベルト8の横外側には、被記録材Pを正に帯電させて中間転写ベルト8に押圧することにより、中間転写ベルト8に形成されたトナー画像を被記録材P上に転写する2次転写ローラ12がサクションローラ8cに対向して設けられている。
【0024】
さらに、中間転写ベルト8の下方には2次転写ローラ12に被記録材Pを供給する被記録材供給装置14が設けられ、中間転写ベルト8の上方には2次転写ローラ12においてトナー画像が形成された被記録材Pを搬送しつつ、前記トナー画像を熱定着させる定着ローラ対16が設けられている。
【0025】
定着ローラ対16は、2次転写ローラ12によってトナー画像が転写された被記録材Pを加熱・押圧することにより、前記トナー画像の定着を行う1対の熱ローラである。
【0026】
被記録材供給装置14から供給される被記録材Pは、搬送ローラ対18A、搬送ローラ対18B、によって2次転写ローラ12に誘導され、2次転写ローラ12によりトナー画像を2次転写される。トナー画像を2次転写された被記録材Pは、定着ローラ対16に向かって被記録材Pを搬送する搬送コンベア18C、定着ローラ対16、搬送ローラ対18D、搬送ローラ対18Eにより搬送され、搬送ローラ対18Fを介して画像形成装置外に排出される。
【0027】
中間転写ベルト8の近傍には、さらに、2次転写ローラ12において被記録材Pにトナー画像を転写した後に中間転写ベルト8に残ったトナーを除去するクリーニングブレードを有する中間転写体クリーニング装置を設けてもよい。
【0028】
以下、現像手段に用いられる現像装置6について詳細に説明する。
現像装置6は、レーザー光線で露光して形成された潜像に対して、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の現像ユニット6Y、6M、6C、6Kを備えている。これらの現像ユニット(以下、単に「ユニット」と称する)6Y、6M、6C、6Kは、水平方向に互いに所定距離離間して並設され、感光体ベルト2に対向して配置されている。
これらユニット6Y、6M、6C、及び6Kは、例えば、正(+)極性に帯電するキャリアと、それぞれ、負(−)極性に帯電するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の各色のトナーからなる2成分現像剤を収容している。
【0029】
なお、これらユニット6Y、6M、6C、6Kは、画像形成装置本体に対して脱着可能なプロセスカートリッジであってもよい。
【0030】
ユニット6Y、6M、6C、及び6Kを用いてフルカラーのトナー画像を被記録材Pに2次転写するときは、まず帯電・露光装置4によりイエロー(Y)用の潜像を形成し、ユニット6Yによりイエロー(Y)用のトナー画像を中間転写ベルト8に形成する。次いで、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)について潜像形成およびトナー画像形成を順次行い、4色揃ったトナー画像が形成された中間転写ベルト8を回転して、フルカラーのトナー画像を被記録材Pに2次転写する。
【0031】
静電潜像現像用現像剤(以下、単に、「現像剤」と称する場合がある。)には、上記のようなキャリアと、トナーとを含む二成分現像剤を用いることが多いが、さらに他の成分を加えた他成分現像剤を用いても、キャリアを用いない一成分現像剤を用いてもよい。
トナー及びキャリアは、公知のものを用いることができる。
【0032】
次に、静電潜像保持体である感光体ベルト2および中間転写体である中間転写ベルト8について説明する。
感光体ベルト2および中間転写ベルト8の構造としては、一般的には単層構造であり、例えば、ポリイミド系樹脂等に導電性のカーボン粒子や金属粉等を分散させた構造等が挙げられる。
前記感光体ベルト2および中間転写ベルト8の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することできるが、例えば、ローラ形状、ベルト形状等が好適に挙げられる。本発明においては、これらの中でも、画像の重ね合わせ時の色ズレ、繰り返しの使用による耐久性、他のサブシステムの配置の自由度の取り易さ等の点で、無端ベルト形状が好ましい。
【0033】
前記感光体ベルト2および中間転写ベルト8の材料としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂等に対して、導電性のカーボン粒子や金属粉等を分散混合させたものが好適に用いられる。これらの中でも、ポリイミド系樹脂にカーボン粒子を分散させたものを好適に用いることができる。
【0034】
次にトナー画像を被記録材に熱定着するときに用いられる定着装置である定着ローラ対16について説明する。
定着ローラ対16は、定着ローラの表面が、積算熱量表示体を、積算熱量表示体の静発色開始温度(85℃〜100℃)以上の温度に加熱可能な構造であれば特に制限されない。
例えば、円筒状芯金の内部に加熱するヒータランプを備え、その外周面に耐熱性離型層を形成した加熱定着ロールと、この加熱定着ロールに対し圧接配置され、円筒状芯金の外周面に耐熱弾性体層を形成した加圧ロールとで構成してもよい。ヒータランプは、通常、加熱定着ロール表面が140℃〜220℃になるように加熱される。
これらロール間に圧力として、1〜15Kg/cm、好ましくは3〜10Kg/cmを印加し、未定着トナー画像の形成された被記録材を挿通させて熱定着を行うことができる。
【0035】
〔積算熱量検査方法〕
次に、上記の画像形成装置と積算熱量表示体とを用いて行なう本発明の画像形成装置の積算熱量検査方法について説明する。
本発明の画像形成装置の積算熱量検査方法は、積算熱量表示体を、画像形成装置内を搬送させ、前記積算熱量表示体が前記画像形成装置内を搬送される過程において、前記積算熱量表示体の前記積算熱量表示層が、搬送中に前記画像形成装置内から受ける熱により発色することで、前記画像形成装置内の熱量授受を可視化することにより行なう。
【0036】
積算熱量表示体が画像形成装置内を搬送される工程を、図面を用いて説明する。
なお、定着ローラ等の画像形成装置構成部材の詳細については既に説明してあるので、省略する。
【0037】
積算熱量表示体は、図1に示される画像形成装置の被記録材供給装置14に、被記録材Pに代えて、または被記録材Pと共にセットされる。
積算熱量表示体は、搬送ローラ対18A、搬送ローラ対18B、によって2次転写ローラ12に誘導される。次いで、積算熱量表示体は、搬送コンベア18Cにより定着ローラ対16に誘導され、定着ローラ対16において加熱・加圧された後、搬送ローラ対18D、搬送ローラ対18Eにより搬送され、搬送ローラ対18Fを介して画像形成装置外に排出される。
【0038】
本発明において用いられる積算熱量表示体は、静発色開始温度(TA)である85℃〜100℃以上の熱源を有する画像形成装置構成部材と接触することで、積算熱量表示体の積算熱量表示層が発色する。従って、図1に示される画像形成装置を用いる場合においては、積算熱量表示体は、主として熱定着を行なう定着ローラ対16において熱を付与され、積算熱量表示層が発色する。
定着ローラ対16以外に積算熱量表示体に接触する搬送ローラ対18A、搬送ローラ対18B、2次転写ローラ12、搬送コンベア18C、搬送ローラ対18D、搬送ローラ対18E、及び搬送ローラ対18Fが、積算熱量表示体の静発色開始温度(TA)以上の温度の熱源を有する場合には、これらの画像形成装置構成部材から付与される熱量も、積算熱量表示体で可視化することができる。
換言すると、画像形成装置構成部材と積算熱量表示体と接触による画像形成装置構成部材の熱損失量を、積算熱量表示体の積算熱量表示層の発色により視認することができる。
【0039】
本発明に用いられる積算熱量表示体は、静発色開始温度(TA)と静発色終了温度(TB)との差(TB−TA)が7℃〜25℃であるため、かかる温度範囲の熱分布を、1つの積算熱量表示体から把握することができる。また、本発明に用いられる積算熱量表示体の積算熱量表示層を、低温側であるTAでは発色濃度が低く、高温側であるTBの発色濃度では、TAの発色濃度より高くなるように(色が濃い)積算熱量表示体の成分を構成することで、定着ローラの熱分布を、グラデーションのある色の濃淡により把握することができる。すなわち、本発明に用いられる積算熱量表示体は、連続的な濃度で発色したグラデーションのある色の濃淡により、対象物の熱分布を高解像度で表示することができる。
【0040】
