説明

画像表示装置およびその製造方法

【課題】輝度の経時変化に起因する輝度むらを低減し、長期にわたり高品質な画像を表示し得る画像表示装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】複数の表示素子と、前記複数の表示素子のあいだの輝度むらを低減するために画像データを補正する補正回路と、を備え、前記補正回路は、駆動時間に対する輝度の変化特性を表す第1の特性データを、前記複数の表示素子のそれぞれについて、記憶する第1の記憶部と、前記表示素子の駆動時間に相関のある値を表しており、前記表示素子が駆動されると更新される、駆動時間データを記憶する第2の記憶部と、前記第1の特性データと前記駆動時間データとに基づいて、前記複数の表示素子のそれぞれに対応する補正値を算出する算出部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の表示素子を備える画像表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の表示素子によって画像を形成する画像表示装置では、表示素子の輝度のばらつきが画像品質の低下につながる。
【0003】
特許文献1では、ELディスプレイにおいて、予め測定したRGBごとの輝度劣化特性と、各表示素子の累計点灯時間とから、輝度の劣化量を求め、RGBの輝度バランスを補正する手法が開示されている。
【特許文献1】特開2004−325565号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、表示素子の輝度の経時変化特性は、色毎に異なるだけでなく、素子毎にも異なり得る。それゆえ、画像表示装置を構成する複数の表示素子のあいだで経時変化特性にばらつきがある場合には、特許文献1の補正を適用したとしても、表示素子間の輝度むらを十分に補正することはできない。
【0005】
本発明は、上記のような問題を解決するもので、輝度の経時変化に起因する輝度むらを低減し、長期にわたり高品質な画像を表示し得る画像表示装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、
複数の表示素子と、
前記複数の表示素子のあいだの輝度むらを低減するために画像データを補正する補正回路と、を備え、
前記補正回路は、
駆動時間に対する輝度の変化特性を表す第1の特性データを、前記複数の表示素子のそれぞれについて、記憶する第1の記憶部と、
前記表示素子の駆動時間に相関のある値を表しており、前記表示素子が駆動されると更新される、駆動時間データを記憶する第2の記憶部と、
前記第1の特性データと前記駆動時間データとに基づいて、前記複数の表示素子のそれぞれに対応する補正値を算出する算出部と、を備えること
を特徴とする画像表示装置である。
【0007】
本発明の第2態様は、
複数の表示素子を有する画像表示装置の製造方法であって、
前記複数の表示素子のそれぞれについて、所定の測定期間のあいだ表示素子を駆動し該表示素子の輝度または輝度と相関のある物理量を測定する工程と、
前記測定によって得られた測定値に基づいて、駆動時間に対する輝度の変化特性を表す第1の特性データを、前記複数の表示素子のそれぞれについて、算出する工程と、
前記算出された前記第1の特性データを、前記画像表示装置の記憶部に格納する工程と、
を含むことを特徴とする画像表示装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、輝度の経時変化に起因する輝度むらを低減し、長期にわたり高品質な画像を表示し得る画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0010】
本発明は、自発光型の画像表示装置に好ましく適用される。この種の画像表示装置としては、電子放出素子(冷陰極型電子放出素子)を用いた画像表示装置、ELディスプレイ、LEDディスプレイ、PDPなどがある。これらの中でも、電子放出素子を用いた画像表示装置は、放出電流−電圧特性の経時変化が電子放出素子により異なるという点から、本発明が適用される好ましい形態である。
【0011】
なお、電子放出素子を用いた画像表示装置では、電子放出素子と、それに対向する蛍光体(発光体)とで、表示素子が構成される。電子放出素子としては、電界放出型素子(FE型素子)、表面伝導型放出素子(SCE型素子)、金属/絶縁層/金属型素子(MIM型素子)などを用いることができる。
【0012】
<第1の実施形態>
図1のブロック図を用いて、第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像表示装置を示すブロック図である。
【0013】
(基本的な構成)
図1に示すように、画像表示装置は、複数の表示素子4と、複数の表示素子4のあいだの輝度むらを低減するために画像データを補正する補正回路5と、を備えている。補正回路5は、第1の記憶部1、第2の記憶部2、補正値算出部3を備える。第1の記憶部1および第2の記憶部2は不揮発性の半導体メモリを好適に採用できるが、磁気記憶媒体で構成することもできる。
【0014】
(第1の記憶部)
第1の記憶部1は、駆動時間に対する輝度の変化特性(以下、単に「輝度変化特性」ともいう。)を表す輝度変化特性データ(第1の特性データ)を記憶している。輝度変化特性は表示素子毎に固有の値をとり得るため、第1の記憶部1には、複数の表示素子4のそれぞれについて個別に輝度変化特性データが格納されている。輝度変化特性データは、画像表示装置の製造工程において第1の記憶部1に格納される。
【0015】
ここで、「駆動時間に対する輝度の変化」には、表示素子の駆動時間が長くなるほど輝度が小さくなる(劣化する)場合と、駆動時間が長くなるほど輝度が大きくなる(改善する)場合とが含まれる。以下、「駆動時間に対する輝度の変化」を、単に「輝度の経時変化」ともいう。
【0016】
輝度変化特性データは、表示素子の輝度そのものの値の変化を表すものである必要はなく、「輝度と相関のある物理量」の値の変化を表すものであってもよい。冷陰極型の電子放出素子の場合、輝度と相関のある物理量としては、電子放出素子のカソード電極とゲート電極のあいだに流れる電流(駆動電流)、電子放出素子からアノード電極に流れ込む電流(エミッション電流)、電子放出効率などがある。
【0017】
