説明

画像形成装置

【課題】被記録媒体の腰の強さによらず、被記録媒体を良好に排出して排出トレイ上に積載させることが可能な画像形成装置を提供すること。
【解決手段】接触部材17bは、接触部材17bの一部と揺動部材17aとの間に空隙22が形成される状態で、揺動部材17aに取り付けられている。排出トレイ18へと排出される被記録媒体が接触部材17bに接触すると、接触部材17bが揺動部材17aとともに上方へと揺動し、揺動部材17a及び接触部材17bからの荷重が被記録媒体に作用する状態となる。さらに、揺動部材17aが上死点まで揺動した後、接触部材17bが空隙22を狭める方向へ変位した際には、接触部材17bの弾性変形に伴って生じる弾性力が被記録媒体に作用する状態になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置において、シート状の被記録媒体(例えば、記録用紙)に画像を形成した後、その被記録媒体を排出トレイへと排出する際に、その被記録媒体をシート押さえで上方から押さえる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の画像形成装置の場合、上端側を中心に揺動可能なシート押さえが排出ローラの近傍に設けられ、このシート押さえが自重で被記録媒体を上方から押さえる仕組みになっている。
【0004】
このようなシート押さえを設ければ、被記録媒体が排出ローラから離れた際に、被記録媒体の排出方向後端(以下、単に後端という。)をシート押さえによって強制的に下方へと変位させることができる。
【0005】
したがって、このようなシート押さえが設けられていない画像形成装置に比べ、被記録媒体の後端を速やかに下方へと変位させることができ、次に排出される被記録媒体の先端が排出済みの被記録媒体の後端に衝突してしまうのを防止ないし抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−202965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のようなシート押さえを設けても、腰の強い被記録媒体(例えば、厚紙など)が使われた場合には、被記録媒体の排出方向後端側を十分に下方へ変位させることができないことがあった。
【0008】
例えば、排出トレイの積載面が、被記録媒体の排出方向に向かって上り坂となっていて、且つ、その積載面の被記録媒体排出方向に平行な縦断面が、上に凸な弧を描く断面形状となっている場合、腰の弱い被記録媒体なら、簡単に積載面に沿った形状に湾曲する。
【0009】
しかし、腰の強い被記録媒体の場合、特に被記録媒体が幅方向にカールしているような場合には、被記録媒体が排出方向には湾曲しにくく、積載面に沿った形状になるほどは湾曲しないことがある。
【0010】
そのため、積載面に沿った形状に湾曲しない被記録媒体は、排出トレイ上において被記録媒体の重心位置付近で積載面に当接、支持される状態となり、その当接箇所よりも被記録媒体の排出方向後端側となる部分は、積載面から浮き上がってしまうことがある。
【0011】
このような状況となった場合に、シート押さえからの押圧力が弱すぎると、被記録媒体の排出方向後端側を十分に下方へ変位させることができなくなり、その結果、次に排出される被記録媒体が排出済みの被記録媒体の後端側に衝突しやすくなるなどの問題を招く。
【0012】
一方、腰の強い被記録媒体が使われる場合であっても、シート押さえからの押圧力が十分に強ければ、被記録媒体の排出方向後端側を下方へ変位させることができる。しかし、この場合は、腰の弱い被記録媒体が排出される際、そのような被記録媒体が押圧力の強いシート押さえに当接しても、シート押さえが上方へ逃げなくなってしまう。そのため、シート押さえとの当接に伴って被記録媒体が座屈して皺になるなど、シート押さえによって被記録媒体の排出が阻害されたり、被記録媒体に傷が付いたりするなどの不具合を生じるおそれがあった。
【0013】
つまり、上記従来のシート押さえでは、シート押さえからの押圧力を強めに設定しても弱めに設定しても、被記録媒体の腰の強さによって問題が生じることがあるため、上記のような諸問題すべてを解決することは困難であった。
