説明

画像形成装置

【課題】レジストロールのアライメント精度に対するユーザの要求に柔軟に対応することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像転写部に用紙を送り込むレジストロールと、レジストロールの傾きを調整するための調整用部材39と、この調整用部材39が取り付けられるユニット本体26とを備える画像形成装置の構成として、調整用部材39は、レジストロールの傾きを調整可能な状態で調整用部材39をユニット本体26に取り付けるための第1の取り付け手段(54,55,57)と、レジストロールの傾きを調整不要な状態で調整用部材39をユニット本体26に取り付けるための第2の取り付け手段(58,59,60,61)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等の画像形成装置には、画像形成の対象となる用紙を用紙搬送路に沿って搬送する用紙搬送装置が組み込まれている。用紙搬送路上には複数の搬送ロールが配設されている。各々の搬送ロールはモータ等を駆動源として回転駆動され、この搬送ロールの回転にしたがって用紙が搬送方向の上流側から下流側へと搬送される。
【0003】
こうした用紙搬送装置を備える画像形成装置においては、用紙搬送中に用紙のスキューや位置ずれが発生すると、用紙に対して画像がずれた状態で形成されてしまう。そこで、例えば、下記特許文献1には、レジストロールの一つ手前(搬送方向の上流側)に配置されたプレレジストロールの回転軸を所定の角度傾けて配置することにより、プレレジストロールで用紙を斜行させ、この用紙がレジストロールに到達する時点で用紙の側端を所望の位置に合わせ込む技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−147455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、最終的に用紙に形成される画像の位置精度は、転写前の画像を担持する像担持体に対する、レジストロールのアライメント精度に依存したものとなる。このため、レジストロールの手前でプレレジストロールにより用紙の側端位置を合わせても、像担持体に対するレジストロールのアライメント精度に狂いがあると、用紙に画像がずれた状態で形成されてしまう。
【0006】
このため、従来の画像形成装置の中には、レジストロールのアライメント調整機能を備えたものがある。レジストロールのアライメント調整機能とは、用紙の搬送方向でレジストロールの傾きを調整する機能をいう。また、像担持体に対するレジストロールのアライメント精度とは、像担持体とレジストロールとの相対的な位置精度であって、例えば像担持体が感光体ドラムであるとすると、感光体ドラムの回転軸とレジストロールの回転軸の平行度で表されるものである。
【0007】
このようなアライメント調整機能は、高い画像品質が要求されるハイエンドモデルや一部のミドルレンジモデルには装備されているものの、ローエンドモデルには装備されていない。この理由は、主にコスト的な事情による。すなわち、アライメント調整機能を装備した機種では、画像形成装置の製造工程でアライメント調整のための作業工数が余分にかかるため、製造コストが高くなる。これに対して、アライメント調整機能を装備しない機種では、部品の寸法精度や組み立て精度(以下、まとめて「部品精度」とも記す)でレジストロールのアライメント精度を保証するため、実質的にアライメント調整のための作業工数がかからない。
【0008】
ただし、ローエンドモデルを使用するユーザであっても、高いアライメント精度を要求する場合がある。そうした場合、従来の画像形成装置では、アライメント調整機能を装備するハイエンドモデルやミドルレンジモデルに買い換える以外に、ユーザの要求を満足させることができなかった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、レジストロールのアライメント精度に対するユーザの要求に柔軟に対応することができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る画像形成装置は、画像転写部に用紙を送り込むレジストロールと、用紙の搬送方向に沿う方向でレジストロールの傾きを調整するための調整用部材と、この調整用部材が取り付けられる被取り付け部材とを備えるものであって、調整用部材は、レジストロールの傾きを調整可能な状態で当該調整用部材を被取り付け部材に取り付けるための第1の取り付け手段と、レジストロールの傾きを調整不要な状態で当該調整用部材を被取り付け部材に取り付けるための第2の取り付け手段とを有するものである。
