説明

画像形成装置

【課題】電源が突然OFFする場合においても適切なカウント処理を行う。
【解決手段】搬送経路における記録紙Pの位置を検出する用紙センサー53〜57と、トナー像の形成に関するカウント処理を行うカウンター6a〜6dと、用紙センサー53〜57の検出結果に基づいてカウンター6a〜6dを制御する演算制御部6と、を具備し、演算制御部6は、電源がOFFすることを検知した場合に機能停止する前にカウンター6a〜6dをカウントアップさせ、次に電源がONした場合において、先に電源がOFFしたことによって搬送経路に停止している記録紙Pの停止位置がカウントアップの条件を満たしていない場合は、先にカウントアップさせた値をカウンター6a〜6dのカウント値から差し引き、また記録紙Pの停止位置がカウントアップの条件を満たしている場合には、カウンター6a〜6dのカウント値を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複合機等の画像形成装置は、各消耗品(各種ローラー等)の消耗度を計測するための各種ライフカウンターや、ユーザーに請求する料金を計数するための課金カウンター等の様々なカウンターを備えている。これらカウンターの動作については、カウントアップのタイミング、画像形成1枚当たりのカウントアップ幅または単位等の様々な仕様が設けられると共に、JAMなどのイレギュラーなエラー動作に対して余分なカウント動作が行われないように工夫が施されている。例えば、画像形成時にエラーが発生した場合に、給紙カセットから送り出された記録紙がどこまで搬送されたかを検出し、この検出結果に基づいてカウンターのカウントアップを判断することにより適切なカウントアップ処理を実現している。(下記特許文献1〜3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−268721号公報
【特許文献2】特開2000−147965号公報
【特許文献3】特開2003−274077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、使用環境の不備により突然電源がOFFしてしまう、または課金カウンターがカウントアップしないように不正に電源をOFFするような操作が行われた場合に、適切にカウントアップ処理が行われないことがある。例えば、上記従来技術では、記録紙が定着部を通過したことを検出したタイミングで課金カウンターをカウントアップするが、記録紙が定着部を通過してから検出されるまでの極めて短い間に電源がOFFされると、定着処理が完了しているにもかかわらず課金カウンターがカウントアップされてないという問題が発生する。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、電源が突然OFFする場合においても適切なカウント処理を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、第1の解決手段として、記録紙を所定の搬送経路に沿って搬送させつつ記録紙の表面にトナー像を画像形成する画像形成装置であって、搬送経路における記録紙の位置を検出する用紙センサーと、トナー像の形成に関するカウント処理を行うカウンターと、用紙センサーの検出結果に基づいてカウンターを制御するカウンター制御手段と、を具備し、カウンター制御手段は、電源がOFFすることを検知した場合に機能停止する前にカウンターをカウントアップさせ、次に電源がONした場合において、先に電源がOFFしたことによって搬送経路に停止している記録紙の停止位置がカウントアップの条件を満たしていない場合は、先にカウントアップさせた値をカウンターのカウント値から差し引き、また記録紙の停止位置がカウントアップの条件を満たしている場合には、カウンターのカウント値を保持する、という手段を採用する。
【0007】
本発明では、第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、用紙センサーは、トナー像の記録紙上への定着処理を行う定着手段を通過した記録紙を検出し、カウンターは、画像形成が完了した場合の課金に関するカウント処理を実行する課金カウンターであり、カウンター制御手段は、電源がONした場合において、記録紙が定着手段を通過していないと判断した場合は、先にカウントアップさせた値を課金カウンターのカウント値から差し引き、また記録紙が定着手段を通過していると判断した場合には、課金カウンターのカウント値を保持する、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、用紙センサーは、感光体ドラム上のトナー像を記録紙に転写する転写手段を通過した記録紙を検出し、カウンターは、感光