説明

画像生成装置

【課題】簡易な装置構成で分解能が向上された試料のパターン像を得ること。
【解決手段】この画像生成装置1は、レーザ光を出射するレーザ光源3と、レーザ光の強度を変調させるレーザ出力制御部11と、レーザ光の被測定物Aへの照射位置を走査するレーザスキャナ5と、被測定物Aに複数の空間変調パターンの照明光を照射するように制御する変調パターン制御部15と、複数の空間変調パターンの照明光の照射に応じて被測定物Aから生じる電気信号を検出する電気信号検出器7と、照明光の照射位置に関する照明位置情報と、検出された信号の特性に関する特性情報とが対応付けられた特性分布情報を含む2次元特性画像を生成する電気信号画像化部17と、複数の空間変調パターンに対応して生成された複数の特性画像を基に、被測定物Aのパターン画像を生成する画像データ演算部19とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物に空間変調された光を照射することにより画像を生成する画像生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体デバイス等に空間変調された光を照射してその結果生じた像を観察する光学装置が用いられている。例えば、下記特許文献1には、光源装置からの光を回折格子を通して試料に照射して、そのときの試料像をCCDカメラで撮像する光学装置が記載されている。また、この光源装置は、回折格子を等速度で回折格子の縞と垂直な方向に移動しながら撮像することで複数の変調像を得た後に、それらの変調像を画像処理することで試料の像を形成する。また、下記特許文献2には、試料に空間変調された光を照射するために、照明光の光路中にSLM(Spatial Light Modulator)を配置した顕微鏡装置も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−117010号公報
【特許文献2】特開2007−199572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の画像生成用の装置では、試料に空間変調された光を照射し、その結果生じた試料の像を、対物レンズや結像レンズ等を含む光学系を通じて撮像するため、最終的に生成する試料の二次元像の分解能を上げることに限界が生じる。すなわち、試料の二次元像の分解能は、光学系の光学的性能と二次元撮像装置のピクセル分解能と感度によって上限値が決まってしまう傾向にある。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、簡易な装置構成で分解能が向上された試料のパターン像を得ることが可能な画像生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の画像生成装置は、被測定物の画像を生成する画像生成装置であって、レーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ光の強度を変調させるレーザ変調部と、レーザ光の被測定物への照射位置を走査するレーザ走査部と、被測定物に複数の空間変調パターンの照明光を照射するように、レーザ変調部及びレーザ走査部を制御する制御部と、複数の空間変調パターンの照明光の照射に応じて被測定物から生じる信号を検出する検出部と、制御部によって制御された照明光の照射位置に関する照射位置情報と、照射位置におけるレーザ光の照射に応じて検出部によって検出された信号の特性に関する特性情報とが対応付けられた特性分布情報を生成し、空間変調パターンに対応して複数の特性分布情報を含む2次元特性画像を生成する信号生成部と、複数の空間変調パターンに対応して生成した複数の2次元特性画像を基に、被測定物のパターン画像を生成する画像処理部と、を備える。
【0007】
