説明

画像形成装置及び局所分解画像形成システム

本発明は、人体又は動物の体部内の血管に隣接する微視的な病理学的構造、特に、リンパ組織及び血管内の動脈硬化性の沈着物を問題なく認識して表示するための装置構成及びシステムに関する。本発明によると、体部内の選択された撮像領域内での原子核の磁気共鳴特性を示す局所分解画像用のデータを採取するために使われる。装置は、当該装置によって、体に高周波パルスシーケンス及びグラジエントエコーパルスシーケンスを印加して、体内に磁化を形成し、少なくとも1つの空間方向で流れる体内の媒体からの磁化を、媒体内の原子核スピンのディフェージングによって減衰することができるように構成及びプログラミングされる。MR造影剤が体に投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管に隣接した病理学的構造を表示するためにフローディフェージングする、造影剤投与による磁気共鳴画像形成に関するものであり、画像形成装置、及び、例えば、人体又は動物の体の局所分解画像形成システムに関する。装置及びシステムは、例えば、人体及び動物の体での磁気共鳴(MR)トモグラフィ用に適している。
【0002】
哺乳類の体及び人体内のリンパ管は、従来、リンパ管の直接穿刺下でX線を用いて、リンパ管及びリンパ節に同時にX線造影剤を投与しながら、リンパ管及びリンパ節が表示されている(直接的なリンパ造影法)。このような処置は、患者にとって非常に苦痛を伴い、副作用を生じることも屡々である。
【0003】
リンパ状組織の表示のために、X線診断の代わりに磁気共鳴トモグラフィを使用してもよい。この技術は、基本的に、X線技術と同様に、マルチプラナーのスライスに沿った検査方法(multiplanaren Schichtfuehrung)及び高い軟部組織間コントラストに基づくリンパ管及びリンパ節の画像形成に良好に適している。”Interstitial MR Lymphography with a Conventional Extracellular Gadolinium-based Agent:Assessment in Rabbits”; S.G.Ruehm,C.Corot,J.F.Debatin;Radiology;2001;218:664-669 には、リンパ系を表示するために、ガドテラート−メグルミンを家兔に皮下注射することが示されている。
【0004】
実験的な研究では、新式の造影剤を用いて、リンパ系での転移と、健康なリンパ組織とを良好に区別することができることを証明することができた。
【0005】
使用された造影剤に依存して、以下の欠点が分かる:
(a)造影剤が間質に投与された場合、リンパ系の一部分の表示しかうまくいかない。
【0006】
(b)実験段階(未認可)の鉄分含有造影剤によると、リンパ節内の撮影は、非常に時間がかかる。つまり、鉄分含有造影剤によるリンパ節内の撮影では、披検患者に、1回は、造影剤を投与するため、もう1回は、検査を実行するために、結局2回来てもらう必要があるからである。しかし、患者に2回も来てもらうのは、日常の臨床現場では実際的ではない。
【0007】
更に、この造影剤を用いると、不利なコントラスト特性が生じ、即ち、ネガティブなコントラスト(ターゲット器官内での信号低下)及び磁化率(磁気感受率)アーチファクトを生じる。
【0008】
例えば、デキストランで被覆された非常に小さな超常磁性体酸化鉄(USPIO)粒子を使用することができる。この粒子は、機能性リンパ節組織内のファージ内に蓄積されるが、食菌作用中は転移性組織内に蓄積されない。この造影剤が、注射後約24−48時間後初めて、リンパ節内に富化する最大値に達する。ターゲット構造は暗く表示される。と言うのは、この物質は、陰性造影剤として、スピン−スピン緩和時間T及び殊にTを、その磁化率(磁気感受率)効果によって明らかに小さくするからである。
【0009】
(c)リンパ栄養造影剤を全身に投与した場合、そこに調整される長い血中(無侵襲造影剤)滞在時間によって、通常、血管の直ぐ横に位置しているリンパ節を画定するのが非常に困難となってしまう。この造影剤の例は:”Magnetic Resonance in Medicine”;P.A.Rinck;4.Auflage;Blackwell Wissenschafts-Verlag,Berlin,2001 に以下のように記載されている。
【0010】
”Auch die Darstellung arterioskerotischer Ablagerungen in der Gefaesswand,sondern sogenannter Plaques,ist von besonderem Interesse.Da die meist intravasalen Kontrastmittel einen Signalanstieg im Inneren der Blutgefaesse bewirken,ist es direkt nach der Verabreichung der Kontrastmittel nahezu unmoeglich,einen Plaque in der Gefaesswand abzugrenzen.Die arteriosklerotischen Ablagerungen sind von den Blutgefaessen unmittelbar nach der Verabreichung in das Blutsystem nur sehr schwer unterscheidbar.Daher ist es wie zur Darstellung von Lymphknoten erforderlich,zwischen Gabe des Kontrastmittels und Darstellung mit einer Bildgebungstechnik eine lange Wartezeit verstreichen zu lassen.Zur Darstellung der Plaques koennen spezielle Kontrastmittel eingesetzt werden.Um die Plaques vom Inneren des Blutgefaesses zu differenzieren,kann ausgenutzt werden,dass das Kontrastmittel in den Plaques laenger verbleibt als im Blutstrom,so dass die Plaques nach einer Wartezeit von etwa 12-48 h noch signalverstaerkt,das Blut jedoch wieder signalaermer dargestellt werden.Wie fuer die Lymphographie ist es fuer die Darstellung der Plaques im klinischen Alltag aber oft nicht vertretbar,eine derart lange Wartezeit zwischen Verabreichung und Aufnahme einzuhalten,da ein Patient dann zweimal zur Untersuchung einbestellt werden muesste.”(「 血管壁内の動脈硬化性の沈着物、所謂プラークの表示も、特に関心がある。たいていの無侵襲造影剤は、血管内部で信号を増強するように作用するので、造影剤の投与直後は、血管壁内のプラークを画定するのは殆ど不可能である。動脈硬化性の沈着物は、血液系内に投与した直後は、血管と区別するのが極めて困難である。従って、リンパ節を表示する場合と同様に、造影剤の投与と、画像形成技術を用いた表示との間に、長い待機時間を経過する必要がある。プラークの表示のためには、特殊な造影剤を使ってもよい。プラークを血管内部から区別するためには、プラーク内の造影剤が血流内よりも長く残留するように利用され、その結果、プラークは、待機時間、約12−48時間後未だ信号を増強するが、血液は、再度、弱い信号でしか表示されない。リンパ造影法の場合のように、日常の臨床現場でプラークを表示するためには、投与と撮影との間に、そのような長い待機時間を保持するのは支持できないことが屡々ある。と言うのは、その際、検査のために2回患者に来てもらう必要があるからである。」)
【0011】
核磁気共鳴実験を用いた、体部、殊に、人体又は動物の体の検査の場合、所謂スピン−エコーシーケンスが、90°−180°励起を用いて達成され、又は、この励起の代わりに、又は、この励起に対して付加的に、測定可能な信号系列が、グラジエントパルス系列(グラジエントエコー法)を用いても達成することができる。90°高周波パルスによると、この場合、先ず、グラジエントパルスは、例えば、x方向にかけられる。その後、グラジエントパルスは、x方向に、即ち、反転グラジエント極性で印加される。そうすることによって、先ずディフェージングされたスピンが、測定可能な信号となるようにリフォーカシングされ、この測定可能な信号は、ωで回転する座標系で総和ベクトルとして表示することができる。
【0012】
体部内の検査すべき撮像領域(FOV:field−of−view)内での核スピンの局所分解表示のために、核スピンを個別空間要素に対応付けることができる必要がある。このために、ラーモア周波数ω(χ、t)が磁場強度B(χ、t)に依存するという効果が利用される。スライス走査では、z方向での90°パルスの間、グラジエントパルスの形式で傾斜磁場を用いる際、磁場強度Bがちょうどラーモア周波数ωに相応する薄い(”slice”)だけが励起される。共振条件下のスライス内にある核だけが励起されるようにすることによって、例えば、z方向に核を簡単に配列することができる。x方向及びy方向での局所分解能も達成するため、90°パルスを用いた後、x方向乃至y方向に沿って別のグラジエントパルスがかけられ:y方向には、グラジエントスイッチングが90°パルスに続いて挿入される(”phase”)。y方向での位置情報は、このよう一時的にスイッチングされるグラジエントによって生じる(位相エンコーディング)、歳差運動する核スピンの位相シフト内に含まれている。位置情報は、応答信号からフーリエ変換(FT)解析によってアクセスされる。y方向に種々異なる位相シフトを達成するため、及び、そのような核スピンの明瞭な位置情報を、この空間方向内で得るために、グラジエントスイッチングは、相次いでインクリメントに増減する順次連続するパルスシーケンス内に挿入され、その際、フェーズ(phase)グラジエントは、グラジエントの勾配により2つの最大値+Gと−Gとの間で変化される。同様に、x方向にも、x方向での核スピンの局所分解能についての所要の情報を含む第1のグラジエントスイッチングが挿入される(”read”)。その際、エコー信号の形成のために、第2のリードグラジエントスイッチングが種々異なる極性で第1のリードグラジエントスイッチングに挿入され、この第2のリードグラジエントスイッチングにより、第1のリードグラジエントスイッチングに基づくx−y面でのスピンのディフェージング後、第2のパルスのスイッチングに基づいて核スピンがリフォーカシングされ、その結果、応答信号が形成される。x方向での位置に依存するリードグラジエントスイッチングによって、リフォーカシング中領域B±ΔB内に種々異なる磁場が形成されるので、種々異なる位置から生じる信号を、種々異なる周波数を用いて領域ω±Δω内で分離することができる(周波数エンコーディング)。位置表示のために、更に、FT解析が使用される。
【0013】
核スピンをRFパルスで励起し、90°より小さな、ネット(正味)磁化の傾きにすること(フリップ角α<90°)によって、測定を速くすることができる。
【0014】
個別スライスは、検査すべき体部内で前述の2D−FTで相次いで検査されるが、検査すべき体部を、唯一のパルスシーケンスでスライスなしに3次元画像を形成することもできる(3D−FT):このために、前述のパルスシーケンスが、フェーズグラジエントパルス及びリード(readout)グラジエントパルスのために使用される。RFパルス中、スライス(slice)グラジエントパルスに、付加的に、後続の反転極性のスライスグラジエントパルスが続き、その際、第2のスライスグラジエントパルスは、順次連続するパルスシーケンスでインクリメントに2つの最大値+Gと−Gとの間で増減される。
【0015】
血管の表示のために(アンギオグラフィ)、種々の技術が利用されており、一方では、血管からの信号を撮影シーケンス内で抑制する点にあり、他方では、フローコンペンセーション、即ち、動く核スピン(信号坦体)をディフェージングせずに撮影する点にある。その際、血管を、周囲の静止した組織から区別するために、血管と周囲の組織との間の良好なコントラストを成す2つの撮影間の差が形成され、その際、血管は明るく表示される。この方法に対比する方法は、”Black Blood Angiography”; W.Lin,M.Haacke,R.R.Edelman; ”Magnetic Angiography, Concepts and Applications”(Hrsg.:E.J.Potchen,E.M.Haacke,J.E.Siebert,A.Gottschalk), Mosby,St.Lois(1993) に記載されている。
【0016】
臨床MR画像形成の初めから、動く信号坦体のMR信号を抑制することができる方法が使用されている。以下、動くMR信号坦体の抑制のための主要な方法について説明する:
a)古典的なMR測定シーケンスであるスピンエコーシーケンスでは既に、動くスピンが内的に抑制されている。と言うのは、90°励起パルスと180°リフォーカシングパルスとの間で測定スライスを離れるスピンは、MR信号に寄与しないからである。この作動時間効果は、90°パルス及び180°パルスでの、古典的なスピンエコーシーケンスでは、90°パルスと180°パルスとの間の時間間隔の長さの倍に長くしたエコー時間TEにより、又は、スライス厚を薄くすることにより一層強くなる。しかし、この技術は、180°パルスを用いないグラジエントエコーシーケンスには適していない。従って、この効果は、高速撮影時間用には利用することができない:実際的な測定時間内に、3次元容積体を、スピンエコーシーケンスを用いて表示するのは、技術的に、何れにせよ殆ど不可能であるが、高速グラジエントエコー方法を用いると、特に、造影剤を用いて性能強化された磁気共鳴アンギオグラフィを用いと、数秒で達成できる。
【0017】