輝度変化特性データは、各表示素子の輝度もしくは輝度と相関のある物理量の測定値から算出されるか、または、各表示素子の輝度もしくは輝度と相関のある物理量のデータベースから算出される。厳密には輝度変化特性が表示素子毎に異なっているので、補正精度
を向上させるために、実際の測定値を用いるほうが好ましい。すなわち、画像表示装置の個々の表示素子を実際に駆動し、輝度もしくは輝度と相関のある物理量を測定し、得られた測定値に基づいて個々の表示素子の輝度変化特性データを算出するのである。輝度計を用いて輝度を直接測定してもよいし、電気計測系を用いて駆動電流やエミッション電流などを測定してもよい。輝度もしくは輝度と相関のある物理量を測定するための測定装置は、画像表示装置に組み込むことも可能である。もし画像表示装置が測定装置を備えている場合は、輝度変化特性データを適宜更新することが可能となる。
【0018】
輝度変化特性データの形式は、輝度変化特性の近似曲線を表す係数(パラメータ)でもよいし、ルックアップテーブルでもよい。ただし、記憶領域の削減の観点からは、前者の係数形式で輝度変化特性データが保持されていることが好ましい。輝度変化特性の近似曲線は、1つまたは複数の係数からなる時間の関数で表すことができる。たとえば、式1のような対数近似式で表される。
Li=ai×Log(Ti)+bi (式1)
【0019】
式1において、Liが予測輝度であり、Tiが累積駆動時間である。係数aiとbiが輝度変化特性データであって、これらは時間に依存しないパラメータである。なお、iは、表示素子の番号である。
【0020】
駆動の初期段階では、放出ガス等の影響により、表示素子の特性が大きく変動することがある。そのため、エージングと呼ばれる予備駆動時間を初期に設けることがある。このようなエージング期間がある場合には、式2のように、エージング期間に対応するオフセット時間T0を導入してもよい。
Li=ai×Log(Ti−T0)+bi (式2)
【0021】
素子の種類、素子の製造方法、駆動条件などにより、輝度変化特性を表す式は異なる。たとえば、式3のような線形式で表される特性もある。1つまたは複数の係数を有する時間の関数で表されれば、どのような数式を採用してもよい。
Li=ai+bi×Ti (式3)
【0022】
(第2の記憶部)
第2の記憶部2は、表示素子の駆動時間に相関のある値を表す駆動時間データを格納している。駆動時間データの値は初期的にはゼロであり、表示素子が駆動されると更新されていく。
【0023】
ここで、「駆動時間に相関のある値」(以下、単に「駆動時間相関値」ともいう。)は、表示素子の駆動時間の累計、または、表示素子の駆動時間をその階調値に応じて調整した値の累計である。後者の値は、表示素子の駆動時間をその階調値に応じて重み付けした値の累計、と言い換えることもできる。
【0024】
駆動信号が単純なパルス幅変調信号である場合には、前者の値(つまり、駆動信号のパルス幅の合計値)が好ましい。駆動信号が振幅変調信号もしくはパルス幅変調と振幅変調を組み合わせた信号である場合には、後者の値が好ましい。たとえば、振幅変調信号の場合、パルス幅は階調値によらず一定であり、振幅の大小で素子の輝度を変えている。よって、最大階調(最大振幅)で1時間駆動した場合は、駆動時間データには「1時間」を加算するが、最大階調の50%で1時間駆動した場合は「0.5時間」のみ加算する。つまり、実際に信号が印加された時間ではなく、最大階調(最大振幅)の信号が印加されたと仮定した場合の換算値が累積されるのである。駆動信号の振幅の時間積分に相当する値を累積する、と言い換えることもできる。なお、パルス幅変調と振幅変調を組み合わせた信号(1つの駆動信号波形の中で複数の振幅値をとり得る信号)の場合も同じように考える
ことができる。
【0025】
駆動時間データは、全ての表示素子4のそれぞれについて、個別に更新され記憶されることが好ましい。そのほうが補正精度が向上するからである。
【0026】
ただし、記憶領域削減の観点から、2以上の表示素子について共通の駆動時間データが用いられるようにしてもよい。このデータが表す値は、2以上の表示素子の駆動時間相関値の代表値である。かかる代表値としては、たとえば、全表示素子の駆動時間相関値の平均値でも、複数の表示素子の駆動時間相関値でもよい。また、たとえば画像エリアの中央の表示素子のように、ある特定の表示素子の駆動時間相関値を、代表値としてもよい。さらに、出力目的に応じた一般的な平均値でもよい。たとえば、TV映像であれば、最大輝度の20%〜30%が平均輝度であることから、実駆動時間の20%〜30%を駆動時間相関値の代表値として用いてもよい。
【0027】
(補正値算出部)
補正値算出部3は、第1の記憶部1および第2の記憶部2を参照し、各表示素子固有の輝度変化特性データと駆動時間データとから、各表示素子の輝度の経時変化量(減少量または増加量)を求める。次に、補正値算出部3は、全表示素子の輝度の経時変化量に基づいて補正目標値を決定する。そして、補正値算出部3は、それぞれの表示素子が補正目標値の輝度となるように、入力信号(入力画像データ)を補正するための補正値を求める。
【0028】
(補正方法)
図2を参照して、具体的な補正方法を説明する。図2は、ある表示素子の輝度変動の一例を示している。
【0029】
図2に示される輝度変動(破線)は、輝度の経時変化に対応する変動成分と、ゆらぎと呼ばれる比較的中高周波の変動成分とが重畳されたものである。図2の縦軸は、最大階調で駆動したときの輝度であり、横軸は駆動時間である。つまり、図2は、ある表示素子を最大階調で駆動し続けた場合の、駆動時間に対する輝度の変化特性を表す。
【0030】
図2に示す輝度変動に式1の対数近似式をフィッティングすることで、その輝度変化特性を示す係数ai、biが求められる。全ての表示素子について係数ai、biが求められ、図3に示すように、第1の記憶部1に輝度変化特性データとして格納される。図3は、第1の記憶部1のデータ構造を模式的に示している。
【0031】
式1の時間Tiの単位をhour(時間)、予測輝度Liの単位をcd/mとしたとき、係数aiは概ね−250〜250の値をとり、係数biは概ね250〜2000の値をとる。係数aiが正の値である場合、駆動時間Tiが大きくなるにつれて予測輝度Liが大きくなる(改善する)ことを意味する。
【0032】
