説明

画像表示装置、画像表示方法、曲線特定装置、曲線特定方法、プログラム、および、記録媒体

【課題】非直線的または非平面的な対象物を観察可能な断面画像を表示する。
【解決手段】曲線特定装置1は、仮想3次元空間内の曲面Sを指定する曲面指定操作を受け付ける曲面特定部13と、3次元画像21において曲面S上のボクセルに割り当てられた画素値からなる断面画像が埋め込まれた曲面Sをディスプレイ30に表示する断面画像表示部12と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元画像を表示する画像表示装置および画像表示方法に関する。また、そのような画像表示方法を使用した曲線特定装置および曲線特定方法に関する。更に、そのような装置としてコンピュータを動作させるためのプログラム、および、そのようなプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
CT(Computed Tomography)、MRI(Magnetic Resonance Imaging)、共焦点レーザ顕微鏡などで撮影された3次元画像が診断等のために広く用いられている。このような3次元画像を観察するためには、3次元画像が内包する情報を、何らかの方法を用いて2次元ディスプレイに表示可能な形式に変換する必要がある。
【0003】
ボリュームレンダリングは、このような変換の一例であり、近年、広く用いられている。ボリュームレンダリングとは、3次元画像を構成する各ボクセルを画素値に応じた透明度をもつように半透明化し、これらのボクセルをスクリーンに投影する3次元画像の表現形態である。また、3次元画像のxy平面、yz平面、zx平面(その他、任意の法線をもつ平面であってもよい)などを断面とする断層像を表示する表現形態も有効である。
【0004】
特許文献1には、断面の位置をその法線方向に移動しながら、断層像を順次表示する表示方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−22966(公開日:1994年2月1日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法をはじめ、3次元画像の断層像を表示する従来の表示方法は、平面を断面とする断層像を表示するものである。このため、非平面的な対象物を観察するためには、複数の断層像を確認しなくてはならないという問題があった。例えば、蛇行する血管(非直線的な観察対象)や湾曲した臓器(非平面的な観察対象)を観察するためには、何枚もの断層画像を確認せねばならないことは明らかであろう。また、観察者は、これら複数の断層像から自身で立体イメージを形成せねばならず、特に経験の少ない観察者にとってはこれが大きな負担となっていた。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、非直線的または非平面的な対象物を観察可能な断面画像を表示する画像表示装置および画像表示方法を提供することにある。また、そのような画像表示方法を利用して、3次元画像内の曲線を効率的に特定する曲線特定装置および曲線特定方法を併せて提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る画像表示装置は、3次元空間を構成する各ボクセルに割り当てられた画素値からなる3次元画像を表示する画像表示装置において、上記3次元空間内の曲面を指定する曲面指定操作を受け付ける曲面特定部と、上記曲面指定操作により指定された上記3次元空間内の曲面であって、上記3次元画像において当該曲面上のボクセルに割り当てられた画素値からなる断面画像が埋め込まれた曲面をディスプレイに表示する断面画像表示部と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、ユーザが指定した曲面を断面とする断面画像を表示することができる。特に、3次元画像内の観察対象物に沿った曲面を指定することにより、観察対象物が非直線的または非平面的であっても、観察対象物を観察可能な断面画像を表示することができる。しかも、その断面画像は、ユーザが指定した曲面に埋め込んで表示される。このため、ユーザは、観察対象物をその配置まで含めて正しく観察することができる。なお、本明細書では、上記「3次元空間」を、画像データによって構成された3次元空間であることから、「仮想3次元空間」と表現することがある。
【0010】
本発明に係る画像表示装置において、上記曲面指定操作によって指定可能な曲面は、上記3次元空間に配置されたスクリーンへの投影像が曲線になる曲面であり、上記曲面指定操作は、指定すべき曲面の上記スクリーンへの投影像を指定するユーザ操作である、ことが望ましい。