b)血管信号を抑制するための従来技術の磁気共鳴方法では、血管の信号は、画像形成スライスの外側で飽和され、その際、例えば、測定スライスに対して平行に所謂サチュレーションスライスが位置付けられる。ここでは、180°パルスは信号読み出し時に使用されないので、この飽和方法は、磁気共鳴技術の殆どどんな任意の画像形成技術とも組み合わせることができる。基本的には、この方法を用いると、血液は、他の組織に対して非常に長いT緩和時間を有しており、飽和に直ぐ続く信号読み出しの際に測定スライス内には、飽和した血液しか存在せず、この飽和した血液は、殆ど信号を供給しない。この方法の変形では、磁化は、測定スライスの外側でのみ反転される。その後、血液内の信号坦体の長手方向磁化が(z軸に沿って)、T緩和に基づいてゼロ通過を有する迄待機される。測定スライス内に流入する、血液内の信号坦体は、MR信号に寄与しない。
【0018】
c)グラジエントエコー画像では、血管狭窄部から所定の渦流ゾーン(ジェット)内に高速で流れる血液は、人工的な信号低減を生じることが既に比較的早期に観察されていた。この効果は、動くスピンは、MR画像形成での位置エンコーディングのために必要なグラジエントの作用下で、スピンの動く速度に依存する付加的な位相を蓄積するということに基づいている。ジェット中、1つの画素(ピクセル)内に種々の多数の位相が生じ、その結果、MR信号の位相コヒーレントな加算により、MR画像内の総和信号が低減する。この現象は、intravoxel incoherent motion(イントラボクセル・インコヒーレント・モーション:ランダムな方向への動き)と呼ばれ、拡散強調MR画像形成からも公知である。この効果は、画像形成するためにグラジエントを挿入するようにして更に強化することができ、その際、位置エンコーディングには作用を及ぼさないままであるが、速度依存の位相が最大となるようにグラジエントが挿入される。この技術は、Black Blood Angiography(ブラック・ブラッド・アンギオグラフィ)と呼ばれる。この技術は、その付加的な信号抑制を利用するために、スピンエコーシーケンスと一緒に実施される。反対に、この効果は、血管の表示のために利用してもよく、その際、2つのデータセットが、グラジエントスイッチングなしに、及び、付加的なグラジエントスイッチングを用いて相互に減算される(Rephase/Dephase Imaging:リフェーズ/ディフェーズイメージング)。
【0019】
血管の表示のために、臨床現場では、組み込まれたディフェージンググラジエントによって更に効率的にされるスピンエコー方法が使用される(Black Blood Angiography)か、又は、主として周辺動脈のポジティブな表示のために使用されるリフェーズ/ディフェーズ方法が使用される。両方の技術とも、これまで造影剤と組み合わせて用いられてはいない。寧ろ、ここでは、動く血液と血管表示との内的なコントラストが作用する。つまり、リフェーズ/ディフェーズ方法では、両データセットの減算の際、十分に新鮮な血液が測定スライス内に流入した場合に限って、血管が鮮明に現れるということである。
【0020】
何れにせよ、例えば、血管内の動脈硬化性の沈着物の表示用に使用されるBlack Blood Angiographyを用いる検査も知られている。つまり、”Extracranial Carotid Arteries: Evaluation with ”Black Blood MR Angiography”; R.R.Edelman,H.P.Mattle,B.Wallner,R.Bajakian,J.Kleefield,B.Kent,J.J.Skillman,J.B.Mendel,D.J.Aktinson; Radiology; 1990; 177:45-50 に、頸動脈の病変を表示するための、Bright Blood Angiographyと、Black Blood Angiographyとの比較対照について記載されている。Black Blood Angiographyが、Bright Blood Angiographyに較べて有する利点は、機能障害を非常に精確に表示することができるという点にある。Black Blood Angiographyでの障害の表示のためには、2Dスピンエコー方法が使用される。と言うのは、グラジエントエコーシーケンスは、検査スライスが飽和されるにも拘わらず、動く核スピンを抑制するのには適していないからである。動く核スピンを抑制するためには、エコー時間TEを長くする必要があった。しかし、エコー時間TEを長くすることによって、血管構造の解像度が低減し、血管と筋肉組織とのコントラストが小さくなってしまう。
【0021】
従来技術で公知の、血管の抑制用の方法では、基本的に、血管の表示を回避することは、血液流中に造影剤がない場合に達成される。しかし、緩和時間を短縮する造影剤が投与されると、リンパ管内部の病理学的構造体及び血管内の動脈硬化性の沈着物を直ぐに識別することは、殊に、これが比較的小さい場合には、人体又は動物の体部内の表示されるスライス内では殆ど不可能である。
【0022】
従って、本発明の課題は、特に小さな病理学的構造体を問題なく識別して表示することができる手段を提供することにある。特に、人体又は動物の体部内の血管に隣接している、動かない構造体を高いコントラストで、重畳せずに、且つ、明瞭に表示することができる必要がある。殊に、リンパ組織並びにプラーク内での転移を、簡単且つ高速で識別して表示可能にする必要がある。
【0023】
この課題は、請求項1記載の画像形成装置、及び、請求項9記載のシステムによって解決される。本発明の有利な実施例は、従属請求項に記載されている。
【0024】
以下の説明、及び、請求項に、磁場グラジエントエコーパルスシーケンスが所定の空間方向にスイッチングされるということが記載されている場合、このパルスシーケンスが、1つ又は2つの任意の空間方向又は3つの空間方向全てでスイッチングすることができるということである。同様に、磁化が、流動媒体によって1つの空間方向で減衰され得るという記載は、磁化が1つ又は2つの任意の空間方向で、又は、3つの全ての空間方向で減衰可能であるということである。
【0025】
リンパ系並びに血管内の部分的に微視的に小さな寸法の病理学的構造体を、磁気共鳴トモグラフィを用いて表示するためには、検査すべき体部によって摂取される磁気共鳴(MR)造影剤が使用される。画像形成のために、体内の選択された撮像領域内の原子核の磁気共鳴特性の局所分解画像形成用のデータを得るのに核スピントモグラフィ装置が使用される。装置は、このために、当該装置によって体に、高周波パルス及び磁場グラジエントエコーパルスシーケンスが印加可能であり、当該高周波パルス及び磁場グラジエントエコーパルスシーケンスにより体内に磁化が形成されるように構成及びプログラミングされている。少なくとも1つの空間方向に流れる媒体、殊に、血液内にある信号坦体(原子核、特に、H核のスピン)の磁化は、この流動媒体内の原子核のスピンをディフェージングすることによって減衰され、その結果、流動媒体の直ぐ近くにある構造体が微視的に小さい場合でも、そうすることによって血液は暗く表示されるので、この流動媒体の直ぐ近くにある構造体の表示が著しく簡単になる。MR造影剤を投与することによって初めて、検査すべき微細な構造体を、ターゲットを絞って見つけ、確実に識別することができるようになる。
【0026】
本発明の構成によって、例えば、人体又は動物の体部内の所定領域、又は、体全部のリンパ節を、高い空間分解能で表示することができる。と言うのは、一方では、動く信号坦体を血管から抑制し、他方では、ターゲットの構造体を造影剤によって強く表示し、その結果、このターゲットの構造体を特に良好に際立たせることができるからである。血管に起因する信号強度は、本発明によると、選択的に抑制され、その結果、例えば、大きな血管の直ぐ近くのリンパ節も表示して、血管と区別できるように画定することができる。同様のことが、血管壁内の、動脈硬化性の沈着物、所謂プラークにも該当する。
【0027】
それに対して、動く信号坦体の抑制のために開発された従来技術の飽和方法は、リンパ節及びプラークの画定のためには使用できない。と言うのは、造影剤がある状況下で飽和された磁化は、数ミリ秒以内に再度高まり、後続の信号読み出しの際に利用されるからである。この効果は、造影剤濃度に依存する顕著な(massive)T短縮によって生じる。これと異なり、造影剤がある状況下でグラジエントパルスシーケンスを使用することによって、核スピンの本発明によるディフェージングは、簡単に達成可能であり、従って、このことは優れている。Rephase/Dephase Imaging(リフェーズ/ディフェーズイメージング)方法に較べて、本発明のシステムは、システムのRephase(リフェーズ)部分をなくすことができるから、約ファクタ2だけ高速である。
【0028】
殊に、リンパ組織及び血管内の動脈硬化性の沈着物を表示するために、場合によっては有利に各々の用途に適合されたMR造影剤が使用される。この造影剤は、有利には以下の条件を充足する必要がある:
a)造影剤は、選択されたシーケンスと共に、MR画像内で信号を強化する必要がある。
【0029】
b)造影剤は、ターゲット構造体、即ち、リンパ組織乃至動脈硬化性の沈着物内に富化する必要がある。このために、当然、造影剤は、リンパ節の表示のためにはリンパに達し、プラークの表示のためにはプラークに達する必要がある。
【0030】
c)造影剤は、血管系内にも富化する必要がある。
【0031】
リンパ系の転移の検出のために、例えば、超常磁性体酸化鉄(USPIO)の形での前述の酸化鉄微粒子が適している。何れにせよ、コーティングされた酸化鉄微粒子は、リンパ節内に富化するために比較的長い時間を必要とする。更に、この造影剤は、ネガティブなコントラストのために、リンパ管の表示には適していない。
【0032】
特に、とりわけガドリニウム含有化合物が、有利に使用可能である。リンパ造影法のためには、ポリマー化合物、例えばL.Harika,R.Weissleder,K.Poss,C.Zimmer,M.I.Papisov,T.J.Brady:”MR Lymphography with a Lymphotropic T1-Type MR Contrast Agent: Gd-DTPA-PGM”; MRM;1995;33:88-92 及び、G.Staatz,C.C.Nolte-Ernsting,A.Bucker 他:”Interstitial T1-Weighted MR Lymphography with Use of the Dendritic Contrast Agent Gadomer-17 in pings”;Rofo.Fortscher.Geb.Roentgenstr.Neuen Bildgeb.Verfahr.;2001;173:1131-1136 に記載されている化合物、並びに、親油性化合物、凝集体又はミセルを形成する、例えば、B.Misselwitz,J.Platzek,B.Raduechel,J.J.Oellinger,H.J.Weinmann :”Gadofluorine 8:Initial Experience with a New Contrast Medium for Interstitial MR Lymphography”; Magma;1999;8:190-195 及び、G.Staatz,C.C.Nolte-Ernsting,G.B.Adam他:”Interstitial T1-Weighted MR Lymphography:Liphilic Perfluorinated Gadolinium Chelates in Pigs”: Radiology;2001;220:129-134 に記載された化合物が使用可能である。
【0033】
リンパ組織内に投与された後非常に短い時間内に富化されるような化合物は、特に適している。この際、有利には、極性基、例えば、糖残基、並びに、フッ素化側鎖を備えたガドリニウム錯体(大きさ4−6nmのミセルに凝集されている)が用いられている。その種の化合物は、例えば、世界知的所有権機関特許公開第02/14309号公報に記載されている。この造影剤を用いると、造影剤投与後数分〜1時間以内にMR検査を実施することができる。動脈硬化性沈着物(プラーク)の表示のためにも、この特殊なガドリニウム化合物を使用することができる。
【0034】
更に、他の常磁性体金属イオンの化合物、例えば、Mn(II)、Dy(III)及びFe(III)の化合物を使用してもよい。Gd(III)−、Mn(II)−及びFe(III)化合物が、陽性造影剤として作用する。と言うのは、これらの造影剤は、縦緩和時間Tを短縮するからであり、その結果、造影剤が摂取された部分が、MR画像内で明るく表示されるからである。それに対して、Dy(III)化合物は、酸化鉄微粒子と同様に陰性造影剤として作用する。と言うのは、Dy(III)化合物は、その透磁率効果によって、T及び殊にTが低下し、その結果、この造影剤が摂取された部分は、暗く見える。その限りで、最後に示した化合物は、Mn(II)−及びFe(III)化合物の様に良好に適してはいない。
【0035】
前述の造影剤の代わりに、別のタイプの造影剤を用いてもよく、例えば、前述の金属イオン同様に常磁性体である酸化窒素を用いてもよい。更に、例えば、窒化物又はペルフルオルプロパンを充填することができるガス充填マイクロバブル(Mikrblaeschen)も提案されている。そのような系は、例えば、米国特許第6315981号明細書に記載されている。
【0036】
更に、常磁性体又は超常磁性体物質の代わりに、Hを含まずに、別の信号坦体、例えば、フッ素炭化水素化合物を含む反磁性体化合物を造影剤として使用してもよい。この場合、H−MRトモグラフィの代わりに、19F−MRトモグラフィが実行される。と言うのは、19F原子核も1/2の核スピンを有しており、その際、19Fの磁気回転比は、Hの磁気回転比とは明らかに異なっており、その結果、この原子核は、MR画像中画像コントラストを形成する。この際、ターゲット構造体内に摂取されるような化合物を用いる必要がある。この化合物が、血液中に長い滞在時間を有している場合、ターゲット構造体は、本発明により、血管がこの構造体の検出を妨害せずに、選択的に可視にすることができる。
【0037】
MR造影剤は、人体又は動物の体部に、殊に静脈内に投与することができる。しかし、造影剤は、原理的に動脈内、経皮、殊に、皮下、更に、経口、腹腔内、筋内、又は、他のやり方で投与することができる。
【0038】
流動媒体内のスピンの磁気共鳴信号の減衰のために、本発明によると、検査すべき体内の撮像領域内に含まれている原子核のスピンが、動いている間ディフェージングされるという効果が利用されているが、この効果は、動いていないスピンには該当しない。これは、グラジエントパルスを適切にスイッチングすることによって達成可能である。どのような条件下で、信号が減衰されるのかを求めるために、位置及び時間に依存し、且つ、グラジエント、時間依存の傾斜磁場強度G(t)及び高周波パルスを用いて原子核を励起した後時間t内の位置χの関数である、以下の各々の核スピンの位相の式に基づいて説明する:
【0039】
【数1】

