説明

画像形成装置

【課題】用紙搬送中に搬送ジャムが発生したときに用紙搬送部の吸着ファンを直ぐに止めるために吸引力が無くなり、ノズル面との接触やメニスカスの破壊により吐出不良を生じる。
【解決手段】液滴を吐出する記録ヘッド10と、記録ヘッド10に対向して用紙を吸着して搬送する搬送ベルト61と、搬送ベルト6を記録ヘッド10に近接するホーム位置と記録ヘッド10から離間した解除位置との間で変位させる解除機構160と、用紙の搬送ジャムが検知されたときには、搬送ベルト61に用紙が吸着された状態で搬送ベルト61をホーム位置から解除位置に変位させ、解除位置に変位した状態で搬送ベルト61を用紙搬送方向と同じ方向に周回移動させて、搬送ベルト61上の用紙を排出させるように制御する制御手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に液滴を吐出する記録ヘッド及び用紙を搬送する搬送ベルトを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体にインクを着弾させて画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用いる。また、「用紙」とは、材質を紙に限定するものではなく、上述したOHPシート、布なども含み、インク滴が付着されるものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含むものの総称として用いる。
【0004】
従来、このような画像形成装置として、搬送ベルトと吸着ファンを用いて用紙の片面をエアーの吸引によって搬送ベルト面に吸着させて搬送する用紙搬送部を備えるものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−089125号公報
【0005】
また、用紙搬送中にジャムが発生した場合に、記録ヘッドと搬送手段との間の空間を広げるために、搬送ベルトを用いて用紙を搬送する搬送手段を、搬送方向に並んでいる各インク吐出口に記録媒体を近接させて搬送可能となる画像記録状態と、搬送手段とインク吐出口の全体を離隔させて画像記録手段と搬送手段がほぼ平行な状態あるいは傾斜状態となる解除手段を備えるものがある(特許文献2参照)。
【特許文献2】特許第2816217号公報
【0006】
また、記録媒体の搬送路上に設けられた記録媒体検知手段により、記録媒体のジャムの発生を検知した時などに、記録媒体を搬送している搬送手段を停止し、自動排紙可能か否かを判断して、自動排紙可能な状態と判断できれば記録媒体を機外へ自動排出するようにしたものがある(特許文献3参照)。
【特許文献3】特開2002−154711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、用紙をエアー吸引して搬送する用紙搬送部がインク滴を吐出するヘッドから離れる位置に解除可能な機構を持つ画像形成装置にあっては、用紙搬送中に搬送ジャムが発生してヘッドの真下に用紙が残っていた場合に、用紙搬送部の吸着ファンを直ぐに止めてしまうと、用紙を搬送面に引き付けておく吸引力が無くなってしまい、用紙がヘッドのノズル面に接触してノズルを傷つけたり、ノズルのインクメニスカスを破壊して次の滴吐出ができなくなるといった課題がある。
【0008】
また、搬送ベルトを記録ヘッドから離れた解除位置へ移動させるだけでは、搬送ベルトに用紙が残存し、ユーザーが取り除き作業をしなければ復帰できず、また通常の排紙トレイに自動排紙したのでは正常に画像形成された用紙と混合してしまうことになるという課題がある。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、ジャム発生時に記録ヘッドのメニスカスが壊れることを低減し、かつジャムした用紙を専用の排紙箇所へ安定して排紙できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに対向して用紙を吸着して搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトを前記記録ヘッドに近接するホーム位置と前記記録ヘッドから離間した解除位置との間で変位させる解除手段と、
前記用紙の搬送ジャムが検知されたときには、前記搬送ベルトに前記用紙が吸着された状態で前記搬送ベルトを前記ホーム位置から解除位置に変位させ、前記解除位置に変位した状態で前記搬送ベルトを用紙搬送方向と同じ方向に周回移動させて、前記搬送ベルト上の前記用紙を排出させるように制御する制御手段と
を備えている構成とした。
