説明

画像形成装置

【課題】シールドシャーシ内に内接された複数の基板に対し均等に冷却用の気流を送り込むことを可能にする。
【解決手段】所定のフレームに画像形成処理のための制御回路が形成された複数枚のオプション基板60が着脱自在に装着される箱形を呈した金属製のシールドシャーシ50を有し、このシールドシャーシ50は、オプション基板60の着脱方向と平行な一対の側板54と、一対の側板54の一縁部間に架設された通気穴521を有する上部目板52と、上部目板52と対向した一対の側板54の縁部間に架設された通気穴511を有する下部目板51と、ファン装置70から上部目板52に向けて吹き付けられ、通気穴521を介してシールドシャーシ50内に吹き込まれた気流を分流させるべく、上部目板52と下部目板51との間に架設されたシールドシャーシ50を複数の基板収納室57に仕切る仕切り部材としての絶縁性フィルム56を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成処理の制御回路基板等からなる発熱源に冷却処理を施す冷却構造を備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、付設された所定のリーダにより読み取った画像情報や、コンピュータ等の外部の機器から伝送された画像情報に基づき画像形成処理を施した上で、給紙部から給紙された用紙にトナー像の転写処理を施し、引き続き定着部でトナー像の用紙への定着処理を施すようになされている。定着処理後の用紙は、機外に設けられた排紙トレイや、機内に設けられた胴内排紙トレイ等に排出される。
【0003】
かかる画像形成装置内には、各所に発熱源が配設されているとともに、これら発熱源からの熱の蓄熱を防止するべく、それぞれ所定の冷却構造が設けられている。発熱源の内で最も発熱量が大きなものとして、用紙に加熱による定着処理を施す、熱源としてのハロゲンランプ等を備えた定着部を挙げることができる。ついで、定着部ほどには発熱量が大きくないが、内部に電子回路が組み込まれたCPU等を含むCPU基板や、記憶装置としてのHDD等を含むHDD基板等を発熱源として挙げることができる。
【0004】
ところで、これらの発熱源の内、定着部を対象としては、その発熱量が極めて大きいことから、専用の強力なファン装置と、このファン装置により吸引された外気を通す専用の通風路とが設けられ、この通風路を流通する気流によって定着部に対し適正に冷却処理が施されるため、定着部が異常な高温になることは有効に防止される。
【0005】
一方、電子回路が組み込まれた各種の基板を対象とする画像形成装置の冷却構造としては、例えば、特許文献1および2に記載されたものが知られている。
【0006】
まず、特許文献1に記載の冷却構造は、CPUを有する第1の回路がマウントされた第1の配線基板と、第2の回路がマウントされた第2の配線基板とが互いに平行に配設され、第2の配線基板に通風口が設けられ、この通風口の互いに対向した縁部からそれぞれ第1の基板に向けて幅広のフラットケーブルが架橋されるとともに、通風口に向けて気流を送る冷却ファンが設けられてなるものである。
【0007】
かかる構成の冷却構造によれば、冷却ファンからの気流は、通気穴を介し一対のフラットケーブルによって形成された通気路を通って第1の配線基板に衝突し、まとまった状態で90°方向転換して第1の配線基板上を流通するため、この流通路に沿った位置に冷却対象の例えばCPU等を配置しておくことにより、当該CPU等の発熱源が効果的に冷却される。
【0008】
また、特許文献2のものは、板金にプレス処理を施すことによって形成されたCPU等の基板が収納される第1ボックスと、同記憶装置等の基板が収納される第2ボックスとが設けられ、これら第1および第2ボックスは、互いに隔壁を介して一体化され、かつ、全面に亘って多数の通風穴が穿設されてなるものである。
【0009】
かかる構成の冷却構造によれば、画像形成装置の装置本体内の適所に設けられた所定のファンを駆動することにより気流が発生し、その気流は、第1および第2ボックスの全面に亘って設けられた多くの通気穴のいずれかから各ボックス内に供給され、内装されたCPUや記憶装置等の発熱源に冷却処理を施した後に他のいずれかの通風穴から外部に排出される。
【特許文献1】特開2005−340598号公報
【特許文献2】特開2007−095967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、前記特許文献1の冷却構造にあっては、第1および第2の配線基板上に複数の被冷却物が配設されているような場合、これらに均等に冷却用の気流を供給することが困難であり、結果として各被冷却物に対する冷却効率にバラツキが生じ、全体的に適正に冷却処理を施し得なくなるという問題点を有している。
【0011】
