説明

画像形成装置

【課題】新たな加熱機構や複雑なメカ構造を要することなく、全ヘッドアレイ間の温度を均一にして、画質劣化を防止する。
【解決手段】記録媒体に液滴を吐出するための複数の液滴吐出ヘッドが千鳥状にアレイベース上に配列されたヘッドアレイと、複数の前記ヘッドアレイが色毎に記録媒体搬送方向と直交するように離間して配置されて構成されるヘッドアレイユニットと、前記液滴吐出ヘッドに液滴を吐出させるための駆動信号を供給する液滴吐出ヘッド駆動回路とを備え、前記液滴吐出ヘッド駆動回路と前記アレイベースとを熱結合することによって、前記液滴吐出ヘッド駆動回路の駆動により発生する熱エネルギを前記ヘッドアレイの温度調整に使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数個の液滴吐出ヘッドを千鳥状に配設することによりヘッドアレイを構成し、このように構成されたヘッドアレイを記録媒体搬送方向に対し直交するように色毎に離間して複数配置することにより、高速に画像形成を実現するラインヘッドアレイ構成の画像形成装置が知られている(特許文献1等参照)。
【0003】
図1および図2は一般的なヘッドアレイ51の構成例を示す図であり、図1は斜視図、図2は平面図を示している。
【0004】
図1および図2において、液滴吐出ヘッド501は、液滴ヘッド取付ネジ503によりアレイベース502に熱結合され、開口部504から液滴吐出ヘッド501の下面が突出するように取り付けられている。アレイベース502の開口部504には、バネ505が取り付けられており、液滴吐出ヘッド501はバネ505にてアレイベース502面内の縦方向および横方向にバネ付勢される。これは液滴吐出ヘッド501の温度膨張による伸縮を吸収するためであり、液滴吐出ヘッド501が温度変化でバネ505の付勢方向に伸縮可能とすることで、熱膨張による熱破壊が防止される。なお、1つの液滴吐出ヘッド501のみを図示してあるが、全ての開口部504に液滴吐出ヘッド501が同様に取り付けられる。
【0005】
図3は複数のヘッドアレイ51から構成される一般的なヘッドアレイユニット5の構成例を示す図である。
【0006】
図3において、ヘッドアレイ51は、ヘッドアレイ取付フレーム507にアレイベース取付ネジ509にて一端が取り付けられ、他端はヘッドアレイ取付フレーム507に取り付けられているバネ508により、バネ付勢される。これはアレイベース502の温度膨張による伸縮を吸収するためであり、アレイベース502が温度変化でバネ508の方向に伸縮可能とすることで、熱膨張による熱破壊が防止される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したラインヘッドアレイ構成の画像形成装置は1ラインの印刷が同時に行えるため高速に画像形成が行えるものであるが、ヘッドアレイの温度差に起因する着弾位置(インクの液滴が用紙等の記録媒体に付着する位置)のズレにより画質劣化が生じるという問題があった。
【0008】
例えば、ユーザがブラック(Bk)のヘッドアレイのみを使用して文字のみを印刷使用する場合には、ブラックのヘッドアレイのみが発熱し、他のフルカラー(FC)用の印刷に使用しないヘッドアレイは発熱がない。また、印刷に使用しないヘッドアレイは、ノズル面のインク乾燥防止の理由から、所定の維持回復機講位置に移動してキャッピングされているため、温度差はより顕著となる。
【0009】
そのため、その後にユーザがブラックからフルカラーの画像を形成しようとすると、ブラックのヘッドアレイは、液滴吐出ヘッドの発熱によって熱膨張しており、今まで使用していなかったフルカラー用のヘッドアレイとの間で熱膨張差が発生し、色間の着弾位置がズレてしまい、高品位な画像が印刷開始時に得られない。
【0010】
図4はヘッドアレイ取付フレーム507に取り付けられた2つのヘッドアレイ51間の温度(熱膨張)が異なる場合を示した模式図である。図4では、下側のヘッドアレイ51の液滴吐出ヘッド501のみが駆動されて発熱し、下側のヘッドアレイ51の温度が上側のヘッドアレイ51より高くなり、熱膨張差が発生している場合を示している。下側のヘッドアレイ51は上側のヘッドアレイ51より熱膨張しており、図の左右方向および上下方向とも、図示した寸法分だけ液滴吐出ヘッド501とアレイベース502の取り付け位置が上側と下側のヘッドアレイ51の間でズレるため、結果として着弾位置がズレる。液滴吐出ヘッド501とアレイベース502は熱結合されて同じ温度となるため、液滴吐出ヘッド501のズレとアレイベース502のズレが加わったズレが着弾位置に生じる。
