画像形成装置及びクリーニングブレードの清掃方法
【課題】通常の記録動作を行いながら生産性を落とさず清掃カスを効果的に除去でき、清掃用の消耗部品の補充・交換が不要で装置を止めること無く安定したクリーニング性能維持が可能なインクジェット記録装置及びクリーニングブレードの清掃方法を提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置10は、転写部26の下流側に中間転写ベルト12にクリーニングブレード52の清掃領域(穴部92)と、当該清掃領域から清掃カスを除去する清掃カス回収部32と、を備えている。清掃領域には貫通穴、凹穴、凹溝、凹段差等の清掃構造が設けられている。清掃領域が清掃カス回収部32の処理領域に移動すると、清掃構造内のカスの押し出し、エア吹き付け、洗浄液の噴射等の処理によって清掃領域からカスが除去される。
【解決手段】インクジェット記録装置10は、転写部26の下流側に中間転写ベルト12にクリーニングブレード52の清掃領域(穴部92)と、当該清掃領域から清掃カスを除去する清掃カス回収部32と、を備えている。清掃領域には貫通穴、凹穴、凹溝、凹段差等の清掃構造が設けられている。清掃領域が清掃カス回収部32の処理領域に移動すると、清掃構造内のカスの押し出し、エア吹き付け、洗浄液の噴射等の処理によって清掃領域からカスが除去される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置及びクリーニングブレードの清掃方法に係り、特に、中間転写方式のインクジェット記録装置における中間転写体(ベルトやドラムなど)を清掃するブレードのクリーニング性能を維持・回復するのに好適な清掃技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置の中間転写体や記録紙の搬送ベルトに付着したインクやその他処理液などの清掃手段としてクリーニングブレード(単に「ブレード」と呼ぶ場合もある)を用いる事は広く知られている。しかしブレードに清掃カスが付着してしまうとクリーニング性能が劣化し画像乱れや転写不良が生じてしまう。このような課題に対し、従来はブレードの汚れをさまざまな方法で定期的に除去している(特許文献1〜4)。
【0003】
特許文献1は、ブレードをベルト搬送方向の垂直方向に移動させて搬送ベルトをクリーニングする構成を採用するとともに、搬送ベルトの幅方向の一端に吸収部材(スポンジ等)を備え、ベルト幅方向へのブレード移動によって当該ブレードに付着したインク(付着物)を吸収部材で除去する方法を開示している。
【0004】
特許文献2は、回転体周面に複数のブレードが取り付けられ、搬送ベルトの回転と逆回転させながらベルト上のインクを掻き取るとともに、ベルトに接触していないブレードの先端をインク吸収体(ワイピング部材)に摺接することにより、ブレード付着物を除去する構成を開示している。
【0005】
特許文献3は、印刷終了後、ゴムブレードを搬送ベルトから退避させ、該搬送ベルトを逆回転させる事でブレードのベルト接触面に溜まった液体(汚れカス)を搬送ベルトで上流側へと運び、洗浄液塗布に使用しているウェップで拭き取る構成を開示している。
【0006】
特許文献4は、回転軸の周面にブレードが取り付けられ、ブレードの回転軌道軌跡上でかつ搬送ベルトの下方にインク吸収体を配置した構造を備え、印刷後にブレードを回転させてベルトから離間させるとともに、回転先にあるインク吸収体にブレード先端部を接触させることによりブレードに付着したインク(カス)を除去する構成を開示している。
【特許文献1】特開2006−206279号公報
【特許文献2】特開2006−256840号公報
【特許文献3】特開2006−264893号公報
【特許文献4】特開2007−76863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年インクジェットプリンターの高画質化が進み、特に業務用印刷分野では中間転写体に色材凝集反応剤として、さまざまな処理液や紛体を塗布する事で高精細化の工夫をしている。そのためクリーニングブレードにはインクカスだけでなく、多量の色材凝集反応剤が付着してしまい、ブレード清掃を頻繁に(例えば印刷10枚に1回)行う必要性が出てきた。
【0008】
しかしながら特許文献1の技術では、短いブレードをベルト搬送と垂直方向に動かして記録ヘッドのパージインクを掻き取る機構なので、ベルト全面に付いた処理液を常に清掃する場合には構造上使用できない。
【0009】
特許文献2,4はブレードに付着したインクカスをウェップ材で拭き取るので、カス量が多いと頻繁にウェップ材を交換しなければならず、その間印刷を中断する必要がある。
【0010】
また、特許文献3,4に記載の技術は、通常印刷時とは異なった制御が必要となり、印刷ジョブ毎や、一日に数回レベルでは問題にならないが、10枚毎に行うとなると生産性に大きく効いてくる。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、通常の記録動作を行いながら、生産性を落とさずブレード付着物(清掃カス)を効果的に除去でき、清掃用の消耗部品の補充・交換が不要で装置を止めること無く安定したクリーニング性能維持が可能な画像形成装置及びクリーニングブレードの清掃方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は前記目的を達成するために、インクを打滴するヘッドと、前記ヘッドから打滴されたインクによって1次画像が形成される中間転写体と、前記中間転写体を所定の搬送方向に搬送する搬送手段と、前記中間転写体に形成された1次画像を記録媒体に転写記録する転写手段と、前記転写記録後の前記中間転写体の1次画像が形成される画像形成面をクリーニングするクリーニングブレードと、を備え、前記中間転写体は、前記画像形成面に前記クリーニングブレードと接触させて前記クリーニングブレードに付着した清掃カスを除去する構造が設けられたブレード清掃領域を有することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、1次画像が形成される中間転写体にクリーニングブレードに付着した清掃カスを除去する構造が形成されたブレード清掃領域を設けたので、当該ブレード清掃領域がクリーニングブレードの上を通過するたびにクリーニングブレードが確実に清掃される。また、シンプルで安価な構造であり、故障しにくい構造といえる。
【0014】
更に、通常の画像形成(画像記録)を中断することなく、中間転写体の清掃及びクリーニングブレードの清掃が行われるので、生産性を落とすことがない。
【0015】
中間転写体は、複数の張架ローラに巻き掛けられた無端状のベルト部材を適用してもよいし、ドラム形状を有する部材を適用してもよい。
【0016】
ブレード清掃領域(清掃カスを除去する構造、凹凸構造)は、中間転写体の少なくとも1か所に設けられていればよい。また、ブレード清掃領域と描画領域との間には非描画領域を設ける態様が好ましい。即ち、中間転写体の搬送方向下流側から描画領域、非描画領域、ブレード清掃領域の順に配置する態様が好ましい。なお、ブレード清掃領域を複数備える態様では、中間転写体の搬送方向下流側から描画領域、非描画領域、ブレード清掃領域、非描画領域、描画領域、非描画領域、ブレード清掃領域、…、といった配置が好ましい。
【0017】
インクと反応するとインクを凝集(または不溶化)させる処理液を中間転写体上に付与した後に、ヘッドからインクを打滴するように構成してもよい。即ち、ヘッドの中間転写体搬送方向上流側に処理液付与手段を備える構成も可能である。
【0018】
転写手段は、転写時における記録媒体や1次画像(中間転写体)の温度を所定の転写温度に調整する温度調整手段と、記録媒体と中間転写体に付与する押圧を調整する押圧調整手段と、を含む態様が好ましい。例えば、中間転写体をはさんで対向するローラ対を備え、一方のローラにヒータ等の温度調節手段を含み、他方のローラを移動可能に構成して他方のローラを移動させて記録媒体と中間転写体に付与する押圧を調整する。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の画像形成装置の一態様に係り、前記ブレード清掃領域は、前記クリーニングブレードの前記中間転写体の搬送方向と直交する方向の長さにわたって設けられた貫通穴、凹穴、凹溝及び凸段差のうち少なくとも何れか1つの構造が設けられ、前記搬送手段によって前記中間転写体を搬送させながら前記清掃カスを除去する構造によって前記クリーニングブレードに付着した清掃カスをはぎ取ることを特徴とする。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、ブレード清掃領域に貫通穴、凹穴、凹溝及び凸段差のうち少なくとも何れか1つ清掃カスを除去する構造を形成することで、これらの清掃カスを除去する構造とクリーニングブレードを接触させて、クリーニングブレードに付着したインク等の清掃カスを確実に除去できる。
【0021】
清掃カスを除去する構造は、ブレード清掃領域に全域にわたって異なる形状(大きさ)の凹凸を複数配置する態様が好ましい。また、貫通穴、凹穴及び凹溝の総容積はクリーニングブレードから除去する清掃カスの総体積の2倍以上とする態様が好ましい。
【0022】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載の画像形成装置の一態様に係り、前記クリーニングブレードの前記搬送手段の搬送方向下流側に、前記ブレード清掃領域に溜まった清掃カスを回収する清掃カス回収手段を備えたことを特徴とする。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、クリーニングブレードの前記搬送手段の搬送方向下流側に設けられた清掃カス回収手段によって、クリーニングブレードから除去した清掃カスを回収するように構成したので、クリーニングブレードを清掃する際にブレード清掃領域は常に清掃された状態となり、ブレード清掃領域からクリーニングブレードに清掃カスが再付着することが防止される。
【0024】
請求項4に記載の発明は、請求項1、2又は3記載の画像形成装置の一態様に係り、前記クリーニングブレードに付着した清掃カスの除去時には、前記中間転写体の前記画像形成面に対する前記クリーニングブレードの角度を前記画像形成面と水平もしくは前記画像形成面に対して水平以内になるように前記クリーニングブレードを傾ける角度変更手段を備えたことを特徴とする。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、クリーニングブレードの清掃時にはクリーニングブレードを寝かせることで、クリーニングブレードに付着した清掃カスを除去しやすくなる。一方、中間転写体の清掃時にはクリーニングブレードを立たせることで、中間転写体に付着した清掃カスを除去しやすくなる。
【0026】
クリーニングブレードを傾ける角度は、水平(中間転写体の画像形成面とクリーニングブレードが略平行の状態)でもよいし、中間転写体の画像形成面の水平面よりもクリーニングブレードの先端部が上側に位置する水平以内としてもよい。
【0027】
請求項5に記載の発明は、請求項4記載の画像形成装置の一態様に係り、前記中間転写体の搬送経路上における前記ブレード清掃領域の位置を検出する位置検出手段を備え、前記角度変更手段は、前記位置検出手段の検出結果に基づいて、前記ブレード清掃領域が前記クリーニングブレードによるクリーニング領域に位置するタイミングに合わせて前記クリーニングブレードを傾けることを特徴とする。
【0028】
請求項5に記載の発明によれば、ブレード清掃領域及び描画領域がクリーニングブレードの位置に来るタイミングに合わせてクリーニングブレードの角度を変更することで、好ましい中間転写体の清掃及びクリーニングブレードの清掃が行われる。
【0029】
請求項6に記載の発明は、請求項3、4又は5記載の画像形成装置の一態様に係り、前記ブレード清掃領域は、前記クリーニングブレードの前記中間転写体の搬送方向と直交する方向の長さにわたって設けられた貫通穴を少なくとも含む清掃カスを除去する構造が設けられ、前記清掃カス回収手段は、前記貫通穴の中に挿入可能な凸形状が設けられるとともに、前記中間転写体の前記画像形成面の反対側から前記貫通穴に前記凸形状を挿入して前記貫通穴内の清掃カスを押し出す押出部材を含むことを特徴とする。
【0030】
請求項6に記載の発明によれば、清掃カスを除去する構造(凹凸構造)に貫通穴を少なくとも含む態様において、簡素な構成で貫通穴内の清掃カスを除去することができる。
【0031】
押出部材は、中間転写体の幅(搬送方向と直交する方向に長さ)に対応する長さを有するローラの表面に貫通穴の配置に対応する凸形状が形成される態様が好ましい。また、該ローラが1周すると、ブレード清掃領域のすべての貫通穴に少なくとも1つの凸形状が入るように凸形状の配置、形状(サイズ)を決めるとよい。
【0032】
更に、凸形状は貫通穴の穴径よりも小さくすることで、貫通穴に凸形状が入りやすくなり好ましい。
【0033】
請求項7に記載の発明は、請求項6記載の画像形成装置の一態様に係り、前記清掃カス回収手段は、前記中間転写体の前記画像形成面の反対側から前記貫通穴にエアを吹き付けて前記貫通穴内の清掃カスを吹き飛ばすエア噴出手段を含むことを特徴とする。
【0034】
請求項7に記載の発明によれば、エアによって貫通穴内の清掃カスを吹き飛ばすので、貫通穴のメンテナンスをする際の消耗部品が不要である。
【0035】
請求項8に記載の発明は、請求項7記載の画像形成装置の一態様に係り、前記清掃カス回収手段による清掃カス回収後の前記貫通穴の穴詰まりの有無を検出する穴詰まり検出手段と、前記穴詰まり検出手段によって前記貫通穴の穴詰まりが検出されると、穴詰まりが検出された前記貫通穴を前記清掃カス回収手段の位置に移動させるとともに、前記中間転写対の搬送速度が通常の画像記録時よりも小さくなるように前記搬送手段を制御する搬送制御手段と、前記貫通穴に吹き付けるエアの圧力を通常よりも大きくするよう前記エア噴射手段を制御するエア噴射制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0036】
請求項8に記載の発明によれば、貫通穴の穴詰まりを確実に回避して、好ましいクリーニングブレードの清掃が行われる。
【0037】
穴詰まりが検出されたときには、通常印刷を一時中断し、穴詰まりが解消した後に中断中の印刷を再開するように構成する態様が好ましい。
【0038】
請求項9に記載の発明は、請求項3、4又は5記載の画像形成装置の一態様に係り、前記ブレード清掃領域は、前記クリーニングブレードの前記中間転写体の搬送方向と直交する方向の長さにわたって設けられた凹穴及び凹溝のうち少なくとも何れか1つを含む清掃カスを除去する構造が設けられ、前記清掃カス回収手段は、前記中間転写体の前記画像形成面と反対側から前記中間転写体を押圧して前記清掃カスを除去する構造内の清掃カスを押し出す押出部材を備えたことを特徴とする。
【0039】
請求項9に記載の発明によれば、中間転写体に貫通穴を形成できない場合には、清掃カスを除去する構造として非貫通の凹穴及び凹溝の一方または両方を形成することで、貫通穴と同様にクリーニングブレードを清掃することが可能である。
【0040】
中間転写体に無端状ベルトを適用する態様では、押出部材にローラを適用すると、当該ローラの曲率によって凹穴(凹溝)の開口部が広げられ、凹穴(凹溝)内の清掃カスを除去しやすくなる。
【0041】
請求項10に記載の発明は、請求項9記載の画像形成装置の一態様に係り、前記中間転写体の前記清掃カスを除去する構造の反対側に前記清掃カスを除去する構造の形状に対応する凸突起が設けられ、前記押出部材は前記凸突起を押圧して前記清掃カスを除去する構造内の清掃カスを押し出すことを特徴とする。
【0042】
請求項10に記載の発明によれば、凹穴(凹溝)に対応して設けられた凸突起を押出部材が押すことで、凹穴(凹溝)内の清掃カスをより浮き出させることが可能である。
【0043】
中間転写体の凸突起が設けられる面には、中間転写体の強度を保つため支持部材(バックシート)を備え、当該支持部材は凸突起が設けられる領域が切り抜かれる構造とし、更に、凸突起の高さは支持部材の厚みと同一か、支持部材の厚みよりも小さくすることが好ましい。即ち、支持部材は、凸突起が形成されている領域に対応して、押出部材が入るように切り抜かれている構造とする態様が好ましい。
【0044】
請求項11に記載の発明は、請求項9又は10記載の画像形成装置の一態様に係り、前記清掃カス回収手段は、前記清掃カスを除去する構造に洗浄液を噴射して前記清掃カスを除去する構造に付着した清掃カスを洗い流す洗浄液噴射手段を備えたことを特徴とする。
【0045】
請求項11に記載の発明によれば、クリーニングブレードから除去した清掃カスを拭き取るのではなく洗浄液を用いて洗い流すので、拭き取り部材の交換が不要である。
【0046】
請求項12に記載の発明は、請求項11記載の画像形成装置の一態様に係り、前前記清掃カス回収手段は、前記清掃カスを除去する構造に付着した洗浄液及び前記清掃カスを除去する構造の周辺に付着した洗浄液を除去する洗浄液除去手段を備えたことを特徴とする。
【0047】
請求項12に記載の発明によれば、清掃カスを洗い流す際に用いた洗浄液は洗浄液除去手段によって除去されるので、次の画像形成に対して洗浄液が影響を与えることがない。
【0048】
洗浄液除去手段には、中間転写体に接触して洗浄液を吸収除去する吸収部材を適用する態様が好ましい。
【0049】
請求項13に記載の発明は、請求項12記載の画像形成装置の一態様に係り、前記清掃カス回収手段は、前記位置検出手段の検出結果に基づいて、前記ブレード清掃領域が前記洗浄液噴射手段による洗浄液噴射領域に位置するタイミングに合わせて洗浄液を噴射するとともに、前記ブレード清掃領域が前記洗浄液除去手段による洗浄液除去領域に位置するタイミングに合わせて洗浄液の除去を行うように前記洗浄液噴射手段及び前記洗浄液除去手段を制御する洗浄制御手段を備えたことを特徴とする。
【0050】
請求項13に記載の発明によれば、中間転写体の移動に合わせて洗浄液噴射手段及び洗浄液除去手段を動作させるので、洗浄液の消費が抑制されるとともに洗浄液除去手段の消耗(磨耗)が抑制され、洗浄液噴射手段及び洗浄液除去手段の動作による中間転写体の移動への影響(画像形成、転写記録への影響)を最小限にとどめることが可能となる。
【0051】
請求項14に記載の発明は、請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の画像形成装置の一態様に係り、前記ブレード清掃領域は、前記クリーニングブレードの前記中間転写体の搬送方向と直交する方向の長さにわたって設けられた凸段差を少なくとも含む清掃カスを除去する構造が設けられ、前記清掃カス回収手段は、前記清掃カスを除去する構造に洗浄液を噴射して前記清掃カスを除去する構造に付着した清掃カスを洗い流す洗浄液噴射手段を備えたことを特徴とする。
【0052】
請求項14に記載の発明によれば、凸段差によってクリーニングブレードから除去された清掃カスを洗い流すことができ、凸段差が他の部材に接触しても、当該他の部材に清掃カスが付着しない。
【0053】
凸段差は、中間転写体の移動方向に直交する方向の幅にわたる長さを有していてもよいし、中間転写体の移動方向に直交する方向の幅に満たない長さのものを複数組み合わせて中間転写体の移動方向に直交する方向の幅にわたる長さに対応してもよい。
【0054】
凸段差が中間転写体の搬送経路周辺の各部(例えば、転写ローラ)を通過する際に、当該各部が凸段差と接触しないように、各部を移動させる移動手段を備える態様が好ましい。
【0055】
また、本発明は、ヘッドから中間転写体にインクを打滴して前記中間転写体に1次画像を形成した後に、前記1次画像を記録媒体に転写する画像形成装置において前記中間転写体をクリーニングするクリーニングブレードの清掃方法であって、前記中間転写体の前記画像形成面に清掃カスを除去する構造が設けられたブレード清掃領域と、前記クリーニングブレードと、を接触させて、前記クリーニングブレードに付着した清掃カスを除去することを特徴とするクリーニングブレードの清掃方法を提供する。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、1次画像が形成される中間転写体にクリーニングブレードに付着した清掃カスを除去するブレード清掃領域を設けたので、当該ブレード清掃領域がクリーニングブレードの上を通過するたびにクリーニングブレードが確実に清掃される。また、シンプルで安価な構造であり、故障しにくい構造といえる。更に、通常の画像形成(画像記録)を中断することなく、中間転写体の清掃及びクリーニングブレードの清掃が行われるので、生産性を落とすことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0058】
〔第1の実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成図である。本実施形態のインクジェット記録装置10は、非浸透媒体たる中間転写ベルト12上に画像(1次画像)を記録した後に、普通紙等の記録媒体14に転写を行って本画像(2次画像)を形成する転写方式が適用された記録装置であり、主な構成要素として、中間転写ベルト12に対して凝集処理剤(以後、本実施形態において、単に「処理液」という場合もある)を付与する処理液塗布部16と、中間転写ベルト12上に付与された処理液の乾燥を行うための乾燥部18と、中間転写ベルト12に対して複数色のインクを付与する印字部(インク打滴部)22と、中間転写ベルト12上に形成されたインク画像を記録媒体14に対して転写を行う転写部26と、中間転写ベルト12を清掃するクリーニング部30と、清掃カス(以下、単に「カス」という。)を回収するための清掃カス回収部32(図1中、2点破線で囲んでで図示)を備えて構成される。
【0059】
本例に用いる処理液及びインクの組成については後で詳説するが、処理液はインクに含有される着色材を凝集させる作用を有する酸性液である。インクはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の着色材(顔料)を含有する着色インクである。
【0060】
中間転写ベルト12には無端状ベルトが適用される。この中間転写ベルト12は複数のローラ(図1では2つの張架ローラ34A、34Bとヒートローラ36を図示したが、ベルトの巻き掛け形態は本例に限定されない)に巻き掛けられた構造を有し、張架ローラ34A、34B及びヒートローラ36の少なくとも1つにモータ(図1中不図示、図7に符号188として図示)の動力が伝達されることにより、中間転写ベルト12は、図1において反時計回り方向(矢印Aで示す方向)に駆動される。
【0061】
中間転写ベルト12は、印字部22と対向する表面(画像形成面)12Aの少なくとも1次画像が形成される描画エリア(図1中不図示、図10に符号118で図示)について、樹脂、金属やゴムなどのインク液滴が浸透しない非浸透性を有している。また、中間転写ベルト12の少なくとも描画領域は、所定の平坦性を有する水平面(フラット面)をなすように構成されている。
【0062】
中間転写ベルト12の画像形成面12Aを含む表面層に用いられる好ましい材料としては、例えば、ポリイミド系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂等の公知の材料が挙げられる。
【0063】
本実施形態における中間転写ベルト12としては、耐久性と普通紙転写性の観点からポリイミドなどの基材に表面エネルギー15〜30mN/m(=mJ/m2)程度の弾性材料を30〜150μm程度の厚みで付与したものが望ましく、シリコンゴムやフッ素ゴム、フッ素系エラストマーなどのコーティングが好適である。
【0064】
処理液塗布部16は、クリーニング部30によるクリーニング工程後の中間転写ベルト12に下塗液となる処理液(凝集処理剤)を付与するものであり、印字部22よりも中間転写体搬送方向上流側に配置される。
【0065】
処理液塗布部16には、例えば、塗布用のローラ部材としてのグラビアローラが用いられる。処理液を付着させたグラビアローラを中間転写ベルト12に接触させながら、中間転写ベルト12の搬送方向と逆方向にグラビアローラを回転させることにより、処理液が中間転写ベルト12の画像形成面12Aに塗布される。
【0066】
また、処理液にはインク打滴時の色材固定性と転写性の向上を目的に1〜5重量%のポリマー樹脂(微粒子)を含有しておく態様が好ましい。
【0067】
処理液塗布部16の下流側かつ印字部22よりも上流側に乾燥部18が配置される。本例の乾燥部18は、50〜100℃の範囲で温度制御されるヒータが用いられている。処理液塗布部16によって中間転写ベルト12上に付与された処理液は、この乾燥部18を通過することで加熱され、溶媒成分が蒸発し、乾燥する。これにより、中間転写ベルト12の表面に固体状または半固溶状の凝集処理剤層(処理液が乾燥した薄膜層)が形成される。
【0068】
ここでいう「固体状または半固溶状の凝集処理剤層」とは、以下に定義する含水率が0〜70%の範囲のものを言うものとする。
【0069】
【数1】
乾燥部18の中間転写体搬送方向下流側かつ印字部22よりも上流側には、図示しない冷却器を配置してもよい。例えば、この冷却器は中間転写ベルト12の裏面側に配置される。冷却器は、所定の温度範囲に制御可能であり、乾燥部18の加熱乾燥により凝集処理剤層が形成された中間転写ベルト12を当該冷却器にて40℃程度に低温化することで、中間転写ベルト12からの輻射熱を低減し、印字部22におけるヘッドのノズル内インクの乾燥を抑制する。
【0070】
印字部22は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンダ(M)、黒(K)の各インク色に対応したインクジェット方式の液体吐出ヘッド(以下「ヘッド」という。)22Y、22C、22M、22Kを備える。
【0071】
乾燥部18(及び必要に応じて冷却部)を通過した中間転写ベルト12上の凝集処理剤層に対し、印字部22の各ヘッド22Y、22C、22M、22Kから画像信号に応じて各色(YMCK)の顔料インクを吐出して凝集処理剤層の上に打滴を行う。インクには成膜性を有するポリマー樹脂(微粒子)を含有しておくことも可能であり、かかる態様の場合、転写工程や定着工程により、耐擦性や保存安定性が向上する。
【0072】
