説明

画像表示装置の駆動方法

【課題】1つのセル内に複数の画素が設定される情報表示用パネルを備えた画像表示装置でも、クロストークによる表示ムラを低減する駆動方法を提供する。
【解決手段】2枚の基板1、2間に隔壁4により形成したセル7を設け、帯電性粒子を含んだ粒子群として構成した表示媒体をセル7内に封入し、基板のそれぞれに配置した電極に基づく電界に応じて前記表示媒体を基板間で移動させて情報表示する画像表示装置の駆動方法で、基板2上で行方向に延在する複数本の電極からなる行電極6−1及び基板1上で列方向に延在する複数本の電極からなる列電極5−1,5−2を含んで形成され、前記行電極と前記列電極とが交差する位置の画素が前記セルの1個の内に複数存在する場合に、表示が終了した後、前記セル内で隣り合う第1の電極と第2の電極との間に、当該第1の電極側または当該第2の電極側へ、前記粒子群が移動するように作用する電圧を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に配置した表示媒体を封入し、この表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する画像表示装置に関するもので、より詳細には画像表示装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置として液晶表示装置(LCD)が広く普及している。しかし、一般に液晶表示装置は一般にバックライトを使用するので電力消費量が大きく、また電源を接続していなければ表示できないので表示保持性に劣るなどの欠点が知られていた。そこで、液晶表示装置に代わるものとして、少なくとも一方が透明な2枚の基板(例えばガラス基板)間に隔壁によって仕切られた複数のセルを形成し、このセル内に配置した表示媒体を封入して、この表示媒体に電界を作用させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルを備えた画像表示装置が提案されている。この画像表示装置はいったん画像表示を形成したあとに電源を切っても表示した画像を保持するため、画像保持に電力を必要とせず、また視野角が広いなどの特長を備えている。
【0003】
上記のような画像表示装置の情報表示用パネルは、例えば基板間の空間に画像等の情報に応じた電界を発生させる電極対が配備されており、その電界に応じてパネル内の表示媒体(帯電性粒子を含んだ粒子群)を移動させることにより画像等の情報を表示する。より具体的には、情報表示用パネルにおいて、一方の基板側で行方向に延びる複数本の電極からなる行電極と、他方の基板側で列方向に延びる複数本の電極からなる列電極とを互いに交差するように配置して、列電極の一端から他端にスキャンして電圧を印加することで、1画面の画像を表示する。いわゆるパッシブ駆動型の情報表示用パネルである。また、タッチペンなどと組み合わせて、画面上の指定した位置に点や線などを表示(描画)することもできる。表示された画像は、表示面側の透明なパネル基板を通して視認することができる。また、この画像表示装置のもつ、いったん表示した画像を保持するという特徴から、通常、画像表示を行うまえに、もともと表示されていた情報をリセットするための消去を行う。消去するためには、電極に所定の電圧を印加し、画面の全体または一部に同方向の電界を発生させて同種類の表示媒体群を同じ基板側に移動させる。このようなパッシブ駆動型の画像表示装置はクロストークと称される要因により生じる表示ムラが問題となる場合がある。以下にクロストークについて説明する。
【0004】
上記情報表示用パネルでは、各行電極、各列電極が各画素で共通のため、表示切り替えをしたときに表示切り替えに関係しない画素にも無用な電圧(クロストーク電圧)が加わることがある。例えば黒色の表示媒体群と白色の表示媒体群を用いて表示する情報表示用パネルにおいて、クロストーク電圧が加わった場合、本来、白表示であるべき画素が、薄い灰色の表示となり、また本来黒表示であるべき画素が濃い灰色の表示となる。これは、クロストーク電圧により、セル内の表示媒体群のうち、一方の電極に配置される例えば白色表示媒体の中に、一部の黒色表示媒体が混ざってしまうためである。同様に黒色表示媒体の中に、一部の白色表示媒体が混ざってしまうためである。このようにクロストーク電圧により生じる意図しない表示状態の変化をクロストークと称する。このクロストークは表示する画像の位置によって発生する部分と発生しない部分があるため、濃淡の差が生じてしまう。この濃淡の差が情報表示用パネルを見た者(観察者)に表示ムラがあると感じさせることになる。
【0005】