【0014】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、被記録媒体の腰の強さによらず、被記録媒体を良好に排出して排出トレイ上に積載させることが可能な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以下、本発明において採用した構成について説明する。
本発明の画像形成装置は、シート状の被記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段によって画像が形成された被記録媒体を、排出トレイ上に排出する排出手段と、前記排出手段によって前記被記録媒体が前記排出トレイへと排出される際に、当該被記録媒体に当接して、当該被記録媒体を下方へと押圧する押圧手段とを備え、前記押圧手段は、前記排出手段と前記被記録媒体との接触箇所よりも上方となる位置に設けられた揺動軸を中心に揺動可能な揺動部材と、前記排出手段によって前記被記録媒体が前記排出トレイへと排出される際に当該被記録媒体が接触する接触部材とを備え、前記接触部材は、当該接触部材の一部と前記揺動部材との間に空隙が形成される状態で、前記揺動部材に取り付けられており、前記排出トレイへと排出される前記被記録媒体が前記接触部材に接触するのに伴って前記接触部材が前記揺動部材とともに上方へと揺動した際には、前記揺動部材及び前記接触部材からの荷重が前記被記録媒体に作用する状態となり、しかも、前記接触部材自体が弾性体とされるか、もしくは前記接触部材と前記揺動部材との間の空隙に弾性体を介在させることにより、前記排出トレイへと排出される前記被記録媒体が前記接触部材に接触するのに伴って前記接触部材が前記空隙を狭める方向へ変位した際には、前記弾性体の弾性変形に伴って生じる弾性力が前記被記録媒体に作用する状態になることを特徴とする。
【0016】
このように構成された画像形成装置によれば、排出トレイへと排出される被記録媒体が接触部材に接触するのに伴い、揺動部材及び接触部材が上方へと揺動した際には、揺動部材及び接触部材からの荷重が被記録媒体に作用する状態となる。しかも、被記録媒体が接触部材に接触するのに伴い、空隙が狭まる方向へ接触部材が変位した際には、弾性体の弾性変形に伴って生じる弾性力が被記録媒体に作用する状態となる。そのため、このような押圧手段であれば、2段階の押圧状態を作り出すことができる。
【0017】
したがって、揺動部材の重量と弾性体のばね定数のバランスを調節することにより、いずれか一方の押圧状態だけを有効にしたり、双方の押圧状態を有効にしたりすることが可能となる。
【0018】
これにより、例えば、腰の弱い被記録媒体の場合には、弾性体を弾性変形させることなく、揺動部材及び接触部材の荷重だけを被記録媒体に作用させることで、被記録媒体に過大な押圧力を作用させないようにし、被記録媒体が接触部材に衝突して折れ曲がるのを防止できる。
【0019】
また、例えば、腰の強い被記録媒体の場合には、被記録媒体に対し、揺動部材及び接触部材からの荷重に加えて、弾性体の弾性変形に伴う弾性力をも作用させることで、被記録媒体に十分な押圧力を作用させることもできる。これにより、腰の強い被記録媒体であっても、被記録媒体の後端をしっかりと下方へと押さえ込むことができ、次に排出される被記録媒体の先端が、先に排出済みの被記録媒体の後端に追突するのを防止ないし抑制することができる。
【0020】
ところで、本発明の画像形成装置において、前記接触部材は、一端が前記揺動部材に固着されて、当該一端から他端にわたる範囲と前記揺動部材との間に前記空隙が形成された板ばね状弾性部材からなるものであると好ましい。
【0021】
この画像形成装置では、板ばね状弾性部材により、接触部材自体が弾性体とされる。このような板ばね状弾性部材という比較的簡素な構成で、所期の接触部材を構成すれば、接触部材とは別体の弾性体を設けなくても済み、部品点数の削減及びお組立工数の削減を図ることができる。
【0022】
また、本発明の画像形成装置は、前記揺動部材が上方へ揺動して所定の上限位置に到達した際に、当該揺動部材に当接することにより、前記揺動部材が前記上限位置よりも上方へ変位するのを阻止する状態になる揺動阻止部を備えるものであると好ましい。
【0023】
このように構成された画像形成装置によれば、揺動部材が過剰に上方へ変位することがないので、腰の強い被記録媒体が当接した場合でも、被記録媒体を適切に押圧することができる。
【0024】