凝集処理剤層上にインク液滴を着弾させると、飛翔エネルギーと表面エネルギーとのバランスにより、インクと凝集処理剤層との接触面が所定の面積にて着弾する。インクが凝集処理剤上に着弾した直後に凝集反応が始まるが、凝集反応はインクと凝集処理剤層との接触面から始まる。凝集反応は接触面近傍のみで起こり、インク着弾時における所定の接触面積で付着力を得た状態でインク内の色材が凝集されるため、色材移動が抑止される。
【0073】
このインク液滴に隣接して他のインク液滴が着弾しても先に着弾したインクの色材は既に凝集化しているので後から着弾するインクとの間で色材同士が混合せず、ブリードが抑止される。なお、色材の凝集後には、分離されたインク溶媒が広がり、凝集処理剤が溶解した液体層が中間転写ベルト12上に形成される。
【0074】
上記のように、凝集処理剤層上に着弾したインクは凝集反応により、顔料の凝集体が形成され、溶媒と分離する。なお、顔料の凝集体と分離した溶媒(残溶媒)成分を除去する手段として、印字部22の後段に不図示の溶媒除去ローラ(多孔質材による吸収ローラや表面に液保持用の凹凸を有するローラなど)を配置し、余剰溶媒を除去する態様も好ましい。
【0075】
転写部26は、ヒータ(図1中不図示、図7に複数のヒータを代表して符号189で図示)を有したヒートローラ36と、これに対向して配置される加圧ニップ用の転写ローラ38とを含んで構成される。これらヒートローラ36と転写ローラ38の間に中間転写ベルト12と記録媒体14とを挟み込み、所定の温度に加熱しながら、所定の圧力(ニップ圧)で加圧することにより、中間転写ベルト12上に形成された1次画像を記録媒体14に転写する構成となっている。
【0076】
転写部26における転写時のニップ圧を調整するための手段としては、例えば、ヒートローラ36又は転写ローラ38、若しくはその両方を図1の上下方向に移動させる機構(駆動手段)が挙げられる。
【0077】
転写時のニップ圧や加熱温度(ローラ温度)については、中間転写ベルト12の材質や、使用するインク、記録媒体の種類等の条件に応じて適切な値に制御される。なお、転写時の加熱温度を高くしすぎると、中間転写ベルト12の変形等の問題があり、その一方、加熱温度が低すぎると転写性が悪化するという問題がある。
【0078】
記録媒体14の供給部(給紙部)の構成について、詳細は図示しないが、ロール紙(連続用紙)のマガジンを備える態様、或いは、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給する態様がある。ロール紙を使用する装置構成の場合、裁断用のカッターが設けられており、該カッターによってロール紙は所望のサイズにカットされる。紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンやカセットを併設してもよい。
【0079】
複数種類の記録媒体を利用可能な構成にした場合、メディアの種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
【0080】
本例に適用される記録媒体14の具体例を挙げると、普通紙(上質紙、再生紙を含む)、インクジェット専用紙などの浸透性媒体、コート紙などの非浸透性又は低浸透性の媒体、裏面に粘着剤と剥離ラベルの付いたシール用紙、OHPシートなどの樹脂フィルム、金属シート、電子回路基板、布、木など様々な媒体がある。
【0081】
転写部26に送られた記録媒体14は、ヒートローラ36と転写ローラ38によって所定の温度及び所定のニップ圧で加熱加圧され、中間転写ベルト12上の1次画像が記録媒体14上に転写される。転写部26を通過した記録媒体14(印刷物)は、剥離爪(不図示)によって中間転写ベルト12から分離され、図示せぬ搬送手段によって機外へと排出される。図1には示さないが、印刷物の排出部には、プリントオーダー別に印刷物を集積するソーターが設けられる。
【0082】
なお、中間転写ベルト12から剥離した記録媒体14(印刷物)は機外排出前に図示せぬ定着工程を通してもよい。定着部は、例えば、温度及び加圧力の調整可能な加熱ローラ対を含んで構成される。このような定着工程を付加することにより、インクに含有されるポリマー微粒子を造膜させる(画像の最表面にポリマー微粒子が溶解した薄膜が形成される)ことで、耐擦性や保管性が一段と向上する。定着工程における加熱温度は100〜130℃、加圧力は2.5〜3.0MPaが好ましく、添加したポリマー樹脂の温度特性(成膜温度:MFT)などに応じて最適化される。もちろん、転写部26における転写工程において、転写性と造膜化が両立することができれば、定着部を省略する態様も可能である。
【0083】
転写部26による転写工程後、剥離爪による剥離部40を通過した中間転写ベルト12は、クリーニング部30に到達する。
【0084】
クリーニング部30は、蒸留水や精製水などの水や溶媒除去ローラ等で回収した溶媒、又はこれら液体に界面活性剤などを添加した洗浄液を用いて中間転写ベルト12の洗浄を行う手段であり、洗浄液を噴射する洗浄液噴射部50と、中間転写ベルト12の画像形成面12Aに当接して中間転写ベルト12の画像形成面12Aを摺動払拭するクリーニングブレード52を含んで構成される。また、クリーニングブレード52が摺接する中間転写ベルト12の裏面側にはプラテン54が配設されている。
【0085】
クリーニングブレード52は、中間転写ベルト12の幅と同等、或いは、それよりも僅かに長めに形成され(図8(b)参照)、中間転写ベルト12の全幅を一度に掻き取ることができる。洗浄液噴射部50から中間転写ベルト12の表面に向けて洗浄液を噴射しながらクリーニングブレード52で掻き取ることにより、中間転写ベルト12をクリーニングする。なお、洗浄液の飛散防止とクリーニングブレード52による掻き取り液の回収等のために、クリーニング部30は容器56で覆われている。このクリーニング部30は、主に、記録媒体14への画像転写終了後の中間転写ベルト12をクリーニングする手段として機能する。
【0086】
また、詳細は後述するが、中間転写ベルト12の幅に対応する長さのクリーニングブレード52に付着した清掃カスを中間転写ベルト12によって取り除き、その取り除いた清掃カスを清掃カス回収部32にて回収する構成となっている。
【0087】
次に、インクジェット記録装置10の要部の構成について更に詳説する。
【0088】
〔印字部の構成〕
図1に示したように、印字部22は、中間転写体搬送方向に沿って上流側から、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンダ(M)、黒(K)の順に、各色に対応したヘッド22Y、22C、22M、22Kが並んで設けられている。
【0089】
また、インク貯蔵/装填部58は各ヘッド22Y、22C、22M、22Kにそれぞれ供給するインク液を各々貯蔵するインクタンクを含んで構成される。各インクタンクは所要の流路を介してそれぞれ対応するヘッドと連通されており、各ヘッドに対してそれぞれ対応するインク液を供給する。インク貯蔵/装填部58は、タンク内の液体残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、液体間の誤装填を防止するための機構を有している。
【0090】
インク貯蔵/装填部58の各インクタンクから各ヘッド22Y、22C、22M、22Kにインクが供給され、各ヘッド22Y、22C、22M、22Kから中間転写ベルト12の画像形成面12Aに対してそれぞれ対応する色インクが打滴される。
【0091】
図2は、印字部22の平面図である。同図に示すように、各ヘッド22Y、22C、22M、22Kは、それぞれ中間転写ベルト12における描画領域の最大幅に対応する長さを有し、そのインク吐出面には描画領域の全幅にわたってインク吐出用のノズル(図2中不図示、図3に符号81で図示)が複数配列されたノズル列を有するフルライン型のヘッドとなっている。各ヘッド22Y、22C、22M、22Kは、中間転写体(中間転写ベルト)搬送方向と直交する方向に延在するように固定設置される。
【0092】
中間転写ベルト12の幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッドを吐出液別に設ける構成によれば、中間転写ベルト12の搬送方向(図2中、符号Aで図示)について、中間転写ベルト12と印字部22を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、中間転写ベルト12の描画エリアに画像(1次画像)を形成することができる。これにより、中間転写体搬送方向と直交する方向(主走査方向;図3中矢印Mで示す方向)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドが適用される場合に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
【0093】
本例では、YMCKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0094】
〔ヘッドの構造〕
次に、各ヘッドの構造について説明する。色別のヘッド22Y、22C、22M、22Kの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号80によってヘッドを示すものとする。
【0095】
図3(a)はヘッド80の構造例を示す平面透視図であり、図3(b)はその一部の拡大図である。記録媒体14上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド80におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド80は、図3(a),(b)に示したように、インク吐出口であるノズル81と、各ノズル81に対応する圧力室82等からなる複数のインク室ユニット(記録素子単位としての液滴吐出素子)83を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(中間転写ベルト12の搬送方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0096】
中間転写ベルト12の搬送方向(図3中矢印Sで図示)と略直交する主走査方向(図3中矢印Mで図示)に中間転写ベルト12の描画エリアの全幅Wmに対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は図示の例に限定されない。例えば、図3(a)の構成に代えて、図4に示すように、複数のノズル81が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール80’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで長尺化することにより、全体として中間転写ベルト12の描画エリアの全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
【0097】
各ノズル81に対応して設けられている圧力室82は、その平面形状が概略正方形となっており(図3(a),(b)参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル81への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)84が設けられている。なお、圧力室82の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
【0098】
図5は、ヘッド80における記録素子単位となる1チャンネル分の液滴吐出素子(1つのノズル81に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図3(a) 中の5−5線に沿う断面図)である。
【0099】
図5に示したように、各圧力室82は供給口84を介して共通流路85と連通されている。共通流路85はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路85を介して各圧力室82に供給される。
【0100】
圧力室82の一部の面(図5において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)86には個別電極87を備えたアクチュエータ88が接合されている。個別電極87と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ88が変形して圧力室82の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル81からインクが吐出される。なお、アクチュエータ88には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、アクチュエータ88の変位が元に戻る際に、共通流路85から供給口84を通って新しいインクが圧力室82に再充填される。
【0101】
入力画像からデジタルハーフトーニング処理によって生成されるドットデータに応じて各ノズル81に対応したアクチュエータ88の駆動を制御することにより、ノズル81からインク滴を吐出させることができる。中間転写ベルト12を一定の速度で副走査方向(図3(a)参照)に搬送しながら、その搬送速度に合わせて各ノズル81のインク吐出タイミングを制御することによって、中間転写ベルト12上に所望の画像(ここでは、転写前の1次画像)を記録することができる。
【0102】
上述した構造を有するインク室ユニット83を図6に示す如く主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
【0103】
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット83を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影(正射影)されたノズルのピッチPはd×cosθとなり、主走査方向については、各ノズル81が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影される実質的なノズル列の高密度化を実現することが可能になる。
【0104】
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、中間転写ベルト12の幅方向(中間転写ベルト12の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
【0105】
特に、図6に示すようなマトリクス状に配置されたノズル81を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。即ち、ノズル81-11 、81-12 、81-13 、81-14 、81-15 、81-16 を1つのブロックとし(他にはノズル81-21 、…、81-26 を1つのブロック、ノズル81-31 、…、81-36 を1つのブロック、…として)、中間転写ベルト12の搬送速度に応じてノズル81-11 、81-12 、…、81-16 を順次駆動することで中間転写ベルト12の幅方向に1ラインを印字する。
【0106】
一方、上述したフルラインヘッドと中間転写ベルト12とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
【0107】
そして、上述の主走査によって記録される1ライン(或いは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。即ち、本実施形態では、中間転写ベルト12の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。
【0108】
また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ88の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
【0109】
〔制御系の説明〕
図7は、インクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース170、システムコントローラ172、メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178、転写制御部179、プリント制御部180、画像バッファメモリ182、ヘッドドライバ184、凝集処理液塗布制御部185等を備えている。
【0110】
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ186から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース170にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ186から送出された画像データは通信インターフェース170を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦メモリ174に記憶される。
【0111】
メモリ174は、通信インターフェース170を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ172を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ174は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0112】
システムコントローラ172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ172は、通信インターフェース170、メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178、転写制御部179等の各部を制御し、ホストコンピュータ186との間の通信制御、メモリ174の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ188やヒータ189を制御する制御信号を生成する。
【0113】
メモリ174には、システムコントローラ172のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、メモリ174は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ174は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0114】
モータドライバ176は、システムコントローラ172からの指示にしたがってモータ188を駆動するドライバである。図7には、装置内の各部に配置されるモータを代表して符号188で図示されている。例えば、図7に示すモータ188には、図1の張架ローラ34A、34Bのうち駆動ローラを駆動するモータや、記録媒体14を搬送する搬送機構の駆動モータなどが含まれている。
【0115】
ヒータドライバ178は、システムコントローラ172からの指示にしたがって、ヒータ189を駆動するドライバである。図7には、インクジェット記録装置10に備えられる複数のヒータを代表して符号189で図示されている。例えば、図7に示すヒータ189には、図1に示す乾燥部18に含まれるヒータや、不図示の定着部(転写記録後の記録媒体14に画像を定着させる処理部)の加熱ローラ対に含まれるヒータなどが含まれている。
【0116】
転写制御部179は、図1に示す転写部26の転写ローラ38の押圧制御を行う。記録媒体14の種類やインクの種類ごとに、転写ローラ38の押圧最適値が予め求められ、データテーブル化されて所定のメモリ(例えば、メモリ174)に記憶されている。記録媒体14の情報や使用インクの情報を取得すると、当該メモリを参照して転写ローラ38の押圧が制御される。転写ローラ38の押圧を可変させるときに転写ローラ38を移動させる移動機構のモータは、図7のモータ188に含まれる。
【0117】
システムコントローラ172は、装置各部に備えられたセンサから送られる検出信号を受け取り、当該検出信号に基づいて装置各部に対して制御信号を送出する。即ち、システムコントローラ172は、各センサの検出信号に基づいて各部を制御する制御手段として機能する。
【0118】
プリント制御部180は、システムコントローラ172の制御に従い、メモリ174内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ184に供給する制御部である。プリント制御部180において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッドドライバ184を介してヘッド80のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0119】
プリント制御部180には画像バッファメモリ182が備えられており、プリント制御部180における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ182に一時的に格納される。また、プリント制御部180とシステムコントローラ172とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0120】
ヘッドドライバ184は、プリント制御部180から与えられる画像データに基づいてヘッド80(ヘッド22Y,22C,22M,22K)のアクチュエータ88に印加される駆動信号を生成するとともに、該駆動信号をアクチュエータ88に印加してアクチュエータ88を駆動する駆動回路を含んで構成される。なお、図7に示すヘッドドライバ184には、ヘッド80の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0121】
印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース170を介して外部から入力され、メモリ174に蓄えられる。この段階では、RGBの画像データがメモリ174に記憶される。
【0122】
メモリ174に蓄えられた画像データは、システムコントローラ172を介してプリント制御部180に送られ、該プリント制御部180においてインク色ごとのドットデータに変換される。即ち、プリント制御部180は、入力されたRGB画像データをYCMKの4色のドットデータに変換する処理を行う。プリント制御部180で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ182に蓄えられる。
【0123】
なお、中間転写ベルト12上に形成される1次画像は、転写の際に反転することを考慮して、最終的に記録媒体14に形成される2次画像(記録画像)の鏡面画像としなければならない。即ち、ヘッド22Y,22C,22M,22Kに供給される駆動信号は鏡面画像に対応した駆動信号であり、プリント制御部180にて入力画像に対して反転処理を施す必要がある。
【0124】
凝集処理液塗布制御部185は、プリント制御部180から送られる制御信号に基づいて処理液塗布部16を制御する。例えば、プリント制御部180に画像データが送られると凝集処理液の塗布量が決められ、描画エリア(図9参照)が処理液塗布部16の処理領域に到達すると凝集処理液の塗布が開始される。
【0125】
図7に示すプログラム格納部190には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ172の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部190はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。なお、プログラム格納部190は動作パラメータ等の記録手段(不図示)と兼用してもよい。
【0126】
〔クリーニング部におけるブレードの清掃方法の説明〕
次に、図1に示すクリーニング部30及び清掃カス回収部32の詳細について説明する。
【0127】
図8(a)はクリーニング部30及び清掃カス回収部32の要部構成図である。中間転写ベルト12の一部、又は複数部には、複数の穴90が形成された穴部92(ブレード清掃領域)が設けられている(図8(b)参照)。中間転写ベルト12の搬送により穴部92がクリーニングブレード52上を通過するときにクリーニングブレード52に溜まったカス95はこの穴90に入り込み、更に中間転写ベルト12の搬送に伴い穴部92はクリーニングブレード52下流側の清掃カス回収部32に移動する。
【0128】
穴90の配置はクリーニングブレード52に付着したカス95を満遍なく除去するために、中間転写ベルト12を搬送するとクリーニングブレード52の全面(掻き取り面となる幅方向の全体)が必ず穴90を通過するように配置されている。図8(b)に示すように中間転写ベルト12の穴90を大小径違いで構成することで、より少ない穴の数でクリーニングブレード52全面をカバーできる。
【0129】
穴90の量(数)はクリーニングブレード52に付着するカス95の量に応じて決定される。ここではベルト幅500mm、周長7000mmに処理液が3μm塗布されているとして、これをクリーニングブレード52で掻き取り、70%は洗浄液と共にクリーニングブレード52から滑落することから、クリーニングブレード52の先端部に残存するカス95の量はベルト1周分で500×7000×0.003×0.3=3150mm3である。
【0130】
これに対してベルトの穴90は厚さ0.3mmのベルトに幅500mm、周長方向100mm間に開口率50%で穴を開ければ0.3×500×100×0.5=7500mm3で安全率2以上となる。具体的にはφ10mmの穴120個とφ5mmの穴800個で(5×5×π×120+2.5×2.5×π×800)×0.3=7536mm3となり、φ10mmの穴の周りをφ5mmの穴6〜7個で囲むようにする。
【0131】
なお、カス95の量が多く中間転写ベルト12が1周する前にクリーニング性能の劣化が起きる場合は、穴90(穴部92)の位置を中間転写ベルト12の周面の複数か所に分けることで、クリーニングブレード52は逐次クリーニングされ、クリーニングブレード52のクリーニング性能を保つことができる。
【0132】
クリーニングブレード52は固定のままでも効果はあるが、図8(a)に図示するように、更に効果を上げるため、ベルト穴がクリーニングブレード52上に来た時はクリーニングブレード52の角度を寝かせることで、クリーニングブレード52に付着したカスをより多く除去できるようにしている。例えば、通常のベルト清掃時(ベルト面に付着したインク等の付着物94を除去する中間転写ベルト12の清掃時)は、図9に示す状態で中間転写ベルト12とクリーニングブレード52の角度(ブレード角度α)は45°とする。一方、クリーニングブレード52の清掃時(穴部92に接触するとき)は図8(a)に示すように、ブレード角度αを20°としている。なお、図9に示すように、クリーニングブレード52はバネ96(付勢部材)によってベルト面を押す方向(図9において上方向)に付勢されている。
