説明

画像形成装置

【課題】転写ニップ部の範囲を狭めることなく転写ローラと像担持体との接触面積の低減を図ることができる技術を提供する。
【解決手段】現像剤像を担持する像担持体と、像担持体に圧接されて像担持体との間に記録材を挟持搬送するニップ部を形成する転写ローラと、を備え、転写ローラに電圧が印加されることで、ニップ部において像担持体上の現像剤像が記録材に転写される画像形成装置において、転写ローラは、外周面上を複数の凸部及び凹部が軸方向に延びる凹凸表面を有する弾性層を有し、複数の凸部は、第1の高さの凸部と、第1の高さよりも低い第2の高さの凸部と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真記録方式や静電記録方式を用いる画像形成装置では、像担持体である感光体ドラムに潜像を形成し、この潜像をトナーにて現像した後、現像されたトナー像を、感光体ドラムと転写ローラが形成する転写ニップ部で感光ドラムから転写材に静電的に転写する。このような画像形成装置に用いられる転写ローラとしては、軸となる金属製の芯金の周りに、抵抗層や弾性層としての発泡スポンジ層を設けるタイプが従来から知られている。この発泡スポンジタイプの転写ローラは、表層が柔らかい弾性体のため、転写ローラの両端からの押圧により形成される転写ニップNを長手方向(転写ローラの軸方向)で均一に確保することができ、比較的に良好な画像を提供することができる。
しかし、この発泡スポンジタイプの転写ローラは、製造途中で発泡させる工程があり、成型直後の状態では外径精度が不均一である。ローラ外径を所定の寸法に合わせ込むため、発泡スポンジタイプの転写ローラは表面を研磨して外径精度を均一にする工程が必要である。
このような問題を解決するために、特許文献1の転写ローラに、ソリッドタイプの転写ローラを用いる方法が提案されている。このソリッドタイプの転写ローラは、非発泡ゴム、樹脂、または、非発泡ゴムと樹脂を混合して形成されたソリッドゴムを表面層に用いたローラである。ソリッドタイプの転写ローラは、発泡スポンジタイプの転写ローラよりも、製造工程において外径精度に誤差が生じ難く、ローラ外径を所定の寸法に合わせ込み易いメリットがある。
しかし、ソリッドタイプの転写ローラを用いたときには次のような課題がある。ソリッドタイプの転写ローラは、発泡スポンジタイプに比べて硬度が高いため、転写ニップ部Nの転写ローラの回転方向の幅を、転写ローラの長手に亘って十分に確保するのが難しい。これは、発泡スポンジタイプに比べて硬度が高いソリッドタイプは、発泡スポンジタイプの時と同じ加圧力で転写ローラを付勢しても、弾性層が潰れ難いからである。そのため、ソリッドタイプは発泡スポンジタイプに比べると転写ニップ部Nの幅が長手方向に亘って全体的に細くなりやすく、特に、長手方向の中央領域の転写ニップ部が細くなり過ぎてしまう場合がある。この場合に、転写ニップ部Nの中央領域で所望の電流が流れず、中央領域の画像の濃度が両端領域の画像の濃度より薄くなる転写抜けが生じやすくなる。
このような問題を解決するために、弾性層としてのソリッドゴムを用いた転写ローラの表面に、ローラ軸方向に線状に延びる凹部と凸部を形成する構成が知られている。かかる構成によれば、感光ドラムに対して付勢された時に表面の凸部がしなり、転写ニップ部Nを広く確保することで、転写抜けを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−298855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ソリッドタイプの転写ローラに凹凸部を設けると、次のような課題がある。ソリッドタイプの転写ローラには、非発泡ゴム、樹脂、または、非発泡ゴムと樹脂を混合して形成されたソリッドゴムに加えて、パラフィン系のオイル等が含有されている。このオイルは、主に潤滑剤として、各種材料を均一に混練し、かつ、所望の凹凸形状に沿って押出し成型するのに欠かせない。しかし、このオイルは、転写ローラの表面から染み
出すことがあり、例えば、転写ローラと感光ドラムが長時間にわたり圧接した状態が続くと、徐々に染み出したオイルが対向する感光ドラムの表面に付着し、帯電や露光、転写不良などを引き起こす。また、その状態が悪化すると、オイルの染み出した跡や、画像濃度が薄くなるなどの画像不良につながることがある。