【0011】
図5は記録媒体上の着弾位置の例を示す図である。
【0012】
図5(A)は、図3に示したように、上側と下側のヘッドアレイ51にズレが生じていない場合の着弾位置を示しており、実線は上側のヘッドアレイ51の吐出液滴、破線は下側のヘッドアレイ51の吐出液滴をそれぞれ示している。ズレが生じていない場合、上側と下側のヘッドアレイ51の着弾位置は一致し、画質劣化は生じない。
【0013】
図5(B)は、図4に示したように、上側と下側のヘッドアレイ51に温度差が生じ、下側のヘッドアレイ51が熱膨張してズレが生じている場合の着弾位置を示している。ズレが生じている場合、上側と下側のヘッドアレイ51の着弾位置にズレが生じ、画質劣化が生じる。
【0014】
このような問題を解決するには、各ヘッドアレイ間の温度を常に均一にしておく必要がある。具体的には、例えばヒータ等を新規に配置して、各ヘッドアレイの温度が均一になるように調整したり、ヘッドアレイ間を熱伝導部材で連結させて各ヘッドアレイ間の温度を均一にしたりする方法が考えられる。
【0015】
しかし、ヘッドアレイ毎にヒータ等を配置することは、コストアップにつながる。また、ヘッドアレイが移動(搬送経路上から一旦退避した位置に移動してキャッピングするため、印刷位置から上下方向や左右方向に移動)する前提で、ヘッドアレイ間を熱伝導部材で連結させようとすると、複雑なメカ構造となり、連結する熱伝導部材が可動するための空間も必要となる。
【0016】
一方、特許文献1には、ヘッドアレイ間の熱膨張を均一化する目的で、ヘッドアレイ間を熱結合部材で結合する構成が開示されている。しかし、色毎のヘッドアレイ自体が移動機構を持たない構成であれば、熱伝導部材での連結が簡易にできるが、色毎に独立に構成されたヘッドアレイが離間して配置され、かつヘッドアレイ自体が移動する場合については考慮されておらず、上述した問題を解決することはできない。
【0017】
本発明は上記の従来の問題点に鑑み提案されたものであり、その目的とするところは、新たな加熱機構や複雑なメカ構造を要することなく、全ヘッドアレイ間の温度を均一にして、画質劣化を防止することのできる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するため、本発明にあっては、記録媒体に液滴を吐出するための複数の液滴吐出ヘッドが千鳥状にアレイベース上に配列されたヘッドアレイと、複数の前記ヘッドアレイが色毎に記録媒体搬送方向と直交するように離間して配置されて構成されるヘッドアレイユニットと、前記液滴吐出ヘッドに液滴を吐出させるための駆動信号を供給する液滴吐出ヘッド駆動回路とを備え、前記液滴吐出ヘッド駆動回路と前記アレイベースとを熱結合することによって、前記液滴吐出ヘッド駆動回路の駆動により発生する熱エネルギを前記ヘッドアレイの温度調整に使用するようにしている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の画像形成装置にあっては、液滴吐出ヘッド用の駆動回路をアレイベースと熱結合し、駆動回路の駆動により発生する熱エネルギをヘッドアレイの温度調整に使用することにより、新たな加熱機構や複雑なメカ構造を要することなく、全ヘッドアレイ間の温度を均一にして、画質劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】一般的なヘッドアレイの構成例を示す図(その1)である。
【図2】一般的なヘッドアレイの構成例を示す図(その2)である。
【図3】一般的なヘッドアレイユニットの構成例を示す図(その1)である。
【図4】一般的なヘッドアレイユニットの構成例を示す図(その2)である。
【図5】記録媒体上の着弾位置の例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかる画像形成装置の構成例を示す図(その1)である。
【図7】本発明の一実施形態にかかる画像形成装置の構成例を示す図(その2)である。
【図8】ヘッドアレイユニットの構成例を示す図である。
【図9】ヘッドアレイ周辺の構成例を示す図(その1)である。
【図10】ヘッドアレイ周辺の構成例を示す図(その2)である。
【図11】画像形成装置の制御系の構成例を示す図である。
