説明

画像形成装置

【課題】記録ヘッドをキャップにより覆うキャッピング機構を備えた画像形成装置において、画像形成装置の組立性、およびメンテナンスや修理時の作業性を良好にすることができるキャッピング機構を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】記録ヘッド122a〜122hにおけるノズル形成面123a〜123hを覆うキャップ151a〜151hを備えるキャッピング機構150は、記録ヘッド122a〜122hが相対変位する主走査方向および副走査方向にそれぞれ変位可能な状態でキャップ151a〜151hを支持している。記録ヘッド122a〜122hを備えた記録ヘッドユニット120およびキャップ151a〜151hを支持するキャッピング機構150は、記録ヘッド122a〜122hの接触によりキャップ151a〜151hを位置決めするための位置決め案内体131および位置決め棒133と、位置決め板141および位置決め棒143とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録メディアに対してインクを吐出するノズルを有する記録ヘッドにおけるノズル形成面をキャップにより覆うキャッピング機構を備えたインクジェット記録方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、記録メディアを断続的に搬送しつつ複数のノズルを備えた記録ヘッドを同記録メディアの搬送方向(副走査方向)に直交する方向(主走査方向)に変位させながらインクを吐出させて画像を形成するインクジェット記録方式の画像形成装置、所謂インクジェットプリンタが知られている。一般に、このようなインクジェットプリンタにおいては、例えば、下記特許文献1に示すように、インクを吐出するノズルが形成されたノズル形成面の乾燥および保護を目的として同ノズル形成面をゴム製のキャップで覆うキャッピング機構を備えている。
【特許文献1】特開2007−203648号公報
【0003】
しかしながら、このようなキャッピング機構においては、記録ヘッドに装着するキャップは記録ヘッドの待機位置(キャッピング位置ともいう)に固定的に設けられるため、インクジェットプリンタの製造段階においてキャップの位置を正確に位置決めして組み付ける必要がある。しかし、このキャップを含むキャッピング機構を正確に位置決めして固定する作業は煩雑な作業であり、インクジェットプリンタの製造効率が低下するという問題がある。
【0004】
また、インクジェットプリンタのメンテナンス時や故障時においては、記録ヘッドを手動操作によりキャッピング位置に移動させてキャッピングさせることがある。しかし、記録ヘッドを手動操作により正確にキャッピング位置に位置決めすることは極めて困難である。このため、インクジェットのメンテナンス作業や修理作業の作業効率が低下するという問題もある。さらに、インクジェットプリンタの作動時において何らかの事由(例えば、記録ヘッドの脱調)により記録ヘッドが正確にキャッピング位置に位置決めされなかった場合には、記録ヘッドに対して正しくキャッピングが行われないという問題があった。
【0005】
なお、上記特許文献1に示されるインクジェットプリンタにおいては、記録ヘッドのノズル形成面をキャッピングするキャッピング機構が副走査方向(記録メディアの搬送方向)に変位するように構成されている。しかし、これは、記録ヘッドに付着したインクを掃き取るためのワイピング機構がキャッピング機構に一体的に設けられているため、ワイピング機構の動作の必要上キャッピング機構が副走査方向に一体的に変位するものである。すなわち、上記特許文献1に示されるインクジェットプリンタにおいては、記録ヘッドのキャッピング動作においてキャッピング機構が副走査方向に変位することはなく、あくまで記録ヘッドに装着されるキャップは記録ヘッドに対して固定的に設けられているものである。
【発明の開示】
【0006】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、記録ヘッドをキャップにより覆うキャッピング機構を備えた画像形成装置において、画像形成装置の組立性、およびメンテナンスや修理時の作業性を良好にすることができるキャッピング機構を備えた画像形成装置を提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る本発明の特徴は、記録メディアに対向して配置されるとともに、同記録メディア上にインクを吐出するノズルを有する記録ヘッドと、記録ヘッドに対向する面内にて互いに直交する2方向に記録ヘッドを記録メディアに対して相対変位させる記録ヘッド相対変位手段と、記録ヘッドにおけるノズルが形成されたノズル形成面をキャップにより覆うキャッピング機構とを備える画像形成装置において、キャッピング機構は、記録ヘッドの直接的または間接的な接触により、キャップを前記2方向のうちの少なくとも一方に変位可能に支持するキャップ支持手段を備えることにある。