【0040】
定数γは、磁気回転比であり、磁気共鳴画像形成で主として使われるプロトンの場合、実際のユニットでは、2π・42.577MHz/Tである。
【0041】
グラジエントがスイッチオンされている間、グラジエントの空間方向に対して平行な運動成分で、励起された原子核が動くと、原子核が時点tで丁度位置している位置χは、同様に時間依存である。従って、式[1]は、以下のように変形される:
【0042】
【数2】

【0043】
そのことから、テイラー級数に展開して、高次項を無視すると、以下の関係式が得られる:
【0044】
【数3】

【0045】
χは、グラジエントパルスシーケンスの間動く時の原子核の初期位置であり、νは、流動媒体の一定速度である。γを乗算した時間積分の短縮記号として、M及びMを導入すると、その結果、以下の関係式が得られる:
φ(t)=χ・M+ν・M [2a]
は、0次のグラジエントモーメントとして分かっており、Mは、ファーストオーダーグラジエントモーメントとして知られている。式[2a]で無視されているi次の時間依存のグラジエントモーメントM(t)は、以下のように定義されている:
【0046】
【数4】

【0047】
(0次のグラジエントモーメント)が0であるグラジエントスイッチングは、グラジエントスイッチングによって発生されるエコー信号の形成のために必要である。と言うのは、核スピンは、この条件下でリフェージングされるからである。M(ファーストオーダーグラジエントモーメント)が0である従来技術のグラジエントスイッチングは、フローコンペンセーションスイッチングとも呼ばれ、つまり、ここでは、一定速度で流動媒体中を動く核スピンは、この移動によって生じる付加的なディフェージングを生じず、その結果、この核スピンは、画像形成時に明るく見える。グラジエントモーメントMの定義から、短時間に低次のモーメントしか信号フェージングに寄与せず、高次モーメントは、tでスケーリングされ、従って、小さいままである。
【0048】
前述の実施例から、動く核スピンからの信号を抑制するために、Mは、できる限り大きくする必要がある。と言うのは、この場合、ディフェージングが特に大きいからである。つまり、少なくとも1つの空間方向に流れる、体内の媒体の磁気共鳴信号は、フローディフェージンググラジエントパルスによって、ファーストオーダーグラジエントモーメントM(t)を、この空間方向内で以下の関係式:
【0049】
【数5】

により最大にすることができ、当該関係式において、
γは、原子核の磁気回転比、
G(t’)は、前記空間方向での時間依存の傾斜磁場強度、
tは、原子核の励起用の高周波パルスの入射から経過した時間期間
である。
【0050】
式[3]によるi>1の高次のグラジエントモーメントを考慮することによって、一定速度を有するのみならず、グラジエントスイッチング中、加速又は遅延されるような流動媒体のディフェージングも達成することができる。
【0051】
本発明の有利な実施例では、少なくとも1つの空間方向に流れる、体内の媒体の磁化を、スピンのディフェージングによって、当該空間方向でのi次グラジエントモーメントM(t)、特に、1次グラジエントモーメントM(t)が最大化可能であるようにして減弱可能である。
【0052】
例えば、1つの画像要素内に原子核が0〜vmaxの速度間隔内で同じ頻度で存在し、且つ、それに属する核スピンが同じ信号強度で結像される際、Mによって生じる位相が正確に2π(即ち、360°)である場合に、この核スピンの総和信号は減衰することができ、その結果、以下の関係式が成立する:
2π=νmax・M [4]
その際、νmaxは、ディフェージングが有効に達せられなくなる迄の、検査すべき体内の流動媒体の最大速度である。
【0053】
νmaxより大きな速度でも、総和信号は非常に小さいままであり、その結果、νmaxは、限界速度として解釈することができ、この限界速度の下側では、流動媒体中の信号抑制は有効に機能しない。つまり、核スピンがνmaxよりも小さな速度で動く場合、動く核スピンの信号は得られ続けて、抑制されないということである。従って、本発明を有効に使用することができるためには、検査すべき血管内での典型的な速度が分かるとよい。血液は、静脈構造内を極めて緩慢に動くので、この構造は、一般的に良好に検出することができる。と言うのは、そこで得られる核スピンはディフェージングされず、従って、抑制されないからである。しかし、この点は、リンパ組織及びプラークの表示のためには不利である。つまり、リンパ組織及びプラークは動脈の隣りに位置しているからである。静脈流も抑制するためには、もっと強い、及び/又は、もっと長いグラジエントスイッチングを使用する必要がある。
【0054】
一般的に、所定のグラジエントスイッチングが、非振動のファーストオーダーグラジエントモーメントMを有している場合、その結果、グラジエントスイッチングは、フローコンペンセーションされない。そのようなグラジエントスイッチングは、通常、移動していない信号坦体の撮影のためには使用されない。何れにせよ、緩慢な流れの抑制のためには、典型的な画像形成グラジエントによって達成されるグラジエントモーメントが必要となる。
【0055】
フローディフェージングのために供給される特別なグラジエントスイッチングを使用することによって、本発明の実施例では、フローディフェージンググラジエントパルス内に挿入される、従来技術の2D又は3Dグラジエントエコーパルスシーケンスが使用される。
【0056】
画像形成のために使用される既存のグラジエントエコーパルスシーケンス内のグラジエントを、例えば、フローコンペンセーショングラジエントエコーパルスシーケンス内で、大きな1次グラジエントモーメントMが形成されるように変える場合、既存の画像形成グラジエントエコーパルスシーケンスに対して付加的に、新規シーケンスであるフローディフェージンググラジエントパルスシーケンスを供給することができ、このフローディフェージンググラジエントパルスシーケンスは、式[4]による条件を充足し、従って、Mを最大値にすることができる。この条件は、磁気共鳴信号の空間エンコーディングが影響を受けないようにし続けるために必要であり、その結果、以下の関係式が充足される:
【0057】
【数6】