【図12】ヘッドドライバ周辺の構成例を示す図である。
【図13】液滴吐出ヘッド駆動回路周辺の構成例を示す図である。
【図14】駆動波形の例を示す図である。
【図15】実施形態における温度調整にかかる処理例を示すフローチャート(その1)である。
【図16】実施形態における温度調整にかかる処理例を示すフローチャート(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態につき説明する。
【0022】
<全体構成>
図6および図7は本発明の一実施形態にかかる画像形成装置の構成例を示す図であり、図6は正面図、図7は平面図である。
【0023】
図6および図7において、図示の画像形成装置はライン型画像形成装置であり、装置本体1と、用紙Pを積載し給紙する給紙トレイ2と、印刷された用紙Pを排紙積載する排紙トレイ3と、用紙Pを給紙トレイ2から排紙トレイ3まで搬送する搬送ユニット4と、搬送ユニット4によって搬送される用紙Pに液滴を吐出し印刷するヘッドアレイユニット5と、印刷終了後または所要のタイミングでヘッドアレイユニット5の各ヘッドの維持回復を行う維持回復機構であるクリーニング装置6とを備えている。
【0024】
装置本体1は、図示しない前後側板およびステーなどで構成されており、給紙トレイ2上に積載されている用紙Pは、分離ローラ21および給紙ローラ22によって1枚ずつ搬送ユニット4に給紙される。搬送ユニット4は、搬送駆動ローラ41aと搬送従動ローラ41bと、これらの搬送駆動ローラ41a、搬送従動ローラ41b間に掛け回された無端状の搬送ベルト43とを備えている。この搬送ベルト43の表面には複数の図示しない孔が形成されており、搬送ベルト43の下部には用紙Pを吸引する吸引ファン44が配置されている。
【0025】
また、搬送駆動ローラ41a、搬送従動ローラ41bの上部には、それぞれ搬送ガイドローラ42a、42bが図示しないガイドに保持されて、自重にて搬送ベルト43に当接している。搬送駆動ローラ41aは図示しないモータにより回転されることで搬送ベルト43が周回移動し、用紙Pは搬送ベルト43上に吸引ファン44により吸い付けられ、搬送ベルト43の周回移動によって搬送される。なお、搬送従動ローラ41b、搬送ガイドローラ42a、42bは搬送ベルト43に従動して回転する。搬送ユニット4の上部には用紙Pに印刷する液滴を吐出するヘッドアレイで構成されるヘッドアレイユニット5が矢印A方向に移動可能に配置されている。また、このヘッドアレイユニット5は、維持回復動作時(クリーニング時)にはクリーニング装置6上方までスライド移動する。
【0026】
ヘッドアレイユニット5は、液滴を吐出する千鳥状に配列された6個の液滴吐出ヘッドを含む4つのヘッドアレイ51a〜51dが用紙Pの搬送方向と直角に用紙Pのほぼ全幅にわたって配置されて構成されている。すなわち、用紙搬送方向上流側から、第1列のヘッドアレイ51a、第2列のヘッドアレイ51b、第3列のヘッドアレイ51c、第4列のヘッドアレイ51dが配置されている。なお、1色当りの液滴吐出ヘッドは6個にて1ラインを構成しているが、6個に限定されるものではない。
【0027】
ヘッドアレイ51a〜51dは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の液滴を吐出させるようにして、1ライン分の画像を形成できるようにしている。ヘッドアレイユニット5は、各ヘッドアレイ51a〜51dの上方に、各ヘッドアレイ51a〜51dに所要の色のインクを供給する分配器であるディストリビュータ52a〜52dが配置され、ディストリビュータ52a〜52dとヘッドアレイ51a〜51dの間は供給チューブ53にて接続されている。ディストリビュータ52a〜52dの上流側にはサブタンク54が配置され、水頭差によりインクがヘッドアレイ51a〜51dの液滴吐出ヘッドに供給される。さらに、サブタンク54の上流側には図示しないインクメインタンクが配置され、いずれも供給チューブを介してインクが供給される。
【0028】
搬送ユニット4の下流側には用紙Pを排紙トレイ3に排紙する搬送ガイド部7が設けられている。搬送ガイド部7にて案内されて搬送される用紙Pは排紙トレイ3に排紙される。排紙トレイ3は、用紙Pの幅方向を規制する対のサイドフェンス31と用紙Pの先端を規制するエンドフェンス32を備えている。
【0029】
