説明

画像表示媒体

【課題】 フォトクロミック化合物を発色物質として感光層中に有する画像表示媒体であって、かかる感光層の少なくとも一方の面に耐水性、耐有機溶剤性、水蒸気バリア性に優れる層を有する画像表示媒体を提供すること。
【解決手段】 感光層の少なくとも一方の面に、アセト酢酸エステル基含有ポリビニルアルコール系樹脂のグリオキシル酸塩による架橋物を含有する層を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の照射による画像の書き込みと消去が可能な画像表示媒体であって、感光層中に発色物質としてフォトクロミック化合物を含有する画像表示媒体に関し、さらに詳しくは、耐水性、耐有機溶剤性、水蒸気バリア性に優れる層を感光層間の中間層、あるいは感光層の表面保護層として有することにより、繰り返し画像表示に対する耐久性に優れる画像表示媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトクロミック化合物は光の照射によって可逆的に構造変化し、それとともに発消色することから、書き換え可能な画像表示媒体における発色材料として用いられている。
さらに、発色状態における極大吸収波長が異なるフォトクロミック化合物を含有する複数の感光層が積層された画像表示媒体は、多色画像、さらにはフルカラー画像の形成も可能である。
【0003】
かかる画像表示媒体における感光層は、通常、フォトクロミック化合物を溶解した有機溶剤溶液を支持基材上、あるいは既に形成された層上に塗布、乾燥することによって形成される。よって、複数の感光層を有する画像表示媒体の場合、製造工程において各感光層間で成分が混ざり合うのを避けるため、通常、感光層間に中間層が設けられる。
したがって、かかる中間層には耐有機溶剤性と透明性が必要となり、これらの要求を満たす材料としてポリビニルアルコール系樹脂(以下、ポリビニルアルコールをPVAと略記する。)が好適に用いられている。
また、感光層の最外表面にも使用時や保存時の油分やガス等による感光層への悪影響を防止するために保護層が設けられ、かかる保護層の材料としても、透明性と耐有機溶剤性、ガスバリア性に優れるPVA系樹脂が使用されている。(例えば、特許文献1参照。)
【0004】
しかしながら、PVA系樹脂は水溶性樹脂であり、本質的に耐水性がないことから、水との接触、吸水によって特性が大きく低下する傾向がある。
これは有機溶剤等から感熱発色層を保護するためにPVA系樹脂を中間層、および表面保護層に用いている多層感熱記録用媒体においても同様の問題点であり、かかる用途においては、PVA系樹脂を架橋させることで耐水性を向上させたもの、特に、反応性に富むアセト酢酸エステル基を含有するPVA系樹脂がグリオキザール等のアルデヒド化合物によって架橋された架橋物を用いる方法が提案されている。(例えば、特許文献2参照。)
【0005】
よって、フォトクロミック化合物を含有する感光層を有する画像表示媒体においても、感光層間の中間層や表面保護層におけるPVA系樹脂として、アセト酢酸エステル基含有PVA系樹脂を架橋剤によって架橋させたものを適用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−176039号公報
【特許文献2】特開2003−276368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らがフォトクロミック化合物を含有する感光層を有する画像表示媒体における感光層間の中間層あるいは最外表面保護層の材料として、アセト酢酸エステル基含有PVA系樹脂のグリオキザールによる架橋物を検討したところ、耐溶剤性および耐水性については十分であるものの、水蒸気バリア性の点でさらなる改善の余地があることが判明した。
【0008】
フォトクロミック化合物は、水分の存在下で光照射による構造変化が繰り返されると、分解が促進される傾向にある。従って、フォトクロミック化合物を発色物質とする画像表示媒体においては、かかる分解を抑制し、書き換えの繰り返し耐久性を向上させるため、感光層間の中間層や表面保護層は水蒸気バリア性に優れたものであることが望ましい。
【0009】
PVA系樹脂の水蒸気バリア性は結晶化度に相関するが、上述のアセト酢酸エステル基含有PVA系樹脂のグリオキザールによる架橋物は、架橋構造をとることで結晶化が大きく阻害され、その結果、充分な水蒸気バリア性が得られなかったものと推定される。
すなわち、PVA系樹脂の架橋による耐水化は、結晶化の阻害につながることから、耐水性と水蒸気バリア性は相反する特性であると考えられる。
【0010】
