説明

画像形成装置

【課題】像担持体から分離されない記録材が像担持体の慣性力による回転によって移動しないようにする。
【解決手段】像担持体1に対して進退移動する移動部材145と、前記像担持体から分離されない記録材を光学的に検知する検知部材15と、を転写部材5の像担持体回転方向下流側に有し、前記検知部材で記録材を検知したとき前記移動部材の移動により前記像担持体に記録材を押さえ付けることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、電子写真プリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真式の複写機やプリンタ等の画像形成装置は、画像形成部で感光ドラムに形成したトナー像を転写材(記録材)に転写するとともに、この転写材を静電的に吸着し感光ドラムから分離するための転写ベルト装置を有している。
【0003】
転写ベルト装置は、中抵抗領域のゴムや樹脂で形成された無端の転写ベルトを有している。この転写ベルトは複数のローラにより回転可能に支持され感光ドラムと接触して転写部を形成している。この転写ベルトの内側には感光ドラムが担持するトナー像を転写材に転写する回転自在な転写ローラが配置されている。この転写ローラには転写バイアス電源から転写バイアスが印加され、これによって感光ドラムが担持するトナー像は転写材に転写され、このトナー像の転写と同時に転写材は転写ベルトに吸着される。転写ローラに印加される転写バイアスは、画像形成装置内の温湿度環境、紙(転写材)の坪量等に対応して作成され、転写バイアステーブルとして画像形成装置内に記憶されている。そしてこの転写バイアスは、紙の坪量等の指定と画像形成装置内の温湿度環境の検知結果から転写バイアステーブルに基づき設定される。転写ベルトに吸着された転写材は、転写部の転写材搬送方向下流の転写材と転写ベルトとの分離部まで搬送され、分離部の転写ベルト懸架ローラの曲率により転写ベルトから剥離される。
【0004】
転写材として剛性の小さい所謂こしのない転写材を使用する時、転写部において転写材と転写ベルトとの間に転写バイアスに起因する異常放電が発生することがある。異常放電が発生すると、転写材が転写ベルトに吸着されず、分離部の転写ベルト懸架ローラの曲率でも転写材が転写ベルトから分離されずに感光ドラムに吸着する問題いわゆる転写材の感光ドラムからの分離不良が発生する。
【0005】
転写材の感光ドラムからの分離不良は、コロナ帯電方式による転写装置や、転写ローラ方式による転写装置においても発生する。転写ベルト装置では、転写ベルトで転写材を担持し搬送するため、コロナ帯電方式の分離除電帯電器や転写ローラ方式のバイアス印加除電針のような、転写材を除電する手段を配置できない。
【0006】
感光ドラムに軽圧に当接させた分離爪により感光ドラムから転写材を剥離するように構成してもよいが、転写材が分離爪に突き当たったり、感光ドラムと分離爪との間の分離部からを転写材がすり抜けることがあった。転写材が分離爪に突き当たった場合には、転写材がジャムし感光ドラムを損傷させることがある。分離部から転写材がすり抜けた場合には、分離部の感光ドラム回転方向下流で感光ドラムに当接させたクリーニング部材に転写材が巻き込まれてジャムし感光ドラムを損傷させることがある。分離爪を強く感光ドラムに当接させた場合、転写材の分離部からのすり抜けは防止できるが、転写材が分離爪に突き当たりジャムする頻度が増えこれに伴い感光ドラムの損傷頻度も増加する。
【0007】
特許文献1には、転写部で像担持体からの転写材の分離不良が発生した場合でも、転写材がクリーニング部材に巻き込まれることがないように、転写材の像担持体からの分離不良を検知して、像担持体の駆動をするようにした画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−313769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、画像形成装置では、画像形成処理能力のアップを図るために、感光ドラム及び中間ベルトは高速に駆動される。このような画像形成装置において、転写材の感光ドラムからの分離不良を検知してから感光ドラム及び中間ベルトの回転駆動を行う駆動源の駆動を停止しても感光ドラムが慣性力により回転し、これによって転写材がクリーニング部材に巻き込まれてしまう。
【0010】
本発明の目的は、像担持体から分離されない記録材が像担持体の慣性力による回転によって移動しないようにした画像形成装置を提供することにある。また本発明の目的は、トナー像担持部材から分離されない記録材がトナー像担持部材の慣性力による回転によって移動しないようにした画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る画像形成装置の構成は、回転可能な像担持体と、前記像担持体に対して移動し前記像担持体とともに記録材を挟持搬送する記録材搬送部材と、前記像担持体が担持するトナー像を記録材に転写する転写部材と、を有する画像形成装置において、前記像担持体に対して進退移動する移動部材と、前記像担持体から分離されない記録材を光学的に検知する検知部材と、を前記転写部材の像担持体回転方向下流側に有し、前記検知部材で記録材を検知したとき前記移動部材の移動により前記像担持体に記録材を押さえ付けることを特徴とする。また上記目的を達成するための本発明に係る画像形成装置の構成は、トナー像を担持し回転するトナー像担持部材と、前記トナー像担持部材とともに記録材を挟持搬送するとともに前記像担持体が担持するトナー像を記録材に転写する転写搬送部材と、を有する画像形成装置において、前記トナー像担持部材に対して進退移動する移動部材と、前記トナー像担持部材から分離されない記録材を光学的に検知する検知部材と、を前記転写部材のトナー像担持部材回転方向下流側に有し、前記検知部材で記録材を検知したとき前記移動部材の移動により前記トナー像担持部材に記録材を押さえ付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、像担持体から分離されない記録材が像担持体の慣性力による回転によって移動しないようにした画像形成装置を提供するができる。また本発明によれば、トナー像担持部材から分離されない記録材がトナー像担持部材の慣性力による回転によって移動しないようにした画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1に係る画像形成装置の一例の概略構成模式図である。
【図2】実施例1に係る画像形成装置のせき止め装置の説明図であって、(a)はせき止め装置の非駆動時の状態を表わす横断面図、(b)はせき止め装置の非駆動時の状態を上方から見た横断面図、(c)はせき止め装置の駆動時の状態を表わす横断面図である。