そこで、特許文献1では、上記のようなパッシブ駆動型の情報表示用パネルを備える画像表示装置の駆動方法として、1画面の表示が終了した後、クロストークを発生させる電圧を表示領域にある全ての電極に1回以上、意図的に印加することにより表示調整処理を行っていた。ただし、ここで提案している表示調整処理は、例えば黒・白の表示媒体を用いて情報表示用パネルで、本来、白表示とする領域にクロストークが発生して灰色(グレイ)となった場合、灰色を所期の白色に戻そうとするものではない。全ての電極に1回以上クロストーク電圧を意図的に印加して、そのとき白色であるものも灰色に近付けることで、観察者が表示ムラを感じないようにする処理である。このような画像表示装置の駆動方法であれば、比較的簡易に実行でき、情報表示用パネルの表示状態を全体的として濃淡の差が抑制するよう調整し、視覚的に目立たないように、即ち、観察者が表示ムラを感じないようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−331904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記情報表示用パネルは、前述したように、隔壁によって仕切られたセル内に表示媒体を封入し、これに基板に設けた電極から電圧を印加して移動させるものであるが、1つのセル内に1つの画素を設定してある形態(1対1の形態、と称す)だけでなく、1つのセル内に複数(N個)の画素を設定してある形態(1対Nの形態、と称す)がある。これら形態の差によって、前述した従来のクロストーク抑制手法では、クロストークにより発生した表示ムラ(発生する濃淡)を十分に軽減できない場合がある。この点を、図を参照して説明する。
【0008】
図6(a)は1対1の形態で形成した画像表示装置の表示領域の一部を拡大して示した図であり、図6(b)は図6(a)内の一部領域AR内のセルを更に拡大して示した図である。また、図7(a)は1対N(ここでは、N=4)の形態で形成した画像表示装置の表示領域の一部を拡大して示した図であり、図7(b)は図7(a)内の一部領域AR内のセルを更に拡大して示した図である。なお、図6(b)、図7(b)のそれぞれでは上段にセルの平面図、下段にセルの側面図を示している。
図6、図7どちらにおいても、横方向に向かって延在する行電極RW−1、RW−2と、これと交差する縦方向に向かって延在する列電極CL−1、CL−2とが示されている。行電極RW(RW−1、RW−2)は観察側の透明なパネル基板(例えば、ガラス基板)PA−2の内側に配置されている。そして、列電極CL(CL−1、CL−2)は背面側のパネル基板(例えば、ガラス基板)PA−1の内側に配置されている。
【0009】
このように、行電極RWと列電極CLが配備された2枚の基板は平行に配置され、その間を隔壁(リブ)RBで保持している。図6、図7で示されるように、隔壁RBで囲まれた空間がセルCEであり、このセルCE内に白色表示媒体WHおよび黒色表示媒体BLが適量充填されている。
【0010】
各列電極CLまたは行電極RWは細長い短冊形状で各基板PA−1、PA−2上にストライプ状に配置されており、行電極と列電極は交差するように配置されている(ここでは直交交差させている)。1本の行電極RWと1本の列電極CLが交差した領域(位置)が1画素となっている。
【0011】
隔壁RBは表示媒体(粒子群)が偏らないように、ある一定の大きさのセル空間を形成しているが、このセルの形態には、図6で示した1対1の形態と、図7で示した1対Nの形態とがある。後者の1対Nの形態の場合、1つのセル内に複数のN画素(例示の場合は4画素)が存在する構造になるが、一方でこの構造の場合は隣接する電極間に仕切りとなる隔壁が存在しないことになる。そのために、上述した従来のクロストーク抑制法では発生したクロストークを確実に抑制できない場合がある。この点の不都合を、更に、図8を示して説明する。
【0012】
図8は、1対4の形態に形成した情報表示用パネルで、クロストークにより発生した濃淡の差を抑制するため、セル内の全面の電極に意図的にクロストーク電圧を印加する従来の抑制手法を実施したときの様子を説明するために示した図である。なお、この図8では、1対4の形態に形成した1個のセルを拡大して示し、クロストークが発生した表示領域の状態を示したのが左上段の図、これに対して、右上段の図はクロストークが発生していない表示領域の状態を示している。
【0013】
1個のセル内に4画素が存在する1対4の形態場合には、図8左上段で示すように所定の情報が表示された後、クロストークが発生したときに内部の表示媒体(粒子群)が偏在すると反対側(背面側)の基板上にある表示媒体(ここでは黒色表示媒体BL)が見えてしまう場合がある。より具体的には、手前側の基板の電極CL−1、CL−2側に白色表示媒体WHを電気的に吸引して表示する場合、ここで示す電極CL−1、CL−2間には1対1形態のように隔壁がない。そのために、表示書き換えに際して発生したクロストークで、セル内で隣り合う電極CL−1、CL−2間に白色表示媒体WHが移動しうる電界が生じた場合、隔壁がないため電極CL−1、CL−2間に存在していた白色表示媒体WHまでも上記電位差により移動し、電極間に存在しなくなる。その結果、図8左上段で示すように背面側に存在する他方の色(黒色表示媒体BL)の表示媒体群が見える状態になってしまう。