【0011】
本発明に係る画像形成装置においては、レジストロールの傾きを調整する場合は、第1の取り付け手段を利用して調整用部材を被取り付け部材に取り付け、レジストロールの傾きを調整しない場合は、第2の取り付け手段を利用して調整用部材を被取り付け部材に取り付けることにより、調整用部材の使い分けが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の画像形成装置によれば、レジストロールの傾きを調整する場合と調整しない場合で調整用部材を自在に使い分けることができる。すなわち、レジストロールの傾きを調整する場合は、第1の取り付け手段を利用して調整用部材を取り付けることにより、高いアライメント精度を保証することができる。また、レジストロールの傾きを調整しない場合は、第2の取り付け手段を利用して調整用部材を取り付けることにより、部品精度でアライメント精度を保証することができる。このため、レジストロールのアライメント精度に対するユーザの要求に柔軟に対応することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明が適用される画像形成装置の構成例を示す概略図である。図示した画像形成装置は用紙搬送装置を備えている。用紙搬送装置は、2つの用紙収容トレイ1,2を備え、各々の用紙収容トレイ1,2に収容された用紙を用紙搬送路に沿って搬送するものである。用紙搬送路は、後述する画像転写部を経由するように形成されている。用紙収容トレイ1,2は、それぞれ所定枚数の用紙を積載して収容するもので、上下2段に配置されている。各々の用紙収容トレイ1,2は、収容対象となる用紙のサイズや種類によってトレイ全体のサイズが異なるものの、基本的には同様の構成となっている。
【0015】
また、上側に配置された用紙収容トレイ1の近傍には、給紙用のロールとして、呼び出しロール3と送り出しロール4が配置されている。呼び出しロール3は、用紙収容トレイ1に収容された用紙の最上面に接触して回転することにより、用紙収容トレイ1から用紙を呼び出すものである。送り出しロール4は、呼び出しロール3によって呼び出された用紙を一枚ずつ分離して送り出すもので、一方(上側)のロールを用紙搬送用、他方(下側)のロールを分離用としたロール対によって構成されている。これと同様に、下側に配置された用紙収容トレイ2の近傍にも、給紙用のロールとして、呼び出しロール5と送り出しロール6が配置されている。
【0016】
また、各々の用紙収容トレイ1,2から給紙された用紙の送り先となる用紙搬送路上には、所定の間隔で複数(図例では4つ)の搬送ロール7,8,9,10が設けられている。各々の搬送ロール7,8,9,10は、用紙をニップ(挟持)しつつ回転することにより、用紙を搬送方向の下流側へと搬送するものである。これら複数の搬送ロール7,8,9,10のうち、最も下流側に配置された搬送ロール10はレジストロールであり、このレジストロールの一つ手前(搬送方向の上流側)に配置された搬送ロール9はプレレジストロールである。よって、以降の説明では、搬送ロール10をレジストロール10、搬送ロール9をプレレジストロール10と称する。
【0017】
レジストロール10は、画像形成の対象となる用紙を所定のタイミングで画像転写部(後述)に送り込むとともに、この送り込みに際して用紙の位置合わせを行うものである。レジストロール10は、用紙の搬送方向において画像転写部の一つ手前(上流側)に配置される。レジストロール10による用紙の位置合わせは、用紙の先端をレジストロール10に突き当ててスキューを補正したり、スキュー補正後に用紙の搬送開始タイミング(レジストロール10の回転開始タイミング)を調整したりすることにより行われる。
【0018】
レジストロール10による用紙の送り先には、感光体ドラム11とバキューム搬送部12が配置されている。感光体ドラム11は、図の反時計回り方向に回転駆動されるものである。感光体ドラム11の周囲には、用紙に転写すべき画像(トナー画像)を形成するための手段として、例えば、感光体ドラム11の表面を一様に帯電する帯電器(不図示)と、この帯電器で帯電された感光体ドラム11の表面にレーザビームを照射して静電潜像を書き込む画像書き込み装置(不図示)と、この画像書き込み装置によって静電潜像が書き込まれた感光体ドラム11の表面にトナーを供給する現像器(不図示)と、この現像器で現像されたトナー画像を用紙に転写するための転写ロール13と、用紙に転写されずに感光体ドラム11の表面に残留した不要トナーを除去するクリーナー(不図示)と、感光体ドラム11の表面を除電する除電器(不図示)が、それぞれ感光体ドラム11の回転方向に順に配置されている。
