説明

画像表示装置及びその製造方法

【課題】簡易な構成で放電の発生を抑制することのできる画像表示装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の画像表示装置は、複数の電子放出素子を有するリアプレートと、基板と、複数の電子放出素子にそれぞれ対向するように基板上に配列された複数の発光部材と、隣り合う発光部材の間に位置し、且つ、発光部材よりもリアプレート側に突出する隔壁部材と、複数の発光部材を覆うアノード電極と、アノード電極と間隔を置き、且つ、アノード電極の外周を囲むように配置された低電位電極と、を有するフェースプレートと、を有し、低電位電極に印加される電位がアノード電極に印加される電位よりも低い画像表示装置であって、アノード電極から離れ、且つ、低電位電極のアノード電極側の端部を覆う被覆部材を更に有し、被覆部材と隔壁部材は同一材料で構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の電子放出素子を有する画像表示装置の開発が行われている。そのような画像表示装置は、リアプレート、フェースプレート、フェースプレートとリアプレートを対向させた状態で固定するための枠などを有する。リアプレートは複数の電子放出素子などを有する。フェースプレートは、複数の電子放出素子にそれぞれ対抗するように配置された複数の発光部材、複数の発光部材を覆うアノード電極などを有する。そして、フェースプレートとリアプレートの間(具体的には、電子放出素子とアノード電極の間)に高電圧を印加することにより、電子放出素子から放出された電子を加速させ、発光部材に衝突させる。それにより、発光部材が発光し、画像が表示される。
【0003】
このような画像表示装置では、高輝度且つ高精細な画像を得るためにフェースプレートとリアプレートの間隔は1mmから10mmに維持される。そして、そのような狭い間隔に高電圧が印加されるため、フェースプレートと枠との接着部分などの電界が集中しやすい箇所で、放電が生じるという問題があった。具体的には、アノード電極と接着に用いた接着剤の予期せぬ形状部分(突起部分)との間で放電が生じるという問題があった。このような放電が生じると、表示画像の乱れや電子放出素子、電子放出素子の駆動回路などの破壊などを招く虞がある。
【0004】
そのような放電を抑制するための従来技術として、アノード電極と間隔を置き、且つ、アノード電極の外周を囲むように配置された低電位電極を有する画像表示装置がある。この画像表示装置では、低電位電極に印加する電位をアノード電極に印加する電位よりも低くすることにより、低電位電極よりも外側(枠側)に生じる電界を弱めることができる。即ち、電位シールドとして機能する低電位電極を有する画像表示装置がある。
【0005】
このような低電位電極を設けることにより、アノード電極と上記接着部分の間の放電の発生を抑制できる。しかしながら、アノード電極と低電位電極の間(数mmという短い距離)に強電界が形成されるため、アノード電極と低電位電極の間で放電が生じるという問題があった。
【0006】
そのような問題に鑑みた従来技術は、例えば、特許文献1に開示されている。具体的には、特許文献1には、低電位電極のアノード電極側の端部を覆う高抵抗の部材を有する画像表示装置が開示されている。このような構成にすることにより、万が一低電位電極から電子が放出したとしても、電子は高抵抗の部材を介して移動するため、放電の発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−059638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示の画像表示装置では、上述した高抵抗の部材を別途設ける必要があるため、製造工程が煩雑となり、高コスト化してしまうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、簡易な構成で放電の発生を抑制することのできる画像表示装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明の画像表示装置は、複数の電子放出素子を有するリアプレートと、基板と、前記複数の電子放出素子にそれぞれ対向するように前記基板上に配列された複数の発光部材と、隣り合う発光部材の間に位置し、且つ、発光部材よりも前記リアプレート側に突出する隔壁部材と、前