【0011】
上記の構成によれば、ユーザは、スクリーン上で曲線を指定するという2次元的な操作によって、3次元空間内の曲面という3次元的な対象を容易に指定することができる。すなわち、上記曲面とは、スクリーン上への投影像が、(ユーザが描いた)スクリーン上の曲線γと一致する3次元空間内の曲面S(γ)である。
【0012】
本発明に係る画像表示装置は、上記曲面特定部が上記曲面指定操作を受け付ける際に、上記3次元画像をボリュームレンダリングにより表示する3次元画像表示部を更に備える、ことが好ましい。
【0013】
上記の構成によれば、ユーザは、3次元画像内の観察対象物を観察しながら、上記曲面を指定する曲面指定操作を行なうことができる。
【0014】
本発明に係る画像表示装置は、上記3次元画像は、生体を撮像することにより得られた3次元画像であり、上記断面画像表示部が表示する上記曲面は、上記3次元画像において繊維状組織に対応する領域を含む、ことが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、蛇行する血管等の繊維状組織を正しく観察することができる。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明に係る曲線特定装置は、3次元空間を構成する各ボクセルに割り当てられた画素値からなる3次元画像に基づいて、該3次元空間内の曲線を特定する曲線特定装置において、上記3次元空間内の第1曲面を指定する第1曲面指定操作を受け付ける第1曲面特定部と、上記第1曲面指定操作により指定された上記3次元空間内の第1曲面であって、上記3次元画像において当該第1曲面上のボクセルに割り当てられた画素値からなる断面画像が埋め込まれた第1曲面をディスプレイに表示する断面画像表示部と、上記断面画像表示部が断面画像が埋め込まれた上記第1曲面をディスプレイに表示しているとき、上記3次元空間内の第2曲面を指定する第2曲面指定操作を受け付ける第2曲面特定部と、上記第1曲面指定操作により指定された上記第1曲面と上記第2曲面指定操作により指定された上記第2曲面との交線を特定する曲線特定部と、を備えていることを特徴とする。
【0017】
上記の構成によれば、上記画像表示装置と同様に断面画像を表示するので、ユーザは、観察対象物をその配置まで含めて正しく観察することができる。そのうえ、ユーザは、断面画像内の観察対象物を観察しながら、上記第2曲面を指定する第2曲面指定操作を行なうことができる。すなわち、曲線描画という2次元的な操作のみで、3次元画像内の3次元的な観察対象物に沿った曲線を容易に特定することができる。
【0018】
ここで、上記第1曲面とは、スクリーン上への投影像が、(ユーザが描いた)スクリーン上の曲線γ1と一致する3次元空間内の曲面S(γ1)であってもよい。同様に、上記第2曲面とは、スクリーン上への投影像が、(ユーザが描いた)スクリーン上の曲線γ2と一致する3次元空間内の曲面S(γ2)であってもよい。このとき、上記曲線は、2つの曲面S(γ1)、S(γ2)の交線Γ=S(γ1)∩S(γ2)として特定される。
【0019】
本発明に係る曲線特定装置は、上記断面画像表示部は、ユーザ操作に応じてアングルを更新して、断面画像が埋め込まれた上記第1曲面をディスプレイに表示する、ことが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、3次元曲線状の観察対象物がどの方向に延伸している場合であっても、その観察対象物に沿った曲線を容易に特定することができる。
【0021】
本発明に係る曲線特定装置は、上記3次元画像は、生体を撮像することにより得られた3次元画像であり、上記3次元画像において繊維状組織に対応する曲線を特定する、ことが好ましい。
【0022】
上記の構成によれば、蛇行する血管等の繊維状組織の曲線形状を容易に特定することができる。
【0023】
上記課題を解決するために、本発明に係る画像表示方法は、3次元空間を構成する各ボクセルに割り当てられた画素値からなる3次元画像を画像表示装置が表示する画像表示方法において、上記3次元空間内の曲面を指定する曲面指定操作を受け付ける曲面特定ステップと、上記曲面指定操作により指定された上記3次元空間内の曲面であって、上記3次元画像において当該曲面上のボクセルに割り当てられた画素値からなる断面画像が埋め込まれた曲面をディスプレイに表示する断面画像表示ステップと、を含んでいることを特徴とする。
【0024】
上記の構成によれば、上記画像表示装置と同様の効果を奏する。
【0025】
