説明

画像形成装置

【課題】
像担持体の裏面側から画像信号に応じた熱エネルギーを与えて像担持体に顕色剤画像を仮固着させて記録媒体に熱転写する熱転写画像形成装置について、簡易な機構で且つ低エネルギーで多色記録することができるように、その画像形成装置の構成を工夫すること。
【解決手段】
光透過性の像担持体と、該像担持体の移動面に沿って配置された複数の単色像形成手段とを有し、各単色像形成手段から転移させられた顕色剤画像を前記像担持体上で重ね合わせることによって多色画像を形成する画像形成装置を前提として、前記単色像形成手段は、該像担持体に色毎に異なる温度で粘着性を発現する熱溶融性の顕色剤を供給する顕色剤供給手段と、前記顕色剤供給手段によって供給された前記顕色剤に該像担持体の裏面から画像信号に応じて選択的にエネルギーを付与するレーザー書き込み手段と、前記書き込み手段によりエネルギーを付与された前記顕色剤を前記像担持体に仮固着させる仮固着手段とを有すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は画像形成装置、殊に、熱溶融性の顕色剤を像担持体に仮固着させる方法で作像し、これを記録媒体に転写、定着させる画像形成装置に関するもので、複写機、プリンタ等の画像形成装置に利用される発明であり、多色画像の形成装置を極めて単純な機構で構成することができ、かつ、低いエネルギーで高品質の画像を形成することができるものである。
【背景技術】
【0002】
一般に広く知られている電子写真方式の複写機やプリンタ等における画像形成装置では、感光体を帯電、露光、光書き込み、現像し、現像された像を記録媒体に転写、定着して画像を形成している。また、感光体を使用しない画像形成装置として、インクジェット方式の印刷装置や孔版印刷による印刷装置が知られている。
【0003】
その他の画像形成装置として、下記特許文献1に記載されている熱転写画像形成装置があり、これは、耐熱光透過性シートに記録媒体を重ね、耐熱光透過性シートの他方の面から原稿画像に応じた光ビームを照射してトナーを加熱溶融させて記録媒体に熱転写させるものである。
また、下記特許文献2に記載されている熱転写画像形成装置があり、これは、周面にトナー層を形成したローラに記録媒体を接触させ、この記録媒体の裏面からサーマルヘッドにより原稿画像に応じた熱像を与えて記録媒体にトナー像を熱転写させるものである。
【0004】
さらに、下記特許文献3に記載されている画像形成装置があり、これは、像担持体の表面に加熱によって粘着性が発現する層を設け、サーマルヘッドにより画像信号に応じた熱像を与えて粘着性により着色粉体を付着させ、記録媒体に転写するものである。
さらにまた、下記特許文献4に記載されている画像形成装置があり、これは、像担持体の裏面側からサーマルヘッドまたはレーザー光を照射して画像信号に応じた熱像を与えて像担持体に顕色剤画像を仮固着させ、これを記録媒体に熱転写させる画像形成装置である。
【0005】
〔従来技術の問題点〕
静電潜像を形成するために感光体を用いる電子写真方式の複写機やレーザープリンタの画像形成装置は、画像形成のための工程数が多く、そのために記録装置が大きく、またその機構が複雑であるという問題がある。
また、感光体の感光特性が経時的に劣化し、あるいは変化する問題や、帯電、転写、除電工程で用いられているコロナ放電を生じさせる高電圧発生装置によってオゾンが発生するという問題がある。
【0006】
更に、インクジェット方式の画像形成装置は、画像形成の記録速度が遅いという問題点があり、そしてまた、孔版印刷の画像形成装置では、マスタを製版しなければならない煩雑さがあり、更に解像力が低いという問題がある。
また、特許文献1、特許文献2に記載のトナー像を記録媒体に熱転写する熱転写画像形成装置では、記録媒体にトナーを溶融転写させるに十分な高いエネルギーを有するレーザー光またはサーマルヘッドを必要とする問題がある。
【0007】
更に、特許文献3に記載されている像担持体の表面に加熱によって粘着性が発現する層を設け、サーマルヘッドにより画像信号に応じた熱像を与えて粘着性により着色粉体を付着させる画像形成装置では、繰り返し画像を形成することにより、この粘着層の劣化や汚れにより粘着力が低下するという問題がある。
【0008】
ところで、以上の従来技術の問題点を有しないものとして、特許文献4に記載されている熱転写画像形成装置がある。これは、像担持体の裏面側から画像信号に応じた熱像を与えて像担持体に顕色剤画像を仮固着させ、これを記録媒体に熱転写するものであり、その概略は図1に示す通りである。
【0009】
すなわち、その画像形成装置100において、顕色剤供給ローラ7により顕色剤4が供給される像担持体1の顕色剤受領部(当接部)の裏面側から、顕色剤画像12を像担持体1に仮固着させる光エネルギー(レーザー光L)が、書き込み手段であるレーザー光走査装置30によって照射される。そして、顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4画像信号に応じてレーザー光Lが照射されると、顕色剤4に含まれているカーボンブラックが光熱変換材料として機能し、これにより上記レーザー光Lの光エネルギーが熱に変換されて顕色剤4が加熱される。そしてこの熱で顕色剤4の表面の感熱粘着層粘着性を発現する。粘着性を発現(活性化)した顕色剤4が、粘着性によって像担持体1上に仮固着されて像担持体1の下面に顕色剤画像12が形成される。
【0010】
したがって、この画像形成装置では、感光体を有していないので、感光体に関する経時劣化の問題は発生せず、小型で電子写真並みの記録速度を達成することができる。しかし、この従来技術については、複数色を重ね合わせて安定的に仮固着させることが困難であり、したがって、高品質のカラー画像を安定的に形成することが困難であるという問題がある。
【0011】
【特許文献1】特開昭64−69357号公報
【特許文献2】特開平7−314746号公報
【特許文献3】特開平10−798号公報
【特許文献4】特開平11−91147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、像担持体の裏面側から画像信号に応じた熱エネルギーを与えて像担持体に顕色剤画像を仮固着させて記録媒体に熱転写する熱転写画像形成装置について、簡易な機構で且つ低エネルギーで多色記録することができるように、その画像形成装置の構成を工夫することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための手段は、光透過性の像担持体と、該像担持体の移動面に沿って配置された複数の単色像形成手段とを有し、各単色像形成手段から転移させられた顕色剤画像を前記像担持体上で重ね合わせることによって多色画像を形成する画像形成装置を前提として、次の(イ)〜(ハ)によるものである。