【0011】
ここで、前記制御手段は、前記解除位置に変位した状態で前記搬送ベルトを用紙搬送方向と同じ方向に周回移動させるとき、所定量吸着状態を維持して周回移動させた後吸着状態を解除させる構成とできる。
【0012】
また、前記制御手段は、前記解除位置に変位した状態で吸着状態を解除させた後前記搬送ベルトを用紙搬送方向と同じ方向に周回移動させる構成とできる。
【0013】
また、前記制御手段は、前記解除位置で前記搬送ベルトから前記用紙を排出させた後、前記搬送ベルトを前記ホーム位置に復帰させる構成とできる。
【0014】
この場合、前記搬送ベルトを前記ホーム位置から前記解除位置に変位させて前記ホーム位置に復帰させるまでの間に、前記記録ヘッドの維持回復動作を行う構成とできる。
【0015】
また、前記解除位置に変位した前記搬送ベルト上の前記用紙を検出する検出手段を備えている構成とできる。
【0016】
また、前記搬送ベルトに前記用紙をエアー吸引で吸着させる吸引手段を備えている構成とできる。
【0017】
また、前記搬送ベルトは、少なくとも2つのローラ間に掛け回され、用紙搬送方向上流側のローラを支点として前記解除位置に回動可能に設けられている構成とできる。
【0018】
本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに対向して用紙を搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトに前記用紙をエアー吸引で吸着させる吸引手段と、
前記搬送ベルトを前記記録ヘッドに近接するホーム位置と前記記録ヘッドから離間した解除位置との間で変位させる解除手段と、
前記用紙の搬送ジャムが検知されたときには、前記搬送ベルトに前記用紙が吸着された状態で前記搬送ベルトを前記ホーム位置から解除位置に変位させた後、前記吸着を解除するように制御する制御手段と
を備えている構成とした。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る画像形成装置によれば、用紙の搬送ジャムが検知されたときには、搬送ベルトに用紙が吸着された状態で搬送ベルトをホーム位置から解除位置に変位させるようにしたので、ジャム発生時に記録ヘッドのメニスカスが壊れることを低減し、かつジャムした用紙を専用の排紙箇所へ安定して排紙できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置について図1ないし図3を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を説明する側面概略説明図、図2は同じくインク供給系を説明する側面概略説明図、図3は同じく用紙搬送ユニット駆動系を説明する側面概略説明図である。
【0021】
先ず、図1を参照して、この画像形成装置は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色の液体であるインクを吐出する複数の記録ヘッド10y、10m、10c、10k(以下、色の区別をしないときは、y、m、c、kのサブ符号を添えない符号を用いる。他の部材等についても同様である。)を図示しないヘッド保持部材に一体的に保持したヘッドユニット1を備えている。このヘッドユニット1は、用紙送り方向(図2の矢示A矢方向)に移動可能に配置されている
【0022】
各記録ヘッド10は、図4に示すように、ヘッド支持部材100に10個のヘッド101A〜101Jを2列千鳥状に配置している。各ヘッド101は、図5に示すように、液滴を吐出する複数のノズル102を並べて配置したノズル列103を2列千鳥状に配置したノズル面104を有している。
【0023】
このヘッドユニット1の各記録ヘッド10に対して各色のインクを供給するインク供給装置は、図2に示すように、各色のインクを収容した交換可能なメインタンク(インクカートリッジ)20を含むメインタンクユニット2と、メインタンク20からインクが供給され、記録ヘッド10にインクを供給するサブタンク30を含むサブタンクユニット3とを備え、サブタンクユニット3の各サブタンク30とヘッドユニット1の記録ヘッド10との間に水頭差を設けて記録ヘッド10に所要の負圧を発生させている。
【0024】