【0058】
この条件は、+Mがグラジエント時間曲線下の面積を示すようにして明瞭に解釈することができる。この条件を充足する簡単な手段は、バイポーラグラジエントパルス、即ち、異なった極性の2つのグラジエントを使用することにあり、その際、バイポーラグラジエントパルスの各々の強度及び長さは、種々異なっていてよいが、パルスは、殊に同じ強さ及び長さにするとよい。
【0059】
例えば、核スピンは、1つの空間方向内で時間積分Aのグラジエントパルスのスイッチングによって、所定の値だけディフェージングすることができる。同じ空間方向内で、時間積分Aの第2のグラジエントパルスを後からスイッチングすることによって、動かない信号坦体を再度完全にリフェージングすることができるが、動く信号坦体はリフェージングできない。
【0060】
フローコンペンセーショングラジエントエコーパルスシーケンスにフローディフェージンググラジエントパルスが挿入される変形実施例に対して択一的に、本発明の別の実施例では、フローコンペンセーションされないグラジエントエコーパルスシーケンスに基づくようにしてもよい。別のパルスシーケンスの挿入後、何れにせよ、上述の条件を充足する必要があり、そうすることによって、M=0であり(式[5])、式[4]のMが最大である。
【0061】
リンパ節内の微視的に小さな構造体、又は、動脈硬化性の沈着物の表示を改善するために造影剤を用いる場合、グラジエントモーメント用の選択されたパルス時間は非常に小さくする必要があり、と言うのは、緩和時間は、造影剤を用いるために非常に短いからである。何れにせよ、短いグラジエントパルスを用いる場合、相応に高い傾斜磁場強度を、使用される短い時間間隔でスイッチングすることができる。従って、動き感応性のグラジエントパルスの実行時には、更に以下の技術的周辺条件を注目することができる:グラジエントパルスの形成のために、通電コイルから構成されるグラジエントシステムが使用される。このコイルは、電流増幅器によって駆動される。この増幅器は、最終的な電力だけを給電することができ、その結果、傾斜磁場強度の値は、実際には制限される。今日では、傾斜磁場強度は、臨床磁気共鳴トモグラフィでは、例えば、30−40mT/mに制限される:
|G(t)|≦Gmax [6a]
しかし、この値は、今後もっと高くすることができる。
【0062】
グラジエントシステムのコイル巻線は、所定のインダクタンスを示すので、レンツの法則により、このことから、最大傾斜磁場強度にスイッチングするために、最小時間が必要となる。この最小時間間隔は、当然、最大傾斜磁場強度と同様に、各々の技術手段に依存しており、その結果、所要時間の低減は、技術進歩に依存している。上昇時間は、たいてい、上昇率Smax(スリューレート:slew rate)の形式で与えられる:
|S(t)|=|dG(t)/dt|≦Gmax/tmin=smax [6b]
前述の式[6a]及び[6b]の条件は、例えば、フローディフェージンググラジエントパルスシーケンスが長いパルスと一緒に使用されるようにして、簡単に実施することができる。例えば、バイポーラグラジエントパルス用のファーストオーダーグラジエントモーメントMは、
(t;Gbipolar,tramp,tplatteau,tsep)=
γ・Gbipolar・(tramp+tplatteau)・
(2tramp+tplatteau+tsep) [7]
その際、
bipolarは、最大傾斜磁場強度、
rampは、傾斜磁場のスイッチオン/スイッチオフ時の上昇/下降時間
platteauは、Gbipolarが達成されている間の時間間隔、及び
sepは、2つのグラジエントパルス間の時間間隔
である。このパラメータの詳細な説明のために、図1を参照する。
【0063】
本発明の造影剤支援検査のためには、グラジエントパルスをフローディフェージング用にできる限り短く保持することができる。殊に、フローディフェージング用に付加的に使用されるグラジエントパルスは、できる限り短くする必要がある。と言うのは、造影剤によって生じる縦緩和時間Tの短縮により、不可避的に横緩和時間Tも短縮される。この条件下で、長いグラジエントパルスがスイッチングされると、信号読み出し用のエコー時間は長くなり、その結果、このシーケンス内で、加速されたT減衰(Zerfall)によって、動く信号坦体でも静止した信号坦体でも強い信号損失が生じる。
【0064】
本発明の有利な実施例では、グラジエントパルスシーケンスは、3つの(デカルト座標系で相互に直交している)空間方向にフローディフェージンググラジエントパルスを有している。その際、各々の空間方向内でのグラジエントエコーパルスシーケンスは、フローディフェージンググラジエントパルスを画像形成グラジエントエコーパルスシーケンス内に挿入することによって形成される。
【0065】
当然、フローディフェージンググラジエントパルスを、1つの空間方向でのみ、又は、2つの空間方向でのみ、画像形成グラジエントエコーパルスシーケンス内に挿入してもよい。これは、例えば、流動媒体が、フローディフェージンググラジエントパルスが挿入されない空間方向内で減衰されない場合には有利に行うことができる。そこで、例えば、z方向でのフローディフェージンググラジエントパルスがスイッチングされるようにして、大動脈を抑制することに注目してもよい。
【0066】
=0及びMができる限り最大である限りで、グラジエントエコーパルスシーケンスを、任意のやり方で選択するとよい。と言うのは、このグラジエントパルスの正確な形は、本発明の実施にとってはどうでもよいからである。何れにせよ、シーケンスのエコー時間を最小にするために、付加的なフローディフェージンググラジエントパルスを挿入する時間コストは短くする必要がある。このことは、造影剤を富化された、体内の全ての構造体は、短縮されたT減衰を有していて、長いエコー時間では、著しい信号損失を生じるから、不可欠である。
【0067】
基本的には、本発明は、2つの実施例で実行することができる。このために、フローディフェージングの異なる2つのバリアントが使われる。両バリアント共、条件を充足するグラジエントエコーパルスシーケンスがスイッチングされ、それにより、M=0(式[5])及び式[4]によるMが最大である。付加的に、式[6a]及び[6b]に定式化された副次条件を維持することができる:
【0068】
1.第1の実施の際、バイポーラグラジエントパルスは、周波数及び位相エンコーディング方向で、信号読み出しの前に挿入され、スライス選択方向で、高周波励起の後に、本来の各画像形成グラジエント間に付加的に挿入される(このために、図2a及び2bも参照のこと)。パラメータGbipolar、tramp及びtsepは、例えば、固定して設けることができ、その結果、最小プラトー時間tplatteau=0msの場合、vmaxに対して最大値が得られる。
【0069】
比較的大きなファーストオーダーグラジエントモーメントM(及び、それと共に比較的小さなv)も実現することができるためには、グラジエントエコーパルスシーケンスは、例えば、長くなったエコー時間TE>TEminにより、対称的にプラトー時間tplatteau
platteau=1/2・(TE−TEmin) [8]
により挿入されるようにプログラミングすることができる。従って、式[7]によるファーストオーダーグラジエントモーメントM、及び、速度vmax(この値より上側では、著しい信号抑制が予期される)は、間接的にエコー時間TEに亘って、式[4]により調整される。
【0070】
2.最適化された実施の際には、高周波励起と信号読み出しとの間で使用される所定のパルスシーケンスの全画像形成グラジエントは、ファーストオーダーグラジエントモーメントMの最大化のための付加的なグラジエント寄与が、限界速度vmaxの上側に設定されたファーストオーダーグラジエントモーメントMを実施し、それと同時に元のグラジエント列(Zug)の0次のグラジエントモーメントMを変えない(これに対しては、図1cを参照のこと)。この際、グラジエント列のエコー時間TEを延長する必要があることが屡々ある。何れにせよ、この実行により実施されるエコー列は、常に1.で説明した列よりも常に短い。と言うのは、ここでは、画像形成グラジエントパルス及びフローディフェージンググラジエントパルスは同時に作動するのであって、順次連続して作動することはないからである。式[6a]及び[6b]による所定の周辺条件時に最も短いグラジエントタイミングは、そのようなアプローチで数量的な最適化によって見つけられる。
【0071】
基本的には、比較的短くて弱いグラジエントパルスによりディフェージングすることができる核スピンの大きな限界速度vmaxでの両方法間の差は最も大きく、フローディフェージンググラジエントパルスシーケンスは、低い速度での画像形成グラジエントエコーパルスシーケンスに較べて、グラジエントタイミングに著しく貢献し、その結果、エコー時間は僅かに拡散される。
【0072】
従って、核スピンのディフェージングによる、動く媒体内での信号の抑制用に、基本的には2つの方法が使用され、この方法で、使用すべきグラジエントエコーパルスシーケンスは、少なくとも1つの空間方向内にフローディフェージンググラジエントパルスシーケンスを有しており、その際、グラジエントエコーパルスシーケンスは、各々の空間方向内で、各々のフローディフェージンググラジエントパルスを画像形成グラジエントエコーパルスシーケンス内に挿入することによって形成され、又は、前述の周辺条件により算出される。挿入された、乃至、新たに算出されたシーケンスによって、フローディフェージンググラジエントパルスが作用する各空間方向内で動く核スピンがディフェージングされる。
【0073】
基本的には、画像形成用のデータの読み出しは、任意に構成することができる。有利なパルスシーケンスは、所謂FLASHシーケンス(Fast Low Angle Shot)であり、このFLASHシーケンスでは、励起パルスがフリップ角α<90°、例えば、25°で照射され、グラジエントエコーパルスは、リフォーカシングのために使用される。付加的なグラジエントは、画像形成のため、及び、フローディフェージングのために使われる。データ取得のために必要な時間は、フリップ角α<90°の励起パルスが照射される場合、短縮される。
【0074】