本実施形態では、輝度変化特性データである係数ai、biを、駆動初期の0〜100時間のあいだの輝度変動に式1の対数近似式をフィッティングすることにより求める。図2に示すように、駆動初期の100時間の輝度変動から求められるフィッティング曲線(実線)は、100時間以降の輝度変動に対してもよくフィットする。
【0033】
なお、図2の例では、10000時間を超えたあたりから輝度変動とフィッティング曲線とのずれが徐々に大きくなっている。これは、係数ai、biを求める際に考慮していなかった要因により輝度が劣化したことが原因であると考えられる。具体的には、本実施形態で考慮していない蛍光体の経時劣化による影響であると考えられる。
【0034】
図4Aおよび図4Bは、第2の記憶部2のデータ構造を模式的に示している。図4Aでは、各表示素子の駆動時間データTiが個別に格納されている。個別の駆動時間データを用いることにより、各表示素子の輝度の経時変化量をより正確に求めることが可能となる。一方、図4Bでは、代表値を表す駆動時間データT0のみが格納されている。補正値算出部3は、代表値である駆動時間データT0を共通に用いて、全表示素子の補正値を算出する(ただし、輝度変化特性データについては各表示素子固有のものが用いられる。)。
【0035】
図5A〜図5Cを参照して、ある駆動時間t1における補正例を説明する。図5Aは、表示素子1〜3の予測輝度L1〜L3、図5Bは、補正値、図5Cは、補正後の測定輝度を示している。
【0036】
まず、補正値算出部3が、第1の記憶部1から係数ai、biを読み出し、第2の記憶部2から駆動時間Ti(=t1)を読み出す。それぞれの表示素子1〜3について、式1から、駆動時間t1における予測輝度L1〜L3が計算される。計算された全ての表示素子の予測輝度L1〜L3をもとに補正目標値が決定される。その補正目標値から、それぞれの表示素子1〜3に適用する補正値が求められる。図5A〜図5Cの例では、表示素子1〜3の予測輝度L1:100、L2:80、L3:50をもとに、補正目標値が50と決められ、全表示素子の輝度が50になるように、各素子の補正値が算出されている。
【0037】
このような補正を行うことで、輝度変化特性の差に起因して生じる表示素子のあいだの輝度むらを低減することができる。ここで、輝度むらは、同一階調の信号を全ての表示素子に入力した場合の「輝度のσ(標準偏差)/平均値」の値で評価することができる。
【0038】
なお、補正目標値を小さくするほど、輝度むらは低減する。図5A〜図5Cのように、予測輝度の最小値を補正目標値に選べば、輝度むらの低減効果は最大となる。しかし、補正目標値を小さくしすぎると、全体的に表示輝度が低下するので、好ましくない。そこで、補正目標値は、デバイスの仕様に合わせて、適宜設定される。
【0039】
全ての表示素子の輝度を必ずしも同一にそろえる必要はない。輝度むらが画像表示装置の視聴者の許容限以下であればよい。具体的には、「輝度のσ/平均値」が1%〜3%程度であれば、輝度むらは目立たない。従って、補正目標値は、輝度むらが画像表示装置の視聴者の許容限以下となるような値に設定すればよい。
【0040】
なお、補正目標値を全素子の予測輝度の最小値より大きな値に設定した場合、補正後の画像データが最大階調を超える場合もあり得る。そこで、リミッタを設けて、補正後の画像データの値が最大階調を超えないように制限することが好ましい。あるいは、画像データにゲインをかけて、補正後の画像データの値が最大階調を超えないように調整してもよい。あるいは、補正後の画像データの値域に応じて、走査線ごとに1水平走査期間の長さを適応的に変化させることも好ましい。
【0041】
以上の補正方法で求められた補正値を用いて画像データが補正され、補正された画像データによって各表示素子4が駆動される。これにより画像表示装置の輝度むらが低減される。
【0042】
(輝度変化特性の測定期間)
本実施形態では、駆動開始初期の100時間の輝度(または輝度と相関のある物理量)の測定結果をもとに、式1〜3の式を用いて、輝度変化特性データが算出される。つまり、初期的な輝度の経時変化を測定するのみで、表示素子固有の長期的な輝度変化特性を推定することができ、第1の記憶部1に格納するパラメータを決定することができる。
【0043】
なお、本実施形態では、駆動開始から100時間を所定の測定期間に設定しているが、測定期間はこれに限られない。表示素子の種類、形状、材料などにより輝度の経時変化の傾向が異なるからである。たとえば、電子放出素子の電流−電圧特性の経時変化の特性は、FE型素子とSCE型素子とMIM型素子とで異なるし、また、たとえばFE型素子であってもその形状や材料等により異なるものである。したがって、測定期間の輝度変動から求めた輝度変化特性データが、測定期間後の輝度変動に対してもよいフィッティングとなるような測定期間を、用いる表示素子の特性に応じて適宜決定することが望ましい。
【0044】
(変調方法)
図6A〜図6Cを参照して、表示素子に与える駆動信号(変調信号)の変調について説明する。駆動信号を生成する変調回路には、補正後の画像データ(または補正後の画像データに対してさらに何らかの処理が加えられたデータ)が入力される。
【0045】
変調方式には、図6Aに示すパルス幅変調方式と、図6Bに示すパルス振幅変調方式と、図6Cに示すパルス幅変調とパルス振幅変調を組み合わせた方式と、がある。本実施形態の画像表示装置には、いずれの変調方式を適用してもよい。パルス幅変調方式は、1水平走査期間内で表示素子に印加する電圧のパルス幅を変えることで階調表現するものである。また、パルス振幅変調方式は、印加するパルスの電圧振幅を変えることで階調表現するものである。
【0046】
(ブロック図)
図7は、図1の画像表示装置の詳細を示すブロック図である。画像表示装置は、表示パネル107と補正回路100とを備えている。表示パネル107は、複数の表示素子104と、変調回路108と、走査回路109と、列方向配線110と、行方向配線111を備える。補正回路100は、第1の記憶部101、第2の記憶部102、補正値算出部103、乗算器106を備える。符号112は、むら測定部であり、符号113は、第1の記憶部101に格納する輝度変化特性データを算出するための演算部である。むら測定部112と演算部113は、画像表示装置の構成要素でもよいし、画像表示装置とは別の構成要素でもよい。
【0047】
(信号の流れ)
図7の符号d1〜d5は信号情報を示している。図7では1本のラインで信号情報が描かれているが、実際には表示素子数分のラインデータである。
