説明

画像形成装置

【課題】中間搬送ローラを用紙サイズ毎の動作パターンで速度制御し、レジストローラの前段で記録媒体に生じるバックテンションを軽減させる。
【解決手段】印刷用紙10を給紙経路FR1へと送出するピックアップローラ220a及びスクレーパローラ220bと、レジストローラ240a,240bへ印刷用紙10を送出するレジ前ローラと、ピックアップローラ220a及びスクレーパローラ220bと、レジ前ローラ230a,230bとの間で印刷用紙10を搬送する中間搬送ローラ250a,250bとに関する動作パターンに基づいて、各地点における印刷用紙10の搬送速度をそれぞれ独立して制御する制御手段を備え、動作パターンは中間搬送ローラ250a,250bからレジ前ローラ230a,230b又はレジストローラ240a,240bまでの距離A及び距離Bと印刷用紙10の長さPとの関係に基づいて設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙トレイから搬送経路へ記録媒体を給送する給紙経路を有し、搬送経路上を搬送される記録媒体に画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式等の画像形成装置では、一般的に、搬送経路上の画像形成部上流にレジストローラを配置し、給紙トレイに積載された記録媒体を一枚ずつ搬送するスクレーパローラ及びピックアップローラから供給される記録媒体を一時的に保持し、搬送経路に対する記録媒体の送出タイミングを調整する機構が採用されている。また、画像形成装置には、同一サイズの記録媒体を大量に印刷処理するために、大量の記録媒体を積載した大容量給紙ユニットが、着脱可能に装着されたり、或いは機器に内蔵されたりしている。
【0003】
ところで、この大容量給紙ユニットに関しては、給紙経路における紙詰まりを解除するためのスペースなど、メンテナンススペースを確保する必要があり、ピックアップローラからレジストローラに至るまでの距離をある程度確保するとともに、各サイズの記録媒体を安定して搬送するために、ピックアップローラとレジストローラとの間には複数の中間搬送ローラを配設するようになっている。
【0004】
通常、中間搬送ローラは、電磁石を用いた電磁力の作用によって駆動させる電磁クラッチや、一方の方向のみに回転力を伝達するワンウェイクラッチによって駆動されていた(例えば、特許文献1)。このような電磁クラッチやワンウェイクラッチを用いた場合、下流側に設けられたレジストローラが記録媒体を挟み込んだ際、中間搬送ローラの駆動をオフ状態とし、それ以降、中間搬送ローラは、レジストローラによる用紙の搬送にあわせて空回りする、所謂、「連れ回り」することで、記録媒体が搬送方向の上流に逆走することを防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−327150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、中間搬送ローラを連れ回りさせた場合、中間搬送ローラと記録媒体との摩擦等によって、記録媒体が把持されることとなり、記録媒体に逆方向の張り(バックテンション)が生じてしまっていた。このバックテンションは、搬送タイミングの遅延、画像位置のずれ、及び用紙ジャムの原因となる可能性があるとともに、搬送タイミングの遅延が生じた場合には、画像形成処理の高速化が妨げられるという問題があった。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたもので、レジストローラの前段で記録媒体に生じるバックテンションを軽減させることができる画像形成装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載した本発明の画像形成装置は、
給紙トレイから搬送経路へ記録媒体を給送する給紙経路を有し、搬送経路上を搬送される記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、
前記給紙トレイに積層された前記記録媒体を一枚ずつ取り上げて前記給紙経路へと送出するピックアップ手段と、
前記搬送経路に対する記録媒体の送出タイミングを調整するレジストローラと、
前記給紙経路内において、前記ピックアップローラと前記レジストローラとの間で前記記録媒体を搬送する中間搬送ローラ群と、
前記ピックアップ手段、前記中間搬送ローラ群及び前記レジストローラに関する動作パターンを記憶する動作パターン記憶部と、
前記動作パターンに基づいて、前記ピックアップ手段及び前記中間搬送ローラ群の各地点における前記記録媒体の搬送速度を、それぞれ独立して制御する制御手段と
を備え、
前記動作パターンは、少なくとも前記中間搬送ローラ群中の2つのローラ間の距離と、前記記録媒体の搬送方向における長さとの関係に基づいて設定される
ことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載した本発明の画像形成装置は、請求項1に記載した本発明の画像形成装置において、
前記中間搬送ローラ群は、
前記レジストローラに隣接し、前記給紙経路から前記レジストローラへ記録媒体を送出するレジ前ローラと、
前記給紙経路内において、前記ピックアップローラと前記レジ前ローラとの間で前記記録媒体を搬送する中間搬送ローラと
を有しており、
前記記録媒体の前記レジストローラへの到達は、前記レジストローラの上流側に近接して設置されたレジストセンサにより検知され、
前記動作パターンは、前記中間搬送ローラから前記レジ前ローラまでの距離よりも前記記録媒体が長い場合に、前記レジストセンサによる前記記録媒体の検知から前記レジストローラの駆動開始タイミングまでの間、前記中間搬送ローラを、前記レジ前ローラと同一の速度で回転させるとともに、前記レジストローラの駆動開始タイミングから前記記録媒体の後端が前記中間搬送ローラから離脱するまでの間、前記中間搬送ローラを、前記レジ前ローラ及び前記レジストローラと同一の速度で回転させるように設定されている
ことを特徴とする。
【0010】
さらに、請求項3に記載した本発明の画像形成装置は、請求項1又は2に記載した本発明の画像形成装置において、
前記中間搬送ローラ群は、
前記レジストローラに隣接し、前記給紙経路から前記レジストローラへ記録媒体を送出するレジ前ローラと、
前記給紙経路内において、前記ピックアップローラと前記レジ前ローラとの間で前記記録媒体を搬送する中間搬送ローラと
を有しており、
前記記録媒体の前記レジストローラへの到達は、前記レジストローラの上流側に近接して設置されたレジストセンサにより検知され、
前記動作パターンは、前記中間搬送ローラから前記レジストローラまでの距離よりも前記記録媒体が短く、且つ、前記中間搬送ローラから前記レジストセンサまでの距離よりも前記記録媒体が長い場合に、前記レジストセンサによる記録媒体の検知から前記記録媒体の後端が前記中間搬送ローラを離脱するまでの間、前記中間搬送ローラを、前記レジ前ローラ速度と同一速度で回転させるように設定されている
ことを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載した本発明の画像形成装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載した本発明の画像形成装置において、
前記中間搬送ローラ群は、
前記レジストローラに隣接し、前記給紙経路から前記レジストローラへ記録媒体を送出するレジ前ローラと、
前記給紙経路内において、前記ピックアップローラと前記レジ前ローラとの間で前記記録媒体を搬送する中間搬送ローラと
を有しており、
前記記録媒体の前記レジストローラへの到達は、前記レジストローラの上流側に近接して設置されたレジストセンサにより検知され、
前記動作パターンは、前記中間搬送ローラから前記レジストセンサまでの距離よりも前記記録媒体が短い場合、前記中間搬送ローラの用紙後端抜けにかかわらず、中間搬送ローラは、所定の回転速度で用紙をレジ前ローラへ用紙を受け渡すように設定されている
ことを特徴とする。
【0012】
さらに、請求項5に記載した本発明の画像形成装置は、請求項1乃至4のいずれかに記載した本発明の画像形成装置において、
前記中間搬送ローラ群は、
前記レジストローラに隣接し、前記給紙経路から前記レジストローラへ記録媒体を送出するレジ前ローラと、
前記給紙経路内において、前記ピックアップローラと前記レジ前ローラとの間で前記記録媒体を搬送する中間搬送ローラと
を有しており、
前記制御手段は、前記中間搬送ローラで前記記録媒体を所定の第1の速度で搬送するとともに、搬送経路の上流側に近接して設置されて印刷用紙の前記給紙経路への到達を検知する中間入口センサが前記記録媒体の先端を検知したタイミングに応じ、前記給紙経路の特性に基づいた第2の速度を算出し、前記第1の速度を前記第2の速度に切り替えることによって、前記レジ前ローラへの前記記録媒体の到達タイミングを補正する
ことを特徴とする。
【0013】