【図3】(a)は実施例1に係る画像形成装置の制御部と、感光ドラム駆動装置と、せき止め装置と、分離センサーの関係を表わすブロック図である。(b)は分離センサーの説明図である。
【図4】(a)は実施例1に係る画像形成装置の画像形成制御シーケンスにおける分離センサーの転写材検知手順とせき止め装置の駆動手順を表わすフローチャートである。(b)はフォトダイオードが受光した感光ドラム表面からの反射光、転写材からの反射光(乱反射光)、感光ドラム表面の転写残トナーからの反射光のそれぞれのセンサー出力を表わす図である。
【図5】実施例1に係る画像形成装置の感光ドラム、せき止め装置及び分離センサーの動作を表わすタイミングチャートである。
【図6】実施例1に係る画像形成装置のせき止め装置による転写材のせき止め状態を表わす説明図である。
【図7】実施例2に係る画像形成装置の一例の概略構成模式図である。
【図8】実施例1に係る画像形成装置の感光ドラム、せき止め装置及び分離センサーの動作を表わすタイミングチャートである。
【図9】せき止め装置の他の例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施例1]画像形成装置例:図1は本発明に係る画像形成装置の一例の概略構成模式図である。この画像形成装置は、電子写真技術を利用して転写材(記録材)にモノクロ画像を形成するプリンタである。本実施例に示す画像形成装置は、ホストコンピュータ、ネットワーク上の端末機、外部スキャナなどの外部装置(不図示)から出力されるピリント指令に応じて制御部100が所定の画像形成制御シーケンスを実行する。制御部100はCPUとRAMやROMなどのメモリとからなり、メモリには画像形成制御シーケンス、画像形成に必要な各種プログラムやデータなどが記憶されている。
【0015】
本実施例の画像形成装置は、画像形成部Pkと、定着部(定着器)11と、を有している。画像形成部Pkは、像担持体(電子写真感光体)としての感光ドラム1を有している。そしてこの感光ドラム1の外周面(表面)の周囲に、帯電装置(帯電手段)2と、露光装置(露光手段)3と、現像装置(現像手段)4と、転写ローラ(転写部材)5と、クリーニング装置6と、転写ベルト7(記録材搬送部材)などを有している。
【0016】
制御部100は、プリント指令に応じて本体駆動制御部22(図3(a)参照)を制御し感光ドラム駆動装置23(図3(a)参照)の駆動を開始する。これにより感光ドラム1は駆動モータ(不図示)によって所定の周速度(プロセススピード)例えば500mm/秒の周速度で矢印R1方向に回転される。この感光ドラム1は、アルミニウム製シリンダの外周面に、帯電極性が正極性のアモルファスシリコンの光導電体層を形成したものである。この感光ドラム1の外径は108mmである。帯電装置2は、スコロトロン帯電器であって、感光ドラム1表面を所定の極性・電位例えば+400Vの電位に一様に帯電させる(帯電工程)。
【0017】
露光装置3は、外部装置から出力された画像情報を展開し生成した走査線画像データに応じてON−OFF変調したレーザービームを回転ミラー(不図示)で感光ドラム1表面の帯電面を走査露光することによって帯電面に静電潜像を形成する(露光工程)。
【0018】
現像装置4は、現像剤として一成分磁性正帯電トナーを用い所定の現像方式(ジャンピング現像方式)により感光ドラム1表面の静電潜像を現像する。現像装置4では、現像器内部に磁界発生手段を有して回転する現像剤担持体としての現像スリーブ41上に平均粒径が約6μmの一成分磁性正帯電トナーを薄層で保持する。そしてこのトナーを感光ドラム1表面と非接触の状態で対向させた位置で現像スリーブ41に+250VのDCバイアスに周波数2kHz、ピーク・トゥー・ピーク電圧1kVppの矩形のACバイアスを重畳した現像バイアスを印加する。これにより現像スリーブ41と200μmの間隔で対抗した感光ドラム1上表面にトナーを飛翔させることで静電潜像を反転現像する(現像工程)。
【0019】
エンドレスの転写ベルト7は、駆動ローラ71と、クリーニング対抗ローラ72と、テンションローラ73とに掛け渡されている。そして各ローラ71,72,73により回転可能に支持され感光ドラム1とともに前述の駆動モータにより矢印R2方向に周回移動される。この転写ベルト7は、転写ベルト7表面で転写材Pを静電的に吸着し担持して定着器11まで搬送するように構成されている。そしてこの転写ベルト7は、感光ドラム1表面に総荷重10N(1kgf)で押し付けられ転写ベルト7の外周面(表面)が感光ドラム1表面と接触し感光ドラム1表面との間に転写部Tを形成している。この転写部Tにおいて、後述する転写ローラ5に印加される転写バイアスにより感光ドラム1表面のトナー像を転写材Pに転写する。転写ベルト7としては、厚み500μmのカーボン分散クロロプレンゴム系シームレスベルトの基層に、フッ素系樹脂の微粒子を混合したウレタン系塗料を塗布して表層とした、体積抵抗率1×1010Ω・cmのものを使用した。電気抵抗は、温度23℃、相対湿度50%RHの環境で、アドバンテスト社製R8340A測定器を用いて、主電極外径50mm、ガード電極70mmのプローブにより、印加電圧500V、印加時間10秒、荷重20N(2kgf)の条件で測定した。転写ベルト7の材料として、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート等の樹脂、NBR、EPDM、ヒドリンゴム及びそれらの混合物等のゴム材料を使用することが可能である。また転写ベルト7の材料として、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート等の樹脂、NBR、EPDM、ヒドリンゴム及びそれらの混合物等のゴム材料を使用することが可能である。
【0020】
転写ベルト7の内側に設けられた転写ローラ5は、転写ベルト7表面と感光ドラム1表面との対向位置(転写部T)より転写材搬送方向下流側2mmの位置に配置されている。この転写ローラ5は、転写ベルト7を介して感光ドラム1表面に総荷重3N(0.3kgf)で押し付けられ転写ローラ5の外周面(表面)が感光ドラム1の内周面(内面)と接触している。これにより転写ローラ5は転写ベルト7の回転に追従して回転するようになっている。転写ローラ5は金属軸(不図示)を有し、この金属軸には転写バイアス電源(不図示)より負極性の直流電圧(転写バイアス)が印加される。この転写バイアスにより、正極性に帯電され感光ドラム1表面に担持されているトナー像を、転写部Tで感光ドラム1表面と転写ベルト7表面とにより挟持搬送される転写材Pに転写する。またこれと同時に、上記転写バイアスにより転写材Pを転写ベルト7表面に吸着させ感光ドラム1表面から分離させる。転写ローラ5として、金属軸の周囲に半導電性のNBRゴムとヒドリンゴムを主成分とする発泡ゴム層を形成した、アスカーC硬度30で、ローラ抵抗が1×107の半導電性ローラ材を使用した。ローラ抵抗は、温度23℃、相対湿度50%RHの環境で、転写ローラ5の金属軸の両端に各5N(0.5kgf)の錘を載せて電流計を介してアースされた金属板に押圧し、金属軸の片端に1kVの電圧を印加して、金属板に流れる電流から算出した。