体ドラムにおいて静電潜像がトナー像に現像された回数を計数する現像カウンターであり、カウンター制御手段は、電源がONすることを検知した場合において、記録紙が転写手段を通過していないと判定した場合には、カウントアップさせた値を現像カウンターのカウント値から差し引き、また記録紙が転写手段を通過していると判定した場合には、現像カウンターのカウント値を保持する、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、第4の解決手段として、上記第1〜第3のいずれか1つの解決手段において、用紙センサーは、感光体ドラム上のトナー像を記録紙に転写する転写手段に所定のタイミングで記録紙を給紙するレジストローラーを通過した記録紙を検出し、カウンターは、記録紙がレジストローラーを通過するまで記録紙を搬送する搬送機構の動作回数を計数する機械カウンターであり、カウンター制御手段は、電源がONしたことを検知した場合において、記録紙がレジストローラーを通過していないと判定した場合には、カウントアップさせた値を機械カウンターのカウント値から差し引き、また記録紙がレジストローラーを通過していると判定した場合には、機械カウンターのカウント値を保持する、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、第5の解決手段として、上記第1〜第4のいずれか1つの解決手段において、用紙センサーは、記録紙を給紙カセットから取り出して搬送経路に送り出すピックアップローラーを通過した記録紙を検出し、カウンターは、ピックアップローラーで取り出された記録紙の枚数を計数する給紙段カウンターであり、カウンター制御手段は、電源がONしたことを検知した場合において、記録紙がピックアップローラーを通過していないと判定した場合には、カウントアップさせた値を給紙段カウンターのカウント値から差し引き、また記録紙が前記ピックアップローラーを通過していると判定した場合には、給紙段カウンターのカウント値を保持する、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電源がOFFする際にカウンター値を強制的にカウントアップさせるので、電源が突然OFFする場合でもカウントアップが実行されないという事態を回避することができる。また、本発明によれば、電源がOFFした後に電源がONした段階で記録紙の停止位置がカウントアップの条件を満たしていない場合には、カウントアップさせた値をカウンター値から差し引くので、強制的なカウントアップによって正しくないカウンター値になった場合であってもカウンター値が適切なカウンター値に是正され、よってカウンター値の正確性を担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る複合機Aの機能ブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る複合機Aの動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態における各センサーの検出結果に応じた各カウンター値の修正処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係る複合機Aは、電子写真方式に基づいて記録紙に画像を形成する画像形成装置であり、図1に示すように、操作表示部1、画像読取部2、画像データ記憶部3、画像形成部4、通信部5及び演算制御部6を備える。なお、演算制御部6は、本実施形態におけるカウンター制御手段である。
【0014】
操作表示部1は、操作キー及びタッチパネルを備えており、ユーザーと複合機Aとを関係付けるマンマシンインターフェイスとして機能する。操作表示部1は、操作キーまたはタッチパネルに表示された操作ボタンに対するユーザーの操作指示を操作信号として演算制御部6に出力するとともに、演算制御部6から入力される制御信号に基づいてタッチパネルに種々の情報を表示する。
【0015】
画像読取部2は、演算制御部6から入力される制御信号に基づいてADF(Automatic document feeder:自動原稿送り装置)により自動給紙される原稿またはプラテンガラス上に載置された原稿の表面画像(原稿画像)をラインセンサーで読み取って原稿画像データに変換し、この原稿画像データを画像データ記憶部3に出力する。
【0016】
画像データ記憶部3は、半導体メモリーまたはハードディスク装置等であり、演算制御部6から入力される制御信号に基づいて、原稿画像データ、通信部5が外部のクライアントコンピューターから受信するプリント画像データ及び通信部5が外部のファクシミリ装置から受信するファクシミリ画像データを記憶すると共に、これら画像データを演算制御部6から入力される制御信号に基づいて読み出して画像形成部4に出力する。