記複数の発光部材を覆うアノード電極と、前記アノード電極と間隔を置き、且つ、前記アノード電極の外周を囲むように配置された低電位電極と、を有するフェースプレートと、を有し、前記低電位電極に印加される電位が前記アノード電極に印加される電位よりも低い画像表示装置であって、前記アノード電極から離れ、且つ、前記低電位電極の前記アノード電極側の端部を覆う被覆部材を更に有し、前記被覆部材と前記隔壁部材は同一材料で構成されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の画像表示装置の製造方法は、複数の電子放出素子を有するリアプレートを形成するステップと、基板と、前記複数の電子放出素子にそれぞれ対向するように前記基板上に配列された複数の発光部材と、隣り合う発光部材の間に位置し、且つ、発光部材よりも前記リアプレート側に突出する隔壁部材と、前記複数の発光部材を覆うアノード電極と、前記アノード電極と間隔を置き、且つ、前記アノード電極の外周を囲むように配置された低電位電極と、前記アノード電極から離れ、且つ、前記低電位電極の前記アノード電極側の端部を覆う被覆部材と、を有するフェースプレートを形成するステップと、を有する画像表示装置の製造方法であって、前記被覆部材と前記隔壁部材は同一材料且つ同一プロセスで形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易な構成で放電の発生を抑制することのできる画像表示装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係るフェースプレートの構成を示す図。
【図2】本実施形態に係る被覆部材の形状を示す図。
【図3】実施例1〜3に係るフェースプレートの構成を示す図。
【図4】本実施形態に係る画像表示装置の基本的な構成を示す図。
【図5】実施例1に係る被覆部材の形状を示す図。
【図6】実施例2に係る被覆部材の形状を示す図。
【図7】実施例3に係る被覆部材の形状を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態に係る画像表示装置及びその製造方法について説明する。本実施形態に係るの画像表示装置は、複数の電子放出素子を有する。電子放出素子は、例えば、表面伝導型電子放出素子、スピント型電子放出素子、MIM型電子放出素子、カーボンナノチューブを用いた電子放出素子、BSD電子放出素子等がある。
【0015】
本実施形態に係る画像表示装置の基本的な構成について、図4を用いて説明する。図4は本実施形態に係る画像表示装置の断面図である。本実施例では、断面図では、表示面(画像が表示される面)に対して垂直な平面によって得られる断面を示すものとする。
【0016】
本実施形態に係る画像表示装置は、複数の電子放出素子を有するリアプレート18と、リアプレート18に対向するフェースプレート19とを有する。リアプレート18の周縁
部とフェースプレート19の周縁部は枠部11に固定され、リアプレート18、フェースプレート19、および、枠部11により外囲器が構成される。リアプレート18には、電子放出素子の他に、電子放出素子を駆動するための電極や配線が設けられている。また、外囲器内は真空に保たれるため、リアプレート18とフェースプレート19の間には、一般に、耐大気圧構造体(リブ)として(板状や柱状の)スペーサ7が設けられる。
【0017】
以下、フェースプレート19の構成について、図1(a)〜(c)を用いて説明する。図1(a)はフェースプレートの上面図(リアプレート側から見たフェースプレートを示す図)であり、図1(b),(c)は、それぞれ、図1(a)の破線A−A’付近を拡大した上面図、断面図である。
【0018】
フェースプレート19は、基板5、不図示の複数の発光部材(蛍光体など)、不図示の隔壁部材、アノード電極1、低電位電極2、被覆部材4などを有する。複数の発光部材は複数の電子放出素子にそれぞれ対向するように基板上に配列されている。
【0019】
隔壁部材は隣り合う発光部材の間に位置し、且つ、発光部材よりもリアプレート側に突出している。それにより、ハレーション発光(ハレーション現象)を低減することができる。ハレーション発光とは、電子が本来照射される発光部材に反射(弾性散乱)し、隣接する発光部材に照射されることにより生じる、意図しない発光のことである。このような発光は画像のにじみ(ぼやけ)をもたらす。そのため、一般に隔壁部材は十分な高さを有する。