上記課題を解決するために、本発明に係る曲線特定方法は、曲線特定装置が、3次元空間を構成する各ボクセルに割り当てられた画素値からなる3次元画像に基づいて、該3次元空間内の曲線を特定する曲線特定方法において、上記3次元空間内の第1曲面を指定する第1曲面指定操作を受け付ける第1曲面特定ステップと、上記第1曲面指定操作により指定された上記3次元空間内の第1曲面であって、上記3次元画像において当該第1曲面上のボクセルに割り当てられた画素値からなる断面画像が埋め込まれた第1曲面をディスプレイに表示する断面画像表示ステップと、上記断面画像表示ステップにて断面画像が埋め込まれた上記第1曲面をディスプレイに表示しているとき、上記3次元空間内の第2曲面を指定する第2曲面指定操作を受け付ける第2曲面特定ステップと、上記第1曲面指定操作により指定された上記第1曲面と上記第2曲面指定操作により指定された上記第2曲面との交線を特定する曲線特定ステップと、を含んでいることを特徴とする。
【0026】
上記の構成によれば、上記曲線特定装置と同様の効果を奏する。
【0027】
なお、コンピュータを上記画像表示装置または上記曲線特定装置として動作させるためのプログラムや、そのようなプログラムが記録されているコンピュータ読み取り可能な記録媒体も本発明の範疇に含まれる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、3次元画像内の観察対象物が非直線的または非平面的であっても、観察対象物を観察可能な断面画像を表示することができる。しかも、観察対象物をその配置まで含めて正しく観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態を示すものであり、曲線特定装置のブロック図である。
【図2】本発明の実施形態を示すものであり、図1に示す曲線特定装置として機能するコンピュータのブロック図である。
【図3】本発明の実施形態を示すものであり、図1に示す曲線特定装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態を示すものであり、図1に示す曲線特定装置による曲線特定処理の各ステップにおける仮想3次元空間内の構成を示す図である。(a)は、スクリーンSo上に曲線γ1を描く第1の曲面指定操作が入力された状態、(b)は、曲面S1に断面画像I(S1)が埋め込まれた状態、(c)は、スクリーンSo'上に曲線γ2を描く第2の曲面指定操作が入力された状態、(d)は、交線Γ=S(γ1)∩S(γ2)が特定された状態、をそれぞれ示す。
【図5】本発明の実施形態を示すものであり、図1に示す曲線特定装置の断面画像表示部によってディスプレイに表示される画面の例を示す図である。(a)は、視点を3次元画像内に設定した場合に表示される画面であり、(b)は、血管に沿った断面を設定した場合に表示される画面である。
【図6】本発明の実施例を示すものであり、(a)は、第1の曲線指定操作としてCT画像のボリュームレンダリング像上に曲線γ1を指定した状態を示し、(b)は、第2の曲線指定操作としてCT画像の断面画像上に第2の曲線γ2を指定した状態を示し、(c)は、CT画像のボリュームレンダリング像上に特定された曲線Γが描かれた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の一実施形態について、図面を用いて説明すれば以下のとおりである。なお、本実施形態に係る画像表示装置は、曲線特定機能を有する曲線特定装置として機能するので、以下ではこれを曲線特定装置と呼ぶ。ただし、以下に説明する曲線特定装置は、曲線特定機能を取り去ったとしても、その画像表示方法に特有の工夫を含むものであり、有効に実施することができる。
【0031】
〔曲線特定装置〕
本実施形態に係る曲線特定装置1の構成について、図1を参照して説明する。
【0032】
図1は、曲線特定装置1の要部構成を示すブロック図である。曲線特定装置1は、図1に示すように、3次元画像表示部11、断面画像表示部12、曲面特定部13、曲線特定部14、データ入出力部15、および、記憶部20を備えている。
【0033】
記憶部20には、3次元画像21、スクリーン/視点情報22、曲面データ23、および、曲線データ24が記憶されている。これらのデータのうち、3次元画像21は、データ入出力部15が外部から取得した、曲線特定装置1にとっての入力データである。曲線特定装置1は、3次元画像21、および、ポインティングデバイス40を用いて入力される曲面指定操作に基づいて曲線データ24を生成し、データ入出力部15を介して外部に出力する。
【0034】
3次元画像21は、仮想3次元空間(3次元空間)を構成する各ボクセルに割り当てられた画素値の集合である。仮想3次元空間がI×J×K個のボクセルにより構成されている場合、すなわち、3次元画像21の解像度がI×J×Kボクセルである場合、3次元画像21は、3次元配列{v(i,j,k)|0≦i<I,0≦j<J,0≦k<K}により表すことができる。v(i,j,k)は、ボクセル(i,j,k)に割り当てられた画素値である。本実施形態においては、3次元画像21として、人体を撮影して得られたCT画像を想定する。
