説明

画像形成装置及びプロセスカートリッジ

【課題】 画像ゴーストが発生しにくく、良好な画質の画像を長期間に亘って安定して形成することが可能な画像形成装置を提供すること。
【解決手段】 導電性支持体及び該支持体上に形成された感光層を有する電子写真感光体1と、感光体1を帯電させる帯電手段21と、電子写真感光体1に静電潜像を形成する第一の露光手段30と、静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段25と、トナー像を被転写媒体に転写する転写手段40と、を備え、感光体1を一様に露光する第二の露光手段29を更に備え、上記感光層は、架橋構造を有する樹脂を含有する電荷輸送性の最表面層を有し、該最表面層が第二の露光手段29の露光光に対して吸収を有し、且つ、第二の露光手段29の露光光の全ての波長域における最表面層の最大吸光度が0.05以下であることを特徴とする画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電、露光、現像、転写等を含む電子写真プロセスにより画像形成を行う画像形成装置及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、一般的に次のような構成及びプロセスを有するものである。すなわち、まず、電子写真感光体(以下、場合により単に「感光体」と言う)の表面を帯電手段により所定の極性および電位に一様に帯電させ、帯電後の感光体表面を、像露光により選択的に除電することにより静電潜像を形成させる。次いで、現像手段により上記静電潜像にトナーを付着させることにより潜像をトナー像として現像し、そのトナー像を転写手段で被転写媒体に転写させることにより、画像形成物として排出させる。
【0003】
近年、電子写真感光体は、高速かつ高印字品質が得られるという利点を有するため、複写機及びレーザービームプリンター等の分野において多く利用されている。これら画像形成装置において用いられる感光体としては、従来からのセレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、硫化カドミウム等の無機光導電材料を用いた感光体に比べ、安価で製造性及び廃棄性の点で優れた利点を有する有機光導電材料を用いた有機感光体が主流を占めるようになってきている。
【0004】
また、感光体の帯電手段としては、従来、コロナ放電器を使用したコロナ帯電方式が用いられてきた。しかし、近年は、低オゾン及び低電力などの利点を有する接触帯電方式が実用化され、盛んに用いられるようになってきている。
【0005】
接触帯電方式は、帯電用部材として導電性の帯電部材を感光体表面に接触あるいは極近傍に近接させ、帯電部材に電圧を印加することにより感光体表面を帯電させるものである。帯電部材に電圧を印加する方式としては、直流電圧のみを印加する直流方式と、直流電圧に交流電圧を重畳して印加する交流重畳方式とがある。しかし、この接触帯電方式では、装置の小型化が図れ、かつ、オゾンなどの有害なガスの発生が少ないという利点を有する一方で、感光体表面で直接放電させることにより、感光体の劣化、磨耗が発生しやすいという欠点を有する。更に、接触帯電方式では、画像形成装置内に存在する様々な異物(例えば、金属粉やキャリア塊等)が感光体に突き刺さったり、感光体を損傷させる問題が発生しやすくなる。その結果、感光体を長期に渡り繰り返し使用すると、接触帯電時に上述のような感光体の欠陥部位に局所的に高電場がかかり、電気的なピンホール(ピンホールリーク)が生じてしまい、画質欠陥が発生するという問題が生じやすくなる。また、接触帯電により感光体の磨耗が多くなった結果として、ピンホールリーク等の問題も助長されやすくなる。
【0006】
また、近年、高画質の画像を得るために、粉砕トナーに比べて球形に近い、いわゆる重合トナーを使用することが多くなっているが、トナーが球形に近づくにつれ、トナーを除去する際に該トナーがブレードクリーナーをすり抜けやすくなるため、ブレードクリーナーを感光体に強く押し付ける必要が生じ、これも感光体の磨耗を促進しやすいという問題が生じる。
【0007】
また、転写方式としては、トナー像を直接紙に転写する方式が主流であったが、被転写媒体の自由度が広がることから、近年では中間転写体を用いて転写する方式が盛んに用いられている。しかし、中間転写体を使用する場合には、上記の接触帯電方式を用いる場合と同様に、画像形成装置内に存在する様々な異物(例えば、金属粉やキャリア塊等)が中間転写体と感光体との間に挟まり、感光体に突き刺さったり、感光体を損傷させる問題が発生しやすくなる。その結果、感光体を長期に渡り繰り返し使用すると、上述のようなピンホールリークが生じてしまい、画質欠陥が発生するという問題が生じやすくなる。
【0008】
このような問題に対して、電子写真感光体表面に保護層を設けて機械強度を向上させることが提案されている。この保護層を形成する材料系としては、例えば、導電粉をフェノール樹脂等に分散させてなるもの(下記特許文献1参照)、有機−無機ハイブリッド材料を用いてなるもの(下記特許文献2参照)、電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を硬化した架橋樹脂からなるもの(下記特許文献3参照)、連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を重合又は架橋により硬化した化合物を用いてなるもの(下記特許文献4参照)、及び、アルコール可溶性電荷輸送材料とフェノール樹脂とからなるもの(下記特許文献5参照)等が検討されている。
【0009】
【特許文献1】特許第3287678号公報
【特許文献2】特開2000−019749号公報
【特許文献3】特開2005−234546号公報
【特許文献4】特開2000−66424号公報
【特許文献5】特開2002−82469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
電荷輸送性を有する架橋樹脂層を備える電子写真感光体は、高い強度を有し、且つ、整流性を有することで画像ボケが抑制され、長期に亘って安定した画像を得ることができるが、一方で架橋末端等の極性基により電荷の輸送性が抑制されるため、残留電位を生じやすく、概ね2以上3μm以下の膜厚で使用することが一般的である。しかしながら、2以上3μm以下の膜厚では、保護層を有さない従来の電子写真感光体と比べれば長寿命化できるものの、必ずしも十分とは言えず、さらなる長寿命化のために保護層の厚膜化が望まれている。
【0011】
一方で、保護層の厚膜化は、感光体中の残留電位の増加を招くこととなる。この残留電位は、電荷が感光体中に蓄積され、さらに、画像露光部と非露光部とでその蓄積量が異なっているため、次のサイクルでの帯電時に画像露光部と非露光部とで帯電ムラを生じ、前回の画像パターンが次の画像パターンに残る、いわゆる画像ゴーストが生じやすくなる。この現象は、表面層の膜厚が厚くなるほど発生しやすくなり、特に2μm以上の厚膜では非常に発生しやすくなる。また、色の異なる複数のトナーを用いたカラープロセスの場合、転写電界がトナー層の厚みによって異なるため、転写時の画像パターンによる所謂転写ゴーストが発生しやすくなり、高品質のカラー画像を得るためには特に大きな問題となっている。
【0012】
また、近年、高画質化のために、粒子径の均一な所謂重合トナーが用いられるようになってきているが、重合トナーは粉砕トナーに比べて形状が球形に近くなり、粉砕トナーに比べ転写電界を高くする必要がある場合が多く、より一層転写ゴーストが発生しやすくなる傾向がある。また、球形に近いトナーは、転がり抵抗が小さくなり、クリーニングブレードなどのクリーニング部材からすり抜けやすいため、クリーニング不良が発生しやすくなる。これを防止するためにクリーニングブレードの押し付け圧を粉砕トナーに比べて高く設定する場合が多いが、上述したように、押し付け圧を高くすると電子写真感光体との摩擦が大きくなり、感光体の磨耗を助長して、寿命が短くなる傾向がある。
【0013】
本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、耐磨耗性に優れる電荷輸送性を有する架橋樹脂層を備える電子写真感光体を用いた場合であっても、画像ゴーストが発生しにくく、良好な画質の画像を長期間に亘って安定して形成することが可能な画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は、導電性支持体及び該導電性支持体上に形成された感光層を有する電子写真感光体と、上記電子写真感光体を帯電させるための帯電手段と、帯電した上記電子写真感光体に静電潜像を形成するための第一の露光手段と、上記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像手段と、上記トナー像を上記電子写真感光体から被転写媒体に転写するための転写手段と、を備える画像形成装置であって、上記第一の露光手段の他に、上記電子写真感光体を一様に露光するための第二の露光手段を更に備え、上記感光層は、上記導電性支持体から最も遠い側に、架橋構造を有する樹脂を含有する電荷輸送性の最表面層を有し、上記最表面層が上記第二の露光手段の露光光に対して吸収を有し、且つ、上記第二の露光手段の上記露光光の全ての波長域における上記最表面層の最大吸光度が0.05以下であることを特徴とする画像形成装置を提供する。
【0015】
かかる画像形成装置によれば、電子写真感光体が架橋構造を有する樹脂を含有する電荷輸送性の最表面層を備えることにより、優れた耐磨耗性を得ることができるとともに、かかる最表面層を備える電子写真感光体を用いた場合であっても、上述した第二の露光手段を備えることにより、画像ゴーストの発生を十分に抑制することができ、良好な画質の画像を長期間に亘って安定して形成することが可能となる。ここで、第二の露光手段の露光光によりゴースト発生が抑制されるメカニズムについては必ずしも明らかではないが、第二の露光手段の露光光が電子写真感光体の最表面層に吸収され、最表面層内で電荷キャリアが発生し、膜抵抗が低下することで残留している電荷を開放しやすくなるためであると推察される。
【0016】
また、本発明の画像形成装置において、上記第二の露光手段は、半導体素子を用いた光源を有するものであることが好ましい。これにより、ゴーストの発生をより十分に抑制することができ、良好な画質の画像をより長期間に亘って安定して形成することが可能となる。
【0017】
また、本発明の画像形成装置において、上記第二の露光手段は、上記露光光の光量を制御するための制御手段を有するものであることが好ましい。かかる制御手段を備えることにより、露光光の光量を、十分な電荷キャリアが発生し、且つ、膜抵抗が低下しすぎない最適な光量に容易に制御することが可能となる。その結果、ゴーストの発生をより十分に抑制することができ、良好な画質の画像をより長期間に亘って安定して形成することが可能となる。
【0018】
また、本発明の画像形成装置において、上記第二の露光手段は、上記露光光を非定期的に上記電子写真感光体に照射するための制御手段を有することが好ましい。かかる制御手段を備えることにより、画像形成サイクル前、あるいは、画像形成サイクル後にゴーストを制御するための露光サイクルを加えることや、連続画像形成サイクル中に露光強度を変更し、ゴーストを最適に制御することが可能となる。その結果、ゴーストの発生をより十分に抑制することができ、良好な画質の画像をより長期間に亘って安定して形成することが可能となる。なお、制御手段は、上記露光光の光量を制御する機能と、上記露光光を非定期的に上記電子写真感光体に照射する機能とを同時に有していることが好ましい。
【0019】
また、本発明の画像形成装置において、上記最表面層の膜厚は2μm以上であることが好ましい。架橋構造を有する樹脂を含有する最表面層の膜厚を2μm以上とした場合、従来の画像形成装置においては画像ゴーストが発生しやすかったが、本発明の画像形成装置によれば、上記第二の露光手段を備えることにより、ゴーストの発生を十分に抑制することができ、良好な画質の画像を長期間に亘って安定して形成することが可能となる。また、最表面層の膜厚を厚くすることにより、電子写真感光体の寿命をより長くすることができる。なお、画像ゴーストの抑制と電子写真感光体の長寿命化との双方をより高水準で達成する観点から、最表面層の膜厚は、2.5μm以上10μm以下であることがより好ましく、3μm以上9μm以下であることがさらに好ましい。
【0020】
また、本発明の画像形成装置において、上記架橋構造を有する樹脂は、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂及びメラミン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むものであることが好ましく、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むものであることがより好ましい。これにより、電子写真感光体の耐磨耗性をより向上させることができ、良好な画質の画像をより長期間に亘って安定して形成することが可能となる。
【0021】
また、本発明の画像形成装置において、上記最表面層は、酸性の触媒を用いて硬化した層であることが好ましい。ここで、上記酸性の触媒は、含硫黄触媒であることが好ましい。これにより、架橋膜の強度アップが図れ、下層との密着性も向上する。その結果、良好な画質の画像をより長期間に亘って安定して形成することが可能となる。
【0022】
更に、本発明の画像形成装置は、上記電子写真感光体と、上記帯電手段、上記第二の露光手段、上記現像手段、及び、上記電子写真感光体の表面に残存したトナーを除去するためのクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1種と、を一体に有する、画像形成装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジを備えることが好ましい。これにより、メンテナンスも容易となる。
【0023】
本発明はまた、導電性支持体及び該導電性支持体上に形成された感光層を有する電子写真感光体と、上記電子写真感光体を一様に露光するための第二の露光手段と、を備え、上記感光層は、上記導電性支持体から最も遠い側に、架橋構造を有する樹脂を含有する電荷輸送性の最表面層を有し、上記最表面層が上記第二の露光手段の露光光に対して吸収を有し、且つ、上記第二の露光手段の上記露光光の全ての波長域における上記最表面層の最大吸光度が0.05以下であることを特徴とするプロセスカートリッジを提供する。
【0024】
かかるプロセスカートリッジによれば、上記構成の電子写真感光体及び第二の露光手段を少なくとも備えることにより、画像形成装置に搭載された場合に、画像ゴーストの発生を十分に抑制することができ、良好な画質の画像を長期間に亘って安定して形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、耐磨耗性に優れる電荷輸送性を有する架橋樹脂層を備える電子写真感光体を用いた場合であっても、画像ゴーストが発生しにくく、良好な画質の画像を長期間に亘って安定して形成することが可能な画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
(電子写真感光体)
図1は、本発明の画像形成装置に用いられる電子写真感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2と、感光層3とから構成されている。感光層3は、導電性支持体2上に、下引層4、電荷発生層5、電荷輸送層6及び保護層7がこの順序で積層された構造を有している。図1に示す電子写真感光体1では、保護層7が、導電性支持体2から最も遠い側に配置された架橋構造を有する樹脂を含有する電荷輸送性の最表面層である。
【0027】
また、図2及び3は、それぞれ本発明の画像形成装置に用いられる電子写真感光体の他の好適な実施形態を示す模式断面図である。図2に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2上に下引層4、電荷輸送層6、電荷発生層5、保護層7が順次積層された構造を有するものである。また、図3に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2上に下引層4、電荷発生材料と電荷輸送材料とを含有する単層型感光層8及び保護層7が順次積層された構造を有するものである。図2及び3に示す電子写真感光体1においても、保護層7が上記最表面層となっている。
【0028】
上記のように、電子写真感光体1が備える感光層3は、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層に含有する単層型感光層8、又は電荷発生材料を含有する層(電荷発生層5)と電荷輸送材料を含有する層(電荷輸送層6)とを別個に設けた機能分離型感光層のいずれであってもよい。機能分離型感光層の場合、電荷発生層5と電荷輸送層6の積層順序はいずれが上層であってもよい。なお、機能分離型感光層の場合、それぞれの層がそれぞれの機能を満たせばよいという機能分離ができるため、より高い機能を実現できる。また、図1〜3に示した電子写真感光体において、下引層4は設けられていなくてもよい。更に、図1及び3に示した電子写真感光体において、保護層7は設けられていなくてもよい。保護層7が設けられていない場合、図1の電子写真感光体1においては電荷輸送層6が、図3の電子写真感光体1においては単層型感光層8が、それぞれ架橋構造を有する樹脂を含有する電荷輸送性の最表面層となる。
【0029】
以下、代表例として図1に示す電子写真感光体1に基づいて、各要素について説明する。
【0030】
導電性支持体2としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等の金属又は合金を用いて構成される金属板、金属ドラム、金属ベルト等が挙げられる。また、導電性支持体2としては、導電性ポリマー、酸化インジウム等の導電性化合物やアルミニウム、パラジウム、金等の金属又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、プラスチックフィルム、ベルト等も使用できる。
【0031】
電子写真感光体1がレーザープリンターに使用される場合、レーザー光を照射する際に生じる干渉縞を防止するために、導電性支持体2の表面は、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化することが好ましい。導電性支持体2の表面のRaが0.04μm未満であると、鏡面に近くなるので干渉防止効果が不十分となる傾向がある。他方、Raが0.5μmを越えると、被膜を形成しても画質が不十分となる傾向がある。なお、非干渉光を光源に用いる場合には、干渉縞防止の粗面化は特に必要なく、導電性支持体2表面の凹凸による欠陥の発生が防げるため、より長寿命化に適する。
【0032】
粗面化の方法としては、研磨剤を水に懸濁させて支持体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、又は回転する砥石に支持体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が好ましい。
【0033】
また、他の粗面化の方法としては、導電性支持体2表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、支持体表面上に層を形成し、その層中に分散させる微粒子により粗面化する方法も好ましく用いられる。
【0034】
上記陽極酸化処理は、アルミニウムを陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することによりアルミニウム表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、陽極酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行う。
【0035】
陽極酸化膜の膜厚については、0.3μm以上15μm以下が好ましい。この膜厚が0.3μm未満であると、注入に対するバリア性が乏しく効果が不十分となる傾向がある。他方、15μmを超えると、繰り返し使用による残留電位の上昇を招く傾向がある。
【0036】
また、導電性支持体2には、酸性水溶液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。リン酸、クロム酸及びフッ酸からなる酸性処理液による処理は以下のようにして実施される。先ず、酸性処理液を調整する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%の範囲が好ましい。処理温度は42℃以上48℃以下が好ましいが、処理温度を高く保つことにより、一層速く、かつ厚い被膜を形成することができる。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましい。0.3μm未満であると、注入に対するバリア性が乏しく効果が不十分となる傾向がある。他方、15μmを超えると、繰り返し使用による残留電位の上昇を招く傾向がある。
【0037】
ベーマイト処理は、90℃以上100℃以下の純水中に5分間以上60分間以下浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分間以上60分間以下接触させることにより行うことができる。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
【0038】
下引層4は、導電性支持体2上に形成される。下引層4は、例えば、結着樹脂に無機粒子を含有して構成される。
【0039】
上記無機粒子としては、粉体抵抗(体積抵抗率)が1×10Ω・cm以上1×1011Ω・cm以下程度のものが好ましく用いられる。これは、下引層4はリーク耐性、キャリアブロック性獲得のために適切な抵抗を得ることが必要でるためである。なお、無機粒子の粉体抵抗が上記下限値未満であると十分なリーク耐性が得られず、上記上限値を超えると残留電位上昇を引き起こしてしまう懸念がある。
【0040】
上記抵抗値を有する無機粒子としては、酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の無機粒子を用いることが好ましく、特に酸化亜鉛が好ましく用いられる。
【0041】
また、無機粒子は表面処理を行ったものでもよく、表面処理の異なるもの、あるいは、粒子径の異なるものなどを2種以上混合して用いることもできる。
【0042】
また、無機粒子としては、BET法による比表面積が10m/g以上のものが好ましく用いられる。比表面積値が10m/g未満のものは帯電性低下を招きやすく、良好な電子写真特性を得にくい傾向がある。
【0043】
下引層4には、無機粒子とともにアクセプター性化合物を含有させることで、電気特性の長期安定性、キャリアブロック性をより優れたものとすることができる。アクセプター性化合物としては、所望の特性が得られるものであればいかなるものでも使用可能であるが、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質などが好ましく、特にアントラキノン構造を有する化合物が好ましい。アントラキノン構造を有する化合物としては、ヒドロキシアントラキノン系化合物、アミノアントラキノン系化合物、アミノヒドロキシアントラキノン系化合物等が好ましく用いられ、具体的にはアントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が挙げられる。
【0044】
これらのアクセプター性化合物の下引層4中の含有量は、所望の特性が得られる範囲であれば任意に設定できるが、電荷蓄積防止と無機粒子の凝集を防止する観点から、無機粒子100質量部に対して0.01質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。無機粒子の凝集は、導電路形成が不均一となり、繰り返し使用時に残留電位の上昇が生じるなど維持性の悪化を招きやすくなるだけでなく、黒点などの画質欠陥も引き起こしやすくなる。
【0045】
アクセプター化合物は、下引層4の形成時(塗布時)に添加するだけでも良いし、無機粒子表面にあらかじめ付着させておいても良い。無機粒子表面にアクセプター化合物を付与させる方法としては、乾式法、あるいは、湿式法が挙げられる。
【0046】
乾式法にて無機粒子表面にアクセプター化合物による表面処理を施す場合には、無機粒子をせん断力の大きなミキサー等で攪拌しながら、直接あるいは有機溶媒に溶解させたアクセプター化合物を滴下し、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって均一に処理することができる。アクセプター化合物を添加あるいは噴霧する際には、溶剤の沸点以下の温度で行われることが好ましい。溶剤の沸点以上の温度で噴霧すると、均一に攪拌される前に溶剤が蒸発し、アクセプター化合物が局部的にかたまってしまい均一な処理ができにくいため、好ましくない。また、アクセプター化合物を添加あるいは噴霧した後、さらに100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは、所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。
【0047】
湿式法にて無機粒子表面にアクセプター化合物による表面処理を施す場合には、無機粒子を溶剤中で攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミル等を用いて分散し、アクセプター化合物を添加して攪拌あるいは分散した後、溶剤を除去することで均一に処理することができる。溶剤の除去方法は、ろ過あるいは蒸留により留去する方法等が挙げられる。溶剤除去後には、さらに100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは、所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。湿式法においては、表面処理剤を添加する前に無機粒子に含有される水分を除去することもでき、その除去方法としては、例えば、表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法を用いることができる。
【0048】
また、無機粒子には、アクセプター化合物を付与する前に別の表面処理を施すことができる。表面処理剤としては、所望の特性が得られるものであればよく、公知の材料から選択することができる。表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性材等が挙げられる。特に、シランカップリング剤は、良好な電子写真特性を与えるため好ましく用いられる。さらにアミノ基を有するシランカップリング剤は、下引層4に良好なブロッキング性を与えるため好ましく用いられる。
【0049】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、所望の電子写真感光体特性を得られるものであればいかなる物でも用いることができるが、具体例としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。なお、アミノ基を有するシランカップリング剤は、これらに限定されるものではない。
【0050】
また、シランカップリング剤は2種以上混合して使用することもできる。上記アミノ基を有するシランカップリング剤と併用して用いることができるシランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0051】
表面処理方法は公知の方法であればいかなる方法でも使用可能であるが、乾式法あるいは湿式法を用いることができる。また、アクセプター化合物の付与とカップリング剤等による表面処理を同時に行っても良い。
【0052】
下引層4中の無機粒子に対するシランカップリング剤の量は、所望の電子写真特性が得られる量であれば任意に設定できるが、分散性向上の観点から、無機粒子100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
【0053】
下引層4に含有される結着樹脂としては、良好な膜を形成できるもので、かつ所望の特性が得られるものであれば公知のいかなるものでも使用可能であるが、例えば、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の公知の高分子化合物、又は、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂等を用いることができる。これらの中でも、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。これらを2種以上組み合わせて使用する場合、その混合割合は、必要に応じて適宜設定することができる。
【0054】
下引層4中のアクセプター性を付与した金属酸化物粒子等の無機粒子と結着樹脂、又は、無機粒子と結着樹脂との含有量の比率は、所望する電子写真感光体特性を得られる範囲で任意に設定できる。
【0055】
下引層4中には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上等のために種々の添加物を加えることができる。添加物としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。シランカップリング剤は、金属酸化物の表面処理に用いられるが、添加剤としてさらに加えることもできる。
【0056】
ここで用いられるシランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等である。ジルコニウムキレート化合物の例として、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0057】
チタニウムキレート化合物の例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0058】
アルミニウムキレート化合物の例としてはアルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0059】
これらの化合物は単独で、あるいは複数の化合物の混合物又は重縮合物として用いることができる。
【0060】
下引層4は、上述した各構成材料を含有する下引層形成用塗布液を用いて形成される。下引層形成用塗布液を調製するための溶媒としては、公知の有機溶剤、例えばアルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等の有機溶剤から任意に選択して用いることができる。より具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を用いることができる。
【0061】
また、これらの分散に用いる溶剤は、単独あるいは2種以上混合して用いることができる。2種以上を混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶かす事ができる溶剤であれば、いかなるものでも使用することが可能である。
【0062】
各構成材料の分散方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの公知の方法を用いることができる。
【0063】
このようにして得られた下引層形成用塗布液を導電性基体2上に塗布し、乾燥して溶剤を除去することにより下引層4が成膜される。下引層4を形成する際の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。また、乾燥は、通常、溶剤を蒸発させ、成膜可能な温度で行われる。
【0064】
こうして形成される下引層4は、ビッカース強度が35以上であることが好ましい。さらに、下引層4の膜厚は、所望の特性が得られる範囲であれば特に制限されないが、15μm以上であることが好ましく、15μm以上50μm以下であることがより好ましい。下引層4の厚さが15μm未満であると、十分な耐リーク性能を得ることが困難となる傾向にあり、50μmを超えると、長期使用時に残留電位が残りやすくなるため、画像濃度異常を招きやすい傾向がある。
【0065】
また、下引層4の表面粗さ(十点平均粗さ)は、モアレ像防止のために、使用される露光用レーザー波長λの1/4n(nは上層の屈折率)〜1/2λに調整することが好ましい。また、表面粗さ調整のために下引層4中に樹脂などの粒子を添加することもできる。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型PMMA樹脂粒子等を用いることができる。
【0066】
また、表面粗さ調整のために下引層4を研磨することもできる。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等を用いることもできる。
【0067】
電荷発生層5は、電荷発生材料、さらには必要に応じて結着樹脂を含んで構成される。
【0068】
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、ピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料、酸化亜鉛、三方晶系セレン等が挙げられる。これらの中でも、近赤外域のレーザー露光に対しては、金属又は無金属フタロシアニン顔料が好ましく、特に、特開平5−263007号公報、特開平5−279591号公報等に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン、特開平5−98181号公報等に開示されたクロロガリウムフタロシアニン、特開平5−11172号公報、特開平5−11173号公報等に開示されたジクロロスズフタロシアニン、特開平4−189873号公報、特開平5−43823号公報等に開示されたチタニルフタロシアニンがより好ましい。また、近紫外域のレーザー露光に対しては、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、チオインジゴ系顔料、ポルフィラジン化合物、酸化亜鉛、三方晶系セレン等がより好ましい。
【0069】
電荷発生層5に使用される結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択することができる。また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択することもできる。好ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0070】
電荷発生層5は、電荷発生材料を蒸着により、又は電荷発生材料及び結着樹脂を含有する電荷発生層形成用塗布液により形成される。電荷発生層5を、電荷発生層形成用塗布液を用いて形成する場合、電荷発生材料と結着樹脂との配合比は、質量比で10:1乃至1:10の範囲内であることが好ましい。
【0071】
電荷発生層形成用塗布液は、上記電荷発生材料及び結着樹脂を所定の溶剤中に分散して調製することができる。
【0072】
分散に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0073】
また、電荷発生材料及び結着樹脂を溶剤中に分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の通常の方法を用いることができる。これらの分散方法により、分散による電荷発生材料の結晶型の変化を防止することができる。さらにこの分散の際、電荷発生材料の平均粒径を好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
【0074】
また、電荷発生層形成用塗布液を用いて電荷発生層5を形成する際には、塗布方法として、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0075】
このようにして得られる電荷発生層5の膜厚は、好ましくは0.1μm以上5.0μm以下であり、より好ましくは0.2μm以上2.0μm以下である。
【0076】
電荷輸送層6は、電荷輸送材料と結着樹脂とを含有して、又は高分子電荷輸送材を含有して形成される。
【0077】
電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの正孔輸送性化合物が挙げられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
また、電荷輸送材料としては、モビリティーの観点から、下記一般式(a−1)又は(a−2)で示される化合物が好ましい。
【0079】
【化1】