このことについては、特許文献2の冷却構造でも同様であり、ファンの設置状態により自ずから決まってしまった通気穴から各ボックス内に導入された気流は、当該ボックス内に配設された複数の基板に均等に供給されるとは限らず、結果として冷却処理にバラツキが生じるという問題点を有している。
【0012】
本発明は、かかる従来の状況に鑑みなされたものであって、シールドシャーシ内に内接された発熱源としての複数の基板に対し均等に冷却用の気流を送り込むことが可能な冷却構造を有する画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の発明は、筐体収容部を有する装置本体と、前記装置本体内に形成され、前記筐体収容部を経由する通気路と、前記通気路に気流を発生させるファン装置と、前記筐体収容部に固定され、複数の回路基板が着脱自在に装着されるシールドシャーシとを備え、前記シールドシャーシは、前記基板の着脱方向と平行な一対の側板と、前記一対の側板の一縁部間に架設された通気穴を有する天板と、前記天板と対向した前記一対の側板の縁部間に架設された通気穴を有する底板と、前記ファン装置から前記天板または底板に向けて吹き付けられ、前記通気穴を介して前記シールドシャーシ内に吹き込まれた気流を分流させるべく、前記天板と前記底板との間に架設された、前記シールドシャーシ内を複数の基板収納室に仕切る仕切り部材とを備えたことを特徴とするものである。
【0014】
かかる構成によれば、シールドシャーシの天板または底板に向けて吹き付けられたファン装置からの気流は、これら天板または底板に穿設された通気穴を介してシールドシャーシ内に導入され、当該シールドシャーシ内に装着されている基板に対し熱交換による冷却処理を施した後、反対側の通気穴から外部に排出される。
【0015】
そして、シールドシャーシを複数の基板収納室に仕切る仕切り部材が天板と底板との間に架設されているため、各基板収納室に基板を収納した状態で所定のファン装置から天板または底板に向けて気流を吹き付けることにより、当該気流は、天板または底板に穿設された通気穴を介してシールドシャーシ内に吹き込まれ、まず、仕切り部材の分流作用によって各基板収納室に均等に分流され、その後は、仕切り部材の整流作用よって他の基板収納室内の気流と干渉し合うことなく、整流となって当該基板収納室内の基板に対して冷却処理を施し、入った側と反対側の通気穴から外部へ排出される。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記仕切り部材は、絶縁性フィルムによって形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
かかる構成によれば、互いに隣接する基板収納室間に設けられる仕切り部材が絶縁性フィルムにより形成されているため、各基板収納室に収納された各基板が当該絶縁性フィルムにより互いに短絡し合うことがなく、短絡によって基板の機能が損なわれるような不都合の発生が防止される。
【0018】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記絶縁性フィルムは、前記天板の側、前記底板の側および前記基板収納室に対して基板を挿脱する挿脱口の側がそれぞれ前記シールドシャーシに固定され、挿脱口と反対側が自由端とされていることを特徴とするものである。
【0019】
かかる構成によれば、絶縁性フィルムは、挿脱口と反対側が自由端とされているため、その部分については絶縁性フィルムをシールドシャーシに固定する部分が少なくなり、各基板収納室の独立性を確保しつつ組み付け工数の削減に貢献する。また、絶縁性フィルムの長さ寸法を短くすることができるため、その分、材料コストの低減化に寄与する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る画像形成装置によれば、基板を収納するシールドシャーシ内が仕切り部材によって複数の基板収納室に分割されているため、入口側の通気穴を介してシールドシャーシ内に吹き込まれた気流は、仕切り部材によって各基板収納室に分流され、しかも、仕切り部材の整流作用で流れがスムーズになるばかりか、他の基板収納室内の気流とは互いに干渉し合うことがなく、これらによってそれぞれの基板に対し均等に熱交換による冷却処理を施すことができる。その結果、シールドシャーシ内に収納された複数の基板に対し、常に適正な冷却処理が施され、各基板に対して総合的に冷却効果を向上させることができる。
【0021】
