説明

画像形成装置及びその制御方法

【課題】ユーザが取り外し可能な記憶装置を取り外したいと思っても、その記憶装置に記憶されたデータを用いた処理を画像形成装置が行っていると、その処理が終了するまでユーザはその記憶装置を取り外すことができない。
【解決手段】画像形成装置のシャットダウン指示をユーザから受け付けた際、取り外し可能な記憶装置に記憶されている動作データを使用した動作を実行する必要があるか否かを判定し、その動作データを使用した動作を実行する必要があると判定されると、内蔵の不揮発性記憶部に、その動作データを記憶させて画像形成装置を再起動させ、再起動後、内蔵の不揮発性記憶部に記憶された動作データを使用した動作を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取り外し可能な記憶装置を有する画像形成装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速、かつ、高精細な印字品質を維持するために、十分な冷却や定期的な清掃を行う画像形成装置がある。
【0003】
また、コントローラに、書き換え可能な記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)を備える画像形成装置がある。この画像形成装置は、オペレーティングシステム(OS)を起動させるためのデータをHDDに保存している。そのHDDは、起動時のみならず、画像データの一時保存やユーザデータの保存にも利用される。さらに、機密性の高いユーザデータがHDDに保存される場合に応えて、HDDをユーザが取り外せる機構(リムーバブル)を備える画像形成装置がある。
【0004】
特許文献1には、HDDを備えた画像形成装置における、HDDの電源制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−262065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の画像形成装置では、次のような課題がある。ユーザが取り外し可能な記憶装置を取り外したいと思っても、その記憶装置に記憶されたデータを用いた処理を画像形成装置が行っていると、その処理が終了するまでユーザはその記憶装置を取り外すことができない。その処理を強制的に終了させれば、記憶装置を取り外すことが可能となるが、そのような強制終了により他の問題が生じる。例えば、冷却や清掃などの処理を行っている場合には、その処理を強制終了すると画像形成装置の性能や、形成される画像の品質が低下してしまう。一方、その処理は記憶装置に保持されたデータを用いた処理であるため、記憶装置を取り外した後にその処理を再度行うことはできない。
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決することにある。
【0008】
本発明の特徴は、取り外し可能な記憶装置に記憶されている動作データを用いた動作を実行する必要がある場合でも、その取り外し可能な記憶装置のデータによる動作に支障を及ぼすことなく、画像形成装置の終了指示により直ちに、その取り外し可能な記憶装置を画像形成装置本体から取り外すことができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る画像形成装置は以下のような構成を備える。即ち、
画像形成装置の動作を制御する動作データを記憶する取り外し可能な記憶装置を接続可能な画像形成装置であって、
前記画像形成装置のシャットダウン指示をユーザから受け付けた際、前記取り外し可能な記憶装置に記憶されている前記動作データを使用した動作を実行する必要があるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記動作データを使用した動作を実行する必要があると判定されると、内蔵の不揮発性記憶部に前記動作データを記憶させて前記画像形成装置を再起動させる再起動手段と、
前記再起動手段による再起動後、前記内蔵の不揮発性記憶部に記憶された前記動作データを使用した動作を実行するよう制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、取り外し可能な記憶装置に記憶されている動作データを用いた動作を実行する必要がある場合でも、画像形成装置の終了指示により直ちに、その取り外し可能な記憶装置を画像形成装置本体から取り外すことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】画像形成装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】画像形成装置のシステムコントローラの詳細構成を示すブロック図。
【図3】システムコントローラの全体的な処理手順を示すフロー図。
【図4】シャットダウン処理の詳細な処理手順を示すフロー図。
【図5】第1〜第3実施形態に係る起動処理の詳細な処理手順を示すフロー図。