【0080】
上記式(a−1)中、R34は水素原子又はメチル基を、k10は1又は2を示す。また、Ar及びArは置換もしくは未置換のアリール基、−C−C(R38)=C(R39)(R40)、又は、−C−CH=CH−CH=C(R41)(R42)を示す。また、R38、R39、R40、R41、R42はそれぞれ独立に水素原子、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアリール基を示す。置換基としてはハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、又は炭素数1〜3のアルキル基で置換された置換アミノ基が挙げられる。
【0081】
【化2】



【0082】
上記式(a−2)中、R35及びR35’はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のアルコキシ基を、R36、R36’、R37及びR37’はそれぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは未置換のアリール基、−C(R38)=C(R39)(R40)、又は、−CH=CH−CH=C(R41)(R42)を、R38、R39、R40、R41、R42はそれぞれ独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を示す。また、m4及びm5はそれぞれ独立に0〜2の整数を示す。
【0083】
このうち特に、−C−CH=CH−CH=C(R41)(R42)を有するトリアリールアミン誘導体、あるいは、−CH=CH−CH=C(R41)(R42)を有するベンジジン誘導体が、モビリティー、保護層との接着性、ゴースト抑制などの観点で優れるため好ましい。
【0084】
電荷輸送層6に用いる結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。また、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に開示されているポリエステル系高分子電荷輸送材等の高分子電荷輸送材を用いることもできる。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は質量比で10:1乃至1:5が好ましい。
【0085】
また、電荷輸送材料として高分子電荷輸送材を用いることもできる。高分子電荷輸送材としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシランなどの電荷輸送性を有する公知のものを用いることができる。特に、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報等に開示されているポリエステル系高分子電荷輸送材は、高い電荷輸送性を有しており、特に好ましいものである。高分子電荷輸送材はそれだけでも成膜可能であるが、上述した結着樹脂と混合して成膜してもよい。
【0086】
電荷輸送層6は、上記構成材料を含有する電荷輸送層形成用塗布液を用いて形成することができる。
【0087】
電荷輸送層形成用塗布液に用いる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状もしくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。また、上記各構成材料の分散方法としては、公知の方法を使用できる。
【0088】
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層5の上に塗布する際の塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0089】
電荷輸送層6の膜厚は、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上30μm以下である。
【0090】
保護層7は、電子写真感光体1における最表面層であり、最表面の磨耗、傷などに対する耐性を持たせ、且つ、トナーの転写効率を上げるために設けられる層である。
【0091】
保護層7は、電荷輸送性を有する架橋樹脂層からなり、電荷輸送性を付与するための電荷輸送材料としては反応性を有するものが好ましく、具体的には以下のような構造の化合物が挙げられる。
【0092】
保護層7に用いることができる電荷輸送材料としては、例えば下記一般式(I)〜(V)で示されるものが挙げられ、具体的な構造としては、例えば以下のものが挙げられる。
F[−(Xn1−COH]m1 (I)
[式(I)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を示し、Rはアルキレン基を示し、Xは酸素原子又は硫黄原子を示し、m1は1〜4の整数を示し、n1は0又は1を示す。]
F[−(Xn2−(Rn3−(Zn4G]n5 (II)
[式(II)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を示し、Xは酸素原子又は硫黄原子を示し、Rはアルキレン基を示し、Zはアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、NH又はCOOを示し、Gは水素原子、エポキシ基、アクリル基又はメタクリル基、あるいは、アルコキシシリル基を含有する1価の基を示し、n2、n3及びn4はそれぞれ独立に0又は1を示し、n5は1〜4の整数を示す。]
【0093】
【化3】



[式(III)中、Fは正孔輸送性を有する化合物から誘導される有機基を示し、Tは2価の基を示し、Yは酸素原子又は硫黄原子を示し、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は1価の有機基を示し、Rは1価の有機基を示し、m2は0又は1を示し、n6は1〜4の整数を示す。但し、RとRは互いに結合してYをヘテロ原子とする複素環を形成してもよい。]
【0094】
【化4】



[式(IV)中、Fは正孔輸送性を有する化合物から誘導される有機基を示し、Tは2価の基を示し、Rは1価の有機基を示し、m3は0又は1を示し、n7は1〜4の整数を示す。]
【0095】
【化5】



[式(VI)中、Fは正孔輸送性を有する化合物から誘導される有機基を示し、Rは1価の有機基を示し、Lはアルキレン基を示し、n8は1〜4の整数を示す。]
かかる化合物を用いて得られる樹脂を電子写真感光体の表面層に含有せしめることで、電子写真感光体の電子写真特性、機械的強度、耐電特性等をより高めることができる。また、上記一般式(I)〜(V)で表わされる化合物における上記Fは、下記一般式(VI)で表される基であることが好ましい。
【0096】
【化6】



[式(VI)中、Ar、Ar、Ar及びArはそれぞれ独立に置換又は未置換のアリール基を示し、Arは置換若しくは未置換のアリール基又はアリーレン基を示し、且つAr〜Arのうち1〜4個は、上記一般式(I)で表わされる化合物における下記一般式(VII)で示される部位、上記一般式(II)で表わされる化合物における下記一般式(VIII)で示される部位、上記一般式(III)で表わされる化合物における下記一般式(IX)で示される部位、上記一般式(IV)で表わされる化合物における下記一般式(X)で示される部位、又は、上記一般式(V)で表わされる化合物における下記一般式(XI)で示される部位、と結合するための結合手を有し、kは0又は1を示す。]
【0097】
−(Xn1−COH (VII)
−(Xn2−(Rn3−(Zn4G (VIII)
【0098】
【化7】