【0008】
この場合、前記画像形成装置において、キャップ支持手段は、記録ヘッドが接近する方向とは反対方向に作用する力をキャップに付与する付勢手段を備えるとよい。
【0009】
このように構成した請求項1に係る本発明の特徴によれば、記録ヘッドにおけるノズル形成面を覆うキャップを備えるキャッピング機構は、記録ヘッドが相対変位する2方向のうちの少なくとも一方向に変位可能な状態でキャップを支持している。このため、記録ヘッドが直接的または間接的にキャップに接触することにより同キャップの位置が前記少なくとも一方向に変位する。例えば、キャップに対してずれた位置に記録ヘッドが位置決めされた場合であっても、記録ヘッドにキャップが装着される際、記録ヘッドの接触によりキャップが変位してずれが解消した状態で記録ヘッドに装着される。これにより、キャッピング機構を画像形成装置に組み付ける際、キャップの位置を厳密に位置決めして組み付ける必要がない。また、画像形成装置のメンテナンスや修理時においても、作業者は、記録ヘッドのキャッピング位置に対するラフな位置決めによってキャッピングを行うことができる。これらの結果、画像形成装置の組立性、およびメンテナンスや修理時の作業性を良好にすることができる。
【0010】
また、請求項3に係る本発明の他の特徴は、前記画像形成装置において、キャップ支持手段は、記録ヘッドが直接的または間接的に接触することにより、キャップを前記2方向のうちの少なくとも一方に変位させて記録ヘッドに位置決めするキャップ位置決め手段を備えることにある。
【0011】
この場合、前記画像形成装置において、キャップ位置決め手段は、記録ヘッドおよびキャップのうちの一方に直接的または間接的に設けられ、V字状に形成されたV溝部を有する案内体と、記録ヘッドおよびキャップのうちの他方に直接的または間接的に設けられ、V溝部に嵌る嵌合体とを備えるとよい。さらに、この場合、前記画像形成装置において、キャップ位置決め手段は、さらに、V溝部に嵌合体が勘合した際における互いの反力の大きさと同じ反力の大きさを生じさせる記録ヘッドおよびキャップの各位置に設けた一対の接触体を備えるとよい。
【0012】
このように構成した請求項3に係る本発明の他の特徴によれば、キャップ支持機構は、記録ヘッドが接触することにより、キャップを記録ヘッドに位置決めするキャップ位置決め手段を備えている。このため、キャップは、キャッピングに際して記録ヘッドに対して正確に位置決めされた状態で装着される。これにより、精度良く記録ヘッドをキャッピングすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(画像形成装置100の構成)
以下、本発明に係る画像形成装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る画像形成装置100の全体を示す概略斜視図である。また、図2は、同画像形成装置100の作動を制御するための制御システムのブロック図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。この画像形成装置100は、画像の形成対象であるシート状の記録メディアWKの表面にインクを付着させることにより所望する文字、記号または図形などの画像を形成する所謂インクジェットプリンタである。
【0014】
この画像形成装置100は、平面部が水平状態に配置されたプラテン101を備えている。プラテン101は、前記平面部上に記録メディアWKを載置する載置台であり、図示左右方向に延びて形成されている。プラテン101の中央部には、図示左右方向に沿って円筒状のグリッドローラ102がその上面部を露出させた状態で設けられている。このグリッドローラ102は、後述するコントローラ170によって作動が制御されるX軸方向フィードモータ103によって回転駆動される。
【0015】
プラテン101の上方には、プラテン101と平行な状態で長尺状のガイドレール104が設けられている。ガイドレール104の下部には、グリッドローラ102に対向した状態で円筒部を有する4つのピンチローラ105が略等間隔にそれぞれ設けられている。これらのグリッドローラ102およびピンチローラ105は、シート状の記録メディアWKを図示上下方向から挟持しながら図示前後方向に搬送する。なお、記録メディアWKを搬送する図示前後方向(X軸方向)を副走査方向、同X軸方向に直交する図示左右方向(Y軸方向)を主走査方向とする。