【図6】第4実施形態に係る起動処理の詳細な処理手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものでなく、また本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、画像形成装置100の構成図である。画像形成装置100は、システムコントローラ101、表示機構部102、印刷機構部103、電源機構部104、及び電源スイッチ119を有する。
【0014】
システムコントローラ101は、表示機構部102、印刷機構部103、電源機構部104、電源スイッチ119と接続されており、画像形成装置100全体の制御を行う。システムコントローラ101の内部構成に関しては、図2を用いて後述する。
【0015】
表示機構部102は、表示コントローラ105と表示部106とを有する。表示部106は液晶パネルなどを備え、画像形成装置100の状況(ステータス)を表示してユーザに知らせる。また、表示部106は、図示しないユーザからの指示入力部(液晶パネルに貼り付けられたタッチパネルシートや、その他ハードキー)を備え、印刷枚数や印刷設定などといった情報を受け付ける役割も果たす。表示コントローラ105は、制御線107によって表示部106に接続され、図示しない独自のCPUを備え、表示部106に描画する描画データの制御と、表示部106が受け付けたユーザからの指示の認識を行う。また、表示コントローラ105は、制御線115を介してシステムコントローラ101にも接続され、システムコントローラ101が送信した描画データの受信、および認識したユーザからの指示をシステムコントローラ101に送信する役割も果たす。表示コントローラ105のCPUは、システムコントローラ101に依存せず独立動作が可能である。
【0016】
印刷機構部103は、プリンタコントローラ108とプリンタ109とを有する。プリンタ109は、印刷データに従って紙に印刷を行う印刷部(図示しない)と、紙を搬送する紙搬送部(図示しない)とを有する。また、それらのメンテナンスのために、冷却機構(図示しない)や清掃機構(図示しない)も有する。プリンタコントローラ108は、制御線110を介してプリンタ109と接続され、図示しない独自のCPUを有し、プリンタ109が印刷する印刷データの制御、紙送り制御、および清掃や冷却といったプリンタ109の制御を行う。また、プリンタコントローラ108は、制御線116によってシステムコントローラ101にも接続され、システムコントローラ101が送信した印刷データの受信、およびプリンタ109の状態をシステムコントローラ101に送信する役割も果たす。プリンタコントローラ108のCPUは、システムコントローラ101に依存せず独立動作が可能である。
【0017】
電源機構部104は、電源コントローラ111と電源部112とを有する。電源部112は、商用電源と接続する電源供給線114と、電源供給線114によって得た電力を変圧する変圧器(図示しない)、および変圧した電力を直流に変換するAC/DCコンバータ(図示しない)を有する。電源コントローラ111は、制御線113によって電源部112と接続される。そして、電源コントローラ111は、電源部112が生成する電源の制御と、システムコントローラ101や印刷機構部103といった画像形成装置100の各部への電力供給制御も行う。また、電源コントローラ111は、制御線117によってシステムコントローラ101にも接続され、システムコントローラ101の指示に従って、画像形成装置100の各部へ電力を供給或いは電力供給の停止を行う。
【0018】
電源スイッチ119は、ユーザが画像形成装置100の電源のオン・オフを切り替えたい場合に操作するスイッチである。電源スイッチ119は、電源機構部104ではなくシステムコントローラ101に接続されており、電源スイッチ119をオフしても即座に画像形成装置100の電源がオフされるわけではない。即ち、システムコントローラ101は電源スイッチ119がオフされたことを検知すると、制御線117を介して電源コントローラ111を制御して、電源機構部104から画像形成装置100の各部への電力供給を停止するように制御する。
【0019】
図2は、システムコントローラ101の内部構成の詳細を示す図である。尚、図1と共通する部分は同じ記号で示している。システムコントローラ101は、CPU201、メモリ202、チップセット203、内蔵HDD205、ネットワーク用IC213、リムーバブルHDD206を接続するためのコネクタ208を含む。更に、図1の機構部102〜104と接続するためのコネクタ210〜212を有する。
【0020】
リムーバブルHDD206及び内蔵HDD205は、不揮発性の記憶装置であり、システムコントローラ101が起動するために必要なデータを提供する。また、ユーザの指示によって任意のユーザデータを保存することも可能である。内蔵HDD205は、リムーバブルHDD206のように簡単に取り外すことができない。リムーバブルHDD206及び内蔵HDD205へは、チップセット203を介して電源機構部104から共通の電源が供給される。
【0021】
