説明

画像形成装置

【課題】感光体への帯電器による放電生成物の付着を防止しうるトナー層を、未使用の現像剤を無駄に消費することなく形成し、像流れ等の画像不良の発生を抑制すること。
【解決手段】像担持体と、帯電手段と、露光手段と、現像手段と、転写手段と、クリーニング手段と、前記クリーニング手段により除去されたトナーにより前記像担持体上にトナー層を形成するトナー吐出手段と、前記トナー吐出手段により前記像担持体上に前記トナー層を形成し、前記像担持体を回転させて前記トナー層の位置を前記帯電手段に対向する位置に移動させた後に停止するように制御するトナー層形成モードを行う制御手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関し、特に帯電器から発生する放電生成物の感光体への付着を防止する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、感光体表面を帯電器により一様に帯電する際に、帯電器の放電によりオゾンや窒素酸化物といった放電生成物と呼ばれるものが発生する。この様なオゾンや窒素酸化物等の放電生成物は感光体表面に付着し、大気中に存在する水分子と結合して感光体表面の電気抵抗を低下させ、濃度低下や像流れ等の画像不良の発生の原因となる。
【0003】
一方、クリーニング性が良く、耐摩耗性の高い長寿命の感光体ドラムとして、アモルファスシリコン系等の無機質の材料や、有機質の材料に紫外線等の光を照射して光硬化させる材料を用いた、高硬度表層感光体が好ましく用いられている。然るに、この高硬度表層感光体は、表面をクリーニングブレードにより削ることが困難であるため、帯電器により表面に付着した放電生成物をクリーニング工程で除去することが難しく、像流れ等の画像不良が発生し易いという問題があった。特に、空気中の水分濃度が高くなる高温高湿環境下での画像形成においては大きな問題であった。この像流れは、濃度低下に繋がるとともに、ドットで形成される画像においては画像濃度が高くなる場合もあり、所望する画質の画像形成を安定的に行うという観点からも問題である。
【0004】
図15は、記録材Pに画像占有率70%の網点画像を形成した出力画像に像流れが発生した例を示す図である。
【0005】
図15において、符号のRzは像流れが発生する領域を表し、符号のLpは、像流れが発生するピッチ、即ち円筒状の高硬度表層感光体(アモルファスシリコン感光体)の円周の長さを表す。像流れが発生する領域Rzでの画像濃度が高くなる理由は、像流れにより1つ1つの網点がつぶれされて尾を引き、画像占有率を高めるためである。即ち、像流れの発生により、本来あるべき画像占有率が正しく表現されないという例である。
【0006】
また、濃度低下は、感光体表面の電気抵抗の低下により、感光体表面に印加されるべき電位の一部が流されてしまうことにより生じる。
【0007】
このような高硬度表層感光体に対する帯電器による放電生成物の付着を防止する技術として、非画像形成時に現像装置から感光体ドラム上に現像剤を吐き出し、感光体ドラム上の帯電器に対向する位置に現像剤層(トナー層)を形成するという技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−206118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
然るに、特許文献1に記載の技術では、トナー層を形成するために、非画像形成時に現像装置から現像剤(未使用のトナー)を吐き出すため、画像形成時に使用可能な現像剤を消費してしまうという問題がある。特許文献1における現像剤の消費は、高湿時には感光体ドラムの回転の停止毎に行われるものであり、消費量が更に大きなものとなる。
【0010】
本発明の目的は、上記のような問題を解決し、未使用の現像剤を無駄に消費することなく、帯電器による放電生成物付着を防止しうるトナー層を感光体上に形成し、像流れ等の画像不良の発生を抑制しうる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的は下記の発明により達成される。
【0012】
1.像担持体と、
非接触でコロナ放電により前記像担持体を帯電する帯電手段と、
帯電された前記像担持体に静電潜像を形成する露光手段と、
静電潜像が形成された前記像担持体にトナーを供給してトナー像とする現像手段と、
前記像担持体に形成されるトナー像を被転写体に転写する転写手段と、
転写後の前記像担持体に残留するトナーを除去するクリーニング手段と、
前記クリーニング手段により除去されたトナーにより前記像担持体上にトナー層を形成するトナー吐出手段と、
前記トナー吐出手段により前記像担持体上に前記トナー層を形成し、前記像担持体を回転させて前記トナー層の位置を前記帯電手段に対向する位置に移動させた後に停止するように制御するトナー層形成モードを行う制御手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【0013】
2.任意の画像形成ジョブの終了時点から次の画像形成ジョブの開始時点までの放置時間を計測する放置時間測定手段、を有し、
前記制御手段は、前記放置時間と予め設定された前記帯電手段により生成された放電生成物の前記像担持体への付着による出力画像の画像品質への影響が出ない最大の限界値である限界放置時間とを比較し、前記放置時間が前記限界放置時間に達したときに、前記トナー層形成モードを行うことを特徴とする前記1に記載の画像形成装置。
【0014】
3.前記限界放置時間は、画像形成装置内の湿度又は前記像担持体の累計回転数に応じて変更するように設定されていることを特徴とする前記2に記載の画像形成装置。
【0015】
4.前記トナー層形成モードへの切り替え操作を行う操作手段、を有し、
前記制御手段は、前記操作手段の操作により前記トナー層形成モードへの切り替えを行うように制御することを特徴とする前記1に記載の画像形成装置。
【0016】
5.画像形成装置の電源のオンオフを切り替える電源操作手段、を有し、
前記制御手段は、前記電源操作手段の操作により前記トナー層形成モードへの切り替えを行うように制御することを特徴とする前記1に記載の画像形成装置。
【0017】
6.前記クリーニング手段は、回転自在に保持される弾性部材からなるローラ状の回転部材、を有し、
前記回転部材は、記録材に画像を形成する画像形成モードにおいては、前記クリーニング手段として前記像担持体上に残留するトナーを除去した後に除去したトナーの一部を保有し、前記トナー層形成モードにおいては、前記トナー吐出手段として保有するトナーを前記像担持体に向けて吐き出して前記トナー層を形成することを特徴とする前記1から5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【0018】