【0017】
画像形成部4は、演算制御部6から入力される制御信号に基づいて、給紙カセット45からピックアップローラー46、搬送ローラー47、レジストローラー48、2次転写ローラー49、定着ローラー50、排紙ローラー51の順で排紙トレイ52に至る搬送経路に沿って記録紙Pを搬送させながら、記録紙Pの表面に画像データ記憶部3から読み出した画像データに基づく原稿画像を画像形成するものである。
【0018】
この画像形成部4は、ベルトローラー41、中間転写ベルト42、トナーの各色(Y,M,C,K)に対応する4つの画像形成ユニット43Y,43M,43C,43K、1次転写ローラー44Y,44M,44C,44K、給紙カセット45、ピックアップローラー46、搬送ローラー47、レジストローラー48、2次転写ローラー49、定着ローラー50、排紙ローラー51、排紙トレイ52、給紙段センサー53、レジストセンサー54、転写センサー55、定着センサー56及び排紙センサー57を備えている。
【0019】
なお、給紙カセット45は本実施形態における給紙段であり、2次転写ローラー49は本実施形態における転写手段であり、定着ローラー50は本実施形態における定着手段である。また、給紙段センサー53、レジストセンサー54、転写センサー55、定着センサー56及び排紙センサー57は、本実施形態における用紙センサーである。
【0020】
ベルトローラー41は、図示するように、離間して配設された3つのローラー、つまり駆動ローラー41a、従動ローラー41b及びテンションローラー41cからなる。すなわち、駆動ローラー41aと従動ローラー41bとは水平方向に一定距離を空けて配置され、テンションローラー41cは、このような駆動ローラー41aと従動ローラー41bとの間かつ若干上方に変位した位置に配置されている。中間転写ベルト42は、このようなベルトローラー41(駆動ローラー41a、従動ローラー41b、テンションローラー41c)に架け渡された無端ベルトであり、駆動ローラー41aによって矢印で示す方向に走行する。
【0021】
すなわち、中間転写ベルト42は、駆動ローラー41aと従動ローラー41bとの間においては水平方向に走行する。また、上述した駆動ローラー41aは、駆動力を発生するモーターが軸結合されたローラーであり、モーターの動力によって中間転写ベルト42を矢印方向に走行させる。上記従動ローラー41bは、自由回転するように設けられたフリーローラーであり、中間転写ベルト42を駆動ローラー41aの動力に従って案内する。また、上記テンションローラー41cは、回転軸が可動可能に設けられ、所定の付整力で中間転写ベルト42を押圧することにより一定のテンション(張力)を中間転写ベルト42に付与するローラーである。
【0022】
画像形成ユニット43Y,43M,43C,43Kは、図示するように、上述した中間転写ベルト42の水平走行部位に所定間隔を空けて設けられている。これら画像形成ユニット43Y,43M,43C,43Kのうち、画像形成ユニット43Yは、イエロー(Y)のトナー画像を形成するユニットであり、従動ローラー41bに最も近い位置に設けられている。画像形成ユニット43Mは、マゼンダ(M)のトナー画像を形成するユニットであり、上記画像形成ユニット43Yの次に従動ローラー41bに近い位置に設けられている。画像形成ユニット43Cは、シアン(C)のトナー画像を形成するユニットであり、上記画像形成ユニット43Mの次に従動ローラー41bに近い位置に設けられている。画像形成ユニット43Kは、ブラック(K)のトナー画像を形成するユニットであり、駆動ローラー41aに最も近い位置に設けられている。
【0023】
このような画像形成ユニット43Y,43M,43C,43Kは、図示するように、感光体ドラム43a、帯電部43b、レーザースキャニングユニット43c、現像ユニット43d及びクリーナー43eを構成要素としている。なお、画像形成ユニット43Y,43M,43C,43Kは、トナー画像の色のみが異なっているだけであり、構成要素は同一である。
【0024】
感光体ドラム43aは、周面が所定の感光体材料(例えばアモルファスシリコン)で形成された円筒部材である。帯電部43bは、感光体ドラム43aの周面(感光面)を均一に帯電させるものである。レーザースキャニングユニット43cは、帯電状態の上記感光面にレーザー光を照射することにより、感光面に静電潜像を形成するものである。現像ユニット43dは、感光面にトナーを供給することにより当該感光面に形成された静電潜像をトナー画像として現像するものである。クリーナー43eは、トナー画像の転写後の感光面に残留するトナー(残留トナー)を掻き落として除去するものである。
【0025】
