説明

画像形成装置

【課題】簡易な装置構成且つ低エネルギーで高画質な画像形成装置を提供する。
【解決手段】フィルム状の像担持体1に熱溶融性の顕色剤4を供給する顕色剤供給手段7と、顕色剤に対して、画像情報に応じて選択的にエネルギーを付与する書き込み手段14と、顕色剤を像担持体に仮固着する手段Lと、仮固着した顕色剤を記録媒体18に転写する手段12を有し、顕色剤4に対して書き込みを行う位置が、像担持体1と顕色剤供給手段7により像担持体に顕色剤が供給される当接部Pより上流側で且つ、当接部Pの近傍とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂を含有する顕色剤をレーザ書き込みにより像担持体に仮固着させる方法で作像する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に広く知られている電子写真方式の複写機やプリンタ、これらが一体化された複合機などの画像形成装置は、感光体を用い、この感光体を帯電、露光、光書き込み、現像し、現像された像を記録媒体に転写、定着して画像を形成している。感光体を使用しない画像形成装置としては、インクジェット方式のプリンタや孔版印刷装置が知られている。
【0003】
その他の画像形成の形態として、例えば、特許文献1には、耐熱光透過性シートに記録媒体を重ね、耐熱光透過性シートの他方の面から原稿画像に応じた光ビームを照射してトナーを昇温溶融させて記録媒体に熱転写する熱転写画像形成装置が提案されている。
【0004】
特許文献2には、周面にトナー層を形成したローラに記録媒体を接触させ、この記録紙の裏面からサーマルヘッドにより原稿画像に応じた熱像を与えて記録紙にトナー像を熱転写する熱転写画像形成装置が提案されている。
【0005】
特許文献3には、像担持体の表面に加熱によって粘着性を発生する層を設け、サーマルヘッドにより原稿画像に応じた熱像を与えて粘着性により着色粉体を付着させ、記録媒体に転写する画像形成装置が提案されている。
【0006】
特許文献4には、画像担持体の裏面側から画像信号に応じた熱像を与えて画像担持体に顕色剤画像を仮固着させて記録媒体に熱転写する熱転写画像形成装置が提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開昭64−69357号公報
【特許文献2】特開平7−314746号公報
【特許文献3】特開平10−798号公報
【特許文献4】特開平11−91147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
静電潜像を形成するために感光体を用いる電子写真方式の複写機やレーザプリンタなどの画像形成装置は、画像を作像するための工程数が多く、そのために装置が大きく複雑になる傾向が強い。また、感光体の感光特性が経時的に劣化あるいは変化する課題や、帯電、転写、除電工程で用いられているコロナ放電を生じさせる高電圧発生装置によるオゾン発生の課題がある。これに対し、インクジェット方式の画像形成装置は、画像形成の記録速度が遅いという課題が、そして孔版印刷装置にあっては、マスタを製版しなければならない煩雑さや解像力に課題がある。
【0009】
特許文献1に記載の画像形成装置では、耐熱透過性シートにトナーを溶融転写させるために高エネルギーを有する光ビームを必要とする課題がある。
特許文献2に記載の画像形成装置では、記録媒体にトナーを溶融転写させるために十分なエネルギーを有するサーマルヘッドを必要とする課題がある。
特許文献3に記載の画像形成装置では、像担持体の表面に加熱によって粘着生を発生する層を設けているので、繰り返し画像を形成すると、この粘着層の劣化や汚れにより粘着力が低下するという課題がある。
特許文献4に記載の、像担持体の裏面側から画像信号に応じた熱像を与えて像担持体に顕色剤画像を仮固着させて記録媒体に熱転写する熱転写画像形成装置では、感光体を備えていないので、感光体に関する経時劣化の課題は発生せず、小型で、電子写真並の記録速度を達成することができる。しかしながら、顕色剤が供給される受領部において画像信号に応じた熱像を与えるため、熱応答性の遅延の影響により固着効率が低下するという課題や、像担持体と顕色剤供給手段が当接したニップ状態で書き込みを行うことで、像担持体上の熱拡散の影響による画質低下や地汚れという課題がある。