維持回復機構としてのクリーニング装置6は、ヘッドアレイユニット5の第1ないし第4列の各ヘッドアレイ51a〜51dに対応して、それぞれのクリーニング手段61a〜61dが千鳥状に配置されている。なお、クリーニング装置6の各部の表記についてもヘッドアレイユニット5の場合と同様とする。それぞれのクリーニング手段61a〜61dの下部にはヘッドアレイ51a〜51dの液滴吐出ヘッドからインクを吸引するための吸引ポンプ(図示しない)が配置されている。
【0030】
また、この画像形成装置においては、印刷終了後、液滴を吐出するヘッドアレイ51a〜51dの液滴吐出ヘッドをクリーニング手段61a〜61dでキャッピングした状態でノズルからインクを吸引する場合、あるいは、ヘッドアレイ51a〜51dの液滴吐出ヘッドのノズル面に付着したインクをクリーニング手段61a〜61dで清掃する場合は、印刷停止後、ヘッドアレイ51a〜51dはそれぞれ独立に、図6の矢印Aの方向に動いた後、図7の矢印Bの方向に移動してクリーニング装置6上方で停止され、クリーニング手段61a〜61dが上昇して各ヘッドアレイ51a〜51dの液滴吐出ヘッドのクリーニング動作(維持回復動作)やキャッピング動作に移行する。要は、印刷に使用するヘッドアレイ(ヘッドアレイ51a〜51dのうちの一部もしくは全部)のみ搬送ベルト43上に配置され、印刷に使用しないヘッドアレイは維持回復機講に移動してキャッピングされる。
【0031】
図8は複数のヘッドアレイ51から構成されるヘッドアレイユニット5の構成例を示す図であり、平面図で示したものである。
【0032】
図9はヘッドアレイユニット5を構成する個々のヘッドアレイ51周辺の構成例を示す図であり、図8に示す一方のヘッドアレイ51を縦断面図で示したものである。
【0033】
図8および図9において、ヘッドアレイ51の構成は図1および図2に示したものと同様である。
【0034】
図8および図9では、液滴吐出ヘッド駆動基板510の液滴吐出ヘッド駆動回路放熱板511は、アレイベース502に放熱板取付ネジ514によって、液滴吐出ヘッド駆動回路放熱板511とアレイベース502が接触して取り付けられている。液滴吐出ヘッド駆動回路放熱板511には、液滴吐出ヘッド501を駆動させるための液滴吐出ヘッド駆動回路512が駆動回路取付ネジ515にて熱結合されて取り付けられている。液滴吐出ヘッド駆動回路512は、具体的には、パワートランジスタにてプッシュ−プル回路を構成する回路部である。液滴吐出ヘッド駆動回路放熱板511はこのプッシュ−プル回路の放熱用となる。
【0035】
図10はヘッドアレイ51周辺の他の構成例を示す図であり、図9と同じく縦断面図で示したものである。
【0036】
図10では、熱抵抗部材516を介して液滴吐出ヘッド駆動回路放熱板511とアレイベース502を放熱板取付ネジ514にて取り付けることにより、熱抵抗部材516の材質により、熱結合係数を制御し、ヘッドアレイ51の温度上昇の飽和を抑制するようにしている。熱抵抗部材516の材質としては、低熱膨張係数で熱伝導率が低い、例えばインバー材等を使用する。
【0037】
なお、図8〜図10において、アレイベース502または液滴吐出ヘッド501には、温度情報取得手段としての温度センサが装着されている。この温度センサはサーミスタなどの温度検出素子からなる。温度センサは、ヘッドアレイ温度または液滴吐出ヘッド温度を計測し、A/D変換(アナログ信号からデジタル信号へ変換)され、後述する制御系に温度情報を伝える。温度センサの設置箇所は、アレイベース502または液滴吐出ヘッド501の近傍が望ましいが、温度センサからの情報により、アレイベース502や液滴吐出ヘッド501の温度の推定が可能であれば、温度センサの設置箇所はこれに限らない。
【0038】
<全体制御概要>
図11は画像形成装置の制御系の構成例を示す図である。
【0039】
図11において、制御部100は、画像形成装置の全体の制御を司るCPU101と、CPU101が実行するプログラムその他の固定データを格納するROM102と、画像データ等を一時格納するRAM103と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するためのNVRAM(不揮発性メモリ)104と、装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC105とを備えている。なお、ASIC105については、「高速機」に分類される画像形成装置では、画像処理の一部を担当する機能が付与されている場合もある。
