説明

画像形成装置

【課題】予備刷りにおいて過剰昇温を抑制することができ、本刷りにおいて適正な乾燥処理を実現することができる画像形成装置を提供することができる。
【解決手段】画像形成装置1は、記録剤により画像が形成された記録媒体2を搬送する搬送手段と、搬送手段によって搬送される記録媒体2において記録剤を加熱し画像を乾燥させる加熱手段(温風ヒータ42a−42d)と、本刷りにおいて記録剤を加熱し画像を乾燥させる第1の加熱温度に対して、キャリブレーションのための予備刷りにおいて記録剤を加熱し画像を乾燥させる第2の加熱温度を低く調整する加熱温度調整手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に記録媒体に形成された画像を乾燥させる機能を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、各種カラーインク滴を淡い色の被印刷物に重ねて付着し減法混色によって印刷を行うインクジェット記録装置が開示されている。このインクジェット記録装置は、連続通電において1100nmから1400nmに輻射強度のピークを有するハロゲンランプを被印刷物の印刷画像形成面に対向して配置し、印刷後の被印刷物に乾燥処理を行っている。ハロゲンランプは少なくとも2本以上備え、印刷条件によってハロゲンランプの点灯本数又は点灯デューティを切り換えることができる。
【0003】
このインクジェット記録装置においては、各種カラーインクを用いて印刷された被印刷物の白色部分を必要以上に加熱することがなく、印刷部位を加熱し乾燥することができる。従って、被印刷物の乾燥に伴う変形を軽減することができ、信頼性が高くコンパクトで安価なインクジェット記録装置を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−168060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インクジェット記録装置においては、カラーインクを用いて被印刷物に印刷が行われた後、擦れに強く印刷画像に損傷を与えない膜質を確保するために、安定的にかつ短時間において乾燥させるプロセスが必要である。被印刷物具体的には用紙の坪量(例えば100gsm〜300gsm)、インク吐出量等に乾燥性は大きく依存する。最も厳しい乾燥条件下において乾燥性を確保するために、装置側に様々な工夫がなされている。また、用紙が薄紙の場合、厚紙基準において設定された乾燥条件下では乾燥能力が高すぎ、用紙変形(カールやカックル)が大きくなる。用紙変形の大きな薄紙において、両面印刷を行う場合、表面印刷の終了後に裏面印刷を実施することが難しい。インクジェット記録装置においては、様々な条件に見合った乾燥条件が必要とされている。
【0006】
インクジェット記録装置においては、用紙の印刷(本刷り)を行う前に、キャリブレーションのための予備刷りが行われる。キャリブレーションは、キャリブレーション用画像(例えばACP:auto calibration pattern)を用紙に印刷し、この印刷出力された画像を読み取り、この読み取られた情報に基づいて画像の色合いの調整を行う処理である。この処理は自動的又は半自動的に行われる。
【0007】
予備刷りにおいて用紙にキャリブレーション用画像が印刷されると、乾燥部においてインクが加熱され、画像に乾燥処理が行われる。キャリブレーションにおいて画像の色合いの調整の完了までには時間を要し、キャリブレーション用画像の印刷、乾燥、調整に至る全体の処理プログラム時間を短縮するために、インクジェット記録装置はプリント状態が維持されている。ここで、プリント状態の維持とは、キャリブレーション用画像が印刷された用紙を搬送する圧胴が本刷り印刷と同様に高速回転に維持され、乾燥部は本刷り印刷と同様に温風ヒータ、加熱ヒータの設定温度が高温に維持されることを意味する。この予備刷りにおいて乾燥期間中の熱及びその余熱は、本刷り印刷前の圧胴等に伝達され、圧胴が過剰昇温に至る。このため、過剰昇温に伴い本刷りおいて乾燥部の圧胴やその前後の渡し胴によって搬送される用紙にカール、カックル等の変形が生じ、又用紙の変形に起因して各種センサに誤検知が発生する陽炎不具合が生じるので、適切な乾燥処理を行うことが難しい。
【0008】
一方、インクジェット記録装置において、用紙の印刷を行う前に、併せてノズルチェックのための予備刷りを行う場合には、キャリブレーションのための予備刷りと同様に、過剰昇温が生じる。ノズルチェックは、ノズルチェック用画像(NCP:nozzle check pattern)を例えば複数枚の用紙に印刷し、印刷ヘッドのノズルからのインク吐出量の調整、ノズルの修復等に使用されている。過剰昇温に伴い本刷りにおいて乾燥部の圧胴やその前後の渡し胴によって搬送される用紙にカール、カックル等の変形が生じ、又用紙の変形に起因して各種センサに誤検知が発生する陽炎不具合が生じるので、適切な乾燥処理を行うことが難しい。
【0009】
本発明は上記事実を考慮し、予備刷りにおいて過剰昇温を抑制することができ、本刷りにおいて適正な乾燥処理を実現することができる画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の画像形成装置は、記録剤により画像が形成された記録媒体を搬送する搬送手段と、搬送手段によって搬送される記録媒体において記録剤を加熱し画像を乾燥させる加熱手段と、本刷りにおいて記録剤を加熱し画像を乾燥させる第1の加熱温度に対して、キャリブレーションのための予備刷りにおいて記録剤を加熱し画像を乾燥させる第2の加熱温度を低く調整する加熱温度調整手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載された発明によれば、加熱温度調整手段は加熱手段の加熱温度を第1の加熱温度とそれよりも低い第2の加熱温度とに調整する。加熱手段は記録媒体において記録剤を加熱し画像を乾燥させる。本刷りにおいて、加熱手段の第1の加熱温度によって記録剤が加熱され画像が乾燥される。予備刷りにおいて、第1の加熱温度に比べて低い第2の加熱温度によって記録剤が加熱され画像が乾燥される。第2の加熱温度が低く設定されているので、予備刷りの加熱乾燥期間中の温度上昇を抑制することができる。従って、過剰昇温は生じないので、記録媒体の変形、陽炎不具合等を抑制することができ、適切な乾燥処理を実現することができる。
【0012】
請求項2に記載の画像形成装置は、請求項1に記載の画像形成装置において、加熱手段は記録剤を加熱し画像を乾燥させる加熱ヒータを備え、加熱温度調整手段は、本刷りにおいて記録剤を加熱し画像を乾燥させる前に加熱ヒータを稼働させることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載された発明によれば、加熱手段は加熱ヒータを備え、加熱温度調整手段によって本刷りにおいて記録剤を加熱し画像を乾燥させる前に加熱ヒータを稼働することができる。加熱ヒータの稼働に伴い、本刷りにおいて、記録剤を加熱し画像を乾燥させる前に最適な乾燥環境を生成することができるので、最適な乾燥処理を実現することができる。
【0014】
請求項3に記載の画像形成装置は、請求項2に記載の画像形成装置において、加熱温度調整手段は、予備刷りにおいて記録剤を加熱し画像を乾燥させた後に加熱ヒータを稼働させていることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載される発明によれば、予備刷りにおいて記録剤を加熱し画像を乾燥させた後にそれとは別に加熱ヒータを稼働させ、本刷りにおいて、記録剤を加熱し画像を乾燥させる前に最適な乾燥環境を生成することができるので、最適な乾燥処理を実現することができる。
【0016】
請求項4に記載の画像形成装置は、請求項3に記載の画像形成装置において、加熱温度調整手段は、予備刷りにおいて記録剤を加熱し画像を乾燥させる期間中に加熱ヒータを一時的に稼働させていることを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載される本発明によれば、予備刷りにおいて記録剤を加熱し画像を乾燥させる乾燥期間中は低い第2の加熱温度に設定されている。この乾燥期間中に加熱ヒータを一時的に稼働させることによって過剰昇温させることなく予備刷りにおいて適切な乾燥処理を行うことができる。
【0018】