7.前記トナー吐出手段は、前記トナー層形成モードにおいては、前記回転部材と前記像担持体との間にトナーを吐出するための電位差を生じさせることを特徴とする前記6に記載の画像形成装置。
【0019】
8.前記制御手段は、前記トナー層形成モードにおいて、前記帯電手段又は前記転写手段を動作させて前記像担持体を帯電させ、前記像担持体と前記回転部材との間に電位差を生じさせるように制御することを特徴とする前記7に記載の画像形成装置。
【0020】
9.前記制御手段は、前記トナー層形成モードが終了した後に前記画像形成モードへ切り替えが行われる際に、前記像担持体を回転させて前記トナー層を前記帯電手段に対向する位置から前記クリーニング手段の前記像担持体の前記画像形成モードにおける回転方向の上流側の位置に移動させ、その後に、前記像担持体を前記像担持体の前記画像形成モードにおける回転方向に回転させ、前記クリーニング手段により前記トナー層形成モードにおいて形成された前記トナー層を前記像担持体から除去させるように制御することを特徴とする前記6から8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【0021】
10.前記制御手段は、前記トナー層形成モードが終了した後に前記画像形成モードへ切り替えが行われる際には、前記像担持体を前記画像形成モードにおける回転方向とは逆の方向に回転させるように制御することを特徴とする前記9に記載の画像形成装置。
【0022】
11.前記クリーニング手段はクリーニングブレードを有し、
前記クリーニングブレードは、前記回転部材の前記像担持体の前記画像形成モードにおける回転方向の下流側に配設されることを特徴とする前記7から10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【0023】
12.前記クリーニングブレードを前記像担持体に対して接離させるクリーニングブレード接離手段を有し、
前記制御手段は、前記トナー層形成モードにおいて前記クリーニングブレード接離手段を動作させ、前記クリーニングブレードを前記像担持体から離間させるように制御することを特徴とする前記11に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、感光体の帯電器による放電生成物の付着を防止でき、高硬度表層感光体を用いても像流れ等の画像不良が発生することがなく、かつ、感光体のクリーニング時に回収されたトナーを用いるため、未使用のトナーを無駄に消費することがない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成及び動作を説明するための概略断面図である。
【図2】本発明に係るクリーニング装置の実施形態における構成を示す概略断面図である。
【図3】本発明に係るトナー層形成モードにおけるトナー層Tbの形成から除去までの感光体ドラム1周辺の動作を説明するための概略断面図である。
【図4】本発明に係る画像形成装置の動作を制御する制御手段10による制御の流れを示すブロック図である。
【図5】本発明に係るトナー層形成条件を実測の放置時間とした画像形成装置の実施形態におけるトナー層形成モードの動作手順を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明に係るトナー層形成条件を湿度要因により補正された放置時間とした画像形成装置の実施形態におけるトナー層形成モードの動作手順を説明するためのフローチャートである。
【図7】本発明に係るトナー層形成条件を感光体ドラム1の累計回転数により補正された放置時間とした画像形成装置の実施形態におけるトナー層形成モードの動作手順を説明するためのフローチャートである。
【図8】本発明に係るトナー層形成条件を、操作手段としての操作部からの入力動作、又は電源スィッチのオフ動作を利用する構成とした画像形成装置の実施形態における操作部100の概略外観図である。
【図9】本発明に係るトナー層形成条件を操作手段からの入力動作とした画像形成装置の実施形態における動作手順について説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明に係るトナー層形成条件を電源スィッチ101のオフ動作とした画像形成装置の実施形態における動作手順について説明するためのフローチャートである。
【図11】本発明に係るトナー吐出用バイアス印加手段の第1の実施形態における構成を説明するための概略断面図である。
【図12】本発明に係るトナー吐出用バイアス印加手段の第1の実施形態における動作手順を説明するためのフローチャートである。
【図13】本発明に係るトナー吐出用バイアス印加手段の第2の実施形態における動作手順を説明するためのフローチャートである。
【図14】本発明に係るトナー吐出用バイアス印加手段の第3の実施形態における動作手順を説明するためのフローチャートである。
【図15】記録材Pに画像占有率70%の網点画像を形成した出力画像に像流れが発生した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成及び動作を説明するための概略断面図である。
【0027】
図1に示すように、像担持体としての感光体ドラム1の周囲に帯電手段としての帯電器2、露光手段としての露光装置3、現像手段としての現像装置4、転写手段としての転写装置5、及びクリーニング手段としてのクリーニング装置6が配置される。帯電器2は感光体ドラム1に対して非接触でコロナ放電をするスコロトロン帯電器である。転写装置5には図示しない給紙部から被転写体としての記録材Pが供給され、画像が転写された記録材Pは定着装置8を通過して定着処理される。
【0028】
感光体ドラム1としては、OPC感光体が好ましく用いられ、特に、負帯電性のOPC感光体が好ましい。露光装置3は、光ビームで感光体ドラム1を走査露光する露光装置が好ましく、レーザ、LEDアレイ等が好ましく用いられる。露光装置3は画像データに基づいた露光によりドット画像を感光体ドラム1上に形成する。現像装置4にはキャリアを含まずトナーを主成分とする一成分現像剤を用いる現像装置、又はトナーとキャリアを含む二成分現像剤を用いる現像装置が使用される。本実施の形態では、二成分現像剤を用いる現像装置4を使用している。
【0029】
転写装置5としては、転写ローラ単独、転写ローラと転写ベルトとを組み合わせたもの、又はコロナ放電器からなる転写装置が好ましく用いられるが、本実施の形態では、転写ローラ51と転写ベルト52とを組み合わせたものを転写装置5として用いている。