【0020】
アノード電極1は複数の発光部材を覆う。低電位電極2(GND部;ガードリング電極)はアノード電極1と間隔(ギャップ部3)を置き、且つ、アノード電極1の外周を囲むように配置されている。被覆部材4(絶縁膜;高耐圧構造物)はアノード電極1から離れ、且つ、低電位電極2のアノード電極側の端部を覆う。ギャップ部3の幅は、好ましくは0.5mm以上10mm以下、さらに好ましくは1mm以上5mm以下に設定される。
【0021】
上述したような画像表示装置では、アノード電極1と電子放出素子の間に高電圧を印加する(アノード電極1に高電位を印加する)ことにより、電子放出素子から放出された電子を加速させ、発光部材に衝突させる。それにより、発光部材が発光し、画像が表示される。
【0022】
また、本実施形態に係る画像表示装置では低電位電極2および被覆部材4を設けることにより、特許文献1に開示の画像表示装置と同様に放電の発生を抑制することができる。即ち、低電位電極2を設けることにより、フェースプレート19と枠部11との固定部分などと、アノード電極1との間の放電の発生を抑制できる。また、被覆部材4を設けることにより、アノード電極1と低電位電極2の間の放電の発生を抑制することができる。なお、低電位電極2にはアノード電極1に印加される電位よりも低い電位(一般にはGND電位)が印加される。具体的には、アノード電極1と低電位電極2の間の電位差(ギャップ)は、通常、10kV/mm以下となることが好ましい。
【0023】
本実施形態では、被覆部材4と隔壁部材を同一材料で構成する。被覆部材4及び隔壁部材の材料は、例えば、硼珪酸ガラス、ビスマス系フリットガラスなどである。なお、隔壁部材の高さは50μm〜400μm程度、幅は50μm〜2000μm程度が望ましいが、この限りではない。被覆部材4と隔壁部材を同一材料で構成することにより、両部材を同一プロセスで形成することが可能となる。
【0024】
次に、被覆部材4の形状について図2(a)〜(c)を用いて説明する。図2(a)〜(c)は、いずれもフェースプレートの一部を拡大した上面図である。
図2(a)に示す形状には、低電位電極2とアノード電極1の間に被覆部材4が存在しない箇所がある。そのような箇所では放電が発生し易いため、図2(a)の形状は好ましくない。即ち、低電位電極2とアノード電極1の間には被覆部材が存在していることが望ましい。
【0025】
一方、図2(b),(c)に示す形状は、低電位電極2のアノード電極1側の端部が完全に覆われているため、図2(a)の形状よりも好ましい。また、図2(b),(c)の例では、被覆部材4に溝や凹部が設けられている。具体的には、図2(b)の例(溝を設けた例)では、低電位電極2は複数の環状部材で構成されている。図2(c)の例(凹部を設けた例)では、低電位電極2に複数の開口が設けられている。
【0026】
このような構成にすることにより、応力集中を緩和し、機械強度を向上することができる(溝や凹部を設けない場合には、被覆部材4の形成時(焼成時)に発生する応力によって、破壊や剥がれが生じる虞がある)。特に、図2(c)に示すような形状は、図2(b)に示す形状に比べ、機械強度や耐電圧性が高く、かつ剥離し難い形状であるため、好ましい。但し、開口によって低電位電極の端部が露出しないことが望ましい。なお、被覆部材4は、放電の発生を抑制でき且つ十分な機械強度を有していれば、溝や凹部を有していなくてもよい。
【0027】
なお、図2(b),(c)のような形状の場合に、溝や凹部の幅は、被覆部材4の全体の幅(低電位電極2側の端部からアノード電極1側の端部までの幅)に対して15%〜85%の大きさであることが好ましい。また、開口間の幅方向の距離は約50μmより大きいことが好ましい。即ち、溝や凹部によって低電位電極2やギャップ部3(基板5)を露出させる場合には、これらの条件を満たすように被覆部材4を形成することが好ましい。それにより、機械強度や耐電圧性に優れた被覆部材4を形成することができる。なお、開口間の幅方向以外の距離は、電気的な好適値は無く、破壊が生じない程度の機械強度を得ることができれば、どのような値であってもよい。
【0028】
<実施例>
以下、本実施形態に係る画像表示装置の具体的な実施例(実施例1〜3)について説明する。但し、本発明は実施例1〜3の形態に限定されるものではなく、必要に応じて各部材の形成方法、サイズ、材料、形状などが決定される。
【0029】