請求項5に記載の画像形成装置は、請求項3又は請求項4に記載の画像形成装置において、加熱手段は記録剤に温風を吹付け画像を乾燥させる温風ヒータを備え、加熱温度調整手段は温風ヒータの温風の設定温度を第1の加熱温度と第2の加熱温度とに調整することを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載された発明によれば、加熱手段は温風ヒータを備え、この温風ヒータの温風の設定温度が加熱温度調整手段によって第1の加熱温度と第2の加熱温度とに設定される。予備刷りにおいて記録剤を加熱し画像を乾燥させるには、温風の設定温度が低く調整された第2の加熱温度が使用される。従って、この乾燥期間中の温度上昇を抑制することができるので、過剰昇温を抑制することができる。
【0020】
請求項6に記載の画像形成装置は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の画像形成装置において、第1の加熱温度は60度〜80度に調整され、第2の加熱温度は第1の加熱温度に対して5度〜15度低く調整されることを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載された発明によれば、加熱手段の第1の加熱温度が60度〜80度に調整されるので、本刷りにおいて画像には短時間内に最適な乾燥処理を行うことができる。加えて、加熱手段の第2の加熱温度が第1の加熱温度に対して5度〜15度低く調整されるので、予備刷りにおいて過剰な温度上昇を伴わずに最適な乾燥処理を行うことができる。
【0022】
請求項7に記載の画像形成装置は、請求項5又は請求項6に記載の画像形成装置において、搬送手段の温度情報を取得する温度情報取得手段と、記録媒体に形成された画像の適正乾燥のために設定された目標加熱温度情報を格納する記憶手段と、を備え、加熱温度調整手段は、加熱手段の加熱ヒータを稼働するとともに、温度情報取得手段を用いて取得した搬送手段の温度情報と記憶手段に記憶された目標加熱温度情報とに基づくPID制御によって第1の加熱温度を調整し、温風ヒータを稼働することを特徴とする。
【0023】
請求項7に記載された発明によれば、温度情報取得手段を用いて搬送温度の温度情報を取得することができ、記憶手段を用いて目標加熱温度情報を格納することができる。加熱ヒータの稼働に併せて温風ヒータが稼働しても、加熱温度調整手段はPID制御によって温度情報と目標加熱温度情報とに基づき適正な第1の加熱温度に調整しているので、最適な乾燥処理を行うことができる。
【0024】
請求項8に記載の画像形成装置は、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の画像形成装置において、記録剤はインクであり、記録媒体に記録ヘッドからインクを吐出し画像を形成する画像形成部を備えたことを特徴とする。
【0025】
請求項8に記載された本発明によれば、記録媒体にインクを吐出し画像を形成する画像形成部を備え、インクジェット型画像形成装置が構築され、このインクジェット型画像形成装置においてインクを加熱し画像を乾燥させ、最適な乾燥処理を行うことができる。
【0026】
請求項9に記載の画像形成装置は、請求項8に記載の画像形成装置において、加熱温度調整手段は、ノズルチェックのための予備刷りにおいて第2の加熱温度によってインクを加熱し画像を乾燥させることを特徴とする。
【0027】
請求項9に記載された本発明によれば、キャリブレーションのための予備刷りと同様に、ノズルチェックのための予備刷りは第1の加熱温度に比べて低い第2の加熱温度によってインクを加熱し画像の乾燥を行う。キャリブレーションのための予備刷り並びにノズルチェックのための予備刷りにおいて乾燥期間中の温度上昇を抑制することができるので、過剰昇温が生じない。従って、過剰昇温に伴う記録媒体の変形、陽炎不具合等を抑制することができ、適切な乾燥処理を実現することができる。
【0028】
請求項10に記載の画像形成装置は、請求項8又は請求項9に記載の画像形成装置において、搬送手段は、記録媒体を順次受け渡して搬送する第1の渡し胴、圧胴及び第2の渡し胴を備え、加熱手段は、圧胴に搬送される記録媒体においてインクを加熱し画像を乾燥させることを特徴とする。
【0029】
請求項10に記載された本発明によれば、少なくとも第1の渡し胴、圧胴及び第2の渡し胴を備えて搬送手段が構築される。圧胴に搬送される記録媒体において、加熱手段によってインクを加熱して画像の乾燥が行われる。キャリブレーションのための予備刷り並びにノズルチェックのための予備刷りにおいて、記録媒体は圧胴によって搬送され、加熱手段の第2の加熱温度によってインクが加熱され、画像の乾燥が行われる。この乾燥期間中の加熱や乾燥期間経過後の余熱は圧胴だけでなく第1の渡し胴並びに第2の渡し胴にも伝わる。第2の加熱温度が低く調整されているので、圧胴、第1の渡し胴並びに第2の渡し胴の過剰昇温を抑制することができる。従って、第1の渡し胴、圧胴、第2の渡し胴において、過剰昇温に伴う記録媒体の変形、陽炎不具合等を抑制することができ、適切な乾燥処理を実現することができる。
【0030】
請求項11に記載の画像形成装置は、請求項8乃至請求項10のいずれか1項に記載の画像形成装置において、加熱温度調整手段は、記録媒体の搬送条件及びインク吐出条件に基づきPID制御を行うことを特徴とする。
【0031】
請求項11に記載された本発明によれば、記録媒体の搬送条件及びインク吐出条件を設定パラメータとして加熱温度調整手段のPID制御を行うことができるので、最適な乾燥処理を簡易に実現することができる。
【0032】
請求項12に記載の画像形成装置は、請求項11に記載の画像形成装置において、記録媒体の搬送条件は、グロス系用紙を搬送するときの乾燥条件を、マット系用紙を搬送するときの乾燥条件に比べて弱く設定することである。
【0033】
請求項12に記載された本発明によれば、グロス系用紙の膜質はマット系用紙の膜質に比べて弱い。グロス系用紙の搬送のときに乾燥条件を弱くすることによって、グロス系用紙に形成された画像の最適な乾燥処理を簡易に実現することができる。また、マット系用紙の搬送のときに乾燥条件を強くすることによって、マット系用紙に形成された画像の最適な乾燥処理を簡易に実現することができる。
【0034】
請求項13に記載の画像形成装置は、請求項11又は請求項12に記載の画像形成装置において、記録媒体の搬送条件は、157gsm未満の坪量の用紙の加熱温度の上昇の立ち上がりを、157gsm以上の坪量の用紙の加熱温度の上昇の立ち上がりに比べて遅く設定することである。
【0035】
請求項13に記載された本発明によれば、157gsm未満の坪量の用紙は薄く、157gsm以上の坪量の用紙は厚い。薄い用紙の搬送のときの乾燥条件を弱くすることによって、用紙に形成された画像の最適な乾燥処理を簡易に実現することができる。また、厚い用紙の搬送のときに乾燥条件を強くすることによって、用紙に形成された画像の最適な乾燥処理を簡易に実現することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、予備刷りにおいて過剰昇温を抑制することができ、本刷りにおいて適正な乾燥処理を実現することができる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施例に係る画像形成装置の全体構成を示す概念図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の要部拡大概念図である。
【図3】図1に示す画像形成装置のシステム構成図である。
【図4】一実施例に係る画像形成装置の乾燥処理動作を説明するタイムチャートである。
【図5】一実施例の比較例に係る画像形成装置の乾燥処理動作を説明するタイムチャートである。
【図6】(a)は一実施例に係る画像形成装置の乾燥処理動作において加熱ヒータを事前に稼働したときの本刷りの乾燥処理温度の変化を示すグラフ、(b)は比較例に係る画像形成装置の乾燥処理動作において加熱ヒータを事前に稼働しないときの本刷りの乾燥処理温度の変化を示すグラフである。
【図7】一実施例に係る画像形成装置の乾燥処理動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照して本発明に係る画像形成装置の一実施例について説明する。以下の説明において、同一機能を有する構成要素には同一符号を付け、その説明は重複するので省略する。
【0039】
<画像形成装置の全体構成>
【0040】