さらに、シールドシャーシ内の収納スペースの一部にしか基板が装着されていない場合でも、上記の仕切り部材によって気流が確実に分流されるため、収納スペースの基板非装着部分を気流が専ら流れて装着基板の冷却処理が不十分になるような不都合を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明に係る冷却構造が適用された画像形成装置の一実施形態を示す正面視の斜視図である。また、図2は、図1に示す画像形成装置の内部構造の一実施形態を示す正面断面視の説明図である。さらに、図3は、図1に示す画像形成装置の背面視の一部切欠き斜視図である。なお、図1〜図3においてX−X方向を左右方向、Y−Y方向を前後方向といい、特に−X方向を左方、+X方向を右方、−Y方向を前方、+Y方向を後方という。因みに、図3においては、Xで示す左右は、紙面の実際の左右と逆になっている。
【0023】
まず、図1および図2を基に、画像形成装置10の全体的な構成について必要に応じ図3を参照しながら説明する。本実施形態で例示した画像形成装置10は、いわゆる胴内排紙型と称される複写機であり、装置本体11に画像形成部12(図2)と、定着部13(図2)と、用紙貯留部14と、排紙部15と、画像読取部16と、操作部17とがそれぞれ形成されている。そして、排紙部15は、画像読取部16の下部で装置本体11の一部が凹没されることによって形成され、これにより当該画像形成装置10が胴内排紙型と称されている。
【0024】
前記装置本体11は、外観視で直方体状を呈した下部本体111と、この下部本体111の上方に対向配置された扁平な直方体状を呈する上部本体112と、この上部本体112と前記下部本体111との間に介設された連結部113とを備えている。前記連結部113は、下部本体111と上部本体112との間に排紙部15を形成させた状態で両者を互いに連結するための構造物であり、下部本体111の左部から立設されている。前記上部本体112は、その左部がかかる連結部113の上端部に支持されている。
【0025】
そして、前記下部本体111には、画像形成部12、定着部13および用紙貯留部14が内装されているとともに、前記上部本体112には画像読取部16が装着されている。前記操作部17は、本実施形態においては、図1に示すように、上部本体112の前縁部から前方に向かって突設されている。
【0026】
用紙貯留部14は、装置本体11に対して挿脱自在の用紙カセット141を有している。この用紙カセット141には用紙束P1(図2)が貯留されている。そして、画像形成処理が行われるに際し、この用紙束P1から用紙Pが1枚ずつ繰り出され、画像形成部12へ送り込まれて当該用紙Pに画像形成処理(印刷処理)が施される。本実施形態では、用紙カセット141は2段で設けられている。
【0027】
前記排紙部15は、下部本体111と上部本体112との間に形成されている。かかる排紙部15は、下部本体111の上面に形成された胴内排紙トレイ151を有し、画像形成部12からのトナー画像が転写された用紙Pは、連結部113の下部からこの胴内排紙トレイ151へ向けて排出される。
【0028】
前記画像読取部16は、上部本体112の上面開口に装着された、原稿を載置するためのコンタクトガラス161と、このコンタクトガラス161に載置された原稿を押さえる開閉自在の原稿押さえカバー162と、コンタクトガラス161に載置された原稿の画像を走査する走査機構163(図2)とを備えている。
【0029】
そして、走査機構163によって読み取られた原稿画像のアナログ情報は、デジタル信号に変換された後に後述する露光ユニット123へ向けて出力され、画像形成処理に供される。
【0030】
前記操作部17は、画像形成処理に関する処理情報を入力操作するためのものであり、用紙Pの処理枚数を入力するためのテンキー171(図1)やその他の各種の操作キー、さらにはタッチ入力を行うためのLCD(Liquid crystal display)172(図1)等が設けられている。
【0031】
また、下部本体111の右面には、用紙貯留部14の直上位置に手差しトレイ18が設けられている。この手差しトレイ18は、下部が支持軸181回りに回動可能に軸支され、手差しの給紙口を閉止するべく起立した閉止姿勢と、右方へ向かって突出した開放姿勢との間で姿勢変更可能とされている。かかる手差しトレイ18は、開放姿勢に姿勢設定された状態で1枚ずつの用紙Pの手差しに供される。
【0032】
このような手差しトレイ18と前記画像形成部12の後述する感光体ドラム121(図2)との間には搬送ユニット184(図2)と、中継ユニット185とが設けられ、手差しトレイ18から手差しで給紙された用紙P(図2)は、これら搬送ユニット184および中継ユニット185を介して感光体ドラム121と後述する転写ローラ125との間のニップ部へ向けて送り出される。
【0033】
また、前記下部本体111の左面には、開閉可能なメンテナンス用のメンテナンスドアー19が設けられているとともに、このメンテナンスドアー19の直上位置には、開閉可能な胴外排紙トレイ152が設けられている。画像形成部12で印刷処理が完了した用紙Pは、この胴外排紙トレイ152および前記胴内排紙トレイ151のいずれかに選択的に排出される。
