画像表示装置
【課題】電子放出素子が経時変化したとしても、画像データに応じた素子電流にして、輝度変化を防止するとともに、走査線に流れる電流により発生する電圧降下を一定にして、スメアが経時変化するのを防ぐ。
【解決手段】検出抵抗1により走査線電流を検出し、加減算器5とA/D変換器2により電流検出データ8が得られる。この電流検出データ8を電圧補正回路6へ入力して、走査選択電圧とデータ電圧の補正量を演算して、補正信号10を出力する。この補正信号10を用いて、走査電極電圧補正回路16は、走査選択電圧の補正を行う。また、電圧補正回路6は、電流検出データ8と画像データ207からデータ電極駆動データ11を生成してデータ電極駆動回路7へ入力する。
【解決手段】検出抵抗1により走査線電流を検出し、加減算器5とA/D変換器2により電流検出データ8が得られる。この電流検出データ8を電圧補正回路6へ入力して、走査選択電圧とデータ電圧の補正量を演算して、補正信号10を出力する。この補正信号10を用いて、走査電極電圧補正回路16は、走査選択電圧の補正を行う。また、電圧補正回路6は、電流検出データ8と画像データ207からデータ電極駆動データ11を生成してデータ電極駆動回路7へ入力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子放出素子をマトリックス状に配置した画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、互いに直交する配線の交点に電子放出素子を設け、各電子放出素子への印加電圧又は印加時間を変調することにより、電子放出素子からの電子放出量を制御し、高電圧により放出電子を加速して蛍光体へ照射する自発光型のマトリックス方式ディスプレイが注目を集めている。この種のディスプレイに用いられる電子放出素子には、金属/絶縁膜/金属型、電界放出型、表面伝導型などがある。
【0003】
電子放出素子を用いる表示パネルは、マトリックス状に配置された複数の電子放出素子と、これらの電子放出素子を駆動するための配線とが設けられた背面板と、蛍光体が塗布された前面板とから構成されている。
【0004】
図8は、表示パネルにおける背面板の概略図である。図8において、201は各画素を構成する電子放出素子である。電子放出素子201は、垂直方向のデータ線202と水平方向の走査線203との交点に配置され各配線に接続されている。D1〜Dmは各データ線201へのデータ信号を印加するデータ電極、S1〜Snは各走査線203への走査選択電圧と走査非選択電圧を印加する走査電極である。
【0005】
図9は、電子放出素子201への印加電圧Vと電子放出素子に流れる素子電流I(対数軸)のLog(I)−V特性図である。図9において、印加電圧Vに対して流れる素子電流Iは指数関数的に増加する。電子放出素子への印加電圧Vに対する電子放出素子に流れる素子電流Iの特性は、素子電流Iが所定のしきい電流Ithのときのしきい電圧Vthと、印加電圧Vに対する素子電流Iの傾きαとで近似的に表すことができる。
【0006】
図10は、電子放出素子を用いた表示パネルを駆動するための駆動回路である。なお、走査線の電圧がデータ線の電圧よりも高い電圧のときに電子放出素子に電流が流れる場合について述べる。
【0007】
図10において、タイミングコントローラ205は、画像信号210と同期信号204を入力して、データ電極駆動回路7に、コントロール信号208と画像データ207を生成して出力し、走査電極選択回路30に、コントロール信号214を生成して出力する。
【0008】
データ電極駆動回路7は、表示パネル215を構成する背面板のデータ電極D1〜Dmにデータ電圧を出力する。また、走査電極選択回路30は、表示パネル215を構成する背面板の走査電極S1〜Smのうちの一電極に走査選択電圧を出力する。
【0009】
走査電極選択回路30において、コントロール信号214に基づいて、走査選択スイッチSH1〜SHnまでのうち1つが選択されてオンとなり、選択された走査線の走査電極S1〜Snの1つに、第1の基準電圧源211からの走査選択電圧を印加する。また、非選択状態の走査線に対応した複数の非選択スイッチSL1〜SLnをオンとして、第2の基準電圧源212からの走査非選択電圧を走査電極に供給する。図10においては、走査選択スイッチSH2が選択された場合を示している。なお、高圧回路220は、表示パネル215の前面板へ高電圧を供給する。
【0010】
図11は、図10に示した駆動回路にて線順次動作を行った場合の動作波形図である。図11において、例えば、信号VSH1が、走査選択スイッチSH1の制御信号であり、ハイレベルのときに、走査選択スイッチSH1がオンとなる。
【0011】
垂直走査は、走査電極S1に接続された走査線から選択動作から始まる。期間T1にて信号VSH1がハイレベルとなると、走査選択スイッチSH1がオンし、第1番目の走査電極S1に走査選択電圧が印加される。このとき、データ電極駆動回路7により、画像データ207に応じたデータ電圧Vd11〜Vd1mがそれぞれのデータ電極D1〜Dmへ供給される。
【0012】
次に、期間T2にて信号VSH2がハイレベルとなると、走査選択スイッチSH2がオンとなり、第2番目の走査電極S2へ走査選択電圧が供給される。このときのデータ電圧Vd21〜Vd2mがそれぞれのデータ電極D1〜Dmへ供給される。順次、これらの動作を行い、1フィールド分の画像データを表示パネルに表示する。
【0013】
以上、電子放出素子をマトリックス状に配置した画像表示装置は、前面板から背面板に流れる素子電流の経時変化により輝度が変化するという課題がある。この問題を解決するため、下記特許文献1には、放出電流を高圧回路の負極側に接続した検出抵抗により検出し、検出された電流値をA/D変換して、その電流データが予め設定した基準値と合致するように、電子放出素子への印加電圧を制御することが記載されている。
【0014】
また、素子電流の大半が前面板に電子として放出されず、走査線に流れ、走査線抵抗と走査電極選択回路の選択スイッチのオン抵抗とにより電圧降下が生じ、スメアと呼ばれる輝度段差により画質が劣化する。この課題に対し、下記特許文献2には、画像信号に応じて決まる走査線の各部の電圧降下を補償するようにデータ電圧を補正することが記載されている。
【0015】
また、下記特許文献3には、走査電極選択回路の選択スイッチのオン抵抗と画像信号に応じて流れる電流とにより電圧降下が生じても走査電極に出力される走査選択電圧が所定の基準値となるように駆動することが記載されている。
【特許文献1】特開2001−202059号公報
【特許文献2】特許第3311201号公報
【特許文献3】特開2004−86130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
表示パネルの輝度を決める前面板から背面板に流れる放出電流は、(1)電子放出素子に印加電圧Vを与えた時に電子放出素子に流れる素子電流Iと、(2)素子電流Iに応じて流れる放出電流の割合(エミッション効率)との乗算によって決まる。
【0017】
特許文献1に記載された方法では、経時変化によりエミッション効率が劣化すると、I−V特性に変化がなくとも、放出電流を基準値とするために印加電圧Vが制御され素子電流Iが増加する。この結果、走査線に流れる電流が増加し、電圧降下量が増加するため、スメアが劣化する。