コネクタ208は、リムーバブルHDD206を取り外し可能に接続する。このHDD206は、iVDR(Information Versatile Disk for Removable usage)で規格化されている。
【0022】
なお、本実施形態では、取り外し可能な記憶装置としてHDDを想定している。そのため、コネクタ208及びリムーバブルHDD206を採用したが、その他にUSBコネクタ及びUSBメモリであってもよいし、CD、DVD等の記憶媒体及びこれらを受け付けるスロットであってもよい。
【0023】
CPU201は、OSによって画像形成装置100全体の制御を統括するほか、印刷機構部103が印刷する印刷データ、及び表示機構部102が表示する画面データの生成も行う。
【0024】
チップセット203は、システムコントローラ101と外部インターフェイスとを接続するI/Oコントローラである。即ち、チップセット203は、コネクタ210〜212のそれぞれを介して、表示機構部102、印刷機構部103、電源機構部104と接続され、CPU201によって、接続された各部の制御を行う。また、チップセット203は、シリアルATAなどの専用バス207によってリムーバブルHDD206および内蔵HDD205に接続され、CPU201によってリムーバブルHDD206及び内蔵HDD205へのデータ読み書きを制御する。また、チップセット203は、ネットワーク用IC213とも接続され、CPU201によるネットワークへのアクセスを制御する。また、チップセット203は、汎用I/Oピンを有し、電源スイッチ119がその汎用I/Oピンに接続され、電源スイッチ119のオン/オフをCPU201に伝える。さらに、チップセット203は、電源供給を切ってもデータが保持される不揮発性メモリ204を有する。不揮発性メモリ204は、例えば、フラッシュメモリであり、起動時に不可欠なデータを保持する。
【0025】
メモリ202は、CPU201に直結され、CPU201内部の図示しないメモリコントローラによって制御される。メモリ202は、例えば、RAMであり、CPU201が実行する各種アプリケーションを展開する場所として使用される他、表示機構部102へ送信する描画データや、印刷機構部103へ送信する印刷データの生成にも使用される。
【0026】
図3、図4、図5のフローチャートを参照して説明する。
【0027】
図3は、本実施形態に係る画像形成装置100の全体的な処理を説明するフローチャートである。なお、この処理を実行するプログラムはメモリ202に展開されており、CPU201の制御の下に実行される。
【0028】
まずS101で、ユーザが電源スイッチ119をオフして、稼動中の画像形成装置100全体のシャットダウンを指示すると、CPU201はチップセット203を介してこのシャットダウン指示を受信・認識する。次にS102に進み、CPU201はプリンタコントローラ108にシャットダウン指示を出す。次にS103に進み、CPU201は、印刷機構部103への電力供給を直ちに停止できるか否か、チップセット203を介して印刷機構部103のプリンタコントローラ108に問い合わせて回答を取得する。つまり、電源オフに移行する前に印刷機構部103の冷却を行う必要があるか否かを、チップセット203を介して印刷機構部103のプリンタコントローラ108に問い合わせて回答を取得する。プリンタコントローラ108は、例えば、温度センサにより定着器等の温度を計測し、計測した温度が所定値を超えていれば、冷却を行う必要があると判定するようにしてもよい。
【0029】
印刷機構部103への電力供給を直ちに停止できる場合はS115に進み、CPU201は、システムコントローラ101によるシャットダウン処理を実行し、画像形成装置100全体の電源をオフにする。このS115のシステムコントローラ101のシャットダウン処理に関しては、図4にて詳細に説明する。
【0030】
一方、印刷機構部103への電力供給を直ちに停止できない場合はS104に進み、CPU201は、チップセット203内の不揮発性メモリ204のシャットダウンフラグをオンにする。そして、CPU201は、リムーバブルHDD206に保持された動作データを画像形成装置100の不揮発性メモリに待避させる。例えば、不揮発性メモリ204のシャットダウンフラグは、例えば、0又は1の制御値であり、1が設定された状態をフラグオン、0が設定された状態をフラグオフとする。また、デフォルトでフラグオフ(0)が設定されているものとし、S104では、0を1に変更する処理を行うものとする。動作データは、画像形成装置100が有する機能を動作させるためのデータであり、第1実施形態では、印刷機構部211の冷却処理を行うためのデータである。動作データを待避させる不揮発性メモリは、不揮発性メモリ204であってもよく、或いは内蔵HDD205であってもよい。そしてS105で、CPU201は、システムコントローラ101のシャットダウン処理を実行した後、S106でシステムコントローラ101をリセットして再起動させる。
【0031】