【0040】
また、制御部100は、ホスト側とのデータや信号の送受を行うためのホストI/F106と、ヘッドアレイユニット5を駆動制御するためのヘッド駆動制御部107およびヘッドドライバ108と、ヘッドアレイユニット移動モータ109を駆動するためのヘッドアレイユニット移動モータ駆動部110と、搬送ベルト43の搬送ベルト移動モータ111を駆動するための搬送ベルト移動モータ駆動部112と、吸引ファン44の吸引ファンモータ116を駆動する吸引ファンモータ駆動部117と、環境温度および/または環境湿度を検出する環境センサ113や用紙センサ200、位相センサ201、温度センサ202(アレイベース502または液滴吐出ヘッド501に装着される温度センサ)、その他の図示しない各種センサからの検知信号を入力するためのI/O114などを備えている。また、制御部100には、この装置に必要な情報の入力および表示を行うための操作パネル115が接続されている。
【0041】
ここで、制御部100は、パーソナルコンピュータ(PC)等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト側からの画像データを含む印刷データ等をケーブルあるいはネットワークを介してホストI/F106で受信する。
【0042】
そして、CPU101は、ホストI/F106に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC105にてデータの並び替え処理等(場合によっては、後述する画像処理の一部)を行ってヘッド駆動制御部107に画像データを転送する。なお、画像出力するための印刷データのビットマップデータ(印刷ラスタデータ)への変換は、例えば、ROM102にフォントデータを格納して行ってもよいし、ホスト側のプリンタドライバで画像データをビットマップデータに展開し印刷データのビットマップデータ(印刷ラスタデータ)を作成した上で、その印刷ラスタデータをこの装置に転送するようにしてもよい。
【0043】
ヘッド駆動制御部107は、印刷ラスタデータを受け取ると、このドットパターンデータ(印刷ラスタデータ)を、クロック信号に同期して、ヘッドドライバ108にシリアルデータで送出し、また所定のタイミングでラッチ信号をヘッドドライバ108に送出する。
【0044】
ヘッド駆動制御部107は、駆動波形(駆動信号)のパターンデータを格納したROM(ROM102で構成することもできる。)と、このROMから読出される駆動波形のデータをD/A変換するD/A変換器を含む波形生成回路およびアンプ等で構成される駆動波形発生回路を含む。
【0045】
また、ヘッドドライバ108は、ヘッド駆動制御部107からのクロック信号および画像データであるシリアルデータを入力するシフトレジスタと、このシフトレジスタのレジスト値をヘッド駆動制御部107からのラッチ信号でラッチするラッチ回路と、このラッチ回路の出力値をレベル変化するレベル変換回路(レベルシフタ)と、このレベルシフタでオン/オフが制御されるアナログスイッチアレイ(スイッチ手段)等を含み、アナログスイッチアレイのオン/オフを制御することで駆動波形に含まれる所要の駆動波形を選択的にヘッドアレイ51a〜51dのアクチュエータ手段に印加して液滴吐出ヘッドを駆動し、画像データを印刷してドットパターンラインを形成する。
【0046】
ヘッド駆動制御部107は、1印刷周期内に複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形(共通駆動波形)を生成して出力する駆動波形生成部と、印刷画像に応じた2ビットの画像データ(階調信号0、1)と、クロック信号、ラッチ信号(LAT)、滴制御信号(M0〜M3)を出力するデータ転送部とを備えている。なお、滴制御信号(M0〜M3)は、ヘッドドライバ108の後述するスイッチ手段であるアナログスイッチの開閉を滴毎に指示する信号であり、共通駆動波形の印刷周期に合わせて選択すべき波形でHレベル(ON)に状態遷移し、非選択時にはLレベル(OFF)に状態遷移する。
【0047】
<液滴吐出ヘッド制御>
図12はヘッドドライバ108周辺の構成例を示す図である。
【0048】