【0016】
ガイドレール104は、直動レール106および直動ブロック107を介して記録ヘッドユニット120を支持する。直動レール106は、主走査方向(図示Y軸方向)に沿ってガイドレール104に固定された1本のレールである。また、直動ブロック107は、直動レール106に沿って摺動する移動体であり、記録ヘッドユニット120の背面に固定されている。すなわち、記録ヘッドユニット120は、直動レール106(ガイドレール104)に沿って主走査方向に案内される。
【0017】
記録ヘッドユニット120の背面上部には、主走査方向(図示Y軸方向)に架設された駆動ベルト108の一部が固定されている。駆動ベルト108は、コントローラ170によって駆動が制御されるY軸方向スキャンモータ109に接続されており、同Y軸方向スキャンモータ109の回転駆動によって主走査方向に変位する。すなわち、記録ヘッドユニット120は、駆動ベルト108を介してY軸方向スキャンモータ109の駆動により主走査方向に変位する。これらのグリッドローラ102、X軸方向フィードモータ103、ピンチローラ105、直動レール106、直動ブロック107、駆動ベルト108およびY軸方向スキャンモータ109が、本発明に係る記録ヘッド相対変位手段に相当する。
【0018】
なお、図1において、記録ヘッドユニット120は、Y軸方向における待機位置に位置した状態を示している。この記録ヘッドユニット120のY軸方向における待機位置は、記録ヘッドユニット120のY軸方向の変位の基準となる原点位置である。したがって、画像形成装置100の起動時や記録メディアWKに対する印刷が行われない場合には、記録ヘッドユニット120は、この待機位置にて待機する。
【0019】
また、記録ヘッドユニット120の上方には、画像形成装置100の上側の筐体を構成する長尺状の上カバー110が設けられている。また、プラテン101および上カバー110の両側には、画像形成装置100の両側の筐体を構成するサイドカバー111R,111Lがそれぞれ設けられている。これらのうち、サイドカバー111Rの前面には、画像形成装置100(コントローラ170)に指示を与えるとともに、画像形成装置100(コントローラ170)からの情報を表示するための操作パネル112が設けられている。さらに、プラテン101の下方には、画像形成装置100を支持するとともに、同画像形成装置100を作業者の所望する位置に移動させることができるスタンド113が設けられている。
【0020】
記録ヘッドユニット120は、図3(A),(B)に示すように、昇降機構(図示せず)により図3(B)における図示上下方向に沿って変位するケーシング121内に8つの記録ヘッド122a〜122hを収容して構成されている。ケーシング121は、板状体の周囲が起立して形成された底板121a上に、下面が開放された略箱状の上蓋121b(図3(A),(B)において図示せず)が被せられて構成されている。これらのうち、底板121aの上面には、8つの記録ヘッド122a〜122hが主走査方向に沿って副走査方向に千鳥状に配置されている。
【0021】
記録ヘッド122a〜122hは、図示しないインクタンクから供給される互いに異なる4つの色(黒色(K)、シアン色(C)、マゼンタ色(M)、イエロー色(Y))の各インクを各記録ヘッド122a〜122hの下面に形成された図示しないノズルから記録メディアWKに向けて吐出する。ノズルは、各記録ヘッド122a〜122hの下面において副走査方向に沿って複数形成されている。これらのノズルが形成された各記録ヘッド122a〜122hにおける各ノズル形成面123a〜123hは、底板121aの下面から図示下方に向って突出した状態で設けられている。
【0022】
また、底板121aにおける4つの起立した側壁のうち、図示右側の側壁121cの外側面には、位置決め案内体131と位置決め板141がそれぞれ組み付けられている。これらのうち、位置決め案内体131は、硬質樹脂材で構成され、主走査方向に沿って略V字状に開口する2つの傾斜面132a,132bで構成されたV溝部132を有するブロック状の部材である。また、位置決め板141は、硬質樹脂材で構成され、副走査方向に平行な接触面142が形成されたブロック状の部材である。
【0023】
