説明

画像表示装置、画像表示装置のためのコンピュータプログラムおよび画像表示方法

【課題】発光装置を実際に試作することなく、これに発生すると予想される視覚的な周期むらを評価する技術を提供する。
【解決手段】画像表示装置100は、周期的に配置される光学要素を含む発光装置の発光状態を示す模擬画像10を表示する。画像表示装置100は、条件取得部20、モデル取得部30および表示部40を含む。条件取得部20は、光学要素の寸法設計値の少なくとも一つに関する複数通りの入力値を取得する。モデル取得部30は、光学要素の寸法設計値を入力値とした場合の発光装置の発光状態にかかる視覚的な周期むらを示す模擬画像10を取得する。表示部40は、取得された複数の模擬画像10を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置の画像を表示する画像表示装置およびそのためのコンピュータプログラム、ならびにかかる画像を表示する画像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学要素を含む発光装置の一例として、ディスプレイ装置や照明装置が提供されている。これらの発光装置においては、発光面内を均一な輝度で発光させることがしばしば求められる。
【0003】
例えば、ディスプレイ装置の一例である液晶表示装置では、バックライトの発光を拡散層で表示面内に均一に拡散し、これをプリズムフィルムで法線方向に集光し、さらに液晶セルや位相差フィルム(位相差制御部材)で所定に位相差制御して発光状態を得る。このとき、バックライトやプリズムフィルム、位相差制御部材などの光学要素から出る光が表示面内で不均一になると、視覚的なむらが発生して問題となる。
【0004】
これらの光学要素は、表示面内に一次元的または二次元的に複数個が周期的に配置される。このため、光学要素に起因する視覚的なむらは、周期むらとして看者に視認される。
【0005】
ここで、視覚的な周期むらの程度を定量的に評価する方法が知られている。例えば、
特許文献1には、肉眼で認識できる特定の波長範囲に該当する周波数のパワースペクトルに対して、強調関数とよばれる定数を乗じて強調画像を得ることが記載されている。
また、特許文献2には、対象物の画像データから得たパワースペクトルに対して乗じる強調関数として、空間周波数の関数を用いることが記載されている。
【0006】
非特許文献1では、平面上で正弦波的に濃淡が変化する濃淡画像を所定の視距離で目視観察した場合の、一般的な成人のコントラスト感度(Cs)と空間周波数[mm−1]との関係が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−222002号公報
【特許文献2】特開平10−96696号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Michael J.Flynn :Visual Requirements for High-Fidelity Display, Advances in Digital Radiography, RSNA Categorical Course in Diagnostic Radiology Physics, 103-107, 2003.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の特許文献および非特許文献では、単純な正弦波的な周期むらの視認性が検討されているにすぎない。このため、発光装置に発生する周期むらの視認性を評価するためには、発光装置を実際に試作して目視検査を行う必要があった。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、発光装置を実際に試作することなく、これに発生すると予想される視覚的な周期むらを評価する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の画像表示装置は、周期的に配置される光学要素を含む発光装置の発光状態を示す画像を表示する画像表示装置であって、前記光学要素の寸法設計値の少なくとも一つに関する複数通りの入力値を取得する条件取得部と、前記光学要素の前記寸法設計値を前記入力値とした場合の前記発光装置の発光状態にかかる視覚的な周期むらを示す画像を取得するモデル取得部と、生成された複数の前記画像を表示する表示部と、を含む。
【0012】
上記発明によれば、光学要素の寸法設計値を複数通りに変えた場合の発光装置の発光状態にかかる視覚的な周期むらを示す画像が取得され、表示される。このため、発光装置に生じる種々の条件の視覚的な周期むらを目視評価することが可能である。
【0013】
本発明のコンピュータプログラムは、周期的に配置される光学要素を含む発光装置の発光状態を示す画像を表示する画像表示装置のためのコンピュータプログラムであって、前記光学要素の寸法設計値の少なくとも一つに関する複数通りの入力値を取得する条件取得処理と、前記光学要素の前記寸法設計値を前記入力値とした場合の前記発光装置の発光状態にかかる視覚的な周期むらを示す画像を生成するモデル取得処理と、生成された複数の前記画像を表示する表示処理と、を前記画像表示装置に実行させることを特徴とする。
【0014】
本発明の画像表示方法は、周期的に配置される光学要素を含む発光装置の発光状態を示す画像を表示する画像表示方法であって、前記光学要素の寸法設計値の少なくとも一つに関する複数通りの入力値を取得する条件取得ステップと、前記光学要素の前記寸法設計値を前記入力値とした場合の前記発光装置の発光状態にかかる視覚的な周期むらを示す画像を生成するモデル取得ステップと、生成された複数の前記画像を表示する表示ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、光学要素の寸法設計値を複数通りに変えた場合に発光装置に発生することが予想される視覚的な周期むらを示す画像が表示される。これにより、発光装置を実際に試作することなく、周期むらの目視評価が良好となる光学要素の寸法設計値を知得することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第一実施形態の画像表示装置を示す機能ブロック図である。