【0034】
以下、図2を基に画像形成装置10の内部構造についてさらに詳細に説明する。図2に示すように、前記画像形成部12には、その略中央部に感光体ドラム121が設けられている。この感光体ドラム121は、ドラム心回りに時計方向に向けて回転しながらその直ぐ右方位置に設けられた帯電ユニット122により周面が一様に帯電される。
【0035】
そして、前記画像読取部16で読み取られた原稿画像の画像情報に基づく露光ユニット123からのレーザビームにより感光体ドラム121の周面に静電潜像が形成される。この静電潜像に向けて感光体ドラム121の下方に設けられた現像ユニット124から現像剤(以下、トナーという)が供給され、これによって感光体ドラム121の周面にトナー像が形成される。
【0036】
トナー像が形成された感光体ドラム121には、用紙貯留部14のいずれかの用紙カセット141から送り出された用紙Pが用紙縦搬送路101およびレジストローラ対142を介して送り込まれる。そして、この用紙Pには、感光体ドラム121の左方で当該感光体ドラム121と対向配置された転写ローラ125の作用で感光体ドラム121の周面のトナー像が転写される。トナー像が転写された用紙Pは感光体ドラム121から分離されて定着部13へ送り込まれる。
【0037】
用紙Pに対するトナー像の転写処理が完了した感光体ドラム121は、時計方向へ向かう回転が継続されることにより、その直上位置に設けられたクリーニング装置126によってその周面が清浄化処理され、つぎの画像形成処理のために帯電ユニット122へ向かうことになる。
【0038】
前記定着部13は、内部にハロゲンランプ等の通電発熱体を備えた定着ローラ131と、左方でこの定着ローラ131と対向配置された加圧ローラ132とを有している。そして、画像形成部12から送り込まれた用紙Pは、これら定着ローラ131と加圧ローラ132との間のニップ部を通過しながら熱を得てトナー像の定着処理が施される。
【0039】
定着処理後の用紙Pは、当該用紙Pが片面印刷用のものである場合には、定着部13の上方に設けられた排紙搬送路102を介して選択的に排紙部15の胴内排紙トレイ151へ排出されたり、胴外排紙トレイ152へ排出されたりする。
【0040】
一方、定着処理後の用紙Pが片面の印刷処理が完了した両面印刷用のものである場合には、排紙搬送路102の上方に設けられた往復搬送路103を介して前半が胴内排紙トレイ151の上方に形成された一時退避空間153に排紙されたのち逆送搬送路104を介して逆送され、表裏が反転した状態で再度画像形成部12に供給されて裏面側に印刷処理が施される。両面印刷が完了した用紙Pは、排紙トレイ151または胴外排紙トレイ152へ排出される。
【0041】
このような画像形成装置10において、下部本体111には、メンテナンスドアー19の直ぐ内側に、画像形成部12に対して開閉可能なカバー部材191が設けられている。このカバー部材191は、閉止された前記メンテナンスドアー19の右面側に包持された状態で配設されている。かかるカバー部材191は、その下端部がメンテナンスドアー19の下端部より若干上方に位置した状態で当該下端部が下部本体111に支持された支軸192回りに回動自在に軸支されている。そして、このようなカバー部材191は、支軸192回りに正逆回動することで、画像形成部12の左面を閉止した閉止姿勢(図2に実線で表示)と、同左面を開放した開放姿勢(図2に二点鎖線で表示)との間で姿勢変更可能とされている。
【0042】
そして、カバー部材191が閉止姿勢に姿勢設定された状態で、当該カバー部材191の右面側に用紙カセット141や手差しトレイ18から給紙された用紙Pを搬送するための前記用紙縦搬送路101が形成されている。
【0043】
このようなカバー部材191が設けられるのは、画像形成部12の左面に対応した用紙縦搬送路101で紙詰りが生じたときに、カバー部材191を開放姿勢に姿勢変更させて詰まった用紙Pを外部に露出させ、これによって詰まった用紙Pを取り除くことができるようにするためである。
【0044】
このように構成された画像形成装置10には、その装置本体11内に冷却処理が施されるべき熱源として3個所が存在する。1個所は、内部にハロゲンランプ等の通電発熱体を備えた定着ローラ131を有する定着部13である。他の1個所は、制御回路等収納部20のシールドシャーシ50に収納されたオプション基板60である。最後の1個所は、シールドシャーシ50の下方位置に配設された電源回路部29に設けられている電源回路基板である。
【0045】
