説明

画像表示装置

【課題】輝度への影響を抑えつつ、外光の反射による黒さの劣化を防止する。
【解決手段】背面基板40と、背面基板に対向する前面基板20と、を備える画像表示装置であって、背面基板は電子放出素子41を備え、前面基板は前記電子放出素子からの電子の照射により発光する発光体24と、電子放出素子と発光体との間に設けられたメタルバック25と、を備えている。発光体は、発光体における輝度の最大値に対する輝度が50%以上である第1領域と50%未満である第2領域と、を有し、第2領域におけるメタルバックの算術平均粗さ(Ra)は第1領域におけるメタルバックの算術平均粗さ(Ra)よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像表示装置に関し、特に前面基板に設けられるメタルバックの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラウン管と同様の発光原理に基づく平面型表示装置として、FED(Field Emission Display)やSED(Surface-conduction Electron-emitter Display)が知られている。これらの平面型表示装置では、蛍光体に高いエネルギーを持った電子ビームを照射することで蛍光体を発光させて、所望の画像を得ることができる。
【0003】
これらの平面型表示装置において用いられる一般的な蛍光面構成を図6に示す。前面基板120には遮光層21およびバンク層22が設けられている。遮光層21の開口23には、赤、緑、青の三色のいずれかを発光する発光体24が形成され、これらをメタルバック125が覆っている。図7に示すように、赤、緑、青の各発光体24R,24G,24Bに電子ビームが照射する際は、電子ビーム27は各発光体24R,24G,24Bの中央部に照射され、周辺部への照射量は小さい。
【0004】
遮光層21は外光を吸収することで反射率を低下させる黒色物質からなり、これにより外光の反射を防止して、画面の黒さを向上させる。バンク層22は発光体24が所定の位置に収まるように各発光体24を区切る壁であり、通常は発光体24と同じ程度の膜厚を有している。バンク層22は必須構造ではなく、これを用いない構成もあり得る。
【0005】
通常、開口23は縦横にドット状に規則正しく配列して設けられ、各発光体24の充填部を形成している。発光体24は、開口23を覆うように充填された蛍光体粒子31からなっており、電子ビームの照射により所望の発光を行う。メタルバック125は、蛍光体粒子31から背面基板側に発光する光を表示装置の前面側へ反射して、発光強度を高める。
【0006】
図8は、従来の前面基板の断面を示したものである。
【特許文献1】特開2006−73248号公報
【特許文献2】特開平10−326583号公報
【特許文献3】特開2000−311642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、発光体24には電子の照射量の多い領域(中央領域)と照射量の少ない領域(周辺領域)とがある。画像表示は主に中央領域での発光によっておこなわれるが、外光も同時に表示装置の外部から発光体24およびメタルバック125に入射し、メタルバック125から表示装置の外部へと反射する。この外部光の反射は黒さの劣化原因となる。
【0008】
本発明は、輝度への影響を抑えつつ、外光の反射による黒さの劣化を防止することのできる画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の画像表示装置は、背面基板と、背面基板に対向する前面基板と、を備えている。背面基板は電子放出素子を備え、前面基板は電子放出素子からの電子の照射により発光する発光体と、電子放出素子と発光体との間に設けられたメタルバックと、を備え、発光体は、発光体における輝度の最大値に対する輝度が50%以上である第1領域と50%未満である第2領域と、を有している。そして、第2領域におけるメタルバックの算術平均粗さは第1領域におけるメタルバックの算術平均粗さよりも大きいこと、を特徴としている。
【0010】
本発明の他の画像表示装置は、背面基板と、背面基板に対向する前面基板と、を備えている。背面基板は電子放出素子を備え、前面基板は電子放出素子からの電子の照射により発光する発光体と、電子放出素子と発光体との間に設けられたメタルバックと、を備え、
発光体は、発光体における輝度の最大値に対する輝度が50%以上である第1領域と50%未満である第2領域と、を有している。そして、第2領域の面積に対する第2領域を覆うメタルバックの面積の割合は、第1領域の面積に対する第1領域を覆うメタルバックの面積の割合よりも小さいこと、を特徴としている。
