説明

画像形成装置

【課題】像担持体表面に残留する付着物がクリーニング部のシール部材の箇所を通り抜け易くなって付着物の装置内への落下を防止することが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置1は、感光体ドラム21に対するクリーニング部60が感光体ドラム21の上方に配置されるとともに、感光体ドラム21に対向して設けた開口61aを通して感光体ドラム21表面から除去した付着物を収容するハウジング61と、開口61aにおいて感光体ドラム21に接触するクリーニングローラー62と、開口61aのドラム回転方向下流側の縁部に設けられたクリーニングブレード63と、開口61aのドラム回転方向上流側の縁部に設けられたシール部材64とを、備え、印刷ジョブの終了後、感光体ドラム21とクリーニングローラー62とを印刷ジョブ実行中の周速度より減速させて所定期間回転させる減速期間を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機に代表される画像形成装置、特にトナー像を用紙に転写させた後の像担持体表面に残留するトナーなどの付着物を除去してクリーニングするクリーニング部を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンター等の電子写真方式の画像形成装置においては像担持体として感光体ドラムが広く用いられている。感光体ドラムを用いた一般的な画像形成動作は以下のようである。感光体ドラムの表面は帯電部により所定電位で一様に帯電され、そこに露光部のLED光等を照射することにより部分的に電位が光減衰して原稿画像の静電潜像が形成される。そして、この静電潜像を現像部で現像することにより、感光体ドラム表面にトナー像が形成される。このトナー像は感光体ドラムと転写部材とを接触、或いは近接させて構成した転写領域に用紙を挿通するときに用紙に転写される。
【0003】
このような画像形成装置では用紙に転写されなかった微量のトナーや紙粉などが感光体ドラム表面に付着し、残留してしまうことがある。この感光体ドラム表面に残留するトナーなどの付着物は次の新たな画像形成の障害となるので、そのクリーニングが必要となる。このような目的で用いられるクリーニング方法としては感光体ドラム表面に回転部材であるクリーニングローラーや回転ブラシ等を押し付けることにより回転部材に残留付着物を移動させて回収する方法や、感光体ドラム表面にクリーニングブレードを接触させて残留付着物を掻き取る方法、或いはこれらの方法を組み合わせたクリーニング方法が広く知られている。
【0004】
上記構成のクリーニング部は感光体ドラムに対向するハウジングを備え、このハウジングに設けられた開口を通してクリーニングローラーが感光体ドラムに近接または接触している。そして、クリーニング部は画像形成装置内部の汚染防止や好適な画像品質の維持を目的として、ハウジング内に収容した感光体ドラム表面から除去した付着物がハウジングの開口から感光体ドラム側の外部に漏洩することを防止するため、ハウジングの開口縁部の箇所にシール部材を備えているものがある。なお、このシール部材の箇所からの感光体ドラム表面の付着物の漏洩はクリーニング部が感光体ドラムの上方に配置された場合に顕著に表れる。
【0005】
このようなシール部材を像担持体のためのクリーニング部に用いた画像形成装置の一例を特許文献1に見ることができる。特許文献1に記載された画像形成装置のクリーニング部は像担持体表面に接触して像担持体表面の付着物を除去する所謂ブレード形状のクリーニング部材と、クリーニング部材より像担持体回転方向上流側に設けられて像担持体表面に当接する入口シールとを備えている。そして、この画像形成装置は入口シールの長手方向の張力を調整することにより、入口シールが弛むことに起因するトナー落下やトナー飛散を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−92874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された画像形成装置はブレード形状のクリーニング部材のみを用いて像担持体表面に残留する付着物を除去するものであって、付着物を回転しながら除去する回転部材としてのクリーニング部材を用いた場合、その周速度が速くなるに連れてシール部材のすぐ内側の箇所に付着物が滞留し易くなる可能性がある。このような問題は画像形成時(印刷ジョブ実行中)の周速度が400mm/sec以上のときに顕著に表れることが懸念されている。回転部材としてのクリーニング部材がそのような高速で回転することで遠心力の作用によって付着物を径方向外側へと飛散させる力が強くなり、シール部材のすぐ内側の箇所に付着物が滞留し易くなる可能性が高い。