また、請求項6に記載した本発明の画像形成装置は、請求項5に記載した本発明の画像形成装置において、前記制御手段は、前記第1の速度を前記第2の速度に切り替えた後、搬送経路の下流側に近接して設置されて印刷用紙の搬送経路からの通過を検知する中間出口センサが前記記録媒体の先端を検知したタイミングで、前記第1の速度に切り替えることを特徴とする。
【0014】
さらに、請求項7に記載した本発明の画像形成装置は、請求項5又は6に記載した本発明の画像形成装置において、前記制御装置は、前記給紙経路において、前記記録媒体が、前記中間入口センサから前記レジ前ローラに至る範囲を通過している間、前記第1の速度とすることを特徴とする。
【0015】
また、請求項8に記載した本発明の画像形成装置は、請求項1乃至7のいずれかに記載した本発明の画像形成装置において、
前記中間搬送ローラ群は、
前記レジストローラに隣接し、前記給紙経路から前記レジストローラへ記録媒体を送出するレジ前ローラと、
前記給紙経路内において、前記ピックアップローラと前記レジ前ローラとの間で前記記録媒体を搬送する複数の中間搬送ローラと
を有しており、
前記2つのローラ間の距離は、複数の中間搬送ローラのうち、前記記録媒体の搬送方向の最下流に位置する中間搬送ローラから前記レジ前ローラまでの距離である
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載した本発明の画像形成装置によれば、給紙トレイからレジストローラに至る給紙経路を通じて記録媒体を供給する動作時において、少なくとも中間搬送ローラ群中の2つのローラ間の距離と、記録媒体の搬送方向における長さとの関係に基づいて、ピックアップ手段及び中間搬送ローラ群の各地点における記録媒体の搬送速度を独立して調整するため、レジストローラに対する相対的な給紙速度が調節されて、様々な種類の記録媒体に作用するバックテンションの発生を防止させることができる。
【0017】
請求項2に記載した本発明の画像形成装置によれば、請求項1に記載した本発明の画像形成装置において、中間搬送ローラからレジ前ローラまでの距離よりも記録媒体が長いサイズの記録媒体では、一枚の記録媒体がレジストローラと、レジ前ローラと、中間搬送ローラとによって同時に挟持される。そのため、本発明では、レジストセンサによる記録媒体の検知からレジストローラの駆動開始タイミングまでの間、すなわち、レジストローラが記録媒体を挟持する前には、中間搬送ローラの回転をレジ前ローラの回転に追従させて同一の速度で回転させることで、レジ前ローラと中間搬送ローラとによって記録媒体に作用するバックテンションの発生を防止することができる。
【0018】
また、レジストローラの駆動開始タイミングから記録媒体の後端が中間搬送ローラから離脱するまでの間、すなわち、中間搬送ローラ、レジ前ローラ及びレジストローラが一枚の記録媒体を把持している間には、中間搬送ローラの回転を、レジ前ローラ及びレジストローラの回転に追従させて同一の速度で回転させることで、3つのローラによって記録媒体に作用するバックテンションの発生を防止することができる。
【0019】
特に、中間搬送ローラの地点における記録媒体の搬送速度も動作パターンに基づく制御をするので、中間搬送ローラ側で記録媒体の用紙搬送の進みや遅れの補正を行うことができる。その結果、レジ前ローラと中間搬送ローラとの間で記録媒体に作用するバックテンションの発生を防止できるとともに、レジ前ローラでは、中間搬送ローラによる記録媒体の用紙搬送の進みや遅れの補正とは独立して、「突当て補正制御」のみを行わせることができ、印刷装置全体の処理能力を高速化することができる。
【0020】
即ち、レジ前ローラでのバックテンションを軽減させるとともに、印刷装置全体の処理能力を高速化することができる。
【0021】
請求項3に記載した本発明の画像形成装置によれば、請求項1又は2に記載した本発明の画像形成装置において、一枚の記録媒体がレジストローラと、中間搬送ローラとによって挟持されることはないため、レジストセンサが記録媒体を検知する前には、中間搬送ローラの回転を、レジ前ローラの回転に追従させて同一の速度で回転させることで、レジ前ローラと中間搬送ローラとによって記録媒体に作用するバックテンションの発生を防止することができる。
【0022】
請求項4に記載した本発明の画像形成装置によれば、請求項1乃至3のいずれかに記載した本発明の画像形成装置において、記録媒体が中間搬送ローラからレジストセンサまでの距離よりも短い場合、レジ前ローラが記録媒体に対して、「突当て補正制御」する際、中間搬送ローラは記録媒体を把持していないため、そのままの速度で回転させて、次の記録媒体を受け入れることができ、記録媒体にかかる負荷を抑制することができる。
【0023】
請求項5に記載した本発明の画像形成装置によれば、請求項1乃至4のいずれかに記載した本発明の画像形成装置において、記録媒体の厚さや、ピックアップ手段との摩擦等によって、中間搬送ローラに到達する記録媒体の到達時間のバラツキが生じた場合であっても、給紙経路への到達を検知したタイミングで、第1の速度から第2の速度へ切り替えることで、本来の搬送タイミングに補正することができる。その結果、適切なタイミングでレジ前ローラに記録媒体を搬送することができるので、レジ前ローラと中間搬送ローラとが挟持する記録媒体に作用するバックテンションの発生を防止するとともに、レジ前ローラでは、「突当て補正制御」のみを行わせることができ、印刷装置全体の処理能力を高速化することができる。
【0024】
請求項6に記載した本発明の画像形成装置によれば、請求項5に記載した本発明の画像形成装置において、記録媒体がレジ前ローラに到達する直前で第1の速度に切り替えるので、記録媒体は、始めに設定されていた第1の速度でレジ前ローラに挟持されることとなり、その結果、レジ前ローラと中間搬送ローラとが挟持する記録媒体に作用するバックテンションの発生を防止することができる。
【0025】
請求項7に記載した本発明の画像形成装置によれば、請求項5又は6に記載した本発明の画像形成装置において、中間搬送ローラ及びレジ前ローラが記録媒体を挟持している間は第1の速度で搬送されるので、レジ前ローラと中間搬送ローラとが挟持する記録媒体に作用するバックテンションの発生を防止することができる。
【0026】
請求項8に記載した本発明の画像形成装置によれば、請求項1乃至7のいずれかに記載した本発明の画像形成装置において、複数の中間搬送ローラを有している場合であっても、記録媒体を最後まで挟持する中間搬送ローラを基準として動作パターンを変化させることができるので、適切にバックテンションの発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る印刷装置の印刷用紙搬送経路の概要を示す概略図である。
【図2】図1の給紙系搬送路の一部を拡大して示す側面図である。
【図3】図1の演算処理部及びその周辺装置の給紙制御に関するモジュールを示すブロック図である。
【図4】図3の演算処理部の給紙制御に関するモジュールを示すブロック図である。
【図5】図3の演算処理部による搬送速度制御の概要を示すフローチャート図である。
【図6】図5の搬送速度制御による大サイズモードにおける給紙制御を示すタイムチャート図である。
【図7】図5の搬送速度制御による中サイズモードにおける給紙制御を示すタイムチャート図である。
【図8】図5の搬送速度制御による小サイズモードにおける給紙制御を示すタイムチャート図である。
【図9】図3の演算処理部による印刷用紙の中間搬送ローラへの到達タイミングの補正制御を示すフローチャート図である。
【図10】図9の給紙制御により中間搬送モーターが第1の速度から第2の速度へ変化する状態を示すタイムチャート図である。
【図11】図9の給紙制御による中間搬送モーターの速度変化を示すタイムチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(印刷装置の全体構成)
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置の印刷用紙搬送経路の概要を示す概略図である。なお、図中、駆動部を構成するローラの個数は適宜省略している。
【0029】
図1に示す本実施形態の印刷装置100(画像形成装置)は、多数のノズルが形成されたインクヘッドを複数備え、それぞれのインクヘッドから黒又はカラーインクを吐出してライン単位で印刷を行い、搬送ベルト上の記録用紙上に複数の画像を互いに重なり合うように形成するインクジェット方式のラインカラープリンタを例に説明する。
【0030】
図1に示すように印刷装置100は、環状の搬送経路上を搬送される印刷用紙10に画像を形成する画像形成装置であり、この搬送経路は、用紙を供給する給紙系搬送路FRと、この給紙系搬送路FRからヘッドユニット110を経て排紙経路DRへ至る通常経路CRと、通常経路CRに分岐接続された反転経路SRとから概略構成されている。
【0031】
給紙系搬送路FRにおいて、印刷用紙10の供給を行う給紙機構としては、筐体側面の外部に配設され、印刷用紙10を積層して収納するサイド給紙トレイ120と、筐体内部に設けられた複数の給紙トレイ(130a、130b、130c、130d)とが備えられている。
