説明

画像形成装置

【課題】a−Si感光体の周面の研磨モード時にトナーの無駄な消費を抑えた上で、状況に応じてa−Si感光体の周面に対し必要かつ十分な研磨処理を施し得るようにする。
【解決手段】感光体ドラム101の周面に対し露光しない状態での表面電位をV0、通常の画像形成モード時に現像部103内の現像ローラ1031に印加される直流バイアス電圧をVdc1、感光体ドラム101の研磨モード時に現像部103内の現像ローラ1031に印加されるバイアス電圧をVdc2とした場合、感光体ドラム101の研磨モード時に、(V0−Vdc1)>(V0−Vdc2)を満足する条件で感光体ドラム101の周面にトナーが供給されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体を備えた複写機やプリンタ等の画像形成装置に関し、特に感光体の周面に対して研磨による清浄化処理を施し得るように構成された画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、複写機やプリンタ等の画像形成装置においては、軸心回りに回転している感光体(感光体ドラム)の周面近傍で行われる帯電器による放電により当該感光体周面に帯電処理を施すようになされている。この帯電処理が施された感光体の周面に露光装置から画像情報に基づく光が照射され、光が当たった部分の帯電状態の消滅によって静電潜像が形成される。この静電潜像に向けて現像装置からトナーが供給されることにより感光体の周面にトナー像が形成され、このトナー像が用紙に転写されるようになされている。
【0003】
ところで、感光体の周面に極めて滑らかで、かつ、高硬度であるが、吸湿性が高いという特質を備えたアモルファスシリコン(a−Si)層が形成されている場合(以下かかる層が形成された感光体をa−Si感光体という)には、帯電器の放電で発生した水溶性の放電生成物(例えばNOx等の酸化物、オゾン)が高い吸湿性によりa−Si感光体の周面に付着し易くなる。
【0004】
そして、この放電生成物がa−Si感光体の周面に付着したままになると、当該a−Si感光体の周面のトナー像が横に流れたようになる、所謂「画像流れ」が発生するというa−Si感光体特有の問題が生じる。因みに、通常の有機感光体(OPC)を用いた場合には、放電生成物が付着しても下記研磨ローラとの摺接で感光体周面が削られて新しい面が形成され易いため、前記のような問題は生じ難い。
【0005】
そこで、従来、周面がa−Si感光体の周面と当接するように研磨ローラを配設し、この研磨ローラの駆動回転でトナーに含まれている研磨剤によりa−Si感光体の周面を研磨処理することが定期的に行われるのであるが、かかる研磨処理に関しては、特許文献1〜3に記載されたものが知られている。
【0006】
まず、特許文献1に記載のものは、研磨モードの運転時に研磨ローラを強制駆動する一方、通常の画像形成モードのときには時には当該研磨ローラを感光体に従動させるようにしている。こうすることで感光体の周面の清浄化処理を確保しつつ画像形成時におけるジッタ(時間的なゆらぎ)の発生を防止し得ると特許文献1に記載されている。
【0007】
また、特許文献2に記載のものは、研磨モードの運転時にa−Si感光体の周面に形成させるソリッド画像(全面が同一色の、いわゆるベタ画像)の形成時間を温度や湿度に応じて種々変化させるようにしている。こうすることで温度および湿度に応じた放電生成物の量に適合する研磨処理が実現すると特許文献2に記載されている。
【0008】
さらに、特許文献3のものは、研磨モードの運転時にa−Si感光体の周面に形成させるソリッド画像の形成時間のみならず、ソリッド画像の形成繰り返し回数を温度や湿度によって変化させるようにしている。こうすることで温度および湿度に応じた必要十分な研磨用のトナーを得ることができ、トナーの無駄な消費をおさえることができると特許文献3に記載されている。
【特許文献1】特開2000−81820号公報
【特許文献2】特開2002−14589号公報
【特許文献3】特開2003−330319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1〜3に記載のa−Si感光体の研磨処理にあっては、研磨モードのときに帯電器により帯電されたa−Si感光体の周面の全面に対し露光装置から光が万遍なく照射され、これによって全面の帯電状態が解消された感光体の周面に現像装置からトナーが供給されるようになされている。従って、a−Si感光体の周面には、全面に亘って均一に大量のトナーが付着したソリッド画像が形成された状態になる。
【0010】
研磨モード時にこの大量のトナーが研磨ローラによる研磨処理の研磨材として使用されるため、a−Si感光体の周面を必要かつ十分に研磨処理する量を超えてしまい、これによってトナーが無駄に消費されたり、研磨処理の実行中にトナー切れになってしまったりするという不都合が生じていた。
【0011】
本発明は、従来のかかる状況に鑑みなされたものであって、a−Si感光体の周面の研磨モード時にトナーの無駄な消費を抑えた上で、状況に応じてa−Si感光体の周面に対し必要かつ十分な研磨処理を施し得る画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の発明は、画像形成モードにおいて軸心回りに回転する感光体の周面に対する所定の露光装置からの所定の画像情報に基づく露光処理により形成された静電潜像に所定の現像装置から現像ローラを介しトナーを供給することによって形成されたトナー像を用紙に転写する一方、研磨モードにおいて軸心回りに回転する感光体の周面に供給されたトナーを研磨剤として用い所定の研磨ローラの軸心回りの回転で当該周面に研磨処理を施し得るように構成された画像形成装置であって、所定の帯電装置により帯電処理が施され、かつ、前記露光処理が施されない状態での感光体の周面の表面電位をV0、画像形成モード時に前記現像装置内の現像ローラに印加される直流バイアス電圧をVdc1、研磨モード時に前記現像装置内の現像ローラに印加されるバイアス電圧をVdc2とした場合、研磨モード時に(V0−Vdc1)>(V0−Vdc2)を満足する条件で前記現像ローラに電圧を印加する電圧印加手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
かかる構成によれば、感光体の周面に対して研磨処理を施す場合には、感光体を軸心回りに回転させた状態で現像装置から感光体の周面に研磨剤を含むトナーを供給し、この状態で周面が感光体の周面に当接した研磨ローラを軸心回りに回転させることにより、感光体の周面は研磨ローラのトナーを介した摺接で研磨され、付着していた放電生成物等が取り除かれて清浄化される。