また、本発明の画像形成装置において、前記揺動部材は、前記接触部材が前記空隙を狭める方向へ変位して所定の規制位置に到達した際に、前記接触部材に当接することにより、前記接触部材が前記規制位置よりも前記揺動部材側へ変位するのを阻止する状態になるものであると好ましい。
【0025】
このように構成された画像形成装置によれば、接触部材が過剰に上方へ変位することがないので、腰の強い被記録媒体が当接した場合でも、被記録媒体を適切に押圧することができる。
【0026】
また、本発明の画像形成装置は、前記揺動部材が上方へ揺動して所定の上限位置に到達した際に、当該揺動部材に当接することにより、前記揺動部材が前記上限位置よりも上方へ変位するのを阻止する状態になる揺動阻止部を備え、前記揺動部材は、前記接触部材が前記空隙を狭める方向へ変位して所定の規制位置に到達した際に、前記接触部材に当接することにより、前記接触部材が前記規制位置よりも前記揺動部材側へ変位するのを阻止する状態になり、前記排出手段によって前記被記録媒体が前記排出トレイへと排出される際に、前記被記録媒体が前記接触部材に接触すると、前記揺動部材が前記上限位置に到達するまでは、少なくとも前記揺動部材が揺動し、前記揺動部材が前記上限位置に到達した後は、さらに前記接触部材が前記空隙を狭める方向へ変位するものであると好ましい。
【0027】
このように構成された画像形成装置によれば、まずは、少なくとも揺動部材が揺動し、揺動部材が上限位置に到達した後は、さらに接触部材が空隙を狭める方向へ変位する。したがって、腰の弱い被記録媒体の場合には、主に揺動部材及び接触部材からの荷重だけを作用させることで、被記録媒体に過大な押圧力を作用させないようにし、被記録媒体が接触部材に衝突して折れ曲がるようなトラブルを防止することができる。
【0028】
また、腰の強い被記録媒体の場合に、揺動部材が上限位置に到達したとしても、さらに接触部材の弾性変形に伴う弾性力をも作用させることで、被記録媒体に十分な押圧力を作用させ、被記録媒体の後端をしっかりと下方へと押さえ込むことができる。
【0029】
また、本発明の画像形成装置において、前記押圧手段は、前記被記録媒体の幅方向に離間した位置にそれぞれに配設されることにより、前記被記録媒体の幅方向の両縁それぞれを押圧可能に構成されているものであると好ましい。
【0030】
このように構成された画像形成装置によれば、被記録媒体の幅方向の両縁それぞれを押圧できるので、左右方向についてバランスよく被記録媒体を押圧することができ、安定した積載が可能となる。
【0031】
また、本発明の画像形成装置は、前記排出トレイの上方に、画像読取機構を収容する収容部が配設されており、前記排出手段は、前記収容部の底面と前記排出トレイの間の空間に、前記被記録媒体を排出するものであってもよい。
【0032】
このように構成された画像形成装置によれば、画像読取機構を収容する収容部の底面と排出トレイの間の狭い空間に被記録媒体が排出されるものの、押圧手段によって被記録媒体を押さえ込むことができるので、より多くの被記録媒体を排出トレイに積載できる。
【0033】
また、本発明の画像形成装置において、前記排出手段は、前記被記録媒体を挟持しつつ回転する一対のローラを備え、前記接触部材は、最も上方へと変位した状態において、前記一対のローラによるニップ点での前記被記録媒体の排出方向に一致する仮想線よりも下側で、前記被記録媒体に接触するものであると好ましい。
【0034】
このように構成された画像形成装置によれば、被記録媒体が撓みを生ずることなく排出方向へ排出される場合に、接触部材が最も上方へ変位する状態になっても、接触部材は上記のような仮想線よりも下側で被記録媒体に接触する。したがって、被記録媒体が上記のような仮想線よりも上方へ持ち上がってしまうことはなく、適正に被記録媒体を押さえ込むことができる。
【0035】
なお、接触部材が最も上方へ変位する状態になった際に、接触部材が上記のような仮想線よりも下側で被記録媒体に接触するのであれば、揺動部材自体は上記のような仮想線より上側にあってもよいし下側にあってもよい。
【0036】
ただし、揺動部材の一部が上記のような仮想線よりも下側にあって、その位置よりも上方へ接触部材が変位するのを阻止する状態にあれば、接触部材そのものがどのように変位するものであっても、接触部材を確実に仮想線よりも下側で被記録媒体に接触させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】画像形成装置の斜視図。