【0099】
【化8】



【0100】
【化9】



【0101】
また、上記一般式(VI)中のAr〜Arで示される置換又は未置換のアリール基としては、具体的には、下記一般式(1)〜(7)に示されるアリール基が好ましい。
【0102】
【表1】



【0103】
上記式(1)〜(7)中、R11は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、それらで置換されたフェニル基若しくは未置換のフェニル基、又は炭素数7〜10のアラルキル基を示し、R12〜R14はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、それらで置換されたフェニル基若しくは未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基又はハロゲン原子を示し、Arは置換又は未置換のアリーレン基を示し、Xは上記一般式(VII)〜(XI)で表される構造のいずれかを示し、c及びsはそれぞれ0又は1を示し、tは1〜3の整数を示す。
【0104】
また、上記式(7)で示されるアリール基におけるArとしては、下記式(8)又は(9)で示されるアリーレン基が好ましい。
【0105】
【表2】



【0106】
上記式(8)、(9)中、R15及びR16はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基、または未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基、又は、ハロゲン原子を示し、tは1〜3の整数を示す。
【0107】
また、上記式(7)で示されるアリール基におけるZ’としては、下記式(10)〜(17)で示される2価の基が好ましい。
【0108】
【表3】



【0109】
上記式(10)〜(17)中、R17及びR18はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基、または未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基、又は、ハロゲン原子を示し、Wは2価の基を示し、q及びrはそれぞれ1〜10の整数を示し、tはそれぞれ1〜3の整数を示す。
【0110】
また、上記式(16)〜(17)中、Wは下記式(18)〜(26)で示される2価の基を示す。なお、式(25)中、uは0〜3の整数を示す。
【0111】
【表4】



【0112】
また、上記一般式(VI)中、Arは、kが0のときはAr〜Arの説明で例示されたアリール基であり、kが1のときはかかるアリール基から所定の水素原子を除いたアリーレン基である。
【0113】
上記一般式(I)で示される化合物の具体例としては、以下に示す化合物(I−1)〜(I−8)が挙げられる。なお、上記一般式(I)で示される化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。また、下記表中、結合手は記載されているが置換基が記載されていないものはメチル基を示す。
【0114】
【表5】



【0115】
上記一般式(II)で示される化合物の具体例としては、以下に示す化合物(II−1)〜(II−17)が挙げられる。なお、上記一般式(II)で示される化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。また、下記表中、Me又は結合手は記載されているが置換基が記載されていないものはメチル基を、Etはエチル基を示す。
【0116】
【表6】



【0117】
【表7】



【0118】
【表8】



【0119】
上記一般式(III)で示される化合物の具体例としては、以下に示す化合物(III−1)〜(III−18)が挙げられる。なお、上記一般式(III)で示される化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。また、下記表中、Me又は結合手は記載されているが置換基が記載されていないものはメチル基を示す。また、Etはエチル基を示す。
【0120】
【表9】



【0121】
【表10】



【0122】
【表11】



【0123】
上記一般式(IV)で示される化合物の具体例としては、以下に示す化合物(IV−1)〜(IV−13)が挙げられる。なお、上記一般式(IV)で示される化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。また、下記表中、Me又は結合手は記載されているが置換基が記載されていないものはメチル基を示す。
【0124】
【表12】



【0125】
【表13】



【0126】
上記一般式(V)で示される化合物の具体例としては、以下に示す化合物(V−1)〜(V−17)が挙げられる。なお、上記一般式(V)で示される化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。また、下記表中、Me又は結合手は記載されているが置換基が記載されていないものはメチル基を示す。また、Etはエチル基を示す。
【0127】
【表14】



