画像表示装置
【課題】電子源のV−I特性が経時変化を起こしたとしても、スメア発生を抑えて、画質劣化がなく、信頼性の高い画像表示装置
【解決手段】走査線電流を検出するために、黒表示での走査線電流と、中間調又は白表示での走査線電流とを電流検出回路40で検出し、これらの検出データ21を差分演算器1で差分演算する。差分演算器1からの差分データ8に基づいて、電圧降下補正回路6は、走査電極電圧とデータ電極電圧の補正量を算出し、走査電極電圧とデータ電極電圧を補正することで、電子源の経時変化に対処することができ、信頼性が高く、高画質の画像表示装置が実現される。
【解決手段】走査線電流を検出するために、黒表示での走査線電流と、中間調又は白表示での走査線電流とを電流検出回路40で検出し、これらの検出データ21を差分演算器1で差分演算する。差分演算器1からの差分データ8に基づいて、電圧降下補正回路6は、走査電極電圧とデータ電極電圧の補正量を算出し、走査電極電圧とデータ電極電圧を補正することで、電子源の経時変化に対処することができ、信頼性が高く、高画質の画像表示装置が実現される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子放出素子をマトリックス状に配置した画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、互いに直交する配線群の交点に電子放出素子を設け、各電子放出素子への印加電圧又は印加時間を調整することにより、電子放出素子からの放出電子量を制御し、高電圧により放出電子を加速して蛍光体へ照射する自発光型のマトリックス方式ディスプレイが注目を集めている。
【0003】
この種のディスプレイは、一般的に、フィールドエミッションディスプレイ(以下「FED」という。)と呼ばれており、用いられる電子放出素子として、薄膜電子源を用いるもの、カーボナノチューブを用いるもの、表面伝導電子放出素子を用いるものなどがある。
【0004】
FEDに用いる表示パネルは、大まかに、マトリックス状に配置された複数の電子放出素子とこれらの電子放出素子を駆動する配線を設けたカソードパネルと、蛍光体が塗布されたアノードパネルとにより構成されている。図8に、カソードパネルのモデル図を示す。
【0005】
図8において、電子放出素子201が各画素を構成する。各電子放出素子201は、垂直方向のデータ配線202と水平方向の走査配線203との交点に配置され各配線に接続されている。D1〜Dmが各データ配線へのデータ信号を印加するデータ電極、S1〜Snが各走査配線への走査選択電圧と非選択電圧を印加する走査電極である。
【0006】
図9に、表示パネルに用いる電子放出素子として薄膜電子源を用いた場合の、電子源の印加電圧Vと流れる電流Iとの関係を示す。印加電圧Vが低電圧の領域(V<しきい電圧Vth)において、薄膜電子源の電流Iは非常に小さい。印加電圧がVthを超えると薄膜電子源に電流が流れ始め、印加電圧Vに対して流れる電流Iは指数関数的に増加する。
【0007】
図10に、電子放出素子を用いた表示パネルを駆動するための駆動回路の構成を示す。なお、薄膜電子源の極性は、走査配線の電圧がデータ配線の電圧よりも高い電圧のときに電流が流れる極性と規定する。
【0008】
図10において、画像信号210と同期信号204が、タイミングコントローラ205へ入力される。タイミングコントローラ205は、データ電極駆動回路7を制御するコントロール信号208と画像データ207を生成し、また、走査電極選択回路30を制御するコントロール信号214を生成して出力する。
【0009】
走査電極選択回路30は、各走査配線のうち1本の走査配線を選択する動作を行う。走査電極選択回路30における走査選択スイッチSH1〜SHnまでのうち1つがオン状態となり、選択された走査電極S1〜Snの1つに、第1の基準電圧源211からの走査選択電圧VHを印加する。他方、非選択動作は、非選択スイッチSL1〜SLnを用いて行う。非選択状態にする走査配線に対応した複数のスイッチがオン状態になり、第2の基準電圧源212から非選択電圧VLを走査電極に供給する。図10においては、走査電極S2が選択された状態を示している。なお、高圧回路220は、表示パネル215のアノードパネルへ高電圧を供給する。