撮影を加速するために、基本的には、マルチパルスシーケンスも使用可能であり、例えば、EPI(echo planar imaging)が使用可能である。このシーケンスでは、励起パルスが1つだけ照射され、順次連続する多数のグラジエントパルスが、局所分解画像形成のためにスイッチングされ、その結果、リフォーカシング信号が、各々リードアウトグラジエントパルスと共に得られる。従って、グラジエントエコーパルスシーケンス内で、例えば、k空間内の列又は全マトリックス用のデータ(フーリエ変換によって、位置エンコーディングされた画像データに変換される前に得られた測定データ)を撮影することができる。EPIは、データが高速でサンプリングされるという観点では有利である。何れにせよ、この場合、殊に、アーチファクトを示す腹部領域内の多数の体領域の撮影時に、変更、例えば、セグメンテッドEPIを必要とするという欠点がある。
【0075】
本発明のメインバリアントでは、データが、点毎に、別個のグラジエントエコーパルスシーケンスで、各点毎に新規な励起パルスが照射されるようにして、撮影される。このやり方は、マルチパルスシーケンスが利用される方法よりも確かに時間コストが高いが、このやり方は、マルチパルスシーケンスの方法よりも著しくロバストである。EPIは、更に、T減衰を加速する造影剤が使用される場合、画像スミア及び信号損失が、比較的長い時間で調整されるという欠点を有している。
【0076】
択一的な本発明のシステムでは、先ず横磁化が形成される画像形成シーケンスを使用してもよく、その際、z方向に配向されたスピンは、先ず少なくとも部分的に90°パルス又はフリップ角α<90°のパルスを照射することによって倒され、それから、スピンは、M=0である動くスピンに対して適切なフローディフェージンググラジエントパルスを用いてディフェージングされ、スピンは、第2の90°パルスによって最後に再度z方向に戻るように倒される。そのようにしてz方向に蓄積された磁化は、そうすることによって付加的なコントラストとしてディフェージングされ、その結果、この磁化は、任意の各画像形成シーケンスを用いて読み出すことができる。この実施例では、FLASHシーケンスに較べて何れにせよ、造影剤によって生じる高速T緩和により、z方向に形成されるコントラストが再度平準化される。
【0077】
更に、付加的に、180°パルスをリフォーカシングのために照射するようにしてもよい。しかし、このやり方には、データ取得が、リフォーカシング用のリードアウトグラジエントを専らスイッチングする場合よりも明らかに長い時間を必要とするという著しい欠点がある。しかも、そうすることによって、被検体内に非常に多くのエネルギも照射される。これにより、検査対象に不利な負荷を掛けることになる。
【0078】
撮影技術を更に加速するために、最大データ量がk空間内のフーリエ変換されるべきデータマトリックス内に記録されないようにして、データ取得を低減してもよい。例えば、一方の実施例では、単にデータ量の半分だけ記録し、他方の半分は0で充填されている。他方の実施例では、列の単に80%だけがk空間内に記録される。残りの部分には、ここでも0が充填される。そのような全ての場合に、結像の分解能が制限されるが、しかし、この実施例は、臨床診断の多数の場合に、少なくとも最初のオリエンテーリングの検査にとっては十分である。
【0079】
本発明の装置は、殊に、以下の主要な要件を有している:
スタティックマグネット、殊に、超伝導電磁石、
相互に直交方向に位置している3つの空間方向内にグラジエントパルスを形成するためのグラジエント装置(この装置は、通電コイルによって構成されている)、
高周波信号の形成用の送信装置(ここでは、殊に、RF送信コイルである)、
高周波信号用の受信装置(ここでは、有利には、RF受信コイルである)、
グラジエント装置の制御用の装置及び送信装置(ここでは、増幅器、並びに、プログラミング可能な装置であり、これらの装置を用いて、グラジエントパルスシーケンスを発生することができ、更に、ここでは、プログラミング可能な装置であり、この装置を用いて、送信及び受信コイルを制御することができる)、
評価装置、
及び表示装置を有する。
【0080】
送信装置及び受信装置は、本発明の有利な実施例では、共通の装置によって実施することができる。この場合、付加的に、これらの各装置の制御用に使用されて、送信モードと受信モードとの間でスイッチングする切換スイッチが設けられている。
【0081】
以下、本発明について、図示の実施例を用いて詳細に説明する。その際:
図1:グラジエントエコーパルスシーケンスの略図;
図2a:動くMR信号坦体の抑制用の特別なグラジエントスイッチングなしの2次元MRデータの採取用のフローコンペンセーショングラジエントエコーパルスシーケンスの略図;
図2b:フローディフェージンググラジエントパルス(濃くマーキングした)が挿入された本発明の第1の実施例での2次元MRデータの採取用のグラジエントエコーパルスシーケンスの略図;
図2c:同時に、画像形成用及び動くMR信号坦体の抑制用に使用される新規に算出されたフロー−フローディフェージンググラジエントパルスを有する本発明の第2の実施例での2次元MRデータの採取用のグラジエントエコーパルスシーケンスの略図;
図3:リンパに達するMR造影剤の富化後、コペンハーゲンラットの、1つの空間方向でのフローディフェージングにより3Dグラジエントエコーパルスシーケンスで撮影した個別画像;
図4:全部で3つの空間方向でのフローディフェージンググラジエントスイッチングを行わない場合と、行う場合での、コペンハーゲンラットの、3Dグラジエントエコーパルスシーケンスで撮影した個別画像の比較;
図5:全部で3つの空間方向での動く信号坦体の信号抑制を行わない場合と行う場合との、プラークに達するMR造影剤の富化後12hの、Watanabe家兔 高分解能グラジエントエコーMR画像;
図6:プラークに達するMR造影剤の富化後28hの、図5に示したような高分解能グラジエントエコーMR画像
を示す。
【0082】
図1には、先ず、時間tに亘ってG(t)(傾斜磁場強度)を記載してパラメータGbipolar,tramp,tplateau,tsepを概観するためのグラジエントエコーパルスシーケンスの略示が示されている。個別パラメータの意味は、上述の個所で詳細に説明した。
【0083】
図2には、画像形成用のグラジエントエコーパルスシーケンスが示されている。
【0084】
図2aには、先ず、動く核スピンのディフェージング用のフローディフェージンググラジエントパルスを有しておらず、フローコンペンセーションでのシーケンス、即ち、M及びMが各々0であるシーケンスを有しているシーケンスが示されている。図では、時間に亘って、3つの空間方向でのグラジエントスイッチングが繰り返し行われている。
【0085】
上側の図(”Gslice”)には、z方向でのスライス選択用のグラジエントパルスシーケンスが示されている。励起RFパルスは、第1のグラジエントパルスの間照射される。このスライス(slice)グラジエントパルスによって、所定のスライスが選択される。つまり、選択された個所でのみ、相応の共鳴条件が達成されるからである。その後に続くz方向での、反転極性のパルス乃至同じ極性のパルスは、第1のパルスによって生じたディフォーカシングの新規リフォーカシングのため、及び、MもMも0となる条件の調整のために使われる。
【0086】
下側の図(”Gphase”)には、核スピンの位相エンコーディング用のパルスが略示されている。図示のパルスシーケンスの各繰り返し時に、このフェーズ(phase)グラジエントパルスの大きさ及び極性がインクリメントに2つの極値−Gphaseと+Gphaseとの間で変化される。
【0087】
まん中の図(”Gread”)には、リードアウト(readout)グラジエントパルスが示されている。このパルスシーケンスは、スライスグラジエントパルスの場合と同様に、M=0及びM=0の条件が充足されるように算出される。リードアウトグラジエントパルスによって、核スピンが、その都度の位置に依存して周波数エンコーディングされる。最後のパルスの間、核スピンの信号は、x−y平面内で、リフォーカシングによって形成され、この信号が収集される。
【0088】
図2bには、本発明の第1の実施例での、2次元MRデータの収集用のグラジエントエコーパルスシーケンスが略示されている。このシーケンスは、一方では、フローディフェージンググラジエントパルスシーケンスではなく、排他的にフローコンペンセーション画像形成グラジエントエコーパルスシーケンスを有している、図2aのシーケンスを有している。付加的に、濃くマーキングしたグラジエントスイッチングが図示されており、このグラジエントスイッチングは、付加的に、画像形成シーケンス内に挿入され、動く媒体中の核スピンのディフェージング用に使われ、その際、画像形成グラジエントエコーパルスシーケンスには作用を及ぼされない。この場合、ファーストオーダーグラジエントモーメントMは、全ての空間方向(スライス、フェーズ及びリードアウト)内に挿入され、その結果、測定中、何れかの1空間方向で動く核スピンの信号が抑制される。
【0089】
図2cには、本発明の第2の実施例での2次元MRデータの収集用のグラジエントエコーパルスシーケンスが略示されている。このシーケンスでは、図2aに図示された元の画像形成グラジエントエコーパルスシーケンスがもはや別個には検出可能ではない。これら各グラジエントエコーパルスシーケンスは、新規の計算によって、フローディフェージンググラジエントパルスシーケンスを考慮して形成される。
【0090】
後述の例は、臨床MRトモグラフィで実施されている。
【0091】
例1:
第1のバリアントでは、挿入されるバイポーラグラジエントエコーパルスシーケンスは、最大傾斜磁場強度Gmax=25mT/m及び最大上昇速度smax=42T/(m・s)を利用する、1.5テスラの全身トモグラフで使用されている。
【0092】
出力シーケンスとして、3D−FLASHシーケンスが使用され、このパラメータは、小型動物の画像形成用に(高い空間分解能)最適化された。
【0093】