【0035】
スクリーン/視点情報22は、3次元画像表示部11および断面画像表示部12が仮想3次元空間内に配置されたオブジェクト(領域、曲面、曲線等)を3次元表示する際に参照する情報である。ここで、オブジェクトを3次元表示するとは、オブジェクトを仮想3次元空間内に配置されたスクリーンSoへの投影し、その投影像をディスプレイ30に表示することを指す。
【0036】
本実施形態においては、投影法として、透視投影(中心投影)を用いる。この場合、オブジェクト上の点Aは、点Aおよび視点Oを通る直線APとスクリーンSoとの交点A’に投影される。スクリーン/視点情報22は、このスクリーンSoおよび視点Oの配置を定義する情報である。ユーザは、所望のアングルを得るために、スクリーン/視点情報22を自由に設定することができる。なお、使用可能な投影法は、透視投影に限定されない。すなわち、透視投影の代わりに平行投影を用いてもよい。
【0037】
曲面データ23は、仮想3次元空間内の曲面Sを表すデータである。曲面Sは、ユーザにより指定された曲面である。本実施形態においては、指定可能な曲面のクラスとして、スクリーンSo上の曲線γの逆投影像、すなわち、スクリーンSoへの投影像が曲線γになる曲線S=S(γ)からなるクラスを考える。曲線γが、スプライン曲線やベジェ曲線などのように、多項式で表現される曲線である場合、曲面S(γ)も、多項式で表現される曲線となる。この場合、曲面S(γ)を表現する多項式の係数を、曲面データ23として用いればよい。
【0038】
曲線データ24は、仮想3次元空間内の曲線Γを表すデータである。曲線Γは、ユーザにより指定された曲線である。本実施形態においては、指定可能な曲面のクラスとして、第1の曲線γ1の逆投影像である第1の曲面S(γ1)と、第2の曲面γ2の逆投影像である第2の曲面S(γ2)との交線S(γ1)∩S(γ2)として与えられる曲線Γ=Γ(γ1,γ2)からなるクラスを考える。なお、曲面S(γ1)を曲線γ1に投影するスクリーンおよび視点と、曲面S(γ2)を曲線γ2に投影するスクリーンおよび視点とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。曲面S(γ1)と曲面S(γ2)とが多項式により表現される曲面である場合、曲線Γ=Γ(γ1,γ2)も多項式により表現される曲線となる。この場合、曲線Γ(γ1,γ2)を表現する多項式の係数を、曲線データ24として用いればよい。
【0039】
3次元画像表示部11は、3次元画像21を3次元表示するための手段である。本実施形態において、3次元画像21の3次元表示は、3次元画像21をボリュームレンダリングすることにより実現される。ボリュームレンダリングとは、3次元画像21を構成する各ボクセルを画素値に応じた透明度をもつように半透明化し、これらのボクセルをスクリーンSo上に投影することを指す。この際、3次元画像表示部11は、記憶部20に格納されたスクリーン/視点情報22を参照し、アングル(視点OおよびスクリーンSoの配置)を決定する。ボリュームレンダリングされた3次元画像21は、ユーザが第1の曲面の配置を決定するためのガイドとなる。
【0040】
なお、別途、3次元画像21から領域抽出が行なわれている場合には、3次元画像表示部11が、3次元画像21をボリュームレンダリングする構成に代えて、3次元画像表示部11が、抽出領域に属するボクセルを不透明化し、これらのボクセルをスクリーンSo上に投影する構成を採用してもよい。
【0041】
曲面特定部13は、曲面Sを指定する曲面指定操作の入力を受け付け、曲面指定操作により指定された曲面Sを表す曲面データ23を生成するための手段である。本実施形態において、曲面特定部13が受け付ける曲面指定操作は、マウスやトラックパッドなどのポインティングデバイス40を用いて、スクリーンSo上に曲線γを描くストローク操作である。曲面特定部13は、スクリーンSo上に曲線γを描くストローク操作の入力を受け付けると、記憶部20に格納されたスクリーン/視点情報22を参照し、曲線γを表す曲線データ(例えば、曲線γを表現する多項式の係数)から、スクリーンSo上への投影像が曲線γに一致する曲面S(γ)を表す曲面データ23(例えば、曲面S(γ)を表現する多項式の係数)を算出する。なお、γが直線であれば、曲面特定部13により算出される曲面データ23は、平面になる。
【0042】