すなわち本発明は、フォトクロミック化合物を発色物質として感光層中に有する画像表示媒体であって、耐水性、耐有機溶剤性、および水蒸気バリア性に優れる層を感光層に隣接する少なくとも一方の面、例えば、感光層間の中間層、あるいは表面保護層としてを有し、その結果、繰り返し画像表示に対する耐久性に優れた画像表示媒体の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記事情に鑑み、鋭意検討した結果、フォトクロミック化合物を含有する感光層を有する画像表示媒体であって、アセト酢酸エステル基含有ポリビニルアルコール系樹脂(以下、AA化PVA系樹脂と略記する。)のグリオキシル酸塩による架橋物を含有する層を、感光層に隣接する少なくとも一方の面に有する画像表示媒体によって、本発明の目的、すなわち、耐水性を阻害することなく優れた水蒸気バリア性が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
本発明において、グリオキシル酸塩はAA化PVA系樹脂の架橋剤として機能するものであり、その架橋構造、すなわちアセト酢酸エステル基(以下、AA基と略記する。)とグリオキシル酸塩との反応によって得られる構造は下記の通りであると推測される。なお、下記式はグリオキシル酸塩を形成する金属がアルカリ金属のような一価金属の場合を代表的に例示しているが、アルカリ土類金属のような多価金属の場合、他の架橋構造、あるいはフリーのグリオキシル酸と金属を共有している場合がある。
【化1】

【0013】
すなわち、本発明の画像表示媒体の特徴は、AA化PVA系樹脂とグリオキシル酸塩による架橋物が、PVA系樹脂が本来有する耐有機溶剤性を保持しつつ優れた耐水性を有し、さらに優れた水蒸気バリア性を有することによって得られたものである。
これらの作用効果のうち、優れた耐水性は、架橋構造中に形成されるカルボン酸塩が水の存在下でも解離・イオン化し難いことによるものと推測される。また、優れた水蒸気バリア性は、グリオキシル酸塩がPVA系樹脂、およびアセト酢酸エステル基に対する親和性に優れるため架橋構造の偏在がなく、その結果、非晶部である架橋構造部分と、結晶部分がバランスよく配置されたことによるものと推測される。
【発明の効果】
【0014】
本発明のフォトクロミック化合物を発色物質として感光層中に有する画像表示媒体において、係る感光層の少なくとも一方の面に設けた層、例えば、感光層間の中間層、あるいは最外感光層の表面保護層は、耐有機溶剤性、耐水性に優れ、さらに水蒸気バリア性に優れるものであり、よって、本発明の画像表示媒体は、繰り返し画像表示に対する耐久性に優れることが期待される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。
【0016】
本発明の画像表示媒体は、AA化PVA系樹脂のグリオキシル酸塩による架橋物を含有する層を、フォトクロミック化合物を含有する感光層に隣接する少なくとも一方の面に有するもので、かかる層としては、例えば、感光層間の中間層あるいは最外感光層の表面保護層が挙げられる。
以下、各順に説明する。
【0017】
〔AA化PVA系樹脂〕
まず、本発明に用いられるAA化PVA系樹脂について説明する。
本発明に用いるAA化PVA系樹脂とは、側鎖にアセト酢酸エステル基を有するPVA系樹脂である。
かかるAA化PVA系樹脂の製造法としては、特に限定されるものではないが、例えば、PVA系樹脂とジケテンを反応させる方法、PVA系樹脂とアセト酢酸エステルを反応させてエステル交換する方法、酢酸ビニルとアセト酢酸ビニルの共重合体をケン化する方法等を挙げることができるが、製造工程が簡略で、品質の良いAA化PVA系樹脂が得られることから、PVA系樹脂とジケテンを反応させる方法で製造するのが好ましい。以下、かかる方法について説明する。
【0018】
原料となるPVA系樹脂としては、一般的にはビニルエステル系モノマーの重合体のケン化物又はその誘導体が用いられ、かかるビニルエステル系モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられるが、経済性の点から酢酸ビニルが好ましく用いられる。
【0019】
また、上述のビニルエステル系モノマーと、これらと共重合性を有するモノマーとの共重合体のケン化物等を用いることもできる。かかる共重合モノマーとしては、例えばエチレンやプロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類;3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類およびそのアシル化物などの誘導体;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類;ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩;アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン、グリセリンモノアリルエーテル、等のビニル化合物;酢酸イソプロペニル、1−メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類;塩化ビニリデン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、ビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0020】