本実施例は、画像形成装置としてインクジェット型画像形成装置に本発明を適用した例を説明するものである。図1に示すように、本実施例に係る画像形成装置1は、主として、給紙部10、処理液付与部20、描画部30、乾燥部40、定着部50、及び排紙部60を備えている。画像形成装置1は、描画部30の描画ドラム(圧胴)31に保持された記録媒体2に液滴吐出装置の一例としてのインクジェットヘッド32K、32M、32C、32Yから各色の記録剤を吐出してカラー画像を形成する。記録媒体2は例えば用紙である。また、記録剤には、ブラック、マゼンダ、シアン、イエローの各色のカラーインク(液滴)が使用されている。この種の画像形成装置1は圧胴直描方式のインクジェット型記録装置である。更に、画像形成装置1は、記録剤の吐出前に記録媒体2上に処理液(インク凝集処理液)を付与し、処理液と記録剤とを反応させて記録媒体2上に画像を形成する2液反応(凝集)方式を採用したオンデマンドタイプの画像形成装置である。
【0041】
給紙部10は記録媒体2を処理液付与部20に供給する機構である。給紙部10には枚葉紙である記録媒体2が積層されている。給紙部10には給紙トレイ11が設けられている。給紙トレイ11は記録媒体2を1枚ずつ処理液付与部20に給紙する。画像形成装置1においては、記録媒体2として、用紙種類、用紙サイズの異なる様々な記録媒体2の画像の形成を行うことができる。なお、本実施例は、記録媒体2として枚葉紙(カット紙)を使用し、その画像の形成方法を説明する。
【0042】
処理液付与部20は記録媒体2の記録面(画像形成面)に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部30において付与される記録剤、ここではインクでありそのインク中の色材(顔料若しくは染料)を凝集若しくは増粘させる成分を含んでいる。処理液がインクに接触することによってインクの色材と溶媒との分離が促進される。
【0043】
色材を凝集若しくは増粘させるには、例えば、インクと反応してインク中の色材を析出或いは不溶化させる処理液、インク中の色材を含む半固体状の物質(ゲル)を生成する処理液等の使用が挙げられる。そして、インクと処理液との反応を引き起こす方法には、インク中のアニオン性の色材と処理液中のカチオン性の化合物とを反応させる方法、互いにpHの異なるインクと処理液を混合させることによりインクのpHを変化させインク中の顔料の分散破壊を起こし顔料を凝集させる方法、処理液中の多価金属塩との反応によりインク中の顔料の分散破壊を起こし顔料を凝集させる方法等がある。処理液の付与方法には、処理液を打滴する方法、ローラを用いて塗布する方法、スプレーを用いて一様に散布する方法等がある。
【0044】
処理液付与部20は供給胴21、処理液ドラム22及び処理液塗布装置23を備えている。処理液ドラム22は、記録媒体2を保持し、回転しながら記録媒体2を搬送するドラムである。詳細に図示していないが、処理液ドラム22の外周面には記録媒体2の搬送方向端を挟み込む爪を有する保持手段(グリッパ)が配設されている。
【0045】
同様に詳細に図示していないが、処理液ドラム22の外周面には吸引孔が配設され、この吸引孔には吸引を行う吸引手段が接続されている。吸引孔及び吸引手段によって、処理液ドラム22の周面に記録媒体2を密着して保持することができる。処理液ドラム22の周面は記録媒体2を搬送する搬送手段の搬送面(搬送路)として機能する。
【0046】
処理液塗布装置23は処理液ドラム22の外周面に対向して配設されている。処理液塗布装置23は、処理液が貯留された処理液容器と、この処理液容器の処理液に一部が浸漬されたアニロックスローラと、アニロックスローラと処理液ドラム22上の記録媒体2に圧接されて計量後の処理液を記録媒体2に転移するゴムローラとを備えている。この処理液塗布装置23においては、処理液を計量しながら記録媒体2に塗布することができる。処理液付与部20において、処理液塗布装置23よりも記録媒体2の搬送方向下流側には、記録媒体2に塗布された処理液を乾燥させる温風ヒータ25と加熱ヒータ26が順次配設されている。温風ヒータ25及び加熱ヒータ26は、処理液打滴後の処理液中の溶媒成分の乾燥を行い、色材浮遊の防止を行う。色材浮遊は、インク液滴が処理液の上に浮遊し、所望の位置にドットを形成することができない現象である。加熱ヒータ26には本実施例において赤外線加熱ヒータ(IRヒータ)が使用される。IRヒータは、水含有率の高い物体を効率良く加熱し、水分の乾燥に適している。
【0047】
処理液付与部20において処理液が付与された記録媒体2は、処理液ドラム22から中間搬送部70の渡し胴71を通して描画部30の描画ドラム31へ受け渡される。描画部30には、周面上に記録媒体2を保持し回転しながら搬送する描画ドラム31と、描画ドラム31の外周面に対向し記録媒体2に記録剤(インク)を用いて画像を形成する画像形成部32とを備えている。画像形成部32は各色カラーインクをノズルから吐出するインクジェット型記録ヘッド32K、32Y、32M及び32Cが配設されている。記録ヘッド32Kは記録剤としてブラックインクを吐出する。同様に、記録ヘッド32Yは記録剤としてイエローインクを吐出する。記録ヘッド32Mは記録剤としてマゼンダインクを吐出する。記録ヘッド32Cは記録剤としてシアンインクを吐出する。描画ドラム31は、処理液ドラム22と同様に、その外周面に記録媒体2の搬送方向端を挟み込む爪を有する保持手段を備えている。
【0048】
本実施例に係る画像形成装置1において、画像形成部32の記録ヘッド32K、32Y、32M及び32Cは、画像形成領域の最大幅に対応する長さを有し、フルライン型インクジェット方式を採用する。図示しないが、記録ヘッド32K、32Y、32M、32Cのそれぞれのインク吐出面には、画像形成領域の全幅に渡ってノズル吐出口を複数配列したノズル吐出口列が配設されている。つまり、ノズル吐出口列は記録媒体2の搬送方向(描画ドラム31の回転方向)に対して直交する方向に延伸している。
【0049】
図示しないが、描画ドラム31の外周面には吸引孔が配設され、この吸引孔は吸引装置に接続されている。吸引装置から吸引孔を通して働く吸引力は描画ドラム31の外周面に記録媒体2を吸引し、記録媒体2は描画ドラム31の外周面に密着し保持される。
【0050】
描画ドラム31の外周面上に保持された記録媒体2の画像形成面(記録面)には記録ヘッド32K、32Y、32M、32Cのそれぞれからインクが吐出される。前述の通り、処理液付与部20において予め記録面に処理液が付与されているので、処理液にインクが接触すると、インク中に分散する顔料、樹脂粒子が凝集し、凝集体が生成される。この凝縮体の生成によって、記録媒体2上において顔料流れ等の不具合を抑制しつつ、記録媒体2の記録面に画像を形成することができる。
【0051】
描画部30において画像が形成された記録媒体2は、図1及び図2に示すように、描画ドラム31から中間搬送部72の渡し胴(第1の渡し胴)73を通して乾燥部40の乾燥ドラム(圧胴)41へ受け渡される。乾燥部40は、インク中の溶媒すなわち凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を飛ばし、画像を乾燥させる機構である。乾燥部40は、乾燥ドラム41と、その外周面上に搬送される記録媒体2の記録面側に配設された温風ヒータ42a−42d及び加熱ヒータ43a−43cと、図示しないが記録媒体2の記録面と反対側に配設された加熱機構とを備えている。この温風ヒータ42a−42d及び加熱ヒータ43a−43cは乾燥部40において加熱手段を構築する。
【0052】
温風ヒータ42a−42dは一定の間隔において記録媒体2の搬送方向上流側から搬送方向下流側に向かってここでは4個配設されている。温風ヒータ42a−42dの配列個数は特に限定されるものではない。温風ヒータ42a−42dは、記録媒体2に描画部30において吐き出されたインク(記録剤)を温風によって加熱し(熱及び送風によって乾燥させ)、画像を乾燥させる。画像形成装置1の動作説明において詳述するが、温風ヒータ42a−42dは、本刷りのときには強乾燥条件において画像の乾燥に使用されるが、キャリブレーションのための予備刷りのときには少なくとも一部を弱乾燥条件にして画像の乾燥に使用される。キャリブレーションのための予備刷りとはキャリブレーション用画像(ACP)を形成する(印刷する)ときである。本実施例においては、弱乾燥条件(予備刷り)のときの温風ヒータ42a−42dの加熱温度(第2の加熱温度)は、強乾燥条件(本刷り)のときの温風ヒータ42a−42dの加熱温度(第1の加熱温度)に比べて低く調整されている。ここで、少なくとも一部を弱乾燥条件にして使用するとは、温風ヒータ42a−42dのうち1個、2個、3個又は4個(すべての個数)を弱乾燥条件に使用するという意味である。従って、ここでは、温風ヒータ42a−42dの一部を強乾燥条件において使用し、残りの一部を弱乾燥条件において使用する場合は、温風ヒータ42a−42dは弱乾燥条件において使用されていると定義する。
【0053】
