画像表示体及びラベル付き物品
【課題】高精細な画像を表示し且つ記録された画像の改竄が困難な画像表示体を実現可能とする。
【解決手段】本発明の画像表示体22は、第1及び第2主面を有している光透過性の中間層229と、前記第1主面上に設けられ、或る対象に関する第1情報を物体色の第1画像として表示する第1画像表示部220aと、前記第2主面上に設けられ、前記対象に関する第2情報をレリーフ構造に由来する構造色の第2画像として表示する第2画像表示部220bとを具備している。
【解決手段】本発明の画像表示体22は、第1及び第2主面を有している光透過性の中間層229と、前記第1主面上に設けられ、或る対象に関する第1情報を物体色の第1画像として表示する第1画像表示部220aと、前記第2主面上に設けられ、前記対象に関する第2情報をレリーフ構造に由来する構造色の第2画像として表示する第2画像表示部220bとを具備している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば個人認証に利用可能な画像表示技術に関する。
【背景技術】
【0002】
パスポート及びID(identification)カードなどの個人認証媒体の多くは、目視による個人認証を可能とするために、顔画像を使用している。
【0003】
例えば、パスポートでは、従来、顔画像を焼き付けた印画紙を冊子体に貼り付けていた。しかしながら、そのようなパスポートには、写真印画の貼り替えによる改竄のおそれがある。
【0004】
このような理由で、近年では、顔画像の情報をデジタル化し、これを冊子体上に再現する傾向にある。この画像再現方法としては、例えば、転写リボンを用いた感熱転写記録法が検討されている。
【0005】
しかしながら、昨今、昇華性染料又は着色した熱可塑性樹脂を使用する感熱転写記録方式のプリンタは広く普及している。この状況を考慮すると、パスポートから顔画像を取り除き、そこに別の顔画像を記録することは、必ずしも困難ではない。
【0006】
特許文献1には、上述した方法で顔画像を記録し、その上に蛍光インキを用いて顔画像を記録することが記載されている。また、特許文献2には、無色又は淡色の蛍光染料と有色の顔料とを含有したインキを用いて顔画像を記録することが記載されている。更に、特許文献3には、通常の顔画像と、パール顔料を用いて形成した顔画像とを並べて配置することが記載されている。
【0007】
これら技術をパスポートに適用すると、その改竄がより困難になる。しかしながら、蛍光材料を用いて記録した顔画像は、紫外線ランプなどの特殊な光源を使用しない限り観察することはできない。また、パール顔料を用いて形成した顔画像は、肉眼で視認することはできるものの、パール顔料は粒径が大きいため、これを用いて高精細な画像を形成することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−141863号公報
【特許文献2】特開2002−226740号公報
【特許文献3】特開2003−170685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、高精細な画像を表示し且つ記録された画像の改竄が困難な画像表示体を実現可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1側面は、第1及び第2主面を有している光透過性の中間層と、前記第1主面上に設けられ、或る対象に関する第1情報を物体色の第1画像として表示する第1画像表示部と、前記第2主面上に設けられ、前記対象に関する第2情報をレリーフ構造に由来する構造色の第2画像として表示する第2画像表示部とを具備した画像表示体である。
【0011】
本発明の第2側面は、前記対象は生体であり、前記第1及び第2情報の各々は生体情報である第1側面に係る画像表示体である。
【0012】
本発明の第3側面は、前記第1画像表示部は前記第1画像として顔画像を表示し、前記第2画像表示部は前記第2画像として顔画像を表示する第2側面に係る画像表示体である。
【0013】
本発明の第4側面は、前記生体は人物であり、前記画像表示体は個人認証に使用される第2又は第3側面に係る画像表示体である。
【0014】
本発明の第5側面は、前記中間層を間に挟んで前記第2画像表示部と向き合い、前記第2画像表示部に対応した位置で及び前記第2画像表示部に対応した形状に開口し、励起光を照射したときに光源色の画像を表示する第3画像表示部を更に具備した第1乃至第4側面の何れかに係る画像表示体である。
【0015】
本発明の第6側面は、前記第1主面上に設けられ、前記第2画像表示部に対応した位置で及び前記第2画像表示部に対応した形状に開口し、前記第2画像の背景を物体色の画像として表示するか、又は、励起光を照射したときに前記第2画像の背景を光源色の画像として表示する第3画像表示部を更に具備した第1乃至第4側面の何れかに係る画像表示体である。
【0016】
本発明の第7側面は、前記第2主面上に設けられ、前記第1画像表示部に対応した位置で及び前記第1画像表示部に対応した形状に開口し、前記第1画像の背景を構造色の画像として表示する第4画像表示部を更に具備した第1乃至第6側面の何れかに係る画像表示体である。
【0017】
本発明の第8側面は、前記第2画像表示部は、回折光を射出するレリーフ構造を含み、前記回折光によって前記第2画像を表示する第1乃至第7側面の何れかに係る画像表示体である。
【0018】
本発明の第9側面は、前記第2画像表示部は、散乱光を射出するレリーフ構造を含み、前記散乱光によって前記第2画像を表示する第1乃至第7側面の何れかに係る画像表示体である。
【0019】
本発明の第10側面は、前記中間層は、ホログラム、回折格子、赤外線吸収層、蛍光層、及び物体色を表示する印刷パターンからなる群より選択される1つ以上を含んでいる第1乃至第9側面の何れかに係る画像表示体である。
【0020】
本発明の第11側面は、前記第1又は第2画像表示部を間に挟んで前記中間層と向き合った光透過性の保護層を更に具備し、前記保護層は、ホログラム、回折格子、赤外線吸収層、蛍光層、及び物体色を表示する印刷パターンからなる群より選択される1つ以上を含んでいる第1乃至第10側面の何れかに係る画像表示体である。
【0021】
本発明の第12側面は、第1乃至第11側面の何れかに係る画像表示体と、前記画像表示体を支持した基材とを具備したラベル付き物品である。
【0022】
本発明の第13側面は、前記基材はカード基材又は冊子である第12側面に係るラベル付き物品である。
【0023】
本発明の第14側面は、個人認証に使用される第12又は第13側面に係るラベル付き物品である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、高精細な画像を表示し且つ記録された画像の改竄が困難な画像表示体を実現することが可能となる。
【0025】
本発明の第1側面に係る画像表示体は、第1画像表示部を含んでいる。第1画像表示部は、或る対象に関する第1情報を物体色の第1画像として表示する。物体色の第1画像は、通常の照明条件下で観察することができ、しかも、視認性に優れている。
【0026】
この画像表示体は、第1画像表示部に加え、第2画像表示部を含んでいる。この第2画像表示部は、レリーフ構造に由来する構造色の第2画像を表示する。レリーフ構造を利用した場合、パール顔料を使用した場合と比較して、精細度がより高い画像を表示することができる。また、このような第2画像表示部は、それ自体の偽像又は改竄が困難である。
【0027】
しかも、この画像表示体では、同一の対象に関する情報を第1及び第2画像表示部に表示させる。そのため、この対象に関する情報を他の対象に関する情報へと書き換えるには、第1及び第2画像表示部の各々を少なくとも部分的に除去しなければならない。
【0028】
更に、この画像表示体では、第1及び第2画像表示部間に、中間層が介在している。それ故、例えば前面側から又は裏面側から第1及び第2画像表示部の各々を少なくとも部分的に除去するためには、中間層も少なくとも部分的に除去しなければならない。即ち、この画像表示体に記録されている先の対象に関する第1及び第2情報の各々を他の対象の情報に書き換えるには、例えば、第1及び第2画像表示部の一方を除去し、次いで、中間層を少なくとも部分的に除去して第1及び第2画像表示部の他方を露出させ、その後、これを除去する必要がある。このような加工は、不可能であるか又は極めて困難である。しかも、そのような加工が施された画像表示体は、肉眼での観察によって、そのような加工が施されていない画像表示体から比較的容易に判別することができる。
【0029】
それ故、第1側面に係る画像表示体は、高精細な画像を表示するのに加え、記録された画像の改竄が困難である。
【0030】
本発明の第2側面に係る画像表示体では、第1及び第2情報の各々は生体情報である。生体情報は、その個体に特有である。それ故、この画像表示体を他の個体のために不正に使用するには、第1及び第2情報の双方を書き換えなければならない。それ故、この場合、第1及び第2情報の少なくとも一方が非生体情報である場合と比較して、画像表示体の不正使用はより困難である。
【0031】
本発明の第3側面に係る画像表示体では、第1及び第2画像表示部は顔画像を表示する。顔画像は、目視による個体認証に最も適した画像の1つである。
【0032】
本発明の第4側面に係る画像表示体では、上記生体は人物であり、画像表示体は個人認証に使用される。このような用途は、上記画像表示体の最も利用価値が大きな用途の1つである。
【0033】
本発明の第5側面に係る画像表示体は、中間層を間に挟んで第2画像表示部と向き合い、励起光を照射したときに光源色の画像を表示する第3画像表示部を更に具備している。このような画像表示体は、励起光を照明する照明条件下において、太陽光及び屋内照明光などの通常の照明条件下とは色及び形状の少なくとも一方が異なる画像を表示する。即ち、この画像表示体は、より複雑な視覚効果を与える。また、第2及び第3画像表示部間には中間層が介在しているので、第2及び第3パターンが表示する画像を書き換えるためには、第2及び第3パターンに加えて中間層を少なくとも部分的に除去しなければならない。即ち、この画像表示体は、情報の改竄がより困難であり、それ故、不正使用がより困難である。
【0034】
本発明の第6側面に係る画像表示体は、第1主面上に設けられた第3画像表示部を更に具備している。第3画像表示部は、第2画像表示部に対応した位置で及び第2画像表示部に対応した形状に開口しており、第2画像の背景を物体色の画像として表示するか、又は、励起光を照射したときに第2画像の背景を光源色の画像として表示する。この構成を採用した場合、第2画像表示部が表示する第2画像のみを改竄したときに、改竄した第2画像の輪郭と第3画像表示部に設けた開口とに形状又は位置の不一致を生じ易い。それ故、これを利用して、情報が改竄されたことを確認することができる。
【0035】
本発明の第7側面に係る画像表示体は、第2主面上に設けられた第4画像表示部を更に具備している。第4画像表示部は、第1画像表示部に対応した位置で及び第1画像表示部に対応した形状に開口しており、第1画像の背景を構造色の画像として表示する。この構成を採用した場合も、第1画像表示部が表示する第1画像のみを改竄したときに、改竄した第1画像の輪郭と第4画像表示部に設けた開口とに形状又は位置の不一致を生じ易い。それ故、これを利用して、情報が改竄されたことを確認することができる。
【0036】
本発明の第8側面に係る画像表示体において、第2画像表示部は、回折光を射出するレリーフ構造を含み、この回折光によって第2画像を表示する。それ故、第2画像の色は、照明方向及び観察方向などに応じて変化する。即ち、この構成を採用すると、複雑な視覚効果を達成することができる。
【0037】
本発明の第9側面に係る画像表示体において、第2画像表示部は、散乱光を射出するレリーフ構造を含み、この散乱光によって第2画像を表示する。第2画像表示部は散乱光によって第2画像を表示するので、この画像表示体を例えば凹凸表面に貼り付けた場合であっても、この凹凸表面が第2画像の画質に及ぼす影響は比較的小さい。
【0038】
本発明の第10側面に係る画像表示体では、中間層は、ホログラム、回折格子、赤外線吸収パターン、蛍光パターン、及び物体色を表示する印刷パターンからなる群より選択される1つ以上を含んでいる。そのような画像表示体は、更に複雑な視覚効果を提供するのに加え、偽造又は情報の改竄が更に困難である。
【0039】
本発明の第11側面に係る画像表示体は、第1又は第2画像表示部を間に挟んで中間層と向き合った光透過性の保護層を更に具備している。そのような画像表示体は、第1及び第2画像表示部などの損傷を生じ難い。また、この保護層は、ホログラム、回折格子、赤外線吸収パターン、蛍光パターン、及び物体色を表示する印刷パターンからなる群より選択される1つ以上を含んでいる。そのような画像表示体は、更に複雑な視覚効果を提供するのに加え、偽造又は情報の改竄が更に困難である。
【0040】
本発明の第12側面に係るラベル付き物品は、第1乃至第11側面の何れかに係る画像表示体を含んでいる。それ故、このラベル付き物品は、画像表示体が高精細な画像を表示するのに加え、画像表示体に記録された画像の改竄が困難である。
【0041】
本発明の第13側面に係るラベル付き物品では、基材はカード基材又は冊子である。上記のラベル付き物品は、典型的にはそのような形態で利用される。
【0042】
本発明の第14側面に係るラベル付き物品は、個人認証に使用される。このような用途は、上記ラベル付き物品の最も利用価値が大きな用途の1つである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一態様に係るラベル付き物品を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図。
【図3】図1に示すラベル付き物品の一部を拡大して示す平面図。
【図4】図1に示すラベル付き物品の他の部分を拡大して示す平面図。
【図5】図1に示すラベル付き物品の一部を拡大して示す断面図。
【図6】図1に示すラベル付き物品の他の部分を拡大して示す断面図。
【図7】図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の他の例を概略的に示す断面図。
【図8】図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図。
【図9】図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図。
【図10】図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図。
【図11】図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図。
【図12】図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図。
【図13】図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図。
【図14】図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図。
【図15】図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図。
【図16】図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図。
【図17】光散乱を利用して構造色を表示する画像表示部に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図。
【図18】光散乱を利用して構造色を表示する画像表示部に採用可能な構造の他の例を概略的に示す斜視図。
【図19】光散乱を利用して構造色を表示する画像表示部に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す斜視図。
【図20】構造色として暗色を表示する画像表示部に採用可能な構造の一例を概略的に示す斜視図。
【図21】図1に示すラベル付き物品の製造に利用可能な製造装置の一例を概略的に示す図。
【図22】図1に示すラベル付き物品の製造に利用可能な転写箔の一例を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0045】
図1は、本発明の一態様に係るラベル付き物品を概略的に示す平面図である。
図1に示すラベル付き物品100は、個人認証に使用される冊子体、具体的にはパスポートである。図1には、開いた状態の冊子体を描いている。
【0046】
このラベル付き物品100は、折り丁1と表紙2とを含んでいる。なお、X方向及びY方向は、表紙2の主面に平行であり且つ互いに交差する方向である。また、Z方向は、X方向及びY方向に対して垂直な方向である。ここでは、一例として、X方向及びY方向は、互いに直交しているとする。
【0047】
折り丁1は、1枚以上の紙片11からなる。典型的には、紙片11上には、文字列及び地紋などの印刷パターンが設けられている。折り丁1は、1枚の紙片11を又は複数枚の紙片11の束を二つ折りにすることによって形成されている。紙片11は、個人情報が記録されるIC(integrated circuit)チップや、このICチップとの非接触での通信を可能とするアンテナなどを内蔵していてもよい。
【0048】
表紙2は、二つ折りされている。表紙2と折り丁1とは、冊子体を閉じた状態で折り丁1が表紙2によって挟まれるように重ね合わされており、それらの折り目の位置で綴じ合わせなどによって一体化されている。
【0049】
表紙2は、個人情報を含んだ画像を表示する。この個人情報は、個人の認証に利用する個人認証情報を含んでいる。この個人情報は、例えば、生体情報と非生体個人情報とに分類することができる。
【0050】
生体情報は、生体の特徴のうち、その個体に特有なものである。典型的には、生体情報は、光学的手法によって識別可能な特徴である。例えば、生体情報は、顔、指紋、静脈及び虹彩の少なくとも1つの画像又はパターンである。
【0051】
非生体個人情報は、生体情報以外の個人情報である。例えば、非生体個人情報は、氏名、生年月日、年齢、血液型、性別、国籍、住所、本籍地、電話番号、所属及び身分の少なくとも1つである。非生体個人情報は、タイプ打ちによって入力された文字を含んでいてもよく、署名などの手書きを機械読み取りすることによって入力された文字を含んでいてもよく、それらの双方を含んでいてもよい。
【0052】
図1において、表紙2は、画像I1a、I1b、I2、I3c及びI3dを表示している。
画像I1a及びI2は、物体色の画像である。ここで、「物体色」は、光の吸収及び反射を利用して表示される色である。具体的には、或る物体が表示する「物体色」は、その物体を構成している材料の光学的性質、例えば反射スペクトル又は透過スペクトルに対応した色である。
【0053】
画像I1a及びI2は、白色光で照明し、肉眼で観察した場合に視認可能である。画像I1a及びI2の一方は省略してもよい。
【0054】
画像I1a及びI2は、例えば、染料及び顔料の少なくとも一方、又は、染料及び顔料の少なくとも一方と透明樹脂との混合物で構成することができる。この場合、画像I1a及びI2の形成には、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用することができる。或いは、画像I1a及びI2は、感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザビームで描画することにより形成することができる。或いは、これら方法の組み合わせを利用することができる。画像I2の少なくとも一部は、ホットスタンプを用いた熱転写記録法によって形成してもよく、印刷法によって形成してもよく、それらの組み合わせを利用して形成してもよい。
【0055】
画像I1bは、構造色の画像である。ここで、「構造色」は、光の屈折、回折、干渉、反射、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用して表示される色である。具体的には、或る物体が表示する「構造色」は、その物体を構成している材料の光学的性質、例えば屈折率スペクトル及び吸収スペクトルに加え、その物体の構造、例えば、表面若しくは界面の形状並びに層の厚さ及び数に応じて変化する色である。「構造色」を表示する物体を構成している材料は、典型的には、透明材料であるか、金属光沢を有し得る材料であるか、又はそれらの組み合わせである。
【0056】
「構造色」は、例えば、ホログラム、回折格子、光散乱構造、又はそれらの2つ以上の組み合わせによって表示することができる。また、複数の凹部及び/又は凸部を不規則に又は規則的に配置してなる構造は、凹部及び凸部の幅又は径に対する深さ又は高さの比が十分に大きく、且つ、凹部及び/又は凸部のピッチが十分に小さい場合には、入射光を閉じ込める効果を有し得る。即ち、低反射率を達成し得る。「構造色」は、このような構造、又は、このような構造とホログラム、回折格子及び光散乱構造の1つ以上との組み合わせによって表示してもよい。ここでは、一例として、画像I1bは、回折格子が表示する画像であるとする。画像I1bは、後で詳述するように、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法によって形成する。
【0057】
画像I1a及びI1bは、同一人物の顔画像を含んでいる。画像I1aが含んでいる顔画像と、画像I1bが含んでいる顔画像とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。画像I1aが含んでいる顔画像と、画像I1bが含んでいる顔画像とは、寸法が等しくてもよく、異なっていてもよい。また、画像I1a及びI1bの各々は、顔画像の代わりに他の生体情報を含んでいてもよく、顔画像に加えて顔画像以外の生体情報を更に含んでいてもよい。
【0058】
画像11bは、生体情報の代わりに非生体個人情報を含んでいてもよく、生体情報に加えて非生体個人情報を更に含んでいてもよい。また、画像11bは、個人情報に加えて非個人情報を更に含んでいてもよい。
【0059】
画像I2は、非生体個人情報と非個人情報とを含んでいる。画像I2は、例えば、文字、記号、符号及び標章の1つ以上を構成している。
