説明

画像形成装置

【課題】被記録材への前処理液の塗布を一定速度でムラなく行い、被記録材を小さい間隔で安定して記録部へ送り込む。
【解決手段】給紙トレイ1と、画像形成を行うインクジェット記録部2と、給紙トレイ1からインクジェット記録部2に至る給紙用搬送路4と、給紙用搬送路4の途中に接続されて被記録材が送り込まれる反転トレイ5とを有し、給紙用搬送路4は、給紙トレイ1から反転トレイ5に被記録材を搬送する第1給紙用搬送路と、被記録材を反転させて反転トレイ5からインクジェット記録部2に搬送する第2給紙用搬送路とを備え、反転トレイ5から送り出されている先行する被記録材と反転トレイ5に送り込まれる後続の被記録材との少なくとも一部が反転トレイ5上で重畳され、かつ被記録材の搬送速度が反転トレイ5までは所定の搬送速度であり、その後は変動可能となるように制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録部を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録部を備えた画像形成装置、例えば、インクジェットプリンタにおいては、インクの滲み、インクの浸透による裏写り等の初期画像品質の問題と、耐水性、耐光性などの画像の堅牢性の問題とを解決する必要がある。
【0003】
それらの解決手段として、普通紙などの被記録材表面にインク中の染料を定着するための材料を予め塗布した被記録材、又は、表面に白色顔料や水溶性高分子を塗布した被記録材を使用する技術が開示されている(例えば、特許文献1、2、3参照)。しかし、塗布処理された専用の被記録材の購入が必要になるという不便性、そのような専用の被記録材に対しては鉛筆やペンによる加筆性が低下するという問題がある。
【0004】
インク側の対策としては、滲み防止のためにインクに界面活性剤を添加してそのインクの浸透性を高める技術が開示されている(例えば、特許文献4参照)。これは、インクが被記録材に高速に浸透するため、2色間の滲みとスメア(画像形成後の接触による画像汚れ)には効果的であるが、裏写りが発生し易くなる。
【0005】
さらに、インク側の対策として、インクに揮発性溶剤を添加する方法が開示されている(例えば、特許文献5参照)。このインクによれは、上述した浸透性を高めたインクと同様の効果が得られるが、インクが吐出されるノズルが目詰まりを起こし易くなる。
【0006】
また、インク側の対策として、耐水性、耐光性を向上させるために色材として顔料を含有するインクの使用も増加しているが、顔料を含有するインクでは目詰まり等のノズル回りの信頼性を維持するのが難しい。そのうえ、写真画像やコンピュータグラフィックス等の高い色再現性を要求される場合には、シアンやマゼンタ色の発色が不十分となって満足な画像が得られないという問題がある。
【0007】
そこで、インクジェット方式で画像形成する前に、ポリマー溶液を被記録材表面に噴射し、そのポリマー溶液が付着した面にインクを噴射して画像形成するインクジェット記録方式が提案されている(例えば、特許文献6参照)。しかし、この方法では、画像の鮮明さの向上は得られるが、画像の乾燥性が低く、異なる色のインクを重ねるカラー画像では画像改善効果があまり認められない。
【0008】
また、画像記録促進液を被記録材に吹き付ける方法が開示されている(例えば、特許文献7、8、9参照)。しかし、この方法では、2色重ね部分での水分付着量が大きくなるため、色境界での滲みを十分に抑えることができず、滲みと裏写りが大きいという問題がある。さらに、画像記録促進液の水分による被記録材のコックリング(波打ち)が発生する。また、画像記録促進液の噴射を安定して行うため、液の粘度や表面張力などの液の組成やノズルの径に制約があり、自由度が著しく小さくなるという問題がある。
【0009】