(実施例1)
以下、本実施例に係る画像表示装置の製造方法について図3(発光部材及び隔壁部材を通り、且つ、表示面に垂直な平面によって得られる、フェースプレートの断面の一例)を用いて説明する。なお、複数の電子放出素子を有するリアプレートを形成する工程については、従来提案されている種々の方法を適用すればよいため、説明を省略し、以下ではフェースプレートを形成する工程について詳しく説明する。なお、本実施例では複数の電子放出素子がリアプレート上にマトリクス配列されているものとする。
【0030】
まず、基板5として、厚さ1.8mmの硝子基板(PD200:旭硝子株式会社製)を用意した。そして、基板5の1面(リアプレートと対向させる側の面;基板面)に低電位電極2とブラックマトリクス12を兼ねる導電性の材料(塗布材料)を印刷法により塗布した。塗布材料として、導電性の材料(または絶縁性の材料に導電性の材料を混合したもの)を用いることにより、当該材料を低電位電極2としても利用できる。具体的には、塗布材料として導電体の黒色顔料である酸化コバルトCoを使用した。なお、低電位電極2とブラックマトリクス12は異なる材料であってもよく、その場合にはブラックマトリクス12は絶縁性の材料であってもよい。
【0031】
次に、フォトプロセスによって、発光部材を設ける部分の塗布材料を除去した。それにより、複数の開口が形成された(各開口は1画素に相当する)。なお、本実施例では複数の電子放出素子がマトリクス配置されているため、複数の開口もマトリクス状に配列される(複数の開口の位置と複数の電子放出素子の位置がそれぞれ対応するように複数の開口が形成される)。
【0032】
またこの時、アノード電極1と低電位電極2の間の間隔(ギャップ部3)に対応する部分の塗布材料も除去した。それにより、(後に形成される)アノード電極1と低電位電極2が電気的に独立された(導通されなくなった)。そして、170℃で塗布材料を焼成した。以上のプロセスにより、ブラックマトリクス12と低電位電極2が形成された。なお、本実施例ではギャップ部3の幅を約4mmとした。
【0033】
次に、発光部材間(具体的には、上記形成されたブラックマトリクス12の開口間)に隔壁部材8を形成した。具体的には、スリットコータにて、ブラックマトリクス12上に均一にペースト材を塗布した。その後、フォトプロセスにて、開口間に位置し、且つ、1画素間隔で表示面の1方向(上下方向、左右方法など)に平行なストライプ形状にペースト材をパターニングした。そして、580℃でペースト材を焼成することにより隔壁部材8が形成された。本実施例では、隔壁部材8の材料として、酸化ビスマス系の絶縁ペーストを使用した。また、焼成後の隔壁部材8の高さを200μmとした。
【0034】
また、この隔壁部材8を形成する際に(即ち、隔壁部材8を形成するプロセスと同一のプロセスで)、被覆部材4を隔壁部材8と同一材料で形成した。本実施例では、被覆部材4の形状を図5のような長さ方向(低電位電極2の端部に沿った方向)に並んだ複数の開口を有する形状(格子形状;ワッフル形状)とした。なお、図5(a),(b)はそれぞれ被覆部材4の一部を拡大した上面図、断面図である。また、9d(被覆部材4の高さ)は隔壁部材8と同じ200μmとした。9a(開口の幅)を500μm、9b(開口位置の被覆部材4の一方の幅)を500μm、9c(開口位置の被覆部材4の他方の幅)を500μmとした(即ち、被覆部材の全体の幅は1500μmである)。また、図5の9e(長さ方向に隣接する開口の間隔)を50μmとした。
【0035】
次に、ブラックマトリクス12の開口内(互いに隣接する隔壁部材8間)に、Red/Green/Blueの3色(1開口あたり1色)のカラーフィルタ13を形成した。具体的には、Red用の材料としてFe、Green用の材料としてCo(AlCr)と(CoNiZn)TiO、Blue用の材料としてAl・CoOを使用した。それらの材料をディスペンスにて塗布し、塗布したそれらの材料を500℃で焼成することによりカラーフィルタ13を形成した。本実施例では、同じ列には同じ色、且つ、3列で3色になるようにカラーフィルタ13を形成した。但し、カラーフィルタ13の配置はこれに限らず適宜変更してもよい。
【0036】