【0048】
輝度変化特性データを測定値から求める場合、まず、測定用の画像データd1が入力される。必要に応じ、測定に適した画像表示を行うため、補正値算出部103から補正データd2が乗算器106に送られる。乗算器106でデータd1とd2の演算が行われ、測定に適した画像表示を行うための補正後画像データd3に変換される。データd3は変調回路108に送られる。乗算器106でデータd1とd2の演算を行わない場合は、画像データd1が補正後画像データd3として変調回路108に送られる。
【0049】
画像データd1の同期信号d4が走査回路109に送られる。変調回路108と走査回路109より、列方向配線110と行方向配線111を介して表示素子104に信号が送られ、表示素子104が駆動される。このとき表示素子104を1つずつ駆動してもよいし、複数の表示素子104を同時に駆動してもよい。これにより、輝度むら測定用の画像が表示される。むら測定部112は、各表示素子104の輝度(または、素子電流のように輝度と相関のある物理量)を測定する。むら測定部112で測定されたデータは、演算部113に送られる。演算部113は、測定データに基づき、各表示素子104の輝度変化特性データ(係数ai、bi)を算出する。
【0050】
なお、輝度変化特性データをデータベース(不図示)から算出する場合は、演算部113はデータベースから読み出したデータから係数ai、biを算出し、その値を第1の記憶部101に格納する。
【0051】
輝度むらを低減するための補正は、次のように実行される。補正値算出部103が、第1の記憶部101の輝度変化特性データと、第2の記憶部102の駆動時間データとに基づき、各表示素子104に対応した補正値を算出する。算出された補正値は、補正データd2として乗算器106に送られる。乗算器106は、補正回路100に入力された画像データd1と補正データd2とから、補正後画像データd3を生成する。変調回路108は、この補正後画像データd3から駆動信号(変調信号)を生成し、列方向配線110に出力する。これにより、輝度むらが低減された画像が表示される。
【0052】
なお、第2の記憶部102に記憶されている駆動時間データは、表示素子が駆動されるのに伴って更新される。図7の構成では、補正後画像データd3と同じデータd5が、表示素子の駆動時間の長さを表す情報として、第2の記憶部102に送られる。第2の記憶部102は、データd5に基づき駆動時間相関値を算出し、該当する素子の駆動時間データを更新する。
【0053】
(駆動方法)
画像表示装置の駆動は、単純マトリックス方式またはアクティブマトリックス方式により行う。ここでは、単純マトリックス方式に関して、図7に基づいて説明する。表示素子104は、マトリックス状に配置された列方向配線110、行方向配線111の交点に結線されている。列方向配線110は変調回路108に接続しており、行方向配線111は走査回路109に接続している。
【0054】
まず、映像の1水平走査期間で表示パネル107の或る行が選択される。その選択された行の行方向配線111に走査回路109から走査信号が印加される。これにより、選択された行に接続している表示素子に走査信号が印加される。
【0055】
一方、変調回路108は選択行の各表示素子の情報信号(変調信号)を、選択されている1水平走査期間において同時に出力する。情報信号は列方向配線110を通して表示素子に供給される。
【0056】
表示素子は、走査信号と情報信号が同時に印加された場合のみ発光する。これにより、選択行の表示素子は情報信号のパルス幅または振幅に応じた所望の輝度で発光する。1垂直走査期間の中で選択行を順次切り替えていくことにより、画像を表示することができる。
【0057】
以上述べた構成によれば、輝度の経時変化に起因する輝度むらを低減し、長期にわたり高品質な画像を表示することができる。しかも、各素子に固有の輝度変化特性データを用いて補正が行われるので、特性の異なる素子が混在していたとしても、十分な輝度むら低減効果を得ることができる。
【0058】
<第2の実施形態>
図8のブロック図を用いて、第2の実施形態について説明する。図8は、本発明の第2の実施形態に係る画像表示装置を示すブロック図である。
【0059】
図8に示すように、画像表示装置は、複数の表示素子14と、複数の表示素子14のあいだの輝度むらを低減するために画像データを補正する補正回路16と、を備えている。補正回路16は、第1の記憶部11、第2の記憶部12、第3の記憶部15、補正値算出
部13を備える。本実施形態の表示素子14は、電子放出素子と蛍光体から構成される。第1〜第3の記憶部は不揮発性のメモリで構成される。
【0060】
(第1の記憶部)
第1の記憶部11は、各表示素子14の輝度変化特性データを記憶している。第2の実施形態では、輝度の経時変化ではなく、輝度と相関のある物理量である素子電流の経時変化を、輝度変化特性データに用いている。ここでは、電子放出素子から放出されるエミッション電流(放出電流)のことを素子電流と定義するが、エミッション電流と相関のある他の電流(たとえば駆動電流)を素子電流と定義してもよい。
【0061】
(第2の記憶部)
第2の記憶部12の構成は、第1の実施形態のもの(図1の第2の記憶部2)と同様である。
【0062】
(第3の記憶部)
第3の記憶部15は、駆動時間に対する蛍光体の劣化特性(以下、単に「蛍光体劣化特性」ともいう。)を表す蛍光体劣化特性データ(第2の特性データ)を記憶している。蛍光体劣化特性は、式4のように表される。
【数1】


(式4)
【0063】
Aは蛍光体の発光効率、A0は初期の蛍光体の発光効率、A/A0は蛍光体の劣化率、Q[C/cm]は総電荷注入量、Q50%[C/cm]は蛍光体の発光効率が50%に劣化する総電荷注入量である。第3の記憶部15には、あらかじめ測定されたQ50%の値が格納される。
【0064】
(補正値算出部)
補正値算出部13は、第1の記憶部11と第2の記憶部12を参照し、各表示素子固有の輝度変化特性データと駆動時間データとから、各表示素子の素子電流の経時変化量(減少量または増加量)を求める。また、補正値算出部13は、第3の記憶部15と第2の記憶部12を参照し、蛍光体劣化特性データと駆動時間データとから、各表示素子の蛍光体の劣化率を求める。そして、素子電流の経時変化量と蛍光体の劣化率とから各表示素子の輝度の経時変化量が算出される。次に、補正値算出部13は、全表示素子の輝度の経時変化量に基づいて補正目標値を決定する。そして、補正値算出部13は、それぞれの表示素子が補正目標値の輝度となるように、入力信号(入力画像データ)を補正するための補正値を求める。