【0018】
また、初期に、特許文献2,3に記載された方法で、スメアが抑制できても、時が経るとスメアによる画質劣化が目立つようになる。スメアは、画面全体の輝度変化よりも顕著に検知できる現象であり、その抑制が望まれている。
【0019】
また、特許文献1では、電圧印加時間の変調により画像を表示しているため、特定の電流値を検出して基準値と合致するように印加電圧が制御されている。しかし、この方法では、図11に示したデータ電圧の電圧振幅変調により画像を表示する場合には、図9に示すI−V特性の傾きαが経時変化すると、特定の電流値に対応する画像データはともかく、それ以外の画像データでの輝度の変化が生じる。
【0020】
本発明の目的は、電子放出素子が経時変化したとしても、画像データに応じた素子電流にして、輝度変化を防止するとともに、走査線に流れる電流により発生する電圧降下を一定にして、スメアが経時変化するのを防ぐことにある。
【0021】
これにより、画質劣化がなく、信頼性の高い画像表示装置を提供することができる。また、電圧振幅変調により画像を表示する場合にもI−V特性の傾きαの経時変化による輝度変化の生じない画像表示装置を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、互いに平行な複数本の走査線と、それと直交する複数本のデータ線と、これらの線の交点に接続された複数の電子放出素子を有する背面板と、前記電子放出素子からの電子により発光する蛍光体を有する前面板とからなる表示パネルと、前記走査線に接続された走査電極選択手段と、前記データ線に接続されたデータ電極駆動手段と、前記電子放出素子からの放出電子を加速して蛍光体へ照射させるための高圧手段とを備えた画像表示装置において、前記走査電極選択手段から前記走査線に流れる走査線電流を検出する走査線電流検出手段と、前記走査線電流検出手段の検出結果に基づき前記走査線電流が所定値となるように前記走査電極選択手段が出力する走査線選択電圧を補正する走査電極電圧補正手段とを有することを特徴とする。
【0023】
また、前記走査電極選択手段から前記走査線に流れる走査線電流を検出する走査線電流検出手段と、前記走査線電流検出手段の検出結果に基づき前記電子放出素子を流れる電流が画像データに対応するように前記データ電極選択手段が出力するデータ電圧を補正する電圧補正手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
以上、本発明によると、走査線電流を検出し、走査選択電圧とデータ電圧のいずれか一方又は両方を補正することで、電子放出素子のしきい電圧や傾きが経時変化しても、画像データに応じた素子電流とでき、輝度変化を防止できる。
【0025】
また、走査線に流れる電流により発生する電圧降下も一定にできスメアが経時劣化することも防げる。したがって、信頼性が高く、かつ、高画質の画像表示装置を提供できる。
【0026】
従来の電子放出素子をマトリックス状に配置したディスプレイでは、電子源の経時変化や温度特性変化によりスメアが発生して、表示画像の品質に影響を与えるが、本発明を従来のマトリックス方式ディスプレイへ適用することにより、好適な映像表示を可能とする。また、本発明は、金属/絶縁膜/金属型、電界放出型、表面伝導型など冷陰極素子を用いた画像表示装置に対して有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を用いて、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0028】
本発明に係る画像表示装置について、図1と図2を用いて説明する。図1は、本実施例の回路構成図である。図2(a)(b)は、電子放出素子のI−V特性の経時変化を説明するための図である。
【0029】
図1において、電源3は、走査電極電圧補正回路16へ電力を供給する電源である。検出抵抗1は、電源3から走査電極電圧補正回路16と走査電極選択回路30を介して選択された走査線に流れ込む走査線電流を検出する。
【0030】
加減算器5は、検出抵抗1の両端の電位を入力して、検出抵抗1の両端電圧差に比例した出力信号12を出力する。出力信号12は、アナログ−デジタル(A/D)変換器2によりデジタルの電流検出データ8へ変換され、電圧補正回路6へ入力される。
【0031】
電圧補正回路6は、走査電極電圧補正回路16の出力電圧を補正する補正信号10を生成する。走査電極電圧補正回路16は、補正信号10を用いて、走査電極選択回路30から出力される走査選択電圧を所定の電圧値へ補正する。
【0032】
また、電圧補正回路6は、タイミングコントローラから入力される画像データ207と電流検出データ8を用いて、データ電極駆動データ11を生成し、データ電極駆動回路7に入力する。
【0033】
検出抵抗1とA/D変換器2と加減算器5とで、走査線電流検出回路20が構成されている。7,30,207,211,212,215,220は図10と同様である。
【0034】
図2(a)(b)は、電子放出素子のI−V特性の異なる経時変化を説明するための図である。図2(a)において、I−V特性の電圧軸方向の平行移動を表すしきい電圧がVthからVth’へ変化する。このような電子放出素子のしきい電圧の経時変化を補償するように、走査電極選択回路30から出力される走査選択電圧を補正する。
【0035】
この補正について、説明する。図1において、所定個数の電子放出素子への印加電圧が、しきい電圧Vthとなる画像データ207を電圧補正回路6に入力する。電圧補正回路6は、走査線電流検出回路20から得られる電流検出データ8と画像データ207より得られる走査線電流値(具体的には、しきい電流値Ithで電子放出をしている電子放出素子の走査線方向の個数としきい電流値Ithとを乗じた値)とを比較して、素子電流をIthとするために必要な印加電圧Vth’を表す補正信号10を生成する。この補正信号10を用いて、走査電極補正回路16は、走査選択電圧を補正する。これにより、電子放出素子のしきい電圧がVthからVth’へ変化しても、電子放出素子の素子電流は一定のIthとなる。
【0036】
また、図2(b)に示すように、電子放出素子は、印加電圧Vに対する素子電流Iの対数の傾きがαからα’に経時変化する。このような傾きの変化を補正するように、データ
電圧を補正する。
【0037】
この補正について、説明する。図1において、電子放出素子への印加電圧が、しきい電圧Vth以外となる画像データ207を電圧補正回路6に順次入力する。電圧補正回路6は、走査線電流検出回路20から順次得られる電流検出データ8から傾きα’を求めて、画像データ207をα/α’倍したデータ電極駆動データ11を生成する。このデータ電極駆動データ11を用いて、データ電極駆動回路7は、表示パネル215へデータ電圧を出力する。これにより、画像データ207に対応するように、データ電圧をα/α’倍と補正するので、電子放出素子のI−V特性の傾きが経時変化しても、画像データ207に対応した素子電流となる。
【0038】
なお、図2(a)(b)示す電子放出素子の経時変化が、同時に存在する場合は、走査選択電圧とデータ電圧を同時に補正する。