【0008】
そして、このようにシール部材のすぐ内側の箇所に滞留した付着物に起因する抗力に加えて、特許文献1に記載された画像形成装置のシール部材のようにその張力を高めることにより、像担持体表面に残留する付着物がシール部材の箇所を通り抜け難くなる。その結果、像担持体表面に残留する付着物がハウジングに収容されることなく画像形成装置内へ落下する可能性が高くなる。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、像担持体表面から除去した付着物が収容されたハウジングの像担持体と対向する開口の縁部に設けられ、その開口からハウジング外部に付着物が漏洩することを防止するシール部材のすぐ内側の箇所に付着物が滞留し易くなることを抑制することができ、像担持体表面に残留する付着物がシール部材の箇所を通り抜け易くなってシール部材の箇所における付着物の装置内への落下を防止することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明は、像担持体と、前記像担持体にトナーを供給して前記像担持体表面にトナー像を形成する現像部と、前記像担持体表面に残留する付着物を除去するクリーニング部と、を備えた画像形成装置において、前記クリーニング部は、前記像担持体の上方に配置されるとともに、前記像担持体に対向して設けられた開口を通して前記像担持体表面から除去した付着物を収容するハウジングと、前記ハウジング内に設けられて前記開口において前記像担持体に接触して前記像担持体表面の付着物を回転しながら除去する回転部材と、前記開口の前記回転部材に対する前記像担持体回転方向下流側の縁部に設けられ前記像担持体に接触して前記像担持体表面の付着物を掻き取るブレードと、前記開口の前記回転部材に対する前記像担持体回転方向上流側の縁部に設けられ前記像担持体に接触して前記ハウジングに収容した前記像担持体表面の付着物が前記開口から前記ハウジング外部に漏洩することを防止するシール部材と、を備え、印刷ジョブの終了後、前記像担持体と前記回転部材とを印刷ジョブ実行中の周速度より減速させて所定期間回転させる減速期間を有することとした。
【0011】
この構成によれば、印刷ジョブ終了後に減速期間を設けて像担持体と回転部材とを印刷ジョブ実行中の周速度より減速させて回転させるので、回転部材の遠心力が印刷ジョブ実行中より低下する。したがって、回転部材がハウジング内に収容した付着物を飛散させる力も弱くなり、シール部材のすぐ内側の箇所に付着物が滞留し易くなることが抑制される。さらに、シール部材のすぐ内側の箇所に滞留した付着物が他の箇所に移動し易くなる。
【0012】
なお、ここで記述した「印刷ジョブ実行中の周速度」とはシール部材のすぐ内側の箇所に像担持体表面から除去した付着物が滞留し易くなる可能性が高い周速度であって、例えば400mm/sec以上のときその可能性が高い。
【0013】
また、ここで記述したクリーニング部の配置箇所である「像担持体の上方」とは厳密に垂直上方を意味するわけではなく、例えば像担持体の中心軸線から上方に向かって延びる垂線に対して周方向両側に45°の角度範囲で広がる像担持体表面の領域内にクリーニング部の前記回転部材が接触するようクリーニング部を配置しても良い。
【0014】
また、ここで記述した減速期間の「所定期間」は予め設定した任意の期間であり、像担持体表面から除去した付着物がシール部材のすぐ内側の箇所から他の箇所へと移動する可能性が高いと判断することができる程度の期間であって、例えば5秒から10秒程度の期間とすることが可能であるが、必要に応じて適切に設定できる。したがって、後述する実施形態では「所定期間」を「5秒」と設定しているが、このような期間に限定されるわけではない。