【0019】
バキューム搬送部12は、無端状の搬送用ベルト14と、この搬送用ベルト14を支持する2つのロール15,16とを有するものである。バキューム搬送部12では、レジストロール10によって送り込まれた用紙を搬送用ベルト14に載置し、この搬送用ベルト14上で用紙の裏面(画像が転写される面と反対側の面)をバキューム方式で吸着しつつ、ベルト支持用ロール15(又は16)の回転駆動に伴う搬送用ベルト14の走行にしたがって用紙を矢印方向(右方向)に搬送する。
【0020】
転写ロール13は、バキューム搬送部12の搬送用ベルト14を介して感光体ドラム11と対向する位置に配置されている。したがって、バキューム搬送部12によって搬送される用紙は搬送中に感光体ドラム11と転写ロール13の対向部分を通過し、この対向部分で感光体ドラム11から用紙に画像が転写される。よって、感光体ドラム11と転写ロール13の対向部分は画像転写部に相当するものとなる。
【0021】
バキューム搬送部12による用紙の送り先には定着器17が配置されている。定着器17は、画像転写部で用紙に転写された画像(トナー画像)を紙面に定着させるものである。定着器17は加熱加圧用の定着ロールを有し、この定着ロールで用紙をニップしつつ搬送するときの加熱及び加圧作用によって用紙に画像(トナー)を定着させる。また、定着器17の下流側には図示しない排出ロールが設けられ、この排出ロールによって用紙が図示しない排出トレイに排出される構成となっている。
【0022】
また、用紙の給紙部分を含む用紙搬送路上には、用紙の搬送中にジャムが発生したときに当該ジャムの発生を検出するために、複数(図例では7個)の用紙検知センサ(用紙検知手段)18〜24が設けられている。各々の用紙検知センサ18〜24は、用紙の搬送方向で互いに異なる位置に配置されている。すなわち、用紙検知センサ18は、上側の用紙収容トレイ1の給紙部に設けられた送り出しロール4の近傍(下流側)に配置され、用紙検知センサ19は、下側の用紙収容トレイ2の給紙部に設けられた送り出しロール6の近傍(下流側)に配置されている。また、用紙検知センサ20は搬送方向の最も上流側に配置された搬送ロール7の近傍(下流側)に配置され、用紙検知センサ21は上記搬送ロール7よりも下流側の搬送ロール8の近傍(下流側)に配置され、用紙検知センサ22は上記搬送ロール8よりも更に下流側のプレレジストロール9の近傍(下流側)に配置されている。また、用紙検知センサ23はレジストロール10の近傍(上流側)に配置され、用紙検知センサ24は定着器17の近傍(下流側)に配置されている。
【0023】
各々の用紙検知センサ18〜24は、例えば発光素子と受光素子を同一のセンサ面に配置した反射型のフォトセンサからなるもので、センサ面と近接して対向する位置(以下、センサ検知位置)に用紙が存在するときはオン状態となり、存在しないときはオフ状態となる。したがって、各々の用紙検知センサ18〜24は、それぞれセンサ検知位置を用紙の先端が通過した際にはオフ状態からオン状態に切り替わり、その後、センサ検知位置を用紙の後端が通過した際にはオン状態からオフ状態に切り替わる。したがって、各々の用紙検知センサ18〜24のオンオフ状態に基づいて用紙の通過(先端通過、後端通過)を検知することが可能となる。
【0024】
続いて、上記構成からなる画像形成装置の動作について説明する。まず、ユーザの入力操作又は自動トレイ選択機能によって選択された用紙収容トレイが、例えば上側の用紙収容トレイ1であったとすると、この用紙収容トレイ1に対応する呼び出しロール3及び送り出しロール4の回転により、用紙収容トレイ1に収容された用紙が最上位から順に一枚ずつ分離して送り出される。
【0025】
こうして用紙収容トレイ1から用紙搬送路へと送り出された用紙は、その後、搬送ロール8の回転によって搬送方向の下流側(図1の上側)へと搬送され、プレレジストロール9に送り込まれる。次に、用紙はプレレジストロール9の回転にしたがってレジストロール10に送り込まれる。レジストロール10の回転は、プレレジストロール9による用紙の送り込みに先立って停止状態とされる。このため、プレレジストロール9によって送り込まれた用紙の先端部は回転停止状態のレジストロール10のニップ部分に突き当たる。また、この突き当て状態でプレレジストロール9により用紙を所定量だけ送り込むことにより、レジストロール10の手前で用紙がループ状に撓んだ状態、すなわち用紙のスキューが補正された状態となり、この状態で用紙が一時停止する。
【0026】
