説明

画像表示装置用表示粒子および画像表示装置

【課題】繰り返しの駆動時であっても初期の優れたコントラストを十分に維持でき、しかも安定的かつ簡便に製造できる表示粒子を提供すること。
【解決手段】少なくとも一方が透明な2枚の基板11,12間に表示粒子21,22を粉体形態で封入し、該基板間に電界を発生させることによって、該表示粒子を移動させて画像を表示する画像表示装置10に用いられる表示粒子であって、表示粒子が、少なくとも結着樹脂および着色剤を非水溶性有機溶媒中に溶解または分散せしめた樹脂溶液を水系媒体中に分散させた後、分散液から非水溶性有機溶媒を除去することにより製造されてなることを特徴とする表示粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
表示粒子を電界中で移動させることにより、画像の表示および消去を繰り返し実行できる画像表示装置、該画像表示装置に用いられる表示粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、表示粒子を気相中で移動させて画像を表示する画像表示装置が知られている。画像表示装置は、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に表示粒子が粉体形態で封入されてなり、該基板間に電界を発生させることによって、表示粒子を一方の基板に移動・付着させて画像を表示するものである。そのような画像表示装置の駆動の際には、基板間に電圧を印加して電界を発生させ、当該電界方向に沿って表示粒子が移動するため、電界方向を適宜選択することによって画像の表示および消去を繰り返し実行できる。表示粒子としては、結着樹脂中に着色剤等の添加剤が分散されてなる樹脂粒子が一般的である。
【0003】
そのような表示粒子の製造方法としては、結着樹脂および着色剤を混練し、ペレットとした後、粉砕・分級操作を行って所望の粒径の粒子を得る粉砕法、および着色剤を分散した重合性単量体の油滴を水系媒体中に形成し、次いで重合を行うことで粒子を得る懸濁重合法(特許文献1)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−4471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、粉砕法で得られた表示粒子は粒子表面に着色剤が露出しやすく、露出した着色剤がリーク点となり、帯電保持能が悪いため、繰り返しの駆動時において画像部と非画像部とのコントラストが低下する、という問題があった。また粉砕法では、目的の粒径の粒子を得るために、繰返し粉砕を行う必要があるなど、工程が複雑であった。
【0006】
一方、懸濁重合法では比較的容易に狙いの粒径の粒子が得られるが、高コントラストの画像を得るために、粒子中の着色剤充填量を増やそうとした場合には、高濃度の着色剤を単量体中に均一に分散・保持する必要があった。そのため、着色剤を含む単量体が高粘度となり安定的に油滴を形成するのが困難であった。すなわち、懸濁重合法では、高コントラストの画像を表示する表示粒子を簡便に得ることはできない、という問題があった。
【0007】
表示粒子としては、黒色、白色、赤色、青色および黄色等の各色の表示粒子が知られている。特に、黒色以外の表示粒子を製造する場合において、粉砕法におけるコントラスト耐久性の問題および懸濁重合法における製造安定性の問題が顕著に発生した。黒色以外の着色剤は表示粒子に対する着色性が比較的低く、黒色以外の表示粒子は、黒色表示粒子と比較して、多量の着色剤を含有させる必要があるためである。
【0008】
本発明は、繰り返しの駆動時であっても初期の優れたコントラストを十分に維持でき、しかも安定的かつ簡便に製造できる表示粒子およびその製造方法、ならびに該表示粒子を備えた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に表示粒子を粉体形態で封入し、該基板間に電界を発生させることによって、該表示粒子を移動させて画像を表示する画像表示装置に用いられる表示粒子であって、
表示粒子が、少なくとも結着樹脂および着色剤を非水溶性有機溶媒中に溶解または分散せしめた樹脂溶液を水系媒体中に分散させた後、分散液から非水溶性有機溶媒を除去することにより製造されてなることを特徴とする表示粒子に関する。
【0010】
本発明はまた、表示粒子が正帯電性表示粒子および負帯電性表示粒子を含み、正帯電性表示粒子または負帯電性表示粒子の少なくとも一方が上記表示粒子である画像表示装置に関する。
【0011】
本発明はまた、少なくとも結着樹脂および着色剤を非水溶性有機溶媒中に溶解または分散せしめた樹脂溶液を水系媒体中に分散させた後、分散液から非水溶性有機溶媒を除去することを特徴とする表示粒子の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る表示粒子は、所定の樹脂溶液分散法により製造されるので、着色剤を比較的多量で含有させても、安定的かつ簡便に製造できる。そのため、本発明に係る表示粒子は着色度が十分に優れている。そのような着色度の向上効果は、従来において着色剤を比較的多量で含有させた場合にコントラスト耐久性および製造安定性の問題を引き起こす、黒色以外の表示粒子、例えば、白色、赤色、青色、黄色、橙色、紫色および緑色の表示粒子において特に有効である。しかも、本発明に係る表示粒子は、所定の樹脂溶液分散法により製造されるので、粒子表面での着色剤の露出が抑制される。それらの結果、繰り返しの駆動時であっても初期の優れたコントラストを十分に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】画像表示装置の断面構成の一例を示す概略図である。
【図2】基体間への電圧印加による表示粒子の移動の例を示す模式図である。
【図3】基体間への電圧印加による表示粒子の移動の例を示す模式図である。
【図4】画像表示面の形状例を示す模式図である。
【図5】表示粒子の封入方法の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<画像表示装置用表示粒子>
本発明に係る画像表示装置用表示粒子(以下、単に表示粒子という)は、以下に詳しく説明する樹脂溶液分散法によって製造されたものである。
【0015】
樹脂溶液分散法は、少なくとも結着樹脂および着色剤を非水溶性有機溶媒中に溶解または分散せしめた樹脂溶液を水系媒体中に分散させた後、分散液から非水溶性有機溶媒を除去することを特徴とする。そのような樹脂溶液分散法では、樹脂溶液中の非水溶性溶媒の量を調整することで、分散液における油滴中の着色剤濃度を変えずに、最終的な樹脂粒子中に含まれる着色剤濃度を調整できる。例えば、樹脂溶液中において着色剤とともに非水溶性溶媒の量を増やすことで、分散液における油滴中の着色剤濃度を変えずに、最終的な樹脂粒子中に含まれる着色剤濃度を増やすことができる。そのため、高着色剤濃度の表示粒子製造時であっても、樹脂溶液中での着色剤の分散および分散液中での油滴形成が容易かつ安定的に行える。その結果、着色度が十分に高い表示粒子が得られる。一方で、樹脂溶液分散法を用いると、表示粒子表面での着色剤の露出が抑制されるので、繰り返しの駆動時であっても初期の優れたコントラストを十分に維持できる。
【0016】
本発明に係る表示粒子の製造方法において採用する樹脂溶液分散法の一実施形態について説明する。本実施形態による表示粒子の製造方法は、樹脂溶液調製工程、水系媒体調製工程、樹脂溶液分散工程、および非水溶性有機溶媒除去工程を含むものであり、通常はさらに分散剤除去工程、分離・洗浄・乾燥工程を含む。これらの工程は通常、記載の順序で行われるが、樹脂溶液調製工程および水系媒体調製工程は、いずれを先に行なってもよい。
【0017】
[樹脂溶液調製工程]
樹脂溶液調製工程では、少なくとも結着樹脂および着色剤を含む樹脂混合物と、結着樹脂が溶解可能な非水溶性有機溶媒とを含む樹脂溶液を調製する。ここで、樹脂溶液とは、少なくとも結着樹脂が非水溶性有機溶媒中に溶解され、他の成分が非水溶性有機溶媒中に溶解または分散されたものである。
【0018】
結着樹脂としては、用いる非水溶性有機溶媒に溶解可能なものであれば特に制限されず、表示粒子の結着樹脂として使用される公知の合成樹脂などを使用することができ、たとえば、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、あるいはスチレンとアクリルの共重合体であるスチレン-アクリル樹脂などが挙げられる。また、用いる非水溶性有機溶媒に対する溶解性に乏しい樹脂であっても、その有機溶媒に溶解可能な樹脂と併用する場合には使用することができる。これらの中でも、得られる表示粒子の帯電制御性を考慮すると、スチレン-アクリル樹脂が好ましい。
【0019】
ポリエステル樹脂としては、特に制限されず公知のものを使用でき、たとえば、多塩基酸と多価アルコールとの縮重合物が挙げられる。ここで、多塩基酸としては、ポリエステル樹脂のモノマーとして常用されるものを使用でき、たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、琥珀酸、アルケニル無水琥珀酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類などが挙げられる。多塩基酸は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0020】