これに対し、ローラを用いて被記録材の全面に画像記録促進液(前処理液)を塗布する方法が開示されている(例えば、特許文献10参照)。これは、画像品質を高めるための前処理液を予め塗布ローラで画像形成領域に塗布するもので、この公報によれば、噴射ヘッドを用いて前処理液を吹き付ける方法に比べて、粘度の高い前処理液を薄く塗布することができ、画像の滲みを一段と低減させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上述した公報に記載された発明では、被記録材を搬送する搬送ローラ(プラテン)と前処理液を塗布する塗布ローラ(コーティングローラ)とが、搬送される被記録材を介して連動して回転する。このため、記録ヘッドがインクを吐出しながら主走査方向に移動しているときであって被記録材の副走査方向(記録ヘッドの移動方向と直交する方向)への搬送が一時停止されるときには、搬送を停止された被記録材に対し回転を停止した塗布ローラが押し付けられた状態に維持される。これにより、被記録材における塗布ローラが回転を停止した状態で押し付けられた部分には前処理液が他の部分に比べて多量に塗布されることになり、前処理液の塗布ムラが発生し、それが原因となる被記録材の波打ちや画質ムラが発生する。
【0011】
また、記録ヘッドとして、主走査方向の画像形成領域の長さ寸法を有するラインヘッドを使用した場合には、画像形成時にそのラインヘッドを主走査方向へ移動させる必要がないので、被記録材を副走査方向へ安定した速度で搬送することが可能となる。しかし、生産性の向上を図るため、画像形成領域の有無により被記録材の副走査方向への搬送速度を変えることが行われている。つまり、被記録材におけるラインヘッドが対向する部分に画像形成領域が存在する場合には、被記録材の搬送速度を遅くし、被記録材におけるラインヘッドが対向する部分に画像形成領域が存在しない(空白部である)場合には、被記録材の搬送速度を速くしている。すると、このような搬送速度の変化に伴い、塗布ローラによる前処理液の塗布速度も変化し、前処理液の均一な塗布ができない。
【0012】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、記録部を備えた画像形成装置において、被記録材への前処理液の塗布を一定速度でムラなく行う画像形成装置を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、記録部を備えた画像形成装置において、前処理液が塗布された被記録材を小さい間隔で安定して記録部へ送り込む画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1にかかる発明の画像形成装置は、被記録材を積層保持する被記録材収納部と、被記録材に対して液体を塗布して前処理を行う塗布部と、装置本体から外部に露出し、前処理された被記録材が送り込まれ搬送方向を反転して送り出す反転トレイと、前処理された被記録材上に画像形成を行う記録部と、を有する画像形成装置において、前記反転トレイから画像形成面に前記前処理が行われていない被記録材を給紙し、前処理を行わずに前記記録部により画像形成を行うことが可能であることを特徴とする。
【0015】
ここで、本発明及び以下の発明において、「前処理液」とは、記録部から吐出されたインクを被記録材に付着させて画像形成するにあたり、インクを付着させる前に被記録材に予め塗布することにより形成される画像の品質を向上させることができる液体を意味する。例えば、インク中に含まれる色剤を凝集化して被記録材上に留め、インクの溶媒のみが被記録材中へ浸透することを促進させる機能を有するものであり、上記特許文献8や特許文献10に開示されているものである。このような前処理液を塗布することにより、被記録体上に付着したインクは、ドットサイズのばらつきが少なくなり、真円度が高くなり、ひいては、被記録体上に形成される画像の品質が向上する。
【0016】
したがって、被記録材収納部に積層保持された被記録材は1枚ずつ分離給紙されて給紙用搬送路を記録部に向けて搬送され、その搬送途中で塗布部において前処理液を塗布され、前処理液を塗布された被記録材は一旦反転トレイに送り込まれる。反転トレイ内に送り込まれた被記録材は被記録材反転手段によりスイッチバックされて記録部に送り込まれ、被記録材上への画像形成が行われる。記録部に送り込まれた被記録材の表面には前処理液が塗布されているので、被記録材上に形成される画像の品質が高くなる。
【0017】
また、請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、前記反転トレイから前記記録部に至る部分がストレート状に形成されていることを特徴とする。