本発明は、簡易な装置構成且つ低エネルギーで高画質な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、フィルム状の像担持体に熱溶融性の顕色剤を格納するための顕色剤格納手段と、フィルム状の像担持体に顕色剤を供給する顕色剤供給手段と、顕色剤に対して、画像情報に応じて選択的にエネルギーを付与する書き込み手段と、顕色剤を像担持体に仮固着する手段と、仮固着した顕色剤を記録媒体に転写する手段を有し、顕色剤に対して書き込みを行う位置が、像担持体と顕色剤供給手段により像担持体に顕色剤が供給される当接部より上流側で且つ、当接部の近傍である顕色剤を供給する顕色剤供給手段と、顕色剤に対して、画像情報に応じて選択的にエネルギーを付与する書き込み手段と、顕色剤を像担持体に仮固着する手段と、仮固着した顕色剤を記録媒体に転写する手段を有し、顕色剤に対して書き込みを行う位置が、像担持体と顕色剤供給手段により像担持体に顕色剤が供給される当接部より上流側で且つ、当接部の近傍であることを特徴としている。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1記載の画像形成装置において、顕色剤供給手段と像担持体は、互いの当接部において接離可能であることを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1または2記載の画像形成装置において、顕色剤供給手段が、画像情報に応じて主走査方向の顕色剤供給範囲が可変可能であることを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の画像形成装置において、エネルギーを付与する書き込み手段が、顕色剤に対してレーザ光を照射する走査型レーザ書き込み手段であることを特徴としている。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の画像形成装置において、像担持体が少なくとも長波長域の光を透過する光透過性を有することを特徴としている。
請求項6の発明は、請求項4または5記載の画像形成装置において、顕色剤供給手段の表面層が、レーザ光の波長の光を吸収しない物質で構成されていることを特徴としている。
請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れかに記載の画像形成装置において、顕色剤供給手段は断熱層を有することを特徴としている。
【0013】
請求項8の発明は、請求項1乃至7の何れかに記載の画像形成装置において、顕色剤が、昇温時に熱可塑性樹脂と相溶可能な樹脂の可塑剤を含むことを特徴としている。
請求項9の発明は、請求項1乃至7の何れかに記載の画像形成装置において、顕色剤が、表面層が熱可塑性樹脂と固体可塑剤とからなる感熱性粘着層で構成されることを特徴としている。
請求項10の発明は、請求項4乃至7の何れかに記載の画像形成装置において、顕色剤が、表面層にレーザ光の波長の光を吸収する光熱変換材料を含有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、熱溶融性の顕色剤に対して書き込みを行う位置が、像担持体と顕色剤供給手段により像担持体に顕色剤が供給される当接部より上流側で且つ、当接部の近傍であるので、光書き込みが行われて顕色剤が光熱変換により昇温して半溶融状態になった直後に、像担持体に当接して転写されて仮固着される。このため、像担持体と顕色剤供給手段の当接部において光書き込みを行った場合と比較して、光熱変換に要する時間の遅延の影響がなくなり、簡易な装置構成で高画質な画像を形成することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、顕色剤供給手段と像担持体は、互いの当接部において接離可能であるので、顕色剤供給手段と像担持体との接離状態を制御することで、顕色剤の供給量が調整されるため、非画像領域の地汚れを抑えた高画質な画像を形成することができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、顕色剤供給手段が、画像情報に応じて主走査方向の顕色剤供給範囲が可変可能としたので、顕色剤の供給量が画像情報に応じて調整されることになり、非画像領域の地汚れを抑えた高画質な画像を形成することができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、エネルギーを付与する書き込み手段が、顕色剤に対してレーザ光を照射する走査型レーザ書き込み手段であるので、非接触書き込みによる高速で且つ、高画質な画像を形成することができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、像担持体が少なくとも長波長域の光を透過する光透過性を有するので、像担持体の裏面から光書き込みを行うことができる。また、書き込み装置を像担持体が掛けられているローラ間の内部に配置することができるため、装置を小型化することができる。