(イ)前記単色像形成手段は、該像担持体に色毎に異なる温度で粘着性を発現する熱溶融性の顕色剤を供給する顕色剤供給手段と、
(ロ)前記顕色剤供給手段によって供給された前記顕色剤に該像担持体の裏面から画像信号に応じて選択的にエネルギーを付与するレーザー書き込み手段と、
(ハ)前記書き込み手段によりエネルギーを付与された前記顕色剤を前記像担持体に仮固着させる仮固着手段とを有すること。
【0014】
また、
(ニ)前記担持体の移動方向において、当該単色像形成手段によって供給された前記顕色剤を前記レーザー書き込み手段により前記像担持体に仮固着させるために付与するエネルギーは、当該単色像形成手段より上流側で像担持体上に仮固着した前記顕色剤の粘着性を発現しないように制御することである(請求項2)。
【0015】
さらに、
(ホ)上記像担持体の移動方向において、上流側に位置する単色像形成手段から供給される顕色剤ほど、粘着性を発現する温度が高いことである(請求項3)。
【0016】
さらに、
(ヘ)上記像担持体の移動方向において、各単色画像形成手段の下流側に、該像担持体上の仮固着した顕色剤画像以外の非画像部の顕色剤を該像担持体から除去する顕色剤除去手段を有することである(請求項4)。
【0017】
さらに、
(ト)上記像担持体の移動方向において、黒色の前記単色像形成手段は、該像担持体の移動面に沿って配置された複数の単色像形成手段の最下流側に配置することである(請求項5)。
【0018】
さらに、
(チ)該像担持体の移動方向において、少なくとも最下流側の単色像形成手段から供給される前記熱溶融性の顕色剤は、エネルギーを付与されることにより表面層が粘着性を発現する感熱性粘着剤であることである(請求項6)。
【発明の効果】
【0019】
そして、各請求項に係る発明の効果は次のとおりである。
(1)請求項1に係る発明
請求項1の画像形成装置においては、色毎に異なる温度で粘着性を発現する顕色剤を用いるので、感光体を使用しない簡易な構成で且つ低エネルギーで多色記録可能な画像を形成することができる。
【0020】
(2)請求項2に係る発明
請求項2の画像形成装置においては、既に像担持体上に仮固着した顕色剤が粘着性を発現しない書き込み条件で当該色の仮固着画像を形成するので、感光体を使用しない簡易な構成で且つ低エネルギーで多色記録可能な画像を形成することができる。
【0021】
(3)請求項3に係る発明
請求項3の画像形成装置においては、既に像担持体上に仮固着した顕色剤が粘着性を発現しない温度で当該色の仮固着画像を形成するので、感光体を使用しない簡易な構成で且つ低エネルギーで多色記録可能な画像を形成することができる。
【0022】
(4)請求項4に係る発明
請求項4の画像形成装置においては、色毎に像担持体の非画像部に付着した顕色剤を除去して画像を重ね合わせるので、地汚れを低減した高画質な画像を形成することができる。
【0023】
(5)請求項5に係る発明
請求項5の画像形成装置においては、すべての波長のレーザー光を吸収する黒色顕色剤の画像形成を最後に行うので、像担持体上に形成された黒色顕色剤画像が他色の書き込みを行うレーザー光を吸収して粘着性を発現し、他色の顕色剤の転写による地汚れを防止することができる。
【0024】
(6)請求項6に係る発明
請求項6の画像形成装置においては、顕色剤の表面層に感熱性粘着剤を使用して像担持体に粘着転写させるので、顕色剤を低い書き込みエネルギーで像担持体に仮固着することができる。また、低出力のレーザー光源を用いてレーザー書き込みを行えるので、書き込み装置を小型化、低コスト化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次いで、図面を参照して実施例1、実施例2、実施例3、実施例4を順次説明する。
〔実施例1〕
図2に実施例1、すなわち、シアンとマゼンタによる2色の記録による画像形成装置の例を示している。ただし、図1の上記従来例と同じ構成についてはその詳細を図2では省略してある(これらの詳細については図1を参照のこと)。
顕色剤供給装置5C,5Mの構成は、図1の顕色剤供給装置5と違いはないが、供給する顕色剤4が異なる。
また、図2のレーザー光走査装置30C,30Mの構成は図1のレーザー光走査装置30と違いはないが、照射されるレーザー光Lとレーザー光L(C),L(M)の光エネルギーが異なる。
レーザー光L(C),L(M)の光エネルギーは、顕色剤4C,4Mの粘着性が発現して仮固着する温度になるように制御されて照射される。
顕色剤供給装置5C,5Mおよびレーザー光走査装置30C,30Mの構成の詳細は、図1の従来技術のそれとそれぞれ違いはないので、図2上は省略している。
【0026】
図2に示す画像形成装置200における像担持体1は、光透過性を有するフィルム状の無端の中間転写ベルトである。この像担持体1は駆動ローラ2と従動ローラ3との間に巻掛けられており、駆動ローラ2はモータ等の駆動手段(図示略)により矢印Aの向きに回転駆動して、像担時体1を矢印aの向きに移動させる。この実施形態における像担持体1の材料は、厚さ100μmのポリイミドフィルムである。
【0027】
なお、像担持体1の材料については、上記ポリイミドフィルムと違うものを採用することもできる。ただし、その場合は、レーザー光走査装置30C,30Mからの照射レーザー光L(C),L(M)の光の波長を透過する高い光透過性を有すること、この光書き込みによる微小スポット照射による発熱及び熱ローラ13による加熱に耐え得る高い耐熱性を有すること、繰り返し駆動されることに対する高い耐久性を有すること、張力変動及び環境変動による伸縮が少ないこと等の条件を満たす必要がある。
【0028】
また、像担持体1を挟んで熱溶着手段(加熱加圧手段)としての熱ローラ13が駆動ローラ2に対して接離自在に対向して配置されており、レジストローラ15,15によって熱ローラ13と駆動ローラ2との間に記録媒体14が送り込まれたとき、その記録媒体14が像担持体1を介して駆動ローラ2に所定の加圧力で押圧されるようになっている。
【0029】
更に、従動ローラ3の近傍にはクリーニング装置16が配置されている。このクリーニング装置16では、像担持体1を介して従動ローラ3にクリーニングローラ17を当接させ、また、クリーニングローラ17にブレード18を当接させている。
【0030】