多価アルコールとしても、ポリエステル樹脂のモノマーとして常用されるものを使用でき、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式多価アルコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族系ジオール類などが挙げられる。ここで、ビスフェノールAとは、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパンのことである。多価アルコールは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0021】
エポキシ樹脂としても特に制限されず、公知のものを使用でき、たとえば、ビスフェノールAとエピクロヒドリンとから合成されるビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールとホルムアルデヒドとの反応生成物であるフェノールノボラックと、エピクロルヒドリンとから合成されるフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールとホルムアルデヒドとの反応生成物であるクレゾールノボラックと、エピクロルヒドリンとから合成されるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0022】
アクリル樹脂としても特に制限されず、公知のものを使用でき、たとえば、アクリル系モノマー同士またはアクリル系モノマーとビニル系モノマーとの重縮合物が挙げられる。アクリル系モノマーとしては、アクリル樹脂のモノマーとして常用されるものを使用でき、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシルなどのアクリル酸エステル系単量体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシルなどのメタクリル酸エステル系単量体などが挙げられる。これらのアクリル系モノマーは、置換基を有してもよく、置換基を有するアクリル系モノマーとしては、たとえば、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシル基を有するアクリル酸エステル系またはメタクリル酸エステル系単量体などが挙げられる。アクリル系モノマーは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0023】
ポリスチレン樹脂としても、特に制限されず、公知のものを使用でき、たとえば、スチレン系モノマー同士またはスチレン系モノマーとビニル系モノマーとの重縮合物が挙げられる。スチレン系モノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、ジエチルスチレン等のアルキルスチレン、クロロスチレン等のハロゲン化スチレンなどを用いることができる。スチレン系モノマーは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用してもよい。
【0024】
スチレン−アクリル樹脂としても、特に制限されず、上記アクリル系モノマーの1種または2種以上と、上記のスチレン系モノマーの1種または2種以上との共重合物が挙げられる。例えば、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体が挙げられる。スチレン−アクリル樹脂は、ラジカル開始剤の存在下に、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などで重合させることによって製造することができる。
【0025】
結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に制限されず、広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上である。結着樹脂のガラス転移温度(Tg)が60℃を著しく下回ると、表示粒子が画像表示装置の内部で熱凝集を起こし、表示画像のコントラストが低下する可能性がある。
【0026】
結着樹脂の分子量は、特に制限されず、広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは重量平均分子量が5000〜500,000であり、より好ましくは10000〜300,000以上である。結着樹脂の重量平均分子量が5000を著しく下回ると、その機械的強度が表示粒子用の結着樹脂に必要な機械的強度よりも低くなり、表示粒子の形状が装置内部で変化し、駆動特性が変化するおそれがある。一方、樹脂の重量平均分子量が500,000を大きく上回ると、製造過程において非水溶性有機溶媒中への溶解が困難になる、あるいは溶液が高粘度になることで、粒子作製に支障をきたす。結着樹脂の重量平均分子量は溶解性の観点から20万以下が好ましい。
【0027】
結着樹脂は、1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。また同一種の樹脂であっても、分子量、単量体組成などのいずれかまたは複数が異なる樹脂を複数種併用することができる。
【0028】
結着樹脂と混合する着色剤としては、表示粒子用着色剤として用いられる公知の有機系染料、有機系顔料、無機系染料、無機系顔料などをいずれも使用できる。着色剤の具体例としては、以下の各色の着色剤が挙げられる。なお、以下において、C.I.とは、カラーインデックス(Color Index)のことである。
【0029】
黒色着色剤としては、たとえば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、磁性フェライト、マグネタイトなどが挙げられる。
【0030】
白色着色剤としては、たとえば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などの化合物が挙げられる。
【0031】
赤色着色剤としては、たとえば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222などが挙げられる。
【0032】
青色着色剤としては、たとえば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60などが挙げられる。
【0033】
黄色着色剤としては、たとえば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138などが挙げられる。
【0034】
橙色着色剤としては、たとえば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43などが挙げられる。
【0035】
紫色着色剤としては、たとえば、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどが挙げられる。
【0036】
緑色着色剤としては、たとえば、クロムグリーン、酸化クロム、ピクメントグリーンB、マイカライトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG、C.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。
【0037】
着色剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。また、同色系の複数の着色剤を併用することもできる。
【0038】
着色剤は、黒色以外の例えば、白色、赤色、青色、黄色、橙色、紫色および緑色の着色剤からなる群、特に白色、赤色、青色および黄色の着色剤からなる群から選択される1種類以上の着色剤が使用されることが好ましい。従来では、着色剤を高充填しながら粒子表面への着色剤の露出を防止することは、黒色以外の表示粒子にとって困難であったが、本発明においては黒色以外の着色剤を高充填した表示粒子であっても、着色剤の露出を防止でき、しかも安定的かつ容易に製造できるためである。
【0039】
着色剤は、表面処理剤によって表面処理されたものを使用することが好ましい。樹脂溶液中での分散性が向上し、高い着色力が得られるためである。表面処理剤として、カップリング剤、シリコーンオイル、アルキルジシラザン等が挙げられる。
【0040】
カップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等が挙げられる。
アルキルジシラザンとしては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン等が挙げられる。
【0041】