【0060】
画像I3cの少なくとも一部は、画像I1aの背景を構成している。画像I3cは、例えば、物体色の画像であるか、又は、構造色の画像である。ここでは、一例として、画像I3cは、構造色の画像であるとする。
【0061】
画像I3dの少なくとも一部は、画像I1bの背景を構成している。画像I3dは、例えば、物体色の画像であるか、又は、構造色の画像である。ここでは、一例として、画像I3dは、物体色の画像であるとする。
【0062】
次に、表紙2の構造について、図2乃至図6を参照しながら説明する。
図2は、図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図である。図3は、図1に示すラベル付き物品の一部を拡大して示す平面図である。図4は、図1に示すラベル付き物品の他の部分を拡大して示す平面図である。図5は、図1に示すラベル付き物品の一部を拡大して示す断面図である。図6は、図1に示すラベル付き物品の他の部分を拡大して示す断面図である。
【0063】
なお、図3には、表紙2のうち画像I1a及びI3cに対応した部分の構造を描いている。また、図4には、表紙2のうち画像I1b及びI3dに対応した部分の構造を描いている。そして、図5及び図6は、それぞれ、表紙2のうち画像I1bを表示する部分が含んでいる構造と、表紙2のうち画像I3cを表示する部分が含んでいる構造とを描いている。
【0064】
表紙2は、図2に示すように、表紙本体21と画像表示体22とを含んでいる。
表紙本体21は、ラベル付き物品100の基材であって、典型的には紙片である。表紙本体21は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。表紙本体21は、ラベル付き物品100を閉じた状態において、折り丁1を挟み込むように二つ折りされている。
【0065】
画像表示体22は、多層構造を有している層である。画像表示体22は、ラベル付き物品100を閉じた状態において折り丁1と向き合う表紙本体21の主面に貼り付けられている。
【0066】
画像表示体22は、画像表示部220a乃至220dを含んでいる。画像表示部220a乃至220dは、図1に示す画像I1a、I1b、I3c及びI3dを表示する。画像表示体22は、図1に示す画像I2を表示する画像表示部(図示せず)を更に含むことができる。
【0067】
画像表示部220aは、図2に示すように、領域Aaに設けられている。画像表示部220aは、或る対象に関する情報を物体色の画像として表示する。ここでは、画像表示部220aは、図1に示す画像I1aを表示する。
【0068】
画像表示部220aは、例えば、染料及び顔料の少なくとも一方と任意の樹脂とを含んだ層である。画像表示部220aは、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用することにより得ることができる。この場合、画像表示部220aは、例えば、図3に示すように二次元的に配列した複数のドットからなる。
【0069】
画像表示部220bは、図2に示すように、領域Aaと隣り合った領域Abに設けられている。画像表示部220bは、先の対象に関する情報をレリーフ構造に由来する構造色の画像として表示する。ここでは、画像表示部220bは、図1に示す画像I1bを表示する。
【0070】
画像表示部220bは、例えば、図5に示すように回折構造形成層223bと反射層224bと接着層225bとを含んだ層である。反射層224bは、回折構造形成層223bと接着層225bとの間に介在している。画像表示部220bは、例えば、回折構造形成層223bと反射層224bとが接着層225bと表紙本体21との間に介在するように設けられる。
【0071】
回折構造形成層223bは、一方の主面にレリーフ型の回折格子が設けられた透明層である。回折構造形成層223bは、例えば、特定の照明方向から白色光で照明して、特定の観察方向から観察した場合に異なる色を表示する第1乃至第3部分を含んでいる。第1乃至第3部分は、回折格子の格子定数及び溝の長さ方向の少なくとも一方が互いに異なっている。特定の観察条件のもとで、第1乃至第3部分は、例えば、青、緑及び赤色を表示する。
【0072】
回折構造形成層223bの材料としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂及びポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリオールアクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンアクリレート、メラミンメタクリレート、トリアジンアクリレート及びトリアジンメタアクリレートなどの熱硬化性樹脂、これらの混合物、又はラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性材料を使用することができる。回折構造形成層223bは、光硬化性を有している樹脂を使用して形成してもよい。なお、このような透明樹脂を用いて得られる回折構造形成層223bは、典型的には、波長が550nmの光に対する屈折率が1.3乃至1.7の範囲内にある。
【0073】
反射層224bは、回折構造形成層223b上に形成されている。反射層224bは、回折構造形成層223bのレリーフ構造が設けられた面の少なくとも一部を被覆している。反射層224bは省略することができるが、反射層224bを設けると、回折構造が表示する画像の視認性が向上する。
【0074】
反射層224bとしては、例えば、透明反射層又は不透明な反射層を使用することができる。そのような反射層224bは、例えば、真空蒸着やスパッタリングなどの真空成膜法によって形成することができる。反射層224bが樹脂を含んでいる場合、反射層224bは、塗布又は印刷を利用して形成してもよい。
【0075】
反射層224bとして透明反射層を使用すると、反射層224bの背面側に絵柄及び文字等のパターンを配置した場合であっても、これを画像表示体22の前面側から視認することができる。
【0076】
透明反射層は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。後者の場合、透明反射層は、繰り返し反射干渉を生じるように設計されていてもよい。透明反射層の材料としては、例えば、硫化亜鉛及び二酸化チタンなどの透明誘電体を使用することができる。
【0077】
透明誘電体からなる単層構造の透明反射層は、典型的には、回折構造形成層223bと比較して、上述した波長の光に対する屈折率がより大きい。それらの屈折率の差は、例えば0.2以上である。透明反射層に単層構造を採用した場合、その厚さは例えば10nm乃至1000nmの範囲内とする。
【0078】
透明誘電体からなる多層構造の透明反射層は、典型的には、その回折構造形成層223bに最も近い層の上述した波長の光に対する屈折率が、回折構造形成層223bのこの波長の光に対する屈折率と比較してより大きい。それらの屈折率の差は、例えば0.2以上である。
【0079】
或いは、透明反射層として金属層を使用してもよい。金属層の材料としては、例えば、アルミニウム、錫、銅、銀、金及び鉄などの単体金属又はそれらの合金を使用することができる。金属層は、厚い場合には遮光性であるが、薄くすると透明になる。例えば、厚さが20乃至40nmの範囲内にあるアルミニウム層の場合、或る観察条件のもとでは金属光沢を観察できるが、観察角度を変更するとその背景が透けて見える。
【0080】
透明反射層として、より厚い金属層を使用することも可能である。例えば、比較的厚い金属層を形成し、これに肉眼での識別が困難な径又は幅の開口を多数設ける。例えば、この金属層を、網点又は万線状にパターニングする。これにより、金属材料からなる透明反射層を得ることができる。
【0081】
不透明な金属反射層の材料としては、例えば、透明反射層としての金属層に関して上述した材料を使用することができる。不透明な金属反射層は、典型的には、肉眼での識別が困難な径又は幅の開口は設けられておらず、光を遮るのに十分な厚さを有している。
【0082】
透明反射層又は不透明な反射層として、透明樹脂とこの中で分散した粒子とを含んだ層を使用してもよい。この粒子としては、例えば、単体金属及び合金などの金属材料からなる粒子、又は、透明金属酸化物及び透明樹脂などの透明誘電体からなる粒子を使用することができる。透明樹脂中には、粒子を分散させる代わりに、薄片を分散させてもよい。
【0083】
接着層225bは、反射層224b上に設けられている。接着層225bは、例えば熱可塑性樹脂からなる。
【0084】
接着層225bの材料としては、例えば、ウレタン樹脂、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩素化ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリビニルベンゼン、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、スチレンとメタクリル酸アルキル(但し、アルキル基の炭素数は2乃至6)とから得られるポリビニル樹脂などのビニル樹脂、ゴム系材料、又は、これらの2種以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0085】
接着層225bには、ワックス、ステアリン酸などの高級脂肪酸、その金属塩及びエステル、可塑剤、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂及びポリアクリロニトリルなどの有機材料からなる有機フィラー、並びにシリカからなどの無機材料からなる無機フィラーの1つ以上を添加してもよい。
【0086】
接着層225bは、画像表示体22の構成要素であってもよく、画像表示体22の構成要素でなくてもよい。また、このラベル付き物品1において、接着層225bは省略することができる。
【0087】
画像表示部220bは、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法により得ることができる。この場合、画像表示部220bは、例えば、図4に示すように二次元的に配列した複数のドットからなる。
【0088】
画像表示部220cは、図2に示すように、領域Aa及びAbと隣り合い且つ領域Aaと隣接した領域Acに設けられている。画像表示部220cは、画像表示部220aに対応した位置で、画像表示部220aに対応した形状に開口している。画像表示部220cは、画像表示部220aが表示する画像の背景を構造色の画像、例えばレリーフ構造に由来した構造色の画像として表示する。ここでは、画像表示部220cは、図1に示す画像I3cを表示する。
【0089】
画像表示部220cは、例えば、図6に示すように回折構造形成層223cと反射層224cと接着層225cとを含んだ層である。反射層224cは、回折構造形成層223cと接着層225cとの間に介在している。画像表示部220cは、例えば、回折構造形成層223cと反射層224cとが接着層225cと表紙本体21との間に介在するように設けられる。
【0090】
回折構造形成層223cは、一方の主面にレリーフ型の回折格子が設けられた透明層である。回折構造形成層223cは、例えば、特定の照明方向から白色光で照明して、特定の観察方向から観察した場合に異なる色を表示する第1乃至第3部分を含んでいる。第1乃至第3部分は、回折格子の格子定数及び溝の長さ方向の少なくとも一方が互いに異なっている。特定の観察条件のもとで、第1乃至第3部分は、例えば、青、緑及び赤色を表示する。
【0091】
回折構造形成層223cの材料としては、例えば、回折構造形成層223bについて上述したものを使用することができる。なお、このような透明樹脂を用いて得られる回折構造形成層223cは、典型的には、波長が550nmの光に対する屈折率が1.3乃至1.7の範囲内にある。
【0092】
反射層224cは、回折構造形成層223c上に形成されている。反射層224cは、回折構造形成層223cのレリーフ構造が設けられた面の少なくとも一部を被覆している。反射層224cは省略することができるが、反射層224cを設けると、回折構造が表示する画像の視認性が向上する。
【0093】
反射層224cとしては、例えば、反射層224bについて上述したものを使用することができる。また、反射層224cは、例えば、反射層224bについて上述した方法により形成することができる。
【0094】
接着層225cは、反射層224c上に設けられている。接着層225cは、例えば熱可塑性樹脂からなる。接着層225cの材料としては、例えば、接着層225bについて上述したものを使用することができる。
【0095】
画像表示部220cは、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法により得ることができる。この場合、画像表示部220cは、例えば、図3に示すように二次元的に配列した複数のドットからなる。
【0096】
画像表示部220dは、図2に示すように、領域Abと、領域Aa乃至Acと隣り合い且つ領域Abと隣接した領域Adとに設けられている。画像表示部220dの一部は、画像表示部220bと表紙本体21との間に介在している。画像表示部220dは、領域Adにおいて、画像表示部220bが表示する画像の背景、例えば微細な模様を、物体色の画像として表示する。ここでは、画像表示部220dは、図1に示す画像I3dを表示する。また、画像表示部220dは、領域Abにおいて、例えば、画像表示部220bが表示するのと同様の画像を表示する。或いは、画像表示部220dは、領域Abにおいて、画像表示部220bが表示するのとは異なる画像、例えば微細な模様を表示する。
【0097】
画像表示部220dは、例えば、染料及び顔料の少なくとも一方と任意の樹脂とを含んだ層である。画像表示部220dは、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用することにより得ることができる。この場合、画像表示部220dは、例えば、図4に示すように二次元的に配列した複数のドットからなる。
【0098】
画像表示部220a乃至220dの厚さは、例えば0.1μm乃至2.0μmの範囲内とする。画像表示部220a乃至220dは、厚さが互いに等しくてもよく、異なっていてもよい。また、画像表示部220a乃至220dの各々は、均一な厚さを有していてもよく、不均一な厚さを有していてもよい。
【0099】
画像表示部220a乃至220dの各々について、隣り合ったドットは、互いから離間していてもよく、互いに接していてもよい。後者の場合、隣り合ったドットは部分的に重なり合っていてもよい。この場合、図3及び図4に示すように複数のドットによって囲まれた隙間が存在していてもよく、そのような隙間は存在していなくてもよい。
【0100】
画像表示体22は、図2に示すように、画像表示部220a乃至220dに加え、中間層229と保護層227と接着層225とを更に含んでいる。
【0101】
中間層229は、第1及び第2主面を有している。ここでは、第1主面は前面であり、第2主面は、表紙本体21と向き合った背面である。画像形成層220b及び220cは中間層229の前面側に位置している。他方、画像形成層220a及び220dは、中間層229の背面側に位置している。
【0102】
中間層229は、光透過性を有している。例えば、中間層229は、全体が透明であるか又は一部が透明な層である。
【0103】
中間層229は、例えば、透明樹脂からなる。中間層229の材料としては、例えば、熱可塑性ポリアクリル酸エステル樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ニトロセルロース系樹脂、スリレンアクリレート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、及びポリカーボネート系樹脂等の樹脂を単独又は複合して使用することができる。中間層229は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0104】
中間層229の厚さは、例えば、1μm乃至20μmの範囲内とする。中間層229が薄い場合、情報を改竄するべく中間層229が部分的に除去されたとしても、画像表示体22を肉眼で観察することによってそのことを判別できない可能性がある。他方、中間層229が厚い場合、先の除去部に市販のフィルムを設けると、中間層229が市販のフィルムによって部分的に置き換えられたことを、画像表示体22を肉眼で観察することによって判別できない可能性がある。
【0105】
中間層229は、面内で均一な光学的性質を有していてもよい。或いは、中間層229は、面内で不均一な光学的性質を有していてもよい。
【0106】
また、中間層229は、ホログラム、回折格子、赤外線吸収層、蛍光層、及び物体色を表示する印刷パターンからなる群より選択される1つ以上を含んでいてもよい。このような中間層229は、部分的に除去された場合に、そのことを容易に判別することができる。なお、赤外線吸収層及び蛍光層は、連続膜であってもよく、格子状、島状又はストライプ状にパターニングされていてもよい。後者の場合、中間層229には、例えば、パターニングされた赤外線吸収層又は蛍光層とこれを支持した光透過層とを含んだ多層構造を採用する。ここでは、一例として、中間層229には、その全体に亘ってレリーフ型のホログラムが設けられていることとする。
【0107】
保護層227は、中間層229の前面を被覆している。保護層227と中間層229とは、画像表示部220b及び220cを間に挟んでいる。
【0108】
保護層227は、光透過性を有しており、典型的には透明である。保護層227は、画像表示部220a乃至220dなどの損傷を抑制する。保護層227は、省略することができる。
【0109】
保護層227は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び紫外線又は電子硬化樹脂などの樹脂からなる。転写箔を利用して画像表示体22を表紙本体21に貼り付ける場合は、柔軟性及び箔切れ性の観点で熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
【0110】
この熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸エステル樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ニトロセルロース系樹脂、スリレンアクリレート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、又はそれらの混合物を使用することができる。箔切れ性や耐摩性を考慮して、この樹脂に、石油系ワックス及び植物系ワックスなどのワックス、ステアリン酸などの高級脂肪酸、その金属塩、エステル及びシリコーンオイルなどの滑材、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂及びポリアクリロニトリルなどの有機材料からなる有機フィラー、並びにシリカからなどの無機材料からなる無機フィラーの1つ以上を添加してもよい。
【0111】
保護層227の厚さは、例えば、1μm乃至20μmの範囲内とする。保護層227が薄い場合、情報を改竄するべく保護層227が部分的に除去されたとしても、画像表示体22を肉眼で観察することによってそのことを判別できない可能性がある。他方、保護層227が厚い場合、先の除去部に市販のフィルムを設けると、保護層227が市販のフィルムによって部分的に置き換えられたことを、画像表示体22を肉眼で観察することによって判別できない可能性がある。
【0112】
保護層227は、面内で均一な光学的性質を有していてもよい。或いは、保護層227は、面内で不均一な光学的性質を有していてもよい。
【0113】
また、保護層227は、ホログラム、回折格子、赤外線吸収層、蛍光層、及び物体色を表示する印刷パターンからなる群より選択される1つ以上を含んでいてもよい。このような保護層227は、部分的に除去された場合に、そのことを容易に判別することができる。なお、赤外線吸収層及び蛍光層は、連続膜であってもよく、格子状、島状又はストライプ状にパターニングされていてもよい。後者の場合、保護層227には、例えば、パターニングされた赤外線吸収層又は蛍光層とこれを支持した光透過層とを含んだ多層構造を採用する。
【0114】
接着層225は、反射層224と表紙本体21との間に介在している。接着層225及び中間層229は、画像表示部220a及び220dを間に挟んでいる。
【0115】
接着層225は、例えば熱可塑性樹脂からなる。接着層225の材料としては、例えば、ウレタン樹脂、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩素化ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリビニルベンゼン、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、スチレンとメタクリル酸アルキル(但し、アルキル基の炭素数は2乃至6)とから得られるポリビニル樹脂などのビニル樹脂、ゴム系材料、又は、これらの2種以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0116】
接着層225には、ワックス、ステアリン酸などの高級脂肪酸、その金属塩及びエステル、可塑剤、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂及びポリアクリロニトリルなどの有機材料からなる有機フィラー、並びにシリカからなどの無機材料からなる無機フィラーの1つ以上を添加してもよい。
【0117】
接着層225は、画像表示体22の構成要素であってもよく、画像表示体22の構成要素でなくてもよい。また、接着層225は、省略することができる。
【0118】
この画像表示体22は、画像表示部220aを含んでいる。画像表示部220aは、或る人物の顔画像を物体色の画像として表示する。この物体色の顔画像は、通常の照明条件下で観察することができ、しかも、視認性に優れている。
【0119】