記録ヘッドユニット120の前記待機位置におけるプラテン101内には、キャッピング機構150(図1において破線で示す)が設けられている。キャッピング機構150は、図4(A),(B)に示すように、各記録ヘッド122a〜122hにおける各ノズル形成面123a〜123hを覆って同ノズル形成面123a〜123hの乾燥を防止するとともに保護するための装置であり、ノズル形成面123a〜123hを覆うキャップ151a〜151hを備えている。キャップ151a〜151hは、主としてゴム材および樹脂材で構成されており、ノズル形成面123a〜123hを覆うことができる大きさに形成されている。
【0024】
また、キャップ151a〜151hの内部には、多孔質材で構成されたインク吸収体152がそれぞれ設けられているとともに、キャップ151a〜151hの底部およびインク吸収体152を貫通する廃液孔153がそれぞれ形成されている。これらのキャップ151a〜152hは、図示しないスプリングによって図示上側に押圧された状態で箱状に形成されたキャップホルダ154a〜154hの上面に組み付けられている。このキャップホルダ154a〜154hの下面には、前記廃液孔153に連通する廃液管155が図示下方に延びてそれぞれ形成されている。
【0025】
キャップホルダ154a〜154hは、前記記録ヘッド122a〜122hの配置関係に対応する配置関係で可動テーブル156に支持されている。可動テーブル156は、キャップホルダ154a〜154hを支持する下板156aと、キャップホルダ154a〜154hに支持されたキャップ151a〜151hを露出させた状態でキャップホルダ154a〜154hを覆う上板156bとで構成されている。
【0026】
これらのうち、下板156aにおける図示右側端部には、図示上側に起立した後、上板156bと面一で水平方向に延びるステー156cが設けられている。このステー156c上には、2つの円柱状の位置決め棒133,143が起立した状態でそれぞれ固定されている。これらの位置決め棒133,143は鋼材で構成されており、前記位置決め案内体131および位置決め板141の配置位置に対応した配置位置関係で設けられている。また、下板156aにおける図示左側端部に起立した状態で形成された側壁156dの外側面には、軟質ゴム製の緩衝材156eが設けられている。
【0027】
可動テーブル156は、略平板状に形成された固定テーブル157上において12個の弾性支持ピン158を介して支持されている(図4(B)においては5つのみ図示)。弾性支持ピン158は、スプリング158aと、同スプリング158aによって図示上方に向かって押圧された押圧ピン158bとによって構成されており、固定テーブル157の上面に主走査方向に沿って2列で配置されている。これらの弾性支持ピン158における押圧ピン158bの上面は平滑に形成されており、可動テーブル156(下板156aの下面)を摺動可能な状態で支持している。
【0028】
固定テーブル157の長手方向における互いに対向する端部には、内側に向かって略コ字状に屈曲した押さえ部157a,157b,157cがそれぞれ形成されている。押さえ部157a,157b,157cは、弾性支持ピン158によって支持された可動テーブル156の上面(下板156aの上面)を押さえる部材である。したがって、可動テーブル156は、弾性支持ピン158によって押さえ部157a,157b,157cに押し付けられた状態で支持されている。なお、押さえ部157a,157b,157cにおける可動テーブル157への接触面も平滑に形成されており、可動テーブル156を摺動可能な状態で受け止めている。
【0029】
また、固定テーブル157と可動テーブル156とには、2つの収縮スプリング159a,159bが掛け渡された状態でそれぞれ設けられている。収縮スプリング159a,159bは、可動テーブル156を主走査方向における図示左方向に引っ張ることにより可動テーブル156を常に同方向に変位させた状態としている。また、これらの収縮スプリング159a,159bは、主走査方向に平行な方向から可動テーブル156を引っ張るものではなく、若干、副走査方向に広がった方向から可動テーブル156を引っ張っている。これにより、弾性支持ピン158上に支持される可動テーブル156の副走査方向への変位を可能としている。この収縮スプリング159a,159bが、本発明に係る付勢手段に相当する。
【0030】