曲面特定部13は、上述した3次元画像表示部11が3次元画像21を表示している際になされた曲面指定操作を、第1の曲面S1=S(γ1)を指定する第1の曲面指定操作として受け付け、第1の曲面S1を表す曲面データ23(例えば、曲面S(γ1)を表現する多項式の係数)を断面画像表示部12に供給すると共に記憶部20に格納する。また、曲面特定部13は、後述する断面画像表示部12が断面画像I(S1)を表示している際になされた曲面指定操作を、第2の曲面S2=S(γ2)を指定する第2の曲面指定操作として受け付け、第2の曲面S2を表す曲面データ(例えば、曲面S(γ2)を表現する多項式の係数)を曲線特定部14に供給すると共に、この曲面データを記憶部20に格納する。
【0043】
断面画像表示部12は、第1の曲面指定操作により指定された曲面S1を断面とする3次元画像21の断面画像I(S1)を生成すると共に、生成した断面画像I(S1)が埋め込まれた(張り込まれた)曲面S1をディスプレイ30に3次元表示するための手段である。生成した断面画像I(S1)をテクスチャとする曲面S1をディスプレイ30に3次元表示するための手段であると言い換えてもよい。断面画像I(S1)の生成は、仮想3次元空間において曲面S1と交わるボクセルを特定し、特定したボクセルに割り当てられた画素値をサンプリング(抽出)することによって実現される。なお、曲面S1と交わるボクセルは、曲面特定部13から供給された曲面データ23から容易に算出することができる。
【0044】
断面画像I(S1)を表示する際、断面画像表示部12は、記憶部20に格納されたスクリーン/視点情報22を参照してアングル(視点OおよびスクリーンSoの配置)を決定する。スクリーン/視点情報22がユーザによって更新されると、アングルが断面画像表示部12によってリアルタイムに更新される。これにより、ユーザは、所望のアングルから断面画像I(S1)を観察することができる。例えば、CT画像における血管領域のように仮想3次元空間内を複雑に蛇行する観察対象であっても、曲面S1が観察対象に沿うように設定されていれば、1枚の断面画像I(S1)で観察対象全体を一望することができる。
【0045】
曲線特定部14は、記憶部20から読み出した曲面データ23(第1の曲面S1表す)と曲面特定部13から取得した曲面データ(第2の曲面S2を表す)とから、第1の曲面指定操作によって指定された曲面S1と、第2の曲面指定操作により指定された曲面S2との交線Γ=S(γ1)∩S(γ2)を表す曲線データ24を生成する。第1の曲面S1と第2の曲面S2とが多項式により表現されている場合、代数演算によって曲線Γの係数を算出することができる。
【0046】
また、第1の曲面S1および第2の曲面S2を離散的な三角形ポリゴンメッシュデータなど利用して表現する場合でも、第1の曲面S1および第2の曲面S2の各三角形同士の交線を計算することで、容易に曲線Γ=S(γ1)∩S(γ2)を計算することが可能である。
【0047】
なお、多項式によって表現された交線Γをその係数によって特定する代わりに、交線Γを交線Γと交わりをもつボクセルの集合によって特定してもよい。この場合、第1の曲面S1と交わるボクセルのみで値1(他は0)をもつ第1の2値化画像と、第2の曲面S2と交わるボクセルのみで値1(他は0)をもつ第2の2値化画像とを生成し、生成した2つの2値化画像の論理積をとって、これを曲線データ24として利用してもよい。
【0048】
また、曲線特定部14は、曲線Γを中心軸とするシリンダ状(ファイバ状)の領域を抽出する領域抽出(Volume Segmentation)機能を有していてもよい。領域抽出機能の実現方法としては、曲線Γを中心軸とする半径一定のシリンダを抽出する実装や、曲線Γを軸としてRegion Growingを実施する実装などが考えられる。前者の場合、ユーザがその半径を自由に設定できるようにすることが望ましい。このような領域抽出機能は、例えば、CT画像における血管の抽出に好適に利用することができる。
【0049】
〔曲線特定装置の構成例〕
曲線特定装置1は、コンピュータ(電子計算機)を用いて構成することができる。図2は、曲線特定装置1として利用可能なコンピュータ100の構成を例示したブロック図である。
【0050】
コンピュータ100は、図2に示したように、バス110を介して互いに接続された演算装置120と、主記憶装置130と、補助記憶装置140と、入出力インタフェース150とを備えている。演算装置120として利用可能なデバイスとしては、CPU(Central Processing Unit)を挙げることができる。また、主記憶装置130として利用可能なデバイスとしては、例えば、半導体RAM(random access memory)を挙げることができる。また、補助記憶装置140として利用可能なデバイスとしては、例えば、ハードディスクドライブを挙げることができる。