【0019】
請求項6の発明によれば、顕色剤供給手段の表面層が、レーザ光の波長の光を吸収しない物質で構成されているので、書き込み手段からレーザ光が付与された場合でも、光が吸収されないので、発熱が起こらなくなり、エネルギーの損失を抑えた高画質な画像を形成することができる。
【0020】
請求項7の発明によれば、顕色剤供給手段が断熱層を有するので、昇温過程の顕色剤の熱量が顕色剤供給ローラ側に逃げ難くなるので、エネルギーの損失を抑えた高画質な画像を形成することができる。
【0021】
請求項8の発明によれば、顕色剤が、昇温時に熱可塑性樹脂と相溶可能な樹脂の可塑剤を含んでいるので、加熱により熱可塑性樹脂と固体可塑剤は相溶して軟らかくなり、固体可塑剤を含有しない顕色剤と比較してガラス転移温度が低下する。このため、低い温度で半溶融状態になるので、顕色剤を低エネルギーで像担持体に固着させることができる。
【0022】
請求項9の発明によれば、顕色剤が、表面層が熱可塑性樹脂と固体可塑剤とからなる感熱性粘着層で構成されているので、感熱性粘着剤の粘着層表面が、常温では全く粘着性を示さないが、加熱および外的負荷により粘着性が発現し、熱源を取り去った後でも暫くの間、粘着性が維持される。このため、加熱によりまず固体可塑剤が溶融し、熱可塑性樹脂と粘着付与剤を溶融することにより粘着性が発現することになり、顕画剤を低エネルギーで像担持体に固着させることができる。
【0023】
請求項10の発明によれば、顕色剤が、表面層にレーザ光の波長の光を吸収する光熱変換材料を含有するので、光熱変換材料が、レーザ光の光エネルギーを熱に変換して顕色剤を昇温させる。この結果、顕色剤の表面層は粘着性を示すことになり、非接触書き込みによる高速で且つ、高画質な画像を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明を適用した画像形成装置の一例を示す。図1において、符号1は光透過性を有するフィルム状の無端の像担持体である。像担持体1は回転体を構成するローラ2とローラ3との間に掛け渡されており、ローラ2がモータなどの駆動手段により矢印の向きに回転駆動されることにより、矢印aの向きに移動する。本形態においては、像担持体1として厚さ100μmのポリイミドフィルムが採用されている。像担持体1には上記フィルムの代わりに、レーザ走査装置13により照射されるレーザ光Lの光の波長を透過する光透過性を有すること、この光書き込みによる微小スポット照射の発熱および熱ローラ17で加熱定着される発熱に耐えうる耐熱性を有すること、繰り返し回転駆動されることによる耐久性があること、張力変動および環境変動による伸縮が少ないこと等の条件を満たすフィルムであれば用いることができる。
【0025】
像担持体1の下面1aには、顕色剤供給装置5により熱溶融性の顕色剤4が供給される。顕色剤4は、黒色顕色剤の場合、熱可塑性樹脂と着色剤としてのカーボンブラックを主成分とするトナーである。また、本発明の画像形成装置に使用する顕色剤4としては、後述する形態に記載する顕色剤4を用いることが最適であり、より低いエネルギーで書き込みを行うことができる。
【0026】
図2に示すように、顕色剤供給装置5は、顕色剤4を収容する顕色剤格納手段としてのケース6、顕色剤4を担持しつつ像担持体1と対向部でもある当接部Pまで搬送する顕色剤供給手段としての顕色剤供給ローラ7、顕色剤供給ローラ7に顕色剤4を収容するケース6内の顕色剤4を補給する補給ローラ8、顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4の層厚を均一化するブレード9から主に構成されている。顕色剤供給ローラ7、顕色剤4を補給する補給ローラ8は、それぞれ矢印の向きに回転駆動される。顕色剤供給装置5内には、周面にクリーニングブレード11の先端縁を当接させた顕色剤除去手段としての顕色剤除去ローラ12が配置されている。