【0133】
クリーニングブレード52を寝かせるタイミングは、図8(a)に記載のベルト位置検出センサ98で中間転写ベルト12の穴90(穴部92)の位置(若しくは、中間転写ベルト12に付けたマーク)を認識して行い、穴90等の認識から所定の時間経過後に元の角度に戻すように制御される。
【0134】
即ち、洗浄液噴射部50よりもベルト搬送方向上流側にベルト位置検出センサ98(非接触式が好ましく、例えば、光学式センサを用いる)が配置されており、当該ベルト位置検出センサ98にて穴90(穴部92)の位置(若しくは所定のマーク)を検出したら、クリーニングブレード52を不図示のアクチュエータにて押し上げ、ブレード角度を寝かせ、所定角度(例えば、20°)とする。
【0135】
少なくとも穴部92がクリーニングブレード52を通過するまでの時間、この状態を維持し(図8(a))、所定時間経過後に、クリーニングブレード52の押し上げを解除して、元のブレード角度(図9)に戻す。ベルト位置検出センサ98の位置とベルト搬送速度に基づき、制御に必要な所定時間の設定が行われる。ブレード角度αの切り替えは、図7のシステムコントローラ172によって制御される。
【0136】
中間転写ベルト12のクリーニング時のブレード角度αは45°以上80°以下が好ましい。また、クリーニングブレード52のクリーニング時のブレード角度αは0°以上45°以下が好ましく、5°以上45°以下とするとより好ましい。
【0137】
例えば、クリーニングブレード52のクリーニング時において、クリーニングブレード52の先端部が中間転写ベルト12の画像形成面12Aに対して、クリーニングブレード52の回転軸に位置よりも上側(中間転写ベルト12側)に位置するようにブレード角度αが決められる。言い換えると、中間転写ベルト12の画像形成面12Aとクリーニングブレード52が平行な状態(ブレード角度α=0°)よりもクリーニングブレード52の先端部が上がった状態になるように、ブレード角度αは水平或いは水平以内となるように制御される。
【0138】
クリーニングブレード52は耐久性と中間転写ベルト12の清掃性能から硬度80〜90度の弾性材料が好ましい。ここでは厚さ7mmのウレタンゴム(AU)、もしくはニトリルゴム(NBR)を使用する。
【0139】
クリーニングブレード52の下流側に設けられた清掃カス回収部32は、中間転写ベルト12の穴90に入ったカス95を回収する手段として、表面に突起状のイボ(凸イボ)101を有するローラ(「凸イボローラ102」という。)と、エアノズル104と、回収容器106を備える。更に、エアノズル104の下流側には、ベルト内面側に溢れたカスを拭取るための拭取り部材(本例では、拭取スポンジ108)が設けられている。
【0140】
凸イボローラ102は、中間転写ベルト12の内周面(裏面)側に配置されており、偏芯カム110によって図8(a)の上下方向に移動することにより、中間転写ベルト12の内周面に当接する状態とベルトから離間した状態が可能である。
【0141】
凸イボローラ102のイボ101(凸突起)は、中間転写ベルト12に形成されている穴90の径より小さく、穴90に詰まっているカス95を押し出す。その直後にエアノズル104より圧縮空気が中間転写ベルト12の内側より吹き付けられ、穴90のカス95を吹き飛ばす。
【0142】
なお、中間転写ベルト12の幅に対応する長さを有する凸イボローラ102を1つ備えてもよいし、中間転写ベルト12の幅に満たない長さの凸イボローラ102を複数組み合わせてもよい。凸イボローラ102が1周すると穴部92の穴90のすべてに少なくとも1つのイボ101が入るように、イボ101の数及び配置が決められている。
【0143】
また、中間転写ベルト12の幅に対応して複数のエアノズル104を並べてもよいし、1つまたは複数のエアノズル104を中間転写ベルト12の幅方向に走査させるように構成してもよい。
【0144】
中間転写ベルト12を挟んで凸イボローラ102及びエアノズル104の反対側には回収容器106が設けられており、穴90から除去されたカス95は回収容器106にて回収される。更に、回収容器106にはエアを逃がす排気路112が設けられている。
【0145】
凸イボローラ102の中間転写ベルト12への着脱、並びにエアノズル104から圧縮空気を出すタイミングは、図8(a)に記載のベルト位置検出センサ98の検出に基づき検出タイミングからの経過時間で制御し、必要な時だけエアを使いコンプレッサーの稼動時間を抑える。
【0146】
また、中間転写ベルト12内側にはみ出たカスは最下流の拭取スポンジ108で拭き取ることにより、ベルト駆動ローラ(34A、34B,36)の汚れを防ぐ。なお、この拭取スポンジ108はベルト位置検出センサ98の検出結果に基づいて着脱制御することで必要ない時は中間転写ベルト12より離間し、拭取スポンジ108の磨耗や拭取スポンジ108の中間転写ベルト12への当接による中間転写ベルト12の搬送異常が防止される。
【0147】
清掃カス回収部32の後段には穴詰まり検出センサ114(例えば輝度センサ)が設けられており、当該穴詰まり検出センサ114にて穴90が詰まっているか貫通しているかをチェックする。詰まっている時は次の周にエア吹き付け時のベルト搬送スピードを下げる(例えば、500mm/secから20mm/secに下げる)。または、エアノズル104から噴射するエア圧を上げる。若しくはその両方を行い、穴90のカス95を確実に除去することで穴詰まり無く安定した品質を保つことができる。
【0148】
なお、仮に一部の穴90が詰まったまま中間転写ベルト12を一周させても、穴90のカス受け容量は安全率2以上で開けてあるため、ブレード清掃性能は維持できる。
【0149】
装置立ち上げ時や所定時間以上装置が止まった状態からの印刷開始時(例えば、穴90に入った処理液が穴90の中で固まる時間、30分程度)には、中間転写ベルト12を1周させて穴詰まり検出センサ114で穴90の詰まりを確認し、穴90が詰まっている場合は更に中間転写ベルト12を1周させて穴90のクリーニングを行い印刷可能とする。また、印刷JOB終了時や装置立ち下げ時にも中間転写ベルト12を1周させて、穴詰まりの確認動作と穴90のクリーニング動作が行われる。
【0150】
図10には、中間転写ベルト12におけるブレード清掃エリアとしての穴部92と描画エリア118の位置関係を示した。図示のように、穴部92の両側に所定量(ここでは、ベルト搬送方向に20mmずつ)非描画エリア120を設けている。このため、カスが多少穴90からはみ出ていても、描画エリアの画質には影響を与えない。
【0151】
図11は、装置立ち上げ時及び立ち下げ時におけるシーケンスを示すフローチャートである。
【0152】
立ち上げ・立ち下げシーケンスが開始すると(ステップS10)、まず、図8(a)に示す洗浄液噴射部50から洗浄液の噴射を開始するとともに(図11のステップS12)、クリーニングブレード52を通常印刷角度(本例では図9のように45°)に設定し(ステップS14)、中間転写ベルト12の駆動を開始する(ステップS16)。即ち、ステップS12〜ステップS16では、中間転写ベルト12のクリーニング処理が実行される。
【0153】
次いで、穴詰まり検出センサ114(センサ2)による検知信号に基づき、穴詰まりの有無を判定する(ステップS18)。穴詰まりが全て無くなったことが確認できなければ、ステップS18でNo判定となり、ステップS20へ進む。
【0154】
ステップS20ではベルト位置検出センサ98(センサ1)による穴部92の位置の認識(または所定のマークの認識)がなされたか否かを判定する。ベルト位置検出センサ98による認識が得られるまで同ステップS20の処理がループし、ベルト位置検出センサ98の検出信号が監視される。
【0155】
ステップS20において、ベルト位置検出センサ98が穴92の位置(または所定マーク)を検知すると(Yes判定)、穴詰まり処理モードに移行し(ステップS22)、中間転写ベルト12の搬送スピードをダウンさせるように設定されるとともに(ステップS24)、図8(a)のエアノズル104からエア噴出圧力を通常処理時よりもアップするように設定される(図11のステップS26)。
【0156】
そして、凸イボローラ102を中間転写ベルト12に接触させ(ステップS30)、エアノズル104からのエア噴出を開始するとともに(ステップS32)、拭取スポンジ108をベルト内周面に当接させる位置にセットする(ステップS34)。
【0157】
ベルト位置検出センサ98による穴位置(または所定マーク)の認識後、所定の時間(穴部92がクリーニング部30及び清掃カス回収部32の処理領域を通過するまでの時間)が経過したか否かを判定し(ステップS36)、所定時間経過するまで同状態を維持する。この間に、洗浄カスの除去と回収が行われる。
【0158】
ステップS36において、所定時間が経過し、YES判定になると、ステップS38に進み、凸イボローラの離間、エア噴射の停止(ステップS40)、及び拭取スポンジ108の離間(ステップS42)が行われる。
【0159】
ステップS42の処理後は、ステップS18に戻り、ステップS18で穴詰まりが発見された場合には、ステップS20〜S42の処理を繰り返す。
【0160】
ステップS18において、穴詰まりが無くなったことが確認されると(No判定)、ステップS50に進み、中間転写ベルト12の駆動停止、クリーニングブレード52の離間(ステップS52)、並びに、洗浄液の噴射の停止を行う(ステップS54)。ステップS54の処理後、本シーケンスを終了する(ステップS56)。
【0161】
図12は、通常印刷時におけるクリーニングブレード52のクリーニングシーケンスを示すフローチャートである。先に説明したように、通常印刷時には中間転写ベルト12への1次画像の形成、記録媒体14への転写記録、中間転写ベルト12のクリーニング等の一連の画像記録シーケンスが実行され、この一連のシーケンスの中でクリーニングブレード52のクリーニングシーケンスが実行される。
【0162】
通常印刷シーケンスにおけるクリーニングブレード52のクリーニングシーケンスを開始すると(ステップS100)、まず、洗浄液の噴射を開始するとともに(ステップS102)、クリーニングブレード52を通常印刷角度(本例では図9のように45°)に設定し(ステップS104)、中間転写ベルト12の駆動を開始する(ステップS106)。即ち、ステップS102〜ステップS106では、中間転写ベルト12のクリーニングシーケンスが実行される。
【0163】
次いで、ベルト位置検出センサ98による穴部92の位置の認識(または所定のマークの認識)がなされたか否かを判定する(ステップS108)。ベルト位置検出センサ98による認識が得られるまで同ステップS108の処理がループし、ベルト位置検出センサ98の検出信号が監視される。
【0164】
ステップS108において、ベルト位置検出センサ98が穴部92の位置(または所定マーク)を検知すると(Yes判定)、クリーニングブレード52が20°の角度に寝かされるとともに(ステップS110)、凸イボローラ102を中間転写ベルト12に接触させ(ステップS112)、エアノズル104からのエア噴出を開始するとともに(ステップS114)、拭取スポンジ108をベルト内周面に当接させる位置にセットする(ステップS116)。
【0165】
その後ステップS118に進み、ベルト位置検出センサ98による穴部92の位置(または所定マーク)の認識後、所定の時間が経過したか否かを判定し、所定時間経過するまで同状態を維持する。この間に、洗浄カス(図8(a)参照)の除去と回収が行われる。図12のステップS118において、所定時間が経過し、YES判定になると、ステップS120に進み、クリーニングブレード52の角度を通常印刷角度(45°)に戻すとともに、凸イボローラの離間(ステップS122)、エア噴射の停止(ステップS124)、及び拭取スポンジ108の離間(ステップS126)が行われる。
【0166】
その後、ステップS128に進み、図8(a)に示す穴詰まり検出センサ114によって清掃カス回収部32を通過した穴部92の穴詰まりの有無が検出される。図12のステップS128において穴部92の穴詰まりがあると判断されると(NO判定)、ステップS130に進む。清掃カス回収部32を通過した穴部92の穴詰まりがある場合には、中間転写ベルト12を1周させて、ベルト位置検出センサ98による穴部92の位置の認識(または所定のマークの認識)がなされたか否かが判定される(ステップS130)。また、ベルト位置検出センサ98による認識が得られるまで同ステップS130の処理がループし、ベルト位置検出センサ98の検出信号が監視される。
【0167】
ステップS130において、ベルト位置検出センサ98が穴部92の位置(または所定マーク)を検知すると(Yes判定)、穴詰まり処理モードに移行し(ステップS132)、中間転写ベルト12の搬送スピードをダウンさせるとともに(ステップS134)、エア噴出圧力をアップさせるように設定される。(ステップS26)。
【0168】
そして、凸イボローラ102を中間転写ベルト12に接触させ、エアノズル104からのエア噴出圧力を先のクリーニング処理時よりもアップさせ(ステップS136)、ステップS110からステップS126までのステップを繰り返す。このようにして、穴部92の穴詰まりがなくなるまでステップS110からステップS136のステップを繰り返す。
【0169】
一方、ステップS128において、穴部92の穴詰まりがないと判断されると(YES判定)、ステップS140に進み、所定の印刷工程(印刷Job)を終了するか否かが判断される。印刷工程を継続する場合には(NO判定)、ステップS108に進み、ステップS108からステップS136の一連のステップが実行される。また、所定の印刷工程を終了する場合には(YES判定)、立ち下げ時シーケンス(図11参照)へ移行する(図12のステップS142)。
【0170】
上記の如く構成されたインクジェット記録装置10によれば、中間転写ベルト12の画像形成面12Aをクリーニングするためのクリーニングブレード52に付着したカスを取り除くブレード清掃領域として多数の穴90を有する穴部92備えたので、中間転写ベルト12に設けた穴90がクリーニングブレード52上に来るたびにクリーニングブレード52が清掃される。また、シンプルで安価な故障しにくい構成である。
【0171】
クリーニングブレード52より除去したカス95は拭き取るのではなく洗浄やエアで飛ばす構成としたことで、カス95を拭き取るための部材の交換が不要であり、消耗交換品がないので、装置(印刷)を止めることなく生産性を落とさずにすむ。
【0172】
印刷を止めずにクリーニングブレード52の清掃を行うので、生産性が落ちることなく、常にクリーニングブレード52が清掃されているので安定した品質の印刷が可能である。
【0173】
〔第2実施形態〕
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。図13は、第2実施形態に係るインクジェット記録装置のクリーニング部230及び清掃カス回収部232の要部構成図である。なお、第2実施形態中、第1実施形態と同一または類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0174】
中間転写ベルト212の一部、又は複数部に複数の凹穴(凹溝)290が形成され、更に、凹穴290のベルト裏面(内周面)にはベルト突起(図13中不図示、図14に符号291で図示)が設けられている。中間転写ベルト212に設けられた凹穴(凹溝)290の配置、数、量などは図8(b)で説明した穴90と同じ考え方で決められている。また、凹穴(凹溝)290の深さは、中間転写ベルト212の厚みの50%以上70%以下とする態様が好ましい。
【0175】
凹穴290に入ったカス95は、クリーニングブレード52の中間転写ベルト搬送方向下流側に設けられたカス押出ローラ293で中間転写ベルト212の内周面のベルト突起が押され、更に、カス押出ローラ293の曲率により凹穴290が広がることで、凹穴290からカス95が浮き出てくる。そこに凹穴清掃用の洗浄液噴射部251によって洗浄液を掛け洗い流し、拭取ローラ295で水分を拭き取る。
【0176】
図14は、中間転写ベルト212の一部拡大図である。図14に示すように、中間転写ベルト212の内周面212B側には伸び量が少ないバックシート297(例えばPET)が張られており、ブレード清掃エリア231部分は全体に切り抜かれている。なお、図15に示すようにバックシート297の端はつながっているので強度は保たれる。
【0177】
中間転写ベルト212の内周面212Bに設けられたベルト突起291の厚さは、バックシート297の厚さと同じか若しくはそれ以下にし、ベルト突起291がバックシート297の厚さ以下でバックシート297の端がつながっているので、クリーニングブレード52の清掃時にプラテン54でベルト突起291が押される事が無い。図14には、ベルト突起291の厚さとバックシート297の厚さが同じ厚さの態様を図示する。
【0178】
また、図13に示すように、クリーニングブレード52の中間転写ベルト搬送方向下流側には清掃カス回収部232が設けられ、清掃カス回収部232はカス押出ローラ293を含んで構成されている。図15に示すように、カス押出ローラ293はブレード清掃エリア231のバックシートが切り取られた中に入るようになっており、図16に示すように、凹穴290に入ったカス95はカス押出ローラ293がベルト突起291を中間転写ベルト212の画像形成面212A側に押し、カス95を凹穴290より浮き出させる。更に、カス押出ローラ293の曲率も手伝い凹穴290は更に広がり、カス95を押し出しやすくしている。
【0179】
なお、図16には、カス押出ローラ293がベルト突起291を押すための手段として、カス押出ローラ293を図16の下方向に付勢する付勢部材(ばね)293Aを図示した。
【0180】
このようにして凹穴290から押し出されたカス95は凹穴清掃用の洗浄液噴射部251(図13参照)から噴射される洗浄液により洗い流され、清掃カス回収部232から図示されてないホースにより回収BOX(不図示)に回収される。回収BOXに回収された洗浄液は濾過され再利用することで廃液量を抑制している。
【0181】
なお、クリーニングブレード52の中間転写ベルト搬送方向上流側でもベルト清掃用の洗浄液噴射部50から洗浄液を噴射しているので、クリーニングブレード52の清掃前に凹穴290は洗浄液で濡れているおり、凹穴290からカス95を取り出す際に、カス95が凹穴290から剥がれやすくなっている。
【0182】
清掃カス回収部232において使用される洗浄液(凹穴清掃用の洗浄液噴射部251に適用される洗浄液)は、中間転写ベルト212の清掃用洗浄液(ベルト清掃用の洗浄液噴射部50に適用される洗浄液)と同種のもの(例えば、純水や界面活性剤)を用いるとよい。なお、洗浄後に拭取ローラ(スポンジローラ)295で中間転写ベルト212の水分は除去される。拭取ローラ295に溜まった水分は絞りローラ295Aで絞り取るので、拭取ローラ295は常に保水力を保つことができる。
【0183】
洗浄液噴射と拭取ローラ295の脱着タイミングは、ベルト位置検出センサ298により中間転写ベルト212に予め付けたマーク(不図示)を読み、その読取結果に基づいてON/OFFするので無駄な洗浄液を出すことがなく、拭取ローラ295から画像形成面212Aに汚れが再付着することを防止する。なお、装置立ち上げ時、立ち下げ時、JOB終了時、若しくは装置停止状態で所定時間以上経った時は、中間転写ベルト212を1周させ、凹穴290の清掃動作が行われる。
【0184】
第2実施形態では、構造上、凹穴290が広がり、洗浄液噴射でカス詰まりを起こす可能性は極めて低く、先に説明した第1実施形態のように穴90のカス詰まりをチェックするセンサ(穴詰まり検出センサ114)は特に設けなくてもよい。
【0185】
図17は、第2実施形態における装置立ち上げ時及び立ち下げ時におけるシーケンスを示すフローチャートである。
【0186】
立ち上げ・立ち下げシーケンスが開始すると(ステップS200)、まず、図13に示すクリーニング部230の洗浄液噴射部50から洗浄液の噴射を開始するとともに(図17のステップS202)、クリーニングブレード52を通常印刷角度(α=45°)に設定し(ステップS204)、中間転写ベルト12の駆動を開始する(ステップS206)。即ち、ステップS12〜ステップS16では、中間転写ベルト12のクリーニング処理が実行される。
【0187】
次に、ステップS208ではベルト位置検出センサ298による凹穴290の位置の認識(または所定のマークの認識)がなされたか否かを判定する。ベルト位置検出センサ298による認識が得られるまで同ステップS208の処理がループし、ベルト位置検出センサ298の検出信号が監視される。
【0188】
ステップS208において、ベルト位置検出センサ298が凹穴290の位置(または所定マーク)を検知すると(Yes判定)、クリーニングブレード52が20°の角度に寝かされるとともに(ステップS210)、清掃カス回収部232の穴清掃用の洗浄液噴射部251から洗浄液の噴射が開始され(ステップS212)、更に、拭取ローラ295がセットされる(ステップS214)。
【0189】
その後、ステップS216に進み、ベルト位置検出センサ298による穴部290の位置(または所定マーク)の認識後、所定の時間が経過したか否かを判定し(穴部290が清掃カス回収部232の処理領域を通過したか否かを判定し)、所定時間経過するまで同状態を維持する。この間に、洗浄カス(図13参照)の除去と回収が行われる。図17のステップS216において、所定時間が経過し、YES判定になると(穴部290が清掃カス回収部232の処理領域を抜け出すと)、ステップS218に進み、クリーニングブレード52の角度を通常印刷角度(α=45°)に戻すとともに、清掃カス回収部232の穴清掃用の洗浄液噴射部251から洗浄液の噴射を停止し(ステップS219)、更に、拭取ローラ295を中間転写ベルト212から離間させ(ステップS220)、中間転写ベルト212の停止(ステップS222)及びクリーニングブレード52の離間(ステップS224)が行われる。
【0190】
その後、ステップS226に進み、クリーニング部230の洗浄液噴射部50から洗浄液の噴射を停止して、当該立ち上げ・立ち下げシーケンスを終了する(ステップS228)。
【0191】
図18には通常印刷時におけるクリーニングブレード52のクリーニングシーケンスを示す。
【0192】
通常印刷シーケンスが開始すると(ステップS300)、まず、図13に示すクリー人部230の洗浄液噴射部50から洗浄液の噴射を開始するとともに(図18のステップS302)、クリーニングブレード52を通常印刷角度(α=45°)に設定し(ステップS304)、中間転写ベルト12の駆動を開始する(ステップS306)。この状態で通常印刷処理が行われ、中間転写ベルト12に画像データに基づいて1次画像が形成されるとともに、転写工程を経て記録媒体14に1次画像が転写される。その後、中間転写ベルト12の画像形成領域がクリーニング部230に移動すると当該画像形成領域に対してクリーニング処理が施される。
【0193】
図13に示すベルト位置検出センサ298は凹穴290の位置を監視し、凹穴290の認識(または所定のマークの認識)がなされたか否かを判定する(図18のステップS308)。ベルト位置検出センサ298による認識が得られるまで同ステップS308の処理がループし、ベルト位置検出センサ298の検出信号が監視される。
【0194】
ステップS308において、ベルト位置検出センサ298が凹穴290の位置(または所定マーク)を検知すると(Yes判定)、クリーニングブレード52が20°の角度に寝かされるとともに(ステップS310)、清掃カス回収部232の穴清掃用の洗浄液噴射部251から洗浄液の噴射が開始され(ステップS312)、更に、拭取ローラ295がセットされる(ステップS314)。
【0195】
その後、ステップS316に進み、ベルト位置検出センサ298による穴部290の位置(または所定マーク)の認識後、所定の時間が経過したか否かを判定し(穴部290が清掃カス回収部232の処理領域を通過したか否かを判定し)、所定時間経過するまで同状態を維持する。この間に、洗浄カス(図13参照)の除去と回収が行われる。図18のステップS316において、所定時間が経過し、YES判定になると(穴部290が清掃カス回収部232の処理領域を抜け出すと)、ステップS318に進み、クリーニングブレード52の角度を通常印刷角度(α=45°)に戻すとともに、清掃カス回収部232の穴清掃用の洗浄液噴射部251から洗浄液の噴射を停止し(ステップS319)、更に、拭取ローラ295を中間転写ベルト212から離間させ(ステップS320)、印刷を終了するか否かを判断する(ステップS322)。即ち、ステップS322において、次の画像データが存在する場合には(NO判定)、通常印刷処理を継続し(ステップS308に進み)、次の画像データが存在しない場合には(YES判定)、立ち上げ時シーケンス(図17参照)へ移行する(ステップS324)。
【0196】
以上説明したように、本発明に係る第2実施形態によれば、中間転写ベルト212に強度などの問題で貫通穴を開けることができない場合にも、非貫通穴を用いて同様の構成を実現することができる。
【0197】
〔第3実施形態〕
次に、本発明に係る第3実施形態について説明する。図19は、本実施形態に係るインクジェット記録装置300の概略構成図であり、図20は中間転写ドラム312の一部を拡大した拡大図である。
【0198】
図19に示すインクジェット記録装置300は、図1等に図示したインクジェット記録装置10の中間転写ベルト12に代わり中間転写ドラム312を備え、中間転写ドラム312を図19における半時計回り方向(矢印線Cで図示する方向)に回動させながら、ヘッド322Y,322C,322M,322Kから各色インクを吐出して中間転写ドラム312の画像形成面(外周面)312Aに1次画像を形成し、転写部326において1次画像が記録媒体314(搬送方向を符号Bで図示)に転写記録されるように構成されている。
【0199】