【0128】
【表15】



【0129】
【表16】



【0130】
また、保護層7は、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂及びメラミン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を用いてなる層であることが好ましく、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を用いてなる層であることがより好ましく、フェノール系樹脂を用いてなる層であることが特に好ましい。
【0131】
フェノール構造を有する架橋膜を用いて保護層7を構成する場合は、メチロール基を有するフェノール誘導体を用いることが好ましい。
【0132】
メチロール基を有するフェノール誘導体としては、モノメチロールフェノール類、ジメチロールフェノール類若しくはトリメチロールフェノール類のモノマー、それらの混合物、それらがオリゴマー化されたもの、又はそれらモノマーとオリゴマーの混合物が挙げられる。このようなメチロール基を有するフェノール誘導体は、レゾルシン、ビスフェノール等、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール等の水酸基を1個含む置換フェノール類、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等の水酸基を2個含む置換フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールZ等のビスフェノール類、ビフェノール類等、フェノール構造を有する化合物と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等とを、酸触媒又はアルカリ触媒下で反応させることで得られるもので、一般にフェノール樹脂として市販されているものも使用できる。なお、本明細書では、分子の構造単位の繰り返しが2〜20程度の比較的大きな分子をオリゴマーといい、それ以下のものをモノマーという。
【0133】
上記酸触媒としては、硫酸、パラトルエンスルホン酸、リン酸等が用いられる。また、アルカリ触媒としては、NaOH、KOH、Ca(OH)、Ba(OH)等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物やアミン系触媒が用いられる。アミン系触媒としては、アンモニア、ヘキサメチレンテトラミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0134】
このうち、酸系触媒を用いて合成されたものが一般的にノボラック樹脂、塩基系触媒を用いて合成されたものが一般的にレゾール樹脂と呼ばれるが、ノボラック樹脂は熱硬化性が低く、強度が高い保護層7を得ることが困難であるため、レゾール樹脂を用いることが好ましい。
【0135】
保護層7は、酸性の触媒(酸触媒)を用いて硬化した層であることが好ましい。また、酸触媒は、含硫黄触媒であることが好ましい。
【0136】
塩基性触媒を使用した場合には、架橋反応が急速に進むためか、下層との接着性、ゴースト、電気特性が悪化しやすいため、酸性物質で中和、水洗するか、シリカゲルなどの吸着剤や、イオン交換樹脂などと接触させることにより不活性化、あるいは、除去することが好ましい。酸性物質としては、塩酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、硝酸、リン酸等が挙げられ、これらの酸を水、メタノール、エタノール等のアルコール類等の適当な溶剤で適当な濃度に希釈し、用いることができる。また、固体状の酸性物質を用いることもでき、固体酸性物質を用いることで、塩の残留が抑制でき、さらに、溶液状態で攪拌、接触処理を行った後、ろ過で容易に除去できるため、生産性が高く、最も好ましい。固体状の酸性物質としては、イオン交換樹脂、プロトン酸基を含有する基が表面に結合されている無機固体、プロトン酸基を含有するポリオルガノシロキサン、ヘテロポリ酸、イソポリ酸、単元系金属酸化物、複合系金属酸化物、粘土鉱物、金属硫酸塩、金属リン酸塩、金属硝酸塩等が挙げられる。その具体例を以下に示す。
【0137】
イオン交換樹脂としては、アンバーライト15、アンバーライト200C、アンバーリスト15(以上、ローム・アンド・ハース社製;ダウエックスMWC−1−H、ダウエックス88、ダウエックスHCR−W2(以上、ダウ・ケミカル社製);レバチットSPC−108、レバチットSPC−118(以上、バイエル社製);ダイヤイオンRCP−150H(三菱化成社製);スミカイオンKC−470、デュオライトC26−C、デュオライトC−433、デュオライト−464(以上、住友化学工業社製);ナフィオン−H(デュポン社製);ピューロライト(エイエムピー・アイオネクス社製)等が挙げられる。
【0138】
プロトン酸基を含有する基が表面に結合されている無機固体としては、Zr(OPCHCHSOH)、Th(OPCHCHCOOH)等が挙げられる。プロトン酸基を含有するポリオルガノシロキサンとしては、スルホン酸基を有するポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
【0139】
ヘテロポリ酸としては、コバルトタングステン酸、リンモリブデン酸等が挙げられる。イソポリ酸としては、ニオブ酸、タンタル酸、モリブデン酸等が挙げられる。
【0140】
単元系金属酸化物としては、シリカゲル、アルミナ、クロミア、ジルコニア、CaO、MgO等が挙げられる。複合系金属酸化物としては、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、ゼオライト類等が挙げられる。粘土鉱物としては、酸性白土、活性白土、モンモリロナイト、カオリナイト等が挙げられる。
【0141】
金属硫酸塩としては、LiSO、MgSO等が挙げられる。金属リン酸塩としては、リン酸ジルコニア、リン酸ランタン等が挙げられる。金属硝酸塩としては、LiNO、Mn(NO等が挙げられる。
【0142】
酸性物質を用いてフェノール系樹脂を処理する条件としては、フェノール系樹脂1質量部に対し、溶剤を1質量部以上100質量部以下、好ましくは1質量部以上10質量部以下を用いて溶解させ、酸性物質を、残留塩基性物質を中和するに十分な量、具体的には所望の処理を行った後の溶液のpHが7以下になる量を用い、攪拌処理する。処理した溶液から酸性物質を除去するために、更に水洗してもよいし、ろ過のみで除去してもよい。処理する時間としては、1分以上300分以下、温度は室温以上50℃以下程度で行うことができる。
【0143】
また、保護層7には残留電位を下げるために導電性粒子を添加してもよい。導電性粒子としては、金属、金属酸化物及びカーボンブラック等が挙げられるが、金属または金属酸化物がより好ましい。金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀及びステンレス等、またはこれらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したもの等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズおよびアンチモンをドープした酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらは単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合してもよく、固溶体や融着の形にしてもよい。導電性粒子の平均粒径は、保護層7の透明性の点で0.3μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることが特に好ましい。
【0144】
また、保護層7を形成する際に、フェノール樹脂の硬化を促進するための触媒を使用することができる。この触媒としても、常温、あるいは、加熱後に酸性を示すものが好ましく、接着性、ゴースト抑制、電気特性の観点で、有機スルホン酸及び/又はその誘導体が特に好ましい。保護層7中のこれらの触媒の存在は、XPS等により容易に確認することができる。
【0145】
有機スルホン酸及び/又はその誘導体としては、例えば、パラトルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)、ジノニルナフタレンジスルホン酸(DNNDSA)、ドデシルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸等が挙げられる。これらの中でも、触媒能、成膜性の観点から、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸が好ましい。また、保護層7を形成する際、例えば保護層形成用塗布液中で、ある程度解離可能であれば、有機スルホン酸塩を用いることもできる。
【0146】
また、一定以上の温度をかけたときに触媒能力が高くなる、所謂、熱潜在性触媒を用いることで、液保管温度では触媒能が低く、硬化時に触媒能が高くなるため、硬化温度の低下と、保存安定性とを両立することができる。
【0147】
熱潜在性触媒としては、例えば、有機スルホン化合物等をポリマーで粒子状に包んだマイクロカプセル、ゼオライトのような空孔化合物に酸等を吸着させたもの、プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を塩基でブロックした熱潜在性プロトン酸触媒や、プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を一級もしくは二級のアルコールでエステル化したもの、プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体をビニルエーテル類及び/又はビニルチオエーテル類でブロックしたもの、三フッ化ホウ素のモノエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素のピリジン錯体などが挙げられる。これらの中でも、触媒能、保管安定性、入手性、コストの面で、プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を塩基でブロックしたものが好ましい。
【0148】
熱潜在性プロトン酸触媒のプロトン酸としては、硫酸、塩酸、酢酸、硫酸、ギ酸、硝酸、リン酸、スルホン酸、モノカルボン酸、ポリカルボン酸類、プロピオン酸、シュウ酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フタル酸、マレイン酸、ベンゼンスルホン酸、o、m、p−トルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、トリデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。また、プロトン酸誘導体としては、スルホン酸、リン酸等のプロトン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩などの中和物、プロトン酸骨格が高分子鎖中に導入された高分子化合物(ポリビニルスルホン酸等)等が挙げられる。プロトン酸をブロックする塩基としては、アミン類が挙げられる。
【0149】
アミン類は、1級、2級又は3級アミンに分類されるが、本発明ではいずれも特に制限はなく使用することができる。
【0150】
1級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、セカンダリーブチルアミン、アリルアミン、メチルヘキシルアミン等が挙げられる。
【0151】
2級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジn−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジt−ブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、N−イソプロピルN−イソブチルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジセカンダリーブチルアミン、ジアリルアミン、N−メチルヘキシルアミン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、モルホリン、N−メチルベンジルアミン等が挙げられる。
【0152】
3級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリn−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリt−ブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリ(2−エチルヘキシル)アミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアリルアミン、N−メチルジアリルアミン、トリアリルアミン、N,N−ジメチルアリルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−ジアミノエタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラアリル−1,4−ジアミノブタン、N−メチルピペリジン、ピリジン、4−エチルピリジン、N−プロピルジアリルアミン、3−ジメチルアミノプロパノール、2−エチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2,4−ルチジン、2,5−ルチジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、2,4,6−コリジン、2−メチル−4−エチルピリジン、2−メチル−5−エチルピリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N−エチル−3−ヒドロキシピペリジン、3−メチル−4−エチルピリジン、3−エチル−4−メチルピリジン、4−(5−ノニル)ピリジン、イミダゾール、N−メチルピペラジン等が挙げられる。
【0153】
熱潜在性触媒の市販品としては、キングインダストリーズ社製の「NACURE2501」(トルエンスルホン酸解離、メタノール/イソプロパノール溶媒、pH6.0以上7.2、解離温度80℃)、「NACURE2107」(p−トルエンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH8.0以上9.0以下、解離温度90℃)、「NACURE2500」(p−トルエンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH6.0以上7.0以下、解離温度65℃)、「NACURE2530」(p−トルエンスルホン酸解離、メタノール/イソプロパノール溶媒、pH5.7以上6.5以下、解離温度65℃)、「NACURE2547」(p−トルエンスルホン酸解離、水溶液、pH8.0以上9.0以下、解離温度107℃)、「NACURE2558」(p−トルエンスルホン酸解離、エチレン/グリコール溶媒、pH3.5以上4.5以下、解離温度80℃)、「NACUREXP−357」(p−トルエンスルホン酸解離、メタノール溶媒、pH2.0以上4.0以下、解離温度65℃)、「NACUREXP−386」(p−トルエンスルホン酸解離、水溶液、pH6.1以上6.4以下、解離温度80℃)、「NACUREXC−2211」(p−トルエンスルホン酸解離、pH7.2以上8.5以下、解離温度80℃)、「NACURE5225」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH6.0以上7.0以下、解離温度120℃)、「NACURE5414」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、キシレン溶媒、解離温度120℃)、「NACURE5528」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH7.0以上8.0以下、解離温度120℃)、「NACURE5925」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、pH7.0以上7.5以下、解離温度130℃)、「NACURE1323」(ジノニルナフタレンスルホン酸解離、キシレン溶媒、pH6.8以上7.5以下、解離温度150℃)、「NACURE1419」(ジノニルナフタレンスルホン酸解離、キシレン/メチルイソブチルケトン溶媒、解離温度150℃)、「NACURE1557」(ジノニルナフタレンスルホン酸解離、ブタノール/2−ブトキシエタノール溶媒、pH6.5以上7.5、解離温度150℃)、「NACUREX49−110」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、イソブタノール/イソプロパノール溶媒、pH6.5以上7.5以下、解離温度90℃)、「NACURE3525」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、イソブタノール/イソプロパノール溶媒、pH7.0以上8.5以下、解離温度120℃)、「NACUREXP−383」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、キシレン溶媒、解離温度120℃)、「NACURE3327」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、イソブタノール/イソプロパノール溶媒、pH6.5以上7.5以下、解離温度150℃)、「NACURE4167」(リン酸解離、イソプロパノール/イソブタノール溶媒、pH6.8以上7.3以下、解離温度80℃)、「NACUREXP−297」(リン酸解離、水/イソプロパノール溶媒、pH6.5以上7.5以下、解離温度90℃、「NACURE4575」(リン酸解離、pH7.0以上8.0以下、解離温度110℃)等が挙げられる。
【0154】
これらの熱潜在性触媒は単独で又は二種類以上組み合わせて使用することができる。
【0155】
熱潜在性触媒の配合量は、フェノール系樹脂溶液中の固形分100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下であることが好ましく、特に0.1質量部以上10質量部以下が適している。20質量部を超える添加量であると、焼成処理後に異物となって析出する傾向があり、0.01質量部未満では触媒活性が低くなる傾向がある。
【0156】
保護層7にはさらに、膜の成膜性、可とう性、潤滑性、接着性を調整するなどの目的から、他のカップリング剤やフッ素化合物を加えてもよい。このような化合物としては、各種シランカップリング剤、および市販のシリコーン系ハードコート剤を用いることができる。
【0157】
シランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等を用いることができる。
【0158】
市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−8239(以上、信越シリコーン社製)、AY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)等を用いることができる。
【0159】
また、撥水性等の付与のために、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン、等の含フッ素化合物を加えても良い。
【0160】
シランカップリング剤は任意の量で使用できるが、含フッ素化合物の量は、フッ素を含まない化合物に対して質量で0.25倍以下とすることが望ましい。この使用量を超えると、架橋膜の成膜性に問題が生じる場合がある。
【0161】
また、保護層7の放電ガス耐性、機械強度、耐傷性、粒子分散性、粘度コントロール、トルク低減、磨耗量コントロール、ポットライフの延長などの目的で、アルコール系溶剤に溶解する樹脂を加えることもできる。
【0162】