図12において、ヘッドドライバ108は、データ転送部402からの転送クロック(シフトクロック)およびシリアル画像データ(階調データ:2ビット/CH)を入力するシフトレジスタ411と、このシフトレジスタ411の各レジスト値をデータ転送部402からのラッチ信号によってラッチするためのラッチ回路412と、階調データと滴制御信号M0〜M3をデコードして結果を出力するデコーダ413と、このデコーダ413のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ415が動作可能なレベルへとレベル変換するレベルシフタ414と、このレベルシフタ414を介して与えられるデコーダ413の出力でオン/オフ(開閉)されるアナログスイッチ415と、このアナログスイッチ415を通過した駆動波形生成部401からの共通駆動信号を増幅する電圧増幅部416とを備えている。
【0049】
電圧増幅部416の出力は、ヘッドアレイユニット5の液滴吐出ヘッド駆動回路512に与えられ、この液滴吐出ヘッド駆動回路512の出力は液滴吐出ヘッド501内の圧電素子121の選択電極(個別電極)に接続され、駆動波形生成部401からの共通駆動波形が入力される。したがって、シリアル転送された画像データ(階調データ)と滴制御信号M0〜M3をデコーダ413でデコードした結果に応じてアナログスイッチ415がオンにすることにより、共通駆動波形を構成する所要の駆動信号が通過して(選択されて)圧電素子121に印加される。
【0050】
図13は液滴吐出ヘッド駆動回路512周辺の構成例を示す図である。
【0051】
図13において、電圧増幅部416は回路上で設定されている値に電圧を増幅する。液滴吐出ヘッド駆動回路512はダーリントン接続されたトランジスタのプッシュ−プル接続により電流増幅して圧電素子121を駆動する。
【0052】
<駆動波形>
図14は駆動波形の例を示す図である。
【0053】
画素密度と用紙搬送速度によって決まる1駆動周期(1印刷周期)内に、時系列で、液滴を吐出させないノズルメニスカスを微駆動する非吐出駆動信号P0および画像形成に使用する吐出量の液滴を吐出させる複数の第1吐出駆動信号(駆動パルス)P1〜P3を含む第1駆動波形Pdと、画像形成に使用する最小の吐出量よりも小さい吐出量の液滴を吐出させる第2吐出駆動信号(駆動パルス、第2駆動波形)Pkとで構成される駆動波形を生成して出力する。なお、第2駆動波形は第1駆動波形と同様に複数の第2吐出駆動信号で構成することもできる。各駆動信号P0〜P3、Pkは、基準電位Veから立ち下がる波形要素と、立下り後の状態から立ち上がる波形要素などで構成される。駆動信号の電位Vが基準電位Veから立ち下がる波形要素は、これによって図示しない圧電素子が収縮して図示しない加圧液室の容積が膨張する引き込み波形要素である。また、立下り後の状態から立ち上がる波形要素は、これによって圧電素子が伸長して加圧液室の容積が収縮する加圧波形要素である。つまり、ここでは、第1駆動波形Pdに含まれる駆動信号P0は液滴を吐出させないでメニスカス振動を与える駆動波形であり、第1、第2駆動波形に含まれる駆動信号P1〜P3、Pkは、液滴吐出ヘッドのノズルが連通する液室を膨張させた後収縮させることで液滴を吐出させる駆動波形としている。
【0054】
そして、データ転送部402からの図中に示すような滴制御信号M0〜M3によって、例えば微駆動を行うときには滴制御信号M0で駆動信号P0を選択し(Lレベルで選択される。)、小滴(小ドット)を形成するときには滴制御信号M1で駆動信号P1を選択し、大滴(大ドット)を形成するときには滴制御信号M2で駆動信号P1ないしP3を選択し、空吐出を行わせるときには滴制御信号M3で駆動信号Pkを選択して、それぞれ液滴吐出ヘッドの圧電素子に印加させるようにする。なお、ここでは小滴と大滴の2種類のサイズとしているが、例えば、両者の間の大きさの中滴も吐出させるようにすることもできる。
【0055】
図15は上記の実施形態における温度調整にかかる処理例を示すフローチャートである。
【0056】
図15において、印刷開始指令(ステップS11)を受けた後、アレイベース502近傍に配置された温度センサ202によって、各ヘッドアレイ51の温度情報を取得する(ステップS12)。
【0057】
CPU101は、各ヘッドアレイ51の温度情報から、最大温度になっているヘッドアレイ51の温度を基準温度に設定して(ステップS13)、最大温度になっているヘッドアレイ51以外の液滴吐出ヘッド駆動回路512を動作させて、所定時間加熱する(ステップS14)。この際、液滴吐出ヘッド駆動回路512を駆動するのに使用する駆動波形は、液滴吐出ヘッド501から液滴を吐出しない微駆動波形を使用する。