【0032】
サイド給紙トレイ120、給紙トレイ130のいずれかの給紙機構から給紙された印刷用紙10は、ローラ等の駆動機構によって筐体内の給紙系搬送路FRに沿って搬送され、印刷用紙の先頭部分の基準位置であるレジスト部Rに導かれる。そして、このレジスト部Rのレジストローラに対し、これより上流の各ローラ駆動によって印刷用紙の供給動作が行われる。
【0033】
一方、レジスト部Rの搬送方向下流側には、複数の印字ヘッドを備えたヘッドユニット110が設けられている。印刷用紙10は、ヘッドユニット110の対向面に設けられた搬送ベルト160によって印刷条件により定められる速度で搬送されながら、各印字ヘッドから吐出されたインクによりライン単位で画像形成される。印刷済みの印刷用紙10は、さらに、ローラ等の駆動機構によって通常経路CR上を搬送される。この通常経路CRには、印刷済みの印刷用紙10を排出する排紙機構として、排紙口140が分岐接続されている。
【0034】
そして、印刷用紙10の片側の面のみに印刷を行う片面印刷の場合、印刷用紙10は、そのまま排紙経路DRを経て、排紙口140に導かれて排紙され、排紙口140の受台として設けられた排紙台150に印刷面を下にして積載されていく。排紙台150は、筐体から突出したトレイ形状をしており、ある程度の厚みを有している。排紙台150は傾斜しており、傾斜の下位置に形成された壁により、排紙口140から排紙された印刷用紙10が自然に整えられて重なっていくようになっている。
【0035】
一方、印刷用紙10の両面に印刷を行う両面印刷の場合は、表面(最初に印刷される面を「表面」、次に印刷される面を「裏面」とする)印刷終了時には排紙経路DR側に導かれずに、さらに筐体内を搬送され、反転経路SRに送出される。この排紙経路DRと反転経路SRとの分岐点には、裏面印刷用に搬送路を切り替えるための切替機構170が設けられており、切替機構170によって排出経路へ送出されなかった印刷用紙10は、反転経路SRに引き込まれる。
【0036】
この反転経路SRでは、通常経路CRから用紙が受け渡され、用紙を往復させることにより用紙の表裏を反転させる、所謂スイッチバックを行う。そして、ローラ等の駆動機構によって、切替機構172を経由して通常経路CRに戻され、レジスト部Rを経て再給紙され、表面と同様の手順によって裏面の印刷が行われる。その後、裏面の印刷が行われ、両面に画像が形成された印刷用紙10は、排紙経路DRを通じて排紙口140に導かれて排紙され、排紙口140の受台として設けられた排紙台150に積載されていく。なお、本実施形態では、両面印刷時におけるスイッチバックを、排紙台150内に設けられた空間を利用して行うようにしている。排紙台150内に設けられた空間は、スイッチバック時に印刷用紙10が外部から取り出せないように覆われた構成となっている。
【0037】
印刷装置100では、給紙された印刷用紙10の先頭部分の基準位置となるレジスト部Rに、両面印刷時に片面印刷済みの印刷用紙10も再給紙されてくる。このため、レジスト部Rの直前部分には、新規に給紙される印刷用紙10の給紙経路と、裏面印刷の用紙が循環して搬送されてくる再給紙経路とが合流する合流点214が形成される。そして、レジスト部Rは、給紙系搬送路FRと通常経路CRとの合流点214下流側において、用紙の送り出しを行う。
【0038】
また、本実施形態においては、ある印刷用紙10を給紙した後、その印刷用紙10に印刷が施され排紙されるのを待って次の印刷用紙10を給紙するのではなく、スケジューリングにより、先行する印刷用紙10が排紙される前に、後続の印刷用紙10を給紙して、所定の間隔で連続的に印刷することができるようになっている。したがって、両面印刷時の通常のスケジューリングでは、表面の用紙を給紙する際に、反転経路SRから戻ってきた用紙が挿入される位置を確保するように、予めスペースを確保しておく。これにより、本装置では、表面の印刷と裏面の印刷とを並行させることができ、片面印刷時に対して2倍の生産性を確保することができる。
【0039】
前記搬送ベルト160は、通常経路CRにおいて、ヘッドユニット110に対向する面の前端及び後端に配設された駆動ローラ161及び従動ローラ162に掛け渡されており、図1中、時計回り方向に回転移動する。また、搬送ベルト160の上面には、そのベルト移動方向に沿って、4色のインクヘッドが並べて配置され、複数の画像を互いに重なり合うようにしてカラー画像を形成するヘッドユニット110が対向配置されている。
【0040】
さらに、図1に示すように、印刷装置100には、演算処理部330が備えられている。この演算処理部330は、CPUやDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ、メモリ、及びその他の電子回路等のハードウェア、或いはその機能を持ったプログラム等のソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成された演算モジュールであり、プログラムを適宜読み込んで実行することにより種々の機能モジュールを仮想的に構築し、構築された各機能モジュールによって、画像データに関する処理や、各部の動作制御、ユーザー操作に対する種々の処理を行う。また、この演算処理部330には、操作パネル340が接続されており、この操作パネル340を通じて、ユーザーによる指示や設定操作を受け付けることができる。
【0041】
(給紙機構)
本実施形態において、上述した給紙系搬送路FRは、本発明に係る給紙機構を備えている。図2は給紙系搬送路FRの一部を拡大して示す側面図である。
【0042】
同図に示すように、本発明の給紙機構は、上述した給紙系搬送路FRの一部として設けられ、レジスト部Rに印刷用紙10を送出する機構であり、本実施形態では、筐体側面の外部に配設されたサイド給紙トレイ120から新規に給紙を行うための給紙経路FR1を経て、レジスト部Rへ用紙が供給される。
【0043】
レジスト部Rでは、レジストローラ240a,240bが通常経路CRにおけるヘッドユニット110の上流に配置されており、このレジストローラ240a,240bにより、給紙系搬送路FR側から通常経路CRに進入してくる印刷用紙10を一時的に保持し、ヘッドユニット110に対する印刷用紙10の送出タイミングが調整される。また、レジスト部Rには、レジ前ローラ230a,230bがレジストローラ240a,240bよりも搬送経路の上流側に隣接して配置されており、このレジ前ローラ230a,230bにより、給紙経路FR1からレジストローラへ印刷用紙10が送出される。
【0044】
サイド給紙トレイ120には、印刷用紙10が複数枚積層されて収納され、この積層された印刷用紙10を送出するために、下流側のスクレーパローラ220bと、上流側のピックアップローラ220aが設けられており、これらのローラが回転することによって積層された印刷用紙10のうち、最上位の印刷用紙10が一枚ずつ取り上げて、給紙経路FR1へと送出される。また、サイド給紙トレイ120には、その給紙台を上下に移動させるエレベータ機構210が設けられている。このエレベータ機構は、駆動力をトレイ底板に伝達してこれを上下動させることによって、載置された印刷用紙10を上下させる。
【0045】
給紙経路FR1は、印刷用紙を積層して収納するサイド給紙トレイ120に積載された印刷用紙10をレジスト部Rに搬送する給紙経路である。給紙経路FR1には、ピックアップローラ220aとレジ前ローラ230a(230b)との間で印刷用紙10を搬送する複数の中間搬送ローラ251(251a,251b),252(252a,252b),253(253a,253b)が、給紙経路に沿って設けられ、トレイ120からピックアップされた印刷用紙10がレジスト部Rに対して送出される。
【0046】
本実施形態において、これらの複数の中間搬送ローラ251,252,253は、給紙経路の上流側に位置する中間搬送ローラ251にのみ中間搬送モーターが直接駆動しており、その他の中間搬送ローラ252,253は、ベルトプーリ機構により伝達される動力で従動回転するようになっている。
【0047】
なお、本実施形態では、レジ前ローラ230a,230bと中間搬送ローラ251,252,253とが、中間搬送ローラ群の構成要素となっている。
【0048】
(給紙制御機構)
各搬送経路における搬送駆動制御は上述した演算処理部330によって行われる。図3は、演算処理部330及びその周辺装置の給紙制御に関するモジュールを示すブロック図であり、図4は、演算処理部330の給紙制御に関するモジュールを示すブロック図である。なお、説明中に用いられる「モジュール」とは、装置や機器等のハードウェア、或いはその機能を持ったソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成され、所定の動作を達成するための機能単位を示す。図3に示すように、給紙制御機構に係るモジュールとしては、上記演算処理部330の他、用紙検出モジュール群500と、各駆動部を制御する搬送駆動制御部350とが備えられている。
【0049】
(1)用紙検出モジュール群