一方、装置本体11内の後部であって後面から若干内部に入った位置には、上下方向に向けて立設された図略の背面板が設けられている。そして、非常に大きな熱源である定着部13は、背面板の前面側に設けられている一方、それ程大きな熱源ではないが冷却処理が必要な制御回路等収納部20および電源回路部29は、背面板の後面側に配設されている。これによって制御回路等収納部20および電源回路部29は、装置本体11内で定着部13とは背面板により後方に隔絶され、定着部13の熱が制御回路等収納部20および電源回路部29に影響しないようになされている。
【0046】
そして、本実施形態においては、本発明に係る冷却構造が適用される部分として、制御回路等収納部20が対象とされている。これに対し、定着部13については、これらに比べて発熱量が格段に大きいため、専用の強力な冷却装置である定着部用空冷ファン133(図3)が採用されている。これにより定着部13の冷却系統は、制御回路等収納部20および電源回路部29の冷却処理とは別系統とされている。
【0047】
また、装置本体11の背面側には、図3に示すような当該装置本体11の背面開口を閉止する着脱可能な背面側カバー体28が設けられている。この背面側カバー体28は、装置本体11に装着された状態で、前記定着部用空冷ファン133および制御回路等収納部20を冷却するための後述するファン装置70の駆動で装置本体11内に吸引された外気の気流を流通させる通風路の一部を担っている。特に、ファン装置70によって吸引された気流は、制御回路等収納部20内の基板装着空間21を貫流するように設定された通気路22を流通して制御回路基板40やオプション基板60に冷却処理を施す。
【0048】
かかる背面側カバー体28の左側(−X側)の上方位置には、定着部用空冷ファン133に対向するように定着部冷却用吸気口281が設けられているとともに、同右側(+X側)上方位置には、制御回路等収納部20および電源回路部29を冷却するための外気を吸引する吸気口(回路部用吸気口282)が設けられている。さらに、背面側カバー体28の右側(+X側)の下方位置には、制御回路等収納部20および電源回路部29の冷却に供された気流を排出する排気口(回路部用排気口283)が設けられている。
【0049】
そして、本実施形態に係る冷却構造は、制御回路等収納部20に設けられている。図4は、制御回路等収納部20の一実施形態を示す斜視図である。また、図5および図6は、オプション基板60を収納するシールドシャーシ50の一実施形態を示す図であり、図5は、その斜視図、図6は、図5のシールドシャーシ50にオプション基板60が収納された状態での一部切欠き平面図である。なお、図4〜図6におけるXおよびYによる方向表示は、図1の場合と同様(Xは左右方向(−X:左方、+X:右方)、Yは前後方向(−Y:前方、+Y:後方))である。
【0050】
まず、図4に示すように、制御回路等収納部20は、下面が開放状態の箱形を呈したハウジング(筐体収容部)30を有している。このハウジング30には、CPU(central processing unit)等を含んだ制御回路基板40と、ファクシミリ用のソフトウエアやプリントボード等のオプション基板60(オプション基板60も制御回路基板の一種である)を収納するためのシールドシャーシ50と、これら制御回路基板40およびシールドシャーシ50内のオプション基板60とに気流を吹き付けて冷却処理を施すファン装置70とが内装されている。
【0051】
前記ハウジング30は、左右方向一対の側板31と、これら一対の側板31の前縁部間に架設された基板32と、一対の側板31の上縁部間に架設された天板33とを有している。これら各側板31、基板32および天板33に囲繞された空間に基板装着空間21が形成されている。かかる基板装着空間21の後面側の開口は、背面側カバー体28(図3)が装置本体11に装着されることによって閉止され、これによってハウジング30内に気流を流通させる通気路が形成される。
【0052】
前記制御回路基板40は、前記基板32における背面側の上方位置に取り付けられている。前記シールドシャーシ50は、右側(+X側)の前記側板31における内面側の下半分の位置に固定され、基板装着空間21を左右方向に向けて略横断した状態とされている。前記ファン装置70は、左側(−X側)の側板31における内面側の上方位置に取り付けられている。かかるファン装置70は、軸流が前方に向かって先下がりに傾斜するよう姿勢設定されている。
【0053】
従って、背面側カバー体28が装置本体11に装着された状態でファン装置70を駆動することにより、前記回路部用吸気口282(図3)を介して基板装着空間21内に吸引された外気の気流が、斜めに基板装着空間21に向けて吹き下ろしたのち下方へ向かい、シールドシャーシ50内のオプション基板60に冷却処理を施す。その後、ハウジング30の下部の開口から前記電源回路部29へ向けて流下し、電源回路部29の冷却処理に供されることになる。
【0054】