【図2】画像形成装置の画像形成機構を示す縦断面図。
【図3】排出トレイ付近の構造を示す斜視図。
【図4】押圧機構の挙動を示すための縦断面図であり、(a)は被記録媒体が排出されていない状態を示す縦断面図、(b)は腰の弱い被記録媒体が排出される状態を示す縦断面図、(c)は腰の強い被記録媒体が排出される状態を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、本発明の実施形態について一例を挙げて説明する。
[画像形成装置の構造]
図1に示す複合機1は、画像形成装置としての機能に加え、他の機能(例えば、画像読取装置や通信装置としての機能など)を兼ね備えたものである。なお、以下の説明においては、複合機1が備える各部の相対的な位置関係をわかりやすく説明するため、図中に併記した上下左右前後の各方向を利用する。
【0039】
複合機1は、プリンタ部2と、プリンタ部2の上部に搭載されたスキャナ部3と、プリンタ部2の上部でスキャナ部3の前方に配設された操作部4とを備えている。スキャナ部3は、フラットベッド型イメージスキャナの上部カバーにADF(Automatic Document Feeder;自動原稿送り装置)を搭載した構造になっている。
【0040】
プリンタ部2は、図2に示すように、給紙カセット11、供給機構12、プロセスカートリッジ13、レーザースキャナ14、定着器15、排出機構16、及び押圧機構17などを備えている。
【0041】
給紙カセット11は、被記録媒体を収容する部分で、複合機1本体の前方へ引き出し可能、且つ複合機1本体に対して着脱可能な構造とされている。供給機構12は、給紙カセット11内に収容された被記録媒体をプロセスカートリッジ13の下方へと搬出する機構である。
【0042】
供給機構12は、被記録媒体に接触して回転又は被記録媒体を挟持しつつ回転するローラ群、これらのローラ群によって搬送される被記録媒体を、所定の搬送方向へと案内するガイド部などにより構成される。また、供給機構12が備えるローラ群へ図示しない動力源(例えばモータ等)から動力を伝達する動力伝達機構(例えば歯車機構やカム機構など)なども付設されている。
【0043】
プロセスカートリッジ13は、感光体や、その感光体上に形成される静電潜像を現像するための現像機構などを備えている。レーザースキャナ14は、プロセスカートリッジ13が備える感光体に対してレーザー光を照射することにより、感光体上に静電潜像を形成する装置である。定着器15は、プロセスカートリッジ13によってトナー像が転写された被記録媒体を一対のローラ間に挟み込んで加熱及び加圧し、トナー像を被記録媒体に定着させる装置である。
【0044】
排出機構16は、定着器15から送出される被記録媒体を、プリンタ部2の上部に形成された排出トレイ18へと搬送する機構である。この排出機構16は、被記録媒体に接触して回転又は被記録媒体を挟持しつつ回転するローラ群、これらのローラ群によって搬送される被記録媒体を、所定の搬送方向へと案内するガイド部などにより構成される。また、排出機構16が備えるローラ群へ図示しない動力源(例えばモータ等)から動力を伝達する動力伝達機構(例えば歯車機構やカム機構など)なども付設されている。
【0045】
排出機構16による被記録媒体の搬送経路終端付近には、上述のローラ群の一部に相当する排出ローラ16a及びニップローラ16bが配設され、被記録媒体は、これら排出ローラ16a及びニップローラ16bによって排出トレイ18上へと排出される。
【0046】
排出トレイ18は、上面側が被記録媒体の積載面とされている。この排出トレイ18の積載面は、被記録媒体の排出方向に向かって上り勾配となる傾斜が付与された傾斜面とされており、しかも、その傾斜面は、被記録媒体の排出方向に向かって徐々に緩傾斜となる形状とされることで、上に凸な曲面となっている。
【0047】
この排出トレイ18の上方には、スキャナ部3の外装をなす筐体3a(本発明でいう収容部の一例に相当。)が配設され、この筐体3aの内部に画像読取機構(図示略)が収容されている。上述の排出機構16は、筐体3aの底面と排出トレイ18の間の空間に、被記録媒体を排出する。
【0048】
[押圧機構の構造]