【0018】
また、請求項3にかかる発明は、請求項1または2に記載の画像形成装置において、前記反転トレイは給紙方向後端側の部分が開放状態とされていることを特徴とする。
【0019】
また、請求項4にかかる発明は、請求項1〜3のいずれか一つに記載の画像形成装置において、前記反転トレイは、前記記録部に給紙される被記録材を積層保持する被記録材収納部としての機能を有することを特徴とする。
【0020】
また、請求項5にかかる発明は、請求項1〜4のいずれか一つに記載の画像形成装置において、前記前処理された被記録材は、前記液体が塗布された前処理面を上面として前記反転トレイへ送り込まれ、前記反転トレイで搬送方向を反転して送り出すことを特徴とする。
【0021】
また、請求項6にかかる発明は、請求項1〜5のいずれか一つに記載の画像形成装置において、前記塗布部は、搬送される被記録材の画像形成面に当接して回転することにより前処理液を塗布する塗布ローラを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、被記録材収納部から反転トレイまでの被記録材の搬送を、記録部での被記録材の搬送と独立させて一定速度(所定の搬送速度)で行わせることができるので、被記録材が被記録材収納部から反転トレイまで搬送される途中で行われる被記録材への前処理液の塗布を、記録部での被記録材の搬送速度に影響されず一定速度でムラなく行うことができ、それにより、前処理液の塗布ムラが原因となる被記録材の波打ちや画質ムラの発生を防止して被記録材に形成される画像の品質を向上させることができる。
【0023】
また、本発明によれば、前処理液が塗布された後の被記録材を反転トレイに送り込んでスイッチバックさせて記録部へ送り込むことにより、被記録材に塗布された前処理液の乾燥時間を確保することができ、被記録材に形成される画像の品質をさらに向上させることができる。
【0024】
また、本発明によれば、被記録材反転手段が開放状態となったときに、反転トレイから送り出されている先行する被記録材と反転トレイに送り込まれる後続の被記録材との少なくとも一部が重畳されるものであるので、反転トレイ内への被記録材の送り込み速度や反転トレイ内からの被記録材の送り出し速度、反転トレイからの被記録材の送り出しタイミングなどを制御することにより、スイッチバックされて記録部へ送り込まれる被記録材の間隔を小さくすることができ、これにより、被記録材収納部から給紙される被記録材の間隔を狭くした場合において、被記録材収納部からの給紙タイミングのバラツキや、反転トレイに至る搬送中における搬送速度のバラツキ等が生じても、前後の被記録材が重なり合うことを防止できるとともに記録部への被記録材の送り込みを小さい間隔に精度良く維持することができ、画像形成装置における画像形成作業の生産性を高めることができる。
【0025】
また、本発明によれば、塗布部は、搬送される被記録材の画像形成面に当接して回転することにより前処理液を塗布する塗布ローラを有するので、被記録材に塗布する前処理液として粘度の高いものを使用することができるとともにその前処理液を薄く塗布することが可能となる。
【0026】
また、本発明によれば、反転トレイは、記録部に給紙される被記録材を積層保持する被記録材収納部としての機能を有するので、既に表面処理が行われている被記録材を使用する場合には、その被記録材を反転トレイ上に積載保持し、反転トレイから記録部へ給紙することができるので、既に表面処理が行われている被記録材を使用する場合にそのような被記録材を給紙するための専用のトレイを別個に設ける必要がなくなり、コンパクトな構成を維持したまま使用できる被記録材の種類を増やすことができる。
【0027】
また、本発明によれば、被記録材反転手段は、反転トレイに積層保持された被記録材を1枚ずつに分離給紙する分離給紙手段としての機能を有するので、反転トレイに積層保持された被記録材を給紙する場合において、別個に分離給紙手段を設けることなく重送を防止することができる。
【0028】
