説明

画像形成装置

【課題】画像形成処理をしているときに駆動モータの加速駆動及び減速駆動の少なくとも何れか一方を行ってもバンディングを発生させることなく、良好に画像を形成することのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】ペーパーPを搬送する搬送系と、画像形成手段12とを備え、搬送系及び画像形成手段の少なくとも何れか一方が、駆動モータMと、駆動モータが直接的又は間接的に固定されるフレーム122とを備え、画像形成処理中に駆動モータが駆動される画像形成装置において、駆動モータには、ステッピングモータが採用され、駆動モータは、加速状態及び減速状態の少なくとも何れか一方の状態で駆動される際に所定のステップ方式で駆動され、ステップ方式による駆動で発生する振動の振動数がフレームの固有振動数と一致することになる駆動域では、所定のステップ方式とステップ角の異なるステップ方式で駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペーパーに対して画像形成処理を行う画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、枚葉状のペーパーに対して画像を形成する画像形成装置として、写真処理装置やインクジェットプリンタが知られており、これらは、ペーパーを搬送する搬送系と、ペーパーに対して画像形成処理を行う画像形成手段とを備えている。
【0003】
すなわち、写真処理装置は、ペーパー(感光材料)を搬送する搬送系と、該搬送系で搬送されるペーパーに対して露光処理(画像形成処理)を行う露光処理手段(画像形成手段)とを備え、ペーパーを搬送しつつ該ペーパーに露光処理を行うことで画像を形成するようになっている。これに対し、インクジェットプリンタは、ペーパーを搬送する搬送系と、ペーパーに対して描画(画像形成処理)を行うインクヘッド(画像形成手段)とを備え、搬送中のペーパーにインクヘッドからインク滴を吹き付けたり、或いは、一時停止中のペーパーに対してインクヘッドが移動しつつインク滴を吹き付けたりすることで画像を形成するようになっている。
【0004】
そして、この種の画像形成装置は、搬送系がペーパーの搬送方向に間隔をあけて配置された複数組のローラ対で構成されており、ペーパーを各ローラ対で圧着状態にして下流側に順々に搬送するようになっている。そして、画像形成手段は、隣接する二組のローラ対間を通過するペーパーに対して画像を形成することができるように設けられている。すなわち、この種の画像形成装置は、画像形成手段がペーパーに対して画像形成処理を行う画像形成領域を挟んでペーパーの搬送方向の上流側及び下流側に二組のローラ対を備えている。
【0005】
そして、この種の画像形成装置には、画像形成領域を挟んで設けられた二組のローラ対のそれぞれが、一方のローラに対して他方のローラが接離可能に構成されたものがある。かかる画像形成装置は、ローラ対が予め離間してペーパーの進入を許容した状態で待機し、ペーパーが進入した後に該ローラ対がペーパーを圧着するようになっており、画像形成処理中のペーパーがローラ対間に進入する際のペーパーとローラとの干渉で該ペーパーにバンディング(いわゆる、トーンジャンプ)が発生するのを防止できるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、上述のようなペーパーとローラ対との干渉以外にも、ペーパーにバンディングを発生させる原因となるものがある。すなわち、ローラを回転駆動する駆動モータの振動数と、駆動モータの固定されたフレームの固有振動数とが一致したときのフレームの共振によっても、ペーパーにバンディングが発生する。
【0007】
そのため、かかる画像形成装置は、一般的にローラを駆動する駆動モータをトップスピードで駆動し、駆動モータの振動数とフレームの固有振動数とを一致させないようにしてペーパーにバンディングが発生するのを防止するようにしている。
【特許文献1】特開2007−140054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記構成の画像形成装置のように、画像形成処理中のペーパーを搬送するローラ対が圧着とその解除を行うように構成されると、ローラ対の圧着とその解除を行うための駆動によってペーパーにバンディングを発生させてしまうことがある。
【0009】
具体的には、画像形成装置は、ペーパーの搬送状態に併せてローラ対の圧着とその解除を行うように構成されているため、ペーパーの搬送中(画像形成処理中)にローラ対の圧着及びその解除を行う駆動モータのON/OFFが切り換わる。
【0010】
そうすると、駆動モータの加速駆動又は減速駆動(ON/OFF)に伴って振動数が変化する(大きく又は小さくなる)ことになり、その振動数がフレームの固有振動数と一致する(通過する)ときにフレームに共振が発生してしまう。すなわち、画像形成処理を行っているときに、フレームに固定された駆動モータを加速駆動又は減速駆動することでフレームが共振してしまう。そのため、上記構成の画像形成装置は、フレームの共振によってペーパーにバンディングが発生し、プリントの品質を低下させるといった問題があった。
【0011】
また、インクジェットプリンタには、インクヘッドがインク滴を吐出しつつ移動(往復動)するタイプのものがあるが、かかるインクジェットプリンタは、インクヘッドを往復動(移動)させる駆動モータの加速駆動又は減速駆動に伴って、該駆動モータの振動数がフレームの固有振動数と一致する(通過する)ときにフレームに共振が発生してしまう。そのため、かかるインクジェットプリンタにおいても、フレームの共振によってペーパーにバンディングが発生し、品質を低下させるといった問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、斯かる実情に鑑み、ペーパーに対する画像形成処理中に駆動モータの加速駆動及び減速駆動の少なくとも何れか一方を行ってもペーパーにバンディングを発生させることなく、良好に画像を形成することのできる画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る画像形成装置は、ペーパーを搬送する搬送系と、ペーパーに対して画像形成処理を行う画像形成手段とを備え、搬送系及び画像形成手段の少なくとも何れか一方が、駆動モータと、該駆動モータが直接的又は間接的に固定されるフレームとを備え、ペーパーに対する画像形成処理中に駆動モータが加速状態及び減速状態の少なくとも何れか一方の状態で駆動される画像形成装置において、前記駆動モータには、ステッピングモータが採用され、該駆動モータは、加速状態及び減速状態の少なくとも何れか一方の状態で駆動される際に所定のステップ方式で駆動され、該ステップ方式による駆動で発生する振動の振動数がフレームの固有振動数と一致することになる駆動域では、所定のステップ方式とステップ角の異なるステップ方式で駆動されることを特徴とする。なお、ここで「駆動域」とは、駆動モータが加速状態又は減速状態で駆動する動作域の一部を意味し、駆動モータの振動数とフレームの固有振動数とが一致する点や、該一致する点を含む所定範囲の動作域を意味する。