【0027】
顕色剤4は、顕色剤供給ローラ7の上に汲み上げられ、ブレード9によってその厚さ規制されることにより、適正量が像担持体1と顕色剤供給ローラ7との当接部Pに導かれる。顕色剤4を顕色剤供給ローラ7の上に汲み上げる方法として、本実施形態では静電的な付着力を利用する。すなわち、顕色剤供給ローラ7と補給ローラ8とがその当接部Pにおいて速度差を有しつつ接触するようにすることで顕色剤4を摩擦帯電(本実施形態では負帯電)させ、且つ顕色剤供給ローラ7に補給ローラ8に対して正の電位となる電圧を印加することによって顕色剤4を汲み上げる。顕色剤4を顕色剤供給ローラ7に汲み上げる方法としては、本実施形態の方法には限定されず、磁力などの非静電的付着力を利用して汲み上げてもよい。
【0028】
像担持体1の顕色剤供給ローラ7により顕色剤4が供給される顕色剤受領部(当接部)近傍の裏面側には、顕色剤画像25を像担持体1に仮固着する光エネルギーが、顕色剤画像仮固着手段としての図1に示すレーザ光走査装置13により照射される。レーザ光走査装置13は、図示しないレーザ光源とコリメートレンズ、ポリゴンミラー14、fθレンズ15、像担持体1の幅と略同一長さの短冊形反射鏡16で主に構成されており、像担持体1を介して顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4に画像信号に応じた光エネルギーをレーザ光Lで与える。
【0029】
本実施形態では、光透過性を有する像担持体1の裏面からレーザ光Lを照射しているが、像担持体1を透過させずに顕色剤供給ローラ7に直接照射させる装置構成であっても構わない。
【0030】
本実施形態では、像担持体1と顕色剤供給ローラ7の当接部Pよりも像担持体1の移動方向に対して僅かに上流側の顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4に、画像信号に応じた光エネルギーがレーザ光走査装置13からのレーザ光Lにより、像担持体1を介して照射される。顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4は、ブレード9で与えられた電荷により顕色剤供給ローラ7に静電気力で付着している。
【0031】
ここで、顕色剤4が熱可塑性樹脂と着色剤としてのカーボンブラックを主成分とする黒トナーである場合について説明する。顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4に照射されるレーザ光Lにより、顕色剤4に含有するカーボンブラックが光熱変換材料として機能し、レーザ光Lの光エネルギーを熱に変換して顕色剤4を昇温させ、その結果、顕色剤4の表面層は半溶融状態となる。このとき、顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4は像担持体1と非接触状態でレーザ光Lにより光書き込みが行われるため、顕色剤4が光熱変換により昇温したときの、像担持体1への熱伝導による熱損失や熱拡散が生じない。よって、像担持体1上の熱拡散の影響がない高画質な画像が得られる。
【0032】
また、レーザ光Lにより光書き込みが行われ、顕色剤4が光熱変換により昇温して半溶融状態になった直後に、顕色剤4は像担持体1に当接して転写され仮固着するため、像担持体1と顕色剤供給ローラ7の当接部Pにおいてレーザ光Lにより光書き込みを行った場合と比較して、光熱変換に要する時間の遅延の影響がなく、転写効率が良くなり高画質な画像が得られる。更に、像担持体1と顕色剤供給ローラ7とが当接することで形成されたるニップ状態を制御することにより、地汚れを低減することができる。微小時間経過後、顕色剤供給ローラ7が像担持体1と当接すると、顕色剤4は像担持体1上に顕色剤画像25として仮固着する。
【0033】
この仮固着による顕色剤画像25の像担持体1への付着力は、顕色剤4と顕色剤供給ローラ7との静電気力による付着力より強く、後述の顕色剤画像25の記録媒体18への熱定着による付着力より常に弱く、且つ、定着後に行われる像担持体1のクリーニングによって像担持体1上の残留顕色剤が容易に除去される値に定められる。
【0034】