血管の信号の抑制の有効性を示すために、動物実験で、リンパ節が刺激されたコペンハーゲンラットに、造影剤が富化された。造影剤は、血流内に長時間残存し、血流内で緩和時間T及びTが著しく(massiv)短縮されるように選択された。この際、以下の化合物名の、フッ素化側鎖を持ったガドリニウム錯体が使用された:[10−{(RS)−1−[({[(5S)−6−{4−[(ヘプタデカフルオロオクチル)スルフォニル]ピペラヂン−1−イル}−5−{[(α−D−マンノピラノス−1−O−イル)オキシ]アセチラミノ}−6−オクソヘキサン−1−イル]カルバモイル}メチル)−カルバモイル−κ O]エチル}−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリアセテート(3−)κ N1,κ N4,κ N7,κ N10、κ O1,κ O4、κ O7]−ガドリニウムが使用された。50μmol Gd/kg体重が静脈内に注射された。
【0094】
第1の実験では、先ず、1つの空間方向内に、選択的バイポーラフローディフェージンググラジエントパルスシーケンスが挿入された。得られた撮影像は、図3から分かる。
【0095】
この撮影像の条件は、以下の通りであった: エコー時間TE=14.0ms,撮像領域の大きさFOV=60x120mm; スライス厚SL=0.32mm;マトリックス:104x256;BW=150Hz/ピクセル;フリップ角α=15°;撮影時間TA=3分42秒。
【0096】
図3の上側の撮影像では、ラットの鼠径リンパ節が、強力な造影剤富化によって良好に可視可能である(矢印)。挿入されたグラジエントエコーパルスの方向に位置している血管は弱い信号で表示されることが分かる。使用された造影剤は、信号坦体の動く速度が血流に比較して非常に低いリンパ系によって吸収されたので、リンパ節は、信号の豊富な表示が達成された。
【0097】
図3の下側の撮影像では、更に、リードアウト方向に位置している大動脈(開いた矢印)が、リードアウト方向での抑制のために、信号が示されないことが分かる。これとは異なり、これに対して垂直方向に位置している腎臓の静脈は、相応のフローディフェージンググラジエントパルスシーケンスが、当該方向にはスイッチングされないので、抑制されない。何れにせよ、適切なフローディフェージンググラジエントパルスシーケンスが、この方向で付加的にスイッチングされた場合には、腎臓の静脈から得られた信号も明らかに低減することができる。このために、何れにせよ、静脈内の信号坦体の速度は比較的低いので、比較的大きな1次グラジエントモーメントMが必要となり、その結果、vmaxを低減する必要がある。
【0098】
図4には、3Dグラジエントエコーパルスシーケンスで撮影した撮影像が、フローディフェージンググラジエントスイッチングを行った場合と行わない場合とを相互に比較して示されている(ここでも、コペンハーゲンラットで撮影された)。この場合、バイポーラグラジエントパルスが全部で3つの空間方向内に挿入された。相応の撮影像は、図4の右側から分かる。左側には、フローディフェージンググラジエントスイッチングを行わないで得られた撮影像が示されている。
【0099】
この実験では、動き感度vmaxは、2.56cm/s〜36.5cm/sの領域内で、TEmin=9.4ms〜18msのエコー時間TEの変化によって変えられた。別のパラメータは:Gbipolar=20mT/m;tramp=0.6ms;tplatteau=1/2(TE−TEmin)=0〜8.6ms;tsep=3.7ms;TR=19.1ms〜25.5ms;撮像領域の大きさFOV=40x80mm2;スライス厚SL=0.5mm;マトリックス:128x256;BW=150Hz/ピクセル;フリップ角α=25°;撮影時間TA=2分29秒。
【0100】
パルスシーケンスは、動くスピンの信号を抑制するために、エコー時間TEが長くなるに連れて(撮影シーケンス内で上から下の方に)、次第に速度が遅くなるように実行された。
【0101】
強化されたT減衰に亘って延長されたエコー時間により、MR信号も低減されるので、通常のフローディフェージング用グラジエントなしでも、全てのエコー時間で実験が実施された。
【0102】
図では、両画像列を比較して見ることができ、つまり、動き感度vmaxが低減するに連れて、大動脈内のMR信号が次第に大きく抑制される様子が示されており、その結果、大動脈の隣りに位置している腸骨のリンパ節が、大動脈から一層良好に画定されるようになった。10cm/s以下で初めて、大動脈に対して明瞭に画定される。
【0103】
例2:
第2のバリアントは、最大傾斜磁場強度Gmax=30mT/m及び最大上昇速度smax=120T/(m・s)での1.5テスラ全身トモグラフ(Magnetom Symphony,Siemens,Erlangen)で実行された。
【0104】
動物実験で、Watanabe家兔に、前述の無侵襲性のガドリニウム造影剤[10−{(RS)−1−[({[(5S)−6−{4−[(ヘプタデカフルオロオクチル)スルフォニル]ピペラヂン−1−イル}−5−{[(α−D−マンノピラノス−1−O−イル)オキシ]アセチラミノ}−6−オクソヘキサン−1−イル]カルバモイル}メチル)−カルバモイル−κ O]エチル}−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリアセテート(3−)κ N1,κ N4,κ N7,κ N10、κ O1,κ O4、κ O7]−ガドリニウムの、0.1mmol/kg体重の量が、静脈内に注射された(プラーク内に富化した)。vmax=10cm/sの所定の速度感度では、空間分解能に応じて、8.0ms〜9.5msのエコー時間が実現された。画像データは、フローディフェージングした場合としない場合とで、全部で3つの空間方向内で富化後比較的長い時間後に撮影された。
【0105】
図5には、富化後12h後に得られた画像データが示されており、図6には、造影剤の投与後28h後に取得された画像データが示されている。
【0106】
28h後ですら、血管内の造影剤信号は、依然として、フローディフェージングされた画像データ内でのみ、プラークが明瞭に識別することができる程強かった:
図5にしめされた撮影像は、以下の条件下で撮影された: TR=16ms; TE=9.4ms; FOV=135x180mm2; SL=2mm; マトリックス:307x512; BW=245Hz/ピクセル; α=30°; TA=2分37秒。
【0107】
この図では、高分解能グラジエントエコーMR画像が、動く信号坦体の信号抑制しない場合(左側の撮影像)乃至信号抑制した場合(右側の撮影像)で示されている。フローディフェージングを行うと、血管の内部は(矢印)、造影剤を吸収して明るく見えるプラークに対して暗く落ち込み、プラークを際立たせることができるのに対して、フローディフェージングを行わない撮影像では、プラークを識別することはできない。
【0108】
図6に示した撮影像では、以下のパラメータが使用された: TR=14ms; TE=8.5ms; FOV=200x200; SL=2mm; マトリックス: 205x256; BW=245Hz/ピクセル;α=30°; TA=1分32秒。
【0109】
この図では、プラークに達するガドリニウム錯体の富化後28hでの家兔の撮影像が示されており、その際、左側の撮影像は、全部で3つの空間方向に動く(vmax=10cm/s)信号坦体の信号抑制をしていない場合に得られ、右側の撮影像は、信号抑制した場合に得られた。図5の場合のように、フローディフェージングした測定の場合に限って、プラークを血管から画定することができた。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】グラジエントエコーパルスシーケンスの略図
【図2a】動くMR信号坦体の抑制用の特別なグラジエントスイッチングなしの2次元MRデータの採取用のフローコンペンセーショングラジエントエコーパルスシーケンスの略図
【図2b】フローディフェージンググラジエントパルス(濃くマーキングした)が挿入された本発明の第1の実施例での2次元MRデータの採取用のグラジエントエコーパルスシーケンスの略図
【図2c】同時に、画像形成用及び動くMR信号坦体の抑制用に使用される新規に算出されたフロー−フローディフェージンググラジエントパルスを有する本発明の第2の実施例での2次元MRデータの採取用のグラジエントエコーパルスシーケンスの略図
【図3】リンパに達するMR造影剤の富化後、コペンハーゲンラットの、1つの空間方向でのフローディフェージングにより3Dグラジエントエコーパルスシーケンスで撮影した個別画像
【図4】全部で3つの空間方向でのフローディフェージンググラジエントスイッチングを行わない場合と、行う場合での、コペンハーゲンラットの、3Dグラジエントエコーパルスシーケンスで撮影した個別画像の比較
【図5】全部で3つの空間方向での動く信号坦体の信号抑制を行わない場合と行う場合との、プラークに達するMR造影剤の富化後12hの、Watanabe家兔 高分解能グラジエントエコーMR画像
【図6】プラークに達するMR造影剤の富化後28hの、図5に示したような高分解能グラジエントエコーMR画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置において、
a)体内の選択された撮像領域内の原子核の磁気共鳴特性の局所分解画像形成用のデータを収集するための核スピントモグラフィ装置を有しており、該核スピントモグラフィ装置は、前記体に、当該核スピントモグラフィ装置によって高周波パルスシーケンス及び磁場グラジエントエコーパルスシーケンスを印加可能であり、当該高周波パルス及び磁場グラジエントエコーパルスシーケンスによって、当該体内に磁化が形成され、該磁化の形成によって、少なくとも1つの空間方向に流れる、前記体内の媒体の前記磁化が、当該媒体内の原子核スピンのディフェージングによって減弱可能であり、
b)前記体によって吸収されるMR造影剤を有する
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
少なくとも1つの空間方向に流れる、体内の媒体の磁化を、スピンのディフェージングによって、当該空間方向でのi次グラジエントモーメントM(t)が、以下の関係式によって最大にするようにして減弱可能であり:
【数1】