一方で、この染み出し量を軽減するため、含有するオイルを極端に減らすと、各種材料の潤滑性が悪化し、押出し成型後の凹凸形状にササクレやひび割れ等が生じやすくなる。
したがって、ソリッドタイプの転写ローラに凹凸形状を設けるには、潤滑剤としてのオイルが必要量は欠かせなく、むしろ、このオイルの染み出しを抑制する方法が望まれている。
【0005】
本発明の目的は、転写ニップ部の範囲を狭めることなく転写ローラと像担持体との接触面積の低減を図ることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明に係る画像形成装置は、
現像剤像を担持する像担持体と、
前記像担持体に圧接されて前記像担持体との間に記録材を挟持搬送するニップ部を形成する転写ローラと、
を備え、
前記転写ローラに電圧が印加されることで、前記ニップ部において前記像担持体上の現像剤像が記録材に転写される画像形成装置において、
前記転写ローラは、外周面上を複数の凸部及び凹部が軸方向に延びる凹凸表面を有する弾性層を有し、
前記複数の凸部は、第1の高さの凸部と、第1の高さよりも低い第2の高さの凸部と、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、上記目的を達成するために本発明に係る画像形成装置は、
現像剤像を担持する像担持体と、
前記像担持体に圧接されて前記像担持体との間に記録材を挟持搬送するニップ部を形成する転写ローラと、
を備え、
前記転写ローラに電圧が印加されることで、前記ニップ部において前記像担持体上の現像剤像が記録材に転写される画像形成装置において、
前記転写ローラは、外周面上を複数の凸部及び凹部が軸方向に延びる凹凸表面を有する弾性層を有し、
前記凹凸表面は、コーティング層で覆われていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明によれば、転写ニップ部の範囲を狭めることなく転写ローラと像担持体との接触面積の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1における画像形成装置の概略構成図。
【図2】本発明の実施例1における画像形成装置の転写ニップ部を示す模式図。
【図3】本発明の実施例1における転写ローラの構成を示す模式図。
【図4】本発明の実施例1における画像形成装置の転写ニップ部を示す模式図。
【図5】本発明の実施例1における転写ローラの構成を示す模式図。
【図6】本発明の実施例2における転写ローラの構成を示す模式図。
【図7】本発明の実施例2における画像形成装置の転写ニップ部を示す模式図。
【図8】本発明の実施例2における転写ローラの構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0011】
<実施例1>
図1は、本発明の電子写真方式の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。像担持体である感光ドラム1は、本実施例では負帯電のOPC感光体であり、所定のプロセススピードで矢印a方向に回転駆動される。帯電ローラ2は、感光ドラム1表面に所定の押圧力で接触し、帯電電源回路(不図示)から印加される帯電電圧によって、感光ドラム1を所定の極性、電位に帯電する。露光装置3は、入力される画像情報に応じてオン/オフ制御されたレーザ光Lを出射して帯電ローラ2で一様に帯電された感光ドラム1上を、その回転方向とは直角な方向に走査して露光する。この露光により、レーザ光Lが走査された部分の電荷が除去され、感光ドラム1表面に静電潜像が形成される。現像装置4は、内部に固定されたマグネットローラ(不図示)が設けられた回転自在の現像スリーブ4aを備えている。現像装置4は、現像剤(トナー)を薄層に現像スリーブ4a上にコーティングし、現像位置にて感光ドラム1表面に形成された静電潜像にトナーを付着させてトナー像として現像(可視像化)する。現像スリーブ4aには、現像電源回路(不図示)から現像電圧が印加される。
【0012】