即ち、インクジェット記録装置300は、中間転写ドラム312に処理液を塗布する処理液塗布部316と、処理液塗布後の中間転写ドラム312を乾燥させる乾燥部318と、乾燥処理後の中間転写ドラム312上にインクを打滴するヘッド322Y,322C,322M,322Kを含む印字部322と、印字部322から打滴されたインクによって形成された1次画像を中間転写ドラム312から記録媒体314に転写する転写ローラ338を含む転写部326と、転写後の記録媒体314を中間転写ドラム312から剥離する剥離部340と、転写後に中間転写ドラム312に残留したインク及び処理液などをクリーニングブレード352により掻き取るクリーニング部330と、クリーニングブレード352から回収されたカスを回収する清掃カス回収部332と、中間転写ドラム312の画像形成面312Aに拭き掛けられた洗浄液を拭き取るスポンジローラ395及びスポンジローラ395から洗浄液を回収する絞りローラ395Aと、を備えている。
【0200】
中間転写ドラム312は中空構造を有し、図20に示すように中間転写ドラム312の一部(1か所)又は複数部(複数か所)に複数の穴(ドラム穴)390が開けられている。中間転写ドラム312の回転によりドラム穴390が形成された部分がクリーニングブレード352上を通過するときにクリーニングブレード352に溜まったカス305はこのドラム穴390に入り込む。
【0201】
更に、図21に示すように、中間転写ドラム312が回動してドラム穴390が形成された部分が清掃カス回収部332を通過するときに、クリーニングブレード352の中間転写ドラム移動方向下流側の中間転写ドラム312の内周に設けられたカス押出ローラ393により中間転写ドラム312のドラム穴390の内側に設けたカス押出材310が押されるのとともに、ドラム穴用洗浄液噴射部351の洗浄液噴射により、カス305はドラム穴390より洗い流され回収BOX306内に回収される。更に、図19に示すように、清掃カス回収部332の中間転写ドラム移動方向下流側には中間転写ドラム312表面の洗浄液を拭取るスポンジローラ(拭取部材)395と、スポンジローラ395から液体を回収する絞りローラ395Aが設けられている。
【0202】
中間転写ドラム312に形成されるドラム穴390の配置、数、量などは、上述した第1、第2実施形態と同様の考え方で決められている。また、クリーニングブレード352は第1、第2実施形態と同様に、クリーニングブレード352を清掃するときはクリーニングブレード352を所定の角度傾けることで、更にカス除去効果を上げることができる。
【0203】
カス押出材310とドラム穴390は隙間が少ないよう、互いに精度よくすき間ばめで加工されている(例えば、H8穴とg6軸)。このように、カス押出材310とドラム穴390を隙間なく構成することでカスや洗浄液が中間転写ドラム312の内部に入ることを防止している。また、ドラム用洗浄液噴射部350、ドラム穴用洗浄液噴射部351、クリーニングブレード352、清掃カス回収部332の配置は中間転写ドラム312の中央より下部に設けることで、重力によってカス及び洗浄液が中間転写ドラム312の内部に入り難い構造としている。
【0204】
カス押出材310には、プッシュロッド310Aが取り付けられ、中間転写ドラム312の内側面より内側に飛び出している。また、引っ張りばね311によりカス押出材310は中間転写ドラム312の表面より内側に待機している。中間転写ドラム312の回動によりプッシュロッド310Aがカス押出ローラ393の真下に位置すると、カス押出ローラ393がプッシュロッド310Aを中間転写ドラム312の外側方向へ押すとともに、一方の端部が中間転写ドラム312の内面に固定された引っ張りばね311を伸ばし、カス押出材310が中間転写ドラム312の表面側に押し出されることでカス305もドラム穴390から押し出される。
【0205】
また、クリーニングブレード352の中間転写ドラム移動方向上流側でドラム用洗浄液噴射部350(図20参照)から洗浄液を噴射しているので、クリーニングブレード352の清掃前にドラム穴390は洗浄液で濡れており、ドラム穴390からカス305を取り出す際に、カス305が剥がれやすくなっている。
【0206】
更に、押し出されたカス305はドラム穴用洗浄液噴射部351による洗浄液噴射により洗い流され、清掃カス回収部332から図示されてないホースにより回収BOX306に回収される。回収された洗浄液は濾過され再利用する事で廃液量を抑制することができる。
【0207】
洗浄液は、中間転写ベルトを適用する態様の中間転写ベルト清掃用と同じ物を用いることができ、例えば、純水や界面活性剤などが挙げられる。本例では、先に説明した第1、第2実施形態と同様に、中間転写ドラム312の洗浄後にスポンジローラ395で中間転写ドラム312表面の水分を除去する。スポンジローラ395に溜まった水分は絞りローラ395Aで搾り取るのでスポンジローラ395の保水力は常に好ましい状態に保たれている。
【0208】
清掃カス回収部332における洗浄液噴射とスポンジローラ395の脱着タイミングは、図示しないドラム位置検出センサにより、中間転写ドラム312に予め付けたマークの読取結果に基づいてON/OFFするので、無駄な洗浄液を出すことなく、スポンジローラ395から画像形成面312Aに汚れが再付着することを防止できる。
【0209】
装置立ち上げ時、立ち下げ時、JOB終了時、装置停止状態において所定時間以上経った時は、中間転写ドラム312を1周させ、ドラム穴390の清掃動作を行うように各部が制御される。
【0210】
なお、構造上ドラム穴390内のカスはすべてドラム穴390の外に押し出され、洗浄液を噴射することでドラム穴390にカス詰まりが発生する可能性は極めて低いため、本例では、第1実施形態のように穴90のカス除去不良をチェックするセンサ(穴詰まり検出センサ114)は特に設けなくてもよい。
【0211】
即ち、第3実施形態では、センサ398を用いて凹穴390の位置を検出し、その検出結果に基づいて各部の制御が行われるので、第2実施形態で説明した制御シーケンスを適用可能である。
【0212】
以上説明したように、第3実施形態によれば、中間転写体にドラム形状を適用する場合にも、クリーニングブレード352のクリーニングを好適に行うことができる。
【0213】
〔第4実施形態〕
次に、本発明に係る第4実施形態について説明する。第4実施形態では、第1〜第3実施形態の穴90、凹穴(凹溝)290、ドラム穴390に代わり、凸状の段差(凸段差)490が設けられている。
【0214】
即ち、図22(a),(b)に示す中間転写ベルト412の画像形成面412Aの一部(1か所)又は複数部(複数か所)には、中間転写ベルト412の幅方向にわたって凸段差490が設けられ、中間転写ベルト412の搬送(搬送方向を矢印線Aで図示)により凸段差490がクリーニングブレード452上に来たときには、クリーニングブレード452を中間転写ベルト412と略水平になるように傾け、クリーニングブレード452に付いたカス495を凸段差490で掻き取る。
【0215】
図23に示すように、掻き取ったカス495はクリーニングブレード452の中間転写ベルト搬送方向下流側に設けられた凸段差用洗浄液噴射部451による洗浄液噴射にて中間転写ベルト412より除去される。
【0216】
図22(a)には、クリーニングブレード452によって中間転写ベルト412の画像形成面412Aをクリーニングする状態を図示する。図22(a)に示すように、中間転写ベルト412の画像形成面412Aのクリーニング時には、クリーニングブレード452は水平方向(中間転写ベルト412の画像形成面412Aと平行方向)から45°傾けた状態で固定され、画像形成面412Aにベルト用洗浄液噴射部450から洗浄液を噴射させながら、画像形成面412Aに付着したインク等のカス495はクリーニングブレード452によって掻きとられる。
【0217】
図22(b)には、クリーニングブレード452をクリーニングしている状態を図示する。図22(b)に示すように、中間転写ベルト412の一部または複数部に中間転写ベルト412の幅全体にわたるように凸段差490が設けられ、中間転写ベルト412の搬送によりクリーニングブレード452の上面に凸段差が来るタイミングに合わせて、クリーニングブレード452を中間転写ベルト412と水平になるよう動かし、図示してないバネによってクリーニングブレード452を凸段差490に押し付け、この状態でベルトを搬送することでクリーニングブレード452に付着したカス495は凸段差490によって掻き取られる。
【0218】
凸段差490は1か所に設けてもよいが、中間転写ベルト412の移動方向における複数か所に設けることで、更に、クリーニングブレード452の清掃を確実に行うことができる。図23に示すように、凸段差490によってクリーニングブレード452から掻き取られたカス495は、クリーニングブレード452の中間転写ベルト搬送方向下流側に設けた凸段差用洗浄液噴射部451により洗い流される。
【0219】
本例では、クリーニングブレード452を動かすタイミングや洗浄液噴射のオンオフタイミングは上述した第2実施形態と同様に制御するとよい。また、洗浄液の回収BOXへの回収方法や回収された洗浄液の再利用方法、カス495の回収後の中間転写ベルト412に残留する洗浄液の拭取方法も上述した第2実施形態と同様に構成するとよい。
【0220】
更にまた本例においても、装置立ち上げ時、立ち下げ時、印刷JOB終了時、装置停止状態で所定時間以上経過した時は、中間転写ベルト412を1周させて、中間転写ベルト412の凸段差490の清掃動作を行うように構成されている。
【0221】
なお、本例でも構造上、凸段差490にカス495が残留する可能性は極めて低いため。第1実施形態のようにカス除去不良をチェックするセンサ(穴詰まり検出センサ114)を設けなくてもよい。即ち、第2実施形態で説明した制御シーケンスを適用可能である。
【0222】
本例では、凸段差490が転写部426を通過するときには、凸段差490と転写ローラ438が接触しないように転写ローラ438を移動させるように構成されている。
【0223】
ここで、図24(a),(b)を用いて、転写ローラ438の移動制御を説明する。
【0224】
図24(a),(b)に示す転写ローラ離間機構404は、転写ローラ438を中間転写ベルト412(ヒートローラ436)に押し付けるための押圧力を付与する圧縮バネ440と、転写ローラ438の回転軸442を上下に移動させるために転写ローラ438の回転軸442の上部に設けられた偏芯カム444と、を含んで構成されている。
【0225】
図24(a)に示すように、偏芯カム444の短軸方向が垂直方向と平行になるように偏芯カム444を回転させると、圧縮バネ440の付勢力が転写ローラ438の回転軸442を中間転写ベルト412に押し付ける方向(図24(a)における上方向)に作用して、転写ローラ438を中間転写ベルト412(ヒートローラ436)に押し付ける。
【0226】
一方、図24(b)に示すように、転写ローラ438の中間の中間転写ベルト搬送方向上流側に配置したセンサ402によって凸段差490を検知すると(凸段差490が転写ローラ438上に移動したときには)、偏芯カム444の長軸方向が偏芯カム444の短軸方向が垂直方向と平行になるように偏芯カム444を回転させることで、圧縮バネ440を圧縮して転写ローラ438の回転軸442を図24(b)における下方向に移動させることで、転写ローラ離間機構404にて中間転写ベルト412より転写ローラ438を離間させる。このように凸段差490がヒートローラ436と転写ローラ438との間を通過する際にヒートローラ436と転写ローラ438とを離間させることで、凸段差490が転写ローラ438に挟まれることなく、スムースなベルト搬送を実現している。
【0227】
上記の如く構成された第4実施形態によれば、中間転写ベルト412の画像形成面412Aの一部にクリーニングブレード452の幅と同一の長さまたは、クリーニングブレード452の長さよりも長い凸段差490を備え、凸段差490をクリーニングブレード452に接触させることでクリーニングブレード452に付着したカスを掻き取り、更に、凸段差490に付着したカス495を凸段差用洗浄液噴射部451から噴射された洗浄液によって洗い流すので、中間転写ベルト412に付着したカス及びクリーニングブレード452に付着したカスは中間転写ベルト412が1回転するうちに確実に除去可能である。
【0228】
〔凝集処理剤の調整〕
上述した第1〜第4実施形態で用いる凝集処理液の調整例を以下に示す。
【0229】
(処理液の例1)
[表1]に示す組成にて処理液(例1)を調整した。この調整により得られた処理液(例1)の物性値を測定した結果、pH3.6、表面張力28.0mN/m、粘度3.1mPa・sであった。
【0230】
【表1】
(処理液の例2)
更に[表2]に示す組成にて界面活性剤を添加した処理液(例2)を調整した。この調整により得られた処理液(例2)の物性値を測定した結果、pH3.5、表面張力18.0mN/m、粘度10.1mPa・sであった。
【0231】
【表2】
[表2]で用いたフッ素系界面活性剤1の化学式を[化1]に示す。
【0232】
【化1】
〔インクの調整〕
上述した第1〜第4実施形態で用いるインクの調整例を以下に示す。
【0233】
(ポリマー分散)シアンインクの調液
反応容器に、スチレン6質量部、ステアリルメタクリレート11質量部、スチレンマクロマーAS−6(東亜合成製)4質量部、プレンマーPP−500(日本油脂製)5質量部、メタクリル酸5質量部、2−メルカプトエタノール0.05質量部、メチルエチルケトン24質量部を調液した。
【0234】
一方、滴下ロートにスチレン14質量部、ステアリルメタクリレート24質量部、スチレンマクロマーAS−6(東亜合成製)9質量部、プレンマーPP−500(日本油脂製)9質量部、メタクリル酸10質量部、2−メルカプトエタノール0.13質量部、メチルエチルケトン56重量部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2 重量部を入れ、混合溶液を調整した。
【0235】
窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を1時間かけて徐々に滴下した。滴下終了から2時間経過後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2 重量部をメチルエチルケトン12重量部に溶解した溶液を3時間かけて滴下し、更に75℃で2時間、80℃で2時間熟成させ、ポリマー分散剤溶液を得た。
【0236】
得られたポリマー分散剤溶液の一部を、溶媒を除去することによって単離し、得られた固形分をテトラヒドロフランにて0.1質量%に希釈し、高速GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)HLC-8220GPCにて、TSKgel SuperHZM-H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ2000を3本直列につなぎ測定し、ポリスチレン換算で質量平均分子量25,000であった。
【0237】
得られたポリマー分散剤を固形分換算で5.0g、シアン顔料Pigment Blue 15:3(大日精化製)10.0g、メチルエチルケトン40.0g、1mol/L水酸化ナトリウム8.0g、イオン交換水82.0g、0.1mmジルコニアビーズ300gをベッセルに添加し、レディーミル分散機(アイメックス製)で1000rpm6時間分散した。得られた分散液をエバポレーターでメチルエチルケトンが十分留去できるまで減圧濃縮し、顔料濃度が10%になるまで濃縮した。得られたシアン分散液の顔料粒径は77nmであった。
【0238】
シアン分散を用いて[表3]に示す組成になるようにインクを調液し、調液後5μmフィルターで粗大粒子を除去し、シアンインク(C1−1)を調整した。得られたシアンインクC1−1の物性値を測定した結果、pH9.0、表面張力32.9mN/m、粘度3.9mPa・sであった。
【0239】
【表3】
上記と同様にして、マゼンタ、イエロー、ブラックのインクも調液した。
【0240】
〔添加ポリマーについて〕
前述した処理液(凝集処理剤)やインクには、適宜ポリマー樹脂などの粒子が添加される。処理液には色材固定や転写改善用として粒径1〜5μm、融点60〜120℃の粒子を入れるのが望ましく、インクには画像定着用として粒径1μm以下、ガラス点移転点40〜60℃の粒子を1〜5%入れるのが好ましい。〔表4〕にその一例を示す。
【0241】
【表4】
上記〔表4〕中Tgはガラス転移点、Tmは融点である。
【0242】
なお、上述した凝集処理液及びインクの組成はあくまでも一例であり、他の組成を適用することも可能である。
【0243】
本例では、凝集処理液とインクの反応によって中間転写体上にインク(ドット)を固定する2液凝集方式を例示したが、凝集処理液を用いることなく、熱や輻射線などを介してエネルギーを照射して中間転写体上にインク(ドット)を固定する方式にも適用可能である。
【0244】
本例では、転写記録方式のインクジェット記録装置を例示したが、本発明は記録媒体に直接描画する方式のインクジェット記録装置において記録媒体を搬送する搬送媒体にも適用可能である。更に、本発明は、搬送媒体によって搬送される基板上に液体(樹脂液、レジスト液等)を打滴して、当該基板上に所定のパターン(マスクパターン、配線パターン等)を形成する画像形成装置における搬送媒体や、搬送媒体によって搬送される基板上に液体を吐出する液体吐出装置における搬送媒体等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0245】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図
【図2】図1に示すインクジェット記録装置の印字部周辺の要部平面図
【図3】ヘッドの構造例を示す平面透視図
【図4】ヘッドの他の構造例を示す平面透視図
【図5】図3中の5−5線に沿う断面図
【図6】図3に示すヘッドのノズル配列を示す拡大図
【図7】図1に示すインクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図
【図8】本発明の第1実施形態に係るクリーニング部及び清掃カス回収部の概略構成を示す構成図
【図9】ブレードによる中間転写ベルトのクリーニングを説明する模式図
【図10】中間転写ベルトの構造を示す平面図
【図11】装置立ち上げ、立ち下げ時のシーケンスを示すフローチャート
【図12】通常印刷時のシーケンスを示すフローチャート
【図13】本発明の第2実施形態に係るクリーニング部及び清掃カス回収部の概略構成を示す構成図
【図14】図13に示す中間転写ベルトの拡大図
【図15】図13に示す中間転写ベルトの構造を示す平面図
【図16】図13に示す清掃カス回収部の動作を説明する模式図
【図17】本発明の第2実施形態における装置立ち上げ、立ち下げ時のシーケンスを示すフローチャート
【図18】本発明の第2実施形態における通常印刷時のシーケンスを示すフローチャート
【図19】本発明の第3実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成図
【図20】図19に示すクリーニング部の拡大図
【図21】図19に示す清掃カス回収部の拡大図
【図22】本発明の第4実施形態に係るインクジェット記録装置のクリーニングの概念を説明する説明図
【図23】本発明の第4実施形態に係るインクジェット記録装置のクリーニング部の概略構成図
【図24】本発明の第4実施形態に係るインクジェット記録装置の転写部の拡大図
【符号の説明】
【0246】
10,100,300…インクジェット記録装置、14,314…記録媒体、22,322…印字部、12,212,412…中間転写ベルト、26,326,426…転写部、30,230,330…クリーニング部、32,232,332…清掃カス回収部、52,352,452…クリーニングブレード、90…穴、98,114,398…センサ、102…凸イボローラ、104…エアノズル、251,351,451…洗浄液噴射部、290…凹穴、291…ベルト突起、293,393…カス押出ローラ、295,395…拭取ローラ、310…カス押出材、312…中間転写ドラム、490…凸段差
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置及びクリーニングブレードの清掃方法に係り、特に、中間転写方式のインクジェット記録装置における中間転写体(ベルトやドラムなど)を清掃するブレードのクリーニング性能を維持・回復するのに好適な清掃技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置の中間転写体や記録紙の搬送ベルトに付着したインクやその他処理液などの清掃手段としてクリーニングブレード(単に「ブレード」と呼ぶ場合もある)を用いる事は広く知られている。しかしブレードに清掃カスが付着してしまうとクリーニング性能が劣化し画像乱れや転写不良が生じてしまう。このような課題に対し、従来はブレードの汚れをさまざまな方法で定期的に除去している(特許文献1〜4)。
【0003】
特許文献1は、ブレードをベルト搬送方向の垂直方向に移動させて搬送ベルトをクリーニングする構成を採用するとともに、搬送ベルトの幅方向の一端に吸収部材(スポンジ等)を備え、ベルト幅方向へのブレード移動によって当該ブレードに付着したインク(付着物)を吸収部材で除去する方法を開示している。
【0004】
特許文献2は、回転体周面に複数のブレードが取り付けられ、搬送ベルトの回転と逆回転させながらベルト上のインクを掻き取るとともに、ベルトに接触していないブレードの先端をインク吸収体(ワイピング部材)に摺接することにより、ブレード付着物を除去する構成を開示している。
【0005】
特許文献3は、印刷終了後、ゴムブレードを搬送ベルトから退避させ、該搬送ベルトを逆回転させる事でブレードのベルト接触面に溜まった液体(汚れカス)を搬送ベルトで上流側へと運び、洗浄液塗布に使用しているウェップで拭き取る構成を開示している。
【0006】
特許文献4は、回転軸の周面にブレードが取り付けられ、ブレードの回転軌道軌跡上でかつ搬送ベルトの下方にインク吸収体を配置した構造を備え、印刷後にブレードを回転させてベルトから離間させるとともに、回転先にあるインク吸収体にブレード先端部を接触させることによりブレードに付着したインク(カス)を除去する構成を開示している。
【特許文献1】特開2006−206279号公報
【特許文献2】特開2006−256840号公報
【特許文献3】特開2006−264893号公報
【特許文献4】特開2007−76863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年インクジェットプリンターの高画質化が進み、特に業務用印刷分野では中間転写体に色材凝集反応剤として、さまざまな処理液や紛体を塗布する事で高精細化の工夫をしている。そのためクリーニングブレードにはインクカスだけでなく、多量の色材凝集反応剤が付着してしまい、ブレード清掃を頻繁に(例えば印刷10枚に1回)行う必要性が出てきた。
【0008】
しかしながら特許文献1の技術では、短いブレードをベルト搬送と垂直方向に動かして記録ヘッドのパージインクを掻き取る機構なので、ベルト全面に付いた処理液を常に清掃する場合には構造上使用できない。
【0009】
特許文献2,4はブレードに付着したインクカスをウェップ材で拭き取るので、カス量が多いと頻繁にウェップ材を交換しなければならず、その間印刷を中断する必要がある。
【0010】
また、特許文献3,4に記載の技術は、通常印刷時とは異なった制御が必要となり、印刷ジョブ毎や、一日に数回レベルでは問題にならないが、10枚毎に行うとなると生産性に大きく効いてくる。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、通常の記録動作を行いながら、生産性を落とさずブレード付着物(清掃カス)を効果的に除去でき、清掃用の消耗部品の補充・交換が不要で装置を止めること無く安定したクリーニング性能維持が可能な画像形成装置及びクリーニングブレードの清掃方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は前記目的を達成するために、インクを打滴するヘッドと、前記ヘッドから打滴されたインクによって1次画像が形成される中間転写体と、前記中間転写体を所定の搬送方向に搬送する搬送手段と、前記中間転写体に形成された1次画像を記録媒体に転写記録する転写手段と、前記転写記録後の前記中間転写体の1次画像が形成される画像形成面をクリーニングするクリーニングブレードと、を備え、前記中間転写体は、前記画像形成面に前記クリーニングブレードと接触させて前記クリーニングブレードに付着した清掃カスを除去する構造が設けられたブレード清掃領域を有することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、1次画像が形成される中間転写体にクリーニングブレードに付着した清掃カスを除去する構造が形成されたブレード清掃領域を設けたので、当該ブレード清掃領域がクリーニングブレードの上を通過するたびにクリーニングブレードが確実に清掃される。また、シンプルで安価な構造であり、故障しにくい構造といえる。
【0014】
更に、通常の画像形成(画像記録)を中断することなく、中間転写体の清掃及びクリーニングブレードの清掃が行われるので、生産性を落とすことがない。
【0015】
中間転写体は、複数の張架ローラに巻き掛けられた無端状のベルト部材を適用してもよいし、ドラム形状を有する部材を適用してもよい。
【0016】
ブレード清掃領域(清掃カスを除去する構造、凹凸構造)は、中間転写体の少なくとも1か所に設けられていればよい。また、ブレード清掃領域と描画領域との間には非描画領域を設ける態様が好ましい。即ち、中間転写体の搬送方向下流側から描画領域、非描画領域、ブレード清掃領域の順に配置する態様が好ましい。なお、ブレード清掃領域を複数備える態様では、中間転写体の搬送方向下流側から描画領域、非描画領域、ブレード清掃領域、非描画領域、描画領域、非描画領域、ブレード清掃領域、…、といった配置が好ましい。
【0017】
インクと反応するとインクを凝集(または不溶化)させる処理液を中間転写体上に付与した後に、ヘッドからインクを打滴するように構成してもよい。即ち、ヘッドの中間転写体搬送方向上流側に処理液付与手段を備える構成も可能である。
【0018】