仮固着によって像担持体1に顕色剤画像25を形成する顕色剤画像仮固着工程後における像担持体1の非画像部の顕色剤4は、ブレード9の印加電圧とは逆極性の電圧を印加された顕色剤除去ローラ12の吸引作用で取り除かれる。顕色剤除去ローラ12の顕色剤画像25を形成する顕色剤4に対する吸引力は、顕色剤4の像担持体1に対する仮固着力よりも弱く定められる。この顕色剤除去ローラ12は、本来仮固着されるべき顕色剤以外の顕色剤4が非画像部に付着(いわゆる「地汚れ」)した場合にそれを除去するために設けられており、顕色剤除去ローラ12の吸引力は、顕色剤の像担持体1に対する仮固着力よりも弱く定められる。なお、非画像部に付着する顕色剤4の量が十分少なければ、顕色剤除去ローラ12を設けなくてもよい。
【0035】
図1に示すように、ローラ2には、像担持体1を介して熱溶着手段としての熱ローラ17が接離自在に対向して配置されている。この熱ローラ17は、これとローラ2との間に記録媒体18がレジストローラ対19によって送り込まれたときに、像担持体1を介してローラ2に圧接するように構成されている。
【0036】
像担持体1の非画像部をクリーニングする顕色剤除去工程後の像担持体1上の顕色剤画像25は、熱ローラ17により記録媒体18に熱溶着により転写され定着される。記録媒体18は、図示しない給紙装置から給紙されたレジストローラ対19によって像担持体1の画像部と同期的に熱ローラ17に送り込まれ、その裏面から加熱されることにより顕色剤画像25を転写定着する。
【0037】
ローラ3の近傍には、像担持体1を介してローラ3にクリーニングローラ21を当接させたクリーニング装置22が配置されている。クリーニングローラ21にはブレード23が当接している。顕色剤画像25を転写定着された熱溶着転写工程後の像担持体1は、このクリーニングローラ21によりクリーニングされ一連の記録工程を終え、顕色剤画像仮固着工程から始まる次の記録工程に備える。クリーニングローラ21上の顕色剤4を含む塵埃はブレード23で掻き落される。
(第1の実施形態)
本発明に最適な顕色剤4およびこれらの顕色剤4を図1に示す画像形成装置に適用した例について説明する。
顕色剤4の第1の形態について説明する。
顕色剤4の熱可塑性樹脂中に固体可塑剤を分散させた状態で存在させて構成する。加熱により熱可塑性樹脂と固体可塑剤は相溶して軟らかくなる。すなわち顕色剤4は、前述した固体可塑剤を含有しない顕色剤4と比較してガラス転移温度(Tg)が下がり、低い温度で半溶融状態になる。
【0038】
この顕色剤4を図1に示す画像形成装置に適用した場合の仮固着工程について説明するが、その他の工程は前述した工程と同様であるので省略する。
顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4に照射されるレーザ光Lにより、顕色剤4に含有するカーボンブラックが光熱変換材料として機能し、レーザ光Lの光エネルギーを熱に変換して顕色剤4を昇温させ、その結果、顕色剤4の表面層は半溶融状態となる。このとき、この顕色剤4は、前述した固体可塑剤を含有しない顕色剤4と比較して低い温度で半溶融状態になるため、低い光エネルギーで光書き込みを行うことができる。微小時間経過後、顕色剤供給ローラ7が像担持体1と当接すると、顕色剤4は発現した粘着性により、像担持体1上に顕色剤画像25として仮固着する。
【0039】
顕色剤4の第2の形態について説明する。
顕色剤4の表面層に下記に記載する感熱性粘着層を薄層化して構成する。顕色剤4の表面層に構成する感熱性粘着剤は、熱可塑性樹脂と固体可塑剤を必須成分とし、これらの成分に必要に応じて粘着付与剤を混合したものである。感熱性粘着剤の粘着層表面は、常温では全く粘着性を示さないが、加熱および外的負荷により粘着性が発現し、熱源を取り去った後でも暫くの間、粘着性を維持するものであり、加熱によりまず固体可塑剤が溶融し、熱可塑性樹脂と粘着付与剤を溶融することにより粘着性が発現する。すなわち、粘着性の発現とは、固体可塑剤が熱溶融して熱可塑性樹脂に相溶し、熱可塑性樹脂を可塑化させることで粘着力を発現させるメカニズムである。
【0040】
本発明においては、顕色剤4に画像信号に応じた光エネルギーをレーザ光Lで照射して光書き込みを行うため、感熱性粘着層中にレーザ光Lの光の波長を吸収して光エネルギーを熱に変換する光熱変換材料を含有させる。
【0041】
この顕色剤4を図1の画像形成装置に適用した場合の仮固着工程について説明するが、その他の工程は前述した工程と同様である。顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4に照射されるレーザ光Lにより、顕色剤4の表面の感熱性粘着層に含有する光熱変換材料が、レーザ光Lの光エネルギーを熱に変換して顕色剤4を昇温させ、その結果、顕色剤4の表面層は粘着性を示す。微小時間経過後、顕色剤供給ローラ7が像担持体1と当接すると、顕色剤4は発現した粘着性により、像担持体1上に顕色剤画像25として仮固着する。
