説明

画像形成装置

【課題】用紙の厚さ等の特性の相違を考慮して直線で形成される搬送経路であっても、用紙を撓ませることを可能とし、デカールを行うことができるようにした画像形成装置を提供する。
【解決手段】用紙100へ液体を付与し画像を形成する画像形成装置において、液体の付与を行う付与手段200の下流に、用紙100を搬送する第1のローラ対301と、第1の搬送ローラの下流側に第2のローラ対304が配置されており、2つのローラ対間を用紙100が通過する経路Rに、該経路Rから後退可能に支持された支えローラ303を有し、経路Rを通過する用紙100を支えローラ303の方向に変位させる変位手段300を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンター、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置に関し、特に、インク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。
この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものである。ここで記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる。
【0004】
液体吐出ヘッドとしては、個別流路(以下「加圧液室」という。)内のインクを加圧する圧力を発生するための圧力発生手段(アクチュエータ手段)として圧電素子などで構成される圧電アクチュエータを用いたもの、発熱抵抗体などで構成されるサーマルアクチュエータを用いたもの、静電力を発生する静電アクチュエータを用いたものなどが知られている。
このような液体吐出ヘッドを記録ヘッドに用いる画像形成装置(以下、単に「インクジェット記録装置」ともいう。)においては、インクと反応して滲み防止を促す前処理液を塗布ローラで塗布することが行われている。
【0005】
しかしながら、塗布ローラや液体吐出ヘッドで前処理液を吐布する場合、特に、液体のために用紙上でインクと反応後の速乾性に問題があり、しかも、用紙にシワやカールが発生したり、撓んだりし易くなることから、紙詰まりなどが発生してしまう。
そこで、カールを抑制するために、デカーラが用いられている。一般的なデカーラは、一対のローラ間を用紙が通過する際に、用紙がカール方向と逆方向に矯正されて、適正な量でクセ付けされ、デカールされる。
【0006】
しかし、一般的なデカーラでデカールをする際は、デカーラが直接印字面に接しなければならない。デカーラが印字面に接すると、未乾燥インクがデカーラに転写されてしまう。この場合、転写されたインクが次の紙に再転写することによって、次の紙に画像不良が生じてしまう。そこで、直接印字面に接触せずに、カール抑制を行うデカーラが必要となる。
【0007】
そこで、特許文献1では、定着装置の下流側の定着搬送ローラ対と搬送ローラ対の間のシート搬送路上に所定量出っ張らせた湾曲部を有するガイド部材を設け、その上で、定着搬送ローラ対と搬送ローラ対の間に挟持されたシートを搬送ガイドの湾曲部に押し付け、紙を逆カール方向に撓まして、デカールを行っている。
【0008】
また、特許文献2では、カール検出手段で検出したカール量に応じて、搬送ベルトの中央部を上下に変位させる。上下に変位させた状態で、用紙を搬送ベルトに吸着させながら搬送して、非接触でデカールをし、搬送の安定化を図っている。
また、特許文献3では、枚葉印刷機の排紙部に取り付けたカール除去装置が開示され、ここでは、ベルトとこれに平行配備され同速度で走行する搬送チェーンが枚葉紙を挟持しつつ搬送し、排紙積載装置の上方まで搬送するにあたり、搬送する枚葉紙を、カール除去装置のプレート部のV字部上面に吸引しつつ摺動させてシート状物のカールを除去するようにしている。
【0009】
また、特許文献4では、シートの幅方向に配設された少なくとも3つのローラ対のうち、シート両端部のローラ対のシート搬送速度をシート中央部のローラ対のシート搬送速度より大きくすることで、かかる搬送速度の差でシートの腰付けを行ってシートの変形を防止しつつシートを良好に排出することができる排紙装置を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、引用文献1、3の場合、用紙をデカールのため曲げ修正してコシを付けることはできるが、このようした場合、搬送径路は屈曲することとなるため、封筒等の厚紙の搬送は無理となり、シートの変形を防止しカールの排除は不可能となる。