【0014】
そして、情報表示用パネルでは、上述した図8左上段のクロストーク発生部分、及び図8右上段で示すクロストークが発生しなかった部分が存在する。このような表示状態にある情報表示用パネルに、前述した従来の表示ムラ抑制手法によりセル内の電極全てに電圧を一括的に印加して、発生した濃淡を抑制するように処理した様子を示したのが、図8の下段それぞれの図である。
【0015】
右側のクロストーク発生のない部分に表示ムラ抑制するための処理をして、クロストークが発生した左側に近付くように、表示状態を調整するのが意図である。しかし、隣接する電極CL−1、CL−2間が同電位のため、白色表示媒体WHに動きがない。そのため、セル内の電極全てに電圧をかけることにより、右上段と比較して、一応、下段の方が表示ムラは少し縮小するものの、下段の左右を比較すると右下の状態は白色表示媒体WHを両側に偏在した状態とし、背面側の黒色表示媒体BLが見える状態に近付けるような処理がされていない。その結果、左右表示状態で濃淡の差を十分に抑制できておらず、観察者は表示ムラを感じてしまうことになる。
【0016】
このように、1対Nの形態でセルを形成した場合は、1画面表示後に表示全面に電圧を印加したとしても、隣り合う電極と電極の間の電位は等しいため、表示媒体(粒子群)に横方向での移動が生じない。その結果、電極と電極の間に白色表示媒体WHが残存して、表示時に発生したクロストークによる表示ムラ(濃淡)を抑制するのが困難となっている。これは従来における表示ムラ抑制の手法が、前後の基板間、すなわち情報表示用パネルの厚み方向で発生する表示濃淡を抑制するものであったのに対して、図8で指摘した1対N形態とした場合で問題としているのは、横方向(パネルの上下、或いは左右)で発生している濃淡であって、これはには従来の表示ムラ抑制手法で対処できていない。
【0017】
よって、本発明の主な目的は、上述した問題点を解消して、1つのセル内に複数の画素が設定されるパッシブ型の情報表示用パネルを備えた画像表示装置でも、発生したクロストークによる表示ムラを低減する駆動方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的は、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に隔壁により形成したセルを設け、帯電性粒子を含んだ粒子群として構成した表示媒体を前記セル内に封入し、前記基板のそれぞれに配置した電極に基づいて発生する電界に応じて前記表示媒体を前記基板間で移動させて情報を表示する情報表示用パネルを備えた画像表示装置の駆動方法であって、
前記情報表示用パネルが、一方の基板上で行方向に延在する複数本の電極からなる行電極及び他方の基板上で列方向に延在する複数本の電極からなる列電極を含んで形成されていると共に、前記行電極と前記列電極とが交差する位置の画素が前記セルの1個の内に複数存在するように設定されている場合に、
表示が終了した後、前記セル内で隣り合う第1の電極と第2の電極との間に、当該第1の電極側または当該第2の電極側へ、前記粒子群が移動するように作用する電圧を印加する、ことを特徴とする画像表示装置の駆動方法により達成できる。
【0019】
そして、前記第1の電極側を前記第2の電極側よりも高電位とし、その後に前記第2の電極側を前記第1の電極側よりも高電位とする電圧切り替えを1回の表示調整処理として、1〜1000回の範囲で繰り返し行うのが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本願発明によると、1つのセル内で隣接配置された第1の電極と第2の電極との間に、表示媒体(粒子群)が移動するように作用する電圧を印加できるので、第1、第2の電極間に存在する表示媒体を移動させてクロストーク発生が無かった部分の表示状態を、クロストークが発生した部分の表示状態に意図的に近付けることができる。これにより表示全体として濃淡の差を抑制して、見た目の表示ムラを低減させた情報表示用パネルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の駆動方法を適用できる画像表示装置が備える情報表示用パネルの構成例について示した図である。
【図2】本発明の画像表示装置の駆動方法を説明するために示した図である。
【図3】実施例として作製した画像表示装置の情報表示用パネルについて示した図である。