【0042】
また、この顕色剤4は、粘性を発現した後においても常温で暫くの間、粘性が維持されるため、レーザ光Lによる光書き込み位置は、像担持体1と顕色剤供給ローラ7の当接部より上流側であれば、必ずしも当接部の近傍に限定される必要はない。
(第2の実施形態)
上述の画像形成装置において、顕色剤4の供給は、顕色剤供給ローラ7により主走査方向および副走査方向の全面に対して行われることになる。したがって、顕色剤4の使用量が増加すること、および非画像部の顕色剤4の転写による地汚れが発生する等の課題が想定される。そこで、本形態においては、非画像形成時、用紙間、複数ラインにわたり連続して主走査方向の画像が全幅で存在しないときは、シーケンスおよび画像信号情報に基づいて、顕色剤供給ローラ7を像担持体1から一時的に解離する制御を行うようにした。
(第3の実施形態)
この形態の画像形成装置においては、複数ラインにわたり連続して主走査方向の画像が一定幅で存在しないときは、その領域において、顕色剤供給ローラ7に供給する顕色剤4を一次的に供給しない制御を行う。一例としては、顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4の層厚を均一化するブレード9を主走査方向に分割して構成する。ブレード9は、顕色材供給範囲となる顕色剤供給ローラ7とのギャップを可変可能とする。複数ラインにわたり連続して主走査方向の画像が一定幅で存在しないときは、その領域において、ブレード9を顕色剤供給ローラ7にほぼ当接して顕色剤4の供給を一時的に行わないように制御する。このように可変な制御分割したブレード9は、それぞれ独立して制御することができるようにする。
(第4の実施形態)
この形態にかかる画像形成装置においては、図3に示す顕色剤供給ローラ7に特徴がある。図3に示す顕色剤供給ローラ7は、その表面層に、レーザ光Lの光を吸収しない層26が、ローラ内部に熱伝導を防止する断熱層27がそれぞれ設けられている。顕色剤供給ローラ7は、レーザ光Lの光を吸収しないことが望ましい。顕色剤供給ローラ7の表面層でレーザ光Lの光を吸収すると発熱が起こり、レーザ光Lで光書き込みを行った画像信号の周囲の顕色剤4も溶融したり粘着性が発現したりするおそれがある。また、顕色剤供給ローラ7の表面層に凹凸があると、レーザ光Lの光が散乱することにより、レーザ光Lで光書き込みを行った画像信号の周囲の顕色剤4も、溶融または粘着性が発現するおそれがある。よって、顕色剤供給ローラ7の表面層をレーザ光Lの光の波長領域を吸収しない層26で構成し、且つ鏡面にすることにより高画質な画像が得られる。
【0043】
顕色剤供給ローラ7の内部には、断熱層27を設けることが望ましい。顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4に照射されるレーザ光Lにより、顕色剤4は昇温して溶融または粘着性が発現する。このとき、昇温過程の顕色剤4の熱量が顕色剤供給ローラ側に逃げるとエネルギーの損失が生じて、光書き込み効率が低下する。よって、この光書き込みの効率低下を防止するために、顕色剤供給ローラ7の内部には、断熱層27を設ける。
【0044】
上述の画像形成装置において、像担持体1に光透過性のフィルムを用いることにより、像担持体1の裏面から光書き込みができるとともに、ローラ2とローラ3の間に掛け渡されて回転駆動する像担持体1の内部にレーザ光走査装置13を配置することができるため、装置を小型化することができる。
レーザ書き込みの場合、顕色剤4にレーザ光Lの波長の熱吸収を起こさせるために必要に応じて、顕色剤4の表面層中に光熱変換材料を含有してもよい。
【0045】
光熱変換機能を付与することができる材料としては、一般的に、染料として、500〜550nmに極大吸収波長を持ち、且つ360〜420nmにおいては光透過率が10%以上で光熱変換機能を付与することができる。一般的に染料として存在する直接染料(アゾ染料)、酸性染料(アゾ染料、アントラキノン染料、金属錯体アゾ染料)、塩基性染料(アゾ染料、トリフェルメタン染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、キサンテン染料)、建染料(アントラキノン染料)、油溶染料(アントラキノン染料、アゾ染料、金属錯体染料)、分散染料(アゾ染料、アントラキノン染料)等が挙げられる。