更に、引用文献2のように用紙のカール方向に沿うように搬送装置を湾曲切換えさせて、下流側に安定して送り込み、非接触でデカールを行える。しかし、デカーラ手段に吸着搬送ベルトを使用し、搬送ベルト中央部を変位させる機構が必要であるため、装置が複雑化してしまうことになる。
【0011】
更に、引用文献4のようにシート搬送速度をシート中央部よりシート両端部の方をより大きくすることでシートの腰付けを行い、シートの変形を防止する場合、搬送径路はほぼ直状であるが、厚紙等では十分に湾曲変形できず、カールを排除することは不可能である。
ところで、様々な記録用紙を搬送する画像形成装置においては、原則搬送径路は直線で形成されることが望ましく、このように構成することで封筒等の厚紙の搬送も可能となる。しかし、記録媒体に液体を付与する場合、薄手の用紙などにおいてカールが発生し、直線形状の搬送径路では用紙を撓ませることでデカールを行うことができないという問題が生じる。
【0012】
本発明は、上記背景に鑑みなされたものであり、用紙の厚さ等の特性の相違により、搬送径路は基本的には直線で形成されることが望ましく、直線状の搬送径路であっても用紙を撓ませることでデカールを行うことができるようにした画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は前記課題を達成するため以下の構成とした。
【0014】
第1の発明は、被記録媒体へ液体を付与し画像を形成する画像形成装置において、前記液体の付与を行う付与手段の下流に、前記被記録媒体を搬送する第1のローラ対と、前記第1の搬送ローラの下流側に第2のローラ対が配置されており、前記2つのローラ対間の前記被記録媒体が通過する径路に、前記径路から後退可能に支持された支えローラを有し、前記径路を通過する前記被記録媒体を前記支えローラ方向に変位させる変位手段を有することを特徴とする。
【0015】
第2の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、前記第1のローラ対と前記第2のローラ対は速度差を変化させる手段を有し、前記支えローラを後退させた時に前記第1のローラ対の速度を前記第2のローラ対の速度よりも早くする制御を行うことを特徴とする。
【0016】
第3の発明は、請求項1又は2に記載の画像形成装置において、前記変位手段が被記録媒体に対して送風を行う送風手段であることを特徴とする。
【0017】
第4の発明は、請求項3に記載の画像形成装置において、前記支えローラが弾性体で支持され、前記送風手段の風圧により被記録媒体とともに後退することを特徴とする。
【0018】
第5の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置において、前記液体の付与を行う付与手段が、液体を吐出して画像を形成する液体吐出ヘッドであることを特徴とする。
【0019】
第6の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置において、前記液体の付与を行う付与手段が、処理液を塗布して被記録媒体に画像を定着させる画像記録前処理もしくは画像記録後処理を行う手段であることを特徴とする。
【0020】
第7の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の画像形成装置において、前記被記録媒体への液体の付着量に応じて、前記支えローラ後退量を制御することを特徴とする。
【0021】
第8の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の画像形成装置において、前記被記録媒体の種類や厚さに応じて、前記支えローラ後退量を制御することを特徴とする。
【0022】
第9の発明は、請求項7又は8に記載の画像形成装置において、前記支えローラ後退量の制御に合わせて、前記変位手段の変位量の制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、デカールが必要な場合に、ローラ対間の支えローラを記録媒体に対して後退可能に設け、被記録媒体を支えローラ方向に変位させる変位手段を有することで、用紙を支えローラ方向に撓ませることでデカールを行うことができる。厚紙等を通過支える場合には、支えローラが被記録媒体を支え、搬送路をストレートに維持するため、厚紙の搬送性を損なうこともない。(請求項1)。
【0024】
また、本発明によれば、速度差により用紙が撓みやすくなり、少ない負荷で記録媒体を変位させることができる。(請求項2)。
【0025】
また、本発明によれば、風を吹きつけることによって、液体の乾燥が早くなるため、カールの進行を抑制することができる。(請求項3)。
【0026】