【図2】(a)は発光装置の一例を示す模式図であり、(b)は個々の光学要素の点灯時の輝度分布と、発光装置全体の点灯時の輝度分布とのそれぞれ理論値を示すグラフである。
【図3】図2(b)に対応する模擬画像を示す図である。
【図4】第一実施形態にかかる画像表示方法を示すフローチャートである。
【図5】第二実施形態の画像表示装置を示す機能ブロック図である。
【図6】第二実施形態にかかる画像表示方法を示すフローチャートである。
【図7】実施例1の計算結果2を示すグラフである。
【図8】実施例1の計算結果3を示すグラフである。
【図9】実施例1の計算結果4を示すグラフである。
【図10】図7に対応する模擬画像を示す図である。
【図11】図8に対応する模擬画像を示す図である。
【図12】図9に対応する模擬画像を示す図である。
【図13】人の輝度むらの視認性感度を示すグラフである。
【図14】実施例2の計算結果1を示すグラフである。
【図15】実施例2の計算結果2を示すグラフである。
【図16】図14に対応する模擬画像を示す図である。
【図17】図15に対応する模擬画像を示す図である。
【図18】実施例3のモアレ周期を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0018】
なお、本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
また、本発明の各種の構成要素は、その機能を実現するように形成されていればよく、たとえば、所定の機能を発揮する専用のハードウェア、所定の機能がコンピュータプログラムにより付与されたデータ処理装置、コンピュータプログラムによりデータ処理装置に実現された所定の機能、これらの任意の組み合わせ、等として実現することができる。
【0019】
また、本発明の画像表示装置は、プログラムを読み取って対応する処理動作を実行できるように、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/F(Interface)ユニット、等の汎用デバイスで構築されたハードウェア、所定の処理動作を実行するように構築された専用の論理回路、これらの組み合わせ、等として実施することができる。
なお、本発明において、プログラムに対応した各種処理動作をコンピュータ装置に実行させることは、各種デバイスをコンピュータ装置に動作制御させることも意味している。
【0020】
また、各記憶部がデータを記憶するとは、画像表示装置が、一つまたは複数の記憶手段を用いて各記憶部の機能を有していることを意味するものであり、各データを画像表示装置が現に保有していることを必ずしも要しない。
【0021】
また、本発明の画像表示方法は、複数の工程を順番に記載してあるが、その記載の順番は複数の工程を実行する順番を限定するものではない。
さらに、本発明の画像表示方法は、複数の工程が個々に相違するタイミングで実行されることに限定されない。このため、ある工程の実行中に他の工程が発生すること、ある工程の実行タイミングと他の工程の実行タイミングとの一部ないし全部が重複していること、等でもよい。
【0022】
<第一実施形態>
はじめに、本実施形態の画像表示装置100の概要を説明する。図1は本実施形態の画像表示装置100を示す機能ブロック図である。
【0023】
本実施形態の画像表示装置100は、周期的に配置される光学要素210を含む発光装置200の発光状態を示す画像(模擬画像10)を表示する。
画像表示装置100は、条件取得部20、モデル取得部30および表示部40を含む。
条件取得部20は、光学要素210の寸法設計値の少なくとも一つに関する複数通りの入力値を取得する。
モデル取得部30は、光学要素210の寸法設計値を入力値とした場合の発光装置200の発光状態にかかる視覚的な周期むらを示す画像(模擬画像10)を取得する。
表示部40は、取得された複数の画像(模擬画像10)を表示する。
【0024】
つぎに、本実施形態の画像表示装置100をより詳細に説明する。
【0025】
発光装置200は、発光体を含有する装置であり、照明装置や、液晶表示装置などのディスプレイ装置が例示される。
【0026】
光学要素210は、発光装置200に周期的に配置される要素である。照明装置の場合には、LED(Light Emitting Diode)などの発光体が挙げられる。ディスプレイ装置の場合、多種の光学要素210を挙げることができる。
【0027】
例えば、光学要素210として、バックライトなどの発光装置200の発光体、光学要素210を透過する透過光を拡散もしくは集光する光学フィルム、または透過光に位相差を付与する液晶セルや位相差フィルムなどの位相差制御部材を挙げることができる。
【0028】
発光装置200の発光状態にかかる視覚的な周期むらとしては、輝度むらと色むらが挙げられる。このうち、輝度むらとしては、発光体の一次元的または二次元的な配置間隔に起因する発光むら(継ぎむら)、周期構造のある層同士の干渉によるモアレ縞、位相差制御部材の厚みむらに起因する位相差ずれ、などが例示される。
以下、本実施形態では発光装置200の輝度むらについて説明する。
【0029】
図2(a)は発光装置200の一例を示す模式図である。本実施形態では種々の発光装置200の発光状態を表す模擬画像10を表示出力することができる。このうち、同図では冷陰極管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)を光学要素210とする、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)用直下方式のバックライトを示す。
【0030】
本実施形態に用いる光学要素210は、図2(a)の紙面前後方向に延在する直線状をなしている。同図では、筐体240に収容された8本の光学要素210が等間隔で互いに並行に配置されている。光学要素210の並び方向(同図の左右方向)を発光装置200の幅方向とする。
【0031】
発光装置200(バックライト)は、8本の光学要素210に対向して拡散板220を備えている。拡散板220は、光学要素210からそれぞれ放射された光を面内に均一化する部材である。
また、光学要素210を挟んで拡散板220の反対側には反射板230が設置されている。反射板230は、光学要素210から放射された光を拡散板220に向けて鏡面反射する部材である。