着色剤の平均一次粒径は着色剤の種類などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択できる。例えば、黒色、赤色、青色、黄色、橙色、紫色および緑色の着色剤の平均一次粒径は10〜300nm、特に10〜100nmが好適である。また例えば、白色着色剤の平均一次粒径は100〜400nm、得に200〜300nmが好適である。
【0042】
着色剤の使用割合は特に制限されず、着色剤の種類などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択でき、例えば、結着樹脂100重量部に対し3重量部以上、特に5〜200重量部である。
具体的には例えば、黒色表示粒子を製造する場合、黒色着色剤の使用量は結着樹脂100重量部に対して5重量部以上、特に8〜30重量部が好適である。また、例えば黒色以外の表示粒子を製造する場合、黒色以外の着色剤の使用量は結着樹脂100重量部に対して5〜150重量部、特に20〜150重量部が好適である。特に白色表示粒子を製造する場合、白色着色剤の使用量は結着樹脂100重量部に対して20〜200重量部、特に40〜160重量部が好適であり、より好ましくは90〜160重量部である。
【0043】
樹脂溶液に使用される非水溶性有機溶媒としては、用いる結着樹脂が溶解可能なものであって、水に対して相溶しないものであれば特に制限されず、公知のものを使用でき、たとえば、メチルエチルケトン、ジエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ブタノールなどのアルコール類、トルエン、キシレンなどの芳香族類などが挙げられる。
【0044】
樹脂混合物は、結着樹脂および着色剤のほかに、必要に応じて、荷電制御剤などの一般的な表示粒子用添加剤を含むことができる。荷電制御剤は、特に限定されるものではなく、表示粒子の分野で公知の荷電制御剤が用いられる。このうち、例えば、サリチル酸金属錯体、含金属アゾ染料、4級アンモニウム塩化合物、ニトリイミダゾール誘導体等の負荷電制御剤を含有する表示粒子は後で説明する負帯電用として有用である。また例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン化合物、イミダゾール誘導体等の正荷電制御剤を含有する表示粒子は正帯電用として有用である。荷電制御剤の含有量は特に制限されず、例えば、結着樹脂100重量部に対して0.1〜15重量部、特に1〜10重量部が好適とする。
【0045】
樹脂溶液は、たとえば、結着樹脂、着色剤および必要に応じて上記各種の添加剤の1種または2種以上を含む樹脂混合物を、乳化機または分散機などで前述の非水溶性有機溶媒に溶解、懸濁または分散させることによって調製することができる。ここで乳化機、分散機としては、特に制限されず、公知のものを使用でき、たとえば、ウルトラタラックス(商品名、IKA株式会社製)、ポリトロンホモジナイザー(商品名、キネマティカ社製)、TKオートホモミクサー(商品名、特殊機化工業株式会社製)、ナショナルクッキングミキサー(商品名、松下電器産業株式会社製)などのバッチ式乳化機、エバラマイルダー(商品名、荏原製作所株式会社製)、TKパイプラインホモミクサー、TKホモミックラインフロー、フィルミックス(いずれも商品名、特殊機化工業株式会社製)、コロイドミル(商品名、神鋼パンテック株式会社製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機(いずれも商品名、三井三池化工機株式会社製)、キャビトロン(商品名、ユーロテック社製)、ファインフローミル(商品名、太平洋機工株式会社製)などの連続式乳化機、クレアミックス(商品名、エム・テクニック株式会社製)、フィルミックス(商品名、特殊機化工業株式会社製)などのバッチ式または連続両用乳化機などが挙げられる。
【0046】
樹脂混合物としては、予め結着樹脂、着色剤および必要に応じて上記各種の添加剤の1種または2種以上を混合して溶融混練して得られる溶融混練物を用いてもよい。溶融混練物は、たとえば、結着樹脂、着色剤および必要に応じて上記各種の添加剤の1種または2種以上を、混合機で乾式混合した後、結着樹脂の軟化点から熱分解温度までの温度に加熱しながら溶融混練することによって製造できる。ここで混合機としては公知のものを使用でき、たとえば、ヘンシェルミキサー(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサー(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。溶融混練には、二軸押出し機、三本ロール、ラボブラストミルなどの一般的な混練機を用いることができ、このような混練機としては、たとえば、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87(商品名、株式会社池貝製)などの1軸または2軸のエクストルーダ、ニーディックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式のものなどが挙げられる。
【0047】
このようにして得られる樹脂溶液の固形分量は、特に制限されず、樹脂混合物に含まれる結着樹脂の種類などに応じて適宜選択できるけれども、好ましくは、10〜50重量%程度である。
【0048】
[水系媒体調製工程]
水系媒体調製工程では、分散剤および水を含む水系媒体を調製する。
【0049】
分散剤としては、油滴粒子の分散を促進し得るものであれば特に制限されず、例えば、水に対する溶解度が低いアルカリ土類金属塩(難水溶性アルカリ土類金属塩)を使用できる。中でも後述するイオン性物質によって分解されるものが好ましく使用される。後述するイオン性物質によって分解される物質を用いると、着色剤含有樹脂粒子の表面に付着したこれらの物質を取除くことが容易になり、製造工程が簡素化する。水に対する溶解度が高い物質は、水中に溶解した状態で存在し、着色剤含有樹脂粒子の表面に付着することがないので、これらの物質を添加しても、着色剤含有樹脂粒子同士が付着しあって粗大化することを防止することができない。
【0050】
難水溶性アルカリ土類金属塩の水に対する溶解度は特に制限されないけれども、好ましくは温度20℃の水1リットルに対する溶解度が50mg以下、より好ましくは30mg以下である。このような難水溶性アルカリ土類金属塩としては、たとえば、カルシウムの炭酸塩、リン酸塩など、マグネシウムの炭酸塩、リン酸塩など、バリウムの炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩などが挙げられる。その中でも、得られる表示粒子の粒度分布の幅をできるだけ狭くし、形状を均一にするという点を考慮すると、カルシウムの炭酸塩(以下、炭酸カルシウム塩と称する)、カルシウムのリン酸塩(以下、リン酸カルシウム塩と称する)が好ましい。
【0051】
炭酸カルシウム塩には、カルサイト(水に対する溶解度:14mg/リットル、水温20℃)、アラゴナイト(水に対する溶解度:15mg/リットル、水温20℃)およびバテライト(水に対する溶解度:24mg/リットル、水温20℃)の3種類の多形が存在し、いずれも難水溶性を示し、難水溶性アルカリ土類金属塩として使用することができる。炭酸カルシウム塩は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。また炭酸カルシウム塩は、水系では、後述するイオン性物質として好適な塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸によって該水系のpHを酸性側、好ましくは1〜3に調整することによって、これらの酸と反応し、カルシウムイオンと二酸化炭素とに分解する。生じたカルシウムイオンは酸性水中に安定に存在することができ、また二酸化炭素は気体であるので自然に系外に排出される。したがって、炭酸カルシウムは後述するイオン性物質、特に酸の添加によって容易に着色剤含有樹脂粒子表面から除去することができるので、好適である。
【0052】
リン酸カルシウム塩としては、たとえば、リン酸三カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、ハイドロオキシアパタイトなどが挙げられる。ここで、ハイドロオキシアパタイトとは、構造式3Ca(PO・Ca(OH)で表される化合物のことである。これらのリン酸カルシウム塩は、炭酸カルシウム塩と同様に、後述のイオン性物質、特に酸と容易に反応して分解されるので好適である。
【0053】
これらの中でも、水に対する溶解度が低い点、酸に対する分解性(溶解性)が大きい点、結晶の大きさが微細である点などを考慮すると、ハイドロオキシアパタイトが好ましい(ハイドロオキシアパタイトの水に対する溶解度:5.8mg/リットル、水温20℃)。ハイドロオキシアパタイトのように、結晶の大きさがたとえば100nm程度と小さい難水溶性アルカリ土類金属塩は、結晶が小さい分、着色剤含有樹脂粒子の周りを緻密に覆うことができ、好ましい。また、難水溶性アルカリ土類金属塩自体の化学的安定性も高まるので、難水溶性アルカリ土類金属塩粒子同士の凝集(合一)が抑えられ、着色剤含有樹脂粒子表面に対して、均一に付着することができる。