【0021】
クリーニング装置6は、デュロメータA硬度70で3mm厚のウレタン材質のクリーニングブレード(クリーニング部材)により感光ドラム1表面を摺擦して、トナー像転写後に感光ドラム1表面に残留している転写残トナーを除去する。これによって感光ドラム1表面は次の画像形成に供される。8は転写ベルトクリーニング装置であって、クリーニング対抗ローラ72と転写ベルト7を挟むように配置されている。この転写ベルトクリーニング装置8は、デュロメータA硬度75で2mm厚のポリウレタンのクリーニングブレードにより転写ベルト7の表面を摺擦して、転写材Pから転写ベルト7表面に付着した紙粉などを除去する。また上記クリーニングブレードにより感光ドラム1表面と転写ベルト7表面が転写部Tで直接接触したことで転写ベルト7表面に付着したかぶりトナーなども除去する。クリーニング装置6、及び転写ベルトクリーニング装置8では、クリーニングブレードに代えて、クリーニングローラ、クリーニングウエブ、クリーニングブラシ、静電ブラシ等を用いてもよい。
【0022】
定着器11は、ハロゲンヒータを内包した定着ローラ111に加圧ローラ112を圧接して構成されるローラ定着器である。定着ローラ111の外周面(表面)と加圧ローラ112の外周面(表面)との間の定着ニップ部Nには未定着のトナー像を担持する転写材Pが転写ベルト7によって導入される。そしてこの転写材Pは定着ニップ部Nで定着ローラ111表面と加圧ローラ112表面とで挟持搬送され、この搬送過程で未定着のトナー像が熱と圧力を受けて転写材Pに加熱定着する(定着工程)。トナー像が加熱定着された転写材は定着ニップ部Nを出て排出トレー(不図示)に排出される。
【0023】
せき止め装置14の説明:せき止め装置14は、転写ローラ5の感光ドラム回転方向下流側(像担持体回転方向下流側)に配置されている。詳しくはせき止め装置14は、感光ドラム1の回転方向において、転写部Tの下流で、かつクリーニング装置6の上流に配置されている。またせき止め装置14は、感光ドラム1の回転方向と直交する長手方向において、感光ドラム1の長手方向中央に配置されている。このせき止め装置14は、感光ドラム1表面から分離されない転写材Pを感光ドラム1表面に押さえ付けるように構成されている。図2はせき止め装置14の説明図であって、(a)はせき止め装置14の非駆動時の状態を表わす横断面図、(b)はせき止め装置14の非駆動時の状態を上方から見た横断面図、(c)はせき止め装置14の駆動時の状態を表わす横断面図である。
【0024】
せき止め装置14は、ケース142と、プッシュ型のソレノイド141(プランジャー143はソレノイド141の構成部品である)と、付勢部材としての戻りバネ(圧縮バネ)144と、移動部材としてのせき止めピン145などを有している。せき止めピン145は、感光ドラム1表面に対して進退移動するようにケース142内に支持されている。そしてこのせき止めピン145のソレノイド141側の後端に設けられたフランジ141fと、ケース142の大径穴142aと小径穴142bとの段差部142cとの間に、戻りバネ144を配置している。この戻りバネ144でせき止めピン145のフランジ141fをソレノイド141のプランジャー143に押し当てるように付勢することによって、せき止めピン145をケース142の小径穴142bから感光ドラム1表面に対して表出させている。そしてこのせき止めピン145の感光ドラム1表面に転写材Pを押さえ付けるための部位即ち感光ドラム1表面側の先端にゴム部材14を設けている。ゴム部材146として、デュロメータA硬度20のEPDMを使用した。ゴム部材146は感光ドラム1表面と比較して十分に軟らかいため、ゴム部材146を感光ドラム1表面に直接当接したとしても感光ドラム1表面に打痕傷等は発生しない。ゴム部材146の材料として、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ポリウレタンゴム、ヒドリンゴム及びそれらの混合物を使用することが可能である。
【0025】
次にせき止め装置14の動作を説明する。せき止め装置14は、制御部100に設けられているせき止め装置駆動制御部24(図3(a)参照)によって制御される。せき止め装置駆動制御部24からせき止め装置14の駆動手段であるソレノイド141に駆動電源を供給しソレノイド141をONすると、ソレノイド141のプランジャー143が矢印S_ONの方向に駆動する。これにより、せき止めピン145が感光ドラム1表面に向けて移動しゴム部材146が転写材Tを感光ドラム1表面に押さえ付ける。これにより、ゴム部材146と転写材P間の摩擦力によって転写材Pがせき止められ、転写材Pがクリーニング装置6に突入することを防止できる。またせき止め装置駆動制御部24は、感光ドラム1の回転が停止されることに応じてソレノイド141への駆動電源の供給を停止しソレノイド141をOFFする。これにより、ソレノイド141のプランジャー143が矢印S_OFFの方向に戻りバネ144のバネ力により移動しゴム部材146が感光ドラム1表面から離れる。これにより、ジャム処理において感光ドラム1表面から転写材Tを容易に取り除くことが可能となる。
【0026】
分離センサー15の説明:図3の(b)は分離センサー15の説明図である。感光ドラム1表面から分離されない転写材Pを光学的に検知する検知部材としての分離センサー15は、発光素子としてのLED151と、受光素子としてのフォトダイオード152などを有している。そしてLED151から感光ドラム1表面に対して投射された投射光は感光ドラム1表面で反射し、この感光ドラム1表面で反射した反射光をフォトダイオード152で受光する。そしてこのフォトダイオード152は反射光を反射光の受光光量に応じた電圧に変換し電圧信号を分離センサー出力判断部28(図3(a)参照)に出力する。LED151は投射光透過部材としてのLEDホルダー153に支持されている。LEDホルダー153はLED151から感光ドラム1表面に対して投射される投射光が透過する透過窓153aを有している。透過窓153aは投射光透過窓開閉部材としてのシャッター155によって開閉される。このシャッター155にはソレノイド(以下、シャッターソレノイドと記す)157のプランジャーが連結されている。フォトダイオード152は反射光透過部材としてのフォトダイオードホルダー154に支持されている。