転写部材である転写ローラ5は、感光ドラム1表面に所定の押圧力で接触して転写ニップ部Nを形成する。転写電源回路(不図示)から印加される転写電圧により、感光ドラム1と転写ローラ5との間の転写ニップ部Nにて感光ドラム1表面のトナー像を記録材Pに転写する。転写ローラ5は、矢印b方向(反時計方向)に回転される。定着手段15は、定着ローラ15aと加圧ローラ15bを有しており、定着ローラ15aと加圧ローラ15b間にてトナー像が転写された記録材Pを加熱、加圧して記録材P表面にトナー像を熱定着する。
【0013】
次に、上記した画像形成装置の画像形成動作について説明する。画像形成動作開始信号が発せられると、カセット7内の記録材Pが給紙ローラ8により1枚ずつ給紙されてレジストローラ対10まで搬送される。この際、プレフィードセンサ9で記録材Pの搬送が検知される。そして、トップセンサ11で記録材Pの先端が検知された後、感光ドラム1の回転に同期させてレジストローラ対10により記録材Pが転写ガイド12を介して、感光ドラム1と転写ローラ5との間の転写ニップ部Nに給送される。そして、転写ローラ5に転写電源回路(不図示)からトナーの帯電極性と逆極性(本実施例では正極性)の転写電圧が印加される。この転写電圧により、感光ドラム1から記録材P上にトナー像が転写される。そして、トナー像が転写された記録材Pは、転写電圧と逆極性(負極性)の電荷が付与された除電針13により除電され、記録材Pの自重により感光ドラム1から分離される。
【0014】
感光ドラム1から分離され記録材Pは、搬送ガイド14を通して定着手段15へ搬送され、定着手段15による加熱、加圧により転写トナー像が記録材P表面に熱定着され、排紙ローラ対16により外部に排出される。一方、トナー像転写後の感光ドラム1表面は、その表面がクリーニング装置6によって残留トナー(転写残トナー)やその他の付着物が除去されてクリーニングされ、次の画像形成に供される。
【0015】
次に、図2を参照して、転写ローラ5について説明する。図2は、転写ニップ部の構成
を示す模式図であり、(a)は感光体ドラム1と転写ローラ5を軸方向から見た図、(b)は感光体ドラム1と転写ローラ5をシート搬送方向から見た図である。図2(a)、(b)に示すように、本実施例の転写ローラ5は、芯金5aと弾性層5bを有する。具体的には、直径5mmの芯金上に、肉厚3.75mmの弾性層5bを形成し、ローラ外径は12.5mmである。転写ローラ5の軸方向である長手方向の寸法は218mm、抵抗値は1×10Ω以上3×10Ω以下の範囲としている。また、転写ローラ5は加圧バネ5dにより、長手両端部の芯金5aから軸受け5cを介して感光ドラム1に加圧力F(片側540gf(0.54×9.807N)、総圧1080gf(1.08×9.807N))で圧接され、転写ニップ部Nを形成する。転写ローラは、その両端で加圧力Fを受けているため、転写ニップ部Nは転写ローラの長手方向において両端側より中央領域の方が細くなる傾向にある。尚、本実施例の画像形成装置では、転写ローラ両端に作用する加圧力Fを総圧で0.54×9.807N以上1.08×9.807N以下の範囲内に設定すれば転写ニップ部において転写材の搬送を良好に行うことが可能である。
【0016】
転写ローラの弾性層5bは、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリプロピレン樹脂(PP)、イオン導電剤等を用いたソリッドゴムを使用している。本発明におけるソリッドゴムとは、発泡していない弾性体である。
【0017】
ソリッドゴムとして使われる材料は、熱可塑性樹脂あるいは熱可塑性エラストマーなどの成分(A)中に、架橋可能なゴム等の成分(B)を動的架橋により分散させ、ここにイオン導電性導電剤(C)を混入したものである。
【0018】
より詳しくは成分(A)として、耐候性に優れた水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーが好適であり、その中でも成型時の破断強度が強く、適度な伸縮特性を持つスチレン−エチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)などが良い。その他にも、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)などを用いても良い。あるいは、スチレン系以外でも、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系等、種々の熱可塑性エラストマーを用いる事ができる。