【0014】
上記構成の画像形成装置によれば、前記駆動モータには、ステッピングモータが採用され、該駆動モータは、加速状態及び減速状態の少なくとも何れか一方の状態で駆動される際に所定のステップ方式で駆動され、該ステップ方式による駆動で発生する振動の振動数がフレームの固有振動数と一致することになる駆動域では、所定のステップ方式とステップ角の異なるステップ方式で駆動されるので、駆動モータが加速状態又は減速状態で駆動してもフレームの固有振動数と駆動モータの振動数とが一致するのを避けることができる。すなわち、駆動モータを駆動するためのステップ方式を所定のステップ方式(フレームの固有振動数と一致する振動を発生させるステップ方式)から別のステップ方式に変更することで、駆動モータの振動がフレームの固有振動と一致することのない振動パターンになる。これにより、フレームの共振の発生を抑えることができ、ペーパーにバンディングが発生するのを効率的に抑制することができる。
【0015】
本発明の一態様として、前記駆動域で駆動モータを駆動するステップ方式は、所定のステップ方式よりもステップ角が小さいステップ方式であることが好ましい。このようにすれば、ステップ方式の変更に伴って駆動モータの駆動が滑らかになり、不要な振動の発生を抑えることができる。
【0016】
前記搬送系は、画像形成手段がペーパーに対して画像形成処理を行う画像形成領域を挟んでペーパーの搬送方向の上流側及び下流側に配置された二組のローラ対を備えるとともに、前記駆動モータとして、ローラ対がペーパーを圧着する状態と、ローラ対間へのペーパーの進入を許容する状態とに切り換えるべく、ローラ対の少なくとも何れか一方のローラを他方のローラに対して接離させるための駆動モータを備えていることが好ましい。このようにすれば、画像形成処理中にローラ対の圧着とその解除とを切り換えるために駆動モータを駆動してもフレームの共振が発生することがなく、ペーパーにバンディングが発生するのを効率的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明に係る画像形成装置によれば、ペーパーに対する画像形成処理中に駆動モータの加速駆動及び減速駆動の少なくとも何れか一方を行ってもペーパーにバンディングを発生させることなく、良好に画像を形成することができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る画像形成装置について、添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下において、画像形成装置の一例として、感光材料に露光処理を施して画像を形成する写真処理装置について説明することとする。
【0019】
本実施形態に係る写真処理装置は、図1に示す如く、画像データを基に感光材料(ペーパー)Pに露光処理(画像形成処理)を施す露光処理部1と、露光処理部1で露光処理された感光材料Pに対して現像処理を施す現像処理部2と、現像処理後の感光材料Pを乾燥処理する乾燥処理部3と、乾燥処理された感光材料Pが写真プリントとして排出されるプリント排出部4とを備えている。
【0020】
そして、本実施形態に係る写真処理装置は、別体の制御装置6が電気的に接続され、該制御装置6によって全体の制御が行われるとともに、その制御装置6で読み取った画像データや編集した画像データを基に露光処理等を行うようになっている。ここで、制御装置6について概略説明すると、制御装置6は、各処理の処理状況や操作案内等を表示するモニター60と、該モニター60の表示に基づいて入力操作を行うための入力手段61と、露光処理部1で感光材料Pに露光処理を行うための画像データを読み取る読取手段62と、露光処理を行うに際し、各種処理や写真処理装置の実質的な制御を行う演算処理装置(図示しない)とを備えている。
【0021】
前記モニター60には、ブラウン管モニター或いは液晶モニターを採用することができ、本実施形態においてはブラウン管モニターが採用されている。そして、前記入力手段61には、キーボード61aとマウス61bとが採用されている。
【0022】
本実施形態に係る読取手段62には、写真フィルムFに形成された複数の駒画像を読み取るフィルムスキャナ62a、CD−R/RWやメモリカード等の各種メディアからデータ(例えば、画像データ)を読み込むメディアドライブ62bが採用されている。該読取手段62(フィルムスキャナ62a、メディアドライブ62b)は、演算処理装置に電気的に接続され、該演算処理装置に読み取った各画像データを伝送するようになっている。演算処理装置は、実質的な演算を行うCPU(図示せず)、該CPUに演算を実行させるためのソフトウェア等が記憶されるRAMやROM(図示せず)等から構成されており、I/Oインターフェース(図示せず)を介して、読取手段62の他に、モニター60や入力手段61が電気的に接続されている。
【0023】
前記露光処理部1は、ロール状にされた長尺な感光材料Pを収納するマガジン10と、該マガジン10から引き出された感光材料Pを所定の長さで切断する切断装置11と、該切断装置11で切断された感光材料Pを露光処理する露光ユニット(画像形成手段)12と、該露光処理部1内の各構成間で感光材料Pを搬送し、マガジン10から引き出された感光材料Pを露光ユニット12に搬送するための主搬送系13とを備えている。
【0024】
前記マガジン10は、ロール状にした感光材料Pを軸支可能に構成され、感光材料Pを長手方向に円滑に引き出せるようになっている。前記切断装置11は、マガジン10から引き出されて搬送経路上で搬送される感光材料Pを所定長さ(サイズ)に切断するようになっている。
【0025】
前記露光ユニット12は、主搬送系13によって搬送されてきた感光材料Pを受け取って下流側に搬送する搬送系(以下、ユニット搬送系という)120と、該ユニット搬送系120で搬送される感光材料Pに対して露光処理を行う露光処理手段(以下、露光エンジンという)121とを備えている。