フォトダイオードホルダー154は感光ドラム1表面で反射した反射光が透過する透過窓154aを有している。透過窓154aは反射光透過窓開閉部材としてのシャッター156によって開閉される。このシャッター156にはソレノイド(以下、シャッターソレノイドと記す)158のプランジャーが連結されている。感光ドラム1表面から分離されない記録材の検知を行うとき例えば転写工程開始から一定時間経過後の所定設定時間においてシャッターソレノイド157,158をONしシャッター155,156に透過窓153a,154aを開く動作を行わせる。感光ドラム1表面から分離されない記録材の検知を行わないとき例えば上記所定設定時間を除く帯電、現像、定着の各工程においてシャッターソレノイド157,158をOFFしシャッター155,156に透過窓153a,154aを閉じる動作を行わせる。このようにシャッター155,156で透過窓153a,154aを閉じることにより、飛散トナーによるLED151とフォトダイオード152の汚染を防止できる。LED151、フォトダイオード152、シャッターソレノイド157,158は、それぞれ分離センサー制御部26(図3(a)参照)により制御される。
【0027】
上記分離センサー15は、転写ローラ5の感光ドラム回転方向下流側(像担持体回転方向下流側)に配置されている。詳しくは上記分離センサー15は、感光ドラム1の回転方向において、せき止め装置14の下流で、かつクリーニング装置6の上流に配置されている。ここで、分離センサー15をせき止め装置14の下流に配置している理由は以下のとおりである。即ち、せき止め装置14が駆動して転写材Pをせき止めた時に、せき止められた転写材やその転写材を装置内から除去する行為(ジャム処理)による分離センサー15の毀損や、せき止められた転写材上の未定着トナーによる汚染を防止するためである。また分離センサー15で検知する転写材Tの検知領域(検知位置)は、せき止めピン145で感光ドラム1表面に転写材Pを押さえ付ける位置に設定してある。これは、せき止めピン145で感光ドラム1表面に転写材Pを押さえ付ける位置に転写材Pが存在しなかった場合に感光ドラム1表面を傷つける可能性があるため、その押さえ付ける位置に転写材が存在することを確実に検知できるようにするためである。
【0028】
図3の(a)は、制御部100と、感光ドラム駆動装置23と、せき止め装置25と、分離センサー15の関係を表わすブロック図である。図4の(a)は画像形成制御シーケンスにおける分離センサー15の転写材検知手順とせき止め装置14の駆動手順を表わすフローチャートである。(b)はフォトダイオード152が受光した感光ドラム1表面からの反射光、転写材からの反射光(乱反射光)、感光ドラム1表面の転写残トナーからの反射光のそれぞれのセンサー出力を表わす図である。
【0029】
図4の(a)において、S1では、ユーザーによる外部装置の操作により外部装置から出力されるプリント指令を取り込む。S2では、本体駆動制御部22により感光ドラム駆動装置23の駆動を開始する。これにより画像形成部の帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程の一連の画像形成動作が開始される。S3では、感光ドラム駆動装置23を駆動するタイミングと同期して分離センサー制御部26を制御することにより分離センサー15で感光ドラム1表面から分離されない転写材Pの検知を開始する。即ち、分離センサー制御部26によりシャッターソレノイド157,158をONすると同時にLED151とフォトダイオード152をそれぞれONする。シャッターソレノイド157,158をONすることによりシャッター155,156が投射光透過部材153と反射光透過部材154の透過窓153a,154aの閉位置から開位置に移動し透過窓153a,154aを開く。LED151から感光ドラム1表面に対し投射された投射光は感光ドラム1表面で反射し、この感光ドラム1表面で反射した反射光はフォトダイオード152で受光される。フォトダイオード152は反射光を反射光の受光光量に応じた電圧に変換し電圧信号を分離センサー出力判断部28に出力する。そしてこの分離センサー出力判断部28はフォトダイオード152からの出力信号に基づいて転写材Pの分離不良か否かを判断する(S4)。即ち所定のタイミングで取り込んだ先後の出力信号を逐次比較し先の出力信号のレベルより後の出力信号のレベルが低下している場合に転写材の感光ドラム1表面からの分離不良と判断する。図4(b)に示されるように、フォトダイオード152が感光ドラム1表面からの反射光を受光したときの出力(センサー出力)は転写材からの反射光(乱反射光)を受光したときの出力より大きい。本実施例では、分離センサー出力判断部28においてフォトダイオード152からの出力が閾値より小さいとき分離不良と判断するようにしている。この閾値は、フォトダイオード152で感光ドラム1表面の転写残トナーからの反射光を受光して得た電圧値であって、感光ドラム1表面からの反射光を受光したときの出力より小さい。そして転写材Tからの反射光を受光したときの出力は上記閾値に対して十分に小さいため、転写材Pの分離不良を正確に判断できる。S4において、転写材Pの分離不良と判断されない場合S5に進み、転写材Pの分離不良と判断された場合S6に進む。S5では画像形成動作を継続する。S6では、せき止め装置駆動制御部24によりせき止め装置25を駆動する。即ち、せき止め装置25のソレノイド141をONし、これによってせき止めピン145は前進移動し転写材Pを感光ドラム1表面に押さえ付ける。またソレノイド141をONするタイミングと同期して本体駆動制御部22により感光ドラム駆動装置23の駆動を停止する。これにより画像形成動作が停止される。S7では、本体駆動制御部22により感光ドラム駆動装置23の駆動を停止してから感光ドラム1の回転が完全に停止するのに必要な回転停止所要時間が経過した後に、せき止め装置駆動制御部24によりせき止め装置25の駆動を停止する。即ち、せき止め装置25のソレノイド141をOFFし、これによってせき止めピン145は後退移動し転写材Pをせき止めピン145による感光ドラム1表面への押さえ付けから開放する。S8では、画像形成装置に設けられている表示部(不図示)にジャム発生表示を行う。
【0030】
図5は感光ドラム1、せき止め装置15及び分離センサー14の動作を表わすタイミングチャートである。図5に示されるように、分離検知センサー15の検知位置から、クリーニング装置6のクリーニングブレードが感光ドラム1表面に当接する位置までの感光ドラム1表面の外周まわりの距離(以下距離は感光ドラム1の外周まわりの距離をいう)は40mmである。転写材Pの分離不良を検知した感光ドラム1表面の検知位置から感光ドラム1が40mm以上移動(回転)すると、その表面に密着して搬送される転写材の先端がクリーニングブレードに突入し、クリーニングブレードが傷つく可能性がある。さらに、感光ドラム回転方向において転写材の長さ+40mm以上、感光ドラム1が移動(回転)すると転写材はクリーニング装置6に完全に巻き込まれ、転写材が除去できなくなる場合がある。
