説明

画像形成装置

【課題】二次転写方式で像担持体上のトナー像を被転写材シート上に転写する画像形成装置において、簡易な機構でもって転写ニップ部における画像調整を行えるようにすることで高品位印字を実現でき、また部材の耐久性を維持させる。
【解決手段】中間転写ベルト130と該ベルト内外の二次転写ローラ対3,4との対向間に形成される曲率曲面でなる転写ニップ部a(接点)に、被転写材のシートSが突入する直前の上流側に内側ガイド1と外側ガイド2からなるシート案内部材が配置される。二次転写ローラ対3,4のローラ中心点同士を結ぶ中心直線と、シート案内部材の直線案内部1aから延長された出口端bでの直線に直交する垂直線との交点と転写ニップ部aの接点との距離をX、交点と前記直線案内部出口端bとの距離をYとした場合に、X=Yとなるようにシート案内部材を移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ装置およびやレーザビームプリンタなどの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の分野では中間転写方式が周知であり、感光体ドラム(像担持体)上に形成されたトナー像を一旦無端状の中間転写ベルト(像担持体)の表面に一次転写し、カラー印刷の場合は複数色のトナーごとにそうした一次転写を繰り返してトナー像を重ね合わせる。重ね合わせたトナー像を今度は一括して中間転写ベルトから被転写材のシート表面に二次転写して、シートに画像を記録する(特許文献2参照。)。
【0003】
中間転写ベルトは、無端状の平ベルト本体を駆動ローラ、従動ローラおよびテンションローラなど複数のローラ間に捲回して構成される。それら複数の捲回ローラのうちの1つは二次転写用となっており、この二次転写ローラに平ベルト本体を挟んで外側から対向させてさらに別の二次転写ローラが配置される。それらベルト内外の二次転写ローラと平ベルト本体とが接触する接点間を転写ニップ部としてそこに給紙ローラから給送されてきたシートが送り込まれる。送り込まれてきたシートをベルト外側の二次転写ローラは平ベルト本体に押し当てるように作用し、平ベルト本体表面のトナー像を一括してシートに転写し、二次転写を終える。
【0004】
転写ニップ部での転写後に生じる画像不均一をなくすための画像調整、あるいは所望する画像倍率に調整する方法や構造として、感光体ドラムにおいて潜像形成されるときの書き込み間隔を変えたり、さらには平ベルト本体とシートとの間に速度差を設けるなどの対策がとられてきた(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−311676号公報
【特許文献2】特開2002−244449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、かかる画像調整方式の場合、潜像書き込みの可変制御や速度差制御のために複雑かつ高精度な制御プログラムや制御装置が必要となることからコスト高となる。また、部材間に速度差を設けると部材同士の間で擦れが発生し、部材が損傷や磨耗して寿命の低下につながり易い。
【0007】
本発明の目的は、簡易な機構でもって転写ニップ部における画像調整を行えるようにすることで高品位印字を実現でき、また部材の耐久性維持にも有効な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、画像を担持する像担持体上の画像を、前記像担持体を挟んで対向する転写ローラ対によってシートに転写する転写手段と、前記転写手段の上流側に配置されてシートを案内するシート案内部材と、を備えた画像形成装置において、
前記シート案内部材の出口側にシートを直線状に送り出す直線案内部が設けられ、
前記転写ローラ対のローラ中心点同士を結ぶ中心直線と、前記シート案内部材の直線案内部から延長された出口端での直線に直交する垂直線との交点をsとし、この交点sと前記転写手段の転写ニップ部の接点との距離をX、交点sと前記直線案内部出口端との距離をYとした場合に、
X=Y