【0026】
ユニット搬送系120は、図2に示す如く、感光材料Pを搬送するための機構を駆動する駆動モータMと、該駆動モータMが直接的又は間接的に固定されるフレーム122とを備えている。
【0027】
本実施形態に係るユニット搬送系120は、感光材料Pを搬送するための機構として、露光エンジン121による感光材料Pに対する露光領域(画像形成領域)Aを挟んで感光材料Pの搬送方向上流側及び下流側に配置された二組のローラ対123,124を備えている。各組のローラ対123,124は、一方のローラ123a,124aが他方のローラ123b,124bに対して接離可能に設けられており、感光材料Pに対する圧着とその解除との切り換えが可能になっている。本実施形態においては、一方のローラ123a,124aは、該ローラ123a,124aの軸線と平行又は略平行な軸周りで正逆回転可能なアーム123c,124cに取り付けられている。そして、アーム123c,124cは、バネ等の付勢手段(図示しない)によって他方のローラ123b,124b側に付勢されており、常態において一方のローラ123a,124aが他方のローラ123b,124bに当接した状態(感光材料Pを圧着できる状態)になるように構成されている。
【0028】
そして、本実施形態に係るユニット搬送系120は、前記駆動モータMとして、ローラ対123,124が感光材料Pを圧着する状態と、ローラ対123,124間への感光材料Pの進入を許容する状態とに切り換えるべく、一方のローラ123a,124aを他方のローラ123b,124bに対して接離させるための駆動モータ(以下、第一駆動モータという)を備えている。そして、第一駆動モータMは、カム機構Cを介して前記アーム123c,124cを回転させるようになっている。さらに、本実施形態に係るユニット搬送系120は、ローラ対123,124の少なくとも何れか一方のローラ123a,123b,124a,124b(本実施形態においては他方のローラ123b,124b)を回転駆動させる図示しない駆動モータ(以下、第二駆動モータという)を備えている。
【0029】
これにより、本実施形態に係るユニット搬送系120は、第一駆動モータMでアーム123c,124cを正逆回転させることで、一方のローラ123a,124aが他方のローラ123b,124bに対して接離できるようになっている。そして、本実施形態に係るユニット搬送系120は、上述の如く、第二駆動モータで他方のローラ123b,124bを回転駆動するように構成されており、一方のローラ123a,124aが他方のローラ123b,124bの回転駆動に追従するフリーローラとされている。
【0030】
ユニット搬送系120の基本構成は以上からなるが、本実施形態に係るユニット搬送系120は、上記基本構成に加え、二組のローラ対123,124の上流側に別のローラ対(以下、受取ローラ対という)125を備えている。該受取ローラ対125は、主搬送系13から送り込まれる感光材料Pを受け取って下流側(二組のローラ対123,124)に向けて送り出すためのもので、一方のローラ125aがフリーローラとされる一方で、他方のローラ125bが図示しない駆動モータ(以下、第三駆動モータという)で駆動される駆動ローラとされている。これにより、受取ローラ対125は、感光材料Pを圧着状態で搬送できるようになっている。
【0031】
本実施形態にユニット搬送系120は、当該機構(感光材料を搬送するための機構)を駆動するための駆動モータとして、上述の如く、第一駆動モータM、第二駆動モータ、及び第三駆動モータを備えており、これらは、何れもステッピングモータが採用されている。
【0032】
そして、第一駆動モータMは、所定のステップ方式で駆動され、該所定のステップ方式による駆動で発生する振動の振動数がフレーム122の固有振動数と一致することになる駆動域で、所定のステップ方式とステップ角の異なる別のステップ方式で駆動されるように構成されている。
【0033】
すなわち、本実施形態に係る写真処理装置は、感光材料Pの露光処理中に第一駆動モータMが加速状態及び減速状態で駆動されるもので、該第一駆動モータMを駆動させた際の振動数がフレーム122の固有振動数にならないように、ステップ方式を変更して第一駆動モータMを駆動するようになっている。
【0034】
そして、上述の如く、第一駆動モータMの振動数とフレーム122の固有振動数とが一致することになる状態(駆動域)であるか否かについての判断を行うために、比較の対象となるフレーム122の固有振動数は、一般的な解析によって算出され、設定値として予め設定され、第一駆動モータMの振動数は、入力パルス、回転数(加速度)等のパラメータを基にステップ方式の種類に対応した数値として予め算出され、設定値として予め設定されている。そして、駆動中の第一駆動モータMの状態(例えば、回転数)から現状における第一駆動モータMの振動数(所定のステップ方式による駆動に伴う振動数)が把握され、該ステップ方式で継続的に駆動を行ったときに該第一駆動モータMの振動数がフレーム122の固有振動数と一致することになる状態となるか否かが判断される。
【0035】
本実施形態に係る写真処理装置は、ステッピングモータ(第一駆動モータ)Mを駆動させるステップ方式として、フルステップ、ハーフステップ、及びマイクロステップが設定されている。フルステップ、ハーフステップ、及びマイクロステップは、ステップ角が異なり、ハーフステップは、フルステップよりもステップ角が小さく、マイクロステップはハーフステップよりもステップ角が小さく設定されている。すなわち、フルステップは、ステップ角が基本ステップ角度に設定され、該ステップ角によってステッピングモータを駆動する方式で、ハーフステップは、ステップ角が基本ステップ角の1/2の角度に設定され、該ステップ角によってステッピングモータを駆動する方式である。そして、マイクロステップは、ステップ角が基本ステップ角度の1/Nの角度に設定され、該ステップ角によってステッピングモータを駆動する方式である。なお、ここでマイクロステップのステップ角を決定するための係数Nは、第一駆動モータの各巻線に流す電流を電気的手法で分解したときの分解数である。
【0036】