【0019】
また、成分(B)としてはEPDM(エチレンプロピレンゴム)を主成分とするゴム成分等が好適であり、EPDM以外のゴム成分とをブレンドしてもよい。EPDM以外のゴム成分としては、例えば以下に開示する材料を使用できる。クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)等のジエン系ゴム等である。これらを1種または2種以上混合してもよい。
【0020】
成分(C)のイオン導電性導電剤は、金属塩を含むイオン導電性の帯電防止剤を使用するのが好適である。環境特性や通電特性など、要求される転写ローラ抵抗値の特性に応じて材料や配合量の調整、また配合に関連する添加剤の調整や配合処理を適宜行った後に混練される。また、各種の熱可塑性エラストマーに動的架橋可能なゴム成分を予め分散させたような市販のコンパウンドに対して、イオン導電剤を混練する方法や、また導電性を有するエラストマーコンパウンドに、各種導電剤をカスタムして混練しても良い。
【0021】
上記に説明した材料は次に述べるような手順によって、転写ローラとして成型される。2軸押出機で、上記成分(A)の熱可塑性エラストマーと成分(B)の動的架橋の可能なゴムを混練する。また、オイルや可塑剤等の軟化剤、および混練時の加熱によりゴムの架橋を促進させる為に、フェノール樹脂等の樹脂架橋剤を添加し、所定の時間混練し動的架橋を行ったのち冷却してペレットとして取り出す。次いでこれらのペレットを単軸押出成型機に各種のイオン導電剤とともに投入し、十分にイオン導電剤を分散させ、口金(ダイ
)を通して押出す。ここでは、単軸押出成型時に導電剤を混入したが、事前に別工程で混練してあってもよい。
【0022】
以上のように、本実施例のソリッドゴムとは、成型工程において整泡剤を混合させて発泡させる工程がない、弾性体である。押出し成型によって成型されたソリッドゴムの表面は、研磨することなく成型したままの状態で所望の外径形状になる。なお、軟化剤、各種材料の潤滑剤として使用するオイルは、押出し成型によって成型されたソリッドゴムの表面にヒビ割れ、ササクレ等が生じない必要量を含有するものとする。
【0023】
図3〜図5を参照して、本実施例の転写ローラの特徴的構成について説明する。図3は、本実施例の転写ローラの構成を示す模式図であり、(a)は、転写ローラ5をシート搬送方向に見た模式図、(b)は、(a)のA部を拡大した図、(c)は、転写ローラ5を軸方向から見た図である。図4は、転写ニップ部の構成を示す模式図であり、(a)は、感光ドラム1と転写ローラ5を軸方向に見た模式図、(b)は、ニップ部を拡大して示す図である。図5は、本実施例の転写ローラの構成を示す模式図であり、(a)は、転写ローラ5を軸方向から見た模式図、(b)は、凹凸表面の寸法関係を示す模式図、(c)は、凹凸表面の寸法関係を示す模式図である。
【0024】
図3に示すように、本実施例の転写ローラ5の表面には、ローラ軸方向に直線状に延びた凹部5eと凸部5j(第1の高さの凸部)、低凸部5m(第2の高さの凸部)を設けている。また、図4に示すように、本実施例では、長手方向に直線状に延びた凹部5eと凸部5jを設けることによって適正幅の転写ニップ部Nを長手方向に亘って確保できる。転写ローラ5は、感光ドラム1の回転方向における転写ニップ部の領域内で凸部5jがしなることで、長手中央領域でも転写ニップ部Nの幅を確保している。この理由を、以下のように考える。画像形成中の転写ニップ部Nでは凸部5jがしなる、つまり折れずに曲がった状態になる。凸部5jがしなるように構成することで、ソリッドゴムの感光ドラム1又は転写材に接触する部分の硬度、即ち転写に関わる部分の硬度を低くすることが可能である。その結果、長手中央領域でも転写ニップ部Nの幅を確保し、転写抜けを抑制できると考えられる。また、凸部5jは、先端が尖っていたり、台形のような形状であったりしてもよい。
【0025】