となる状態を保って、前記シート案内部材が移動されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の画像形成装置によれば、複雑な制御などに依存することなく簡易な機構でもって転写ニップ部における画像調整を行え、また部材の耐久性維持にも有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明による画像形成装置の実施形態について図を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、本実施形態の画像形成装置を示し、装置本体101の上部には透明ガラス板からなる原稿台102が設けられ、原稿圧着板103はその原稿台102の所定の位置に画像面を下向きにセットされた原稿100を押圧して固定されている。原稿台102の下側には原稿100を照明するランプ104と、照明した原稿100の光像を画像処理ユニット108に導くための反射ミラー105、106、107とからなる光学系が設けられている。なお、ランプ104及び反射ミラー105、106、107は所定の速度で移動して原稿100を走査する。
【0012】
画像形成部120は、感光体ドラム121と、この感光体ドラム121の表面を均一に帯電する帯電ローラ122と、感光体ドラム121にトナー像を形成するロータリ現像ユニット125と、を有する。画像形成部120は、感光体ドラム121の表面に現像されたトナー像が一旦、一次転写される無端状平ベルトでなる中間転写ベルト(像担持体)130と、を有する。画像形成部120は、さらに、中間転写ベルト130のトナー像を被転写材であるシートSに一括して転写する二次転写部131と、トナー像を転写した後に感光体ドラム121に残留したトナーを除去するクリーナ123を備えている。感光体ドラム121は、帯電ローラ122によって帯電された感光体ドラム121の表面にレーザーユニット109から照射される光像により形成された静電潜像を現像して中間転写ベルト130に転写するようになっている。シートSはシートカセット110から供給される。
【0013】
図2以下の各図に示すように、転写手段としての二次転写部131は、中間転写ベルト130を捲回して張架する複数の回転ローラ(原動用、従動用およびテンション用など)のうちの1つであるベルト内側の二次転写ローラ3を有し、平ベルト本体を外側から挟んでその内側の二次転写ローラ3に対向する二次転写ローラ4を有している。以下、それらベルト内外側二次転写ローラ3,4を単に転写ローラ対3,4という。中間転写ベルト130の平ベルト本体を内外から挟む転写ローラ対3,4との接点部に転写ニップ部aが形成され、そこにシートSを挟んで平ベルト本体上のトナー像を転写し、二次転写工程とする。シートは転写ニップ部aにおいて撓まされた状態(曲率を持った状態)でトナー像が転写される。
【0014】
一方、画像形成部120の下流側には、搬送されるシートS上のトナー像を永久画像として定着する定着器135と、この定着器135においてトナー像が定着されたシートSを複写機本体101から排出する排出ローラ対112とを順に配設してある。複写機本体101の外側には、排出ローラ対112によって排出されたシート材Sを受け取る排出部113が設けられている。
【0015】
ここで、本発明の基本となる転写ニップ部における画像調整の考え方について、図6を参照して模式的に説明する。
【0016】
いま、シートSの厚さ寸法をt、シートSの被転写面までの曲率半径をr1とすると、シートSの厚さ寸法tの半分t/2における曲率半径r2は、
r2=r1+t/2
である。いま、曲率半径r1で収縮状態になっている転写時の画像10の大きさをA1で表せば、転写後の画像10´の大きさA2は平坦に伸びることで拡大し、A1<A2となる。A1からA2に拡大して転写後の画像伸び率εは、r2とr1との比率で表すと、
ε=A2/A1=r2/r1=1+t/(2r1)
となる。つまり、シート曲率半径を変化させることによって画像伸び率ε1も変化する。そこで、本発明の画像調整の考え方は、転写ニップ部aに突入する直前の上流側でシートSの曲率半径rを調整することで、転写後の画像倍率を所望するものにすることである。
【0017】
図3および図4に示すように、シートSが転写ニップ部aに突入する際、中間転写ベルト130の平ベルト本体曲率半径Rtに倣って湾曲するように思えるが、マクロ的に見た場合、実際にはベルト曲率半径Rtとシートの曲率半径rとは必ずしも合致しない。その場合、シートSが転写ニップ部aに突入する手前直前の上流に設けられた図示例のごとき内側ガイド1と外側ガイド2からなる案内部材に案内されるとき、シートの曲率半径rはその案内部材から出た直後のシートSの接線方向で形成される半径rsに依存する。これに着目して、シートS上に転写されるトナー像の拡大倍率とか伸びを補正する調整がRt≦rs≦∞の範囲において可能となる。例えば、Rt=10[mm],t=0.1[mm]とした場合、トラック効果分を考慮すると、画像伸び率εは0≦ε≦1.005となり、0〜0.5%だけ調整される。