また、この画像表示体22は、画像表示部220aに加え、画像表示部220bを含んでいる。画像表示部220bは、レリーフ型の回折格子に由来する構造色の画像を表示する。レリーフ構造を利用した場合、パール顔料を使用した場合と比較して、精細度がより高い画像の表示が可能である。
【0120】
そして、この画像表示体22では、画像表示部220a及び220bは、同一人物の顔画像を表示する。画像表示部220bは、それ自体の偽像又は改竄が困難である。それ故、真正品としてのラベル付き物品100において、画像表示部220a及び220bが同一人物の顔画像、特には同一の顔画像を表示する場合、例えば、真正品であるか否かが不明のラベル付き物品が表示する2つの顔画像を比較することにより、その物品の真偽を判定することができる。
【0121】
また、画像表示部220bが表示する画像I1bの色は、照明方向及び観察方向などに応じて変化する。そして、画像表示部220bには、画像I1bとして、単色の平面画像、多色の平面画像、単色の立体画像、多色の立体画像、又はそれらの2つ以上の組み合わせを表示させることが可能である。即ち、この構成を採用すると、複雑な視覚効果を達成することができる。
【0122】
加えて、この画像表示体22では、画像表示部220aに物体色の画像I1aを表示させ、画像表示部220cに構造色の画像I3cを画像I1aの背景として表示させる。また、この画像表示体22では、画像表示部220bに構造色の画像I1bを表示させ、画像表示部220dに物体色の画像I3dを画像I1bの背景として表示させる。このように物体色の画像及び構造色の画像の一方を他方の背景とした場合、物体色の画像を物体色の画像の背景とした場合や、構造色の画像を構造色の画像の背景とした場合と比較して、より特殊な視覚効果を達成することができる。例えば、画像表示部220cに画像I3cとして立体感がある画像を表示させることにより、画像I1a及びI3cの組み合わせに、擬似的な立体画像を表示させることができる。
【0123】
また、この画像表示体22では、画像表示部220dは、領域Adだけでなく、領域Abにも設けられている。即ち、画像表示部220dの一部は、画像表示部220bと向き合っている。それ故、画像表示部220bが光透過性を有している場合、画像表示部220dが領域Abにおいて表示する画像は、画像表示部220bを介して透けて見える。即ち、この画像表示体22は、領域Abにおいて、物体色の画像と構造色の画像とを同時に表示する。即ち、この構成を採用すると、より複雑な視覚効果を達成することができる。
【0124】
また、顔画像などの生体情報は、その個体に特有である。それ故、この画像表示体22を他の個体のために不正に使用するには、画像表示部220a及び220bが表示する画像の双方を書き換えなければならない。即ち、画像表示部220a及び220bの各々を少なくとも部分的に除去しなければならない。それ故、この場合、これら画像の少なくとも一方が非生体情報である場合と比較して、画像表示体22の不正使用はより困難である。
【0125】
更に、この画像表示体22では、画像表示部220a及び220b間に、中間層229が介在している。この画像表示体22を含んだラベル付き物品100では、画像表示体22は、画像表示部220aが中間層229と表紙本体21との間に介在するように表紙本体21に支持されている。それ故、例えば前面側から又は裏面側から画像表示部220a及び220bの各々を少なくとも部分的に除去するためには、中間層229も少なくとも部分的に除去しなければならない。即ち、この画像表示体22に記録されている顔画像を他の人物の顔画像に書き換えるには、例えば、画像表示体22を表紙本体21から剥離し、画像表示体22の裏面側から画像表示部220aを除去し、次いで、中間層229の一部を除去して画像表示部220bを露出させ、その後、これを除去する必要がある。或いは、画像表示体22の前面側から画像表示部220bを除去し、次いで、中間層229の一部を除去して画像表示部220aを露出させ、その後、これを除去する必要がある。このような加工は、不可能であるか又は極めて困難である。しかも、特には保護層227及び中間層229の少なくとも一方がホログラム、回折格子、赤外線吸収層、蛍光層、及び物体色を表示する印刷パターンからなる群より選択される1つ以上を含んでいる場合、そのような加工が施された画像表示体22は、そのような加工が施されていない画像表示体22から比較的容易に判別することができる。
【0126】
また、この画像表示体22では、画像表示部220cは、画像表示部220aに対応した位置で及び画像表示部220aに対応した形状に開口しており、画像I1aの背景を構造色の画像I3cとして表示する。この構成を採用すると、画像表示部220aが表示する画像I1aのみを改竄したときに、改竄した画像I1aの輪郭と画像表示部220cに設けた開口とに形状又は位置の不一致を生じ易い。それ故、これを利用して、情報が改竄されたことを確認することができる。
【0127】
それ故、この画像表示体22は、記録された画像の改竄が困難である。従って、この画像表示体22を含んだラベル付き物品100は、不正使用され難い。
【0128】
このラベル付き物品100には、様々な変形が可能である。
図7は、図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の他の例を概略的に示す断面図である。
【0129】
図7に示すラベル付き物品100は、以下の点を除いて、図1乃至図6を参照しながら説明したラベル付き物品100と同様である。
【0130】
このラベル付き物品100の画像表示体22は、画像表示部220c及び220dを含んでいない。そして、画像表示部220aは、領域Aaだけでなく、領域Acにも設けられている。また、画像表示部220bは、領域Abだけでなく、領域Adにも設けられている。即ち、画像表示部220aは、図1に示す画像I1a及びI3cを物体色の画像として表示する。また、画像表示部220bは、図1に示す画像I1b及びI3dを構造色の画像として表示する。
【0131】
この構成を採用した場合、画像表示部220c及び220dを設けることに伴う効果が得られないことを除き、図1乃至図6を参照しながら説明した構成を採用した場合と同様の効果を得ることができる。
【0132】
なお、ここでは、画像表示部220aを領域Aaだけでなく領域Acにも設けているが、画像表示部220aは領域Acに設けなくてもよい。即ち、図1に示す画像I3cは省略してもよい。また、ここでは、画像表示部220bを領域Abだけでなく領域Adにも設けているが、画像表示部220bは領域Adに設けなくてもよい。即ち、図1に示す画像I3dは省略してもよい。
【0133】
図8は、図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図である。
【0134】
図8に示すラベル付き物品100は、以下の点を除いて、図1乃至図6を参照しながら説明したラベル付き物品100と同様である。
【0135】
このラベル付き物品100の画像表示体22は、画像表示部220cを含んでいない。そして、画像表示部220aは、領域Aaだけでなく、領域Acにも設けられている。即ち、画像表示部220aは、図1に示す画像I1a及びI3cを物体色の画像として表示する。
【0136】
この構成を採用した場合、画像表示部220cを設けることに伴う効果が得られないことを除き、図1乃至図6を参照しながら説明した構成を採用した場合と同様の効果を得ることができる。
【0137】
図9は、図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図である。
【0138】
図9に示すラベル付き物品100は、以下の点を除いて、図1乃至図6を参照しながら説明したラベル付き物品100と同様である。
【0139】
このラベル付き物品100の画像表示体22は、画像表示部220cを含んでいない。そして、画像表示部220aは、領域Aaだけでなく、領域Acにも設けられている。即ち、画像表示部220aは、図1に示す画像I1a及びI3cを物体色の画像として表示する。また、図9に示すラベル付き物品の画像表示体22は、物体色を表示する画像表示部220dの代わりに、光源色を表示する画像表示部220d’を含んでいる。画像表示部220d’は、例えば、蛍光体からなるか、又は、蛍光体と透明樹脂とを含んだ混合物からなる。
【0140】
この構成を採用した場合、画像表示部220cを設けることに伴う効果は得られない。また、画像表示部220d’が無色透明である場合には、画像表示部220dを設けることに伴う効果も得られない。但し、画像表示部220d’は、紫外光などの励起光を照射したときに光源色の画像を表示する。そして、画像表示部220d’が例えば無色透明である場合には、画像表示部220d’を潜像として利用することができる。
【0141】
即ち、画像表示部220d’が無色透明である場合、画像表示部220c及び220dを設けることに伴う効果は得られないことを除き、図1乃至図6を参照しながら説明した構成を採用した場合と同様の効果を得ることができる。加えて、この場合、画像表示部220d’を利用して、励起光を照射することによって可視化する潜像を記録することができる。それ故、このラベル付き物品100を真正品とした場合、真正品であるか否かが不明のラベル付き物品を励起光で照明して、この物品が表示する画像を観察することにより、その物品が真正品であるか否かを判別することができる。
【0142】
また、画像表示部220d’が有色透明であるか、無色不透明であるか、又は有色不透明である場合、画像表示部220cを設けることに伴う効果は得られないことを除き、図1乃至図6を参照しながら説明した構成を採用した場合と同様の効果を得ることができる。加えて、この場合、画像表示部220d’は、自然光で照明した場合と励起光で照明した場合とで異なる色を表示する。即ち、複雑な視覚効果を提供する。
【0143】
図10は、図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図である。
【0144】
図10に示すラベル付き物品100は、以下の点を除いて、図1乃至図6を参照しながら説明したラベル付き物品100と同様である。
【0145】
このラベル付き物品100の画像表示体22は、画像表示部220cを含んでいない。画像表示部220aは、領域Aaだけでなく、領域Acにも設けられている。即ち、画像表示部220aは、図1に示す画像I1a及びI3cを物体色の画像として表示する。また、画像表示部220dは、領域Abには設けられておらず、領域Adにのみ設けられている。
【0146】
この構成を採用した場合、以下の事項を除き、図1乃至図6を参照しながら説明した構成を採用した場合と同様の効果を得ることができる。即ち、この構成を採用した場合、画像表示部220cを設けることに伴う効果は得られない。また、画像表示部220bが光透過性を有していたとしても、画像表示部220bを介して画像表示部220dが透けて見えることはない。但し、この構成を採用した場合、画像表示部220bが表示する画像I1bを改竄したときに、改竄した画像I1bの輪郭と画像表示部220dに設けた開口とに形状又は位置の不一致を生じ易い。それ故、これを利用して、情報が改竄されたことを確認することができる。
【0147】
図11は、図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図である。
【0148】
図11に示すラベル付き物品100は、以下の点を除いて、図1乃至図6を参照しながら説明したラベル付き物品100と同様である。
【0149】
このラベル付き物品100の画像表示体22は、画像表示部220dを含んでいない。そして、画像表示部220bは、領域Abだけでなく、領域Adにも設けられている。即ち、画像表示部220bは、図1に示す画像I1b及びI3dを構造色の画像として表示する。また、画像表示部220cは、領域Acだけでなく、領域Aaにも設けられている。この画像表示部220cは、少なくとも領域Aaにおいて光透過性を有している。画像表示部220cは、図1に示すように、領域Abにおいて、画像I1aの背景として画像I3cを表示する。そして、画像表示部220cは、領域Aaにおいて、例えば、画像表示部220aが表示するのと同様の画像を表示する。或いは、画像表示部220cは、領域Aaにおいて、画像表示部220aが表示するのとは異なる画像、例えば微細な模様を表示する。
【0150】
この構成を採用した場合、以下の事項を除き、図1乃至図6を参照しながら説明した構成を採用した場合と同様の効果を得ることができる。即ち、この構成を採用した場合、画像表示部220dを設けることに伴う効果は得られない。但し、画像表示部220cの一部は画像表示部220aと向き合っているので、画像表示部220aが領域Aaにおいて表示する画像は、画像表示部220cを介して透けて見える。即ち、この画像表示体22は、領域Aaにおいて、物体色の画像と構造色の画像とを同時に表示する。それ故、この構成を採用すると、より複雑な視覚効果を達成することができる。
【0151】
図12は、図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図である。
【0152】
図12に示すラベル付き物品100は、以下の点を除いて、図1乃至図6を参照しながら説明したラベル付き物品100と同様である。
【0153】
このラベル付き物品100の画像表示体22は、画像表示部220dを含んでいない。そして、画像表示部220bは、領域Abだけでなく、領域Adにも設けられている。即ち、画像表示部220bは、図1に示す画像I1b及びI3dを構造色の画像として表示する。
【0154】
この構成を採用した場合、画像表示部220dを設けることに伴う効果が得られないことを除き、図1乃至図6を参照しながら説明した構成を採用した場合と同様の効果を得ることができる。
【0155】
以上の構成では、画像表示部220a及び220bをそれぞれ中間層229の背面側及び前面側に配置している。以下に説明するように、画像表示部220a及び220bは、それぞれ、中間層229の前面側及び背面側に配置することも可能である。
【0156】
図13は、図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図である。
【0157】
図13に示すラベル付き物品100は、以下の点を除いて、図1乃至図6を参照しながら説明したラベル付き物品100と同様である。
【0158】
このラベル付き物品100の画像表示体22は、画像表示部220c及び220dを含んでいない。画像表示部220aは、中間層229と保護層227との間に介在し、領域Aaだけでなく、領域Acにも設けられている。また、画像表示部220bは、中間層229と接着層225との間に介在し、領域Abだけでなく、領域Adにも設けられている。即ち、画像表示部220aは、図1に示す画像I1a及びI3cを物体色の画像として表示する。また、画像表示部220bは、図1に示す画像I1b及びI3dを構造色の画像として表示する。
【0159】
この構成を採用した場合、画像表示部220c及び220dを設けることに伴う効果が得られないことを除き、図1乃至図6を参照しながら説明した構成を採用した場合と同様の効果を得ることができる。
【0160】
図14は、図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図である。
【0161】
図14に示すラベル付き物品100は、以下の点を除いて、図1乃至図6を参照しながら説明したラベル付き物品100と同様である。
【0162】
このラベル付き物品100の画像表示体22は、画像表示部220cを含んでいない。画像表示部220aは、中間層229と保護層227との間に介在しており、領域Aaだけでなく、領域Acにも設けられている。即ち、画像表示部220aは、図1に示す画像I1a及びI3cを物体色の画像として表示する。また、この画像表示体22は、画像表示部220dの代わりに、図9を参照しながら説明した画像表示部220d’を含んでいる。画像表示部220d’は、中間層229と保護層227との間に介在している。更に、この画像表示体22では、画像表示部220dは、中間層229と接着層225との間に介在しており、領域Abには設けられておらず、領域Adにのみ設けられている。
【0163】
この構成を採用した場合、画像表示部220c及び220dを設けることに伴う効果は得られない。但し、画像表示部220d’は、紫外光などの励起光を照射したときに光源色の画像を表示する。そして、画像表示部220d’が例えば無色透明である場合には、画像表示部220d’を潜像として利用することができる。
【0164】
即ち、画像表示部220d’が無色透明である場合、画像表示部220c及び220dを設けることに伴う効果は得られないことを除き、図1乃至図6を参照しながら説明した構成を採用した場合と同様の効果を得ることができる。加えて、この場合、画像表示部220d’を利用して、励起光を照射することによって可視化する潜像を記録することができる。それ故、このラベル付き物品100を真正品とした場合、真正品であるか否かが不明のラベル付き物品を励起光で照明して、この物品が表示する画像を観察することにより、その物品が真正品であるか否かを判別することができる。
【0165】
また、画像表示部220d’が有色透明であるか、無色不透明であるか、又は有色不透明である場合、以下の事項を除き、図1乃至図6を参照しながら説明した構成を採用した場合と同様の効果を得ることができる。即ち、この構成を採用した場合、画像表示部220cを設けることに伴う効果は得られない。また、画像表示部220bが光透過性を有していたとしても、画像表示部220bを介して画像表示部220d’が透けて見えることはない。但し、この構成を採用した場合、画像表示部220bが表示する画像I1bを改竄したときに、改竄した画像I1bの輪郭と画像表示部220d’に設けた開口とに形状又は位置の不一致を生じ易い。それ故、これを利用して、情報が改竄されたことを確認することができる。
【0166】
図15は、図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図である。
【0167】
図15に示すラベル付き物品100は、以下の点を除いて、図1乃至図6を参照しながら説明したラベル付き物品100と同様である。
【0168】
このラベル付き物品100の画像表示体22では、画像表示部220aは中間層229と保護層227との間に介在し、画像表示部220b及び220cは中間層229と接着層225との間に介在している。この画像表示体22は、画像表示部220dを含んでいない。画像表示部220bは、領域Abだけでなく、領域Adにも設けられている。即ち、画像表示部220bは、図1に示す画像I1b及びI3dを構造色の画像として表示する。
【0169】
この構成を採用した場合、画像表示部220dを設けることに伴う効果が得られないことを除き、図1乃至図6を参照しながら説明した構成を採用した場合と同様の効果を得ることができる。
【0170】
図16は、図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図である。
【0171】
図16に示すラベル付き物品100は、以下の点を除いて、図1乃至図6を参照しながら説明したラベル付き物品100と同様である。
【0172】
このラベル付き物品100の画像表示体22では、画像表示部220a及び220dは中間層229と保護層227との間に介在し、画像表示部220bは中間層229と接着層225との間に介在している。この画像表示体22は、画像表示部220cを含んでいない。画像表示部220aは、領域Aaだけでなく、領域Acにも設けられている。即ち、画像表示部220aは、図1に示す画像I1a及びI3cを物体色の画像として表示する。また、画像表示部220dは、例えば、少なくとも領域Abにおいて光透過性を有している。或いは、画像表示部220dは、少なくとも領域Abにおいて、例えば、格子状、島状又はストライプ状のパターンを形成している。
【0173】
この構成を採用した場合、以下の事項を除き、図1乃至図6を参照しながら説明した構成を採用した場合と同様の効果を得ることができる。即ち、この構成を採用した場合、画像表示部220cを設けることに伴う効果は得られない。但し、画像表示部220dの一部は画像表示部220bと向き合っているので、画像表示部220bが領域Abにおいて表示する画像は、画像表示部220dを介して透けて見える。即ち、この画像表示体22は、領域Abにおいて、物体色の画像と構造色の画像とを同時に表示する。それ故、この構成を採用すると、より複雑な視覚効果を達成することができる。
【0174】
上述した構成においては、画像表示部220b及び220cの各々はレリーフ型の回折格子を含んでいる。画像表示部220b及び220cの少なくとも一方は、レリーフ型の回折格子の代わりにレリーフ型のホログラムを含んでいてもよい。或いは、画像表示部220b及び220cの少なくとも一方は、レリーフ型の回折格子に加えて、レリーフ型のホログラムを含んでいてもよい。或いは、画像表示部220b及び220cの少なくとも一方は、レリーフ型の回折格子の代わりに又はレリーフ型の回折格子に加えて、以下に説明するレリーフ型の光散乱構造又はこの光散乱構造とレリーフ型ホログラムとの組み合わせを含んでいてもよい。
【0175】
図17は、光散乱を利用して構造色を表示する画像表示部に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図である。図18は、光散乱を利用して構造色を表示する画像表示部に採用可能な構造の他の例を概略的に示す斜視図である。図19は、光散乱を利用して構造色を表示する画像表示部に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す斜視図である。
【0176】
図17に示す構造では、Z方向に対して垂直な界面IFに、複数の凹部及び/又は凸部RPが設けられている。凹部及び/又は凸部RPは、各々がX方向に延びた形状を有しており、Y方向に配列している。凹部及び/又は凸部RPは、X方向に沿った長さが不均一であり、X方向及びY方向における位置も不規則である。
【0177】