前記シールドシャーシ50は、図5に示すように、多数の通気穴511が穿設された下部目板(底板)51と、多数の通気穴521を有し、かつ、上方で前記下部目板51と対向配置された上部目板(天板)52と、これら各目板51,52の左縁部間に架設された奥板53と、各目板51,52の前方縁部間および後方縁部間に架設された前後方向一対の側板54(図5に二点鎖線で表示)と、各目板51,52の右縁部間に架設された入口側フレーム板55と、各目板51,52における前後方向の略中央部の対向面間に架設された左右方向に延びる絶縁性フィルム(仕切り部材)56とを備えている。
【0055】
そして、シールドシャーシ50内における絶縁性フィルム56の前後の空間に前記オプション基板60を収納するための基板収納室57が形成されている。すなわち、本実施形態においては、シールドシャーシ50内には、絶縁性フィルム56を介して2枚のオプション基板60が装着可能とされている。
【0056】
前記入口側フレーム板55には、前記絶縁性フィルム56の右縁部を境として前後に形成された上下方向に長尺の前後方向一対の挿脱口551が設けられている。前記オプション基板60は、これらの挿脱口551を介してシールドシャーシ50内に装着される。
【0057】
前記絶縁性フィルム56は、左右長が各目板51,52の左右長より若干短く寸法設定されている。かかる絶縁性フィルム56は、その右縁部が入口側フレーム板55に貼着されている一方、上下の縁部は、各目板51,52に当接されている。そして、かかる絶縁性フィルム56は、シールドシャーシ50に装着された状態で左縁部が自由端とされている。絶縁性フィルム56の左縁部を自由端にすることで、前縁部を貼着する場合に比較し、絶縁性フィルム56のシールドシャーシ50に対する組み付け性が向上する。
【0058】
そして、シールドシャーシ50内における絶縁性フィルム56の前後にそれぞれオプション基板60を収納するための基板収納室57が形成されている。
【0059】
前記オプション基板60は、片面に所定の電子回路が形成された矩形状の基板本体61と、この基板本体61の右縁部に取り付けられた基板保持プレート62とを備えている。基板保持プレート62の表面側の中央部には、摘み突起63が設けられ、この摘み突起63を摘持することにより、オプション基板60をシールドシャーシ50内の基板収納室57に対し容易に出し入れすることができる。
【0060】
そして、本発明に係る基板の冷却構造は、シールドシャーシ50内を二分するように設けられた絶縁性フィルム56を備えることによってその機能を充分に発揮し得るようになっている。
【0061】
以下、図7を基に、本発明に係る冷却構造の作用について説明する。図7は、図6に示すシールドシャーシ50のVII−VII線断面図である。ファン装置70(図4)の駆動で生起された冷却用の気流は、図7に示すように、シールドシャーシ50の上部目板52の通気穴521を介してシールドシャーシ50内に吹き込まれる。そして、吹き込まれた気流は、シールドシャーシ50の各目板51,52間に架設された絶縁性フィルム56によって二分されて前後の基板収納室57に導入される。そして、このとき絶縁性フィルム56が整流板の役割を果たすため、シールドシャーシ50内に導入された気流が当該シールドシャーシ50内で乱流になることが防止される。これにより基板収納室57内の気流は層流となって熱交換しながら基板本体61の表裏面と流下し、結果としてオプション基板60に対する冷却効果が向上する。
【0062】
ここで、シールドシャーシ50内に1枚のオプション基板60しか装着されていない場合、当該シールドシャーシ50内が絶縁性フィルム56で仕切られていない場合には、気流は、オプション基板60が存在しない広い空間を専ら流れるようになって、オプション基板60を充分に冷却することができなくなる。しかし、本実施形態においては、シールドシャーシ50内が絶縁性フィルム56によって仕切られて複数の基板収納室57が形成されているため、シールドシャーシ50内に1枚のオプション基板60のみが装着されているような場合であっても、絶縁性フィルム56が設けられていることにより、シールドシャーシ50内に導入された気流は、当該絶縁性フィルム56に案内されてオプション基板60が装着されている領域へも確実に流通されるため、オプション基板60の冷却処理が不十分になるような不都合の発生を防止することができる。
【0063】
以上詳述したように、本実施形態に係る画像形成装置10は、装置本体11の所定のフレームに画像形成処理のための制御回路が形成された複数枚の基板(本実施形態ではオプション基板60)が着脱自在に装着される箱形を呈した金属製のシールドシャーシ50が固定されてなるものである。
【0064】