【図4】図3に示す情報表示用パネルを備えた画像表示装置を駆動して、実施した表示試験方法を説明するために示した図である。
【図5】従来手法による表示ムラ抑制効果と、本発明方法による表示ムラ抑制効果との差が確認できるようにまとめて示した図である。
【図6】課題を説明するため画像表示装置の情報表示用パネルのセルを拡大して示した図であり、(a)は1対1の形態で形成した画像表示装置の表示領域の一部を拡大して示した図であり、(b)は(a)内の一部領域AR内のセルを更に拡大して示した図である。
【図7】課題を説明するため画像表示装置の情報表示用パネルのセルを拡大して示した図であり、(a)は1対Nの形態で形成した画像表示装置の表示領域の一部を拡大して示した図であり、(b)は(a)内の一部領域AR内のセルを更に拡大して示した図である。
【図8】クロストークにより発生した濃淡の差を抑制するため、セル内の電極全面に意図的にクロストーク電圧を印加する従来の抑制手法を実施したときの様子を説明するために示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、さらに本発明の好適な実施形態を、図を参照して説明する。
本発明が適用できる画像表示装置が備える情報表示用パネルの一例である帯電性粒子を含んで粒子軍を表示媒体とする画像表示装置の基本構成について説明する。このような情報表示用パネルは、対向する2枚の基板間の空間に封入した帯電性粒子を含んだ粒子群として構成された表示媒体に電界が付与される。付与された電界方向に沿って、表示媒体となる粒子群が電界による力やクーロン力などによって引き寄せられ、粒子群が電界方向の変化によって移動することにより、画像等の情報表示がなされる。従って、粒子群が、均一に移動し、かつ、繰り返し表示情報を書き換える時、或いは表示情報を継続して表示する時の安定性を維持できるように、情報表示用パネルを設計する必要がある。ここで、表示媒体を構成する粒子にかかる力は、電界による力、粒子同士のクーロン力により引き付けあう力、電極や基板との電気鏡像力、分子間力、液架橋力、重力などが考えられる。
【0023】
情報表示用パネルの構成例を、図1(a)、(b)を参照して、詳細に説明する。
なお、図1(a)、(b)は、1対N(=4)形態のセルで形成される情報表示用パネルについて、1個のセルの部分を拡大して示している。この情報表示用パネルは、少なくとも光学的反射率および帯電性を有する粒子を含んだ粒子群として構成される互いに光学的反射率および帯電特性が異なる少なくとも2種類の表示媒体(ここでは負帯電性白色粒子3Waを含んだ粒子群として構成した白色表示媒体3Wと正帯電性黒色粒子3Baを含んだ粒子群として構成した黒色表示媒体3Bを示す)を、隔壁4で形成された各セルにおいて、基板1に設けた電極5(ここでは列電極とする)と基板2に設けた電極6(ここでは行電極とする)とが対向直交交差して形成する画素電極対の間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させる。そして、図1(a)に示すように白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色表示、あるいは、図1(b)に示すように黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色表示をする。
なお、情報表示用パネルで1対Nの形態を採用するのは、例えば次の理由による。情報表示用パネルの解像度が高い場合、1対1の形態では画素に対する隔壁の割合が大きくなり、表示領域の開口率が低下しまう。非表示領域である隔壁の線幅を細くすることで、開口率を向上させることはできるが、隔壁を細く形成することは技術的に限界がある。これに対処する技術が1対Nの形態であり、セルと画素との関係を1対Nにすることで、隔壁幅(線幅)を従来と同様にしたままで開口率を向上することができる。
【0024】
図1は、情報表示用パネルの一部として、1つのセル7を拡大して示している。そして、図1で例示している情報表示用パネルは、先に課題を指摘したのと同様の構成であり、1つのセル7内に第1の行電極6−1と第2の行電極6−1との2つ行電極が、所定の間隔をもって隣り合うように配設されている。第1の列電極5−1、第2の列電極5−1の2つの列電極についても、所定の間隔をもって隣り合うように配設されている。これにより、セル7内には4つの画素が存在している。
なお、図1(a)、(b)においては、作図の都合で、2つの列電極、第1の列電極5−1、第2の列電極5−2が重なった状態で図示される。また、手前にある隔壁4は省略している。各電極5、6は、各基板1、2の外側に設けても、基板の内側に設けても、基板内部に埋め込むように設けてもよい。