1次転写ローラー44Y,44M,44C,44Kは、図示するように画像形成ユニット43Y,43M,43C,43Kに対応して4つ設けられており、各々に中間転写ベルト42を挟んだ状態で各画像形成ユニット43Y,43M,43C,43Kの感光体ドラム43aに対向配置されている。また、各1次転写ローラー44Y,44M,44C,44Kには1次転写バイアス(高電圧)が印加されており、各1次転写ローラー44Y,44M,44C,44Kは、この1次転写バイアスの作用によって各画像形成ユニット43Y,43M,43C,43Kの記感光体ドラム43aにそれぞれ形成された各色のトナー像を中間転写ベルト42に転写(1次転写)させる。
【0026】
給紙カセット45は、A4サイズやB5サイズ等、所定形状の記録紙Pを複数枚重ねた状態で収容する容器である。ピックアップローラー46は、給紙カセット45の上部において記録紙Pに圧接するように設けられ、給紙カセット45内の記録紙Pを1枚づつ取り出して搬送ローラー47に送り出すローラーである。搬送ローラー47は、ピックアップローラー46から給紙された記録紙Pをレジストローラー48に向けて搬送するローラーである。レジストローラー48は、搬送ローラー47から供給された記録紙Pを所定のタイミングで2次転写ローラー49に供給するローラーである。
【0027】
2次転写ローラー49は、中間転写ベルト42を挟んで駆動ローラー41aに対向配置されたローラーであり、中間転写ベルト42上のトナー画像を記録紙Pに転写(2次転写)させるものである。この2次転写ローラー49には、2次転写バイアス(高電圧)が印加されており、2次転写ローラー49は、この2次転写バイアスの作用によって中間転写ベルト42上のトナー画像を記録紙Pに転写(2次転写)させる。
【0028】
定着ローラー50は、内部にヒータを備えた加熱ローラー50aと、当該加熱ローラー50aに圧接する加圧ローラー50bとから構成されている。この定着ローラー50は、加熱ローラー50aと加圧ローラー50bとで各色のトナー画像が転写された記録紙Pを挟み込むことにより記録紙Pを加熱及び加圧して、各色のトナー画像を記録紙P上に定着させる。排紙ローラー51は、定着ローラー50から供給された記録紙Pを排紙トレイ52に向けて搬送するローラーである。排紙トレイ52は、排紙ローラー51から供給された記録紙Pを収容・保持する収容部である。
【0029】
給紙段センサー53は、ピックアップローラー46を通過した記録紙Pを検出する光センサーであり、ピックアップローラー46と搬送ローラー47との間に設けられ、ピックアップローラー46を通過した記録紙Pを検出すると検出信号を演算制御部6に出力する。レジストセンサー54は、レジストローラー48を通過した記録紙Pを検出する光センサーであり、レジストローラー48と2次転写ローラー49との間に設けられ、レジストローラー48を通過した記録紙Pを検出すると検出信号を演算制御部6に出力する。
【0030】
転写センサー55は、2次転写ローラー49を通過した記録紙Pを検出する光センサーであり、2次転写ローラー49と定着ローラー50との間に設けられ、2次転写ローラー49を通過した記録紙Pを検出すると検出信号を演算制御部6に出力する。定着センサー56は、定着ローラー50を通過した記録紙Pを検出する光センサーであり、定着ローラー50と排紙ローラー51との間に設けられ、定着ローラー50を通過した記録紙Pを検出すると検出信号を演算制御部6に出力する。排紙センサー57は、排紙ローラー51を通過した記録紙Pを検出する光センサーであり、排紙ローラー51から排紙トレイ52に向う記録紙Pの搬送路に設けられ、排紙ローラー51を通過した記録紙Pを検出すると検出信号を演算制御部6に出力する。
【0031】
通信部5は、演算制御部6から入力される制御信号に基づいて、電話回線を介して外部の複合機あるいはファクシミリ装置と通信を行うと共に、LAN(Local Area Network)を介してクライアントコンピューター等と通信を行うものである。すなわち、この通信部5は、G3等のファクシミリ規格に準拠した通信機能とイーサネット(登録商標)等のLAN規格に準拠した通信機能とを兼ね備えたものである。
【0032】
演算制御部6は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び電気的に相互接続された各部と各種信号の送受信を行うインターフェイス回路等から構成されている。この演算制御部6は、上記ROMに記憶された制御プログラムに基づいて各種の演算処理を行うと共に各部と通信を行うことにより複合機Aの全体動作を制御する。この演算制御部6は、CPU及びRAMにより構成される給紙段カウンター6a、機械カウンター6b、現像カウンター6c及び課金カウンター6dを備える。