また、像担持体1の下面1aに、顕色剤供給装置5C,5Mにより熱溶融性の顕色剤4C,4Mが供給される。当該顕色剤供給装置5C,5Mは、顕色剤4C,4Mを収容するケース6と、顕色剤4C,4Mを担持しつつ像担持体1との対向部まで搬送する顕色剤供給手段である顕色剤供給ローラ7と、顕色剤供給ローラ7に顕色剤4を収容するケース6内の顕色剤4C,4Mを補給する補給ローラ8と、顕色剤供給ローラ7上に担持する顕色剤4C,4Mの層厚を均一化するブレード9等で構成されている。上記顕色剤供給ローラ7、補給ローラ8は、それぞれ矢印B、矢印Cの方向に回転駆動される(図2では省略、図1参照)。
【0031】
ここで、顕色剤4Cは、熱可塑性樹脂と着色剤としてのシアン染料または顔料を主成分とするものである。そしてこれは、レーザー光走査装置30Cにより照射されるレーザー光L(C)を吸収する光熱変換材料を含有する熱溶融性の粒子である。
同様に、顕色剤4Mは、熱可塑性樹脂と着色剤としてのマゼンタ染料または顔料を主成分とするものである。そしてこれは、レーザー光走査装置30Mにより照射されるレーザー光L(M)を吸収する光熱変換材料を含有する熱溶融性の粒子である。
更に、像担持体1に最初に仮固着される顕色剤4Cの方が2番目に仮固着される顕色剤4Mより高温で粘着性を発現する材料で構成されている。
【0032】
そして、顕色剤4Cは、顕色剤供給ローラ7上に汲み上げられ、ブレード9によってその付着層の厚さは規制され、適正量が像担持体1と顕色剤供給ローラ7との当接部に導かれる。顕色剤4Cを顕色剤供給ローラ7上に汲み上げる方法として、この実施例では静電気的な付着力を利用している。すなわち、顕色剤供給ローラ7と補給ローラ8とがその当接部において速度差を有しつつ接触することで顕色剤4Cを摩擦帯電(本実施の形態では、負帯電)させ、かつ顕色剤供給ローラ7に、補給ローラ8に対して正電位の電圧を印加することによって顕色剤4Cを付着させて汲み上げる。なお、顕色剤4Cを顕色剤供給ローラ7に汲み上げる方法は、上記方法の他に、磁力などの非静電気的付着力を利用して汲み上げる方法でもよい。
【0033】
そして、この実施例1では、像担持体1と顕色剤供給ローラ7の当接部において、レーザー光走査装置30Cからのレーザー光L(C)が照射され、これによって、顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4Cに画像信号に応じた光エネルギーが像担持体1を透して供給される。なお、顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4Cは、ブレード9で与えられた電荷による静電気力で、顕色剤供給ローラ7に付着されている。そして、顕色剤供給ローラ7上の画像信号部の顕色剤4Cにレーザー光L(C)が照射されると、顕色剤4Cに含まれている光熱変換材料がレーザー光L(C)の光エネルギーを熱に変換し、顕色剤4Cの表面層を溶融させて粘着性を発現させる。粘着性を発現(活性化)した顕色剤4Cは、その粘着性により像担持体1の下面に顕色剤画像12として仮固着される。このとき、像担持体1と顕色剤供給ローラ7のニップ状態を制御することにより、非画像部の顕色剤4Cの付着による地汚れを低減することができる。
【0034】
この仮固着による顕色剤画像12の像担持体1への付着力は、顕色剤4Cと顕色剤供給ローラ7との静電気による付着力よりも強く、後述の顕色剤画像12の記録媒体14への熱定着による付着力よりも弱く、かつこの熱定着後に行われる像担持体1に対するクリーニング装置16による除去力よりも弱く、したがって、クリーニング装置16によるクリーニング作用で、残留顕色剤が像担持体1から容易に除去される程度の強さに選択されている。
【0035】
また、レーザー光走査装置30C,30Mは、レーザー光源(図示せず)、コリメートレンズ(図示せず)、ポリゴンミラー31、fθレンズ32、像担持体1の幅と略同一長さの短冊形反射鏡33で主に構成されており、像担持体1を介して顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4Cに画像信号に応じた光エネルギーをレーザー光L(C)で与える(図1参照のこと)。
同様にして、顕色剤4Mは、顕色剤供給ローラ7上に汲み上げられ、その付着量はブレード9によって規制されて、適正量が像担持体1と顕色剤供給ローラ7との当接部に導かれる。
そして、像担持体1と顕色剤供給ローラ7の当接部において、顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4Mに、画像信号に応じたレーザー光(光エネルギー)が、レーザー光走査装置30Mから、顕色剤4Cによる顕色剤画像12に重なり合うタイミングで、像担持体1を透して照射される。
【0036】
また、顕色剤供給ローラ7上の画像信号部の顕色剤4Mにレーザー光が照射されると、顕色剤4Mに含まれている光熱変換材料がレーザー光L(M)の光エネルギーを熱に変換し、顕色剤4Mの表面層を溶融させて粘着性を発現させる。粘着性を発現(活性化)した顕色剤4Mは、既に形成された顕色剤4Cに重なり合うようにして、像担持体1上に仮固着される。
このとき、既に像担持体1上に仮固着された顕色剤4Cも、マゼンタの画像信号に応じてレーザー光L(M)が照射されるため、画像信号部の顕色剤4Cが加熱される。
ここで、像担持体1に最初に仮固着される顕色剤4Cの方が2番目に仮固着される顕色剤4Mより粘着性を発現する温度が高い材料で構成されている。
したがって、レーザー光L(M)で照射される光エネルギーにより、顕色剤供給ローラ7上に汲み上げられた顕色剤4Mは加熱されて粘着性を発現するが、既に像担持体1上に仮固着された顕色剤4Cは再加熱されるがこの温度では粘着性を発現しない。
よって、像担持体1上にマゼンタの画像信号部に応じて顕色剤4Mが仮固着し、既に像担持体1上に仮固着された顕色剤4Cの粘着性の再発現による画像信号部以外の顕色剤4Mの付着を防止することができる。
【0037】
更に、顕色剤供給装置5C,5M内には、顕色剤除去ローラ10が配置されており、その周面にクリーニングブレード11の先端縁が当接している(図1参照のこと)。この顕色剤除去ローラ10は、仮固着されるべき顕色剤でない顕色剤4が非画像部に付着したとき(いわゆる「地汚れ」)にそれを除去するものである。すなわち、仮固着によって像担持体1に顕色剤画像12を形成する仮固着工程の後において、像担持体1の非画像部に顕色剤4C,4Mが付着しているときは、これらの顕色剤4C,4Mは、ブレード9の印加電圧とは逆極性の電圧が印加された顕色剤除去ローラ10の吸引作用によって除去される。なお、顕色剤除去ローラ10による顕色剤4C,4Mに対する吸引力は、顕色剤4C,4Mの像担持体1に対する仮固着力よりも弱いので、仮固着されて顕色剤画像12を形成している顕色剤4C,4Mが顕色剤除去ローラ10の吸引作用で除去されることはない。