また、本発明によれば、後退のための機構が不要となり、装置を小型化、簡略化できる。(請求項4)。
【0027】
また、本発明によれば、画像形成直後に速やかに乾燥できてカールを抑えることができる。(請求項5)。
【0028】
また、本発明によれば、前処理、後処理により、画像記録の前もしくは後にローラ等を用いて処理液が塗布され、塗布される液体量が多くなり、カールが大きく生じやすいとしても、塗布後に速やかに乾燥、デカールを行うことにより被記録媒体の搬送性の低下を抑制できる。(請求項6)。
【0029】
また、本発明によれば、液体の付着量に応じて、後退量を変更させることによって、適正な量でクセ付けされるため、過剰なクセ付けによるカールを防ぐことができる。(請求項7)
また、本発明によれば、被記録媒体の種類や厚さに応じて、後退量を変更させることによって、適正な量でクセ付けされるため、過剰なクセ付けによるカールを防ぐことができる。(請求項8)。
【0030】
また、本発明によれば、より正確にデカール量を制御でき、過剰なクセ付けによるカールを防ぐことができる。(請求項9)
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る画像形成装置の全体構成を示す図である。
【図2】図1の画像形成装置が用いる変位手段の作動特性を示す図で、(a)は支えローラの作動時、(b)は支えローラの非作動時である。
【図3】図1の画像形成装置が用いる液体付与を行う付与手段を示す図で、(a)は処理液の非塗布時、(b)は塗布時を示す。
【図4】図1の画像形成装置の制御機能ブロック図である。
【図5】図1の画像形成装置が行うプリント制御処理のフローチャートである。
【図6】本発明の他の実施形態ある画像形成装置の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の一例について、図1の全体構成を示す概略構成図を参照して説明する。
この画像形成装置Mはライン型画像形成部を有するプリンターである。この画像形成装置Mは被記録媒体である用紙100に液滴を吐出して画像を形成する画像形成手段としての記録ヘッドユニット101と、用紙100を搬送する搬送ベルト102と、用紙100を収容する給紙トレイ103と、記録ヘッドユニット101よりも用紙搬送方向上流側で被塗布部材である用紙100に処理液を塗布する処理液塗布装置200と、記録ヘッドユニット101よりも用紙搬送方向下流側であって搬送路(以後単に経路Rと記す)を通過する被記録媒体である用紙100を変位させる変位手段としてのデカーラユニット300と、画像が形成された用紙100が排紙される排紙ユニット400とを備えている。ここでは、記録ヘッドユニット101と搬送ベルト102とで画像形成部を構成している。
【0033】
給紙トレイ103から用紙100は、ピックアップローラ131によって給紙部132に搬送される。ピックアップローラ131は搬送を解除する実線図示側と、搬送を行う破線図示側との間で揺動可能となっている。
【0034】
給紙部132は用紙100を一枚ずつ分離して下流に搬送する一対の給紙ローラで構成されている。給紙部132によって、一枚に分離された用紙100は、紙厚検知センサ136によって、紙厚が検知される。次に、用紙100は経路R上の給紙側経路135を経由して搬送ローラ対133に送られる。更に、搬送ローラ対133によって用紙100は処理液塗布装置200に送られ、処理液塗布装置200で塗布経路138を通過中に処理液が塗布され、その上で搬送ベルト102上の経路Rに送り込まれて保持される。
処理液塗布装置200は、処理液201を収容した容器202と、この容器202から処理液201を圧送するポンプ203と、ポンプ203で供給路204を介して供給された処理液201を被記録媒体である用紙100に塗布する塗布部208とを備えている。
【0035】
ここで、処理液201は、用紙100の表面に塗布することで用紙100の表面を改質する改質剤である。例えば、処理液201は予め用紙100(前述したように材質としての紙に限定されない。)にムラなく塗布しておくことで、インクの水分を速やかに用紙100に浸透させると共に色成分を増粘させ、更には乾燥も早めることによって滲み(フェザリング、ブリーディング等)や裏抜けを防止し、生産性(単位時間当たりの画像出力枚数)をあげることを可能にする定着剤(セット剤)である。
【0036】
この処理液201は、組成的には、例えば界面活性剤(アニオン系、カチオン系、ノニオン系のいずれか、若しくはこれらを2種類以上混合させたもの)に対して、水分の浸透を促進するセルロース類(ヒドロキシプロピルセルロース等)とタルク微粉体の様な基剤を加えた溶液等を挙げることができる。更に微粒子を含有することもできる。