【0018】
図2において、転写ローラ対3,4の各中心点を結ぶ中心直線Aとすると、その中心直線A上に転写ニップ部aの平ベルト本体およびシートSとの接点が存在する。内側ガイド1の下流側にはシートの案内面が断面直線形状となっているシート直線案内部1aを有する。シート直線案内部1aの出口点(下流側端部)をbとする。出口点bを通過し、シート直線案内部1bのシートの案内面と垂直な線と、中心直線Aとの交点をsとする。つまり、内側ガイド1に形成された直線案内部としてのシート直線案内部1bから延長された出口端としての出口点bでの直線に直交する垂直線と、中心直線Aとの交点をsとする。内側ガイド1のシート直線案内部1aの出口点bと交点Sとを結ぶ直線距離sbが、交点sと転写ニップ部aとを結ぶ直線距離saと等しい(sa=sb)。また、シート案内部材としての内側ガイド1と外側ガイド2は、
sa=sb
の状態を保って、後述する多関節リンク機構5などの調整機構で移動する。
【0019】
シート案内部材を移動調整することにより、転写ニップ部における接点(符号a)に突入する直前のシートSの姿勢を内側ガイド1で直線的かつ平坦にガイドする。sa=sbの状態では、転写ニップ部に進入するシートの曲率半径rは、内外側ガイド1,2から出た直後のシートSの接線方向で形成される半径rsと等しくなる。sa=sbを保った状態で内側ガイド1が移動すれば、内側ガイド1の位置に依らずに、転写ニップ部に進入したシートの曲率半径rは半径rsと等しい。
【0020】
なお、sa=sbを保った状態では、シートの曲率半径rを決定付ける上記半径rsは、交点sから内側ガイド1のシート直線案内部1aの出口点bとを結ぶ直線距離sb、及び、交点sから転写ニップ部aまでの直線距離saと同じ長さである。sa=sbの状態では、直線距離sb及び直線距離saと等しい半径rsに基づいてシートの曲率半径rを求めることができるために、シートの曲率半径rに基づいて転写倍率を容易に算出できる。したがって、半径rsを後述の構成によって変化させることによって中間転写ベルト130からシートSに二次転写されるトナー像を等倍もしくは設定伸び率や倍率でもって調整することが容易にできる。このようにトナー像を調整することで、あらゆる種類の1枚のシートSにおいて、先端から後端までの記録領域で均一な倍率や伸びの無い画像を記録することが可能になる。
【0021】
調整機構を示す図2〜図4において、転写ニップ部aの手前上流側にシート案内部材が配置されている。このシート案内部材は内側ガイド1と外側ガイド2の一対からなり、その内側ガイド1に結合する多関節リンク5を作動させることによって、案内部材全体の位置を変動させることができる。多関節リンク5は、本例では4つの関節メンバー5a,5b,5c,5dが互いにヒンジピンによって連結された構造となっている。また、そうした多関節リンク5を関節ごとに移動させるスライダ駒7が設けられている。このスライダ駒7は駒ガイドフレーム8の内側に案内されて駆動手段(図示略)から動力を受けることにより移動し、スライダ駒7の内側のリンク支持部7aを介して多関節リンク5の任意の関節メンバーを支持できるようになっている。
【0022】
また、内外側ガイド1,2からなるシート案内部材は、図2中矢印Cの方向へばねなど弾性部材によって引っ張られる方向へ付勢されている。内外側ガイド1,2は、内側ガイド1の後端に設けたブラケット1aを介して円環状の軌道支持ガイド6の内側を案内されて移動可能となっている。また、内側ガイド1はシートSを直線状に案内して送り出す直線案内部1aを有し、多関節リンク5に張力を付与することで、その内側ガイド1のシート直線案内部1aの出口点bと多関節リンク7とを結んだ直線B(図3参照)に対して、内側ガイド1のシート直線案内部1aの方向つまりシート送り方向が直交し、出口点bにおける角度が直角(90°)に保たれるようにしている。すなわち、内側ガイド1のシート直線案内部1aの出口点bの出入り寸法を機械的動作させて調整することで、シートSの転写時の曲率半径を決める接線が得られるようにする。さらに、案内部材の後方に配置された矯正ローラ9によって、シートSを内側ガイド1に押し付けて誘導できるようその方向へシートSを付勢し、それによって所定のシート転写曲率半径を保つよう補助している。