更に、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等のポリオキシアルキレン基含有モノマー;N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2−アクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、3−ブテントリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ジエチルジアリルアンモニウムクロライド等のカチオン基含有モノマー等も挙げられる。
なお、上述の共重合モノマーを用いた共重合体を使用する場合の共重合モノマーの導入量は、モノマーの種類によって異なるため一概にはいえないが、通常は全構造単位の10モル%以下、特には5モル%以下であり、多すぎると水溶性が損なわれたり、架橋剤との相溶性が低下したりする場合があるため好ましくない。
【0021】
又、ビニルエステル系モノマーおよびその他のモノマーを重合、共重合する際の重合温度を高温にすることによって、通常の1,3−結合に対する異種結合の生成量を増やし、PVA主鎖中の1,2−ジオール結合を1.6〜3.5モル%程度としたものを使用することも可能である。
【0022】
上記ビニルエステル系モノマーの重合体および共重合体をケン化して得られるPVA系樹脂とジケテンとを反応させて、PVA系樹脂の側鎖にアセト酢酸エステル基(以下、AA基と略記する。)を導入する方法としては、PVA系樹脂にガス状或いは液状のジケテンを直接反応させる方法、予め酢酸などの有機酸によってPVA系樹脂を膨潤させておき、これにガス状または液状のジケテンを噴霧して反応させる方法、あるいはPVA系樹脂に酢酸などの有機酸と液状ジケテンの混合物を噴霧して反応させる方法などを挙げることができる。
【0023】
なお、上記の反応は加熱、攪拌しながら行うことが好ましく、その際の反応装置としては、例えば、ニーダー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、その他各種ブレンダーなどを用いることができる。
【0024】
かくして得られるAA化PVA系樹脂の平均重合度は、通常、300〜4000であり、特に400〜3500、さらに500〜3000のものが好適に用いられる。かかる平均重合度が小さすぎると、耐水性が低下したり、架橋速度が低下する傾向がある。また、大きすぎると、水溶液とした場合に高粘度になり、塗布性が低下する傾向がある。
【0025】
また、本発明に用いられるAA化PVA系樹脂のケン化度は、通常、80モル%以上であり、さらには85モル%以上、特には90モル%以上ものが好適に用いられる。かかるケン化度が低すぎると、水溶性が低下したり、水溶液としたときの安定性が低下したり、架橋物の耐水性や水蒸気バリア性が低下する傾向がある。
なお、かかるAA化PVA系樹脂の平均重合度およびケン化度は、上述のPVA系樹脂とジケテンの反応によってAA化PVA系樹脂を得る場合には、原料として用いたPVA系樹脂に依存するものであり、通常は、JIS K6726に準じて測定される。
【0026】
また、AA化PVA系樹脂中のアセト酢酸エステル基含有量(以下、AA化度と略記する。)は、通常、0.1〜20モル%であり、特に0.2〜15モル%、さらに0.3〜10モル%のものが好適に用いられる。かかる含有量が少なすぎると、得られた架橋物の耐水性や水蒸気バリア性が低下する傾向があり、逆に多すぎると、水溶性が低下したり、水溶液としたときの安定性が低下したり、架橋物の水蒸気バリア性が低下する傾向がある。
【0027】
また、本発明におけるAA化PVA系樹脂は、通常、水酸基平均連鎖長が10以上のものであり、さらには15以上のものが好適に用いられる。かかる水酸基連鎖長が短すぎると得られる架橋物の耐水性が低下する傾向がある。
かかる水酸基平均連鎖長およびその測定方法に関しては、「ポバール」(発行所:高分子刊行会、248ページ、1981)およびMacromolecules,Vol.10,p532(1977)に詳述されている。
【0028】
本発明においては、PVA系樹脂のすべてがAA化PVA系樹脂であることが好ましいが、本発明の目的を阻害しない程度であれば、AA化PVA系樹脂以外のPVA系樹脂を併用してもよく、その場合の全PVA系樹脂中のAA化PVA系樹脂の含有量は、通常50重量%以下であり、特に30重量%以下である。
かかるAA化PVA系樹脂以外のPVA系樹脂の例としては、未変性のPVA系樹脂や、先にAA化PVA系樹脂の原料として列記した各種モノマーを用いた変性PVA系樹脂を挙げることができる。
【0029】
また、本発明で用いられるAA化PVA系樹脂は、AA化PVA系樹脂の製造工程で使用あるいは副生した酢酸ナトリウムなどのアルカリ金属の酢酸塩(主として、ケン化触媒として用いたアルカリ金属水酸化物と、ポリ酢酸ビニルのケン化によって生成した酢酸との反応物等に由来)、酢酸などの有機酸(PVA系樹脂にアセト酢酸エステル基を導入する際の、ジケテンとの反応時にPVAの膨潤に使用)、メタノール、酢酸メチルなどの有機溶剤(PVA系樹脂の反応溶剤、AA化PVA製造時の洗浄溶剤等)を一部含有するものであってもよい。