【0065】
(補正方法)
図9および図10を参照して、本実施形態の補正方法を説明する。図9は、ある電子放出素子の素子電流の経時変化を示している。図9の縦軸は、最大階調で駆動したときの放出電流であり、横軸は駆動時間である。つまり、図9は、ある電子放出素子を最大階調で
駆動し続けた場合の、駆動時間に対する放出電流の変化特性を表す。
【0066】
図10は、蛍光体の劣化を示している。図10の縦軸は蛍光体の劣化率である。蛍光体の劣化率は、初期状態(駆動時間がゼロの状態)を1とする。劣化率の値が小さくなるほど劣化量が大きいことを表す。図10の横軸は駆動時間である。ここでの駆動時間は、最大階調の信号が印加されたと仮定した場合の換算値を累積した時間であり、駆動時間と総電荷注入量はほぼ比例関係にある。よって、第2の記憶部12の駆動時間データから総電荷注入量が求まり、式4から蛍光体劣化率が計算できる。総電荷注入量の単位は[C/cm]である。
【0067】
図9の放出電流の変動(破線)は、式5の対数近似式でフィッティングされる(実線)。
Ii=ci×Log(Ti)+di (式5)
【0068】
ここで、Iiは予測素子電流、Tiが累積駆動時間である。係数ci、diは時間に依存しないパラメータである。本実施形態では、係数ci、diが輝度変化特性データとして第1の記憶部11に格納される。式5の時間Tiの単位をhour(時間)、予測素子電流Iiの単位をμAとしたとき、係数ciは概ね−15〜15の値をとり、係数diは概ね3〜10の値をとる。
【0069】
第1の実施形態と同様、本実施形態でも、係数ci、diは、駆動初期の100時間までの素子電流変動に式5の式をフィッティングすることにより求められる。図9に示すように、駆動初期の100時間の素子電流変動から求められるフィッティング曲線(実線)は、100時間以降の素子電流変動に対しても非常によくフィットする。
【0070】
図9の素子電流の変動は、蛍光体の劣化率とは関係ないという点で、図2の輝度の変動とは異なる。そのため、図9では、駆動時間が10000時間を超えても、図2に見られたようなフィッティング曲線の乖離がない。
【0071】
第2の記憶部12には、図4Aまたは図4Bのように、駆動時間データが格納される。
【0072】
図11は、第3の記憶部15のデータ構造を模式的に示している。本実施形態の画像表示装置はR、G、Bの3色の蛍光体を有しており、劣化特性は色毎に異なっている。よって、第3の記憶部15には、R、G、Bそれぞれの蛍光体の劣化特性Q50%R、Q50%G、Q50%Bが格納される。たとえば、蛍光体劣化特性Q50%は概ね10〜10[C/cm]の値をとる。
【0073】
補正例を説明する。まず、補正値算出部13が、第1の記憶部11から係数ci、diを読み出し、第2の記憶部12から駆動時間Tiを読み出す。それぞれの表示素子について、式5から、駆動時間Tiにおける予測素子電流Iiが計算される。また、第3の記憶部15から各色の蛍光体劣化特性Q50%が読み出され、駆動時間Tiが総電荷注入量Qに変換され、式4より蛍光体の発光効率Aが計算される。なお、初期の発光効率A0の値は既知である。
【0074】
そして、予測素子電流Iと蛍光体の劣化率より、式6から、予測輝度Lが求められる。式6において、Aは蛍光体発光効率であり、γはガンマ係数である。なお、ガンマ係数γの値は既知である。
L=A×Iγ (式6)
【0075】
式6により、全表示素子の予測輝度が計算された後は、第1の実施形態と同様の方法に
より、各素子に対する補正値が算出される。そして、算出された補正値を用いて入力画像データが補正され、輝度むらが低減される。
【0076】
なお、上記の説明では式5のような対数近似式を用いたが、第1の実施形態と同様、エージング期間を考慮した式7のような近似式や、式8のような線形式を用いて係数ci、diを求めてもよい。式7のT0はエージング期間に対応するオフセット時間である。
Ii=ci×Log(Ti−T0)+di (式7)
Ii=ci+di×Ti (式8)
【0077】
(経時変化の測定期間)
本実施形態では、駆動開始初期の100時間の素子電流の測定結果をもとに、式5、式7または式8を用いて、輝度変化特性データが算出される。つまり、初期的な素子電流の経時変化を測定するのみで、素子固有の長期的な輝度変化特性を推定することができ、第1の記憶部11に格納するパラメータを決定することができる。なお、測定期間は100時間に限らず、用いる素子の特性に応じて適宜決定することができる。
【0078】
また、図10に示すように、本実施形態の蛍光体は、駆動開始初期の100時間まではほとんど劣化しない。そのため、第1の実施形態のように輝度を測定した値から、第1の記憶部11に格納するパラメータを算出してもよい。駆動開始初期の輝度変動には、蛍光体の劣化による変動成分は含まれていないとみなせるからである。
【0079】
(変調方法)
変調方法は、第1の実施形態と同様である。
【0080】
(ブロック図)
図12は、図8の画像表示装置の詳細を示すブロック図である。画像表示装置は、表示パネル207と補正回路200とを備えている。表示パネル207は、複数の表示素子204と、変調回路208と、走査回路209と、列方向配線210と、行方向配線211を備える。補正回路200は、第1の記憶部201、第2の記憶部202、第3の記憶部205、補正値算出部203、乗算器206を備える。符号212は、むら測定部であり、符号213は、第1の記憶部201に格納する輝度変化特性データを算出するための演算部である。むら測定部212と演算部213は、画像表示装置の構成要素でもよいし、画像表示装置とは別の構成要素でもよい。
【0081】
図12の画像表示装置が図7の画像表示装置と異なる点は、第1の記憶部201の輝度変化特性データが素子電流の経時変化を表すデータである点と、第3の記憶部205が設けられている点である。また、補正値算出部203は、第1の記憶部201の輝度変化特性データと、第2の記憶部202の駆動時間データと、第3の記憶部205の蛍光体劣化特性データとから、各素子の補正値を算出する。その他の構成については、図7の画像表示装置と同様である。
【0082】