次に、処理液塗布装置200の塗布部208について図3(a),(b)を参照して説明する。なお、図3(a)は塗布動作開始前の同塗布部の模式的側面説明図、図3(b)は同じく塗布動作時の同塗布部の模式的側面説明図である。
【0037】
塗布部208は、被記録媒体である用紙100を搬送する搬送ローラ235と、用紙100に処理液201を塗布する塗布ローラ232と、前述した処理液201を供給し、塗布ローラ232上の液膜を薄くするスクイーズローラ233と、スクイーズローラ233に供給するための処理液201を保持するための処理液保持部である上方が開口した容器状の液室234と、これらを支持するケーシング236とを有する。液室234には前述した容器202(図1参照)に収容された処理液201がポンプ203で供給路204を介して供給される。なお、塗布作動時における各ローラの回転方向は図3(b)の矢示方向である。
【0038】
ここで、図3(a)、(b)に示すように、搬送ローラ235に塗布ローラ232が接し、塗布ローラ232にスクイーズローラ233が接して配置されている。また、スクイーズローラ233は液室234内の処理液201に浸されるように配置されている。なお、これら各ローラはそれぞれの軸端に設けられるベルト回転伝達系を介して駆動モータ237m(図4参照)に連結され、非作動時に各ローラは非回転に保持され、適時に作動状態に切り換わると各ローラは互いに当接状態のまま回転駆動制御される。
【0039】
更に、液室234には、液室234内の処理液201の高さを検知する第1、第2液面検知手段である液面センサ261、262を備えている。第1液面センサ261は、処理液201の液面高さが第1高さ位置以上であることを検知し、第2液面センサ262は、第1高さ位置より高い第2高さ位置以上であることを検知する。これら両液面センサ261、262は制御手段500に接続される。この制御手段500は液室234内の処理液201の高さが第1高さを下回るとポンプ203を駆動し、第2高さを上回るとポンプ203を非作動に保持し、液面を適性レベル内に保持するよう液面保持制御機能部として機能する。
【0040】
図1に示すように、処理液塗布装置200の搬送路下流側に搬送ベルト102と記録ヘッドユニット101とからなる画像形成部が配備される。
搬送ベルト102は、無端状ベルトであり、搬送ローラ121とテンションローラ122との間に掛け渡されて周回するもので、経路Rを形成するようにしている。この搬送ベルト102に対する用紙100の保持は、例えば静電吸着、空気の吸引による吸着などを行う構成とすることや、その他の公知の搬送手段を用いることができる。また、ローラ対による搬送手段を用いることもできる。
そして、搬送ベルト102の周回移動で搬送されて記録ヘッドユニット101から各色の液滴が吐出されて画像が形成され、その後デカーラユニット300を経て排紙トレイ104に排出される。
【0041】
記録ヘッドユニット101は、液滴を吐出する複数のノズルを用紙幅相当分の長さに配列したノズル列を有するライン型液体吐出ヘッドから構成される。各ライン型液体吐出ヘッドは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインク滴を記録ヘッド101y、101m、101c、101kを備えている。なお、これに代えて、シリアル型画像形成装置として記録ヘッドをキャリッジに搭載する構成とすることもできる。なお、インクの色の数及び用紙搬送方向に対する配置順序はこれに限るものではない。
用紙100は記録ヘッドユニット101にて画像を形成後、デカーラユニット300内の経路Rに搬送される。
【0042】
搬送ベルト102から中間搬送ローラ対301へ送り込まれた用紙100は、軸がバネ302によって支持された支えローラ303を介して、排紙ローラ対304へ送り込まれて排紙部の排紙トレー400に排紙される。
経路Rを直状に形成する中間搬送ローラ対301の上側のローラ301aと、排紙ローラ対304の上側のローラ304aと、支えローラ303とは、それぞれが接触面積の小さい拍車を複数列設した構成を採る。
図2(a)はデカーラユニット300内でデカールを行った際の図である。デカーラユニット300は搬送路の上下位置に中間搬送ローラ対301と排紙ローラ対304を配備し、それらの中間部に支えローラ303を上下変位可能に配している。更に、図1に示すように、支えローラ303の直上に搬送路Rと直行する方向に沿って空気を噴出す空気ダクトDを設け、その空気ダクトDの上端にはファン等からなる送風機構305が配備されている。送風機構305の送風モータ305mは図4に示すモータドライバ505cを介して噴出し風切替制御部506に駆動制御される。