そして、第一駆動モータMを所定の回転数にまで加速させる場合、第一駆動モータMは、ハーフステップで加速駆動され、該ハーフステップによる駆動で発生する振動の振動数がフレームの固有振動数と一致することになる駆動域では、ハーフステップとステップ角の異なるマイクロステップで駆動されるようになっている。すなわち、第一駆動モータMの加速がフレームの共振発生点に対応する駆動域(加速域)に到達する前にステップ方式がハーフステップからマイクロステップに変更され、前記駆動域において、第一駆動モータMをマイクロステップで駆動するようになっている。マイクロステップでの駆動は、少なくともハーフステップの駆動でフレームに共振が発生する条件下で行えばよいが、第一駆動モータMの加速中にフレームに共振が発生する条件となるのが一点的で短時間であるため、本実施形態において、第一駆動モータMとフレーム122の固有振動数とが一致する点を含む所定範囲の加速域をマイクロステップで駆動する駆動域として設定している。そして、本実施形態においては、前記駆動域を超えた加速域においては、所定回転数になるまでハーフステップで第一駆動モータMを駆動するようになっている。
【0037】
これに対し、第一駆動モータMを所定の回転数から停止状態にまで減速させる場合、上述した加速駆動とは逆の制御が行われる。すなわち、第一駆動モータMは、ハーフステップで減速駆動され、該ハーフステップによる駆動で発生する振動の振動数がフレームの固有振動数と一致することになる駆動域では、ハーフステップとステップ角の異なるマイクロステップで駆動されるようになっている。すなわち、第一駆動モータMの減速がフレームの共振発生点を含む駆動域に到達する前にステップ方式がハーフステップからマイクロステップに変更され、前記駆動域において、第一駆動モータMをマイクロステップで駆動するようになっている。この場合においても、マイクロステップでの駆動は、少なくともハーフステップの駆動でフレームに共振が発生する条件下で行えばよいが、第一駆動モータMの加速中にフレームに共振が発生する条件となるのが一点的で短時間であるため、本実施形態において、第一駆動モータMとフレーム122の固有振動数とが一致する点を含む所定範囲の減速域をマイクロステップで駆動する駆動域として設定している。そして、本実施形態においては、前記駆動域を超えた減速域においては、回転が停止するまでハーフステップで第一駆動モータMの駆動するようになっている
【0038】
このように本実施形態に係る写真処理装置は、ハーフステップによる駆動(加速駆動及び減速駆動)で発生する振動の振動数がフレームの固有振動数と一致することになる駆動域(加速域及び減速域)で、ハーフステップよりもステップ角が小さなマイクロステップで第一駆動モータMを駆動するよう構成されているため、フレーム122の共振を発生させることがない上に、マイクロステップ時の回転がハーフステップ時に比して滑らかになる。
【0039】
第二駆動モータ及び第三駆動モータは、所定のステップ方式(例えば、ハーフステップ)によりトップスピードで駆動され、他方のローラ123b,124bを一定回転数で駆動するようになっている。すなわち、第二駆動モータ及び第三駆動モータは、感光材料Pの露光処理中にフレーム122の固有振動数を超えた振動数となる状態を維持するように、一定の回転数で連続的に回転駆動するようになっている。
【0040】
前記露光エンジン121は、レーザー光源(図示しない)や、該レーザー光源からのレーザー光を前記露光領域Aにまで導く光学系(例えば、ポリゴンミラーやレンズ:図示しない)等を備えた、いわゆるレーザーエンジンが採用されている。なお、露光エンジン121は、ハロゲンランプ等からなる光源と、該光源に光ファイバー束を介して接続された光シャッター(PLZT)とで構成されたものであってもよい。
【0041】
そして、露光エンジン121は、ユニット搬送系120で搬送される感光材料Pに対して二組のローラ対123,124間にレーザー光を照射させるように設置されている。すなわち、本実施形態に係る写真処理装置は、ユニット搬送系120における二組のローラ対123,124間が感光材料Pに対する露光領域Aに設定されている。なお、本実施形態において、露光エンジン121(レーザー光源や光学系を内装したケーシング126)は、ユニット搬送系120のフレーム122に連結されている。そのため、フレーム122の固有振動数を算出するに際して露光エンジン121(ケーシング126)の固有振動数が考慮されている。
【0042】
図1に戻り、前記主搬送系13は、感光材料Pを圧着搬送する複数のローラ対130…と、感光材料Pを圧着(把持)可能に構成されるとともに搬送経路に沿って往復動可能に構成されたスライド体131との組合せで構成されている。すなわち、主搬送系13は、複数のローラ対130…を所定間隔あけて配置することで形成される搬送経路R1と、往復動するスライド体131によって形成される搬送経路R2とを構築している。本実施形態に係る主搬送系13は、複数のローラ対130…がマガジン10の下流側からスライド体131の移動領域の上流側の間に配置され、前記スライド体131が、その下流側(ローラ対130…の下流側)と露光ユニット12との間で略水平方向に往復動するようになっている。
【0043】
前記スライド体131は、上流側のローラ対130…から送られてくる感光材料Pを受け取って、該感光材料Pを下流側に送り出すように構成されている。すなわち、各スライド体131は、感光材料Pの先端部を圧着した状態で下流側に移動した後、該感光材料Pの把持した先端を先頭にして下流側に配設されたローラ対(受取ローラ対)125に向けて送り出すようになっている。
【0044】
本実施形態に係る写真処理装置は、露光処理部1から送り出される感光材料Pの送出位置と、現像処理部2が感光材料Pを受け入れる受入位置との高さ位置の違いの関係で、露光処理部1からの感光材料Pを現像処理部2に送り込むための送込ユニット5が露光処理部1と現像処理部2との間に設けられている。
【0045】
ここで送込ユニット5について説明すると、送込ユニット5は、図3に示す如く、露光処理部1からの感光材料Pを受け取って搬送経路に対する感光材料Pの表裏を逆転させるためのリバース装置50と、リバース装置50で表裏逆転された感光材料Pを下流側に搬送するための複数のローラ対51…と、複数のローラ対51…で搬送される感光材料Pを案内するガイド体52a,52bとを備えている。
【0046】
前記リバース装置50は、ローラ対500と、該ローラ対51…の一端側を軸支する支持部材501と、該支持部材501をローラ対500(ローラ)の軸線と平行な軸周りで回転させる回転機構502とを備えている。これにより、該リバース装置50は、露光処理部1から略水平方向で送り出されてくる感光材料Pをローラ対500で圧着保持し、その状態で支持部材501を回転させることで、感光材料Pの表裏を搬送経路に対して反転させた上で感光材料Pを上方に向けて送り出せる状態になるように構成されている。なお、感光材料Pの表裏の反転は、下流側にある現像処理部2で感光材料Pの乳剤面(露光面)を現像処理液に効率的に付着させるために行われる。