温風ヒータ42a−42dは、ノズルチェックのための予備刷りのときにも、キャリブレーションのための予備刷りのときと同様に、弱乾燥条件において画像の乾燥に使用される。ノズルチェックのための予備刷りとはノズルチェック用画像(NCP)を形成する(印刷する)ときである。
【0054】
加熱ヒータ43a、43b、43cは一定の間隔において記録媒体2の搬送方向上流側から搬送方向下流側に向かってここでは3個配設されている。また、加熱ヒータ43aは温風ヒータ42aと42bとの中間に配置され、加熱ヒータ43bは温風ヒータ42bと42cとの中間に配置され、加熱ヒータ43cは温風ヒータ42cと42dとの中間に配置されている。なお、加熱ヒータ43a−43cの配列個数は特に限定されるものではない。本実施例において、加熱ヒータ43a−43cには、水含有率の高い物体を効率良く加熱することができ、水分の乾燥に適したIRヒータが使用される。更に、石英管内に不活性ガスを用いて炭素繊維を封入したカーボンヒータは低消費電力化に有効である。
【0055】
加熱機構には、例えば記録媒体2の記録面と反対側から加熱部材を押し当て接触によって直接熱を伝達しインクを加熱し画像を乾燥させる機構が使用される。乾燥ドラム41の表面温度は内部の加熱機構を用いて例えば50℃以上に設定されることが好ましい。記録媒体2の記録面と反対側から加熱を行なうことによって乾燥が促進され、定着時における画像破壊を防止することができる。なお、乾燥ドラム41の表面温度の上限は、特に限定されるものではないが、乾燥ドラム41の表面に付着したインクをクリーニングによって取り除く等のメンテナンス作業の安全性(高温による火傷防止)の観点から75℃以下(好ましくは60℃以下)に設定される。
【0056】
乾燥ドラム41の外周面に対向し、加熱ヒータ43cよりも搬送方向下流側には温度センサ45が配設されている。この温度センサ45は、乾燥ドラム41の外周面の温度の測定、搬送手段の記録媒体2が搬送される搬送経路の温度の測定、乾燥ドラム41によって搬送される記録媒体2の温度の測定等に使用される。
【0057】
また、乾燥ドラム41の表面温度が高い方が記録媒体2の伸縮が少ないので、安全性を損なわない程度に乾燥ドラム41の表面温度は高く設定されている。つまり、記録媒体2のカールやカックルの発生を抑制することができる。
【0058】
乾燥部40において乾燥した後の記録媒体2の画像の水分残水量を1g/m以上3.5g/m未満に調整することが好ましい。3.5g/m以上の水分を残すと、定着部50において定着ローラ52、53へのオフセットが生じ易い。また、1g/m未満の水分残水量の場合には、記録媒体2の内部に染み込んだ水分も蒸発させることになるので、乾燥に多大なエネルギが必要になる。
【0059】
乾燥ドラム41は、処理液ドラム22と同様に、その外周面に記録媒体2の搬送方向端を挟み込む爪を有する保持手段を備えている。
【0060】
乾燥部40は、乾燥ドラム41の外周面に、記録媒体2の記録面を外側とし、乾燥ドラム41の外周面の曲率に沿って記録媒体2の記録面を凸状に湾曲させて保持し、回転搬送しながら乾燥する。従って、このような搬送形態を採用することによって、記録媒体2の皺や浮きの発生を防止することができ、これらに起因して生じる乾燥斑を防止することができる。
【0061】
乾燥部40において乾燥処理が行なわれた記録媒体2は、乾燥ドラム41から中間搬送部74の渡し胴(第2の渡し胴)75を通して定着部50の定着ドラム51へ受け渡される。定着部50は、定着ドラム51と、定着ドラム51の外周面に配設された第1の定着用搬送ローラ52及び第2の定着用搬送ローラ53とを備えている。更に、定着ローラ51の外周面に対向する位置であって第2の定着用搬送ローラ53よりも搬送方向下流側にはインラインセンサ66が配設されている。
【0062】
定着ドラム51は、処理液ドラム22と同様に、その外周面に記録媒体2の搬送方向端を挟み込む爪を有する保持手段を備えている。定着ドラム51の回転によって、記録媒体2は記録面を外側に向けて搬送され、この記録面に対して第1の定着用搬送ローラ52と第2の定着用搬送ローラ53による定着処理が行われる。また、インラインセンサ66による検査が行われる。
【0063】
第1の定着ローラ52及び第2の定着ローラ53は記録媒体2の記録面に形成された記録剤(ここではインク)を加熱しかつ加圧する。この加熱及び加圧によって、インク中に含まれる樹脂粒子特に自己分散性ポリマー粒子が溶着し、インクが皮膜化される。具体的には、第1の定着用搬送ローラ52及び第2の定着用搬送ローラ53は、定着ドラム51を押圧し、定着ドラム51との間において記録媒体2を挟み込むニップローラとして機能する。このニップ圧は例えば0.3MPaに設定され、このニップ圧において定着処理が行なわれる。
【0064】
本実施例において、第1の定着用搬送ローラ52及び第2の定着用搬送ローラ53は、熱伝導性の良いアルミニウム等の金属製中空パイプ内にハロゲンランプが組み込まれ、ハロゲンランプの点灯によりパイプ全体を加熱する加熱機能を有する。第1の定着用搬送ローラ52及び第2の定着用搬送ローラ53は例えば60℃〜80℃の温度に調整される。
【0065】
このように構成される第1の定着用搬送ローラ52及び第2の定着用搬送ローラ53を用いて搬送される記録媒体2を搬送しながら加熱することによって、インクに含まれる樹脂粒子(ラテックス)のガラス転移温度(Tg)以上の熱エネルギをインクに与えることができる。この結果、樹脂粒子が溶融されこの溶融された樹脂粒子が記録媒体2の凹凸に押し込まれて定着が行なわれるとともに、画像の表面の凹凸が平滑化され、画像の表面に光沢を得ることができる。また、定着時において画像の破壊を防止することができるとともに、画像の昇温効果によって画像の物理的な強度を高めることができる。
【0066】
インラインセンサ66は、定着部50において定着処理が行われた後の記録媒体2に形成された画像において、パターンチェック、水分量のチェック、表面温度のチェック、光沢度のチェック等、最終的な状態の検出を行う。インラインセンサ66には例えばCCDラインセンサを使用することができる。
【0067】
定着部50の記録媒体2の搬送方向下流側には排紙部60が配設されている。排紙部60は排出トレイ61を備えている。排出トレイ61と定着部50の定着ドラム51との間には、定着ドラム51に対接して配設された渡し胴63と、この渡し胴63の回転に伴い移動する搬送ベルト65と、渡し胴63との間に搬送ベルト65に張力を与える張架ローラ64とを備えている。これらは排紙搬送機構を構築する。この排紙搬送機構において、記録媒体2は渡し胴63から搬送ベルト65に搬送され、この搬送された記録媒体2は排出トレイ61に排出される。
【0068】
また、排出トレイ61には冷風噴出ノズル62が併設されている。この冷風噴出ノズル62は、排出される記録媒体2に冷風を噴出し、記録媒体2を冷却して温度、湿度の調整(シーズニング)を行う。
【0069】
なお、図1及び図2に示す画像形成装置1は、図示を省略するが、記録剤貯留タンク(インク貯留タンク)、処理液供給機構、クリーニング機構、各種センサ等を備えている。記録剤貯留タンクは、画像形成部32の記録ヘッド32K、32Y、32M、32Cのそれぞれに供給される各色の記録剤を貯留し保管する機能を有する。処理液供給機構は処理液付与部20に処理液を供給する機能を有する。クリーニング機構は記録ヘッド32K、32Y、32Mのそれぞれのクリーニングや調整を行う機能を有する。各種センサには、記録媒体2の搬送経路中において記録媒体2の搬送位置を検出する位置センサ、各処理中において温度を検出する温度センサ等が含まれる。
【0070】
なお、画像形成装置1において、給紙部10の給紙トレイ11から排紙部60に至る記録媒体2の搬送経路と、この搬送経路中に記録媒体2を搬送する処理液ドラム22、描画ドラム31、乾燥ドラム41、定着ドラム51等は搬送手段を構築する。
【0071】
また、画像形成装置1は、排紙部60に配設した冷風噴出ノズル62と同様の機能を有するシーズニング装置を複数台備えてもよい。また、このシーズニング装置は排紙部60と給紙部10との間において移動することができる構造にしてもよい。
【0072】
<画像形成装置のシステム構成>
【0073】
図3に示すように、前述の画像形成装置1は、通信インターフェース101、システムコントローラ102、メモリ104、ROM105、モータドライバ110、ヒータドライバ120、送風制御部121、プリント制御部103、画像バッファメモリ106、ヘッドドライバ141、処理液ドライバ142等を備えている。
【0074】