用紙検出モジュール群500は、搬送に係る印刷用紙10に関する情報を取得するモジュール群であり、用紙検出センサ511〜513と、用紙サイズ検出機構530を備えている。
【0050】
用紙検出センサ511〜513は、図2に示すように、給紙経路FR1及びレジスト部Rにそれぞれ配置され、給紙に係る印刷用紙10の有無(通過)を検出したり、印刷用紙10のサイズ、種類又は厚さを検出するセンサである。検出されたデータは、演算処理部330へ送出される。
【0051】
本実施形態では、給紙経路FR1に中間入口センサ511と、中間出口センサ512とが設けられている。中間入口センサ511は、給紙経路FR1内の上流側の中間搬送ローラ251に近接して設置され、印刷用紙10の給紙経路FR1への到達を検知するセンサである。また、中間出口センサ512は、給紙経路FR1内の下流側の中間搬送ローラ253に近接して設置され、印刷用紙10の給紙経路FR1からの通過を検知するセンサである。
【0052】
また、レジスト部Rには、レジストセンサ513が設けられている。レジストセンサ513は、レジストローラ240a,240bの上流側に近接して設置され、印刷用紙10のレジストローラ240a,240bへの到達を検知するセンサである。なお、本実施形態では、用紙検出センサとして反射式センサや透過式センサ、その他の種々のセンサを用いることができる。
【0053】
用紙サイズ検出機構530は給紙系搬送路FRにおいて搬送対象となっている用紙のサイズを取得するモジュールである。この用紙サイズ検出機構530は、ユーザーが行うプリンタドライバや操作パネル340における用紙設定、印刷装置100内にある給紙トレイの用紙サイズセンサ、各搬送経路のセンサの通過時間などを読み出すことによって、搬送処理に係る用紙のサイズを取得し、取得した用紙種別データを演算処理部330へ送信する。
【0054】
なお、プリンタドライバは、例えば本印刷装置をネットワークプリンタのように利用する場合に、ネットワーク上の各クライアントPCで実行されるアプリケーション又はミドルウェアであり、このプリンタドライバは、LANなどの通信インターフェースを通じて、印刷装置100に対して印刷データ及び実行命令を送信することができる。本実施形態において、このプリンタドライバでは、用紙の種類を設定するインターフェースが備えられており、ユーザーは、このインターフェース上で項目を選択することにより、用紙の種類を選択することができる。用紙サイズ検出機構530では、この用紙の種類の選択に応じて、用紙種別や用紙厚、用紙サイズなどの情報が取得される。
【0055】
搬送駆動制御部350は、各搬送経路の搬送を制御するモジュールであり、演算処理部330から送信されたデータを受信し、このデータを基に搬送経路内における各駆動部を制御する。
【0056】
(2)搬送駆動制御部モジュール
上記搬送経路に係る駆動部としては、レジストローラ240a,240bのレジストモーター駆動部240と、レジ前ローラ230a,230bのレジ前モーター駆動部230と、中間搬送ローラ251,252,253の中間搬送モーター駆動部250と、ピックアップローラ220a、及びサイド給紙トレイ120を駆動するピックアップモーター駆動部220と、その他の搬送ローラのモーター駆動部とが含まれている。
【0057】
レジストローラ240a,240bのレジストモーター駆動部240は、搬送経路の画像形成部上流に配置され、一対のローラにより給紙に係る印刷用紙10を保持し、画像形成部に対する印刷用紙10の送出タイミングを調整する駆動手段である。このモーター駆動部240は、搬送駆動制御部350の制御により、レジスト駆動部の動作の開始及び停止や、その動作速度を制御され、立ち上げ時の加速度と減速時の減速加速度等が制御される。
【0058】
レジ前ローラ230a,230bのレジ前モーター駆動部230は、搬送経路のレジストローラ240a,240bの上流に配置され、一対のローラにより給紙に係る印刷用紙10を保持し、画像形成部に対する印刷用紙10の送出タイミングを調整したり、斜めに搬送された用紙の向きをまっすぐに補正して後段に送り出すことで、用紙の斜行を補正する、所謂、「突当て補正制御」を行う駆動手段である。
【0059】
ピックアップローラ220aのピックアップモーター駆動部220は、印刷装置100側面の外部に露出したサイド給紙トレイ120から、レジスト部Rへと連通する給紙経路FR1内において、サイド給紙トレイ120に積載された印刷用紙10をピックアップし、レジ前ローラ230a,230bへ搬送する駆動手段である。中間搬送ローラ251,252,253の中間搬送モーター駆動部250は、給紙経路FR1に配置され、複数配置された一対のローラにより給紙に係る印刷用紙10を保持し、レジスト部Rに対する印刷用紙10の送出タイミングを調整する駆動手段である。
【0060】
その他の搬送ローラには、通常搬送ローラ290、スイッチバックローラ281及び再給紙ローラ282等が含まれており、これらを駆動する搬送モーター駆動部260は、一対のローラにより給紙に係る印刷用紙10を把持し、印刷用紙10をレジスト部Rへ搬送する駆動手段である。また、この搬送モーター駆動部260には、搬送ベルト160の後端に配設された従動ローラ162を駆動させる駆動モーターも含まれており、この従動ローラ162を駆動させることで、レジスト部Rから搬送された印刷用紙10を搬送ベルト160によって印刷条件により定められる速度で搬送する駆動手段である。
【0061】
そして、本実施形態において、搬送駆動制御部350は、これらの各駆動部の動作の開始及び停止や、その動作速度を、それぞれ独立して制御している。
【0062】
(3)演算処理部
また、本実施形態における給紙制御は、演算処理部330によって、各経路における搬送条件、及び用紙種別に基づいて、各駆動部の動作を制御することにより行われる。
【0063】
図4に詳細に示すように、演算処理部330は、主として、ジョブデータ受信部331と、用紙種別取得部332と、操作信号取得部333と、搬送速度補正部338と、スケジューリング部337と、画像処理部336と、搬送速度決定部335と、記憶部334とを備えている。
【0064】
ジョブデータ受信部331は、一連の印刷処理単位であるジョブデータを受信する通信インターフェースであり、受信したジョブデータに含まれるデータをスケジューリング部337及び画像処理部336に受け渡すモジュールである。ここでの通信としては、例えば、10BASE−Tや100BASE−TX等によるイントラネット(企業内ネットワーク)や家庭内ネットワークなどのLANの他、赤外線通信等の近距離通信も含まれる。
【0065】
画像処理部336は、画像処理に特化したデジタル信号処理を行う演算処理装置であり、印刷に必要な画像データの変換等を行い、印刷を実行するモジュールである。この画像処理部336は、画像形成制御部336a、色変換回路336bとを備えている。
【0066】
色変換回路336bは、RGB印刷画像をCMYK印刷画像に変換する回路であり、各色についての印刷画像に基づいて、画像形成制御部336aに印刷を実行させる。画像形成制御部336aは、各色のインクヘッドの駆動や、搬送経路の駆動手段の動作を制御し、画像形成処理全体を制御するモジュールであり、スケジューリング部337によるスケジューリングに従ったタイミング及び印字速度で画像形成を行う。
【0067】
操作信号取得部333は、操作パネル340からユーザーによる操作信号を受信するモジュールであり、受信した操作信号を解析し、ユーザー操作に応じた処理を他のモジュールに実行させる。用紙種別取得部332は、用紙検出モジュール群500や操作信号取得部333によって検出された、給紙に係る印刷用紙10のサイズ、種類又は厚さ等の用紙種別データとして取得するモジュールである。そして、用紙種別取得部332は、印刷処理に際し、取得した用紙種別データを搬送速度決定部335に送信する。
【0068】
記憶部334は、各種のデータや、プログラムを記憶保持するメモリ装置等であり、本実施形態においては、ピックアップローラ220a、スクレーパローラ220b、中間搬送ローラ251,252,253及びレジ前ローラ230a、230bに関する動作パターンのデータを記憶し、印刷処理に際し、選択された用紙サイズに応じた動作パターンを搬送速度決定部335へ送信する。
【0069】
特に、本実施形態において、この動作パターンには、中間搬送ローラ251,252,253の動作速度を、ピックアップローラ220a、スクレーパローラ220b、レジストローラ240a,240b、及びレジ前ローラ230a,230bの駆動の開始や停止、急加速や急減速などの挙動に同期させ、各駆動部の相対的な速度を適正に調節する制御データが含まれている。
【0070】
そして、この、中間搬送ローラ251,252,253の動作速度を決定する動作パターンは、少なくとも、中間搬送ローラ群を構成する中間搬送ローラ251,252,253からレジ前ローラ230a、230bまでの距離を含む給紙経路の特性と、印刷用紙10の搬送方向における長さと、以下の(a)〜(e)の要件とから決定されるようになっている。