【0030】
転写ローラ51は、発泡ウレタン製のローラであり、転写ローラ51には、印加部として機能する転写用高圧電源53が接続されており、感光体ドラム1のトナー像を記録材Pに転写する際は、トナーと逆極性の転写電圧が転写ローラ51に印加される。本実施形態ではトナーはマイナス極性であるため、プラス極性の転写電圧が転写ローラ51に印加され、転写電界が形成される。
【0031】
転写ベルト52は、転写ローラ51と感光体ドラム1との間に挟持されるエンドレスベルトからなり、複数のローラ(参照符号なし)に回転自在に保持され、転写ローラ51により感光体ドラム1に押圧される。転写ベルト52は、例えばポリイミド(PI)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、エチレン共重合体(ETFE)等の樹脂材料や、ポリウレタンゴム、クロロプレンゴム等のゴム材料に、抵抗調整のために、カーボン等の導電性フィラーが分散されてなるもの、あるいはイオン性の導電材料が含有されてなるものを用いることが出来る。
【0032】
記録材Pは、感光体ドラム1上に形成されるトナー像の位置にタイミングを合わせて給紙部から送られ、感光体ドラム1と転写ベルト52との間に挟持されて搬送される。転写ローラ51には転写バイアス発生手段としての転写用高圧電源53が電気的に接続されており、感光体ドラム1上のトナー像は、転写用高圧電源53によるバイアス電圧の印加により、転写ベルト52との間に挟持される記録材P上に転写される。
【0033】
定着装置8としては、加熱部材と加圧部材によりトナー像を加熱・加圧して定着する接触加熱型の定着装置が好ましく用いられる。
【0034】
図示しない制御手段10は、画像形成装置内に設けられており、画像形成装置の各部の動作を制御するとともに、画像形成装置のモードの切り替えを行う。
【0035】
本発明に係る画像形成装置のモードとしては、少なくとも通常の画像形成モードと感光体ドラム1上にトナー層を形成するトナー層形成モードとがある。本発明に係るトナー層形成モードは、後述のトナー層形成条件が満たされるときに制御手段10により切り替えられるモードであり、トナー層形成モードにおいては、後述のトナー吐出手段により感光体ドラム1上にトナーによるトナー層Tb(図3参照)が形成される。
【0036】
図1に示すように、感光体ドラム1の矢印で示す回転に従って、帯電器2による帯電及び露光装置3による露光により、感光体ドラム1上に静電潜像が形成される。形成された静電潜像は現像装置4により現像されて感光体ドラム1上に帯電されたトナーのトナー像が形成される。感光体ドラム1上に形成されたトナー像は、上記したように、転写装置5により記録材Pに転写される。転写後の感光体ドラム1に残留するトナーはクリーニング手段としてのクリーニング装置6によりクリーニングされる。図示しない給紙部から供給され、トナー像を転写された記録材Pは定着装置8により定着処理される。
【0037】
図2は、本発明に係るクリーニング装置の実施形態における構成を示す概略断面図である。
【0038】
本実施形態におけるクリーニング装置6は、クリーニング部材としてのクリーニングローラ61及びクリーニングブレード62と、クリーニング用電源ユニット63と、フリッカ64と、スクレーパ65と、を有する。
【0039】
本発明に係るローラ状の回転部材としてのクリーニングローラ61は、クリーニングローラ61が保持するトナー又はクリーニング装置6内に収容されるトナーを感光体ドラム1に向けて吐出する機能と、クリーニング手段としての機能とを有する。より具体的には、通常の画像形成モードにおいてはクリーニング手段としての機能を有し、後述するトナー層形成モードにおいてはトナーを感光体ドラム1に向けて吐出するトナー吐出手段、即ち、感光体ドラム1上にトナー層を形成する手段としての機能を有する。クリーニング部材としてのクリーニングローラ61及びクリーニングブレード62は、感光体ドラム1に接触又は近接する位置に配設されている。クリーニングローラ61によるトナーの授受は、通常の画像形成モードにおいて感光体ドラム1から除去されたトナーの一部がクリーニングローラ61に保持され、そのトナーがトナー層形成モードにおいて感光体ドラム1上に吐き出されることにより行われる。
【0040】
クリーニングローラ61としては、金属製の回転軸に導電性化されたナイロン、アクリル、ポリエステル等からなる繊維を植毛させたブラシローラが好ましく用いられるが、軟質のゴムローラや多孔質の軟質ローラにより形成する円筒状のローラでも良い。クリーニングローラ61は、図2に示すように、感光体ドラム1に接触回転して感光体ドラム1上のトナーを除去する。回転方向は感光体ドラム1と同方向(以下、感光体正回転方向という)、又は逆方向のいずれでもよい。
【0041】
クリーニングブレード62はウレタンゴム等のゴムブレードからなり、実施の形態においてはクリーニングローラ61に対して感光体正回転方向の下流側に配設され、感光体ドラム1に接触するエッジにより感光体ドラム1上のトナーを掻き取る。クリーニングブレード62はクリーニングブレード接離手段としてのソレノイド66により感光体ドラム1に接離可能に駆動され、感光体ドラム1に離間する実線の位置と、感光体ドラム1に当接する点線の位置とのいずれかの位置に移動して停止する。フリッカ64は金属等の導電性円柱状又は円筒状の部材からなり、クリーニングローラ61に接触回転してクリーニングローラ61からトナーを除去する。スクレーパ65は金属製又は樹脂製の板状の部材からなり、フリッカ64に接触してフリッカ64に付着したトナーを除去する。
【0042】
図3は、本発明に係るトナー層形成モードにおけるトナー層Tbの形成から除去までの感光体ドラム1周辺の動作を説明するための概略断面図である。図3(a)は、トナー層形成モードへの切り替えにより、回転部材としてのクリーニングローラ61からトナーが吐出され、感光体ドラム1上にトナー層Tbが形成された状態を示す図である。図3(b)は、感光体ドラム1上に形成されたトナー層Tbが帯電器2に対向する位置に達し、感光体ドラム1が回転を停止した状態を示す図である。トナー層Tbの幅(ドラム回転方向長さ)は、帯電器2のグリッドの幅よりも長く、トナー層Tbの長さ(回転方向に直交する方向の長さ)は、帯電器2の有効放電長よりも長い。このため、図3(b)に示すトナー層Tbが帯電器2に対向する位置に達した状態では、感光体ドラム1の表面において帯電器2に対向する面よりも広い領域が、トナー層Tbにより覆われている。図3(c)は、トナー層形成モードが終了した後、画像形成のための通常の画像形成モードへの切り替えが行われるとき、感光体ドラム1が逆回転してトナー層Tbがクリーニングローラ61の位置に達した状態を示す図である。