【0047】
本実施形態に係る写真処理装置は、前記リバース装置50が複数(二つ)設けられている。そして、二つのリバース装置50は、露光処理部1からの感光材料Pの搬送方向と直交する方向(左右)に変位(スライド)可能に設けられている。これにより、露光処理部1から一系統の搬送経路で搬送されてくる感光材料Pを二系統の搬送経路に振り分けて下流側に送り出せるようになっている。
【0048】
そして、前記複数のローラ対51…は、リバース装置50から上方に向けた直線状の搬送経路Raと、該搬送経路Raに連続する円弧状の搬送経路Rbとを形成するように配置されている。前記ガイド体52a,52bは、直線状の搬送経路Ra及び円弧状の搬送経路Rbから感光材料Pが離脱することのないように、複数のローラ対51…間に配置されている。
【0049】
該ガイド体52a,52bは、間隔をあけて対向配置された一対の板材で構成されており、一方の板材52aが感光材料Pの一方の面(表裏何れか一方)を案内し、他方の板材52bが感光材料Pの他方の面(表裏何れか他方)を案内するように構成される。最上流のガイド体52a,52bは、リバース装置50から送り出される感光材料Pの受け入れが円滑になるように、最上流側(リバース装置50側)の端部は、リバース装置50側に向けて間隔が拡大するように互いに離間している。また、最下流のガイド体52a,52bは、円弧状の搬送経路Rbを通過した感光材料Pを略水平方向に送り出すように配置されている。
【0050】
図1に戻り、前記現像処理部2は、露光処理された感光材料Pを現像するためのもので、現像処理液が貯留される現像処理液槽20と、該現像処理液槽20内の現像処理液に対して感光材料Pを浸漬して引き上げる動作を繰り返すように、感光材料Pを搬送する現像処理部搬送系21とを備えている。
【0051】
前記現像処理液槽20は、複数の液槽200…が横並びに配置されることで構成されている。各液槽200…には、感光材料Pに対して現像処理、漂白処理、定着処理、安定処理を行うための現像処理液が貯留されている。すなわち、各液槽200…には、上流側から順に現像液(CD)、漂白・定着液(BF)、安定液(STB)、洗浄液が貯留されている。前記現像処理部搬送系21は、現像処理液槽20(各液槽200)の現像処理液(現像液、漂白・定着液、安定液、洗浄液)中で感光材料Pを搬送する液中搬送系210と、各液槽200…から引き上げられた感光材料Pを下流側で隣接する液槽内に導きつつ搬送する外部搬送系211とで構成されており、各搬送系210,211のそれぞれは、複数のローラ対(採番しない)により構成されている。
【0052】
前記乾燥処理部3は、現像処理部2から送り込まれる感光材料Pを搬送する乾燥処理部搬送系30と、該乾燥処理部搬送系30で搬送される感光材料Pを乾燥させる乾燥装置31とを備えている。
【0053】
前記乾燥処理部搬送系30は、感光材料Pの搬送方向に間隔をあけて配置された複数組のローラ対(採番しない)で構成されており、感光材料Pに対する乾燥処理に必要な時間を担保するように、搬送距離や搬送時間が設定されている。
【0054】
前記乾燥装置31は、感光材料Pを乾燥させるための熱風を発生させる熱風発生機(図示しない)と、熱風を吹き出すための吹出口が形成されたノズル体310と、熱風発生機とノズル体とを流体的に接続するダクト(図示しない)とを備えている。そして、該乾燥装置31は、前記ノズル体310が乾燥処理部搬送系30によって形成された搬送経路に吹出口を対向させるようにして配置されている。これにより、搬送中の感光材料Pに熱風を吹き付けて乾燥処理できるようになっている。
【0055】
前記プリント排出部4は、写真プリントを搬送するコンベア40を備えており、乾燥処理部3から送り出された感光材料Pをコンベア40で搬送するようになっている。
【0056】
本実施形態に係る写真処理装置は、以上の構成からなり、次に、該写真処理装置の作動について説明する。
【0057】
まず、収容された感光材料Pがマガジン10から引き出され、切断装置11によって枚葉状に切断される。そして、スライド体131が枚葉状になった感光材料Pを把持した状態で水平方向に向けて移動し、該感光材料Pが露光ユニット12に送り込まれる。
【0058】
このとき、露光ユニット12は、ローラ対123,124の一方のローラ123a,124aが他方のローラ123b,124bから離間した状態で他方のローラ123b,124bが回転駆動するとともに、受取ローラ対125の他方のローラ125bが回転駆動して待機している。そのため、スライド体131によって送り込まれた感光材料Pは、受取ローラ対125で圧着搬送されつつ先頭が上流側のローラ対123間に挿入された状態となる。そして、感光材料Pが上流側のローラ対123間に挿入されると、一方のローラ123aが他方のローラ123bに接近して感光材料Pを圧着する。このとき、上流側のローラ対123を駆動する第一駆動モータMは、加速乃至減速することになる。すなわち、アーム123cを一定量回転させて一方のローラ123aを他方のローラ124bに接近させ、両ローラ123a,123bで感光材料Pを圧着するに当り、第一駆動モータMは、始動時から加速し、所定の回転数に到達すると減速して停止する。
【0059】
このように第一駆動モータMを所定の回転数にまで加速させる場合、第一駆動モータMは、ハーフステップで加速駆動され、該ハーフステップによる駆動で発生する振動の振動数がフレームの固有振動数と一致することになる駆動域では、マイクロステップで駆動される。このようにハーフステップからマイクロステップに変更するに当り、第一駆動モータMの加速状態を維持しつつステップ方式が変更される。すなわち、マイクロステップのステップ角がハーフステップのステップ角よりも小さくなるため、加速状態を維持すべく、ステップ角に対応して(変更前のステップ角と変更後のステップ角との比に対応して)第一駆動モータMに入力される単位時間当りのパルス数が増加される。
【0060】
このようにステップ方式を変更することで、第一駆動モータMの振動数がフレーム122の固有振動数と一致することがなく、フレーム122が共振することが抑制される。すなわち、第一駆動モータMの振動数は、ステップ方式(ステップ角)及び単位時間当りの入力パルス数と対応しているため、所定のステップ方式で第一駆動モータMを駆動し続けた場合に該第一駆動モータMの振動数とフレーム122の固有振動数とが一致することになる駆動域で所定のステップ方式とステップ角の異なるステップ方式で駆動することで振動パターンが変更されることになる。このようにステップ方式を変更することで、第一駆動モータMの振動数とフレーム122の固有振動数とが一致することがないため、フレーム122に共振が発生することが防止される。