【0038】
そして、像担持体1の非画像部をクリーニングする顕色剤除去工程を経た後に、像担持体1上に残存する顕色剤画像12が、熱ローラ13によって記憶媒体14に転写され、定着される。記録媒体14は、図示しない給紙装置から供給され、一対のレジストローラ15で像担持体1と熱ローラ13間に、像担持体1と同速度で送り込まれ、熱ローラ13でその裏面から加熱加圧される。
【0039】
そしてまた、熱ローラ13による熱溶着転写工程の後に、像担持体1はクリーニングローラ17によってクリーニングされて一連の記録工程を終える。そしてこれによって、顕色剤供給ローラ7の直前でブレード18で残存する顕色剤4C,4M等の塵埃が掻き落とされ、次の記録工程に備えられることになる。
【0040】
〔実施例2〕
次に、実施例2を図1、図3を参照して説明する。
実施例2はシアン、イエロー、マゼンタ及び黒色からなるフルカラーの画像形成装置の例である。図2の実施例と同じ構成には同じ符号を付してある。ただし、その詳細は図3では省略している。
このものの顕色剤供給装置5C,5Y,5M,5Kの構成は、図1の顕色剤供給装置5と同じ構成であり、供給する顕色剤4が異なる。
また、図3のレーザー光走査装置30C,30Y,30M,30Kは、図1のレーザー光走査装置30と同じ構成である。
【0041】
顕色剤供給装置5およびレーザー光走査装置30C,30Y,30M,30Kの構成の詳細は、図1の構成の詳細と違いはないので、図3では省略している(これらの詳細は図1を参照)。
以上のことを前提として実施例2を説明する。
【0042】
図3に示す実施例2の画像形成装置300における像担持体1は光透過性を有する無端の中間転写ベルトであり、駆動ローラ2と従動ローラ3との間に巻き掛けられている。そして、駆動ローラ2はモータ等の駆動手段(図示略)により矢印Aの向きに回転駆動して、像担持体1を矢印aの向きに移動させる。
この実施例2の像担持体1の材料は、実施例1と同様に、厚さ100μmのポリイミドフィルムである。
【0043】
なお、像担持体1に上記フィルムと違う材料を採用することもできる。ただし、その場合は、レーザー光走査装置30C,30Y,30M,30Kにより照射されるレーザー光L(C),L(Y),L(M),L(K)の光の波長が透過する光透過性を有すること、この光書き込みによる微小スポット照射の発熱、及び熱ローラ13による加熱に耐え得る高い耐熱性、熱的安定性を有すること、繰り返し駆動されることに対する高い耐久性を有すること、張力変動及び環境変動による伸縮が少ない等の条件を満たすものであることが必要である。
【0044】
また、像担持体1を挟んで熱溶着手段としての熱ローラ13が駆動ローラ2に接離自在に配置されており、両ローラ間に記録媒体14がレジストローラ15で送り込まれる。そして熱ローラ13と駆動ローラ2との間に記録媒体14が送り込まれたときに、この記録媒体が像担持体1を介して熱ローラ13によって押圧される。
更に、従動ローラ3の近傍に、クリーニング装置16が配置されており、像担持体1を介して従動ローラ3にクリーニングローラ17が当接しており、更に、クリーニングローラ17にブレード18が当接している。
【0045】
像担持体1の下面1aに、顕色剤供給装置5C,5Y,5M,5Kにより熱溶融性の顕色剤4C,4Y,4M,4Kがそれぞれ供給される。顕色剤供給装置5C,5Y,5M,5Kは、顕色剤4C,4Y,4M,4Kを収容するケース6と、顕色剤4C,4Y,4M,4Kを像担持体1との対向部まで搬送する顕色剤供給ローラ7と、顕色剤供給ローラ7にケース6内の顕色剤4C,4Y,4M,4Kを補給する補給ローラ8(図1参照)と、顕色剤供給ローラ7上に付着した顕色剤4C,4Y,4M,4Kの層厚を均一化するブレード9(図1参照)等で構成されている。
【0046】
顕色剤供給ローラ7、補給ローラ8は、それぞれ矢印B、矢印Cの方向に駆動される(図1参照)。
ここで、顕色剤4C,4Y,4Mは、熱可塑性樹脂と着色剤としてのシアン、イエロー、マゼンタ染料または顔料を主成分とし、レーザー光走査装置30C,30Y,30Mにより照射されるレーザー光L(C),L(Y),L(M)を吸収する光熱変換材料を含む熱溶融性粒子である。
更に、像担持体1に最初に仮固着される顕色剤4Cが最も高温で粘着性を発現する材料で構成され、像担持体1上に仮固着される顕色剤4C,4Y,4M,4Kの順で粘着性を発現する温度は低くなる材料で構成される。
また、顕色剤4Kは、熱可塑性樹脂と着色剤としてのカーボンブラックを主成分とする熱溶融性の粒子である。
【0047】
そして、顕色剤4Cは、顕色剤供給ローラ7上に汲み上げられ、ブレード9によってその付着層の厚さを規制されることにより、適正量が像担持体1と顕色剤供給ローラ7との当接部に導かれる。
なお、顕色剤4Cを顕色剤供給ローラ7上に汲み上げる方法では、静電気による付着力を利用している。すなわち、顕色剤供給ローラ7と補給ローラ8とがその当接部において速度差を有しつつ接触するようにすることで顕色剤4Cを摩擦帯電(この実施形態では負帯電)させ、かつ顕色剤供給ローラ7に補給ローラ8に対して正の電位となる電圧を印加することによって顕色剤4Cを吸着させて汲み上げる。また、顕色剤4Cを顕色剤供給ローラ7に汲み上げる方法としては、この実施形態における上記方法に限られるものではなく、磁力などの非静電気的付着力を利用して汲み上げるようにすることもできる。
【0048】
そして、この実施形態では、像担持体1と顕色剤供給ローラ7の当接部において、顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4Cに画像信号に応じたレーザー光L(C)がレーザー光走査装置30Cによって照射され、これによって像担持体1を透して光エネルギーが照射される。顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4Cは、ブレード9で与えられた電荷による静電気力で顕色剤供給ローラ7に付着されている。
【0049】