【0033】
給紙段カウンター6aは、ピックアップローラー46によって給紙カセット45から送り出された記録紙Pの枚数をカウントするカウンターであり、給紙段センサー53により記録紙Pが給紙カセット45を通過したことが検出されるとカウントアップする。機械カウンター6bは、記録紙Pがレジストローラー48を通過するまで記録紙Pを搬送する搬送機構、つまり、ピックアップローラー46、搬送ローラー47及びレジストローラー48の動作回数をカウントするカウンターであり、レジストセンサー54により記録紙Pがレジストローラー48を通過したことが検出されるとカウントアップする。
【0034】
現像カウンター6cは、各画像形成ユニット43Y,43M,43C,43Kの感光体ドラム43aにおいて静電潜像がトナー像に現像された回数をカウントするカウンターであり、転写センサー55により記録紙Pが2次転写ローラー49を通過したことが検出されるとカウントアップする。課金カウンター6dは、画像形成が完了した場合の課金に関するカウント処理、つまり複合機Aが提供する画像形成サービスの対価としてユーザーに請求する料金をカウントするカウンターであり、定着センサー56により記録紙Pが定着ローラー50を通過したことが検出されるとカウントアップする。
【0035】
このような演算制御部6は、複合機Aの全体動作を制御するための機能の1つとして電源監視機能を備えている。この電源監視機能は、電源電圧が正常な電圧値の範囲を逸脱して低下したか否かを判定するものであり、当該低下を判定した場合に電源がON状態からOFF状態に移行すると検知(認知)するものである。演算制御部6は、電源がON状態からOFF状態に移行することを検知した場合には、電源電圧がさらに低下して自らが機能停止に至る前に、必要最小限の退避処理を行う。
【0036】
次に、このように構成された複合機Aの動作について説明する。
最初に本複合機Aの全体動作を説明する。例えばユーザーがADFに原稿をセットし、また操作表示部1を操作することによって原稿の複写(コピー)を指示すると、当該指示に関する指示信号は操作表示部1から演算制御部6に入力される。この結果、演算制御部6は、画像読取部2に原稿の頁毎に原稿画像を順次読み取らせると共に、当該原稿画像の原稿画像データを画像データ記憶部3に記憶させる。そして、演算制御部6は、上記原稿画像データに基づいて各トナー色に対応するビットマップ画像データをそれぞれ生成し、これらビットマップ画像データに基づいて原稿画像の画像形成処理を画像形成部4に実行させる。
【0037】
すなわち、演算制御部6は、ピックアップローラー46を駆動させて給紙カセット45内の記録紙Pを1枚づつ取り出して搬送ローラー47に送り出させると共に当該搬送ローラー47を駆動させて記録紙Pをレジストローラー48に向けて搬送させる。また、演算制御部6は、駆動ローラー41aを駆動させて中間転写ベルト42を走行状態とすると共に、各画像形成ユニット43Y,43M,43C,43Kを駆動させ、上述した各ビットマップ画像データに基づいて各色のトナー像を各感光体ドラム43aの感光面(周面)に形成させる。そして、演算制御部6は、各1次転写ローラー44Y,44M,44C,44Kに1次転写バイアスを印加させることによって、各感光体ドラム43aのトナー像を中間転写ベルト42上に1次転写させる。
【0038】
そして、演算制御部6は、画像形成ユニット43Y,43M,43C,43Kにおける各色の画像形成の処理タイミングに合わせてレジストローラー51を駆動させると共に2次転写ローラー49に2次転写バイアスを印加させることによって、記録紙Pの所望位置に中間転写ベルト42上のトナー画像(原稿画像)を2次転写させる。そして、演算制御部6は、定着ローラー50及び排紙ローラー51を駆動させて、記録紙P上のトナー画像を定着させると共に排紙トレイ52に排出させる。
【0039】
このような画像形成部4の画像形成処理においては、演算制御部6内に予め構成された給紙段カウンター6a、機械カウンター6b、現像カウンター6c及び課金カウンター6dが、用紙センサーである給紙段センサー53、レジストセンサー54、転写センサー55、定着センサー56及び排紙センサー57から演算制御部6に入力される検出信号に基づいてカウントアップ処理を行う。その際、演算制御部6は、電源が突然OFFすることを検出した場合には、図2に示すフローチャートに沿った処理を実行する。
【0040】
演算制御部6は、図2のフローチャートに示すように、電源がOFFすることを検知したか否かを上述した電源監視機能に基づいて判定する(ステップS1)。そして、演算制御部6は、電源がOFFすることを検知していない場合(NOの場合)には、上述したステップS1の判定処理を繰り返す。
【0041】