【0043】
ここで、送風機構305より空気ダクトDを介して噴き付けられる下降気流は中間搬送ローラ対301と排紙ローラ対304に挟持された用紙100を支えローラ303に向けて押し付けるように噴出され、上に凸状にカールする用紙100を逆カール方向にクセ付けするような機能を備える。なお、噴出し風切替制御部506はカール情報に応じて複数のクセ付けレベルに応じた送風量を切替るように制御する。
送風機構305の直下には、支えローラ303が対向配置されている。送風機構305によって送り出された風は、逆カール方向に用紙100を押し付ける。押し付けられた用紙100によって、支えローラ303とバネ302は押し下げられ、この挙動により搬送路より下方である、支えローラ303に用紙100は湾曲され、逆カール方向にクセ付けが成される。
【0044】
中間搬送ローラ対301と排紙ローラ対304の回転速度差の設定と、送風機構305が噴出す送風量は、制御手段500に入力されている画像データである、インクの吐出量や紙厚に応じて、制御されるようになっている。
図2(b)は、デカーラユニット300でデカールを行わなかった際の一例である。画像データのインク付着量データや紙厚検知センサ136のデータから、デカールは不要と判断された場合、中間搬送ローラ対301と排紙ローラ対304は速度差を生じないで駆動することとなる。また、送風機構305も送風しないため、支えローラ303は押し下がることなく、搬送路Rを直状に保持し、搬送路R上の用紙100はストレートな状態で、デカーラユニット300を通過して排紙される。
【0045】
次に、この画像形成装置Mの制御手段500の概要について図4に示すブロック説明図を参照して説明する。
この制御手段500は、画像形成装置全体の制御を司るもので、そのうち、本発明に係る噴出し風切替制御部506と、処理液塗布装置200の塗布制御部502と、ヘッド制御部503と、ピックアップローラ131を給紙モータ131mにクラッチ137を介して断接制御するクラッチ制御部504と、モータドライバ505cの搬送制御部505とを兼ねるマイクロコンピュータで構成した主制御部501を備えている。
【0046】
図4に示すように、主制御部501は、外部の情報処理装置などから転送される画像データ及び各種コマンド情報に基づいて用紙に画像を形成するために、ヘッド制御回路503cに印刷用データを送出し、また給紙クラッチ137を駆動してピックアップローラ131を回転させて給紙トレイ103から給紙を行わせ、モータドライバ505cを介して、給紙モータ132mを駆動して給紙ローラ132や各搬送ローラ133を回転させ、レジストモータ505mを介してレジストローラ134を所定タイミングで駆動させ、更に、紙送りモータ507mを駆動制御して搬送ベルト102を周回移動させ、更に、排紙モータ508mを駆動制御して排紙ローラ対301、排紙ローラ対304を回転させ、更に、駆動モータ237mを駆動して塗布ローラ232、233、235等を回転させる、などの制御を行う。
【0047】
ここで、ヘッド制御回路503cは、主制御部501から受領する印刷データ信号に基づいて、記録ヘッドユニット101の液滴を吐出させるための圧力発生手段を駆動するためのデータを生成し、このデータの転送及び転送の確定などに必要な各種信号などを記録ヘッドユニット101に含まれるヘッドドライバに転送する。しかも、不図示の駆動波形データ格納手段である記憶部、駆動波形のデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器や電流増幅器等で構成される駆動波形生成部、ヘッドドライバに与える駆動波形を選択する選択手段を含み、1つの駆動パルス(駆動信号)或いは複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形を生成してヘッドドライバに出力して、記録ヘッドユニット101を駆動制御する。
【0048】
次に、第1の実施形態における画像形成装置Mの動作について図5のプリント制御処理ルーチンに沿って説明する。
まず、用紙100の搬送(供給)において、制御手段500が図示していない駆動力伝達系に駆動命令を出し、給紙クラッチ137をオンし、ピックアップローラ131を回転駆動させて、用紙100の供給を開始する(ステップs1)。
この用紙供給時、ピックアップローラ131は、給紙トレイ103から用紙100を1枚ずつ取り出して、下流に設けられた給紙ローラ132、レジストローラ対134に向かって供給する。用紙100が供給される際、制御手段500は、内蔵されているROMに記憶されている用紙100の表面の摩擦係数や、必要とする用紙100の表面を改質する改質剤の塗布量情報を取得する(ステップs2)。