また、顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4Cにレーザー光L(C)が照射されると、上記顕色剤4Cに含有されている光熱変換材料によって上記レーザー光L(C)の光エネルギーが熱に変換されて顕色剤4Cが加熱され、この加熱によって、顕色剤4Cの表面層が溶融状態となり、粘着性を発現する。粘着性を発現(活性化)した顕色剤4Cは像担持体1上に仮固着され、これにより顕色剤画像12が形成される。このとき、像担持体1と顕色剤供給ローラ7のニップ状態を制御することにより、非画像部の顕色剤4Cの付着による地汚れを低減することができる。
【0050】
この仮固着によって形成される顕色剤画像12の像担持体1への付着力は、顕色剤4Cと顕色剤供給ローラ7との静電気付着力よりも強く、後述の顕色剤画像12の記録媒体14への熱定着による付着力よりも弱く、かつ定着後の、顕色剤除去ローラ10によるクリーニングによって、像担持体1上の残留顕色剤が容易に除去される程度の強さに選択されている。
【0051】
また、レーザー光走査装置30C,30Y,30M,30Kは、レーザー光源(図示略)、コリメートレンズ(図示略)、ポリゴンミラー31、fθレンズ32、像担持体1の幅と略同一長さの短冊形反射鏡33等で構成されており(図1参照のこと)、像担持体1を介して顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4Cに画像信号に応じた光エネルギーをレーザー光L(C)の照射によって付与する。
同様にして、顕色剤4Yは、顕色剤供給ローラ7上に汲み上げられ、ブレード9によってその付着層の厚さを規制されて、適正量が像担持体1と顕色剤供給ローラ7との当接部に導かれる。
【0052】
そして、像担持体1と顕色剤供給ローラ7の当接部において、顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4Yに画像信号に応じたレーザー光L(Y)がレーザー光走査装置30Yから既に顕色剤4Cで形成された顕色剤画像12に重なり合うタイミングで照射され、これによって、画像信号に応じた光エネルギーが像担持体1を透して顕色剤4Yに供給され、当該顕色剤4Yの表面層溶融状態となり粘着性を発現し、顕色剤4Cに重ねられて顕色剤画像12として仮固着される。
【0053】
ところで、顕色剤供給ローラ7上の画像信号部の顕色剤4Yにレーザー光L(Y)が照射されると、顕色剤4Yに含有されている光熱変換材料がレーザー光L(Y)の光エネルギーを熱に変換し、これによって顕色剤4Yが加熱され、この熱によって顕色剤4Yの表面層が溶融状態となり粘着性を発現する。粘着性を発現(活性化)した顕色剤4Yは、既に形成された顕色剤4Cに重なり合うようにして像担持体1上に仮固着される。
【0054】
このとき、既に像担持体1上に仮固着された顕色剤4Cも、イエローの画像信号に応じてレーザー光L(Y)が照射されるため、画像信号部の顕色剤4Cが加熱される。
ここで、像担持体1に最初に仮固着される顕色剤4Cの方が2番目に仮固着される顕色剤4Yより粘着性を発現する温度が高い材料で構成されている。
したがって、レーザー光L(Y)で照射される光エネルギーにより、顕色剤供給ローラ7上に汲み上げられた顕色剤4Yは加熱されて粘着性を発現するが、既に像担持体1上に仮固着された顕色剤4Cは再加熱されるがこの温度では粘着性を発現しない。
よって、像担持体1上にイエローの画像信号部に応じて顕色剤4Yが仮固着し、既に像担持体1上に仮固着された顕色剤4Cの粘着性の再発現による画像信号部以外の顕色剤4Yの付着を防止することができる。
【0055】
また、同様にして、顕色剤4Mは、顕色剤供給ローラ7上に汲み上げられ、ブレード9によってその付着層厚さが規制されることにより、適正量が像担持体1と顕色剤供給ローラ7との当接部に導かれる。そして、像担持体1と顕色剤供給ローラ7の当接部において、顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4Mに画像信号に応じたレーザー光L(M)がレーザー光走査装置30Mによって照射され、これによって光エネルギーが像担持体1を透して顕色剤4Mに、顕色剤画像12に重なり合うタイミングで照射される。
【0056】
また、顕色剤供給ローラ7上の画像信号部の顕色剤4Mに照射されるレーザー光L(M)により顕色剤4Mに含まれている光熱変換材料がレーザー光L(M)の光エネルギーを熱に変換して顕色剤4Mを加熱する。そして、この加熱によって、顕色剤4Mの表面層が溶融状態となって粘着性を発現する。粘着性を発現(活性化)した顕色剤4Mは、既に形成された顕色剤4C,4Yに重なり合うように像担持体1上に仮固着される。
【0057】
このとき、既に像担持体1上に仮固着された顕色剤4C,4Yも、マゼンタの画像信号に応じてレーザー光L(M)が照射されるため、画像信号部の顕色剤4C,4Yが加熱される。
ここで、像担持体1に既に仮固着された顕色剤4C,4Yの方が3番目に仮固着される顕色剤4Mより粘着性を発現する温度が高い材料で構成されている。
したがって、レーザー光L(M)で照射される光エネルギーにより、顕色剤供給ローラ7上に汲み上げられた顕色剤4Mは加熱されて粘着性を発現するが、既に像担持体1上に仮固着された顕色剤4C,4Yは再加熱されるがこの温度では粘着性を発現しない。
よって、像担持体1上にマゼンタの画像信号部に応じて顕色剤4Mが仮固着し、既に像担持体1上に仮固着された顕色剤4C,4Yの粘着性の再発現による画像信号部以外の顕色剤4Mの付着を防止することができる。
【0058】
最後に、顕色剤4Kは、顕色剤供給ローラ7上に汲み上げられ、ブレード9によって規制されることにより、適正量が像担持体1と顕色剤供給ローラ7の当接部に導かれる。そして、像担持体1と顕色剤供給ローラ7の当接部において、顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4Kに画像信号に応じたレーザー光L(K)がレーザー光走査装置30Kによって照射され、これによって光エネルギーが像担持体1を透して顕色剤4Kに照射される。
【0059】
また、顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4Kにレーザー光が照射されると、顕色剤4Kに含まれているカーボンブラックが光熱変換材料として機能して、レーザー光L(K)の光エネルギーが熱に変換され、この熱で顕色剤4Kが加熱される。そしてこの加熱によって、顕色剤4Kの表面層が溶融状態になって粘着性を発現する。このようにして粘着性を発現(活性化)した顕色剤4Kは、既に形成された顕色剤4C,4Y,4Mに重なり合うように像担持体1上に仮固着される。
【0060】
このとき、既に像担持体1上に仮固着された顕色剤4C,4Y,4Mも、黒色の画像信号に応じてレーザー光L(K)が照射されるため、画像信号部の顕色剤4C,4Y,4Mが加熱される。