【0010】
図11は、図10に示した駆動回路にて線順次動作を行った場合の動作波形図を示す。図11において、例えば、信号VSH1が、図10に示す走査選択スイッチSH1の制御信号であり、ハイレベルで走査選択スイッチSH1がオンとなる。
【0011】
垂直走査は、図10に示す走査電極S1に接続された走査配線から選択動作が始まる。走査選択スイッチSH1が期間T1でオンとなり、第1番目の走査配線を選択する。このとき、データ電極駆動回路7により、データ電圧Vd11〜Vd1mがそれぞれのデータ電極D1〜Dmへ供給される。
【0012】
次に、信号VSH2により走査選択スイッチSH2が期間T2にてオン状態となり、第2番目の走査電極S2へ走査選択電圧が供給され、選択状態になる。このとき、データ電圧Vd21〜Vd2mがそれぞれのデータ電極D1〜Dmへ供給される。順次、これらの動作を行い、1フィールド分の画像データを表示パネルに表示する。
【0013】
下記特許文献1には、高圧電源の負極側にアノード電流検出抵抗を設け、検出されたアノード電流の電流値をA/D変換し、その電流値が予め設定した基準値と合致するように、表示パネルの駆動波形を制御することが記載されている。
【0014】
また、下記特許文献2には、電子放出素子の駆動電圧と駆動電流を検出して、その電圧と電流との積を算出し、その算出結果が予め設定した値と同じになるように駆動波形を補償することが記載されている。
【特許文献1】特開2001−202059号公報
【特許文献2】特開平11−354009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
表示パネルの輝度を決める要素としては、(1)電子源への印加電圧Vに対する電子源へ流れる電流Iの特性(以下「V−I特性」という。)、(2)電子源から放出される電子の割合(エミッション効率)、(3)蛍光体の発光効率の3つがある。要素(2)と(3)の経時変化に対しては、画面全体の輝度変化となって現れる。しかし、要素(1)の電流Iの経時変化は、画面全体の輝度変化に加えて、走査配線抵抗や走査電極選択回路のインピーダンスによって引き起こされる電圧降下量の変化によって、スメアと呼ばれる輝度段差が発生するので、この電圧降下量に対処することが望まれる。
【0016】
実際には、表示パネルの輝度の変化は、上記要素(1)(2)(3)の変化が同時に生じている場合が多く、エミッション電流検出のみでは、ある階調の輝度は所定輝度とできるが、その他の階調では所定輝度とならない場合がある。
【0017】
また、電子源のV−I特性の変化に対しては、電圧降下量を再設定する必要がある。言い換えれば、V−I特性変化は、スメアという形で画面に現れる。スメアは、画面全体の輝度変化よりも顕著に認識される現象である。
【0018】
本発明の目的は、電子源のV−I特性が経時変化を起こしたとしても、スメア発生を抑えて、画質劣化がなく、信頼性の高い画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、互いに平行な複数本の走査配線と、それと直交する複数本のデータ配線と、これらの配線の交点に接続された複数の電子放出素子と、前記電子放出素子からの電子により発光する蛍光体とからなる表示パネルと、前記走査配線に供給する走査電極電圧を補正する走査電極電圧補正手段と、前記補正された走査電極電圧を走査配線に印加する走査電極選択手段と、前記走査配線及びデータ配線に流れる電流とその抵抗による電圧降下の影響を演算する電圧降下補正手段と、前記演算結果に基づいてデータ配線を駆動するデータ電極駆動手段と、前記電子放出素子からの放出電子を加速して蛍光体へ照射させるための高圧手段とを備えた画像表示装置において、前記表示パネルに異なる表示パターンを表示した時に前記走査配線に流れる第1の電流値と第2の電流値を検出する電流検出手段と、前記第1の電流値と第2の電流値とを差分演算する差分演算手段とを設け、前記差分演算結果に基づいて、前記電圧降下補正手段が、走査電極電圧補正手段とデータ電極駆動手段を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上、本発明によれば、FEDのように、高電圧を印加して加速した電子を蛍光体に照射する表示パネルを用いた画像表示装置において、表示パネルの経時変化に伴う画質劣化を抑えて、最適な画像表示を可能とする。