【0054】
難水溶性アルカリ土類金属塩は、水系媒体中では、1次粒子が凝集した2次粒子の形で存在する。この2次粒子の平均分散径は、1μm以下であることが好ましい。1μmを大幅に超えると、着色剤含有樹脂粒子表面を均一に被覆できない場合が生じ、ひいては着色剤含有樹脂粒子同士が付着しあうのを防止できない場合が生じる。なお、前述の炭酸カルシウム塩およびリン酸カルシウム塩は、水系媒体中における2次粒子の平均分散径が1μm以下であり、この点からも好適に用いられる。
【0055】
分散剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。分散剤の使用量は特に制限されず、樹脂溶液に含まれる結着樹脂の種類などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは水系媒体と混合される樹脂溶液中の結着樹脂100重量部に対して、1重量部以上、10重量部以下である。該使用量が1重量部を大幅に下回ると、充分な分散性とその安定性を得ることができず、しかもその添加効果が充分に発揮されない可能性がある。一方、該使用量が200重量部を大きく超えると、水系媒体の粘度が高くなり、その水中での分散懸濁が不安定になり易いので、着色剤含有樹脂粒子表面に均一に付着しないおそれがある。
【0056】
分散剤の水系媒体中における含有量は、水系媒体中での分散性、樹脂溶液と水系媒体との混合の際の操作性などを考慮すると、好ましくは水系媒体全量の0.1重量%以上、20重量%以下である。したがって、分散剤および水の使用量は、結着樹脂に対する分散剤の使用割合および水系媒体中での分散剤の含有量を満たすように決定すればよい。
【0057】
水系媒体は、分散剤のほかに、分散安定剤を含むことができる。分散安定剤を添加することによって、分散剤の水系媒体中での凝集を防止して分散性を向上させることができる。分散安定剤は、水中では一次粒子に近い形態で存在するので、水分散性が良好で、その濃度が高くなっても分散性が低下することがなく、濃度調整が容易である。
【0058】
分散安定剤としては、たとえば、界面活性剤、水溶性高分子化合物およびその金属塩またはアンモニウム塩などが挙げられる。界面活性剤としては、たとえば、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムなどが挙げられる。水溶性高分子化合物としては、たとえば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースガム、ポリアクリル酸、ポリカルボン酸などが挙げられる。分散安定剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0059】
分散安定剤の使用量は、特に制限されず、広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは、水系媒体と混合される樹脂溶液中に含まれる結着樹脂100重量部に対して0.001重量部以上、0.1重量部以下であることが好ましい。
【0060】
水系媒体は、たとえば、分散剤および必要に応じて上記の分散安定剤を、前記した同様の乳化機または分散機などで水に分散させることによって調製することができる。用いる水は、導電率20μS/cm以下の水であることが好ましい。このような水は、たとえば、活性炭法、イオン交換法、蒸留法、逆浸透法などによって得ることができる。もちろん、これらの方法の2種以上を組合せて水の導電率を調整してもよい。
【0061】
[樹脂溶液分散工程]
樹脂溶液分散工程では、前記工程で調製された樹脂溶液と水系媒体とを混合して、水系媒体中に樹脂溶液を分散させる。これによって、水系媒体中に樹脂溶液の油滴粒子を生成させる。
【0062】
樹脂溶液と水系媒体との混合は、撹拌下に行なうことが好ましく、さらにせん断力を加えながら行なうことがより好ましい。このとき、加熱または加熱および加圧してもよい。撹拌速度は、特に制限されず、樹脂溶液に含まれる結着樹脂、着色剤、各種添加剤および有機溶媒の種類などに応じて、撹拌操作を容易に実施でき、所望の粒径、粒度分布および形状を有する油滴粒子が得られる値を適宜選択すればよい。また、せん断力も特に制限されず、樹脂溶液に含まれる結着樹脂の種類などに応じて、混合操作を容易に実施でき、所望の粒径、粒度分布および形状を有する油滴粒子が得られるせん断力を適宜選択すればよい。また、加熱下に行なう場合の加熱温度および加圧下に行なう場合の圧力値も特に制限されず、得ようとする表示粒子の粒径などに応じて広い範囲から適宜選択できる。また、樹脂溶液と水系媒体との混合時間も特に制限されず、樹脂溶液中の結着樹脂の種類および使用量、水系媒体中の分散剤の種類および含有量、撹拌時の温度などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択できる。
【0063】
樹脂溶液と水系媒体との混合割合は特に制限されず、樹脂溶液中の結着樹脂の含有量、水系媒体中の分散剤の種類および含有量などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択できるけれども、混合操作、所望により行われる油滴粒子表面に付着する分散剤の分解除去操作、洗浄操作、表示粒子の単離操作などを効率良く実施することを考慮すると、好ましくは樹脂溶液100重量部に対して水系媒体60〜500重量部を用いればよい。
【0064】
樹脂溶液と水系媒体との混合は、さらに具体的には、たとえば、乳化機、分散機などを用いて行われる。乳化機および分散機としては、樹脂溶液と水系媒体とをバッチ式または連続式で受け入れることができ、樹脂溶液と水系媒体とを混合し、着色剤を含む油滴粒子を生成させ、該油滴粒子をバッチ式または連続式で排出することのできる装置が好ましい。また乳化機および分散機は、撹拌手段を有し、樹脂溶液と水系媒体とを撹拌下に混合できるものであることが好ましい。また乳化機および分散機は、樹脂溶液と水系媒体とを混合するための混合容器が温度調整手段を有するものであることが好ましい。
【0065】
このような乳化機および分散機は市販されている。その具体例としては、たとえば、ウルトラタラックス(商品名、IKAジャパン株式会社製)、ポリトロンホモジナイザー(商品名、キネマティカ社製)、TKオートホモミクサー(商品名、特殊機化工業株式会社製)などのバッチ式乳化機、エバラマイルダー(商品名、株式会社荏原製作所製)、TKパイプラインホモミクサー、TKホモミックラインフロー、フィルミックス(いずれも商品名、特殊機化工業株式会社製)、コロイドミル(商品名、神鋼パンテック(株)製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機(いずれも商品名、三井三池化工機(株)製)、キャビトロン(商品名、(株)ユーロテック製)、ファインフローミル(太平洋機工(株)製)などの連続式乳化機、クレアミックス(商品名、エム・テクニック(株)製)、フィルミックス(商品名、特殊機化工業(株)製)などが挙げられる。また、これら以外にも、前述の樹脂溶液の調製に用いられる市販の乳化機、分散機を用いることもできる。
【0066】
[非水溶性有機溶媒除去工程]
非水溶性有機溶媒除去工程では、樹脂溶液分散工程で得られた油滴粒子分散液から、油滴に含まれる非水溶性有機溶媒を除去し、着色剤含有樹脂粒子を生成させる。
【0067】
非水溶性有機溶媒の除去は、たとえば、減圧蒸留などによって行なうことができる。非水溶性有機溶媒の除去方法は、これに限定されず、混合液中の非水溶性有機溶媒の種類および含有量などに応じて適宜選択することができる。
【0068】
減圧蒸留によって非水溶性有機溶媒を除去する場合、減圧の程度は、混合液中の非水溶性有機溶媒の種類および含有量などに応じて適宜選択することができる。
【0069】
[分散剤除去工程]
分散剤除去工程では、非水溶性有機溶媒の除去後に着色剤含有樹脂粒子の表面に残存する分散剤を分解除去する。着色剤含有樹脂粒子表面からの分散剤の除去は、たとえば、非水溶性有機溶媒の除去後の混合液に、イオン性物質を添加することによって行なうことができる。
【0070】
イオン性物質としては、水への溶解性を有しており、水中で解離することによって分散剤を分解し、分散剤の水への溶解性を増大させるものであれば特に制限されず、公知のものを使用できる。その中でも、無機酸、有機酸などの酸が好ましい。無機酸、有機酸などの酸を用いることによって、分散剤を効率良く分解することができる。また、分散剤の分解後の洗浄作業などが容易である。特に、無機酸を用いた場合には、分散剤との反応生成物および副生成物が水に容易に溶解するので、後で詳述する着色剤含有樹脂粒子の洗浄操作が一層容易であり、好ましい。
【0071】
無機酸としては公知のものを使用でき、その中でも、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸などの水溶性無機酸が好ましく、塩酸が特に好ましい。有機酸としても公知のものを使用でき、その中でも、ギ酸、酢酸などの水溶性有機酸が好ましく、酢酸が特に好ましい。