ヘッドユニット1の下側には、給紙装置4から給紙される用紙5をヘッドユニット1に対向して搬送する用紙搬送ユニット6が配置されている。この用紙搬送ユニット6は、用紙5を吸着し搬送する穴開き加工によって複数の吸引孔が形成された搬送ベルト61と、搬送ベルト61を掛け回した駆動ローラ62及び従動ローラ63と、図示しないが搬送ベルト61が適切な平面性を保つためのプラテン部材と、搬送ベルト61の吸引孔から空気を吸引して用紙5を搬送ベルト61上にエアー吸着させるための吸引手段であるエアー吸着ファン(吸引ファン)65と、駆動ローラ63を回転駆動する駆動モータ66(図3参照)などで構成される。なお、用紙の吸着は吸引に限られるものではなく、静電吸着や粘着などによって保持する構成にしてもよい。
【0025】
また、搬送ベルト61の用紙搬送方向下流側には搬送ガイド板7が開閉可能に配置され、搬送ガイド板7の下流側には排紙台8が配置されている。そして、搬送ガイド板7の下方に記録ヘッド10の維持回復を行う維持回復機構(クリーニングユニット)9が配置されている。
【0026】
この画像形成装置では、記録ヘッド10の維持回復(クリーニング)を行う場合、先ず、搬送ガイド板7が図1で矢示C方向に回転して開き、その下に配置されている維持回復機構9の上面が開放され、次に、ヘッドユニット1が維持回復機構9上までスライドして停止する。その後、記録ヘッド10のノズル面104がキャップ部材でキャッピングされ、キャップ部材を通してポンプ吸引ユニットによって記録ヘッド10内のインクをノズルから吸引する維持回復動作を行う。維持回復動作としてのノズル吸引が完了した後、再びヘッドユニット1が元の印字位置に戻り、搬送ガイド板7が閉じて印字可能な状態となる。
【0027】
次に、主に図2を参照して、用紙搬送ユニット6は、搬送ベルト61及び吸引ファン65などが用紙搬送方向上流側の従動ローラ63を支点として用紙搬送方向下流側の駆動ローラ63が下がる状態で回動可能に配置され、記録ヘッド10(ヘッドユニット1)に近接するホーム位置(実線図示の位置:第1位置)と記録ヘッド10から離間する解除位置(仮想線図示の位置:第2位置)との間で変位可能とされている。搬送ユニット6がホーム位置にあるとき搬送ユニット6で用紙を搬送してヘッドユニット1によって印字可能な状態となり、解除位置にあるとき搬送ユニット6で保持されているジャム用紙を排出可能な状態となる。用紙搬送方向下流側が下がって解除される構成とすることで、ジャム用紙の排紙が容易になり、また、ジャム処理中にヘッドユニット1を維持回復機構9側へ移動するときにジャム用紙との接触を回避できる。
【0028】
この用紙搬送ユニット6をホーム位置と解除位置との間で変位させる解除機構160は、搬送ユニット解除駆動モータ161と、この駆動モータ161の回転がピニオン162を介して伝達されるセクタギヤ163とを備え、搬送ユニット解除駆動モータ161とピニオン162は画像形成装置のベース側(装置筐体側)に固定され、セクタギヤ163は図示しない搬送ユニット6のユニットフレーム側に固定され、ピニオン162が回転することによってセクタギヤ163が移動、即ち搬送ユニット6が回動変位する機構となっている。なお、搬送ベルト解除駆動モータ161からピニオン162まではタイミングベルトやギヤ等の動力伝達機構を用いているが図示を簡略化している。
【0029】
また、搬送ユニット6が解除位置に移動した状態で、搬送ユニット6から排出されるジャム用紙をストックするジャム用紙専用排紙トレイ170が、排紙ユニット6の前方側に配置されている。
【0030】
さらに、搬送ユニット6の駆動ローラ62側にセンサフィラ175が取り付けられており、搬送ユニット6がホーム位置にあるときには搬送ユニットHP位置センサ176がこのセンサフィラ175を検知し、搬送ユニット6が解除位置にあるときには搬送ユニット解除位置センサ177がセンサフィラ175を検知することで、搬送ユニット6がホーム位置にあるか、解除位置にあるかを検出できるようにしている。
【0031】
次に、主に図3を参照して、搬送ユニット6上の用紙5を検知する用紙有無検知センサ201が配置されている。この用紙有無検知センサ201の配置位置は、搬送ベルト61上方に用紙搬送方向に4箇所で用紙の幅方向(搬送ベルト61の搬送方向と直交する方向)の中央部に配置されている。この用紙有無検知センサ201の配置箇所及び個数については、画像形成装置が対応する全てのサイズの用紙について、搬送面(搬送ベルト61表面)に用紙5が残っていることを検出できる位置であれば良く、ここでは搬送方向に4箇所配置した例で示しているが、これに限るものではない。
【0032】
これらの用紙有無検知センサ201は、搬送面の上部に設けたガイド板202に取り付けてあり、このガイド板202は搬送ユニット6に取り付けられ、搬送ユニット6が解除位置に移動する場合、仮想線で示すように、搬送ベルト61とともに移動して、解除位置にある搬送ベルト61上の用紙5の有無を検知できるようになっている。