この構造は、例えば白色光で照明すると、X方向に垂直な面内において高い光散乱能を示し、Y方向に垂直な面内においては低い光散乱能を示す。従って、この構造は、散乱光の射出方向を制限することが望まれる場合、即ち光散乱異方性が望まれる場合に適している。
【0178】
この構造においては、凹部及び/又は凸部RPの配置を変更することにより、光散乱異方性が変化する。例えば、凹部及び/又は凸部RPのY方向における密度を高くすると、光散乱異方性が大きくなる。また、凹部及び/又は凸部RPの長さを短くするか又はそれらの長さ方向の均一性を低下させると、光散乱異方性が小さくなる。
【0179】
なお、図17において、凹部及び/又は凸部RPの長さ方向は、X方向に対して平行である。凹部及び/又は凸部RPの長さ方向は、X方向に対して交差していてもよい。また、図17において、凹部及び/又は凸部RPの長さ方向は、一方向に揃っている。上述した光散乱異方性が得られる限り、凹部及び/又は凸部RPの長さ方向は一方向に揃っていなくてもよい。
【0180】
図18に示す構造では、凹部及び/又は凸部RPは、直方体形状を有している。凹部及び/又は凸部RPは、各々がX方向に延びた形状を有しており、Y方向に配列している。凹部及び/又は凸部RPは、X方向及びY方向における位置が不規則であり、X方向及びY方向の寸法も不規則である。このように、光散乱異方性は、凹部及び/又は凸部RPの寸法を変更することによっても変化させることができる。
【0181】
図19に示す構造では、凹部及び/又は凸部RPは、楕円柱形状を有している。凹部及び/又は凸部RPは、各々がX方向に延びた形状を有しており、Y方向に配列している。凹部及び/又は凸部RPは、X方向及びY方向における位置が不規則であり、X方向及びY方向の寸法も不規則である。このように、光散乱異方性は、凹部及び/又は凸部RPの形状を変更することによっても変化させることができる。
【0182】
光散乱異方性を有している光散乱構造は、例えば、立体画像の表示に利用可能である。即ち、右眼用のサブ画素と左眼用のサブ画素とからなる画素をマトリクス状に配置する。右眼用のサブ画素の一部には、右眼用の視差画像を表示させるべく、右眼用の光散乱構造を設ける。他方、左眼用のサブ画素の一部には、左眼用の視差画像を表示させるべく、左眼用の光散乱構造を設ける。右眼用の光散乱構造と左眼用の光散乱構造とは、凹部及び/又は凸部RPの長さ方向が異なっている。このような構成を採用すると、屋内において典型的な拡散光照明条件下において、拡散光を利用した立体画像の表示が可能となる。
【0183】
画像表示部220b及び220cの少なくとも一方は、以下に説明するレリーフ構造を含んでいてもよい。
【0184】
図20は、構造色として暗色を表示する画像表示部に採用可能な構造の一例を概略的に示す斜視図である。
【0185】
図20に示す構造では、界面IFには、二次元的に配列した複数の凹部及び/又は凸部RPが設けられている。この例では、凹部及び/又は凸部RPは、X方向とY方向とに格子状に配列している。凹部及び/又は凸部RPは、斜めに交差する2方向に格子状に配列していてもよい。
【0186】
凹部及び/又は凸部RPの各々は、先細り形状を有している。先細り形状は、例えば、半紡錘形状、円錐及び角錐などの錐体形状、又は切頭円錐及び切頭角錐などの切頭錐体形状である。凸部PRの側面は、傾斜面のみで構成されていてもよく、階段状であってもよい。先細り形状は、図20に示すレリーフ構造の光反射率を小さくするのに役立つ。凹部及び/又は凸部RPは、先細り形状を有していなくてもよい。
【0187】
凹部及び/又は凸部RPは、回折格子を形成している。但し、凹部及び/又は凸部RPの中心間距離は、通常の回折格子の格子定数と比較して短い。凹部及び/又は凸部RPの中心間距離は、例えば400nm以下である。
【0188】
凹部及び/又は凸部RPの高さ又は深さのそれらの中心間距離に対する比は、例えば1/2倍以上であり、典型的には1倍以上である。この比が大きいほど、レリーフ構造の反射率が小さくなる。
【0189】
このレリーフ構造は、反射率が小さいため、暗灰色乃至黒色に見える。また、このレリーフ構造は、凹部及び/又は凸部RPの中心間距離が小さいため、視感度が高い回折光を正面方向に射出することはなく、限られた角度範囲内にのみ射出する。即ち、このレリーフ構造は、暗灰色乃至黒色印刷層の如く見える。そして、このレリーフ構造は、回折光を射出し得ることを悟られ難い。
【0190】
なお、図20に示す構造では、凹部及び/又は凸部RPは規則的に配置されているが、凹部及び/又は凸部RPは不規則に配置されていてもよい。そのようなレリーフ構造は、回折光を射出しないが、暗灰色乃至黒色印刷層の如く見える。
【0191】
次に、上述したラベル付き物品100の製造方法を説明する。
図21は、図1に示すラベル付き物品の製造に利用可能な製造装置の一例を概略的に示す図である。
【0192】
図21に示す製造装置500は、例えば、図2を参照しながら説明した構造を採用したラベル付き物品100の製造に利用可能である。
【0193】
ラベル付き物品100の製造においては、例えば、まず、撮像装置を用いて、人物の顔を撮影する。或いは、印画から顔画像を読み取る。これにより、画像情報を電子情報として得る。この顔画像は、必要に応じて画像処理する。
【0194】
次に、図21に示す製造装置500を用いて、物品100’上に、図2に示す画像表示体22を形成する。なお、物品100’は、画像表示体22を省略したラベル付き物品100、ここでは冊子本体である。
【0195】
図21に示す製造装置500を用いた画像表示体22の形成に際しては、熱転写リボン520ac、520bc、527及び529を準備しておく。
【0196】
熱転写リボン520adは、ロール540bに巻かれている。熱転写リボン520adは、帯状の第1支持体と、その上に形成された第1転写材層とを含んでいる。第1転写材層は、第1支持体によって剥離可能に支持されている。第1転写材層の一部は画像形成層220aとして使用し、第1転写材層の他の一部は画像形成層220dとして使用する。
【0197】
熱転写リボン520bcは、ロール540dに巻かれている。熱転写リボン520bcは、帯状の第2支持体と、その上に形成された第2転写材層とを含んでいる。第2転写材層は、第2支持体によって剥離可能に支持されている。第2転写材層の一部は画像形成層220bとして使用し、第2転写材層の他の一部は画像形成層220cとして使用する。
【0198】
熱転写リボン527は、ロール540cに巻かれている。熱転写リボン527は、帯状の第3支持体と、その上に形成された第3転写材層とを含んでいる。第3転写材層は、第3支持体によって剥離可能に支持されている。第3転写材層の一部は保護層227として使用する。
【0199】
熱転写リボン529は、ロール540aに巻かれている。熱転写リボン529は、帯状の第4支持体と、その上に形成された第4転写材層とを含んでいる。第4転写材層は、第4支持体によって剥離可能に支持されている。第4転写材層の一部は中間層229として使用する。
【0200】
以上の熱転写リボン520ac、520bc、527及び529を準備したうえで、熱転写リボン529及び520adを、それぞれ、ロール540a及び540bから繰り出し、それらの転写材層が向き合うように熱転写印字装置550aへと送る。熱転写印字装置550aにおいては、熱転写リボン520adの第1転写材層の一部を、画像表示部220a及び220dとして、その第1支持体から熱転写リボン529の第4転写材層上へと熱転写する。
【0201】
この熱転写に使用した熱転写リボン520adは、ロール570aに巻き取る。他方、画像表示部220a及び220dを形成した熱転写リボン529は、ガイドローラ580aによって案内して、物品100’とともに熱転写装置560aへと送る。
【0202】
熱転写装置560aにおいては、熱転写リボン529の第4転写材層の一部を、画像表示部220a及び220dとともに、その第4支持体から物品100’の表紙本体12上へと熱転写する。これにより、表紙本体21上に、画像表示部220a及び220d並びに中間層229を形成する。
【0203】
なお、この熱転写は、熱転写リボン529と表紙本体12との間に接着層225を介在させて行ってもよい。例えば、熱転写リボン529及び表紙本体21の少なくとも一方の上に接着層225を形成しておき、その後、熱転写を行ってもよい。
【0204】
この熱転写に使用した熱転写リボン529は、ガイドローラ580b及び580cによって案内して、巻取りロール570aに巻き取る。他方、この熱転写を終えた物品100’は、熱転写装置560bへと送る。
【0205】
以上の操作と並行して、熱転写リボン527及び520bcを、それぞれ、ロール540c及び540dから繰り出し、それらの転写材層が向き合うように熱転写印字装置550bへと送る。熱転写印字装置550bにおいては、熱転写リボン520bcの第2転写材層の一部を、画像表示部220b及び220cとして、その第2支持体から熱転写リボン527の第3転写材層上へと熱転写する。
【0206】
この熱転写に使用した熱転写リボン520bcは、ロール570cに巻き取る。他方、画像表示部220b及び220cを形成した熱転写リボン527は、ガイドローラ580dによって案内して、熱転写装置560から送り出した物品100’とともに熱転写装置560bへと送る。
【0207】
熱転写装置560bにおいては、熱転写リボン527の第3転写材層の一部を、画像表示部220b及び220cとともに、その第3支持体から物品100’の表紙本体12上に設けられた中間層229上へと熱転写する。これにより、中間層229上に、画像表示部220b及び220c並びに保護層227を形成する。
【0208】
なお、この熱転写は、熱転写リボン527と中間層229との間に接着層を介在させて行ってもよい。例えば、熱転写リボン527及び中間層229の少なくとも一方の上に接着層を形成しておき、その後、熱転写を行ってもよい。
【0209】
この熱転写に使用した熱転写リボン527は、ガイドローラ580fによって案内して、巻取りロール570bに巻き取る。そして、この熱転写を終えた物品100’は、ラベル付き物品100として熱転写装置560bから送り出す。
以上のようにして、ラベル付き物品100を完成する。
【0210】
なお、図7、図8及び図10乃至図12を参照しながら説明したラベル付き物品100は、上記の方法において画像表示部220c及び220dの一方又は双方の形成を省略することによって製造することができる。図9を参照しながら説明したラベル付き物品100は、上記の方法において画像表示部220c及び220dの形成を省略し、画像表示部220d’を形成する工程を追加することによって製造することができる。図13、図15及び図16を参照しながら説明したラベル付き物品100は、上記の方法において、熱転写リボン520ad及び520cdをそれぞれロール540d及び540bに巻き、画像表示部220c及び220dの一方又は双方の形成を省略することによって製造することができる。そして、図14を参照しながら説明したラベル付き物品100は、上記の方法において、熱転写リボン520ad及び520cdをそれぞれロール540d及び540bに巻き、画像表示部220c及び220dの形成を省略し、画像表示部220d’を形成する工程を追加することによって製造することができる。
【0211】
上記の方法では、熱転写を利用して画像表示部220b及び220cを形成しているが、画像表示部220b及び220cは、他の方法により形成してもよい。例えば、保護層227上に、回折又は散乱を生じさせるレリーフ構造が一方の主面に設けられた光透過層を予め形成しておく。次いで、このレリーフ構造の回折能又は散乱能を部分的に消失させるか又は部分的に低下させる。例えば、レーザビームなどのエネルギービームを照射して、レリーフ構造の一部を破壊する。或いは、インクジェット印刷などの印刷によってレリーフ構造の一部の上に光透過層と屈折率がほぼ等しい材料、例えば無色の樹脂、典型的には無色透明の樹脂を供給し、滑らかな表面を有しているパターンを形成する。或いは、レリーフ構造の一部にインクジェット印刷などの印刷によってレリーフ構造の一部の上に溶剤を供給し、この供給部において光透過層の表面を溶解させる。その後、必要に応じて、レリーフ構造の上に反射層を形成する。例えば、真空蒸着及びスパッタリングなどの気相堆積法によって反射層を形成する。或いは、金属粒子と透明樹脂との混合物などの光反射性の材料をレリーフ構造に塗布することによって反射層を形成する。以上のようにして、画像表示部220b及び220cを得る。
【0212】
画像表示部220b及び220cは、以下の方法により形成してもよい。即ち、回折又は散乱を生じさせるレリーフ構造が一方の主面に設けられた光透過層を、保護層227上に予め形成しておく。そして、インクジェット印刷などの印刷によって、レリーフ構造の一部の上に光反射性の材料を供給する。これにより、反射層として、光反射性のパターンを得る。光反射性パターンに対応した部分は、光反射性パターンの開口に対応した部分と比較して回折能又は散乱能がより高い。従って、このような方法でも、画像表示部220b及び220cを得ることができる。
【0213】
また、上記の方法では、熱転写を利用して画像表示部220a及び220dを形成しているが、画像表示部220a及び220dは、他の方法により形成してもよい。例えば、画像表示部220a及び220dは、インクジェット印刷などの印刷を利用して形成してもよい。
【0214】
図21を参照しながら説明した方法では、物品100’への熱転写を2回行う。ラベル付き物品100は、物品100’へ熱転写を1回行うことによって製造することも可能である。
【0215】
図22は、図1に示すラベル付き物品の製造に利用可能な転写箔の一例を概略的に示す図である。
【0216】
図22に示す転写箔201は、転写材層22’と、これを剥離可能に支持した支持体221とを含んでいる。
【0217】
支持体221は、例えば樹脂フィルム又はシートである。支持体221は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの耐熱性に優れた材料からなる。支持体221の転写材層22’を支持している主面には、例えばフッ素樹脂又はシリコーン樹脂を含んだ離型層が設けられていてもよい。
【0218】
転写材層22’は、保護層227と中間層229と接着層225と画像形成層220a乃至220dとを含んでいる。保護層227、中間層229及び接着層225は、支持体221側からこの順に積層されている。画像形成層220a及び220dは、中間層229と接着層225との間に介在している。画像形成層220b及び220cは、中間層229と保護層227との間に介在している。
【0219】
転写材層22’の全体又は一部は、ラベル付き物品100の製造に利用する。転写材層22’又はその一部は、図2に示す画像表示体22と同様である。
【0220】
ラベル付き物品100の製造においては、例えば、まず、撮像装置を用いて、人物の顔を撮影する。或いは、印画から顔画像を読み取る。これにより、画像情報を電子情報として得る。この顔画像は、必要に応じて画像処理する。この画像情報を利用して、支持体221上に転写材層22’を形成する。次いで、転写材221の少なくとも一部を、支持体221から物品100’上へと熱転写する。以上のようにして、ラベル付き物品100を得る。
【0221】
以上、ラベル付き物品としてパスポートを記載したが、上述した技術は、パスポート以外の個人認証媒体に適用することも可能である。例えば、上述した技術は、オリンピック大会などの大会で使用する大会身分証(accreditation card)及びクレジットカードに適用することができる。
【0222】
ラベル付き物品の大きさに制限はない。ラベル付き物品を個人認証に利用する場合、その携帯が容易であることが望ましい。オリンピック大会などの大会で使用する大会身分証の寸法は、例えば、約95mm×約150mmである。パスポートのデータ頁の寸法は、例えば、約125mm×約88mmである。クレジットカードの寸法は、例えば、役86mm×約54mmである。
【0223】
画像表示体を支持させる物品の形状に制限はないが、一般には、この物品は、冊子及びカード基材のように層を含んでいる。この層の厚さは、例えば20μm乃至1000μmの範囲内にあり、典型的には50μm乃至800μmの範囲内にある。
【0224】
画像表示体は、例えば、普通紙、コート紙及び合成紙などの紙に支持させることができる。なお、合成紙は、例えば、ポリプロピレン及びポリスチレンなどプラスチックと炭酸カルシウムなどの無機充填材とを含んだ層である。或いは、合成紙は、そのような層と普通紙との複合材である。
【0225】
画像表示体は、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートなどのプラスチックからなる層に支持させてもよい。或いは、画像表示体は、セラミックスからなる層に支持させてもよい。
【0226】
物品の表面のうち画像表示体を支持させる領域は、その全体に亘って単一の色を有していてもよい。或いは、この領域は、色が互いに異なる複数のサブ領域を含んでいてもよい。画像表示体が表示する画像の視認性を考慮し、先の領域を、白色顔料、例えば、チタンホワイト、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、シリカ、タルク、クレー又は炭酸カルシウムによって白色に着色してもよい。
【0227】
上述した技術は、個人認証以外の認証に利用することも可能である。即ち、上述した技術は、ヒト以外の生体の認証に利用してもよく、生体以外の認証に利用してもよい。例えば、上述した技術は、ヒト以外の動物、植物、細菌、証券、工業製品、農産物、海産物又は美術品の認証に利用することができる。
【0228】
また、上述した技術は、認証以外の目的で利用することも可能である。例えば、ラベル付き物品又は画像表示体は、玩具、装飾品又は学習教材として利用することができる。
【符号の説明】
【0229】
1…折り丁、2…表紙、11…紙片、21…表紙本体、22…画像表示体、22’…転写材層、100…ラベル付き物品、100’…物品、201…転写箔、220a…画像表示部、220b…画像表示部、220c…画像表示部、220d…画像表示部、220d’…画像表示部、221…支持体、223b…回折構造形成層、223c…回折構造形成層、224b…反射層、224c…反射層、225b…接着層、225c…接着層、229…中間層、227…保護層、225…接着層、500…製造装置、520ac…熱転写リボン、520bc…熱転写リボン、527…熱転写リボン、529…熱転写リボン、540a…ロール、540b…ロール、540c…ロール、540d…ロール、550a…熱転写印字装置、550b…熱転写印字装置、560a…熱転写装置、560b…熱転写装置、570a…巻取りロール、570b…巻取りロール、570c…巻取りロール、570d…巻取りロール、580a…ガイドローラ、580b…ガイドローラ、580c…ガイドローラ、580d…ガイドローラ、580e…ガイドローラ、580f…ガイドローラ、Aa…領域、Ab…領域、Ac…領域、Ad…領域、I1a…画像、I1b…画像、I2…画像、I3c…画像、I3d…画像、IF…界面、RP…凹部及び/又は凸部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば個人認証に利用可能な画像表示技術に関する。
【背景技術】
【0002】
パスポート及びID(identification)カードなどの個人認証媒体の多くは、目視による個人認証を可能とするために、顔画像を使用している。
【0003】
例えば、パスポートでは、従来、顔画像を焼き付けた印画紙を冊子体に貼り付けていた。しかしながら、そのようなパスポートには、写真印画の貼り替えによる改竄のおそれがある。
【0004】
このような理由で、近年では、顔画像の情報をデジタル化し、これを冊子体上に再現する傾向にある。この画像再現方法としては、例えば、転写リボンを用いた感熱転写記録法が検討されている。
【0005】
しかしながら、昨今、昇華性染料又は着色した熱可塑性樹脂を使用する感熱転写記録方式のプリンタは広く普及している。この状況を考慮すると、パスポートから顔画像を取り除き、そこに別の顔画像を記録することは、必ずしも困難ではない。
【0006】
特許文献1には、上述した方法で顔画像を記録し、その上に蛍光インキを用いて顔画像を記録することが記載されている。また、特許文献2には、無色又は淡色の蛍光染料と有色の顔料とを含有したインキを用いて顔画像を記録することが記載されている。更に、特許文献3には、通常の顔画像と、パール顔料を用いて形成した顔画像とを並べて配置することが記載されている。
【0007】
これら技術をパスポートに適用すると、その改竄がより困難になる。しかしながら、蛍光材料を用いて記録した顔画像は、紫外線ランプなどの特殊な光源を使用しない限り観察することはできない。また、パール顔料を用いて形成した顔画像は、肉眼で視認することはできるものの、パール顔料は粒径が大きいため、これを用いて高精細な画像を形成することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−141863号公報
【特許文献2】特開2002−226740号公報
【特許文献3】特開2003−170685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、高精細な画像を表示し且つ記録された画像の改竄が困難な画像表示体を実現可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1側面は、第1及び第2主面を有している光透過性の中間層と、前記第1主面上に設けられ、或る対象に関する第1情報を物体色の第1画像として表示する第1画像表示部と、前記第2主面上に設けられ、前記対象に関する第2情報をレリーフ構造に由来する構造色の第2画像として表示する第2画像表示部とを具備した画像表示体である。
【0011】
本発明の第2側面は、前記対象は生体であり、前記第1及び第2情報の各々は生体情報である第1側面に係る画像表示体である。
【0012】
本発明の第3側面は、前記第1画像表示部は前記第1画像として顔画像を表示し、前記第2画像表示部は前記第2画像として顔画像を表示する第2側面に係る画像表示体である。
【0013】
本発明の第4側面は、前記生体は人物であり、前記画像表示体は個人認証に使用される第2又は第3側面に係る画像表示体である。