【0072】
イオン性物質は、気体、液体および固体のいずれの状態でも使用できるけれども、混合液中への溶解性、添加量の調整の容易さなどを考慮すると、液体の形態が好ましく、水溶液の形態が特に好ましい。水溶液で用いる場合、イオン性物質の濃度は特に制限されず、イオン性物質の種類、混合液中の分散剤の含有量などに応じて広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは10〜30重量%である。
【0073】
イオン性物質の添加量は、イオン性物質の種類、混合液中の分散剤の種類および含有量などに応じて広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは、混合液中に含まれる分散剤を分解するために必要なイオン性物質の理論量の10重量%以上、30重量%以下である。10重量%を下回ると、イオン性物質の添加効果が充分に発揮されない。一方、30重量%を超えると、着色剤含有樹脂粒子同士の付着、凝集などが起こり、形状の異なる粗大粒子が発生するおそれがある。混合液中の分散剤を分解するために必要なイオン性物質の理論量は、イオン性物質および分散剤の種類を決定し、化学反応式に基づく反応比率を用いて、混合液中の分散剤の含有量から求めることができる。また、混合液中に含まれる分散剤と同じ量の分散剤に対して分解実験を行ない、分解に要するイオン性物質の量を求め、これを前記理論量として用いることもできる。
【0074】
例えば、無機酸を用いる場合、無機酸を、着色剤含有樹脂粒子を含む混合液のpHが酸性、好ましくは1.0〜3.0になる量で添加し、必要に応じて所定時間放置することによって、分散剤を除去できる。pH調整後の放置時間は、混合液中の分散剤の種類および残存量、無機酸の種類および使用量などに応じて、適宜決定することができる。
【0075】
本工程でイオン性物質を添加する代わりに、または本工程でのイオン性物質の添加と合わせて、イオン性物質を、樹脂溶液分散工程における樹脂溶液と水分散液との混合撹拌直後、または混合撹拌直後から、非水溶性有機溶媒除去工程における有機溶媒溜去によって着色剤含有樹脂粒子が固化してその付着性を失うまでの間に添加してもよい。イオン性物質をいずれの時期で添加する場合であっても、イオン性物質の添加量は通常、合計量が上記範囲内になるような量であればよい。
【0076】
イオン性物質は、所定量を複数回に分けて間隔を開けて混合液に添加するか、連続的に長時間をかけて混合液に添加するか、またはこれらを組合せて行なうことが好ましい。この場合のイオン性物質の添加時間は、混合液中の分散剤の種類および含有量、イオン性物質の種類および使用量などに応じて、適宜決定することができる。
【0077】
[分離・洗浄・乾燥工程]
分離・洗浄・乾燥工程では、分散剤除去工程において表面から分散剤が分解除去された着色剤含有樹脂粒子を含む混合液中から、着色剤含有樹脂粒子を分離し、乾燥し、さらに必要に応じて分級などを行うことによって、表示粒子を得る。
【0078】
着色剤含有樹脂粒子の混合液中からの分離および回収は公知の方法に従って実施でき、たとえば、濾過、吸引濾過、遠心分離などによって行なうことができる。
【0079】
本工程では、着色剤含有樹脂粒子を分離する前に、着色剤含有樹脂粒子の水洗を行ってもよい。または、着色剤含有樹脂粒子を分離した後に水洗を行ってもよい。着色剤含有樹脂粒子の水洗は、分散剤およびイオン性物質などに由来する不純物類を除去するために実施される。このような不純物類が樹脂粒子に付着すると、得られる表示粒子の帯電性能が空気中の水分の影響によって低下するおそれがある。着色剤含有樹脂粒子の水洗は、導電率計などを用い、着色剤含有樹脂粒子を洗浄した後の洗浄水(上澄み液)の導電率が50μS/cm以下になるまで繰返し行なうのが好ましい。これによって、表示粒子の帯電量をさらに均一にすることができる。水洗に用いる水は、導電率20μS/cm以下の水であることが好ましい。このような水は、たとえば、活性炭法、イオン交換法、蒸留法、逆浸透法などによって得ることができる。もちろん、これらの方法の2種以上を組合せて水の導電率を調整してもよい。着色剤含有樹脂粒子の水洗は、バッチ式および連続式のいずれで実施してもよい。また洗浄水の温度は特に制限されないけれども、10〜80℃の範囲が好ましい。
【0080】
乾燥は、凍結乾燥法、気流式乾燥法などの公知の方法に従って実施できる。樹脂粒子を乾燥させる際には、不純物類の有無を導電率計などでチェックした後に、乾燥を行なうことが好ましい。
【0081】
分級は、粉砕法の場合と同様に、たとえば、風力分級法などの乾式分級法などの公知の方法に従って実施できる。また、たとえば、湿式サイクロン法などの湿式分級法を併用することもできる。分級によって、所望の粒度分布を有する着色粒子が得られる。なお、分級は、乾燥の前に行うこともできる。
【0082】
このようにして得られる着色粒子は、そのまま表示粒子として用いることができる。また、この着色粒子にシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの外添剤を添加して、着色粒子の表面改質を行なうこともできる。また、これらの外添剤には、たとえば、疎水化などの表面処理を施すことが可能である。着色粒子と外添剤との使用割合は特に制限されないけれども、外添剤は、着色粒子100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、さらに好ましくは1〜10重量部を用いればよい。
【0083】
外添剤の表面処理剤は、特に限定されるものではなく、表示粒子の分野で公知の表面処理剤が用いられる。このうち、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン等の有機シラザン等の表面処理剤で処理した外添剤は、後で説明する負帯電性表示粒子の外添剤として有用である。また例えば、4−アミノブチルジメチルメトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリス(2−エチルヘキソキシ)シラン、6−(アミノヘキシルアミノプロピル)トリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリエトキシシラン、3−(1−アミノプロポキシ)3,3−ジメチル−1−プロペニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジエチルメチルシラン、3−アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、ω−アミノウンデシルトリメトキシシラン、アミノ変性シリコンオイル等のアミノシランカップリング剤で処理した外添剤は、後で説明する正帯電性表示粒子の外添剤として有用である。
【0084】
以上に説明した樹脂溶液分散法で得られた表示粒子は十分に高い着色度を有し、しかも粒子表面での着色剤の露出が有効に抑制されるので、適正濃度の画像を長期にわたって形成できる。
例えば、白色表示粒子は、特定の方法によって測定される白濃度Aを0.5以下、好ましくは0.35以下、特に0.20以上0.35以下の範囲内で長期にわたって維持する。
白濃度Aは、実施例の評価方法に従って測定された値を用いている。
【0085】
<正帯電性表示粒子および負帯電性表示粒子>
画像表示装置において表示粒子は通常、正帯電性表示粒子および負帯電性表示粒子を含むものであり、本発明の画像表示装置においては、正帯電性表示粒子または負帯電性表示粒子の少なくとも一方が上記した樹脂溶液分散法によって製造されていればよい。初期コントラストおよび耐久コントラストのさらなる向上の観点から、正帯電性表示粒子および負帯電性表示粒子の両方が樹脂溶液分散法によって製造されていることが好ましい。
【0086】
正帯電性表示粒子および負帯電性表示粒子は通常、異なる色の着色剤が含まれる。
【0087】
色が異なるとは、後で詳述する画像表示装置において基板間に電界を発生させたとき、視認方向上流側の基板に移動・付着させた表示粒子と、視認方向下流側の基板上に残留・付着させた表示粒子との間で、色相、明度、彩度等に差が生じるという意味である。そのような差に基づいて、表示画像を視覚的に認識できる。正帯電性表示粒子と負帯電性表示粒子は、例えば、白色母体粒子と黒色母体粒子との組み合わせ、白色母体粒子と赤色母体粒子との組み合わせ、白色母体粒子と赤色母体粒子との組み合わせ、または黒色母体粒子と黄色母体粒子との組み合わせで使用される。表示粒子の色は表示粒子に含有される着色剤の色を選択することによって制御可能である。
【0088】
正帯電性表示粒子および負帯電性表示粒子は、例えば、互いに摩擦接触させたり、または電荷付与材料としてのキャリア等の基準材料に対して摩擦接触させたりすることによって、所定の極性に帯電される。帯電極性は例えば、画像表示装置の製造時において正帯電性表示粒子および負帯電性表示粒子それぞれの帯電に使用されるキャリアの種類、外添剤の表面処理剤の種類、表示粒子に含有される荷電制御剤等によって制御可能である。
【0089】