【0058】
所定時間経過後、再度、各ヘッドアレイ51の温度情報を取得し、設定した基準温度に達して温度差が無くなれば(ステップS15のY)、液滴吐出ヘッド駆動回路512の動作を停止させて(ステップS16)、印刷動作を開始する(ステップS17)。
【0059】
図16は上記の実施形態における温度調整にかかる他の処理例を示すフローチャートである。
【0060】
図16において、印刷に使用しているヘッドアレイ51の印刷中には、CPU101は、規定時間毎に温度情報を取得し(ステップS21)、各ヘッドアレイ51の温度情報を常時監視する(ステップS22)。各ヘッドアレイ51間の温度差が許容範囲内であれば(ステップS22のY)、印刷動作を継続する(ステップS23)。
【0061】
各ヘッドアレイ51間で許容範囲を超える温度差が生じた場合には(ステップS22のN)、印刷に使用しているヘッドアレイ51の温度を基準温度に設定する(ステップS24)。
【0062】
次いで、他の印刷に使用していないヘッドアレイ51の液滴吐出ヘッド駆動回路512を駆動させて加熱する(ステップS25)。この際、液滴吐出ヘッド駆動回路512を駆動するのに使用する駆動波形は、液滴吐出ヘッド501から液滴を吐出しない微駆動波形を使用する。
【0063】
次いで、設定した基準温度と加熱したアレイベース温度の比較を行い(ステップS26)、基準温度との差が許容範囲内であるか判断する(ステップS27)。許容範囲内でない場合は(ステップS27のN)、液滴吐出ヘッド駆動回路512の駆動による加熱(ステップS25)を継続する。
【0064】
基準温度との差が許容範囲内である場合は(ステップS27のY)、印刷に使用していないヘッドアレイ51の駆動を停止する(ステップS28)。
【0065】
これにより、印刷に使用しているヘッドアレイ51と印刷に使用していないヘッドアレイ51間の温度が同じになるように温度調整される。
【0066】
従って、直ぐにユーザが別画像を印刷して、印刷に使用していなかったヘッドアレイ51を使用する場合に、ヘッドアレイ51を加熱する時間を待たずに、次画像の印刷を行うことができる。
【0067】
<総括>
以上説明したように、本実施形態によれば、次のような利点がある。
【0068】
(1)液滴吐出ヘッド用の駆動回路をアレイベースと熱結合し、駆動回路の駆動により発生する熱エネルギをヘッドアレイの温度調整に使用することにより、新たな加熱機構や複雑なメカ構造を要することなく、全ヘッドアレイ間の温度を均一にして、画質劣化を防止することができる。
【0069】
(2)熱抵抗部材を介して熱結合することによって、駆動回路からアレイベースへの熱伝導を適度にコントロールすることができ、駆動回路の発熱が過度にアレイベースに熱伝導されることを防止することができる。
【0070】
(3)印刷前には、各ヘッドアレイに搭載してある温度情報検知手段により、各ヘッドアレイの温度情報を取得し、各ヘッドアレイ間で温度差がある場合には、駆動回路を駆動させて、各ヘッドアレイを基準となる温度で均一にする制御を実施することにより、ヘッドアレイ間での熱膨張差をなくすことができる。
【0071】
(4)印刷中には、印刷に使用しているヘッドアレイの温度に合わせて、他の印刷に使用しないヘッドアレイの駆動回路の発熱を利用して、加熱して全てのヘッドアレイ間で温度差をなくしているので、他のヘッドアレイも使用して画像形成する場合に、プレ加熱することなく直ぐに印刷動作を行うことができる。
【0072】
(5)液滴吐出ヘッドを加熱する際には、液滴が吐出しない微駆動波形に切替えて液滴吐出ヘッドの圧電素子を駆動させることにより、無駄な画像形成用の液滴を使用しないで、液滴吐出ヘッドを駆動させて温度調整することができる。
【0073】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更を加えることができることは明らかである。すなわち、具体例の詳細および添付の図面により本発明が限定されるものと解釈してはならない。
【符号の説明】
【0074】
1 装置本体
2 給紙トレイ
21 分離ローラ
22 給紙ローラ
3 排紙トレイ
31 サイドフェンス
32 エンドフェンス
4 搬送ユニット
41a 搬送駆動ローラ
41b 搬送従動ローラ
42a、42b 搬送ガイドローラ
43 搬送ベルト
44 吸引ファン
5 ヘッドアレイユニット
51、51a〜51d ヘッドアレイ