転写手段は、転写時における記録媒体や1次画像(中間転写体)の温度を所定の転写温度に調整する温度調整手段と、記録媒体と中間転写体に付与する押圧を調整する押圧調整手段と、を含む態様が好ましい。例えば、中間転写体をはさんで対向するローラ対を備え、一方のローラにヒータ等の温度調節手段を含み、他方のローラを移動可能に構成して他方のローラを移動させて記録媒体と中間転写体に付与する押圧を調整する。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の画像形成装置の一態様に係り、前記ブレード清掃領域は、前記クリーニングブレードの前記中間転写体の搬送方向と直交する方向の長さにわたって設けられた貫通穴、凹穴、凹溝及び凸段差のうち少なくとも何れか1つの構造が設けられ、前記搬送手段によって前記中間転写体を搬送させながら前記清掃カスを除去する構造によって前記クリーニングブレードに付着した清掃カスをはぎ取ることを特徴とする。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、ブレード清掃領域に貫通穴、凹穴、凹溝及び凸段差のうち少なくとも何れか1つ清掃カスを除去する構造を形成することで、これらの清掃カスを除去する構造とクリーニングブレードを接触させて、クリーニングブレードに付着したインク等の清掃カスを確実に除去できる。
【0021】
清掃カスを除去する構造は、ブレード清掃領域に全域にわたって異なる形状(大きさ)の凹凸を複数配置する態様が好ましい。また、貫通穴、凹穴及び凹溝の総容積はクリーニングブレードから除去する清掃カスの総体積の2倍以上とする態様が好ましい。
【0022】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載の画像形成装置の一態様に係り、前記クリーニングブレードの前記搬送手段の搬送方向下流側に、前記ブレード清掃領域に溜まった清掃カスを回収する清掃カス回収手段を備えたことを特徴とする。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、クリーニングブレードの前記搬送手段の搬送方向下流側に設けられた清掃カス回収手段によって、クリーニングブレードから除去した清掃カスを回収するように構成したので、クリーニングブレードを清掃する際にブレード清掃領域は常に清掃された状態となり、ブレード清掃領域からクリーニングブレードに清掃カスが再付着することが防止される。
【0024】
請求項4に記載の発明は、請求項1、2又は3記載の画像形成装置の一態様に係り、前記クリーニングブレードに付着した清掃カスの除去時には、前記中間転写体の前記画像形成面に対する前記クリーニングブレードの角度を前記画像形成面と水平もしくは前記画像形成面に対して水平以内になるように前記クリーニングブレードを傾ける角度変更手段を備えたことを特徴とする。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、クリーニングブレードの清掃時にはクリーニングブレードを寝かせることで、クリーニングブレードに付着した清掃カスを除去しやすくなる。一方、中間転写体の清掃時にはクリーニングブレードを立たせることで、中間転写体に付着した清掃カスを除去しやすくなる。
【0026】
クリーニングブレードを傾ける角度は、水平(中間転写体の画像形成面とクリーニングブレードが略平行の状態)でもよいし、中間転写体の画像形成面の水平面よりもクリーニングブレードの先端部が上側に位置する水平以内としてもよい。
【0027】
請求項5に記載の発明は、請求項4記載の画像形成装置の一態様に係り、前記中間転写体の搬送経路上における前記ブレード清掃領域の位置を検出する位置検出手段を備え、前記角度変更手段は、前記位置検出手段の検出結果に基づいて、前記ブレード清掃領域が前記クリーニングブレードによるクリーニング領域に位置するタイミングに合わせて前記クリーニングブレードを傾けることを特徴とする。
【0028】
請求項5に記載の発明によれば、ブレード清掃領域及び描画領域がクリーニングブレードの位置に来るタイミングに合わせてクリーニングブレードの角度を変更することで、好ましい中間転写体の清掃及びクリーニングブレードの清掃が行われる。
【0029】
請求項6に記載の発明は、請求項3、4又は5記載の画像形成装置の一態様に係り、前記ブレード清掃領域は、前記クリーニングブレードの前記中間転写体の搬送方向と直交する方向の長さにわたって設けられた貫通穴を少なくとも含む清掃カスを除去する構造が設けられ、前記清掃カス回収手段は、前記貫通穴の中に挿入可能な凸形状が設けられるとともに、前記中間転写体の前記画像形成面の反対側から前記貫通穴に前記凸形状を挿入して前記貫通穴内の清掃カスを押し出す押出部材を含むことを特徴とする。
【0030】
請求項6に記載の発明によれば、清掃カスを除去する構造(凹凸構造)に貫通穴を少なくとも含む態様において、簡素な構成で貫通穴内の清掃カスを除去することができる。
【0031】
押出部材は、中間転写体の幅(搬送方向と直交する方向に長さ)に対応する長さを有するローラの表面に貫通穴の配置に対応する凸形状が形成される態様が好ましい。また、該ローラが1周すると、ブレード清掃領域のすべての貫通穴に少なくとも1つの凸形状が入るように凸形状の配置、形状(サイズ)を決めるとよい。
【0032】
更に、凸形状は貫通穴の穴径よりも小さくすることで、貫通穴に凸形状が入りやすくなり好ましい。
【0033】
請求項7に記載の発明は、請求項6記載の画像形成装置の一態様に係り、前記清掃カス回収手段は、前記中間転写体の前記画像形成面の反対側から前記貫通穴にエアを吹き付けて前記貫通穴内の清掃カスを吹き飛ばすエア噴出手段を含むことを特徴とする。
【0034】
請求項7に記載の発明によれば、エアによって貫通穴内の清掃カスを吹き飛ばすので、貫通穴のメンテナンスをする際の消耗部品が不要である。
【0035】
請求項8に記載の発明は、請求項7記載の画像形成装置の一態様に係り、前記清掃カス回収手段による清掃カス回収後の前記貫通穴の穴詰まりの有無を検出する穴詰まり検出手段と、前記穴詰まり検出手段によって前記貫通穴の穴詰まりが検出されると、穴詰まりが検出された前記貫通穴を前記清掃カス回収手段の位置に移動させるとともに、前記中間転写対の搬送速度が通常の画像記録時よりも小さくなるように前記搬送手段を制御する搬送制御手段と、前記貫通穴に吹き付けるエアの圧力を通常よりも大きくするよう前記エア噴射手段を制御するエア噴射制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0036】
請求項8に記載の発明によれば、貫通穴の穴詰まりを確実に回避して、好ましいクリーニングブレードの清掃が行われる。
【0037】
穴詰まりが検出されたときには、通常印刷を一時中断し、穴詰まりが解消した後に中断中の印刷を再開するように構成する態様が好ましい。
【0038】
請求項9に記載の発明は、請求項3、4又は5記載の画像形成装置の一態様に係り、前記ブレード清掃領域は、前記クリーニングブレードの前記中間転写体の搬送方向と直交する方向の長さにわたって設けられた凹穴及び凹溝のうち少なくとも何れか1つを含む清掃カスを除去する構造が設けられ、前記清掃カス回収手段は、前記中間転写体の前記画像形成面と反対側から前記中間転写体を押圧して前記清掃カスを除去する構造内の清掃カスを押し出す押出部材を備えたことを特徴とする。
【0039】
請求項9に記載の発明によれば、中間転写体に貫通穴を形成できない場合には、清掃カスを除去する構造として非貫通の凹穴及び凹溝の一方または両方を形成することで、貫通穴と同様にクリーニングブレードを清掃することが可能である。
【0040】
中間転写体に無端状ベルトを適用する態様では、押出部材にローラを適用すると、当該ローラの曲率によって凹穴(凹溝)の開口部が広げられ、凹穴(凹溝)内の清掃カスを除去しやすくなる。
【0041】
請求項10に記載の発明は、請求項9記載の画像形成装置の一態様に係り、前記中間転写体の前記清掃カスを除去する構造の反対側に前記清掃カスを除去する構造の形状に対応する凸突起が設けられ、前記押出部材は前記凸突起を押圧して前記清掃カスを除去する構造内の清掃カスを押し出すことを特徴とする。
【0042】
請求項10に記載の発明によれば、凹穴(凹溝)に対応して設けられた凸突起を押出部材が押すことで、凹穴(凹溝)内の清掃カスをより浮き出させることが可能である。
【0043】
中間転写体の凸突起が設けられる面には、中間転写体の強度を保つため支持部材(バックシート)を備え、当該支持部材は凸突起が設けられる領域が切り抜かれる構造とし、更に、凸突起の高さは支持部材の厚みと同一か、支持部材の厚みよりも小さくすることが好ましい。即ち、支持部材は、凸突起が形成されている領域に対応して、押出部材が入るように切り抜かれている構造とする態様が好ましい。
【0044】
請求項11に記載の発明は、請求項9又は10記載の画像形成装置の一態様に係り、前記清掃カス回収手段は、前記清掃カスを除去する構造に洗浄液を噴射して前記清掃カスを除去する構造に付着した清掃カスを洗い流す洗浄液噴射手段を備えたことを特徴とする。
【0045】
請求項11に記載の発明によれば、クリーニングブレードから除去した清掃カスを拭き取るのではなく洗浄液を用いて洗い流すので、拭き取り部材の交換が不要である。
【0046】
請求項12に記載の発明は、請求項11記載の画像形成装置の一態様に係り、前前記清掃カス回収手段は、前記清掃カスを除去する構造に付着した洗浄液及び前記清掃カスを除去する構造の周辺に付着した洗浄液を除去する洗浄液除去手段を備えたことを特徴とする。
【0047】
請求項12に記載の発明によれば、清掃カスを洗い流す際に用いた洗浄液は洗浄液除去手段によって除去されるので、次の画像形成に対して洗浄液が影響を与えることがない。
【0048】
洗浄液除去手段には、中間転写体に接触して洗浄液を吸収除去する吸収部材を適用する態様が好ましい。
【0049】
請求項13に記載の発明は、請求項12記載の画像形成装置の一態様に係り、前記清掃カス回収手段は、前記位置検出手段の検出結果に基づいて、前記ブレード清掃領域が前記洗浄液噴射手段による洗浄液噴射領域に位置するタイミングに合わせて洗浄液を噴射するとともに、前記ブレード清掃領域が前記洗浄液除去手段による洗浄液除去領域に位置するタイミングに合わせて洗浄液の除去を行うように前記洗浄液噴射手段及び前記洗浄液除去手段を制御する洗浄制御手段を備えたことを特徴とする。
【0050】
請求項13に記載の発明によれば、中間転写体の移動に合わせて洗浄液噴射手段及び洗浄液除去手段を動作させるので、洗浄液の消費が抑制されるとともに洗浄液除去手段の消耗(磨耗)が抑制され、洗浄液噴射手段及び洗浄液除去手段の動作による中間転写体の移動への影響(画像形成、転写記録への影響)を最小限にとどめることが可能となる。
【0051】
請求項14に記載の発明は、請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の画像形成装置の一態様に係り、前記ブレード清掃領域は、前記クリーニングブレードの前記中間転写体の搬送方向と直交する方向の長さにわたって設けられた凸段差を少なくとも含む清掃カスを除去する構造が設けられ、前記清掃カス回収手段は、前記清掃カスを除去する構造に洗浄液を噴射して前記清掃カスを除去する構造に付着した清掃カスを洗い流す洗浄液噴射手段を備えたことを特徴とする。
【0052】
請求項14に記載の発明によれば、凸段差によってクリーニングブレードから除去された清掃カスを洗い流すことができ、凸段差が他の部材に接触しても、当該他の部材に清掃カスが付着しない。
【0053】
凸段差は、中間転写体の移動方向に直交する方向の幅にわたる長さを有していてもよいし、中間転写体の移動方向に直交する方向の幅に満たない長さのものを複数組み合わせて中間転写体の移動方向に直交する方向の幅にわたる長さに対応してもよい。
【0054】
凸段差が中間転写体の搬送経路周辺の各部(例えば、転写ローラ)を通過する際に、当該各部が凸段差と接触しないように、各部を移動させる移動手段を備える態様が好ましい。
【0055】
また、本発明は、ヘッドから中間転写体にインクを打滴して前記中間転写体に1次画像を形成した後に、前記1次画像を記録媒体に転写する画像形成装置において前記中間転写体をクリーニングするクリーニングブレードの清掃方法であって、前記中間転写体の前記画像形成面に清掃カスを除去する構造が設けられたブレード清掃領域と、前記クリーニングブレードと、を接触させて、前記クリーニングブレードに付着した清掃カスを除去することを特徴とするクリーニングブレードの清掃方法を提供する。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、1次画像が形成される中間転写体にクリーニングブレードに付着した清掃カスを除去するブレード清掃領域を設けたので、当該ブレード清掃領域がクリーニングブレードの上を通過するたびにクリーニングブレードが確実に清掃される。また、シンプルで安価な構造であり、故障しにくい構造といえる。更に、通常の画像形成(画像記録)を中断することなく、中間転写体の清掃及びクリーニングブレードの清掃が行われるので、生産性を落とすことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0058】
〔第1の実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成図である。本実施形態のインクジェット記録装置10は、非浸透媒体たる中間転写ベルト12上に画像(1次画像)を記録した後に、普通紙等の記録媒体14に転写を行って本画像(2次画像)を形成する転写方式が適用された記録装置であり、主な構成要素として、中間転写ベルト12に対して凝集処理剤(以後、本実施形態において、単に「処理液」という場合もある)を付与する処理液塗布部16と、中間転写ベルト12上に付与された処理液の乾燥を行うための乾燥部18と、中間転写ベルト12に対して複数色のインクを付与する印字部(インク打滴部)22と、中間転写ベルト12上に形成されたインク画像を記録媒体14に対して転写を行う転写部26と、中間転写ベルト12を清掃するクリーニング部30と、清掃カス(以下、単に「カス」という。)を回収するための清掃カス回収部32(図1中、2点破線で囲んでで図示)を備えて構成される。
【0059】
本例に用いる処理液及びインクの組成については後で詳説するが、処理液はインクに含有される着色材を凝集させる作用を有する酸性液である。インクはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の着色材(顔料)を含有する着色インクである。
【0060】
中間転写ベルト12には無端状ベルトが適用される。この中間転写ベルト12は複数のローラ(図1では2つの張架ローラ34A、34Bとヒートローラ36を図示したが、ベルトの巻き掛け形態は本例に限定されない)に巻き掛けられた構造を有し、張架ローラ34A、34B及びヒートローラ36の少なくとも1つにモータ(図1中不図示、図7に符号188として図示)の動力が伝達されることにより、中間転写ベルト12は、図1において反時計回り方向(矢印Aで示す方向)に駆動される。
【0061】
中間転写ベルト12は、印字部22と対向する表面(画像形成面)12Aの少なくとも1次画像が形成される描画エリア(図1中不図示、図10に符号118で図示)について、樹脂、金属やゴムなどのインク液滴が浸透しない非浸透性を有している。また、中間転写ベルト12の少なくとも描画領域は、所定の平坦性を有する水平面(フラット面)をなすように構成されている。
【0062】
中間転写ベルト12の画像形成面12Aを含む表面層に用いられる好ましい材料としては、例えば、ポリイミド系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂等の公知の材料が挙げられる。
【0063】
本実施形態における中間転写ベルト12としては、耐久性と普通紙転写性の観点からポリイミドなどの基材に表面エネルギー15〜30mN/m(=mJ/m2)程度の弾性材料を30〜150μm程度の厚みで付与したものが望ましく、シリコンゴムやフッ素ゴム、フッ素系エラストマーなどのコーティングが好適である。
【0064】
処理液塗布部16は、クリーニング部30によるクリーニング工程後の中間転写ベルト12に下塗液となる処理液(凝集処理剤)を付与するものであり、印字部22よりも中間転写体搬送方向上流側に配置される。
【0065】
処理液塗布部16には、例えば、塗布用のローラ部材としてのグラビアローラが用いられる。処理液を付着させたグラビアローラを中間転写ベルト12に接触させながら、中間転写ベルト12の搬送方向と逆方向にグラビアローラを回転させることにより、処理液が中間転写ベルト12の画像形成面12Aに塗布される。
【0066】
また、処理液にはインク打滴時の色材固定性と転写性の向上を目的に1〜5重量%のポリマー樹脂(微粒子)を含有しておく態様が好ましい。
【0067】
処理液塗布部16の下流側かつ印字部22よりも上流側に乾燥部18が配置される。本例の乾燥部18は、50〜100℃の範囲で温度制御されるヒータが用いられている。処理液塗布部16によって中間転写ベルト12上に付与された処理液は、この乾燥部18を通過することで加熱され、溶媒成分が蒸発し、乾燥する。これにより、中間転写ベルト12の表面に固体状または半固溶状の凝集処理剤層(処理液が乾燥した薄膜層)が形成される。
【0068】
ここでいう「固体状または半固溶状の凝集処理剤層」とは、以下に定義する含水率が0〜70%の範囲のものを言うものとする。
【0069】
【数1】
乾燥部18の中間転写体搬送方向下流側かつ印字部22よりも上流側には、図示しない冷却器を配置してもよい。例えば、この冷却器は中間転写ベルト12の裏面側に配置される。冷却器は、所定の温度範囲に制御可能であり、乾燥部18の加熱乾燥により凝集処理剤層が形成された中間転写ベルト12を当該冷却器にて40℃程度に低温化することで、中間転写ベルト12からの輻射熱を低減し、印字部22におけるヘッドのノズル内インクの乾燥を抑制する。
【0070】
印字部22は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンダ(M)、黒(K)の各インク色に対応したインクジェット方式の液体吐出ヘッド(以下「ヘッド」という。)22Y、22C、22M、22Kを備える。
【0071】
乾燥部18(及び必要に応じて冷却部)を通過した中間転写ベルト12上の凝集処理剤層に対し、印字部22の各ヘッド22Y、22C、22M、22Kから画像信号に応じて各色(YMCK)の顔料インクを吐出して凝集処理剤層の上に打滴を行う。インクには成膜性を有するポリマー樹脂(微粒子)を含有しておくことも可能であり、かかる態様の場合、転写工程や定着工程により、耐擦性や保存安定性が向上する。
【0072】
凝集処理剤層上にインク液滴を着弾させると、飛翔エネルギーと表面エネルギーとのバランスにより、インクと凝集処理剤層との接触面が所定の面積にて着弾する。インクが凝集処理剤上に着弾した直後に凝集反応が始まるが、凝集反応はインクと凝集処理剤層との接触面から始まる。凝集反応は接触面近傍のみで起こり、インク着弾時における所定の接触面積で付着力を得た状態でインク内の色材が凝集されるため、色材移動が抑止される。
【0073】
このインク液滴に隣接して他のインク液滴が着弾しても先に着弾したインクの色材は既に凝集化しているので後から着弾するインクとの間で色材同士が混合せず、ブリードが抑止される。なお、色材の凝集後には、分離されたインク溶媒が広がり、凝集処理剤が溶解した液体層が中間転写ベルト12上に形成される。
【0074】
上記のように、凝集処理剤層上に着弾したインクは凝集反応により、顔料の凝集体が形成され、溶媒と分離する。なお、顔料の凝集体と分離した溶媒(残溶媒)成分を除去する手段として、印字部22の後段に不図示の溶媒除去ローラ(多孔質材による吸収ローラや表面に液保持用の凹凸を有するローラなど)を配置し、余剰溶媒を除去する態様も好ましい。
【0075】
転写部26は、ヒータ(図1中不図示、図7に複数のヒータを代表して符号189で図示)を有したヒートローラ36と、これに対向して配置される加圧ニップ用の転写ローラ38とを含んで構成される。これらヒートローラ36と転写ローラ38の間に中間転写ベルト12と記録媒体14とを挟み込み、所定の温度に加熱しながら、所定の圧力(ニップ圧)で加圧することにより、中間転写ベルト12上に形成された1次画像を記録媒体14に転写する構成となっている。
【0076】
転写部26における転写時のニップ圧を調整するための手段としては、例えば、ヒートローラ36又は転写ローラ38、若しくはその両方を図1の上下方向に移動させる機構(駆動手段)が挙げられる。
【0077】
転写時のニップ圧や加熱温度(ローラ温度)については、中間転写ベルト12の材質や、使用するインク、記録媒体の種類等の条件に応じて適切な値に制御される。なお、転写時の加熱温度を高くしすぎると、中間転写ベルト12の変形等の問題があり、その一方、加熱温度が低すぎると転写性が悪化するという問題がある。
【0078】
記録媒体14の供給部(給紙部)の構成について、詳細は図示しないが、ロール紙(連続用紙)のマガジンを備える態様、或いは、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給する態様がある。ロール紙を使用する装置構成の場合、裁断用のカッターが設けられており、該カッターによってロール紙は所望のサイズにカットされる。紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンやカセットを併設してもよい。
【0079】
複数種類の記録媒体を利用可能な構成にした場合、メディアの種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
【0080】
本例に適用される記録媒体14の具体例を挙げると、普通紙(上質紙、再生紙を含む)、インクジェット専用紙などの浸透性媒体、コート紙などの非浸透性又は低浸透性の媒体、裏面に粘着剤と剥離ラベルの付いたシール用紙、OHPシートなどの樹脂フィルム、金属シート、電子回路基板、布、木など様々な媒体がある。
【0081】
転写部26に送られた記録媒体14は、ヒートローラ36と転写ローラ38によって所定の温度及び所定のニップ圧で加熱加圧され、中間転写ベルト12上の1次画像が記録媒体14上に転写される。転写部26を通過した記録媒体14(印刷物)は、剥離爪(不図示)によって中間転写ベルト12から分離され、図示せぬ搬送手段によって機外へと排出される。図1には示さないが、印刷物の排出部には、プリントオーダー別に印刷物を集積するソーターが設けられる。
【0082】
なお、中間転写ベルト12から剥離した記録媒体14(印刷物)は機外排出前に図示せぬ定着工程を通してもよい。定着部は、例えば、温度及び加圧力の調整可能な加熱ローラ対を含んで構成される。このような定着工程を付加することにより、インクに含有されるポリマー微粒子を造膜させる(画像の最表面にポリマー微粒子が溶解した薄膜が形成される)ことで、耐擦性や保管性が一段と向上する。定着工程における加熱温度は100〜130℃、加圧力は2.5〜3.0MPaが好ましく、添加したポリマー樹脂の温度特性(成膜温度:MFT)などに応じて最適化される。もちろん、転写部26における転写工程において、転写性と造膜化が両立することができれば、定着部を省略する態様も可能である。
【0083】
転写部26による転写工程後、剥離爪による剥離部40を通過した中間転写ベルト12は、クリーニング部30に到達する。
【0084】
クリーニング部30は、蒸留水や精製水などの水や溶媒除去ローラ等で回収した溶媒、又はこれら液体に界面活性剤などを添加した洗浄液を用いて中間転写ベルト12の洗浄を行う手段であり、洗浄液を噴射する洗浄液噴射部50と、中間転写ベルト12の画像形成面12Aに当接して中間転写ベルト12の画像形成面12Aを摺動払拭するクリーニングブレード52を含んで構成される。また、クリーニングブレード52が摺接する中間転写ベルト12の裏面側にはプラテン54が配設されている。
【0085】
クリーニングブレード52は、中間転写ベルト12の幅と同等、或いは、それよりも僅かに長めに形成され(図8(b)参照)、中間転写ベルト12の全幅を一度に掻き取ることができる。洗浄液噴射部50から中間転写ベルト12の表面に向けて洗浄液を噴射しながらクリーニングブレード52で掻き取ることにより、中間転写ベルト12をクリーニングする。なお、洗浄液の飛散防止とクリーニングブレード52による掻き取り液の回収等のために、クリーニング部30は容器56で覆われている。このクリーニング部30は、主に、記録媒体14への画像転写終了後の中間転写ベルト12をクリーニングする手段として機能する。
【0086】
また、詳細は後述するが、中間転写ベルト12の幅に対応する長さのクリーニングブレード52に付着した清掃カスを中間転写ベルト12によって取り除き、その取り除いた清掃カスを清掃カス回収部32にて回収する構成となっている。
【0087】
次に、インクジェット記録装置10の要部の構成について更に詳説する。
【0088】
〔印字部の構成〕
図1に示したように、印字部22は、中間転写体搬送方向に沿って上流側から、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンダ(M)、黒(K)の順に、各色に対応したヘッド22Y、22C、22M、22Kが並んで設けられている。
【0089】
また、インク貯蔵/装填部58は各ヘッド22Y、22C、22M、22Kにそれぞれ供給するインク液を各々貯蔵するインクタンクを含んで構成される。各インクタンクは所要の流路を介してそれぞれ対応するヘッドと連通されており、各ヘッドに対してそれぞれ対応するインク液を供給する。インク貯蔵/装填部58は、タンク内の液体残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、液体間の誤装填を防止するための機構を有している。
【0090】
インク貯蔵/装填部58の各インクタンクから各ヘッド22Y、22C、22M、22Kにインクが供給され、各ヘッド22Y、22C、22M、22Kから中間転写ベルト12の画像形成面12Aに対してそれぞれ対応する色インクが打滴される。
【0091】
図2は、印字部22の平面図である。同図に示すように、各ヘッド22Y、22C、22M、22Kは、それぞれ中間転写ベルト12における描画領域の最大幅に対応する長さを有し、そのインク吐出面には描画領域の全幅にわたってインク吐出用のノズル(図2中不図示、図3に符号81で図示)が複数配列されたノズル列を有するフルライン型のヘッドとなっている。各ヘッド22Y、22C、22M、22Kは、中間転写体(中間転写ベルト)搬送方向と直交する方向に延在するように固定設置される。
【0092】