次に、カラーフィルタ13上にRed/Green/Blueの3色(1開口あたり1色)の発光部材14を形成した(カラーフィルタ13のそれぞれに、対応する色(同じ色)の発光部材14を形成した)。具体的には、Red用の材料としてはYS:Eu、Green用の材料としてSrGa:Eu、Blue用の材料としてZnS:Ag,Alを使用した。それらの材料をディスペンスにて塗布し、塗布したそれらの材料を乾燥し、500℃で焼成することにより発光部材14を形成した。
なお、カラーフィルタ13の膜厚はRed/Green/Blueともに0.5μm〜3μm程度とした。発光部材14の膜厚はRed/Green/Blueともに7μm〜15μm程度とした。
【0037】
そして、珪酸アルカリ、いわゆる水ガラスの入った溶液を基板面に均一にスプレー塗布
し、基板面を170℃で乾燥させた。それにより、発光部材14を基板5に接着させた。
発光部材14の接着後、エチルセルロース樹脂とブチルカルビトールアセテートを混ぜたペーストを発光部材14の表面に塗布し、該表面を170℃で乾燥させた。それにより、発光部材14の粒子の隙間がペーストで埋まり、発光部材14の表面が平坦化された。
【0038】
次に、隔壁部材8上に抵抗部材16を形成した。具体的には、抵抗部材16の材料としてATOコートTiOとビスマス系フリットガラスの混合物を使用した。当該材料を印刷法により塗布した後、フォトプロセスによるパターニングを行った。そして、パターニングによって隔壁部材8上に残された材料を170℃で焼成することにより抵抗部材16を形成した。
【0039】
次に、電子放出素子から放出された電子を加速させるための(発光部材14の電子の取り出し効率を向上させるための)、金属膜(メタルバック15)を発光部材14上(互いに隣接する隔壁部材8間)に形成した。そして、抵抗部材16とメタルバック15とを電気的に接続させることで、抵抗部材16とメタルバック15とからなるアノード電極1を形成した。具体的には、ラミネータ装置を用いて、基板面全体にドライフィルムレジスト(DFR)を貼り付けた。そして、露光用クロムマスクを所定の位置に位置あわせをしてDFRをパターン露光した。次に、蒸着機にてAlを厚み120nm程度になるまで蒸着した。そして、現像、リンス処理を経てメタルバック15を形成した。
【0040】
なお、本実施例では、アノード電極1が抵抗部材16とメタルバック15から成るものとしたが、メタルバック15の構成はこれに限らない。例えば、メタルバック15を分割しない(即ち、1枚とする)場合には、メタルバック15がアノード電極となる。メタルバック15が複数に分割されている場合には、抵抗部材16以外の部材で電気的に接続してもよい。
【0041】
以上の工程を経て、本実施例に係るフェースプレートが形成された。そして、フェースプレート、リアプレート、及び、枠部から外囲器を形成し、本実施例に係る画像表示装置が作製された。
【0042】
本実施例に係る画像表示装置において、アノード電極1と電子放出素子との間にVa=10kVの電圧を印加した。その結果、アノード電極1と低電位電極2との間の放電は発生せず、画像表示装置として問題なく画像(映像)を表示させることができた。
また、輝度を高めるために、Va=12kVの電圧を印加し、1時間程度駆動させた場合においても、放電は発生せず、上述した効果の持続性が確認された。
【0043】
(実施例2)
次に、実施例2に係る画像表示装置について説明する。なお、基本的な構成や製造方法は実施例1と同様のため、説明は省略する。本実施例では、被覆部材4の形状が実施例1と異なる。具体的には、本実施例では、被覆部材4を図6に示すように溝や凹部を有さない帯状の形状とした。なお、図6(a),(b)はそれぞれ被覆部材4の一部を拡大した上面図、断面図である。被覆部材4の高さ10bを200μmとした。被覆部材4の全体の幅10aを1500μmとした。
【0044】
そして、作製された本実施例に係る画像表示装置において、アノード電極1と電子放出素子との間にVa=12kVの電圧を印加した。その結果、1時間程度駆動させた場合においても、放電は発生せず、実施例1と同様の効果が得られた。
【0045】
(実施例3)
次に、実施例3に係る画像表示装置について説明する。なお、基本的な構成や製造方法
は実施例1,2と同様のため、説明は省略する。本実施例では、被覆部材4の形状が実施例1,2と異なる。具体的には、本実施例では、被覆部材4を図7に示すように2つの環状部材で構成されるものとした。なお、図7(a),(b)はそれぞれ被覆部材4の一部を拡大した上面図、断面図である。被覆部材4の高さ11bは200μmとした。2つの環状部材間の幅11dを500μm、一方の環状部材の幅11cを500μm、他方の環状部材の幅11eを500μmとした(即ち、被覆部材の全体の幅は1500μmである)。