以上述べた構成によれば、電子放出素子固有の経時変化特性と、蛍光体固有の経時変化特性の両方を考慮することで、より精度の高い輝度むら補正を実現できる。
【0083】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態について説明する。
【0084】
第3の実施形態の基本的な構成は上述した第2の実施形態と同じである。ただし、第2の実施形態では、第1の記憶部に各表示素子固有の素子電流の経時変化を示す値を格納していたのに対し、第3の実施形態では、第1の記憶部に輝度の測定値から求めた各表示素
子固有の輝度の経時変化を示す値を格納する点が異なる。
【0085】
第3の実施形態でも、第2の実施形態と同様、第3の記憶部に蛍光体の劣化を示す値を格納する。
【0086】
ところで、表示素子の輝度は、素子電流の大きさだけでなく、蛍光体の発光効率にも依存する。そのため、第1の記憶部に格納するパラメータ(輝度変化特性データ)として、輝度の測定値から求めた値を用いると、蛍光体の劣化による輝度変動を過剰に(二重に)補正してしまうようにもみえる。しかしながら、図10に示すように蛍光体は駆動開始初期においてほとんど劣化しないので、駆動開始初期(たとえば100時間)に測定された輝度変動には蛍光体の劣化による変動成分はほとんど含まれない。したがって、上述した過剰補正の問題は生じないのである。逆に、蛍光体の劣化特性を考慮することで、第1の実施形態(図2参照)で指摘したような、輝度とフィッティング曲線のずれによる補正精度の低下を解消可能である。
【0087】
本実施形態は、素子電流の測定よりも輝度の測定の方が容易である場合や測定精度がよい場合、測定時間が短い場合等に特に好適に適用することが出来る。
【実施例】
【0088】
(画像形成装置の基本構成)
本実施例の画像表示装置の基本構成を以下に説明する。
【0089】
本実施例における電子源は、基板上に複数の電子放出素子と、該電子放出素子をマトリクス配線する、複数の行方向配線及び複数の列方向配線を備えたものである。
【0090】
かかる電子源を構成する電子放出素子の一例として、表面伝導型電子放出素子(「SCE素子」)の構成例を図13Aおよび図13Bに模式的に示す。図13Bは図13AのA−A´断面である。131は基板、132,133は素子電極、134は導電性膜、135は電子放出部である。
【0091】
図13AのSCE素子の製造方法は次の通りである。電気的絶縁性の基板131上に一対の素子電極132,133が形成される。素子電極132,133に接続して導電性膜134が形成される。その後、この導電性膜134にフォーミングと称される通電処理が施される。それにより導電性膜134が局所的に破壊、変形もしくは変質し、亀裂を含む電気的に高抵抗な箇所(電子放出部135)が形成される。素子電極132、133間に電圧を印加して、導電性膜134に電流を流すと、電子放出部135から電子が放出される。
【0092】
図13Aに示した電子放出素子をマトリクス配線で結線した電子源を用いた画像表示装置の一例について、図14を用いて説明する。図14は、画像表示装置の表示パネルの一部を切り欠いて示す模式図である。
【0093】
図14において、1415は図13に示した電子放出素子、1416はリアプレート、1418はガラス基板からなるフェースプレートである。電子放出素子1415は、列方向配線1412と行方向配線1414とに接続されている。フェースプレート1418の内面には蛍光膜1419とメタルバック1420等が形成されている。1417は支持枠、1421は高圧電源である。リアプレート1416、支持枠1417及びフェースプレート1418を封着して、外囲器が構成される。外囲器内は、例えば10−5Pa程度の真空に保たれる。尚、電子源基板1411が十分な強度を有する場合には、リアプレート1416を用いず、該電子源基板1411と支持枠1417とを直接接着してもかまわな
い。
【0094】
また、フェースプレート1418と電子源基板1411との間に、大気圧に対する強度を向上するために、スペーサと呼ばれる不図示の支持体を設置することが好ましい。
【0095】
さらに、封着後の外囲器内の真空度を維持するために、封着の前後においてゲッター処理を行うことが好ましい。
【0096】
(実施例1)
図7を参照して、画像表示装置の実施例1を説明する。
【0097】
画像表示装置の製造プロセスにおいて、各表示素子の輝度の測定を実施する。最大階調に対応する駆動信号でそれぞれの表示素子を駆動し、100時間のあいだの輝度の変動を記録する。輝度の測定にはCCDカメラを利用する。具体的には、全ての表示素子を同一の画像データで発光させ、複数台のCCDカメラで表示面全体を分割して測定する。測定された輝度の一例を図15に示す。図15は、3つの表示素子の100時間の輝度変動を示している。図15の縦軸は、最大階調に対応する輝度であり、横軸は、最大階調での駆動時間である。
【0098】
各表示素子の輝度測定結果に対して式1の近似曲線をフィッティングし、各表示素子の係数ai、biを求めた。係数ai、biは第1の記憶部101に格納した。図16Aは、第1の記憶部に格納された各表示素子の係数ai、biの一例を示している。本実施例では、係数ai、biの値の範囲は、ai=−40〜−180、bi=800〜1400となった。
【0099】
第2の記憶部102には、各表示素子の駆動時間データが格納される(図4A参照)。駆動時間データは、実際の累積駆動時間ではなく、最大階調で駆動したと仮定したときの換算値である。
【0100】
以下、本発明を実施することによる効果を確認するための輝度むらの評価方法について説明する。
【0101】
輝度むらの評価には、輝度むら評価のためのテスト画像信号を用いる。変調方法はパルス幅変調とした。最大階調の50%を平均とし、15%の標準偏差をもつ正規分布に従って、各時間の階調値をランダムな値に設定した。駆動電圧を16V、最大階調時の駆動電圧パルス幅を5μsecとし、60Hzで駆動した。
【0102】
第1の記憶部101と第2の記憶部102の値を用い、補正値算出部103で輝度の経時変化量(予測輝度Li)を計算した。全素子の予測輝度に基づいて決定された補正目標値から、各素子の補正値が求められ、各表示素子に入力されるテスト画像信号の補正が行われた。
【0103】