このような画像生成装置によれば、レーザ光源から発せられたレーザ光が、レーザ変調部によってその強度が変調されると同時に、レーザ走査部によって、半導体デバイスや生物試料などの被測定物への照射位置が走査されながら、被測定物に照射される。このとき、制御部によって、被測定物に複数の2次元空間変調パターンの照明光が照射されるようにレーザ変調部およびレーザ走査部が制御されながら、検出部によって被測定物から生じる信号が検出される。さらに、信号生成部によって、それぞれの空間変調パターンに対応して、照明光の照射位置に関する情報とその照射位置における照明光の照射に応じて検出された信号の特性に関する情報が対応付けられた特性分布情報が生成されるとともに、それぞれの空間変調パターンに対応して2次元特性画像が生成され、画像処理部によって、複数の2次元特性画像を基に被測定物のパターン画像が生成される。これにより、被測定物からパターン画像を取得する際に対物レンズや結像レンズ等を含む光学系を通す必要がないので、試料のパターン像の分解能を容易に向上させることができる。それに加えて、被測定物に照射する照明光の空間変調パターンの位相および向きを容易に変更することができ、所望の位置および向きの高解像度画像を素早く得ることができる。
【0008】
検出部は、被測定物から生じる電気信号を検出し、信号生成部は、照明光の照射位置情報と、電気信号の特性に関する特性情報とが対応付けられた特性分布情報を生成する、ことが好適である。この場合、被測定物へのレーザ光の照射に伴って生じる光起電流値等の電気特性を、被測定物におけるパターン像として取得することができ、半導体等の電気素子の特性解析の精度を向上させることができる。
【0009】
また、検出部は、被測定物から生じる光信号を検出し、信号生成部は、照明光の照射位置情報と、光信号の特性に関する特性情報とが対応付けられた特性分布情報を生成する、ことも好適である。かかる構成を採れば、被測定物へのレーザ光の照射に伴って生じる反射光や蛍光等の光の特性を、被測定物における分解能が向上されたパターン像として取得することができる。
【0010】
さらに、レーザ光源からのレーザ光は、被測定物において多光子吸収が可能な波長を含む、ことも好適である。こうすれば、被測定物に与える効果は、スポット形状を、2光子であれば2乗、3光子であれば3乗したものと同等となり、発生する信号は実効的に小さなスポットでスキャンしたと同じ事となり、変調の縞を細かくすることができ、分解能をさらに向上させることが可能となる。
【0011】
またさらに、レーザ変調部は、レーザ光の強度を三角関数に従って変化するように変調させることも好適である。かかるレーザ変調部を備えれば、空間変調パターンの形成が容易になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易な装置構成で分解能が向上された試料のパターン像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像生成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の変調パターン制御部によって規定される照明光の空間変調パターンを示す概念図である。
【図3】図1の変調パターン制御部によって規定される照明光の空間変調パターンを示す概念図である。
【図4】図1の変調パターン制御部によって規定される照明光の空間変調パターンを示す概念図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る画像生成装置の構成を示すブロック図である。
【図6】図5の画像生成装置の光信号検出器の周辺の詳細構成を示す概略構成図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る画像生成装置の構成を示すブロック図である。
【図8】図7の画像生成装置の光信号検出器の周辺の詳細構成を示す概略構成図である。
【図9】本発明の変形例である光学系を示す概略構成図である。
【図10】本発明の変形例であるレーザ光源を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る画像生成装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像生成装置1の構成を示すブロック図である。図1に示す画像生成装置1は、半導体デバイス等の電気素子である被測定物に対して複数の空間変調パターンに基づいて照明光を走査し、それに応じて被測定物Aから生じる電気信号の複数の特性分布を検出し、それらの複数の特性分布を基にして被測定物の高解像度パターン像を得るための装置である。この画像生成装置1は、レーザ光を出射するレーザ光源3と、レーザスキャナ(レーザ走査部)5と、被測定物Aから生じる電気信号を検出する電気信号検出器(検出部)7と、レーザ光源3からのレーザ光を被測定物Aに向けて導光する光学系9と、レーザ光源3の出力強度を制御するレーザ出力制御部(レーザ変調部)11と、レーザスキャナ5の動作を制御するスキャナ制御部13と、被測定物Aに照射される空間変調パターンを制御する変調パターン制御部15と、電気信号検出器7によって検出された電気信号の電気特性を画像化する電気信号画像化部(信号生成部)17と、電気信号画像化部17によって生成された画像化信号を用いて被測定物Aのパターン画像を生成する画像データ演算部(画像処理部)19とを備えている。