【0015】
また、上記構成の画像形成装置において、前記減速期間における前記像担持体と前記回転部材との周速度が印刷ジョブ実行中の周速度の半分であることとした。
【0016】
この構成によれば、減速期間における像担持体と回転部材との周速度が印刷ジョブ実行中の周速度に対して大幅に低下する。したがって、回転部材の遠心力が印刷ジョブ実行中より一層低下するので、シール部材のすぐ内側の箇所に像担持体表面から除去した付着物が滞留し易くなることがさらに抑制される。
【0017】
また、上記構成の画像形成装置において、前記減速期間において、前記現像部が、所定量のトナーを前記像担持体表面に供給し、前記クリーニング部が、前記現像部が供給した前記トナーを前記像担持体表面から除去することとした。
【0018】
この構成によれば、減速期間に像担持体表面に供給したトナーがシール部材の箇所に滞留する付着物をハウジングの内側へと押し込む作用が働く。したがって、より一層シール部材のすぐ内側の箇所に滞留した付着物が他の箇所に移動し易くなる。
【0019】
なお、上記「所定量」は予め設定したトナーの任意の量であり、例えばトナーを像担持体表面の軸線方向略全域にわたって延びる帯状にしてその周方向長さ(帯幅)を数mmにするなどといった量として表すことにしても構わない。後述する実施形態ではトナーの「所定量」をそのようなトナー帯にして「帯幅5mm」と設定しているが、このような量に限定されるわけではない。
【0020】
また、上記構成の画像形成装置において、前記クリーニング部は、前記ハウジング内に収容された前記像担持体表面から除去した付着物を前記ハウジング外部に排出するための排出部材を備えていることとした。
【0021】
この構成によれば、ハウジング内に収容された像担持体表面から除去した付着物がハウジング外部に排出されるので、さらにシール部材のすぐ内側の箇所に付着物が滞留し易くなることが抑制される。そして、シール部材のすぐ内側の箇所に滞留した付着物が他の箇所に移動し易くなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の構成によれば、像担持体表面から除去した付着物が収容されたハウジングの像担持体と対向する開口の縁部に設けられ、その開口からハウジング外部に付着物が漏洩することを防止するシール部材のすぐ内側の箇所に付着物が滞留し易くなることを抑制することができ、像担持体表面に残留する付着物がシール部材の箇所を通り抜け易くなってシール部材の箇所における付着物の装置内への落下を防止することが可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の模型的垂直断面正面図である。
【図2】図1の画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図1の画像形成装置の画像形成部周辺を示す垂直断面部分正面図である。
【図4】図3のクリーニング部の減速期間に係る動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図1〜図4に基づき説明する。
【0025】
最初に、本発明の実施形態に係る画像形成装置について、図1及び図2を用いてその構造の概略を説明しつつ、画像出力動作を説明する。図1は画像形成装置の模型的垂直断面正面図、図2は画像形成装置の構成を示すブロック図である。図1中の、実線矢印は用紙の搬送経路及び搬送方向を、一点鎖線矢印はレーザ光Lを示す。
【0026】
図1に示すように、画像形成装置1の本体2の内部下方には給紙カセット3が配置されている。給紙カセット3はその内部に記録媒体である印刷前のカットペーパーなどの用紙Pを積載して収容している。そして、この用紙Pは図1において給紙カセット3の左上方に向け、1枚ずつ分離されて送り出される。給紙カセット3は本体2の正面側から水平に引き出すことが可能である。
【0027】
本体2の内部であって給紙カセット3の左方には用紙搬送部4が備えられている。用紙搬送部4は本体2の左側面に沿って略垂直に形設されている。そして、用紙搬送部4は給紙カセット3から送り出された用紙Pを受け取り、本体2の左側面に沿って垂直上方に転写部30まで搬送する。