また、本実施例では、凸部の高さを、周方向で段違い(高さが異なるように)に形成することで、転写ローラ5と感光ドラム1が圧接したときに、感光ドラム1と接触しない低凸部を設けている。低凸部5mは、隣り合う凸部5jに比べて凸を低くしているので、感光ドラムに対して、常に非接触の状態を維持している。つまり、凸部5jと低凸部5mに段差(高さの差)を設けることで、転写ローラ5の表面で感光ドラムに接触するのは、圧接でしなりを形成している凸部5jのみとなる。その結果、転写ローラ5と感光ドラムとの接触面積を小さくできるので、高温多湿環境下などで転写ローラからオイル成分が染み出した場合でも、それらが感光ドラムの表面に付着する量を軽減し、オイル付着に起因する画像不良を抑制できると考えられる。なお、低凸部5mを完全になくすことでも、転写ローラ5と感光ドラムとの接触面積を減らすことはできるが、低凸部5mをなくすと、転写ローラ5と転写材Pとの空隙が広がりすぎるため、放電による転写材Pへの電荷供給が不足して、転写性が悪化してしまう。低凸部5mは、上述した問題に対応するために必要であり、感光ドラムに接触していないものの、非常に近い位置に存在するため、低凸部5mから転写材Pへの放電が起こり、転写性の悪化を防いでいる。
【0026】
また、図5に示すように、Wは凹凸部の幅、D1は凹部5eの底面から凸部5jの頂点までの深さ、D2は凹部5eの底面から低凸部5mの頂点までの深さ、D3は凸部5jのしなり幅である。本実施例では、Wを400μm、D1を700μm、D2を500μm
、D3を100μmとしている。ただし、幅Wが100μm以上800μm以下、かつ、
深さD1が100μm以上1000μm以下を満たせば、凸部5jは適度なしなりを形成し、長手中央領域でも転写ニップ部Nの幅を確保できる。また、凸部の深さがD1>D2を満たし、かつ、凸部5jと5mの高低差┃D1−D2┃が、凸部5jのしなり幅D3に対して、┃D1−D2┃>D3を満たせば、低凸部5mは、感光ドラムと非接触の状態となり、オイル付着に起因する画像不良を抑制できる。
【0027】
また、凸部5jや低凸部5mは、先端が尖っていたり、台形のような形状であったりしてもよい。また、このような形状は、製造工程において押出し成型機の口金の内面に凹凸形状をつくり、この口金から材料を押出すことで成型可能である。
【0028】
表1に、本実施例の転写ローラ5を用いた場合の、オイル付着に起因する画像不良の結果を示す。本実施例の転写ローラ5は、表面に凹部5eと、高さの異なる凸部5j、低凸部5mを設けている。比較として、従来例の転写ローラを用いる。従来の転写ローラの表面は、凹部5eと凸部5jのみで構成されている。本実験は、オイルが染み出しやすい高温多湿環境下(40℃95%)に、感光ドラムと転写ローラを圧接した状態で画像形成装置を放置し、所定の放置時間を経過した後に、画像サンプリングを行った。オイル付着に起因する画像不良の発生レベルは、R1からR5までランク付けした。発生しない、もしくは、極軽微に発生する場合を良好○(R3.0以上)、軽微に発生するが数枚で完全に消える場合をやや良好△(R2.0以上R3.0未満)、目立つレベルで発生する場合を不良×(R2.0未満)とした。なお、画像サンプリングには、プロセススピード150mm/sec、26枚/分(A4縦送り)のプリンタを使用した。
【0029】
【表1】

【0030】
表1に示すように、このオイル付着に起因する画像不良は、放置時間を長くするほどレベルが徐々に悪化し、約14日を経過するあたりで発生レベルが飽和することが確認された。これは転写ローラから染み出すオイル量が徐々に飽和するためと考えられる。また、本実施例は、従来例からの改善効果は明らかであり、放置日数が14日を経過しても、やや良好なレベルを維持することが確認された。これは、凸部5jと低凸部5mに段差を設けたことで、転写ローラと感光ドラムが圧接したときに、感光ドラムと接触しない凸部を設けたためと考えられる。つまり、転写ローラ5と感光ドラムとの接触面積が小さくなるため、転写ローラから染み出したオイルが感光ドラムに付着する量が軽減され、オイル付着に起因する画像不良が抑制されたと考えられる。なお、本実施例では、感光ドラムと接触する凸部5jと低凸部5mを交互に設けていたが、感光ドラムと接触しない低凸部5mの割合を増やしてもよい。こうすることで、感光ドラムと転写ローラとの接触面積はさらに小さくなり、オイル付着による画像不良はますます発生しにくくなると考えられる。また、本実施例で、低凸部5mは感光ドラムに接触しない凸部としているが、完全に感光ドラムに接触する凸部5jに比べて低い凸部であれば、たとえ感光ドラムに接触しても、そ
の接触状態が弱まるので、オイルの付着は軽減される。