前記シールドシャーシ50は、オプション基板60の着脱方向に延び、かつ、当該オプション基板60が装着された状態におけるその面と平行な一対の側板54と、これら一対の側板54の下縁部間に架設された通気穴511を有する下部目板51と、一対の側板54の上縁部間に架設された通気穴521を有する上部目板52とを有している。そして、ファン装置70から上部目板52に向けて吹き付けられ、通気穴521を介してシールドシャーシ50内に吹き込まれた気流を分流させるべく、上部目板52と下部目板51との間に仕切り部材としての絶縁性フィルム56が架設され、この絶縁性フィルム56によってシールドシャーシ50内は、複数(本実施形態では2つ)の基板収納室57に仕切られている。
【0065】
かかる構成によれば、シールドシャーシ50の上部目板52に向けて吹き付けられたファン装置70からの気流は、上部目板52に穿設された通気穴521を介してシールドシャーシ50内に導入され、当該シールドシャーシ50内の各基板収納室57に収納されている各オプション基板60に対し熱交換による冷却処理を施した後、下部目板51の通気穴521から外部に排出される。
【0066】
そして、シールドシャーシ50を複数の基板収納室57に仕切る絶縁性フィルム56が上部目板52と下部目板51との間に架設されているため、各基板収納室57にオプション基板60を収納した状態で所定のファン装置70から上部目板52または下部目板51に向けて気流を吹き付けることにより、当該気流は、上部目板52または下部目板51に穿設された通気穴を介してシールドシャーシ50内に吹き込まれ、まず、絶縁性フィルム56の分流作用によって各基板収納室57に均等に分流され、その後は、絶縁性フィルム56の整流作用よって他の基板収納室57内の気流と干渉し合うことなく、層流で当該基板収納室57内の基板本体61に対して冷却処理を施し、下部目板51の通気穴511から外部へ排出される。
【0067】
すなわち、本実施形態に係る画像形成装置10によれば、オプション基板60の基板本体61を収納するシールドシャーシ50内が絶縁性フィルム56によって複数の基板収納室57に分割されているため、入口側の通気穴である通気穴521を介してシールドシャーシ50内に吹き込まれた気流は、絶縁性フィルム56によって各基板収納室57に分流され、しかも、絶縁性フィルム56の整流作用で流れが層流となってスムーズになるばかりか、他の基板収納室57内の気流とは互いに干渉し合うことがなく、これらによってそれぞれのオプション基板60に対し均等に熱交換による冷却処理を施すことができる。その結果、シールドシャーシ50内に収納された複数のオプション基板60に対し、常に適正な冷却処理が施され、総合的な冷却効果を向上させることができる。
【0068】
さらに、シールドシャーシ50内の収納スペースの一部にしか基板が装着されていない場合でも、上記の仕切り部材としての絶縁性フィルム56によって気流が確実に分流されるため、収納スペースの基板非装着部分を気流が専ら流れてオプション基板60の冷却処理が不十分になるような不都合を確実に回避することができる。
【0069】
そして、本実施形態においては、シールドシャーシ50内を複数の基板収納室57に分ける仕切る仕切り部材として絶縁性フィルム56が採用されているため、各基板収納室57に収納された各オプション基板60が当該絶縁性フィルムにより互いに短絡し合うことがなく、短絡によってオプション基板60の機能が損なわれるような不都合の発生を防止することができる。
【0070】
また、本実施形態においては、シールドシャーシ50内に装着された絶縁性フィルム56の奥部の端縁が自由端とされているため、その分絶縁性フィルム56をシールドシャーシ50に固定する部分が少なくなり、各基板収納室57の独立性を確保しつつ組み付け工数の削減に貢献することができる。また、絶縁性フィルム56の長さ寸法を短くすることができるため、その分、材料コストの低減化に寄与すことができる。
【0071】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下の内容をも包含するものである。
【0072】
(1)上記の実施形態においては、画像形成装置10として複写機が採用されているが、複写機に代えてプリンタやファクシミリ装置であってもよい。
【0073】
(2)上記の実施形態において、制御回路等収納部20および電源回路部29で冷却処理に供された気流を定着部用空冷ファン133を介して定着部13に供給するようにしてもよい。こうすることで定着部用空冷ファン133の能力を小さくすることができ、その分、運転コストの低減化に貢献することができる。
【0074】
(3)上記の実施形態においては、制御回路等収納部20のハウジング30に適用される仕切り部材として絶縁性フィルム56が採用されているが、絶縁性フィルム56に代えて絶縁性のボードを採用してもよい。
【0075】