輝度むら評価開始後100時間の補正例を具体的に示す。簡単のため9素子での補正結果を示す。図16Bは、輝度むら評価を開始してから100時間後の、第2の記憶部102に格納されている各素子の駆動時間データTiを示している。図16Aの係数ai、biと図16Bの駆動時間データTiとを用いて、式1から求めた予測輝度Liを図16Cに示す。補正目標値を、9素子のうち最小の輝度(本実施例ではL9=744)に決定し、各素子の補正値を図16Dのように算出した。この補正値で補正した後に測定した輝度は、図16Eのようになった。
【0104】
図17は、実施例1の補正による効果を示している。図17の縦軸は、輝度むら(100個の素子の輝度のσ/平均値)を示し、横軸は、輝度むらの評価を開始してからの経過時間(hour)を対数目盛りで示している。実線のグラフが、実施例1の補正の結果であり、破線のグラフが、後述する比較例の結果である。実施例1の補正は、輝度測定値から求められた固有の輝度変化特性と、素子毎に記録された累積駆動時間とから、素子毎の補正値を算出するものである。この実施例1の補正によって、図17に示すように、輝度むらの経時悪化が改善された。
【0105】
(比較例)
上述のように、実施例1では、各表示素子に固有の輝度変化特性(係数ai、bi)を用いて補正を行った。これに対して、比較例では、全ての表示素子に同一の係数a0、b0を用いて補正を行う。比較例の係数a0、b0は、ある代表素子の輝度の測定結果に対して式1の近似曲線をフィッティングすることによって求めた。図18Aは、比較例の第1の記憶部に格納された係数a0、b0の一例を示している。a0=−60、b0=1200であった。
【0106】
図18Bに示すように、第2の記憶部に各表示素子の駆動時間データを格納した。
【0107】
輝度むらの評価には、実施例1と同様の輝度むら評価のためのテスト画像信号を用いた。
【0108】
図18Aおよび図18Bに示す値を用い、実施例1と同様の手法で予測輝度を算出した(図18C参照)。最小の予測輝度(L6=1062)を補正目標値に選び、各素子の補正値を算出した(図18D参照)。この補正値で補正した後に測定した輝度は、図18Eのようになった。
【0109】
図17の破線は、比較例の補正結果を示している。素子固有の輝度変化特性を用いるか(実施例1)、同一の輝度変化特性を用いるか(比較例)で、輝度むらの低減効果に大きな違いが現れることがわかる。
【0110】
(実施例2)
実施例2では、第2の記憶部の記憶領域削減のため、累積駆動時間の代表値(図4B参照)を用いた。それ以外は、実施例1と同じである。累積駆動時間の代表値としては、実駆動時間の50%の値を用いた。
【0111】
輝度むらの評価には、実施例1と同様の輝度むら評価のためのテスト画像信号を用いた。
【0112】
図19は、実施例2の補正による効果(輝度むらの時間変化)を示している。実線が実施例2の補正結果であり、破線が比較例の補正結果である。実施例2の補正でも素子固有の輝度変化特性が用いられているので、比較例に比べて輝度むらの経時悪化が十分に改善されることがわかる。
【0113】
(実施例3)
図12を参照して、画像表示装置の実施例3を説明する。実施例3の補正は、蛍光体の劣化特性も考慮する。
【0114】
実施例1と同様の方法で、駆動開始初期の100時間のあいだの輝度の変動を測定した。測定した輝度は式6により素子電流に変換した。このとき、式6のγは0.7を用い、Aは蛍光体の発光効率の初期値を用いた。図20は、3つの表示素子の100時間の素子
電流の変動の例を示している。
【0115】
各表示素子の素子電流の変動に対して、式5の近似曲線をフィッティングし、各表示素子の係数ci、diを求めた。係数ci、diは第1の記憶部201に格納した。係数ci、diの値の範囲は、ci=−2〜−4、di=4〜6となった。第2の記憶部202には、各表示素子の駆動時間データ(最大階調で駆動したと仮定したときの換算値)を格納した(図4A参照)。第3の記憶部205には、各蛍光体の劣化特性Q50%R、Q50%G、Q50%Bを格納した(図11参照)。具体的には、Q50%R=2×10[C/cm]、Q50%G=1×10[C/cm]、Q50%B=2.5×10[C/cm]を用いた。
【0116】
輝度むらの評価には、実施例1と同様の輝度むら評価のためのテスト画像信号を用いた。
【0117】
補正値算出部203で、第1の記憶部201の値と第2の記憶部202の値から、素子電流の経時変化量(予測素子電流Ii)が求められた。また、第2の記憶部202の値と第3の記憶部205の値とを用いて、各蛍光体の劣化率が求められた。そして、素子電流の経時変化量と蛍光体の劣化率から、各表示素子の輝度の経時変化量が算出された。全素子の輝度の経時変化量に基づいて決定された補正目標値から、各素子の補正値が求められ、各素子に入力されるテスト画像信号の補正が行われた。
【0118】
実施例1と同様に輝度むらを評価した。図21は、実施例3の補正による効果を示している。実線が実施例3の補正結果であり、破線が比較例の補正結果である。実施例3の補正では、蛍光体の劣化特性も考慮されるので、実施例1の補正よりもさらに輝度むらの経時悪化が改善された。
【0119】
(実施例4)
実施例4では、第2の記憶部の記憶領域削減のため、累積駆動時間の代表値(図4B参照)を用いた。それ以外は、実施例3と同じである。累積駆動時間の代表値としては、実駆動時間の50%の値を用いた。
【0120】
輝度むらの評価には、実施例1と同様の輝度むら評価のためのテスト画像信号を用いた。
【0121】
図22は、実施例4の補正による効果を示している。実線が実施例4の補正結果であり、破線が比較例の補正結果である。実施例4の補正でも比較例に比べて輝度むらの経時悪化が十分に改善されることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】第1の実施形態の画像表示装置の基本構成を示すブロック図である。
【図2】輝度の経時変化とそのフィッティング曲線を示すグラフである。
【図3】第1の記憶部のデータ構造を示す図である。
【図4】第2の記憶部のデータ構造を示す図である。
【図5】第1の実施形態の補正例を示す図である。
【図6】変調方法を示す図である。
【図7】第1の実施形態の画像表示装置の構成を示すブロック図である。
【図8】第2の実施形態の画像表示装置の基本構成を示すブロック図である。
【図9】素子電流の経時変化とそのフィッティング曲線を示すグラフである。
【図10】蛍光体の劣化特性の一例を示すグラフである。
【図11】第3の記憶部のデータ構造を示す図である。