その後、画像書き込み装置(不図示)によって感光体ドラム11の表面に書き込まれた静電潜像がトナー画像に現像されて画像転写部に送り込まれるタイミングに合わせてレジストロール駆動用のクラッチをオン動作させることにより、レジストロール10の回転を開始する。これにより、先述のようにスキュー補正された用紙は、レジストロール10の回転にしたがって画像転写部へと送り込まれる。そして、画像転写部においては、レジストロール10によって送り込まれた用紙がバキューム搬送部12の搬送用ベルト14上に載置され、この搬送用ベルト14の走行によって画像転写部(感光体ドラム11と転写ロール13の対向部分)を通過するように移動する。このとき、用紙の先端が画像転写部に到達するタイミングに合わせて画像転写部にトナー画像が到達し、そこで転写ロール13がトナーと逆極性の電荷を付与することにより、感光体ドラム11表面のトナー画像が用紙に転写される。
【0027】
その後、用紙はバキューム搬送部12によって定着器17に送られ、そこで定着ロール間に加えられる加圧作用と加熱作用によって用紙の紙面に画像が定着される。次いで、定着器17から送り出された用紙は排出ロール(不図示)に受け渡され、この排出ロールによって排出トレイ(不図示)に排出される。なお、ここでは、用紙の片面に画像を形成する場合について説明したが、本発明は用紙の両面に画像を形成する「両面印刷機能」を備えた画像形成装置にも同様に適用可能である。
【0028】
以上の装置動作の中では、プレレジストロール9によって送り込んだ用紙の先端をレジストロール10のニップ部分に突き当てて用紙のスキューを補正するため、スキュー補正後の用紙の姿勢はレジストロール10の傾きに依存したものとなる。また、レジストロール10への突き当てによってスキュー補正された用紙は、その後、レジストロール10の傾きに対応した向きで画像転写部へと送り込まれる。したがって、レジストロール10の傾きは、用紙と画像の相対的な位置関係を決定する重要な要素となる。そこで、本発明の実施形態に係る画像形成装置は、用紙の搬送方向に沿うY方向でレジストロール10の傾きを調整するための調整用部材を備えた構成となっている。
【0029】
ちなみに、ここで記述するレジストロール10の傾きとは、当該レジストロール10のニップ位置近傍の用紙搬送路上において、用紙の搬送方向と直交する仮想直線に対するレジストロール10の回転軸の傾きをいう。このため、レジストロール10の傾きは、レジストロール10の回転軸の両端部をそれぞれ搬送方向に沿って互いに反対方向に動かすか、レジストロール10の回転軸の一端部を動かさずに他端部だけを搬送方向に沿って動かすことにより調整可能である。本実施形態においては後者の方法を採用するが、前者の方法を採用することも可能である。
【0030】
図2はレジストロール10と調整用部材を含む用紙搬送ユニットの全体像を示す斜視図であり、図3は用紙搬送ユニットから一部の部品を取り外した状態を示す斜視図である。図示した用紙搬送ユニット25は、画像形成装置の本体フレーム(不図示)に取り付けられるもので、主として、レジストロール10と、ユニット本体26と、用紙搬送ガイド27と、駆動伝達部28と、傾き調整部29と、従動側保持部材30とを備えた構成となっている。
【0031】
レジストロール10は、駆動ロール10Aと従動ロール10Bとによって構成されている。駆動ロール10Aは、図示しない回転軸に所定の間隔で複数(図例では6つ)取り付けられている。従動ロール10Bは、駆動ロール10Aの回転軸と平行な回転軸31に、駆動ロール10Aと同じ間隔で複数(図例では6つ)取り付けられている。従動ロール10Bの回転軸31の両端部は、ユニット本体26に一体に形成された左右一対の軸受け部32で位置決め支持されるようになっている。各々の軸受け部32には、回転軸31の端部を嵌脱自在な略U字形の凹溝33が形成されている。
【0032】
ユニット本体26は、例えば樹脂によって構成されるもので、本発明における被取り付け部材に相当するものである。ユニット本体26は、上述した左右一対の軸受け部32の他に、用紙取り込みガイド34を一体に有している。また、ユニット本体26には、上述した駆動ロール10Aの回転軸が支持されている。そして、駆動ロール10Aの回転軸の一端側に駆動伝達部28が設けられ、同他端側に傾き調整部29が設けられている。
【0033】
用紙搬送ガイド27は、ユニット本体29の用紙取り込みガイド34に沿って取り込まれた用紙の搬送方向を案内するものである。用紙搬送ガイド27は、例えば金属板(板金)によって構成されるもので、ユニット本体26にネジ35を用いて固定されている。また、用紙搬送ガイド27には、駆動ロール10Aの回転軸に沿って複数の開口部36が形成され、各々の開口部36に1つずつ駆動ロール10Aが配置されている。