この固定テーブル157は、支持フレーム160によって支持されている。支持フレーム160は、副走査方向に沿って互いに対向して起立した2つの側壁161a,161bによって主走査方向における固定テーブル157の両端部を挟んだ状態で支持している。したがって、収縮スプリング159a,159bによって副走査方向における図示左側に引っ張られた可動テーブル156は、支持フレーム160の側壁161aの内側面に緩衝材156eを介して押し付けられた状態となっている。支持フレーム160の内側における固定テーブル157の下方には、廃液受け162が設けられている。廃液受け162は、前記キャップホルダ154a〜154hからそれぞれ延びる廃液管155から導かれる廃インクを回収してキャッピング機構150の外へ導く樋である。
【0031】
このように構成されたキャッピング機構150は、記録ヘッドユニット120のプラテン101内における記録ヘッド122a〜122hの待機位置であって、同記録ヘッド122a〜122hに対してキャップ151a〜151hが装着されるキャッピング位置に固定的に設けられる。この場合、キャッピング機構150は、支持フレーム160に予め設けられた取付孔とプラテン101内において予め設けられた取付孔とを貫通するビスにより組み付けられる。すなわち、キャッピング機構150は、キャッピング位置に対して大まかな位置合わせのみでプラテン101内に組み付けられる。
【0032】
コントローラ170は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータによって構成されており、作業者からの指示、またはインターフェース171を介して接続される外部コンピュータ装置180からの指示に従って、ROMなどの記憶装置に予め記憶されたプログラムを実行することにより、画像形成装置100の各種作動を制御する。具体的には、このコントローラ170は、X軸方向フィードモータ103、Y軸方向スキャンモータ109および記録ヘッドユニット120(記録ヘッド122a〜122h)の各作動をそれぞれ制御する。外部コンピュータ装置180は、キーボードおよびマウスからなる入力装置181および液晶ディスプレイからなる表示装置182を備えるパーソナルコンピュータ(所謂パソコン)である。
【0033】
(画像形成装置100の作動)
次に、上記のように構成した画像形成装置100の作動について説明する。なお、本作動説明においては、本発明に関わる記録ヘッド122a〜122hのキャッピング処理について説明し、記録メディアWKに対する画像形成処理については、本発明に直接関わらないとともに従来技術と同様であるため、その説明は省略する。
【0034】
この記録ヘッド122a〜122hのキャッピング処理は、コントローラ170による制御により記録ヘッド122a〜122hが待機位置で待機する際に自動的に実行されるほか、作業者による操作パネル112を介した実行指令の入力により選択的に実行される。このキャッピング処理の実行は、コントローラ170のROMなどの記憶装置に予め記憶された図示しないキャッピング処理プログラムの実行により行われる。
【0035】
まず、コントローラ170は、Y軸方向スキャンモータ109の作動を制御することにより主走査方向における記録ヘッドユニットの待機位置に向って記録ヘッドユニット120を変位させる。これにより、図5(A),(B)に示すように、記録ヘッドユニット120(図5(A)において二点鎖線で示す)の底板121aに設けられた位置決め案内体131および位置決め板141が、キャッピング機構150の可動テーブル156に設けられた位置決め棒133,143にそれぞれ接触する。なお、図5においては、理解を容易するため、符号の記載は必要最小限に留めている。
【0036】
そして、記録ヘッドユニット120が、更に待機位置(図示右側)に向って変位することにより、底板121aに設けられた位置決め案内体131のV溝部132内に可動テーブル156に設けられた位置決め棒133が嵌り込んで押し付けられるとともに、底板121aに設けられた位置決め板141に可動テーブル156に設けられた位置決め棒143が押し付けられる。これにより、可動テーブル156が収縮スプリング159a,159bの引張り力に抗して弾性支持ピン158上を記録ヘッドユニット120とともに変位する(図5(A),(B)参照)。
【0037】
この場合、可動テーブル156は、位置決め案内体131のV溝部132内に位置決め棒133が嵌まり込むことにより副走査方向に変位して記録ヘッドユニット120に対する副走査方向のずれが補正される。また、可動テーブル156は、位置決め案内体131のV溝部132内に位置決め棒133が嵌まり込むとこと、または位置決め板141に位置決め棒143が押し付けられることにより主走査方向に変位して記録ヘッドユニット120に対する主走査方向のずれが補正される。さらに、可動テーブル156は、位置決め案内体131のV溝部132内に位置決め棒133が嵌まり込むとともに、位置決め板141に位置決め棒143が押し付けられることにより主走査方向および副走査方向を含む平面内にて回転して記録ヘッドユニット120に対する回転方向のずれが補正される。