【0071】
なお、レジ前ローラ230a,230bとレジストローラ240a,240bとの間隔が既知であることを条件に、中間搬送ローラ251,252,253からレジ前ローラ230a,230bまでの距離を、中間搬送ローラ251,252,253からレジストローラ240a,240bまでの距離で代用してもよい。
【0072】
(a)中間搬送ローラ251,252,253からレジ前ローラ230a、230bへの受け渡し速度は、レジ前ローラ230a、230bの受入速度と等速レベルとする。
【0073】
(b)一枚の印刷用紙10が中間搬送ローラ251,252,253とレジ前ローラ230a、230b間で接続される区間について、中間搬送ローラ251,252,253はレジ前ローラ230a、230bの回転速度と同じ速度にする。
【0074】
(c)中間搬送ローラ251,252,253から印刷用紙10の後端が抜けた後、中間搬送ローラ251,252,253の回転速度は、ピックアップローラ220a、スクレーパローラ220bの回転速度と等速レベルとする。
【0075】
(d)3つの中間搬送ローラ251,252,253を有する構成の場合、下流側の中間搬送ローラ253から用紙後端が抜けるまでは、上流側の中間搬送ローラ251へ次ページの印刷用紙10が入らないようにする。
【0076】
(e)レジ前ローラ230a,230bは、レジストセンサ513の検知タイミングで突き当て速度補正を行う。
【0077】
搬送速度決定部335は、用紙検出モジュール群500や操作信号取得部333によって検出された用紙種別データと、スケジューリング部337におけるスケジュールを照合し、記憶部334に記憶された複数の動作パターンのいずれかを決定するモジュールである。そして、決定した動作パターンを搬送速度補正部338へ通知する。
【0078】
また、搬送速度決定部335は、中間搬送ローラ251a,251bに印刷用紙10が到達した到達時間の遅れ、又は進みを補正する機能も備えている。具体的に、搬送速度決定部335は、中間搬送ローラ251で、印刷用紙10を所定の第1の速度V1で搬送するとともに、中間入口センサ511が印刷用紙10の先端を検知したタイミングに応じ、給紙経路の特性に基づいた第2の速度V2を算出して、第1の速度V1を第2の速度に切り替えることによって、レジ前ローラ230a,230bへの印刷用紙10の到達タイミングを補正制御する。
【0079】
さらに、搬送速度決定部335は、第1の速度V1を第2の速度V2に切り替えた後、中間出口センサ512が印刷用紙10の先端を検知したタイミングで、第1の速度に切り替えるように制御する。さらに、搬送速度決定部335は、レジスト部Rにおいて、印刷用紙10が、中間入口センサ511からレジ前ローラ230a、230bに至る範囲を通過している間、第1の速度で回転させるように制御する。
【0080】
スケジューリング部337は、ジョブデータに基づいて、画像形成の速度及び各駆動部の動作速度、順序及びタイミングを決定するモジュールである。このスケジューリング部337によって決定されたスケジュールに基づいて、画像形成制御部336a及び搬送駆動制御部350は、画像形成処理及び搬送動作を実行する。また、このスケジューリング部337によって決定されたスケジュールは、搬送速度補正部338にも入力される。
【0081】
搬送速度補正部338は、印刷用紙10毎の搬送条件に基づいて、各駆動部の制御を切り替え、各駆動部の動作速度を制御するモジュールである。具体的に、搬送速度補正部338は、搬送速度決定部335による決定された動作パターン、及びスケジューリング部337のスケジューリングに応じて、各駆動部の動作速度がレジストローラ240a,240bの駆動の開始や停止、急加速や急減速などの挙動に同期するように、ピックアップローラ220a、スクレーパローラ220b、中間搬送ローラ251,252,253、及びレジ前ローラ230a、230bの各地点における印刷用紙10の搬送速度を、それぞれ独立して制御する。そして、搬送速度補正部338は、その制御データを搬送駆動制御部350に送り出し、搬送駆動制御部350では、スケジュールに従った給紙制御を実行すべく、搬送速度決定部335で算出された動作パターンを照合しつつ、給紙経路FR1内の駆動制御を実行する。
【0082】
(給紙制御の動作)
以上の構成を有する給紙制御機構の動作について説明する。図5は演算処理部330による搬送速度制御の概要を示すフローチャート図である。図6は図5の搬送速度制御による大サイズモードにおける給紙制御を示すタイムチャート図であり、図7は図5の搬送速度制御による中サイズモードにける給紙制御を示すタイムチャート図であり、図8は図5の搬送速度制御による小サイズモードにおける給紙制御を示すタイムチャート図である。
【0083】
本実施形態に係る搬送速度制御では、中間搬送モーター駆動部250における給紙機構の動作速度を、印刷用紙のサイズに対応した動作パターンに基づいて、中間搬送ローラ251,252,253の速度をピックアップローラ220a、レジ前ローラ230a、230bの速度に同期させるように制御する。この動作パターンの決定は、給紙経路FR1の特性である、印刷用紙10の搬送方向の最下流に位置する中間搬送ローラ253からレジストローラ240a,240bまでの距離A、及び中間搬送ローラ253からレジストセンサ513までの距離Bと、印刷用紙10の搬送方向の長さPとの関係に基づいて決定される。
【0084】
具体的には、図5に示すように、用紙検出モジュール群500や操作信号取得部333によって印刷用紙10のサイズが取得されると、先ず、印刷処理を行う印刷用紙の長さPが距離Aよりも長いか否かを判断する(S101)。印刷用紙の長さPが距離Aよりも長い場合(S101における“Y”)は、動作パターンは、大サイズの動作モードとなる。一方、印刷用紙の長さPが距離Aよりも短い場合(S101における“N”)は、さらにその印刷用紙の長さPが、距離Bよりも長いか否かを判断し(S102)、印刷用紙の長さPが距離Bよりも長い場合は(S102における“Y”)、動作パターンは、中サイズの動作モードとなり、印刷用紙の長さPが距離Bよりも短い場合は(S102における“N”)、動作パターンは、小サイズの動作モードとなる。次いで、各動作モードにおける搬送速度制御について詳述する。
【0085】
(1)大サイズモードの動作
大サイズモードの動作では、図6に示すように、先ず、ジョブデータが受信されると、ピックアップモーターを所定加速度で駆動開始し(図6中.P101)、中間入口センサ511が印刷用紙10の先端を検知するまで所定の速度でピックアップローラ220a、スクレーパローラ220bを回転させて(図6中.P102)、中間入口センサ511が印刷用紙10の先端を検知した後に停止する(図6中.P103)。
【0086】
この際、中間搬送モーターは、ピックアップモーターが駆動開始した後に(図6中.P104)、印刷用紙10の搬送速度がピックアップローラ220aやスクレーパローラ220bと同一となるように中間搬送ローラ253a,253bを回転させる。この状態で印刷用紙10を中間搬送ローラ253a,253bに受け入れた後(図6中.P105)、中間搬送モーターの回転速度を調整して、レジ前ローラ230a、230bへの印刷用紙10の到達時間の遅れや進みを補正する(図6中.P106)。そして、中間出口センサ512が印刷用紙10の先端を検知した後に所定の速度に戻す(図6中.P107)。
【0087】
そして、中間搬送モーターは、レジストセンサ513による印刷用紙10の検知から印刷用紙10の後端が下流側の中間搬送ローラ253a,253bを離脱するまでの間、中間搬送ローラ251,252,253を、レジ前ローラ230a,230bによる印刷用紙10の搬送速度と同一速度で回転させて、レジ前ローラ230a,230bに印刷用紙10を受け渡す。具体的には、印刷用紙10が中間出口センサ512を通過した際に、レジ前モーターは駆動開始し(図6中.P108)、所定の速度まで加速した後、所定の速度で印刷用紙10を受け入れる(図6中.P109)。
【0088】
そして、レジストセンサ513が印刷用紙10の先端を検知するまで、レジ前ローラ230a,230bを所定の速度で回転させる(図6中.P110)。この際、中間搬送モーターも、印刷用紙10の搬送速度がレジ前ローラ230a,230bと同一速度になるように中間搬送ローラ251,252,253を回転させる(図6中.P111)。
【0089】
また、レジ前モーターでは、レジストセンサ513が印刷用紙10の先端を検知した後に突き当て速度(一定量送り)動作を行って(図6中.P112)、たるみ形成を行い、突き当て速度区間終了後に駆動を一度、停止する。この際、中間搬送モーターにおいても、レジストセンサ513が印刷用紙10を検知したタイミングで、印刷用紙10の搬送速度がレジ前ローラ230a,230bと同一速度となるように、中間搬送ローラ251,252,253による印刷用紙10の搬送速度を突き当て速度へ減速させ(図6中.P113)、突き当て速度区間終了後に駆動を一度、停止する。
【0090】