【0031】
図5において、A点は分離不良により感光ドラム1表面に密着した転写材の先端を分離センサー15で検知したときのタイミングである。その後、分離センサー出力判断部28で分離不良と判断され、制御部100から各制御部22,24,26に所定の命令信号が送られるB点までに20msを要する。この間にA点で検知された感光ドラム1表面の分離不良検知位置は、感光ドラム1の移動速度(回転速度)が500mm/秒なので10mm下流に移動する。
【0032】
C点はせき止めピン145のゴム部材146が転写材Pを感光ドラム1表面に押さえ付けたときのタイミングであり、ソレノイド141に駆動電源が供給されてから50ms後である。この間、感光ドラム1は停止動作を開始しているため、分離不良検知位置の移動距離は23mmである。上記の10mmと23mmを足した33mmが、転写材の先端がせき止めピン145により移動が停止されるまでの移動距離である。上述のとおり、分離センサー15の検知位置からクリーニング装置6のクリーニングブレードが感光ドラム1表面に当接する位置までの距離は40mmであるため、クリーニングブレードに突入させることなく転写材の移動を停止することが可能であった。
【0033】
図6はせき止め装置14による転写材Pのせき止め状態を表わす説明図である。図6の(a)はせき止め装置14が駆動後約300ms後の転写材Pの状態を表しており、この時点では感光ドラム1はまだ回転している。(b)は感光ドラム1の回転が停止した直後の転写材Pの状態を表しており、この後にせき止めピン145が感光ドラム1表面から離間し、転写材Pを容易に取り除くことができる。ここで、感光ドラム1の回転が停止するD点までの経過時間は1000msのため、分離不良検知位置は260mm下流に移動する。その場合、せき止め装置14が配置されていなかったとすると、A4サイズ紙の横送りでは、クリーニング装置6内に転写材が完全に巻き込まれる可能性がある。なぜなら、感光ドラム1の移動量(回転量)260mmの方が、A4サイズ紙を横送りした時の搬送方向の長さ210mmに上述の40mmを足した250mmより大きいためである。
【0034】
本実施例の画像形成装置は、分離センサー15で転写材Pを検知したときせき止めピン145が移動し感光ドラム1表面に転写材Pを押さえ付ける。このため、感光ドラム1表面から分離されない転写材Pが感光ドラム1の慣性力による回転によって移動することを防止できる。
【0035】
[実施例2]画像形成装置の他の例を説明する。図7は本実施例に係る画像形成装置の一例の概略構成模式図である。この画像形成装置は、電子写真技術を利用して転写材(記録材)にフルカラー画像を形成するフルカラープリンタである。本実施例では、実施例1の画像形成装置と同じ部材・部分について、同一の符号を付し再度の説明を省略する。
【0036】
本実施例に示す画像形成装置は、トナー像担持部材としての中間転写ベルト12の直線区間に、4つの画像形成部Py,Pm,Pc,Pkを配列したタンデム型フルカラープリンタである。画像形成部Pyでは、感光ドラム1y表面にイエロートナー像が形成されて中間転写ベルト12の外周面(表面)に一次転写される。画像形成部Pmでは、感光ドラム1m表面にマゼンタトナー像が形成されて中間転写ベルト12表面のイエロートナー像に重ねて一次転写される。画像形成部Pc、Pkでは、それぞれ感光ドラム1c、1k表面にシアントナー像、ブラックトナー像が形成されて同様に中間転写ベルト12表面に順次重ねて一次転写される。中間転写ベルト12表面に一次転写された四色のトナー像は、二次転写部T2へ搬送されて転写材Pへ一括して二次転写される。二次転写部T2で四色のトナー像を二次転写された転写材Pは、定着器11で熱と圧力を受けて未定着のトナー像を加熱定着された後に、排出トナーに排出される。
【0037】
画像形成部Py,Pm,Pc,Pkは、現像装置4y,4m,4c,4kで用いるトナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外はほぼ同一に構成される。以下では、画像形成部Pyについて説明し、他の画像形成部Pm,Pc,Pkについては、説明文中の符号末尾のyを、m、c、kに読み替えて説明されるものとする。
【0038】
画像形成部Pyは、像担持体(電子写真感光体)としての感光ドラム1yを有している。そしてこの感光ドラム1y表面の周囲に、帯電装置(帯電手段)2yと、露光装置(露光手段)3yと、現像装置(現像手段)4yと、一次転写ローラ(転写部材)9yと、クリーニング装置6yなどを有している。
【0039】
感光ドラム1yは、アルミニウム製シリンダの外周面に、帯電極性が負極性の有機感光体材料(OPC)の光導電体層を形成してものである。この感光ドラム1yは、感光ドラム駆動装置23の駆動が開始されることにより駆動モータ(不図示)によって300mm/秒のプロセススピードで矢印R1方向に回転される。帯電装置2yは、不図示の加圧バネによって帯電ローラを感光ドラム1yに3N(0.3kgf)の圧力で圧接させ、感光ドラム1yの回転に従動して回転させる。帯電ローラは芯金(不図示)を有し、この芯金には直流電圧−600Vと周波数1500Hzの交流電圧1400Vppを重畳した帯電電圧が印加される。これにより感光ドラム1y表面は所定の極性・電位に一様に帯電される(帯電工程)。この帯電ローラは、芯金の周囲にカーボン分散EPDM系発泡スポンジゴムの弾性層、カーボン分散NBR系ゴムの中間層、カーボンを分散させたフッ素系樹脂の離型層をその順に積層した3層構成である。
【0040】
露光装置3yは、外部装置から出力されたイエローの分解色画像情報を展開し生成した走査線画像データに応じてON−OFF変調したレーザービームを回転ミラー(不図示)で感光ドラム1y表面の帯電面を走査露光する。これによって感光ドラム1y表面の帯電面にイエローの分解色画像データに応じた静電潜像が形成される(露光工程)。
【0041】
現像装置4yは、非磁性のトナーに磁性キャリアを混合したニ成分現像剤を攪拌して、トナーを負極性に帯電させる。帯電したトナーは、現像スリーブ41yの内部に配置された固定磁極の磁力によって現像スリーブ41yの表面に穂立ち状態に保持された磁性キャリアーに担持され、感光ドラム1y表面を摺擦する。現像スリーブ41yは、感光ドラム1y表面と350μmのギャップを隔てて対向し、感光ドラム1y表面に対してカウンタ方向に回転する。現像スリーブ41yには、直流電圧−450Vに2000Hzの交流電圧1800Vppを重畳した現像電圧を印加して、現像スリーブ41yよりも相対的に正極性となった感光ドラム1yの静電潜像へトナーを移動させて、静電潜像を反転現像する(現像工程)。