例えば、定着ロールの加熱度合いが、定着ロールの中央付近は高温で、当該中央付近以外の部分は冷めた低温気味である場合には、積算熱量表示体の積算熱量表示層は、画像形成装置内の積算熱量表示体の搬送方向に垂直の方向の中央付近ほど発色濃度が高く(色が濃く)、当該中央付近から当該垂直の方向に遠ざかるほど発色濃度が低く(色が薄く)発色する。
つまり、長方形の積算熱量表示体を、画像形成装置内を、積算熱量表示体の長手方向に搬送させた場合に、当該積算熱量表示体の定着ローラの高温側(中央付近)に接触する積算熱量表示体の幅方向の中央付近には、積算熱量表示体の長手方向に、発色濃度の高い帯状の発色部が表示される。当該定着ローラの低温側に接触する積算熱量表示体の積算熱量表示層は、積算熱量表示体の幅方向の中央付近外から端部側にかけて、発色濃度が低くなるグラデーションが表示される。
【0041】
定着ローラ表面は均一に加熱されているが、表面一部に欠損があるような場合には、当該欠損部は、積算熱量表示体と接触しないため、当該欠損部に対応する位置の積算熱量表示層が発色せず、発色しない領域を確認することで、定着ローラの表面欠損を把握することもできる。
【0042】
また、積算熱量表示体の長さが定着ローラの外周の長さより長ければ、積算熱量表示体1枚を定着ローラに通すことにより、定着ローラの複数回転分の熱分布を1枚の積算熱量表示体で確認することができる。
例えば、積算熱量表示体の搬送方向の長さが300mmであって、ローラの外周の長さが100mmであるとき、積算熱量表示体1枚をローラに通すと、積算熱量表示体の、ローラとの接触開始点から搬送方向100mmまでの区域にローラ1回転目の熱分布が表示される。さらに、積算熱量表示体の、ローラとの接触開始点から搬送方向100mmを超えて搬送方向200mmまでの区域にローラ2回転目の熱分布が表示され、搬送方向200mmを超え搬送方向300mmまでの区域にローラ3回転目の熱分布が表示される。
従って、例えば、ローラ1回転目の区域は全面にわたって発色濃度が高く、ローラ2回転目の区域は中央部の発色濃度が周辺部の発色濃度より低いことが、発色濃度から確認される場合、ローラ1回転目は被記録材の全面に熱が行き届いているが、ローラ2回転目はローラ表面中央部の加熱が遅れている等の評価をすることができる。
【0043】
上述したように、積算熱量表示体を用いて熱量を確認可能な画像形成装置構成部材は定着ローラに限らず、積算熱量表示層の静発色開始温度(TA)以上の熱源を有する部材に対しても用いることができる。また、積算熱量表示体は、一旦、積算熱量表示層がTA以上に加熱されれば、積算熱量表示層がTA未満となるまで発色し続けることも既述の通りである。
従って、例えば、図1において、積算熱量表示体が定着ローラ対16から熱量HAを付与された後、搬送ローラ対18Dから熱量HBを付与されたとき、HBの温度がTA未満でなければ、引き続き、積算熱量表示層が発色する。すなわち、積算熱量表示層の発色部の発色濃度が、HBから受けた熱量分だけ濃くなる。このように、前記積算熱量表示体は、複数の画像形成装置構成部材から付与される積算熱量を1つの積算熱量表示体から把握することができる。
【0044】
また、画像形成装置の被記録材供給装置に、コピー用紙等の通常の被記録材と共に複数枚の積算熱量表示体をセットしておくことで、画像形成装置構成部材の経時の熱損失量を把握することができる。
具体的には、例えば、コピー用紙等の被記録材99枚ごとに1枚の積算熱量表示体を挿入して、画像形成装置を運転させれば、被記録材100枚ごとの画像形成装置構成部材の熱損失量を確認することができる。
したがって、例えば、被記録材99枚ごとに1枚の積算熱量表示体を挿入した被記録材と積算熱量表示体とのセット20セット(合計2000枚)を画像形成装置の被記録材供給装置に装備し、画像形成装置の運転を開始したとき、例えば、300枚走行時までは、画像形成装置から排出された積算熱量表示体の積算熱量表示層の発色が所望の濃度に達していないが、300枚走行後から発色濃度が所望の濃度に達してきている場合には、画像形成装置の運転開始から300枚走行時までは、定着ローラの加熱が不十分であったり、画像形成装置の暖機が進んでいないと評価することができる。
【0045】
さらに、積算熱量表示体が直接接触する部材以外の熱量を把握することも可能である。すなわち、積算熱量表示体が画像形成装置を搬送される最中に、画像形成装置内の熱気を受けて積算熱量表示体の積算熱量表示層が発色した場合には、画像形成装置全体の熱が上昇しているとの評価をすることができる。
【0046】
このように、本発明の画像形成装置の積算熱量検査方法を用いると、実機による被記録材の走行に近い形で、積算熱量表示体を走行して画像形成装置構成部材や、画像形成装置全体の使用状況を把握することができる。本発明の画像形成装置の積算熱量検査方法により、搬送経路内の欠陥、例えば、定着ロールの定着が弱いことを知ることができるため、定着力を上げる(加圧の圧力を大きくする)等の制御をすることに役立てることができる。従って、画像形成装置のメンテナンスのみならず、画像形成装置の新作機の試験運転にも使用することができる。
次に、本発明に用いられる積算熱量表示体の詳細について説明する。
【0047】
〔積算熱量表示体〕
本発明に用いられる積算熱量表示体は、支持体上に、電子供与性染料前駆体を含有する有機高分子複合体と、該電子供与性染料前駆体を発色させる電子受容性化合物と、バインダーとを含有し、静発色開始温度が85℃〜100℃であり、かつ静発色開始温度と静発色終了温度との差が7℃〜25℃である積算熱量表示層を有する。
【0048】
静発色開始温度(TA)と静発色終了温度(TB)については既述のとおりである。
静発色開始温度(TA)は、定着ロールに使用される一般的な温度へ対応させる観点から90℃〜100℃であることが好ましく、90℃〜95℃であることがより好ましい。
また、積算熱量表示体が、画像形成装置内を搬送されるうちに積算熱量表示体の温度が低下することがある。積算熱量表示層の一部が、発色開始温度(TA)よりも低い温度にまで温度低下することで、当該積算熱量表示層の一部が未発色部となり、熱分布を表現できなくなることを防止するために、TAとTBとの差にある程度の幅をもたせることが好ましい。TAとTBとの差に幅があることで、画像形成装置で一般に用いられるA4用紙乃至A3用紙の大きさの面内での温度差を追跡することができ、積算熱量表示体は、熱分布を表現し易くなる。従って、A4乃至A3サイズの積算熱量表示体が画像形成装置内を通過する間に、積算熱量表示体の温度が低下した場合にも、積算熱量表示体が熱分布を表現し易くなるようにするとの観点から、静発色開始温度(TA)と静発色終了温度(TB)の差は、10℃〜25℃であることが好ましく、12℃〜20℃であることがより好ましい。
【0049】
<積算熱量表示層>
積算熱量表示体の積算熱量表示層は、電子供与性染料前駆体を含有する有機高分子複合体と、該電子供与性染料前駆体を発色させる電子受容性化合物と、バインダーとを含有する。
本発明の効果を損なわない限度において、積算熱量表示体は、さらに下塗り層や紫外線吸収層や保護層等を有していてもよい。
【0050】
−電子供与性染料前駆体−
本発明に用いられる積算熱量表示体の積算熱量表示層で用いられる電子供与性染料前駆体は、実質的に無色のものであれば特に限定されるものではなく、エレクトロンを供与して或いは酸等からプロトンを受容して発色する性質を有する従来より公知の発色性化合物でよく、例えば、ラクトン、ラクタム、サルトン、スピロピラン、エステル、アミド等の部位を有し、後述する電子受容性化合物と接触すると速やかに該部位が開環若しくは開裂して呈色反応を生起する無色の化合物である。
【0051】
この様な電子供与性染料前駆体としては、トリフェニルメタンフタリド系化合物、インドリルフタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、ロイコオーラミン系化合物、ローダミンラクタム系化合物、トリフェニルメタン系化合物、トリアゼン系化合物、スピロピラン系化合物、フルオレン系化合物等を挙げることができる。フタリド系化合物の具体例は、米国再発行特許第23024号、米国特許第3491111号、同第3491112号、同第3491116号および同第3509174号等に、フルオラン系化合物は、米国特許第3624107号、同第3627787号、同第3641011号、同第3462828号、同第3681390号、同第3920510号、同第3959571号等に、スピロピラン系化合物は米国特許第3971808号、フルオレン系の化合物は特開昭63−94878号公報等に、その他ピリジン系及びピラジン系化合物は米国特許第3775424号、同第3853869号、同第4246318号等に各々記載されている。
【0052】