【0039】
以上、本実施例によれば、電子放出素子をマトリックス状に配置したディスプレイにおいて、走査線電流を検出して、走査選択電圧とデータ電圧のいずれか一方又は両方を補正することで、電子放出素子のしきい電圧や傾きが経時変化しても、画像データに応じた素子電流とすることができ、輝度変化を防止できる。
【0040】
また、走査線に流れる電流による電圧降下を一定にすることができ、スメアが経時劣化することも防げる。したがって、信頼性が高く、かつ、高画質の画像表示装置を提供できる。
【実施例2】
【0041】
本発明に係る画像表示装置について、図3を用いて説明する。本実施例は、走査電極選択回路30の選択スイッチSHi(i=1〜n)のオン抵抗Ronと、画像データ207
に応じて流れる電流とにより電圧降下が生じても、走査電極Si(i=1〜n)に出力さ
れる走査選択電圧が、所定の基準電圧となるように駆動する際に、走査選択電圧となる基準電圧値を補正し、しきい電圧が経時変化しても、素子電流が変化しないようにしたものである。
【0042】
図3は、本実施例の回路構成図であって、説明を容易にするため、2本の走査線とそれらを駆動する回路のみを示している。図3において、表示パネル215内の2011〜2014は電子放出素子、2031〜2034は1画素相当の走査線抵抗である。走査電極選択回路30は、走査電極S1とS2の電圧を監視する帰還スイッチSF1とSF2を備える。走査電極電圧補正回路16は、負帰還増幅器13と加算器15からなる。
【0043】
負帰還増幅器13の逆相入力端子には、走査電極S1又はS2の電圧が帰還スイッチSF1又はSF2を介して入力される。負帰還増幅器13の電源供給端子14には、電源3から電力が供給される。
【0044】
走査線電流は、電源3から負帰還増幅器13内の出力素子と、走査選択スイッチSH1又はSH2を介して表示パネル215へ供給され、負帰還増幅器13の電源供給端子14と電源3と間に接続された検出抵抗1により検出される。
【0045】
加算器15は、基準電圧源211の電圧と、電圧補正回路6で生成された補正信号10を加算して基準走査選択電圧Vrefを生成して、負帰還増幅器13の正相入力端子へ入力する。
【0046】
まず、画像表示装置の電源をオンした直後に、全黒や特定の階調をもった検出用画像パターンに対応する画像データ207を電圧補正回路6に入力する。この画像データ207に基づいて、電圧補正回路6は、実施例1と同様にして、補正信号10を生成する。この補正信号10を用いて、加算器5は、基準走査選択電圧Vrefを発生する。
【0047】
次に、動画像を表示する通常状態となる。最初の水平走査期間において、走査選択スイッチSH1が選択されると、走査選択スイッチSH1と帰還スイッチSF1がオンとなり、非選択スイッチSL1はオフとなって、走査電極S1に走査選択電圧が印加される。なお、走査選択スイッチSH2と帰還スイッチSF2はオフであり、非選択スイッチSL2はオンであって、走査電極S2には、走査非選択電圧が印加される。
【0048】
次の水平走査期間では、走査選択スイッチSH2と帰還スイッチSF2がオンとなり、非選択スイッチSL2がオフとなって、走査電極S2に選択電圧が印加される。なお、走査選択スイッチSH1と帰還スイッチSF1はオフであり、非選択スイッチSL1がオンであって、走査電極S1には、走査非選択電圧が印加される。
【0049】
各水平走査期間では、走査電極に出力される走査選択電圧は、負帰還動作により、負帰還増幅器13の正相入力端子に入力された基準走査選択電圧Vrefに等しくなり、走査電極選択回路30の走査選択スイッチのオン抵抗Ronと画像データ207に応じて流れる電流とにより電圧降下が生じても走査線の電圧は変化しなくなる。
【0050】
なお、電子源特性の経時変化は緩やかな変化であるため、画像表示装置の電源をオンした直後に、基準走査選択電圧Vrefを発生するだけで、しきい電圧の経時変化による素子電流の変化は十分に防止できる。
【0051】
本実施例によれば、電子放出素子をマトリックス状に配置したディスプレイにおいて、走査電極選択回路の選択スイッチのオン抵抗と画像データに応じて流れる電流とにより電圧降下が生じても、走査選択電圧が所定の基準電圧となる。すなわち、走査線電流を検出して、初期の基準電圧を補正することで、電圧降下によるスメアの発生を防止するとともに、電子放出素子のしきい電圧が経時変化しても、画像データに対応した素子電流とすることができ、輝度変化を防止できる。したがって、信頼性が高く、かつ、高画質の画像表示装置を提供できる。
【実施例3】
【0052】
本発明に係る画像表示装置について、図4、図5及び図6を用いて説明する。図4は、本実施例の回路構成図、図5と図6は、図4の動作波形図である。図4において、図3と同じ符号は同じものを示す。
【0053】
図4において、表示パネル215の表示外領域217に、基準となる走査線の電流を検出するために、基準走査電極S0と、基準となる走査線とデータ線の交点に接続される電子放出素子2009と2010を設けている。
【0054】
基準となる走査線に接続された電子放出素子の数は、表示領域218の水平画素数と同じである。また、基準走査電極S0と走査選択スイッチSH0との間には、検出抵抗1が設けられている。なお、SF0は帰還スイッチ、SL0は非選択スイッチである。他の構成は、図3と同じである。
【0055】
次に、動作を説明する。まず、図5に示す期間T0の水平走査期間に、駆動パルス(VS0)17が基準走査電極S0に印加され、基準走査電極S0が駆動される。なお、垂直表示期間は、図5に示す時刻Tstvに始まり、駆動パルス(VS1)18により走査電極S1が水平走査期間T1に駆動され、次の駆動パルス(VS2)19により走査電極S2が水平走査期間T2に駆動されて、以後、線順次駆動が行われる。
【0056】
垂直走査期間毎に、基準走査電極S0を選択して、走査線電流の検出と、電圧補正回路6での比較演算を実施する。走査線電流検出のために入力する画像データは2垂直走査期間毎に変化させる。
【0057】
第1の垂直走査期間には、電子放出素子への印加電圧が、しきい電圧となるような画像データ207を入力して、このときの走査線電流を検出し、走査選択電圧となる基準電圧値を補正して、電子放出素子のしきい電圧の変化を補償する。
【0058】
続く、第2の垂直走査期間には、電子放出素子への印加電圧が、しきい電圧以外となるような画像データ207を入力して、このときの走査線電流を検出し、データ電圧を補正して、電子放出素子のI−V特性の傾きの変化を補償する。
【0059】
図6は、表示外領域217の基準走査電極S0の駆動パルス17と、表示領域218の走査電極の駆動パルス18と19の詳細波形図である。基準走査電極S0の駆動パルス17の立ち上がり速度は、走査選択スイッチSH0のオン抵抗Ronに検出抵抗1の抵抗値を加えた合成抵抗と走査線に繋がる容量により決まる。したがって、走査線電流の検出は、駆動パルス17が定常値に達した以降の期間Tspで行う。
【0060】