【0042】
エンドレスの中間転写ベルト12の内側に設けられた一次転写ローラ9yは、感光ドラム1y表面との間に総荷重10N(1kgf)で中間転写ベルト12を挟み込んでいる。そして感光ドラム1y表面と中間転写ベルト12表面との間に一次転写部T1yを形成する。一次転写ローラ9yは金属軸(不図示)を有し、この金属軸に正極性の直流電圧を印加して、負極性に帯電して感光ドラム1y表面に担持されたトナー像を、一次転写部T1yを通過する中間転写ベルト12表面へ転写する(一次転写工程)。一次転写ローラ9yとして、金属軸(不図示)周囲に半導電性のポリウレタン系発泡ゴム層を形成した、アスカーC硬度10で、ローラ抵抗が1×106の半導電性ローラ材を使用した。ローラ抵抗は、温度23℃、相対湿度50%RHの環境で、一次転写ローラ9yの金属軸の両端に各5N(0.5kgf)の錘を載せて電流計を介してアースされた金属板に押圧し、金属軸の片端に50Vの電圧を印加して、金属板に流れる電流から算出した。
【0043】
クリーニング装置6yは、デュロメータA硬度70で2mm厚のポリウレタン材質のクリーニングブレードを感光ドラム1y表面に摺擦して、一次転写部T1yを通過して感光ドラム1y表面に残留した転写残トナーを除去する。クリーニング装置6yでは、クリーニングブレードに代えて、クリーニングローラ、クリーニングウエブ、クリーニングブラシ、静電ブラシ等を用いてもよい。
【0044】
中間転写ベルト12は、駆動ローラ121と、バックアップローラ122と、テンションローラ123とに掛け渡されている。そして各ローラ121,122,123により回転可能に支持され感光ドラム1yとともに前述の駆動モータにより矢印R3方向に周回移動される。中間転写ベルト12としては、体積抵抗率1×1010Ω・cm、表面抵抗率1×1012Ω/□で、厚み90μmのカーボン分散ポリイミド系のシームレスベルトを使用した。電気抵抗は、温度23℃、相対湿度50%RHの環境で、アドバンテスト社製R8340A測定器を用いて、主電極外径50mm、ガード電極70mmのプローブにより、印加電圧100V、チャージ時間10秒の条件で測定した。中間転写ベルト12の材料として、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート等の樹脂を使用することが可能である。バックアップローラ121として、金属軸上にカーボン分散EPDMゴムの低抵抗層を形成したゴムローラーが使用されている。バックアップローラ121において金属軸は接地電位に接続されている。
【0045】
中間転写ベルトクリーニング装置10は、デュロメータA硬度75で2mm厚のポリウレタンのクリーニングブレード(クリーニング部材)で、先端を中間転写ベルト12表面にカウンタ方向に当接させる。中間転写ベルトクリーニング装置10は、転写材Pに転写されることなく二次転写部T2を通過した中間転写ベルト12表面の転写残トナー、及び、二次転写部T2で転写材Pから中間転写ベルト12表面へ付着した紙粉をクリーニングブレードにより除去する。中間転写ベルトクリーニング装置10では、クリーニングブレードに代えて、クリーニングローラ、クリーニングウエブ、クリーニングブラシ、静電ブラシ等を用いてもよい。
【0046】
転写搬送部材としての二次転写ベルト7Aは、駆動ローラ71Aと、クリーニング対抗ローラ72Aと、従動ローラ73Aとに掛け渡されている。そして各ローラ71A,72A,73Aにより回転可能に支持され感光ドラム1yとともに前述の駆動モータにより矢印R3方向に周回移動される。二次転写ベルト7Aの材料には、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート等の樹脂、NBR、EPDM、ヒドリンゴム及びそれらの混合物等のゴム材料を使用することが可能である。また二次転写ベルト7Aの材料には、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート等の樹脂、NBR、EPDM、ヒドリンゴム及びそれらの混合物等のゴム材料を使用することが可能である。二次転写ベルト7Aとしては、厚み500μmのカーボン分散クロロプレンゴム系シームレスベルトの基層に、フッ素系樹脂の微粒子を混合したウレタン系塗料を塗布して表層とした、体積抵抗率1×1010Ω・cmのものを使用した。電気抵抗は、温度23℃、相対湿度50%RHの環境で、アドバンテスト社製R8340A測定器を用いて、主電極外径50mm、ガード電極70mmのプローブにより、印加電圧500V、チャージ時間10秒の条件で測定した。
【0047】
二次転写ベルト7Aの内側には、二次転写ベルト7Aを挟んでバックアップローラ122の対向位置より二次転写ベルト搬送方向下流2mmに転写部材としての二次転写ローラ5Aが配置されている。この二次転写ローラ5Aは、二次転写ローラ5Aの外周面(表面)と二次転写ベルト7Aの外周面(表面)との間に二次転写部T2を形成している。そしてこの二次転写ローラ5Aは、二次転写ベルト7Aを介してバックアップローラ122の方向に総荷重5N(0.5kgf)で押し付けられ、二次転写ベルト7Aの回転に追従して回転する。二次転写ローラ5Aは金属軸を有し、この金属軸に正極性の直流電圧(転写バイアス)が印加される。この転写バイアスにより、負極性に帯電され中間転写ベルト12表面に担持されているトナー像を、二次転写部T2二次転写ローラ5A表面と二次転写ベルト7A表面とで挟持搬送される転写材Pに転写する(二次転写工程)。またこれと同時に、上記転写バイアスにより転写材Pを二次転写ベルト7A表面に吸着させ中間転写ベルト12表面から分離させる。二次転写ローラ5Aとして、金属軸上に半導電性のNBRゴムとヒドリンゴムを主成分とする発泡ゴム層を形成した、アスカーC硬度30で、ローラ抵抗が1×107の半導電性ローラ材を使用した。ローラ抵抗は、温度23度C℃、相対湿度50%RHの環境で、二次転写ローラ5Aの金属軸の両端に各5N(0.5kgf)の錘を載せて電流計を介してアースされた金属板に押圧し、金属軸の片端に1kVの電圧を印加して、金属板に流れる電流から算出した。
【0048】
二次転写ベルトクリーニング装置8Aは、デュロメータA硬度75で2mm厚のポリウレタンのクリーニングブレードで、先端を二次転写ベルト7A表面に、カウンタ方向に当接させる。二次転写ベルトクリーニング装置8Aは、転写材Pから二次転写ベルト7A表面へ付着した紙粉、中間転写ベルト12表面と二次転写ベルト7A表面が二次転写部T2で直接接触したことで二次転写ベルト7A表面に付着したかぶりトナーを除去する。二次転写ベルトクリーニング装置8Aでは、クリーニングブレードに代えて、クリーニングローラ、クリーニングウエブ、クリーニングブラシ、静電ブラシ等を用いてもよい。