通信インターフェース101は、ホストコンピュータ200からの画像データを受信し、又ホストコンピュータ200にデータを送信するインターフェース部である。通信インターフェース101は、USB(universal serial bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワーク等のシリアルインターフェース、又はセントロニクス等のパラレルインターフェースである。通信インターフェース101には高速通信を実現するためにバッファメモリを内蔵してもよい。ホストコンピュータ200から受信された画像データは通信インターフェース101を通して一旦メモリ104に格納される。
【0075】
メモリ104は、画像形成装置1の記憶手段を構築し、システムコントローラ102を通じてデータの読み書きを行う。メモリ104には、大記憶容量を有するハードディスク等の磁気メモリ、電気的消去型不揮発性メモリ等の半導体メモリを使用することができる。
【0076】
システムコントローラ102は、中央演算処理ユニット(CPU)及びその周辺回路等を備えて構築され、所定のプログラムに従い画像形成装置1の全体システムの制御を司る。また、システムコントローラ102は所定のプログラムに従い各種演算処理を行う。つまり、システムコントローラ102は、通信インターフェース101、メモリ104、モータドライバ110、ヒータドライバ120等の各ユニットの制御を行い、ホストコンピュータ200との間の通信制御を行い、メモリ104の読み書きの制御を行う。更に、システムコントローラ102は、記録媒体2を給紙部10から排紙部60に搬送する搬送手段を構築するモータドライバ110、加熱手段を構築するヒートドライバ120及び送風制御部121、画像形成部32の印刷ヘッド32K等を駆動するヘッドドライバ141、処理部20の処理液塗布装置23を駆動する処理液ドライバ142等の制御を司る。
【0077】
ROM105には、システムコントローラ102のCPUにおいて実行されるプログラム及び制御に必要な各種データ等が格納されている。なお、ROM105は、読み出し専用メモリ、電気的消去型不揮発性メモリのいずれであってもよい。メモリ104は、画像データの一時記憶領域として利用され、又プログラムの展開領域やCPUの演算作業領域としても利用される。
【0078】
モータドライバ110はシステムコントローラ102からの指示に従い搬送手段を構築するモータ111を駆動する。ここではモータ111を総称して図示しているが、実際には供給部10、処理液付与部20、描画部30、乾燥部40、定着部50、排紙部60のそれぞれにモータが配設され、又は幾つかに兼用してモータが配設され、モータドライバ110はそれぞれのモータをシステムコントローラ102の指示に従い駆動する。
【0079】
ヒータドライバ120はシステムコントローラ102からの指示に従い処理液付与部20の加熱ヒータ26、乾燥部40の加熱ヒータ43a−43cを駆動する。送風機制御部121は、システムコントローラ102からの指示に従い処理液付与部20の温風ヒータ25、乾燥部40の温風ヒータ42a−42dを駆動する。実際には、送風機制御部121は、温風ヒータ25、温風ヒータ42a−42dのそれぞれの送風機とヒータとを個別に駆動する。送風機のみ駆動すれば画像形成装置1の環境温度に近い温度を有する送風を行うことができ、送風機及びヒータを駆動すればヒータの加熱温度に調整された温度を有する送風を行うことができる。
【0080】
本実施例に係る画像形成装置1においては、システムコントローラ102、ヒータドライバ120及び送風機制御部121は加熱温度調整手段を構築する。加熱温度調整手段は、乾燥部40の温風ヒータ42a−42dのヒータ温度の調整を行い、キャリブレーションのための予備刷りのときの第2の加熱温度を、本刷りのときの第1の加熱温度に比べて低く調整する。また、加熱温度調整手段は、乾燥部40の温風ヒータ42a−42dのヒータ温度の調整を行い、ノズルチェックのための予備刷りのときの第2の加熱温度を、本刷りのときの第1の加熱温度に比べて低く調整する。更に、加熱温度調整手段は、本刷りにおいて記録剤を加熱し画像を乾燥させる前に、乾燥部40の加熱ヒータ43a−43cの稼働(本刷りの事前点灯)を行う。
【0081】
プリント制御部103は、システムコントローラ102の制御に従い、メモリ104内に格納された画像データから印刷データ(ドットデータ)を生成するための各種加工、補正等の処理を行う信号処理機能を有する。プリント制御部103において生成された印刷データはヘッドドライバ141に供給される。プリント制御部103において生成された印刷データに基づき、ヘッドドライバ141を通して印刷ヘッド32K、32C、32M、32Yのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これらの制御に基づき、ドットサイズやドット配置が調整された画像を形成する(印刷する)ことができる。
【0082】
プリント制御部103には画像バッファメモリ106が接続されている。プリント制御部103において画像データの処理時に画像データやパラメータ等のデータを画像バッファメモリ106に一時的に格納することができる。なお、画像バッファメモリ106はここではメモリ104に対して別のユニットとして構成されているが、メモリ104の一部に画像バッファメモリ106を構築することができる。また、プリント制御部103はシステムコントローラ102に統合され、システムコントローラ102にプリント制御部103が内蔵されてもよい。
【0083】
ここで、画像データの入力から印刷データの出力までの処理の流れの概要は以下の通りである。まず、記録媒体2に形成される(印刷される)画像の画像データは、ホストコンピュータ200から通信インターフェース101を通して受信され、メモリ104に格納される。この段階においては、例えば赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の情報を有する画像データがメモリ104に格納される。
【0084】
記録剤に使用されるインク(色材)による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えると、人の目には疑似的な連続階調を持つ画像に見える。このような現象を利用して、デジタル画像データの階調(画像の濃淡)を可能な限り忠実に再現するドットパターンに変換する。これを実現するために、メモリ104に格納された元のRGBの情報を有する画像データはシステムコントローラ102を通してプリント制御部103に送られる。プリント制御部103は、閾値マトリックスや誤差拡散法等を用いたハーフトーニング処理によって画像データを各色毎のドットデータに変換する。すなわち、プリント制御部103は入力されたRGB画像データをKCMYの4色のドットデータに変換する処理を行う。プリント制御部103において生成されたドットデータは画像バッファメモリ106に格納される。
【0085】
ヘッドドライバ141は、プリント制御部103から送られる印刷データ(画像バッファメモリ106に格納されたドットデータ)に基づき、印刷ヘッド32K、32C、32M、32Yを駆動する駆動信号を出力する。印刷ヘッド32K、32C、32M、32Yのそれぞれから各色インクが吐出され、搬送手段において搬送される記録媒体2の記録面に画像を形成することができる。
【0086】
また、画像形成装置1は熱圧定着制御部133、インラインセンサ66、温度センサ45を備えている。熱圧定着制御部133はシステムコントローラ102に接続され、システムコントローラ102の指示に従い熱圧定着制御部133は定着部50の動作の制御を行う。インラインセンサ66はシステムコントローラ102に接続される。システムコントローラ102の指示に従いインラインセンサ102は稼働し、インラインセンサ102によって検出されたデータはシステムコントローラ102に送られる。温度センサ45はシステムコントローラ102に接続され、温度センサ45は搬送手段等の温度情報を取得し、この温度情報システムコントローラ102に送られる。温度センサ45及びシステムコントローラ102は温度情報取得手段を構築する。
【0087】
<画像形成装置の乾燥処理動作>
【0088】
前述の画像形成装置1の乾燥処理動作を説明する。ここで、図4中左側は本実施例に係る本刷り(通常画像形成又は通常プリント)のときの記録媒体2の乾燥処理動作を示すタイムチャートである。図4中右側は、本実施例に係る弱乾燥条件に設定された予備刷りのときの記録媒体2の乾燥処理動作及び本刷りのときの記録媒体2の乾燥処理動作を示すタイムチャートである。図4中、(a)は画像が形成された記録媒体2の有無を示す。(b)は乾燥部40の雰囲気温度(加熱ヒータ43cを通過後の雰囲気温度)である。(c)は乾燥部40の加熱ヒータ43a−43cの稼働の有無である。(d)は乾燥部40の温風ヒータ42a−42dの熱風温度である。(e)は乾燥部40の乾燥ドラム41の温度(圧胴温度)である。(f)は乾燥処理動作における動作モードである。