【0030】
〔グリオキシル酸塩〕
次に、本発明においてAA化PVA系樹脂の架橋剤として用いられるグリオキシル酸塩について説明する。
かかるグリオキシル酸塩としては、グリオキシル酸の金属塩やアミン塩などが挙げられ、金属塩としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅などの遷移金属、その他の亜鉛、アルミニウムなどの金属とグリオキシル酸の金属塩、また、アミン塩としては、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミンなどのアミン類とグリオキシル酸の塩が挙げられる。
特に、耐水性に優れる架橋高分子が得られる点から金属塩、特にアルカリ金属、およびアルカリ土類金属の塩が好ましく用いられる。
【0031】
特に、本発明においては、架橋構造中に形成されるカルボン酸塩が水の存在下で解離・イオン化し難いことが優れた耐水性に寄与しているものと考えており、グリオキシル酸塩としても、より水への溶解度が小さいものが好ましく、具体的には、23℃における水への溶解度が0.01〜100%、特に0.1〜50%、さらに0.5〜20%のものが好ましく用いられる。かかる水への溶解度が高すぎると架橋物の耐水性が不充分となる傾向があり、低すぎるとAA化PVA系樹脂との混合水溶液とした際に析出したり、充分な配合量が得られない場合がある。
【0032】
具体的に、水への溶解度が小さいグリオキシル酸塩としては、例えば、グリオキシル酸ナトリウム(溶解度:約17%)や、グリオキシル酸カルシウム(溶解度:約0.7%)などを挙げることができる。
【0033】
かかるグリオキシル酸塩は、公知の製造法によるものを用いることができ、かかる製造法として、例えば、(1)グリオキシル酸の中和反応による方法、(2)グリオキシル酸と酸解離定数がグリオキシル酸より大きい酸の塩との塩交換反応による方法、(3)グリオキシル酸エステルのアルカリ加水分解による方法(例えば、特開2003−300926号公報参照。)などを挙げることができる。特に、グリオキシル酸との中和反応に用いるアルカリ性化合物の水溶性が高い場合は(1)の方法が、また得られるグリオキシル酸塩の水溶性が低く、酸解離定数がグリオキシル酸より大きい酸の塩の水溶性が高い場合は(2)の方法が好ましく用いられる。
【0034】
なお、(1)の方法は通常、水を媒体として行われ、グリオキシル酸とアルカリ性化合物、例えば、アルカリ金属水酸化物やアルカリ土類金属水酸化物を水中で反応させ、析出したグリオキシル酸塩を濾別し、乾燥して製造することができる。
また、(2)の方法も一般的に水中で行われ、(1)の方法と同様にしてグリオキシル酸塩を得ることができる。なお、(2)の方法において用いられるグリオキシル酸より解離定数が大きい酸の塩としては、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム等の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属塩が挙げることができる。
【0035】
なお、グリオキシル酸塩には、その製造に用いられる原料や原料に含まれる不純物、副生成物等が含まれる可能性があり、例えば、グリオキシル酸、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属の脂肪族カルボン酸塩、アルカリ土類金属の脂肪族カルボン酸塩、グリオキザール、シュウ酸、またシュウ酸塩、グリコール酸、またはグリコール酸塩などが含有される場合がある。
【0036】
特に、原料としてグリオキシル酸を用いた場合には、そのグリオキシル酸塩を製造する際の副生成物であるグリオキザールがグリオキシル酸塩中に含有される可能性があり、かかるグリオキザールの含有量は0重量%であることが最も望ましいが、5重量%以下、特に2重量%以下、さらに1重量%以下であることが好ましい。グリオキザールの含有量が多いと、AA化PVA系樹脂との混合水溶液の安定性が低下し、ポットライフが短くなったり、得られるAA化PVA系樹脂の架橋構造体が、その保存条件によっては経時で着色する場合がある。
【0037】
また、本発明においてグリオキシル酸塩は、そのアルデヒド基が、メタノール、エタノールなどの炭素数が3以下のアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの炭素数が3以下のジオール等によってアセタール化、およびヘミアセタール化された化合物を包含するものである。かかるアセタール基、およびヘミアセタール基は、水中、あるいは高温下では容易にアルコールが脱離し、アルデヒド基と平衡状態をとるため、アルデヒド基と同様に各種単量体や官能基と反応し、架橋剤として機能するものである。
【0038】
本発明において、AA化PVA系樹脂のグリオキシル酸塩のよる架橋物の形成に用いられるグリオキシル酸塩の量は、通常、AA化PVA系樹脂100重量部に対して0.1〜200重量部であり、特に0.5〜50重量部、さらに1〜20重量部の範囲が好ましく用いられる。