また、本発明によれば、被記録材収納部から反転トレイまで搬送される被記録材の搬送速度V1が、記録部を搬送される被記録材の平均搬送速度V2より速く設定されているので、反転トレイ内での被記録材の待機時間を多くとることが可能となり、この待機時間の存在により、記録部での搬送速度の変化や、反転トレイまでの搬送の遅れが生じた場合でも、記録部に送り込まれる被記録材の間隔を一定に維持して高い生産性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、第1の実施の形態の画像形成装置の構造を示す概略図である。
【図2−1】図2−1は、開放状態における被記録材反転手段の動作の説明図である。
【図2−2】図2−2は、送り出し状態における被記録材反転手段の動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1はインクジェット記録部を備えた画像形成装置の構造を示す概略図、図2−1は、開放状態における被記録材反転手段の動作の説明図である。図2−2は、送り出し状態における被記録材反転手段の動作の説明図である。
【0031】
この画像形成装置には図1に示すように、被記録材が積層保持される被記録材収納部である給紙トレイ1、給紙された被記録材上に画像形成を行うインクジェット記録部2、画像形成が行われた被記録材が排紙される排紙トレイ3等が設けられている。また、この画像形成装置には、給紙トレイ1からインクジェット記録部2に至る給紙用搬送路4が設けられており、この給紙用搬送路4の途中には反転トレイ5が接続されている。さらに、給紙用搬送路4上の反転トレイ5より上流側には、この給紙用搬送路4を搬送される被記録材に対して前処理液を塗布する前処理液塗布部6が設けられている。
【0032】
給紙トレイ1は画像形成装置に対して着脱自在に装着されており、画像形成装置内における給紙トレイ1の装着位置の近傍には、給紙トレイ1内に積層保持された被記録材を送り出す給紙ローラ7、給紙ローラ7の外周面に当接されて被記録材の重送を防止する分離パッド8が設けられている。
【0033】
インクジェット記録部2には、画像データに応じてインク滴を吐出する記録ヘッド9、被記録材を搬送する搬送ローラ10、画像形成後の被記録材を排紙トレイ3上に排紙する排紙ローラ11が設けられている。
【0034】
給紙用搬送路4上には、給紙トレイ1から給紙された被記録材を搬送する搬送ローラ12a、12b、給紙用搬送路4上を搬送された被記録材を反転トレイ5内に送り込む位置と、反転トレイ5内でスイッチバックされた被記録材をインクジェット記録部2に向かわせる位置とに切替自在な切替爪13とが設けられている。切替爪13には、それぞれの切替位置へ回動させるソレノイドなどの切替手段が連結されている。また、切替爪13をそれぞれの切替位置へ回動させる構成としては、切替爪13をスプリングで搬送ローラ12a側(反転トレイ5内でスイッチバックされた被記録材をインクジェット記録部2に向かわせる位置)へ付勢しておき、被記録材が反転トレイ5内に送り込まれるときに、搬送ローラ12aと切替爪13との間を通過する被記録材がスプリングの付勢力に抗して切替爪13を押し上げる構成としてもよい。
【0035】
反転トレイ5は、給紙トレイ1から給紙されて給紙用搬送路4を搬送された被記録材が一旦送り込まれ、一旦送り込まれた被記録材がスイッチバックされてインクジェット記録部2に向けて再び給紙用搬送路4上に送り出される箇所であるとともに、インクジェット記録部2に給紙される多数枚の被記録材を積層保持する被記録材収納部としての機能を有する箇所である。
【0036】
この反転トレイ5への被記録材の出入口側には、被記録材反転手段14、ピックアップローラ15、昇降可能な底板(図示せず)等が設けられている。被記録材反転手段14は、図2−1、2−2に示すように、ステッピングモータ(図示せず)により反転トレイ5から被記録材を送り出す向きに間欠的に回転駆動される反転ローラ16と、外周面を反転ローラ16の外周面に当接させる位置に配置された対向ローラ17とにより構成されている。反転ローラ16の外周部の一部には、対向ローラ17に対向したときに対向ローラ17の外周面との間に隙間を形成する切欠部16aが形成されている。また、対向ローラ17の回転軸には、クラッチ(図示せず)とトルクリミッタ(図示せず)とが設けられ、クラッチがオンになっているときには対向ローラ17に対して反転ローラ16と同じ向きの回転力が伝達される。
【0037】