【0043】
本発明に係る画像形成装置は、感光体ドラム1の回転角を検出する像担持体回転角検出手段としての図示しない回転角検出手段RAと、検出した回転角を記憶する像担持体回転角記憶手段としての図示しないメモリとを有している。回転角検出手段RAは、例えばロータリーエンコーダを用いた感光体ドラム1の回転角を検出する手段であり、感光体ドラム1上におけるトナー層Tbの位置を検出することができる。また、検出した回転角を記憶するメモリは、例えば制御手段10に内蔵されるメモリであり、感光体ドラム1上におけるトナー層Tbの位置を記憶することができる。
【0044】
図3(a)において、後述するトナー層形成条件が満たされるとき、制御手段10は、後述のトナー吐出手段を動作させ、感光体ドラム1の感光体正回転方向への回転に伴って感光体ドラム1上にトナー像からなるトナー層Tbを形成する。クリーニングブレード62は、モードがトナー層形成モードに切り替えられるときには、ソレノイド66の駆動により感光体ドラム1から離間する位置に移動されている。
【0045】
本発明に係るトナー吐出手段は、回転部材(クリーニングローラ61)とトナー吐出用バイアス印加手段からなる。また、本発明に係るトナー吐出用バイアス印加手段の実施形態としては、後述する第1の実施形態としてのクリーニング用電源ユニット63、第2の実施形態としての帯電器2、及び第3の実施形態としての転写手段としての転写装置5、が挙げられる。
【0046】
即ち、トナー層Tbは、トナー層形成モードにおいて、感光体ドラム1上にトナー吐出用バイアス印加手段によりトナー吐出用のバイアスが印加されるとき、クリーニングローラ61からトナーが吐出されて感光体ドラム1上に形成されるトナー像である。
【0047】
図3(b)において、感光体ドラム1上に形成されたトナー層Tbは、感光体ドラム1の感光体正回転方向への回転により、帯電器2に対向する位置まで移動し、その位置で感光体ドラム1は回転を停止し、トナー層形成モードが完了する。ここでは、感光体ドラム1上にトナー層Tbが形成される領域をトナー層形成領域と称する。
【0048】
本発明に係るトナー層形成モードによれば、感光体ドラム1上に形成されたトナー層Tbが帯電器2に対向する位置で停止するため、帯電器2から発生する放電生成物が直接感光体ドラム1の表面に付着することはない。
【0049】
図3(c)において、トナー層形成モードが終了した後、画像形成のための通常の画像形成モードへの切り替えが行われると、感光体ドラム1は、感光体正回転方向と逆方向(以下、感光体逆回転方向という)に回転する。この感光体ドラム1の感光体逆回転方向の回転によりトナー層Tbはクリーニングローラ61の感光体正回転方向の上流側の位置まで移動して停止する。その後に続く通常の画像形成モードの進行により、感光体ドラム1は感光体正回転方向に回転され、トナー層Tbはクリーニングローラ61により感光体ドラム1から除去される。また、感光体ドラム1が感光体正回転方向に回転されるとき、クリーニングブレード62はソレノイド66の駆動により感光体ドラム1に当接され、クリーニングローラ61で除去しきれなかったトナー層Tbはクリーニングブレード62により除去される。
【0050】
なお、本実施の形態においては、図3(c)に示す、トナー層形成モードが終了した後の通常の画像形成モードへの切り替え時における感光体ドラム1の回転方向を、感光体逆回転方向に回転する構成としたが、感光体正回転方向に回転する構成としても良い。
【0051】
図4は、本発明に係る画像形成装置の動作を制御する制御手段10による制御の流れを示すブロック図である。
【0052】
図4において、制御手段10は、電源操作手段としての電源スィッチ101、モード切替ボタン102、湿度計HM、ドラム回転数カウンタRC、ドラム回転角検出手段RA、及び放置時間測定手段としての放置時間測定タイマSTからの入力情報を受ける。この入力情報を受けた制御手段10は、画像形成装置の画像形成モードとトナー層形成モードとのモードの切り替えと画像形成装置の各部の動作の制御を行う。本発明に係る制御対象としては、図4に示すように、ドラム駆動モータM1、帯電用高圧電源21、転写用高圧電源53、クリーニング用電源ユニット63、及びブレード接離ソレノイド66が挙げられる。
【0053】
電源スィッチ101等、各部からの入力情報の詳細、及び制御手段10によるモードの切り替えと画像形成装置各部動作の制御の詳細については、図5〜図14を用いて説明する。
【0054】
次に、本発明に係るトナー層Tbを形成するためのトナー層形成条件を、ドラム停止時間、操作部からの入力、及び電源スィッチのオフ、の3つの条件のいずれかとした構成を有する画像形成装置の実施形態について説明する。なお、ドラム停止時間をトナー層形成条件とする構成については、更に、実測のドラム停止時間である構成、ドラム停止時間を湿度要因により補正する構成、及びドラム停止時間をドラム累計回転数要因により補正する構成、の3つに分けて説明する。ここでのドラム停止時間とは、任意の画像形成ジョブの終了時点から、次の画像形成ジョブの開始時点までの感光体ドラム1が停止している時間のことであり、以下、この時間を放置時間と称する。
【0055】
始めにトナー層形成条件が実測の放置時間であるという構成を有する画像形成装置の実施形態の動作手順について図5のフローチャートを用いて説明する。なお、ここでは、本発明者らが行った実験結果に基づき、上記の放置時間が経過し、帯電器2から発生する放電生成物が感光体ドラム1に付着して出力画像の画像品質に影響が出ない時間、即ち像流れを生じさせない最大の放置時間の限界値となる時間を、限界放置時間と称することとする(以下同様)。
【0056】
図5は、本発明に係るトナー層形成条件を実測の放置時間とした画像形成装置の実施形態におけるトナー層形成モードの動作手順を説明するためのフローチャートである。
【0057】
本実施の形態における画像形成装置には図示しないバッテリが内蔵されており、画像形成装置本体の電源をオンオフする電源スィッチ101がオフされても放置時間を測定する放置時間測定タイマSTが作動して放置時間を測定しうる構成となっている。
【0058】