アルコール系溶剤に可溶な樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールやアセトアセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルアセタール樹脂などのポリビニルアセタール樹脂(例えば、積水化学社製のエスレックB、K等)、ポリアミド樹脂、セルロ−ス樹脂、ポリビニルフェノール樹脂などが挙げられる。特に、電気特性の点で、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂が好ましい。
【0163】
当該樹脂の平均分子量は、2,000以上100,000以下が好ましく、5,000以上50,000以下がより好ましい。樹脂の分子量が2,000未満であると樹脂の添加による効果が不十分となる傾向にあり、また、100,000を超えると溶解度が低下して添加量が制限され、さらには塗布時に製膜不良を招く傾向にある。
【0164】
また、当該樹脂の添加量は1質量%以上40質量%以下が好ましく、1質量%以上30質量%以下がより好ましく、5質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。当該樹脂の添加量が1質量%未満であると樹脂の添加による効果が不十分となる傾向にあり、また、40質量%を超えると高温高湿下での画像ボケが発生しやすくなる傾向にある。
【0165】
保護層7は、上述した各種材料及び各種添加剤を含有する保護層形成用塗布液を用いて形成することができる。保護層形成用塗布液の調製は、無溶媒で行うか、必要に応じてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等の溶剤を用いて行うことができる。かかる溶剤は1種を単独で又は2種以上を混合して使用可能であるが、沸点が100℃以下のものを用いることが好ましい。
【0166】
塗布液中の溶剤量は任意に設定できるが、少なすぎると上記一般式(I)〜(V)で表される化合物が析出しやすくなるため、上記一般式(I)〜(V)で表される化合物1質量部に対し好ましくは0.5質量部以上30質量部以下、より好ましくは1質量部以上20質量部以下で使用される。
【0167】
また、上記の成分を含有する保護層形成用塗布液の調製は、単純に混合、溶解させるだけでもよいが、室温以上100℃以下、好ましくは、30℃以上80℃以下で10分以上100時間以下、好ましくは1時間以上50時間以下加温してもよい。また、この際に超音波を照射することも好ましい。これにより、恐らく部分的な反応が進行し、塗布液の均一性が高まり、塗膜欠陥のない均一な膜が得られやすくなる。
【0168】
保護層形成用塗布液を電荷輸送層6上に塗布する場合、塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。そして、塗布後、塗膜を乾燥させることで保護層7が形成する。
【0169】
なお、塗布の際には1回の塗布により必要な膜厚が得られない場合、複数回重ね塗布することにより必要な膜厚を得ることができる。複数回の重ね塗布を行なう場合、加熱処理は塗布の度に行なってもよいし、複数回重ね塗布した後でもよい。
【0170】
保護層形成用塗布液中の硬化性成分を硬化させる際の反応温度及び反応時間は特に制限されないが、得られる樹脂の機械的強度及び化学的安定性の点から、反応温度は好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上200℃以下であり、反応時間は好ましくは10分以上5時間以下である。また、塗工液の硬化により得られる有機層を高湿度状態に保つことは、有機層の特性の安定化を図る上で有効である。さらには、用途に応じてヘキサメチルジシラザンやトリメチルクロロシランなどを用いて、得られる保護層7に表面処理を施して疎水化することもできる。
【0171】
最表面層である保護層7の膜厚は、2μm以上であることが好ましく、2.5μm以上10μm以下であることがより好ましく、3μm以上9μm以下であることがさらに好ましい。
【0172】
また、保護層7には、帯電手段で発生するオゾン等の酸化性ガスによる劣化を防止する目的で、酸化防止剤を添加することが好ましい。感光体表面の機械的強度を高め、感光体が長寿命になると、感光体が酸化性ガスに長い時間接触することになるため、従来よりも強い酸化耐性が要求される。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系あるいはヒンダードアミン系が望ましく、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤、などの公知の酸化防止剤を用いてもよい。酸化防止剤の添加量としては、保護層7における固形分全量を基準として20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0173】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマイド、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2−t−ブチル−6−(3−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。
【0174】
更に、電子写真感光体表面の耐汚染物付着性、潤滑性を改善するために、保護層7に各種粒子を添加することもできる。粒子の一例として、ケイ素含有粒子を挙げることができる。ケイ素含有粒子とは、構成元素にケイ素を含む粒子であり、具体的には、コロイダルシリカ及びシリコーン粒子等が挙げられる。ケイ素含有粒子として用いられるコロイダルシリカは、平均粒径1nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上30nm以下のシリカを、酸性もしくはアルカリ性の水分散液、あるいはアルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。保護層7中のコロイダルシリカの固形分含有量は、特に限定されるものではないが、製膜性、電気特性、強度の面から、保護層7の固形分全量を基準として、0.1質量%以上50質量%以下、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下の範囲で用いられる。
【0175】
ケイ素含有粒子として用いられるシリコーン粒子は、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子、シリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。これらのシリコーン粒子は球状で、その平均粒径は好ましくは1nm以上500nm以下、より好ましくは10nm以上100nm以下である。シリコーン粒子は、化学的に不活性で、樹脂への分散性に優れる小径粒子であり、さらに十分な特性を得るために必要とされる含有量が低いため、架橋反応を阻害することなく、電子写真感光体の表面性状を改善することができる。すなわち、強固な架橋構造中に均一に取り込まれた状態で、電子写真感光体表面の潤滑性、撥水性を向上させ、長期間にわたって良好な耐磨耗性、耐汚染物付着性を維持することができる。保護層7中のシリコーン粒子の含有量は、保護層7の固形分全量を基準として、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
【0176】
また、その他の粒子としては、四フッ化エチレン、三フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のフッ素系粒子や“第8回ポリマー材料フォーラム講演予稿集 p89”に示されるような、フッ素樹脂と水酸基を有するモノマーを共重合させた樹脂からなる粒子、ZnO−Al、SnO−Sb、In−SnO、ZnO−TiO、ZnO−TiO、MgO−Al、FeO−TiO、TiO、SnO、In、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物が挙げられる。
【0177】
また、同様な目的でシリコーンオイル等のオイルを添加することもできる。シリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル;アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシクロシロキサン類;1,3,5−トリメチル−1.3.5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状メチルフェニルシクロシロキサン類;ヘキサフェニルシクロトリシロキサン等の環状フェニルシクロシロキサン類;3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等のフッ素含有シクロシロキサン類;メチルヒドロシロキサン混合物、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサン等のヒドロシリル基含有シクロシロキサン類;ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン等のビニル基含有シクロシロキサン類等が挙げられる。
【0178】
また、図3に示す電子写真感光体のように、感光層3が単層型感光層8を有する場合、単層型感光層8は、少なくとも電荷発生材料と結着樹脂とを含有して形成される。電荷発生材料としては機能分離型感光層における電荷発生層5に使用されるものと同様のものを、結着樹脂としては機能分離型感光層における電荷発生層5及び電荷輸送層6に用いられる結着樹脂と同様のものを用いることができる。単層型感光層8中の電荷発生材料の含有量は、単層型感光層8における固形分全量を基準として好ましくは10質量%以上85質量%以下、より好ましくは20質量%以上50質量%以下である。単層型感光層8には、光電特性を改善する等の目的で電荷輸送材料や高分子電荷輸送材料を添加してもよい。これらは、電荷輸送層6に使用されるものと同様のものを用いることができる。電荷輸送材料及び高分子電荷輸送材料の添加量は、単層型感光層8における固形分全量を基準として5質量%以上50質量%以下とすることが好ましい。また、塗布に用いる溶剤や塗布方法は、上述した電荷発生層5や電荷輸送層6と同様とすることができる。単層型感光層8の膜厚は、5μm以上50μm以下程度が好ましく、10μm以上40μm以下とすることがさらに好ましい。
【0179】
(画像形成装置及びプロセスカートリッジ)
図4は、本発明の画像形成装置の好適な一実施形態を示す模式図である。図4に示す画像形成装置100は、画像形成装置本体(図示せず)に、上述した電子写真感光体1を備えるプロセスカートリッジ20と、露光手段30と、転写手段40と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、第一の露光手段30はプロセスカートリッジ20の開口部から電子写真感光体1に露光可能な位置に配置されており、転写手段40は中間転写体50を介して電子写真感光体1に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体1に当接可能に配置されている。
【0180】
プロセスカートリッジ20は、ケース内に電子写真感光体1とともに帯電手段21、現像手段25、クリーニング手段27及び第二の露光手段29を、取り付けレールにより組み合わせて一体化したものである。なお、ケースには、露光のための開口部が設けられている。
【0181】
クリーニング手段27は、クリーニングブレード(クリーニング部材)27aを有しており、クリーニングブレード27aは、電子写真感光体1の表面に接触するように配置される。また、画像形成装置100においては、第二の露光手段29をクリーニングブレード27aの後に用いた例を示してあるが、第二の露光手段29の位置は必要に応じて変更することができる。また、クリーニング手段27は、潤滑材27cを感光体1の表面に供給する繊維状部材27bを用いた例を示しているが、これは必要に応じて使用することができる。なお、繊維状部材27bの形状は特に限定されず、ロール状、歯ブラシ状等の形状が挙げられる。
【0182】
帯電手段21としては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器を使用することができる。また、帯電ローラを感光体1近傍で用いる非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用することができる。
【0183】
第一の露光手段30としては、例えば、感光体1表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、所望の像様に露光できる光学系機器等が挙げられる。光源の波長は、感光体1の分光感度領域にあるものが使用される。半導体レーザーの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザーや青色レーザーとして400nm以上450nm以下近傍に発振波長を有するレーザーも利用できる。また、カラー画像形成のためにはマルチビーム出力が可能なタイプの面発光型のレーザー光源も有効である。
【0184】
第二の露光手段29としては、例えば、タングステンランプ、ハロゲンランプ、冷陰極管などを用い、光学フィルターで所望の波長に調整したもの、あるいは、半導体レーザー、LED、有機ELなどの固体素子を光源として用いることができる。これらの中でも、光源としては半導体素子を用いたものが好ましく、オン−オフの応答性、波長選択性、発光強度の制御性、小型化などの観点からLEDが特に好ましい。LEDとしては、例えば、発光波長域410nm以上530nm以下のE1L49−3B1A*−02、発光波長域430nm以上560nmのE1L53−SC1A*−03、発光波長域450nm以上600nm以下のE1L49−3G1A*−02、発光波長域590nm以上700nm以下のE1L49−4R0A*−00(以上、豊田合成社製)などを挙げることができる。
【0185】
画像形成装置100においては、この第二の露光手段29の露光光に対し、電子写真感光体1の最表面層(例えば、上記保護層7等)が吸収を有することが必要である。更に、画像形成装置100においては、第二の露光手段29の露光光の全ての波長域における電子写真感光体1の最表面層の最大吸光度が0.05以下であることが必要である。したがって、かかる条件を満たすように、使用する第二の露光手段29の光源の種類、及び、電子写真感光体1の最表面層の組成を決定する必要がある。例えば、上述した組成を有する保護層7を最表面層とする電子写真感光体1に対しては、第二の露光手段29の光源としては、発光波長域400nm以上900nm以下の露光光を照射可能なものであることが好ましく、発光波長域400nm以上800nm以下の露光光を照射可能なものであることがより好ましい。
【0186】
ここで、本発明における「第二の露光手段の露光光の全ての波長域における電子写真感光体の最表面層の最大吸光度」は、図6に示すように定義される。すなわち、上記最大吸光度とは、図6に示すように、露光光の波長と最表面層の吸光度との関係を示す吸収曲線を描いた際に、第二の露光手段の露光光の波長域内における上記曲線上の吸光度の最大値を意味する。なお、最表面層は、必ずしも第二の露光手段の露光光の全ての波長域において吸収を有している必要はなく、上記露光光の少なくとも一部の波長域において吸収を有していればよい。
【0187】
第二の露光手段29の露光光によりゴースト発生が抑制されるメカニズムについては必ずしも明らかではないが、第二の露光手段29の露光光が電子写真感光体1の最表面層に吸収され、最表面層内で電荷キャリアが発生し、膜抵抗が低下することで残留している電荷を開放しやすくなるためと推察される。そのため、第二の露光手段29の露光光の全ての波長域における電子写真感光体1の最表面層の最大吸光度は、0より大きく0.05以下であることが必要であるが、小さすぎると上記効果が得られにくく、また大きすぎると膜抵抗が低下しすぎるため、0.001以上0.047以下であることが好ましく、0.002以上0.045以下であることがより好ましい。また、第二の露光手段29の光量としては、弱すぎると上記効果が得られにくく、また強すぎると膜抵抗が低下しすぎるため、20μW以上5mW以下であることが好ましく、30μW以上3mW以下であることがより好ましい。
【0188】
第二の露光手段29による露光は、感光体1上に画像形成する各サイクル中に一定の条件(イレーズ露光)で行ってもよいし、画像形成サイクルに先立ってプレ露光として行ってもよい。また、プリントジョブの間に露光を行ってもよいし、任意に設定することができるが、プレ露光とイレーズ露光とを組み合わせて行うことが特に効果的である。
【0189】
なお、イレーズ露光を行う場合、第二の露光手段29による電子写真感光体1の露光は、帯電、第一の露光手段30による露光、現像及び転写を行った後、次の画像形成サイクルの帯電を行う前に行うことが必要であり、クリーニング手段27により残存トナーを除去した後に行うことがより効果的である。
【0190】
また、第二の露光手段29は、露光光の光量を制御するための制御手段(第一の制御手段)を有していることが好ましい。このような第一の制御手段としては、例えば、あらかじめ設定された条件に基づき、あるいは、感光体の表面電位やサイクル数などの検知により、印加電圧や電流を制御する手段等が挙げられる。かかる第一の制御手段を備えることにより、露光光の光量を上述の好適な範囲内に容易に調節することが可能となる。
【0191】
更に、第二の露光手段29は、露光光を非定期的に電子写真感光体1に照射するための制御手段(第二の制御手段)を有することが好ましい。このような第二の制御手段としては、例えば、あらかじめ設定された条件に基づき、あるいは、感光体の表面電位やサイクル数などの検知により露光タイミングを制御する手段等が挙げられる。かかる第二の制御手段を備えることにより、ゴーストを最適に制御することが可能となる。
【0192】
現像手段25としては、例えば、磁性若しくは非磁性の一成分系現像剤又は二成分系現像剤等を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置を用いて行うことができる。そのような現像手段25としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。こうした現像手段25としては、例えば、上記一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて感光体1に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。
【0193】
以下、現像手段25に使用されるトナーについて説明する。
【0194】
画像形成装置100に用いられるトナーは、高い現像性及び転写性並びに高画質を得る観点から、平均形状係数(ML/A)が100以上150以下であることが好ましく、105以上145以下であることがより好ましく、110以上140以下であることがさらに好ましい。また、トナーとしては、体積平均粒子径が3μm以上12μm以下であることが好ましく、3.5μm以上10μm以下であることがより好ましく、4μm以上9μm以下であることがさらに好ましい。このような平均形状係数及び体積平均粒子径を満たすトナーを用いることにより、現像性及び転写性が高まり、いわゆる写真画質と呼ばれる高画質の画像を得ることができる。
【0195】
トナーは、上記平均形状係数及び体積平均粒子径を満足する範囲のものであれば特に製造方法により限定されるものではないが、例えば、結着樹脂、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等を加えて混練、粉砕、分級する混練粉砕法;混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力又は熱エネルギーにて形状を変化させる方法;結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液とを水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等により製造されるトナーが使用される。
【0196】
また上記方法で得られたトナーをコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法等、公知の方法を使用することができる。なお、トナーの製造方法としては、形状制御、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が好ましく、乳化重合凝集法が特に好ましい。