【0028】
一方、画像形成装置1の本体2の上面には原稿搬送装置5が、その下方の本体2内には画像読取部6が搭載されている。利用者が原稿の複写を行う場合には、文字や図形、模様などの画像が描かれた原稿を原稿搬送装置5に積載したり、画像読取部6上面の図示しないコンタクトガラス上に載置したりする。原稿搬送装置5では1枚ずつ分離して原稿が送り出され、画像読取部6によってその画像が読み取られる。コンタクトガラス上の原稿に対しては画像読取部6内で光を走査させることによって画像が読み取られる。
【0029】
原稿画像の読み取りや印刷の開始は本体2の上部であって画像読取部6の正面側に備えられた操作パネル7を用いて実行される。操作パネル7は、例えば利用者による印刷に使用する用紙Pの種類やサイズ、拡大縮小、両面印刷の有無といった印刷条件などの設定を受け付けたり、注意事項やエラーメッセージなどを利用者に対して報知したりする。
【0030】
原稿の画像データの情報は後述する主制御部や画像処理部を経由して画像処理が施された後、給紙カセット3の上方であって本体2の中央部に配置された露光部8に送られる。露光部8により、画像データに基づいて制御されたレーザ光Lが画像形成部20に向かって照射される。
【0031】
用紙搬送部4の上方であって露光部8の左方には画像形成部20及び転写部30が備えられている。画像形成部20では露光部8によって照射されたレーザ光Lにより原稿画像の静電潜像が形成され、この静電潜像からトナー像が現像される。トナーは露光部8の上方に備えられたトナーコンテナー9から画像形成部20に補給される。画像形成部20で形成されたトナー像は用紙搬送部4によって同期をとって送られてきた印刷前の用紙Pに転写部30にて転写される。
【0032】
転写部30の上方には定着部10が備えられている。転写部30にて未定着トナー像を担持した用紙Pは定着部10へと送られ、熱ローラーと加圧ローラーとによりトナー像が加熱、加圧されて定着される。
【0033】
定着部10の上方には分岐部11が備えられている。定着部10から排出された用紙Pは両面印刷を行わない場合、分岐部11から画像形成装置1の上部胴内に設けられた胴内用紙排出部12に排出される。
【0034】
分岐部11から胴内用紙排出部12に向かって用紙Pが排出されるその排出口部分はスイッチバック部13としての機能を果たす。両面印刷を行う場合にはこのスイッチバック部13において定着部10から排出された用紙Pの搬送方向が切り替えられる。そして、用紙Pは分岐部11を通過し、定着部10の左方及び転写部30の左方に設けられた両面印刷用用紙搬送路14を通して下方に送られ、再度用紙搬送部4を経て転写部30へと送られる。
【0035】
また、画像形成装置1は装置全体の動作制御のため、図2に示すようにその本体2内にCPU16やその他の図示しない電子部品で構成された主制御部15を備えている。主制御部15は中央演算処理装置であるCPU16と画像処理部17とを利用し、記憶部18に記憶、入力されたプログラム、データに基づき原稿搬送装置5、画像読取部6、露光部8、画像形成部20、定着部10などといった構成要素を制御して一連の画像形成動作を実現する。また、画像形成装置1は時間を計測する計時部19を備え、画像形成動作に必要な各種時間を把握できる。
【0036】
続いて、画像形成部20周辺の詳細な構成について、図1及び図2に加えて、図3を用いて説明する。図3は画像形成部周辺を示す垂直断面部分正面図である。
【0037】
画像形成部20は、図3に示すようにその中心に像担持体である感光体ドラム21を備えている。そして、感光体ドラム21の近傍にはその回転方向に沿って順に、帯電部40、現像部50及びクリーニング部60が配置されている。なお、転写部30は感光体ドラム21の回転方向に沿って、現像部50とクリーニング部60との間に設けられている。
【0038】