始めに、前回の画像形成ジョブが終了した時点から放置時間測定タイマSTが動作を開始する(ステップS11)。次に放置時間測定タイマSTにより放置時間が測定される(ステップS12)。制御手段10は、トナー層形成条件が満たされているかどうか、即ち、放置時間が限界放置時間に達したかどうかを判断する(ステップS13)。放置時間が限界放置時間に達したときにはステップS14に進み、放置時間が限界放置時間に達していないときにはステップS12に戻り、ステップS12とステップS13の工程を繰り返す。
【0059】
放置時間が限界放置時間に達したときにはステップS14に進み、制御手段10は、画像形成装置のモードをトナー層形成モードに切り替える(ステップS14)。
【0060】
トナー層形成モードにおいて、制御手段10は、トナー吐出手段としてのトナー吐出用バイアス印加手段及びクリーニングローラ61の動作を開始させると同時に、感光体ドラム1を回転させて感光体ドラム1上にトナー層Tbを形成させる(ステップS15)。更に感光体ドラム1を回転させてトナー層Tbの位置を帯電器2に対向する位置に移動させる(ステップS16)。トナー層Tbの位置が帯電器2に対向する位置に達したとき、感光体ドラム1の回転を停止させる(ステップS17)。
【0061】
本実施形態によれば、感光体ドラム1が回転を停止した後の放置時間が、前述の限界放置時間に達しても、制御手段10の制御により画像形成装置がトナー層形成モードとなり、感光体ドラム1表面にトナー層Tbが形成されるため、像流れの発生を抑制できる。
【0062】
次に、本発明に係るトナー層形成条件が湿度要因により補正された放置時間である画像形成装置の実施形態について図6のフローチャートを用いて説明する。
【0063】
図6は、本発明に係るトナー層形成条件を湿度要因により補正された放置時間とした画像形成装置の実施形態におけるトナー層形成モードの動作手順を説明するためのフローチャートである。
【0064】
なお、本実施形態におけるトナー層形成モードの動作手順は、図5で説明したトナー層形成条件が放置時間単独である画像形成装置の動作手順と類似しているため類似した手順についての説明は省略し、異なる手順についてのみ説明する。
【0065】
本実施形態におけるトナー層形成モードの動作手順が図5の手順と異なる点は、ステップS23及びステップS24の工程が追加されている点である。即ち、本実施形態におけるステップS21〜S22、及びステップS25〜S29は、図5におけるステップS11〜S12、及びステップS13〜S17と同一である。
【0066】
本実施形態のステップS23においては、ステップS22で放置時間が計測されるときに併せて画像形成装置内の湿度を湿度計HMにより計測する(ステップS23)。ステップS24においては、計測した湿度に応じて放置時間を補正して算出する(ステップS24)。
【0067】
放置時間を湿度に応じて補正する手段は、予め行った画像形成装置内の湿度要因を採り入れた実験に基づいて、出力画像に像流れが生じるかどうかを湿度要因により補正した放置時間との対比により作成した対比表によるものである。
【0068】
ステップS24において湿度に応じて補正した放置時間に基づいて、ステップS25以下の工程が図5のステップS13以下の工程と同様に行われる。
【0069】
本実施形態によれば、画像形成装置内の湿度が高く像流れが生じ易い場合でも、補正された放置時間に応じた制御手段10の制御により画像形成装置のモードがトナー層形成モードに切り替えられるため、像流れの発生を抑制することができる。
【0070】
次いで、本発明に係るトナー層形成条件が感光体ドラム1の累計回転数により変更(補正)された放置時間である画像形成装置の実施形態について図7のフローチャートを用いて説明する。
【0071】
図7は、本発明に係るトナー層形成条件を感光体ドラム1の交換した初期からの累計回転数により補正された放置時間とした画像形成装置の実施形態におけるトナー層形成モードの動作手順を説明するためのフローチャートである。
【0072】
なお、本実施形態におけるトナー層形成モードの動作手順は、図5で説明したトナー層形成条件が放置時間単独である画像形成装置の動作手順と類似しているため類似した手順についての説明は省略し、異なる手順についてのみ説明する。
【0073】
本実施形態におけるトナー層形成モードの動作手順が図5の手順と異なる点は、ステップS33及びステップS34の工程が追加されている点である。即ち、本実施形態におけるステップS31〜S32、及びステップS35〜S39は、図5におけるステップS11〜S12、及びステップS13〜S17と同一である。
【0074】
本実施形態のステップS33においては、ステップS32で放置時間が計測されるときに併せて感光体ドラム1の累計回転数をドラム回転数カウンタRCにより計測する(ステップS33)。ステップS34においては、計測したドラム累計回転数に応じて放置時間を補正して算出する(ステップS34)。
【0075】
放置時間をドラム累計回転数に応じて補正する手段は、予め行った感光体ドラム1の累計回転数を採り入れた実験に基づいて、出力画像に像流れが生じるかどうかをドラム累計回転数により補正した放置時間との対比により作成した対比表によるものである。
【0076】
ステップS34において湿度に応じて補正した放置時間に基づいて、ステップS35以下の工程が図5のステップS13以下の工程と同様に行われる。
【0077】
本実施形態によれば、感光体ドラム1の累計回転数が多くなり、像流れが生じ易い状況となっても、補正された放置時間に応じた制御手段10の制御により画像形成装置のモードがトナー層形成モードに切り替えられるため、像流れの発生を抑制することができる。
【0078】
表1には、画像形成装置内の湿度(機内湿度)及び感光体ドラム1の累計回転数をトナー層形成条件として限界放置時間を補正した画像形成装置を用いての実験結果を示す。本発明者らは、表1に示す補正を行うことにより、画像形成装置内の湿度及び感光体ドラム1の累計回転数が変化しても、出力画像に像流れが発生しないことを実験により把握している。
【0079】
【表1】

【0080】
表1において、感光体ドラム1の累計回転数が30万回転未満の場合、機内湿度が20%未満であればトナー層形成モードにおける限界放置時間を60%に設定することにより、出力画像に像流れが発生しないことを確認している。同様に、感光体ドラム1の累計回転数が30万回転未満の場合、機内湿度が20%以上、50%未満であれば限界放置時間を30min、機内湿度が50%以上、70%未満であれば限界放置時間を15minに設定すれば良い。更に、機内湿度が70%以上であれば限界放置時間を5minに設定すれば、像流れが発生しない。
【0081】
同様に、感光体ドラム1の累計回転数が30万回転以上50万回転未満、50万回転以上100万回転未満、100万回転以上と増加するのに対応して、機内湿度の変化に対応させて限界放置時間を短くすることにより、像流れの発生を抑制できることを確認した。