【0051】
入出力インタフェース150には、図2に示したように、入力装置200及び出力装置300が接続される。曲面指定操作(具体的にはストローク操作)を行なうためのポインティングデバイス40(図1参照)は、この入出力インタフェース150に接続される入力装置200の一例である。また、ボリュームレンダリング像や断面画像を表示するディスプレイ30(図1参照)は、この入出力インタフェース150に接続される入出力装置300の一例である。
【0052】
補助記憶装置140には、コンピュータ100を曲線特定装置1として動作させるための各種プログラムが格納されている。具体的には、3次元画像表示部プログラム、断面画像表示部プログラム、曲面特定部プログラム、曲線特定部プログラム、データ入出力部プログラムが格納されている。
【0053】
演算装置120は、補助記憶装置140に格納された上記各プログラムを主記憶装置130上に展開し、主記憶装置130上に展開された上記各プログラムに含まれる命令を実行することによって、コンピュータ100を、図1に示す3次元画像表示部11、断面画像表示部12、曲面特定部13、曲線特定部14、および、データ入出力部15として機能させる。
【0054】
主記憶装置130は、演算装置120が参照する3次元画像21、スクリーン/視点情報22、曲面データ23、および、曲線データ24を格納する記憶部20(図1参照)として機能する。3次元画像21については、データ入出力部15が外部から取得したものを主記憶装置130に格納して利用する。
【0055】
なお、ここでは、内部記録媒体である補助記憶装置140に記録されているプログラムを用いてコンピュータ100を曲線特定装置1として機能させる構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、外部記録媒体に記録されているプログラムを用いてコンピュータ100を曲線特定装置1として機能させる構成を採用してもよい。外部記録媒体は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であれば何でもよく、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクなどを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などにより実現することができる。
【0056】
また、コンピュータ100を通信ネットワークと接続可能に構成し、上述した各プログラムコードを通信ネットワークを介してコンピュータ100に供給するようにしてもよい。この通信ネットワークとしては、とくに限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、とくに限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。
【0057】
〔曲線特定方法〕
次に、曲面特定装置1による曲線特定処理の流れについて、図3を参照して説明する。図3は、曲面特定装置1による曲線特定処理の流れを示したフローチャートである。曲面特定装置1による曲線特定処理に含まれる各ステップについて、順に説明すれば以下のとおりである。
【0058】
ステップS1:データ入出力部15が、3次元画像21を外部から取得し、取得した3次元画像21を記憶部20に格納する。
【0059】
ステップS2:3次元画像表示部11が、記憶部20に格納されている3次元画像21のボリュームレンダリング像をディスプレイ30に表示し、曲面特定部13が、第1の曲面S1を指定する第1の曲面指定操作を待ち受ける。3次元画像21のボリュームレンダリング像がディスプレイ30に表示されているので、ユーザは、対象物の表面を目視しながら第1の曲面指定操作を行なうことができる。
【0060】
ステップS3:第1の曲面指定操作として、スクリーンSo上に曲線γ1を描く第1の曲面指定操作が入力されると、曲面特定部13が、第1の曲面S1=S(γ1)を表す曲面データ23を生成し、生成した曲面データ23を記憶部20に格納する。スクリーンSo上に曲線γ1を描く第1の曲面指定操作が入力された状態の仮想3次元空間内の構成を図4(a)示す。
【0061】
ステップS4:断面画像表示部12が、断面画像I(S1)が埋め込まれた曲面S1をディスプレイ30に表示し、曲面特定部13が第2の曲面S2を指定する第2の曲面指定操作を待ち受ける。曲面S1に断面画像I(S1)が埋め込まれているので、ユーザは、対象物の断面(S1断面)を目視しながら第2の曲面指定操作を行なうことができる。曲面S1に断面画像I(S1)が埋め込まれた状態の仮想3次元空間内の構成を図4(b)に示す。また、曲面S1に断面画像I(S1)が埋め込まれた状態の画面例を図5(a)および図5(b)に示す。図5(a)は、視点を仮想3次元空間(ボリューム直方体)内に設定した場合に表示される画面であり、図5(b)は、蛇行した血管に沿った曲面S1を設定した場合に表示される画面である。