押圧機構17は、排出機構16によって排出トレイ18上へと排出される被記録媒体を下方へと押圧する押圧手段であり、揺動部材17aと接触部材17bとを備えている。これら揺動部材17a及び接触部材17bは、図3に示すように、被記録媒体の幅方向(図3中に示す左右方向)に離間した位置に二組設けてあり、これにより、被記録媒体の両縁付近それぞれを押圧可能となっている。
【0049】
揺動部材17aは、図4(a)〜同図(c)に示すように、揺動軸21を中心に、下死点(図4(a)参照。)から上死点(図4(c)参照。)に至る範囲内を揺動可能とされている。より詳しくは、プリンタ部2の筐体2aの一部は、揺動部材17aが上述の上死点又は下死点に至った際に揺動部材17aに当接する形状とされており、その当接によって揺動部材17aがそれ以上揺動するのを阻止する揺動阻止部として機能している。
【0050】
接触部材17bは、弾性変形可能な板ばね状弾性部材(本実施形態では、板ばねとして機能する程度の腰があるプラスチックフィルム)によって構成されている。接触部材17bの一端は、揺動部材17aに固着され、接触部材17bの一端から他端にわたる範囲と揺動部材17aとの間には空隙22が設けられている。
【0051】
接触部材17bは、図4(c)に示すように、空隙22を狭める方向へ弾性変形可能で、さらに空隙22が無くなる位置(すなわち、揺動部材17aに接する位置)まで弾性変形すると、それ以上、揺動部材17a側へ変形することはできない状態になる。
【0052】
以上のように構成された押圧機構17は、外力が作用しない状態においては、図4(a)に示すように、揺動部材17aが自重によって下死点へと移動し、また、接触部材17bは、弾性変形することなく、揺動部材17aに追従して移動する。
【0053】
一方、排出機構16から被記録媒体が排出される際には、排出される被記録媒体が接触部材17bに当接すると、この当接に伴って被記録媒体側から接触部材17b側へと作用する力を受けて、揺動部材17a及び接触部材17bが上方へと揺動する。
【0054】
揺動部材17a及び接触部材17bは、比較的腰の弱い被記録媒体を想定して、そのような被記録媒体が接触した場合でも、簡単に上方へ揺動する程度の重量に調節されている。そのため、比較的腰の弱い被記録媒体が接触しても、揺動部材17a及び接触部材17bは、上方へと逃げることになり、これにより、接触部材17bとの衝突に伴って被記録媒体が座屈してしまうのを防止することができる。
【0055】
また、接触部材17bのばね性は、比較的腰の強い被記録媒体を想定して、そのような被記録媒体から相応に大きな力が加わったときに弾性変形する程度に調節されている。そのため、接触部材17bが上死点に至っていない場合、接触部材17bは、ほぼ弾性変形しないまま、揺動部材17aとともに揺動する。
【0056】
さて、その後、排出機構16から排出される被記録媒体が、最終的に排出ローラ16a及びニップローラ16bによる挟持を解かれると、揺動部材17a及び接触部材17bが自重で下方へと揺動し、その際、被記録媒体の排出方向後端を強制的に下方へと変位させる。その結果、後続の被記録媒体が排出機構16から排出されても、その排出方向先端部分が、排出済みの被記録媒体の排出方向後端部分に追突するのを防止できる。
【0057】
ところで、多数の被記録媒体が排出された場合、腰の弱い被記録媒体であれば、図4(b)に示すように、排出トレイ18上面側の湾曲した積載面に沿って被記録媒体が湾曲する。そのため、押圧機構17は、主に揺動部材17a及び接触部材17bの自重を利用するだけで、被記録媒体の排出方向後端部分を容易に押さえ込むことができる。
【0058】
しかし、腰の強い被記録媒体の場合、図4(c)に示すように、被記録媒体が自身の重心付近で排出トレイ18に当接し、その当接箇所よりも排出方向後端側では、被記録媒体が排出トレイ18との間に空隙をなして上方へ持ち上がってしまうことがある。特に、被記録媒体が幅方向にカールして排出方向へは湾曲しにくい形状となっている場合には、上述のように排出方向後端側が持ち上がる傾向が強くなる。
【0059】
このような状態になった場合、押圧機構17は、揺動部材17a及び接触部材17bの自重だけでは、被記録媒体の排出方向後端部分を十分に下方へ押さえ込めなくなることがあり、その場合、揺動部材17aは上死点にまで揺動することがある。