【0025】
以下では更に、図2を参照して、本発明の画像表示装置の駆動方法について説明する。図2は、発明の特徴が理解し易いようにするため、粒子の図示を省略しているが、図1と同様に1対4の形態のセル7に係る構成を示している図である。
本発明の駆動方法が適用される画像表示装置の情報表示用パネルは、隣り合って配置されている電極(図2では、基板2側に形成される第1の行電極6−1、第2の行電極6−2の場合を例示する)に、所望の電圧を印加できる構成を備えて形成してある。
そして、図2に例示するように、第1の行電極6−1、第2の行電極6−2に電圧を印加するためバッテリ等の電源10は、ドライバー12を介して接続されている。そして、このドライバー12を制御して第1の行電極6−1、第2の行電極6−2に印加する電圧を制御するコントローラ11を備えている。コントローラ11は、図示しない制御ICなどを含んで構成されており、ここに書き込まれたプログラムに基づいて、第1の行電極6−1、第2の行電極6−2に所望の電圧を印加できる。
【0026】
本発明の画像表示装置は、図2で示すような構成を備えており、所定の画像を表示後に印加するクロストーク電圧を全面に印加するのでなく、隣り合う電極と電極との(図2では第1の行電極6−1、第2の行電極6−2)間に、その間にある粒子を移動させるように作用する電界が生じるように電圧を印加する。具体的には、隣り合う第1の行電極6−1と第2の行電極6−2に対し、まず、第1の行電極6−1に電圧MV、第1の行電極6−2には0Vを印加する。更に、その後、第1の行電極6−1には0V、第2の行電極6−2に電圧MVを印加する。この1セットを1回の表示ムラの低減処理とし、必要に応じて1〜1000回の範囲で繰り返す。
なお、上記の所定電圧MVは、第1の行電極6−1と第2の行電極6−2との間に、滞留する粒子を横方向に移動できる電位であればよい。また、上記では他方の電位を0Vとしたがこれに限らない、両行電極6−1と行電極6−2間に一定上の電位差があって、粒子を横方向に移動できればよく、必ずしも他方の電位を0Vにする必要はない。
例えば、第1の行電極6−1に印加する電圧をV1、第2の行電極6−2に印加する電圧をV2としたとき、電圧差(V1−V2)が情報表示用パネルの書き換え電圧Vwより高くしたときに横方向への移動を行える。また、ここでの表示ムラ低減処理は、もちろん情報表示用パネルの一画面の表示が終了した後に行うようにしてもよいし、一画面の一部(例えば、表示画面を4分割したときなど1/4の区分)毎に、順次に表示ムラ低減処理を実行してもよい。
更に、ここでの例示は1セル内に4画素としたものであるが、3×3の9画素などとした場合も1セル内に存在する電極が増加するだけである。この場合も互いに隣接する電極間で粒子群の移動させる電位を発生させて、同様に処理できる。すなわち、この場合には3本目として、第3の電極が増加することになるが、第2の電極を間にして両側に第1の電極、第3の電極とし、この第1、第3の電極に同じ電圧を印加すれば前述したと同様に表示ムラ低減処理を行える。更に、電極数が増加する場合も同様であり、前述した第1の電極、第2の電極を順に増して対応すればよい。
【0027】
上記のように、1つのセル内で隣り合うように配置された第1の行電極6−1と第2の行電極6−2とに、所定電圧MVを切り替えて印加すると、このように隣接する電極間に位置していた表示媒体をその両側のいずれか(すなわち、第1の行電極6−1側、又は第2の行電極6−2側)に移動させてクロストーク発生が無かった部分の表示状態を、クロストークが発生した部分の表示状態に意図的に近付けることができる。先に示した図8を流用して説明すると、下段右側の表示状態を下段左側の表示状態に近付けることができる。よって、情報表示用パネルの表示状態を全体的として濃淡の差が抑制するよう調整し、視覚的に目立たないように、即ち、観察者が表示ムラを感じないようにできる。
なお、上記では第1の行電極6−1、第2の行電極6−2を、第1の電極と第2の電極とした場合を一例として説明したが、第1の列電極5−1、第2の列電極5−2を用いて同様にクロストークを制御できることは言うまでもない。
【0028】
(実施例)
更に本発明の実施例について説明する。図3は実施例として作製した画像表示装置の情報表示用パネルについて示した図である。この情報表示用パネルは、列:1200dot(画素)、行:1600dot(画素)により表示領域が形成されている。その1セルを拡大して示している。更に、その下にセルの側面図を示してある。ここで示すセルも1セルに4個の画素を含む1対4形態である。
具体的な情報表示用パネルの仕様は下記の通りとした
粒子種:黒色粒子(正に帯電)、白色粒子(負に帯電)
粒子径:約10μm
基板材料:ガラス
電極材料:ITO(インジウムスズ酸化物)