一方、演算制御部6は、電源がOFFすることを検知した場合(YESの場合)には、退避処理の一環として、給紙段カウンター6a、機械カウンター6b、現像カウンター6c及び課金カウンター6dに強制的に「1」をカウントアップさせると共に、RAMに設けられたバックアップ領域(不揮発領域)に給紙段カウンター6a、機械カウンター6b、現像カウンター6c及び課金カウンター6dのカウント値をそれぞれ保存させる(ステップS2)。また、演算制御部6は、RAMに設けられたバックアップ領域(不揮発領域)に、画像形成中に電源がOFFしたことを示す瞬断情報を保存させる(ステップS3)。
【0042】
ここで、複合機Aにおいて、ユーザーによって主電源スイッチがOFF操作される、または電源ケーブルが抜かれるなどにより電力供給が停止した場合において、電源電圧が瞬時にゼロ電圧になるわけではなく徐々に電圧降下するので、演算制御部6は、短時間ではあるがバックアップ処理などの最低限の退避処理を実行することができる。演算制御部6は、この退避処理として給紙段カウンター6a、機械カウンター6b、現像カウンター6c及び課金カウンター6dに「1」をカウントアップさせると共に当該カウントアップ後の各カウント値をRAMの不揮発領域に保存し、また当該不揮発領域に瞬断情報を保存する。
【0043】
続いて、演算制御部6は、上記電源監視機能に基づいて電源がONしたことを検知したか否かを判定する(ステップS4)。演算制御部6は、電源がONしたことを検知していない場合(NOの場合)には、上述したステップS4の判定処理を繰り返す。一方、演算制御部6は、電源がONしたことを検知した場合(YESの場合)には、RAMの不揮発領域に瞬断情報が保存されているか否かを判定する(ステップS5)。そして、演算制御部6は、瞬断情報が不揮発領域に保存されていない場合(NOの場合)、つまり画像形成中における突然の電源OFFが今回の電源ON前に発生していない場合には、図2に示すフローチャートの処理を終了する。
【0044】
一方、演算制御部6は、瞬断情報が保存されている場合には、給紙段センサー53、レジストセンサー54、転写センサー55、定着センサー56及び排紙センサー57から入力される検出信号に基づいて搬送経路に記録紙Pが残っているか否かを判定する(ステップS6)。記録紙Pが搬送経路の何れかの箇所に残っている場合、記録紙Pの位置に応じて給紙段センサー53、レジストセンサー54、転写センサー55、定着センサー56及び排紙センサー57の何れかが記録紙Pの存在を示す検出信号を演算制御部6に出力する。
【0045】
演算制御部6は、搬送経路に記録紙Pが残っていない場合、図2に示すフローチャートの処理を終了する。一方、演算制御部6は、搬送経路に記録紙Pが残っている場合には、給紙段センサー53、レジストセンサー54、転写センサー55、定着センサー56及び排紙センサー57から入力される検出信号に基づいて記録紙Pの停止位置をチェックする(ステップS7)。つまり、演算制御部6は、給紙段センサー53、レジストセンサー54、転写センサー55、定着センサー56及び排紙センサー57から入力される検出信号に基づいて搬送経路の何れかの箇所に記録紙Pが停止しているのかを判断する。
【0046】
続いて、演算制御部6は、ステップS7の処理の後に、記録紙Pの停止位置が各カウンターのカウントアップ条件を満たしているか否かを判定する(ステップS8)。演算制御部6は、記録紙Pの停止位置がカウントアップの条件を満たしていない場合(NOの場合)、退避処理時にカウントアップされた数値「1」をRAMのバックアップ領域に記憶されている現行のカウント値から差し引く(ステップS9)。一方、演算制御部6は、記録紙Pの停止位置がカウントアップの条件を満たしている場合には、RAMのバックアップ領域に記憶されている現行のカウント値を保持する(ステップS10)。
【0047】
図3は、各用紙センサーの検出結果に応じた各カウンター(給紙段カウンター6a、機械カウンター6b、現像カウンター6c及び課金カウンター6d)のカウント値の修正処理を示す図である。例えば、演算制御部6は、課金カウンター6dについては、定着センサー56により記録紙Pが検出されない、つまり定着センサー6dによる検出結果に基づいて記録紙Pが定着ローラー50を通過していないと判定した場合には、退避処理時にカウントアップされた数値「1」を現行のカウント値から差し引き、定着センサー56により記録紙Pが検出される、つまり記録紙Pが定着ローラー50を通過していると判定した場合には、現行のカウント値を保持する。
【0048】