その後、レジ前ローラ230a,230bは、レジストローラ240a,240bに印刷用紙10を受け渡し、レジストモーターは、レジストローラ240a,240bが印刷用紙10を挟持した後に加速し、レジストローラ240a,240bにより一定速度で印刷用紙10を画像形成部へ搬送させる(図6中.P114)。このとき、レジ前モーターは、印刷用紙10の後端が抜けるまでレジストモーターと同じ動作をし(図6中.P115)、中間搬送モーターも、レジストモーターの駆動開始タイミングから印刷用紙10の後端が下流側の中間搬送ローラ253a,253bから離脱するまでの間、中間搬送ローラ251a,251bを、レジ前ローラ230a,230b及びレジストローラ240a,240bと同一の速度で印刷用紙10を搬送する速度で回転させる(図6中.P116)。
【0091】
なお、印刷用紙10の後端が下流側の中間搬送ローラ253a,253bから離脱するタイミングは、計算により求めることができる。この計算は、中間出口センサ512が印刷用紙10を検出する状態から検出しないに変化したタイミングに、中間搬送ローラ253により印刷用紙10の後端が中間出口センサ512の箇所から下流側の中間搬送ローラ253a,253bの箇所まで移動するのに要する時間を足し合わせるものである。
【0092】
その後、中間搬送モーターは、給紙開始タイミングにあわせて(図6中.P117)、印刷用紙10の搬送速度がピックアップローラ220aやスクレーパローラ220bと同一となるように中間搬送ローラ253a,253bを回転させて(図6中.P118)、次の印刷用紙10を受け入れる。このとき、レジ前モーターは、次の印刷用紙10の受け入れのために、所定の速度まで加速する(図6中.P119)。
【0093】
その後、ピックアップモーター、中間搬送モーター、レジ前モーター、及びレジストモーターは上記の動作を繰りかえし、通紙動作を行う。なお、本実施形態においては、下流側の中間搬送ローラ253a,253bから印刷用紙10の後端が抜けるまでは、次の印刷用紙10が上流側の中間搬送ローラ251a,251bに入らないように設定されている。
【0094】
(2)中サイズモードの動作
中サイズモードの動作では、図7に示すように、先ず、ジョブデータが受信されると、ピックアップモーターを所定加速度で駆動開始し(図7中.P201)、中間入口センサ511が印刷用紙10の先端を検知するまで所定の速度でピックアップローラ220a、スクレーパローラ220bを回転させて(図7中.P202)、中間入口センサ511が印刷用紙10の先端を検知した後に停止する(図7中.P203)。
【0095】
この際、中間搬送モーターは、ピックアップモーターが駆動開始した後に(図7中.P204)、印刷用紙10の搬送速度がピックアップローラ220aやスクレーパローラ220bと同一となるように中間搬送ローラ253a,253bを回転させる。この状態で印刷用紙10を中間搬送ローラ253a,253bに受け入れた後(図7中.P205)、中間搬送モーターの回転速度を調整して、レジ前ローラ230a,230bへの印刷用紙10の到達時間の遅れや進みを補正する(図7中.P206)。そして、中間出口センサ512が印刷用紙10の先端を検知した後に所定の速度に戻す(図7中.P207)。
【0096】
そして、中間搬送モーターは、レジストセンサ513による印刷用紙10の検知から印刷用紙10の後端が下流側の中間搬送ローラ253a,253bを離脱するまでの間、中間搬送ローラ251,252,253を、レジ前ローラ230a,230bによる印刷用紙10の搬送速度と同一速度で回転させて、レジ前ローラ230a,230bに印刷用紙10を受け渡す。具体的には、印刷用紙10が中間出口センサ512を通過した際に、レジ前モーターは駆動開始し(図7中.P208)、所定の速度まで加速した後、所定の速度で印刷用紙10を受け入れる(図7中.P209)。
【0097】
そして、レジストセンサ513が印刷用紙10の先端を検知するまで、レジ前ローラ230a,230bを所定の速度で回転させる(図7中.P210)。この際、中間搬送モーターも、印刷用紙10の搬送速度がレジ前ローラ230a,230bと同一速度になるように中間搬送ローラ251,252,253を回転させる(図7中.P211)。
【0098】
また、レジ前モーターでは、レジストセンサ513が印刷用紙10の先端を検知した後に突き当て速度(一定量送り)動作を行って(図7中.P212)、たるみ形成を行い、突き当て速度区間終了後に駆動を一度、停止する。この際、中間搬送モーターにおいても、レジストセンサ513による印刷用紙10の検知から印刷用紙10の後端が中間搬送ローラ253a,253bを離脱するまでの間、中間搬送ローラ251a,251bを、レジ前ローラ230a,230bによる印刷用紙10の搬送速度と同一速度になるように、突き当て速度へ減速する(図7中.P213)。そして、印刷用紙10の後端が中間搬送ローラ253a,253bを離脱した後に、給紙開始タイミングを受信した時点で(図7中.P216)、減速処理を停止して、ピックアップモーターの回転速度と同一速度に加速して(図7中.P217)、次の印刷用紙10を受け入れる。
【0099】
印刷用紙10はレジストローラ240a,240bまで到達し、レジストモーターは、レジストローラ240a,240bが印刷用紙10を挟持した後に加速して、一定速度で印刷用紙10を画像形成部へ搬送する(図7中.P214)。このとき、レジ前モーターは、印刷用紙10の後端が抜けるまで、印刷用紙10の搬送速度がレジストローラ240a,240bと同じ速度になるように、レジ前ローラ230a,230bを回転駆動する(図7中.P215)。印刷用紙10の後端が抜けた後、中間出口センサ512が次の印刷用紙10を検知すると、次の印刷用紙10の受け入れのために、所定の速度まで加速する(図7中.P218)。
【0100】
その後、ピックアップモーター、中間搬送モーター、レジ前モーター、及びレジストモーターは上記の動作を繰りかえし、通紙動作を行う。なお、本実施形態においては、下流側の中間搬送ローラ253a,253bから印刷用紙10の後端が抜けるまでは、次の印刷用紙10が上流側の中間搬送ローラ251a,251bに入らないように設定されている。
【0101】
(3)小サイズの印刷用紙の動作
小サイズモードの動作では、図8に示すように、先ず、ジョブデータが受信されると、ピックアップモーターを所定加速度で駆動開始して(図8中.P301)、中間入口センサ511が印刷用紙10の先端を検知するまで所定の速度でピックアップローラ220a、スクレーパローラ220bを回転させて(図8中.P302)、中間入口センサ511が印刷用紙10の先端を検知した後に停止させる(図8中.P303)。
【0102】
この際、中間搬送モーターは、ピックアップモーターが駆動開始した後に(図8中.P304)、印刷用紙10の搬送速度がピックアップローラ220aやスクレーパローラ220bと同一となるように中間搬送ローラ253a,253bを回転させる。この状態で印刷用紙10を中間搬送ローラ253a,253bに受け入れた後(図8中.P305)、中間搬送モーターの回転速度を調整して、レジ前ローラ230a,230bへの印刷用紙10の到達時間の遅れや進みを補正する(図8中.P306)。そして、中間出口センサ512が印刷用紙10の先端を検知した後に所定の速度に戻す(図8中.P307)。
【0103】
そして、中間搬送モーターは、下流側に位置する中間搬送ローラ253a,253bを印刷用紙10の後端が抜けたか否かにかかわらず、印刷用紙10の搬送速度がピックアップローラ220aやスクレーパローラ220bと同一となるように中間搬送ローラ253a,253bを回転させ(図8中.P308)、印刷用紙10をレジ前ローラ230a,230bへ受け渡す。
【0104】
一方、印刷用紙10が中間出口センサ512を通過した際、レジ前モーターは駆動開始して(図8中.P309)、所定の速度まで加速した後、所定の速度で印刷用紙10を受け入れる(図8中.P310)。そして、レジストセンサ513が印刷用紙10の先端を検知するまで、レジ前ローラ230a,230bを所定の速度で回転させる(図8中.P311)。
【0105】
また、レジ前モーターは、レジストセンサ513が印刷用紙10の先端を検知した後に突き当て速度(一定量送り)動作を行って(図8中.P312)、たるみ形成を行い、突き当て速度区間終了後に駆動を一度、停止する。その後、印刷用紙10はレジストローラ240a,240bまで到達し、レジストモーターは、レジストローラ240a,240bが印刷用紙10を挟持した後に加速して、一定速度で印刷用紙10を画像形成部へ搬送させる(図8中.P313)。このとき、レジ前モーターは次の印刷用紙10が中間出口センサ512で検出されるまで、印刷用紙10の搬送速度がレジストローラ240a,240bと同じ速度になるように、レジ前ローラ230a,230bを回転駆動する(図8中.P314)。
【0106】
一方、中間搬送ローラ251,252,253は、ピックアップローラ220aやスクレーパローラ220bと同一の用紙搬送速度で回転を続け(図8中.P308)、次の印刷用紙10を受け取り、レジ前ローラ230a,230bへ受け渡す。その後、ピックアップモーター、中間搬送モーター、レジ前モーター、及びレジストモーターは上記の動作を繰りかえし、通紙動作を行う。