【0014】
そして、この研磨処理において、感光体の周面に対し露光しない状態での表面電位をV0、通常の画像形成モード時に現像装置内の現像ローラに印加される直流バイアス電圧をVdc1、感光体の研磨モード時に現像装置内の現像ローラに印加されるバイアス電圧をVdc2とした場合、感光体の研磨モード時に、(V0−Vdc1)>(V0−Vdc2)を満足する条件で感光体の周面にトナーが供給されるため、感光体の周面と現像ローラとの間の電位差については、研磨処理を施しているときの方が通常の画像形成処理を行っているときより小さくなるように設定されている。従って、感光体の周面とトナーとが同極の電荷を有している場合、研磨処理のときには、画像形成処理のときより感光体との間の電位差が小さい分、均一にかつ少量のトナーを感光体の周面へ向かわせることが可能になる。このことは、種々の試験を行った結果確認されている。
【0015】
従って、従来のように、研磨モード時の現像ローラの電位を画像形成時のときと同一に設定し、かつ、感光体の周面を露光して電位を下げている場合には、感光体の周面の研磨処理には不必要な大量のトナーが研磨モード時に感光体の周面に供給されてしまい、これによってトナーが無駄に消費されてしまいメンテナンスコストが高騰するばかりか、研磨処理中にトナー切れになってしまって研磨処理を完遂させ得なくなるような不都合が生じることがあるが、本発明においては、このような不都合の発生が有効に抑制され、研磨処理に必要かつ十分なトナーが感光体の周面に供給される。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記電圧印加手段は、温度および湿度のいずれか一方または双方に対応して前記(V0−Vdc2)の値を変化させ得るように構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
かかる構成によれば、トナーは、温度および湿度のいずれか一方または双方に応じて最適の状態で感光体に供給され、これによって感光体周面に当該トナーによる最適の研磨処理が施される。なお、温度および湿度のいずれか一方または双方に対応して(V0−Vdc2)の値を変化させることについては、種々の確認試験の結果、温度および湿度に応じてトナーの感光体へ移り難くなることが種々の試験で確認されたためであり、この試験結果に基づき直流バイアス電圧Vdc2を温度および湿度に応じて種々変化させているのである。
【0018】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記研磨ローラおよび前記感光体ドラムを駆動する駆動手段が設けられ、前記駆動手段は、温度および湿度のいずれか一方または双方に対応して前記研磨ローラと前記感光体との周速比を変化させ得るように構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
かかる構成によれば、温度および湿度のいずれか一方または双方に対応して研磨ローラと感光体との周速比を変化させることで感光体の周面に対し常に最適の研磨処理が施される。
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記駆動手段は、前記 周速比に応じて前記研磨ローラによる前記感光体に対する研磨時間を変化させ得るように構成されていることを特徴とするものである。
【0021】
かかる構成によれば、研磨ローラと感光体との間の周速比に応じて研磨ローラによる前記感光体に対する研磨時間を変化させることにより、感光体周面の研磨処理についてのより木目の細かい制御が実現する。
【0022】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記感光体は、周面にアモルファスシリコン層が積層されてなるアモルファスシリコン感光体ドラムであることを特徴とするものである。
【0023】
かかる構成によれば、アモルファスシリコン層は、表面が極めて滑らかで、かつ、高硬度であるため、かかるアモルファスシリコン層が形成された感光体ドラムは、静電潜像やトナー像を形成させるために好適なものになる。
【発明の効果】
【0024】
請求項1記載の発明によれば、感光体の周面に対し露光しない状態での表面電位をV0、通常の画像形成モード時に現像装置内の現像ローラに印加される直流バイアス電圧をVdc1、感光体の研磨モード時に現像装置内の現像ローラに印加されるバイアス電圧をVdc2とした場合、感光体の研磨モード時に、(V0−Vdc1)>(V0−Vdc2)を満足する条件で感光体の周面にトナーが供給されるため、従来のように、研磨モード時の現像ローラの電位を画像形成時のときと同一に設定し、かつ、感光体の周面を露光して電位を下げている場合には、感光体の周面の研磨処理には不必要な大量のトナーが研磨モード時に感光体の周面に供給されてしまい、これによってトナーが無駄に消費されてしまいメンテナンスコストが高騰するばかりか、研磨処理中にトナー切れになってしまって研磨処理を完遂させ得なくなるような不都合が生じることがあるが、本発明においては、このような不都合の発生が有効に抑制され、常に研磨処理に必要かつ十分なトナーが感光体の周面に供給されることで研磨処理のコストを低減させることができる。
【0025】
請求項2記載の発明によれば、トナーは、温度および湿度のいずれか一方または双方に応じて最適の状態で感光体に供給され、これによって感光体周面に当該トナーによる最適の研磨処理を施すことができる。
【0026】
請求項3記載の発明によれば、温度および湿度のいずれか一方または双方に対応して研磨ローラと感光体との周速比を変化させることで感光体の周面に対し常に最適の研磨処理を施すことができる。
【0027】
請求項4記載の発明によれば、研磨ローラと感光体との間の周速比に応じて研磨ローラによる前記感光体に対する研磨時間を変化させるようにしているため、感光体周面の研磨処理についてのより木目の細かい制御を実現させることができる。
【0028】
請求項5記載の発明によれば、感光体ドラムの周面に積層されたアモルファスシリコン層は、表面が極めて滑らかで、かつ、高硬度であるため、かかるアモルファスシリコン層が形成された感光体ドラムを、静電潜像やトナー像を形成させるために好適なものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は、本発明に係る画像形成装置の一例である複写機1の内部構成の概要を説明するための正面断面視の説明図である。図1に示すように、複写機1は、本体部10内に画像形成部100、原稿読取部300および給紙部400が内装されるとともに、本体部10の上部に原稿給送部200が設けられた基本構成を有している。前記画像形成部100は、本体部10の中央部に形成され、この本体部10の後述する胴内排紙トレイ131を介した上部位置に原稿読取部300が設けられているとともに、同下部位置に給紙部400が形成されている。また、本体部10の上部フロント位置に操作表示部500が設けられている。