また、演算制御部6は、現像カウンター6cについては、転写センサー55により記録紙Pが検出されない、つまり転写センサー55による検出結果に基づいて記録紙Pが2次転写ローラー49を通過していないと判定した場合には、退避処理時にカウントアップされた数値「1」を現行のカウント値から差し引き、また転写センサー55により記録紙Pが検出される、つまり記録紙Pが2次転写ローラー49を通過していると判定した場合には、現行のカウント値を保持する。
【0049】
また、演算制御部6は、機械カウンター6bについては、レジストセンサー54により記録紙Pが検出されない、つまりレジストセンサー54による検出結果に基づいて記録紙Pがレジストローラー48を通過していないと判定した場合には、退避処理時にカウントアップされた数値「1」を現行のカウント値から差し引き、またレジストセンサー54により記録紙Pが検出される、つまり記録紙Pがレジストローラー48を通過していると判定した場合には、カウントアップされた数値「1」を保持する
【0050】
さらに、演算制御部6は、給紙段カウンター6aについては、給紙センサー53により記録紙Pが検出されない、つまり給紙センサー53による検出結果に基づいて記録紙Pがピックアップローラー46を通過していないと判定した場合には、退避処理時にカウントアップされた数値「1」を現行のカウント値から差し引き、また給紙センサー53により記録紙Pが検出される、つまり記録紙Pがピックアップローラー46を通過していると判定した場合には、現行のカウント値を保持する。つまり、演算制御部6は、図3に示すようにステップS8の判定処理を実行し、ステップS9または10の処理を選択する。
【0051】
図2に戻り、演算制御部6は、ステップS9または10の処理の後に、ステップS8〜10の処理を実施するカウンターが残っているか否かを判定する(ステップS11)。演算制御部6は、未処理のカウンターがある場合には、上述したステップS8の判定処理を繰り返す。また、演算制御部6は、未処理のカウンターがない場合には、RAMのバックアップ領域に記憶されているカウント値を給紙段カウンター6a、機械カウンター6b、現像カウンター6c及び課金カウンター6dのカウント値の本来の記憶領域に移動させる(ステップS12)。
【0052】
本実施形態によれば、電源がOFFする際に、機能停止する前に各カウンターを強制的にカウントアップさせると共に当該カウントアップ後のカウント値をRAMのバックアップ領域に記憶させ、次に電源がONした際に記録紙Pの停止位置がカウントアップの条件を満たしていないと判定した場合には、強制的にカウントアップされた数値をRAMのバックアップ領域に記憶されたカウント値から差し引き、また記録紙Pの停止位置がカウントアップの条件を満たしていると判定した場合には、RAMのバックアップ領域に記憶されたカウント値を保持する。
【0053】
このような本実施形態によれば、電源がOFFする際にカウント値を強制的にカウントアップさせるので、電源が突然OFFする場合でもカウントアップが実行されないという事態を回避することができる。その上、本実施形態によれば、その後に電源がONした際に記録紙Pの停止位置がカウントアップの条件を満たしていない場合、強制的にカウントアップされた数値をRAMのバックアップ領域に記憶されたカウント値から差し引くので、カウント値が強制的なカウントアップにより正しくない値になった場合でも適切な値に修正されるので、カウント値の正確性を確保することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、例えば以下のような変形が考えられる。
(1)上記実施形態では、給紙段カウンター6a、機械カウンター6b、現像カウンター6c及び課金カウンター6dという画像形成部4の各種カウンターを対象としているが、本発明はこれに限定されない。例えば、図2に示すフローチャートの処理を利用して、画像読取部2に設けられたカウンターを対象としてもよい。また、上記4つのカウンターを全て対象としなくてもよい。
(2)上記実施形態では、複合機Aを対象としたが、本発明は複合機A以外の各種の画像形成装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
A…複合機、1…操作表示部、2…画像読取部、3…画像データ記憶部、4…画像形成部、5…通信部、6…演算制御部(カウンター制御手段)、41…ベルトローラー、42…中間転写ベルト、43Y,43M,43C,43K…画像形成ユニット、44Y,44M,44C,44K…1次転写ローラー、45…給紙カセット、46…ピックアップローラー、47…搬送ローラー、48…レジストローラー、49…2次転写ローラー(転写手段)、50…定着ローラー(定着手段)、51…排紙ローラー、52…排紙トレイ、53…給紙段センサー、54…レジストセンサー、55…転写センサー、56…定着センサー、57…排紙センサー、41a…駆動ローラー、41b…従動ローラー、41c…テンションローラー、43a…感光体ドラム、43b…帯電部、43c…レーザースキャニングユニット、43d…現像ユニット、43e…クリーナー、50a…加熱ローラー、50b…加圧ローラー、6a…給紙段カウンター、6b…機械カウンター、6c…現像カウンター、6d…課金カウンター、P…記録紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙を所定の搬送経路に沿って搬送させて前記記録紙の表面にトナー像を画像形成する画像形成装置であって、