中間転写ベルト12の幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッドを吐出液別に設ける構成によれば、中間転写ベルト12の搬送方向(図2中、符号Aで図示)について、中間転写ベルト12と印字部22を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、中間転写ベルト12の描画エリアに画像(1次画像)を形成することができる。これにより、中間転写体搬送方向と直交する方向(主走査方向;図3中矢印Mで示す方向)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドが適用される場合に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
【0093】
本例では、YMCKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0094】
〔ヘッドの構造〕
次に、各ヘッドの構造について説明する。色別のヘッド22Y、22C、22M、22Kの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号80によってヘッドを示すものとする。
【0095】
図3(a)はヘッド80の構造例を示す平面透視図であり、図3(b)はその一部の拡大図である。記録媒体14上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド80におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド80は、図3(a),(b)に示したように、インク吐出口であるノズル81と、各ノズル81に対応する圧力室82等からなる複数のインク室ユニット(記録素子単位としての液滴吐出素子)83を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(中間転写ベルト12の搬送方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0096】
中間転写ベルト12の搬送方向(図3中矢印Sで図示)と略直交する主走査方向(図3中矢印Mで図示)に中間転写ベルト12の描画エリアの全幅Wmに対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は図示の例に限定されない。例えば、図3(a)の構成に代えて、図4に示すように、複数のノズル81が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール80’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで長尺化することにより、全体として中間転写ベルト12の描画エリアの全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
【0097】
各ノズル81に対応して設けられている圧力室82は、その平面形状が概略正方形となっており(図3(a),(b)参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル81への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)84が設けられている。なお、圧力室82の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
【0098】
図5は、ヘッド80における記録素子単位となる1チャンネル分の液滴吐出素子(1つのノズル81に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図3(a) 中の5−5線に沿う断面図)である。
【0099】
図5に示したように、各圧力室82は供給口84を介して共通流路85と連通されている。共通流路85はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路85を介して各圧力室82に供給される。
【0100】
圧力室82の一部の面(図5において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)86には個別電極87を備えたアクチュエータ88が接合されている。個別電極87と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ88が変形して圧力室82の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル81からインクが吐出される。なお、アクチュエータ88には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、アクチュエータ88の変位が元に戻る際に、共通流路85から供給口84を通って新しいインクが圧力室82に再充填される。
【0101】
入力画像からデジタルハーフトーニング処理によって生成されるドットデータに応じて各ノズル81に対応したアクチュエータ88の駆動を制御することにより、ノズル81からインク滴を吐出させることができる。中間転写ベルト12を一定の速度で副走査方向(図3(a)参照)に搬送しながら、その搬送速度に合わせて各ノズル81のインク吐出タイミングを制御することによって、中間転写ベルト12上に所望の画像(ここでは、転写前の1次画像)を記録することができる。
【0102】
上述した構造を有するインク室ユニット83を図6に示す如く主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
【0103】
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット83を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影(正射影)されたノズルのピッチPはd×cosθとなり、主走査方向については、各ノズル81が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影される実質的なノズル列の高密度化を実現することが可能になる。
【0104】
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、中間転写ベルト12の幅方向(中間転写ベルト12の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
【0105】
特に、図6に示すようなマトリクス状に配置されたノズル81を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。即ち、ノズル81-11 、81-12 、81-13 、81-14 、81-15 、81-16 を1つのブロックとし(他にはノズル81-21 、…、81-26 を1つのブロック、ノズル81-31 、…、81-36 を1つのブロック、…として)、中間転写ベルト12の搬送速度に応じてノズル81-11 、81-12 、…、81-16 を順次駆動することで中間転写ベルト12の幅方向に1ラインを印字する。
【0106】
一方、上述したフルラインヘッドと中間転写ベルト12とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
【0107】
そして、上述の主走査によって記録される1ライン(或いは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。即ち、本実施形態では、中間転写ベルト12の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。
【0108】
また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ88の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
【0109】
〔制御系の説明〕
図7は、インクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース170、システムコントローラ172、メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178、転写制御部179、プリント制御部180、画像バッファメモリ182、ヘッドドライバ184、凝集処理液塗布制御部185等を備えている。
【0110】
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ186から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース170にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ186から送出された画像データは通信インターフェース170を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦メモリ174に記憶される。
【0111】
メモリ174は、通信インターフェース170を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ172を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ174は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0112】
システムコントローラ172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ172は、通信インターフェース170、メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178、転写制御部179等の各部を制御し、ホストコンピュータ186との間の通信制御、メモリ174の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ188やヒータ189を制御する制御信号を生成する。
【0113】
メモリ174には、システムコントローラ172のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、メモリ174は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ174は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0114】
モータドライバ176は、システムコントローラ172からの指示にしたがってモータ188を駆動するドライバである。図7には、装置内の各部に配置されるモータを代表して符号188で図示されている。例えば、図7に示すモータ188には、図1の張架ローラ34A、34Bのうち駆動ローラを駆動するモータや、記録媒体14を搬送する搬送機構の駆動モータなどが含まれている。
【0115】
ヒータドライバ178は、システムコントローラ172からの指示にしたがって、ヒータ189を駆動するドライバである。図7には、インクジェット記録装置10に備えられる複数のヒータを代表して符号189で図示されている。例えば、図7に示すヒータ189には、図1に示す乾燥部18に含まれるヒータや、不図示の定着部(転写記録後の記録媒体14に画像を定着させる処理部)の加熱ローラ対に含まれるヒータなどが含まれている。
【0116】
転写制御部179は、図1に示す転写部26の転写ローラ38の押圧制御を行う。記録媒体14の種類やインクの種類ごとに、転写ローラ38の押圧最適値が予め求められ、データテーブル化されて所定のメモリ(例えば、メモリ174)に記憶されている。記録媒体14の情報や使用インクの情報を取得すると、当該メモリを参照して転写ローラ38の押圧が制御される。転写ローラ38の押圧を可変させるときに転写ローラ38を移動させる移動機構のモータは、図7のモータ188に含まれる。
【0117】
システムコントローラ172は、装置各部に備えられたセンサから送られる検出信号を受け取り、当該検出信号に基づいて装置各部に対して制御信号を送出する。即ち、システムコントローラ172は、各センサの検出信号に基づいて各部を制御する制御手段として機能する。
【0118】
プリント制御部180は、システムコントローラ172の制御に従い、メモリ174内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ184に供給する制御部である。プリント制御部180において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッドドライバ184を介してヘッド80のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0119】
プリント制御部180には画像バッファメモリ182が備えられており、プリント制御部180における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ182に一時的に格納される。また、プリント制御部180とシステムコントローラ172とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0120】
ヘッドドライバ184は、プリント制御部180から与えられる画像データに基づいてヘッド80(ヘッド22Y,22C,22M,22K)のアクチュエータ88に印加される駆動信号を生成するとともに、該駆動信号をアクチュエータ88に印加してアクチュエータ88を駆動する駆動回路を含んで構成される。なお、図7に示すヘッドドライバ184には、ヘッド80の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0121】
印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース170を介して外部から入力され、メモリ174に蓄えられる。この段階では、RGBの画像データがメモリ174に記憶される。
【0122】
メモリ174に蓄えられた画像データは、システムコントローラ172を介してプリント制御部180に送られ、該プリント制御部180においてインク色ごとのドットデータに変換される。即ち、プリント制御部180は、入力されたRGB画像データをYCMKの4色のドットデータに変換する処理を行う。プリント制御部180で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ182に蓄えられる。
【0123】
なお、中間転写ベルト12上に形成される1次画像は、転写の際に反転することを考慮して、最終的に記録媒体14に形成される2次画像(記録画像)の鏡面画像としなければならない。即ち、ヘッド22Y,22C,22M,22Kに供給される駆動信号は鏡面画像に対応した駆動信号であり、プリント制御部180にて入力画像に対して反転処理を施す必要がある。
【0124】
凝集処理液塗布制御部185は、プリント制御部180から送られる制御信号に基づいて処理液塗布部16を制御する。例えば、プリント制御部180に画像データが送られると凝集処理液の塗布量が決められ、描画エリア(図9参照)が処理液塗布部16の処理領域に到達すると凝集処理液の塗布が開始される。
【0125】
図7に示すプログラム格納部190には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ172の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部190はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。なお、プログラム格納部190は動作パラメータ等の記録手段(不図示)と兼用してもよい。
【0126】
〔クリーニング部におけるブレードの清掃方法の説明〕
次に、図1に示すクリーニング部30及び清掃カス回収部32の詳細について説明する。
【0127】
図8(a)はクリーニング部30及び清掃カス回収部32の要部構成図である。中間転写ベルト12の一部、又は複数部には、複数の穴90が形成された穴部92(ブレード清掃領域)が設けられている(図8(b)参照)。中間転写ベルト12の搬送により穴部92がクリーニングブレード52上を通過するときにクリーニングブレード52に溜まったカス95はこの穴90に入り込み、更に中間転写ベルト12の搬送に伴い穴部92はクリーニングブレード52下流側の清掃カス回収部32に移動する。
【0128】
穴90の配置はクリーニングブレード52に付着したカス95を満遍なく除去するために、中間転写ベルト12を搬送するとクリーニングブレード52の全面(掻き取り面となる幅方向の全体)が必ず穴90を通過するように配置されている。図8(b)に示すように中間転写ベルト12の穴90を大小径違いで構成することで、より少ない穴の数でクリーニングブレード52全面をカバーできる。
【0129】
穴90の量(数)はクリーニングブレード52に付着するカス95の量に応じて決定される。ここではベルト幅500mm、周長7000mmに処理液が3μm塗布されているとして、これをクリーニングブレード52で掻き取り、70%は洗浄液と共にクリーニングブレード52から滑落することから、クリーニングブレード52の先端部に残存するカス95の量はベルト1周分で500×7000×0.003×0.3=3150mm3である。
【0130】
これに対してベルトの穴90は厚さ0.3mmのベルトに幅500mm、周長方向100mm間に開口率50%で穴を開ければ0.3×500×100×0.5=7500mm3で安全率2以上となる。具体的にはφ10mmの穴120個とφ5mmの穴800個で(5×5×π×120+2.5×2.5×π×800)×0.3=7536mm3となり、φ10mmの穴の周りをφ5mmの穴6〜7個で囲むようにする。
【0131】
なお、カス95の量が多く中間転写ベルト12が1周する前にクリーニング性能の劣化が起きる場合は、穴90(穴部92)の位置を中間転写ベルト12の周面の複数か所に分けることで、クリーニングブレード52は逐次クリーニングされ、クリーニングブレード52のクリーニング性能を保つことができる。
【0132】
クリーニングブレード52は固定のままでも効果はあるが、図8(a)に図示するように、更に効果を上げるため、ベルト穴がクリーニングブレード52上に来た時はクリーニングブレード52の角度を寝かせることで、クリーニングブレード52に付着したカスをより多く除去できるようにしている。例えば、通常のベルト清掃時(ベルト面に付着したインク等の付着物94を除去する中間転写ベルト12の清掃時)は、図9に示す状態で中間転写ベルト12とクリーニングブレード52の角度(ブレード角度α)は45°とする。一方、クリーニングブレード52の清掃時(穴部92に接触するとき)は図8(a)に示すように、ブレード角度αを20°としている。なお、図9に示すように、クリーニングブレード52はバネ96(付勢部材)によってベルト面を押す方向(図9において上方向)に付勢されている。
【0133】
クリーニングブレード52を寝かせるタイミングは、図8(a)に記載のベルト位置検出センサ98で中間転写ベルト12の穴90(穴部92)の位置(若しくは、中間転写ベルト12に付けたマーク)を認識して行い、穴90等の認識から所定の時間経過後に元の角度に戻すように制御される。
【0134】
即ち、洗浄液噴射部50よりもベルト搬送方向上流側にベルト位置検出センサ98(非接触式が好ましく、例えば、光学式センサを用いる)が配置されており、当該ベルト位置検出センサ98にて穴90(穴部92)の位置(若しくは所定のマーク)を検出したら、クリーニングブレード52を不図示のアクチュエータにて押し上げ、ブレード角度を寝かせ、所定角度(例えば、20°)とする。
【0135】
少なくとも穴部92がクリーニングブレード52を通過するまでの時間、この状態を維持し(図8(a))、所定時間経過後に、クリーニングブレード52の押し上げを解除して、元のブレード角度(図9)に戻す。ベルト位置検出センサ98の位置とベルト搬送速度に基づき、制御に必要な所定時間の設定が行われる。ブレード角度αの切り替えは、図7のシステムコントローラ172によって制御される。
【0136】
中間転写ベルト12のクリーニング時のブレード角度αは45°以上80°以下が好ましい。また、クリーニングブレード52のクリーニング時のブレード角度αは0°以上45°以下が好ましく、5°以上45°以下とするとより好ましい。
【0137】
例えば、クリーニングブレード52のクリーニング時において、クリーニングブレード52の先端部が中間転写ベルト12の画像形成面12Aに対して、クリーニングブレード52の回転軸に位置よりも上側(中間転写ベルト12側)に位置するようにブレード角度αが決められる。言い換えると、中間転写ベルト12の画像形成面12Aとクリーニングブレード52が平行な状態(ブレード角度α=0°)よりもクリーニングブレード52の先端部が上がった状態になるように、ブレード角度αは水平或いは水平以内となるように制御される。
【0138】
クリーニングブレード52は耐久性と中間転写ベルト12の清掃性能から硬度80〜90度の弾性材料が好ましい。ここでは厚さ7mmのウレタンゴム(AU)、もしくはニトリルゴム(NBR)を使用する。
【0139】
クリーニングブレード52の下流側に設けられた清掃カス回収部32は、中間転写ベルト12の穴90に入ったカス95を回収する手段として、表面に突起状のイボ(凸イボ)101を有するローラ(「凸イボローラ102」という。)と、エアノズル104と、回収容器106を備える。更に、エアノズル104の下流側には、ベルト内面側に溢れたカスを拭取るための拭取り部材(本例では、拭取スポンジ108)が設けられている。
【0140】
凸イボローラ102は、中間転写ベルト12の内周面(裏面)側に配置されており、偏芯カム110によって図8(a)の上下方向に移動することにより、中間転写ベルト12の内周面に当接する状態とベルトから離間した状態が可能である。
【0141】
凸イボローラ102のイボ101(凸突起)は、中間転写ベルト12に形成されている穴90の径より小さく、穴90に詰まっているカス95を押し出す。その直後にエアノズル104より圧縮空気が中間転写ベルト12の内側より吹き付けられ、穴90のカス95を吹き飛ばす。
【0142】
なお、中間転写ベルト12の幅に対応する長さを有する凸イボローラ102を1つ備えてもよいし、中間転写ベルト12の幅に満たない長さの凸イボローラ102を複数組み合わせてもよい。凸イボローラ102が1周すると穴部92の穴90のすべてに少なくとも1つのイボ101が入るように、イボ101の数及び配置が決められている。
【0143】
また、中間転写ベルト12の幅に対応して複数のエアノズル104を並べてもよいし、1つまたは複数のエアノズル104を中間転写ベルト12の幅方向に走査させるように構成してもよい。
【0144】
中間転写ベルト12を挟んで凸イボローラ102及びエアノズル104の反対側には回収容器106が設けられており、穴90から除去されたカス95は回収容器106にて回収される。更に、回収容器106にはエアを逃がす排気路112が設けられている。
【0145】
凸イボローラ102の中間転写ベルト12への着脱、並びにエアノズル104から圧縮空気を出すタイミングは、図8(a)に記載のベルト位置検出センサ98の検出に基づき検出タイミングからの経過時間で制御し、必要な時だけエアを使いコンプレッサーの稼動時間を抑える。
【0146】
また、中間転写ベルト12内側にはみ出たカスは最下流の拭取スポンジ108で拭き取ることにより、ベルト駆動ローラ(34A、34B,36)の汚れを防ぐ。なお、この拭取スポンジ108はベルト位置検出センサ98の検出結果に基づいて着脱制御することで必要ない時は中間転写ベルト12より離間し、拭取スポンジ108の磨耗や拭取スポンジ108の中間転写ベルト12への当接による中間転写ベルト12の搬送異常が防止される。
【0147】
清掃カス回収部32の後段には穴詰まり検出センサ114(例えば輝度センサ)が設けられており、当該穴詰まり検出センサ114にて穴90が詰まっているか貫通しているかをチェックする。詰まっている時は次の周にエア吹き付け時のベルト搬送スピードを下げる(例えば、500mm/secから20mm/secに下げる)。または、エアノズル104から噴射するエア圧を上げる。若しくはその両方を行い、穴90のカス95を確実に除去することで穴詰まり無く安定した品質を保つことができる。
【0148】
なお、仮に一部の穴90が詰まったまま中間転写ベルト12を一周させても、穴90のカス受け容量は安全率2以上で開けてあるため、ブレード清掃性能は維持できる。
【0149】
装置立ち上げ時や所定時間以上装置が止まった状態からの印刷開始時(例えば、穴90に入った処理液が穴90の中で固まる時間、30分程度)には、中間転写ベルト12を1周させて穴詰まり検出センサ114で穴90の詰まりを確認し、穴90が詰まっている場合は更に中間転写ベルト12を1周させて穴90のクリーニングを行い印刷可能とする。また、印刷JOB終了時や装置立ち下げ時にも中間転写ベルト12を1周させて、穴詰まりの確認動作と穴90のクリーニング動作が行われる。
【0150】
図10には、中間転写ベルト12におけるブレード清掃エリアとしての穴部92と描画エリア118の位置関係を示した。図示のように、穴部92の両側に所定量(ここでは、ベルト搬送方向に20mmずつ)非描画エリア120を設けている。このため、カスが多少穴90からはみ出ていても、描画エリアの画質には影響を与えない。
【0151】
図11は、装置立ち上げ時及び立ち下げ時におけるシーケンスを示すフローチャートである。
【0152】
立ち上げ・立ち下げシーケンスが開始すると(ステップS10)、まず、図8(a)に示す洗浄液噴射部50から洗浄液の噴射を開始するとともに(図11のステップS12)、クリーニングブレード52を通常印刷角度(本例では図9のように45°)に設定し(ステップS14)、中間転写ベルト12の駆動を開始する(ステップS16)。即ち、ステップS12〜ステップS16では、中間転写ベルト12のクリーニング処理が実行される。
【0153】
次いで、穴詰まり検出センサ114(センサ2)による検知信号に基づき、穴詰まりの有無を判定する(ステップS18)。穴詰まりが全て無くなったことが確認できなければ、ステップS18でNo判定となり、ステップS20へ進む。
【0154】
ステップS20ではベルト位置検出センサ98(センサ1)による穴部92の位置の認識(または所定のマークの認識)がなされたか否かを判定する。ベルト位置検出センサ98による認識が得られるまで同ステップS20の処理がループし、ベルト位置検出センサ98の検出信号が監視される。