被記録材反転手段14は、反転トレイ5に送り込まれた被記録材をスイッチバックさせて給紙用搬送路4へ送り出す送り出し状態と、反転トレイ5から送り出されている先行する被記録材と反転トレイ5に送り込まれる後続の被記録材との少なくとも一部が重畳することを許容する開放状態とに切替自在に設けられている。
【0038】
図2−2は、反転ローラ16の外周面と対向ローラ17の外周面とが当接して反転ローラ16が矢印方向に回転駆動され、及び、対向ローラ17が矢印方向に連れ回りされる送り出し状態である。これにより、反転トレイ5内に送り込まれた被記録材が反転ローラ16と対向ローラ17とにより挟持されてスイッチバックされ、給紙用搬送路4上へ送り出される。
【0039】
図2−1は、切欠部16aが対向ローラ17に対向した状態で反転ローラ16の回転駆動が停止され、反転ローラ16と対向ローラ17との間に隙間が形成された開放状態である。これにより、反転トレイ5からの先行する被記録材の送り出しと反転トレイ5への後続の被記録材の送り込みとが同時に行われ、先行する被記録材と後続の被記録材との少なくとも一部が反転トレイ5内で重畳する。なお、反転トレイ5内への被記録材の送り込み、及び、反転トレイ5内での被記録材のスイッチバックが行われているとき、即ち、給紙トレイ1から給紙された被記録材への画像形成が行われているときには、対向ローラ17の回転軸に設けられているクラッチはオフにされている。
【0040】
ピックアップローラ15は、反転トレイ5上に多数枚の被記録材が積層保持された場合、底板の上昇により上昇した最上位の被記録材に当接してその被記録材をインクジェット記録部2に向けて送り出すローラである。反転トレイ5上に積層保持された被記録材をインクジェット記録部2に向けて送り出すとき、被記録材反転手段14は、被記録材の重送を防止して1枚ずつに分離給紙する分離給紙手段として機能する。即ち、クラッチがオンとなり、対向ローラ17に被記録材を反転トレイ5上へ戻す向きの回転力が伝えられている。これにより、反転ローラ16と対向ローラ17との間に2枚以上の被記録材が入り込んだ場合には、反転ローラ16と接触する1枚の被記録材(最上位の被記録材)のみがインクジェット記録部2へ向けて送り出され、他の被記録材は対向ローラ17の回転力により反転トレイ5上へ戻される。反転ローラ16と対向ローラ17との間に1枚の被記録材のみが存在する場合には、トルクリミッタの箇所で滑りが生ずることにより対向ローラ17が反転ローラ16により連れ回りされる。
【0041】
給紙用搬送路4のうち、反転トレイ5からインクジェット記録部2に至る部分がストレート状に形成されている。これにより、厚手の被記録材を反転トレイ5上に積層保持してその被記録材を分インクジェット記録部2へ離搬送することができるようになり、搬送時に湾曲させることが困難である厚手の被記録材に対する画像形成を行うことができるようになる。
【0042】
また、反転トレイ5は、給紙方向後端側の部分が開放状態とされている。これにより、給紙トレイ1内に収納できない長尺の被記録材であっても反転トレイ5上に積層保持することが可能となり、そのような長尺の被記録材への画像形成を行うことができるようになる。
【0043】
前処理液塗布部6は、前処理液18を収容する前処理液タンク19と、前処理液18を攪拌しながら汲み上げる汲み上げローラ20と、汲み上げられた前処理液が外周面に転移される塗布ローラ21と、塗布ローラ21の外周面上に転移された前処理液18を均一な膜厚に制御する膜厚制御ブレード22と、給紙トレイ1から給紙された被記録材を塗布ローラ21とにより挟持して被記録材への前処理液18の塗布を補助するカウンタローラ23等により構成されている。前処理液18は、インク中に含まれる色剤を凝集化して被記録材上に留める化合物を含有し、インクの溶媒のみが被記録材中へ浸透することを促進させる液体である。
【0044】
インクジェット記録部2を搬送される被記録材は、記録ヘッド9が画像形成動作を行いつつ主走査方向へ移動しているときには停止し、また、記録ヘッド9がラインヘッドであって画像形成動作時に主走査方向に移動しない場合であっても、被記録材上の画像領域の有無に応じて被記録材の搬送速度は変化する。ここで、この画像形成装置においては、給紙トレイ1から反転トレイ5まで搬送される被記録材の搬送速度V1が、インクジェット記録部2を搬送される被記録材の平均搬送速度V2より速く設定されている。この平均搬送速度V2は、画像形成される頻度が最も高い6%シート(全シート面積の6%の領域に画像形成が行われるシート)の場合を想定したものである。