【0061】
そして、マイクロステップで駆動される第一駆動モータMの加速が前記駆動域を超えると、第一駆動モータMはハーフステップで駆動される。このようにマイクロステップからハーフステップに変更されたとき、ハーフステップのステップ角がマイクロステップのステップ角よりも大きくなるため、加速状態を維持すべく、ステップ角に対応して(変更前のステップ角と変更後のステップ角との比に対応して)第一駆動モータMに入力される単位時間当りのパルス数が減少される。
【0062】
そして、第一駆動モータMは、設定回転数になるまでハーフステップで駆動され、設定回転数になると減速駆動される。この際においても、ハーフステップによる駆動で第一駆動モータMの振動数がフレーム122の固有振動数と一致する点を通過することになるため、かかる通過点(フレームの共振発生点)を含む駆動域で第一駆動モータMは、マイクロステップで駆動される。これに併せ、減速状態を維持すべく、ステップ角に対応して(変更前のステップ角と変更後のステップ角との比に対応して)第一駆動モータMに入力される単位時間当りのパルス数が増加される。そして、前記駆動域を超えると、第一駆動モータMは、回転数が0になる(OFF状態になる)までハーフステップで駆動される。このとき、減速状態を維持すべく、ステップ角に対応して(変更前のステップ角と変更後のステップ角との比に対応して)第一駆動モータMに入力される単位時間当りのパルス数が減少される。このようにすることで、第一駆動モータMの減速駆動時においても第一駆動モータMの振動とフレーム122の固有振動数とが一致することがないため、フレーム122の共振が防止される。
【0063】
そして、第一駆動モータMが停止した状態(OFFになった状態)で、一方のローラ123aが感光材料Pに圧接し、該感光材料Pが両ローラ123a,123bに圧着された状態になる。このとき、既に他方のローラ123bは、一定回転数で回転しているため、当該上流側のローラ対123に圧着された感光材料Pは、露光領域Aに向けて搬送され、先頭側から順に露光領域Aを通過するに伴って露光エンジン121からのレーザー光によって露光されることになる。
【0064】
そして、かかる露光中の感光材料Pは、下流側のローラ対124に向けて搬送されることになるが、下流側のローラ対124は、一方のローラ123a,124aが他方のローラ123b,124bから離間した状態で他方のローラ123b,124bが回転駆動して待機しているため、搬送されてきた感光材料Pは、上流側のローラ対123で圧着搬送されつつ先頭が下流側のローラ対123に対して干渉することなく円滑に挿入される。
【0065】
そして、感光材料Pが下流側のローラ対124間に挿入されると、一方のローラ124aが他方のローラ124bに接近して感光材料Pを圧着する。このとき、下流側のローラ対124を駆動する第一駆動モータMは、加速乃至減速することになる。すなわち、アーム124cを一定量回転させて一方のローラ124aを他方のローラ124bに接近させ、両ローラ124a,124bで感光材料Pを圧着するに当り、第一駆動モータMは、始動時から加速し、一定の回転数に到達すると減速して停止する。かかる下流側のローラ対124用の第一駆動モータMにおいても、上述の如く、上流側のローラ対123用の第一駆動モータMが感光材料Pを圧着するときと同様に制御される。従って、フレーム122の共振による感光材料Pに対する露光ブレの発生が防止され、感光材料Pに対するバンディングの発生が抑制されることになる。
【0066】
そして、二組のローラ対123,124は、感光材料Pの後端が通過した後に、順次一方のローラ123a,124aが他方のローラ123b,124bから離間し、後続の感光材料Pの進入を許容した状態で待機することになる。このように上流側のローラ対123の一方のローラ123aが他方のローラ123bから離間する際、下流側のローラ対124が露光処理中の感光材料Pを搬送した状態となるため、上流側のローラ対123用の第一駆動モータMは、圧着を解除する際においても、圧着する際と同様に、第一駆動モータMに対するステップ方式が変更される。
【0067】
すなわち、ローラ対123の圧着を解除する場合においても、第一駆動モータMは、感光材料Pを圧着する場合と同様に回転駆動するため、ハーフステップによる駆動で発生する振動の振動数がフレームの固有振動数と一致することになる駆動域では、マイクロステップで駆動される。これに伴い、第一駆動モータMの駆動状態を維持すべく、ステップ角に対応して(変更前のステップ角と変更後のステップ角との比に対応して)第一駆動モータMに入力される単位時間当りのパルス数が増減される。このようにステップ方式を変更することで、第一駆動モータMの振動数とフレーム122の固有振動数とが一致することがないため、フレーム122に共振が発生することが防止される。従って、フレーム122の共振による感光材料Pに対する露光ブレの発生が防止され、感光材料Pに対するバンディングの発生が抑制されることになる。
【0068】
そして、上述の如く、ローラ対123の圧着を解除する場合、第一駆動モータMの振動数とフレームの固有振動数とが一致する駆動域以外の駆動域(加速域及び減速域)においては、第一駆動モータMはハーフステップで駆動される。また、第一駆動モータの駆動状態を一定に維持すべく、ハーフステップに対応するように、第一駆動モータMに入力される単位時間当りのパルス数が増減される。なお、説明を省略するが、本実施形態においては、下流側のローラ対124用の第一駆動モータMについても同様の制御が行われる。
【0069】
そして、露光ユニット12から送り出された感光材料Pは、送込ユニット5を介して下流側の現像処理部2に送り込まれる。現像処理部2に送り込まれた感光材料Pは、現像処理液槽20(複数の液槽200…)の現像処理液に対して浸漬と引き上げとを繰り返すように現像処理部搬送系21(液中搬送系210及び外部搬送系211)によって搬送されて現像処理が行われる。そして、現像処理された感光材料Pは、乾燥処理部3に送り込まれ、乾燥処理された後にプリント排出部4(コンベア40)に排出されることになる。
【0070】