上記の化合物の中でも、特に、黒発色の、2−アリールアミノ−3−水素、ハロゲン、アルキル又はアルコキシ−6−置換アミノフルオランが好ましい。
電子供与性染料前駆体の具体例は、特開2006−248198号公報の段落番号[0023]〜[0027]に記載の化合物を挙げることができる。
電子供与性染料前駆体は単独でも2種以上を併用してもよい。
【0053】
本発明において、上記電子供与性染料前駆体は、積算熱量表示層のヘイズ値を低く抑えるために、また常温で電子受容性化合物との接触を防止するといった積算熱量表示層の生保存性の観点(カブリ防止)や、希望の熱エネルギーで発色させるという発色感度の制御の観点等から、有機高分子複合体に内包させて用いられる。
【0054】
上記で使用することのできる有機高分子複合体の製造には、界面重合法、内部重合法、外部重合法の何れの方法をも採用することができるが、特に、電子供与性染料前駆体を含有した芯物質を、水溶性高分子を溶解した水溶液中で乳化した後、その油滴の周囲に高分子物質の壁を形成させるという界面重合法を採用することが好ましい。高分子物質を形成するリアクタントは、油滴の内部及び/又は油滴の外部に添加される。
【0055】
上記高分子物質の具体例としては、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン、スチレンメタクリレート共重合体、スチレン−アクリレート共重合体等が挙げられる。好ましい高分子物質はポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートであり、特に好ましくはポリウレタン及びポリウレアである。即ち、上記有機高分子複合体は、ウレタン又はウレア結合を有する高分子膜壁を有するのが好ましい。尚、高分子物質は2種以上併用することもできる。
【0056】
また、上記有機高分子複合体の体積平均粒径としては、積算熱量表示層のヘイズ値を60%以下にする観点から、1.5μm以下が好ましく、0.3〜0.8μmが更に好ましい。
【0057】
−電子受容性化合物−
上述の電子供与性染料前駆体を熱時発色させる電子受容性化合物(顕色剤とも言う。)としては、フェノール性化合物、有機酸若しくはその金属塩、オキシ安息香酸エステル等の酸性物質が挙げられ、その具体例は例えば、特開昭61−291183号公報等に記載されている。
上記フェノール性化合物としては、特開2006−248198号公報の段落番号[0033]〜[0034]に記載の化合物を挙げることができ、上記有機酸若しくはその金属塩及びオキシ安息香酸エステルとしては、特開2006−248198号公報の段落番号[0035]〜[0036]に記載の化合物を挙げることができる。
【0058】
更に、積算熱量表示層においては、電子供与性染料前駆体に対する電子受容性化合物として、下記式(1)で表わされる化合物の少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0059】
【化1】

【0060】
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、1,3−ビス[2’−(p−ヒドロキシフェニル)−2’−プロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2’−(p−ヒドロキシフェニル)−2’−プロピル]ベンゼン等が好適に挙げられる。
上記の顕色剤(電子受容性化合物)は2種以上を併用してもよい。また、上記顕色剤は前述の発色成分(電子供与性染料前駆体)に対して、50〜800質量%で使用することが好ましく、より好ましくは100〜500質量%である。
【0061】
本発明に用いられる積算熱量表示体では、上述の電子受容性化合物を分散状態で使用し、かつ積算熱量表示層のヘイズ値を60%以下とするのが好ましい。該電子受容性化合物を分散状態で使用すると、乳化状態で用いた場合に比してカブリの発生を抑制し、且つ感度を高く維持することができる。また、上記積算熱量表示層のヘイズ値を60%以下とする為には、上記電子受容性化合物の分散粒子径を0.7μm以下とするのが好ましく、0.6μm以下とするのが更に好ましい。上記分散粒子径が0.7μmを超えると積算熱量表示層の透明性が不十分である場合がある。また、上記分散粒子径の下限としては、0.3μmが好ましい。上記分散粒子径が0.3μmより小さいと分散安定性が低下する、或いは分散に要する時間が長くなり、地肌カブリ等の問題を起こすことがある。ここで、「電子受容性化合物の分散粒子径」とは、分散状態にある電子受容性化合物の体積平均粒子径を意味する。電子受容性化合物を分散する方法としては、ボールミル、サンドミル、横型サンドミル、アトライター、コロイダミル等が挙げられる。
【0062】
−バインダー−
本発明における積算熱量表示層は、バインダーを含有する。
前記バインダーとしては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エピクロルヒドリン変性ポリアミド、エチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレインサリチル酸共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アミド、メチロール変性ポリアクリルアミド、デンプン誘導体、カゼイン、ゼラチン等が挙げられる。
また、これらのバインダーに耐水性を付与する目的で耐水性の改良剤を加えたり、疎水性ポリマーのエマルジョン、具体的には、アクリル樹脂エマルジョン、スチレン−ブタジエンラテックス等を添加することもできる。
【0063】
バインダーの含有量は、積算熱量表示層の支持体との密着性の観点から、積算熱量表示層の全固形分に対して8質量%〜20質量%であることが好ましく、10質量%〜16質量%であることがより好ましい。
【0064】
静発色開始温度(TA)を85℃〜100℃とし、かつ、静発色開始温度(TA)と静発色終了温度(TB)との差を7℃〜25℃とする観点から、電子受容性化合物は電子供与性染料前駆体の全質量に対して、50質量%〜300質量%であり、120質量%〜180質量%とすることが好ましい。
また、同様の観点から、積算熱量表示層中の電子受容性化合物の含有量は、積算熱量表示層の全固形分質量に対して10質量%〜40質量%であり、20質量%〜30質量%とすることが好ましい。
【0065】
積算熱量表示層は、支持体の少なくとも一方の面上に形成されていればよい。積算熱量表示体が画像形成装置内を走行するときに、積算熱量表示体のオモテ面とウラ面のそれぞれが画像形成装置構成部材から付与される熱量を確認したい場合には、支持体の両方の面に積算熱量表示層を形成すればよい。
【0066】
また、様々な温度範囲の熱源を有する画像形成装置構成部材の熱分布を表示可能なものとするために、静発色開始温度(TA)や、静発色開始温度(TA)と静発色終了温度(TB)と温度範囲が異なる異種の積算熱量表示層を2層以上積層して用いてもよい。
【0067】
本発明における積算熱量表示層は、支持体上に、1〜25g/mの範囲で設けられていることが好ましい。また、積算熱量表示層の厚みは、1〜25μmであることが好ましい。
積算熱量表示層は、上述したように2層以上を積層して用いることも可能であり、この場合、全積算熱量表示層の熱分布表示体の全質量に対する含有量が1〜25g/mであることが好ましい。
【0068】
−積算熱量表示層の形成−
本発明における積算熱量表示層は、有機高分子複合体と、電子受容性化合物と、バインダーと積算熱量表示層が含有し得る前記各成分とを配合して得られる積算熱量表示層形成用の塗布液を支持体上に塗布することにより形成することができる。
【0069】
本発明においては、積算熱量表示層形成用の塗布液中に電子受容性化合物を添加し、更に熱増感剤などを添加する場合、別々に乳化分散、あるいは固体分散、微粒化して添加、あるいは適宜混合してから乳化分散あるいは固体分散、微粒化して添加することができる。乳化分散する方法は、有機溶媒中にこれらの化合物を溶解し、水溶性高分子水溶液をホモジナイザー等で攪拌中に添加する。微粒子化を促進するにあたり、疎水性有機溶媒、界面活性剤、水溶性高分子を使用することが好ましい。
【0070】
電子受容性化合物、熱増感剤などを固体分散するには、これらの粉末を水溶性高分子水溶液中に投入しボールミル等の公知の分散手段を用いて微粒子化し、使用することができる。微粒子化に際しては、熱感度、保存性、記録層の透明性、製造適性などの熱分布表示体及びその製造方法に必要な特性を満足しうる粒子径を得るように行なうことが好ましい。
【0071】