【0038】
すなわち、位置決め案内体131が本発明に係る案内体に相当し、位置決め棒133が本発明に係る嵌合体に相当する。また、位置決め板141および位置決め棒143が本発明に係る一対の接触体に相当する。
【0039】
コントローラ170は、位置決め案内体131のV溝部132内に位置決め棒133が嵌まり込むとともに、位置決め板141に位置決め棒143が押し付けられる位置まで記録ヘッドユニット120を変位させた後(図5(A),(B)参照)、同記録ヘッドユニット120の変位を停止させる。これにより、記録ヘッドユニット120の記録ヘッド122a〜122hに対して可動テーブル156上に設けられたキャップ151a〜151hが位置決めされた状態となる(図5(A),(B)参照)。次に、コントローラ170は、記録ヘッドユニット120の図示しない昇降機構の作動を制御して同記録ヘッドユニット120をキャッピング機構150(キャップ151a〜151h)に向けて下降させる。これにより、記録ヘッド122a〜122hのノズル形成面123a〜123hがキャップ151a〜151hにより覆われてキャッピングが行われる。
【0040】
記録ヘッド122a〜122hのキャッピングが行われている間、ノズル形成面123a〜123hに形成されたノズルから流れ出たインクは、インク吸収体152に吸収された後、廃液孔153および廃液管155を介して廃液受け162に導かれる。
【0041】
そして、コントローラ170は、記録ヘッド122a〜122hのキャッピングを終了する際には、前記昇降機構の作動を制御して同記録ヘッドユニット120を上昇させる。これにより、キャップ151a〜151hから記録ヘッド122a〜122hのノズル形成面123a〜123hが離脱する。次に、コントローラ170は、Y軸方向スキャンモータ109の作動を制御することにより記録ヘッドユニット120を待機位置(キャッピング位置)から退避させる。これにより、可動テーブル156は、収縮スプリング159a,159bの引張り力によって弾性支持ピン158上を支持フレーム160の側壁161aの内側面に接触する位置まで記録ヘッドユニット120とともに変位する(図4(A),(B)参照)。これにより、記録ヘッド122a〜122hのキャッピング処理の一連の作動が完了する。
【0042】
また、画像形成装置100のメンテナンス時や故障による修理時においては、作業者は操作パネル112の操作を介して、または直接手で記録ヘッドユニット120を変位させることもできる。これらの場合においては、作業者は、手動操作により位置決め案内体131のV溝部132内に位置決め棒133が嵌まり込むとともに、位置決め板141に位置決め棒143が押し付けられる位置まで記録ヘッドユニット120を主走査方向(待機位置の方向)に変位させることにより、記録ヘッドユニット120の記録ヘッド122a〜122hに対してキャップ151a〜151hの位置を合わせることができる。
【0043】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、記録ヘッド122a〜122hにおけるノズル形成面123a〜123hを覆うキャップ151a〜151hを備えるキャッピング機構150は、記録ヘッド122a〜122hが相対変位する主走査方向および副走査方向にそれぞれ変位可能な状態でキャップ151a〜151hを支持している。また、記録ヘッド122a〜122hを備えた記録ヘッドユニット120およびキャップ151a〜151hを支持するキャッピング機構150は、記録ヘッド122a〜122hの接触によりキャップ151a〜151hを位置決めするための位置決め案内体131および位置決め棒133と、位置決め板141および位置決め棒143とをそれぞれ備えている。これらにより、記録ヘッド122a〜122hに対してキャップ151a〜151hを正確に位置決めすることができる。すなわち、キャッピング機構150を画像形成装置100に組み付ける際、キャップ151a〜151hの位置を厳密に位置決めして組み付ける必要がない。また、画像形成装置100のメンテナンスや修理時においても、作業者は、記録ヘッド122a〜122hのキャッピング位置に対するラフな位置決めによってキャッピングを行うことができる。これらの結果、画像形成装置100の組立性、およびメンテナンスや修理時の作業性を良好にすることができる。