【0089】
また、図5中左側は比較例に係る本刷り(通常画像形成又は通常プリント)のときの記録媒体2の乾燥処理動作を示すタイムチャートである。図5中右側は、比較例に係る本刷りと同様の強乾燥条件に設定された予備刷りのときの記録媒体2の乾燥処理動作及び本刷りのときの記録媒体2の乾燥処理動作を示すタイムチャートである。図5中の(a)−(f)は図4中の(a)−(f)と同様である。
【0090】
(1)通常の本刷りの乾燥処理動作
【0091】
図4中右側に示すように、本実施例に係る本刷りのときの乾燥処理動作は以下の通りである。まず、画像形成装置1において、本刷りの画像形成動作が開始されると、乾燥部40は乾燥ドラム41の停止状態から温調状態に移行する。乾燥部40において、加熱温度調整手段(システムコントローラ102及び送風機制御部121)によって温風ヒータ42a−42dが稼働される。温風ヒータ42a−42dの温風吹出口から吹き出される温風は例えば60℃−80℃好ましくは70℃に設定される。温風ヒータ42a−42dの稼働に伴い、乾燥ドラム41の外周面(搬送面)の温度が上昇し、乾燥部40の雰囲気温度が若干遅れて上昇する。
【0092】
引き続き、乾燥部40において、加熱温度調整手段(システムコントローラ102及びヒータドライバ120)によって加熱ヒータ43a−43cが稼働される。加熱ヒータ43a−43cは、予め設定された目標温度、ここでは例えば乾燥ドラム41の外周面の温度が60℃−80℃好ましくは70℃になるように、ON動作、OFF動作を交互に繰り返す。加熱ヒータ43a−43cの稼働に伴い、乾燥ドラム41の外周面の温度が上昇する。乾燥ドラム41の外周面の温度が目標加熱温度に到達するとスタンバイモードになる。
【0093】
画像形成が開始され、プリントモードに移行すると、描画部30の画像形成部32において記録媒体2の記録面にインクが吐き出され画像が形成される。この画像が形成された記録媒体2が搬送部40に搬送される前に、サイクルアップ(スタンバイ温度からプリント温度に移行する動作)に移行し、加熱温度調整手段によって温風ヒータ42a−42dの温風温度が調整される。温風ヒータ42a−42dの温風吹出口から吹き出される温風は例えば70℃−90℃好ましくは80℃に設定される。
【0094】
引き続き、乾燥部40において、加熱温度調整手段によって加熱ヒータ43a−43cが稼働される。加熱ヒータ43a−43cは本刷りにおいて画像が形成された記録媒体2が乾燥部40に搬送される前に事前に稼働される(事前に点灯される)。従って、実際に記録媒体2に形成されたインクの加熱を行い、画像の乾燥を開始する前に乾燥ドラム41の温度、雰囲気温度を適切に調整することができる。加熱ヒータ43a−43cは、予め設定された目標温度、ここでは例えば乾燥ドラム41の外周面の温度が70℃−90℃好ましくは80℃になるように、ON動作、OFF動作を交互に繰り返す。ここで、乾燥ドラム41の外周面の温度は70℃−75℃において緩やかに上昇するが、目標温度の80℃以下であるので、加熱ヒータ43a−43cは実質的にON動作状態になる。
【0095】
ここで、加熱ヒータ43a−43cの事前の稼働制御において、温風ヒータ42a−42dの温風吹出口から吹き出される温風の温度調整は加熱温度調整手段を用いたPID制御によって行われる。PID制御は、搬送手段の温度、具体的には乾燥ドラム41の外周面の温度を測定し、その温度情報と画像の適正乾燥のために予め設定された目標加熱温度情報とに基づき加熱温度を調整する(第1の加熱温度に調整する)。温度情報の検出には温度センサ45が使用され、温度センサ45によって検出(測定)された温度情報はシステムコントローラ102に送られる。温度センサ45及びシステムコントローラ102は温度情報取得手段を構築する。目標加熱温度情報はメモリ104に予め格納されている。メモリ104は記憶手段を構築する。目標加熱温度情報は、目標加熱温度の上限値の情報(閾値)となる目標管理上限温度情報と、目標加熱温度の下限値の情報(閾値)となる目標管理下限温度とを含む。目標管理上限温度情報を超える場合には温風ヒータ42a−42dの温風温度(加熱温度)を低くする時間を増し、目標管理下限温度情報を下回る場合には温風ヒータ42a−42dの温風温度を高くする時間を増す制御が加熱温度調整手段を用いて行われる。すなわち、PID制御は、乾燥ドラム41の温度情報と、目標加熱温度情報の目標管理上限情報又は目標管理下限情報との差分に応じて重み付けがなされるフィードバック制御である。
【0096】
なお、PID制御のパラメータとして記録媒体2の搬送条件及びインク吐出条件を使用することができる。記録媒体2の搬送条件は、グロス系用紙を搬送するときの乾燥条件を、マット系用紙を搬送するときの乾燥条件に比べて弱く設定することである。グロス系用紙の膜質はマット系用紙の膜質に比べて弱い。グロス系用紙の搬送のときに乾燥条件を弱くすることによって、グロス系用紙に形成された画像の最適な乾燥処理を簡易に実現することができる。また、マット系用紙の搬送のときに乾燥条件を強くすることによって、マット系用紙に形成された画像の最適な乾燥処理を簡易に実現することができる。
【0097】
また、記録媒体の搬送条件は、157gsm未満の坪量の用紙の加熱温度の上昇の立ち上がりを、157gsm以上の坪量の用紙の加熱温度の上昇の立ち上がりに比べて遅く設定することである。157gsm未満の坪量の用紙は薄く、157gsm以上の坪量の用紙は厚い。薄い用紙の搬送のときの乾燥条件を弱くすることによって、用紙に形成された画像の最適な乾燥処理を簡易に実現することができる。また、厚い用紙の搬送のときに乾燥条件を強くすることによって、用紙に形成された画像の最適な乾燥処理を簡易に実現することができる。
【0098】
加熱ヒータ43a−43cの事前の稼働並びに温風ヒータ42a−42dのPID制御による稼働に伴い、乾燥ドラム41の外周面の温度が上昇する。乾燥ドラム41の外周面の温度が目標加熱温度に到達する。
【0099】
乾燥ドラム41の外周面が適正な温度に上昇し維持された段階(強乾燥処理状態)において、本刷りにおいて画像が形成された記録媒体2が搬送部40に搬送される。搬送部40において、乾燥ドラム41の外周面が適正な温度になっているので、記録媒体2に形成された記録剤(インク)が加熱され、画像が乾燥される。搬送部40に搬送されたすべての記録媒体2に乾燥処理が行われた後はサイクルダウンに移行し、温風ヒータ42a−42dはスタンバイモードと同等のレベルの稼働を行い、加熱ヒータ43a−43cの稼働は停止される。
【0100】
なお、図5中右側に示す比較例に係る本刷りのときの乾燥処理動作は、図4中右側に示す本実施例に係る本刷りのときの乾燥処理動作と同様であるので、説明は省略する。
【0101】
(2)実施例の予備刷り及び本刷りの乾燥処理動作
【0102】
図4中左側に示すように、本実施例に係る予備刷り及び本刷りのときの乾燥処理動作は以下の通りである。まず、画像形成装置1は図4中右側に示すスタンバイモードからプリントモードに移行する。乾燥部40において、加熱温度調整手段(システムコントローラ102及び送風機制御部121)によって温風ヒータ42a−42dが稼働中である。温風ヒータ42a−42dの温風吹出口から吹き出される温風は、本刷りのときのプリントモードの加熱温度(第1の加熱温度)に比べてここでは5℃−15℃低い例えば60℃−80℃好ましくは70℃(第2の加熱温度)に設定される。加熱温度の下限値に満たない場合には、最終的に画像のカラー色に変化が生じ、インラインセンサ66において画像を読み取ったときに正確なカラー色を認識することができない。加熱温度の上限値を超える場合には、過剰昇温を生じ、記録媒体2の変形が生じる。温風ヒータ42a−42dは第1の加熱温度において稼働中であるで、乾燥ドラム41の外周面(搬送面)の温度は安定しており、乾燥部40の雰囲気温度は同様に安定している。
【0103】
ここで、本刷りの前に、図4及び図7に示すように、まずノズルチェックのための予備刷りが開始される(S1)。ノズルチェックはノズルチェック用画像(NCP)を複数枚の記録媒体2に形成する(S2)。ここでは、特にその枚数は限定されないが、4枚の記録媒体2にノズルチェック用画像がそれぞれ形成される。
【0104】