画素数:1600dot(列電極)×1200dot(行電極)
画素構成:セル:画素=1:4dot(2×2)
解像度:約150dpi
対向電極間距離:約40um(Yg)
隣接電極間距離:約15um(Xg)
【0029】
図4は、図3に示す情報表示用パネルを備えた画像表示装置を駆動して、実施した表示試験方法を説明するために示した図である。
図4上段に示すテストパターンを表示するように、情報表示用パネルを駆動した。その表示後、クロストークによる影響を低減すべく、下記2通りの電圧(クロストーク電圧)を印加した。
(1)クロストーク電圧の印加区別
a)従来手法に基づいて、全面にクロストーク電圧を印加した。
b)本発明法に基づいて、1セル内の第1の行電極6−1と第2の行電極6−2とにクロストーク電圧を交互に印加した。
(2)クロストーク電圧の繰り返し回数
0回、10回、50回、100回、500回
(3)表示評価
情報表示用パネルに表示された画像を、光学濃度ODを光学装置(Spectro Eye Gretag Macbeth 社製)測定し、濃淡の差(光学濃度差)ΔODを求めて、比較した。
その際、図4下段に示すようにスキャン方向で黒塗りの間で白表示となる箇所と、全て白表示となる箇所に測定点を設定して濃淡の差を評価した。上記ΔODはこれらの箇所のODを測定し、それらの差をとったものである。
光学濃度の測定箇所は、図4下段に丸印で示した2点とし、その光学濃度差(ΔOD)を求めた。この2点は、それぞれスキャン方向に対して途中に黒表示が入って白表示となる箇所(図中央の●)と黒表示が入らないで白表示となる箇所(図中左側の○)である。
【0030】
図5は、従来手法によるクロストークで発生した表示ムラ抑制効果と、本発明方法による表示ムラ抑制効果との差が確認できるようにまとめて示した図である。
図5から、従来手法では、電圧印加を500回繰り返しても、濃淡の差はほとんど変わらない。これに対し、発明の方法では電圧印加の繰り返し回数を増やすにつれて濃淡の差は小さくなり、この場合は、100回程度でクロストークで発生した濃淡差を抑制する効果が飽和して、500回まで繰り返しても濃淡の差について、視覚的にその差は少なく、この場合は100回程度、隣り合う電極に所定の電圧を交互に印加すると濃淡差を抑制できることが確認できた。
なお、情報の表示後に印加する電圧の繰り返す回数は、採用している粒子の帯電や粒子径など、また情報表示用パネルの骨格を形成する基板の材質や厚さ、ここに配置する電極の材質などで特定される構成により、好ましい電圧印加の繰り返し回数が異なると予想される。本発明者によると、繰り返し回数の範囲は1回〜1000回の範囲で、適宜に選択するのが適当と考えられる。なお、繰り返し回数が多くなり過ぎると、表示ムラ抑制のための処理に時間が掛り過ぎるということなって、情報表示用パネルの表示性能に好ましくない影響が出る場合があるので1000回程度を上限にするのが望ましい。
【0031】
以下、本願発明の対象となる画像表示装置の情報表示用パネルの各部材について説明する。
上記基板1、2としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフラレート(PEN)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂などのプラスチックやガラスが挙げられ、これらは透明である必要があるが、色を有してもよいし無色であってもよい。
背面側基板とするシート材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフラレート(PEN)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂などのプラスチックやガラスが挙げられ、これらは透明であってもよいし透明でなくてもよい。
【0032】
上記情報表示用パネルで情報表示をする領域(以下、情報表示画面領域)に対向して配置する画素を構成する電極や配線電極とする導電膜において、観察側の透明基板に設ける透明導電膜材料として、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛等の透明導電金属酸化物類を用いることができる。
情報表示画面領域に対向して配置する画素を構成する電極や配線電極とする導電膜において、背面側の基板に設ける透明導電膜材料としても、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛等の透明導電金属酸化物類を用いるのが一般的であるが、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、PEDOT:PSS(Poly(3,4-ethylenedioxythiophene)/Poly(Styrenesufonate))等の導電性高分子類や銅、アルミニウム、金、銀、ニッケル、亜鉛やそれらの合金などの金属を用いることもできる。