他方、走査電極S1とS2の駆動パルス18と19の立ち上がり速度は、走査選択スイッチのオン抵抗Ronと走査線に繋がる容量により決まる。したがって、表示領域218における検出抵抗1に起因した走査電極駆動波形の立ち上がり遅延は発生しない。よって、検出抵抗1に関わる輝度低下は発生しない。
【0061】
本実施例によれば、実施例1、実施例2と同様の効果を得られる。さらに、表示領域外に設けた電子放出素子を用いて走査線電流を検出するので、動画像を映し出す通常状態での走査線電流の検出を行うことができ、経時変化だけなく、電子放出素子の温度変化にも追従した補正を行うことができる。
【0062】
さらに、検出抵抗に関する波形遅延がなく、輝度低下が発生しない。したがって、信頼性が高く、高画質の画像表示装置を提供できる。
【実施例4】
【0063】
本発明に係る画像表示装置について、図7を用いて説明する。図7は、本実施例の回路構成図である。図7において、図4と同じ符号は同じものを示す。
【0064】
図7において、走査選択スイッチSH0のオン抵抗Ronの電圧降下量より走査線電流を検出する。すなわち、加減算器5に、負帰還増幅器13の出力電圧と逆相入力電圧を入力することにより、加減算器5は、走査選択スイッチSH0のオン抵抗Ronと走査線電流との積に比例した出力信号12を出力する。この出力信号12を、A/D変換器2を用いて、デジタルの電流検出データ8へ変換して、電圧補正回路6へ入力する。
【0065】
図4に示す実施例3と同様に、走査線電流検出のために、表示パネル215の表示外領域217に、走査電極S0と、走査線とデータ線に接続される電子放出素子2009、2010を設け、垂直走査期毎に、走査線電流の検出と、電圧補正回路6での比較演算を実施して、しきい電圧と傾きの経時変化を補償する。
【0066】
本実施例によれば、実施例3と同様の効果がえられるとともに、走査線電流検出回路20における検出抵抗1が不要となる。したがって、低コストで信頼性が高く、高画質の画像表示装置を提供できる。
【0067】
なお、本実施例では、表示外領域217を設けなくとも、電源がオンした直後から通常の表示状態に至る期間において、全黒や特定の階調をもつ検出用画像パターンに対応する画像データを入力して、走査線電流の検出と補正が行える。
【0068】
実施例1から4は、電子放出素子のI−V特性が経時変化しても、画像データに応じた素子電流とすることによって、輝度とスメアの経時変化を抑制している。しかし、電子放出素子から放出される電子量についてのエミッション効率が変化した場合の輝度変化を防ぐことができない。
【0069】
エミッション効率の経時変化による輝度変化が問題となる時には、実施例1から4のいずれかを用いて、まず、I−V特性による経時変化を抑制した後、例えば、高圧回路220において、放出電流を検出し、その放出電流が予め設定した基準値と合致するように、電子放出素子へのデータ電圧の印加時間又は高圧回路の出力電圧値を補正することで解決できる。
【0070】
また、実施例2から4では、走査電極選択回路30の出力点となる走査電極Si(i=1〜n)の電圧を帰還させ、選択スイッチSHi(i=1〜n)を構成するトランジスタのソースに入力される電圧を制御することにより、選択スイッチでの電圧降下によらず走査選択電圧を所定の基準電圧としているが、選択スイッチを構成するトランジスタのゲートに入力される電圧を制御することにより、選択スイッチでの電圧降下によらず走査選択電圧を所定の基準電圧としてもよい。
【0071】
さらに、実施例2から4において、電流検出データ8に基づいて演算パラメータを生成し、この演算パラメータと画像データ207とからデータ電極駆動データ11を演算して、画像データ207に応じて決まる走査線の各部の電圧降下を補償するように、データ電圧を補正することにより、電子放出素子のI−V特性が経時変化しても、走査線抵抗により発生する電圧降下を抑制して、スメアによる画質劣化が生じないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施例1の回路構成図。
【図2】実施例1を説明するための電子放出素子I−V特性の経時変化図。
【図3】本発明の実施例2の回路構成図。
【図4】本発明の実施例3の回路構成図。
【図5】実施例3を説明するための動作波形図。
【図6】実施例3を説明するための動作波形図。
【図7】本発明の実施例4の回路構成図。
【図8】電子放出素子をマトリックス状に配置した背面板の構造モデル図。
【図9】電子放出素子の電圧‐電流特性図。
【図10】電子放出素子を用いた表示パネルの駆動回路の構成図。
【図11】図10の駆動回路の動作を説明するための動作波形図。
【符号の説明】
【0073】
1…検出抵抗、2…アナログ−デジタル変換器、3…電源、5…加減算器、6…電圧補正回路、7…データ電極駆動回路、8…電流検出データ、10…補正信号、11…データ電極駆動データ、12…出力信号、13…負帰還増幅器、14…電源入力端子、15…加算器、16…走査電極電圧補正回路、20…走査線電流検出回路、30…走査電極選択回路、
201…電子放出素子、202…データ線、203…走査線、204…同期信号、205…タイミングコントローラ、207…画像データ、208…コントロール信号、210…画像信号、211…第1の基準電圧源、212…第2の基準電圧源、214…コントロール信号、215…表示パネル、220…高圧回路、
2009〜2014…電子放出素子、2029〜2034…1画素相当の走査線抵抗。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子放出素子をマトリックス状に配置した画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、互いに直交する配線の交点に電子放出素子を設け、各電子放出素子への印加電圧又は印加時間を変調することにより、電子放出素子からの電子放出量を制御し、高電圧により放出電子を加速して蛍光体へ照射する自発光型のマトリックス方式ディスプレイが注目を集めている。この種のディスプレイに用いられる電子放出素子には、金属/絶縁膜/金属型、電界放出型、表面伝導型などがある。
【0003】
電子放出素子を用いる表示パネルは、マトリックス状に配置された複数の電子放出素子と、これらの電子放出素子を駆動するための配線とが設けられた背面板と、蛍光体が塗布された前面板とから構成されている。
【0004】
図8は、表示パネルにおける背面板の概略図である。図8において、201は各画素を構成する電子放出素子である。電子放出素子201は、垂直方向のデータ線202と水平方向の走査線203との交点に配置され各配線に接続されている。D1〜Dmは各データ線201へのデータ信号を印加するデータ電極、S1〜Snは各走査線203への走査選択電圧と走査非選択電圧を印加する走査電極である。
【0005】
図9は、電子放出素子201への印加電圧Vと電子放出素子に流れる素子電流I(対数軸)のLog(I)−V特性図である。図9において、印加電圧Vに対して流れる素子電流Iは指数関数的に増加する。電子放出素子への印加電圧Vに対する電子放出素子に流れる素子電流Iの特性は、素子電流Iが所定のしきい電流Ithのときのしきい電圧Vthと、印加電圧Vに対する素子電流Iの傾きαとで近似的に表すことができる。
【0006】