【0034】
駆動伝達部28は、入力ギア37とクラッチ部材38とを用いて構成されている。入力ギア37は、図示しない搬送用モータを駆動源として回転するギアと噛み合うように配置されるものである。クラッチ部材38は、駆動ロール10Aの回転軸と入力ギア37との間で駆動力の伝達を断続するものである。
【0035】
傾き調整部29は、上述したレジストロール10の傾きを調整する部分である。傾き調整部29は、ユニット本体26の一方の側端部に、当該ユニット本体26と一体に形成されている。傾き調整部29には、傾き調整のための調整用部材39が取り付けられている。調整用部材39は、例えば樹脂によって構成されるもので、2つのネジ40,41を用いてユニット本体26の側端部に取り付けられている。
【0036】
従動側保持部材30は、従動ロール10Bとその回転軸31を保持するものである。従動側保持部材30は、例えば金属板によって構成されるもので、上述した用紙搬送ガイド27との間に用紙搬送路を形成し、この用紙搬送路に沿って用紙の搬送方向を案内する。また、従動側保持部材30には、用紙搬送ガイド27と同様の位置関係で複数の開口部42が形成され、この開口部42を介して駆動ロール10Aと従動ロール10Bとがピンチバネ43のバネ圧で圧接されるようになっている。ピンチバネ43のバネ圧は、従動ロール10Bの回転軸31を駆動ロール10Aの回転軸側に引き寄せる付勢力となって、当該従動ロール10Bの回転軸に作用している。
【0037】
また、従動側保持部材30の左右両端部は、一対のコイルバネ44によってユニット本体26側に押圧されている。一対のコイルバネ44は、そのバネ圧を利用してユニット本体26に対する従動側保持部材30の位置を弾性的に保持するものである。したがって、ユニット本体26の向きを変えると、それに追従して従動側保持部材30の向きも変わるようになっている。
【0038】
図4は用紙搬送ユニット25の傾き調整部29において調整用部材39を取り外した状態を示す斜視図である。図示のように傾き調整部29には、調整用部材39を取り付けるための2つのネジ孔46,47と、調整用部材39に係合される2つのガイド48,49が設けられている。このうち、2つのネジ孔46,47は、調整用部材39をネジ止めで固定するために形成されたものである。また、2つのガイドピン48,49は、それぞれ断面円形でかつ先端が先細状に面取りされた丸ピン構造をなすもので、調整用部材39が取り付けられる面から外側に突出する状態で設けられている。
【0039】
なお、図4に示すネジ孔50は、ユニット本体26に用紙搬送ガイド27を取り付けるために当該ユニット本体26に形成されたものである。したがって、上述したネジ35はこのネジ孔50に螺合される。また、位置決めピン51は、ユニット本体26に対して用紙搬送ガイド27を位置決めするために当該ユニット本体26に設けられたものである。
【0040】
図5(A),(B)は傾き調整部29に取り付けられる調整用部材39をそれぞれ異なる方向から見た斜視図である。調整用部材39は、大きくは板状のベース部52と、このベース部52の一面から突出した突出部53とを一体に有する構造となっている。傾き調整部29には、調整用部材39を調整無しで取り付けるための基準位置が設定されている。そして、この基準位置に合わせて調整用部材39を取り付けた状態では、突出部53が駆動ロール10Aの回転軸とほぼ同軸状に配置される構成となっている。
【0041】
突出部53は、略円筒状に形成されたもので、図示しない画像形成装置の本体フレームに用紙搬送ユニット25を取り付けるにあたって、当該本体フレームに係合支持されるものである。したがって、傾き調整部26で調整用部材39の取り付け位置を搬送方向に沿ってずらすと、上記本体フレームに用紙搬送ユニット25を取り付けたときのレジストロール10の傾きが、当該調整用部材39の取り付け位置のずれに応じて変化する。
【0042】
ベース部52には、第1の取り付け手段として、2つの取り付け孔54,55と1つのガイド溝56と1つのガイド孔57とが形成されている。このうち、2つの取り付け孔54,55は長孔状に形成されている。また、ガイド溝56とガイド孔57は、上述した突出部53を挟む位置関係で、当該突出部53の中心を通る同一直線上に形成されている。また、ガイド溝56は長溝状に形成され、ガイド孔57は長孔状に形成されている。さらに、これらの取り付け孔54,55、ガイド溝56及びガイド孔57は互いに平行な向きで形成されている。
【0043】