【0045】
このような構成において、まず、給紙トレイ1から被記録材を連続して給紙し、その被記録材上に画像形成を行う場合について説明する。
【0046】
連続画像形成のモードに設定された後にプリントスタートキーが押されると、給紙トレイ1から次々と被記録材が給紙され、これらの被記録材は給紙用搬送路4上を搬送される途中に前処理液塗布部6において塗布ローラ21とカウンタローラ23とにより挟持され、被記録材の表面(画像形成側の面)へ前処理液18が塗布される。この前処理液18の塗布に際し、塗布ローラ21を用いることにより、前処理液18として粘度の高いものを使用することができるとともにその前処理液18を薄く塗布することが可能となる。
【0047】
前処理液塗布部6で前処理液18を塗布された被記録材は、一旦反転トレイ5内に送り込まれ、反転トレイ5内に送り込まれた被記録材は被記録材反転手段14によりスイッチバックされて給紙用搬送路4へ送り出され、給紙用搬送路4からインクジェット記録部2に送り込まれ、被記録材上への画像形成が行われる。インクジェット記録部2に送り込まれた被記録材の表面には前処理液18が塗布されているので、被記録材上に形成される画像の品質が高くなる。
【0048】
ここで、被記録材は、前処理液塗布部6で前処理液18を塗布された後に反転トレイ5内に送り込まれ、反転トレイ5内でスイッチバックされてインクジェット記録部2へ送り込まれるので、インクジェット記録部2における被記録材の搬送速度が被記録材上の画像形成領域の有無により変動するような場合であっても、反転トレイ5までの被記録材の搬送をインクジェット記録部2での被記録材の搬送と独立させて一定速度で行わせることができる。それにより、前処理液塗布部6を通過する被記録材を一定の速度で通過させることができ、被記録材への前処理液18の塗布を一定速度でムラなく行うことができ、前処理液18の塗布ムラが原因となる被記録材の波打ちや画質ムラの発生を防止できる。
【0049】
前処理液18が塗布された後の被記録材を反転トレイ5内に送り込み、その後にスイッチバックさせてインクジェット記録部2へ送り込むことにより、被記録材に塗布された前処理液18の乾燥時間を確保することができる。
【0050】
さらに、反転トレイ5内からスイッチバックされて送り出される先行の被記録材が反転トレイ5内へ送り込まれる後続の被記録材と少なくとも一部が重畳した状態となるので、反転トレイ5内への被記録材の送り込み速度や反転トレイ5内からの被記録材の送り出し速度、反転トレイ5内からの被記録材の送り出しタイミングなどを制御することにより、スイッチバックされてインクジェット記録部2へ送り込まれる被記録材の間隔を小さくすることができる。これにより、給紙トレイ1から給紙される被記録材の間隔を狭くした場合において、給紙トレイ1からの給紙タイミングのバラツキや、反転トレイ5に至る搬送中における搬送速度のバラツキ等が生じても、インクジェット記録部2への被記録材の送り込みを小さい間隔に精度良く維持することができ、画像形成装置における画像形成作業の生産性を高めることができる。
【0051】
また、給紙トレイ1から反転トレイ5まで搬送される被記録材の搬送速度V1が、インクジェット記録部2を搬送される被記録材の平均搬送速度V2より速く設定されているので、反転トレイ5内での被記録材の待機時間を多くとることが可能となる。さらに、インクジェット記録部2での搬送速度の変化し、例えば、先行する被記録材の画像形成が短時間で終了した場合において、後続の被記録材との間隔が大きく広がるということを防止できる。また、給紙トレイ1からの給紙時にスリップが生じて給紙タイミングの遅れが生じたような場合でも、インクジェット記録部2において先行する被記録材と後続の被記録材との間隔が大きく広がるということを防止できる。
【0052】