積算熱量表示層形成用の塗布液は、例えば、前記の様にして製造した有機高分子複合体と固体分散物とを混合することにより、調製することができる。ここで、前記有機高分子複合体の調製の際に保護コロイドとして用いた水溶性高分子、並びに前記乳化分散物の調製の際に保護コロイドとして用いた水溶性高分子は、積算熱量表示層におけるバインダーとして機能する。また、これら保護コロイドとは別にバインダーを添加し混合して、積算熱量表示層形成用塗布液を調製することも好ましい態様である。
【0072】
−紫外線吸収層−
積算熱量表示体は、蛍光灯下等の紫外線存在下での保全性に優れ、かつ、透明性を損ねないために、前記積算熱量表示層上に、さらに紫外線吸収剤および10〜60質量%のオレイン酸残基含有の脂肪酸残基組成の植物油を内包する有機高分子複合体を含有する紫外線吸収層を有することが好ましい。
【0073】
(紫外線吸収剤)
本発明の上記紫外線吸収剤層に用いる紫外線吸収剤としては、特に限定されるものではなく、従来より公知の紫外線吸収剤の中から適宜選択することができる。この様な紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、2−(5−メチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、5−t−ブチル−3−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシベンゼンプロピオン酸オクチルエステル、2−(2’−ヒドロキシ−3’−n−ドデシル−5’−メチル)フェニルベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0074】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、常温で固体のものを使用してもよいが、製造上等の観点から、常温で液体であるものを使用することが好ましい。この様な常温で液体のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例は、特公昭55−36984号公報、同55−12587号公報、特開昭58−214152号公報に詳細に記載されている。また、その他の好ましいベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、特開昭58−212844号公報、同59−46646号公報、同59−109055号公報、特公昭36−10466号公報、同42−26187号公報、同48−5496号公報、同48−41572号公報、米国特許3,754,919号、同4,220,711号に詳細に記載されている。
【0075】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例としては、米国特許3,707,375号、特公昭48−30492号、特開昭47−10537号、同58−111942号、同59−19945号、同63−53544号等の各公報に記載されているもの、又は、これらに記載された方法に準じて合成されたものを挙げることができる。上記したものの他、本発明で使用することができる紫外線吸収剤は、特開平4−19778号公報に詳細に記載されている。尚、上記した紫外線吸収剤に、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、ハイドロキノン誘導体等を併用してもよい。
【0076】
以上、これらの紫外線吸収剤の中でも、本発明に用いられる積算熱量表示体としては、地肌部及び画像部の経時的な光安定性を改善する観点より、下記一般式(I)で表される紫外線吸収剤が特に好ましい。
【0077】
【化2】

【0078】
〔一般式(I)において、Zは水素原子又は塩素原子を表し、RとRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数が1〜18のアルキル基、又は−(CH)mCOORを表す。ここでRは炭素数が1〜14のアルキル基を表し、mは0〜4の整数を表す。〕
とR及びRで表されるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピリ基、ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、t−オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ベンジル基、フェネチル基等を挙げることができる。
【0079】
紫外線吸収剤は一般的に極性が高い化合物であるので、紫外線吸収層に配合した時に、経時的に表面ないし界面にブルームし易い傾向がある。本発明に用いられる積算熱量表示体においては、1種類の紫外線吸収剤を単独で使用するよりも、2種以上の紫外線吸収剤を併用する方が相溶性を改善でき上記ブルームの対策として好ましい。
本発明に用いられる上記一般式(I)で表される紫外線吸収剤の具体例を、下記に示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
【化3】

【0081】
【化4】

【0082】
(10〜60質量%のオレイン酸残基含有の脂肪酸残基組成の植物油)
本発明に用いられる積算熱量表示体の紫外線吸収層は、上述した紫外線吸収剤と共に10〜60質量%のオレイン酸残基含有の脂肪酸残基組成の植物油を内包する有機高分子複合体を含有することが好ましい。オレイン酸残基のより好ましい範囲は10〜45質量%である。
上記紫外線吸収剤層に用いる10〜60質量%のオレイン酸残基含有の脂肪酸残基組成の植物油としては、特に限定されるものではなく、例えば、大豆油(脂肪酸残基組成中のオレイン酸残基含有量(OA)=20〜35質量%)、トウモロコシ油(OA=25〜45質量%)、ナタネ油(OA=10〜35質量%)、綿実油(OA=15〜30質量%)、ゴマ油(OA=35〜46質量%)、落花生油(OA=35〜60質量%)、ヒマワリ油(OA=15〜35質量%)等を挙げることができる。中でも特に、大豆油、トウモロコシ油、ナタネ油、綿実油等が、使用される紫外線吸収剤の溶解性が高い、工業的に容易に入手できる等の点で好ましい。これらの植物油は単独で使用しても混合して使用してもよい。オリーブ油(OA=70〜85質量%)等のように、脂肪酸残基組成中のオレイン酸含有量が60質量%より大きい植物油は、紫外線吸収剤の溶解性が低く好ましくない。なお、紫外線吸収剤に対する植物油の比率は、紫外線吸収剤1に対して重量比で0.2〜2.0が好ましく、0.3〜1.0がより好ましい。
【0083】
−紫外線吸収層の形成−
紫外線吸収層においては、紫外線吸収剤による光散乱を防止して紫外線吸収能を高め、記録画像の耐光性を良好なものとすると共に、可燃性の低沸点溶媒の使用量を出来るだけ減量して紫外線吸収層を設けるという観点から、紫外線吸収剤及び10〜60質量%のオレイン酸残基含有の脂肪酸残基組成の植物油を有機高分子複合体に内包して使用する。
本発明で使用することのできる有機高分子複合体の製造には、界面重合法、内部重合法、外部重合法等の何れの方法も採用することができるが、特に、紫外線吸収剤及び10〜60質量%のオレイン酸残基含有の脂肪酸残基組成の植物油を含有した芯物質を、水溶性高分子を溶解した水溶液中で乳化分散した後、その油滴の周囲に高分子物質の壁を形成させるという界面重合法を採用することが好ましい。なお、本発明では、これらの製造方法で得られた有機高分子複合体を含む液を、有機高分子複合体液と呼ぶ。
【0084】
上記高分子物質を形成するリアクタントは、油滴の内部及び/又は油滴の外部に添加される。該高分子物質の具体例としては、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン、スチレンメタクリレート共重合体、スチレン−アクリレート共重合体等が挙げられる。好ましい高分子物質はポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートであり、特に好ましくはポリウレタン及びポリウレアである。高分子物質は2種以上併用することもできる。上記水溶性高分子の具体例としては、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0085】