【0046】
そして、作製された本実施例に係る画像表示装置において、アノード電極1と電子放出素子との間にVa=12kVの電圧を印加した。その結果、1時間程度駆動させた場合においても、放電は発生せず、実施例1と同様の効果が得られた。
【0047】
以上述べたように、本実施形態に係る画像表示装置によれば、被覆部材を、隔壁部材と同一材料で構成するという簡易な構成で、放電の発生を抑制することができる。具体的には、同一材料で構成することにより、被覆部材と隔壁部材を同一プロセスで形成することが可能となる。それにより、新たなプロセスを追加することなく、低コストで耐電圧性に優れた画像表示装置を作製することができる。特に、被覆部材と隔壁部材をフォトプロセスにて形成する場合には、コストを増加させずに被覆部材を形成することができる。
【0048】
また、隔壁部材は、ハレーション発光を低減するための部材であるため、十分な高さを有する。実施例1〜3では、被覆部材と隔壁部材の高さを等しくしているため、被覆部材の体積(特に高さ)を十分に得ることができ、アノード電極と低電位電極との間の沿面耐圧を向上させることができる。さらに、そのような構成にすることにより、低電位電極からの放出された電子を確実に抑制できる。その結果、耐電圧性を従来よりも向上させることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 アノード電極
2 低電位電極
3 ギャップ部
4 被覆部材
5 基板
8 隔壁部材
14 発光部材
18 リアプレート
19 フェースプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子放出素子を有するリアプレートと、
基板と、前記複数の電子放出素子にそれぞれ対向するように前記基板上に配列された複数の発光部材と、隣り合う発光部材の間に位置し、且つ、発光部材よりも前記リアプレート側に突出する隔壁部材と、前記複数の発光部材を覆うアノード電極と、前記アノード電極と間隔を置き、且つ、前記アノード電極の外周を囲むように配置された低電位電極と、を有するフェースプレートと、
を有し、
前記低電位電極に印加される電位が前記アノード電極に印加される電位よりも低い
画像表示装置であって、
前記アノード電極から離れ、且つ、前記低電位電極の前記アノード電極側の端部を覆う被覆部材を更に有し、
前記被覆部材と前記隔壁部材は同一材料で構成される
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記被覆部材と前記隔壁部材は同一プロセスで形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記被覆部材と前記隔壁部材は同じ高さを有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記被覆部材は、溝または凹部を有する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
複数の電子放出素子を有するリアプレートを形成するステップと、
基板と、前記複数の電子放出素子にそれぞれ対向するように前記基板上に配列された複数の発光部材と、隣り合う発光部材の間に位置し、且つ、発光部材よりも前記リアプレート側に突出する隔壁部材と、前記複数の発光部材を覆うアノード電極と、前記アノード電極と間隔を置き、且つ、前記アノード電極の外周を囲むように配置された低電位電極と、前記アノード電極から離れ、且つ、前記低電位電極の前記アノード電極側の端部を覆う被覆部材と、を有するフェースプレートを形成するステップと、
を有する画像表示装置の製造方法であって、
前記被覆部材と前記隔壁部材は同一材料且つ同一プロセスで形成される
ことを特徴とする画像表示装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−244830(P2010−244830A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91855(P2009−91855)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】