【0107】
(レジ前ローラへの到達時間の遅れ又は進みに対する補正制御)
次いで、レジ前ローラ230a,230bへの到達時間の遅れ又は進みに対する制御について説明する。図9は演算処理部330による印刷用紙10の中間搬送ローラ251,252,253への到達タイミングの補正制御を示すフローチャート図であり、図10は演算処理部330の制御により中間搬送モーターが第1の速度から第2の速度へ変化する状態を示すタイムチャート図であり、図11は演算処理部330の制御による中間搬送モーターの速度変化を示すタイムチャート図である。なお、図10は、図11中の点線範囲の拡大図である。
【0108】
そして、搬送速度決定部335は、速度V2の制御データを搬送速度補正部338へ送信する。搬送速度補正部338は、中間搬送ローラ251,252,253の速度を、第1の速度である受入速度V1を第2の速度である補正速度V2に切り替えることによって(S205)、中間入口センサ511の用紙検知タイミングが遅れた場合には、図10及び図11に示すように、補正速度V2は、受入速度V1よりも速くなるように回転速度を速め、レジ前ローラ230a,230bへの印刷用紙10の到達タイミングを補正する。一方、中間入口センサ511の用紙検知タイミングが早まった場合には、補正速度V2は受入速度V1よりも遅くなるように回転速度を遅め、レジ前ローラ230a,230bへの印刷用紙10の到達タイミングを補正する。
【0109】
その後、中間搬送ローラ251,252,253は、中間出口センサ512が印刷用紙10の先端を検知するまで、所定の第2の速度V2で印刷用紙10を搬送させ(S206における“N”)、中間出口センサ512が印刷用紙10の先端を検知すると(S206における“Y”)、そのタイミングで、中間搬送ローラの速度を第1の速度V1に切り替える(S207)。また、搬送速度補正部338は、印刷用紙10が、中間入口センサ511からレジ前ローラ230a,230bに至る範囲を通過している間、第1の速度V1とし、レジ前ローラ230a,230bへ印刷用紙10を受け渡す。
【0110】
具体的に、この第1及び第2の速度V1,V2は、図10に示すように、決定される。ここで、図中、中間入口センサ511が用紙先端を検知したタイミングの時間差をtとし、中間入口センサ511と中間出口センサ512との間の距離をLとし、中間搬送ローラの加速度をαとする。距離Lは、中間入口センサ511及び中間出口センサ512の設置位置により定まる各装置に固有の値であり、加速度αは、中間搬送モーター駆動部250の性能で定まる各装置固有の値である。タイミング情報tの開始時点でV2まで加速(減速)する所要時間をtaとし、ta後のV2による一定速度の継続時間をtbとし、中間出口センサ512を経過した時点から元の速度V1までに減速(加速)する所要時間をTeとする。
【0111】
そして、これらの関係は、次式に示すように二次方程式で、
V2−(2V1+2αt)V2+(V1+2αL)=0
となる。この二次方程式の解を用いると、
ax+bx+c=0 → x={−b±√(b−4ac)}/2a
となり、このときの補正速度V2は、
V2={−b−√(b−4ac)}/2a
で求められる。ここで、a〜cは、各装置固有の値であるα及びLと、設計速度として定められる第1の速度V1と、各センサによる実測値tで定まる係数であり、具体的には、
a=1
b=−(2V1+2αt)
c=V1+2αL
で定められる。すなわち、中間搬送ローラの速度補正方法では、中間入口センサ511から中間出口センサ512までの距離Lは、機構の各寸法などにより決まり、中間入口センサ511が用紙先端を検知したタイミングを開始時点として、第2速度V2を決定し、中間出口センサ512まで第2速度V2で搬送し、中間出口センサ512検知後に第1の速度V1へ戻す。この各値の算出は以下の通りである。
【0112】
先ず、印刷用紙が進みも遅れもなく検知された場合は、
t=L/V1
となり、第1速度及び距離Lは、各装置に固有の値であることから、tも固有の係数として得られる。そして、遅れや進みが生じた場合には、上述した数1及び数2で示した二次方程式の解を用いてV2が定められる。そして、tの開始時における加速・減速する所要時間taは、
ta=(V2−V1)/α
で求められる。そして、これらの値の関係は、各動作パターンとして記録されるとともに、周期的なフィードバック処理により、機構などの摩耗や劣化など、モーターの能力の変化など、装置固有の値の変化に応じて、適宜更新するようにしてもよい。このような動作パターンのフィードバック処理は、定期的なメンテナンスの時に行ってもよく、また、装置の起動時・終了時などに自動的に行ってもよい。
【0113】
(作用・効果)
このような本実施形態によれば、印刷用紙10のサイズと給紙経路の特性とに応じて、動作パターンを決定し、その動作パターンで中間搬送ローラ251,252,253の回転を、ピックアップローラ220a、スクレーパローラ220b、レジ前ローラ230a,230b、及びレジストローラの回転に追従させる。このため、印刷用紙10に作用するバックテンションの発生を防止することができるとともに、レジ前ローラ230a,230bでは、「突当て補正制御」のみを行わせることができ、印刷装置100全体の処理能力を高速化することができる。
【0114】
具体的に、大サイズの印刷用紙10の場合には、レジストセンサ513による印刷用紙10の検知からレジストローラの駆動開始タイミングまでの間、すなわち、レジストローラが印刷用紙10を挟持する前には、中間搬送ローラ251,252,253をレジ前ローラ230a,230bと同一の速度で回転させる。このため、レジ前ローラ230a,230bと中間搬送ローラ251,252,253とによって印刷用紙10に作用するバックテンションの発生を防止することができる。
【0115】
また、レジストローラの駆動開始タイミングから印刷用紙10の後端が中間搬送ローラ251,252,253から離脱するまでの間、すなわち、中間搬送ローラ251,252,253、レジ前ローラ230a,230b及びレジストローラが一枚の印刷用紙10を挟持している間には、中間搬送ローラ251,252,253の回転を、レジ前ローラ230a,230b及びレジストローラの回転に追従させて同一の速度で回転させる。これにより、3つのローラによって印刷用紙10に作用するバックテンションの発生を防止することができる。
【0116】
一方、中サイズの印刷用紙10の場合には、一枚の印刷用紙10がレジストローラと、中間搬送ローラ251,252,253とによって挟持されることはないため、レジストセンサ513が印刷用紙10を検知する前には、中間搬送ローラ251,252,253の回転を、レジ前ローラ230a,230bの回転に追従させて同一の速度で回転させる。これにより、レジ前ローラ230a,230bと中間搬送ローラ251,252,253とによって印刷用紙10に作用するバックテンションの発生を防止することができる。
【0117】
他方、小サイズの印刷用紙10の場合には、レジ前ローラ230a,230bが印刷用紙10に対して、「突当て補正制御」する際、中間搬送ローラ251,252,253は印刷用紙10を挟持していない。このため、そのままの速度で回転させて次の印刷用紙10を受け入れることで、印刷用紙10にかかる負荷を抑制することができる。
【0118】
また、本実施形態では、中間搬送ローラ251,252,253は複数設けられ、中間搬送ローラ251,252,253からの距離は、複数の中間搬送ローラ251,252,253のうち、印刷用紙10の搬送方向の最下流に位置する中間搬送ローラ253からの距離としている。これにより、印刷用紙10を最後まで挟持する中間搬送ローラ251,252,253を基準として動作パターンを変化させて、適切にバックテンションの発生を防止することができる。
【0119】
本実施形態では、搬送速度決定部335は、中間搬送ローラ251,252,253で、印刷用紙10を、所定の第1の速度で搬送するとともに、中間入口センサ511が印刷用紙10の先端を検知したタイミングに応じ、給紙経路の特性に基づいた第2の速度を算出し、第1の速度を前記第2の速度に切り替えることによって、レジ前ローラ230a,230bへの印刷用紙10の到達タイミングを補正する。
【0120】
これにより、印刷用紙10の厚さや、ピックアップ手段との摩擦等によって、中間搬送ローラ251,252,253に到達する印刷用紙10の到達時間のバラツキが生じた場合であっても、適切なタイミングでレジ前ローラ230a,230bに印刷用紙10を搬送することができる。その結果、レジ前ローラ230a,230bと中間搬送ローラ251,252,253とが挟持する印刷用紙10に作用するバックテンションの発生を防止するとともに、レジ前ローラ230a,230bでは、「突当て補正制御」のみを行わせることができ、印刷装置全体の処理能力を高速化することができる。
【0121】