図10は、電子放出素子を用いた表示パネルを駆動するための駆動回路である。なお、走査線の電圧がデータ線の電圧よりも高い電圧のときに電子放出素子に電流が流れる場合について述べる。
【0007】
図10において、タイミングコントローラ205は、画像信号210と同期信号204を入力して、データ電極駆動回路7に、コントロール信号208と画像データ207を生成して出力し、走査電極選択回路30に、コントロール信号214を生成して出力する。
【0008】
データ電極駆動回路7は、表示パネル215を構成する背面板のデータ電極D1〜Dmにデータ電圧を出力する。また、走査電極選択回路30は、表示パネル215を構成する背面板の走査電極S1〜Smのうちの一電極に走査選択電圧を出力する。
【0009】
走査電極選択回路30において、コントロール信号214に基づいて、走査選択スイッチSH1〜SHnまでのうち1つが選択されてオンとなり、選択された走査線の走査電極S1〜Snの1つに、第1の基準電圧源211からの走査選択電圧を印加する。また、非選択状態の走査線に対応した複数の非選択スイッチSL1〜SLnをオンとして、第2の基準電圧源212からの走査非選択電圧を走査電極に供給する。図10においては、走査選択スイッチSH2が選択された場合を示している。なお、高圧回路220は、表示パネル215の前面板へ高電圧を供給する。
【0010】
図11は、図10に示した駆動回路にて線順次動作を行った場合の動作波形図である。図11において、例えば、信号VSH1が、走査選択スイッチSH1の制御信号であり、ハイレベルのときに、走査選択スイッチSH1がオンとなる。
【0011】
垂直走査は、走査電極S1に接続された走査線から選択動作から始まる。期間T1にて信号VSH1がハイレベルとなると、走査選択スイッチSH1がオンし、第1番目の走査電極S1に走査選択電圧が印加される。このとき、データ電極駆動回路7により、画像データ207に応じたデータ電圧Vd11〜Vd1mがそれぞれのデータ電極D1〜Dmへ供給される。
【0012】
次に、期間T2にて信号VSH2がハイレベルとなると、走査選択スイッチSH2がオンとなり、第2番目の走査電極S2へ走査選択電圧が供給される。このときのデータ電圧Vd21〜Vd2mがそれぞれのデータ電極D1〜Dmへ供給される。順次、これらの動作を行い、1フィールド分の画像データを表示パネルに表示する。
【0013】
以上、電子放出素子をマトリックス状に配置した画像表示装置は、前面板から背面板に流れる素子電流の経時変化により輝度が変化するという課題がある。この問題を解決するため、下記特許文献1には、放出電流を高圧回路の負極側に接続した検出抵抗により検出し、検出された電流値をA/D変換して、その電流データが予め設定した基準値と合致するように、電子放出素子への印加電圧を制御することが記載されている。
【0014】
また、素子電流の大半が前面板に電子として放出されず、走査線に流れ、走査線抵抗と走査電極選択回路の選択スイッチのオン抵抗とにより電圧降下が生じ、スメアと呼ばれる輝度段差により画質が劣化する。この課題に対し、下記特許文献2には、画像信号に応じて決まる走査線の各部の電圧降下を補償するようにデータ電圧を補正することが記載されている。
【0015】
また、下記特許文献3には、走査電極選択回路の選択スイッチのオン抵抗と画像信号に応じて流れる電流とにより電圧降下が生じても走査電極に出力される走査選択電圧が所定の基準値となるように駆動することが記載されている。
【特許文献1】特開2001−202059号公報
【特許文献2】特許第3311201号公報
【特許文献3】特開2004−86130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
表示パネルの輝度を決める前面板から背面板に流れる放出電流は、(1)電子放出素子に印加電圧Vを与えた時に電子放出素子に流れる素子電流Iと、(2)素子電流Iに応じて流れる放出電流の割合(エミッション効率)との乗算によって決まる。
【0017】
特許文献1に記載された方法では、経時変化によりエミッション効率が劣化すると、I−V特性に変化がなくとも、放出電流を基準値とするために印加電圧Vが制御され素子電流Iが増加する。この結果、走査線に流れる電流が増加し、電圧降下量が増加するため、スメアが劣化する。
【0018】
また、初期に、特許文献2,3に記載された方法で、スメアが抑制できても、時が経るとスメアによる画質劣化が目立つようになる。スメアは、画面全体の輝度変化よりも顕著に検知できる現象であり、その抑制が望まれている。
【0019】
また、特許文献1では、電圧印加時間の変調により画像を表示しているため、特定の電流値を検出して基準値と合致するように印加電圧が制御されている。しかし、この方法では、図11に示したデータ電圧の電圧振幅変調により画像を表示する場合には、図9に示すI−V特性の傾きαが経時変化すると、特定の電流値に対応する画像データはともかく、それ以外の画像データでの輝度の変化が生じる。
【0020】
本発明の目的は、電子放出素子が経時変化したとしても、画像データに応じた素子電流にして、輝度変化を防止するとともに、走査線に流れる電流により発生する電圧降下を一定にして、スメアが経時変化するのを防ぐことにある。
【0021】
これにより、画質劣化がなく、信頼性の高い画像表示装置を提供することができる。また、電圧振幅変調により画像を表示する場合にもI−V特性の傾きαの経時変化による輝度変化の生じない画像表示装置を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、互いに平行な複数本の走査線と、それと直交する複数本のデータ線と、これらの線の交点に接続された複数の電子放出素子を有する背面板と、前記電子放出素子からの電子により発光する蛍光体を有する前面板とからなる表示パネルと、前記走査線に接続された走査電極選択手段と、前記データ線に接続されたデータ電極駆動手段と、前記電子放出素子からの放出電子を加速して蛍光体へ照射させるための高圧手段とを備えた画像表示装置において、前記走査電極選択手段から前記走査線に流れる走査線電流を検出する走査線電流検出手段と、前記走査線電流検出手段の検出結果に基づき前記走査線電流が所定値となるように前記走査電極選択手段が出力する走査線選択電圧を補正する走査電極電圧補正手段とを有することを特徴とする。
【0023】
また、前記走査電極選択手段から前記走査線に流れる走査線電流を検出する走査線電流検出手段と、前記走査線電流検出手段の検出結果に基づき前記電子放出素子を流れる電流が画像データに対応するように前記データ電極選択手段が出力するデータ電圧を補正する電圧補正手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
以上、本発明によると、走査線電流を検出し、走査選択電圧とデータ電圧のいずれか一方又は両方を補正することで、電子放出素子のしきい電圧や傾きが経時変化しても、画像データに応じた素子電流とでき、輝度変化を防止できる。
【0025】
また、走査線に流れる電流により発生する電圧降下も一定にできスメアが経時劣化することも防げる。したがって、信頼性が高く、かつ、高画質の画像表示装置を提供できる。
【0026】