【0014】
本発明の第5側面は、前記中間層を間に挟んで前記第2画像表示部と向き合い、前記第2画像表示部に対応した位置で及び前記第2画像表示部に対応した形状に開口し、励起光を照射したときに光源色の画像を表示する第3画像表示部を更に具備した第1乃至第4側面の何れかに係る画像表示体である。
【0015】
本発明の第6側面は、前記第1主面上に設けられ、前記第2画像表示部に対応した位置で及び前記第2画像表示部に対応した形状に開口し、前記第2画像の背景を物体色の画像として表示するか、又は、励起光を照射したときに前記第2画像の背景を光源色の画像として表示する第3画像表示部を更に具備した第1乃至第4側面の何れかに係る画像表示体である。
【0016】
本発明の第7側面は、前記第2主面上に設けられ、前記第1画像表示部に対応した位置で及び前記第1画像表示部に対応した形状に開口し、前記第1画像の背景を構造色の画像として表示する第4画像表示部を更に具備した第1乃至第6側面の何れかに係る画像表示体である。
【0017】
本発明の第8側面は、前記第2画像表示部は、回折光を射出するレリーフ構造を含み、前記回折光によって前記第2画像を表示する第1乃至第7側面の何れかに係る画像表示体である。
【0018】
本発明の第9側面は、前記第2画像表示部は、散乱光を射出するレリーフ構造を含み、前記散乱光によって前記第2画像を表示する第1乃至第7側面の何れかに係る画像表示体である。
【0019】
本発明の第10側面は、前記中間層は、ホログラム、回折格子、赤外線吸収層、蛍光層、及び物体色を表示する印刷パターンからなる群より選択される1つ以上を含んでいる第1乃至第9側面の何れかに係る画像表示体である。
【0020】
本発明の第11側面は、前記第1又は第2画像表示部を間に挟んで前記中間層と向き合った光透過性の保護層を更に具備し、前記保護層は、ホログラム、回折格子、赤外線吸収層、蛍光層、及び物体色を表示する印刷パターンからなる群より選択される1つ以上を含んでいる第1乃至第10側面の何れかに係る画像表示体である。
【0021】
本発明の第12側面は、第1乃至第11側面の何れかに係る画像表示体と、前記画像表示体を支持した基材とを具備したラベル付き物品である。
【0022】
本発明の第13側面は、前記基材はカード基材又は冊子である第12側面に係るラベル付き物品である。
【0023】
本発明の第14側面は、個人認証に使用される第12又は第13側面に係るラベル付き物品である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、高精細な画像を表示し且つ記録された画像の改竄が困難な画像表示体を実現することが可能となる。
【0025】
本発明の第1側面に係る画像表示体は、第1画像表示部を含んでいる。第1画像表示部は、或る対象に関する第1情報を物体色の第1画像として表示する。物体色の第1画像は、通常の照明条件下で観察することができ、しかも、視認性に優れている。
【0026】
この画像表示体は、第1画像表示部に加え、第2画像表示部を含んでいる。この第2画像表示部は、レリーフ構造に由来する構造色の第2画像を表示する。レリーフ構造を利用した場合、パール顔料を使用した場合と比較して、精細度がより高い画像を表示することができる。また、このような第2画像表示部は、それ自体の偽像又は改竄が困難である。
【0027】
しかも、この画像表示体では、同一の対象に関する情報を第1及び第2画像表示部に表示させる。そのため、この対象に関する情報を他の対象に関する情報へと書き換えるには、第1及び第2画像表示部の各々を少なくとも部分的に除去しなければならない。
【0028】
更に、この画像表示体では、第1及び第2画像表示部間に、中間層が介在している。それ故、例えば前面側から又は裏面側から第1及び第2画像表示部の各々を少なくとも部分的に除去するためには、中間層も少なくとも部分的に除去しなければならない。即ち、この画像表示体に記録されている先の対象に関する第1及び第2情報の各々を他の対象の情報に書き換えるには、例えば、第1及び第2画像表示部の一方を除去し、次いで、中間層を少なくとも部分的に除去して第1及び第2画像表示部の他方を露出させ、その後、これを除去する必要がある。このような加工は、不可能であるか又は極めて困難である。しかも、そのような加工が施された画像表示体は、肉眼での観察によって、そのような加工が施されていない画像表示体から比較的容易に判別することができる。
【0029】
それ故、第1側面に係る画像表示体は、高精細な画像を表示するのに加え、記録された画像の改竄が困難である。
【0030】
本発明の第2側面に係る画像表示体では、第1及び第2情報の各々は生体情報である。生体情報は、その個体に特有である。それ故、この画像表示体を他の個体のために不正に使用するには、第1及び第2情報の双方を書き換えなければならない。それ故、この場合、第1及び第2情報の少なくとも一方が非生体情報である場合と比較して、画像表示体の不正使用はより困難である。
【0031】
本発明の第3側面に係る画像表示体では、第1及び第2画像表示部は顔画像を表示する。顔画像は、目視による個体認証に最も適した画像の1つである。
【0032】
本発明の第4側面に係る画像表示体では、上記生体は人物であり、画像表示体は個人認証に使用される。このような用途は、上記画像表示体の最も利用価値が大きな用途の1つである。
【0033】
本発明の第5側面に係る画像表示体は、中間層を間に挟んで第2画像表示部と向き合い、励起光を照射したときに光源色の画像を表示する第3画像表示部を更に具備している。このような画像表示体は、励起光を照明する照明条件下において、太陽光及び屋内照明光などの通常の照明条件下とは色及び形状の少なくとも一方が異なる画像を表示する。即ち、この画像表示体は、より複雑な視覚効果を与える。また、第2及び第3画像表示部間には中間層が介在しているので、第2及び第3パターンが表示する画像を書き換えるためには、第2及び第3パターンに加えて中間層を少なくとも部分的に除去しなければならない。即ち、この画像表示体は、情報の改竄がより困難であり、それ故、不正使用がより困難である。
【0034】
本発明の第6側面に係る画像表示体は、第1主面上に設けられた第3画像表示部を更に具備している。第3画像表示部は、第2画像表示部に対応した位置で及び第2画像表示部に対応した形状に開口しており、第2画像の背景を物体色の画像として表示するか、又は、励起光を照射したときに第2画像の背景を光源色の画像として表示する。この構成を採用した場合、第2画像表示部が表示する第2画像のみを改竄したときに、改竄した第2画像の輪郭と第3画像表示部に設けた開口とに形状又は位置の不一致を生じ易い。それ故、これを利用して、情報が改竄されたことを確認することができる。
【0035】
本発明の第7側面に係る画像表示体は、第2主面上に設けられた第4画像表示部を更に具備している。第4画像表示部は、第1画像表示部に対応した位置で及び第1画像表示部に対応した形状に開口しており、第1画像の背景を構造色の画像として表示する。この構成を採用した場合も、第1画像表示部が表示する第1画像のみを改竄したときに、改竄した第1画像の輪郭と第4画像表示部に設けた開口とに形状又は位置の不一致を生じ易い。それ故、これを利用して、情報が改竄されたことを確認することができる。
【0036】
本発明の第8側面に係る画像表示体において、第2画像表示部は、回折光を射出するレリーフ構造を含み、この回折光によって第2画像を表示する。それ故、第2画像の色は、照明方向及び観察方向などに応じて変化する。即ち、この構成を採用すると、複雑な視覚効果を達成することができる。
【0037】
本発明の第9側面に係る画像表示体において、第2画像表示部は、散乱光を射出するレリーフ構造を含み、この散乱光によって第2画像を表示する。第2画像表示部は散乱光によって第2画像を表示するので、この画像表示体を例えば凹凸表面に貼り付けた場合であっても、この凹凸表面が第2画像の画質に及ぼす影響は比較的小さい。
【0038】
本発明の第10側面に係る画像表示体では、中間層は、ホログラム、回折格子、赤外線吸収パターン、蛍光パターン、及び物体色を表示する印刷パターンからなる群より選択される1つ以上を含んでいる。そのような画像表示体は、更に複雑な視覚効果を提供するのに加え、偽造又は情報の改竄が更に困難である。
【0039】
本発明の第11側面に係る画像表示体は、第1又は第2画像表示部を間に挟んで中間層と向き合った光透過性の保護層を更に具備している。そのような画像表示体は、第1及び第2画像表示部などの損傷を生じ難い。また、この保護層は、ホログラム、回折格子、赤外線吸収パターン、蛍光パターン、及び物体色を表示する印刷パターンからなる群より選択される1つ以上を含んでいる。そのような画像表示体は、更に複雑な視覚効果を提供するのに加え、偽造又は情報の改竄が更に困難である。
【0040】
本発明の第12側面に係るラベル付き物品は、第1乃至第11側面の何れかに係る画像表示体を含んでいる。それ故、このラベル付き物品は、画像表示体が高精細な画像を表示するのに加え、画像表示体に記録された画像の改竄が困難である。
【0041】
本発明の第13側面に係るラベル付き物品では、基材はカード基材又は冊子である。上記のラベル付き物品は、典型的にはそのような形態で利用される。
【0042】
本発明の第14側面に係るラベル付き物品は、個人認証に使用される。このような用途は、上記ラベル付き物品の最も利用価値が大きな用途の1つである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一態様に係るラベル付き物品を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図。
【図3】図1に示すラベル付き物品の一部を拡大して示す平面図。
【図4】図1に示すラベル付き物品の他の部分を拡大して示す平面図。
【図5】図1に示すラベル付き物品の一部を拡大して示す断面図。
【図6】図1に示すラベル付き物品の他の部分を拡大して示す断面図。
【図7】図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の他の例を概略的に示す断面図。
【図8】図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図。
【図9】図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図。
【図10】図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図。
【図11】図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図。
【図12】図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図。
【図13】図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図。
【図14】図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図。
【図15】図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図。
【図16】図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図。
【図17】光散乱を利用して構造色を表示する画像表示部に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図。
【図18】光散乱を利用して構造色を表示する画像表示部に採用可能な構造の他の例を概略的に示す斜視図。
【図19】光散乱を利用して構造色を表示する画像表示部に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す斜視図。
【図20】構造色として暗色を表示する画像表示部に採用可能な構造の一例を概略的に示す斜視図。
【図21】図1に示すラベル付き物品の製造に利用可能な製造装置の一例を概略的に示す図。
【図22】図1に示すラベル付き物品の製造に利用可能な転写箔の一例を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0045】
図1は、本発明の一態様に係るラベル付き物品を概略的に示す平面図である。
図1に示すラベル付き物品100は、個人認証に使用される冊子体、具体的にはパスポートである。図1には、開いた状態の冊子体を描いている。
【0046】
このラベル付き物品100は、折り丁1と表紙2とを含んでいる。なお、X方向及びY方向は、表紙2の主面に平行であり且つ互いに交差する方向である。また、Z方向は、X方向及びY方向に対して垂直な方向である。ここでは、一例として、X方向及びY方向は、互いに直交しているとする。
【0047】
折り丁1は、1枚以上の紙片11からなる。典型的には、紙片11上には、文字列及び地紋などの印刷パターンが設けられている。折り丁1は、1枚の紙片11を又は複数枚の紙片11の束を二つ折りにすることによって形成されている。紙片11は、個人情報が記録されるIC(integrated circuit)チップや、このICチップとの非接触での通信を可能とするアンテナなどを内蔵していてもよい。
【0048】
表紙2は、二つ折りされている。表紙2と折り丁1とは、冊子体を閉じた状態で折り丁1が表紙2によって挟まれるように重ね合わされており、それらの折り目の位置で綴じ合わせなどによって一体化されている。
【0049】
表紙2は、個人情報を含んだ画像を表示する。この個人情報は、個人の認証に利用する個人認証情報を含んでいる。この個人情報は、例えば、生体情報と非生体個人情報とに分類することができる。
【0050】
生体情報は、生体の特徴のうち、その個体に特有なものである。典型的には、生体情報は、光学的手法によって識別可能な特徴である。例えば、生体情報は、顔、指紋、静脈及び虹彩の少なくとも1つの画像又はパターンである。
【0051】
非生体個人情報は、生体情報以外の個人情報である。例えば、非生体個人情報は、氏名、生年月日、年齢、血液型、性別、国籍、住所、本籍地、電話番号、所属及び身分の少なくとも1つである。非生体個人情報は、タイプ打ちによって入力された文字を含んでいてもよく、署名などの手書きを機械読み取りすることによって入力された文字を含んでいてもよく、それらの双方を含んでいてもよい。
【0052】
図1において、表紙2は、画像I1a、I1b、I2、I3c及びI3dを表示している。
画像I1a及びI2は、物体色の画像である。ここで、「物体色」は、光の吸収及び反射を利用して表示される色である。具体的には、或る物体が表示する「物体色」は、その物体を構成している材料の光学的性質、例えば反射スペクトル又は透過スペクトルに対応した色である。
【0053】
画像I1a及びI2は、白色光で照明し、肉眼で観察した場合に視認可能である。画像I1a及びI2の一方は省略してもよい。
【0054】
画像I1a及びI2は、例えば、染料及び顔料の少なくとも一方、又は、染料及び顔料の少なくとも一方と透明樹脂との混合物で構成することができる。この場合、画像I1a及びI2の形成には、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用することができる。或いは、画像I1a及びI2は、感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザビームで描画することにより形成することができる。或いは、これら方法の組み合わせを利用することができる。画像I2の少なくとも一部は、ホットスタンプを用いた熱転写記録法によって形成してもよく、印刷法によって形成してもよく、それらの組み合わせを利用して形成してもよい。
【0055】
画像I1bは、構造色の画像である。ここで、「構造色」は、光の屈折、回折、干渉、反射、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用して表示される色である。具体的には、或る物体が表示する「構造色」は、その物体を構成している材料の光学的性質、例えば屈折率スペクトル及び吸収スペクトルに加え、その物体の構造、例えば、表面若しくは界面の形状並びに層の厚さ及び数に応じて変化する色である。「構造色」を表示する物体を構成している材料は、典型的には、透明材料であるか、金属光沢を有し得る材料であるか、又はそれらの組み合わせである。
【0056】
「構造色」は、例えば、ホログラム、回折格子、光散乱構造、又はそれらの2つ以上の組み合わせによって表示することができる。また、複数の凹部及び/又は凸部を不規則に又は規則的に配置してなる構造は、凹部及び凸部の幅又は径に対する深さ又は高さの比が十分に大きく、且つ、凹部及び/又は凸部のピッチが十分に小さい場合には、入射光を閉じ込める効果を有し得る。即ち、低反射率を達成し得る。「構造色」は、このような構造、又は、このような構造とホログラム、回折格子及び光散乱構造の1つ以上との組み合わせによって表示してもよい。ここでは、一例として、画像I1bは、回折格子が表示する画像であるとする。画像I1bは、後で詳述するように、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法によって形成する。
【0057】
画像I1a及びI1bは、同一人物の顔画像を含んでいる。画像I1aが含んでいる顔画像と、画像I1bが含んでいる顔画像とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。画像I1aが含んでいる顔画像と、画像I1bが含んでいる顔画像とは、寸法が等しくてもよく、異なっていてもよい。また、画像I1a及びI1bの各々は、顔画像の代わりに他の生体情報を含んでいてもよく、顔画像に加えて顔画像以外の生体情報を更に含んでいてもよい。
【0058】
画像11bは、生体情報の代わりに非生体個人情報を含んでいてもよく、生体情報に加えて非生体個人情報を更に含んでいてもよい。また、画像11bは、個人情報に加えて非個人情報を更に含んでいてもよい。
【0059】
画像I2は、非生体個人情報と非個人情報とを含んでいる。画像I2は、例えば、文字、記号、符号及び標章の1つ以上を構成している。
【0060】
画像I3cの少なくとも一部は、画像I1aの背景を構成している。画像I3cは、例えば、物体色の画像であるか、又は、構造色の画像である。ここでは、一例として、画像I3cは、構造色の画像であるとする。
【0061】
画像I3dの少なくとも一部は、画像I1bの背景を構成している。画像I3dは、例えば、物体色の画像であるか、又は、構造色の画像である。ここでは、一例として、画像I3dは、物体色の画像であるとする。
【0062】
次に、表紙2の構造について、図2乃至図6を参照しながら説明する。
図2は、図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図である。図3は、図1に示すラベル付き物品の一部を拡大して示す平面図である。図4は、図1に示すラベル付き物品の他の部分を拡大して示す平面図である。図5は、図1に示すラベル付き物品の一部を拡大して示す断面図である。図6は、図1に示すラベル付き物品の他の部分を拡大して示す断面図である。
【0063】
なお、図3には、表紙2のうち画像I1a及びI3cに対応した部分の構造を描いている。また、図4には、表紙2のうち画像I1b及びI3dに対応した部分の構造を描いている。そして、図5及び図6は、それぞれ、表紙2のうち画像I1bを表示する部分が含んでいる構造と、表紙2のうち画像I3cを表示する部分が含んでいる構造とを描いている。
【0064】
表紙2は、図2に示すように、表紙本体21と画像表示体22とを含んでいる。
表紙本体21は、ラベル付き物品100の基材であって、典型的には紙片である。表紙本体21は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。表紙本体21は、ラベル付き物品100を閉じた状態において、折り丁1を挟み込むように二つ折りされている。
【0065】
画像表示体22は、多層構造を有している層である。画像表示体22は、ラベル付き物品100を閉じた状態において折り丁1と向き合う表紙本体21の主面に貼り付けられている。
【0066】
画像表示体22は、画像表示部220a乃至220dを含んでいる。画像表示部220a乃至220dは、図1に示す画像I1a、I1b、I3c及びI3dを表示する。画像表示体22は、図1に示す画像I2を表示する画像表示部(図示せず)を更に含むことができる。
【0067】
画像表示部220aは、図2に示すように、領域Aaに設けられている。画像表示部220aは、或る対象に関する情報を物体色の画像として表示する。ここでは、画像表示部220aは、図1に示す画像I1aを表示する。
【0068】
画像表示部220aは、例えば、染料及び顔料の少なくとも一方と任意の樹脂とを含んだ層である。画像表示部220aは、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用することにより得ることができる。この場合、画像表示部220aは、例えば、図3に示すように二次元的に配列した複数のドットからなる。
【0069】
画像表示部220bは、図2に示すように、領域Aaと隣り合った領域Abに設けられている。画像表示部220bは、先の対象に関する情報をレリーフ構造に由来する構造色の画像として表示する。ここでは、画像表示部220bは、図1に示す画像I1bを表示する。
【0070】
画像表示部220bは、例えば、図5に示すように回折構造形成層223bと反射層224bと接着層225bとを含んだ層である。反射層224bは、回折構造形成層223bと接着層225bとの間に介在している。画像表示部220bは、例えば、回折構造形成層223bと反射層224bとが接着層225bと表紙本体21との間に介在するように設けられる。
【0071】
回折構造形成層223bは、一方の主面にレリーフ型の回折格子が設けられた透明層である。回折構造形成層223bは、例えば、特定の照明方向から白色光で照明して、特定の観察方向から観察した場合に異なる色を表示する第1乃至第3部分を含んでいる。第1乃至第3部分は、回折格子の格子定数及び溝の長さ方向の少なくとも一方が互いに異なっている。特定の観察条件のもとで、第1乃至第3部分は、例えば、青、緑及び赤色を表示する。