次にS107に進み、リセットにより再起動したシステムコントローラ101は、図5にて後述する起動シーケンスにて、不揮発性メモリ204内のシャットダウンフラグがONであることを検出する。そしてリムーバブルHDD206に保持されたデータを使用せずに起動する。その後S108に進み、リムーバブルHDD206が取り外し可能な状態にあることをユーザに報知するための画像データを生成して表示コントローラ105に送信することにより表示部106に表示する。
【0032】
そしてS109に進み、表示部106に表示された画像に従って、ユーザがリムーバブルHDD206を取り外したことが検出されると、CPU201はプリンタコントローラ108にシャットダウンを再指示する。
【0033】
その後、プリンタコントローラ108によるプリンタ109の冷却が継続されるが、S110で、CPU201は定期的にプリンタコントローラ108に対してプリンタ109の冷却の状況を問い合わせる。そしてS111で、プリンタ109の冷却が完了し、CPU201が印刷機構部103の電源をオフにできるとの回答をプリンタコントローラ108から受けた場合はS112に処理を進める。S112では、CPU201は不揮発性メモリ204のシャットダウンフラグをオフにし、S113で、システムコントローラ101のシャットダウン処理を実行して、画像形成装置100の電源をオフにする。一方、S111で、プリンタ109の冷却が未完了で、プリンタコントローラ108が印刷機構部103の電源をただちにオフできないと回答した場合はS114に処理を進める。そして、CPU201はユーザに対して印刷機構部103の冷却中であることを報知するための画像データを生成して表示コントローラ105に送信し、表示部106に表示する。このループは、印刷機構部103の冷却が完了するまで継続される。
【0034】
次に、S105,S113及びS115に共通のシステムコントローラ101のシャットダウン処理の詳細について図4のフローチャートを用いて説明する。
【0035】
シャットダウン処理が開始されると、まずS201で、CPU201はシャットダウンが開始されたことをユーザに報知するための画像データを生成し、表示コントローラ105に送信して描画を指示する。続いてS202に進み、CPU201は、OS上で動作しているアプリケーション(ソフトウェア)を終了させる。次にS203に進み、CPU201はOSの終了処理を開始して、各種プロセスを停止させる。その後S204に進み、CPU201は、OSを起動させるために使用した内蔵HDD205、リムーバブルHDD206をソフトウェア上でアンマウントする。そしてS205に進み、CPU201は、まもなく画像形成装置100の電源が落ちる旨をユーザに報知するための画像データを生成して表示コントローラ105に送信して、表示部106に表示する。ここで、アンマウントするHDDは、S105,S115の処理の場合には内蔵HDD205及びリムーバブルHDD206の双方であるが、S113の処理の場合には内蔵HDD205のみである。最後にS206で、CPU201は電源コントローラ111に画像形成装置100全体の電源オフを指示する。これにより電源コントローラ111が画像形成装置100の電源をオフにして、シャットダウンは完了する。
【0036】
次に、図3のS107のシステムコントローラ101の起動処理の詳細について図5のフローチャートを用いて説明する。
【0037】
S301で、電源スイッチ119によってシステムコントローラ101のチップセット203がユーザからの起動指示を検知すると、S302で、チップセット203は電源コントローラ111に電源入を指示し、画像形成装置100の電源が投入される。次にS303で、チップセット203がCPU201のリセットを解除して、CPU201の動作を開始させる。これによりCPU201は、まずS304で、内蔵HDD205から初期起動に必要なデータをロードして実行する。この後S305に進み、CPU201は、チップセット203内の不揮発性メモリ204にアクセスし、シャットダウンフラグを確認する。シャットダウンフラグがOFFである場合は、CPU201は通常モードでの起動であると認識してS306に進み、リムーバブルHDD206をソフトウェア上でマウントして、リムーバブルHDD206から更なる起動データをロードする。そしてS307に進み、CPU201は、S304で内蔵HDD205からロードした起動データと、S306でリムーバブルHDD206からロードした起動データとを用いてOSを起動させる。その後S308に進み、画像形成装置100として動作させるために必要なアプリケーションをロードして起動する。最後にS309で、CPU201は、画像形成装置100の稼働時に、アプリケーションが起動された旨をユーザに報知するための画像データを生成し、表示コントローラ105に送信して表示部106に表示させる。なお、ここで生成される画像データは、例えば、アプリケーションのメニュー等を表示する操作画面であってもよい。これが、画像形成装置100の通常の起動処理のフローである。
【0038】