表示粒子の体積平均粒径は通常、1〜50μmであり、好ましくは3〜30μm、より好ましくは5〜15μmである。正帯電性表示粒子および負帯電性表示粒子の体積平均粒径はそれぞれ独立して上記範囲内であればよい。
【0090】
体積平均粒径は体積基準メディアン径(d50径)であって、マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用のコンピューターシステムを接続した装置を用いて測定、算出することができる。
測定手順としては、サンプル0.02gを界面活性剤溶液20ml(粒子を分散させるためのもので、界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)で馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、分散液を作製する。この分散液を、サンプルスタンド内のISOTONII(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定濃度10%になるまでピペットにて注入し、測定機カウントを2500個に設定して測定する。なお、マルチサイザー3のアパチャー径は100μmのものを使用する。
【0091】
正帯電性表示粒子と負帯電性表示粒子との混合割合は重量比で1/3〜3/1、特に1/2〜2/1が好適である。
【0092】
<画像表示装置>
本発明に係る画像表示装置は上記した表示粒子を備えたことを特徴とする。以下、本発明の画像表示装置について詳細に説明する。なお、本発明に係る画像表示装置は、「粉体ディスプレイ」とも呼ばれるものである。
【0093】
本発明に係る画像表示装置は、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に上記した表示粒子を粉体形態で封入し、該基板間に電界を発生させることによって、該表示粒子を移動させて画像を表示するものである。
【0094】
本発明に係る画像表示装置の代表的な構成断面を図1に示す。図1(a)は、基板11、12上に層構造の電極15を設け、電極15表面に絶縁層16を設けたものである。図1(b)に示す画像表示装置は、装置内に電極を設けていない構造のもので、装置外部に設けられた電極を介して電界を付与させ、表示粒子の移動を行える様にしたものである。図1(a)および図1(b)における同じ符号は同じ部材を意味するものとする。図1は図1(a)および図1(b)を包含して意味するものとする。図1の画像表示装置10は、図に示す様に、基板11側より画像を視認するものとするが、本発明では基板11側より画像を視認するものに限定されるものではない。また、図1(b)に示すタイプは、装置自体に電極15が設けられていない分、装置の構造を簡略化させ、その製造工程を短縮化することができるメリットがある。図1(b)に示すタイプの画像表示装置10を電圧印加可能な装置にセットして電圧印加を行う様子を示すものを図3に示す。なお、本発明に係る画像表示装置の断面構成は図1(a)と(b)に示すものに限定されるものではない。
【0095】
図1(a)の画像表示装置10の最外部には、当該画像表示装置を構成する筐体である2つの基板11と12が対向して配置されている。基板11と12は双方が向き合う側の面上に電圧印加を行うための電極15が設けられ、さらに、電極15上に絶縁層16が設けられている。基板11と12には、電極15と絶縁層16が設けられ、電極15と絶縁層16を有する側の面を対向させて形成される隙間18には表示粒子が存在する。図1に示す画像表示装置10は、表示粒子として黒色表示粒子(以下、黒色粒子という)21と白色表示粒子(以下、白色粒子という)22の2種類の表示粒子を隙間18に存在させている。図1の画像表示装置10では、隙間18が基板11と12及び2つの隔壁17により四方を囲んだ構造となっており、表示粒子は隙間18に封入された状態で存在している。
【0096】
隙間18の厚さは、封入された表示粒子が移動可能で画像のコントラストを維持できる範囲であれば、特に限定されるものではなく、通常は10μm乃至500μm、好ましくは10μm乃至100μmである。隙間18内における表示粒子の体積占有率は、5%乃至70%であり、好ましくは30%乃至60%である。表示粒子の体積占有率を上記範囲にすることにより、隙間18内で表示粒子がスムーズに移動でき、また、コントラストのよい画像が得られる。
【0097】
次に、画像表示装置10の隙間18での表示粒子の挙動について説明する。
本発明に係る画像表示装置は、2枚の基板間に電圧を印加されて電界が形成されると、帯電している表示粒子は電界方向に沿って移動する様になる。この様に、表示粒子が存在する基板間に電圧を印加することにより、帯電した表示粒子が基板間を移動して画像表示を行うものである。
【0098】
本発明に係る画像表示装置における画像表示は以下の手順により行われるものである。
(1)表示媒体として用いる表示粒子を、キャリアによる摩擦帯電等の公知の方法により帯電させる。
(2)対向する2枚の基板間に表示粒子を封入し、この状態で基板間に電圧を印加する。
(3)基板間への電圧印加により、基板間に電界が形成される。
(4)表示粒子は、電極間の電界の力の作用により表示粒子の極性と反対側の電界方向に沿って基板表面に引き寄せられ、画像表示が行える様になる。
(5)また、基板間の電界方向を変えることにより、表示粒子の移動方向を切り換える。この移動方向の切換えにより画像表示を様々に変えることができる。
【0099】
なお、上述した公知の方法による表示粒子の帯電方法としては、たとえば、キャリアに接触させて摩擦帯電により表示粒子を帯電させる方法、帯電極性の異なる2色の表示粒子を混合、撹拌して両者間の摩擦帯電により表示粒子を帯電させる方法等が挙げられるが、本発明では、キャリアを使用し、帯電した表示粒子を基板内に封入することが好ましい。
【0100】
基板間への電圧印加に伴う表示粒子の移動の例を図2と図3に示す。
図2(a)は、基板11と12の間に電圧を印加する前の状態を示しており、電圧印加前は視認側の基板11近傍には正帯電した白色粒子22が存在している。この状態は画像表示装置10が白色画像を表示しているものである。また、図2(b)は、電極15に電圧を印加した後の状態を示しており、基板11に正の電圧を印加することで負に帯電した黒色粒子21が視認側の基板11近傍に移動し、白色粒子22は基板12側に移動している。この状態は画像表示装置10が黒色画像を表示しているものである。
【0101】
図3は、図1(b)に示した画像表示装置10に電極を有さないタイプのものを電圧印加装置30にセットし、この状態で電圧を印加する前の様子(図3(a))と電圧を印加した後の様子(図3(b))を示したものである。図1(b)に示すタイプの画像表示装置10も電極15を有する画像表示装置10と同様、基板11に正の電圧を印加することで負に帯電した黒色粒子21が視認側の基板11近傍に移動し、正に帯電した白色粒子22は基板12側に移動している。
【0102】
次に、図1に示す画像表示装置10を構成する基板11、12、電極15、絶縁層16、および隔壁17について説明する。
【0103】
先ず、画像表示装置10を構成する基板11と12について説明する。画像表示装置10では、観察者は基板11と12の少なくとも一方の側から表示粒子により形成される画像を視認するので、観察者が視認する側に設けられる基板は透明な材質のものが求められる。したがって、観察者が画像を視認する側に使用される基板は、たとえば可視光透過率が80%以上の光透過性の材料が好ましく、80%以上の可視光透過率を有することにより十分な視認性が得られる。なお、画像表示装置10を構成する基板のうち、画像を視認する側の反対側に設けられる基板の材質は必ずしも透明なものである必要はない。
【0104】
基板11、12の厚さは、それぞれ2μm〜5mmが好ましく、さらに、5μm〜2mmがより好ましい。基板11、12の厚さが上記範囲のとき、画像表示装置10に十分な強度を付与するとともに基板の間隔を均一に保つことができる。また、基板の厚さを上記範囲とすることでコンパクトで軽量な画像表示装置を提供することができるので、広い分野での当該画像表示装置の使用を促進させる。さらに、画像を視認する側の基板の厚みを上記範囲とすることにより、表示画像の正確な視認が行え表示品質に支障を与えない。
【0105】
可視光透過率が80%以上の材料としては、ガラスや石英等の可撓性を有さない無機材料や、後述する樹脂材料に代表される有機材料や金属シート等が挙げられる。このうち、有機材料や金属シートは画像表示装置にある程度の可撓性を付与することができる。可視光透過率を80%以上とすることが可能な樹脂材料としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等に代表されるポリエステル樹脂や、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。また、ポリメチルメタクリレート(PMMA)に代表されるアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体であるアクリル樹脂やポリエチレン樹脂等のビニル系の重合性単量体をラジカル重合して得られる透明樹脂も挙げられる。