したがって、信頼性の高い画像表示装置を提供することができる。また、電子放出素子をマトリックス状に配置したディスプレイでは、電子放出素子の経時変化が発生して、表示画像の品質に影響を与えるので、本発明は、マトリックス方式ディスプレイに好適である。なお、本発明では、薄膜電子源を実施例として挙げたが、カーボナノチューブや表面伝導電子放出素子等の他の冷陰極素子を用いた画像表示装置に対しても有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を用いて、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0022】
本発明に係る画像表示装置について、図1と図2を用いて説明する。図1は、本実施例の回路構成図である。図2は、薄膜電子源特性の経時変化の例を示している。
【0023】
図1において、図10と同じ符号は同じものを示す。走査電極電圧補正回路16は、走査電極選択回路30に走査電極電圧を供給している。電源3は、走査電極電圧補正回路16へ電力を供給する電源である。コンデンサ27は、電源リップル成分を除去するコンデンサである。
【0024】
検出抵抗20は、電源3から流れ込む電流、すなわち、走査配線を介してデータ配線に流れる走査線電流を検出する。加減算器5は、検出抵抗20の両端子の電圧が入力されて、検出抵抗20の両端電位差に比例した検出信号12を出力する。検出信号12は、デジタル−アナログ(A/D)変換器2を用いてデジタルの検出データ21へ変換される。これら検出抵抗20、加減算器5及びA/D変換器2は電流検出回路40を構成している。
【0025】
差分演算器1は、表示パネル215に黒ないし低階調の画像パターンを表示した場合に、A/D変換器2から出力される検出データ21と、それ以外の階調を有する画像パターンを表示した場合に、A/D変換器2から出力される検出データ21とを蓄え、それらの差分を演算した差分データ8を電圧降下補正回路6へ入力する。
【0026】
電圧降下補正回路6は、差分データ8に基づいて、走査電極電圧補正回路16が出力する走査電極電圧を補正するための補正信号10を生成する。この補正信号10に基づいて、走査電極電圧補正回路16は、走査電極選択回路30に補正された走査電極電圧を供給する。
【0027】
また、電圧降下補正回路6には、画像データ207が入力されており、走査配線抵抗とデータ配線抵抗に伴う電圧降下量を画像データ207に演算する。その際に、演算パラメータとして、差分データ8を用いてデータ電極駆動データ11を生成し、スメアを抑制する。
【0028】
電源3から走査電極電圧補正回路16へ供給されている電流は、走査線電流Iscanとその他の電流、例えば、バイアス電流Ibiasが加算されたものである。ここで、検出抵抗20の抵抗値をRdet、検出抵抗20の電圧をVdetとして次式(1)が成り立つ。
Vdet=Rdet(Iscan+Ibias)・・・・・・・・・(1)
【0029】
式(1)を用いて、黒表示での検出電圧Vdet1と白表示での検出電圧Vdet2を次式(2)と(3)として表す。それらの差分は式(4)で与えられる。
Vdet1=Rdet(Iscan1+Ibias)・・・・・・・・・・・・(2)
Vdet2=Rdet(Iscan2+Ibias)・・・・・・・・・・・・(3)
Vdet2−Vdet1=Rdet(Iscan2−Iscan1)・・・・・(4)
【0030】