【0030】
前記原稿読取部300は、原稿の読み取りを行って当該原稿に対応する画像データを生成するものである。かかる原稿読取部300は、光学的に取得した原稿の画像から画像データを生成するCCD(charge coupled device)イメージセンサおよび露光ランプ等を備えたスキャナ301などを有し、その上面に、原稿画像を読み取るための原稿が載置される第1プラテンガラス302と、原稿給送部200のADF(原稿自動読取装置)用の第2プラテンガラス303とを備えている。
【0031】
原稿読取部300は、第1プラテンガラス302上に載置された原稿、あるいは原稿給送部200で第2プラテンガラス303へ向けて自動送給された原稿を走査しつつ取得した画像データを後述する主制御部20へ出力するようになっている。
【0032】
前記ADFを備えた原稿給送部200は、第2プラテンガラス303の原稿読み取り位置へ原稿を給送するとともに、原稿読取部300によって読み取られた原稿を原稿給送部200の排出部へ排出するようになっている。かかる原稿給送部200は、装置の背面側を回動支点(回転中心軸)として原稿読取部300の上面に対して可倒式に構成されており、第1および第2プラテンガラス302,303の上面を開放するようになされ、第1プラテンガラス302の上面に、例えば見開き状態にされた書籍等のブック原稿を載置することが可能になっている。
【0033】
前記給紙部400は、画像形成部100に対して転写処理用の用紙を給紙するためのものである。かかる給紙部400は、各サイズの用紙(記録紙)が収納される給紙カセット401、402と、本体部10の一側方に開閉自在に構成された手差しトレイ4031等からなる手差し給紙部403とを備えて構成されている。
【0034】
かかる給紙部400は、各給紙カセット401、402から画像形成部100へ用紙を搬送する搬送経路404と、手差し給紙部403から画像形成部100へ用紙を搬送する搬送経路405とを備えている。各給紙カセット401、402および手差し給紙部403は、収納されている用紙を取り出すためのピックアップローラ406、407、408、および用紙を1枚ずつ各搬送経路に送り出す給紙ローラ409、410、411を備えている。前記搬送経路404には、用紙を搬送する搬送ローラ412、413および搬送されてくる用紙を画像形成部100の手前で待機させるためのレジストローラ414が設けられている。なお、前記搬送経路405は、搬送ローラ413とレジストローラ414との間で搬送経路404と合流している。
【0035】
画像形成部100は、給紙部400によって搬送されてきた用紙に対して所定の形成された画像を転写するものである。かかる画像形成部100は、ドラムユニット部110および定着部120を備えている。ドラムユニット部110の詳細については後述する。
【0036】
定着部120は、ドラムユニット部110において用紙に転写されたトナー像を定着させるものである。かかる定着部120は、ヒートローラ121および周面がこのヒートローラ121の周面に対向配置された圧ローラ122を備え、用紙がこれらヒートローラ121と圧ローラ122とのニップ部に供給されることにより用紙上のトナー像がヒートローラ121からの熱を得て溶融し、用紙に定着されるようになっている。
【0037】
本体部10と原稿読取部300との間には、胴内排紙トレイ131が設けられているとともに、図1における左側部には機外排紙トレイ132が設けられ、定着部120から搬送されてきた用紙は、それぞれ排出ローラ133、134によって対象となる排紙トレイ131、132へ向けて排出されるようになっている。なお、用紙の搬送方向は、排出分岐ガイド135によって、胴内排紙トレイ131向けの排出ローラ133側と機外排紙トレイ132向けの排出ローラ134側とに切り換え可能になっている。
【0038】
操作表示部500は、ユーザの操作に応じて所定の指示入力を行うものである。かかる操作表示部500は、ユーザが印刷実行指示を入力するためのスタートキー501と、印刷部数等を入力するためのテンキー502と、各種複写動作の設定等を入力するための操作ガイド情報等を表示すると共に、種々の操作ボタン等が表示される液晶表示器(LCD)等からなるディスプレイ503とを備えている。
【0039】
図2は、ユニット構成されたドラムユニット部110の一実施形態の概要を説明するための正面断面視の説明図である。図2に示すように、ドラムユニット部110は、感光体ドラム101と、この感光体ドラム101の周囲に直上位置から時計方向に向けて順次配設された帯電部102、現像部(現像装置)103、クリーニング部104、露光部105、転写部106、除電部107および直流バイアス電圧記憶部108とを備えて構成されている。
【0040】
感光体ドラム(感光体)101は、軸心回りに同図中に示す矢印方向に回転可能に支持されている。本実施形態においては感光体ドラム101として周面にアモルファスシリコン(a−Si)が積層されてなるアモルファスシリコンドラム(a−Siドラム)が採用されている。かかるa−Siドラムは、所定のドラム状の円筒体の表面にアモルファスシリコンの膜(例えば膜厚は20μm)が蒸着等により積層されたものである。このa−Si膜は、膜表面硬度が例えばビッカース硬さで約1500〜2000と極めて高い硬度を有している。かかる感光体ドラム101の周面は、帯電部102により約+250Vに一様に帯電され、該周面上に露光部105からの光の照射で画像情報に応じた静電潜像が形成される。なお、感光体ドラム101は、約210mm/secのスピード(ドラム線速)で駆動回転されるようになっている。
【0041】
帯電部102は、感光体ドラム101の表面を所定電位に均一に帯電させるものである。かかる帯電部102は、感光体ドラム101の周面に対向配置された帯電ワイヤ1021を有し、この帯電ワイヤ1021に所定の電圧が印加されることによりコロナ放電で感光体ドラム101の周面(すなわちa−Si層)に一様な電荷を付与するようになっている。
【0042】
現像部103は、露光部105からの光の照射で感光体ドラム101の周面に形成された静電潜像上にトナーを付着させて静電潜像を顕在化(現像)するものである。かかる現像部103は、感光体ドラム101と僅かな隙間を介して対向配置された現像ローラ1031と、トナーを収納するトナー収納部1032と、現像ローラ1031の直上位置に配設された層規制ブレード1033とを備えて構成されている。