【0016】
詳細には、光学系9は、リレーレンズ21、ミラー23、及び対物レンズ25から構成されている。リレーレンズ21は、レーザスキャナ5によって照射角度が振られたレーザ光を対物レンズ25まで効率よく導くための光学系であり、対物レンズ25の射出瞳をレーザスキャナ5の反射面に投影することにより、レーザスキャナ5を反射されたレーザ光を対物レンズ25に確実に到達させる役割を有する。ここでは、ミラー23は用いなくてもよい。
【0017】
レーザスキャナ5は、レーザ光の進行方向を変更することによりその照射位置を2次元的に走査させる光学装置である。すなわち、レーザスキャナ5は、リレーレンズ21に向けて入射するレーザ光の入射角度を変更することにより、光学系9を介して照射されるレーザ光の照射位置を、被測定物Aの表面上で2次元的に走査させる。このようなレーザスキャナ5としては、互いの回転軸が直交する2つのミラーを有し、それらの回転角が電気的に制御可能にされたガルバノメータミラーを用いることができる。その他、レーザスキャナ5としては、ポリゴンミラー、MEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラー、AOD(音響光学偏向器)、レゾナントスキャナ(共振型ガルバノメータスキャナ)、EOスキャナ(電気光学的光偏向器)等を採用することもできる。
【0018】
ここで、レーザ光源3から出力されるレーザ光の強度は、レーザ光源3に接続されたレーザ出力制御部11からの制御信号によって変調可能に構成されており、レーザスキャナ5によるレーザ光の被測定物Aの表面の照射位置は、レーザスキャナ5に接続されたスキャナ制御部13からの制御信号によって変更可能に構成されている。さらに、レーザ出力制御部11およびスキャナ制御部13には変調パターン制御部15が接続され、変調パターン制御部15によって、被測定物Aに予め決められた複数の空間変調パターンに基づいて照明光が走査されるように、レーザ出力制御部11およびスキャナ制御部13が制御される。
【0019】
次に、図2〜図4を参照して、変調パターン制御部15によって規定される照明光の空間変調パターンについて例示する。
【0020】
図2〜4には、変調パターン制御部15によって規定された空間変調パターンの被測定物Aに対する照射状態を示している。図2に示すように、まず、変調パターン制御部15は、被測定物Aの平面に沿った所定方向であるX軸方向に沿ってレーザ光の照射位置を移動させるように制御すると同時に、X軸方向の強度分布が三角関数(sin関数、又はcos関数)に従って周期的に増減するようにレーザ光の照射強度を変調させる。同図において、矢印は、レーザ照射位置の変更状態を示している。これにより、X軸方向に沿って幅W1で周期的に変調された帯状照射パターンL1が形成される。続けて、変調パターン制御部15は、X軸に垂直なY軸に沿った方向にレーザ照射位置をずらした後に、レーザ光の照射位置のX軸方向に沿った移動とレーザ光強度の変調を制御して帯状照射パターンL1の形成を繰り返す。その結果、Y軸方向に沿った所望のピッチW1の縞模様を有する空間変調パターンを生成することができる。なお、レーザ光の強度は、周期的なON―OFFで変調されてもよい。
【0021】
また、図3に示すように、変調パターン制御部15は、X軸に沿った帯状照射パターンL2の空間的な位相を、Y軸方向において隣接するパターン間で徐々にシフトさせるようにレーザ光強度の変調を制御することもできる。この場合は、Y軸方向に対して所望の角度θ2だけ傾斜する所望のピッチW2の縞模様に近似される空間変調パターンを生成することができる。さらに、図4に示すように、変調パターン制御部15は、X軸に沿った1回のレーザ光の走査の間のレーザ光の照射強度を均一にし、Y軸方向に配列される複数の帯状照射パターン間で照射強度が変調されるように制御することもできる。この場合、X軸方向に沿った所望のピッチW3の縞模様を有する空間変調パターンを生成することができる。なお、空間変調パターンとしては、n回回転対称(nは3以上)の縞状パターンがよい。