また、AA化PVA系樹脂中のAA基量に対するグリオキシル酸塩の量として見ると、通常、0.01〜10当量であり、特に0.05〜5当量、さらに0.1〜3当量の範囲が好ましく用いられる。
かかるAA化PVA系樹脂に対するグリオキシル酸塩の使用量が少なすぎると、耐水性が不充分となる傾向があり、逆に多すぎると、水蒸気バリア性が低下したり、両者の混合水溶液が増粘しやすくなり、ポットライフが短くなる傾向がある。
【0039】
本発明はAA化PVA系樹脂の架橋剤としてグリオキシル酸塩を用いることを特徴とするものであるが、本発明の作用効果を阻害しない範囲であれば、AA化PVA系樹脂に対する公知の架橋剤を併用することも可能である。そのような架橋剤の例としては、チタニウム化合物、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物等の多価金属化合物;硼酸、硼砂などのホウ素化合物;アミン化合物;アジピン酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ヒドラジドなどのヒドラジン化合物;シラン化合物;メチロール化メラミン、メチロール化尿素などのメチロール化合物、グリオキザール、グリオキシル酸およびそのヘミアセタール体やアセタール体などの誘導体等のアルデヒド化合物、エポキシ化合物、チオール化合物、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂等を用いることができる。
【0040】
〔架橋物層〕
次に、本発明の画像表示媒体におけるAA化PVA系樹脂のグリオキシル酸塩による架橋物を含有する層について説明する。
かかる架橋物層は、フォトクロミック化合物を発色物質として含有する感光層の少なくとも一方の面に存在するもので、特に、感光層を複数有する場合の感光層間の中間層、および、最外感光層の表面保護層として用いることが好ましい。なお、かかる表面保護層は、最外感光層に直接隣接していてもよいし、その他の層、例えば後述の変色防止層などを介していてもよい。
【0041】
かかる架橋物層の厚さは、中間層と保護層、いずれの場合においても、通常、0.1〜10μmであり、特に0.2〜5μmの範囲が好適に用いられる。かかる架橋物層が厚すぎると、画像表示媒体の総厚みが増す要因になるとともに、架橋物層自体がヒビ割れしやすくなる傾向がある。また、架橋物層が薄すぎると、耐有機溶剤性、耐水性、および水蒸気バリア性が不充分となる傾向がある。
【0042】
かかる架橋物層を形成する方法としては、特に制限されるものではないが、通常は、AA化PVA系樹脂とグリオキシル酸塩、およびその他の添加剤を含有する塗工液を、支持基材、あるいは既に形成されている層の上に塗工し、乾燥することによって形成される。
本願発明で用いられるAA化PVA系樹脂は水溶性樹脂であり、グリオキシル酸塩も水溶性を有することから、かかる塗工液に用いる溶剤は、水を主体とするものであることが好ましいが、製造工程で問題がおこらない範囲であれば、有機溶剤を併用することも可能であり、その例としては、アルコール類、ケトン類などの水溶性の有機溶剤を挙げることができる。
また、かかる塗工液には、塗工液に含まれる無機微粒子等の分散剤、増粘剤、流動性改良剤、界面活性剤、消泡剤、離型剤、浸透剤、防腐剤、防黴剤、抗菌剤、などを配合することも可能である。
【0043】
かかる塗工液中のAA化PVA系樹脂の濃度は、用いる塗工方法によって異なるので、一概には言えないが、通常、0.05〜40重量%であり、特に1〜30重量%、さらに1〜20重量%の範囲が好適に用いられる。かかる濃度が高すぎると、塗工液の粘度が高くなり、塗工性が低下する傾向があり、逆に低すぎると所望の厚さの層を得ることが困難になったり、乾燥負荷が高くなったりする傾向がある。
【0044】
また、かかる塗工液は常温付近の低温では安定であり、保存安定性に優れ、ポットライフが長いという特徴を有するものであるが、高温では塗工液中でAA化PVA系樹脂とグリオキシルン酸塩との架橋反応が進行し、増粘する傾向がある。かかる増粘は、塗工液のpH調整によって抑制することが可能であり、通常はpH3〜10、特にpH4〜9の範囲とすることが好ましい。
なお、かかる塗工液のpHの調整は、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物、アンモニアなどのアミン化合物、塩酸、硫酸などの各種無機酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸などの有機酸、を適宜添加することによって行うことができる。
【0045】
かかる塗工液を支持基材、あるいは既に形成されている層の上に塗工する方法としては、公知の塗工方法を用いることができ、例えば、バーコート法、ロールコート法、エアナイフコート法、ブレードコート法、カーテンコート法、スライドビード法、エクストルージョン法、スクリーン印刷法などの各種印刷法、スピンコート法などを挙げることができる。
その塗工量は、用いた塗工液の濃度から、所望の厚さが得られるように調節すればよい。
【0046】