【0049】
次いで、用紙100の表面の摩擦係数に応じた時間、ピックアップローラ131を駆動し、これにより給紙トレイ103から取り出された用紙100はピックアップローラ131により搬送されてレジストローラ対134に当接する。この場合、用紙100がレジストローラ対134に当接する際、傾斜(斜行)した状態で当接する場合がある。
そこで制御手段500は、用紙100がレジストローラ対134に当接した後の所定時間が経過するまで、ピックアップローラ131を駆動させ続ける。これにより、駆動していないレジストローラ対134に向かって、一定のループを形成し当接する。これに伴い、用紙100の先端部分全域が、レジストローラ対134の長手方向全体に渡って当接し、これにより、斜行が補正され用紙100の長手方向が搬送方向の直交方向に対し平行になる。(ステップs3)
次に、レジストローラ対134を適正時点で駆動させる。これにより、用紙100はレジストレローラ対134に、確実にニップされ、確実に搬送される。(ステップs4)
次に、処理液塗布装置200における用紙100を搬送する搬送ローラ235と、用紙100に処理液201を塗布する塗布ローラ232と、塗布ローラ232上の液膜を薄くするスクイーズローラ233とを駆動モータ237m(図4参照)を介して駆動し、処理液塗布作動を行い、同時に、処理液保持制御を行なって、液室234に処理液201が適量保持されるようにポンプ203を駆動制御する。(ステップs5)
この際、改質剤の塗布量を用紙に適した量に保持するように、スクイーズローラ233による塗布ローラ232上の液膜を調整制御する。
【0050】
次に、改質剤塗布後の用紙100が搬送ベルト102に向かう所定タイミングで、搬送ベルト102が周回駆動され、この搬送ベルト102に付設の空気吸引手段が同時に駆動する。(ステップs6)、これによって、搬送ベルト102の上面に用紙100が平坦に密着され、搬送される。
更に、用紙100の先端が記録ヘッドユニット101と対向する位置まで搬送されると、制御手段500のヘッド制御部503は、記録ヘッドユニット101内のヘッドドライバに1つの駆動パルス(駆動信号)或いは複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形を生成してヘッドドライバに出力し、記録ヘッドユニット101を駆動する。各ライン型液体吐出ヘッド101y〜101kは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインク滴をノズルからインクを吐出させ、用紙100に吐出する。各ライン型液体吐出ヘッド101y〜101kは、用紙100の幅方向全体に渡って延びているため、一度のインク吐出で、用紙100の幅全体に渡って記録媒体60に画像を記録する(ステップs7)。
【0051】
その後、画像記録を伴って、搬送ベルト102がその上の用紙100を搬送方向に搬送させる。このため、用紙100の上面、即ち、改質剤塗布後の上面には、その搬送方向に順次画像が記録されていく。
この際、用紙100は、搬送ベルト102上に設けられた多数の吸引孔102aを通じて全面をエアー吸引されて、密着搬送され、デカーラユニット300に向け搬送される。
改質剤塗布後の用紙100がデカーラユニット300に達するに先立ち、制御手段500は、内蔵されているROMに記憶されている用紙100の表面の摩擦係数や、改質剤の塗布量情報や、画像情報を取得し、それらより、デカールを行うか、否か判断する。(ステップs8)。
【0052】
ここで、用紙100が厚紙であり、カールの問題が生じないと判断したような場合、No側に進み、この回の制御を終了させる。即ち、厚紙等を通過支える場合には、支えローラ303が用紙100を支え、搬送路Rを直状(ストレート)に維持するため(図2(b)参照)、厚紙の搬送性を損なうことがない。
一方、制御手段500はインク付着量データや紙厚検知センサ136のデータから、デカールが必要であるか判断し、デカール時と判断すると、ステップs9に達する。
【0053】
その上で、排紙ローラ対304に用紙100が送り込まれると、排紙センサ340が用紙100を検知し、その検知信号に応じて制御手段500が送風機構305を駆動する。排紙ローラ対304と中間搬送ローラ対301間の用紙100に対して、搬送方向と直交した方向に空気を噴出す。
この際、噴出し風切替制御部506は予め取り込まれているカール情報に応じて複数のクセ付けレベルに応じた送風量を切替るよう駆動モータ237mを駆動制御する。