【0197】
トナー母粒子は、結着樹脂、着色剤及び離型剤からなり、必要であれば、シリカや帯電制御剤を含有して構成される。
【0198】
トナー母粒子に使用される結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類等の単独重合体及び共重合体、ジカルボン酸類とジオール類との共重合によるポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0199】
特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル樹脂等を挙げることができる。さらに、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等を挙げることもできる。
【0200】
また、着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を代表的なものとして例示することができる。
【0201】
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロピィシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等を代表的なものとして例示することができる。
【0202】
また、帯電制御剤としては、公知のものを使用することができるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤を用いることができる。湿式製法でトナーを製造する場合、イオン強度の制御と廃水汚染の低減の点で水に溶解しにくい素材を使用することが好ましい。また、トナーとしては、磁性材料を内包する磁性トナー及び磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。
【0203】
現像手段25に用いるトナーとしては、上記トナー母粒子及び上記外添剤をヘンシェルミキサー又はVブレンダー等で混合することによって製造することができる。また、トナー母粒子を湿式にて製造する場合は、湿式にて外添することも可能である。
【0204】
現像手段25に用いるトナーには滑性粒子を添加してもよい。滑性粒子としては、グラファイト、二硫化モリブデン、滑石、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の固体潤滑剤や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪族アミド類やカルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物、石油系ワックス、及びそれらの変性物が使用できる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を併用して使用できる。但し、体積平均粒径としては0.1μm以上10μm以下の範囲が好ましく、上記化学構造のものを粉砕して、粒径をそろえてもよい。トナーへの添加量は好ましくは0.05質量%以上2.0質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上1.5質量%以下の範囲である。
【0205】
現像手段25に用いるトナーには、電子写真感光体表面の付着物、劣化物除去の目的等で、無機微粒子、有機微粒子、該有機微粒子に無機微粒子を付着させた複合微粒子等を加えることができる。
【0206】
無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の各種無機酸化物、窒化物、ホウ化物等が好適に使用される。
【0207】
また、上記無機微粒子を、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート等のチタンカップリング剤、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等で処理を行ってもよい。また、シリコーンオイル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩によって疎水化処理したものも好ましく使用される。
【0208】
有機微粒子としては、スチレン樹脂粒子、スチレンアクリル樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子等を挙げることができる。
【0209】
粒子径としては、体積平均粒子径で好ましくは5nm以上1000nm以下、より好ましくは5nm以上800nm以下、さらに好ましくは5nm以上700nm以下でのものが使用される。体積平均粒子径が、上記下限値未満であると、研磨能力に欠ける傾向があり、他方、上記上限値を超えると、電子写真感光体表面に傷を発生しやすくなる傾向がある。また、上述した粒子と滑性粒子との添加量の和が0.6質量%以上であることが好ましい。
【0210】
トナーに添加されるその他の無機酸化物としては、粉体流動性、帯電制御等の為、1次粒径が40nm以下の小径無機酸化物を用い、更に付着力低減や帯電制御の為、それより大径の無機酸化物を添加することが好ましい。これらの無機酸化物微粒子は公知のものを使用できるが、精密な帯電制御を行う為にはシリカと酸化チタンを併用することが好ましい。また、小径無機微粒子については表面処理することにより、分散性が高くなり、粉体流動性を上げる効果が大きくなる。さらに、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩や、ハイドロタルサイト等の無機鉱物を添加することも放電精製物を除去するために好ましい。
【0211】
また、電子写真用カラートナーはキャリアと混合して使用されるが、キャリアとしては、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉又はそれ等の表面に樹脂コーティングを施したものが使用される。また、キャリアとの混合割合は、適宜設定することができる。
【0212】
転写手段40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0213】
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等のベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体50の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いることもできる。
【0214】
また、画像形成装置100は、上述した各手段の他に、例えば、感光体1に対して光除電を行う光除電手段を備えていてもよい。
【0215】
図5は、本発明の画像形成装置の他の実施形態を示す模式図である。画像形成装置110は、プロセスカートリッジ20を4つ搭載したタンデム方式のフルカラー画像形成装置である。画像形成装置110では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ20がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用できる構成となっている。なお、画像形成装置110は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【0216】
タンデム型の画像形成装置110においては、4本の感光体1の電気特性が安定することから、より長期に渡ってカラーバランスの優れた画質を得ることができる。
【実施例】
【0217】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0218】
<保護層用ベース樹脂−1>
フェノール樹脂(PL−4852、群栄化学社製)を保護層用ベース樹脂−1として用意した。
【0219】
<保護層用ベース樹脂−2>
アルキル化メラミン樹脂(MW−30HM、三和ケミカル社製)を保護層用ベース樹脂−2として用意した。
【0220】
<保護層用ベース樹脂−3>
2Lのフラスコ中に、500gのフェノール、862gの35質量%ホルムアルデヒド水溶液、及び、5gのトリエチルアミンを入れ、窒素気流下、80℃で6時間加熱した後、水を減圧留去した。次いで、生成物を酢酸エチル2500gに溶解し、得られた溶液を、1N−塩酸10mlを用いて中和した後、十分に水洗した。水層を分液した後、溶剤を減圧留去し、775gのフェノール樹脂を得た。このフェノール樹脂300gに対し、シリコーン系樹脂(KP−854、信越化学社製)200gを加え、得られた混合樹脂を保護層用ベース樹脂−3とした。
【0221】
<保護層用ベース樹脂−4>
フェノール樹脂(PL−4852、群栄化学社製)100gにビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート828、ジャパンエポキシレジン社製)50gを加え、得られた混合樹脂を保護層用ベース樹脂−4とした。
【0222】
<保護層用ベース樹脂−5>
アクリル系樹脂(KAYARAD TMPTA、日本化薬社製)を保護層用ベース樹脂−5として用意した。
【0223】
<感光体−1>
(下引層の作製)
酸化亜鉛(平均粒子径:70nm、テイカ社製、比表面積値:15m/g)100質量部をテトラヒドロフラン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM503、信越化学社製)1.3質量部を添加して、2時間攪拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛を得た。
【0224】
得られた表面処理酸化亜鉛110質量部をテトラヒドロフラン500質量部と攪拌混合し、そこにアリザリン0.6質量部を50質量部のテトラヒドロフランに溶解させた溶液を添加し、50℃にて5時間攪拌した。その後、減圧ろ過にてアリザリンを付与させた酸化亜鉛をろ別し、さらに60℃で減圧乾燥を行い、アリザリン付与酸化亜鉛を得た。
【0225】
このアリザリン付与酸化亜鉛60質量部、硬化剤としてのブロック化イソシアネート(スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部、及びブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製)15質量部をメチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い、分散液を得た。
【0226】
得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部と、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)40質量部とを添加し、下引層形成用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて直径30mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、170℃、40分間の乾燥硬化を行い、膜厚18μmの下引層を形成した。
【0227】
(電荷発生層の作製)
電荷発生物質としてのCukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜、16.0゜、24.9゜、28.0゜の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン15質量部、結着樹脂としての塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)10質量部、及びn−酢酸ブチル200質量部からなる混合物を、直径1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散した。得られた分散液に、n−酢酸ブチル175質量部、及びメチルエチルケトン180質量部を添加し、攪拌して電荷発生層形成用塗布液を得た。この塗布液を上記下引層上に浸漬塗布し、常温で乾燥して、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0228】
(電荷輸送層の作製)
N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン45質量部及びビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:4万)55質量部をクロルベンゼン800質量部に加えて溶解し、電荷輸送層形成用塗布液を得た。この塗布液を上記電荷発生層上に浸漬塗布し、130℃、45分間の乾燥を行って、膜厚23μmの電荷輸送層を形成した。
【0229】
(保護層の作製)
電荷輸送材料としての上記式(III−17)で表される化合物3質量部、上記ベース樹脂−1を3質量部、コロイダルシリカ(PL−1、扶桑化学工業社製)0.1質量部、ポリビニルフェノール樹脂(PVP、重量平均分子量:約8000、Aldrich社製)0.1質量部、イソプロピルアルコール5質量部、メチルイソブチルケトン5質量部、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)0.2質量部、及び、NACURE2500(キングインダストリーズ社製)0.2質量部を混合し、保護層形成用塗布液を調製した。この塗布液を上記電荷輸送層上に浸漬塗布法により塗布し、室温で30分間風乾した後、150℃で1時間加熱処理して硬化させ、膜厚5μmの保護層を形成した。これにより、感光体−1を作製した。
【0230】
また、上記保護層の吸収を測定するため、ガラス製のプレパラート(S−1112、松浪ガラス社製)上に、上記保護層の10倍の膜厚である50μmの吸光度測定用保護層を上記保護層と同様の手順で形成した。この吸光度測定用保護層について、分光光度計(U−4000、日立社製)を用いて波長400nm以上800nm以下の光に対する吸光度を測定した後、保護層の実膜厚5μmに換算してプロットした。その結果を図7に示した。
【0231】
また、発光波長域410以上530nm以下の光源(E1L49−3B1A*−02、豊田合成社製)を光源−1、発光波長域430以上560nm以下の光源(E1L53−SC1A*−03、豊田合成社製)を光源−2、発光波長域450以上600nm以下の光源(E1L49−3G1A*−02、豊田合成社製)を光源−3、発光波長域590以上700nm以下の光源(E1L49−4R0A*−00、豊田合成社製)を光源−4とし、それぞれの光源に対する保護層の最大吸光度を求めた。その結果を表17に示した。
【0232】
<感光体−2>
電荷輸送層までは上記感光体−1と同様に作製した。次に、電荷輸送材料としての上記式(I−3)で表される化合物3質量部、上記ベース樹脂−2を3質量部、ポリビニルフェノール樹脂(PVP、重量平均分子量:約8000、Aldrich社製)0.3質量部、イソプロピルアルコール5質量部、メチルイソブチルケトン5質量部、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)0.1質量部、及び、NACURE2500(キングインダストリーズ社製)0.2質量部を混合し、保護層形成用塗布液を調製した。この塗布液を用いた以外は上記感光体−1と同様にして膜厚5μmの保護層を形成し、感光体−2を作製した。また、保護層の各光源に対する吸収も上記感光体−1と同様に測定し、表17に示した。
【0233】
<感光体−3>
電荷輸送層までは上記感光体−1と同様に作製した。次に、電荷輸送材料としての上記式(II−5)で表される化合物3質量部、上記ベース樹脂−1を3質量部、コロイダルシリカ(PL−1、扶桑化学工業社製)0.1質量部、イソプロピルアルコール5質量部、メチルイソブチルケトン5質量部、及び、NACURE2500(キングインダストリーズ社製)0.2質量部を混合し、保護層形成用塗布液を調製した。この塗布液を用いた以外は上記感光体−1と同様にして膜厚5μmの保護層を形成し、感光体−3を作製した。また、保護層の各光源に対する吸収も上記感光体−1と同様に測定し、表17に示した。
【0234】
<感光体−4>
電荷輸送層までは上記感光体−1と同様に作製した。次に、電荷輸送材料としての上記式(II−13)で表される化合物3質量部、上記ベース樹脂−3を3質量部、イソプロピルアルコール5質量部、メチルイソブチルケトン5質量部、及び、NACURE2500(キングインダストリーズ社製)0.1質量部を混合し、保護層形成用塗布液を調製した。この塗布液を用いた以外は上記感光体−1と同様にして膜厚4μmの保護層を形成し、感光体−4を作製した。また、保護層の各光源に対する吸収も上記感光体−1と同様に測定し、表17に示した。
【0235】
<感光体−5>
電荷輸送層までは上記感光体−1と同様に作製した。次に、電荷輸送材料としての上記式(IV−4)で表される化合物3質量部、上記ベース樹脂−1を3質量部、イソプロピルアルコール5質量部、メチルイソブチルケトン5質量部、及び、NACURE2500(キングインダストリーズ社製)0.2質量部を混合し、保護層形成用塗布液を調製した。この塗布液を用いた以外は上記感光体−1と同様にして膜厚4μmの保護層を形成し、感光体−5を作製した。また、保護層の各光源に対する吸収も上記感光体−1と同様に測定し、表17に示した。
【0236】
<感光体−6>
電荷輸送層までは上記感光体−1と同様に作製した。次に、電荷輸送材料としての上記式(III−8)で表される化合物3質量部、上記ベース樹脂−4を3質量部、イソプロピルアルコール5質量部、メチルイソブチルケトン5質量部、及び、NACURE2500(キングインダストリーズ社製)0.1質量部を混合し、保護層形成用塗布液を調製した。この塗布液を用いた以外は上記感光体−1と同様にして膜厚5μmの保護層を形成し、感光体−6を作製した。また、保護層の各光源に対する吸収も上記感光体−1と同様に測定し、表17に示した。
【0237】
<感光体−7>
電荷輸送層までは上記感光体−1と同様に作製した。次に、電荷輸送材料としての上記式(V−4)で表される化合物3質量部、上記ベース樹脂−1を3質量部、コロイダルシリカ(PL−1、扶桑化学工業社製)0.1質量部、ポリビニルフェノール樹脂(PVP、重量平均分子量:約8000、Aldrich社製)0.1質量部、イソプロピルアルコール5質量部、メチルイソブチルケトン5質量部、及び、NACURE2500(キングインダストリーズ社製)0.2質量部を混合し、保護層形成用塗布液を調製した。この塗布液を用いた以外は上記感光体−1と同様にして膜厚6μmの保護層を形成し、感光体−7を作製した。また、保護層の各光源に対する吸収も上記感光体−1と同様に測定し、表17に示した。
【0238】
<感光体−8>
電荷輸送層までは上記感光体−1と同様に作製した。次に、電荷輸送材料としての上記式(V−6)で表される化合物3質量部、上記ベース樹脂−4を3質量部、コロイダルシリカ(PL−1、扶桑化学工業社製)0.2質量部、イソプロピルアルコール5質量部、メチルイソブチルケトン5質量部、及び、NACURE2500(キングインダストリーズ社製)0.1質量部を混合し、保護層形成用塗布液を調製した。この塗布液を用いた以外は上記感光体−1と同様にして膜厚5μmの保護層を形成し、感光体−8を作製した。また、保護層の各光源に対する吸収も上記感光体−1と同様に測定し、表17に示した。
【0239】
<感光体−9>
電荷輸送層までは上記感光体−1と同様に作製した。次に、上記ベース樹脂−5を3質量部、電荷輸送材料としての上記式(II−10)で表される化合物3質量部、イルガキュア184(チバスペシャリティーケミカルズ社製)0.5質量部、NACURE5225(キングインダストリーズ社製)0.1質量部、テトラヒドロフラン30質量部、及び、ブタノール10質量部を混合し、保護層形成用塗布液を調製した。この塗布液を上記電荷輸送層上に浸漬塗布法により塗布し、室温で30分間風乾した後、メタルハライドランプ(200W、照射距離:120mm、照射強度:650mW/cm)を用い、感光体の回転速度10rpmで120秒間硬化させた。その後、さらに150℃で30分間硬化反応を進行させ、膜厚4μmの保護層を形成した。これにより、感光体−9を作製した。また、保護層の各光源に対する吸収も上記感光体−1と同様に測定し、表17に示した。
【0240】
【表17】