【0011】
本発明のさらに他の画像表示装置は、背面基板と、背面基板に対向する前面基板と、を備えている。背面基板は電子放出素子を備え、前面基板は電子放出素子からの電子の照射により発光する発光体と、電子放出素子と発光体との間に設けられたメタルバックと、を備え、発光体は、発光体における輝度の最大値に対する輝度が50%以上である第1領域と50%未満である第2領域と、を有している。そして、メタルバックは、少なくとも第1領域を覆い、第2領域における拡散反射率は、第1領域における拡散反射率よりも小さいこと、を特徴としている。
【0012】
なお、本発明における「算術平均粗さ」(Ra)とは、JIS B 0601(1994)により規定されるものである。
【0013】
また、本発明における「拡散反射率」とは、面の入射光に対する拡散光の割合を示すものである。具体的には、面の法線に対して入射角45度、受光角0度で測定されるものを意味する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、輝度への影響を抑えつつ、外光の反射による黒さの劣化を防止することのできる画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の画像表示装置は、FEDおよびSEDに好適に適用することができる。
【0016】
(第一の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に用いられる蛍光面構造の概略断面図である。平面型表示装置1は背面基板40と前面基板20とを有し、背面基板40と前面基板20は、図示しない側壁を介して適宜の方法で対向して接着され、内部(間隙42)が真空に維持されている。背面基板40は間隙42に面して多数の電子放出素子41を備えている。
【0017】
前面基板20は、間隙42に面して設けられた、対応する電子放出素子41からの電子の照射によって発光する多数の発光体24と、電子放出素子41と発光体24との間に設けられたメタルバック25と、を有している。発光体24はガラス基板32上に形成され、その上をメタルバック25の一部が覆っている。前面基板20は、隣接する発光体24同士を仕切る遮光層21(遮光部材)を備え、遮光層21の上にバンク層22が形成されている。遮光層21の開口23には発光体24が形成されている。発光体24は、図7に示すように、各々が赤、緑、青のいずれかの発光用に割り当てられているが、ここでは一つの発光体のみを図示している。
【0018】
発光体24は、単位面積当たりの電子の照射量が相対的に多い中央領域24aと、相対的に少ない周辺領域24bとを有している。図7に示すように、発光体24に照射される電子ビーム27の照射範囲(中央領域24a)は、発光体24の面積よりも小さい。発光体24の周辺領域24bは、電子ビーム密度が極端に小さくなり発光への寄与は小さい。図1に示す鎖線A−A、B−Bは中央領域24aと周辺領域24bとの境界部を示す。本明細書では中央領域24aと周辺領域24bとの境界は、照射される電子ビーム密度が最大値の半値となる線として定義する。すなわち、本発明における「第1領域」である中央領域24aとは、発光体24における輝度の最大値に対する輝度が50%以上である領域である。また、本発明における「第2領域」である周辺領域24bとは、発光体24における輝度の最大値に対する輝度が50%未満である領域である。換言すれば、本発明における「第1領域」、「第2領域」とは、発光体における輝度の最大値に対する輝度の割合により決まる領域であり、発光体24の中央や周辺という位置により決まる領域ではない。
【0019】
メタルバック25は、形成される部位によって、第一の部分25aと、第二の部分25bと、第三の部分25cと、を有している。第一の部分25aは、背面基板40から前面基板20を、前面基板20と直交する方向(以下、基板直交方向D)にみたときに中央領域24aを覆う部分である。第二の部分25bは、背面基板40から前面基板20を基板直交方向Dにみたときに、周辺領域24bを覆う部分である。第三の部分25cは、背面基板40から前面基板20を基板直交方向Dにみたときに、遮光層21を覆う部分である。
【0020】
ここで、FED、SED等の平面型表示装置に特有の課題である耐圧特性について説明する。表示装置を構成する前面基板と背面基板との間のギャップは数mmオーダーであるが、このギャップに高電圧が印加されるため、ブラウン管と比べて放電が生じやすい。そこで、図8に示すような、発光体毎にメタルバック(ゲッタ層)を分断する耐放電技術が開示されている。すなわち、ブラックマトリクス層5の上にゲッタ分断層2を設け、蛍光層6を覆うゲッタ層と、ブラックマトリクス層5を覆うゲッタ層とを分断して設けている。このため、ある発光体24で放電が生じても、放電電流が伝わるメタルバック(ゲッタ層)が分断されているので、放電の影響は局部的なものにとどまる。