式(4)において、Iscan1は黒表示での走査線電流であり、Iscan1≒0である。したがって、式(4)は、次式(5)と考えることができる。
Vdet2−Vdet1=Rdet×Iscan2・・・・・・・・(5)
【0031】
式(5)の右辺は、白表示での走査線電流Iscan2と検出抵抗20の抵抗値Rdetとの積であり、差分演算によって、走査線電流に比例した検出電圧が得られることになる。すなわち、走査電極電圧補正回路16のバイアス電流の影響をキャンセルして、正確な走査線電流を検出することができる。
【0032】
図2における電子源の特性変化は、2つの要因による変化を表している。1つの要因は、電子源電流が流れ始めるしきい電圧VthのVth1への変化(図2(a))である。このような、Vthの変化に対しては、補正信号10を用いて、走査電極電圧補正回路16が出力する走査電極電圧を補正する。
【0033】
もう一つの要因は、Vthより印加電圧が大きい領域において、所定電圧を印加しても電子源電流が所定値に達しない傾きの変化(図2(b))である。この傾きの変化に対しては、差分データ8を用いて、電圧降下補正回路6が出力するデータ電極駆動データ11を補正することで、データ電極駆動回路7が出力するデータ電極電圧が補正される。なお、2つの要因が同時に存在する場合は、走査電極電圧の補正とデータ電極電圧の補正を同時に行えばよい。
【0034】
検出方法としては、前述の黒表示での電流値とそれ以外の階調を有する画像パターンでの電流値との差分を求める方法を適用して、精度良く走査線電流値を検知することができる。
【0035】
本実施例によれば、電子放出素子をマトリックス状に配置したディスプレイにおいて、電子源特性を高精度に検出できるので、経時劣化が発生してもスメアが発生しない。したがって、信頼性が高く、かつ、高画質の画像表示装置を提供できる。
【実施例2】
【0036】
本発明に係る画像表示装置について、図3を用いて説明する。図3は、本実施例の回路構成図であり、説明を容易にするため、2本の走査線とそれらを駆動する回路の構成を示す。
【0037】
図3において、図1と同じ符号は同じものを示す。走査電極選択回路30は、帰還スイッチSF1とSF2を用いて、走査電極S1とS2の走査電極電圧を監視する。走査電極補正回路16は、負帰還増幅器13と加算器15を用いて構成する。走査電極S1とS2の走査電極電圧を負帰還増幅器13の逆相入力端子へ入力することで、負帰還動作を行い、走査電極電圧の安定化を図っている。この負帰還動作により、走査電極S1とS2の走査電極電圧は、負帰還増幅器13の正相入力端子電圧Vrefと同電位となる。なお、表示パネル215は、各画素の走査配線抵抗2031〜2034と各電子源2011〜2014から構成されている。
【0038】
本実施例では、図2(a)に示したしきい電圧Vthの経時変化を補正する動作について説明する。
【0039】
まず、最初の水平走査期間において、走査電極S1を選択する際には、走査選択スイッチSH1と帰還スイッチSF1がオンして、非選択スイッチSL1はオフしている。このとき、走査電極S2を選択する走査選択スイッチSH2と帰還スイッチSF2はオフ、非選択スイッチSL2がオンして、走査電極S2は非選択電圧に固定され非選択状態にある。
【0040】
次の水平走査期間では、走査選択スイッチSH2と帰還スイッチSF2がオン、非選択スイッチSL2がオフして、走査電極S2が選択状態となる。このとき、走査電極S1を選択する走査選択スイッチSH1と帰還スイッチSF1はオフ、非選択スイッチSL1はオンして、走査電極S1は非選択状態にある。
【0041】
ここで、走査線電流は、電源3から負帰還増幅器13の電源供給端子14を介して、負帰還増幅器13内の出力回路と走査選択スイッチSH1とSH2を通して、表示パネル215へ流れる。負帰還増幅器13の電源供給端子14と電源3と間には、検出抵抗20を接続する。検出抵抗20には、負帰還増幅器13の電源電流が流れる。すなわち、検出抵抗20により走査線電流が検出される。
【0042】