【0060】
ただし、揺動部材17aが上死点に達した状態において、さらに被記録媒体側から力が作用すると、接触部材17bが揺動部材17aに接近する方向(図4(c)に破線で示した位置から実線で示した位置)へと弾性変形する。
【0061】
そのため、この弾性変形に伴って生じる弾性力で、被記録媒体を押圧する状態になり、被記録媒体には、揺動部材17a及び接触部材17bの自重に加え、接触部材17bの弾性力が作用する状態となる。
【0062】
その結果、被記録媒体は、より強い力で下方へと押圧されることになり、被記録媒体の排出方向に一致する仮想線L1(図4(b)及び同図(c)参照)よりも下側まで押さえ込まれる状態になる。
【0063】
ちなみに、被記録媒体の排出方向に一致する仮想線L1は、本実施形態の場合、排出ローラ16a及びニップローラ16bの回転中心間を結ぶ仮想線L2に対して直交する線で、且つ、排出ローラ16a及びニップローラ16bのニップ点を通過する線である。
【0064】
被記録媒体の排出方向先端部分は、おおむね上述の仮想線L1に沿って排出方向へと送出される。そのため、排出済みの被記録媒体の排出方向後端部分が、上述の如く仮想線L1よりも下方へ押さえ込まれていれば、後から排出される被記録媒体の排出方向先端部分が、排出済みの被記録媒体の排出方向後端部分に追突するのを防止できる。
【0065】
特に、本実施形態では、揺動部材17aが上死点に達したときにも、図4(c)に示すように、揺動部材17aの一部が仮想線L1よりも下方にある。そのため、揺動部材17aに接触する位置までしか湾曲しない接触部材17bも、最下部分が仮想線L1よりも下方にある状態は確実に維持される。したがって、排出済みの被記録媒体の排出方向後端部分をより確実に仮想線L1よりも下方へ押さえ込むことができる。
【0066】
[効果]
以上説明した通り、上記複合機1によれば、上述のような押圧機構17を備えているので、揺動部材17a及び接触部材17bからの荷重が被記録媒体に作用する状態、及びこれに加えて接触部材17bの弾性変形に伴って生じる弾性力が被記録媒体に作用する状態、以上2段階の押圧状態を作り出すことができる。
【0067】
したがって、腰の弱い被記録媒体の場合には、接触部材17bを弾性変形させることなく、揺動部材17a及び接触部材17bの荷重だけを被記録媒体に作用させることで、被記録媒体に過大な押圧力を作用させないようにし、被記録媒体が接触部材17bに衝突して折れ曲がるのを防止できる。
【0068】
また、例えば、腰の強い被記録媒体の場合には、被記録媒体に対し、揺動部材17a及び接触部材17bからの荷重に加えて、接触部材17bの弾性変形に伴う弾性力をも作用させることで、被記録媒体に十分な押圧力を作用させることもできる。これにより、腰の強い被記録媒体であっても、被記録媒体の後端をしっかりと下方へと押さえ込むことができ、これにより、次に排出される被記録媒体の先端が、先に排出済みの被記録媒体の後端に追突するのを防止ないし抑制することができる。
【0069】
また、上記複合機1によれば、接触部材17b自体を、弾性変形可能な板ばね状弾性部材(プラスチックフィルム)で構成してあるので、接触部材とは別体の弾性体を用いることなく、弾性的に支持された接触部材17bを構成でき、部品点数の削減及び組立工数の削減を図ることができる。
【0070】
また、上記複合機1によれば、プリンタ部2の筐体2aの一部が上述のような揺動阻止部として機能しているので、揺動部材17aが過剰に上方へ変位することはなく、腰の強い被記録媒体が当接した場合でも、被記録媒体を適切に押圧することができる。
【0071】
また、上記複合機1によれば、揺動部材17aは、接触部材17bが空隙22を狭める方向へ変位した際に接触部材17bに当接するので、接触部材17bが過剰に上方へ変位することもなく、腰の強い被記録媒体が当接した場合でも、被記録媒体を適切に押圧することができる。
【0072】
さらに、上記複合機1の場合、まずは、揺動部材17aが揺動し、揺動部材17aが上死点に到達した後は、さらに接触部材17bが空隙22を狭める方向へ変位する。したがって、腰の弱い被記録媒体の場合には、揺動部材17a及び接触部材17bからの荷重だけを作用させることで、被記録媒体に過大な押圧力を作用させないようにし、被記録媒体が接触部材17bに衝突して折れ曲がるようなトラブルを防止することができる。また、腰の強い被記録媒体の場合に、揺動部材17aが上死点に到達したとしても、その後は、さらに接触部材17bの弾性変形に伴う弾性力をも作用させることで、被記録媒体に十分な押圧力を作用させ、被記録媒体の後端をしっかりと下方へと押さえ込むことができる。