塗工された塗工液を加熱する方法としては、高温の空気中を通過させる方法、ヒートロールに密着させる方法、赤外線加熱、マイクロ波加熱、などを採用することができる。
その乾燥温度は、通常、5〜150℃であり、特に30〜120℃、さらに50〜120の範囲が好ましい。また、その乾燥時間としては、通常、0.1〜60分、特に0.1〜30分、さらに0.2〜20分の範囲が好適に用いられる。
【0047】
なお、かかる架橋物層には、その他の樹脂成分として、シリコーン樹脂、アクリル樹脂など、水溶性樹脂として、未変性のPVA、各種変性PVA系樹脂、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリオキサゾリン、水溶性ポリアミド、水溶性ポリエステル、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミンなどを併用することが可能である。
また、かかる層には、通常、画像表示媒体の中間層や保護層に用いられる各種添加剤を含有することが可能であり、例えば、製品の特性向上や機能性付与を目的として用いられる、無機微粒子、染料、顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、還元剤、熱安定剤などを挙げることができる
【0048】
〔画像表示媒体〕
本発明の画像表示媒体は、支持基材上にフォトクロミック化合物を発色物質として含有する感光層を有するもので、特に、発色状態における極大吸収波長が異なる複数のフォトクロミック化合物を含有する複数の感光層を有するものである。
そして、かかる感光層間の中間層、あるいは最外感光層の表面保護層に、AA化PVA系樹脂のグリオキシル酸塩による架橋物を含有することを特徴とするものである。
【0049】
かかる支持基材としては、ガラス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂からなるフィルム、シート、合成紙、ディスク、板、およびこれらの熱可塑性樹脂によって表面を被覆された紙、布、不織布などを挙げることができる。
特に、フィルム、合成紙、樹脂コート紙、紙などの薄膜状基材を用いる場合には、その厚みは50〜250μmのものが好ましく用いられる。
なお、かかる支持基材は、通常、白色であり、上述の素材のうち、無色のものの場合は、白色に着色されて用いられる。
【0050】
かかる支持基材上にフォトクロミック化合物を含有する感光層が形成されるわけであるが、特に、発色状態における極大吸収波長が異なる、すなわち、異なる色相を示すフォトクロミック化合物を含む複数の感光層を有することにより、多色画像の形成、さらにはフルカラー画像の形成が可能となる。
【0051】
かかる感光層中に発色物質として含有されるフォトクロミック化合物としては、公知のものを用いることができ、例えば、熱不可逆型のフルギド系化合物、ジアリールエテン系化合物、熱可逆型のスピロピラン系化合物、スピロオキサジン系化合物などを挙げることができる。
【0052】
かかるフォトクロミック化合物として、イエローの色相を示すものとしては、例えば、2−[1−(4−アセチル−2,5−ジメチル−3−フリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[1−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、1,2−ビス(2−フェニル−4−トリフルオロメチルチアゾール)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、2,3−ジ(2−メチルベンゾチエニル)マレイン酸ジメチル、1,2−ビス(5−エトキシ−2−メチルチアゾ−ル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、等が挙げられる。
【0053】
また、マゼンタの色相を示すものとしては、例えば、2−[1−(2,5−ジメチル−1−フェニルピラゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[1−(3−メトキシ−5−メチル−1−フェニル−4−ピラゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、1,2−ビス(3−(2−メチル−6−(2−(4−メトキシフェニル)エチニル)ベンゾチエニル))−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1,2−ビス(5−メチル−2−フェニルチアゾ−ル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、 1−(1,2−ジメチル−3−インドリル)−2−(2−メチル−3−ベンゾチエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、等が挙げられる。
【0054】