加減算器5は、検出抵抗20の両端子の電位が入力されて、検出抵抗20の両端電位差に比例した検出信号12を出力する。この検出信号12を、A/D変換器2を用いてデジタルの検出データ21へ変換し、差分演算器1へ入力する。差分演算器1は、黒表示時の検出データと黒以外の画像パターンでの検出データの差分を演算する。この差分データ8は、電圧降下補正回路6へ入力される。
【0043】
電圧降下補正回路6は、差分データ8に基づいて、走査電極電圧補正回路16の出力電圧を補正する補正信号10を生成する。この補正信号10と基準電圧源211の電圧とを加算器15で加算して、基準走査電極電圧Vrefを生成する。
【0044】
基準走査電極電圧Vrefを負帰還増幅器13の正相入力端子へ入力し、走査電極電圧がVrefと等しくなるように負帰還動作が行われる。負帰還増幅器13のバイアス電流をキャンセルする動作については、実施例1において説明した式(1)から式(5)と同様であり、説明は省略する。
【0045】
本実施例によれば、実施例1と同様に、信頼性が高く、かつ、高画質の画像表示装置を提供できる。
【実施例3】
【0046】
本発明に係る画像表示装置について、図4を用いて説明する。図4は、本実施例の回路構成図であり、負帰還増幅器13の内部に検出抵抗20を設けた構成である。図中、図3と同じ符号は同じものを示す。負帰還増幅器13は、前置差動増幅器17と出力回路50(検出抵抗20、トランジスタ26,28,29、電流源24及び電圧源25)で構成する。
【0047】
出力回路50のバイアス電流は、電圧源25のバイアス電圧値により決まる。走査線電流は、検出抵抗20とトランジスタ28を通り、走査電極選択回路30を介して、走査電極S1又はS2へ流れ込む。
【0048】
検出抵抗20の電流は、走査線電流と出力回路50のバイアス電流を含んでいる。この場合のバイアス電流、走査線電流及び検出電圧の関係は、実施例1にて説明した式(1)から(5)と同じに表現でき、出力回路50のバイアス電流の影響をキャンセルすることができる。
【0049】
さらに、検出抵抗20をコンデンサ27とトランジスタ28との間に設けた構成であるので、電源3側に接続したコンデンサ27と検出抵抗20とにより形成される時定数による電流応答の遅れがなく、走査線毎の走査線電流が検出できる。
【0050】
各走査線の走査線電流は、電流検出回路40で検出され、その検出データ21は、差分演算器1にて演算され、その差分データ8はメモリ18に記憶される。電圧降下補正回路6は、この差分データ8を走査線毎に読み出し、この差分データ8に基づいて、補正信号10とデータ電極駆動データ11を演算する。
【0051】
本実施例によれば、実施例1,2と同様に、各走査線の電子源特性の変化を検出できるので、走査線毎の補正量が最適化される。したがって、より信頼性が高く、かつ、高画質の画像表示装置を提供できる。
【実施例4】
【0052】
本発明に係る画像表示装置について、図5を用いて説明する。図5は、本実施例の回路構成図であり、検出抵抗20と並列に短絡手段(スイッチ素子)19を接続し、電流を供給する電源は電圧可変型電源60としている。図3と同じ構成は同一番号を付け説明は省略する。
【0053】
検出抵抗20には、走査線電流と負帰還増幅器16のバイアス電流が流れる。したがって、検出動作を行う場合には、これまでの実施例で説明したように、検出抵抗20の抵抗値と流れる電流との積としてのVdetが電圧降下として発生する。負帰還増幅器13のバイアス電流をキャンセルする動作については、実施例1において説明した式(1)から式(5)と同様である。
【0054】
検出抵抗20による電圧降下Vdetは、負帰還増幅器13の出力ダイナミックレンジを低下させ、負帰還増幅器13の飽和を生じさせる。そこで、検出動作時には、電圧可変型電源60の電圧値を高い電圧設定値Vdd1に設定し、スイッチ素子20はオフとする。検出を行わない通常動作時には、Vdd1よりも低い電圧設定値Vdd2に設定し、スイッチ素子19はオンとする。
【0055】