例えば、ポリウレアをカプセル壁材として用いる場合には、ジイソシアナート、トリイソシアナート、テトライソシアナート、ポリイソシアナートプレポリマー等のポリイソシアナートと、ジアミン、トリアミン、テトラアミン等のポリアミン、アミノ基を2個以上含むプレポリマー、ピペラジン若しくはその誘導体又はポリオール等とを、水系溶媒中で界面重合法によって反応させることにより容易に有機高分子複合体壁を形成させることができる。また、例えばポリウレアとポリアミドからなる複合壁若しくはポリウレタンとポリアミドからなる複合壁は、例えばポリイソシアナートと酸クロライド若しくはポリアミンとポリオールを用い、反応液となる乳化媒体のpHを調整した後、加温することにより調製することができる。これらのポリウレアとポリアミドとからなる複合壁の製造方法の詳細については、特開昭58─66948号公報に記載されている。
【0086】
紫外線吸収剤及び10〜60質量%のオレイン酸残基含有の脂肪酸残基組成の植物油を有機高分子複合体に内包するためには、例えば、紫外線吸収剤を10〜60質量%のオレイン酸残基含有の脂肪酸残基組成の植物油と低沸点有機溶剤からなる混合溶媒に溶解させて使用することが好ましい。ここで使用する低沸点有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸メチル、四塩化炭素、クロロホルム、メタノール、エタノール、n−ブタノール、ジオキサン、アセトン、ベンゼン等の低沸点有機溶剤が挙げられる。この様な低沸点有機溶剤については、特開平4−197778号公報等に詳細に記載さている。
【0087】
紫外線吸収剤及び10〜60質量%のオレイン酸残基含有の脂肪酸残基組成の植物油等の成分を含有する油相を混合する水相に、保護コロイドとして含有せしめる水溶性高分子は、公知のアニオン性高分子、ノニオン性高分子、両性高分子、の中から適宜選択することができるが、特にポリビニルアルコール、ゼラチン、セルロース誘導体が好ましい。
【0088】
また水相に含有せしめる界面活性剤は、アニオン性またはノニオン性の界面活性剤の中から、保護コロイドと作用して沈殿や凝集を起こさないものを適宜選択して使用することができる。好ましい界面活性剤の例としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ノニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、等。直鎖ベンゼンスルホン酸ナトリウムがより好ましい。)、アルキル硫酸ナトリウム(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム等。)、スルホコハク酸アルキルナトリウム(例えば、スルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリウム、スルホコハク酸ジヘキシルナトリウム等)、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリオキシエチレンフェニルエーテル等)等を挙げることができる。
【0089】
本発明における上記の乳化分散物は、各成分を含有した油相と保護コロイド及び界面活性剤を含有する水相を、高速撹拌或いは超音波分散等の通常の微粒子乳化分散に用いられる手段を用いて、混合し分散せしめて容易に得ることができる。
【0090】
また、油相の水相に対する割合(油相質量/水相質量)は0.02〜1.0が好ましく、特に0.1〜0.6であることが好ましい。該割合が0.02未満では、水相が多過ぎて希薄となり十分な効果が得られないことがあり、該割合が1.0を越えると逆に液の粘度が高くなり過ぎたり、油相に水相が乳化分散された所謂、転相現象が起こったりして、取扱いの不便さや塗液安定性の低下をもたらすことがある。
【0091】
紫外線吸収剤及び10〜60質量%のオレイン酸残基含有の脂肪酸残基組成の植物油を内包した本発明の上記有機高分子複合体の体積平均粒径は、透明性と安定性を確保する観点より、0.1〜0.5μmの範囲が好ましい。該体積平均粒径が0.5μmを超えると、透明性が低下してヘイズ値を低く押さえることが難しくなることがあり、また該体積平均粒径が0.1μmより小さくなると、有機高分子複合体液の経時的安定性が低下して製造上で支障を来たすことがある。尚、上記有機高分子複合体の体積平均粒径は、透明性と安定性を更に向上させる為に、0.12〜0.45μmの範囲がより好ましく、0.15〜0.4μmの範囲が特に好ましい。
【0092】
本発明の紫外線吸収層に含有させる紫外線吸収剤の量は、用いる紫外線吸収剤の特性に応じて適宜決めればよいが、通常、0.01〜2.00g/mが好ましく、0.03〜1.80g/mがより好ましい。
【0093】
以上のようにして調製した紫外線吸収剤及び10〜60質量%のオレイン酸残基含有の脂肪酸残基組成の植物油を内包した有機高分子複合体液を、後述する方法で塗布し乾燥して設けた紫外線吸収層は、感熱発色層(以下、単に感熱層ということもある。)の保護層として、或いは、感熱層が2層以上の多色感熱記録材料の場合には中間層として設けてもよいが、特に記録層に達するまでに紫外線を吸収して記録画像の光褪色を有効に防止する観点から、画像を観察する方向からみて感熱発色層の上側に、感熱層に隣接ないし接近させて設けることが好ましい。この様な紫外線吸収層と感熱発色層との配設関係については、特開平4−19778号公報等に詳細に記載されている。
【0094】
(酸化防止剤他)
本発明における紫外線吸収層には、必要に応じて、その他の成分、例えば酸化防止剤、炭酸カルシウムや水酸化アルミニウム等の顔料、ステアリン酸亜鉛等の離型剤、積算熱量表示層に使用するバインダー又は界面活性剤等を使用することもできる。また、紫外線吸収層を保護層として使用する場合には、後述する保護層に使用する添加剤を適宜使用することができる。
【0095】
上記酸化防止剤は、耐光性を更に向上させる目的で、含有させることができる。該酸化防止剤としては、特に、限定はなく、公知の酸化防止剤から、適宜選択することができる。例えば、ヨーロッパ公開特許第310551号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、ヨーロッパ公開特許第310552号公報、特開平3−121449号公報、ヨーロッパ公開特許第459416号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開昭63−163351号公報、アメリカ特許第4814262号明細書、特開昭54−48535号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、アメリカ特許第4980275号明細書、特開昭63−113536号公報、特開昭62−262047号公報、ヨーロッパ公開特許第223739号公報、ヨーロッパ公開特許第309402号公報、及びヨーロッパ公開特許第309401号公報等に記載されているものが挙げられる。
【0096】
本発明において好適に使用できる酸化防止剤としては、例えば、特開2000−288379号公報の[化13]〜[化20]に記載されている化合物Q−1〜Q−27を挙げることができる。
【0097】
更に、例えば、特開昭60−125470号公報、特開昭60−125471号公報、特開昭60−125472号公報、特開昭60−287485号公報、特開昭60−287486号公報、特開昭60−287487号公報、特開昭62−146680号公報、特開昭60−287488号公報、特開昭62−282885号公報、特開昭63−89877号公報、特開昭63−88380号公報、特開昭63−088381号公報、特開平01−239282号公報、特開平04−291685号公報、特開平04−291684号公報、特開平05−188687号公報、特開平05−188686号公報、特開平05−110490号公報、特開平05−1108437号公報、特開平05−170361号公報、特開昭63−203372号公報、特開昭63−224989号公報、特開昭63−267594号公報、特開昭63−182484号公報、特開昭60−107384号公報、特開昭60−107383号公報、特開昭61−160287号公報、特開昭61−185483号公報、特開昭61−211079号公報、特開昭63−251282号公報、特開昭63−051174号公報、特公昭48−043294号公報、特公昭48−033212号公報等に記載の酸化防止剤が挙げられる。
【0098】
具体例には6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、シクロヘキサン酸ニッケル、2,2−ビス−4−ヒドロキシフェニルプロパン、1,1−ビス−4−ヒドロキシフェニル−2−エチルヘキサン、2−メチル−4−メトキシ−ジフェニルアミン、1−メチル−2−フェニルインドールや以下に示す化合物が挙げられる。
【0099】