従来の電子放出素子をマトリックス状に配置したディスプレイでは、電子源の経時変化や温度特性変化によりスメアが発生して、表示画像の品質に影響を与えるが、本発明を従来のマトリックス方式ディスプレイへ適用することにより、好適な映像表示を可能とする。また、本発明は、金属/絶縁膜/金属型、電界放出型、表面伝導型など冷陰極素子を用いた画像表示装置に対して有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を用いて、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0028】
本発明に係る画像表示装置について、図1と図2を用いて説明する。図1は、本実施例の回路構成図である。図2(a)(b)は、電子放出素子のI−V特性の経時変化を説明するための図である。
【0029】
図1において、電源3は、走査電極電圧補正回路16へ電力を供給する電源である。検出抵抗1は、電源3から走査電極電圧補正回路16と走査電極選択回路30を介して選択された走査線に流れ込む走査線電流を検出する。
【0030】
加減算器5は、検出抵抗1の両端の電位を入力して、検出抵抗1の両端電圧差に比例した出力信号12を出力する。出力信号12は、アナログ−デジタル(A/D)変換器2によりデジタルの電流検出データ8へ変換され、電圧補正回路6へ入力される。
【0031】
電圧補正回路6は、走査電極電圧補正回路16の出力電圧を補正する補正信号10を生成する。走査電極電圧補正回路16は、補正信号10を用いて、走査電極選択回路30から出力される走査選択電圧を所定の電圧値へ補正する。
【0032】
また、電圧補正回路6は、タイミングコントローラから入力される画像データ207と電流検出データ8を用いて、データ電極駆動データ11を生成し、データ電極駆動回路7に入力する。
【0033】
検出抵抗1とA/D変換器2と加減算器5とで、走査線電流検出回路20が構成されている。7,30,207,211,212,215,220は図10と同様である。
【0034】
図2(a)(b)は、電子放出素子のI−V特性の異なる経時変化を説明するための図である。図2(a)において、I−V特性の電圧軸方向の平行移動を表すしきい電圧がVthからVth’へ変化する。このような電子放出素子のしきい電圧の経時変化を補償するように、走査電極選択回路30から出力される走査選択電圧を補正する。
【0035】
この補正について、説明する。図1において、所定個数の電子放出素子への印加電圧が、しきい電圧Vthとなる画像データ207を電圧補正回路6に入力する。電圧補正回路6は、走査線電流検出回路20から得られる電流検出データ8と画像データ207より得られる走査線電流値(具体的には、しきい電流値Ithで電子放出をしている電子放出素子の走査線方向の個数としきい電流値Ithとを乗じた値)とを比較して、素子電流をIthとするために必要な印加電圧Vth’を表す補正信号10を生成する。この補正信号10を用いて、走査電極補正回路16は、走査選択電圧を補正する。これにより、電子放出素子のしきい電圧がVthからVth’へ変化しても、電子放出素子の素子電流は一定のIthとなる。
【0036】
また、図2(b)に示すように、電子放出素子は、印加電圧Vに対する素子電流Iの対数の傾きがαからα’に経時変化する。このような傾きの変化を補正するように、データ
電圧を補正する。
【0037】
この補正について、説明する。図1において、電子放出素子への印加電圧が、しきい電圧Vth以外となる画像データ207を電圧補正回路6に順次入力する。電圧補正回路6は、走査線電流検出回路20から順次得られる電流検出データ8から傾きα’を求めて、画像データ207をα/α’倍したデータ電極駆動データ11を生成する。このデータ電極駆動データ11を用いて、データ電極駆動回路7は、表示パネル215へデータ電圧を出力する。これにより、画像データ207に対応するように、データ電圧をα/α’倍と補正するので、電子放出素子のI−V特性の傾きが経時変化しても、画像データ207に対応した素子電流となる。
【0038】
なお、図2(a)(b)示す電子放出素子の経時変化が、同時に存在する場合は、走査選択電圧とデータ電圧を同時に補正する。
【0039】
以上、本実施例によれば、電子放出素子をマトリックス状に配置したディスプレイにおいて、走査線電流を検出して、走査選択電圧とデータ電圧のいずれか一方又は両方を補正することで、電子放出素子のしきい電圧や傾きが経時変化しても、画像データに応じた素子電流とすることができ、輝度変化を防止できる。
【0040】
また、走査線に流れる電流による電圧降下を一定にすることができ、スメアが経時劣化することも防げる。したがって、信頼性が高く、かつ、高画質の画像表示装置を提供できる。
【実施例2】
【0041】
本発明に係る画像表示装置について、図3を用いて説明する。本実施例は、走査電極選択回路30の選択スイッチSHi(i=1〜n)のオン抵抗Ronと、画像データ207
に応じて流れる電流とにより電圧降下が生じても、走査電極Si(i=1〜n)に出力さ
れる走査選択電圧が、所定の基準電圧となるように駆動する際に、走査選択電圧となる基準電圧値を補正し、しきい電圧が経時変化しても、素子電流が変化しないようにしたものである。
【0042】
図3は、本実施例の回路構成図であって、説明を容易にするため、2本の走査線とそれらを駆動する回路のみを示している。図3において、表示パネル215内の2011〜2014は電子放出素子、2031〜2034は1画素相当の走査線抵抗である。走査電極選択回路30は、走査電極S1とS2の電圧を監視する帰還スイッチSF1とSF2を備える。走査電極電圧補正回路16は、負帰還増幅器13と加算器15からなる。
【0043】
負帰還増幅器13の逆相入力端子には、走査電極S1又はS2の電圧が帰還スイッチSF1又はSF2を介して入力される。負帰還増幅器13の電源供給端子14には、電源3から電力が供給される。
【0044】
走査線電流は、電源3から負帰還増幅器13内の出力素子と、走査選択スイッチSH1又はSH2を介して表示パネル215へ供給され、負帰還増幅器13の電源供給端子14と電源3と間に接続された検出抵抗1により検出される。
【0045】
加算器15は、基準電圧源211の電圧と、電圧補正回路6で生成された補正信号10を加算して基準走査選択電圧Vrefを生成して、負帰還増幅器13の正相入力端子へ入力する。
【0046】
まず、画像表示装置の電源をオンした直後に、全黒や特定の階調をもった検出用画像パターンに対応する画像データ207を電圧補正回路6に入力する。この画像データ207に基づいて、電圧補正回路6は、実施例1と同様にして、補正信号10を生成する。この補正信号10を用いて、加算器5は、基準走査選択電圧Vrefを発生する。
【0047】
次に、動画像を表示する通常状態となる。最初の水平走査期間において、走査選択スイッチSH1が選択されると、走査選択スイッチSH1と帰還スイッチSF1がオンとなり、非選択スイッチSL1はオフとなって、走査電極S1に走査選択電圧が印加される。なお、走査選択スイッチSH2と帰還スイッチSF2はオフであり、非選択スイッチSL2はオンであって、走査電極S2には、走査非選択電圧が印加される。
【0048】