【0032】
ここで、発光装置200における発光特性に関するパラメータは多数存在する。単純のため光学要素210、拡散板220および反射板230自体の特性を不変とした場合、代表的なパラメータとして以下のものが挙げられる。
(i)隣接する光学要素210同士の中心間距離L1
(ii)両端の光学要素210の中心から筐体240までの端部距離L2
(iii)光学要素210と拡散板220との対向距離L3
(iv)光学要素210の本数N
(v)筐体240の幅寸法X
【0033】
なお、X=(N−1)×L1+2×L2 式(1)
と表されることから、X、N、L1、L2のうちいずれか3つを決定することで、他の1つは上式(1)により決定される。
【0034】
図2(b)は、N=8、L2=L1/2とした場合の、個々の光学要素210(CCFL)の点灯時の輝度分布と、発光装置200(バックライト:BKL)全体の点灯時の輝度分布とのそれぞれ理論値を示すグラフである。縦軸は輝度[cd/m]を表している。ただし、簡単のため、本実施形態では反射板230の影響は無視している。
【0035】
光学要素210の個々の輝度分布(以下、個別輝度分布という場合がある)は、光学要素210を中心とする単ピーク分布形状である。
発光装置200の輝度分布(以下、全体輝度分布という場合がある)は、各光学要素210の個別輝度分布を合成したものである。全体輝度分布には周期的な輝度むらが生じている。また、全体輝度分布の幅方向の両端には、輝度の低い暗色部DKがスロープ状に生じている。これは、端部距離L2が無視できない量であることに起因している。
【0036】
本実施形態の画像表示装置100は、図2(b)に示す発光装置200の発光状態にあたる全体輝度分布を模擬した模擬画像10を取得して画像表示する。
【0037】
図3は、図2(b)に対応する模擬画像10を示す図である。図3の左右方向は発光装置200の幅方向に対応している。
図3に示すように、本実施形態の模擬画像10には、8本の光学要素210に対応する明色部BRと、幅方向両端の暗色部DKとが存在し、左右方向に一次元的な濃淡むらが存在することが視認される。
【0038】
図4は、本実施形態の画像表示装置100による画像表示方法(以下、第一方法という場合がある)を示すフローチャートである。図1から図4を用いて第一方法を説明する。
【0039】
第一方法は、周期的に配置される光学要素210を含む発光装置200の発光状態を示す模擬画像10を表示する方法に関し、条件取得ステップS20、モデル取得ステップS30および表示ステップS40を含む。
条件取得ステップS20では、光学要素210の寸法設計値の少なくとも一つに関する複数通りの入力値を取得する。
モデル取得ステップS30では、光学要素210の寸法設計値を入力値とした場合の発光装置200の発光状態にかかる視覚的な周期むらを示す模擬画像10を取得する。
そして、表示ステップS40では、取得された複数の模擬画像10を表示する。
【0040】
より具体的には、本実施形態の画像表示装置100は、条件取得部20にて、光学要素210の寸法設計値の少なくとも一つに関する複数通りの入力値を取得する(図4:ステップS20)。
画像表示装置100は、複数個の入力値を受け付けた後に、それぞれに対応する模擬画像10を取得および表示してもよく、または一の入力値に対応する模擬画像10を取得および表示した後に次の入力値を受け付けてもよい。
【0041】
条件取得部20が取得する入力値は、寸法設計値そのものでもよく、または寸法設計値と直接的または間接的に関係を有する他のパラメータでもよい。
ここで、寸法設計値に関する入力値を条件取得部20が取得するとは種々の態様を含む。条件取得部20は、入力値として、ユーザが手入力した数値を取得してもよく、または数値範囲を取得してもよい。このほか、寸法設計値に関する複数の選択肢のうちユーザが選択したものを入力値として取得してもよく、または他の演算処理の出力データもしくは記憶媒体に格納されたデータを取り込んでもよい。
【0042】
なお、ここでいうユーザとは、本実施形態の画像表示装置100の使用者であり、また発光装置200の模擬画像10の視認性の評価を行う被験者である。
【0043】
入力値にかかる寸法設計値は、ユーザがパラメータスタディを希望する変数であり、また、発光装置200の発光状態の直接的または間接的な変動要因となる、光学要素210の位置および数量に関するパラメータである。
設計寸法値としては、光学要素210自体の寸法のほか、発光装置200と光学要素210との相対寸法、または光学要素210の数量などを挙げることができる。具体的には、上述の中心間距離(代表長)L1、端部距離L2、対向距離L3、本数(数量)N、幅寸法Xを例示することができる。
【0044】
条件取得部20は、寸法設計値に加えて、個別の光学要素210の輝度や光透過率(吸光率)、反射率などに例示される光学特性値に関するパラメータの入力をさらに受け付けてもよい。
【0045】
条件取得部20は、条件取得部20が取得した入力値を、必要に応じて寸法設計値に換算する。換算表または換算式は、条件記憶部22に記憶されている。
また、条件取得部20は、寸法設計値に関する選択肢をユーザに提示し、その選択をユーザから受け付けることで入力値を取得してもよい。
【0046】
モデル取得部30は、入力値に対応する寸法設計値を条件取得部20から取得する。そして、モデル取得部30は、光学要素210における所定の箇所の寸法を当該寸法設計値をとした場合の発光装置200の発光状態にかかる視覚的な周期むらを示す模擬画像10(図3を参照)を取得する(図4:ステップS30)。
【0047】
ここで、モデル取得部30が模擬画像10を取得するとは、取得された寸法設計値に対応する模擬画像10をモデル取得部30が生成する場合と、記憶部34に予め格納された多数の模擬画像10のうち取得された寸法設計値に対応する模擬画像10をモデル取得部30が抽出する場合と、を含む。
以下、本実施形態では、モデル取得部30が模擬画像10を生成する場合を説明する。
【0048】
図1に示すように、モデル取得部30は演算部32と記憶部34とからなる。
モデル取得部30の記憶部34は、光学要素210の寸法設計値と発光装置200の輝度とを対応づけて記憶している。