シアンの色相を示すものとしては、例えば、2−[1−(1,2,5−トリメチル−3−ピロリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[2,6−ジメチル−3,5−ビス(p−ジメチルアミノスチリル)ベンジリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、1,2−ビス(2−メトキシ−5−フェニル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1−(5−メトキシ−1,2−ジメチル−3−インドリル)−2−(5−シアノ−2,4−ジメチル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、 1−(5−メトキシ−1,2−ジメチル−3−インドリル)−2−(6−カルボキシル−2−メチル−3−ベンゾチエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、 1−(6−シアノ−2−メチル−3−ベンゾチエニル)−2−(5−メトキシ−1,2−ジメチル−3−インドリル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、等が挙げられる。
【0055】
なお、かかるフォトクロミック化合物は、それぞれの感光層中に単一のものが含有されていてもよいし、複数のものが混合されて含有されていてもよいが、異なる色相の化合物間で影響を及ぼしあうのを避けるため、異なる色相を示すフォトクロミック化合物は異なる感光層に含有されていることが望ましい。
また、かかるフォトクロミック化合物は、マイクロカプセル化されたものを用いることも可能である。
【0056】
かかる感光層を形成する方法としては、蒸着法が用いられる場合もあるが、通常は簡便である塗工法が用いられる。具体的には、フォトクロミック化合物をバインダー材料とともに有機溶媒に溶解、あるいは分散させ、上述した各種塗工法によって塗工し、乾燥して製膜される。
なお、感光層に用いられるバインダー材料としては、フォトクロミック化合物との相溶性と透明性に優れ、フォトクロミズム機能に悪影響を及ぼさない材料であることが好ましく、例えば、ポリスチレン、ポリエステル、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニルなどを挙げることができる。
【0057】
本発明の画像記録用媒体は、感光層、中間層、表面保護層以外に、さらに各種機能を有する層を有していても良い。
例えば、これらのフォトクロミック化合物を含有する感光層は、通常、消色状態において可視短波長域(400〜450nm)に吸収を有している場合があり、白熱灯や蛍光灯等によって徐々に発色し、形成した画像が変色してしまう場合がある。そのため、感光層上、あるいはさらに他の層を介してその上に、変色防止層を設けることが好ましい。かかる変色防止層は、光吸収層と光反射層に大別され、光吸収層は、可視短波長に吸収を有する色素を、ポリスチレン、ポリエステル、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニルなどのバインダー樹脂に分散させたものである。また、光反射層は、可視短波長域を選択的に反射するように構成された誘電体多層膜を蒸着などの方法によって形成してえられたものである。
【0058】
かくして得られた本発明の画像記録用媒体は、通常のフォトクロミック化合物を発色物質とする画像記録用媒体と同様にして、画像を形成させることが可能である。
例えば、発色状態における極大吸収波長が異なるフォトクロミック化合物を複数の感光層に有する画像記録用媒体の場合、消色状態は支持基材の白色を呈している。これに、紫外光を照射することにより全てのフォトクロミック化合物を発色させ、その後、各々のフォトクロミック化合物の極大吸収波長に対応した波長域の可視光を部分的に照射し、選択的に消色させることにより、所望の画像が形成される。
【実施例】
【0059】
以下に、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例の記載に限定されるものではない。
尚、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0060】
製造例1:グリオキシル酸ナトリウム
50%グリオキシル酸水溶液456g(3.10モル)に20%水酸化ナトリウム水溶液645g(3.22モル)を加え、生じた白色結晶をろ過、水洗した後、50℃にて1時間乾燥して、グリオキシル酸ナトリウム210g(1.84モル、収率59.5%)を得た。得られたグリオキシル酸ナトリウムの23℃における水への溶解度は、17.1%であった。
【0061】
製造例2:グリオキシル酸カルシウム
50%グリオキシル酸水溶液101g(0.68モル)に水101gを加え、25%水溶液とした後、これに20%酢酸カルシウム水溶液268g(0.34モル)を2時間かけて滴下し、生じた白色結晶をろ過、水洗した後、50℃にて1時間乾燥して、グリオキシル酸カルシウム70.3g(0.32モル、収率93.6%)を得た。得られたグリオキシル酸カルシウムの23℃における水への溶解度は0.7%であった。