ここで、像担持体1に既に仮固着された顕色剤4C,4Y,4Mの方が最後に仮固着される顕色剤4Kより粘着性を発現する温度が高い材料で構成されている。
したがって、レーザー光L(K)で照射される光エネルギーにより、顕色剤供給ローラ7上に汲み上げられた顕色剤4Kは加熱されて粘着性を発現するが、既に像担持体1上に仮固着された顕色剤4C,4Y,4Mは再加熱されるがこの温度では粘着性を発現しない。
よって、像担持体1上に黒色の画像信号部に応じて顕色剤4Kが仮固着し、既に像担持体1上に仮固着された顕色剤4C,4Y,4Mの粘着性の再発現による画像信号部以外の顕色剤4Kの付着を防止することができる。
【0061】
更に、顕色剤供給装置5C,5Y,5M,5K内には、周面にクリーニングブレード11(図1参照のこと)の先端縁が当接している顕色剤除去ローラ10が配置されている。この顕色剤除去ローラ10は、本来仮固着されるべき顕色剤以外の顕色剤4が非画像部に付着したとき(いわゆる「地汚れ」が生じたとき)にこれを除去するクリーニング手段である。
【0062】
以上のように、この実施例2によれば、仮固着によって像担持体1に顕色剤画像12を形成し、仮固着する工程の後における像担持体1の非画像部の顕色剤4C,4Y,4M,4Kは、ブレード9の印加電圧とは逆極性の電圧を印加された顕色剤除去ローラ10の吸引作用で取り除かれる。顕色剤除去ローラ10の顕色剤画像12を形成する顕色剤4C,4Y,4M,4Kに対する吸引力は、顕色剤4C,4Y,4M,4Kの像担持体1に対する仮固着力よりも弱い(上記吸引力よりも仮固着力が弱ければ、顕色剤は顕色剤除去ローラで除去される)。
【0063】
そして、像担持体1の非画像部がクリーニングされた後において、像担持体1上の顕色剤画像12が熱ローラ13によって加熱加圧されて記録媒体14に転写され定着される。そしてまた、顕色剤画像12が定着された後の熱溶着転写工程後の像担持体1は、クリーニングローラ17によりクリーニングされて一連の記録工程を終える。これによって、顕色剤画像の仮固着工程から始まる次の記録工程に備えられる。クリーニングローラ17上の顕色剤4C,4Y,4M,4K等の塵埃はブレード18で掻き落とされる。
【0064】
以上の実施例1,実施例2の説明におけるレーザ光L(C),L(Y),L(M),L(K)の照射位置は模式的に示せば図4のとおりである。また、像担持体に重ねて仮固着される着色剤の重なり具合とビームスポットとの関係を模式的に示せば図5のとおりであり、照射されるビームスポットのずれ量と重なり具合を模式的に示せば図6のとおりである。
【0065】
〔実施例3〕
次に、図3を参照して実施例3を説明する。この実施例3の構成は、前記の実施例2の構成と違いはない。
まず、顕色剤4Cがその粘着性により像担持体1上に仮固着されて、顕色剤4Cによる顕色剤画像12が形成され、これに続いて、顕色剤4Yが顕色剤供給ローラ7上に汲み上げられて、その適正量が像担持体1と顕色剤供給ローラ7との当接部に導かれ、像担持体1上に顕色剤4Cによる顕色剤画像に重ねて仮固着される。この顕色剤4Cの仮固着工程は、実施例2のそれと同様である。
【0066】
次に、顕色剤4Y,4Mを、顕色剤4Cと同様の方法で、既に形成された顕色剤4Cに順次重なり合うように、像担持体1上に仮固着させる。
ここで、顕色剤4C,4Y,4Mはレーザー光L(C),L(Y),L(M)の波長の光を吸収する光熱変換材料が含有されている。これらの光熱変換材料は色毎に異なる波長を吸収する材料を用いてもよいし、すべての色で同じ材料を用いてもよい。
【0067】
最後に、顕色剤4Kを、顕色剤4C,4Y,4Mと同様の方法で、既に形成された顕色剤4C,4Y,4Mに重なり合うように、像担持体1上に仮固着させる。
ここで、顕色剤4Kは光熱変換材料としてカーボンブラックが含有されているため、すべての波長のレーザー光L(C),L(Y),L(M),L(K)を吸収する。
したがって、レーザー光の吸収効率がよいカーボンブラックを含有する顕色剤4Kの仮固着工程を先に行った場合、像担持体1上に仮固着した顕色剤4Kに、画像信号に応じたレーザー光L(C),L(Y),L(M)が繰り返し照射されるため加熱されることによる地汚れが発生する可能性がある。顕色剤4Kの仮固着工程を最後に行うことで、この地汚れ発生を防止することができる。
【0068】
なお、レーザー光走査装置30C,30Y,30M,30Kの構成や、像担持体1上に顕色剤画像12が仮固着された後に、非画像部に残存する顕色剤4を除去する顕色剤除去工程、仮固着した顕色剤画像12を記録媒体14に熱ローラ13で加熱加圧して転写定着させる工程、及び像担持体1上に残留した顕色剤4をクリーニングする工程は、実施例2と同じである。
【0069】
〔実施例4〕
次に、実施例4について図1、図3を参照して説明する。この実施例4の全体構成は前記実施例2と違いはないが、顕色剤4の構成が違う。
ここで、顕色剤4C,4Y,4Mは、熱可塑性樹脂と着色剤としてのシアン、イエロー、マゼンタ染料または顔料を主成分とし、更に、表面は加熱されると粘着性が発現する感熱粘着層で構成されるものであり、その感熱粘着層にはレーザー光走査装置30C,30Y,30Mにより照射されるレーザー光L(C),L(Y),L(M)を吸収する光熱変換材料を含有する熱溶融性の粒子である。
また、顕色剤4Kは、熱可塑性樹脂とカーボンブラックを主成分とし、更に表面は加熱されると粘着性が発現する感熱粘着層で構成されている熱溶融性の粒子である。
【0070】
更に、像担持体1に最初に仮固着される顕色剤4Cが最も高温で粘着性を発現する材料で構成され、像担持体1上に仮固着される顕色剤4C,4Y,4M,4Kの順で粘着性を発現する温度は低くなる材料で構成される。上記感熱粘着層についての詳細は後で説明する。
【0071】
また、顕色剤4C,4Y,4Mは、実施例1、実施例2、実施例3と同様に熱可塑性樹脂と着色剤としてのシアン、イエロー、マゼンタ染料または顔料を主成分とし、レーザー光走査装置30C,30Y,30Mにより照射されるレーザー光L(C),L(Y),L(M)を吸収する光熱変換材料を含む熱溶融性粒子でもよい。
【0072】