【0072】
回折構造形成層223bの材料としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂及びポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリオールアクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンアクリレート、メラミンメタクリレート、トリアジンアクリレート及びトリアジンメタアクリレートなどの熱硬化性樹脂、これらの混合物、又はラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性材料を使用することができる。回折構造形成層223bは、光硬化性を有している樹脂を使用して形成してもよい。なお、このような透明樹脂を用いて得られる回折構造形成層223bは、典型的には、波長が550nmの光に対する屈折率が1.3乃至1.7の範囲内にある。
【0073】
反射層224bは、回折構造形成層223b上に形成されている。反射層224bは、回折構造形成層223bのレリーフ構造が設けられた面の少なくとも一部を被覆している。反射層224bは省略することができるが、反射層224bを設けると、回折構造が表示する画像の視認性が向上する。
【0074】
反射層224bとしては、例えば、透明反射層又は不透明な反射層を使用することができる。そのような反射層224bは、例えば、真空蒸着やスパッタリングなどの真空成膜法によって形成することができる。反射層224bが樹脂を含んでいる場合、反射層224bは、塗布又は印刷を利用して形成してもよい。
【0075】
反射層224bとして透明反射層を使用すると、反射層224bの背面側に絵柄及び文字等のパターンを配置した場合であっても、これを画像表示体22の前面側から視認することができる。
【0076】
透明反射層は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。後者の場合、透明反射層は、繰り返し反射干渉を生じるように設計されていてもよい。透明反射層の材料としては、例えば、硫化亜鉛及び二酸化チタンなどの透明誘電体を使用することができる。
【0077】
透明誘電体からなる単層構造の透明反射層は、典型的には、回折構造形成層223bと比較して、上述した波長の光に対する屈折率がより大きい。それらの屈折率の差は、例えば0.2以上である。透明反射層に単層構造を採用した場合、その厚さは例えば10nm乃至1000nmの範囲内とする。
【0078】
透明誘電体からなる多層構造の透明反射層は、典型的には、その回折構造形成層223bに最も近い層の上述した波長の光に対する屈折率が、回折構造形成層223bのこの波長の光に対する屈折率と比較してより大きい。それらの屈折率の差は、例えば0.2以上である。
【0079】
或いは、透明反射層として金属層を使用してもよい。金属層の材料としては、例えば、アルミニウム、錫、銅、銀、金及び鉄などの単体金属又はそれらの合金を使用することができる。金属層は、厚い場合には遮光性であるが、薄くすると透明になる。例えば、厚さが20乃至40nmの範囲内にあるアルミニウム層の場合、或る観察条件のもとでは金属光沢を観察できるが、観察角度を変更するとその背景が透けて見える。
【0080】
透明反射層として、より厚い金属層を使用することも可能である。例えば、比較的厚い金属層を形成し、これに肉眼での識別が困難な径又は幅の開口を多数設ける。例えば、この金属層を、網点又は万線状にパターニングする。これにより、金属材料からなる透明反射層を得ることができる。
【0081】
不透明な金属反射層の材料としては、例えば、透明反射層としての金属層に関して上述した材料を使用することができる。不透明な金属反射層は、典型的には、肉眼での識別が困難な径又は幅の開口は設けられておらず、光を遮るのに十分な厚さを有している。
【0082】
透明反射層又は不透明な反射層として、透明樹脂とこの中で分散した粒子とを含んだ層を使用してもよい。この粒子としては、例えば、単体金属及び合金などの金属材料からなる粒子、又は、透明金属酸化物及び透明樹脂などの透明誘電体からなる粒子を使用することができる。透明樹脂中には、粒子を分散させる代わりに、薄片を分散させてもよい。
【0083】
接着層225bは、反射層224b上に設けられている。接着層225bは、例えば熱可塑性樹脂からなる。
【0084】
接着層225bの材料としては、例えば、ウレタン樹脂、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩素化ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリビニルベンゼン、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、スチレンとメタクリル酸アルキル(但し、アルキル基の炭素数は2乃至6)とから得られるポリビニル樹脂などのビニル樹脂、ゴム系材料、又は、これらの2種以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0085】
接着層225bには、ワックス、ステアリン酸などの高級脂肪酸、その金属塩及びエステル、可塑剤、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂及びポリアクリロニトリルなどの有機材料からなる有機フィラー、並びにシリカからなどの無機材料からなる無機フィラーの1つ以上を添加してもよい。
【0086】
接着層225bは、画像表示体22の構成要素であってもよく、画像表示体22の構成要素でなくてもよい。また、このラベル付き物品1において、接着層225bは省略することができる。
【0087】
画像表示部220bは、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法により得ることができる。この場合、画像表示部220bは、例えば、図4に示すように二次元的に配列した複数のドットからなる。
【0088】
画像表示部220cは、図2に示すように、領域Aa及びAbと隣り合い且つ領域Aaと隣接した領域Acに設けられている。画像表示部220cは、画像表示部220aに対応した位置で、画像表示部220aに対応した形状に開口している。画像表示部220cは、画像表示部220aが表示する画像の背景を構造色の画像、例えばレリーフ構造に由来した構造色の画像として表示する。ここでは、画像表示部220cは、図1に示す画像I3cを表示する。
【0089】
画像表示部220cは、例えば、図6に示すように回折構造形成層223cと反射層224cと接着層225cとを含んだ層である。反射層224cは、回折構造形成層223cと接着層225cとの間に介在している。画像表示部220cは、例えば、回折構造形成層223cと反射層224cとが接着層225cと表紙本体21との間に介在するように設けられる。
【0090】
回折構造形成層223cは、一方の主面にレリーフ型の回折格子が設けられた透明層である。回折構造形成層223cは、例えば、特定の照明方向から白色光で照明して、特定の観察方向から観察した場合に異なる色を表示する第1乃至第3部分を含んでいる。第1乃至第3部分は、回折格子の格子定数及び溝の長さ方向の少なくとも一方が互いに異なっている。特定の観察条件のもとで、第1乃至第3部分は、例えば、青、緑及び赤色を表示する。
【0091】
回折構造形成層223cの材料としては、例えば、回折構造形成層223bについて上述したものを使用することができる。なお、このような透明樹脂を用いて得られる回折構造形成層223cは、典型的には、波長が550nmの光に対する屈折率が1.3乃至1.7の範囲内にある。
【0092】
反射層224cは、回折構造形成層223c上に形成されている。反射層224cは、回折構造形成層223cのレリーフ構造が設けられた面の少なくとも一部を被覆している。反射層224cは省略することができるが、反射層224cを設けると、回折構造が表示する画像の視認性が向上する。
【0093】
反射層224cとしては、例えば、反射層224bについて上述したものを使用することができる。また、反射層224cは、例えば、反射層224bについて上述した方法により形成することができる。
【0094】
接着層225cは、反射層224c上に設けられている。接着層225cは、例えば熱可塑性樹脂からなる。接着層225cの材料としては、例えば、接着層225bについて上述したものを使用することができる。
【0095】
画像表示部220cは、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法により得ることができる。この場合、画像表示部220cは、例えば、図3に示すように二次元的に配列した複数のドットからなる。
【0096】
画像表示部220dは、図2に示すように、領域Abと、領域Aa乃至Acと隣り合い且つ領域Abと隣接した領域Adとに設けられている。画像表示部220dの一部は、画像表示部220bと表紙本体21との間に介在している。画像表示部220dは、領域Adにおいて、画像表示部220bが表示する画像の背景、例えば微細な模様を、物体色の画像として表示する。ここでは、画像表示部220dは、図1に示す画像I3dを表示する。また、画像表示部220dは、領域Abにおいて、例えば、画像表示部220bが表示するのと同様の画像を表示する。或いは、画像表示部220dは、領域Abにおいて、画像表示部220bが表示するのとは異なる画像、例えば微細な模様を表示する。
【0097】
画像表示部220dは、例えば、染料及び顔料の少なくとも一方と任意の樹脂とを含んだ層である。画像表示部220dは、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用することにより得ることができる。この場合、画像表示部220dは、例えば、図4に示すように二次元的に配列した複数のドットからなる。
【0098】
画像表示部220a乃至220dの厚さは、例えば0.1μm乃至2.0μmの範囲内とする。画像表示部220a乃至220dは、厚さが互いに等しくてもよく、異なっていてもよい。また、画像表示部220a乃至220dの各々は、均一な厚さを有していてもよく、不均一な厚さを有していてもよい。
【0099】
画像表示部220a乃至220dの各々について、隣り合ったドットは、互いから離間していてもよく、互いに接していてもよい。後者の場合、隣り合ったドットは部分的に重なり合っていてもよい。この場合、図3及び図4に示すように複数のドットによって囲まれた隙間が存在していてもよく、そのような隙間は存在していなくてもよい。
【0100】
画像表示体22は、図2に示すように、画像表示部220a乃至220dに加え、中間層229と保護層227と接着層225とを更に含んでいる。
【0101】
中間層229は、第1及び第2主面を有している。ここでは、第1主面は前面であり、第2主面は、表紙本体21と向き合った背面である。画像形成層220b及び220cは中間層229の前面側に位置している。他方、画像形成層220a及び220dは、中間層229の背面側に位置している。
【0102】
中間層229は、光透過性を有している。例えば、中間層229は、全体が透明であるか又は一部が透明な層である。
【0103】
中間層229は、例えば、透明樹脂からなる。中間層229の材料としては、例えば、熱可塑性ポリアクリル酸エステル樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ニトロセルロース系樹脂、スリレンアクリレート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、及びポリカーボネート系樹脂等の樹脂を単独又は複合して使用することができる。中間層229は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0104】
中間層229の厚さは、例えば、1μm乃至20μmの範囲内とする。中間層229が薄い場合、情報を改竄するべく中間層229が部分的に除去されたとしても、画像表示体22を肉眼で観察することによってそのことを判別できない可能性がある。他方、中間層229が厚い場合、先の除去部に市販のフィルムを設けると、中間層229が市販のフィルムによって部分的に置き換えられたことを、画像表示体22を肉眼で観察することによって判別できない可能性がある。
【0105】
中間層229は、面内で均一な光学的性質を有していてもよい。或いは、中間層229は、面内で不均一な光学的性質を有していてもよい。
【0106】
また、中間層229は、ホログラム、回折格子、赤外線吸収層、蛍光層、及び物体色を表示する印刷パターンからなる群より選択される1つ以上を含んでいてもよい。このような中間層229は、部分的に除去された場合に、そのことを容易に判別することができる。なお、赤外線吸収層及び蛍光層は、連続膜であってもよく、格子状、島状又はストライプ状にパターニングされていてもよい。後者の場合、中間層229には、例えば、パターニングされた赤外線吸収層又は蛍光層とこれを支持した光透過層とを含んだ多層構造を採用する。ここでは、一例として、中間層229には、その全体に亘ってレリーフ型のホログラムが設けられていることとする。
【0107】
保護層227は、中間層229の前面を被覆している。保護層227と中間層229とは、画像表示部220b及び220cを間に挟んでいる。
【0108】
保護層227は、光透過性を有しており、典型的には透明である。保護層227は、画像表示部220a乃至220dなどの損傷を抑制する。保護層227は、省略することができる。
【0109】
保護層227は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び紫外線又は電子硬化樹脂などの樹脂からなる。転写箔を利用して画像表示体22を表紙本体21に貼り付ける場合は、柔軟性及び箔切れ性の観点で熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
【0110】
この熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸エステル樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ニトロセルロース系樹脂、スリレンアクリレート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、又はそれらの混合物を使用することができる。箔切れ性や耐摩性を考慮して、この樹脂に、石油系ワックス及び植物系ワックスなどのワックス、ステアリン酸などの高級脂肪酸、その金属塩、エステル及びシリコーンオイルなどの滑材、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂及びポリアクリロニトリルなどの有機材料からなる有機フィラー、並びにシリカからなどの無機材料からなる無機フィラーの1つ以上を添加してもよい。
【0111】
保護層227の厚さは、例えば、1μm乃至20μmの範囲内とする。保護層227が薄い場合、情報を改竄するべく保護層227が部分的に除去されたとしても、画像表示体22を肉眼で観察することによってそのことを判別できない可能性がある。他方、保護層227が厚い場合、先の除去部に市販のフィルムを設けると、保護層227が市販のフィルムによって部分的に置き換えられたことを、画像表示体22を肉眼で観察することによって判別できない可能性がある。
【0112】
保護層227は、面内で均一な光学的性質を有していてもよい。或いは、保護層227は、面内で不均一な光学的性質を有していてもよい。
【0113】
また、保護層227は、ホログラム、回折格子、赤外線吸収層、蛍光層、及び物体色を表示する印刷パターンからなる群より選択される1つ以上を含んでいてもよい。このような保護層227は、部分的に除去された場合に、そのことを容易に判別することができる。なお、赤外線吸収層及び蛍光層は、連続膜であってもよく、格子状、島状又はストライプ状にパターニングされていてもよい。後者の場合、保護層227には、例えば、パターニングされた赤外線吸収層又は蛍光層とこれを支持した光透過層とを含んだ多層構造を採用する。
【0114】
接着層225は、反射層224と表紙本体21との間に介在している。接着層225及び中間層229は、画像表示部220a及び220dを間に挟んでいる。
【0115】
接着層225は、例えば熱可塑性樹脂からなる。接着層225の材料としては、例えば、ウレタン樹脂、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩素化ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリビニルベンゼン、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、スチレンとメタクリル酸アルキル(但し、アルキル基の炭素数は2乃至6)とから得られるポリビニル樹脂などのビニル樹脂、ゴム系材料、又は、これらの2種以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0116】
接着層225には、ワックス、ステアリン酸などの高級脂肪酸、その金属塩及びエステル、可塑剤、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂及びポリアクリロニトリルなどの有機材料からなる有機フィラー、並びにシリカからなどの無機材料からなる無機フィラーの1つ以上を添加してもよい。
【0117】
接着層225は、画像表示体22の構成要素であってもよく、画像表示体22の構成要素でなくてもよい。また、接着層225は、省略することができる。
【0118】
この画像表示体22は、画像表示部220aを含んでいる。画像表示部220aは、或る人物の顔画像を物体色の画像として表示する。この物体色の顔画像は、通常の照明条件下で観察することができ、しかも、視認性に優れている。
【0119】
また、この画像表示体22は、画像表示部220aに加え、画像表示部220bを含んでいる。画像表示部220bは、レリーフ型の回折格子に由来する構造色の画像を表示する。レリーフ構造を利用した場合、パール顔料を使用した場合と比較して、精細度がより高い画像の表示が可能である。
【0120】
そして、この画像表示体22では、画像表示部220a及び220bは、同一人物の顔画像を表示する。画像表示部220bは、それ自体の偽像又は改竄が困難である。それ故、真正品としてのラベル付き物品100において、画像表示部220a及び220bが同一人物の顔画像、特には同一の顔画像を表示する場合、例えば、真正品であるか否かが不明のラベル付き物品が表示する2つの顔画像を比較することにより、その物品の真偽を判定することができる。
【0121】
また、画像表示部220bが表示する画像I1bの色は、照明方向及び観察方向などに応じて変化する。そして、画像表示部220bには、画像I1bとして、単色の平面画像、多色の平面画像、単色の立体画像、多色の立体画像、又はそれらの2つ以上の組み合わせを表示させることが可能である。即ち、この構成を採用すると、複雑な視覚効果を達成することができる。
【0122】
加えて、この画像表示体22では、画像表示部220aに物体色の画像I1aを表示させ、画像表示部220cに構造色の画像I3cを画像I1aの背景として表示させる。また、この画像表示体22では、画像表示部220bに構造色の画像I1bを表示させ、画像表示部220dに物体色の画像I3dを画像I1bの背景として表示させる。このように物体色の画像及び構造色の画像の一方を他方の背景とした場合、物体色の画像を物体色の画像の背景とした場合や、構造色の画像を構造色の画像の背景とした場合と比較して、より特殊な視覚効果を達成することができる。例えば、画像表示部220cに画像I3cとして立体感がある画像を表示させることにより、画像I1a及びI3cの組み合わせに、擬似的な立体画像を表示させることができる。
【0123】
また、この画像表示体22では、画像表示部220dは、領域Adだけでなく、領域Abにも設けられている。即ち、画像表示部220dの一部は、画像表示部220bと向き合っている。それ故、画像表示部220bが光透過性を有している場合、画像表示部220dが領域Abにおいて表示する画像は、画像表示部220bを介して透けて見える。即ち、この画像表示体22は、領域Abにおいて、物体色の画像と構造色の画像とを同時に表示する。即ち、この構成を採用すると、より複雑な視覚効果を達成することができる。
【0124】
また、顔画像などの生体情報は、その個体に特有である。それ故、この画像表示体22を他の個体のために不正に使用するには、画像表示部220a及び220bが表示する画像の双方を書き換えなければならない。即ち、画像表示部220a及び220bの各々を少なくとも部分的に除去しなければならない。それ故、この場合、これら画像の少なくとも一方が非生体情報である場合と比較して、画像表示体22の不正使用はより困難である。
【0125】
更に、この画像表示体22では、画像表示部220a及び220b間に、中間層229が介在している。この画像表示体22を含んだラベル付き物品100では、画像表示体22は、画像表示部220aが中間層229と表紙本体21との間に介在するように表紙本体21に支持されている。それ故、例えば前面側から又は裏面側から画像表示部220a及び220bの各々を少なくとも部分的に除去するためには、中間層229も少なくとも部分的に除去しなければならない。即ち、この画像表示体22に記録されている顔画像を他の人物の顔画像に書き換えるには、例えば、画像表示体22を表紙本体21から剥離し、画像表示体22の裏面側から画像表示部220aを除去し、次いで、中間層229の一部を除去して画像表示部220bを露出させ、その後、これを除去する必要がある。或いは、画像表示体22の前面側から画像表示部220bを除去し、次いで、中間層229の一部を除去して画像表示部220aを露出させ、その後、これを除去する必要がある。このような加工は、不可能であるか又は極めて困難である。しかも、特には保護層227及び中間層229の少なくとも一方がホログラム、回折格子、赤外線吸収層、蛍光層、及び物体色を表示する印刷パターンからなる群より選択される1つ以上を含んでいる場合、そのような加工が施された画像表示体22は、そのような加工が施されていない画像表示体22から比較的容易に判別することができる。