【0049】
せき止め装置14は、二次転写ベルト7Aの中間転写ベルト回転方向下流側(トナー像担持部材回転方向下流側)に配置されている。詳しくはせき止め装置14は、中間転写ベルト12の回転方向において、二次転写部T2の下流で、かつ中間転写ベルトクリーニング装置10の上流に配置されている。またせき止め装置14は、中間転写ベルト12の回転方向と直交する長手方向において、中間転写ベルト12の長手方向中央に配置されている。このせき止め装置14は、中間転写ベルト12表面から分離されない転写材Pをせき止めピン145で中間転写ベルト12表面に押さえ付けるものである。そしてこのせき止めピン145の中間転写ベルト12表面に転写材Pを押さえ付けるための部位即ち中間転写ベルト12表面側の先端にゴム部材14を設けている。本実施例のせき止め装置14は、実施例1のせき止め装置14と同じ構成としてある。
【0050】
中間転写ベルト12表面から分離されない転写材Pを光学的に検知する検知部材としての分離センサー15は、二次転写ベルト7Aの中間転写ベルト回転方向下流側(トナー像担持部材回転方向下流側)に配置されている。詳しくは分離センサー15は、中間転写ベルト12の回転方向において、せき止め装置14の下流で、かつ中間転写ベルトクリーニング装置10の上流に配置されている。本実施例の分離センサー15は、実施例1の分離センサー15と同じ構成としてある。
【0051】
本実施例の画像形成装置において、制御部100と、感光ドラム駆動装置23と、せき止め装置25と、分離センサー15の関係は、実施例1の画像形成装置と同じある(図3(a)参照)。また画像形成制御シーケンスにおけるせき止め装置14の駆動は、実施例1の画像形成装置と同じある(図4(a)参照)。また分離センサー15におけるフォトダイオード152の出力(センサー出力)レベルについても、実施例1と同様、フォトダイオード152が中間転写ベルト12表面からの反射光を受光したときの出力は転写材からの反射光を受光したときの出力より大きい。またフォトダイオード152で感光ドラム1表面の転写残トナーからの反射光を受光して得た電圧値即ち閾値は感光ドラム1表面からの反射光を受光したときの出力より小さい。つまり、フォトダイオード152の出力レベルの大小関係は、実施例1の画像形成装置の分離センサー15におけるフォトダイオード152の出力レベルと同じ傾向を示している。従って、本実施例の画像形成装置においても、実施例1の画像形成装置と同様、転写材Pの分離不良を正確に判断できる。
【0052】
感光ドラム1、せき止め装置15及び分離センサー14の動作を表わすタイミングチャートを図8に示す。図8に示されるように、分離検知センサー15の検知位置から、中間転写ベルトクリーニング装置10のクリーニングブレードが中間転写ベルト12表面に当接する位置までの中間転写ベルト12の距離50mmである。転写材Pの分離不良を検知した中間転写ベルト12表面の検知位置から中間転写ベルト12が50mm以上移動(回転)すると、その表面に密着して搬送される転写材の先端がクリーニングブレードに突入し、クリーニングブレードが傷つく可能性がある。
【0053】
図8において、A点は分離不良により中間転写ベルト12表面に密着した転写材の先端を分離センサー15で検知したときのタイミングである。その後、分離センサー出力判断部28で分離不良と判断され、制御部100から各制御部22,24,26に所定の命令信号が送られるB点までに20msを要する。この間にA点で検知された中間転写ベルト12表面の分離不良検知位置は、中間転写ベルト12の移動速度(回転速度)が300mm/秒なので6mm下流に移動する。
【0054】
C点はせき止めピン145のゴム部材146が転写材Pを中間転写ベルト12表面に押さえ付けたときのタイミングであり、ソレノイド141に駆動電源が供給されてから50ms後である。この間、中間転写ベルト12は停止動作を開始しているため、分離不良検知位置の移動距離は14mmである。上記の6mmと14mmを足した20mmが、転写材の先端がせき止めピン145により移動が停止されるまでの移動距離である。上述のとおり、分離センサー15の検知位置から中間転写ベルトクリーニング装置10のクリーニングブレードが中間転写ベルト12表面に当接する位置までの距離は50mmである。このため、クリーニングブレードに突入させることなく転写材の移動を停止することが可能であった。ここで、中間転写ベルト12の回転が停止するD点までの経過時間は1000msのため、分離不良検知位置は156mm下流に移動する。その場合、せき止め装置14が配置されていなかったとすると、例えばA4サイズ紙を横送りした時では、3分の2以上が中間転写ベルトクリーニング装置10内に巻き込まれる可能性がある。
【0055】
本実施例の画像形成装置において、せき止めピン145のみで中間転写ベルト12表面に転写材Pを押さえ付けることができない場合には、中間転写ベルトの内側にせき止めピン対向部材16を設けてもよい。このせき止めピン対向部材16は、せき止めピン145と中間転写ベルト12を介して対向する位置に設けるとよい。これにより、せき止めピン145は、転写材Pを中間転写ベルト12表面に押さえ付けた際にせき止めピン対向部材16でこの中間転写ベルト12を中間転写ベルト12内面側から支持でき、転写材Pを中間転写ベルト12表面に確実に押さえ付けることができる。
【0056】
本実施例の画像形成装置は、分離センサー15で転写材Pを検知したときせき止めピン145が移動し中間転写ベルト12表面に転写材Pを押さえ付ける。このため、中間転写ベルト12表面から分離されない転写材Pが中間転写ベルト12の慣性力による回転によって移動することを防止できる。
【0057】
[実施例3]画像形成装置の他の例を説明する。本実施例に示す画像形成装置は、実施例1の画像形成装置の制御部100に、厚みが厚い記録材より薄い記録材を選択するための記録材選択モードとしてのモード(以下、薄紙モードと記す)を具備させたものである。この薄紙モードを設けた点を除いて実施例1の画像形成装置と同じ構成としてある。この薄紙モードは、剛性の小さい所謂こしのない分離不良が発生し易い転写材にプリントを行うためのモードであり、画像形成装置に設けられる操作パネル(不図示)から選択できるようになっている。薄紙モードが選択されないとき分離センサー制御部26はシャッターソレノイド157,15のOFFを維持しシャッター155,156で透過窓153a,154aを閉じている。薄紙モードが選択されたとき分離センサー制御部26はシャッターソレノイド157,158をONしシャッター155,156に透過窓153a,154aを開く動作を行わせる。このようにシャッター155,156で透過窓153a,154aを閉じることにより、飛散トナーによるLED151とフォトダイオード152の汚染を防止できる。上記の薄紙モードを実施例2の画像形成装置の制御部100に具備させても同様な作用効果を得ることができる。