なお、この実施例4で使用する顕色剤4は、表面に感熱性粘着層を設けた感熱粘着性の顕色剤4であり、このような顕色剤を用いることで、溶着させるための加熱エネルギーを低減することができる。また、顕色剤4が、顕色剤供給ローラ7上に汲み上げられ、その付着層の厚さがブレード9(図1参照のこと)によって規制され、適正量が像担持体1と顕色剤供給ローラ7との当接部に導かれるようになっている点は、実施例2と違いがない。そしてまた、この実施例4では、像担持体1と顕色剤供給ローラ7の当接部において、顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4(4C,4Y,4M,4K)に、画像信号に応じたレーザー光L(L(C),L(Y),L(M),L(K))が照射され、これによって光エネルギーが像担持体1を透して各顕色剤4にそれぞれ照射される。
【0073】
顕色剤供給ローラ7上に汲み上げられた顕色剤4は、ブレード9で与えられた電荷による静電気力で顕色剤供給ローラ7に付着しており、この画像信号部の顕色剤4Cに照射されると、レーザー光L(C)により顕色剤4Cの表面の感熱性粘着層に含まれている光熱変換材料によって、レーザー光L(C)の光エネルギーが熱に変換されて、顕色剤4が加熱される。そして、顕色剤4Cの表面の感熱粘着層が加熱されて粘着性が発現される。粘着性を発現(活性化)した顕色剤4Cは、粘着性により像担持体1上に仮固着されて顕色剤画像12を形成する。
なお、像担持体1と顕色剤供給ローラ7のニップ状態を制御することによって、非画像部の顕色剤4の付着による地汚れが低減される。
【0074】
顕色剤4Y,4Mは、顕色剤4Cと同様にして、既に形成された顕色剤4Cに重なり合うように仮固着され、当該顕色剤による顕色剤画像12が形成される。
最後に、像担持体1と顕色剤供給ローラ7の当接部において、顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4に画像信号に応じたレーザー光L(K)がレーザー光走査装置30Kによって照射され、これによって、像担持体1を透して光エネルギーが照射される。
なお、顕色剤供給ローラ7上の顕色剤4Kは、ブレード9で与えられた電荷による静電気力で顕色剤供給ローラ7に付着している。
【0075】
そして、顕色剤供給ローラ7上の画像信号部の顕色剤4Kにレーザー光L(K)が照射されると、顕色剤4Kに含有されているカーボンブラックが光熱変換材料として機能し、これによりレーザー光L(K)の光エネルギーが熱に変換され、この熱で顕色剤4が加熱される。そして、顕色剤4Kの表面の感熱粘着層が加熱されて粘着性を発現する。粘着性を発現(活性化)した顕色剤4Kは、既に形成された顕色剤4C,4Y,4Mに重なり合うようにして、像担持体1上に仮固着される。なお、非画像部の顕色剤4の付着による地汚れは、像担持体1と顕色剤供給ローラ7のニップ状態を制御することによって低減される。
【0076】
レーザー光走査装置30C,30Y,30M,30Kの構成や、像担持体1上に顕色剤画像12が仮固着された後に非画像部に付着している顕色剤4を除去する顕色剤除去工程、仮固着された顕色剤による顕色剤画像12を記録媒体14に熱溶着させて転写し定着させる工程、及び像担持体1上に残留している顕色剤4をクリーニングする工程は、実施例2のそれと同じである。
【0077】
〔感熱粘着層について〕
次に、上記顕色剤の表面層すなわち感熱粘着層について説明する。
顕色剤の表面層を形成する感熱性粘着剤は、熱可塑性樹脂と固体可塑剤を必須成分とし、これらの成分に必要に応じて粘着付与剤を混合している。感熱性粘着剤を薄層化して形成した感熱性粘着層は、常温では全く粘着性を示さず、加熱及び外的負荷によって粘着性が発現し、熱源を取り去った後でもしばらくの間、粘着性を維持するものであり、加熱によりまず固体可塑剤が溶融し、熱可塑性樹脂と粘着付与剤を溶融することにより、粘着性が発現する。ここでいう「粘着性の発現」は、固体可塑剤が熱溶融して熱可塑性樹脂に相溶し、熱可塑性樹脂を可塑化させることで粘着力が発生することである。
【0078】
〔顕色剤の各要素について〕
以下に、顕色剤の各要素について更に詳細に説明する。
上記顕色剤に用いられる感熱性粘着剤としては、例えば、特開2002−105414号公報に開示される材料を用いることができるが、これに限られるものではなく、加熱することで粘着性を発現させる材料であればよい。
また、上記顕色剤に用いられる熱可塑性樹脂としては、従来、公知の各種のものを用いることができ、例えば、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−エチレン−スチレン共重合体、ポリブタジエン、ポリウレタン等が好ましく、これらの共重合体は従来からよく知られているものである。
【0079】
更に、上記感熱性粘着剤に用いられる固体可塑剤としては、例えば、ヒンダ−ドフェノール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、芳香族スルホンアミド化合物、フタル酸化合物等が好ましく、また、感熱性粘着剤の粘着力を必要に応じて向上させるために、粘着付与剤を含ませることができる。その粘着付与剤としては例えば、テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、クマロンインデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン誘導体樹脂、キシレン系樹脂等が好ましい。
【0080】
更に、上記感熱性粘着剤において、その粘着力を調整するために、必要に応じて熱可融性物質を含ませることができる。そしてその熱可融性物質としては、例えば、動植物性ワックス、合成ワックス等のワックス類や、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸アニリド、芳香族アミンのアセチル化物等が好ましく、上記ワックスとしては、パラフィンワックス、木ロウ、カルナウバロウ、シェラック、モンタンロウ、酸化パラフィン、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレン等が好ましく、また、上記高級脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、ベヘン酸等が挙げられる。高級脂肪族アミドとしては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、N−メチルステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、メチロールベヘン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンステアリン酸アミド等が好ましい。そして、上記高級脂肪族アニリドとしては、例えば、ステアリン酸アニリド、リノール酸アニリド等が好ましく、さらに上記芳香族アミンのアセチル化物としては、アセトトルイジドが好ましい。