感光体ドラム21は画像形成装置1内の用紙搬送方向と直角をなす用紙幅方向、すなわち図3の紙面奥行き方向に延び、その軸線方向を水平にして配置されている。感光体ドラム21はアルミニウム等により構成される導電性ローラー状基体の外側に真空蒸着等によって無機光導電性材料であるアモルファスシリコンの感光層を設けた無機感光体のドラムであり、直径が例えば40mmである。感光体ドラム21は図示しない駆動装置によって、その周速度が用紙搬送速度(例えば460mm/sec)とほぼ同じになるように図3において時計方向に回転させられている。
【0039】
帯電部40はコロナ放電帯電器を用いたスコロトロン帯電装置である。なお、帯電部40は、同じくコロナ放電帯電器を用いたコロトロン帯電装置であっても構わない。また、帯電部40は帯電ローラーや帯電ブラシ等の接触帯電装置でも構わない。この帯電部40により、感光体ドラム21の表面が所定の極性及び電位で一様に帯電する。このときの帯電電位は通常例えばプラス350Vである。
【0040】
現像部50はそのハウジング51の内部に現像ローラー52を備えている。現像ローラー52は現像方式が例えば磁性ジャンピング現像であって、感光体ドラム21の近傍に設けられている。現像ローラー52には感光体ドラム21の帯電極性と同極性のバイアスが印加される。この現像ローラー52により、現像剤であるトナーが帯電するとともに、感光体ドラム21の表面の静電潜像に移動、供給されて静電潜像が現像される。また、トナーは例えばスチレンアクリル系の磁性一成分トナーであって、図1に示すトナーコンテナー9に収容され、現像部50の箇所まで図示しない搬送手段により搬送されてハウジング51の内部に補給される。なお、現像部50の現像方式やトナーの種類は上記のものに限定されるわけではない。
【0041】
転写部30には転写ローラー31が設けられている。転写ローラー31は感光体ドラム21に図3において左方から圧接し、用紙Pを挿通させる転写ニップ部を形成する。転写ローラー31は駆動装置を有することなく、感光体ドラム21に接触することによって感光体ドラム21の回転に従って回転する。また、転写ローラー31には必要に応じて感光体ドラム21やトナーの帯電極性とは異なる極性であって、例えばマイナス500〜マイナス1000Vの転写バイアスが印加される。
【0042】
クリーニング部60は、図3に示すように感光体ドラム21の回転方向に沿って転写部30のさらに下流側であって、感光体ドラム21の中心軸線に対して上下方向上側に配置されている。クリーニング部60は断面矩形の略直方体形状をなすハウジング61を備えている。ハウジング61は用紙幅方向、すなわち図3の紙面奥行き方向に感光体ドラム21よりやや長い長さで延び、感光体ドラム21に対向する下部の箇所に開口61aが設けられている。
【0043】
そして、クリーニング部60はそのハウジング61にクリーニングローラー62、クリーニングブレード63、シール部材64及びトナー排出スパイラル65を備えている。
【0044】
クリーニングローラー62はハウジング61内の左側下部に設けられ、その表面が開口61aを通して感光体ドラム21表面に接触する回転部材である。また、クリーニングローラー62はその軸部の両端に備えられた図示しない付勢手段により、感光体ドラム21に対して所定の力で押し付けられて設けられている。クリーニングローラー62は、例えば直径10mmの芯金の周りにエチレンプロピレンゴム(EPDM)を設けた形で構成されて直径が例えば15mmであり、感光体ドラム21とほぼ同じ軸線方向長さを有している。
【0045】
クリーニングローラー62はモータ等で構成される図示しない駆動装置により回転させられている。感光体ドラム21表面の研磨を効率良く実施するためには、クリーニングローラー62を所定の周速度で回転させる必要がある。これにより、クリーニングローラー62を、感光体ドラム21との接触箇所における表面が感光体ドラム21表面と同じ方向に移動する向きに回転させ、クリーニングローラー62の周速度は感光体ドラム21のそれの例えば1.2倍に設定している。クリーニングローラー62は感光体ドラム21表面から残留トナーなどの付着物を回収するとともに、クリーニングローラー62表面に付着した研磨剤を含有するトナーによって感光体ドラム21表面を研磨するようにしてクリーニングする役割を果たす。
【0046】