【0049】
また、記憶部34は、発光装置200の少なくとも一態様にあたるノミナルケースについては、その全体輝度分布を表す模擬画像10をモデル取得部30が生成するために必要な寸法設計値や光学特性値などのパラメータを、予め記憶している。
これにより、ユーザは、パラメータスタディを希望する特定の寸法設計値に関する入力値を条件取得部20に入力するだけで、模擬画像10を得ることができる。
【0050】
具体的には、記憶部34は、図2(a)に示す発光装置200に関し、中心間距離L1、端部距離L2、対向距離L3、本数Nおよび幅寸法X、ならびに光学要素210の個別輝度分布の波形情報などを記憶している。
【0051】
そして、演算部32は、ノミナルケースにおける寸法設計値を、ユーザから受け付けた寸法設計値に変更して、発光装置200の全体輝度分布に対応する二次元的な濃淡画像を作成する。
具体的には、演算部32は、条件取得部20から取得した寸法設計値により変更されたパラメータに従って光学要素210の位置や本数を変更するなどして、図2(b)における個別輝度分布を横軸方向または縦軸方向に再配置する。具体的には、中心間距離L1や端部距離L2を変更する場合、個別輝度分布の中心位置を同図の横軸方向に移動させる。また、光学要素210と拡散板220との対向距離L3を変更する場合は、個別輝度分布の波形を拡大もしくは縮小、または縦軸方向に移動させる。
【0052】
つぎに、演算部32は、再配置された個別輝度分布を互いに合成して全体輝度分布を生成する。
さらに、演算部32は、生成された全体輝度分布に所定の係数を乗じて輝度(画素値)に換算し、これを二次元的な濃淡画像に変換することで模擬画像10(図3を参照)を得る。
【0053】
演算部32は、パラメータスタディにかかる複数の寸法設計値ごとに、それぞれ模擬画像10を生成する。生成された模擬画像10は、表示制御部42を通じて表示部40で表示出力される(図4:ステップS40)。
これにより、模擬画像10を目視したユーザは、寸法設計値を如何なる値としたときに、発光装置200の輝度むらが所定のレベル以下に低減されるかを知得することができる。
【0054】
表示部40は、模擬画像10を表示するディスプレイ装置である。表示制御部42は、生成された複数の模擬画像10を、複数枚並べて同時に、または一枚ずつ順次に表示部40で表示させる。条件取得部20、モデル取得部30および表示制御部42はバス90に接続されている。
【0055】
本実施形態の表示部40は、模擬画像10を一枚ずつ順次に表示する。そしてさらに、表示部40は、周期むらを示す複数の画像(模擬画像10)と、周期むらのないクリア画像とを交互に表示する。
【0056】
ここでいうクリア画像とは、目視可能な周期的なむらを含まない画像をいい、画面全体が例えば黒色などの単一色の画像のみに限られない。すなわち、クリア画像は、発光装置200の筐体240(図2(a)を参照)を含む画像でもよい。
【0057】
本実施形態のように、クリア画像と模擬画像10とを交互に表示することにより、一の模擬画像10を目視したユーザの視覚をいったんリフレッシュしてから次の模擬画像10を表示することができる。このため、ユーザは、前の模擬画像10の印象や残像に惑わされることなく、当該模擬画像10の視認性を評価することができる。
【0058】
また、本実施形態のコンピュータプログラムは、周期的に配置される光学要素210を含む発光装置200の発光状態を示す模擬画像10を表示する画像表示処理をコンピュータ装置(画像表示装置100)に実行させるためのコンピュータプログラムである。
かかるコンピュータ装置が実行する画像表示処理は、光学要素210の寸法設計値の少なくとも一つに関する複数通りの入力値を取得する条件取得処理と、光学要素210の寸法設計値を入力値とした場合の発光装置200の発光状態にかかる視覚的な周期むらを示す模擬画像10を生成するモデル取得処理と、生成された複数の模擬画像10を表示する表示処理と、を含む。
【0059】
ここで、個々の発光体の放射輝度のように発光装置200の全体輝度分布に対して直接的な相関をもつパラメータとは異なり、光学要素210の寸法設計値が発光装置200の発光状態に与える影響度合いを人間が感覚的に把握することは困難である。後記の実施例で詳述するように、発光装置200の輝度むらは光学要素210(冷陰極管)の本数Nを1増減しただけで顕著に変動するなど、予測が困難なためである。
【0060】
これに対し、本実施形態の画像表示装置100によれば、ユーザが特定した寸法設計値についてのパラメータスタディを、発光装置200の発光状態を模擬した模擬画像10によって行うことができる。このため、当該パラメータを種々に変更した実機を試作することなく、安価かつ迅速に輝度むらの程度を正確に目視評価することができる。
【0061】
なお本実施形態については種々の変形を許容する。
たとえば、上記実施形態では、ユーザから取得した寸法設計値に基づいて光学要素210の個別輝度分布を再配置して、モデル取得部30は発光装置200の全体輝度分布を得ているが、本発明はこれに限られない。
【0062】
そもそも、発光装置200の全体輝度分布における輝度むらの周期は、その発生要因ごとに算出方法が異なる。例えば、上記実施形態のように発光体の境界領域における継ぎむらの場合は、光学要素210の中心間距離や格子長が周期むらとなる。これに対し、周期構造のある層同士の干渉によるモアレ縞の場合、各薄膜の周期の逆数によりモアレ周波数は決定される。また、位相差制御部材の厚みむらに起因する位相差ずれの場合、厚みむらの周期が、発光装置200の輝度むらの周期と略一致する。
【0063】
したがって、画像表示装置100は、発光装置200および光学要素210の種別、ならびに発光装置200の輝度むらの種別の選択を、条件取得部20でユーザより予め受け付けてもよい。
【0064】
また、記憶部34には、輝度むらの種別に応じて、光学要素210の寸法設計値および光学特性値と、発光装置200の全体輝度分布と、を対応付ける関係情報が格納されている。関係情報は、関数でもよく、テーブル形式でもよく、または専用回路でもよい。そして、ユーザより受け付けた輝度むらの種別に対応して、演算部32は、条件取得部20または記憶部34より取得した寸法設計値および光学特性値を用いて発光装置200の全体輝度分布を算出し、これを模擬画像10に変換してもよい。