【0126】
また、この画像表示体22では、画像表示部220cは、画像表示部220aに対応した位置で及び画像表示部220aに対応した形状に開口しており、画像I1aの背景を構造色の画像I3cとして表示する。この構成を採用すると、画像表示部220aが表示する画像I1aのみを改竄したときに、改竄した画像I1aの輪郭と画像表示部220cに設けた開口とに形状又は位置の不一致を生じ易い。それ故、これを利用して、情報が改竄されたことを確認することができる。
【0127】
それ故、この画像表示体22は、記録された画像の改竄が困難である。従って、この画像表示体22を含んだラベル付き物品100は、不正使用され難い。
【0128】
このラベル付き物品100には、様々な変形が可能である。
図7は、図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の他の例を概略的に示す断面図である。
【0129】
図7に示すラベル付き物品100は、以下の点を除いて、図1乃至図6を参照しながら説明したラベル付き物品100と同様である。
【0130】
このラベル付き物品100の画像表示体22は、画像表示部220c及び220dを含んでいない。そして、画像表示部220aは、領域Aaだけでなく、領域Acにも設けられている。また、画像表示部220bは、領域Abだけでなく、領域Adにも設けられている。即ち、画像表示部220aは、図1に示す画像I1a及びI3cを物体色の画像として表示する。また、画像表示部220bは、図1に示す画像I1b及びI3dを構造色の画像として表示する。
【0131】
この構成を採用した場合、画像表示部220c及び220dを設けることに伴う効果が得られないことを除き、図1乃至図6を参照しながら説明した構成を採用した場合と同様の効果を得ることができる。
【0132】
なお、ここでは、画像表示部220aを領域Aaだけでなく領域Acにも設けているが、画像表示部220aは領域Acに設けなくてもよい。即ち、図1に示す画像I3cは省略してもよい。また、ここでは、画像表示部220bを領域Abだけでなく領域Adにも設けているが、画像表示部220bは領域Adに設けなくてもよい。即ち、図1に示す画像I3dは省略してもよい。
【0133】
図8は、図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図である。
【0134】
図8に示すラベル付き物品100は、以下の点を除いて、図1乃至図6を参照しながら説明したラベル付き物品100と同様である。
【0135】
このラベル付き物品100の画像表示体22は、画像表示部220cを含んでいない。そして、画像表示部220aは、領域Aaだけでなく、領域Acにも設けられている。即ち、画像表示部220aは、図1に示す画像I1a及びI3cを物体色の画像として表示する。
【0136】
この構成を採用した場合、画像表示部220cを設けることに伴う効果が得られないことを除き、図1乃至図6を参照しながら説明した構成を採用した場合と同様の効果を得ることができる。
【0137】
図9は、図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図である。
【0138】
図9に示すラベル付き物品100は、以下の点を除いて、図1乃至図6を参照しながら説明したラベル付き物品100と同様である。
【0139】
このラベル付き物品100の画像表示体22は、画像表示部220cを含んでいない。そして、画像表示部220aは、領域Aaだけでなく、領域Acにも設けられている。即ち、画像表示部220aは、図1に示す画像I1a及びI3cを物体色の画像として表示する。また、図9に示すラベル付き物品の画像表示体22は、物体色を表示する画像表示部220dの代わりに、光源色を表示する画像表示部220d’を含んでいる。画像表示部220d’は、例えば、蛍光体からなるか、又は、蛍光体と透明樹脂とを含んだ混合物からなる。
【0140】
この構成を採用した場合、画像表示部220cを設けることに伴う効果は得られない。また、画像表示部220d’が無色透明である場合には、画像表示部220dを設けることに伴う効果も得られない。但し、画像表示部220d’は、紫外光などの励起光を照射したときに光源色の画像を表示する。そして、画像表示部220d’が例えば無色透明である場合には、画像表示部220d’を潜像として利用することができる。
【0141】
即ち、画像表示部220d’が無色透明である場合、画像表示部220c及び220dを設けることに伴う効果は得られないことを除き、図1乃至図6を参照しながら説明した構成を採用した場合と同様の効果を得ることができる。加えて、この場合、画像表示部220d’を利用して、励起光を照射することによって可視化する潜像を記録することができる。それ故、このラベル付き物品100を真正品とした場合、真正品であるか否かが不明のラベル付き物品を励起光で照明して、この物品が表示する画像を観察することにより、その物品が真正品であるか否かを判別することができる。
【0142】
また、画像表示部220d’が有色透明であるか、無色不透明であるか、又は有色不透明である場合、画像表示部220cを設けることに伴う効果は得られないことを除き、図1乃至図6を参照しながら説明した構成を採用した場合と同様の効果を得ることができる。加えて、この場合、画像表示部220d’は、自然光で照明した場合と励起光で照明した場合とで異なる色を表示する。即ち、複雑な視覚効果を提供する。
【0143】
図10は、図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図である。
【0144】
図10に示すラベル付き物品100は、以下の点を除いて、図1乃至図6を参照しながら説明したラベル付き物品100と同様である。
【0145】
このラベル付き物品100の画像表示体22は、画像表示部220cを含んでいない。画像表示部220aは、領域Aaだけでなく、領域Acにも設けられている。即ち、画像表示部220aは、図1に示す画像I1a及びI3cを物体色の画像として表示する。また、画像表示部220dは、領域Abには設けられておらず、領域Adにのみ設けられている。
【0146】
この構成を採用した場合、以下の事項を除き、図1乃至図6を参照しながら説明した構成を採用した場合と同様の効果を得ることができる。即ち、この構成を採用した場合、画像表示部220cを設けることに伴う効果は得られない。また、画像表示部220bが光透過性を有していたとしても、画像表示部220bを介して画像表示部220dが透けて見えることはない。但し、この構成を採用した場合、画像表示部220bが表示する画像I1bを改竄したときに、改竄した画像I1bの輪郭と画像表示部220dに設けた開口とに形状又は位置の不一致を生じ易い。それ故、これを利用して、情報が改竄されたことを確認することができる。
【0147】
図11は、図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図である。
【0148】
図11に示すラベル付き物品100は、以下の点を除いて、図1乃至図6を参照しながら説明したラベル付き物品100と同様である。
【0149】
このラベル付き物品100の画像表示体22は、画像表示部220dを含んでいない。そして、画像表示部220bは、領域Abだけでなく、領域Adにも設けられている。即ち、画像表示部220bは、図1に示す画像I1b及びI3dを構造色の画像として表示する。また、画像表示部220cは、領域Acだけでなく、領域Aaにも設けられている。この画像表示部220cは、少なくとも領域Aaにおいて光透過性を有している。画像表示部220cは、図1に示すように、領域Abにおいて、画像I1aの背景として画像I3cを表示する。そして、画像表示部220cは、領域Aaにおいて、例えば、画像表示部220aが表示するのと同様の画像を表示する。或いは、画像表示部220cは、領域Aaにおいて、画像表示部220aが表示するのとは異なる画像、例えば微細な模様を表示する。
【0150】
この構成を採用した場合、以下の事項を除き、図1乃至図6を参照しながら説明した構成を採用した場合と同様の効果を得ることができる。即ち、この構成を採用した場合、画像表示部220dを設けることに伴う効果は得られない。但し、画像表示部220cの一部は画像表示部220aと向き合っているので、画像表示部220aが領域Aaにおいて表示する画像は、画像表示部220cを介して透けて見える。即ち、この画像表示体22は、領域Aaにおいて、物体色の画像と構造色の画像とを同時に表示する。それ故、この構成を採用すると、より複雑な視覚効果を達成することができる。
【0151】
図12は、図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図である。
【0152】
図12に示すラベル付き物品100は、以下の点を除いて、図1乃至図6を参照しながら説明したラベル付き物品100と同様である。
【0153】
このラベル付き物品100の画像表示体22は、画像表示部220dを含んでいない。そして、画像表示部220bは、領域Abだけでなく、領域Adにも設けられている。即ち、画像表示部220bは、図1に示す画像I1b及びI3dを構造色の画像として表示する。
【0154】
この構成を採用した場合、画像表示部220dを設けることに伴う効果が得られないことを除き、図1乃至図6を参照しながら説明した構成を採用した場合と同様の効果を得ることができる。
【0155】
以上の構成では、画像表示部220a及び220bをそれぞれ中間層229の背面側及び前面側に配置している。以下に説明するように、画像表示部220a及び220bは、それぞれ、中間層229の前面側及び背面側に配置することも可能である。
【0156】
図13は、図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図である。
【0157】
図13に示すラベル付き物品100は、以下の点を除いて、図1乃至図6を参照しながら説明したラベル付き物品100と同様である。
【0158】
このラベル付き物品100の画像表示体22は、画像表示部220c及び220dを含んでいない。画像表示部220aは、中間層229と保護層227との間に介在し、領域Aaだけでなく、領域Acにも設けられている。また、画像表示部220bは、中間層229と接着層225との間に介在し、領域Abだけでなく、領域Adにも設けられている。即ち、画像表示部220aは、図1に示す画像I1a及びI3cを物体色の画像として表示する。また、画像表示部220bは、図1に示す画像I1b及びI3dを構造色の画像として表示する。
【0159】
この構成を採用した場合、画像表示部220c及び220dを設けることに伴う効果が得られないことを除き、図1乃至図6を参照しながら説明した構成を採用した場合と同様の効果を得ることができる。
【0160】
図14は、図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図である。
【0161】
図14に示すラベル付き物品100は、以下の点を除いて、図1乃至図6を参照しながら説明したラベル付き物品100と同様である。
【0162】
このラベル付き物品100の画像表示体22は、画像表示部220cを含んでいない。画像表示部220aは、中間層229と保護層227との間に介在しており、領域Aaだけでなく、領域Acにも設けられている。即ち、画像表示部220aは、図1に示す画像I1a及びI3cを物体色の画像として表示する。また、この画像表示体22は、画像表示部220dの代わりに、図9を参照しながら説明した画像表示部220d’を含んでいる。画像表示部220d’は、中間層229と保護層227との間に介在している。更に、この画像表示体22では、画像表示部220dは、中間層229と接着層225との間に介在しており、領域Abには設けられておらず、領域Adにのみ設けられている。
【0163】
この構成を採用した場合、画像表示部220c及び220dを設けることに伴う効果は得られない。但し、画像表示部220d’は、紫外光などの励起光を照射したときに光源色の画像を表示する。そして、画像表示部220d’が例えば無色透明である場合には、画像表示部220d’を潜像として利用することができる。
【0164】
即ち、画像表示部220d’が無色透明である場合、画像表示部220c及び220dを設けることに伴う効果は得られないことを除き、図1乃至図6を参照しながら説明した構成を採用した場合と同様の効果を得ることができる。加えて、この場合、画像表示部220d’を利用して、励起光を照射することによって可視化する潜像を記録することができる。それ故、このラベル付き物品100を真正品とした場合、真正品であるか否かが不明のラベル付き物品を励起光で照明して、この物品が表示する画像を観察することにより、その物品が真正品であるか否かを判別することができる。
【0165】
また、画像表示部220d’が有色透明であるか、無色不透明であるか、又は有色不透明である場合、以下の事項を除き、図1乃至図6を参照しながら説明した構成を採用した場合と同様の効果を得ることができる。即ち、この構成を採用した場合、画像表示部220cを設けることに伴う効果は得られない。また、画像表示部220bが光透過性を有していたとしても、画像表示部220bを介して画像表示部220d’が透けて見えることはない。但し、この構成を採用した場合、画像表示部220bが表示する画像I1bを改竄したときに、改竄した画像I1bの輪郭と画像表示部220d’に設けた開口とに形状又は位置の不一致を生じ易い。それ故、これを利用して、情報が改竄されたことを確認することができる。
【0166】
図15は、図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図である。
【0167】
図15に示すラベル付き物品100は、以下の点を除いて、図1乃至図6を参照しながら説明したラベル付き物品100と同様である。
【0168】
このラベル付き物品100の画像表示体22では、画像表示部220aは中間層229と保護層227との間に介在し、画像表示部220b及び220cは中間層229と接着層225との間に介在している。この画像表示体22は、画像表示部220dを含んでいない。画像表示部220bは、領域Abだけでなく、領域Adにも設けられている。即ち、画像表示部220bは、図1に示す画像I1b及びI3dを構造色の画像として表示する。
【0169】
この構成を採用した場合、画像表示部220dを設けることに伴う効果が得られないことを除き、図1乃至図6を参照しながら説明した構成を採用した場合と同様の効果を得ることができる。
【0170】
図16は、図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す断面図である。
【0171】
図16に示すラベル付き物品100は、以下の点を除いて、図1乃至図6を参照しながら説明したラベル付き物品100と同様である。
【0172】
このラベル付き物品100の画像表示体22では、画像表示部220a及び220dは中間層229と保護層227との間に介在し、画像表示部220bは中間層229と接着層225との間に介在している。この画像表示体22は、画像表示部220cを含んでいない。画像表示部220aは、領域Aaだけでなく、領域Acにも設けられている。即ち、画像表示部220aは、図1に示す画像I1a及びI3cを物体色の画像として表示する。また、画像表示部220dは、例えば、少なくとも領域Abにおいて光透過性を有している。或いは、画像表示部220dは、少なくとも領域Abにおいて、例えば、格子状、島状又はストライプ状のパターンを形成している。
【0173】
この構成を採用した場合、以下の事項を除き、図1乃至図6を参照しながら説明した構成を採用した場合と同様の効果を得ることができる。即ち、この構成を採用した場合、画像表示部220cを設けることに伴う効果は得られない。但し、画像表示部220dの一部は画像表示部220bと向き合っているので、画像表示部220bが領域Abにおいて表示する画像は、画像表示部220dを介して透けて見える。即ち、この画像表示体22は、領域Abにおいて、物体色の画像と構造色の画像とを同時に表示する。それ故、この構成を採用すると、より複雑な視覚効果を達成することができる。
【0174】
上述した構成においては、画像表示部220b及び220cの各々はレリーフ型の回折格子を含んでいる。画像表示部220b及び220cの少なくとも一方は、レリーフ型の回折格子の代わりにレリーフ型のホログラムを含んでいてもよい。或いは、画像表示部220b及び220cの少なくとも一方は、レリーフ型の回折格子に加えて、レリーフ型のホログラムを含んでいてもよい。或いは、画像表示部220b及び220cの少なくとも一方は、レリーフ型の回折格子の代わりに又はレリーフ型の回折格子に加えて、以下に説明するレリーフ型の光散乱構造又はこの光散乱構造とレリーフ型ホログラムとの組み合わせを含んでいてもよい。
【0175】
図17は、光散乱を利用して構造色を表示する画像表示部に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図である。図18は、光散乱を利用して構造色を表示する画像表示部に採用可能な構造の他の例を概略的に示す斜視図である。図19は、光散乱を利用して構造色を表示する画像表示部に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す斜視図である。
【0176】
図17に示す構造では、Z方向に対して垂直な界面IFに、複数の凹部及び/又は凸部RPが設けられている。凹部及び/又は凸部RPは、各々がX方向に延びた形状を有しており、Y方向に配列している。凹部及び/又は凸部RPは、X方向に沿った長さが不均一であり、X方向及びY方向における位置も不規則である。
【0177】
この構造は、例えば白色光で照明すると、X方向に垂直な面内において高い光散乱能を示し、Y方向に垂直な面内においては低い光散乱能を示す。従って、この構造は、散乱光の射出方向を制限することが望まれる場合、即ち光散乱異方性が望まれる場合に適している。
【0178】
この構造においては、凹部及び/又は凸部RPの配置を変更することにより、光散乱異方性が変化する。例えば、凹部及び/又は凸部RPのY方向における密度を高くすると、光散乱異方性が大きくなる。また、凹部及び/又は凸部RPの長さを短くするか又はそれらの長さ方向の均一性を低下させると、光散乱異方性が小さくなる。
【0179】
なお、図17において、凹部及び/又は凸部RPの長さ方向は、X方向に対して平行である。凹部及び/又は凸部RPの長さ方向は、X方向に対して交差していてもよい。また、図17において、凹部及び/又は凸部RPの長さ方向は、一方向に揃っている。上述した光散乱異方性が得られる限り、凹部及び/又は凸部RPの長さ方向は一方向に揃っていなくてもよい。
【0180】
図18に示す構造では、凹部及び/又は凸部RPは、直方体形状を有している。凹部及び/又は凸部RPは、各々がX方向に延びた形状を有しており、Y方向に配列している。凹部及び/又は凸部RPは、X方向及びY方向における位置が不規則であり、X方向及びY方向の寸法も不規則である。このように、光散乱異方性は、凹部及び/又は凸部RPの寸法を変更することによっても変化させることができる。
【0181】
図19に示す構造では、凹部及び/又は凸部RPは、楕円柱形状を有している。凹部及び/又は凸部RPは、各々がX方向に延びた形状を有しており、Y方向に配列している。凹部及び/又は凸部RPは、X方向及びY方向における位置が不規則であり、X方向及びY方向の寸法も不規則である。このように、光散乱異方性は、凹部及び/又は凸部RPの形状を変更することによっても変化させることができる。
【0182】
光散乱異方性を有している光散乱構造は、例えば、立体画像の表示に利用可能である。即ち、右眼用のサブ画素と左眼用のサブ画素とからなる画素をマトリクス状に配置する。右眼用のサブ画素の一部には、右眼用の視差画像を表示させるべく、右眼用の光散乱構造を設ける。他方、左眼用のサブ画素の一部には、左眼用の視差画像を表示させるべく、左眼用の光散乱構造を設ける。右眼用の光散乱構造と左眼用の光散乱構造とは、凹部及び/又は凸部RPの長さ方向が異なっている。このような構成を採用すると、屋内において典型的な拡散光照明条件下において、拡散光を利用した立体画像の表示が可能となる。
【0183】
画像表示部220b及び220cの少なくとも一方は、以下に説明するレリーフ構造を含んでいてもよい。
【0184】
図20は、構造色として暗色を表示する画像表示部に採用可能な構造の一例を概略的に示す斜視図である。
【0185】
図20に示す構造では、界面IFには、二次元的に配列した複数の凹部及び/又は凸部RPが設けられている。この例では、凹部及び/又は凸部RPは、X方向とY方向とに格子状に配列している。凹部及び/又は凸部RPは、斜めに交差する2方向に格子状に配列していてもよい。
【0186】
凹部及び/又は凸部RPの各々は、先細り形状を有している。先細り形状は、例えば、半紡錘形状、円錐及び角錐などの錐体形状、又は切頭円錐及び切頭角錐などの切頭錐体形状である。凸部PRの側面は、傾斜面のみで構成されていてもよく、階段状であってもよい。先細り形状は、図20に示すレリーフ構造の光反射率を小さくするのに役立つ。凹部及び/又は凸部RPは、先細り形状を有していなくてもよい。
【0187】
凹部及び/又は凸部RPは、回折格子を形成している。但し、凹部及び/又は凸部RPの中心間距離は、通常の回折格子の格子定数と比較して短い。凹部及び/又は凸部RPの中心間距離は、例えば400nm以下である。
【0188】
凹部及び/又は凸部RPの高さ又は深さのそれらの中心間距離に対する比は、例えば1/2倍以上であり、典型的には1倍以上である。この比が大きいほど、レリーフ構造の反射率が小さくなる。
【0189】
このレリーフ構造は、反射率が小さいため、暗灰色乃至黒色に見える。また、このレリーフ構造は、凹部及び/又は凸部RPの中心間距離が小さいため、視感度が高い回折光を正面方向に射出することはなく、限られた角度範囲内にのみ射出する。即ち、このレリーフ構造は、暗灰色乃至黒色印刷層の如く見える。そして、このレリーフ構造は、回折光を射出し得ることを悟られ難い。