また、ベース部52には、第2の取り付け手段として、2つの取り付け孔58,59と2つの位置決め孔60,61とが形成されている。このうち、2つの取り付け孔58,59はそれぞれ円形に形成されている。また、位置決め孔60,61は、上述した突出部53を挟む位置関係で、当該突出部53の中心を通る同一直線上に形成されている。ただし、位置決め孔60,61の位置と、上述したガイド溝56及びガイド孔57の位置とは、突出部53を中心とした回転方向で互いに異なる位置に設定されている。また、一方の位置決め孔60は円形に形成され、他方の位置決め孔61は長孔状に形成されている。取り付け孔58,59の間隔は、上述したネジ孔46,47と同じ間隔に設定されている。位置決め孔60は、位置決め孔61の長軸の延長線上に配置されている。
【0044】
図6は第1の取り付け手段を利用して傾き調整部29に調整用部材39を取り付けた状態を示す図である。図においては、ネジ孔46が取り付け孔54の孔内に配置され、ネジ孔47が取り付け孔55の孔内に配置されている。また、図示しないガイドピン48は図示しないガイド溝56に係合され、ガイドピン49はガイド孔57に係合されている。この状態では、ネジ孔46が取り付け孔54の長手方向の中間部、ネジ孔47が取り付け孔55の長手方向の中間部、図示しないガイドピン48が図示しないガイド溝56の長手方向の中間部、ガイドピン49がガイド孔57の長手方向の中間部に配置されている。また、調整用部材39の突出部53は、駆動ロール10Aの回転軸とほぼ同軸状に配置されている。
【0045】
このように第1の取り付け手段を利用して調整用部材39を取り付けた場合は、ガイドピン48とガイド溝56との係合、及びガイドピン49とガイド孔57との係合により、調整用部材39が所定の方向(ガイド溝56及びガイド孔57の長手方向)に移動自在に支持される。このため、図8(A)に示すように、調整用部材39の取り付け位置をY1方向にずらしたり、図8(B)に示すように、調整用部材39の取り付け位置をY2方向(Y1方向と反対方向)にずらしたりすることができる。このとき、調整用部材39の取り付け位置をY1方向やY2方向にずらすと、それに応じて用紙搬送ユニット25と装置フレームの相対的な位置関係が変化するとともに、レジストロール10の傾きが図1のY方向で変化する。
【0046】
したがって、第1の取り付け手段を利用して調整用部材39を取り付ける場合は、レジストロール10の傾きを調整可能な状態で調整用部材39が取り付けられることになる。また、調整用部材39の取り付け位置をY1方向やY2方向に適宜ずらした状態で、ネジ孔46,47にそれぞれネジ40,41を螺合して締め付けることにより、傾き調整済みの調整用部材39を傾き調整部29に固定することができる。
【0047】
図7は第2の取り付け手段を利用して傾き調整部29に調整用部材39を取り付けた状態を示す図である。図においては、ネジ孔46が取り付け孔58の孔内に配置され、ネジ孔47が取り付け孔59の孔内に配置されている。また、ガイドピン48は取り付け孔60に係合され、ガイドピン49は取り付け孔61に係合されている。この状態ではネジ孔46が取り付け孔58と同心円状に配置され、ネジ孔47も取り付け孔59と同心円状に配置されている。また、ガイドピン48は殆ど隙間なく位置決め孔60に係合し、ガイドピン49は位置決め孔61の長手方向の中間部に配置されている。また、調整用部材39の突出部39は、駆動ロール10Aの回転軸とほぼ同軸状に配置されている。
【0048】
このように第2の取り付け手段を利用して調整用部材39を取り付けた場合は、ガイドピン48と位置決め孔60との係合、及びガイドピン49と位置決め孔61との係合により、調整用部材39の取り付け位置が一義的に決まる。つまり、調整用部材39がそれらの係合によって基準位置に位置決めされた状態となる。このため、レジストロール10の傾きは、ユニット本体26と調整用部材39の部品精度に依存したものとなる。よって、レジストロール10のアライメント精度は部品精度によって保証される。
【0049】
したがって、第2の取り付け手段を利用して調整用部材39を取り付ける場合は、レジストロール10の傾きを調整不要な状態で調整用部材39が取り付けられることになる。また、ネジ孔46,47にそれぞれネジ40,41を螺合して締め付けることにより、上述のように位置決めされた調整用部材39を傾き調整部29に固定することができる。
【0050】
このように本発明の実施形態に係る画像形成装置においては、第1の取り付け手段となる取り付け孔54,55、ガイド溝56及びガイド孔57を利用して、ユニット本体26の傾き調整部29に調整用部材39を取り付けることにより、レジストロール10のアライメント精度をレジストロール10の傾き調整によって高精度に保証することができる。