本実施例に係る画像形成装置1の予備刷りにおいて、乾燥部40は加熱温度調整手段によって温風ヒータ42a−42dの温風吹出口から吹き出される温風は低い加熱温度である第2の加熱温度に調整されている。乾燥部40にノズルチェック用画像が形成された記録媒体2が搬送される前から一時的に加熱ヒータ43a−43cが稼働され、ノズルチェック用画像が形成された記録媒体2の乾燥処理中は加熱ヒータ43a−43cの稼働を維持する。乾燥部40に搬送された記録媒体2は記録剤を弱乾燥処理条件において加熱し、ノズルチェック用画像を乾燥する。雰囲気温度や乾燥ドラム41の温度に変化はほとんどないが、加熱ヒータ43a−43cを一時的に稼働させることによって記録剤の加熱温度を局所的に高め、ノズルチェック用画像の乾燥を促進することができる。
【0105】
乾燥部40において乾燥処理が終了した記録媒体2は定着部50に搬送され、定着処理の後に記録媒体2に形成されたノズルチェック用画像の画質の良否が判断される(S3)。ノズルチェック用画像はインラインセンサ66により読み取られ、この情報はシステムコントローラ102に送られる。システムコントローラ102においては、ノズルチェック用画像の画質の解析を行い、良好な画質であると判断した場合には、本刷りに移行する(S4)。
【0106】
一方、ノズルチェック用画像の画質が良好でないと判断した場合には、ACP初期化シーケンスに移行し(S6)、キャリブレーション用画像のための予備刷りが開始される。ACP初期化シーケンスの手順は、ここではまずノズルチェック用画像(NCP)を複数枚の記録媒体2に形成し、キャリブレーション用画像(ACP)を記録媒体2に形成する。画像形成装置1の予備刷りにおいて、乾燥部40は加熱温度調整手段によって温風ヒータ42a−42dの温風吹出口から吹き出される温風は低い加熱温度である第2の加熱温度に調整されている。乾燥部40にノズルチェック用画像が形成された記録媒体2、キャリブレーション用画像が形成された記録媒体2が搬送される前から一時的に加熱ヒータ43a−43cが稼働され、ノズルチェック用画像、キャリブレーション用画像が形成された記録媒体2の乾燥処理中は加熱ヒータ43a−43cの稼働を維持する。乾燥部40に搬送された記録媒体2は記録剤を弱乾燥処理条件において加熱し、ノズルチェック用画像、キャリブレーション用画像を乾燥する。雰囲気温度や乾燥ドラム41の温度に変化はほとんどないが、加熱ヒータ43a−43cを一時的に稼働させることによって記録剤の加熱温度を局所的に高め、ノズルチェック用画像、キャリブレーション用画像の乾燥を促進することができる。
【0107】
乾燥部40において乾燥処理が終了した記録媒体2は定着部50に搬送され、定着処理の後に記録媒体2に形成されたノズルチェック用画像、キャリブレーション用画像の画質の良否が判断される。この結果に基づきメンテナンスが行われる。メンテナンスは例えば手動において実施される。メンテナンスが終了するとステップS1に戻る。
【0108】
引き続き、乾燥部40において、加熱温度調整手段によって加熱ヒータ43a−43cが稼働される。加熱ヒータ43a−43cは本刷りにおいて画像が形成された記録媒体2が乾燥部40に搬送される前に事前に稼働される(事前に点灯される)。従って、実際に記録媒体2に形成されたインクの加熱を行い、画像の乾燥を開始する前に乾燥ドラム41の温度、雰囲気温度を適切に調整することができる。加熱ヒータ43a−43cは、予め設定された目標温度、ここでは例えば乾燥ドラム41の外周面の温度が70℃−90℃好ましくは80℃になるように、ON動作、OFF動作を交互に繰り返す。ここで、乾燥ドラム41の外周面の温度は70℃−75℃において緩やかに上昇するが、目標温度の80℃以下であるので、加熱ヒータ43a−43cは実質的にON動作状態になる。
【0109】
ここで、前述と同様に、加熱ヒータ43a−43cの事前の稼働制御において、温風ヒータ42a−42dの温風吹出口から吹き出される温風の温度調整は加熱温度調整手段を用いたPID制御によって行われる。PID制御は、搬送手段の温度、具体的には乾燥ドラム41の外周面の温度を測定し、その温度情報と画像の適正乾燥のために予め設定された目標加熱温度情報とに基づき加熱温度を調整する(第1の加熱温度に調整する)。
【0110】
加熱ヒータ43a−43cの事前の稼働並びに温風ヒータ42a−42dのPID制御による稼働に伴い、乾燥ドラム41の外周面の温度が上昇する。乾燥ドラム41の外周面の温度が目標加熱温度に到達する。
【0111】
乾燥ドラム41の外周面が適正な温度に上昇し維持された段階(強乾燥処理状態)において、本刷りにおいて画像が形成された記録媒体2が搬送部40に搬送される。搬送部40において、乾燥ドラム41の外周面が適正な温度になっているので、記録媒体2に形成された記録剤(インク)が加熱され、画像が乾燥される。
【0112】
図6(a)は本刷りの前に加熱ヒータ43a−43cに事前稼働(事前点灯)を行った場合の記録媒体2の記録面の温度と時間との関係を示す図である。図6(a)中、横軸は時間、縦軸は温度である。加熱ヒータ43a−43cを用いて主に乾燥ドラム41に事前稼働を行うことによって、符号Aを付けて示すように、本刷りの記録媒体2の乾燥処理温度を乾燥処理初期の段階から一定にすることができる。従って、適正かつ安定な乾燥処理温度を得ることができる。
【0113】
図6(b)は本刷りの前に加熱ヒータ43a−43cに事前稼働を行っていない場合の記録媒体2の記録面の温度と時間との関係を示す図である。図6(b)中、横軸は時間、縦軸は温度である。本刷りの記録媒体2の乾燥処理温度は乾燥処理初期の段階から約10℃近く低くなり、符号Bを付けて示すように、なかなか乾燥処理温度を上昇することができない。
【0114】
搬送部40に搬送されたすべての記録媒体2に乾燥処理が行われた後はサイクルダウンに移行し、温風ヒータ42a−42dはスタンバイモードと同等のレベルの稼働を行い、加熱ヒータ43a−43cの稼働は停止される。
【0115】
本刷りが終了すると、メンテナンスが例えば手動において実施される(S5)。
【0116】
(3)比較例の予備刷り及び本刷りの乾燥処理動作
【0117】
図5中左側に示すように、比較例に係る予備刷り及び本刷りのときの乾燥処理動作は以下の通りである。まず、画像形成装置1は図5中右側に示すスタンバイモードからプリントモードに移行する。乾燥部40において、加熱温度調整手段によって温風ヒータ42a−42dの温風吹出口から吹き出される温風は、本刷りのときのプリントモードの加熱温度(第1の加熱温度)と同等の例えば80℃(第1の加熱温度)に設定される。この温風ヒータ42a−42dの加熱及び余熱によって乾燥ドラム41の外周面は過剰昇温に至り、乾燥部40の雰囲気温度は上昇する。
【0118】
このような過剰昇温は、記録媒体2にカールやカックルを発生させるので、安定な乾燥処理を実施することが難しい。
【0119】
<実施例の特徴>
【0120】
以上説明したように、本実施例に係る画像形成装置1においては、加熱温度調整手段は加熱手段の加熱温度を第1の加熱温度とそれよりも低い第2の加熱温度とに調整する。加熱手段は記録媒体2において記録剤を加熱し画像を乾燥させる。本刷りにおいて、加熱手段の第1の加熱温度によって記録剤が加熱され画像が乾燥される。予備刷りにおいて、第1の加熱温度に比べて低い第2の加熱温度によって記録剤が加熱され画像が乾燥される。第2の加熱温度が低く設定されているので、予備刷りの加熱乾燥期間中の温度上昇を抑制することができる。従って、過剰昇温は生じないので、記録媒体2の変形、陽炎不具合等を抑制することができ、適切な乾燥処理を実現することができる。
【0121】
また、画像形成装置1においては、加熱手段は加熱ヒータ43a−43cを備え、加熱温度調整手段によって本刷りにおいて記録剤を加熱し画像を乾燥させる前に加熱ヒータ43a−43cを稼働することができる。加熱ヒータ43a−43cの稼働に伴い、本刷りにおいて、記録剤を加熱し画像を乾燥させる前に最適な乾燥環境を生成することができるので、最適な乾燥処理を実現することができる。
【0122】
また、画像形成装置1においては、予備刷りにおいて記録剤を加熱し画像を乾燥させた後にそれとは別に加熱ヒータ43a−43cを稼働させ、本刷りにおいて、記録剤を加熱し画像を乾燥させる前に最適な乾燥環境を生成することができるので、最適な乾燥処理を実現することができる。
【0123】
また、画像形成装置1においては、予備刷りにおいて記録剤を加熱し画像を乾燥させる乾燥期間中は低い第2の加熱温度に設定されている。この乾燥期間中に加熱ヒータ43a−43cを一時的に稼働させることによって過剰昇温させることなく予備刷りにおいて適切な乾燥処理を行うことができる。
【0124】