前記搬送経路における前記記録紙の位置を検出する用紙センサーと、
前記トナー像の形成に関するカウント処理を行うカウンターと、
前記用紙センサーの検出結果に基づいて前記カウンターを制御するカウンター制御手段と、を具備し、
前記カウンター制御手段は、電源がOFFすることを検知した場合に機能停止する前に前記カウンターをカウントアップさせ、次に電源がONした場合において、先に電源がOFFしたことによって前記搬送経路に停止している前記記録紙の停止位置がカウントアップの条件を満たしていない場合は、先にカウントアップさせた値を前記カウンターのカウント値から差し引き、また前記記録紙の停止位置がカウントアップの条件を満たしている場合には、前記カウンターのカウント値を保持することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記用紙センサーは、前記トナー像の前記記録紙上への定着処理を行う定着手段を通過した前記記録紙を検出し、
前記カウンターは、画像形成が完了した場合の課金に関するカウント処理を実行する課金カウンターであり、
前記カウンター制御手段は、電源がONした場合において、前記記録紙が前記定着手段を通過していないと判断した場合は、先にカウントアップさせた値を前記課金カウンターのカウント値から差し引き、また前記記録紙が前記定着手段を通過していると判断した場合には、前記課金カウンターのカウント値を保持することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記用紙センサーは、感光体ドラム上のトナー像を前記記録紙に転写する転写手段を通過した前記記録紙を検出し、
前記カウンターは、前記感光体ドラムにおいて静電潜像がトナー像に現像された回数を計数する現像カウンターであり、
前記カウンター制御手段は、電源がONすることを検知した場合において、前記記録紙が前記転写手段を通過していないと判定した場合には、カウントアップさせた値を前記現像カウンターのカウント値から差し引き、また前記記録紙が前記転写手段を通過していると判定した場合には、前記現像カウンターのカウント値を保持することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記用紙センサーは、感光体ドラム上のトナー像を前記記録紙に転写する転写手段に所定のタイミングで前記記録紙を給紙するレジストローラーを通過した前記記録紙を検出し、
前記カウンターは、前記記録紙が前記レジストローラーを通過するまで前記記録紙を搬送する搬送機構の動作回数を計数する機械カウンターであり、
前記カウンター制御手段は、電源がONしたことを検知した場合において、前記記録紙が前記レジストローラーを通過していないと判定した場合には、カウントアップさせた値を前記機械カウンターのカウント値から差し引き、また前記記録紙が前記レジストローラーを通過していると判定した場合には、前記機械カウンターのカウント値を保持することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記用紙センサーは、前記記録紙を給紙カセットから取り出して前記搬送経路に送り出すピックアップローラーを通過した前記記録紙を検出し、
前記カウンターは、前記ピックアップローラーで取り出された前記記録紙の枚数を計数する給紙段カウンターであり、
前記カウンター制御手段は、電源がONしたことを検知した場合において、前記記録紙が前記ピックアップローラーを通過していないと判定した場合には、カウントアップさせた値を前記給紙段カウンターのカウント値から差し引き、また前記記録紙が前記ピックアップローラーを通過していると判定した場合には、前記給紙段カウンターのカウント値を保持する請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−50637(P2013−50637A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189409(P2011−189409)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】