【0082】
次に、本発明に係るトナー層を形成するための条件となるトナー層形成条件として、操作部からの入力動作、及び電源スィッチのオフ動作を利用した構成の画像形成装置の実施形態における動作手順について、図9のフローチャートを用いて説明する。
【0083】
図8は、本発明に係るトナー層形成条件を、トナー層形成モードへの切り替えを行う操作手段としての操作部からの入力動作、又は電源スィッチのオフ動作を利用する構成とした画像形成装置の実施形態における操作部100の概略外観図である。
【0084】
図8において、符号の100は操作部、101は電源操作手段としての電源スィッチ、102は操作手段としてのモード切替ボタン、103は電源オン表示ランプ、104は表示部、を表す。電源スィッチ101をオンにする操作で電源オン表示ランプ103が点灯し、トナー層形成モードへの切替スィッチのオンにより表示部104にトナー層形成モードへの切り替えが行われていることが表示される。
【0085】
続いて、トナー層形成条件が操作手段からの入力動作である構成の画像形成装置の動作手順について説明する。
【0086】
図9は、本発明に係るトナー層形成条件を操作部からの入力動作とした画像形成装置の実施形態における動作手順について説明するためのフローチャートである。本実施の形態において、トナー層形成条件が満たされたかどうかは、操作部のモード切替ボタン102によりトナー層形成モードへの切り替えが実行されたかどうかにより判断される。
【0087】
始めに、オペレータにより操作部のトナー層形成モードへの切り替えが可能なモード切替ボタン102(図8参照)がオンされ、画像形成装置のモードはトナー層形成モードとなる(ステップS41)。次に、制御手段10の制御によりトナー吐出手段が動作され、感光体ドラム1上にトナー層Tbが形成される(ステップS42、図3参照)。更に感光体ドラム1を回転させてトナー層Tbの位置を帯電器2に対向する位置に移動させる(ステップS43)。トナー層Tbの位置が帯電器2に対向する位置に達したとき、感光体ドラム1の回転を停止させる(ステップS44)。
【0088】
本実施形態によれば、操作部のモード切替ボタン102の操作により画像形成装置のモードがトナー層形成モードに切り替えられるため、オペレータの任意の要望により像流れの発生を抑制することができる。
【0089】
続いて、トナー層形成条件が電源スィッチ101のオフ動作である構成の画像形成装置の動作手順について説明する。
【0090】
図10は、本発明に係るトナー層形成条件を電源スィッチ101のオフ動作とした画像形成装置の実施形態における動作手順について説明するためのフローチャートである。本実施の形態において、トナー層形成条件が満たされたかどうかは、操作部の電源スィッチ101がオフされたかどうかにより判断される。
【0091】
始めに、オペレータにより画像形成装置の電源スィッチ101(図8参照)がオフされる(ステップS51)とき、画像形成装置のモードはトナー層形成モードに切り替えられる(ステップS52)。次に、制御手段10の制御によりトナー吐出手段が動作され、感光体ドラム1上にトナー層Tbが形成される(ステップS53、図3参照)。更に感光体ドラム1を回転させてトナー層Tbの位置を帯電器2に対向する位置に移動させる(ステップS54)。トナー層Tbの位置が帯電器2に対向する位置に達したとき、感光体ドラム1の回転を停止させる(ステップS55)。
【0092】
本実施形態によれば、電源スィッチ101のオフ動作により画像形成装置のモードがトナー層形成モードに切り替えられるため、画像形成装置が長時間使用されない状態が続き、放置時間が限界放置時間に達する場合でも、像流れの発生を抑制することができる。
【0093】
次に、本発明に係るトナー吐出手段の内のトナー吐出用バイアス印加手段における第1〜第3の実施形態の構成又は動作手順について説明する。
【0094】
図11は、本発明に係るトナー吐出用バイアス印加手段の第1の実施形態における構成を説明するための概略断面図である。図11に示すトナー吐出用バイアス印加手段における第1の実施形態の構成は、図2で説明したクリーニング装置6の構成と類似しており、同一の機能を有する部材には同一の符番を付しているため説明は省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0095】
本実施形態のクリーニング装置6の構成が、図2で説明したクリーニング装置6の構成と異なる点は、本実施形態のクリーニング装置6には、トナー吐出用バイアス印加手段の第1の実施形態としてのクリーニング用電源ユニット63が備えられている点である。
【0096】
即ち、本実施形態におけるクリーニングローラ61には、フリッカ64を介してクリーニング用電源ユニット63により極性の異なる2種の電圧が印加される。クリーニング用電源ユニット63は、トナーの帯電と反対極性の電圧を印加するクリーニング用電源63Aと、トナーの帯電と同極性の電圧を印加するトナー授受バイアス電源としてのトナー層形成用電源63Bからなる。クリーニング用電源63Aとトナー層形成用電源63Bとは、いずれかに切り替えられて使用される。
【0097】
クリーニング装置6でクリーニングされるトナーは現像装置4において帯電されるが、負帯電感光体を用い、反転現像を行う現像装置4により現像を行う本実施形態の画像形成装置においては、クリーニングされるトナーは負に帯電されている。従って、クリーニングローラ61がクリーニング手段として機能する際には、クリーニング用電源63Aはフリッカ64に正の電圧を印加して、感光体ドラム1からトナーを除去する。
【0098】
また、クリーニングローラ61がトナー吐出手段として機能する際には、トナー層形成用電源63Bによりフリッカ64に負の電圧が印加され、感光体ドラム1のトナー層形成領域とクリーニングローラ61との間に電位差が生じる。この電位差によりクリーニング装置6内のトナーは、クリーニングローラ61を介して感光体ドラム1表面へと移動し、感光体ドラム1表面にトナー層Tbが形成される(図3参照)。このように、本発明に係るクリーニングローラ61は、クリーニング手段としての機能とトナー吐出手段としての機能とを兼ね備えている。
【0099】
続いて、トナー吐出用バイアス印加手段における第1の実施形態としてのクリーニング用電源ユニット63によるトナー層形成の動作手順について図12を用いて説明する。
【0100】