【0081】
また、上記感熱性粘着剤において、その粘着力を調整するために、必要に応じて無機化合物を含有させることができ、その具体例としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、炭酸カルシウム等が好ましい。
【0082】
以上の各実施例において、顕色剤に画像信号に応じた光エネルギーを照射して書き込みを行う場合、感熱性粘着層中、または感熱性粘着層に覆われている顕色剤中にレーザー光の波長を吸収して光エネルギーを熱に変換する光熱変換材料を含有させる。例えば、黒色の顕色剤の場合は、着色剤として用いるカーボンブラックが光熱変換材料として機能し、レーザー光の光エネルギーを熱に変換して顕色剤を加熱し、顕色剤の表面層である感熱性粘着層を活性化させることにより粘着性を発現させる。
【0083】
また、光熱変換機能を付与することができる材料として、一般的な染料であって、500〜550nmの範囲内に極大吸収波長を持ち、かつ、360〜420nmの範囲内において光透過率が10%以上のものが、好適に光熱変換機能を奏することができる。その一例は、一般的に存在する直接染料(アゾ染料)、酸性染料(アゾ染料、アントラキノン染料、金属錯体アゾ染料)、塩基性染料(アゾ染料、トリフェルメタン染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、キサンテン染料)、建染料(アントラキノン染料)、油溶染料(アントラキノン染料、アゾ染料、金属錯体染料)、分散染料(アゾ染料、アントラキノン染料)等である。
【0084】
更に、780〜850nmに極大吸収波長を持ち、かつ360〜420nmにおいては光透過率が10%以上で、光熱変換機能を付与することができる材料としては、一般的に染料として存在するシアニン系化合物(ポリメチン系化合物)、フタロシアニン系化合物、ジチオール金属錯体系化合物、金属錯体化合物、ジインモニウム化合物、アルミニウム塩化化合物等がある。
【0085】
以上のような光熱変換材料を顕色剤の中に含有させることにより、顕色剤供給ローラ7上の顕色剤に画像信号に応じた光エネルギーをレーザー光で与えて、顕色剤を像担持体上に仮固着させて顕色剤画像を形成することができる。
【0086】
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲において様々に変形し、置換して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】は、従来例の側面図
【図2】は、実施例1の側面図
【図3】は、実施例2の側面図
【図4】は、レーザー光L(C),L(Y),L(M),L(K)の照射位置の説明図
【図5】は、像担持体に重ねて仮固着される顕色剤の重なり具合とビームスポットとの関係を模式的に示す説明図
【図6】は、照射されるビームスポットのずれ量と重なり具合を模式的に示す説明図
【符号の説明】
【0088】
1:像担持体
1a:像担持体の下面
2:駆動ローラ
3:従動ローラ
4(4C,4Y,4M,4K):顕色剤
5(5C,5Y,5M,5K):顕色剤供給装置
7:顕色剤供給ローラ
8:補給ローラ
9:ブレード
10:顕色剤除去ローラ
11:クリーニングブレード
12:顕色剤画像
13:熱ローラ
14:記録媒体
15:レジストローラ
16:クリーニング装置
17:クリーニングローラ
18:ブレード
30(30C,30Y,30M,30K、):レーザー光走査装置
31:ポリゴンミラー
32:fθレンズ
33:短冊形反射鏡
100:従来の画像形成装置
200:実施例1の画像形成装置
300:実施例2の画像形成装置
L,L(C),L(Y),L(M),L(K):レーザー光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性の像担持体と、該像担持体の移動面に沿って配置された複数の単色像形成手段とを有し、各単色像形成手段から転移させられた顕色剤画像を前記像担持体上で重ね合わせることによって多色画像を形成する画像形成装置であって、
前記単色像形成手段は、該像担持体に色毎に異なる温度で粘着性を発現する熱溶融性の顕色剤を供給する顕色剤供給手段と、
前記顕色剤供給手段によって供給された前記顕色剤に該像担持体の裏面から画像信号に応じて選択的にエネルギーを付与するレーザー書き込み手段と、
前記書き込み手段によりエネルギーを付与された前記顕色剤を前記像担持体に仮固着させる仮固着手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
該像担持体の移動方向において、当該単色像形成手段によって供給された前記顕色剤を前記レーザー書き込み手段により前記像担持体に仮固着させるために付与するエネルギーは、当該単色像形成手段より上流側で像担持体上に仮固着した前記顕色剤の粘着性を発現しないように制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
該像担持体の移動方向において、上流側に位置する単色像形成手段から供給される顕色剤ほど、粘着性を発現する温度が高いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
該像担持体の移動方向において、各単色画像形成手段の下流側に、該像担持体上の仮固着した顕色剤画像以外の非画像部の顕色剤を該像担持体から除去する顕色剤除去手段を有する請求項1乃至請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
該像担持体の移動方向において、黒色の前記単色像形成手段は、該像担持体の移動面に沿って配置された複数の単色像形成手段の最下流側に配置することを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
該像担持体の移動方向において、少なくとも最下流側の単色像形成手段から供給される前記熱溶融性の顕色剤は、エネルギーを付与されることにより表面層が粘着性を発現する感熱性粘着剤であることを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−18562(P2009−18562A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36305(P2008−36305)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】