Vdd1とVdd2の設定値は、通常動作に必要な電源電圧をVdd2とし、検出抵抗20の抵抗値と、そこに流れる最大電流値により、Vdd1を決定すればよい。検出動作時と通常動作時の電源電圧を切り換えることで、無駄な電力損失を抑えることができる。
【0056】
本実施例によれば、実施例1と同様の効果が得られるとともに、電源電圧を検出動作時と通常動作時とで切り換えて、それぞれの動作モードで電源電圧の最適設定を行い、無駄な電力損失を抑えることができる。したがって、低消費電力で信頼性が高く、高画質の画像表示装置を提供できる。
【実施例5】
【0057】
本発明に係る画像表示装置について、図6と図7を用いて説明する。図6は、本実施例の回路構成図であり、検出抵抗20を負帰還増幅器13の出力側と走査電極選択回路30の入力側との間に設けている。図1から図4と同じものには同一符号を付ける。図7は、図6の動作波形図であり、走査電極駆動電圧の水平走査周期波形である。
【0058】
図6において、検出抵抗20を流れる電流は走査線電流のみである。走査線電流の検出動作時はスイッチ素子19がオフ、検出動作を行わない通常動作時はスイッチ素子19がオンしている。
【0059】
検出動作時は、検出抵抗20の抵抗値Rdetと、走査電極選択回路30内の図3に示す走査選択スイッチのオン抵抗Ronと、走査配線の1本に繋がっている電子源容量とにより決まる時定数にて、図7に示す走査電極駆動波形31が立ち上がる。一方、通常動作時は、スイッチ素子19がオンしているので、検出動作時の時定数より小さい時定数で駆動波形32が急峻に立ち上がる。したがって、検出動作におけるA/D変換器2のサンプリングタイミングは、走査電極駆動波形が定常状態となるTspに行えば、走査線電流を安定して検出できる。よって、検出動作時の駆動波形の遅延は問題とならない。
【0060】
一方、通常動作時は、走査電極駆動波形の立ち上がり遅延は、輝度低下を招く原因であり、スイッチ素子19をオンすることで駆動波形の立ち上がり時間を急峻にしている。
【0061】
本実施例によれば、実施例2と同様に、電子放出素子をマトリックス状に配置したディスプレイにおいて、表示パネルの経時変化により電子源特性が劣化してもスメアが発生しない。さらに、駆動波形遅延を抑えて輝度低下を防止できる。したがって、信頼性が高く、高画質の画像表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施例1の回路構成図。
【図2】実施例1を説明するための電子源特性図。
【図3】本発明の実施例2の回路構成図。
【図4】本発明の実施例3の回路構成図。
【図5】本発明の実施例4の回路構成図。
【図6】本発明の実施例5の回路構成図。
【図7】実施例5を説明するための動作波形図。
【図8】電子放出素子をマトリックス状に配置した表示パネルの構造図。
【図9】薄膜電子源の電圧−電流特性図。
【図10】図8の表示パネルを駆動するための駆動回路の構成図。
【図11】図10の駆動回路の動作を説明するための動作波形図。
【符号の説明】
【0063】
1…差分演算器、2…アナログ−デジタル変換器、3…電源、5…加減算器、6…電圧降下補正回路、7…データ電極駆動回路、8…差分データ、10…補正信号、11…データ電極駆動データ、12…検出信号、13…差動増幅器、14…電源供給端子、加算器、15…加算器、16…走査電極電圧補正回路、17…前置差動増幅器、18…メモリ、19…スイッチ素子(短絡手段)、20…検出抵抗、21…検出データ、24…電流源、25…電圧源、26、28、29…トランジスタ、27…コンデンサ、30…走査電極選択回路、40…電流検出回路、50…出力回路、60…電圧可変型電源、
201…電子放出素子、202…データ配線、203…走査配線、204…同期信号、205…タイミングコントローラ、207…画像データ、208…コントロール信号、210…画像信号、211…第1の基準電圧源、212…第2の基準電圧源、214…コントロール信号、215…表示パネル、220…高圧回路、