また、画像形成装置1においては、加熱手段は温風ヒータ42a−42dを備え、この温風ヒータ42a−42dの温風の設定温度が加熱温度調整手段によって第1の加熱温度と第2の加熱温度とに設定される。予備刷りにおいて記録剤を加熱し画像を乾燥させるには、温風の設定温度が低く調整された第2の加熱温度が使用される。従って、この乾燥期間中の温度上昇を抑制することができるので、過剰昇温を抑制することができる。
【0125】
また、画像形成装置1においては、加熱手段の第1の加熱温度が60度〜80度に調整されるので、本刷りにおいて画像には短時間内に最適な乾燥処理を行うことができる。加えて、加熱手段の第2の加熱温度が第1の加熱温度に対して5度〜15度低く調整されるので、予備刷りにおいて過剰な温度上昇を伴わずに最適な乾燥処理を行うことができる。
【0126】
また、画像形成装置1においては、記録媒体2にインクを吐出し画像を形成する画像形成部32を備え、インクジェット型画像形成装置が構築され、このインクジェット型画像形成装置においてインクを加熱し画像を乾燥させ、最適な乾燥処理を行うことができる。
【0127】
また、画像形成装置1においては、キャリブレーションのための予備刷りと同様に、ノズルチェックのための予備刷りは第1の加熱温度に比べて低い第2の加熱温度によってインクを加熱し画像の乾燥を行う。キャリブレーションのための予備刷り並びにノズルチェックのための予備刷りにおいて乾燥期間中の温度上昇を抑制することができるので、過剰昇温が生じない。従って、過剰昇温に伴う記録媒体2の変形、陽炎不具合等を抑制することができ、適切な乾燥処理を実現することができる。
【0128】
また、画像形成装置1においては、少なくとも渡し胴(第1の渡し胴)73、乾燥ドラム(圧胴)41及び渡し胴(第2の渡し胴)75を備えて搬送手段が構築される。乾燥ドラム41に搬送される記録媒体2において、加熱手段によってインクを加熱して画像の乾燥が行われる。キャリブレーションのための予備刷り並びにノズルチェックのための予備刷りにおいて、記録媒体は乾燥ドラム41によって搬送され、加熱手段の第2の加熱温度によってインクが加熱され、画像の乾燥が行われる。この乾燥期間中の加熱や乾燥期間経過後の余熱は乾燥ドラム41だけでなく渡し胴73並びに渡し胴75にも伝わる。第2の加熱温度が低く調整されているので、乾燥ドラム41、渡し胴72並びに渡し胴75の過剰昇温を抑制することができる。従って、乾燥ドラム41、渡し胴72並びに渡し胴75において、過剰昇温に伴う記録媒体の変形、陽炎不具合等を抑制することができ、適切な乾燥処理を実現することができる。
【0129】
また、画像形成装置1においては、温度情報取得手段を用いて搬送温度の温度情報を取得することができ、記憶手段を用いて目標加熱温度情報を格納することができる。加熱ヒータ43a−43cの稼働に併せて温風ヒータ42a−42dが稼働しても、加熱温度調整手段はPID制御によって温度情報と目標加熱温度情報とに基づき適正な第1の加熱温度に調整しているので、最適な乾燥処理を行うことができる。
【0130】
<その他の実施例>
【0131】
以上本発明を実施例に基づき説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形することは勿論である。例えば、インクジェット型画像形成装置において、印刷ヘッド32K等にインク貯留タンクから直接インクを供給するインク供給方式、インクを循環させながら印刷ヘッド32K等にインクを供給するインク循環方式等のいずれにも本発明を適用することができる。
【0132】
また、画像形成装置としてオフセット印刷機に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0133】
1 画像形成装置
2 記録媒体
10 給紙部
20 処理液付与部
30 描画部
40 乾燥部
41 乾燥ドラム
42a−42d 温風ヒータ
43a−43c 加熱ヒータ
45 温度センサ
50 定着部
60 排紙部
70、72、74 中間搬送部
71、73、75 渡し胴
102 システムコントローラ
104 メモリ
105 ROM
120 ヒートドライバ
121 送風制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録剤により画像が形成された記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送される前記記録媒体において前記記録剤を加熱し前記画像を乾燥させる加熱手段と、
本刷りにおいて前記記録剤を加熱し前記画像を乾燥させる第1の加熱温度に対して、キャリブレーションのための予備刷りにおいて前記記録剤を加熱し前記画像を乾燥させる第2の加熱温度を低く調整する加熱温度調整手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記加熱手段は前記記録剤を加熱し前記画像を乾燥させる加熱ヒータを備え、
前記加熱温度調整手段は、前記本刷りにおいて前記記録剤を加熱し前記画像を乾燥させる前に前記加熱ヒータを稼働させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記加熱温度調整手段は、前記予備刷りにおいて前記記録剤を加熱し前記画像を乾燥させた後に前記加熱ヒータを稼働させていることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記加熱温度調整手段は、前記予備刷りにおいて前記記録剤を加熱し前記画像を乾燥させる期間中に前記加熱ヒータを一時的に稼働させていることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記加熱手段は前記記録剤に温風を吹付け前記画像を乾燥させる温風ヒータを備え、
前記加熱温度調整手段は前記温風ヒータの温風の設定温度を前記第1の加熱温度と前記第2の加熱温度とに調整することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1の加熱温度は60度〜80度に調整され、第2の加熱温度は前記第1の加熱温度に対して5度〜15度低く調整されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記搬送手段の温度情報を取得する温度情報取得手段と、
前記記録媒体に形成された画像の適正乾燥のために設定された目標加熱温度情報を格納する記憶手段と、を備え、
前記加熱温度調整手段は、前記加熱手段の前記加熱ヒータを稼働するとともに、前記温度情報取得手段を用いて取得した前記搬送手段の温度情報と前記記憶手段に記憶された目標加熱温度情報とに基づくPID制御によって前記第1の加熱温度を調整し、前記温風ヒータを稼働することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記記録剤はインクであり、
前記記録媒体に記録ヘッドから前記インクを吐出して画像を形成する画像形成部を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記加熱温度調整手段は、ノズルチェックのための予備刷りにおいて前記第2の加熱温度によって前記インクを加熱し画像を乾燥させることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記搬送手段は、前記記録媒体を順次受け渡して搬送する第1の渡し胴、圧胴及び第2の渡し胴を備え、
前記加熱手段は、前記圧胴に搬送される記録媒体において前記インクを加熱し画像を乾燥させることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記加熱温度調整手段は、前記記録媒体の搬送条件及びインク吐出条件に基づきPID制御を行うことを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記記録媒体の搬送条件は、グロス系用紙を搬送するときの乾燥条件を、マット系用紙を搬送するときの乾燥条件に比べて弱く設定することである請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記記録媒体の搬送条件は、157gsm未満の坪量の用紙の加熱温度の上昇の立ち上がりを、157gsm以上の坪量の用紙の加熱温度の上昇の立ち上がりに比べて遅く設定することである請求項11又は請求項12に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−52609(P2013−52609A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192948(P2011−192948)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】