【0043】
前記層規制ブレード1033は、トナー収納部1032から現像ローラ1031上に供給されるトナー量が適正量となるように、すなわちトナーの薄層が形成されるようにトナー量を規制するものである。
【0044】
かかる現像部103において、通常の画像形成モード時に現像ローラ1031に、例えば周波数約6.0kHzで1.6kVの交流バイアス電圧と、180Vの直流バイアス電圧Vdcとを印加することでトナーを例えばプラスに帯電し、このトナーを現像ローラ1031上から感光体ドラム101周面の露光した部分(露光により電荷が除去されてなる静電潜像の部分)に吸着させる。これにより静電潜像がトナーによる実像に置き換えられて現像ローラ1031の周面にトナー像が形成されることになる。
【0045】
前記クリーニング部104は、クリーニングローラ(研磨ローラ)1041およびクリーニングブレード1042等を備えて構成され、用紙への画像の転写が終了した後の感光体ドラム101の周面に残留しているトナー(転写残トナー)をクリーニング(清浄化処理)するとともにドラム周面の除電を行うものである。具体的には、クリーニングローラ1041は、例えばEPDM(エチレンプロピレンゴム)材からなり、感光体ドラム101に摺接研磨しつつ回転し、該ドラム周面の放電生成物を除去する。また、クリーニングブレード1042は、その下端縁部1043を感光体ドラム101周面に圧接し、該感光体ドラム101周面の残留トナーを機械的に除去するようになっている。
【0046】
露光部105は、後述する画像記憶部30等から送信されてきた画像データに基づき、露光レーザ1051を感光体ドラム101の周面に照射し、当該周面をレーザービームで走査して露光することにより感光体ドラム101周面に静電潜像を形成するものである。
【0047】
転写部106は、感光体ドラム101に形成されたトナー像を用紙に転写するためのものであり、感光体ドラム101の周面に対向配置され、かつ、トナー像とは逆電位の電圧が印加される転写ローラ1061を備えている。そして、矢印A方向に搬送されてきた用紙は、転写ローラ1061によって感光体ドラム101に押し当てられ、これによって用紙には、前記現像部103において感光体ドラム101上に顕在化されたトナー像が静電気的に引き剥がされて転写されることになる。なお、本実施形態においては、顕在化された感光体ドラム101周面のトナー像は、転写ローラ1061において転写バイアス−2.5kVで用紙上に転写されるようにしている。
【0048】
前記除電部107は、LED光等の除電用光線を感光体ドラム101の周面に照射することによって当該感光体ドラム101の周面を除電処理する(すなわち、残留電荷を消去する)ものである。
【0049】
そして、本発明においては、感光体ドラム101の周面の研磨処理のために複写機1の動作に関し特に設定された研磨モードにおいて、軸心回りに回転する感光体ドラム101の周面を、前記現像部103の現像ローラ1031から当該周面に供給された研磨剤を含むトナーを用いて前記クリーニングローラ1041の軸心回りの回転で研磨処理することにより清浄化するようにしている。
【0050】
そのために、研磨モードにおいては、感光体ドラム101の周面に対する帯電ワイヤ1021による帯電処理が実行された後に露光部105からの感光体ドラム101周面に対する露光処理が停止された状態で感光体ドラム101に向けて現像ローラ1031からトナーを供給するようにしている。感光体ドラム101の周面に対して露光処理が施されないのであるから、感光体ドラム101の周面には帯電状態が消去されることによって形成される静電潜像が全く存在せず、従って、現像ローラ1031の電圧条件が画像形成モードのときの電圧条件のままではトナー収納部1032内のトナーが現像ローラ1031の周面から感光体ドラム101の周面に向けて飛翔することがなく、感光体ドラム101の周面に研磨処理用のトナーを確保することができなくなる。
【0051】
そこで、本発明においては、帯電部102による帯電処理後の感光体ドラム101の周面であって、露光部105によって露光されない状態における当該周面の表面電位をV0、通常の画像形成モード時の現像部103内のトナーに現像ローラ1031を介して印加される直流バイアス電圧Vdc1、研磨モードで現像部103内のトナーに現像ローラ1031を介して印加される直流バイアス電圧をVdc2とした場合、感光体ドラム101の周面に研磨処理を施す研磨モードにおいては、下記(i)〜(iii)式を満足するように各電圧が設定される。
【0052】
V0>Vdc1・・・(i)
V0>Vdc2・・・(ii)
(V0−Vdc1)>(V0−Vdc2)・・・(iii)
すなわち、これら(i)〜(iii)式の意味するところは、感光体ドラム101の周面と現像ローラ1031の周面との間の電位差については、研磨モードのときの方が画像形成モードのときより小さくなるように設定されるということである。こうすることによって、研磨モードにおいては、画像形成モードのときより感光体ドラム101との間の電位差が小さい分、トナーを感光体ドラム101の周面へ向かわせることが可能になる。
【0053】
つまり、従来のように、研磨モード時に現像ローラ1031に印加される直流バイアス電圧Vdc2が画像形成モード時に現像ローラ1031に印加される直流バイアス電圧Vdc1と同一の電位であるなら(すなわちVdc2=Vdc1(V0−Vdc1=V0−Vdc2)であるなら)、研磨モード時に感光体ドラム101に対し露光部105による露光処理がない限り現像ローラ1031から感光体ドラム101へ向けてトナーが飛翔することはない。
【0054】
これでは研磨処理用のトナーを感光体ドラム101の周面に確保することができなくなるため、研磨モード時の直流バイアス電圧Vdc2を画像形成モード時の直流バイアス電圧Vdc1よりも高くして感光体ドラム101の表面電位V0に近付けるようにし(すなわち感光体ドラム101の周面のプラスの帯電と、トナーのプラスの帯電との間の排斥力を弱くし)、これによって現像ローラ1031の周面から感光体ドラム101の周面に向けてトナーを移し得るようにしているのである。
【0055】