【0062】
ステップS5:第2の曲面指定操作として、スクリーンSo’上に曲線γ2を描く第2の曲面指定操作が入力されると、曲面特定部13が、第2の曲面S2=S(γ2)を表す曲面データを生成し、生成した曲面データを曲線特定部14に供給する。図4(c)に、スクリーンSo’上に曲線γ2を描く第2の曲面指定操作が入力された状態の仮想3次元空間内の構成を示す。
【0063】
ステップS6:曲線特定部14が、記憶部20から読み出した曲面データ23(ステップS3にて生成された、第1の曲面S1を表す曲面データ)と、曲面特定部13から取得した曲面データ(ステップS5にて生成された、第2の曲面S2を表す曲面データ)とから、第1の曲面指定操作によって指定された曲面S1と、第2の曲面指定操作により指定された曲面S2との交線Γ=S(γ1)∩S(γ2)を表す曲線データ24を生成する。曲線特定部14によって生成された曲線データ24は、記憶部20に格納されると共に、データ入出力部15に供給される。図4(d)に、交線Γ=S(γ1)∩S(γ2)が特定された状態の仮想3次元空間内の構成を示す。
【0064】
ステップS7:データ入出力部15が、ステップS4にて生成された曲線データ24を外部に出力する。
【0065】
〔実施例〕
最後に、曲線特定装置1を用いて行なった曲線特定の具体例について、図6に基づいて説明する。図6は、曲線特定装置1を用いてCT画像から血管に相当する領域を抽出した過程を示すものである。
【0066】
図6(a)は、図3のフローチャートのSTEP2にて表示されるボリュームレンダリング像である。このボリュームレンダリング像から複数の蛇行する血管が見て取れる。同図における白抜きの矢印は、ユーザがそのうちの一本に沿って引いた第1の曲線γ1である。図6(b)は、その第1の曲線γ1に対応する曲面S1=S(γ1)における断面画像I(S1)である。画面中央の扇型の領域に、断面画像I(S1)が表示されている。画面中央に白く写る血管は、図6(a)に示すように、3次元的に蛇行するものであるが、その全体が同一の断面画像I(S1)内に映し出されている点に留意されたい。画面中央に白く写る血管上に引かれた黒い曲線は、ユーザがひいた第2の曲線γ2である。これら2つの曲線から導出された曲線Γを図6(c)に示す。このように、曲線特定装置1を用いれば蛇行した血管であっても単一の断面画像を用いて空間的に正しくトレースすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
3次元画像の観察、特に、CT(CT:Computed Tomography)画像などの医療用画像の観察に好適に利用することができる。3次元画像における領域特定(領域抽出)、特に、CT(CT:Computed Tomography)画像などの医療用画像における領域特定(領域抽出)に利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 曲線特定装置(画像表示装置)
11 3次元画像表示部
12 断面画像表示部
13 曲面特定部
14 曲線特定部
15 データ入出力部
20 記憶部
21 3次元画像
22 スクリーン/視点情報
23 曲面データ
24 曲線データ
30 ディスプレイ
40 ポインティングデバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元空間を構成する各ボクセルに割り当てられた画素値からなる3次元画像を表示する画像表示装置において、
上記3次元空間内の曲面を指定する曲面指定操作を受け付ける曲面特定部と、
上記曲面指定操作により指定された上記3次元空間内の曲面であって、上記3次元画像において当該曲面上のボクセルに割り当てられた画素値からなる断面画像が埋め込まれた曲面をディスプレイに表示する断面画像表示部と、を備えていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
上記曲面指定操作によって指定可能な曲面は、上記3次元空間に配置されたスクリーンへの投影像が曲線になる曲面であり、上記曲面指定操作は、指定すべき曲面の上記スクリーンへの投影像を指定するユーザ操作である、ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