透明な導電膜として好適なITO等の金属酸化物系の導電性材料は、金属材料に比べて可とう性が小さい。観察側パネル基板の情報表示画面領域に設ける金属酸化物系の透明導電膜には、透明導電膜中での断線防止のため、金属細線と併用することが好ましい。特に、透明導電膜をライン状とする場合には、透明導電膜中で断線が発生しやすいのでその防止のため、金属細線と併用するのが好ましい。この金属細線の幅は、1μm〜10μmとすれば表示視認性の妨げとならないので好ましい。背面側パネル基板に設ける導電膜は光透過を考慮する必要がないので電気抵抗が小さく、可とう性にも優れた前記金属材料が好適に用いられる。また、背面側パネル基板に設ける導電膜の厚みは電気抵抗および生産性、コストの観点から0.01〜10μmに設計される。
【0033】
本発明の情報表示用パネルにおける基板と基板との間隔は、基板間に配置する表示媒体に応じて、通常10〜500μmの範囲で決められる。帯電性粒子を含んだ粒子群を表示媒体とする場合は、前記帯電粒子の平均粒子径が1〜20μmの範囲で用いるので、基板間隔は、10〜500μm、好ましくは10〜200μm、さらに好ましくは10〜100μmに調整される。
【0034】
情報表示用パネルの2枚のパネル基板間ギャップを確保するために設ける隔壁部分や、粒子群として構成した表示媒体を収納するセルを形成するために設ける隔壁部分を形成するときには、ドライフィルムレジスト材を用いたフォトリソグラフィー技術が好適に用いられる。一例として、アルフォNIT2(ニチゴーモートン社製)やPDF300(新日鐵化学社製)をドライフィルムレジスト材として使用することができる。これらのドライフィルムレジスト材に各種顔料を配合しておけば、所望の色の隔壁とすることができる。
パネル基板間ギャップ確保用の隔壁部分の幅は、20μm〜100μmの範囲とし、セル形成用の隔壁部分の幅は5μm〜30μmの範囲とすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の駆動方法の対象となる画像表示装置は、ノートパソコン、PDA、携帯電話、ハンディターミナル等のモバイル機器の表示部、電子ブック、電子新聞等の電子ペーパー、看板、ポスター、黒板等の掲示板、電卓、家電製品、自動車用品等の表示部、ポイントカード、ICカード等のカード表示部、電子広告、電子POP(Point Of Presence, Point Of Purchase advertising)、電子値札、電子楽譜、RF−ID機器の表示部などに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0036】
1、2 パネル基板
3 粒子群(表示媒体)
4 隔壁(リブ)
5 電極(列電極)
5−1 第1の列電極
5−2 第2の列電極
6 電極(行電極)
6−1 第1の行電極
6−2 第2の行電極
7 セル
10 電源
11 コントローラ
12 ドライバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に隔壁により形成したセルを設け、帯電性粒子を含んだ粒子群として構成した表示媒体を前記セル内に封入し、前記基板のそれぞれに配置した電極に基づいて発生する電界に応じて前記表示媒体を前記基板間で移動させて情報を表示する情報表示用パネルを備えた画像表示装置の駆動方法であって、
前記情報表示用パネルが、一方の基板上で行方向に延在する複数本の電極からなる行電極及び他方の基板上で列方向に延在する複数本の電極からなる列電極を含んで形成されていると共に、前記行電極と前記列電極とが交差する位置の画素が前記セルの1個の内に複数存在するように設定されている場合に、
表示が終了した後、前記セル内で隣り合う第1の電極と第2の電極との間に、当該第1の電極側または当該第2の電極側へ、前記粒子群が移動するように作用する電圧を印加する、ことを特徴とする画像表示装置の駆動方法。
【請求項2】
前記第1の電極側を前記第2の電極側よりも高電位とし、その後に前記第2の電極側を前記第1の電極側よりも高電位とする電圧切り替えを1回の表示調整処理として、1〜10000回の範囲で繰り返し行う、ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−203697(P2011−203697A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73656(P2010−73656)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】