図12は、本発明に係るトナー吐出用バイアス印加手段の第1の実施形態における動作手順を説明するためのフローチャートである。本実施形態におけるトナー吐出用バイアス印加手段は本発明に係るトナー授受バイアス電源としてのクリーニング用電源ユニット63である。
【0101】
本実施形態の動作手順は、前述のトナー層形成条件が、放置時間の限界放置時間への到達、操作部からの入力動作、又は、電源スィッチのオフ動作により満たされたとき以降における、トナー層形成モードへの切り替えが実施される工程から記載するものとする。
【0102】
図12において、始めに、本発明におけるトナー層形成条件が満たされ、本実施形態の制御手段10の制御により画像形成装置のモードがトナー層形成モードへと切り替えられる(ステップS61)。次に、本実施形態のクリーニング用電源ユニット63におけるトナー層形成用電源63Bの動作により、フリッカ64を介してクリーニングローラ61と、感光体ドラム1のトナー層Tbを形成するトナー層形成領域との間に電位差が形成される(ステップS62)。この電位差により、回転する感光体ドラム1上にトナーが吐き出されてトナー層Tbが形成される(ステップS63)。更に感光体ドラム1が回転され、トナー層Tbの位置は帯電器2に対向する位置に移動される(ステップS64)。トナー層Tbの位置が帯電器2に対向する位置に達したとき、感光体ドラム1は回転を停止される(ステップS65)。
【0103】
表2には、放置時間が表1で説明した限界放置時間に達するとき、トナー吐出用バイアス印加手段の第1の実施形態としてのクリーニング用電源ユニット63による、トナー層形成モードにおける印加バイアスを変化させた場合の実験結果を示す。
【0104】
【表2】

【0105】
本発明者らは、表2に示すように、トナー層形成モードにおいて、クリーニング用電源ユニット63の印加バイアスを500V以上に設定することにより、出力画像に像流れが発生しないことを実験により把握した。このとき、トナー層形成領域における感光体ドラム1上のトナー付着量は3.6g/mであった。クリーニング用電源ユニット63の印加バイアスを100Vに設定した場合には、トナー層形成領域におけるトナー付着量は1.2g/mとなり、出力画像には像流れが発生した。クリーニング用電源ユニット63の印加バイアスを300Vに設定した場合には、トナー層形成領域におけるトナー付着量は3g/mとなり、出力画像には当社規格で良品限界レベルの若干の像流れが発生した。像流れ評価の記号の、◎は像流れの発生が全く見られないレベル、○は当社規格で合格レベル、△は良品限界レベル、×は像流れの発生が明らかな不合格レベルを表す。
【0106】
本実施形態によれば、クリーニングローラ61の機能が、クリーニング用電源ユニット63の極性の切り替えにより、トナー吐出手段としての機能と前記クリーニング手段としての機能とに明確に分けられるため、それぞれの作用がより確実なものとなる。
【0107】
次に、本発明に係るトナー吐出手段の内のトナー吐出用バイアス印加手段における第2の実施形態について説明する。本実施形態におけるトナー吐出用バイアス印加手段は帯電器2である。本実施形態における帯電器2の構成は図2における帯電器2と同一であるため、構成についての説明は省略し、動作手順についてのみ図13を用いて説明する。
【0108】
図13は、本発明に係るトナー吐出用バイアス印加手段の第2の実施形態における動作手順を説明するためのフローチャートである。
【0109】
第2の実施形態におけるフローチャートは第1の実施形態におけるフローチャートと類似しているため説明は省略し、異なる工程についてのみ説明する。
【0110】
第2の実施形態におけるフローチャートが第1の実施形態におけるフローチャートと異なる点は、ステップS72におけるクリーニングローラ61と感光体ドラム1上のトナー層形成領域との電位差を形成する手段の違いである。即ち、トナー層形成領域とのバイアスの印加(電位差の形成)が、第1の実施形態ではクリーニングローラ61に接続されたトナー層形成用電源63Bによって行われるのに対し、本実施形態においては、帯電器2に電圧を付与する帯電用高圧電源21によって行われる(ステップS72)という違いである。即ち、本実施形態におけるトナー授受バイアス電源としては帯電用高圧電源21が用いられている。
【0111】
本実施形態における帯電器2は、通常の画像形成モードにおいては感光体ドラム1の画像領域に均一な帯電を行うが、同様に、トナー層形成モードにおいて、クリーニングローラ61とトナー層形成領域との間に電位差を形成する。クリーニング装置6中には逆極性に帯電されたトナーも混在している。このため、感光体ドラム1の回転によりトナー層形成領域がクリーニング装置6に達するとき、クリーニング装置6中の逆極性のトナーが吐き出されて感光体ドラム1上のトナー層形成領域にトナー層Tbを形成する。このように、本発明に係る帯電器2は、通常の画像領域を帯電する機能と、クリーニングローラ61とトナー層形成領域との間に電位差を形成する機能とを兼ね備えている。
【0112】
本実施形態によれば、トナー吐出用バイアス印加手段としての部材を新規に構成する必要がないため、構成が簡単であり、スペースの削減とコストの低減を図ることができる。
【0113】
図14は、本発明に係るトナー吐出用バイアス印加手段の第3の実施形態における動作手順を説明するためのフローチャートである。
【0114】
第3の実施形態におけるフローチャートは第1の実施形態におけるフローチャートと類似しているため説明は省略し、異なる工程についてのみ説明する。
【0115】
第3の実施形態におけるフローチャートが第1の実施形態におけるフローチャートと異なる点は、ステップS82におけるクリーニングローラ61と感光体ドラム1上のトナー層形成領域との間に電位差を形成する手段の違いである。即ち、この電位差の形成は、第1の実施形態ではクリーニングローラ61に接続されたトナー層形成用電源63Bによって行われるのに対し、本実施形態においては、転写装置5の転写用高圧電源53によって行われる(ステップS82)という違いである。即ち、本実施形態におけるトナー授受バイアス電源としては転写用高圧電源53が用いられている。
【0116】
本実施形態においては、転写用高圧電源53により転写ローラ51を介して感光体ドラム1のトナー層形成領域がトナーの正規の帯電極性と逆極性に帯電され、その結果、クリーニングローラ61とトナー層形成領域との間に電位差が形成される。従って、感光体ドラム1の回転によりトナー層形成領域がクリーニング装置6に達するとき、クリーニング装置6中のトナーはクリーニングローラ61から吐き出されて感光体ドラム1上にトナー層Tbを形成する。このように、本発明に係る転写装置5は、通常の画像領域に対する転写機能と、クリーニングローラ61とトナー層形成領域との間に電位差を生じさせてトナー層Tbを形成する機能とを兼ね備えている。