次の水平走査期間では、走査選択スイッチSH2と帰還スイッチSF2がオンとなり、非選択スイッチSL2がオフとなって、走査電極S2に選択電圧が印加される。なお、走査選択スイッチSH1と帰還スイッチSF1はオフであり、非選択スイッチSL1がオンであって、走査電極S1には、走査非選択電圧が印加される。
【0049】
各水平走査期間では、走査電極に出力される走査選択電圧は、負帰還動作により、負帰還増幅器13の正相入力端子に入力された基準走査選択電圧Vrefに等しくなり、走査電極選択回路30の走査選択スイッチのオン抵抗Ronと画像データ207に応じて流れる電流とにより電圧降下が生じても走査線の電圧は変化しなくなる。
【0050】
なお、電子源特性の経時変化は緩やかな変化であるため、画像表示装置の電源をオンした直後に、基準走査選択電圧Vrefを発生するだけで、しきい電圧の経時変化による素子電流の変化は十分に防止できる。
【0051】
本実施例によれば、電子放出素子をマトリックス状に配置したディスプレイにおいて、走査電極選択回路の選択スイッチのオン抵抗と画像データに応じて流れる電流とにより電圧降下が生じても、走査選択電圧が所定の基準電圧となる。すなわち、走査線電流を検出して、初期の基準電圧を補正することで、電圧降下によるスメアの発生を防止するとともに、電子放出素子のしきい電圧が経時変化しても、画像データに対応した素子電流とすることができ、輝度変化を防止できる。したがって、信頼性が高く、かつ、高画質の画像表示装置を提供できる。
【実施例3】
【0052】
本発明に係る画像表示装置について、図4、図5及び図6を用いて説明する。図4は、本実施例の回路構成図、図5と図6は、図4の動作波形図である。図4において、図3と同じ符号は同じものを示す。
【0053】
図4において、表示パネル215の表示外領域217に、基準となる走査線の電流を検出するために、基準走査電極S0と、基準となる走査線とデータ線の交点に接続される電子放出素子2009と2010を設けている。
【0054】
基準となる走査線に接続された電子放出素子の数は、表示領域218の水平画素数と同じである。また、基準走査電極S0と走査選択スイッチSH0との間には、検出抵抗1が設けられている。なお、SF0は帰還スイッチ、SL0は非選択スイッチである。他の構成は、図3と同じである。
【0055】
次に、動作を説明する。まず、図5に示す期間T0の水平走査期間に、駆動パルス(VS0)17が基準走査電極S0に印加され、基準走査電極S0が駆動される。なお、垂直表示期間は、図5に示す時刻Tstvに始まり、駆動パルス(VS1)18により走査電極S1が水平走査期間T1に駆動され、次の駆動パルス(VS2)19により走査電極S2が水平走査期間T2に駆動されて、以後、線順次駆動が行われる。
【0056】
垂直走査期間毎に、基準走査電極S0を選択して、走査線電流の検出と、電圧補正回路6での比較演算を実施する。走査線電流検出のために入力する画像データは2垂直走査期間毎に変化させる。
【0057】
第1の垂直走査期間には、電子放出素子への印加電圧が、しきい電圧となるような画像データ207を入力して、このときの走査線電流を検出し、走査選択電圧となる基準電圧値を補正して、電子放出素子のしきい電圧の変化を補償する。
【0058】
続く、第2の垂直走査期間には、電子放出素子への印加電圧が、しきい電圧以外となるような画像データ207を入力して、このときの走査線電流を検出し、データ電圧を補正して、電子放出素子のI−V特性の傾きの変化を補償する。
【0059】
図6は、表示外領域217の基準走査電極S0の駆動パルス17と、表示領域218の走査電極の駆動パルス18と19の詳細波形図である。基準走査電極S0の駆動パルス17の立ち上がり速度は、走査選択スイッチSH0のオン抵抗Ronに検出抵抗1の抵抗値を加えた合成抵抗と走査線に繋がる容量により決まる。したがって、走査線電流の検出は、駆動パルス17が定常値に達した以降の期間Tspで行う。
【0060】
他方、走査電極S1とS2の駆動パルス18と19の立ち上がり速度は、走査選択スイッチのオン抵抗Ronと走査線に繋がる容量により決まる。したがって、表示領域218における検出抵抗1に起因した走査電極駆動波形の立ち上がり遅延は発生しない。よって、検出抵抗1に関わる輝度低下は発生しない。
【0061】
本実施例によれば、実施例1、実施例2と同様の効果を得られる。さらに、表示領域外に設けた電子放出素子を用いて走査線電流を検出するので、動画像を映し出す通常状態での走査線電流の検出を行うことができ、経時変化だけなく、電子放出素子の温度変化にも追従した補正を行うことができる。
【0062】
さらに、検出抵抗に関する波形遅延がなく、輝度低下が発生しない。したがって、信頼性が高く、高画質の画像表示装置を提供できる。
【実施例4】
【0063】
本発明に係る画像表示装置について、図7を用いて説明する。図7は、本実施例の回路構成図である。図7において、図4と同じ符号は同じものを示す。
【0064】
図7において、走査選択スイッチSH0のオン抵抗Ronの電圧降下量より走査線電流を検出する。すなわち、加減算器5に、負帰還増幅器13の出力電圧と逆相入力電圧を入力することにより、加減算器5は、走査選択スイッチSH0のオン抵抗Ronと走査線電流との積に比例した出力信号12を出力する。この出力信号12を、A/D変換器2を用いて、デジタルの電流検出データ8へ変換して、電圧補正回路6へ入力する。
【0065】
図4に示す実施例3と同様に、走査線電流検出のために、表示パネル215の表示外領域217に、走査電極S0と、走査線とデータ線に接続される電子放出素子2009、2010を設け、垂直走査期毎に、走査線電流の検出と、電圧補正回路6での比較演算を実施して、しきい電圧と傾きの経時変化を補償する。
【0066】
本実施例によれば、実施例3と同様の効果がえられるとともに、走査線電流検出回路20における検出抵抗1が不要となる。したがって、低コストで信頼性が高く、高画質の画像表示装置を提供できる。
【0067】
なお、本実施例では、表示外領域217を設けなくとも、電源がオンした直後から通常の表示状態に至る期間において、全黒や特定の階調をもつ検出用画像パターンに対応する画像データを入力して、走査線電流の検出と補正が行える。
【0068】
実施例1から4は、電子放出素子のI−V特性が経時変化しても、画像データに応じた素子電流とすることによって、輝度とスメアの経時変化を抑制している。しかし、電子放出素子から放出される電子量についてのエミッション効率が変化した場合の輝度変化を防ぐことができない。
【0069】
エミッション効率の経時変化による輝度変化が問題となる時には、実施例1から4のいずれかを用いて、まず、I−V特性による経時変化を抑制した後、例えば、高圧回路220において、放出電流を検出し、その放出電流が予め設定した基準値と合致するように、電子放出素子へのデータ電圧の印加時間又は高圧回路の出力電圧値を補正することで解決できる。
【0070】
また、実施例2から4では、走査電極選択回路30の出力点となる走査電極Si(i=1〜n)の電圧を帰還させ、選択スイッチSHi(i=1〜n)を構成するトランジスタのソースに入力される電圧を制御することにより、選択スイッチでの電圧降下によらず走査選択電圧を所定の基準電圧としているが、選択スイッチを構成するトランジスタのゲートに入力される電圧を制御することにより、選択スイッチでの電圧降下によらず走査選択電圧を所定の基準電圧としてもよい。