クリーニングブレード63は開口61aのクリーニングローラー62と感光体ドラム21との接触箇所のドラム回転方向下流側の縁部に設けられている。クリーニングブレード63は図示しない付勢手段により感光体ドラム21に対して所定の力で押し付けられて設けられている。そして、クリーニングブレード63はポリウレタンゴムで構成された、ドラム軸線方向に延びる厚さ2.2mmの板のような直方体形状の部材であって、感光体ドラム21とほぼ同じ軸線方向長さを有している。クリーニングブレード63は感光体ドラム21表面に残留したトナーなどの付着物を掻き取るようにクリーニングする役割を果たす。
【0047】
シール部材64は開口61aのクリーニングローラー62と感光体ドラム21との接触箇所のドラム回転方向上流側の縁部に設けられている。シール部材64はハウジング61内に収容した感光体ドラム21表面から除去した付着物が開口61aからハウジング61の外部に漏洩して下方の用紙搬送路に落下しないように、その先端部が感光体ドラム21表面に当接するようにしてハウジング61に取り付けられている。シール部材64は、例えば厚さ0.1mmのポリウレタンフィルムで構成されている。
【0048】
トナー排出スパイラル65はハウジング61内において、クリーニングローラー62の右側やや上方の箇所に設けられている。トナー排出スパイラル65はクリーニングローラー62の軸線と略平行な軸線を中心として回転し、ハウジング61の内部から画像形成部20の外部に設けられた廃棄トナー回収容器(図示せず)まで延びている。トナー排出スパイラル65は感光体ドラム21表面から除去され、クリーニングに使用されてハウジング61内に収容された廃棄トナーなどをハウジング61の外部へ、すなわち廃棄トナー回収容器へ排出する排出部材としての役割を果たす。
【0049】
上記のようなクリーニング部60は、感光体ドラム21表面のトナー像が転写部30において用紙Pに転写された後、クリーニングローラー62とクリーニングブレード63とを用いて、感光体ドラム21表面に残留したトナーなどの付着物を除去してクリーニングする。
【0050】
クリーニング部60は印刷ジョブの実行中、クリーニングローラー62が常時感光体ドラム21の周速度に対応する周速度で回転して感光体ドラム21表面のクリーニングを実行している。例えば、クリーニングローラー62は上述のように感光体ドラム21の周速度460mm/secの1.2倍の周速度で回転している。
【0051】
ここで、ハウジング61のシール部材64のすぐ内側の箇所に感光体ドラム21表面から除去した付着物が滞留し易くなることを抑制するために、印刷ジョブの終了後、感光体ドラム21とクリーニングローラー62とを印刷ジョブ実行中の周速度より減速させて所定期間回転させる減速期間を設けることがある。このとき、減速させた感光体ドラム21とクリーニングローラー62との周速度の値は例えば印刷ジョブ実行中の半分としたり、特定の周速度としたりするなど予め設定され、記憶部18に記憶されている。また、その所定期間としては例えば5秒間が予め設定され、記憶部18に記憶されている。
【0052】
さらに、ハウジング61のシール部材64のすぐ内側の箇所に滞留した付着物が他の箇所に移動し易くなるように、減速期間において、現像部50が所定量のトナーを感光体ドラム21表面に供給し、現像部50が供給したそのトナーをクリーニング部60が感光体ドラム21表面から除去することもある。なお、このトナーの所定量としては、例えばトナーを感光体ドラム21表面の軸線方向略全域にわたって延びる帯状にしてその周方向長さ(帯幅)を5mmにすることが予め設定され、記憶部18に記憶されている。
【0053】
続いて、このクリーニング部60の減速期間に係る動作について、図2及び図3に加えて図4に示すフローに沿って説明する。図4はクリーニング部60の減速期間に係る動作を示すフローチャートである。
【0054】
図4に示す動作フローのスタートは画像形成装置1が印刷ジョブを実行中の時点である。画像形成装置1が印刷ジョブを実行中、主制御部15は印刷ジョブが終了したか否かを判定し(図4のステップ#101)、終了していない場合(ステップ#101のNo)、終了するまで印刷ジョブを継続する。
【0055】