【0155】
ステップS20において、ベルト位置検出センサ98が穴92の位置(または所定マーク)を検知すると(Yes判定)、穴詰まり処理モードに移行し(ステップS22)、中間転写ベルト12の搬送スピードをダウンさせるように設定されるとともに(ステップS24)、図8(a)のエアノズル104からエア噴出圧力を通常処理時よりもアップするように設定される(図11のステップS26)。
【0156】
そして、凸イボローラ102を中間転写ベルト12に接触させ(ステップS30)、エアノズル104からのエア噴出を開始するとともに(ステップS32)、拭取スポンジ108をベルト内周面に当接させる位置にセットする(ステップS34)。
【0157】
ベルト位置検出センサ98による穴位置(または所定マーク)の認識後、所定の時間(穴部92がクリーニング部30及び清掃カス回収部32の処理領域を通過するまでの時間)が経過したか否かを判定し(ステップS36)、所定時間経過するまで同状態を維持する。この間に、洗浄カスの除去と回収が行われる。
【0158】
ステップS36において、所定時間が経過し、YES判定になると、ステップS38に進み、凸イボローラの離間、エア噴射の停止(ステップS40)、及び拭取スポンジ108の離間(ステップS42)が行われる。
【0159】
ステップS42の処理後は、ステップS18に戻り、ステップS18で穴詰まりが発見された場合には、ステップS20〜S42の処理を繰り返す。
【0160】
ステップS18において、穴詰まりが無くなったことが確認されると(No判定)、ステップS50に進み、中間転写ベルト12の駆動停止、クリーニングブレード52の離間(ステップS52)、並びに、洗浄液の噴射の停止を行う(ステップS54)。ステップS54の処理後、本シーケンスを終了する(ステップS56)。
【0161】
図12は、通常印刷時におけるクリーニングブレード52のクリーニングシーケンスを示すフローチャートである。先に説明したように、通常印刷時には中間転写ベルト12への1次画像の形成、記録媒体14への転写記録、中間転写ベルト12のクリーニング等の一連の画像記録シーケンスが実行され、この一連のシーケンスの中でクリーニングブレード52のクリーニングシーケンスが実行される。
【0162】
通常印刷シーケンスにおけるクリーニングブレード52のクリーニングシーケンスを開始すると(ステップS100)、まず、洗浄液の噴射を開始するとともに(ステップS102)、クリーニングブレード52を通常印刷角度(本例では図9のように45°)に設定し(ステップS104)、中間転写ベルト12の駆動を開始する(ステップS106)。即ち、ステップS102〜ステップS106では、中間転写ベルト12のクリーニングシーケンスが実行される。
【0163】
次いで、ベルト位置検出センサ98による穴部92の位置の認識(または所定のマークの認識)がなされたか否かを判定する(ステップS108)。ベルト位置検出センサ98による認識が得られるまで同ステップS108の処理がループし、ベルト位置検出センサ98の検出信号が監視される。
【0164】
ステップS108において、ベルト位置検出センサ98が穴部92の位置(または所定マーク)を検知すると(Yes判定)、クリーニングブレード52が20°の角度に寝かされるとともに(ステップS110)、凸イボローラ102を中間転写ベルト12に接触させ(ステップS112)、エアノズル104からのエア噴出を開始するとともに(ステップS114)、拭取スポンジ108をベルト内周面に当接させる位置にセットする(ステップS116)。
【0165】
その後ステップS118に進み、ベルト位置検出センサ98による穴部92の位置(または所定マーク)の認識後、所定の時間が経過したか否かを判定し、所定時間経過するまで同状態を維持する。この間に、洗浄カス(図8(a)参照)の除去と回収が行われる。図12のステップS118において、所定時間が経過し、YES判定になると、ステップS120に進み、クリーニングブレード52の角度を通常印刷角度(45°)に戻すとともに、凸イボローラの離間(ステップS122)、エア噴射の停止(ステップS124)、及び拭取スポンジ108の離間(ステップS126)が行われる。
【0166】
その後、ステップS128に進み、図8(a)に示す穴詰まり検出センサ114によって清掃カス回収部32を通過した穴部92の穴詰まりの有無が検出される。図12のステップS128において穴部92の穴詰まりがあると判断されると(NO判定)、ステップS130に進む。清掃カス回収部32を通過した穴部92の穴詰まりがある場合には、中間転写ベルト12を1周させて、ベルト位置検出センサ98による穴部92の位置の認識(または所定のマークの認識)がなされたか否かが判定される(ステップS130)。また、ベルト位置検出センサ98による認識が得られるまで同ステップS130の処理がループし、ベルト位置検出センサ98の検出信号が監視される。
【0167】
ステップS130において、ベルト位置検出センサ98が穴部92の位置(または所定マーク)を検知すると(Yes判定)、穴詰まり処理モードに移行し(ステップS132)、中間転写ベルト12の搬送スピードをダウンさせるとともに(ステップS134)、エア噴出圧力をアップさせるように設定される。(ステップS26)。
【0168】
そして、凸イボローラ102を中間転写ベルト12に接触させ、エアノズル104からのエア噴出圧力を先のクリーニング処理時よりもアップさせ(ステップS136)、ステップS110からステップS126までのステップを繰り返す。このようにして、穴部92の穴詰まりがなくなるまでステップS110からステップS136のステップを繰り返す。
【0169】
一方、ステップS128において、穴部92の穴詰まりがないと判断されると(YES判定)、ステップS140に進み、所定の印刷工程(印刷Job)を終了するか否かが判断される。印刷工程を継続する場合には(NO判定)、ステップS108に進み、ステップS108からステップS136の一連のステップが実行される。また、所定の印刷工程を終了する場合には(YES判定)、立ち下げ時シーケンス(図11参照)へ移行する(図12のステップS142)。
【0170】
上記の如く構成されたインクジェット記録装置10によれば、中間転写ベルト12の画像形成面12Aをクリーニングするためのクリーニングブレード52に付着したカスを取り除くブレード清掃領域として多数の穴90を有する穴部92備えたので、中間転写ベルト12に設けた穴90がクリーニングブレード52上に来るたびにクリーニングブレード52が清掃される。また、シンプルで安価な故障しにくい構成である。
【0171】
クリーニングブレード52より除去したカス95は拭き取るのではなく洗浄やエアで飛ばす構成としたことで、カス95を拭き取るための部材の交換が不要であり、消耗交換品がないので、装置(印刷)を止めることなく生産性を落とさずにすむ。
【0172】
印刷を止めずにクリーニングブレード52の清掃を行うので、生産性が落ちることなく、常にクリーニングブレード52が清掃されているので安定した品質の印刷が可能である。
【0173】
〔第2実施形態〕
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。図13は、第2実施形態に係るインクジェット記録装置のクリーニング部230及び清掃カス回収部232の要部構成図である。なお、第2実施形態中、第1実施形態と同一または類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0174】
中間転写ベルト212の一部、又は複数部に複数の凹穴(凹溝)290が形成され、更に、凹穴290のベルト裏面(内周面)にはベルト突起(図13中不図示、図14に符号291で図示)が設けられている。中間転写ベルト212に設けられた凹穴(凹溝)290の配置、数、量などは図8(b)で説明した穴90と同じ考え方で決められている。また、凹穴(凹溝)290の深さは、中間転写ベルト212の厚みの50%以上70%以下とする態様が好ましい。
【0175】
凹穴290に入ったカス95は、クリーニングブレード52の中間転写ベルト搬送方向下流側に設けられたカス押出ローラ293で中間転写ベルト212の内周面のベルト突起が押され、更に、カス押出ローラ293の曲率により凹穴290が広がることで、凹穴290からカス95が浮き出てくる。そこに凹穴清掃用の洗浄液噴射部251によって洗浄液を掛け洗い流し、拭取ローラ295で水分を拭き取る。
【0176】
図14は、中間転写ベルト212の一部拡大図である。図14に示すように、中間転写ベルト212の内周面212B側には伸び量が少ないバックシート297(例えばPET)が張られており、ブレード清掃エリア231部分は全体に切り抜かれている。なお、図15に示すようにバックシート297の端はつながっているので強度は保たれる。
【0177】
中間転写ベルト212の内周面212Bに設けられたベルト突起291の厚さは、バックシート297の厚さと同じか若しくはそれ以下にし、ベルト突起291がバックシート297の厚さ以下でバックシート297の端がつながっているので、クリーニングブレード52の清掃時にプラテン54でベルト突起291が押される事が無い。図14には、ベルト突起291の厚さとバックシート297の厚さが同じ厚さの態様を図示する。
【0178】
また、図13に示すように、クリーニングブレード52の中間転写ベルト搬送方向下流側には清掃カス回収部232が設けられ、清掃カス回収部232はカス押出ローラ293を含んで構成されている。図15に示すように、カス押出ローラ293はブレード清掃エリア231のバックシートが切り取られた中に入るようになっており、図16に示すように、凹穴290に入ったカス95はカス押出ローラ293がベルト突起291を中間転写ベルト212の画像形成面212A側に押し、カス95を凹穴290より浮き出させる。更に、カス押出ローラ293の曲率も手伝い凹穴290は更に広がり、カス95を押し出しやすくしている。
【0179】
なお、図16には、カス押出ローラ293がベルト突起291を押すための手段として、カス押出ローラ293を図16の下方向に付勢する付勢部材(ばね)293Aを図示した。
【0180】
このようにして凹穴290から押し出されたカス95は凹穴清掃用の洗浄液噴射部251(図13参照)から噴射される洗浄液により洗い流され、清掃カス回収部232から図示されてないホースにより回収BOX(不図示)に回収される。回収BOXに回収された洗浄液は濾過され再利用することで廃液量を抑制している。
【0181】
なお、クリーニングブレード52の中間転写ベルト搬送方向上流側でもベルト清掃用の洗浄液噴射部50から洗浄液を噴射しているので、クリーニングブレード52の清掃前に凹穴290は洗浄液で濡れているおり、凹穴290からカス95を取り出す際に、カス95が凹穴290から剥がれやすくなっている。
【0182】
清掃カス回収部232において使用される洗浄液(凹穴清掃用の洗浄液噴射部251に適用される洗浄液)は、中間転写ベルト212の清掃用洗浄液(ベルト清掃用の洗浄液噴射部50に適用される洗浄液)と同種のもの(例えば、純水や界面活性剤)を用いるとよい。なお、洗浄後に拭取ローラ(スポンジローラ)295で中間転写ベルト212の水分は除去される。拭取ローラ295に溜まった水分は絞りローラ295Aで絞り取るので、拭取ローラ295は常に保水力を保つことができる。
【0183】
洗浄液噴射と拭取ローラ295の脱着タイミングは、ベルト位置検出センサ298により中間転写ベルト212に予め付けたマーク(不図示)を読み、その読取結果に基づいてON/OFFするので無駄な洗浄液を出すことがなく、拭取ローラ295から画像形成面212Aに汚れが再付着することを防止する。なお、装置立ち上げ時、立ち下げ時、JOB終了時、若しくは装置停止状態で所定時間以上経った時は、中間転写ベルト212を1周させ、凹穴290の清掃動作が行われる。
【0184】
第2実施形態では、構造上、凹穴290が広がり、洗浄液噴射でカス詰まりを起こす可能性は極めて低く、先に説明した第1実施形態のように穴90のカス詰まりをチェックするセンサ(穴詰まり検出センサ114)は特に設けなくてもよい。
【0185】
図17は、第2実施形態における装置立ち上げ時及び立ち下げ時におけるシーケンスを示すフローチャートである。
【0186】
立ち上げ・立ち下げシーケンスが開始すると(ステップS200)、まず、図13に示すクリーニング部230の洗浄液噴射部50から洗浄液の噴射を開始するとともに(図17のステップS202)、クリーニングブレード52を通常印刷角度(α=45°)に設定し(ステップS204)、中間転写ベルト12の駆動を開始する(ステップS206)。即ち、ステップS12〜ステップS16では、中間転写ベルト12のクリーニング処理が実行される。
【0187】
次に、ステップS208ではベルト位置検出センサ298による凹穴290の位置の認識(または所定のマークの認識)がなされたか否かを判定する。ベルト位置検出センサ298による認識が得られるまで同ステップS208の処理がループし、ベルト位置検出センサ298の検出信号が監視される。
【0188】
ステップS208において、ベルト位置検出センサ298が凹穴290の位置(または所定マーク)を検知すると(Yes判定)、クリーニングブレード52が20°の角度に寝かされるとともに(ステップS210)、清掃カス回収部232の穴清掃用の洗浄液噴射部251から洗浄液の噴射が開始され(ステップS212)、更に、拭取ローラ295がセットされる(ステップS214)。
【0189】
その後、ステップS216に進み、ベルト位置検出センサ298による穴部290の位置(または所定マーク)の認識後、所定の時間が経過したか否かを判定し(穴部290が清掃カス回収部232の処理領域を通過したか否かを判定し)、所定時間経過するまで同状態を維持する。この間に、洗浄カス(図13参照)の除去と回収が行われる。図17のステップS216において、所定時間が経過し、YES判定になると(穴部290が清掃カス回収部232の処理領域を抜け出すと)、ステップS218に進み、クリーニングブレード52の角度を通常印刷角度(α=45°)に戻すとともに、清掃カス回収部232の穴清掃用の洗浄液噴射部251から洗浄液の噴射を停止し(ステップS219)、更に、拭取ローラ295を中間転写ベルト212から離間させ(ステップS220)、中間転写ベルト212の停止(ステップS222)及びクリーニングブレード52の離間(ステップS224)が行われる。
【0190】
その後、ステップS226に進み、クリーニング部230の洗浄液噴射部50から洗浄液の噴射を停止して、当該立ち上げ・立ち下げシーケンスを終了する(ステップS228)。
【0191】
図18には通常印刷時におけるクリーニングブレード52のクリーニングシーケンスを示す。
【0192】
通常印刷シーケンスが開始すると(ステップS300)、まず、図13に示すクリー人部230の洗浄液噴射部50から洗浄液の噴射を開始するとともに(図18のステップS302)、クリーニングブレード52を通常印刷角度(α=45°)に設定し(ステップS304)、中間転写ベルト12の駆動を開始する(ステップS306)。この状態で通常印刷処理が行われ、中間転写ベルト12に画像データに基づいて1次画像が形成されるとともに、転写工程を経て記録媒体14に1次画像が転写される。その後、中間転写ベルト12の画像形成領域がクリーニング部230に移動すると当該画像形成領域に対してクリーニング処理が施される。
【0193】
図13に示すベルト位置検出センサ298は凹穴290の位置を監視し、凹穴290の認識(または所定のマークの認識)がなされたか否かを判定する(図18のステップS308)。ベルト位置検出センサ298による認識が得られるまで同ステップS308の処理がループし、ベルト位置検出センサ298の検出信号が監視される。
【0194】
ステップS308において、ベルト位置検出センサ298が凹穴290の位置(または所定マーク)を検知すると(Yes判定)、クリーニングブレード52が20°の角度に寝かされるとともに(ステップS310)、清掃カス回収部232の穴清掃用の洗浄液噴射部251から洗浄液の噴射が開始され(ステップS312)、更に、拭取ローラ295がセットされる(ステップS314)。
【0195】
その後、ステップS316に進み、ベルト位置検出センサ298による穴部290の位置(または所定マーク)の認識後、所定の時間が経過したか否かを判定し(穴部290が清掃カス回収部232の処理領域を通過したか否かを判定し)、所定時間経過するまで同状態を維持する。この間に、洗浄カス(図13参照)の除去と回収が行われる。図18のステップS316において、所定時間が経過し、YES判定になると(穴部290が清掃カス回収部232の処理領域を抜け出すと)、ステップS318に進み、クリーニングブレード52の角度を通常印刷角度(α=45°)に戻すとともに、清掃カス回収部232の穴清掃用の洗浄液噴射部251から洗浄液の噴射を停止し(ステップS319)、更に、拭取ローラ295を中間転写ベルト212から離間させ(ステップS320)、印刷を終了するか否かを判断する(ステップS322)。即ち、ステップS322において、次の画像データが存在する場合には(NO判定)、通常印刷処理を継続し(ステップS308に進み)、次の画像データが存在しない場合には(YES判定)、立ち上げ時シーケンス(図17参照)へ移行する(ステップS324)。
【0196】
以上説明したように、本発明に係る第2実施形態によれば、中間転写ベルト212に強度などの問題で貫通穴を開けることができない場合にも、非貫通穴を用いて同様の構成を実現することができる。
【0197】
〔第3実施形態〕
次に、本発明に係る第3実施形態について説明する。図19は、本実施形態に係るインクジェット記録装置300の概略構成図であり、図20は中間転写ドラム312の一部を拡大した拡大図である。
【0198】
図19に示すインクジェット記録装置300は、図1等に図示したインクジェット記録装置10の中間転写ベルト12に代わり中間転写ドラム312を備え、中間転写ドラム312を図19における半時計回り方向(矢印線Cで図示する方向)に回動させながら、ヘッド322Y,322C,322M,322Kから各色インクを吐出して中間転写ドラム312の画像形成面(外周面)312Aに1次画像を形成し、転写部326において1次画像が記録媒体314(搬送方向を符号Bで図示)に転写記録されるように構成されている。
【0199】
即ち、インクジェット記録装置300は、中間転写ドラム312に処理液を塗布する処理液塗布部316と、処理液塗布後の中間転写ドラム312を乾燥させる乾燥部318と、乾燥処理後の中間転写ドラム312上にインクを打滴するヘッド322Y,322C,322M,322Kを含む印字部322と、印字部322から打滴されたインクによって形成された1次画像を中間転写ドラム312から記録媒体314に転写する転写ローラ338を含む転写部326と、転写後の記録媒体314を中間転写ドラム312から剥離する剥離部340と、転写後に中間転写ドラム312に残留したインク及び処理液などをクリーニングブレード352により掻き取るクリーニング部330と、クリーニングブレード352から回収されたカスを回収する清掃カス回収部332と、中間転写ドラム312の画像形成面312Aに拭き掛けられた洗浄液を拭き取るスポンジローラ395及びスポンジローラ395から洗浄液を回収する絞りローラ395Aと、を備えている。
【0200】
中間転写ドラム312は中空構造を有し、図20に示すように中間転写ドラム312の一部(1か所)又は複数部(複数か所)に複数の穴(ドラム穴)390が開けられている。中間転写ドラム312の回転によりドラム穴390が形成された部分がクリーニングブレード352上を通過するときにクリーニングブレード352に溜まったカス305はこのドラム穴390に入り込む。
【0201】
更に、図21に示すように、中間転写ドラム312が回動してドラム穴390が形成された部分が清掃カス回収部332を通過するときに、クリーニングブレード352の中間転写ドラム移動方向下流側の中間転写ドラム312の内周に設けられたカス押出ローラ393により中間転写ドラム312のドラム穴390の内側に設けたカス押出材310が押されるのとともに、ドラム穴用洗浄液噴射部351の洗浄液噴射により、カス305はドラム穴390より洗い流され回収BOX306内に回収される。更に、図19に示すように、清掃カス回収部332の中間転写ドラム移動方向下流側には中間転写ドラム312表面の洗浄液を拭取るスポンジローラ(拭取部材)395と、スポンジローラ395から液体を回収する絞りローラ395Aが設けられている。
【0202】
中間転写ドラム312に形成されるドラム穴390の配置、数、量などは、上述した第1、第2実施形態と同様の考え方で決められている。また、クリーニングブレード352は第1、第2実施形態と同様に、クリーニングブレード352を清掃するときはクリーニングブレード352を所定の角度傾けることで、更にカス除去効果を上げることができる。
【0203】
カス押出材310とドラム穴390は隙間が少ないよう、互いに精度よくすき間ばめで加工されている(例えば、H8穴とg6軸)。このように、カス押出材310とドラム穴390を隙間なく構成することでカスや洗浄液が中間転写ドラム312の内部に入ることを防止している。また、ドラム用洗浄液噴射部350、ドラム穴用洗浄液噴射部351、クリーニングブレード352、清掃カス回収部332の配置は中間転写ドラム312の中央より下部に設けることで、重力によってカス及び洗浄液が中間転写ドラム312の内部に入り難い構造としている。
【0204】
カス押出材310には、プッシュロッド310Aが取り付けられ、中間転写ドラム312の内側面より内側に飛び出している。また、引っ張りばね311によりカス押出材310は中間転写ドラム312の表面より内側に待機している。中間転写ドラム312の回動によりプッシュロッド310Aがカス押出ローラ393の真下に位置すると、カス押出ローラ393がプッシュロッド310Aを中間転写ドラム312の外側方向へ押すとともに、一方の端部が中間転写ドラム312の内面に固定された引っ張りばね311を伸ばし、カス押出材310が中間転写ドラム312の表面側に押し出されることでカス305もドラム穴390から押し出される。
【0205】
また、クリーニングブレード352の中間転写ドラム移動方向上流側でドラム用洗浄液噴射部350(図20参照)から洗浄液を噴射しているので、クリーニングブレード352の清掃前にドラム穴390は洗浄液で濡れており、ドラム穴390からカス305を取り出す際に、カス305が剥がれやすくなっている。
【0206】
更に、押し出されたカス305はドラム穴用洗浄液噴射部351による洗浄液噴射により洗い流され、清掃カス回収部332から図示されてないホースにより回収BOX306に回収される。回収された洗浄液は濾過され再利用する事で廃液量を抑制することができる。
【0207】
洗浄液は、中間転写ベルトを適用する態様の中間転写ベルト清掃用と同じ物を用いることができ、例えば、純水や界面活性剤などが挙げられる。本例では、先に説明した第1、第2実施形態と同様に、中間転写ドラム312の洗浄後にスポンジローラ395で中間転写ドラム312表面の水分を除去する。スポンジローラ395に溜まった水分は絞りローラ395Aで搾り取るのでスポンジローラ395の保水力は常に好ましい状態に保たれている。
【0208】
清掃カス回収部332における洗浄液噴射とスポンジローラ395の脱着タイミングは、図示しないドラム位置検出センサにより、中間転写ドラム312に予め付けたマークの読取結果に基づいてON/OFFするので、無駄な洗浄液を出すことなく、スポンジローラ395から画像形成面312Aに汚れが再付着することを防止できる。
【0209】
装置立ち上げ時、立ち下げ時、JOB終了時、装置停止状態において所定時間以上経った時は、中間転写ドラム312を1周させ、ドラム穴390の清掃動作を行うように各部が制御される。
【0210】
なお、構造上ドラム穴390内のカスはすべてドラム穴390の外に押し出され、洗浄液を噴射することでドラム穴390にカス詰まりが発生する可能性は極めて低いため、本例では、第1実施形態のように穴90のカス除去不良をチェックするセンサ(穴詰まり検出センサ114)は特に設けなくてもよい。
【0211】
即ち、第3実施形態では、センサ398を用いて凹穴390の位置を検出し、その検出結果に基づいて各部の制御が行われるので、第2実施形態で説明した制御シーケンスを適用可能である。
【0212】
以上説明したように、第3実施形態によれば、中間転写体にドラム形状を適用する場合にも、クリーニングブレード352のクリーニングを好適に行うことができる。
【0213】
〔第4実施形態〕
次に、本発明に係る第4実施形態について説明する。第4実施形態では、第1〜第3実施形態の穴90、凹穴(凹溝)290、ドラム穴390に代わり、凸状の段差(凸段差)490が設けられている。
【0214】
即ち、図22(a),(b)に示す中間転写ベルト412の画像形成面412Aの一部(1か所)又は複数部(複数か所)には、中間転写ベルト412の幅方向にわたって凸段差490が設けられ、中間転写ベルト412の搬送(搬送方向を矢印線Aで図示)により凸段差490がクリーニングブレード452上に来たときには、クリーニングブレード452を中間転写ベルト412と略水平になるように傾け、クリーニングブレード452に付いたカス495を凸段差490で掻き取る。
【0215】
図23に示すように、掻き取ったカス495はクリーニングブレード452の中間転写ベルト搬送方向下流側に設けられた凸段差用洗浄液噴射部451による洗浄液噴射にて中間転写ベルト412より除去される。
【0216】
図22(a)には、クリーニングブレード452によって中間転写ベルト412の画像形成面412Aをクリーニングする状態を図示する。図22(a)に示すように、中間転写ベルト412の画像形成面412Aのクリーニング時には、クリーニングブレード452は水平方向(中間転写ベルト412の画像形成面412Aと平行方向)から45°傾けた状態で固定され、画像形成面412Aにベルト用洗浄液噴射部450から洗浄液を噴射させながら、画像形成面412Aに付着したインク等のカス495はクリーニングブレード452によって掻きとられる。
【0217】
図22(b)には、クリーニングブレード452をクリーニングしている状態を図示する。図22(b)に示すように、中間転写ベルト412の一部または複数部に中間転写ベルト412の幅全体にわたるように凸段差490が設けられ、中間転写ベルト412の搬送によりクリーニングブレード452の上面に凸段差が来るタイミングに合わせて、クリーニングブレード452を中間転写ベルト412と水平になるよう動かし、図示してないバネによってクリーニングブレード452を凸段差490に押し付け、この状態でベルトを搬送することでクリーニングブレード452に付着したカス495は凸段差490によって掻き取られる。