【0117】
本実施形態によれば、トナー吐出用バイアス印加手段としての部材を新規に構成する必要がないため、構成が簡単であり、スペースの削減とコストの低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0118】
1 感光体ドラム
2 帯電器
3 露光装置
4 現像装置
5 転写装置
6 クリーニング装置
8 定着装置
P 記録材
10 制御手段
21 帯電用高圧電源
51 転写ローラ
52 転写ベルト
53 転写用高圧電源
61 クリーニングローラ
62 クリーニングブレード
63 クリーニング用電源ユニット
63A クリーニング用電源
63B トナー層形成用電源
64 フリッカ
65 スクレーパ
66 ソレノイド
HM 湿度計
M1 ドラム駆動モータ
RA ドラム回転角検出手段
RC ドラム回転数カウンタ
ST 放置時間測定タイマ
Tb トナー層
100 操作部
101 電源スィッチ
102 モード切替ボタン
103 電源オン表示ランプ
104 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
非接触でコロナ放電により前記像担持体を帯電する帯電手段と、
帯電された前記像担持体に静電潜像を形成する露光手段と、
静電潜像が形成された前記像担持体にトナーを供給してトナー像とする現像手段と、
前記像担持体に形成されるトナー像を被転写体に転写する転写手段と、
転写後の前記像担持体に残留するトナーを除去するクリーニング手段と、
前記クリーニング手段により除去されたトナーにより前記像担持体上にトナー層を形成するトナー吐出手段と、
前記トナー吐出手段により前記像担持体上に前記トナー層を形成し、前記像担持体を回転させて前記トナー層の位置を前記帯電手段に対向する位置に移動させた後に停止するように制御するトナー層形成モードを行う制御手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
任意の画像形成ジョブの終了時点から次の画像形成ジョブの開始時点までの放置時間を計測する放置時間測定手段、を有し、
前記制御手段は、前記放置時間と予め設定された前記帯電手段により生成された放電生成物の前記像担持体への付着による出力画像の画像品質への影響が出ない最大の限界値である限界放置時間とを比較し、前記放置時間が前記限界放置時間に達したときに、前記トナー層形成モードを行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記限界放置時間は、画像形成装置内の湿度又は前記像担持体の累計回転数に応じて変更するように設定されていることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記トナー層形成モードへの切り替え操作を行う操作手段、を有し、
前記制御手段は、前記操作手段の操作により前記トナー層形成モードへの切り替えを行うように制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
画像形成装置の電源のオンオフを切り替える電源操作手段、を有し、
前記制御手段は、前記電源操作手段の操作により前記トナー層形成モードへの切り替えを行うように制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記クリーニング手段は、回転自在に保持される弾性部材からなるローラ状の回転部材、を有し、
前記回転部材は、記録材に画像を形成する画像形成モードにおいては、前記クリーニング手段として前記像担持体上に残留するトナーを除去した後に除去したトナーの一部を保有し、前記トナー層形成モードにおいては、前記トナー吐出手段として保有するトナーを前記像担持体に向けて吐き出して前記トナー層を形成することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記トナー吐出手段は、前記トナー層形成モードにおいては、前記回転部材と前記像担持体との間にトナーを吐出するための電位差を生じさせることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記トナー層形成モードにおいて、前記帯電手段又は前記転写手段を動作させて前記像担持体を帯電させ、前記像担持体と前記回転部材との間に電位差を生じさせるように制御することを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記トナー層形成モードが終了した後に前記画像形成モードへ切り替えが行われる際に、前記像担持体を回転させて前記トナー層を前記帯電手段に対向する位置から前記クリーニング手段の前記像担持体の前記画像形成モードにおける回転方向の上流側の位置に移動させ、その後に、前記像担持体を前記像担持体の前記画像形成モードにおける回転方向に回転させ、前記クリーニング手段により前記トナー層形成モードにおいて形成された前記トナー層を前記像担持体から除去させるように制御することを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記トナー層形成モードが終了した後に前記画像形成モードへ切り替えが行われる際には、前記像担持体を前記画像形成モードにおける回転方向とは逆の方向に回転させるように制御することを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記クリーニング手段はクリーニングブレードを有し、
前記クリーニングブレードは、前記回転部材の前記像担持体の前記画像形成モードにおける回転方向の下流側に配設されることを特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記クリーニングブレードを前記像担持体に対して接離させるクリーニングブレード接離手段を有し、
前記制御手段は、前記トナー層形成モードにおいて前記クリーニングブレード接離手段を動作させ、前記クリーニングブレードを前記像担持体から離間させるように制御することを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−194299(P2012−194299A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57429(P2011−57429)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】