また、本実施形態において、搬送速度決定部335は、第1の速度を第2の速度に切り替えた後、中間出口センサ512が印刷用紙10の先端を検知したタイミングで、第1の速度に切り替える。これにより、印刷用紙10は始めに設定されていた速度でレジ前ローラ230a,230bに挟持されることとなる。その結果、レジ前ローラ230a,230bと中間搬送ローラ251,252,253とが挟持する印刷用紙10に作用するバックテンションの発生を防止することができる。
【0122】
さらに、本実施形態において、搬送速度決定部335は、給紙経路において、印刷用紙10が、中間入口センサ511からレジ前ローラ230a,230bに至る範囲を通過している間、第1の速度とするので、中間搬送ローラ251,252,253及びレジ前ローラ230a,230bが印刷用紙10を挟持している間は第1の速度で搬送させることとなる。その結果、レジ前ローラ230a,230bと中間搬送ローラ251,252,253とが挟持する印刷用紙10に作用するバックテンションの発生を防止することができる。
【符号の説明】
【0123】
10 印刷用紙
100 印刷装置
110 ヘッドユニット
120 サイド給紙トレイ
120 トレイ
130 給紙トレイ
140 排紙口
150 排紙台
160 搬送ベルト
161 駆動ローラ
162 従動ローラ
170,172 切替機構
210 エレベータ機構
214 合流点
220 ピックアップモーター駆動部
220a ピックアップローラ
220b スクレーパローラ
230 レジ前モーター駆動部
230a,230b レジ前ローラレジ前ローラ
240 レジストモーター駆動部
240a,240b レジストローラ
250 中間搬送モーター駆動部
250a,250b 中間搬送ローラ
251,252,253 中間搬送ローラ
260 搬送モーター駆動部
281 スイッチバックローラ
282 再給紙ローラ
290 通常搬送ローラ
330 演算処理部
331 ジョブデータ受信部
332 用紙種別取得部
333 操作信号取得部
334 記憶部
335 搬送速度決定部
336 画像処理部
336a 画像形成制御部
336b 色変換回路
337 スケジューリング部
338 搬送速度補正部
340 操作パネル
350 搬送駆動制御部
500 用紙検出モジュール群
511 中間入口センサ
512 中間出口センサ
513 レジストセンサ
530 用紙サイズ検出機構
CR 通常経路
DR 排紙経路
FR 給紙系搬送路
FR1 給紙経路
R レジスト部
SR 反転経路
V1 受入速度(第1の速度)
V2 補正速度(第2の速度)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給紙トレイから搬送経路へ記録媒体を給送する給紙経路を有し、搬送経路上を搬送される記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、
前記給紙トレイに積層された前記記録媒体を一枚ずつ取り上げて前記給紙経路へと送出するピックアップ手段と、
前記搬送経路に対する記録媒体の送出タイミングを調整するレジストローラと、
前記給紙経路内において、前記ピックアップローラと前記レジストローラとの間で前記記録媒体を搬送する中間搬送ローラ群と、
前記ピックアップ手段、前記中間搬送ローラ群及び前記レジストローラに関する動作パターンを記憶する動作パターン記憶部と、
前記動作パターンに基づいて、前記ピックアップ手段及び前記中間搬送ローラ群の各地点における前記記録媒体の搬送速度を、それぞれ独立して制御する制御手段と
を備え、
前記動作パターンは、少なくとも前記中間搬送ローラ群中の2つのローラ間の距離と、前記記録媒体の搬送方向における長さとの関係に基づいて設定される
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記中間搬送ローラ群は、
前記レジストローラに隣接し、前記給紙経路から前記レジストローラへ記録媒体を送出するレジ前ローラと、
前記給紙経路内において、前記ピックアップローラと前記レジ前ローラとの間で前記記録媒体を搬送する中間搬送ローラと
を有しており、
前記記録媒体の前記レジストローラへの到達は、前記レジストローラの上流側に近接して設置されたレジストセンサにより検知され、
前記動作パターンは、前記中間搬送ローラから前記レジ前ローラまでの距離よりも前記記録媒体が長い場合に、前記レジストセンサによる前記記録媒体の検知から前記レジストローラの駆動開始タイミングまでの間、前記中間搬送ローラを、前記レジ前ローラと同一の速度で回転させるとともに、前記レジストローラの駆動開始タイミングから前記記録媒体の後端が前記中間搬送ローラから離脱するまでの間、前記中間搬送ローラを、前記レジ前ローラ及び前記レジストローラと同一の速度で回転させるように設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記中間搬送ローラ群は、
前記レジストローラに隣接し、前記給紙経路から前記レジストローラへ記録媒体を送出するレジ前ローラと、
前記給紙経路内において、前記ピックアップローラと前記レジ前ローラとの間で前記記録媒体を搬送する中間搬送ローラと
を有しており、
前記記録媒体の前記レジストローラへの到達は、前記レジストローラの上流側に近接して設置されたレジストセンサにより検知され、
前記動作パターンは、前記中間搬送ローラから前記レジストローラまでの距離よりも前記記録媒体が短く、且つ、前記中間搬送ローラから前記レジストセンサまでの距離よりも前記記録媒体が長い場合に、前記レジストセンサによる前記記録媒体の検知から前記記録媒体の後端が前記中間搬送ローラを離脱するまでの間、前記中間搬送ローラを、前記レジ前ローラ速度と同一速度で回転させるように設定されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記中間搬送ローラ群は、
前記レジストローラに隣接し、前記給紙経路から前記レジストローラへ記録媒体を送出するレジ前ローラと、
前記給紙経路内において、前記ピックアップローラと前記レジ前ローラとの間で前記記録媒体を搬送する中間搬送ローラと
を有しており、
前記記録媒体の前記レジストローラへの到達は、前記レジストローラの上流側に近接して設置されたレジストセンサにより検知され、
前記動作パターンは、前記中間搬送ローラから前記レジストセンサまでの距離よりも前記記録媒体が短い場合、前記中間搬送ローラの用紙後端抜けにかかわらず、中間搬送ローラは、所定の回転速度で用紙をレジ前ローラへ用紙を受け渡すように設定されている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記中間搬送ローラ群は、
前記レジストローラに隣接し、前記給紙経路から前記レジストローラへ記録媒体を送出するレジ前ローラと、
前記給紙経路内において、前記ピックアップローラと前記レジ前ローラとの間で前記記録媒体を搬送する中間搬送ローラと
を有しており、
前記制御手段は、前記中間搬送ローラで前記記録媒体を所定の第1の速度で搬送するとともに、搬送経路の上流側に近接して設置されて印刷用紙の前記給紙経路への到達を検知する中間入口センサが前記記録媒体の先端を検知したタイミングに応じ、前記給紙経路の特性に基づいた第2の速度を算出し、前記第1の速度を前記第2の速度に切り替えることによって、前記レジ前ローラへの前記記録媒体の到達タイミングを補正する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記第1の速度を前記第2の速度に切り替えた後、搬送経路の下流側に近接して設置されて印刷用紙の搬送経路からの通過を検知する中間出口センサが前記記録媒体の先端を検知したタイミングで、前記第1の速度に切り替えることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記給紙経路において、前記記録媒体が、前記中間入口センサから前記レジ前ローラに至る範囲を通過している間、前記第1の速度とすることを特徴とする請求項5又は6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記中間搬送ローラ群は、
前記レジストローラに隣接し、前記給紙経路から前記レジストローラへ記録媒体を送出するレジ前ローラと、
前記給紙経路内において、前記ピックアップローラと前記レジ前ローラとの間で前記記録媒体を搬送する複数の中間搬送ローラと
を有しており、
前記2つのローラ間の距離は、複数の中間搬送ローラのうち、前記記録媒体の搬送方向の最下流に位置する中間搬送ローラから前記レジ前ローラまでの距離である
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−23293(P2013−23293A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156498(P2011−156498)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】