【0033】
また、搬送ユニット6を解除位置にした状態で、搬送ユニット6の用紙送り方向下流側に、搬送ユニット6を解除位置にした状態で、搬送ユニット6からジャム用紙専用トレイ170に対するジャム用紙の排出を検知する用紙排出検知センサ204が配置されている。
【0034】
さらに、ジャム用紙専用トレイ170上には、ジャム用紙専用トレイ170内のジャム用紙を検知するジャム用紙積載検知センサ205が設けられている。このジャム用紙積載検知センサ205がジャム用紙専用トレイ170内に用紙が載っていることを検知したときには、ユーザーに通知するようにされている。このジャム用紙積載検知センサ205は、ユーザーへ通知目的のために取り付けた検知手段であり、ジャム用紙積載検知センサ205がジャム用紙を検知した状態においても通常の印字動作が継続できる状態である。
【0035】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図6のブロック説明図を参照して説明する。
この制御部は、本画像形成装置のシステム制御を行う本発明に係る制御手段を兼ねたCPU801と、CPU801が実行するプログラムなどの情報を格納するROM802と、ワーキングエリアとして使用するRAM803と、オペレータが各種設定等を行うため操作表示部804と、紙サイズ検知やジャム検知等を行う各種センサ805と、各種モータ等806と、各種センサ805及び各種モータ等806への出力制御信号を行うI/O807と、画像読取り装置(スキャナ)808を制御する読取り制御部809と、プロッタ部(印字機構部)810を制御する印字制御部811と、電話回線とのI/F制御を行う網制御装置812の制御も含めて、各種ファクシミリ通信制御を行う通信制御部813等を備えている。
【0036】
ここで、各種センサ805には、上述した用紙有無検知センサ201、用紙排出検知センサ204、ジャム用紙積載検知センサ205が含まれる。また、各種モータ806には搬送ベルト61を周回移動(回動)させる駆動モータ66、解除機構160の解除駆動モータ161などが含まれる。
【0037】
そこで、この画像形成装置における本発明に係る制御について図7のフロー図及び図8のタイミングチャートを参照して説明する。なお、図8のタイミングチャートは画像形成装置がプリント中に用紙搬送ジャムと判断した場合の動作タイミングを示している。
先ず、プリントキーが押下(ON)される(図8(a))と、用紙搬送ユニット6のエアー吸着ファン65と搬送ベルト61が駆動され、給紙が開始される(図8(h)、(i)、(b))。給紙関連の動作は示していないが、用紙が一枚ずつ分離されて搬送ユニット6の搬送ベルト61上に送られる。
【0038】
そして、搬送ベルト61上を用紙5が搬送されると、用紙有無検知センサ201の下を用紙5が通過するため、その度に用紙有無検知センサ201がON/OFFを繰り返している(図8(c))。
【0039】
ここで、印字(搬送)の途中で装置が用紙搬送ジャムを検知した場合、プリントはOFFし(図8(a))、給紙は停止する(図8(b)。この時、搬送ベルト61は回転を停止する(図8(i)が、エアー吸着ファン65は回転したままの状態である(図8(h))。なお、図8のタイミングチャートの例では用紙搬送部上の用紙有無検知センサ201がONしており、用紙が搬送ユニット6上に用紙が残っている状態を示している。
【0040】
その後、搬送ユニット6をヘッドユニット1から離間させるために、用紙搬送ユニット解除駆動モータ161が正転駆動し始め(図8(j))、用紙搬送ユニットHP位置センサ176はOFF状態となり(図8(f))、そのまま搬送ユニット解除駆動モータ161を駆動し続けると、今度は用紙搬送ユニット解除位置センサ177がONされる(図8(g))ので、これにより、搬送ユニット解除駆動モータ161の駆動が停止される。
【0041】
この時点でも、まだエアー吸着ファン65は回転を続けているので、搬送ベルト61上のジャム用紙は搬送ベルト61に吸着された状態である。つまり、搬送ベルト61上にジャム用紙を吸着したまま搬送ベルト61のホーム位置から解除位置への変位(回動)が行われる。
【0042】
そして、用紙搬送ユニット6が完全に解除位置に達した状態になると、用紙搬送ベルト61が回転を開始する(図8(i))。これにより、搬送ベルト61上のジャム用紙がジャム用紙専用トレ170方向に排出されるが、この時にジャム用紙が用紙排出検知センサ204上を通過するのでジャム用紙が排出されたか否かの確認を行い(図8(d))、搬送ユニット6上の用紙有無検知センサ201がOFFとなる(図8(c))ことを確認して、ジャム用紙が正しくジャム用紙専用排紙トレイ170に排出されたか否かを判別する。