また、特開2000−288379号公報の[化21]〜[化58]に記載されている化合物Q−29〜Q−58を挙げることもできる。
【0100】
これらの酸化防止剤は、前述の積算熱量表示層や光透過率調整層、又は後述のマット層や保護層等に添加することもできる。これらの酸化防止剤などを組み合せて使用する場合、例えば、前記具体例に示した化合物(Q−7、Q−45、Q−46)又は(Q−10、Q−13)の組合せ等が挙げられる。
【0101】
(光反射層)
本発明に用いられる積算熱量表示体は、記録画像の鮮鋭度を向上させる目的で全光線透過率が30%以下の光反射層を設ける態様が通常である。該光反射層の全光線透過率が30%を超えると、地肌部の透明度が増し、記録画像の鮮鋭度が低下してしまう。該光反射層の全光線透過率を30%以下する方法としては、後述する白色顔料等の含有量や光反射層の層厚を調整する方法が挙げられる。ここで該光反射層の「全光線透過率」とは、試料を透過した全光線透過光量の割合をいい、数値が低くいほど不透明性が高いことを意味する。上記全光線透過率の測定方法について説明する。上記全光線透過率Dは、透明支持体上に積算熱量表示層まで設けた段階(光反射層を設けていない段階)での全光線透過率d1と、前記積算熱量表示層上に光反射層を設けた段階での全光線透過率d0とを測定することで算出できるが、d0≫d1であるため、光反射層の全光線透過率D=d0−d1はD=d0で代用できる。上記全光線透過率の測定装置としては直読ヘーズコンピューター(スガ試験機(株)製)などを好適に用いることができる。
【0102】
本発明における上記光反射層は、主に白色顔料と、バインダーとから構成される。好ましい白色顔料の例としては、タルク、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、アルミナ、合成シリカ、酸化チタン、硫酸バリウム、カオリン、ケイ酸カルシウム、尿素樹脂等が挙げられ、特に酸化チタンが好ましい。上記バインダーとしては、メチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。バインダー中の白色顔料の含有量としては、光反射層の全光線透過率を30%以下にする観点から、50〜150質量%が好ましく、70〜150質量%以上が更に好ましい。該白色顔料の含有量が50質量%未満であると光反射層の全光線透過率を30%以上にするのが困難であり、該含有量が150質量%を越えると塗膜にヒビ割れを生じ、印画画質に悪影響を及ぼす場合がある。
【0103】
また、上記白色顔料の固体分散粒子径としては、平滑性や隠ぺい性等の観点から0.2〜0.6μmが好ましく、0.25〜0.4μmが更に好ましい。また、上記光反射層の膜厚は2〜8μmが好ましく、3〜5μmが更に好ましい。該膜厚が2μm未満であると全光線透過率を30%以下とすることが困難となり十分に光を反射できない場合がある。また、該膜厚が8μmを超えると、熱記録感度の低下やサンプルのカールが問題となる場合がある。本発明における光反射層用塗布液は、上記バインダーの溶液に白色顔料を混合して得られるが、所望の目的に応じて、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の滑剤および分散剤、蛍光増白剤、架橋剤、紫外線吸収剤、スルフォこはく酸系のアルカリ金属塩、および、フッ素含有界面活性剤等の界面活性剤等の各種助剤を更に適宜添加してもよい。
【0104】
(保護層)
本発明においては、耐スティッキング性や耐溶剤性を良好にするために光反射層上に保護層を設けるのが好ましい。上記保護層は、主に顔料とバインダーとから構成されるが、走行性を良好化する観点から、上記顔料としては、体積平均粒子径(D50)が0.7μm以下であると共に、粒子径分布(D90/D10)が4.5以下である顔料を用いるのが好ましい。(D50)が0.7μmを越えると積算熱量表示体の透明性が悪くなる場合があり、(D90/D10)が4.5以上となると耐スティッキング性が悪くなる場合がある。
【0105】
本発明で使用する顔料は、特に限定されるものではなく、公知の有機或いは無機の顔料を使用することができる。具体的には、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、ロウ石、合成珪酸塩、非晶質シリカ、尿素ホルマリン樹脂粉末や表面処理した顔料等が挙げられるが、これらの中でも特に炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、カオリン、シリカ、ステアリン酸処理水酸化アルミニウムが好ましい。尚、このような顔料を上記の平均粒子径の粒子とすることは、適当な保護コロイドや界面活性剤を用い、ミル等の公知の湿式分散機を用いて容易に行うことができる。
【0106】
本発明における保護層は、顔料を保持すると共に透明性を良好とする観点から、バインダーとして完全鹸化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、シリカ変性ポリビニルアルコール等を含有するものであることが好ましい。本発明における保護層用塗布液(保護層液という)は、上記バインダーの溶液に顔料を混合して得られるが、耐スクラッチ性等の向上の目的に応じて、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の滑剤および分散剤、蛍光増白剤、架橋剤、紫外線吸収剤、スルフォこはく酸系のアルカリ金属塩およびフッ素含有界面活性剤等の界面活性剤等の各種助剤を更に適宜添加してもよい。
【0107】
保護層液は、必要に応じて、ミキサー、ディゾルバー、アトライター、サンドミル等の攪拌、混合、分散装置によって充分混合分散された後に、積算熱量表示層上に塗布される。保護層液を積算熱量表示層上に塗布するに際しては、上記積算熱量表示層液の場合と同様の塗布手段が用いられる。
【0108】
保護層の塗布量は、固形分質量で0.2〜7g/mであることが好ましく、特に1.0〜4.0g/mであることが好ましい。0.2g/m未満では耐スティッキングの悪化が生ずることがある。また、7g/mを越すと、記録感度が低下することがある。保護層中のバインダーに対する顔料の質量比は、バインダー100質量部に対して、顔料を100質量部〜30質量部とすることが好ましい。該顔料質量比を100質量部以上とすると、保護層の透明性が損なわれ、30質量部以下とすると耐スティッキング性が悪くなる場合がある。
【0109】
(支持体)
本発明の積算熱量表示体は、支持体を含有する。
前記支持体は、特に制限されないが、積算熱量表示層を支持体の片面にのみ形成する場合には、実質的に透明な透明支持体を使用することが好ましい。一方、支持体の両方の面に積算熱量表示層を形成する場合には、前記支持体は、透明支持体でなくともよい。
ここで、実質的に透明な透明支持体とは、ヘイズ値が40%以下のものをいう。
【0110】
前記透明支持体としては、例えば、ルミラー(東レ社製)、テトロン(帝人デュポンフィルム社製)等のPETフィルム、テオネックス(帝人デュポンフィルム社製)等のPENフィルム、カプトン(東レ・デュポン社製)等のポリイミドフィルム等が挙げられる。
不透明な支持体としては、OKトップコート+(王子製紙社製)、オーロラコート(日本製紙社製)等の塗工紙が挙げられる。
【0111】
本発明において、支持体は、前記透明支持体および不透明な支持体を単独或いは貼り合わせて用いることができる。支持体を貼り合わせて用いるときは、支持体の種類に制限されず、単独種を貼り合わせてもよいし、複数種を貼り合わせてもよい。
本発明において、支持体は、特にPETフィルムに低熱収縮処理を施したものが好ましい。
【0112】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、上記透明支持体においては、紫外線吸収剤を含有するものを用いてもよい。該紫外線吸収剤としては、公知の紫外線吸収剤が挙げられる。
上記透明支持体の厚みとしては25〜250μmのものが用いられ、特に50〜200μmのものが好ましい。
【0113】
(下塗り層)
本発明において、透明支持体から積算熱量表示層等が剥がれることを防止するために、積算熱量表示層、光反射層マット層や紫外線フィルター層を塗布する前に、透明支持体上に下塗り層を設けることが好ましい。該下塗り層の素材としては、アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、SBR、水性ポリエステル等を用いることができる。下塗層の膜厚は0.05〜0.5μmであることが好ましい。下塗層は、積算熱量表示層がその上に塗布された時に、積算熱量表示層中に含まれる水により膨潤して積算熱量表示層の画質を悪化させることがあるので、硬膜剤を用いて硬化させることが望ましい。