【0022】
上記のような空間変調パターンを有する照明光の照射タイミングに合わせて、電気信号検出器7は、被測定物Aから生じる光起電流等の電気信号を検出する。例えば、電気信号検出器7は、レーザ光の照射に応じて生じる光起電流の電流値等の特性値を、被測定物Aの2端子間の電圧変化として検出する。電気信号画像化部17は、電気信号検出器7及び変調パターン制御部15に接続されており、電気信号検出器7によって検出された特性値を画像化する。すなわち、電気信号画像化部17は、特性値が検出された時の被測定物A上のレーザ光の照射位置をXY座標などの照射位置情報として特定する。そして、電気信号画像化部17は、その照射位置情報と、該当の照射位置におけるレーザ光の照射に応じて検出された電気信号の特性値に関する特性情報とが対応付けられた特性分布情報を生成する。さらに、電気信号画像化部17は、被測定物Aに照射されたそれぞれの空間変調パターンに対応して、複数の特性分布情報を含む2次元特性画像を生成する。例えば、電気信号画像化部17は、各特性値が被測定物A上の座標毎に配列された2次元の特性画像信号を生成する。図2〜図4に示すような空間変調パターンが時間的に連続して形成される場合には、電気信号画像化部17は、それぞれの空間変調パターン毎に別々の特性画像を生成する。
【0023】
電気信号画像化部17によって生成された複数の特性画像は、画像データ演算部19によって画像処理が施される。例えば、画像データ演算部19は、被測定物Aの表面にY軸方向に沿った縞模様の空間変調パターンを、所望の周波数で空間位相を変化させながら照射させ、複数の特性画像を得る。そのとき得られる複数の特性画像は、照明光による縞模様と被測定物Aの構造に起因する特性画像とのモアレ(干渉縞)成分として得られ、被測定物Aの微細構造に起因する空間高周波成分は、モアレとして低周波成分に変換され現れる。そこで、画像データ演算部19は、複数の特性画像から得られた特性分布から、照射された空間変調パターンの周波数情報をもとに、実際の被測定物Aの構造に起因する本来の特性分布画像を生成する。そして、画像データ演算部19は、4方位に沿った複数の空間変調パターンを、所望の周波数で空間位相を変化させながら照射させ、同様の画像処理をおこなうことで複数の特性分布画像を作成し、複数の特性分布画像から4方位に解像度が高められた高解像度のパターン画像を生成することができる。
【0024】
以上説明した画像生成装置1によれば、レーザ光源3から発せられたレーザ光が、レーザ出力制御部11によってその強度が変調されると同時に、レーザスキャナ5によって被測定物Aへの照射位置が走査されながら、被測定物Aに照射される。このとき、変調パターン制御部15によって、被測定物Aに複数の2次元空間変調パターンの照明光が照射されるようにレーザ出力制御部11およびレーザスキャナ5が制御されながら、電気信号検出器7によって被測定物Aから生じる電気信号が検出される。さらに、電気信号画像化部17によって、それぞれの空間変調パターンに対応して、照明光の照射位置に関する情報とその照射位置における照明光の照射に応じて検出された電気信号の特性に関する情報が対応付けられた特性分布情報が生成されるとともに、それぞれの空間変調パターンに対応して2次元特性画像が生成され、画像データ演算部19によって、複数の2次元特性画像を基に被測定物Aのパターン画像が生成される。これにより、被測定物Aからパターン画像を取得する際に対物レンズや結像レンズ等を含む光学系を通す必要がないので、試料のパターン像の分解能を容易に向上させることができる。
【0025】
また、画像生成装置1によれば、回折格子等を駆動する複雑な駆動機構を必要とせずに、被測定物Aの高解像度パターン画像を簡易に取得することができる。つまり、本実施形態では簡単な光学系とレーザスキャナ等を搭載するだけで済む。それに加えて、変調パターン制御部15の制御によって、被測定物に照射する照明光の空間変調パターンの位相および向きを容易に変更することができ、所望の位置および向きの高解像度画像を素早く得ることができる。これに対して、空間変調パターン生成用としてSLM(Spatial Light Modulator)を用いた従来装置では、任意の方向に任意の角度で回折させるためには非常に微細なSLMが必要となる。例えば、試料上に投影する縞の位相を3種類に変更する場合は、解像限界の縞の本数×3の一軸方向のピクセル数が必要となる。さらに、軸に対する斜め方向にも縞を形成したい場合には、ピクセル形状が矩形であるために、縞のピッチにピクセルを合わせるのにさらに3倍のピクセル数が必要になる。その結果、従来装置では高価なSLMが必要になる。また、SLMにおける光の透過/反射ロスや、ピクセルの継ぎ目におけるロス、0次光、高次光の問題も発生する。