52、52a〜52d ディストリビュータ
53 供給チューブ
54 サブタンク
501 液滴吐出ヘッド
502 アレイベース
503 液滴ヘッド取付ネジ
504 開口部
505 バネ
506 アレイベース取付孔
507 ヘッドアレイ取付フレーム
508 バネ
509 アレイベース取付ネジ
510 液滴吐出ヘッド駆動基板
511 液滴吐出ヘッド駆動回路放熱板
512 液滴吐出ヘッド駆動回路
513 液滴吐出ヘッドノズル面
514 放熱板取付ネジ
515 駆動回路取付ネジ
516 熱抵抗部材
6 クリーニング装置
61、61a〜61d クリーニング手段
7 搬送ガイド部
P 用紙
100 制御部
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 NVRAM
105 ASIC
106 ホストI/F
107 ヘッド駆動制御部
108 ヘッドドライバ
109 ヘッドアレイユニット移動モータ
110 ヘッドアレイユニット移動モータ駆動部
111 搬送ベルト移動モータ
112 搬送ベルト移動モータ駆動部
113 環境センサ
114 I/O
115 操作パネル
116 吸引ファンモータ
117 吸引ファンモータ駆動部
121 圧電素子
200 用紙センサ
201 位相センサ
202 温度センサ
401 駆動波形生成部
402 データ転送部
411 シフトレジスタ
412 ラッチ回路
413 デコーダ
414 レベルシフタ
415 アナログスイッチ
416 電圧増幅部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0075】
【特許文献1】特開2007−196479号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に液滴を吐出するための複数の液滴吐出ヘッドが千鳥状にアレイベース上に配列されたヘッドアレイと、
複数の前記ヘッドアレイが色毎に記録媒体搬送方向と直交するように離間して配置されて構成されるヘッドアレイユニットと、
前記液滴吐出ヘッドに液滴を吐出させるための駆動信号を供給する液滴吐出ヘッド駆動回路と
を備え、
前記液滴吐出ヘッド駆動回路と前記アレイベースとを熱結合することによって、前記液滴吐出ヘッド駆動回路の駆動により発生する熱エネルギを前記ヘッドアレイの温度調整に使用する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記液滴吐出ヘッド駆動回路は、熱抵抗部材を介して前記アレイベースに熱結合されている
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
複数の前記ヘッドアレイの各々に設けられた温度情報取得手段を備え、
印刷前には、複数の前記温度情報取得手段からの情報の各々を比較して、複数の前記ヘッドアレイ間に温度差がある場合には、最大温度の前記ヘッドアレイの温度を基準温度に設定し、それ以外の前記ヘッドアレイの前記液滴吐出ヘッド駆動回路を駆動させて温度調整することにより、印刷前に複数の前記ヘッドアレイ間の温度を均一にする
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
複数の前記ヘッドアレイの各々に設けられた温度情報取得手段を備え、
印刷中には、複数の前記温度情報取得手段からの情報の各々を比較して、複数の前記ヘッドアレイ間に温度差がある場合には、印刷に使用している前記ヘッドアレイの温度を基準温度に設定し、印刷に使用していない前記ヘッドアレイの前記液滴吐出ヘッド駆動回路を駆動させて温度調整することにより、次回の印刷前に複数の前記ヘッドアレイ間の温度を均一にする
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記ヘッドアレイの温度調整時に前記液滴吐出ヘッド駆動回路を駆動するのに使用する駆動波形は、前記液滴吐出ヘッドから液滴を吐出しない微駆動波形を使用する
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−82145(P2013−82145A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224271(P2011−224271)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】