上記曲面特定部が上記曲面指定操作を受け付ける際に、上記3次元画像をボリュームレンダリングにより表示する3次元画像表示部を更に備える、ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
上記3次元画像は、生体を撮像することにより得られた3次元画像であり、
上記断面画像表示部が表示する上記曲面は、上記3次元画像において繊維状組織に対応する領域を含む、ことを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
3次元空間を構成する各ボクセルに割り当てられた画素値からなる3次元画像に基づいて、該3次元空間内の曲線を特定する曲線特定装置において、
上記3次元空間内の第1曲面を指定する第1曲面指定操作を受け付ける第1曲面特定部と、
上記第1曲面指定操作により指定された上記3次元空間内の第1曲面であって、上記3次元画像において当該第1曲面上のボクセルに割り当てられた画素値からなる断面画像が埋め込まれた第1曲面をディスプレイに表示する断面画像表示部と、
上記断面画像表示部が断面画像が埋め込まれた上記第1曲面をディスプレイに表示しているとき、上記3次元空間内の第2曲面を指定する第2曲面指定操作を受け付ける第2曲面特定部と、
上記第1曲面指定操作により指定された上記第1曲面と上記第2曲面指定操作により指定された上記第2曲面との交線を特定する曲線特定部と、を備えていることを特徴とする曲線特定装置。
【請求項6】
上記断面画像表示部は、ユーザ操作に応じてアングルを更新して、断面画像が埋め込まれた上記第1曲面をディスプレイに表示する、ことを特徴とする請求項5に記載の曲線特定装置。
【請求項7】
上記3次元画像は、生体を撮像することにより得られた3次元画像であり、
上記3次元画像において繊維状組織に対応する曲線を特定する、ことを特徴とする請求項5または6に記載の曲線特定装置。
【請求項8】
3次元空間を構成する各ボクセルに割り当てられた画素値からなる3次元画像を画像表示装置が表示する画像表示方法において、
上記3次元空間内の曲面を指定する曲面指定操作を受け付ける曲面特定ステップと、
上記曲面指定操作により指定された上記3次元空間内の曲面であって、上記3次元画像において当該曲面上のボクセルに割り当てられた画素値からなる断面画像が埋め込まれた曲面をディスプレイに表示する断面画像表示ステップと、を含んでいることを特徴とする画像表示方法。
【請求項9】
曲線特定装置が、3次元空間を構成する各ボクセルに割り当てられた画素値からなる3次元画像に基づいて、該3次元空間内の曲線を特定する曲線特定方法において、
上記3次元空間内の第1曲面を指定する第1曲面指定操作を受け付ける第1曲面特定ステップと、
上記第1曲面指定操作により指定された上記3次元空間内の第1曲面であって、上記3次元画像において当該第1曲面上のボクセルに割り当てられた画素値からなる断面画像が埋め込まれた第1曲面をディスプレイに表示する断面画像表示ステップと、
上記断面画像表示ステップにて断面画像が埋め込まれた上記第1曲面をディスプレイに表示しているとき、上記3次元空間内の第2曲面を指定する第2曲面指定操作を受け付ける第2曲面特定ステップと、
上記第1曲面指定操作により指定された上記第1曲面と上記第2曲面指定操作により指定された上記第2曲面との交線を特定する曲線特定ステップと、を含んでいることを特徴とする曲線特定方法。
【請求項10】
コンピュータを請求項1から4のいずれか1項に記載の画像表示装置として動作させるためのプログラムであって、上記コンピュータを上記画像表示装置が備える各部として機能させるプログラム。
【請求項11】
コンピュータを請求項5から7のいずれか1項に記載の曲線特定装置として動作させるためのプログラムであって、上記コンピュータを上記曲線特定装置が備える各部として機能させるプログラム。
【請求項12】
請求項10または11に記載のプログラムが記録されているコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−10893(P2012−10893A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149497(P2010−149497)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り ・研究集会名 VCADシステム研究会 第23回 定例研究会 主催者名 NPO法人VCADシステム研究会 共催者名 独立行政法人理化学研究所 開催日 平成22年2月5日 ・刊行物名「理研シンポジウム VCADシステム研究2009」 発行日 2010年3月1日 発行者 VCADシステム研究プログラム
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】