【0241】
[実施例1]
上述のようにして作製した感光体−1を、富士ゼロックス社製のDocuCentre Color 400CPに装着した。また、第二の露光手段として、上記光源−3(E1L49−3G1A*−02)をクリーニング手段と帯電手段との間に装着し、感光体上を5mmの幅で200μWの露光強度で画像形成サイクルごとに一定に露光(イレーズ露光:これを「露光方法−1」とする)するようにした。これにより、実施例1の画像形成装置を得た。
【0242】
<画質評価>
低温低湿(10℃、20%RH)及び高温高湿(30℃、85%RH)の環境下において、以下の評価を連続して行なった。まず、低温低湿(10℃、20%RH)の環境下にて10枚の連続画像形成テストを行ない、10枚目の画像のゴースト、画像濃度、スジを評価した。その後、同一環境下にて1万枚の画像形成テストを実施し、1万枚目のゴースト、画像濃度、スジ、画像流れを評価し、10枚目のものと比較した。その結果を表18に示した。また、1万枚画像形成テスト後の膜厚の減少量(摩耗量)を測定した。
【0243】
また、同様のテストを高温高湿(30℃、85%RH)の環境下にて行い、ゴースト、画像濃度、スジ、画像流れを評価した。その結果を表18に示した。
【0244】
(ゴースト評価)
ゴーストは、図8に示すGの文字と黒領域を有するパターンのチャートをプリントし、黒べた部分にGの文字の現れ具合を目視にて評価した。
A:図8(A)のように良好〜軽微である、
B:図8(B)のように若干目立つ程度である、
C:図8(C)のようにはっきり確認できる。
【0245】
(画像濃度評価)
画像濃度評価は、1枚目に20%濃度の画像が得られる設定とした後、10枚目、1万枚目の画像濃度を目視にて観察し判断した。
A:同等、
B:若干濃度低下、
C:はっきりと濃度低下。
【0246】
(スジ評価)
スジ評価は、上述のゴースト評価と同じチャートを用いて目視にて判断した。
A:良好、
B:部分的にスジの発生あり、
C:画質上問題となるスジ発生。
【0247】
(画像流れ評価)
画像流れは、上述のゴースト評価と同じチャートを用いて目視にて判断した。
【0248】
A:良好、
B:連続的にプリントテストしている時は問題ないが、1万枚プリント後、1日(24 時間)放置後に画像流れ発生、
C:連続的にプリントテストしている時にも画像流れ発生。
【0249】
[実施例2]
実施例1において、初期の10枚のプリントに先立って、第二の露光手段で感光体をあらかじめ100回転の間プレ露光を行うようにし、その後は感光体上を5mmの幅で200μWの露光強度で画像形成サイクルごとに一定に露光するようにした(プレ露光+イレーズ露光:これを「露光方法−2」とする)。それ以外は実施例1と同様にして、実施例2の画像形成装置を得た。この画像形成装置に対し、実施例1と同様の画質評価試験を行った。その結果を表18に示した。
【0250】
[実施例3〜17及び比較例1〜9]
感光体、露光光源、露光強度、露光方法の組み合わせを表18のようにした以外は実施例1と同様にして実施例3〜17及び比較例1〜9の画像形成装置を作製し、画質評価試験を行った。その結果を表18に示した。
【0251】
【表18】