【0031】
<実施例2>
次に、図6〜図8を参照して、本発明の実施例2に係る転写ローラについて説明する。図6は、本実施例の転写ローラ5の構成を示す模式図である。図7は、本実施例における転写ニップ部の様子を示す模式図である。図8は、本実施例の転写ローラ5の構成を示す模式図である。
【0032】
本実施例は、転写ローラの弾性層の表面にオイルの染み出しを抑制するコーティング層を設けることで、感光ドラムへのオイルの付着を防止することを目的としている。なお、前述した実施例1と同様の構成、同一部材には同一記号を付し、説明を省略する。
【0033】
図6に示すように、本実施例の転写ローラ5は、直径5mmの芯金5a上に、肉厚3.75mmの弾性層5bを形成し、表面には長手方向に直線的に延びた凹部5eと凸部5jがそれぞれ隣接している。また、本発明の特徴的な部分として、弾性層5bの凹凸部の最表面にコーティング層5kを設けている。
【0034】
コーティング層5kは、炭酸カルシウムなどの粉末タイプで、平均粒径が数ミクロンから数十ミクロン程度のものを、薄く均一にコーティングして、コーティング層5kの厚さが100μm以下となるようにしている。コーティング層5kの厚みを100μm以下としているのは、次の理由による。例えば、コーティング層5kを厚くしすぎると、コーティング層5kが抵抗体となるので、転写ローラの抵抗値が高くなり、良好な画像が得られなくなる。また、弾性層5bにある表面の凸部5jのしなりが低下するので、転写ローラ5の表面が硬くなり、先と同様に、良好な画像が得られなくなる。したがって、本実施例のように炭酸カルシウムのような粉末をコーティングする場合、厚みは100μm以下であることが好ましい。
【0035】
コーティング層5kの材質は、転写ローラ5からのオイルの浸透を防止したり、吸油効果のあるもので、かつ、コーティング層5kが剥がれた場合に、感光ドラム1や装置内の動作や画像などに影響を与えないものが良い。その中でも、転写材に充填使用されている填料であれば特に好ましい。なぜなら、転写材に使用されている填料であれば、耐久で生じる紙粉汚れの状態を初めから実現できるので、転写ローラの特性変化が少ないからである。例えば、本実施例で使用する炭酸カルシウム以外に、粉末ならばタルク、カオリンクレー、シリカなどが好ましい。
【0036】
コーティング層5kの作製方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば、コーティング剤となる粉末を溶剤、または水に分散させて、表面コーティング液を作製し、転写ローラ5の弾性層5bに塗布して乾燥させる。
【0037】
コーティング層5kの塗布位置は、弾性層の表面に存在する凹凸部の全域を覆うように塗布している。ただし、図7に示すように、コーティング層5kは、少なくとも、凸部がしなった状態で、感光ドラムと接触する領域に塗布されていれば良い。例えば、凸部5jがしなる方向は、転写ローラ5と、それに対向する感光体1との周速関係によって異なる。転写ローラ5の周速をVt、感光体1の周速をVdとすると、Vt<Vdの場合は、感光体1の回転に倣う方向に凸部がしなりやすい。逆に、Vt>Vdの場合は、感光体1の回転に逆らう方向に凸部がしなりやすい。Vt=Vdの場合は、回転力による影響を受けにくいので、左右のどちらにもしなる可能性がある。つまり、転写ローラ5と感光ドラム1の周速関係に応じて、凸部5jのしなる方向が異なるので、その方向に合わせて、少なくとも、転写ローラ5と感光ドラム1が接触する領域にコーティング層5kを設けることが好ましい。
【0038】
また、図8に示すように、感光ドラム1への圧力が高く、オイルが染み出しやすい長手端部ほどコーティング層5kの厚みを増すなど、長手方向でコーティングの量を変化させてもよい。
【0039】
表2に、本実施例の構成で、転写ローラ5にコーティング層5kを設けた場合の、オイル付着に起因する画像不良の結果を示す。なお、実験の方法、画像レベルの判定方法は実施例1と同様である。また、本評価で使用した転写ローラは4種類で、コーティング層を設けた場合2種類と、コーティング層を設けない場合を2種類、とを比較した。各2種類は、転写ローラと感光ドラムとの接触面積を変えるため、転写ローラに低凸部5mを設けている実施例1の構成と、低凸部5mを設けていない従来例の構成、とを準備した。