【0058】
[他の実施例]せき止め装置14はプッシュ型のソレノイド141を使用したものに限られず図9に示すようにプル型のソレノイド141を使用したせき止め装置14Aでもよい。
【符号の説明】
【0059】
1:感光ドラム、P:転写材、7:転写ベルト、7A:二次転写ベルト、12:中間転写ベルト、15:分離センサー、100:制御部、145:せき止めピン、146:ゴム部材、153:LEDホルダー、154:フォトダイオードホルダー、153a,154a:透過窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な像担持体と、前記像担持体に対して移動し前記像担持体とともに記録材を挟持搬送する記録材搬送部材と、前記像担持体が担持するトナー像を記録材に転写する転写部材と、を有する画像形成装置において、
前記像担持体に対して進退移動する移動部材と、前記像担持体から分離されない記録材を光学的に検知する検知部材と、を前記転写部材の像担持体回転方向下流側に有し、前記検知部材で記録材を検知したとき前記移動部材の移動により前記像担持体に記録材を押さえ付けることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記移動部材は、前記像担持体に記録材を押さえ付けるための部位にゴム部材を有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記検知部材は、前記移動部材より前記転写部材の像担持体回転方向下流側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記検知部材で検知する記録材の検知領域は、前記移動部材で前記像担持体に記録材を押さえ付ける位置に設定してあることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記検知部材で検知する記録材の検知領域は、前記移動部材で前記像担持体に記録材を押さえ付ける位置より像担持体回転方向下流側に設定してあることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記像担持体の回転が停止したとき前記移動部材の移動により記録材を前記移動部材による前記像担持体への押さえ付けから開放することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
厚みが厚い記録材より薄い記録材を選択するための記録材選択モードを有する制御部と、前記検知部材から前記像担持体に対し投射される投射光が透過する透過窓を有する投射光透過部材と、前記像担持体、又は前記像担持体から分離されない記録材で反射した投射光の反射光が前記検知部材で受光される前に透過する透過窓を有する反射光透過部材と、前記投射光透過部材の透過窓を開閉する投射光透過窓開閉部材と、前記反射光透過部材の透過窓を開閉する反射光透過窓開閉部材と、を有し、記録材選択モードが選択されないとき前記投射光透過窓開閉部材と前記反射光透過窓開閉部材はそれぞれ透過窓を閉じており、記録材選択モードが選択されたとき前記投射光透過窓開閉部材と前記反射光透過窓開閉部材はそれぞれ透過窓を開く動作を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
トナー像を担持し回転するトナー像担持部材と、前記トナー像担持部材とともに記録材を挟持搬送するとともに前記像担持体が担持するトナー像を記録材に転写する転写搬送部材と、を有する画像形成装置において、
前記トナー像担持部材に対して進退移動する移動部材と、前記トナー像担持部材から分離されない記録材を光学的に検知する検知部材と、を前記転写部材のトナー像担持部材回転方向下流側に有し、前記検知部材で記録材を検知したとき前記移動部材の移動により前記トナー像担持部材に記録材を押さえ付けることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
前記移動部材は、前記トナー像担持部材に記録材を押さえ付けるための部位にゴム部材を有することを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記検知部材は、前記移動部材より前記転写部材のトナー像担持部材回転方向下流側に配置されることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記検知部材で検知する記録材の検知領域は、前記移動部材で前記トナー像担持部材に記録材を押さえ付ける位置に設定してあることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記検知部材で検知する記録材の検知領域は、前記移動部材で前記トナー像担持部材に記録材を押さえ付ける位置よりトナー像担持部材回転方向下流側に設定してあることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記トナー像担持部材の回転が停止したとき前記移動部材の移動により記録材を前記移動部材による前記トナー像担持部材への押さえ付けから開放することを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
像形成装置。
【請求項14】
厚みが厚い記録材より薄い記録材を選択するための記録材選択モードを有する制御部と、前記検知部材から前記トナー像担持部材に対し投射される投射光が透過する透過窓を有する投射光透過部材と、前記トナー像担持部材、又は前記トナー像担持部材から分離されない記録材で反射した投射光の反射光が前記検知部材で受光される前に透過する透過窓を有する反射光透過部材と、前記投射光透過部材の透過窓を開閉する投射光透過窓開閉部材と、前記反射光透過部材の透過窓を開閉する反射光透過窓開閉部材と、を有し、記録材選択モードが選択されないとき前記投射光透過窓開閉部材と前記反射光透過窓開閉部材はそれぞれ透過窓を閉じており、記録材選択モードが選択されたとき前記投射光透過窓開閉部材と前記反射光透過窓開閉部材はそれぞれ透過窓を開く動作を行うことを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−253046(P2011−253046A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126810(P2010−126810)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】