【図面の簡単な説明】
【0252】
【図1】本発明の画像形成装置に用いられる電子写真感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明の画像形成装置に用いられる電子写真感光体の好適な他の実施形態を示す模式断面図である。
【図3】本発明の画像形成装置に用いられる電子写真感光体の好適な他の実施形態を示す模式断面図である。
【図4】本発明の画像形成装置の好適な一実施形態を示す模式図である。
【図5】本発明の画像形成装置の好適な他の実施形態を示す模式図である。
【図6】第二の露光手段の露光光の全ての波長域における電子写真感光体の最表面層の最大吸光度の定義を示す図である。
【図7】光源の波長と保護層の吸光度との関係を示すグラフである。
【図8】ゴーストの評価パターンと評価基準を示す図であり、(a)は判定A、(b)は判定B、(c)は判定Cをそれぞれ示す。
【符号の説明】
【0253】
1…電子写真感光体、2…導電性支持体、3…感光層、4…下引層、5…電荷発生層、6…電荷輸送層、7…保護層、8…単層型感光層、20…プロセスカートリッジ、21…帯電手段、25…現像手段、27…クリーニング手段、29…第二の露光手段、30…第一の露光手段、40…転写手段、50…中間転写体、100,110…画像形成装置。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体及び該導電性支持体上に形成された感光層を有する電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させるための帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体に静電潜像を形成するための第一の露光手段と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像手段と、
前記トナー像を前記電子写真感光体から被転写媒体に転写するための転写手段と、
を備える画像形成装置であって、
前記第一の露光手段の他に、前記電子写真感光体を一様に露光するための第二の露光手段を更に備え、
前記感光層は、前記導電性支持体から最も遠い側に、架橋構造を有する樹脂を含有する電荷輸送性の最表面層を有し、
前記最表面層が前記第二の露光手段の露光光に対して吸収を有し、且つ、
前記第二の露光手段の前記露光光の全ての波長域における前記最表面層の最大吸光度が0.05以下であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第二の露光手段が、半導体素子を用いた光源を有するものであることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第二の露光手段が、前記露光光の光量を制御するための制御手段を有するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第二の露光手段が、前記露光光を非定期的に前記電子写真感光体に照射するための制御手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちのいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記最表面層の膜厚が2μm以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちのいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記架橋構造を有する樹脂が、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂及びメラミン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むものであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちのいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記最表面層が、酸性の触媒を用いて硬化した層であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のうちのいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記酸性の触媒が、含硫黄触媒であることを特徴とする請求項7記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記電子写真感光体と、前記帯電手段、前記第二の露光手段、前記現像手段、及び、前記電子写真感光体の表面に残存したトナーを除去するためのクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1種と、を一体に有する、画像形成装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジを備えることを特徴とする請求項1乃至請求項8のうちのいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
導電性支持体及び該導電性支持体上に形成された感光層を有する電子写真感光体と、前記電子写真感光体を一様に露光するための第二の露光手段と、を備え、
前記感光層は、前記導電性支持体から最も遠い側に、架橋構造を有する樹脂を含有する電荷輸送性の最表面層を有し、
前記最表面層が前記第二の露光手段の露光光に対して吸収を有し、且つ、
前記第二の露光手段の前記露光光の全ての波長域における前記最表面層の最大吸光度が0.05以下であることを特徴とするプロセスカートリッジ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−96923(P2008−96923A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281791(P2006−281791)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】