【0043】
ジャム用紙が正しくジャム用紙専用排紙トレイ170に排出されると、ジャム用紙積載検知センサ205がONとなる(図8(e))。なお、このタイミングチャートではジャム用紙積載検知センサ205がOFFの状態からONに変わっている状態の例を示しているが、仮に、前回のジャム用紙が取り除かれないまま積載された状態であれば、ジャム用紙積載検知センサ205はONの状態を示したままとなる。ジャム用紙積載検知センサ205はユーザーに「ジャム用紙のストックがあります」というメッセージを伝えるための検出手段である。
【0044】
ジャム用紙専用排紙トレイ170にジャム用紙が正しく排出されたと判別されたときには、搬送ベルト61とエアー吸着ファン65の駆動が停止される(図8(h)、(i))。そして、ジャム用紙の排出が完了すると、搬送ユニット6のホーム位置への復帰動作に移行する。つまり、用紙搬送ユニット解除駆動モータ161が逆回転を開始し、用紙搬送ユニットHP位置センサ176がON状態になるまで駆動される。用紙搬送ユニットHP位置センサ176がONした状態で印字可能な状態となり、次の印刷開始指示を受けて印字が可能となる。ここで、ジャム用紙専用排紙トレイ170上のジャム用紙を取り除かずにジャム用紙積載検知センサ205がONの状態であっても印字ができる状態である。
【0045】
また、ここでは、図示していないが、前述したように、搬送ユニット6によってジャム用紙の排出処理を行っているときに、ヘッドユニット1を維持回復機構9側にスライド移動させて、記録ヘッド10の維持回復を行う。これによって、自己修復後の印刷再開時に清浄な記録ヘッド10の状態で印刷を再開することができる。特に、搬送ユニット6が解除位置に移動してジャム用紙を排紙した後自動復帰して、所要の頁から印刷を再開する自己修復可能な画像形成装置とした場合、安定した印刷を継続、再開することができるようになる。
【0046】
このように、記録ヘッドに対向して用紙を搬送する搬送ベルトと、搬送ベルトに用紙をエアー吸引で吸着させる吸引手段と、搬送ベルトを記録ヘッドに近接するホーム位置と記録ヘッドから離間した解除位置との間で変位させる解除手段と、用紙の搬送ジャムが検知されたときには、搬送ベルトに用紙が吸着された状態で搬送ベルトをホーム位置から解除位置に変位させた後、吸着を解除するように制御する制御手段とを備えることで、ジャム発生時に記録ヘッドのメニスカスが壊れることを低減し、かつジャムした用紙を専用の排紙箇所へ安定して排紙できるようになる。
【0047】
また、記録ヘッドに対向して用紙を吸着して搬送する搬送ベルトと、搬送ベルトを記録ヘッドに近接するホーム位置と記録ヘッドから離間した解除位置との間で変位させる解除手段と、用紙の搬送ジャムが検知されたときには、搬送ベルトに用紙が吸着された状態で搬送ベルトをホーム位置から解除位置に変位させ、解除位置に変位した状態で搬送ベルトを用紙搬送方向と同じ方向に周回移動させて、搬送ベルト上の用紙を排出させるように制御する制御手段とを備えることで、ジャム発生時に記録ヘッドのメニスカスが壊れることを低減し、かつジャムした用紙を専用の排紙箇所へ安定して排紙できるようになる。
【0048】
なお、上記実施形態では、ジャム用紙の排出完了後にエアー吸着ファン65を停止するようにしているが、搬送ユニット6を解除位置に変位した状態で搬送ベルト6を用紙搬送方向と同じ方向に周回移動させるとき、所定量吸着状態を維持して周回移動させた後、エアー吸着ファン65を停止して吸着状態を解除させ、ジャム用紙が自重でジャム用紙専用排紙トレイ170に落下するようにすることもできる。また、搬送ユニット6を解除位置に変位した状態で搬送ベルト6を用紙搬送方向と同じ方向に周回移動させるとき、解除位置に変位した状態で吸着状態を解除させた後、搬送ベルト6を用紙搬送方向と同じ方向に周回移動させるようにし、排出時はジャム用紙の自重で搬送ベルト6に載っている状態とすることもできる。このようにすれば、ジャム用紙は比較的簡単に確実に搬送ベルトから分離することができるようになる。
【0049】
また、上記実施形態ではライン型画像形成装置に本発明を適用した例で説明しているが、シリアル型画像形成装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る画像形成装置の全体構成を説明する側面概略説明図である。
【図2】同じくインク供給系を説明する側面概略説明図である。
【図3】同じく用紙搬送ユニット駆動系を説明する側面概略説明図である。