但し、前記(ii)式の条件によって、研磨モード時のトナーの直流バイアス電圧Vdc2が感光体ドラム101の表面電位V0を超えることがないようになされている。このようにされるのは、もしトナーの直流バイアス電圧Vdc2が感光体ドラム101の表面電位V0より大きくなると、トナーが感光体ドラム101の周面に向けて静電気的な力で積極的に移動し得るようになり(すなわち、両者間の電位差の点で感光体ドラム101の周面に露光処理が施された場合と同様になり)、これによって従来と同様に大量のトナーが現像部103から感光体ドラム101へ供給されてしまうため、かかる不都合をなくすべく前記(ii)式の条件が設定されているのである。
【0056】
そして、前記(i)〜(iii)式の条件を満足するように電圧制御を行うことによって、本発明では、研磨モードにおける感光体ドラム101の周面に形成されるソリッド画像のトナー量は、従来の同ソリッド画像のトナー量より少なくすることができる。
【0057】
従って、従来のように、研磨モード時の現像ローラ1031の電位を画像形成モードのときと同一に設定するとともに、感光体ドラム101の周面に対して露光部105による露光処理を実施している場合には、現像ローラ1031の周面と感光体ドラム101周面との間の大きな電位差により感光体ドラム101の周面の研磨処理には不必要な大量のトナーが研磨モード時に感光体ドラム101の周面に供給されてしまい、これによってトナーが無駄に消費されてしまいメンテナンスコストが高騰するばかりか、研磨処理中にトナー切れになってしまって研磨処理を完遂させ得なくなるような不都合が生じることがあるが、本発明においては、このような不都合の発生が有効に抑制される。
【0058】
さらに本発明においては、種々の試験を実施した結果、感光体ドラム101の周面の露光しない状態における表面電位V0と、研磨モード時に現像ローラ1031に印加される直流バイアス電圧Vdc2との間の電位差(前記(iii)式の右辺)、すなわち以下の(iv)式におけるVdの値を、温度および湿度によって変化させるようにしている。
【0059】
Vd=V0−Vdc2・・・(iv)
このようにされるのは、以下の理由による。すなわち、温度および湿度が高くなるに従って画像流れが増加することが種々の試験で確認されたためである。本実施形態においては、感光体ドラム101の表面電位V0は不変とし、現像ローラ1031へ印加される直流バイアス電圧Vdc2(すなわちトナーの電圧)を温度および湿度に応じて種々変化させている。
【0060】
図3は、図1に示す複写機1の主制御部20による動作制御を説明するためのブロック図である。複写機1は、図3に示すような装置全体の動作を制御するマイクロコンピュータからなる主制御部20を備えている。主制御部20は、複写機1の各種の動作に関し予め入力されたプログラムに基づき制御を実行する演算処理装置としてのCPU(central processing unit)、複写機1の制御プログラムを記憶するROM(read only memory)、一時的にデータを保管するRAM(random access memory)等を備えて構成され、操作表示部500等において入力された所定の指示情報や、各所に設けられた各種センサからの検出信号に応じて装置全体の制御を行うようになされている。
【0061】
かかる主制御部20は、例えば所定期間、複写機1が使用されない即ちコピー動作が実行されないような場合に、複写機1各部を所謂スリープモードでの駆動状態に移行させる制御、或いはユーザがコピーを実行しようとした時点で当該スリープモードから自動的に通常印刷モードに復帰させる制御なども行う。また、主制御部20は、前記画像形成部100、前記原稿給送部200、前記原稿読取部300、前記給紙部400、前記操作表示部500、前記画像記憶部30、および形成された画像に対して所定の処理を施すべく設けられた画像処理部40、並びに研磨モードでの感光体ドラム101周面および現像ローラ1031を対象とした電圧制御を行うための検出信号を得るべく設けられた温度/湿度計測部600などに電気的に接続されている。
【0062】
前記温度/湿度計測部600は、複写機1内の温度および湿度を同時に一体的に計測し得るように構成された温湿度センサである。かかる温度/湿度計測部600は、複写機1内の所定の位置(現像ローラ1031の周りの環境の温度や湿度がより正確に計測できる位置)に設けられている。なお、温度/湿度計測部600として温度および湿度をそれぞれ別々に計測する別体としての温度センサと湿度センサとで構成してもよい。
【0063】
前記画像記憶部30は、原稿読取部300によって読み取られた原稿の画像データや図略のネットワークI/F部等を介して外部装置から送信されてきた画像データを一時的に記憶するメモリである。
【0064】
前記画像処理部40は、前記画像データに対する各種画像処理、例えばガンマ処理や拡大縮小処理等を行うものである。かかる画像処理部40では、例えば原稿読取部300によって読み取られた原稿画像に対する画像データのA/D変換が行われ、当該A/D変換によって得られたデジタルデータによる画像データを用いて前記各種画像処理が行われる。なお、画像形成部100は、前記直流バイアス電圧記憶部108を含んでいる。直流バイアス電圧記憶部108には、研磨モードにおいて温度および湿度に応じ現像ローラ1031に印加するべき電圧を設定したテーブルが記憶されている。
【0065】
そして、前記主制御部20は、感光体ドラム101に対して研磨処理を施すべきタイミングが到来したか否かを判別する研磨タイミング判別部21と、この研磨タイミング判別部21が研磨タイミングの到来を判別した場合、現像ローラ1031に印加するべき直流バイアス電圧Vdc2の値を設定するとともに、現像ローラ1031に対し電圧を印加する所定の電源装置19(図2)に向けて制御信号を出力する直流バイアス電圧設定部22とを備えている。
【0066】
前記研磨タイミング判別部21が感光体ドラム101の周面に対する研磨タイミングを判別するために、本体部10内の適所には、画像形成処理に供された用紙の枚数を検出する枚数センサ18(図1)が設けられているとともに、前記画像形成部100に設けられたタイミング枚数記憶部109には、感光体ドラム101の周面に対して研磨処理を施すべき基準とされる上限用紙枚数が記憶されている。
【0067】
そして、研磨タイミング判別部21は、枚数センサ18が画像形成処理に供された用紙を検出する都度、当該枚数を積算して積算値を記憶するとともに、当該積算値と前記タイミング枚数記憶部109が記憶している上限用紙枚数とを比較し、積算値が上限用紙枚数を超えたときに画像形成モードから研磨モードにモード変更する時期が到来したと判別するようになっている。この判別結果は、前記直流バイアス電圧設定部22へ向けて出力される。
【0068】