【0026】
さらに、レーザ光を2次元的に走査して変調する手法を取ることにより、被測定物Aが2光子吸収などの多光子吸収を起こすものや、第2次高調波(SHG)を発生するものなど、非線形な反応を示すものに対しては、それらの反応が起こりやすい。その結果、例えば2光子吸収などを利用すればさらに高分解能化された画像化も可能になる。
【0027】
さらに、レーザ出力制御部11がレーザ光の強度を三角関数に従って変化するように変調させるので、空間変調パターンの形成が容易になる。
【0028】
[第2実施形態]
図5は、本発明の第2実施形態に係る画像生成装置101の構成を示すブロック図である。同図に示す画像生成装置101は、半導体デバイス等の被測定物に対して複数の空間変調パターンの照明光を照射し、それに応じて被測定物Aから生じる反射光を光信号として検出し、その光信号の特性分布を基にして被測定物の高解像度パターン像を得るための装置である。この画像生成装置101の第1実施形態との相違点は、電気信号検出器7及び電気信号画像化部17の代わりに、光信号検出器107及び光信号画像化部117を備える点である。
【0029】
すなわち、光信号検出器107は、被測定物Aから生じる反射光等を光信号として検出する。例えば、光信号検出器107は、反射光の強度等の特性値を電気信号として出力する光電子増倍管や光電管等の光電変換器である。また、光信号画像化部117は、光信号検出器107によって検出された光信号の特性値に関する特性情報と、その特性値が検出された時の被測定物A上のレーザ光の照射位置情報とが対応付けられた特性分布情報から、複数の特性分布情報を含む2次元特性画像(特性画像)を、複数の空間変調パターンごとに生成する。
【0030】
図6には、画像生成装置101の光信号検出器107の周辺の詳細構成を示している。同図に示すように、光ファイバで構成されるレーザ光源3の出射口及び光信号検出器107と、レーザスキャナ5の間にはビームスプリッタ31が配置されている。このビームスプリッタ31は、レーザスキャナ5を経て入射する被測定物Aからの反射光および散乱光を透過して光信号検出器107に導くと同時に、レーザ光源3からのレーザ光を反射してレーザスキャナ5を経由して被測定物A側に導くことにより、反射光および散乱光の光路をレーザ光の光路と分離する。このようなビームスプリッタ31としては、反射率および透過率が1:1の関係を有するハーフミラーや8:2等の所定の関係を有するものが用いられる。また、レーザ光が所定の偏光成分を有する場合には、ビームスプリッタ31として、偏光ビームスプリッタを用いることもできる。この場合は、偏光ビームスプリッタと対物レンズ25との間に、1/4波長板を挿入する。これにより、偏光ビームスプリッタ側から直線偏光のレーザ光が入射した場合に、円偏光に変換して被測定物Aに照射することができるとともに、被測定物Aからの反射光が再び1/4波長板を透過する際に、その反射光を入射時とは90度異なる直線偏光に変換することができる。その結果、反射光を偏光ビームスプリッタに透過させて光信号検出器107側に導くことができる。
【0031】
また、光信号検出器107とビームスプリッタ31との間には、空間フィルタ35と集光レンズ33とが配置されている。空間フィルタ35は、レーザ光源3のファイバの端面と共役な位置に置かれて共焦点光学系を形成し、そのフィルタ径がファイバ端面と共役な面に作られるビームスポット径とほぼ等しくなるように設定されている。この空間フィルタ35は、被測定物Aから光学系を経て戻ってきた反射散乱光のうち、焦点から外れた部分からの反射散乱成分を遮断する。
【0032】
以上説明した画像生成装置101によれば、被測定物Aへの空間変調パターンの照射に伴って生じる反射散乱光の特性を、被測定物における分解能が向上されたパターン像として取得することができる。それに加えて、変調パターン制御部15の制御によって、被測定物に照射する照明光の空間変調パターンの位相および向きを容易に変更することができ、所望の位置および向きの高解像度イメージ画像を素早く得ることができる。