【図4】記録ヘッドの一例を説明する平面説明図である。
【図5】ヘッドユニットの一例を示す平面説明図である。
【図6】同画像形成装置における制御部の概要を説明するブロック説明図である。
【図7】ジャム発生時の処理の説明に供するフロー図である。
【図8】同じくタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0051】
1…ヘッドユニット
2…メインタンク(インクカートリッジ)
3…サブタンク
4…給紙機構
5…用紙
6…搬送ユニット
7…搬送ガイド板
8…排紙台
9…維持回復機構(クリーニングユニット)
10k、10c、10m、10y…記録ヘッド
61…搬送ベルト
62…駆動ローラ
63…従動ローラ
65…エアー吸着ファン(吸引手段)
160…解除機構
170…ジャム用紙専用排紙トレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに対向して用紙を吸着して搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトを前記記録ヘッドに近接するホーム位置と前記記録ヘッドから離間した解除位置との間で変位させる解除手段と、
前記用紙の搬送ジャムが検知されたときには、前記搬送ベルトに前記用紙が吸着された状態で前記搬送ベルトを前記ホーム位置から解除位置に変位させ、前記解除位置に変位した状態で前記搬送ベルトを用紙搬送方向と同じ方向に周回移動させて、前記搬送ベルト上の前記用紙を排出させるように制御する制御手段とを備えている
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、前記制御手段は、前記解除位置に変位した状態で前記搬送ベルトを用紙搬送方向と同じ方向に周回移動させるとき、所定量吸着状態を維持して周回移動させた後吸着状態を解除させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成装置において、前記制御手段は、前記解除位置に変位した状態で吸着状態を解除させた後前記搬送ベルトを用紙搬送方向と同じ方向に周回移動させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置において、前記制御手段は、前記解除位置で前記搬送ベルトから前記用紙を排出させた後、前記搬送ベルトを前記ホーム位置に復帰させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4のいずれかに記載の画像形成装置において、前記搬送ベルトを前記ホーム位置から前記解除位置に変位させて前記ホーム位置に復帰させるまでの間に、前記記録ヘッドの維持回復動作を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置において、前記解除位置に変位した前記搬送ベルト上の前記用紙を検出する検出手段を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の画像形成装置において、前記搬送ベルトに前記用紙をエアー吸引で吸着させる吸引手段を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の画像形成装置において、前記搬送ベルトは、少なくとも2つのローラ間に掛け回され、用紙搬送方向上流側のローラを支点として前記解除位置に回動可能に設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに対向して用紙を搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトに前記用紙をエアー吸引で吸着させる吸着手段と、
前記搬送ベルトを前記記録ヘッドに近接するホーム位置と前記記録ヘッドから離間した解除位置との間で変位させる解除手段と、
前記用紙の搬送ジャムが検知されたときには、前記搬送ベルトに前記用紙が吸着された状態で前記搬送ベルトを前記ホーム位置から解除位置に変位させた後、前記吸着を解除するように制御する制御手段と
を備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−160778(P2009−160778A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340666(P2007−340666)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】