一方、S305で、CPU201がシャットダウンフラグがONであると確認した場合はS310に進み、CPU201は、S304で内蔵HDD205からロードした起動データのみを用いて、S307の通常起動時とは異なるOSを起動させる。この後S311で、CPU201は、リムーバブルHDD206を使用しない起動である旨をユーザに報知するための画像データを生成し、表示コントローラ105に送信して表示部1206に表示させる。
【0039】
以上述べたように、ユーザが画像形成装置100のシャットダウンを指示した際に、画像形成装置100をただちにシャットダウンできない事由が存在する場合がある。その場合(本実施形態では、印刷機構部の冷却が必要な場合)、従来は、その事由が解消するまでシャットダウンが終了されず、その間、リムーバブルHDD206を取り外すことができなかった。しかし、本実施形態によれば、ただちにシャットダウンできない事由が存在する場合であっても、その事由が解消するまで待機するのではなく、一旦、強制的にシャットダウンを行う。そして、起動時に、リムーバブルHDD206に保持された起動データを用いずに起動処理を行うため、ユーザは、強制的にシャットダウンを行って、ただちにリムーバブルHDD206を取り外すことができる。また、リムーバブルHDD206がユーザにより取り外された後の起動時であっても、印刷機構部103の冷却を再開するため、印刷機構部103の劣化や故障を誘発する恐れを低減することができる。
【0040】
(第2実施形態)
第1実施形態において、印刷機構部103がただちにシャットダウンできない理由として、印刷機構部103の冷却を例として挙げた。さらに、印刷機構部103の清掃(クリーニング)の場合も、同様のフローで対応できる。第1実施形態との相違は、印刷機構部103の「冷却」か「清掃」かだけであり、一連の処理の流れは同一である。
【0041】
以上述べたように、第2実施形態によれば、ユーザが画像形成装置100のシャットダウンを指示した際に、直ちにリムーバブルHDD206を取り外せない場合であっても、その事由が解消するまで待機するのではなく、一旦、強制的にシャットダウンを行う。そして、リムーバブルHDD206を使用しない状態で再起動する。それによって、ユーザはただちにリムーバブルHDD206を取り外すことができる。その際には、起動後、リムーバブルHDD206が取り外されても、印刷機構部103の清掃が実行されるため、高精度な印刷を維持していくことが可能となる。
【0042】
(第3実施形態)
第1実施形態において、印刷機構部103がただちにシャットダウンできない理由として、印刷機構部103の冷却を例として挙げた。さらに、印刷機構部103に紙詰まりなどの異常が発生している場合も同様のフローで対応できる。第1実施形態と相違する点のみを以下に記載する。
【0043】
第3実施形態の場合、フラグに従った起動処理を行った後に画像形成装置本体の内蔵HDD205に待避させたデータを用いて終了処理を行う前の状態に復帰する。終了処理を行う前の状態とは、第3実施形態では、印刷機構部103の異常により印刷が停止している状態を意味する。よって、サービスマンやユーザ自身の手によって紙詰まり等の異常が取り除かれれば、印刷機構部103はシャットダウン可能となる。この際には、図3のS111にて印刷機構部103のエラーをCPU201が認識し、S114にてエラーの状態をユーザに報知する。そして、ユーザ、もしくはサービスマンによってエラー要因が除去されれば(S111でYes)、シャットダウンが可能となる。又はエラー要因が除去された場合には、印刷を再開するようにしてもよい。
【0044】
以上述べたように、第3実施形態によれば、ユーザは印刷機構部103の異常に関わらず、リムーバブルHDD206を取り外すことが可能となる。印刷機構部103の修理などは、ユーザのいない夜間時などに実施されることがあるが、修理のために重要なデータを保存しているリムーバブルHDD206を接続したまま放置する必要がなくなる。またリムーバブルHDD206を取り外すことができるため、修理の際、ユーザが立ち会う必要がなくなる。その結果、従来は、ユーザが立ち会うために昼間にしかできなかった修理を夜間でも行うことができるようになり、昼間の画像形成装置100の稼働率を上げることが可能となる。
【0045】
(第4実施形態)
第1実施形態において、再起動時のシャットダウンフラグがONである場合に(図5のS305のYes)、CPU201によるOSの起動(S310)は内蔵HDD205からメモリ202(或いは不揮発性メモリ204)にロードされたデータのみを用いて起動することとして説明した。しかし、内蔵HDD205に保存しているデータがOSを起動させるには不足している場合が想定される。この場合、ネットワークから起動データをメモリ202にロードすることも可能である。図6を用いて、第4実施形態に係る起動処理を説明する。なお、図6において、S401〜S409,S413の処理は、前述の図3のS301〜S309,S311の処理と同じであるため、その説明を省略する。
【0046】