【0065】
そして、上述のように、本実施形態の画像表示装置100では、寸法設計値を多様に変化させた場合の発光装置200の発光状態をそれぞれ示す多数の模擬画像10を予め算出し、これを記憶部34に格納しておいてもよい。そして、モデル取得部30の演算部32は、条件取得部20で取得した入力値を検索キーとして記憶部34を検索し、該当する模擬画像10を取得してもよい。
【0066】
<第二実施形態>
図5は、本実施形態の画像表示装置110の機能ブロック図である。
【0067】
本実施形態の画像表示装置110は、回答入力部50、回答記憶部60および判定部70を含む点で第一実施形態の画像表示装置100(図1を参照)と少なくとも相違する。
回答入力部50は、表示部40で表示された画像(模擬画像10)の周期むらの視認性を表す視認性データVDの入力を受け付ける。
回答記憶部60は、受け付けた視認性データVDを記憶する。
判定部70は、回答記憶部60を参照して、むらの視認性の程度を判定する。
回答入力部50、回答記憶部60および判定部70はバス90に接続されている。
【0068】
図6は、本実施形態の画像表示装置110による画像処理方法(以下、本方法という場合がある)を示すフローチャートである。図5および図6を用いて本方法を説明する。
【0069】
本実施形態の画像表示装置110は、第一モードと第二モードの二つのモードを備えており、まずユーザにモード選択を求める(図6:ステップS10)。
第一モード(図6:ステップS12)は、ユーザが指定した寸法設計値に従って発光装置200の発光状態を示す輝度むらの模擬画像10を取得して表示する方法であり、上述の第一方法(図4:ステップS20〜S40)に対応する。本実施形態では説明を省略する。
第二モード(図6:ステップS50)は、表示された模擬画像10の視認性データVDに基づいて、輝度むらが所定の視認性であると判定された模擬画像10にかかる寸法設計値をユーザに出力する方法である。第二モードについて説明する。
【0070】
条件取得ステップS51、モデル取得ステップS52および表示ステップS53は、それぞれ図4のステップS20〜S40に相当する。
具体的には、ユーザが特定した寸法設計値を示す入力値を条件取得部20は取得する(図6:ステップS51)。モデル取得部30は、寸法設計値に対応する発光装置200の発光状態を示す模擬画像10を生成または参照することにより取得する(図6:ステップS52)。表示制御部42は、取得された複数の模擬画像10をモデル取得部30から受信し、所定のタイミングで切り替えて表示部40で表示出力させる(図6:ステップS53)。
【0071】
ユーザは、表示部40で表示された模擬画像10を目視し、その周期むら(輝度むら)の視認性に関する官能的な評価値を視認性データVDとして回答入力部50に入力する(図6:ステップS54)。
【0072】
視認性データVDは、表示部40に表示された模擬画像10における輝度むらの視認性の程度をユーザが多段階で評価した評価結果である。回答入力部50は、視認の可否を二択より選択的に受け付けてもよく、または輝度むらの目立ち度合いを三段階以上で選択的に受け付けてもよい。また、回答入力部50は、輝度むらの目立ち度合いを示すスコア値をユーザより受け付けてもよい。スコア値は、例えば10点満点などとしてもよい。
【0073】
本実施形態の視認性データVDは、輝度むらの目立ち度合いが低い場合に、高いスコアを与えるよう設定されている。すなわち、模擬画像10の輝度むらの評価を二段階とする場合、輝度むらが目視可能とユーザが感じた場合に視認性データVD=0、目視不可能と感じた場合に視認性データVD=1を与えるものとする。
【0074】
回答記憶部60は、視認性データVDと、当該模擬画像10またはこれにかかる寸法設計値と、を対応付けて記憶する(図6:ステップS55)。
【0075】
つぎに、寸法設計値(パラメータ)の変更がさらにある場合(図6:ステップS56:YES)、ステップS52に戻って新たな模擬画像10を生成する。
ここで、パラメータの変更がさらにある場合とは、種々のケースを含む。一例として、ステップS51にて予め複数個の寸法設計値が入力されていた場合のほか、模擬画像10を目視して視認性データVDを回答入力(図6:ステップS55)したユーザが、当該寸法設計値または他の寸法設計値のさらなる変更を入力した場合が挙げられる。
【0076】
パラメータの変更が終了した場合(図6:ステップS56:NO)、判定部70は回答記憶部60に記憶された視認性データVDに基づいて、模擬画像10の視認性の判定処理を行う(図6:ステップS57)。かかる判定は、発光装置200におけるパラメータスタディの結果を示すものである。
【0077】
なお、判定部70による判定に先立ち、模擬画像10の目視判定および回答入力(図6:ステップS55)は多数のユーザに対して行っておくことが好ましい。これにより、模擬画像10の視認性に関する客観的な評価を得ることができる。
【0078】
判定部70による判定処理は種々の方法があるが、一例として、視認性データVDを寸法設計値ごとに平均して、所定の基準値と大小判定する方法を挙げる。より具体的な例として、複数人のユーザから回答された視認性データVDの平均スコア(最大1、最小0)が0.8以上である場合、すなわち当該輝度むらを5人中4人以上が目視できないと回答した場合、当該寸法設計値を視認不可と判定する。そして、視認性データVDの平均スコアが0.8未満である場合、すなわち当該輝度むらを、5人中1人を超えて目視できると回答した場合、当該寸法設計値を視認可能と判定する。
【0079】
かかる判定を、パラメータスタディにかかる寸法設計値の数だけ行ったのち、結果を出力部72で出力する(図6:ステップS58)。
出力部72による出力の態様は特に限定されない。例えば、模擬画像10の輝度むらの視認性に関する判定結果(二段階または三段階以上)と、当該模擬画像10にかかる寸法設計値と、を併せて出力する。これにより、ユーザは、発光装置200の輝度むらが所定以下に抑えられる寸法設計値を知得することができる。かかる寸法設計値を採用することで、発光装置200を作成した場合の光学的な品質が所望に実現されることとなり、発光装置200の設計や品質管理などの工程において有用な情報が提供される。