【0021】
本実施形態ではこのような耐放電技術を用いているため、遮光層21の上にメタルバック分断層26が形成され、第三の部分25cはメタルバック分断層26の上に形成されている。すなわち、第三の部分25cは、第一の部分25a、第二の部分25bよりも電子放出素子41に近接した位置に設けられ、第一の部分25a、第二の部分25bと物理的に分断され、その結果電気的にも分離している。メタルバック25は、発光体24の少なくとも一辺に沿って、隣接するメタルバック25と電気的に分断されていることが望ましい。
【0022】
図2(a)は、境界部付近のメタルバックの部分拡大図である。第二の部分25bのメタルバックの算術平均粗さ(Ra)は、第一の部分25aのメタルバックの算術平均粗さ(Ra)よりも大きい。具体的には、周辺領域24bではメタルバック25は蛍光体粒子31の形状に沿って蛍光体粒子31に密着しており、凸凹の度合いが大きい。このメタルバックの凹凸については、例えば、断面SEMで確認することが出来る。また、メタルバック表面の高さを測定することによって確認することも出来る。
【0023】
また、メタルバック25の第二の部分25bの拡散反射率は、第一の部分aの拡散反射率よりも小さい。ここで、「拡散反射率」とは、上述したように、面の入射光に対する拡散光の割合を示すものである。具体的には、面の法線に対して入射角45度、受光角0度で測定されるものを意味する。この拡散反射率は、面の色の明るさを表すものであり、画像表示装置において拡散反射率が低いことは画面の黒さが向上することを意味する。
この構造によって、第二の部分25bは、平面型表示装置1の外部から入射した外光を散乱させて前面基板20から平面型表示装置1の外部へ反射させるため、拡散反射率が低減し、従来より画面の黒さを改善することができる。本実施形態は発光への寄与の小さい発光体24の周辺領域24bにおける外光反射による悪影響を、メタルバックの凹凸の度合いを高めることで抑制するものである。したがって、本実施形態は照射される電子ビームの大きさが発光体24の大きさに対して小さい場合に有効である。
【0024】
また、本実施形態では、周辺領域24bでメタルバック25と蛍光体粒子31との単位面積当たりの接触面積が増加している結果、周辺領域24bでメタルバック25の蛍光体粒子31への密着性が高められている。この結果、本実施形態は、メタルバック25の剥がれが生じにくくなり、耐圧特性を向上させることができるという効果も有している。すなわち、FEDやSEDでは前面基板と背面基板の間の小さな隙間42に電子ビームを加速する大きな電界を加えるため、両者の間でしばしば放電が発生する。特に、蛍光体上に形成されたメタルバックは、クーロン力により剥がれて放電原因となることが多かった。この問題は、メタルバック25の付着力が蛍光体粒子31と接触している部分からしか得られないメタルバック分断構造において特に顕著となる。しかも、メタルバック25は粒径の大きい蛍光体粒子31の頂部にほぼ平坦に形成されているため、蛍光体粒子31との接触面積が小さく、メタルバック25が剥がれやすくなる。この問題を解決するために中央領域24aでメタルバック25と蛍光体粒子31との接触領域を増やすと、必然的にメタルバック24の表面が蛍光体粒子31に沿った凸凹形状となり、本来前面に向けて反射すべき蛍光体粒子31からの背面光が散乱し、輝度が低下する。本実施形態では、中央領域24aの形状は平坦に保ったまま、周辺領域24bでメタルバック25の蛍光体粒子31への密着性を高めているため、輝度への影響を抑えつつメタルバック25の剥がれが生じにくくなり、耐圧特性を向上させることができる。
【0025】
なお、これまでの説明で用いた図2(a)においては、中央領域24aと周辺領域24bとの境界部である鎖線A−Aは、メタルバックの第一の部分25aと第二の部分25bとの境界と等しい位置であったが、本発明はこの構成に限られるものではない。すなわち、鎖線A−Aが、メタルバックの第一の部分25aと第二の部分25bとの境界と異なる位置にある場合であっても、本発明の効果を奏し得る。図2(b)は、メタルバックの第一の部分25aが中央領域24aだけでなく周辺領域24bの一部をも覆う構成を示したものである。すなわち、本発明におけるメタルバックは、「第1領域」のみを覆う構成に限られるものではなく、「少なくとも第1領域」を覆う構成であるといえる。