【0114】
上記硬膜剤としては、例えば、グルタルアルデヒド、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン等のジアルデヒド類およびほう酸等の特開平2−141279号公報に記載されているものを挙げることができる。これらの硬膜剤の添加量は、下塗層の質量に対して、0.20〜3.0質量%となる範囲で、塗布方法や希望の硬化度に合わせて適切な添加量を選ぶことができる。
【0115】
(マット層)
本発明に用いられる積算熱量表示体には、記録面からの反射光を防止して画像を見易くし、画像形成装置内の搬送性を付与するため、更には水性ペンなどペン等に対する筆記性を付与するために積算熱量表示層と反対側の支持体上に、平均粒子径が1〜20μm、好ましくは1〜10μmの微粒子を含有するマット層を設けてもよい。マット層は、入射角が20°における光沢度が50%以下、特に30%以下のものであることが好ましい。上記微粒子は、積算熱量表示体の透明性を良好とする観点から、屈折率が1.45〜1.75のものであることが好ましい。
【0116】
マット層に含有される微粒子としては、デンプン微粒子、セルロースファイバー、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素ホルマリン樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート樹脂、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂等の合成高分子の微粒子、炭酸カルシウム、酸化チタン、カオリン、スメクタイト粘土、水酸化アルミニウム、シリカ、酸化亜鉛等の無機微粒子等を挙げることができる。これらの微粒子は2種以上併用してもよい。マット層は、上記保護層に用いたバインダーに上記微粒子を混合した塗布液を上記感熱層液の場合と同様にして支持体上若しくは上記紫外線フィルター層上に塗布・乾燥することによって設けられる。
【実施例】
【0117】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例中の「部」および「%」は、特に断わりがない限り質量基準である。
【0118】
〔実施例1〕
<積算熱量表示体の準備>
(電子供与性染料前駆体内包カプセル液の調製)
電子供与性染料前駆体として2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−sec−ブチルアミノフルオラン(日本曹達(株)製の商品名「PSD184」)6.3gと3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−4−アザフタリドタケネート(山田化学(株)製の商品名「Blue220」)1.9g、紫外線吸収剤として2−(5−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(Ciba−Geigy(株)製の商品名「チヌビンPS」)5g、壁剤として「タケネートD110N」(武田薬品(株)製)12gを、芳香族系の石油系溶剤ジイソプロピルナフタレン(呉羽化学(株)製の商品名「KMC113」)20g及び酢酸エチル12gに溶解した。この溶液を10%ポリビニルアルコール水溶液(クラレ(株)製の商品名「PVA−205」、鹸化度88%)75gに混合し、エースホモジナイザー(日本精機(株)製)を用いて回転数8000rpmで5分間かけて乳化分散し、更に水60gとテトラエチレンペンタミン0.5gを加えて50℃で3時間反応させて、体積平均カプセルサイズが0.7μmの電子供与性染料前駆体内包カプセル液を調製した。
【0119】
(顕色剤分散液の調製)
1,3−ビス[2’−(p−ヒドロキシフェニル)−2’−プロピル]ベンゼン(三井化学(株)製の商品名「ビスフェノールM」)60gを、濃度25%のポリカルボン酸(花王(株)製の商品名「デモールEP」)7gと濃度5%の部分鹸化ポリビニルアルコール(クラレ(株)製の商品名「PVA−205」)水溶液140g中に分散し、サンドミルを用いて粉砕して体積平均粒径0.6μmの顕色剤(電子受容性化合物)分散液を調製した。
【0120】
(光反射層用顔料分散液の調製)
酸化チタン(石原産業(株)製の商品名「R780−2」)50gを、濃度25%のポリカルボン酸(花王(株)(株)製の商品名「デモールEP」)0.6gと8%のポリビニルアルコール水溶液(クラレ(株)製の商品名「PVA−205」、鹸化度88%)70g中に分散し、サンドミルを用いて粉砕して平均粒径0.35μmの光反射層用顔料分散液を調製した。
【0121】
(保護層用顔料分散液の調製)
水酸化アルミ(昭和電工(株)製の商品名「ハイジライトH42」)50gとステアリン酸Zn(堺化学(株)製の商品名「SZ2000」)3gを、濃度40%のヘキサメタリン酸ソーダ水溶液2gと濃度4%のポリビニルアルコール水溶液(クラレ(株)製の商品名「PVA−203」、鹸化度88%)70g中に分散し、サンドミルを用いて粉砕して、平均粒径0.6μmの保護層用顔料分散液を調製した。
【0122】
(紫外線フィルター層用カプセル液Aの調製)
紫外線吸収剤として下記化合物(1)1.58g、下記化合物(2)6.3g、下記化合物(3)6.5g及び下記化合物(4)1.4gを、菜種油(オレイン酸含有 58%)7.3gと酢酸エチル8.2gに溶解後、壁剤として「タケネートD110N」(武田薬品(株)製)0.9gと「バーノックD750」(大日本インキ化学(株)製)0.3gを添加した。この溶液を15%のポリビニルアルコール水溶液(クラレ(株)製の商品名「PVA−205」、鹸化度88%)120gと10%のドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム8g中に混合し、エースホモジナイザー(日本精機(株)製)を用いて回転数15000rpmで15分間かけて乳化分散し、更に水60gとテトラエチレンペンタミン0.15gを加えて40℃で3時間反応させて、紫外線フィルター層用カプセル液Aを作製した。
【0123】
【化5】

【0124】
(積算熱量表示層用塗布液の調製)
上記染料前駆体含有カプセル液35g、上記顕色剤分散液15g及び濃度50%の蛍光増白剤(日本化薬(株)製の商品名「カヤホールS」)0.1gを混合して積算熱量表示層用塗布液を得た。
【0125】
(光反射層用塗布液の調製)
上記光反射層用顔料分散液80g、濃度15%のポリビニルアルコール水溶液(クラレ(株)製の商品名「PVA−205」、鹸化度88%)215g、及び濃度4%のホウ酸25gを混合して光反射層用塗布液を得た。
【0126】
(保護層用塗布液の調製)
上記保護層用顔料分散液115g、濃度50%の蛍光増白剤(日本化薬(株)製の商品名「カヤホールPAS」)1.5g、濃度10%のポリビニルアルコール水溶液(クラレ(株)製の商品名「PVA−217」、鹸化度88%)35g、及び濃度10%のドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム5gを混合して保護層用塗布液を得た。
【0127】
(紫外線フィルター層用塗布液の調製)
水42g、シラノール変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製の商品名「R2105」)40g、上記紫外線フィルター層用カプセル液A13.5gを混合した後、濃度50%の下記化合物(5)の水溶液17gと濃度20%のコロイダルシリカ分散液(日産化学(株)製の商品名「スノーテックスO」)65gを混合し、紫外線フィルター層用塗布液Aを得た。
【0128】
【化7】

【0129】
(光反射防止層(バックコート)用塗布液の調製)
水50gに平均粒子径が5μmの「ライススターチ」(松谷化学(株)製)0.1gを加え分散させた後、濃度2%のジ(2−エチル)へキシルスルフォン酸ナトリウム4.0g及び濃度20%のコロイダルシリカ分散液(日産化学(株)製の商品名「スノーテックスO」)17gを混合して光反射防止層用塗布液を得た。
【0130】
(積算熱量表示体の作製)
厚み75μmの透明PET支持体の一方の面一面に隙間無く、上記紫外線フィルター層用塗布液及び上記光反射防止層用塗布液を順次、それぞれ固形分質量で1.8g/m及び2.2g/mとなる様に塗布し乾燥した。次いで反対側の面に、上記積算熱量表示層用塗布液、上記光反射層用塗布液及び上記保護層用塗布液を順次、それぞれ固形分質量で9.8g/m、4.0g/m及び2.0g/mとなる様に、一面に隙間無く塗布し、乾燥して、実施例1の積算熱量表示体1を得た。