【0106】
電極15は基板11と12の面上に設けられ、電圧印加により基板間すなわち隙間18に電界を形成するものである。電極15は、前述の基板と同様に、観察者が画像を視認する側に透明なものを設ける必要がある。
【0107】
画像を視認する側に設けられる電極の厚みは、導電性を確保するとともに光透過性に支障を来さないレベルにすることが求められ、具体的には3nm〜1μmが好ましく、5nm〜400nmがより好ましい。なお、画像を視認する側に設けられる電極の可視光透過率は、基板同様、80%以上とすることが好ましい。画像を視認する側の反対側に設けられる電極の厚みも上記範囲とすることが好ましいが、透明なものにする必要はない。
【0108】
電極15の構成材料としては、金属材料や導電性金属酸化物、あるいは、導電性高分子材料等が挙げられる。具体的な金属材料としては、たとえば、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等が挙げられ、導電性金属酸化物の具体例としては、インジウム・スズ酸化物(ITO)、酸化インジウム、アンチモン・スズ酸化物(ATO)、酸化スズ、酸化亜鉛等が挙げられる。さらに、導電性高分子材料としては、たとえば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン等が挙げられる。
【0109】
電極15を基板11や12上に形成する方法としては、たとえば、薄膜上の電極を設ける場合には、スパッタリング法や真空蒸着法、化学蒸着法(CVD法;Chemical Vapor Deposition)、塗布法等が挙げられる。また、導電性材料を溶媒やバインダ樹脂に混合させ、この混合物を基板に塗布して電極を形成する方法もある。
【0110】
絶縁層16は電極15の表面に設けられ、絶縁層16表面で表示粒子21,22と接触する構成となっているが、必ずしも設けなければならないというわけではない。絶縁層16は表示粒子21、22を移動させる際に印加される電圧によって帯電量の変化を緩和する役割をもっている。また、疎水性の高い構造をもつ樹脂、凹凸を付与することによって、表示粒子との物理的な付着力を低減でき、駆動電圧を低減させる働きももっている。絶縁層16を構成する材料としては、電気絶縁性を有する薄膜化可能な材料であって、所望により透明性を有するものである。画像を視認する側に設けられる絶縁層は可視光透過率を、基板同様、80%以上とすることが好ましい。具体例として、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0111】
絶縁層16の厚みは0.01μm以上10.0μm以下とすることが好ましい。すなわち、絶縁層16の厚みが上記範囲の時は、電極15間にそれほど大きな電圧を印加せずに表示粒子21,22が移動でき、たとえば、電気泳動法による画像形成で印加したレベルの電圧を付与して画像表示が行えるので好ましい。
【0112】
隔壁17は、上下基板間の隙間18を確保するものであり、図4上段の右側および左側の図に示すように基板11,12の縁部だけでなく、必要に応じて内部にも形成できる。隔壁17の幅、特に画像表示面18a側の隔壁の厚みは、例えば図4上段の右側の図に示すように、表示画像の鮮明性を確保する上からできるだけ薄くした方がよい。
【0113】
基板11,12の内部に形成される隔壁17は、図4上段の右側および左側の図中、表裏方向に連続的に形成されても、断続的に形成されてもよい。
隔壁17の形状および配置を制御することにより、隔壁17により仕切られた隙間18のセルを様々な形状で配置できる。隙間18を基板11の視認方向から見た時のセルの形状および配置の例を図4下段の図に示す。セルは、図4下段の図に示すように、四角形状、三角形状、ライン状、円形状、六角形状等にて、複数個で、ハニカム状や網目状に配置することができる。
【0114】
隔壁17は、たとえば以下に挙げる方法を用いて画像を視認する側の反対側の基板上を加工処理することにより形成できる。隔壁17を形成する方法としては、たとえば、樹脂材料等によるエンボス加工や熱プレス射出成形による凹凸形成、フォトリソグラフ法やスクリーン印刷等が挙げられる。
【0115】
画像表示装置は、例えば以下に示す電子写真現像方式によって製造可能である。
2枚の基板11に、電極15および所望により絶縁層16を形成し、一対の電極付き基板を得る。表示粒子21およびキャリア210を混合することにより表示粒子21を負帯電させ、混合物(21,210)を、図5(a)に示すように、導電性のステージ100上に置き、一方の電極付き基板を、ステージ100と所定の間隔を空けて設置する。次いで、図5(a)に示すように、電極15に正極性の直流電圧と交流電圧を印加して、負帯電性表示粒子21を付着させる。
表示粒子22およびキャリア220を混合することにより表示粒子22を正帯電させ、混合物(22,220)を、図5(b)に示すように、導電性のステージ100上に置き、他方の電極付き基板を、ステージ100と所定の間隔を空けて設置する。次いで、図5(b)に示すように、電極15に負極性の直流電圧と交流電圧を印加して、正帯電性表示粒子22を付着させる。負帯電性表示粒子を付着させた電極付き基板と、正帯電性表示粒子を付着させた電極付き基板とを、図5(c)に示すように、所定の間隔になるように隔壁で調整して重ね、基板周辺を接着し、画像表示装置を得ることができる。
【0116】
表示粒子を負帯電させるキャリア210としては、フェライト等の磁性粒子に、シクロヘキシルメタクリレート樹脂等の樹脂をコートしたコート型キャリアが有用である。
表示粒子を正帯電させるキャリア220としては、フェライト等の磁性粒子に、フッ素化アクリレート樹脂等の樹脂をコートしたコート型キャリアが有用である。
【実施例】
【0117】
[白色表示粒子A1w;樹脂溶液分散法;実施例]
(樹脂溶液の調製工程)
結着樹脂としてスチレン−アクリル樹脂(ガラス転移温度:85℃,重量平均分子量:80,000)100重量部、カップリング剤処理して親油性とした酸化チタン(平均一次粒径200nm)120重量部を、メチルエチルケトン380重量部に溶解・分散させ、固形分重量25%の樹脂溶液を調製した。
【0118】
(水系媒体の調製工程)
分散剤としてリン酸三カルシウム5重量部、分散安定剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.05重量部を純水580重量部に溶解・分散させた溶液を、TKホモミキサー(特殊機化工業(株)社製)を用いて5000rpmにて15分間撹拌し、乳白色の水系媒体を得た。
【0119】
その後、得られた水系媒体に対して、上で調製した樹脂溶液600重量部を添加し、TKホモミキサーにより7000rpmにて30分間撹拌することで油滴分散液を調製した(樹脂溶液分散工程)。油滴分散液を減圧蒸留装置に移し、非水溶性有機溶媒であるメチルエチルケトンを減圧下で除去した(非水溶性有機溶媒除去工程)。得られたスラリーに対し、1mol/lの塩酸を該スラリーのpHが1になるまで加え、30分間放置して、樹脂粒子表面からリン酸三カルシウムを除去した(分散剤除去工程)。その後、濾過、水洗および乾燥を行い、体積平均粒子径10μmの白色粒子を得た(分離・洗浄・乾燥工程)。白色粒子100重量部に、アミノシランカップリング剤(N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン)で表面処理を行った平均一次粒径が15nmのシリカ粒子を1重量部添加し、ヘンシェルミキサ(三井三池鉱業社製)に投入し、撹拌羽根の周速を30m/秒に設定して30分間混合処理を行い、白色表示粒子A1wを得た(外添処理工程)。
【0120】
[黒色表示粒子A1b;樹脂溶液分散法;実施例]
親油性酸化チタンの代わりに、カーボンブラック(平均一次粒径25nm)を8重量部用いたこと、および外添処理工程における添加剤を、ヘキサメチルジシラザンで表面処理を行った平均一次粒径が15nmのシリカ粒子に変更したこと以外は、白色表示粒子A1wと同様の方法により、黒色表示粒子A1bを製造した。
【0121】
[白色表示粒子A2w〜A5w;樹脂溶液分散法;実施例]
親油性酸化チタンを所定の量で使用したこと以外は、白色表示粒子A1wと同様の方法により、白色表示粒子A2w〜A5wを製造した。
【0122】
[黒色表示粒子A2b〜A5b;樹脂溶液分散法;実施例]
カーボンブラックを所定の量で使用したこと以外は、黒色表示粒子A1bと同様の方法により、黒色表示粒子A2b〜A5bを製造した。
【0123】
[白色表示粒子B1w;粉砕法;比較例]
(粉砕工程)
スチレン−アクリル樹脂(ガラス転移温度:85℃,重量平均分子量:80,000)100重量部、酸化チタン(平均一次粒径200nm)120重量部を、ヘンシェルミキサ(三井三池鉱業社製)に投入し、撹拌羽根の周速を25m/秒に設定して5分間混合処理して混合物とした。ついで上記混合物を二軸押出混練機で混練し、次いで、ハンマーミルで粗粉砕した後、ターボミル粉砕機(ターボ工業社製)で粉砕処理し、さらに、コアンダ効果を利用した気流分級機で微粉分級処理を行って、体積平均粒径10μmの白色粒子を得た。