【0073】
また、上記複合機1によれば、押圧機構17は、被記録媒体の幅方向の両縁それぞれを押圧できるので、左右方向についてバランスよく被記録媒体を押圧することができ、被記録媒体の安定した積載が可能となる。
【0074】
また、上記複合機1によれば、上述の排出機構16は、筐体3aの底面と排出トレイ18の間の狭い空間に被記録媒体を排出するものの、押圧機構17によって被記録媒体を押さえ込むことができるので、より多くの被記録媒体を排出トレイ18に積載できる。
【0075】
また、上記複合機1によれば、接触部材17bは、最も上方へと変位した状態において、排出ローラ16a及びニップローラ16bによるニップ点での被記録媒体の排出方向に一致する仮想線L1よりも下側で、被記録媒体に接触するので、被記録媒体が撓みを生ずることなく排出方向へ排出される場合に、接触部材17bが最も上方へ変位する状態になっても、接触部材17bは上記のような仮想線L1よりも下側で被記録媒体に接触する。したがって、被記録媒体が上記のような仮想線L1よりも上方へ持ち上がってしまうことはなく、適正に被記録媒体を押さえ込むことができる。
【0076】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
【0077】
例えば、上記実施形態では、揺動部材17aが上死点に達すると、その後は、接触部材17bの撓みが増すように構成してあったが、これに限らない。具体的には、接触部材17bが撓んで揺動部材17aとの間の空隙22が狭まって、接触部材17bが揺動部材17aに接触すると、その後は、揺動部材17aが上死点へと揺動するように構成されていてもよい。すなわち、揺動部材17a及び接触部材17bの重量と接触部材17bのばね性(ばね定数)のバランスが、上記実施形態とは逆となるように調節されていてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、接触部材17b自体を板ばね状弾性部材(プラスチックフィルム)で構成してあったが、接触部材自体は弾性変形しない部材とし、その接触部材と揺動部材との間に別の弾性体を介装してもよい。
【0079】
例えば、揺動部材に対して、さらに一端を揺動中心として揺動可能な接触部材を取り付け、それら揺動部材及び接触部材間にばねを介装することにより、接触部材が揺動部材に対して弾性的に支持された構造としてもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、揺動部材17a及び接触部材17bの双方が最も上方へ変位する状態になった際に、揺動部材17a及び接触部材17bそれぞれの一部が上述のような仮想線L1よりも下側に存在する例を示したが、接触部材17bの一部が仮想線L1よりも下側で被記録媒体に接触するのであれば、揺動部材17a自体は上記のような仮想線L1より上側にあってもよいし下側にあってもよい。
【0081】
加えて、上記実施形態では、電子写真方式で画像を形成する画像形成装置を例示したが、他の記録方式(例えば、インクジェット方式、熱転写方式など)を採用してもよい。
【符号の説明】
【0082】
1・・・複合機、2・・・プリンタ部、2a・・・プリンタ部の筐体、3・・・スキャナ部、3a・・・スキャナ部の筐体、4・・・操作部、11・・・給紙カセット、12・・・供給機構、13・・・プロセスカートリッジ、14・・・レーザースキャナ、15・・・定着器、16・・・排出機構、16a・・・排出ローラ、16b・・・ニップローラ、17・・・押圧機構、17a・・・揺動部材、17b・・・接触部材、18・・・排出トレイ、21・・・揺動軸、22・・・空隙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の被記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段によって画像が形成された被記録媒体を、排出トレイ上に排出する排出手段と、
前記排出手段によって前記被記録媒体が前記排出トレイへと排出される際に、当該被記録媒体に当接して、当該被記録媒体を下方へと押圧する押圧手段と