更に、ここでの排紙ローラ対304は中間搬送ローラ対301よりも回転速度を下げて回転駆動される。排紙ローラ対304が中間搬送ローラ対301より回転速度が遅くなることによって、用紙100は、中間搬送ローラ対301と排紙ローラ対304の間で、本来、処理液の塗布の影響で上に凸状のカール特性を示していたものが、送風機構305の空気ダクトDからの気流の影響を受け、用紙100は下方に押圧される。
【0054】
すると、ばね力で、搬送路状に対向配備されていた支えローラ303がばねの弾性力に抗して下方に変位し、図4(a)に示すように、搬送路から退却し、これにより、用紙100は逆に下に凸の逆カール方向にたわみを生じ、クセ付けされる。
この際、同時に送風機構305の空気ダクトDからの気流の影響を受け、用紙100の上面の改質剤や、記録ヘッドユニット101の各ライン型液体吐出ヘッド101y〜101kより受けたインク滴を早期に乾燥処理できる。
ここで中間搬送ローラ対301と排紙ローラ対304の回転速度差の設定と、送風機構305が噴出す送風量は、制御手段500に入力されている画像データである、インクの吐出量や紙厚に応じて、制御されるようになっている。
【0055】
即ち、中間搬送ローラ対301の回転数N1が排紙ローラ対304の回転数N2より所定量の差分回転数nα(=N1−N2)だけ高回転するように制御する。この差分回転数nαは中間搬送ローラ対301と排紙ローラ対304間に挟持された用紙100のたるみ量に対応し、差分回転数nαが多いほどたるみ量が増す。そこで、制御手段500は、たるみ量に応じて、即ち、差分回転数nαが多いほど支えローラ303の下方変位量h1を増すように制御する。これにより、中間搬送ローラ対301と排紙ローラ対304間に挟持された用紙100は差分回転数nαが多く、支えローラ303の下方変位量h1が増すほど確実に用紙100をたるみ変位させるようにできる。
【0056】
この後、用紙100後端を排紙センサ340が検知すると、用紙100は排紙トレー400に排出されるので、その時点で、中間搬送ローラ対301と排紙ローラ対304の回転、送風機構305の駆動が停止され、制御手段500のこの回の制御は終了する。
以上説明したように、本実施形態によれば、用紙100を支えローラ方向に撓ませることでデカールを行うことができ、厚紙等を通過支える場合には、搬送路をストレートに維持するため、厚紙の搬送性を損なうこともない。
【0057】
デカールが必要な場合に、中間搬送ローラ対301と排紙ローラ対304間の支えローラ303を用紙100に対して送風機構305による風力を受けることで、後退可能であるので、支えローラ303を搬送路から退却する方向に変位させる変位手段を別途に必要としない利点がある。更に、変位手段を別途に必要としないので、装置を小型化、簡略化できる利点もある。
なお、支えローラ303は送風機構305と間接的に連動するが、支えローラ303を上下位置に切換える変位手段を別途に設けて個別可動としてもよい。
また、中間搬送ローラ対301と排紙ローラ対304間の差分回転数nα(速度差)により用紙100が撓みやすくなり、送風機構305の風力が比較的少ない負荷であっても、用紙100を容易に変位させ、クセ付けできる。
また、送風機構305からの風を用紙100の上面に噴き付けるので、塗布の改質剤や、記録ヘッドユニット101の各ライン型液体吐出ヘッド101y〜101kより受けたインク滴を早期に乾燥処理できる。しかも、送風機構305からの風を吹きつけることによって、液体の乾燥が早くなるため、カールの進行を抑制することができるという利点もある。
【0058】
また、用紙100の上面の改質剤や、記録ヘッドユニット101の各ライン型液体吐出ヘッド101y〜101kより受けたインク滴を画像形成直後に送風機構305からの風を吹きつけることにより、早期に乾燥処理できる。
また、上述の実施形態によれば、画像記録の前に搬送ローラ235と塗布ローラ232と、スクイーズローラ233等を用いて処理液が塗布されるため、塗布される液体量が多くなり、カールが大きく生じやすい傾向にある。そのような場合であっても、処理液塗布後に速やかに乾燥と同時にデカールを行うことにより用紙100の搬送性の低下を抑制でき、ジャム発生を防止できる。
【0059】
また、液体の付着量に応じて、送風機構305からの風量を調整し、支えローラ303の後退量h1を変更させることによって、適正な量でクセ付けできる。このため、過剰なクセ付けによるカールを防ぐことができるという利点もある。
また、用紙100の種類や厚さに応じて、送風機構305からの風量を調整し、支えローラ303の後退量を変更させることによって、適正な量でクセ付けされるため、過剰なクセ付けによるカールを防ぐことができる。