つぎに、反転トレイ5上に被記録材を積層保持し、この被記録材をインクジェット記録部2へ給紙する場合について説明する。反転トレイ5上から給紙する被記録材としては、既に表面処理(前処理液の塗布)が行われており、前処理液塗布部6での前処理液18の塗布が不要な被記録材や、湾曲させることが困難である厚手の被記録材や、給紙トレイ1に収納することができない長尺の被記録材である。
【0053】
反転トレイ5上から被記録材を給紙する場合には、対向ローラ17の回転軸に設けられているクラッチをオンにし、被記録材を反転トレイ5内に戻す方向へ対向ローラ17を回転駆動させる。これにより、ピックアップローラ15によりピックアップされた被記録材は分離給紙手段14により1枚ずつに分離給紙されてインクジェット記録部2に送り込まれ、画像形成が行われる。
【0054】
ここで、既に表面処理(前処理液の塗布)が行われている被記録材や、厚手の被記録材や、長尺の被記録材に対して画像形成を行う場合、それらの被記録材を給紙するための専用のトレイを設けることが不要となり、コンパクトな構成を維持したまま使用できる被記録材の種類を増やすことができる。
【符号の説明】
【0055】
1 給紙トレイ
2 インクジェット記録部
4 給紙用搬送路
5 反転トレイ、被記録材収容部
6 前処理液塗布部
14 被記録材反転手段、分離給紙手段
18 前処理液
21 塗布ローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0056】
【特許文献1】特開昭56−86789号公報
【特許文献2】特開昭55−144172号公報
【特許文献3】特開昭52−53012号公報
【特許文献4】特開昭55−65269号公報
【特許文献5】特開昭55−66976号公報
【特許文献6】特開昭56−89595号公報
【特許文献7】特開昭64−63185号公報
【特許文献8】特開平8−20159号公報
【特許文献9】特開平8−20161号公報
【特許文献10】特開平7−156538号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録材を積層保持する被記録材収納部と、
被記録材に対して液体を塗布して前処理を行う塗布部と、
装置本体から外部に露出し、前処理された被記録材が送り込まれ搬送方向を反転して送り出す反転トレイと、
前処理された被記録材上に画像形成を行う記録部と、を有する画像形成装置において、
前記反転トレイから画像形成面に前記前処理が行われていない被記録材を給紙し、前処理を行わずに前記記録部により画像形成を行うことが可能であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記反転トレイから前記記録部に至る部分がストレート状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記反転トレイは給紙方向後端側の部分が開放状態とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記反転トレイは、前記記録部に給紙される被記録材を積層保持する被記録材収納部としての機能を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記前処理された被記録材は、前記液体が塗布された前処理面を上面として前記反転トレイへ送り込まれ、前記反転トレイで搬送方向を反転して送り出すことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記塗布部は、搬送される被記録材の画像形成面に当接して回転することにより前処理液を塗布する塗布ローラを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【公開番号】特開2010−241153(P2010−241153A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173911(P2010−173911)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【分割の表示】特願2008−59298(P2008−59298)の分割
【原出願日】平成14年1月11日(2002.1.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】