【0026】
この場合、周辺領域24bにあるメタルバックの第一の部分25aにおいては拡散反射率や算術平均粗さ(Ra)は、中央領域24aにあるメタルバックの第一の部分25aにおける拡散反射率や算術平均粗さ(Ra)と差異は無い。しかし、本発明における「第2領域における拡散反射率」や「第2領域におけるメタルバックの算術平均粗さ」とは、このような局所的なものを意味するものではなく、単位面積当たりで平均した拡散反射率や算術平均粗さ(Ra)を意味する。図2(b)において、中央領域24aを覆うメタルバックは第一の部分25aのみであるのに対し、周辺領域を覆うメタルバックは第一の部分25aと第二の部分25bである。そのため、単位面積当たりで平均した拡散反射率や算術平均粗さ(Ra)は、中央領域24aと周辺領域24bとで異なるものとなり、拡散反射率や算術平均粗さ(Ra)の性質は、これまで図2(a)を用いて説明した場合と同様の性質を示す。これは後述する実施形態においても同様である。
【0027】
また、本実施形態ではメタルバック分断層26によりメタルバックを分断する構成を説明したが、これは本発明の必須要件ではない。
【0028】
図3は、上述したメタルバックの作成方法を説明するための模式図である。ガラス基板32に遮光層21およびバンク層22をフォトリソグラフィにより形成し、遮光層21に開口23を形成する。次に、各開口23に赤、緑、青の蛍光体粒子31のいずれかを充填して発光体24を形成する。さらにバンク層22の一部の上にメタルバック分断層26をフォトリソグラフィにより形成する。一例では、発光体24およびバンク層22の上面はガラス基板32より約10μm上方にあり、バンク層22も約10μmの厚さである。メタルバック分断層26は発光体24の左右端のみに形成されているが、これに限定されない。発光体24の左右幅は150μmであり、照射される電子ビームの半値幅(中央領域)は120μm、発光体の左右端各15μmを周辺領域とした。
【0029】
次に、発光体24に第一および第二の平坦化層28,29をフォトリソグラフィにより形成する。メタルバック25は金属を蒸着することによって形成されるが、蛍光体粒子31は2〜8μm程度の粗い粒子であるため、そのまま蒸着しても隙間が大きくメタルバック25が成膜されない。このため、2層の平坦化層28,29を形成して蛍光体粒子31間の隙間を埋める。具体的には、充填された蛍光体粒子31のうち、最上部の蛍光体粒子31の頂部が一部露出するように第一の平坦化層28を形成する。さらに中央領域24aの第一の平坦化層28上に、蛍光体粒子31の凸凹を完全に埋め、平坦な面が形成されるように第二の平坦化層29を形成する。この状態で金属層を蒸着させ、その後第一の平坦化層28および第二の平坦化層29を除去すると、図2に示すような、周辺領域24bで蛍光体粒子31に密着した凸凹形状のメタルバック25を形成することができる。
【0030】
(第二の実施形態)
図4は、本発明の第二の実施形態を示す前面基板の概略断面図である。本実施形態は、メタルバックの第二の部分25bが、発光体24を構成する蛍光体粒子31の一部を露出させる開口33を有していることを特徴としている。開口33は図に示すように蛍光体粒子31毎に設けてもよいし、複数の蛍光体粒子31毎に設けてもよい。また、蛍光体粒子31の配列ピッチと無関係にランダムに設けてもよい。開口33は、メタルバック25を分断させて亀裂あるいは穴を設けることによって形成することができる。
【0031】
すなわち、本実施形態においては、中央領域24aに比べて周辺領域24bに多くの開口33が設けられているため、周辺領域24b(第2領域)の面積に対する第2領域を覆うメタルバックの面積の割合は、中央領域24a(第1領域)の面積に対する第1領域を覆うメタルバックの面積の割合よりも小さくなる。ここで、第2領域を覆うメタルバックの面積、第1領域を覆うメタルバックの面積、とは、基板直交方向Dから前面基板20と平行な面への投影面におけるメタルバックの面積を意味する。例えば、前面基板20の外側(背面基板40が設けられていない側)から光を投影し、前面基板20の内側(背面基板40が設けられている側)で透過光を測定した場合に、透過光が測定されない部分の面積が本発明におけるメタルバックの面積に相当する。
【0032】
周辺領域24bでは、外光が入射すると一部の光は開口33から背面基板40側へ抜けていく。このため、周辺領域24bにおいてメタルバック25での反射が抑制され、拡散反射率が低減するため、従来技術より黒さを改善することができる。
【0033】