【0040】
【表2】

【0041】
表2に示すように、このオイル付着に起因する画像不良は、放置時間を長くするほどレベルが徐々に悪化する。コーティング層なしの場合は、約14日を経過するあたりで発生レベルが飽和するのに対し、コーティング層ありの本実施例では、約28日を経過するあたりで発生レベルが飽和することが確認された。これは、転写ローラから染み出すオイル量が徐々に飽和するとともに、コーティング層がオイルの浸透を遅らせているためと考えられる。
【0042】
また、コーティング層を施した場合の改善効果は明らかであり、放置日数が28日を経過しても、やや良好なレベルを維持することが確認された。さらに、低凸部5mを設けている実施例1の構成にコーティング層を設けることで、放置日数が28日を越えても、良好なレベルを維持することが確認された。以上のように、転写ローラの弾性層の表面にオイルの染み出しを抑制するコーティング層を設けることで、感光ドラムへのオイルの付着を防止することができる。
【0043】
<本発明の特徴>
本発明は、転写ローラと像担持体(感光ドラム)とが接触または近接して転写ニップ部を形成する領域において、転写ニップ部の範囲(広さ)を狭めることなく両者が直接接触する領域(接触状態の強い領域)を減らすことが可能な構成を実現するものである。言い換えると、転写ローラと像担持体とが直接接触しない非接触の領域(あるいは接触状態の弱い領域)を転写ニップ部に可及的に広範囲に形成することである。転写ニップ部を形成するためには、必ずしも転写ローラと像担持体とが直接接触している必要はなく、像担持
体上の現像剤像を記録材へ転写するための放電を引き起こすことができる程度に像担持体に近接していればよい。すなわち、記録材の挟持搬送と現像剤像の記録材への転写が十分に行える限りにおいては、転写ニップ部には非接触の領域を形成してもよい。このように転写ニップ部に非接触の領域(低接触領域)を形成することにより、転写ローラと像担持体とが直接接触する状態(強く接触する状態)が継続することによる不具合を低減することができる。
【0044】
本発明は、発泡させずに成形される固めの弾性体(ソリッドゴム)による弾性層の成形性の高さを利用し、弾性層の外周面上にローラ軸方向に線状に延びる複数の凹部と凸部を形成して、像担持体と接触面を凹凸表面とした構成において特に好適である。すなわち、像担持体への圧接時に凸部がしなる(たわむ)ように構成することにより、非発泡成形される固めの外周層において柔らかさを出し、転写ローラと像担持体の接触面積(ニップ部)の拡大を図った構成である。
【0045】
ソリッドゴムを用いた弾性層の表面に、ローラ軸方向に線状に延びる凹部と凸部を形成するには、各種材料に、潤滑剤や軟化剤としてのオイルを混ぜて、成型性を向上しなければならない。しかし、このオイルが転写ローラから染み出して像担持体に付着すると、帯電や露光、転写不良などを引き起こし、その状態が悪化すると、オイルの染み出した跡や、画像濃度が薄くなるなどの画像不良につながることがある。本発明によれば、このオイルの染み出しに起因する画像不良を、転写ローラに含有するオイル量を減らすことなく、解決することが可能となる。
【0046】
実施例1では、凹凸表面の凸部を、第1の高さの凸部と、第1の高さの凸部よりも低い第2の高さの凸部(低凸部)と、で構成することにより、転写ニップ部の範囲を狭めることなく両者が直接接触する領域を低減可能な構成を実現している。第2の高さは、転写ローラが像担持体に圧接されたときに、第1の高さの凸部が変形しても、第2の高さの凸部は像担持体の表面と接触しない高さ、あるいは、完全に非接触とはならないまでもオイルの付着が軽減される弱い接触状態となる高さである。すなわち、転写ローラの弾性層の外周面を凹凸表面として柔軟性を持たせるとともに、凸部の全てが像担持体に接触しない(凸部の全てが強い接触状態で接触しない)ように凸部の高さを変化させた構成である。言い換えると、たわみ変形する凸部の間の凹部に、像担持体の表面との隙間を狭める別の凸部を設けた構成と言うこともできる。凸部の高さ(突出量)や形状は、現像剤像を記録材へ転写するための放電を像担持体との間で引き起こすことができる限りにおいて任意である。
【0047】