(4)上記の実施形態においては、シールドシャーシ50内が枚の絶縁性フィルム56よって仕切られて基板収納室57が2室設けられているが、本発明は、シールドシャーシ50内が2室に仕切られることに限定されるものではなく、2枚以上の絶縁性フィルム56を採用することでシールドシャーシ50内を3室以上に分けてもよい。
【0076】
(5)上記の実施形態においては、シールドシャーシ50の最奥部に奥板53が設けられているが、奥板53は必須ではなく、特に設けなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る冷却構造が適用された画像形成装置の一実施形態を示す正面視の斜視図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の内部構造の一実施形態を示す正面断面視の説明図である。
【図3】図1に示す画像形成装置の背面視の一部切欠き斜視図である。
【図4】制御回路等収納部の一実施形態を示す斜視図である。
【図5】オプション基板を収納するシールドシャーシの一実施形態を示す斜視図である。
【図6】図5のシールドシャーシにオプション基板が収納された状態での一部切欠き平面図である。
【図7】本発明に係る画像形成装置の冷却構造の作用について説明するための図6に示すシールドシャーシのVII−VII線断面図である。
【符号の説明】
【0078】
10 画像形成装置 101 用紙縦搬送路
102 排紙搬送路 103 往復搬送路
104 逆送搬送路 11 装置本体
12 画像形成部 111 下部本体
112 上部本体 113 連結部
121 感光体ドラム 122 帯電ユニット
123 露光ユニット 124 現像ユニット
125 転写ローラ 126 クリーニング装置
13 定着部 131 定着ローラ
132 加圧ローラ 133 定着部用空冷ファン
14 用紙貯留部 141 用紙カセット
142 レジストローラ対 15 排紙部
151 胴内排紙トレイ 152 胴外排紙トレイ
153 一時退避空間 16 画像読取部
161 コンタクトガラス 162 原稿押さえカバー
163 走査機構 17 操作部
171 テンキー 172 LCD
18 トレイ 181 支持軸
184 搬送ユニット 185 中継ユニット
19 メンテナンスドアー 191 カバー部材
192 支軸 20 制御回路等収納部
21 基板装着空間 22 通気路
28 背面側カバー体 281 定着部冷却用吸気口
282 回路部用吸気口 283 回路部用排気口
29 電源回路部 30 ハウジング(筐体収容部)
31 側板 32 基板
33 天板 40 制御回路基板
50 シールドシャーシ 51 下部目板
52 上部目板 511,521 通気穴
53 奥板 54 側板
55 入口側フレーム板 551 挿脱口
56 絶縁性フィルム(仕切り部材)
57 基板収納室 60 オプション基板(制御回路基板)
61 基板本体 62 基板保持プレート
63 摘み突起 70 ファン装置
P 用紙 P1 用紙束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体収容部を有する装置本体と、
前記装置本体内に形成され、前記筐体収容部を経由する通気路と、
前記通気路に気流を発生させるファン装置と、
前記筐体収容部に固定され、複数の回路基板が着脱自在に装着されるシールドシャーシとを備え、
前記シールドシャーシは、
前記基板の着脱方向と平行な一対の側板と、
前記一対の側板の一縁部間に架設された通気穴を有する天板と、
前記天板と対向した前記一対の側板の縁部間に架設された通気穴を有する底板と、
前記ファン装置から前記天板または底板に向けて吹き付けられ、前記通気穴を介して前記シールドシャーシ内に吹き込まれた気流を分流させるべく、前記天板と前記底板との間に架設された、前記シールドシャーシ内を複数の基板収納室に仕切る仕切り部材と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記仕切り部材は、絶縁性フィルムによって形成されていることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記絶縁性フィルムは、前記天板の側、前記底板の側および前記基板収納室に対して基板を挿脱する挿脱口の側がそれぞれ前記シールドシャーシに固定され、挿脱口と反対側が自由端とされていることを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−98218(P2009−98218A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267136(P2007−267136)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】