【0044】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0045】
例えば、上記実施形態においては、キャップ151a〜151hを支持する可動テーブル156を主走査方向および副走査方向の2方向、すなわち、記録ヘッド122a〜122hに対向する面内にて互いに直交する2方向に変位するように構成した。しかし、可動テーブル156(キャップ151a〜151h)を変位させる方向は、前記2方向のうちの少なくとも1方向であれば、同一方向に対して上記実施形態における効果を享受することができる。この場合、位置決め案内体131と位置決め棒133、または位置決め板141と位置決め棒143のどちらか一方の組合せを用いることにより、前記一方向に可動テーブル156(キャップ151a〜151h)を変位させることができる。
【0046】
また、上記実施形態においては、2つの収縮スプリング159a,159bを用いて可動テーブル156に対して記録ヘッド122a〜122hが接近してくる方向とは反対方向に作用する力を付与するように構成した。これは、記録ヘッド122a〜122hの変位による位置決め案内体131と位置決め棒133との密着性、および位置決め板141と位置決め棒143との密着性を高めて可動テーブル156(キャップ151a〜151h)の位置決め精度を向上させるためである。したがって、可動テーブル156に対して必ずしも、記録ヘッド122a〜122hが接近してくる方向に対して反対方向に作用する力を付与する必要はない。
【0047】
例えば、可動テーブル156(キャップ151a〜151h)が単に主走査方向および/または副走査方向に変位可能な状態で支持されているだけでもよい。この場合、可動テーブル156(キャップ151a〜151h)は記録ヘッド122a〜122hのキャッピング位置に概ね位置決めして固定しておけばよい。そして、記録ヘッド122a〜122hのキャッピングの際には、下降させた記録ヘッド122a〜122hがキャップ151a〜151hに挿入されることにより同キャップ151a〜151hを介して可動テーブル156の位置が補正される。すなわち、記録ヘッド122a〜122hによって直接、キャップ151a〜151hの位置が補正するようにしてもよい。これらによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0048】
また、上記実施形態においては、位置決め案内体131と位置決め棒133、および位置決め板141と位置決め棒143を用いて可動テーブル156(キャップ151a〜151h)の位置決めを行った。しかし、記録ヘッド122a〜122hが接触することにより可動テーブル156(キャップ151a〜151h)を位置決めできる構成であれば、必ずしも、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、底板121aの側壁121cにおける副走査方向の中央部に位置決め案内体131(または位置決め棒133)を設けるとともに、可動テーブル156のステー156cにおける副走査方向の中央部(位置決め案内体131の取付位置に対応する位置)に位置決め棒133(または位置決め案内体131)を設けるようにしてもよい。これによれば、位置決め板141および位置決め棒143を用いることなく、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0049】
また、上記実施形態においては、可動テーブル156(キャップ151a〜151h)の主走査方向および副走査方向を含む平面内における回転方向のずれを補正するために、位置決め案内体131および位置決め棒133に加えて、位置決め板141および位置決め棒143を設けた。しかし、位置決め板141および位置決め棒143の各形状、大きさおよび各取付位置は、位置決め案内体131に位置決め棒133が嵌まり込んだ際の反力の大きさと同じ大きさの反力が生じる各形状、大きさおよび各取付位置であれば、上記実施形態に限定されることはない。これによれば、可動テーブル156(キャップ151a〜151h)の回転方向のずれを補正して上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0050】