【0080】
また、本実施形態の出力部72は、むらの視認性の程度が所定以上または所定以下であると判定された模擬画像10にかかる寸法設計値を示す閾値情報を出力する。
【0081】
ここで、閾値情報とは、複数段階に数値を変化させた寸法設計値のうち連続する2個において、対応する模擬画像10の周期むらの視認性が視認可能または視認不可に反転した場合の、当該2個の寸法設計値のいずれかをいう。
【0082】
かかる閾値情報を出力部72が出力することにより、ユーザは、輝度むらの視認性の要求をちょうど満足する臨界の寸法設計値を知ることが可能であり、発光装置200の設計上で有用な情報を得ることができる。
【0083】
なお本実施形態に関しても種々の変形を許容する。
【0084】
例えば、設計寸法値に関する入力値として、光学要素210の製造条件を用いてもよい。
すなわち、本変形例の条件記憶部22は、光学要素210の製造条件と、製造された光学要素210に生じる寸法設計値と、を対応づけて記憶してもよい。
そして、条件取得部20は、製造条件に関する入力を受け付け、条件記憶部22を参照して、受け付けた製造条件に対応する寸法設計値を呼び出して入力値を取得してもよい。
【0085】
ここで、光学要素210の製造条件としては、光学要素210の材料特性および成形条件を例示することができる。光学要素210を製造するための各種材料の種類、濃度もしくは組成比などの材料特性、または成形温度や成形速度などの成形条件に関する多様なパラメータと、成形される光学要素210の寸法設計値との対応関係を予め取得して条件記憶部22に格納しておく。
【0086】
そして、条件取得ステップS51において、かかる製造条件に関するパラメータを条件取得部20に入力する。条件取得部20は、条件記憶部22を参照して、受け付けたパラメータに基づいて寸法設計値を取得してモデル取得部30に送信する。モデル取得部30は、上述の方法にしたがってモデル取得ステップS52を行えばよい。
【0087】
すなわち、本変形例の画像表示方法は、光学要素210の製造条件と製造された光学要素210に生じる寸法設計値とを対応づけて記憶しておくステップと、製造条件に関する入力を受け付けるステップと、条件記憶部22を参照し受け付けた製造条件に対応する寸法設計値を呼び出して入力値を取得するステップと、を含む。
【0088】
他の変形例として、視認性データVDは、複数の観点で模擬画像10の輝度むらを個別に評価したデータでもよい。例えば、ユーザは発光装置200の全体的な輝度むらと、局所的な輝度むらとを、それぞれ個別に判定し、かかる判定結果を回答入力部50は視認性データVDとして受け付けてもよい。すなわち、図3に示すように、模擬画像10には暗色部DKのように画像周縁に局所的に存在するむらの領域と、明色部BRのように画像中央で全体的に濃淡変化するむらの領域とが含まれる場合がある。かかる場合、局所的なむらの視認性と、全体的なむらの視認性と、を視認性データVDにて個別に受け付けることで、発光装置200の発光状態を判定部70で多面的に評価することが可能となる。
【0089】
なお、本方法では、モデル取得部30による模擬画像10の生成と、表示部40による模擬画像10の表示と、回答入力部50による視認性データVDの取得とを逐次的に行ってからモデルを再生成する場合を例に説明したが、本発明はこれに限られない。複数通りの寸法設計値に対応する模擬画像10を予め作成した後、表示部40にて個別に表示して、ユーザの目視結果を回答入力部50で受け付けてもよい。
【0090】
<実施例>
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0091】
(実施例1)
発光装置200として図2(a)に示した構造のバックライト、光学要素210としてCCFLを設定した場合の実施例を以下に示す。この種の発光装置200では、光学要素210(CCFL)の並び方向(図の左右方向)に、拡散板220上に輝度むらが発生することが知られている。そこで、光学要素210の中心間距離L1、端部距離L2および本数Nを変えて、拡散板220における輝度をできるだけ均一化することを試みた。
【0092】
そこで、図2(a)の左右方向をX方向とし、実際のバックライトの輝度分布を模してシミュレーションを行った。ここでは、発光面積を300×400mmとし、X方向を300mmとして計算し、簡単のため反射板230の影響を無視した。
【0093】
図2(b)は、第一実施形態にて説明した結果(計算結果1)であり、本数N=8(等間隔)、端部距離L2=中心間距離L1/2とした場合の結果である。
この結果では、発光装置200(バックライト)の中央部には光学要素210の間隔(L1)で輝度むらがわずかに生じ、端部では輝度が低下していることが分かる。
【0094】
図7は、本数N=8(等間隔)、端部距離L2=0とした場合の結果(計算結果2)を示すグラフである。
この結果では、端部の輝度低下は抑えられるものの、中央部の光学要素210の周期(L1)の輝度むらが図2(b)よりも悪化したことが分かる。
【0095】
図8は、本数N=9(等間隔)、端部距離L2=0とした場合の結果(計算結果3)を示すグラフである。
この結果では、図7に比較して中央部の光学要素210の周期(L1)の輝度むらが抑えられたことが分かる。
【0096】
図9は、本数N=10(等間隔)、端部距離L2=0とした場合の結果(計算結果4)を示すグラフである。
この結果では、中央部の光学要素210の周期(L1)の輝度むらがほぼ無くなったことが分かる。
【0097】
図2(b)および図7〜図9の計算結果に基づき、これと同じ輝度変動率になるように、高精度表示装置(10ビットディスプレイ)に濃淡画像を表示し、1mの視距離から、被験者5人に視認してもらい、輝度むらが視認できるかを確認した。
ディスプレイに表示した輝度むらのモデル画像(模擬画像10)を、図3および図10〜図12に示す。
【0098】
ここで、一般的に、人の輝度むらの視認性感度は、画像の平均輝度が10[cd/m]〜1000[cd/m]の場合においては、ほとんど変化しないことが知られている(図13および非特許文献1を参照)。
【0099】