【0046】
780〜850nmに極大吸収を持ち、且つ360〜420nmにおいては、光透過率が10%以上である光熱変換機能を付与することができる材料としては、一般的に染料として存在するシアニン系化合物(ポリメチン系化合物)、フタロシアニン系化合物、ジチオール金属錯体系化合物、金属錯体化合物、ジインモニウム化合物、アルミニウム塩化合物等が挙げられる。
【0047】
これらの光熱変換材料を顕色剤4の表層中に含有させることにより、顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4に画像信号に応じた光エネルギーをレーザ光Lで与えて、顕色剤4を像担持体1上に仮固着させた顕色剤画像25を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明が適用された画像形成装置の要部の概略構成図である。
【図2】顕色剤供給装置の構成を示す拡大図である。
【図3】顕色剤供給手段の一形態を示す拡大図である。
【符号の説明】
【0049】
1 フィルム状の像担持体
4 熱溶融性の顕色剤
6 顕色剤格納手段
7 顕色剤供給手段
14 書き込み手段
12 転写する手段
18 記録媒体
26 表面層
27 断熱層
L 仮固着する手段
P 当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状の像担持体に熱溶融性の顕色剤を供給する顕色剤供給手段と、前記顕色剤に対して、画像情報に応じて選択的にエネルギーを付与する書き込み手段と、前記顕色剤を前記像担持体に仮固着する手段と、前記仮固着した顕色剤を記録媒体に転写する手段を有し、
前記顕色剤に対して書き込みを行う位置が、前記像担持体と、前記顕色剤供給手段により像担持体に顕色剤が供給される当接部より上流側で且つ、前記当接部の近傍であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記顕色剤供給手段と前記像担持体は、互いの当接部において接離可能であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記顕色剤供給手段は、前記画像情報に応じて主走査方向の顕色剤供給範囲が可変可能であることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記エネルギーを付与する書き込み手段は、前記顕色剤に対してレーザ光を照射する走査型レーザ書き込み手段であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記像担持体は少なくとも長波長域の光を透過する光透過性を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記顕色剤供給手段の表面層は、前記レーザ光の波長の光を吸収しない物質で構成されていることを特徴とする請求項4または5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記顕色剤供給手段は断熱層を有することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記顕色剤は、昇温時に熱可塑性樹脂と相溶可能な該樹脂の可塑剤を含むことを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記顕色剤は、表面層が熱可塑性樹脂と固体可塑剤とからなる感熱性粘着層で構成されることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記顕色剤は、表面層に前記レーザ光の波長の光を吸収する光熱変換材料を含有することを特徴とする請求項4乃至7の何れかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−118284(P2007−118284A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311172(P2005−311172)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】