前記直流バイアス電圧設定部22は、研磨タイミング判別部21から研磨モードへモード変更するべき時期が到来した旨の判別結果が入力されると、操作表示部500からの所定の信号に基づき複写機1が画像形成処理を実行していない状態であることを確認の上、関連各所に画像形成モードから研磨モードにモード変更する旨の制御信号を出力し、これによって複写機1は、画像形成モードから研磨モードに自動的にモード変更されることになる。
【0069】
なお、こうする代わりに、研磨タイミング判別部21から研磨モードへモード変更するべき時期が到来した旨の判別結果が入力されると、操作表示部500に向けてモード変換時期到来の表示出力を行わせるようにし、オペレータがこの表示出力に基づき所定のキーの押釦操作で画像形成モードから研磨モードにモード変換が行われるようにしてもよい。
【0070】
そして、画像形成モードから研磨モードにモード変換が行われると、直流バイアス電圧設定部22は、特に露光部105に対して光照射を行わせないための制御信号を出力する(つまり露光部105に向けて光照射を行わせるべき信号を出力しないようにする)とともに、電源装置19に対し現像ローラ1031へ向けて温度/湿度計測部600が検出した温度および湿度に基づき前記直流バイアス電圧記憶部108が記憶しているテーブルから選び出した値の直流バイアス電圧Vdc2を印加させるべき制御信号を出力するようになっている。因みに、本実施形態においては、前記直流バイアス電圧設定部22と電源装置19とで本発明に係る電圧印加手段が構成されている。
【0071】
従って、かかる制御信号を受けた電源装置19は、そのときの温度および湿度に対応した最適の値の直流バイアス電圧Vdc2を現像ローラ1031へ向けて出力するため、この直流バイアス電圧Vdc2が印加された現像ローラ1031から感光体ドラム101の周面に向けて適量のトナーが供給されることになる。
【0072】
また、直流バイアス電圧設定部22にはタイマーが設けられている一方、前記画像形成部100には研磨モードにおける研磨処理の時間(設定時間)を記憶する研磨時間記憶部1091が設けられている。
【0073】
そして、直流バイアス電圧設定部22は、研磨モードの開始時にタイマーをスタートさせるとともに、タイマーの計時時間と研磨時間記憶部1091に記憶されている研磨処理の設定時間とを比較し、タイマーの計時時間が設定時間を経過したときは、電源装置19に向けて現像ローラ1031に対する電圧印加を中止させる制御信号を出力するとともに、関連各所に向けて研磨モードから画像形成モードへモード変更させるための信号を出力するようになされている。
【0074】
以下、図4を基に研磨モードにおける感光体ドラム101の周面の研磨処理のフローについて説明する。図4は、研磨モードにおける感光体ドラム101周面の研磨処理のフローの一実施形態を示すフローチャートである。このフローチャートにおいては、複写機1が画像形成モードに設定された状態をスタート時点としている。
【0075】
まず、ステップS1において処理された用紙の累積枚数がタイミング枚数記憶部109に記憶されている上限枚数を超えたか否かが研磨タイミング判別部21によって判別され、超えている場合(ステップS1でYES)には、すでに感光体ドラム101の周面に研磨処理を施すべき時期が到来したと判断される。
【0076】
ついで、研磨処理の時期が到来したと判別された後、感光体ドラム101の研磨処理を行っても支障のない状態になっているか否かを判別するべく当該複写機1がスリープモードに設定されているか否かが判別され(ステップS2)、スリープモードになっていない場合(ステップS2でNO)には、画像形成モードから研磨モードへのモード変換が行われることなく現状の画像形成モードが継続される(ステップS3)。従ってたとえ用紙の積算枚数が上限枚数を超えていても、スリープモードになるまでの間については、上限枚数を超えて画像形成処理が継続されることになる。
【0077】
ステップS2でスリープモードになったと判別される(ステップS2でYES)と、直流バイアス電圧設定部22から関連機器に向けて現状の画像形成モードを研磨モードへモード変更するための制御信号が出力され、これにより複写機1は、研磨モードになって感光体ドラム101に対し研磨処理を施し得る態勢(具体的には、感光体ドラム101およびクリーニングローラ1041がそれぞれ駆動回転しつつ帯電ワイヤ1021がコロナ放電を行って感光体ドラム101の周面に表面電位V0の電荷が形成させた状態)になる(ステップS4)。
【0078】
この状態で、直流バイアス電圧設定部22は、温度/湿度計測部600からの検出信号に基づきタイミング枚数記憶部109に記憶されている温度および湿度に応じ現像ローラ1031に印加するべき電圧を設定したテーブルを参照して直流バイアス電圧Vdc2を選択して設定し、電源装置19を介してこの直流バイアス電圧Vdc2を現像ローラ1031に印加する(ステップS5)。これによって感光体ドラム101の周面に対する研磨剤としてのトナーを用いたクリーニングローラ1041の駆動による研磨処理が実行されることになる(ステップS6)。
【0079】
ついで、ステップS7において、直流バイアス電圧設定部22は、研磨時間記憶部1091に記憶されている予め設定された研磨時間と、タイマーが計時した計時時間とを比較し、計時時間が設定研磨時間を超えたとき(ステップS7でYES)、研磨モードから元に画像形成モードにモード変更され(ステップS8)、感光体ドラム101の周面に対する研磨処理が終了する。
【0080】
以上詳述したように、本発明に係る複写機1は、軸心回りに回転する感光体ドラム101の周面を、現像部103から当該周面に付与された研磨剤を含むトナーを用い周面が感光体ドラム101の周面に当接した研磨ローラとしてのクリーニングローラ1041の軸心回りの回転で研磨することにより清浄化処理し得るように構成されたものである。
【0081】
かかる構成によれば、感光体ドラム101の周面に対して研磨処理を施す場合には、感光体ドラム101を軸心回りに回転させた状態で現像部103から感光体ドラム101の周面に研磨剤を含むトナーを供給し、この状態で周面が感光体ドラム101の周面に当接したクリーニングローラ1041を軸心回りに回転させることにより、感光体ドラム101の周面はクリーニングローラ1041のトナーを介した摺接で研磨され、これによって感光体ドラム101の周面は、付着していた放電生成物等が取り除かれて清浄化される。
【0082】