図13は、縦軸を、視認性感度を表わすコントラスト閾値、横軸を、画像の平均輝度とした、視認性感度のグラフである。同図に示すように、平均輝度が10[cd/m]以下では、平均輝度の低下に伴いコントラスト閾値が上昇して視認感度は悪くなるが、これよりも高輝度では、感度の変化がほぼ見られない。
【0100】
そこで、図3および図10〜図12では、発光装置200(バックライト)の輝度を平均輝度=100[cd/m]に換算し、輝度変動率が互いにほぼ同じ画像を表示している。
【0101】
被験者5人による視認性判定結果は以下の通りであった。
(1)図3の表示結果
(1−1)5人とも、端部の暗色部DKの輝度むらが視認できた。
(1−2)中央部の明色部BRの輝度むらについては、5人中4人が視認できた。
(2)図10の表示結果
(2−1)5人とも、端部の暗色部DKの輝度むらが視認できなかった。
(2−2)5人とも、中央部の明色部BRの輝度むらについて視認できた。
(3)図11の表示結果
(3−1)5人とも、端部の暗色部DKの輝度むらが視認できなかった。
(3−2)中央部の明色部BRの輝度むらについては、5人中3人が視認できた。
(4)図12の表示結果
(4−1)5人とも、端部の暗色部DKの輝度むらが視認できなかった。
(4−2)5人とも、中央部の明色部BRの輝度むらについて視認できなかった。
【0102】
本実施例の表示結果とその視認性判定結果から、今回の計算に用いたCCFLと同じ輝度分布を持つバックライトでは、輝度均一性の観点から、CCFLを9本以上、好ましくは10本配置する必要があることが示唆された。また、端部距離L2をゼロに近づけることで、バックライトの両端における暗色部を無くすことができることが分かった。
【0103】
(実施例2)
発光装置200として液晶テレビ用のバックライト、光学要素210としてタンデム型の導光体を設定した場合の実施例を以下に示す。タンデム型の導光体とは、面直方向に鍵型に屈曲した瓦状の導光体を互いに重ねたものである。そして、輝度むらの主原因となる導光部やLEDを屈曲部に配置し、これを隣接する他の導光体の平面発光部に隠すことで、平面発光部のみを二次元格子状に平面配置することができる。しかしながら、このタンデム型に関しても、導光板の継ぎむらという大きな課題がある。
以下、平面発光部から導光部やLEDに向かう方向をY方向、平面発光部同士の並び方向をX方向とする。
【0104】
図14は、導光体の個数を1200個、導光体のサイズを25mm四方とした場合の、X方向の輝度変動を計算した結果(計算結果1)を示すグラフである。継ぎ目による輝度減少は25mmピッチとし、継ぎ目の輝度変動は2%と設定した。
【0105】
図15は、導光体の個数を2400個、導光体のサイズを17.5mm四方とした場合の、X方向の輝度変動を計算した結果(計算結果2)を示すグラフである。継ぎ目による輝度減少は17.5mmピッチであり、継ぎ目の輝度変動は2%と設定した。
この結果を図14と比較すると、導光体の個数が増加したことで平均輝度の向上が見られた。
【0106】
図14、15の計算結果に基づき、これと同じ輝度差になるように、高精度表示装置(10ビットディスプレイ)に濃淡画像を表示した。1.5mの視距離から、これを被験者5人に視認してもらい、輝度むらが視認できるかを確認した。
ディスプレイに表示した輝度むらのモデル画像(模擬画像10)を、図16および図17に示す。
【0107】
上述のように、表示画像の平均輝度が10[cd/m]〜1000[cd/m]のとき、人の視認感度はほぼ同じである。このため、本実施例では、図14、15の輝度レベルに対して1/30の平均輝度となる画像(模擬画像10)を生成および表示して、その視認性を確認した。
具体的には、図16の平均輝度を70[cd/m]、図17の平均輝度を130[cd/m]とした。
【0108】
被験者5人による視認性判定結果は以下の通りであった。
(1)図16の表示結果
5人とも、継ぎ目の輝度むらが視認できなかった。
(2)図17の表示結果
5人とも、継ぎ目の輝度むらが視認できた。
【0109】
本実施例の表示結果とその視認性判定結果から、今回の計算に用いた輝度を持つバックライトの場合、サイズ25mm四方の導光体を1200個用いた場合の方が、サイズ17.5mm四方の導光体を2400個用いた場合よりも、継ぎ目むらが見えにくいことが確認できた。
【0110】
(実施例3)
発光装置200として液晶表示装置、光学要素210として周期構造をもったフィルムを設定した場合の実施例を以下に示す。周期構造をもったフィルムとして、プリズムフィルムを一例として挙げる。
ここで、プリズムフィルムなどの周期構造をもったフィルムと、LCDパネルのピクセル構造との相互作用でモアレ縞が生じることがある。多くの場合、素子の構造は裸眼で見るには小さ過ぎるが、素子と素子との干渉パターンは、モアレ縞として簡単に見ることができる。なお、プリズムフィルムに限らず、周期性のある構造をもっていれば、どのようなフィルムでもモアレ縞は発生する。
【0111】
なお、ディスプレイ内にクロスされた2つのプリズムフィルムがある場合、互いに直交する2つのモアレパターンが生じる可能性がある。RGBのサブピクセルの並び方向を周期方向とするプリズムフィルムは、LCDパネルの縦ピッチ方向との相互作用からグレーの縞を発生させる。一方、これと直交する縦軸と平行のプリズムフィルムは、LCDパネルの横ピッチ方向との相互作用から、色のついた縞を発生させる。
【0112】
ここで、互いに積層されたプリズムフィルムとピクセルとの相互作用によるモアレ周波数Fおよびモアレ周期Pは、次式のように表わすことができる。ただし、PはLCDパネルのピクセルピッチ、Pはプリズムフィルムのピッチ、mは自然数である。
【0113】
=m/P−1/P 式(2)
=|1/F| 式(3)
【0114】
図18に、ピクセルピッチP=150μm、プリズムピッチP=20〜60μmとしたときのモアレ周期を示す。
【0115】
式(2)、(3)から、P=m・Pの場合は、モアレ周期が無限大に近づくことがわかる。つまり、ピクセルピッチがプリズムピッチの倍数に近くなるとき、モアレ周期が顕著に大きくなり、モアレが目立つ状態になる。
【0116】