第1実施形態との相違は、図6のフローチャートにおけるS410乃至S412である。再起動後、CPU201がシャットダウンモードであると認識すると、S410で、CPU201は内蔵HDD205からネットワークIC用ドライバをメモリ202にロードし、実行する。この結果、CPU201はチップセット203、ネットワーク用IC213を経由してネットワークにアクセスが可能となる。そしてS411に進み、CPU201は図示しないネットワーク先のサーバからOS起動データをメモリ202にロードする。そしてS412に進み、CPU201は、S404で内蔵HDD205からメモリ202にロードされた起動データと、S412でネットワークを介してメモリ202にロードされた起動データとの双方を用いてOSを起動させる。その後は、第1実施形態と同じである。
【0047】
第4実施形態によれば、リムーバブルHDD206を取り外した状態において起動するOSを、CPU201はネットワーク経由でメモリ202にロードするため、内蔵HDD205の容量制約を受けない。内蔵HDD205は、取り外しできないHDDであり、一般には基板上に小容量のものが実装されるが、ネットワーク経由でOS起動用データをメモリ202にロードできれば、通常用OSに劣らない機能をもつOSを起動させることができる。その結果、第1実施形態よりも印刷機構部103の冷却中のCPU201の動作内容を豊富にでき、表示部106の表示内容を充実させたり、ネットワーク先のサーバにCPU201が情報を送信したりすることが可能となる。
【0048】
もちろん、この第4実施形態は、第1実施形態のみならず、第2実施形態や第3実施形態においても適用可能である。
【0049】
(その他の実施例)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置の動作を制御する動作データを記憶する取り外し可能な記憶装置を接続可能な画像形成装置であって、
前記画像形成装置のシャットダウン指示をユーザから受け付けた際、前記取り外し可能な記憶装置に記憶されている前記動作データを使用した動作を実行する必要があるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記動作データを使用した動作を実行する必要があると判定されると、内蔵の不揮発性記憶部に前記動作データを記憶させて前記画像形成装置を再起動させる再起動手段と、
前記再起動手段による再起動後、前記内蔵の不揮発性記憶部に記憶された前記動作データを使用した動作を実行するよう制御する制御手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成装置は印刷機構を有し、
前記動作データは、前記印刷機構の冷却、前記印刷機構の清掃のためのデータ、或いは前記印刷機構の異常要因を除去するためのデータを含むことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記再起動手段はさらに、ネットワークを介して入力した動作データに基づいて前記画像形成装置を再起動させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記再起動手段による再起動後、前記取り外し可能な記憶装置を取り外すことができる旨をユーザに通知する通知手段をさらに有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記再起動手段は、前記判定手段により前記動作データを使用した動作を実行する必要があると判定されると、前記内蔵の不揮発性記憶部に、前記動作データを使用した動作を実行する必要がある旨を示す情報を記憶させ、
前記再起動手段による再起動後、前記内蔵の不揮発性記憶部に前記情報が記憶されていることを条件に、前記内蔵の不揮発性記憶部に記憶された前記動作データを使用した動作を実行するよう制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
画像形成装置の動作を制御する動作データを記憶する取り外し可能な記憶装置を接続可能な画像形成装置の制御方法であって、
判定手段が、前記画像形成装置のシャットダウン指示をユーザから受け付けた際、前記取り外し可能な記憶装置に記憶されている前記動作データを使用した動作を実行する必要があるか否かを判定する判定工程と、
再起動手段が、前記判定工程で前記動作データを使用した動作を実行する必要があると判定されると、内蔵の不揮発性記憶部に前記動作データを記憶させて前記画像形成装置を再起動させる再起動工程と、
制御手段が、前記再起動工程における再起動後、前記内蔵の不揮発性記憶部に記憶された前記動作データを使用した動作を実行するよう制御する制御工程と、
を有することを特徴とする画像形成装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−232572(P2012−232572A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−84702(P2012−84702)
【出願日】平成24年4月3日(2012.4.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】