そして、この研磨処理において、感光体ドラム101の周面に対し露光しない状態での表面電位をV0、通常の画像形成モード時に現像部103内の現像ローラ1031に印加される直流バイアス電圧をVdc1、感光体ドラム101の研磨モード時に現像部103内の現像ローラ1031に印加されるバイアス電圧をVdc2とした場合、感光体ドラム101の研磨モード時に、(V0−Vdc1)>(V0−Vdc2)を満足する条件で感光体ドラム101の周面にトナーが供給されるため、感光体ドラム101の周面と現像ローラ1031の周面との間の電位差については、研磨処理を施しているときの方が通常の画像形成処理を行っているときより小さくなるように設定されており、これによって感光体ドラム101の周面とトナーとが同極の電荷を有している場合、研磨処理のときには、画像形成処理のときより感光体ドラム101との間の電位差が小さい分、トナーを感光体ドラム101の周面へ向かわせることができる。
【0083】
つまり、従来のように、研磨モード時に現像ローラ1031に印加される直流バイアス電圧Vdc2が画像形成モード時に現像ローラ1031に印加される直流バイアス電圧Vdc1と同一の電位であるなら(すなわちVdc2=Vdc1(V0−Vdc1=V0−Vdc2)であるなら)、研磨モード時に感光体ドラム101に対し露光処理がない限りトナーが感光体ドラム101へ向けて飛翔することはなく、これでは研磨処理用のトナーを感光体ドラム101の周面に確保することができなくなるため、研磨モード時の直流バイアス電圧Vdc2を画像形成時の直流バイアス電圧Vdc1よりも高くして感光体ドラム101の表面電位V0に近付けるようにし(すなわち感光体ドラム101の周面のプラスの帯電と、トナーのプラスの帯電との排斥力を弱くし)、これによって現像ローラ1031の周面から感光体ドラム101の周面に向けてトナーを移し得るようにしているのである。
【0084】
従って、従来のように、研磨モード時の現像ローラ1031の電位を画像形成時のときと同一に設定し、かつ、感光体ドラム101の周面を露光して電位を下げている場合には、感光体ドラム101の周面の研磨処理には不必要な大量のトナーが研磨モード時に感光体ドラム101の周面に供給されてしまい、これによってトナーが無駄に消費されてしまいメンテナンスコストが高騰するばかりか、研磨処理中にトナー切れになってしまって研磨処理を完遂させ得なくなるような不都合が生じることがあるが、本発明においては、このような不都合の発生が有効に抑制され、常に研磨処理に必要かつ十分なトナーが感光体ドラム101の周面に供給されることで研磨処理のコストを低減させることができる。
【0085】
また、上記の実施形態においては、温度および湿度に対応して(V0−Vdc2)の値を変化させるようにしているため、トナーは、温度および湿度の変化に応じて最適の状態で感光体ドラム101に供給され、これによって感光体ドラム101周面に当該トナーによる最適の研磨処理を施すことができる。
【0086】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下の内容をも包含するものである。
【0087】
(1)上記の実施形態においては、画像形成装置として複写機1を例に挙げて説明したが、本発明は、画像形成装置が複写機1であることに限定されるものではなく、遠隔地から伝送された画像情報に基づき画像を形成するファクシミリ装置であってもよいし、コンピュータ等の外部機器からの画像情報に基づき画像形成処理を実行するプリンタ等であってもよい。
【0088】
(2)上記の実施形態においては、温度および湿度に応じて(V0−Vdc2)の値を変化させるようにしているが、こうする代わりに、温度および湿度に応じてクリーニングローラ1041と感光体ドラム101との周速比を変化させるようにしてもよい。すなわち、温度および湿度の値が高くなると、画像流れが増加することが種々の試験で確認されているため、それを補うべく温度および湿度に応じてクリーニングローラ1041と感光体ドラム101との周速比を上げていくのである。こうすることによって感光体ドラム101の周面に対し常に最適の研磨処理を施すことができる。
【0089】
(3)上記の実施形態においては、温度および湿度に対応して(V0−Vdc2)の値を変化させるようにしているが、例えば複写機1が据え付けられた環境が温度制御によって温度が常に略一定に制御されていたり、あるいは湿度制御によって湿度が常に略一定に制御さえていたりする場合には、温度および湿度の一方側のみに応じて(V0−Vdc2)の値を変化させるようにしてもよい。
【0090】
(4)上記の実施形態においては、本発明に係る電圧印加手段を備えた画像形成装置(複写機1)としてモノクロ印刷用のものを例として挙げているが、本発明は、画像形成装置がモノクロ印刷用のものであることに限定されるものではなく、カラー印刷が可能な画像形成装置(いわゆるカラー機)であってもよい。
【実施例1】
【0091】
本発明の効果を確認するべく、温度および湿度の変化に応じ現像ローラ1031を介して現像ローラ1031に印加される直流バイアス電圧Vdc2を種々変化させた上で実際にクリーニングローラ1041の駆動で当該トナーによる感光体ドラム101周面の研磨処理を実行し、引き続き実際に画像形成処理を行った。そして、画像形成処理の結果得られた転写処理済みの用紙を目視観察することにより画像形成の状態を検査した。
【0092】
この試験で用いた複写機1に採用されている感光体ドラム101は、直径が30mm、a−Si層の厚み寸法が20μmのものである。かかる感光体ドラム101の周面に帯電ワイヤ1021からの放電処理を施し、表面電位V0を300Vに設定した。
【0093】
また、この機種の現像ローラ1031は、直径が20mm、層規制ブレード1033と現像ローラ1031周面との間の隙間寸法が0.55mmである。また、現像ローラ1031の周面と感光体ドラム101の周面との間の隙間寸法は0.50mmに設定されている。
【0094】
このような現像ローラ1031には、画像形成モードにおいて周波数が6kHzの交流バイアス電圧と、180Vの直流バイアス電圧Vdc1が印加されるのであるが、この試験では交流バイアス電圧も印加している。温度および湿度に応じて予め設定された条件、すなわち感光体ドラム101の表面電位V0の値から現像ローラ1031に印加される直流バイアス電圧Vdc2の値を差し引いた表1に示す値(V0−Vdc2)になる条件で直流バイアス電圧Vdc2のみを現像ローラ1031に対して20秒間印加した。なお、表1中には、「V0−Vdc2」の値を示し、特に括弧内に直流バイアス電圧Vdc2の値を示している。
【0095】
【表1】

【0096】
そして、各温度および湿度毎に感光体ドラム101に対する20秒間の研磨処理を行った後に、それぞれの温度および湿度環境で複写機1により実際に画像形成処理を実行し、印刷された用紙の画像を目視で観察したが、いずれについても画像流れのない良好な画像であることを確認することができた。
【実施例2】
【0097】