【0124】
(外添処理工程)
上記白色粒子100重量部に、アミノシランカップリング剤(N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン)で表面処理を行った平均一次粒径が15nmのシリカ粒子を1重量部添加し、ヘンシェルミキサ(三井三池鉱業社製)に投入し、撹拌羽根の周速を30m/秒に設定して30分間混合処理を行い、白色表示粒子B1wを得た。
【0125】
[黒色表示粒子B1b;粉砕法;比較例]
酸化チタンをカーボンブラック(平均一次粒径25nm)8重量部に変更したこと、外添処理工程における添加剤を、(ヘキサメチルジシラザン)で表面処理を行った平均一次粒径が15nmのシリカ粒子に変更したこと以外は、白色表示粒子B1wと同様の方法により、黒色表示粒子B1bを製造した。
【0126】
[白色表示粒子B2w;懸濁重合法;比較例]
(着色剤含有モノマー液の調製)
スチレン70重量部、メタクリル酸メチル30重量部に、重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル1重量部を溶解した後、カップリング剤処理して親油性とした酸化チタン(平均一次粒径200nm)120重量部を分散させ、重合性分散液を調製した。
【0127】
(懸濁液の調製)
懸濁剤としてリン酸三カルシウム5重量部、懸濁助剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.05重量部を純水580重量部に溶解・分散させた溶液を、TKホモミキサー(特殊機化工業(株)社製)を用いて5000rpmにて15分間撹拌し、乳白色の液体を得た。その後、乳白色液体に対して、上で調製した重合性分散液220重量部を添加し、TKホモミキサーにより7000rpmにて撹拌した。30分間撹拌したところで懸濁液をサンプリングしたところ、凝集物が多量に発生していたため、製造を中止した。
【0128】
[白色表示粒子を帯電させるためのキャリアA]
平均粒子径80μmのフェライトコア100重量部に対して、フッ素化アクリレート樹脂粒子を2部加え、これら原料を水平回転翼型混合機に投入し、水平回転翼の周速が8m/秒となる条件で22℃で10分間混合攪拌した後、90℃に加熱し40分攪拌して、キャリアAを製造した。
【0129】
[黒色表示粒子を帯電させるためのキャリアB]
平均粒子径80μmのフェライトコア100重量部に対して、シクロヘキシルメタクリレート樹脂粒子を2部加え、これら原料を水平回転翼型混合機に投入し、水平回転翼の周速が8m/秒となる条件で22℃で10分間混合攪拌した後、90℃に加熱し40分攪拌して、キャリアBを製造した。
【0130】
<実験例1>
[画像表示装置の製造]
正帯電性表示粒子として上記白色表示粒子A1wを用い、負帯電性表示粒子として上記黒色表示粒子A1bを用いて、画像表示装置を製造した。
【0131】
画像表示装置は、図1(a)と同様の構造を有するように、以下の方法に従って製造した。長さ80mm、幅50mm、厚さ0.7mmのガラス基板11を2枚用意し、各基板面上には、厚さ300nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)被膜(抵抗30Ω/□)からなる電極15を蒸着法により形成した。上記電極上に、ポリカーボネート樹脂12gを、テトラヒドロフラン80mlとシクロヘキサノン20mlの混合溶媒に溶解させてなる塗布液を、スピンコート法により塗布して厚さ3μmの絶縁層16を形成し、一対の電極付き基板を得た。
【0132】
負帯電性表示粒子1gおよびキャリアB 9gを振とう機(YS−LD ヤヨイ社製)により30分間混合することにより、表示粒子を帯電させた。得られた混合物(21,210)を、図5(a)に示すように、導電性のステージ100上に置き、一方の電極付き基板を、ステージ100と約2mmの間隔を空けて設置した。電極15とステージ100との間に、DCバイアス+50V,ACバイアス2.0kV,周波数2.0kHzを10秒間印加して、絶縁層16上に表示粒子21を付着させた。
【0133】
正帯電性表示粒子1gおよびキャリアA 9gを振とう機(YS−LD ヤヨイ社製)により30分間混合することにより、表示粒子を帯電させた。得られた混合物(22,220)を、図5(b)に示すように、導電性のステージ100上に置き、他方の電極付き基板を、ステージ100と約2mmの間隔を空けて設置した。電極15とステージ100との間に、DCバイアス−50V,ACバイアス2.0kV,周波数2.0kHzを10秒間印加して、絶縁層16上に表示粒子22を付着させた。
【0134】
負帯電性表示粒子を付着させた電極付き基板と、正帯電性表示粒子を付着させた電極付き基板とを、図5(c)に示すように、間隔50μmになるように隔壁で調整して重ね、基板周辺をエポキシ系接着剤にて接着し、画像表示装置とした。なお、2種類の表示粒子のガラス基板間への体積占有率は50%であった。正帯電性表示粒子と負帯電性表示粒子との含有割合は体積比で1/1にしてある。
【0135】
<実験例2〜8>
正帯電性表示粒子として表1に示す白色表示粒子を用い、負帯電性表示粒子として表1に示す黒色表示粒子を用いたこと以外、実験例1と同様の方法により画像表示装置を製造した。
【0136】
【表1】

【0137】
<評価方法>
・初期コントラスト
画像表示装置の視認方向上流側の電極に対して+100Vと−100Vの電圧を交互に印加した。他方の電極は電気的に接地させた。初期において、+100V印加時の表示画像の濃度(黒濃度)、および−100V印加時の表示画像の濃度(白濃度)を、反射濃度計(コニカ社製;SakuraDENSITMETER PDA-65)により測定した。コントラストとして、黒濃度と白濃度との濃度差を求めた。初期とは+100Vと−100Vの電圧印加を10回繰り返したときである。
○;1.0≦濃度差;
△;0.6≦濃度差<1.0(実用上問題なし);
×;濃度差<0.6(実用上問題あり)。
【0138】
・耐久後コントラスト
+100Vと−100Vの電圧印加を1万回繰り返したときの、コントラストを、初期コントラストと同様の方法により測定し、評価を行った。
【0139】
・白濃度A
白濃度Aは、所定の白色表示粒子と黒色表示粒子A1bとを組み合わせて用いたときの白濃度であり、そのような白濃度Aを以下の方法により初期および耐久後において測定した。
まず各実験例で使用した白色表示粒子と、黒色表示粒子A1bとを用いたこと以外、実験例1と同様の方法により画像表示装置を製造した。
次に、得られた画像表示装置を用いたこと以外、上記初期コントラストおよび耐久後コントラストの評価方法と同様の方法によって、駆動させた。このときの初期(繰り返し10回)および耐久後(繰り返し1万回)における白濃度を白濃度Aとして示した。
【符号の説明】
【0140】
10:画像表示装置、11:12:基板、15:電極、16:絶縁層、17:隔壁、18:隙間、18a:画像表示面、21:黒色表示粒子、22:白色表示粒子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明な2枚の基板間に表示粒子を粉体形態で封入し、該基板間に電界を発生させることによって、該表示粒子を移動させて画像を表示する画像表示装置に用いられる表示粒子であって、
表示粒子が、少なくとも結着樹脂および着色剤を非水溶性有機溶媒中に溶解または分散せしめた樹脂溶液を水系媒体中に分散させた後、分散液から非水溶性有機溶媒を除去することにより製造されてなることを特徴とする表示粒子。
【請求項2】
着色剤が白色、赤色、青色、黄色、橙色、紫色および緑色の着色剤からなる群から選択される1種類以上の着色剤である請求項1に記載の表示粒子。
【請求項3】
着色剤の使用量が結着樹脂100重量部に対して20〜150重量部である請求項1または2に記載の表示粒子。
【請求項4】
少なくとも一方が透明な2枚の基板間に表示粒子を粉体形態で封入し、該基板間に電界を発生させることによって、該表示粒子を移動させて画像を表示する画像表示装置であって、
表示粒子が正帯電性表示粒子および負帯電性表示粒子を含み、正帯電性表示粒子または負帯電性表示粒子の少なくとも一方が請求項1〜3のいずれかに記載の表示粒子である画像表示装置。
【請求項5】
少なくとも一方が透明な2枚の基板間に表示粒子を粉体形態で封入し、該基板間に電界を発生させることによって、該表示粒子を移動させて画像を表示する画像表示装置に用いられる表示粒子の製造方法であって、
少なくとも結着樹脂および着色剤を非水溶性有機溶媒中に溶解または分散せしめた樹脂溶液を水系媒体中に分散させた後、分散液から非水溶性有機溶媒を除去することを特徴とする表示粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−2695(P2011−2695A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146333(P2009−146333)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】