【0051】
また、第2の取り付け手段となる取り付け孔58,59と位置決め孔60,61を利用して、ユニット本体26の傾き調整部29に調整用部材39を取り付けることにより、レジストロール29の傾きを調整しなくても、レジストロール10のアライメント精度を部品精度で保証することができる。つまり、レジストロール10の傾き調整が不要な場合と不要の場合で調整用部材39を自在に使い分けることができる。
【0052】
したがって、例えば、高い画像品質が要求されるハイエンドモデルや一部のミドルレンジモデルを使用するユーザの品質要求に対しては、第1の取り付け手段を利用して調整用部材39を取り付けてレジストロール10の傾き調整を行うことにより、当該ユーザの要求に適切に対応することが可能となる。
【0053】
また、ローエンドモデルを使用するユーザの低価格要求に対しては、第2の取り付け手段を利用して調整用部材39を取り付けてレジストロール10の傾き調整を不要とすることにより、当該ユーザの要求に適切に対応することが可能となる。
【0054】
さらに、ローエンドモデルを使用するユーザの高画質化要求に対しては、製品出荷前あるいは製品出荷後に、第1の取り付け手段を利用して調整用部材39を取り付けてレジストロール10の傾き調整を行うことにより、当該ユーザの要求に適切に対応することが可能となる。
【0055】
なお、上記実施形態においては、用紙の搬送方向に沿う方向Yでレジストロール10の傾きを調整するものとしたが、本発明はこれに限らず、例えば用紙の搬送方向と直交する方向(図1の上下方向)でレジストロール10の傾きを調整する場合にも同様に適用可能である。ただし、画像転写部に向かう用紙の位置や姿勢を補正するうえでは、用紙の搬送方向に沿う方向Yでレジストロール10の傾きを調整することが有効な手段となる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明が適用される画像形成装置の構成例を示す概略図である。
【図2】レジストロールと調整用部材を含む用紙搬送ユニットの全体像を示す斜視図である。
【図3】用紙搬送ユニットから一部の部品を取り外した状態を示す斜視図である。
【図4】用紙搬送ユニットの傾き調整部において調整用部材を取り外した状態を示す斜視図である。
【図5】傾き調整部に取り付けられる調整用部材の斜視図である。
【図6】第1の取り付け手段を利用した調整用部材の取り付け状態を示す図である。
【図7】第2の取り付け手段を利用して調整用部材の取り付け状態を示す図である。
【図8】調整用部材を用いてレジストロールの傾きを調整する際の部材移動方向を説明する図である。
【符号の説明】
【0057】
10…レジストロール、11…感光体ドラム、13…転写ロール、25…用紙搬送ユニット、26…ユニット本体、29…傾き調整部、39…調整用部材、46,47…ネジ孔、48,49…ガイドピン、52…ベース部、53…突出部、54,55,58,59…取り付け孔、56…ガイド溝、57…ガイド孔、60,61…位置決め孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像転写部に用紙を送り込むレジストロールと、前記レジストロールの傾きを調整するための調整用部材と、前記調整用部材が取り付けられる被取り付け部材とを備える画像形成装置であって、
前記調整用部材は、前記レジストロールの傾きを調整可能な状態で当該調整用部材を前記被取り付け部材に取り付けるための第1の取り付け手段と、前記レジストロールの傾きを調整不要な状態で当該調整用部材を前記被取り付け部材に取り付けるための第2の取り付け手段とを有する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1の取り付け手段は、前記調整用部材を所定の方向に移動自在に支持する手段を含み、
前記第2の取り付け手段は、前記調整用部材を基準位置に位置決めする手段を含む
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記調整用部材は、用紙の搬送方向に沿う方向で前記レジストロールの傾きを調整するためのものである
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−31000(P2007−31000A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212104(P2005−212104)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】