【0190】
なお、図20に示す構造では、凹部及び/又は凸部RPは規則的に配置されているが、凹部及び/又は凸部RPは不規則に配置されていてもよい。そのようなレリーフ構造は、回折光を射出しないが、暗灰色乃至黒色印刷層の如く見える。
【0191】
次に、上述したラベル付き物品100の製造方法を説明する。
図21は、図1に示すラベル付き物品の製造に利用可能な製造装置の一例を概略的に示す図である。
【0192】
図21に示す製造装置500は、例えば、図2を参照しながら説明した構造を採用したラベル付き物品100の製造に利用可能である。
【0193】
ラベル付き物品100の製造においては、例えば、まず、撮像装置を用いて、人物の顔を撮影する。或いは、印画から顔画像を読み取る。これにより、画像情報を電子情報として得る。この顔画像は、必要に応じて画像処理する。
【0194】
次に、図21に示す製造装置500を用いて、物品100’上に、図2に示す画像表示体22を形成する。なお、物品100’は、画像表示体22を省略したラベル付き物品100、ここでは冊子本体である。
【0195】
図21に示す製造装置500を用いた画像表示体22の形成に際しては、熱転写リボン520ac、520bc、527及び529を準備しておく。
【0196】
熱転写リボン520adは、ロール540bに巻かれている。熱転写リボン520adは、帯状の第1支持体と、その上に形成された第1転写材層とを含んでいる。第1転写材層は、第1支持体によって剥離可能に支持されている。第1転写材層の一部は画像形成層220aとして使用し、第1転写材層の他の一部は画像形成層220dとして使用する。
【0197】
熱転写リボン520bcは、ロール540dに巻かれている。熱転写リボン520bcは、帯状の第2支持体と、その上に形成された第2転写材層とを含んでいる。第2転写材層は、第2支持体によって剥離可能に支持されている。第2転写材層の一部は画像形成層220bとして使用し、第2転写材層の他の一部は画像形成層220cとして使用する。
【0198】
熱転写リボン527は、ロール540cに巻かれている。熱転写リボン527は、帯状の第3支持体と、その上に形成された第3転写材層とを含んでいる。第3転写材層は、第3支持体によって剥離可能に支持されている。第3転写材層の一部は保護層227として使用する。
【0199】
熱転写リボン529は、ロール540aに巻かれている。熱転写リボン529は、帯状の第4支持体と、その上に形成された第4転写材層とを含んでいる。第4転写材層は、第4支持体によって剥離可能に支持されている。第4転写材層の一部は中間層229として使用する。
【0200】
以上の熱転写リボン520ac、520bc、527及び529を準備したうえで、熱転写リボン529及び520adを、それぞれ、ロール540a及び540bから繰り出し、それらの転写材層が向き合うように熱転写印字装置550aへと送る。熱転写印字装置550aにおいては、熱転写リボン520adの第1転写材層の一部を、画像表示部220a及び220dとして、その第1支持体から熱転写リボン529の第4転写材層上へと熱転写する。
【0201】
この熱転写に使用した熱転写リボン520adは、ロール570aに巻き取る。他方、画像表示部220a及び220dを形成した熱転写リボン529は、ガイドローラ580aによって案内して、物品100’とともに熱転写装置560aへと送る。
【0202】
熱転写装置560aにおいては、熱転写リボン529の第4転写材層の一部を、画像表示部220a及び220dとともに、その第4支持体から物品100’の表紙本体12上へと熱転写する。これにより、表紙本体21上に、画像表示部220a及び220d並びに中間層229を形成する。
【0203】
なお、この熱転写は、熱転写リボン529と表紙本体12との間に接着層225を介在させて行ってもよい。例えば、熱転写リボン529及び表紙本体21の少なくとも一方の上に接着層225を形成しておき、その後、熱転写を行ってもよい。
【0204】
この熱転写に使用した熱転写リボン529は、ガイドローラ580b及び580cによって案内して、巻取りロール570aに巻き取る。他方、この熱転写を終えた物品100’は、熱転写装置560bへと送る。
【0205】
以上の操作と並行して、熱転写リボン527及び520bcを、それぞれ、ロール540c及び540dから繰り出し、それらの転写材層が向き合うように熱転写印字装置550bへと送る。熱転写印字装置550bにおいては、熱転写リボン520bcの第2転写材層の一部を、画像表示部220b及び220cとして、その第2支持体から熱転写リボン527の第3転写材層上へと熱転写する。
【0206】
この熱転写に使用した熱転写リボン520bcは、ロール570cに巻き取る。他方、画像表示部220b及び220cを形成した熱転写リボン527は、ガイドローラ580dによって案内して、熱転写装置560から送り出した物品100’とともに熱転写装置560bへと送る。
【0207】
熱転写装置560bにおいては、熱転写リボン527の第3転写材層の一部を、画像表示部220b及び220cとともに、その第3支持体から物品100’の表紙本体12上に設けられた中間層229上へと熱転写する。これにより、中間層229上に、画像表示部220b及び220c並びに保護層227を形成する。
【0208】
なお、この熱転写は、熱転写リボン527と中間層229との間に接着層を介在させて行ってもよい。例えば、熱転写リボン527及び中間層229の少なくとも一方の上に接着層を形成しておき、その後、熱転写を行ってもよい。
【0209】
この熱転写に使用した熱転写リボン527は、ガイドローラ580fによって案内して、巻取りロール570bに巻き取る。そして、この熱転写を終えた物品100’は、ラベル付き物品100として熱転写装置560bから送り出す。
以上のようにして、ラベル付き物品100を完成する。
【0210】
なお、図7、図8及び図10乃至図12を参照しながら説明したラベル付き物品100は、上記の方法において画像表示部220c及び220dの一方又は双方の形成を省略することによって製造することができる。図9を参照しながら説明したラベル付き物品100は、上記の方法において画像表示部220c及び220dの形成を省略し、画像表示部220d’を形成する工程を追加することによって製造することができる。図13、図15及び図16を参照しながら説明したラベル付き物品100は、上記の方法において、熱転写リボン520ad及び520cdをそれぞれロール540d及び540bに巻き、画像表示部220c及び220dの一方又は双方の形成を省略することによって製造することができる。そして、図14を参照しながら説明したラベル付き物品100は、上記の方法において、熱転写リボン520ad及び520cdをそれぞれロール540d及び540bに巻き、画像表示部220c及び220dの形成を省略し、画像表示部220d’を形成する工程を追加することによって製造することができる。
【0211】
上記の方法では、熱転写を利用して画像表示部220b及び220cを形成しているが、画像表示部220b及び220cは、他の方法により形成してもよい。例えば、保護層227上に、回折又は散乱を生じさせるレリーフ構造が一方の主面に設けられた光透過層を予め形成しておく。次いで、このレリーフ構造の回折能又は散乱能を部分的に消失させるか又は部分的に低下させる。例えば、レーザビームなどのエネルギービームを照射して、レリーフ構造の一部を破壊する。或いは、インクジェット印刷などの印刷によってレリーフ構造の一部の上に光透過層と屈折率がほぼ等しい材料、例えば無色の樹脂、典型的には無色透明の樹脂を供給し、滑らかな表面を有しているパターンを形成する。或いは、レリーフ構造の一部にインクジェット印刷などの印刷によってレリーフ構造の一部の上に溶剤を供給し、この供給部において光透過層の表面を溶解させる。その後、必要に応じて、レリーフ構造の上に反射層を形成する。例えば、真空蒸着及びスパッタリングなどの気相堆積法によって反射層を形成する。或いは、金属粒子と透明樹脂との混合物などの光反射性の材料をレリーフ構造に塗布することによって反射層を形成する。以上のようにして、画像表示部220b及び220cを得る。
【0212】
画像表示部220b及び220cは、以下の方法により形成してもよい。即ち、回折又は散乱を生じさせるレリーフ構造が一方の主面に設けられた光透過層を、保護層227上に予め形成しておく。そして、インクジェット印刷などの印刷によって、レリーフ構造の一部の上に光反射性の材料を供給する。これにより、反射層として、光反射性のパターンを得る。光反射性パターンに対応した部分は、光反射性パターンの開口に対応した部分と比較して回折能又は散乱能がより高い。従って、このような方法でも、画像表示部220b及び220cを得ることができる。
【0213】
また、上記の方法では、熱転写を利用して画像表示部220a及び220dを形成しているが、画像表示部220a及び220dは、他の方法により形成してもよい。例えば、画像表示部220a及び220dは、インクジェット印刷などの印刷を利用して形成してもよい。
【0214】
図21を参照しながら説明した方法では、物品100’への熱転写を2回行う。ラベル付き物品100は、物品100’へ熱転写を1回行うことによって製造することも可能である。
【0215】
図22は、図1に示すラベル付き物品の製造に利用可能な転写箔の一例を概略的に示す図である。
【0216】
図22に示す転写箔201は、転写材層22’と、これを剥離可能に支持した支持体221とを含んでいる。
【0217】
支持体221は、例えば樹脂フィルム又はシートである。支持体221は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの耐熱性に優れた材料からなる。支持体221の転写材層22’を支持している主面には、例えばフッ素樹脂又はシリコーン樹脂を含んだ離型層が設けられていてもよい。
【0218】
転写材層22’は、保護層227と中間層229と接着層225と画像形成層220a乃至220dとを含んでいる。保護層227、中間層229及び接着層225は、支持体221側からこの順に積層されている。画像形成層220a及び220dは、中間層229と接着層225との間に介在している。画像形成層220b及び220cは、中間層229と保護層227との間に介在している。
【0219】
転写材層22’の全体又は一部は、ラベル付き物品100の製造に利用する。転写材層22’又はその一部は、図2に示す画像表示体22と同様である。
【0220】
ラベル付き物品100の製造においては、例えば、まず、撮像装置を用いて、人物の顔を撮影する。或いは、印画から顔画像を読み取る。これにより、画像情報を電子情報として得る。この顔画像は、必要に応じて画像処理する。この画像情報を利用して、支持体221上に転写材層22’を形成する。次いで、転写材221の少なくとも一部を、支持体221から物品100’上へと熱転写する。以上のようにして、ラベル付き物品100を得る。
【0221】
以上、ラベル付き物品としてパスポートを記載したが、上述した技術は、パスポート以外の個人認証媒体に適用することも可能である。例えば、上述した技術は、オリンピック大会などの大会で使用する大会身分証(accreditation card)及びクレジットカードに適用することができる。
【0222】
ラベル付き物品の大きさに制限はない。ラベル付き物品を個人認証に利用する場合、その携帯が容易であることが望ましい。オリンピック大会などの大会で使用する大会身分証の寸法は、例えば、約95mm×約150mmである。パスポートのデータ頁の寸法は、例えば、約125mm×約88mmである。クレジットカードの寸法は、例えば、役86mm×約54mmである。
【0223】
画像表示体を支持させる物品の形状に制限はないが、一般には、この物品は、冊子及びカード基材のように層を含んでいる。この層の厚さは、例えば20μm乃至1000μmの範囲内にあり、典型的には50μm乃至800μmの範囲内にある。
【0224】
画像表示体は、例えば、普通紙、コート紙及び合成紙などの紙に支持させることができる。なお、合成紙は、例えば、ポリプロピレン及びポリスチレンなどプラスチックと炭酸カルシウムなどの無機充填材とを含んだ層である。或いは、合成紙は、そのような層と普通紙との複合材である。
【0225】
画像表示体は、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートなどのプラスチックからなる層に支持させてもよい。或いは、画像表示体は、セラミックスからなる層に支持させてもよい。
【0226】
物品の表面のうち画像表示体を支持させる領域は、その全体に亘って単一の色を有していてもよい。或いは、この領域は、色が互いに異なる複数のサブ領域を含んでいてもよい。画像表示体が表示する画像の視認性を考慮し、先の領域を、白色顔料、例えば、チタンホワイト、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、シリカ、タルク、クレー又は炭酸カルシウムによって白色に着色してもよい。
【0227】
上述した技術は、個人認証以外の認証に利用することも可能である。即ち、上述した技術は、ヒト以外の生体の認証に利用してもよく、生体以外の認証に利用してもよい。例えば、上述した技術は、ヒト以外の動物、植物、細菌、証券、工業製品、農産物、海産物又は美術品の認証に利用することができる。
【0228】
また、上述した技術は、認証以外の目的で利用することも可能である。例えば、ラベル付き物品又は画像表示体は、玩具、装飾品又は学習教材として利用することができる。
【符号の説明】
【0229】
1…折り丁、2…表紙、11…紙片、21…表紙本体、22…画像表示体、22’…転写材層、100…ラベル付き物品、100’…物品、201…転写箔、220a…画像表示部、220b…画像表示部、220c…画像表示部、220d…画像表示部、220d’…画像表示部、221…支持体、223b…回折構造形成層、223c…回折構造形成層、224b…反射層、224c…反射層、225b…接着層、225c…接着層、229…中間層、227…保護層、225…接着層、500…製造装置、520ac…熱転写リボン、520bc…熱転写リボン、527…熱転写リボン、529…熱転写リボン、540a…ロール、540b…ロール、540c…ロール、540d…ロール、550a…熱転写印字装置、550b…熱転写印字装置、560a…熱転写装置、560b…熱転写装置、570a…巻取りロール、570b…巻取りロール、570c…巻取りロール、570d…巻取りロール、580a…ガイドローラ、580b…ガイドローラ、580c…ガイドローラ、580d…ガイドローラ、580e…ガイドローラ、580f…ガイドローラ、Aa…領域、Ab…領域、Ac…領域、Ad…領域、I1a…画像、I1b…画像、I2…画像、I3c…画像、I3d…画像、IF…界面、RP…凹部及び/又は凸部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2主面を有している光透過性の中間層と、
前記第1主面上に設けられ、或る対象に関する第1情報を物体色の第1画像として表示する第1画像表示部と、
前記第2主面上に設けられ、前記対象に関する第2情報をレリーフ構造に由来する構造色の第2画像として表示する第2画像表示部と
を具備した画像表示体。
【請求項2】
前記対象は生体であり、前記第1及び第2情報の各々は生体情報である請求項1に記載の画像表示体。
【請求項3】
前記第1画像表示部は前記第1画像として顔画像を表示し、前記第2画像表示部は前記第2画像として顔画像を表示する請求項2に記載の画像表示体。
【請求項4】
前記生体は人物であり、前記画像表示体は個人認証に使用される請求項2又は3に記載の画像表示体。
【請求項5】
前記中間層を間に挟んで前記第2画像表示部と向き合い、励起光を照射したときに光源色の画像を表示する第3画像表示部を更に具備した請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項6】
前記第1主面上に設けられ、前記第2画像表示部に対応した位置で及び前記第2画像表示部に対応した形状に開口し、前記第2画像の背景を物体色の画像として表示するか、又は、励起光を照射したときに前記第2画像の背景を光源色の画像として表示する第3画像表示部を更に具備した請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項7】
前記第2主面上に設けられと向き合い、前記第1画像表示部に対応した位置で及び前記第1画像表示部に対応した形状に開口し、前記第1画像の背景を構造色の画像として表示する第4画像表示部を更に具備した請求項1乃至6の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項8】
前記第2画像表示部は、回折光を射出するレリーフ構造を含み、前記回折光によって前記第2画像を表示する請求項1乃至7の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項9】
前記第2画像表示部は、散乱光を射出するレリーフ構造を含み、前記散乱光によって前記第2画像を表示する請求項1乃至7の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項10】
前記中間層は、ホログラム、回折格子、赤外線吸収層、蛍光層、及び物体色を表示する印刷パターンからなる群より選択される1つ以上を含んでいる請求項1乃至9の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項11】
前記第1又は第2画像表示部を間に挟んで前記中間層と向き合った光透過性の保護層を更に具備し、前記保護層は、ホログラム、回折格子、赤外線吸収層、蛍光層、及び物体色を表示する印刷パターンからなる群より選択される1つ以上を含んでいる請求項1乃至10の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項に記載の画像表示体と、前記画像表示体を支持した基材とを具備したラベル付き物品。
【請求項13】
前記基材はカード基材又は冊子である請求項12に記載のラベル付き物品。
【請求項14】
個人認証に使用される請求項12又は13に記載のラベル付き物品。
【請求項1】
第1及び第2主面を有している光透過性の中間層と、
前記第1主面上に設けられ、或る対象に関する第1情報を物体色の第1画像として表示する第1画像表示部と、
前記第2主面上に設けられ、前記対象に関する第2情報をレリーフ構造に由来する構造色の第2画像として表示する第2画像表示部と
を具備した画像表示体。
【請求項2】
前記対象は生体であり、前記第1及び第2情報の各々は生体情報である請求項1に記載の画像表示体。
【請求項3】
前記第1画像表示部は前記第1画像として顔画像を表示し、前記第2画像表示部は前記第2画像として顔画像を表示する請求項2に記載の画像表示体。
【請求項4】
前記生体は人物であり、前記画像表示体は個人認証に使用される請求項2又は3に記載の画像表示体。
【請求項5】
前記中間層を間に挟んで前記第2画像表示部と向き合い、励起光を照射したときに光源色の画像を表示する第3画像表示部を更に具備した請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項6】
前記第1主面上に設けられ、前記第2画像表示部に対応した位置で及び前記第2画像表示部に対応した形状に開口し、前記第2画像の背景を物体色の画像として表示するか、又は、励起光を照射したときに前記第2画像の背景を光源色の画像として表示する第3画像表示部を更に具備した請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項7】
前記第2主面上に設けられと向き合い、前記第1画像表示部に対応した位置で及び前記第1画像表示部に対応した形状に開口し、前記第1画像の背景を構造色の画像として表示する第4画像表示部を更に具備した請求項1乃至6の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項8】
前記第2画像表示部は、回折光を射出するレリーフ構造を含み、前記回折光によって前記第2画像を表示する請求項1乃至7の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項9】
前記第2画像表示部は、散乱光を射出するレリーフ構造を含み、前記散乱光によって前記第2画像を表示する請求項1乃至7の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項10】
前記中間層は、ホログラム、回折格子、赤外線吸収層、蛍光層、及び物体色を表示する印刷パターンからなる群より選択される1つ以上を含んでいる請求項1乃至9の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項11】
前記第1又は第2画像表示部を間に挟んで前記中間層と向き合った光透過性の保護層を更に具備し、前記保護層は、ホログラム、回折格子、赤外線吸収層、蛍光層、及び物体色を表示する印刷パターンからなる群より選択される1つ以上を含んでいる請求項1乃至10の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項に記載の画像表示体と、前記画像表示体を支持した基材とを具備したラベル付き物品。
【請求項13】
前記基材はカード基材又は冊子である請求項12に記載のラベル付き物品。
【請求項14】
個人認証に使用される請求項12又は13に記載のラベル付き物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2011−194837(P2011−194837A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66885(P2010−66885)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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