を備え、
前記押圧手段は、
前記排出手段と前記被記録媒体との接触箇所よりも上方となる位置に設けられた揺動軸を中心に揺動可能な揺動部材と、
前記排出手段によって前記被記録媒体が前記排出トレイへと排出される際に当該被記録媒体が接触する接触部材と
を備え、
前記接触部材は、当該接触部材の一部と前記揺動部材との間に空隙が形成される状態で、前記揺動部材に取り付けられており、前記排出トレイへと排出される前記被記録媒体が前記接触部材に接触するのに伴って前記接触部材が前記揺動部材とともに上方へと揺動した際には、前記揺動部材及び前記接触部材からの荷重が前記被記録媒体に作用する状態となり、しかも、前記接触部材自体が弾性体とされるか、もしくは前記接触部材と前記揺動部材との間の空隙に弾性体を介在させることにより、前記排出トレイへと排出される前記被記録媒体が前記接触部材に接触するのに伴って前記接触部材が前記空隙を狭める方向へ変位した際には、前記弾性体の弾性変形に伴って生じる弾性力が前記被記録媒体に作用する状態になる
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記接触部材は、一端が前記揺動部材に固着されて、当該一端から他端にわたる範囲と前記揺動部材との間に前記空隙が形成された板ばね状弾性部材からなる
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記揺動部材が上方へ揺動して所定の上限位置に到達した際に、当該揺動部材に当接することにより、前記揺動部材が前記上限位置よりも上方へ変位するのを阻止する状態になる揺動阻止部
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記揺動部材は、前記接触部材が前記空隙を狭める方向へ変位して所定の規制位置に到達した際に、前記接触部材に当接することにより、前記接触部材が前記規制位置よりも前記揺動部材側へ変位するのを阻止する状態になる
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記揺動部材が上方へ揺動して所定の上限位置に到達した際に、当該揺動部材に当接することにより、前記揺動部材が前記上限位置よりも上方へ変位するのを阻止する状態になる揺動阻止部
を備え、
前記揺動部材は、前記接触部材が前記空隙を狭める方向へ変位して所定の規制位置に到達した際に、前記接触部材に当接することにより、前記接触部材が前記規制位置よりも前記揺動部材側へ変位するのを阻止する状態になり、
前記排出手段によって前記被記録媒体が前記排出トレイへと排出される際に、前記被記録媒体が前記接触部材に接触すると、前記揺動部材が前記上限位置に到達するまでは、少なくとも前記揺動部材が揺動し、前記揺動部材が前記上限位置に到達した後は、さらに前記接触部材が前記空隙を狭める方向へ変位する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記押圧手段は、前記被記録媒体の幅方向に離間した位置にそれぞれに配設されることにより、前記被記録媒体の幅方向の両縁それぞれを押圧可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記排出トレイの上方に、画像読取機構を収容する収容部が配設されており、
前記排出手段は、前記収容部の底面と前記排出トレイの間の空間に、前記被記録媒体を排出する
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記排出手段は、前記被記録媒体を挟持しつつ回転する一対のローラを備え、
前記接触部材は、最も上方へと変位した状態において、前記一対のローラによるニップ点での前記被記録媒体の排出方向に一致する仮想線よりも下側で、前記被記録媒体に接触する
ことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−229112(P2012−229112A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99910(P2011−99910)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】