【0062】
実施例1
平均重合度1200、ケン化度99モル%、AA化度5.0モル%であるAA化PVA系樹脂の10%水溶液100重量部に、架橋剤として製造例1で得られたグリオキシル酸ナトリウムを1重量部(AA化PVA系樹脂に対して10重量%、AA化PVA系樹脂中のAA基に対して0.8当量)添加して混合撹拌し、樹脂組成物水溶液とした。
かかる水溶液をPETフィルム上に流延し、23℃、50%RHの条件下で3日間放置後、70℃で5分間加熱処理を行って厚さ50μmのフィルムを得た。
得られたフィルムの水蒸気バリア性、耐有機溶剤性、および耐水性を以下の要領で評価した。
【0063】
〔水蒸気バリア性〕
得られたフィルムの透湿度を、JIS Z 0208(カップ法)に基づいて測定した。結果を表1に示す。
【0064】
〔耐有機溶剤性〕
得られたフィルムから3.8cm×3.8cmの試料を打ち抜き、これを30℃のトルエン中に12時間浸漬し、目視によって以下の通り評価した。結果を表1に示す。
○・・・変化なし
△・・・膨潤
×・・・溶けて変形
【0065】
〔耐水性〕
得られたフィルムに80℃の温水をスポイトで二滴滴下し、10秒後、指で5回こすった際の感触によって以下の通り評価した。結果を表1に示す。
○・・・変化なし
△・・・少しぬるぬるする(表面が僅かに溶解)
×・・・ぬるぬるする(表面が著しく溶解)
【0066】
実施例2
実施例1において、架橋剤として製造例2によって得られたグリオキシル酸カルシウム0.5重量部(AA化PVA系樹脂に対して5重量%、AA化PVA系樹脂中のAA基に対して0.4当量)添加した以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0067】
実施例3
実施例2において、架橋剤の量を1重量部(AA化PVA系樹脂に対して10重量%、AA化PVA系樹脂中のAA基に対して0.8当量)添加した以外は実施例2と同様にフィルムを作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0068】
比較例1
実施例1において、架橋剤としてグリオキザールを用い、その量を0.1重量部(AA化PVA系樹脂に対して1重量%、AA化PVA系樹脂中のAA基に対して3.0当量)添加した以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0069】
比較例2
実施例1において、架橋剤としてメチロール化メラミン(商品名「M−30W」、長春人造樹脂廠?有限公司社製)を用いた以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0070】
参考例1
実施例1において、架橋剤を用いなかった以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0071】
参考例2
参考例1において、AA化PVA系樹脂に代えて、ケン化度99.2モル%、平均重合度1200の未変性PVAを用いた以外は同様にフィルムを作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
これらの結果から明らかなように、AA化PVA系樹脂の架橋剤としてグリオキシル酸塩を用いて得られたフィルムは、グリオキザールやメチロール化メラミンを用いたものと比較して、優れた耐水性を保持した上で、水蒸気バリア性に優れたものであった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のフォトクロミック化合物を発色物質として感光層中に有する画像表示媒体は、かかる感光層の少なくとも一方の面、例えば感光層間の中間層、あるいは最外感光層の表面保護層に、耐有機溶剤性、耐水性に優れ、さらに水蒸気バリア性に優れる層を有することから、繰り返し画像表示に対する耐久性に優れることが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトクロミック化合物を含有する感光層を有する画像表示媒体であって、かかる感光層に隣接する少なくとも一方の面にアセト酢酸エステル基含有ポリビニルアルコール系樹脂のグリオキシル酸塩による架橋物を含有する層を有することを特徴とする画像表示媒体。
【請求項2】
フォトクロミック化合物を含有する感光層を2層以上有する画像表示媒体であって、アセト酢酸エステル基含有ポリビニルアルコール系樹脂のグリオキシル酸塩による架橋物を含有する層が、感光層間の中間層であることを特徴とする請求項1記載の画像表示媒体。
【請求項3】
アセト酢酸エステル基含有ポリビニルアルコール系樹脂のグリオキシル酸塩による架橋物を含有する層が、最外感光層の表面保護層であることを特徴とする請求項1記載の画像表示媒体。

【公開番号】特開2010−217681(P2010−217681A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66072(P2009−66072)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】