当該関係式において、
iは、0より大きい整数、
γは、原子核の磁気回転比、
G(t’)は、前記方向での時間依存の傾斜磁場強度、
tは、原子核の励起用高周波パルスの入射から経過した時間期間
である
請求項1記載の装置。
【請求項3】
少なくとも1つの空間方向に流れる、体内の媒体の磁化を、スピンのディフェージングによって、当該空間方向での1次グラジエントモーメントM(t)が以下の関係式:
【数2】

によって最大にされるようにして減らすことができる
請求項2記載の装置。
【請求項4】
グラジエントエコーパルスシーケンスが、各々の空間方向で、フローディフェージンググラジエントパルスを、フローコンペンセーション画像形成グラジエントエコーパルスシーケンス内に挿入することによって形成可能である
請求項1から3迄の何れか1記載の装置。
【請求項5】
は、以下の関係式:
(t;Gbipolar,tramp,tplatteau,tsep)=
γ・Gbipolar・(tramp+tplatteau)・
(2tramp+tplatteau+tsep) [7]
を充足する
請求項4記載の装置。
【請求項6】
装置は
スタティックマグネット(静磁場装置)、
相互に直交方向に位置している3つの空間方向内にグラジエントパルスを形成するためのグラジエント装置、
高周波信号の形成用の送信装置、
前記高周波信号用の受信装置、
前記グラジエント装置及び送信装置の制御用の装置、
評価装置、及び
表示装置
を有する
請求項1から5迄の何れか1記載の装置。
【請求項7】
MR造影剤は、人体又は動物の体に無侵襲的に投与可能である
請求項1から6迄の何れか1記載の装置。
【請求項8】
MR造影剤は、リンパ及び/又はプラークに達する請求項1から7迄の何れか1記載の装置。
【請求項9】
体内の選択された撮像領域内での原子核の磁気共鳴特性の局所分解画像形成システムにおいて、
体に高周波パルスシーケンス及び磁場グラジエントエコーパルスシーケンスが発信されて、前記体内に磁化が形成され、該磁化の形成により、前記体内の、少なくとも1つの空間方向に流れる媒体の磁化が、当該媒体内の原子核スピンのディフェージングによって減弱され、前記体にMR造影剤が投与されるようにして、核スピントモグラフィ装置を用いて、撮像領域からデータが収集される
ことを特徴とするシステム。
【請求項10】
少なくとも1つの空間方向に流れる、体内の媒体の磁化は、スピンのディフェージングによって、当該空間方向でのi次のグラジエントモーメントM(t)が、以下の関係式:
【数3】