【0033】
[第3実施形態]
図7は、本発明の第3実施形態に係る画像生成装置201の構成を示すブロック図である。同図に示す画像生成装置201は、細胞等の被測定物に対して複数の空間変調パターンの励起光を照射し、それに応じて被測定物Aから生じる微弱な蛍光を光信号として検出し、その光信号の特性分布を基にして被測定物の高解像度パターン像を得るための装置である。この画像生成装置201は、光信号検出器の周辺の構成が第2実施形態と異なる。
【0034】
すなわち、光信号検出器207としては、微弱な蛍光の強度等の特性値を電気信号として出力することが可能な光電子増倍管等の光電変換器が用いられる。また、図8に示すように、レーザ光源3の出射口及び光信号検出器207と、レーザスキャナ5の間にはビームスプリッタの代わりにダイクロイックミラー41が配置される。このダイクロイックミラー41は、レーザスキャナ5を経て入射する被測定物Aからの蛍光を透過して光信号検出器207に導くと同時に、レーザ光源3からのレーザ光を反射してレーザスキャナ5を経由して被測定物A側に導くことにより、蛍光の光路をレーザ光の光路と分離する。このダイクロイックミラー41は、励起光をレーザスキャナ5に向けて反射し、被測定物Aから生じた蛍光を透過する機能を有し、短波長反射および長波長透過の光学特性を有する誘電体多層膜を含むミラーである。
【0035】
また、レーザ光源3とダイクロイックミラー41との間には、励起波長選択用フィルタ43が設けられている。この励起波長選択用フィルタ43は、被測定物Aの蛍光励起特性に合わせ、レーザ光源3の波長からその特性に合う波長を選択するために設けられる。
【0036】
さらに、光信号検出器207とダイクロイックミラー41との間には、バリアフィルタ45が設けられる。このバリアフィルタ45は、光信号検出器207による蛍光の検出時に、光信号検出器207に向けて励起光が到達しないように励起光をカットする。このバリアフィルタは、励起光の波長成分を吸収、反射することによりカットし、蛍光の波長成分を透過させる性質を有し、長波長透過性を有するハイパスフィルタ、又は、蛍光の波長成分のみを透過させるバンドパスフィルタである。
【0037】
このような画像生成装置201によれば、被測定物Aへの空間変調パターンの照射に伴って生じる蛍光の特性を、被測定物における分解能が向上されたパターン像として取得することができる。それに加えて、変調パターン制御部15の制御によって、被測定物に照射する照明光の空間変調パターンの位相および向きを容易に変更することができ、所望の位置および向きの高解像度イメージ画像を素早く得ることができる。
【0038】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、被測定物Aに照射される空間変調パターンのコントラストを上げるために、照明光を導光するための光学系の構成として、図9に示すような構成を採用してもよい。
【0039】
詳細には、レーザ光源3とレーザスキャナ5との間にアキシコン211およびコンバータレンズ212を挿入してもよい。アキシコン211は、円錐形のプリズムであり、レーザ光源3から出射された断面円形の平行ビームを断面がリング状のビームに変換する光学素子である。コンバータレンズ212は、アキシコン211から出射されたリング状のビームをレーザスキャナ5上に円周状に投影させるレンズである。このような照明光用の光学系を用いることで、レーザ光源3からのレーザ光を対物レンズ25の瞳位置でリング状に形成することができる。これにより、被測定物Aの表面でのレーザ光スポットの半値幅を小さくすることができ、レーザビームをエアリディスク径で走査する場合の空間変調パターンのコントラストの低下を防止することができる。
【0040】
また、画像生成装置1,101,201のレーザ光源3としては、図10に示すように、被測定物Aにおける2光子励起等の多光子励起を観察可能な構成が採用されてもよい。具体的には、レーザ光源3として、被測定物Aにおいて2光子吸収が可能な波長を発光波長として含む超短パルスレーザ3aと、その出力を変調させるレーザ変調器3bとから成る構成を採用し、レーザ光源3とレーザスキャナ5の間にレーザ光から所望の波長成分を選択する励起波長選択用フィルタ301を挿入する。2光子励起は本来の励起光の波長の2倍の波長の2つの光子によって電子が励起されて蛍光を発する現象である。そのため、励起波長選択用フィルタ301は、蛍光試料の励起波長の2倍の波長の光を透過させるように機能する。このようなレーザ光源3を用いれば、波長の長いエネルギの低い光を使えるため、試料に与えるダメージを抑え、しかも、試料透過性もよく、深いところまで光を到達させ、2光子吸収の特徴である、励起個所の3次元局所性を生かした励起ができる。また、2光子励起の特徴として、2倍の波長でありながら、1倍の波長と同等の分解能が得られ、さらに本技術と組み合わせることで、高解像度化が期待できる。