【0023】
図2に示すように、スライダ駒7のリンク支持部7aの可動調整によって1つの関節メンバー5bの部分からリンク長さを変化させることによって、内外側ガイド1,2から出た直後のシートSの接線方向で形成される半径rsが変化する。これによって、シート転写半径を変化させることができる。同様な要領でスライダ駒7を移動させることにより、シート転写曲率半径を変化させる(図4参照)。
【0024】
スライダ駒7のリンク支持部7aの作動させ、多関節メンバー5a〜5dの任意のものを変動させてリンク長さを変化させる駆動は、ユーザが操作パネルにて入力したシート選択信号に基づいて、制御部によって制御される。制御部ではシートSの厚さなどシート情報に基づいてスライダ駒7のリンク支持部7aの作動を制御する。但し、駆動源から案内部材に作動伝達する手段は上記のような多関節リンク機構5に限定されるものではなく、それに代えて無段階軌道機構を採用すれば円滑な調整駆動が実現できる。また、倍率測定手段を設けることにより、倍率測定手段が検出した倍率に基づいて自動的に案内部材を変動させることで、画像調整を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による画像形成装置の実施形態を示す図。
【図2】本実施形態の要部である二次転写部と調整機構との取り合いを示す図。
【図3】本実施形態における画像調整の考え方を模式的に示す図。
【図4】同要部の拡大した模式図。
【図5】本実施形態による調整機構の動作例を示す図。
【図6】二次転写後に生じる画像不均一を模式的に説明する図。
【符号の説明】
【0026】
1 内側ガイド(シート案内部材)
1a シート直線案内部
2 外側ガイド(シート案内部材)
3 ベルト内側の二次転写ローラ(二次転写部)
4 ベルト外側の二次転写ローラ(二次転写部)
5 多関節リンク機構(調整機構)
130 中間転写ベルト(像担持体)
S 被転写材シート
a 転写ニップ部
Rt 転写曲率
rs シート転写曲率半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を担持する像担持体上の画像を、前記像担持体を挟んで対向する転写ローラ対によってシートに転写する転写手段と、前記転写手段の上流側に配置されてシートを案内するシート案内部材と、を備えた画像形成装置において、
前記シート案内部材の出口側にシートを直線状に送り出す直線案内部が設けられ、
前記転写ローラ対のローラ中心点同士を結ぶ中心直線と、前記シート案内部材の直線案内部から延長された出口端での直線に直交する垂直線との交点をsとし、この交点sと前記転写手段の転写ニップ部の接点との距離をX、交点sと前記直線案内部出口端との距離をYとした場合に、
X=Y
となる状態を保って、前記シート案内部材が移動されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記シート案内部材が、シートの厚さ寸法を含むシートサイズ情報に基づいて出力された作動信号によって移動することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記作動信号によって駆動して前記シート案内部材を移動させる調整機構を有してなっていることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記調整機構が、複数の関節をヒンジ連結してなっている多関節リンク機構、または無段変位機構であることを特徴とする請求項3に係る画像形成装置。
【請求項5】
倍率測定機構により検知された倍率によって前記シート案内部材を移動させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−65241(P2007−65241A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−250730(P2005−250730)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】