によって最大となるようにして減弱され、
前記関係式において、
iは、0より大きい整数、
γは、原子核の磁気回転比、
G(t’)は、前記空間方向での時間依存の傾斜磁場強度、
tは、原子核の励起用の高周波パルスの照射時点からの時間間隔
である
請求項9記載のシステム。
【請求項11】
少なくとも1つの空間方向に流れる、体内での媒体の磁化は、スピンのディフェージングにより、前記空間方向での1次グラジエントモーメントM(t)を以下の関係式:
【数4】

によって最大にするようにされている
請求項10記載のシステム。
【請求項12】
各々の空間方向でのグラジエントエコーパルスシーケンスは、フローディフェージンググラジエントパルスを、フローコンペンセーション画像形成グラジエントエコーパルスシーケンス内に挿入することによって形成されている
請求項9から11迄の何れか1記載のシステム。
【請求項13】
は、以下の関係式:
(t;Gbipolar,tramp,tplatteau,tsep)=
γ・Gbipolar・(tramp+tplatteau)・
(2tramp+tplatteau+tsep) [7]
を充足するようにされている
請求項12記載のシステム。
【請求項14】
人体又は動物の体に無侵襲的に投与されるMR造影剤が用いられている
請求項9から13迄の何れか1記載のシステム。
【請求項15】
リンパ及び/又はプラークに達するMR造影剤が用いられている
請求項9から14迄の何れか1記載のシステム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MR造影剤を含む体内の選択された撮像領域内の核スピンの密度分布の局所分解画像形成用の核スピントモグラフィ装置において、
核スピントモグラフィ装置は、
体に、高周波信号の発生用の送信装置を用いて形成された高周波パルスシーケンス、及び、相互に直交する3つの空間方向内にグラジエントパルスを発生するためのグラジエント装置を用いて発生された磁場グラジエントエコーパルスシーケンスを印加可能であり、
前記体内で、少なくとも1つの空間方向に流れる媒体の磁化を減弱するために、前記媒体が流れる各空間方向の少なくとも1つの空間方向でのグラジエントエコーパルスシーケンスの画像形成グラジエントが、以下の条件、つまり:
【数1】

該式において、
は、0次のグラジエントモーメント、
γは、核スピンの磁気回転比、
G(t’)は、前記グラジエントパルスの時間依存の傾斜磁場強度、
t’は時間、
tは、前記核スピンの励起用に高周波パルスの照射から経過した時間期間とし、
前述条件を維持しつつ算出され、該算出時に、
当該グラジエントエコーパルスシーケンスのファーストオーダーの各々の磁気モーメントM、つまり:
【数2】

該式において、
は、ファーストオーダーの磁気モーメントとし、γ、G(t’)、t’及びtは前述の意味とし、
前述磁気モーメントMは、グラジエントエコーパルスシーケンスの調整可能な最大磁場強度及び最大達成可能なスリューレートに関して最大となるように構成及びプログラミングされている
ことを特徴とする核スピントモグラフィ装置。
【請求項2】
は、以下の関係式:
(t;Gbipolar,tramp,tplatteau,tsep)=
γ・Gbipolar・(tramp+tplatteau)・
(2tramp+tplatteau+tsep
を充足し:
該式において、
bipolarは、最大磁場強度、
rampは、傾斜磁場のスイッチオン/スイッチオフの上昇/下降時間、
platteauは、Gbipolarが達成されている間の時間期間、
sepは、2つのグラジエントパルス間の時間期間とする
請求項1記載の装置。
【請求項3】
体内の選択された撮像領域内の核スピンの密度分布の局所分解画像形成用の方法において、
体に、MR造影剤を供給し、核スピントモグラフィ装置を用いて撮像領域の画像データを形成し、該画像データの形成時に、
体に、高周波パルスシーケンス、及び、磁場グラジエントエコーパルスを相互に直交する3つの空間方向内に印加可能であるようにし、
前記体内で、少なくとも1つの空間方向に流れる媒体の磁化を減弱し、該媒体の磁化の減弱時に、前記グラジエントエコーパルスシーケンスの画像形成グラジエントを、前記媒体が流れる前記各空間方向内の少なくとも1つの空間方向内で、以下の条件:
【数3】

該式において、
は、0次のグラジエントモーメント、
γは、核スピンの磁気回転比、
G(t’)は、前記グラジエントパルスの時間依存の傾斜磁場強度、
t’は時間、
tは、前記核スピンの励起用に高周波パルスの照射から経過した時間期間とし、
前述条件を維持しつつ算出され、該算出時に、
当該グラジエントエコーパルスシーケンスのファーストオーダーの各々の磁気モーメントM、つまり:
【数4】

該式において、
は、ファーストオーダーの磁気モーメントとし、γ、G(t’)、t’及びtは前述の意味とし、
前述磁気モーメントMは、グラジエントエコーパルスシーケンスの調整可能な最大磁場強度及び最大達成可能なスリューレートに関して最大となるようにした
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
は、以下の条件、つまり:
(t;Gbipolar,tramp,tplatteau,tsep)=
γ・Gbipolar・(tramp+tplatteau)・
(2tramp+tplatteau+tsep
該式において、
bipolarは、最大磁場強度、
rampは、傾斜磁場のスイッチオン/スイッチオフの上昇/下降時間、
platteauは、Gbipolarが達成されている間の時間期間、
sepは、2つのグラジエントパルス間の時間期間とし、
前述条件を維持しつつ算出する
請求項3記載の方法。
【請求項5】
MR造影剤が、リンパ及び/又はプラークに達するようにした請求項3及び4記載の方法。

【図1】
image rotate

image rotate

image rotate

image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2006−509567(P2006−509567A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−559749(P2004−559749)
【出願日】平成15年12月3日(2003.12.3)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013666
【国際公開番号】WO2004/055539
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(390014166)シエーリング アクチエンゲゼルシヤフト (12)
【氏名又は名称原語表記】Schering Aktiengesellschaft
【Fターム(参考)】