【0071】
さらに、実施例2から4において、電流検出データ8に基づいて演算パラメータを生成し、この演算パラメータと画像データ207とからデータ電極駆動データ11を演算して、画像データ207に応じて決まる走査線の各部の電圧降下を補償するように、データ電圧を補正することにより、電子放出素子のI−V特性が経時変化しても、走査線抵抗により発生する電圧降下を抑制して、スメアによる画質劣化が生じないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施例1の回路構成図。
【図2】実施例1を説明するための電子放出素子I−V特性の経時変化図。
【図3】本発明の実施例2の回路構成図。
【図4】本発明の実施例3の回路構成図。
【図5】実施例3を説明するための動作波形図。
【図6】実施例3を説明するための動作波形図。
【図7】本発明の実施例4の回路構成図。
【図8】電子放出素子をマトリックス状に配置した背面板の構造モデル図。
【図9】電子放出素子の電圧‐電流特性図。
【図10】電子放出素子を用いた表示パネルの駆動回路の構成図。
【図11】図10の駆動回路の動作を説明するための動作波形図。
【符号の説明】
【0073】
1…検出抵抗、2…アナログ−デジタル変換器、3…電源、5…加減算器、6…電圧補正回路、7…データ電極駆動回路、8…電流検出データ、10…補正信号、11…データ電極駆動データ、12…出力信号、13…負帰還増幅器、14…電源入力端子、15…加算器、16…走査電極電圧補正回路、20…走査線電流検出回路、30…走査電極選択回路、
201…電子放出素子、202…データ線、203…走査線、204…同期信号、205…タイミングコントローラ、207…画像データ、208…コントロール信号、210…画像信号、211…第1の基準電圧源、212…第2の基準電圧源、214…コントロール信号、215…表示パネル、220…高圧回路、
2009〜2014…電子放出素子、2029〜2034…1画素相当の走査線抵抗。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な複数本の走査線と、それと直交する複数本のデータ線と、これらの線の交点に接続された複数の電子放出素子を有する背面板と、前記電子放出素子からの電子により発光する蛍光体を有する前面板とからなる表示パネルと、前記走査線に接続された走査電極選択手段と、前記データ線に接続されたデータ電極駆動手段と、前記電子放出素子からの放出電子を加速して蛍光体へ照射させるための高圧手段とを備えた画像表示装置において、
前記走査電極選択手段から前記走査線に流れる走査線電流を検出する走査線電流検出手段と、前記走査線電流検出手段の検出結果に基づき前記走査線電流が所定値となるように前記走査電極選択手段が出力する走査線選択電圧を補正する走査電極電圧補正手段とを有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
互いに平行な複数本の走査線と、それと直交する複数本のデータ線と、これらの線の交点に接続された複数の電子放出素子を有する背面板と、前記電子放出素子からの電子により発光する蛍光体を有する前面板とからなる表示パネルと、前記走査線に接続された走査電極選択手段と、前記データ線に接続されたデータ電極駆動手段と、前記電子放出素子からの放出電子を加速して蛍光体へ照射させるための高圧手段とを備えた画像表示装置において、
前記走査電極選択手段から前記走査線に流れる走査線電流を検出する走査線電流検出手段と、前記走査線電流検出手段の検出結果に基づき前記電子放出素子を流れる電流が画像データに対応するように前記データ電極選択手段が出力するデータ電圧を補正する電圧補正手段とを有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
前記背面板は、表示領域外の少なくとも1辺に設けた走査線と、この走査線とデータ線との間に接続された複数の電子放出素子とを有し、この走査線に流れる電流を前記走査線電流検出手段が検出することを特徴とする請求項1又は2の画像表示装置。
【請求項4】
前記走査線電流検出手段は、電源がオンとなった直後の期間において、走査線電流を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示装置。
【請求項1】
互いに平行な複数本の走査線と、それと直交する複数本のデータ線と、これらの線の交点に接続された複数の電子放出素子を有する背面板と、前記電子放出素子からの電子により発光する蛍光体を有する前面板とからなる表示パネルと、前記走査線に接続された走査電極選択手段と、前記データ線に接続されたデータ電極駆動手段と、前記電子放出素子からの放出電子を加速して蛍光体へ照射させるための高圧手段とを備えた画像表示装置において、
前記走査電極選択手段から前記走査線に流れる走査線電流を検出する走査線電流検出手段と、前記走査線電流検出手段の検出結果に基づき前記走査線電流が所定値となるように前記走査電極選択手段が出力する走査線選択電圧を補正する走査電極電圧補正手段とを有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
互いに平行な複数本の走査線と、それと直交する複数本のデータ線と、これらの線の交点に接続された複数の電子放出素子を有する背面板と、前記電子放出素子からの電子により発光する蛍光体を有する前面板とからなる表示パネルと、前記走査線に接続された走査電極選択手段と、前記データ線に接続されたデータ電極駆動手段と、前記電子放出素子からの放出電子を加速して蛍光体へ照射させるための高圧手段とを備えた画像表示装置において、
前記走査電極選択手段から前記走査線に流れる走査線電流を検出する走査線電流検出手段と、前記走査線電流検出手段の検出結果に基づき前記電子放出素子を流れる電流が画像データに対応するように前記データ電極選択手段が出力するデータ電圧を補正する電圧補正手段とを有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
前記背面板は、表示領域外の少なくとも1辺に設けた走査線と、この走査線とデータ線との間に接続された複数の電子放出素子とを有し、この走査線に流れる電流を前記走査線電流検出手段が検出することを特徴とする請求項1又は2の画像表示装置。
【請求項4】
前記走査線電流検出手段は、電源がオンとなった直後の期間において、走査線電流を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−139561(P2008−139561A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325685(P2006−325685)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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