なお、図10に示したレーザ光源3の構成を、画像生成装置201と組み合わせて使用した場合には、ダイクロイックミラー41及びバリアフィルタ45をその機能が異なるものに変更する必要がある。すなわち、ダイクロイックミラー41としては、レーザ光源3側から入射した長波長の励起光をレーザスキャナ5に向けて反射し、被測定物Aから生じた短波長の蛍光を透過するような機能を有し、長波長反射および短波長透過の光学特性を有するダイクロイックミラーが使用される。また、バリアフィルタ45としては、励起光の長波長成分を吸収、反射することによりカットし、蛍光の短波長成分を透過させる性質を有し、短波長透過性を有するローパスフィルタ、又は、蛍光の波長成分のみを透過させるバンドパスフィルタが使用される。
【符号の説明】
【0041】
1,101,201…画像生成装置、3…レーザ光源、5…レーザスキャナ(レーザ走査部)、7…電気信号検出器(検出部)、11…レーザ出力制御部(レーザ変調部)、15…変調パターン制御部、17…電気信号画像化部(信号生成部)、19…画像データ演算部(画像処理部)、107,207…光信号検出器(検出部)、117…光信号画像化部(信号生成部)、A…被測定物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の画像を生成する画像生成装置であって、
レーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光の強度を変調させるレーザ変調部と、
前記レーザ光の前記被測定物への照射位置を走査するレーザ走査部と、
前記被測定物に複数の空間変調パターンの照明光を照射するように、前記レーザ変調部及び前記レーザ走査部を制御する制御部と、
前記複数の空間変調パターンの照明光の照射に応じて前記被測定物から生じる信号を検出する検出部と、
前記制御部によって制御された前記照明光の照射位置に関する照射位置情報と、前記照射位置における前記レーザ光の照射に応じて前記検出部によって検出された信号の特性に関する特性情報とが対応付けられた特性分布情報を生成し、前記空間変調パターンに対応して複数の前記特性分布情報を含む2次元特性画像を生成する信号生成部と、
複数の前記空間変調パターンに対応して生成した複数の前記2次元特性画像を基に、前記被測定物のパターン画像を生成する画像処理部と、
を備えることを特徴とする画像生成装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記被測定物から生じる電気信号を検出し、
前記信号生成部は、前記照明光の前記照射位置情報と、前記電気信号の特性に関する特性情報とが対応付けられた特性分布情報を生成する、
ことを特徴とする請求項1記載の画像生成装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記被測定物から生じる光信号を検出し、
前記信号生成部は、前記照明光の前記照射位置情報と、前記光信号の特性に関する特性情報とが対応付けられた特性分布情報を生成する、
ことを特徴とする請求項1記載の画像生成装置。
【請求項4】
前記レーザ光源からの前記レーザ光は、被測定物において多光子吸収が可能な波長を含む、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像生成装置。
【請求項5】
前記レーザ変調部は、前記レーザ光の強度を三角関数に従って変化するように変調させる、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−8261(P2012−8261A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142882(P2010−142882)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】