【図12】第2の実施形態の画像表示装置の構成を示すブロック図である。
【図13】表面伝導型放出素子の構成を示す図である。
【図14】表示パネルの構成を示す図である。
【図15】実施例1における輝度の変動を示すグラフである。
【図16】実施例1における補正例を示す図である。
【図17】実施例1の補正の効果を示すグラフである。
【図18】比較例における補正例を示す図である。
【図19】実施例2の補正の効果を示すグラフである。
【図20】実施例3における素子電流の変動を示すグラフである。
【図21】実施例3の補正の効果を示すグラフである。
【図22】実施例4の補正の効果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0123】
1、11、101、201 第1の記憶部
2、12、102、202 第2の記憶部
3、13、103、203 補正値算出部
4、14、104、204 表示素子
5、16、100、200 補正回路
15、205 第3の記憶部
106、206 乗算器
107、207 表示パネル
108、208 変調回路
109、209 走査回路
110、210 列方向配線
111、211 行方向配線
112、212 むら測定部
113、213 演算部
131 基板
132 素子電極
132,133 素子電極
134 導電性膜
135 電子放出部
1411 電子源基板
1412 列方向配線
1414 行方向配線
1415 電子放出素子
1416 リアプレート
1417 支持枠
1418 フェースプレート
1419 蛍光膜
1420 メタルバック
1421 高圧電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表示素子と、
前記複数の表示素子のあいだの輝度むらを低減するために画像データを補正する補正回路と、を備え、
前記補正回路は、
駆動時間に対する輝度の変化特性を表す第1の特性データを、前記複数の表示素子のそれぞれについて、記憶する第1の記憶部と、
前記表示素子の駆動時間に相関のある値を表しており、前記表示素子が駆動されると更新される、駆動時間データを記憶する第2の記憶部と、
前記第1の特性データと前記駆動時間データとに基づいて、前記複数の表示素子のそれぞれに対応する補正値を算出する算出部と、を備えること
を特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記第1の特性データは、所定の測定期間のあいだ表示素子を駆動し該表示素子の輝度または輝度と相関のある物理量を測定することによって得られた測定値に基づいて、算出されたデータであること
を特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記表示素子は蛍光体を有し、
前記補正回路は、駆動時間に対する前記蛍光体の劣化特性を表す第2の特性データを記憶する第3の記憶部を有し、
前記算出部は、前記第1の特性データと前記第2の特性データと前記駆動時間データとに基づいて、前記複数の表示素子のそれぞれに対応する補正値を算出すること
を特徴とする請求項1または2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記駆動時間データは、前記表示素子の駆動時間の累計を表すこと
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記駆動時間データは、前記表示素子の駆動時間をその階調値に応じて調整した値の累計を表すこと
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記駆動時間データは、前記複数の表示素子のそれぞれについて、個別に更新され記憶されること
を特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記駆動時間データは、前記算出部が前記補正値を算出する際に2以上の表示素子に共通に用いられること
を特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記複数の表示素子は、駆動時間に対する輝度の変化特性が互いに異なる表示素子を含んでおり、
前記補正値は、前記変化特性の差に起因して生じる輝度むらを低減するための補正に用いられること
を特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記表示素子は電子放出素子を有すること
を特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記電子放出素子は表面伝導型放出素子であること
を特徴とする請求項9に記載の画像表示装置。
【請求項11】
複数の表示素子を有する画像表示装置の製造方法であって、
前記複数の表示素子のそれぞれについて、所定の測定期間のあいだ表示素子を駆動し該表示素子の輝度または輝度と相関のある物理量を測定する工程と、
前記測定によって得られた測定値に基づいて、駆動時間に対する輝度の変化特性を表す第1の特性データを、前記複数の表示素子のそれぞれについて、算出する工程と、
前記算出された前記第1の特性データを、前記画像表示装置の記憶部に格納する工程と、
を含むことを特徴とする画像表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記複数の表示素子は、駆動時間に対する輝度の変化特性が互いに異なる表示素子を含んでいること
を特徴とする請求項11に記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記表示素子は電子放出素子を有すること
を特徴とする請求項11または12に記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記電子放出素子は表面伝導型放出素子であること
を特徴とする請求項13に記載の画像表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−8776(P2009−8776A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168486(P2007−168486)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】