また、実施例2では、転写ローラの弾性層の表面にオイルの染み出しを抑制するコーティング層を設けている。コーティング層は、転写のための放電を凸部と像担持体の表面との間で引き起こすことができる程度の厚さで形成される。すなわち、所定の厚さのコーティング層を転写ローラと感光ドラムとの間に介在させることにより、転写ニップ部の範囲を狭めることなく両者が直接接触する領域が形成されないように構成している。
【0048】
各実施例によれば、凹凸を設けることで拡大したニップ部の広さを狭めることなく、転写ローラと像担持体とが直接接触する領域を低減するまたは無くすことができる。これにより、転写ローラから染み出したオイルが像担持体に付着する量の軽減、または、像担持体へのオイルの付着を防止することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…感光ドラム(像担持体)、5…転写ローラ、5b…弾性層、5e…凹部、5j…凸部(第1の高さの凸部)、5m…低凸部(第2の高さの凸部)、5k…コーティング層、N…転写ニップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤像を担持する像担持体と、
前記像担持体に圧接されて前記像担持体との間に記録材を挟持搬送するニップ部を形成する転写ローラと、
を備え、
前記転写ローラに電圧が印加されることで、前記ニップ部において前記像担持体上の現像剤像が記録材に転写される画像形成装置において、
前記転写ローラは、外周面上を複数の凸部及び凹部が軸方向に延びる凹凸表面を有する弾性層を有し、
前記複数の凸部は、第1の高さの凸部と、第1の高さよりも低い第2の高さの凸部と、を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第2の高さは、前記転写ローラが前記像担持体に圧接されたときに、前記第2の高さの凸部が前記像担持体の表面と接触しない高さであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2の高さは、電圧が印加されたときに、転写のための放電を前記第2の高さの凸部と前記像担持体の表面との間で引き起こすことができる程度に、前記第2の高さの凸部が前記像担持体の表面に近接する高さであることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
現像剤像を担持する像担持体と、
前記像担持体に圧接されて前記像担持体との間に記録材を挟持搬送するニップ部を形成する転写ローラと、
を備え、
前記転写ローラに電圧が印加されることで、前記ニップ部において前記像担持体上の現像剤像が記録材に転写される画像形成装置において、
前記転写ローラは、外周面上を複数の凸部及び凹部が軸方向に延びる凹凸表面を有する弾性層を有し、
前記凹凸表面は、コーティング層で覆われていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記凹凸表面は、少なくとも、前記転写ローラが前記像担持体に圧接されたときに前記像担持体と接触する領域がコーティング層で覆われていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記転写ローラは、両端部に作用する押圧力によって前記像担持体に圧接され、
前記コーティング層は、前記転写ローラの両端部に近づくほど厚みが増すことを特徴とする請求項4又は5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記コーティング層は、電圧が印加されたときに、転写のための放電を前記凸部と前記像担持体の表面との間で引き起こすことができる程度の厚さで形成されることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記コーティング層は、転写材に充填される填料を含むことを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−185362(P2012−185362A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48868(P2011−48868)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】