本実施例では、モアレコントラストを測定や計算により予め求めておき、そのコントラストにおいて、式(3)で求めたモアレ周期のむらを有する模擬画像10を生成し、これを高精度表示装置(10ビットディスプレイ)に表示する。これにより、モアレによって発生するむらの視認性を、実際にパターンを重ねることなく判断することができるため、想定されるモアレ縞の視認性を確認することができる。
【0117】
本実施例では、LCDパネルのピクセルピッチPを150μmとし、プリズムフィルムのプリズムピッチPを、(a)25.5μm、(b)26.5μm、(c)27.5μm、(d)28.5μm、(e)29.5μmとした。また、モアレにより発生する輝度差は、測定値に基づいて、ΔT=5%とした。
このとき、モアレ周期Pの計算値は、それぞれ(a)1.28mm、(b)0.42mm、(c)0.33mm、(d)0.57mm、(e)1.77mmとなった。
【0118】
これに対応するむらを、正弦波形の輝度むらとして高精度表示装置(10ビットディスプレイ)に表示し、0.5mの視距離から、被験者5人により視認可否を確認した。
【0119】
被験者5人による視認性判定結果は以下の通りであった。
(a)5人全員、輝度むらが見えた
(b)5人全員、輝度むらが見えなかった
(c)5人全員、輝度むらが見えなかった
(d)5人中2人、輝度むらが見えた
(e)5人全員、輝度むらが見えた
【0120】
このことから、本実施例の場合においては、モアレ縞が視認できないプリズムフィルムのプリズムパターンは、モアレ周期Pの値が0.4mm程度以下になるような、(b)または(c)のプリズムピッチPにすることが好ましいと判断することができる。
【0121】
以上の実施例より、本発明によるむらの視認性判定技術の有用性と実現可能性が理解される。
【符号の説明】
【0122】
10 模擬画像
20 条件取得部
22 条件記憶部
30 モデル取得部
32 演算部
34 記憶部
40 表示部
42 表示制御部
50 回答入力部
60 回答記憶部
70 判定部
72 出力部
90 バス
100 画像表示装置
110 画像表示装置
200 発光装置
210 光学要素
220 拡散板
230 反射板
240 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的に配置される光学要素を含む発光装置の発光状態を示す画像を表示する画像表示装置であって、
前記光学要素の寸法設計値の少なくとも一つに関する複数通りの入力値を取得する条件取得部と、
前記光学要素の前記寸法設計値を前記入力値とした場合の前記発光装置の発光状態にかかる視覚的な周期むらを示す画像を取得するモデル取得部と、
生成された複数の前記画像を表示する表示部と、
を含む画像表示装置。
【請求項2】
表示された前記画像の前記周期むらの視認性を表す視認性データの入力を受け付ける回答入力部と、
受け付けた前記視認性データを記憶する回答記憶部と、
前記回答記憶部を参照して、前記むらの視認性の程度を判定する判定部と、
をさらに含む請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記視認性の程度が所定以上または所定以下であると判定された前記画像にかかる前記寸法設計値を示す閾値情報を出力する出力部をさらに備える請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記モデル取得部が、前記光学要素の前記寸法設計値と前記発光装置の輝度とを対応づけて記憶している請求項1から3のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記表示部が、前記周期むらを示す複数の前記画像と、周期むらのないクリア画像とを交互に表示する請求項1から4のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記光学要素が、前記発光装置の光源、前記光学要素を透過する透過光を拡散もしくは集光する光学フィルム、または前記透過光に位相差を付与する位相差制御部材である請求項1から5のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記光学要素の製造条件と、製造された前記光学要素に生じる前記寸法設計値と、を対応づけて記憶しておく条件記憶部をさらに備え、
前記条件取得部は、前記製造条件に関する入力を受け付け、前記条件記憶部を参照し、受け付けた前記製造条件に対応する前記寸法設計値を呼び出して前記入力値を取得する請求項1から6のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項8】
周期的に配置される光学要素を含む発光装置の発光状態を示す画像を表示する画像表示装置のためのコンピュータプログラムであって、
前記光学要素の寸法設計値の少なくとも一つに関する複数通りの入力値を取得する条件取得処理と、
前記光学要素の前記寸法設計値を前記入力値とした場合の前記発光装置の発光状態にかかる視覚的な周期むらを示す画像を生成するモデル取得処理と、
生成された複数の前記画像を表示する表示処理と、
を前記画像表示装置に実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項9】
周期的に配置される光学要素を含む発光装置の発光状態を示す画像を表示する画像表示方法であって、
前記光学要素の寸法設計値の少なくとも一つに関する複数通りの入力値を取得する条件取得ステップと、
前記光学要素の前記寸法設計値を前記入力値とした場合の前記発光装置の発光状態にかかる視覚的な周期むらを示す画像を生成するモデル取得ステップと、
生成された複数の前記画像を表示する表示ステップと、
を含む画像表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図18】
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【図3】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−198565(P2011−198565A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62781(P2010−62781)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】