また、上記実施形態においては、記録ヘッド122a〜122hのノズル形成面123a〜123hにキャッピングを行うキャップ機構150について説明した。しかし、キャップ機構150の中には、記録ヘッド122a〜122hのノズル形成面123a〜123hにキャップ151a〜151hを装着した後、ノズル形成面123a〜123hに対してインクを吸引して除去するクリーニング機構を備えたものもある。本発明は、このようなクリーニング機構を備えたキャップ機構150、またはクリーニング機構単体についても上記実施形態と同様に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の作動を制御する制御システムのブロック図である。
【図3】図1に示す画像形成装置が備える記録ヘッドユニットの構成を説明するための模式図であり、(A)は記録ヘッドユニットの主要部を示す平面図であり、(B)は記録ヘッドユニットの主要部を示す正面図である。
【図4】図1に示す画像形成装置が備えるキャッピング機構を説明するための模式図であり、(A)はキャッピング機構の主要部を示す平面図であり、(B)はキャッピング機構の主要部を示す一部破断正面図である。
【図5】記録ヘッドのキャッピング時における記録ヘッドユニットとキャッピング機構との位置関係を示す模式図であり、(A)は記録ヘッドユニットおよびキャッピング機構の主要部を示す平面図であり、(B)は記録ヘッドユニットおよびキャッピング機構の主要部を示す一部破断正面図である。
【符号の説明】
【0052】
WK…記録メディア、100…画像形成装置、101…プラテン、102…グリッドロール、104…ガイドレール、105…ピンチローラ、120…記録ヘッドユニット、121…ケーシング、121a…底板、122a〜122h…記録ヘッド、123a〜123h…ノズル形成面、131…位置決め案内体、132…V溝部、133,143…位置決め棒、141…位置決め板、142…接触面、150…キャッピング機構、151a〜151h…キャップ、152…インク吸収体、153…廃液孔、154a〜154h…キャップホルダ、156…可動テーブル、157…固定テーブル,157a〜157c…押さえ部、158…弾性支持ピン、159a,159b…収縮スプリング、160…支持フレーム、170…コントローラ、180…外部コンピュータ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録メディアに対向して配置されるとともに、同記録メディア上にインクを吐出するノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに対向する面内にて互いに直交する2方向に前記記録ヘッドを記録メディアに対して相対変位させる記録ヘッド相対変位手段と、
前記記録ヘッドにおける前記ノズルが形成されたノズル形成面をキャップにより覆うキャッピング機構とを備える画像形成装置において、
前記キャッピング機構は、
前記記録ヘッドの直接的または間接的な接触により、前記キャップを前記2方向のうちの少なくとも一方に変位可能に支持するキャップ支持手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載した画像形成装置において、
前記キャップ支持手段は、
前記記録ヘッドが接近する方向とは反対方向に作用する力を前記キャップに付与する付勢手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した画像形成装置において、
前記キャップ支持手段は、
前記記録ヘッドが直接的または間接的に接触することにより、前記キャップを前記2方向のうちの少なくとも一方に変位させて前記記録ヘッドに位置決めするキャップ位置決め手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載した画像形成装置において、
前記キャップ位置決め手段は、
前記記録ヘッドおよび前記キャップのうちの一方に直接的または間接的に設けられ、V字状に形成されたV溝部を有する案内体と、
前記記録ヘッドおよび前記キャップのうちの他方に直接的または間接的に設けられ、前記V溝部に嵌る嵌合体とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載した画像形成装置において、
前記キャップ位置決め手段は、さらに、
前記V溝部に前記嵌合体が勘合した際に作用する反力の大きさに等しい大きさの反力を生じさせる前記記録ヘッドおよび前記キャップの各位置に、一対の接触体をそれぞれ備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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