前述したように、メタルバックを分断することによって沿面耐圧特性が改善されるが、その場合でも、放電時には分断されたメタルバック間に電位差が発生する。このため、この電位差に見合う沿面耐圧が確保できないと放電領域が広がって放電電流が増大してしまう。本実施形態では、メタルバックが周辺領域で分断されているため、放電時には電流は分断された高抵抗状態のメタルバックを流れる。このため、沿面耐圧特性が向上するというメリットもある。
【0034】
さらに、本実施形態は表示装置としての真空特性が改善されるという効果も有している。すなわち、蛍光面を形成する際にはアクリル樹脂を主成分とする有機樹脂溶液等の様々な樹脂や溶剤を用いるが、これらは大気焼成によって分解消滅する。しかしながら、この分解消滅には酸素の供給が不可欠で、酸素が不足すると分解消滅が不十分となり、樹脂や溶剤が表示装置の内部空間に残存し、真空度を低下させる。電子放出素子は残留ガスに敏感で、特に電子放出素子と対向する蛍光面のガス放出レートを厳しく抑制する必要がある。従来技術ではメタルバックで覆われた内側はメタルバックにより酸素供給が遮断され、樹脂や溶剤の分解消滅が不十分となる傾向があった。本実施形態ではメタルバック25が周辺領域24bで分断されているため、酸素がメタルバック25の開口33からメタルバック25の内側に供給され、速やかに樹脂および溶剤を分解消滅させることができる。さらに開口33は樹脂および溶剤の分解によって生じたガスの排出も促進するので、一層真空特性が改善される。
【0035】
次に、上述したメタルバックの作成方法は、基本的には第1の実施形態のメタルバックの作成方法と同じである。第1の実施形態では、第一の平坦化層28を形成する際に、充填された蛍光体粒子31のうち最上部の蛍光体粒子31の頂部が一部露出するようにした。これに対し、第2の実施形態では、第一の平坦化層28を形成する際に、充填された蛍光体粒子31のうち最上部の蛍光体粒子31の頂部が露出される度合いが第1の実施形態に比べて大きい。具体的には、例えば、最上部の蛍光体が全て露出する程度に第一の平坦化層28を形成した場合に、本実施形態の開口33を有するメタルバックが形成される。
【0036】
(第三の実施形態)
図5は、本発明の第三の実施形態を示す前面基板の概略断面図である。本実施形態は、メタルバック分断層が周辺領域を覆うように大きく張り出して形成され、発光体の周辺領域にはメタルバックが形成されないことを特徴としている。
【0037】
前面基板20は、隣接する発光体24同士を仕切る遮光層21と、メタルバック分断層261と、を有している。メタルバック分断層261は、基板直交方向Dに沿って延び、電子放出素子に近接する第一の端面34と、電子放出素子から離れた第二の端面35とを備えている。第一の端面34は背面基板(図示せず)から前面基板20を基板直交方向Dにみたときに、遮光層21と周辺領域24bとを覆い、第二の端面35は遮光層21の少なくとも一部を覆っている。メタルバック25はさらに、背面基板から前面基板20を基板直交方向Dにみたときに遮光層21を覆う第三の部分25cを有している。第二、第三の部分25b,25cは、第一の部分25aよりも電子放出素子に近接した位置に、メタルバック分断層261を覆って設けられている。メタルバック分断層261は発光体24側に横方向に張り出して、発光体24の左右端の周辺領域24bでメタルバック25が蒸着されない領域を形成しているが、メタルバックが蒸着されない領域はこれに限定されない。
【0038】
本実施形態では、第一、第二の実施形態では周辺領域24bに密着していたメタルバック(第二の部分25b)がメタルバック分断層26上に設けられている。このため、外光が第二の部分25bに入射するためにはメタルバック分断層261の一部を貫通しなければならず、第二の部分25bに到達する外光の強度は、蛍光体上に第二の部分25bが設けられていた場合と比べて小さなものとなる。これによって拡散反射率が低減し、従来技術より黒さを改善することができる。さらに、本実施形態では周辺領域24bにメタルバック25が設けられていないため、沿面耐圧および真空特性に関しては第二の実施形態と同等以上の効果が得られる。

(第四の実施形態)
第1の実施形態、第2の実施形態において、発光体24の周辺領域24bの少なくとも一部にメタルバックの第二の部分25bが設けられていれば、本発明の効果を有する。例えば、発光体24の左右端や上下端にメタルバックの第二の部分25bが設けられていてもよいし、発光体24の一辺にメタルバックの第二の部分25bが設けられていてもよい。
【0039】