印刷ジョブが終了すると(ステップ#101のYes)、主制御部15は感光体ドラム21の周速度を減速させる(ステップ#102)。減速させた感光体ドラム21の周速度は、例えば印刷ジョブ実行中の周速度の半分に設定することができる。例えば、印刷ジョブ実行中の感光体ドラム21の周速度が460mm/secの場合、減速させた感光体ドラム21の周速度は230mm/secになる。なお、減速させた感光体ドラム21の周速度は必ずしも印刷ジョブ実行中の周速度の半分というわけではなく、例えば印刷ジョブ実行中の周速度の75%の周速度に設定したり、また例えば340mm/secなどといった特定の周速度に設定したりしても良い。
【0056】
次に、主制御部15はクリーニングローラー62の周速度も減速させる(ステップ#103)。減速させたクリーニングローラー62の周速度は感光体ドラム21の周速度同様、例えば印刷ジョブ実行中の周速度の半分に設定することができるし、特定の周速度に設定しても良い。
【0057】
そして、主制御部15は計時部19に時間の計測を開始させる(ステップ#104)。
【0058】
次に、主制御部15は現像部50から所定量のトナーを感光体ドラム21表面に供給させる(ステップ#105)。このトナー量としては前述のように例えばトナーを感光体ドラム21表面の軸線方向略全域にわたって延びる帯状にしてその周方向長さ(帯幅)を5mmにすることが予め設定され、記憶部18に記憶されている。そして、このトナーはクリーニング部60によって感光体ドラム21表面から除去される。
【0059】
次に、主制御部15はステップ#104で計時を開始した時間が所定期間を経過したか否かを判定する(ステップ#106)。この所定期間としては前述のように例えば5秒間が予め設定され、記憶部18に記憶されている。そして、5秒間が経過するまで減速期間が継続される(ステップ#106のNo)。
【0060】
5秒間が経過すると(ステップ#106のYes)、主制御部15は感光体ドラム21とクリーニングローラー62との周速度を減速させる前のもとの周速度に戻し(ステップ#107、#108)、クリーニング部60の減速期間に係る動作を終了する(図4のエンド)。なおこの後、次の印刷ジョブが存在しないとき、感光体ドラム21とクリーニングローラー62とは回転を停止することもある。
【0061】
このようにして、画像形成装置1は印刷ジョブ終了後に減速期間を設けて感光体ドラム21とクリーニングローラー62とを印刷ジョブ実行中の周速度より減速させて回転させるので、クリーニングローラー62の遠心力が印刷ジョブ実行中より低下する。したがって、クリーニングローラー62がハウジング61内に収容した感光体ドラム21表面の付着物を飛散させる力も弱くなり、シール部材64のすぐ内側の箇所に付着物が滞留し易くなることを抑制させることができる。さらに、シール部材64のすぐ内側の箇所に滞留した付着物を他の箇所に移動させ易くすることが可能である。
【0062】
そして、減速期間における感光体ドラム21とクリーニングローラー62との周速度が印刷ジョブ実行中の周速度の半分であるので、それら周速度が印刷ジョブ実行中の周速度に対して大幅に低下する。したがって、クリーニングローラー62の遠心力が印刷ジョブ実行中より一層低下するので、シール部材64のすぐ内側の箇所に感光体ドラム21表面から除去した付着物が滞留し易くなることをさらに抑制することができる。
【0063】
また、減速期間において、現像部50が所定量のトナーを感光体ドラム21表面に供給し、現像部50が供給したそのトナーをクリーニング部60が感光体ドラム21表面から除去するので、減速期間に感光体ドラム21表面に供給したトナーがシール部材64の箇所に滞留する付着物をハウジング61の内側へと押し込む作用が働く。したがって、より一層シール部材64のすぐ内側の箇所に滞留した付着物を他の箇所に移動し易くすることが可能である。
【0064】
さらに、トナー排出スパイラル65によってハウジング61内に収容された感光体ドラム21表面から除去した付着物がハウジング61外部に排出されるので、さらにシール部材64のすぐ内側の箇所に付着物が滞留し易くなることを抑制することができる。そして、シール部材64のすぐ内側の箇所に滞留した付着物を他の箇所に移動し易くすることが可能である。
【0065】