以上のように、本実施形態に係る写真処理装置によれば、感光材料Pを搬送する搬送系(ユニット搬送系)120と、該搬送系120で搬送される感光材料Pに対して露光処理を行う露光処理手段(露光エンジン)121とを備え、前記搬送系120は、駆動モータ(第一駆動モータ)Mと、該駆動モータMが直接的又は間接的に固定されるフレーム122とを備え、感光材料Pに対する露光処理中に前記駆動モータMが加速駆動及び減速駆動する駆動状態を有し、前記駆動モータMは、加速状態及び減速状態で駆動される際に所定のステップ方式(ハーフステップ)で駆動され、該ステップ方式(ハーフステップ)による駆動で発生する振動の振動数がフレーム122の固有振動数と一致することになる駆動域では、所定のステップ方式(ハーフステップ)とステップ角の異なるステップ方式(マイクロステップ)で駆動されるので、駆動モータMが加速駆動又は減速駆動してもフレーム122の固有振動数と駆動モータMの振動数とが一致するのを避けることができる。
【0071】
すなわち、駆動モータMのステップ方式を当初のステップ方式(フレームの固有振動数と一致する振動を発生させるステップ方式)から別のステップ方式に変更することで、駆動モータMの振動がフレーム122の固有振動と一致することのない振動パターンになる。これにより、フレーム122の共振の発生を抑えることができ、搬送系120で搬送されつつ露光処理手段121に露光処理される感光材料Pにバンディングが発生するのを効率的に抑制することができる。
【0072】
そして、前記駆動域で駆動モータMを駆動するステップ方式は、所定のステップ方式よりもステップ角が小さいステップ方式であるため、駆動モータMの駆動が滑らかになり、不要な振動の発生を抑えることができる。
【0073】
特に、前記搬送系120は、露光処理手段121による感光材料Pに対する露光領域Aを挟んで感光材料Pの搬送方向の上流側及び下流側に配置された二組のローラ対123,124を備えるとともに、前記駆動モータMとして、ローラ対123、124が感光材料Pを圧着する状態と、ローラ対123,124間への感光材料Pの進入を許容する状態とに切り換えるべく、ローラ対123,124の少なくとも何れか一方のローラ123a,124aを他方のローラ123b,124bに対して接離させるための駆動モータMを備えているので、露光処理中にローラ対123,124の圧着とその解除とを切り換えるために駆動モータMを駆動してもフレーム122の共振が発生することがなく、感光材料Pにバンディングが発生するのを効率的に抑制することができる。
【0074】
尚、本発明の写真処理装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0075】
上記実施形態において、ユニット搬送系120の駆動モータとして、第一駆動モータM、第二駆動モータ、及び第三駆動モータを設け、そのうちの第一駆動モータMに対するステップ方式を変更するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、ローラ123b,124b,125bの回転数(感光材料Pの搬送速度)を変更するようにした場合、第一駆動モータMに加えて第二駆動モータ及び第三駆動モータについてもフレーム122の共振域と対応する駆動域において、別のステップ方式で駆動するようにしてもよい。
【0076】
上記実施形態において、ローラ対123,124の圧着とその解除を行う第一駆動モータM、すなわち、一連の動作で加速駆動及び減速駆動する駆動モータMを対象に、フレーム122の共振域と対応する駆動域において、別のステップ方式で駆動するようにしたが、これに限定されるものではなく、感光材料Pの露光処理中に加速駆動した後、一定の回転数で回転駆動する駆動モータや、一定の回転数で回転駆動した状態から感光材料Pの露光処理中に減速駆動する駆動モータを対象に、フレーム122の共振域と対応する駆動域において、別のステップ方式で駆動するようにしてもよい。すなわち、感光材料Pを露光処理している間に加速駆動及び減速駆動の少なくとも何れか一方の駆動状態になる駆動モータMを対象に、フレーム122の共振域と対応する駆動域において、別のステップ方式で駆動するようにしてもよい。
【0077】
そして、上記実施形態において、露光ユニット12のフレーム122の固有振動数を対象に、第一駆動モータMのステップ方式を変更するようにしたが、フレーム122は露光ユニット12のみを構築するものに限定されるものではなく、搬送系120を構成する駆動モータMが直接的又は間接的に固定されるフレーム122の固有振動数を対象とすればよい。すなわち、露光ユニット12のフレーム122が主搬送系13等のフレームに連結されている場合には、該主搬送系13等のフレームも露光ユニット12のフレーム122の一構成として取り扱い、そのフレーム122の固有振動数を対象に変更するステップ方式やステップ方式の変更のタイミングを設定すればよい。
【0078】
上記実施形態において、フレーム122の固有振動数を含む振動域に対し、それ以外の振動域でのステップ方式よりもステップ角の小さなステップ方式で第一駆動モータMを駆動するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、フレーム122の固有振動数を含む振動域に対し、それ以外の振動域でのステップ方式よりもステップ角の大きなステップ方式で第一駆動モータMを駆動するようにしてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、第一駆動モータMのステップ方式を、ハーフステップからマイクロステップに変更し、さらにマイクロステップからハーフステップに変更するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、マイクロステップからハーフステップ又はフルステップに変更し、さらに、ハーフステップ又はフルステップからマイクロステップに変更するようにしてもよい。また、フルステップからハーフステップ又はマイクロステップに変更し、ハーフステップ又はマイクロステップからフルステップに変更するようにしてもよい。
【0080】
すなわち、駆動モータMは、加速状態及び減速状態の少なくとも何れか一方の状態で駆動される際に所定のステップ方式で駆動され、該ステップ方式による駆動で発生する振動の振動数がフレームの固有振動数と一致することになる駆動域では、所定のステップ方式とステップ角の異なるステップ方式で駆動されればよい。この場合においても、第一駆動モータMの加速状態又は減速状態を維持すべく、ステップ方式(ステップ角)の変更に応じて駆動モータMに対する入力パルス数(単位時間当りのパルス数)を増減させることは勿論である。
【0081】