また、第3の実施形態において、発光体24の周辺領域24bの少なくとも一部でメタルバック25が蒸着されない領域が形成されていれば、本発明の効果を有する。例えば、発光体24の左右端や上下端の周辺領域24bでメタルバック25が蒸着されない領域を形成してもよいし、発光体24の一辺にメタルバック25が蒸着されない領域を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第一の実施形態を示す前面基板の概略断面図である。
【図2】図1に示す前面基板の部分拡大断面図である。
【図3】図1に示す前面基板の製造方法を説明する模式図である。
【図4】本発明の第二の実施形態を示す前面基板の概略断面図である。
【図5】本発明の第三の実施形態を示す前面基板の概略断面図である。
【図6】従来技術の平面型表示装置における一般的な蛍光面構成を示す図である。
【図7】発光体に電子ビームが照射される状況を示す模式図である。
【図8】メタルバック分断構造を採用した従来技術の平面型表示装置における、前面基板の概略断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 平面型表示装置
20 前面基板
21 遮光層
23 開口
24 発光体
24a 中央領域(第1領域)
24b 周辺領域(第2領域)
25 メタルバック
25a 第一の部分
25b 第二の部分
25c 第三の部分
26,261 メタルバック分断層
28 第一の平坦化層
29 第二の平坦化層
31 蛍光体粒子
34 第一の端面
35 第二の端面
40 背面基板
41 電子放出素子
D 基板直交方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面基板と、該背面基板に対向する前面基板と、を備える画像表示装置であって、
前記背面基板は電子放出素子を備え、
前記前面基板は前記電子放出素子からの電子の照射により発光する発光体と、前記電子放出素子と前記発光体との間に設けられたメタルバックと、を備え、
前記発光体は、該発光体における輝度の最大値に対する輝度が50%以上である第1領域と50%未満である第2領域と、を有し、
前記第2領域におけるメタルバックの算術平均粗さは前記第1領域におけるメタルバックの算術平均粗さよりも大きいこと、
を特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
背面基板と、該背面基板に対向する前面基板と、を備える画像表示装置であって、
前記背面基板は電子放出素子を備え、
前記前面基板は前記電子放出素子からの電子の照射により発光する発光体と、前記電子放出素子と前記発光体との間に設けられたメタルバックと、を備え、
前記発光体は、該発光体における輝度の最大値に対する輝度が50%以上である第1領域と50%未満である第2領域と、を有し、
前記第2領域の面積に対する前記第2領域を覆うメタルバックの面積の割合は、前記第1領域の面積に対する前記第1領域を覆うメタルバックの面積の割合よりも小さいこと、
を特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
背面基板と、該背面基板に対向する前面基板と、を備える画像表示装置であって、
前記背面基板は電子放出素子を備え、
前記前面基板は前記電子放出素子からの電子の照射により発光する発光体と、前記電子放出素子と前記発光体との間に設けられたメタルバックと、を備え、
前記発光体は、該発光体における輝度の最大値に対する輝度が50%以上である第1領域と50%未満である第2領域と、を有し、
前記メタルバックは、少なくとも前記第1領域を覆い、
前記第2領域における拡散反射率は、前記第1領域における拡散反射率よりも小さいこと、
を特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
前記前面基板は、前記発光体を複数備え、隣接する前記発光体の間に遮光部材を備え、
前記遮光部材を覆うメタルバックと前記発光体に接するメタルバックとは分離していること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記メタルバックは、前記発光体の少なくとも一辺に沿って、隣接する前記メタルバックと電気的に分断されていること、
を特徴とする請求項4に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−123956(P2008−123956A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309175(P2006−309175)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】