積算熱量表示体1について、10連型熱特性試験機(新東科学社製)とマクベス濃度計(RD−19I型、マクベス社製)とを用いて静発色開始温度(TA)および静発色終了温度(TB)を測定したところ、TA=90℃であり、TB=105℃であった。従ってTAとTBとの差は15℃である。
【0131】
<評価>
A4サイズにカットした積算熱量表示体1を、レーザープリンタC3250(富士ゼロックス社製)にセットして10枚連続してレーザープリンタC3250内を搬送させ、画像を観察した。
その結果、定着ロールの欠陥、ローラ周回に伴う積算熱量表示体1への熱損失の変化、積算熱量表示体1が定着ロールを通過した後の搬送ローラおよび意図しない部材との接触による熱の奪われ方を可視化することができ、簡便にニップ部および搬送系内に潜む欠陥を検査することができた。
【0132】
また、解像度の良い熱分布表示が得られた。これは、積算熱量表示体1が、PET支持体上に塗布漏れがないように隙間無く積算熱量表示層用塗布液が塗布されて作製されているため、積算熱量表示層のうち熱を受けた部分はいずれも発色していること、及び、積算熱量表示体1が、TAとTBとの差が15℃の、温度幅のある熱分布表示可能な熱量表示体であるため、連続した濃度で発色したグラデーションのある色の濃淡により積算熱量表示体1が授受した熱分布を表示できたためと考えられる。
【0133】
〔比較例1〕
<示温塗料コーティング材の準備>
図2に、比較例1用に準備した示温塗料コーティング材の構成概略図を示す。
示温塗料コーティング材は、図2に示すように普通紙111上に、不可逆性の示温塗料1〔日油技研工業(株)製サーモペイントNO.14;変色温度は140℃〕、及び不可逆性の示温塗料2〔日油技研工業(株)製サーモペイントNO.16;変色温度は160℃〕をパターンコートして得た。
該サーモペイントは粘度が高いため、溶剤としてキシレンにより約50%に希釈したものをスクリーン印刷方式によりパターンコートした。具体的には、示温塗料1および示温塗料2を、縦5mm横10mmの範囲に、図2に示すようにφ4mmのドットでそれぞれ1個ずつ付けた(図2中112、113)ものをA4普通紙111全面に配した。それぞれ原色は青味緑、薄青がうす紫、暗灰に変化する。コート後室温で4時間乾燥させて、比較例1の示温塗料コーティング材を準備した。
比較例1の示温塗料コーティング材について、10連型熱特性試験機(新東科学社製)とマクベス濃度計(RD−19I型、マクベス社製)とを用いて静発色開始温度(TA)および静発色終了温度(TB)を測定したところ、示温塗料1をコートした箇所はTA=138℃であり、TB=140℃であった。従ってTAとTBとの差は2℃であり、示温塗料2をコートした箇所はTA=157℃であり、TB=160℃であった。従ってTAとTBとの差は3℃である。
【0134】
<評価>
A4サイズにカットした比較例1の示温塗料コーティング材をレーザープリンタC3250(富士ゼロックス社製)にセットして10枚連続してレーザープリンタC3250内を搬送させ、示温塗料コーティング材に表示された画像を観察した。
比較例1の示温塗料コーティング材は、示温塗料コーティング材の表面温度が140℃以上であるか否か、および160℃以上であるか否かを知り得るに過ぎず、表示温度範囲として3範囲(140℃未満、140℃以上160℃未満、160℃以上)でしか判別できなかった。そのため、解像度の高い熱分布を表示することができなかった。
また、比較例1の示温塗料コーティング材は、示温塗料が網点状にコーティングされ示温塗料がコーティングされていない部分があるため、スクリーン印刷でのパターンコートの大きさ以下の熱分布は検出できず、実施例1の積算熱量表示体1に比べ、解像度の高い詳細な欠陥検査はできなかった。
【0135】
〔比較例2〕
<感熱紙の準備>
富士フイルム社製、F50SB3を比較例2の感熱紙とした。
比較例2の感熱紙について、10連型熱特性試験機(新東科学社製)とマクベス濃度計(RD−19I型、マクベス社製)とを用いて静発色開始温度(TA)および静発色終了温度(TB)を測定したところ、TA=75℃であり、TB=87℃であった。従ってTAとTBとの差は12℃である。
【0136】
<評価>
A4サイズにカットした比較例2の感熱紙をC2用紙(富士ゼロックス社製)と貼り合わせ、レーザープリンタC3250(富士ゼロックス社製)にセットして10枚連続してレーザープリンタC3250内を搬送させ、表示された画像を観察した。
比較例2の感熱紙は発色温度が低すぎるため、全面黒色となり、熱分布を表示することができなかった。
【0137】
〔比較例3〕
<低感度感熱紙の準備>
実施例1の積算熱量表示体の作製において、積算熱量表示体の作製に用いた顕色剤(電子受容性化合物)中の1,3−ビス[2’−(p−ヒドロキシフェニル)−2’−プロピル]ベンゼン(三井化学(株)製の商品名「ビスフェノールM」)を、3,5−ジ(α―メチルベンジル)サリチル酸亜鉛塩(三光(株)製の商品名R−054)に変更した以外は同様にして、比較例3の低感度感熱紙を準備した。
比較例3の低感度感熱紙について、10連型熱特性試験機(新東科学社製)とマクベス濃度計(RD−19I型、マクベス社製)とを用いて静発色開始温度(TA)および静発色終了温度(TB)を測定したところ、TA=125℃であり、TB=160℃であった。従ってTAとTBとの差は35℃である。
【0138】
<評価>
A4サイズにカットした比較例3の感熱フィルムをレーザープリンタC3250(富士ゼロックス社製)にセットして10枚連続してレーザープリンタC3250内を搬送させ、表示された画像を観察した。
比較例3の感熱フィルムは発色温度が高すぎるため、全面未発色となり、熱分布を表示することができなかった。
【0139】
〔比較例4〕
熱電対(安立計器(株)製、UH−11K−03−TS1−WT4)を前記レーザープリンタC3250内の定着ローラーに接触させ、レーザープリンタC3250運転中の温度変化を観察した。定着ローラー表面のうち、熱電対を接触させた「点」での計測になり、定着ローラーの熱分布の全体像を確認することができず、ニップ部の欠陥を観察することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明によれば、実機による被記録材の走行に近い形で、積算熱量表示体を走行して画像形成装置構成部材の使用状況を把握することができる。本発明の画像形成装置の積算熱量検査方法により、搬送経路内の欠陥、例えば、定着ロールの定着が弱いことを知ることができるため、定着力を上げる(加圧の圧力を大きくする)等の制御をすることに役立てることができる。従って、画像形成装置のメンテナンスのみならず、画像形成装置の新作機の試験運転にも好適である。
【符号の説明】
【0141】
2 感光体ベルト
4 帯電・露光装置
6 現像装置
8 中間転写ベルト
10 1次転写ローラ
12 2次転写ローラ
14 記録紙供給装置
16 定着ローラ対
111 普通紙
112 示温塗料1
113 示温塗料2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、電子供与性染料前駆体を含有する有機高分子複合体と、該電子供与性染料前駆体を発色させる電子受容性化合物と、バインダーとを含有し、静発色開始温度が85℃〜100℃であり、かつ静発色開始温度と静発色終了温度との差が7℃〜25℃である積算熱量表示層を有する積算熱量表示体を準備し、
前記積算熱量表示体を、
静電潜像保持体と、静電潜像保持体を帯電させる帯電手段と、帯電した静電潜像保持体を露光して、該静電潜像保持体上に静電潜像を形成させる露光手段と、静電潜像現像用現像剤を用いて、静電潜像保持体上に静電潜像を現像してトナー像を形成させる現像手段と、トナー像を被記録材に転写する転写手段と、転写されたトナー像を被記録材に熱定着する熱定着手段とを、少なくとも有する画像形成装置内を搬送させ、
前記積算熱量表示体が前記画像形成装置内を搬送される過程において、前記積算熱量表示体の前記積算熱量表示層が、搬送中に前記画像形成装置内から受ける熱により発色することで、前記画像形成装置内の熱量授受を可視化する画像形成装置の積算熱量検査方法。

【図1】
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【図2】
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