また、支えローラ後退量の制御に合うように風量制御を行うので、正確にデカール量を制御でき、過剰なクセ付けによるカールを防ぐことができる。
【0060】
上述した画像形成装置Mでは、搬送ベルト102上の経路Rに対向配備の記録ヘッドユニット101よりも用紙搬送方向上流側に用紙100に処理液を塗布する処理液塗布装置200を、記録ヘッドユニット101よりも用紙搬送方向下流側に用紙100を変位させるデカーラユニット300を配備する構成を採っていたが、これに代えて、図6に示すように、記録ヘッドユニット101の用紙搬送方向下流側に処理液塗布装置200aを配備し、その下流にデカーラユニット300を配備して画像形成装置Maを構成してもよい。なお、図6中の各符号は図1の画像形成装置Mで用いる部材と同一のものに同一符号を付し、重複説明を略した。
【0061】
この画像形成装置Maの場合も、図1に示した画像形成装置Mとほぼ同様の作用効果が得られ、特に、レジストローラ134と記録ヘッドユニット101の相対間隔を狭められ、副走査方向における画像形成位置ずれの発生を確実に防止できる。
【符号の説明】
【0062】
100 用紙(被記録媒体)
101 記録ヘッドユニット
102 搬送ベルト
200 処理液塗布装置(付与手段)
208 塗布部
300 デカーラユニット(変位手段)
301 中間搬送ローラ(第1のローラ対)
302 バネ
303 支えローラ
304 排紙ローラ対(第2のローラ対)
305 送風機構
500 制御手段
D 空気ダクト
M、Ma 画像形成装置
R 経路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特開2001−048399号
【特許文献2】特開2008−185789号
【特許文献3】特許第4082552号
【特許文献4】特開2002−241012号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体へ液体を付与し画像を形成する画像形成装置において、
前記液体の付与を行う付与手段の下流に、前記被記録媒体を搬送する第1のローラ対と、前記第1の搬送ローラの下流側に第2のローラ対が配置されており、
前記2つのローラ対間を前記被記録媒体が通過する経路に、該経路から後退可能に支持された支えローラを有し、
前記経路を通過する前記被記録媒体を前記支えローラ方向に変位させる変位手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1のローラ対と前記第2のローラ対は速度差を変化させる手段を有し、
前記支えローラを後退させた時に前記第1のローラ対の速度を前記第2のローラ対の速度よりも早くする制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記変位手段が被記録媒体に対して送風を行う送風手段であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記支えローラが弾性体で支持され、前記送風手段の風圧により被記録媒体とともに後退することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記液体の付与を行う付与手段が、液体を吐出して画像を形成する液体吐出ヘッドであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記液体の付与を行う付与手段が、処理液を塗布して被記録媒体に画像を定着させる画像記録前処理もしくは画像記録後処理を行う手段であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記被記録媒体への液体の付着量に応じて、前記支えローラ後退量を制御することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記被記録媒体の種類や厚さに応じて、前記支えローラ後退量を制御することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記前記支えローラ後退量の制御に合わせて、前記変位手段の変位量の制御を行うことを特徴とする請求項7又は8に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−166902(P2012−166902A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29174(P2011−29174)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】