つぎに、クリーニングローラ1041と感光体ドラム101との周速比を実施例1の場合の1.2から2.0にアップさせる代わりに、研磨時間を20秒から10秒にダウンさせ、その他の条件は実施例1の場合と同様に設定した上で感光体ドラム101に対して研磨処理を施した。
【0098】
そして、各温度および湿度毎に感光体ドラム101に対する10秒間の研磨処理を行った後に、それぞれの温度および湿度環境で複写機1により実際に画像形成処理を実行し、印刷された用紙の画像を目視で観察したが、いずれについても画像流れのない良好な画像であることを確認することができた。
【実施例3】
【0099】
この実施例3においては、実施例1と同様に温度および湿度の条件を区分した上で、各区分に先の現像ローラ1031へ印加する直流バイアス電圧Vdc2に代えてクリーニングローラ1041と感光体ドラム101との間の周速比を表2に示すように種々設定する一方、現像ローラ1031に印加される直流バイアス電圧Vdc2については一定の値である200Vに設定している。その他の条件については実施例1の場合と同様である。
【0100】
【表2】

【0101】
そして、各温度および湿度毎にそれぞれの周速比で感光体ドラム101に対する20秒間の研磨処理を行った後に、それぞれの温度および湿度環境で複写機1により実際に画像形成処理を実行し、印刷された用紙の画像を目視で観察したが、いずれについても画像流れのない良好な画像であることを確認することができた。
【0102】
なお、実施例3において、感光体ドラム101とクリーニングローラ1041との間の周速比に応じて、さらに研磨時間を変化させるようにしてもよい。こうすることでより木目の細かい感光体ドラム101周面の研磨処理を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例である複写機の内部構成の概要を説明するための正面断面視の説明図である。
【図2】ユニット構成されたドラムユニット部の一実施形態の概要を説明するための正面断面視の説明図である。
【図3】図1に示す複写機の主制御部による動作制御を説明するためのブロック図である。
【図4】研磨モードにおける感光体ドラム周面の研磨処理のフローの一実施形態を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0104】
1 複写機 10 本体部
100 画像形成部 101 感光体ドラム(感光体)
102 帯電部 1021 帯電ワイヤ
103 現像部(現像装置) 1031 現像ローラ
1032 トナー収納部 1033 層規制ブレード
104 クリーニング部 1041 クリーニングローラ(研磨ローラ)
1042 クリーニングブレード
1043 下端縁部 105 露光部
1051 露光レーザ 106 転写部
1061 転写ローラ 107 除電部
108 直流バイアス電圧記憶部
109 タイミング枚数記憶部
1091 研磨時間記憶部 110 ドラムユニット部
120 定着部 121 ヒートローラ
122 圧ローラ 131 胴内排紙トレイ
132 機外排紙トレイ
133 排出ローラ 134 排出ローラ
135 排出分岐ガイド 18 枚数センサ
19 電源装置(電圧印加手段)
20 主制御部 21 研磨タイミング判別部
22 直流バイアス電圧設定部(電圧印加手段)
30 画像記憶部 40 画像処理部
200 原稿給送部 300 原稿読取部
301 スキャナ 302 プラテンガラス
303 プラテンガラス 400 給紙部
401 給紙カセット 403 給紙部
404 搬送経路 405 搬送経路
406 ピックアップローラ 409 給紙ローラ
412 搬送ローラ 413 搬送ローラ
414 レジストローラ 500 操作表示部
501 スタートキー 502 テンキー
503 ディスプレイ 600 湿度計測部
4031 手差しトレイ I ネットワーク
V0 感光体ドラムの表面電位
Vdc1 画像形成モードにおいて現像ローラに印加される直流バイアス電圧
Vdc2 研磨モードにおいて現像ローラに印加される直流バイアス電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成モードにおいて軸心回りに回転する感光体の周面に対する所定の露光装置からの所定の画像情報に基づく露光処理により形成された静電潜像に所定の現像装置から現像ローラを介しトナーを供給することによって形成されたトナー像を用紙に転写する一方、研磨モードにおいて軸心回りに回転する感光体の周面に供給されたトナーを研磨剤として用い所定の研磨ローラの軸心回りの回転で当該周面に研磨処理を施し得るように構成された画像形成装置であって、
所定の帯電装置により帯電処理が施され、かつ、前記露光処理が施されない状態での感光体の周面の表面電位をV0、画像形成モード時に前記現像装置内の現像ローラに印加される直流バイアス電圧をVdc1、研磨モード時に前記現像装置内の現像ローラに印加されるバイアス電圧をVdc2とした場合、研磨モード時に(V0−Vdc1)>(V0−Vdc2)を満足する条件で前記現像ローラに電圧を印加する電圧印加手段が設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記電圧印加手段は、温度および湿度のいずれか一方または双方に対応して前記(V0−Vdc2)の値を変化させ得るように構成されていることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記研磨ローラおよび前記感光体を駆動する駆動手段が設けられ、前記駆動手段は、温度および湿度のいずれか一方または双方に対応して前記研磨ローラと前記感光体との周速比を変化させ得るように構成されていることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記駆動手段は、前記 周速比に応じて前記研磨ローラによる前記感光体に対する研磨時間を変化させ得るように構成されていることを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記感光体は、周面にアモルファスシリコン層が積層されてなるアモルファスシリコン感光体ドラムであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−199129(P2007−199129A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14507(P2006−14507)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】