そして、上記実施形態の構成によれば、感光体ドラム21表面から除去した付着物が収容されたハウジング61の感光体ドラム21と対向する開口61aの縁部に設けられ、その開口61aからハウジング61外部に付着物が漏洩することを防止するシール部材64のすぐ内側の箇所に付着物が滞留し易くなることを抑制することができ、感光体ドラム21表面に残留する付着物がシール部材64の箇所を通り抜け易くなってシール部材64の箇所における付着物の装置内への落下を防止することが可能な画像形成装置1を提供することができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【0067】
また、本発明の上記実施形態では、画像形成装置1としてブラックトナーのみを使用したモノクロ印刷用の画像形成装置を例に掲げて説明したが、発明の適用対象となる画像形成装置はこのような機種に限定されるわけではなく、中間転写ベルトを備え、複数色を重ね合わせて画像形成することが可能なタンデム方式、或いはロータリー方式のカラー印刷用画像形成装置などであっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、トナー像を用紙に転写させた後、像担持体表面に残留するトナー等の付着物を除去してクリーニングする画像形成装置において利用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 画像形成装置
20 画像形成部
21 感光体ドラム(像担持体)
30 転写部
40 帯電部
50 現像部
60 クリーニング部
61 ハウジング
61a 開口
62 クリーニングローラー(回転部材)
63 クリーニングブレード(ブレード)
64 シール部材
65 トナー排出スパイラル(排出部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、前記像担持体にトナーを供給して前記像担持体表面にトナー像を形成する現像部と、前記像担持体表面に残留する付着物を除去するクリーニング部と、を備えた画像形成装置において、
前記クリーニング部は、前記像担持体の上方に配置されるとともに、
前記像担持体に対向して設けられた開口を通して前記像担持体表面から除去した付着物を収容するハウジングと、
前記ハウジング内に設けられて前記開口において前記像担持体に接触して前記像担持体表面の付着物を回転しながら除去する回転部材と、
前記開口の前記回転部材に対する前記像担持体回転方向下流側の縁部に設けられ前記像担持体に接触して前記像担持体表面の付着物を掻き取るブレードと、
前記開口の前記回転部材に対する前記像担持体回転方向上流側の縁部に設けられ前記像担持体に接触して前記ハウジングに収容した前記像担持体表面の付着物が前記開口から前記ハウジング外部に漏洩することを防止するシール部材と、を備え、
印刷ジョブの終了後、前記像担持体と前記回転部材とを印刷ジョブ実行中の周速度より減速させて所定期間回転させる減速期間を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記減速期間における前記像担持体と前記回転部材との周速度が印刷ジョブ実行中の周速度の半分であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記減速期間において、
前記現像部が、所定量のトナーを前記像担持体表面に供給し、
前記クリーニング部が、前記現像部が供給した前記トナーを前記像担持体表面から除去することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記クリーニング部は、前記ハウジング内に収容された前記像担持体表面から除去した付着物を前記ハウジング外部に排出するための排出部材を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−194301(P2012−194301A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57461(P2011−57461)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】