また、上記実施形態において、駆動モータMを駆動するステップ方式として、一般的なフルステップ、ハーフステップ、マイクロステップを設定したが、これに限定されるものではなく、例えば、ステップ角の異なるマイクロステップを二つ以上設定してもよい。すなわち、マイクロステップは、電機的手法によってコイルに対する電流を分割した数に対応するステップ角を設定できるため、任意のステップ角を設定した二つ以上のマイクロステップを設定し、駆動モータMが加速状態及び減速状態の少なくとも何れか一方の状態で駆動される際に所定のマイクロステップで駆動され、マイクロステップによる駆動で発生する振動の振動数がフレームの固有振動数と一致することになる駆動域では、所定のマイクロステップとステップ角の異なる別のマイクロステップで駆動するようにしてもよい。
【0082】
上記実施形態において、現像処理部2、及び乾燥処理部3を備えた写真処理装について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、露光処理部1のみで構成された写真処理装置であってもよい。また、別体で設けられた制御装置6で制御される写真処理装置について説明したが、これに限定されるものではなく、制御装置6が一体的に組み込まれた写真処置装置であっても勿論よい。
【0083】
上記実施形態において、画像形成装置の一例として写真処理装置について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、ペーパーを搬送する搬送系と、ペーパーに対して描画(画像形成処理)を行うインクヘッド(画像形成手段)とを備え、搬送系で搬送されるペーパーに対してインクヘッドからインク滴を吹き付けるようにしたものや、搬送系で間欠搬送されるペーパーに対し、一時停止中にインクヘッドを往復動させてインク滴を吹き付けるようにしたものであってもよい。この場合も、画像形成領域の上流側及び下流側に配置されたローラ対が圧着又はその解除を行えることが好ましい。すなわち、ペーパーに対する画像形成処理の方法に関係なく、ペーパーに対して画像形成処理中に駆動モータが加速状態及び減速状態の少なくとも何れか一方の状態で駆動される画像形成装置であればよい。
【0084】
また、上記実施形態において、搬送系の駆動モータを対象にステップ方式を変更するようにしたが、これに限定されるものではなく、搬送系の駆動モータに限定されるものではなく、例えば、上述の如く、インクヘッドを往復動させつつインク滴をペーパーに吹き付けるように構成されたインクジェット等の場合には、インクヘッドを動作させる駆動モータのステップ方式を変更するようにすればよい。すなわち、ペーパーに対する画像形成処理中に加速状態及び減速状態の少なくとも何れか一方の状態で駆動される駆動モータを対象にステップ方式を変更するようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施形態に係る写真処理装置及び制御装置の概略図を示す。
【図2】同実施形態に係る露光ユニットの搬送系(ユニット搬送系)の概略説明図を示す。
【図3】同実施形態に係る写真処理装置のユニット搬送系及び現像処理部搬送系の一部を含んだ送込ユニットの概略構成図を示す。
【符号の説明】
【0086】
1…露光処理部、2…現像処理部、3…乾燥処理部、4…プリント排出部、5…送込ユニット、6…制御装置、10…マガジン、11…切断装置、12…露光ユニット(画像形成手段)、13…主搬送系、20…現像処理液槽、21…現像処理部搬送系、30…乾燥処理部搬送系、31…乾燥装置、40…コンベア、50…リバース装置、51…ローラ対、52a,52b…ガイド体、60…モニター、61…入力手段、61a…キーボード、61b…マウス、62…読取手段、62a…フィルムスキャナ、62b…メディアドライブ、120…ユニット搬送系(搬送系)、121…露光エンジン(露光処理手段)、122…フレーム、123,124…ローラ対、123a,123b,124a,124b…ローラ、123c,124c…アーム、125…受取ローラ対、125a,125b…ローラ、126…ケーシング、130…ローラ対、131…スライド体、200…液槽、210…液中搬送系、211…外部搬送系、310…ノズル体、500…ローラ対、501…支持部材、502…回転機構、A…露光領域(画像形成領域)、F…写真フィルム、M…第一駆動モータ(駆動モータ)、P…感光材料(ペーパー)、R1,R2,Ra,Rb…搬送経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペーパーを搬送する搬送系と、ペーパーに対して画像形成処理を行う画像形成手段とを備え、搬送系及び画像形成手段の少なくとも何れか一方が、駆動モータと、該駆動モータが直接的又は間接的に固定されるフレームとを備え、ペーパーに対する画像形成処理中に駆動モータが加速状態及び減速状態の少なくとも何れか一方の状態で駆動される画像形成装置において、前記駆動モータには、ステッピングモータが採用され、該駆動モータは、加速状態及び減速状態の少なくとも何れか一方の状態で駆動される際に所定のステップ方式で駆動され、該ステップ方式による駆動で発生する振動の振動数がフレームの固有振動数と一致することになる駆動域では、所定のステップ方式とステップ角の異なるステップ方式で駆動されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記駆動域で駆動モータを駆動するステップ方式は、所定のステップ方式よりもステップ角が小さいステップ方式である請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記搬送系は、画像形成手段がペーパーに対して画像形成処理を行う画像形成領域を挟んでペーパーの搬送方向の上流側及び下流側に配置された二組のローラ対を備えるとともに、前記駆動モータとして、ローラ対がペーパーを圧着する状態と、ローラ対間へのペーパーの進入を許容する状態とに切り換えるべく、ローラ対の少なくとも何れか一方のローラを他方のローラに対して接離させるための駆動モータを備えている請求項1又は2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−58902(P2010−58902A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226078(P2008−226078)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】