【0218】
凸段差490は1か所に設けてもよいが、中間転写ベルト412の移動方向における複数か所に設けることで、更に、クリーニングブレード452の清掃を確実に行うことができる。図23に示すように、凸段差490によってクリーニングブレード452から掻き取られたカス495は、クリーニングブレード452の中間転写ベルト搬送方向下流側に設けた凸段差用洗浄液噴射部451により洗い流される。
【0219】
本例では、クリーニングブレード452を動かすタイミングや洗浄液噴射のオンオフタイミングは上述した第2実施形態と同様に制御するとよい。また、洗浄液の回収BOXへの回収方法や回収された洗浄液の再利用方法、カス495の回収後の中間転写ベルト412に残留する洗浄液の拭取方法も上述した第2実施形態と同様に構成するとよい。
【0220】
更にまた本例においても、装置立ち上げ時、立ち下げ時、印刷JOB終了時、装置停止状態で所定時間以上経過した時は、中間転写ベルト412を1周させて、中間転写ベルト412の凸段差490の清掃動作を行うように構成されている。
【0221】
なお、本例でも構造上、凸段差490にカス495が残留する可能性は極めて低いため。第1実施形態のようにカス除去不良をチェックするセンサ(穴詰まり検出センサ114)を設けなくてもよい。即ち、第2実施形態で説明した制御シーケンスを適用可能である。
【0222】
本例では、凸段差490が転写部426を通過するときには、凸段差490と転写ローラ438が接触しないように転写ローラ438を移動させるように構成されている。
【0223】
ここで、図24(a),(b)を用いて、転写ローラ438の移動制御を説明する。
【0224】
図24(a),(b)に示す転写ローラ離間機構404は、転写ローラ438を中間転写ベルト412(ヒートローラ436)に押し付けるための押圧力を付与する圧縮バネ440と、転写ローラ438の回転軸442を上下に移動させるために転写ローラ438の回転軸442の上部に設けられた偏芯カム444と、を含んで構成されている。
【0225】
図24(a)に示すように、偏芯カム444の短軸方向が垂直方向と平行になるように偏芯カム444を回転させると、圧縮バネ440の付勢力が転写ローラ438の回転軸442を中間転写ベルト412に押し付ける方向(図24(a)における上方向)に作用して、転写ローラ438を中間転写ベルト412(ヒートローラ436)に押し付ける。
【0226】
一方、図24(b)に示すように、転写ローラ438の中間の中間転写ベルト搬送方向上流側に配置したセンサ402によって凸段差490を検知すると(凸段差490が転写ローラ438上に移動したときには)、偏芯カム444の長軸方向が偏芯カム444の短軸方向が垂直方向と平行になるように偏芯カム444を回転させることで、圧縮バネ440を圧縮して転写ローラ438の回転軸442を図24(b)における下方向に移動させることで、転写ローラ離間機構404にて中間転写ベルト412より転写ローラ438を離間させる。このように凸段差490がヒートローラ436と転写ローラ438との間を通過する際にヒートローラ436と転写ローラ438とを離間させることで、凸段差490が転写ローラ438に挟まれることなく、スムースなベルト搬送を実現している。
【0227】
上記の如く構成された第4実施形態によれば、中間転写ベルト412の画像形成面412Aの一部にクリーニングブレード452の幅と同一の長さまたは、クリーニングブレード452の長さよりも長い凸段差490を備え、凸段差490をクリーニングブレード452に接触させることでクリーニングブレード452に付着したカスを掻き取り、更に、凸段差490に付着したカス495を凸段差用洗浄液噴射部451から噴射された洗浄液によって洗い流すので、中間転写ベルト412に付着したカス及びクリーニングブレード452に付着したカスは中間転写ベルト412が1回転するうちに確実に除去可能である。
【0228】
〔凝集処理剤の調整〕
上述した第1〜第4実施形態で用いる凝集処理液の調整例を以下に示す。
【0229】
(処理液の例1)
[表1]に示す組成にて処理液(例1)を調整した。この調整により得られた処理液(例1)の物性値を測定した結果、pH3.6、表面張力28.0mN/m、粘度3.1mPa・sであった。
【0230】
【表1】
(処理液の例2)
更に[表2]に示す組成にて界面活性剤を添加した処理液(例2)を調整した。この調整により得られた処理液(例2)の物性値を測定した結果、pH3.5、表面張力18.0mN/m、粘度10.1mPa・sであった。
【0231】
【表2】
[表2]で用いたフッ素系界面活性剤1の化学式を[化1]に示す。
【0232】
【化1】
〔インクの調整〕
上述した第1〜第4実施形態で用いるインクの調整例を以下に示す。
【0233】
(ポリマー分散)シアンインクの調液
反応容器に、スチレン6質量部、ステアリルメタクリレート11質量部、スチレンマクロマーAS−6(東亜合成製)4質量部、プレンマーPP−500(日本油脂製)5質量部、メタクリル酸5質量部、2−メルカプトエタノール0.05質量部、メチルエチルケトン24質量部を調液した。
【0234】
一方、滴下ロートにスチレン14質量部、ステアリルメタクリレート24質量部、スチレンマクロマーAS−6(東亜合成製)9質量部、プレンマーPP−500(日本油脂製)9質量部、メタクリル酸10質量部、2−メルカプトエタノール0.13質量部、メチルエチルケトン56重量部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2 重量部を入れ、混合溶液を調整した。
【0235】
窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を1時間かけて徐々に滴下した。滴下終了から2時間経過後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2 重量部をメチルエチルケトン12重量部に溶解した溶液を3時間かけて滴下し、更に75℃で2時間、80℃で2時間熟成させ、ポリマー分散剤溶液を得た。
【0236】
得られたポリマー分散剤溶液の一部を、溶媒を除去することによって単離し、得られた固形分をテトラヒドロフランにて0.1質量%に希釈し、高速GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)HLC-8220GPCにて、TSKgel SuperHZM-H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ2000を3本直列につなぎ測定し、ポリスチレン換算で質量平均分子量25,000であった。
【0237】
得られたポリマー分散剤を固形分換算で5.0g、シアン顔料Pigment Blue 15:3(大日精化製)10.0g、メチルエチルケトン40.0g、1mol/L水酸化ナトリウム8.0g、イオン交換水82.0g、0.1mmジルコニアビーズ300gをベッセルに添加し、レディーミル分散機(アイメックス製)で1000rpm6時間分散した。得られた分散液をエバポレーターでメチルエチルケトンが十分留去できるまで減圧濃縮し、顔料濃度が10%になるまで濃縮した。得られたシアン分散液の顔料粒径は77nmであった。
【0238】
シアン分散を用いて[表3]に示す組成になるようにインクを調液し、調液後5μmフィルターで粗大粒子を除去し、シアンインク(C1−1)を調整した。得られたシアンインクC1−1の物性値を測定した結果、pH9.0、表面張力32.9mN/m、粘度3.9mPa・sであった。
【0239】
【表3】
上記と同様にして、マゼンタ、イエロー、ブラックのインクも調液した。
【0240】
〔添加ポリマーについて〕
前述した処理液(凝集処理剤)やインクには、適宜ポリマー樹脂などの粒子が添加される。処理液には色材固定や転写改善用として粒径1〜5μm、融点60〜120℃の粒子を入れるのが望ましく、インクには画像定着用として粒径1μm以下、ガラス点移転点40〜60℃の粒子を1〜5%入れるのが好ましい。〔表4〕にその一例を示す。
【0241】
【表4】
上記〔表4〕中Tgはガラス転移点、Tmは融点である。
【0242】
なお、上述した凝集処理液及びインクの組成はあくまでも一例であり、他の組成を適用することも可能である。
【0243】
本例では、凝集処理液とインクの反応によって中間転写体上にインク(ドット)を固定する2液凝集方式を例示したが、凝集処理液を用いることなく、熱や輻射線などを介してエネルギーを照射して中間転写体上にインク(ドット)を固定する方式にも適用可能である。
【0244】
本例では、転写記録方式のインクジェット記録装置を例示したが、本発明は記録媒体に直接描画する方式のインクジェット記録装置において記録媒体を搬送する搬送媒体にも適用可能である。更に、本発明は、搬送媒体によって搬送される基板上に液体(樹脂液、レジスト液等)を打滴して、当該基板上に所定のパターン(マスクパターン、配線パターン等)を形成する画像形成装置における搬送媒体や、搬送媒体によって搬送される基板上に液体を吐出する液体吐出装置における搬送媒体等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0245】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図
【図2】図1に示すインクジェット記録装置の印字部周辺の要部平面図
【図3】ヘッドの構造例を示す平面透視図
【図4】ヘッドの他の構造例を示す平面透視図
【図5】図3中の5−5線に沿う断面図
【図6】図3に示すヘッドのノズル配列を示す拡大図
【図7】図1に示すインクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図
【図8】本発明の第1実施形態に係るクリーニング部及び清掃カス回収部の概略構成を示す構成図
【図9】ブレードによる中間転写ベルトのクリーニングを説明する模式図
【図10】中間転写ベルトの構造を示す平面図
【図11】装置立ち上げ、立ち下げ時のシーケンスを示すフローチャート
【図12】通常印刷時のシーケンスを示すフローチャート
【図13】本発明の第2実施形態に係るクリーニング部及び清掃カス回収部の概略構成を示す構成図
【図14】図13に示す中間転写ベルトの拡大図
【図15】図13に示す中間転写ベルトの構造を示す平面図
【図16】図13に示す清掃カス回収部の動作を説明する模式図
【図17】本発明の第2実施形態における装置立ち上げ、立ち下げ時のシーケンスを示すフローチャート
【図18】本発明の第2実施形態における通常印刷時のシーケンスを示すフローチャート
【図19】本発明の第3実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成図
【図20】図19に示すクリーニング部の拡大図
【図21】図19に示す清掃カス回収部の拡大図
【図22】本発明の第4実施形態に係るインクジェット記録装置のクリーニングの概念を説明する説明図
【図23】本発明の第4実施形態に係るインクジェット記録装置のクリーニング部の概略構成図
【図24】本発明の第4実施形態に係るインクジェット記録装置の転写部の拡大図
【符号の説明】
【0246】
10,100,300…インクジェット記録装置、14,314…記録媒体、22,322…印字部、12,212,412…中間転写ベルト、26,326,426…転写部、30,230,330…クリーニング部、32,232,332…清掃カス回収部、52,352,452…クリーニングブレード、90…穴、98,114,398…センサ、102…凸イボローラ、104…エアノズル、251,351,451…洗浄液噴射部、290…凹穴、291…ベルト突起、293,393…カス押出ローラ、295,395…拭取ローラ、310…カス押出材、312…中間転写ドラム、490…凸段差
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを打滴するヘッドと、
前記ヘッドから打滴されたインクによって1次画像が形成される中間転写体と、
前記中間転写体を所定の搬送方向に搬送する搬送手段と、
前記中間転写体に形成された1次画像を記録媒体に転写記録する転写手段と、
前記転写記録後の前記中間転写体の1次画像が形成される画像形成面をクリーニングするクリーニングブレードと、
を備え、
前記中間転写体は、前記画像形成面に前記クリーニングブレードと接触させて前記クリーニングブレードに付着した清掃カスを除去する構造が設けられたブレード清掃領域を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ブレード清掃領域は、前記クリーニングブレードの前記中間転写体の搬送方向と直交する方向の長さにわたって設けられた貫通穴、凹穴、凹溝及び凸段差のうち少なくとも何れか1つの構造が設けられ、
前記搬送手段によって前記中間転写体を搬送させながら前記清掃カスを除去する構造によって前記クリーニングブレードに付着した清掃カスをはぎ取ることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記クリーニングブレードの前記搬送手段の搬送方向下流側に、前記ブレード清掃領域に溜まった清掃カスを回収する清掃カス回収手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記クリーニングブレードに付着した清掃カスの除去時には、前記中間転写体の前記画像形成面に対する前記クリーニングブレードの角度を前記画像形成面と水平もしくは前記画像形成面に対して水平以内になるように前記クリーニングブレードを傾ける角度変更手段を備えたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記中間転写体の搬送経路上における前記ブレード清掃領域の位置を検出する位置検出手段を備え、
前記角度変更手段は、前記位置検出手段の検出結果に基づいて、前記ブレード清掃領域が前記クリーニングブレードによるクリーニング領域に位置するタイミングに合わせて前記クリーニングブレードを傾けることを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記ブレード清掃領域は、前記クリーニングブレードの前記中間転写体の搬送方向と直交する方向の長さにわたって設けられた貫通穴を少なくとも含む清掃カスを除去する構造が設けられ、
前記清掃カス回収手段は、前記貫通穴の中に挿入可能な凸形状が設けられるとともに、前記中間転写体の前記画像形成面の反対側から前記貫通穴に前記凸形状を挿入して前記貫通穴内の清掃カスを押し出す押出部材を含むことを特徴とする請求項3、4又は5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記清掃カス回収手段は、前記中間転写体の前記画像形成面の反対側から前記貫通穴にエアを吹き付けて前記貫通穴内の清掃カスを吹き飛ばすエア噴出手段を含むことを特徴とする請求項6記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記清掃カス回収手段による清掃カス回収後の前記貫通穴の穴詰まりの有無を検出する穴詰まり検出手段と、
前記穴詰まり検出手段によって前記貫通穴の穴詰まりが検出されると、穴詰まりが検出された前記貫通穴を前記清掃カス回収手段の位置に移動させるとともに、前記中間転写対の搬送速度が通常の画像記録時よりも小さくなるように前記搬送手段を制御する搬送制御手段と、
前記貫通穴に吹き付けるエアの圧力を通常よりも大きくするよう前記エア噴射手段を制御するエア噴射制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項7記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記ブレード清掃領域は、前記クリーニングブレードの前記中間転写体の搬送方向と直交する方向の長さにわたって設けられた凹穴及び凹溝のうち少なくとも何れか1つを含む清掃カスを除去する構造が設けられ、
前記清掃カス回収手段は、前記中間転写体の前記画像形成面と反対側から前記中間転写体を押圧して前記清掃カスを除去する構造内の清掃カスを押し出す押出部材を備えたことを特徴とする請求項3、4又は5記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記中間転写体の前記清掃カスを除去する構造の反対側に前記清掃カスを除去する構造の形状に対応する凸突起が設けられ、
前記押出部材は前記凸突起を押圧して前記清掃カスを除去する構造内の清掃カスを押し出すことを特徴とする請求項9記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記清掃カス回収手段は、前記清掃カスを除去する構造に洗浄液を噴射して前記清掃カスを除去する構造に付着した清掃カスを洗い流す洗浄液噴射手段を備えたことを特徴とする請求項9又は10記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記清掃カス回収手段は、前記清掃カスを除去する構造に付着した洗浄液及び前記清掃カスを除去する構造の周辺に付着した洗浄液を除去する洗浄液除去手段を備えたことを特徴とする請求項11記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記清掃カス回収手段は、前記位置検出手段の検出結果に基づいて、前記ブレード清掃領域が前記洗浄液噴射手段による洗浄液噴射領域に位置するタイミングに合わせて洗浄液を噴射するとともに、前記ブレード清掃領域が前記洗浄液除去手段による洗浄液除去領域に位置するタイミングに合わせて洗浄液の除去を行うように前記洗浄液噴射手段及び前記洗浄液除去手段を制御する洗浄制御手段を備えたことを特徴とする請求項12記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記ブレード清掃領域は、前記クリーニングブレードの前記中間転写体の搬送方向と直交する方向の長さにわたって設けられた凸段差を少なくとも含む清掃カスを除去する構造が設けられ、
前記清掃カス回収手段は、前記清掃カスを除去する構造に洗浄液を噴射して前記清掃カスを除去する構造に付着した清掃カスを洗い流す洗浄液噴射手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
ヘッドから中間転写体にインクを打滴して前記中間転写体に1次画像を形成した後に、前記1次画像を記録媒体に転写する画像形成装置において前記中間転写体をクリーニングするクリーニングブレードの清掃方法であって、
前記中間転写体の前記画像形成面に清掃カスを除去する構造が設けられたブレード清掃領域と、前記クリーニングブレードと、を接触させて、前記クリーニングブレードに付着した清掃カスを除去することを特徴とするクリーニングブレードの清掃方法。
【請求項1】
インクを打滴するヘッドと、
前記ヘッドから打滴されたインクによって1次画像が形成される中間転写体と、
前記中間転写体を所定の搬送方向に搬送する搬送手段と、
前記中間転写体に形成された1次画像を記録媒体に転写記録する転写手段と、
前記転写記録後の前記中間転写体の1次画像が形成される画像形成面をクリーニングするクリーニングブレードと、
を備え、
前記中間転写体は、前記画像形成面に前記クリーニングブレードと接触させて前記クリーニングブレードに付着した清掃カスを除去する構造が設けられたブレード清掃領域を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ブレード清掃領域は、前記クリーニングブレードの前記中間転写体の搬送方向と直交する方向の長さにわたって設けられた貫通穴、凹穴、凹溝及び凸段差のうち少なくとも何れか1つの構造が設けられ、
前記搬送手段によって前記中間転写体を搬送させながら前記清掃カスを除去する構造によって前記クリーニングブレードに付着した清掃カスをはぎ取ることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記クリーニングブレードの前記搬送手段の搬送方向下流側に、前記ブレード清掃領域に溜まった清掃カスを回収する清掃カス回収手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記クリーニングブレードに付着した清掃カスの除去時には、前記中間転写体の前記画像形成面に対する前記クリーニングブレードの角度を前記画像形成面と水平もしくは前記画像形成面に対して水平以内になるように前記クリーニングブレードを傾ける角度変更手段を備えたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記中間転写体の搬送経路上における前記ブレード清掃領域の位置を検出する位置検出手段を備え、
前記角度変更手段は、前記位置検出手段の検出結果に基づいて、前記ブレード清掃領域が前記クリーニングブレードによるクリーニング領域に位置するタイミングに合わせて前記クリーニングブレードを傾けることを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記ブレード清掃領域は、前記クリーニングブレードの前記中間転写体の搬送方向と直交する方向の長さにわたって設けられた貫通穴を少なくとも含む清掃カスを除去する構造が設けられ、
前記清掃カス回収手段は、前記貫通穴の中に挿入可能な凸形状が設けられるとともに、前記中間転写体の前記画像形成面の反対側から前記貫通穴に前記凸形状を挿入して前記貫通穴内の清掃カスを押し出す押出部材を含むことを特徴とする請求項3、4又は5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記清掃カス回収手段は、前記中間転写体の前記画像形成面の反対側から前記貫通穴にエアを吹き付けて前記貫通穴内の清掃カスを吹き飛ばすエア噴出手段を含むことを特徴とする請求項6記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記清掃カス回収手段による清掃カス回収後の前記貫通穴の穴詰まりの有無を検出する穴詰まり検出手段と、
前記穴詰まり検出手段によって前記貫通穴の穴詰まりが検出されると、穴詰まりが検出された前記貫通穴を前記清掃カス回収手段の位置に移動させるとともに、前記中間転写対の搬送速度が通常の画像記録時よりも小さくなるように前記搬送手段を制御する搬送制御手段と、
前記貫通穴に吹き付けるエアの圧力を通常よりも大きくするよう前記エア噴射手段を制御するエア噴射制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項7記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記ブレード清掃領域は、前記クリーニングブレードの前記中間転写体の搬送方向と直交する方向の長さにわたって設けられた凹穴及び凹溝のうち少なくとも何れか1つを含む清掃カスを除去する構造が設けられ、
前記清掃カス回収手段は、前記中間転写体の前記画像形成面と反対側から前記中間転写体を押圧して前記清掃カスを除去する構造内の清掃カスを押し出す押出部材を備えたことを特徴とする請求項3、4又は5記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記中間転写体の前記清掃カスを除去する構造の反対側に前記清掃カスを除去する構造の形状に対応する凸突起が設けられ、
前記押出部材は前記凸突起を押圧して前記清掃カスを除去する構造内の清掃カスを押し出すことを特徴とする請求項9記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記清掃カス回収手段は、前記清掃カスを除去する構造に洗浄液を噴射して前記清掃カスを除去する構造に付着した清掃カスを洗い流す洗浄液噴射手段を備えたことを特徴とする請求項9又は10記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記清掃カス回収手段は、前記清掃カスを除去する構造に付着した洗浄液及び前記清掃カスを除去する構造の周辺に付着した洗浄液を除去する洗浄液除去手段を備えたことを特徴とする請求項11記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記清掃カス回収手段は、前記位置検出手段の検出結果に基づいて、前記ブレード清掃領域が前記洗浄液噴射手段による洗浄液噴射領域に位置するタイミングに合わせて洗浄液を噴射するとともに、前記ブレード清掃領域が前記洗浄液除去手段による洗浄液除去領域に位置するタイミングに合わせて洗浄液の除去を行うように前記洗浄液噴射手段及び前記洗浄液除去手段を制御する洗浄制御手段を備えたことを特徴とする請求項12記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記ブレード清掃領域は、前記クリーニングブレードの前記中間転写体の搬送方向と直交する方向の長さにわたって設けられた凸段差を少なくとも含む清掃カスを除去する構造が設けられ、
前記清掃カス回収手段は、前記清掃カスを除去する構造に洗浄液を噴射して前記清掃カスを除去する構造に付着した清掃カスを洗い流す洗浄液噴射手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
ヘッドから中間転写体にインクを打滴して前記中間転写体に1次画像を形成した後に、前記1次画像を記録媒体に転写する画像形成装置において前記中間転写体をクリーニングするクリーニングブレードの清掃方法であって、
前記中間転写体の前記画像形成面に清掃カスを除去する構造が設けられたブレード清掃領域と、前記クリーニングブレードと、を接触させて、前記クリーニングブレードに付着した清掃カスを除去することを特徴とするクリーニングブレードの清掃方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2009−143102(P2009−143102A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322518(P2007−322518)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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