2011〜2014…電子源、2031〜2034…1画素相当の走査線抵抗。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子放出素子をマトリックス状に配置した画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、互いに直交する配線群の交点に電子放出素子を設け、各電子放出素子への印加電圧又は印加時間を調整することにより、電子放出素子からの放出電子量を制御し、高電圧により放出電子を加速して蛍光体へ照射する自発光型のマトリックス方式ディスプレイが注目を集めている。
【0003】
この種のディスプレイは、一般的に、フィールドエミッションディスプレイ(以下「FED」という。)と呼ばれており、用いられる電子放出素子として、薄膜電子源を用いるもの、カーボナノチューブを用いるもの、表面伝導電子放出素子を用いるものなどがある。
【0004】
FEDに用いる表示パネルは、大まかに、マトリックス状に配置された複数の電子放出素子とこれらの電子放出素子を駆動する配線を設けたカソードパネルと、蛍光体が塗布されたアノードパネルとにより構成されている。図8に、カソードパネルのモデル図を示す。
【0005】
図8において、電子放出素子201が各画素を構成する。各電子放出素子201は、垂直方向のデータ配線202と水平方向の走査配線203との交点に配置され各配線に接続されている。D1〜Dmが各データ配線へのデータ信号を印加するデータ電極、S1〜Snが各走査配線への走査選択電圧と非選択電圧を印加する走査電極である。
【0006】
図9に、表示パネルに用いる電子放出素子として薄膜電子源を用いた場合の、電子源の印加電圧Vと流れる電流Iとの関係を示す。印加電圧Vが低電圧の領域(V<しきい電圧Vth)において、薄膜電子源の電流Iは非常に小さい。印加電圧がVthを超えると薄膜電子源に電流が流れ始め、印加電圧Vに対して流れる電流Iは指数関数的に増加する。
【0007】
図10に、電子放出素子を用いた表示パネルを駆動するための駆動回路の構成を示す。なお、薄膜電子源の極性は、走査配線の電圧がデータ配線の電圧よりも高い電圧のときに電流が流れる極性と規定する。
【0008】
図10において、画像信号210と同期信号204が、タイミングコントローラ205へ入力される。タイミングコントローラ205は、データ電極駆動回路7を制御するコントロール信号208と画像データ207を生成し、また、走査電極選択回路30を制御するコントロール信号214を生成して出力する。
【0009】
走査電極選択回路30は、各走査配線のうち1本の走査配線を選択する動作を行う。走査電極選択回路30における走査選択スイッチSH1〜SHnまでのうち1つがオン状態となり、選択された走査電極S1〜Snの1つに、第1の基準電圧源211からの走査選択電圧VHを印加する。他方、非選択動作は、非選択スイッチSL1〜SLnを用いて行う。非選択状態にする走査配線に対応した複数のスイッチがオン状態になり、第2の基準電圧源212から非選択電圧VLを走査電極に供給する。図10においては、走査電極S2が選択された状態を示している。なお、高圧回路220は、表示パネル215のアノードパネルへ高電圧を供給する。
【0010】
図11は、図10に示した駆動回路にて線順次動作を行った場合の動作波形図を示す。図11において、例えば、信号VSH1が、図10に示す走査選択スイッチSH1の制御信号であり、ハイレベルで走査選択スイッチSH1がオンとなる。
【0011】
垂直走査は、図10に示す走査電極S1に接続された走査配線から選択動作が始まる。走査選択スイッチSH1が期間T1でオンとなり、第1番目の走査配線を選択する。このとき、データ電極駆動回路7により、データ電圧Vd11〜Vd1mがそれぞれのデータ電極D1〜Dmへ供給される。
【0012】
次に、信号VSH2により走査選択スイッチSH2が期間T2にてオン状態となり、第2番目の走査電極S2へ走査選択電圧が供給され、選択状態になる。このとき、データ電圧Vd21〜Vd2mがそれぞれのデータ電極D1〜Dmへ供給される。順次、これらの動作を行い、1フィールド分の画像データを表示パネルに表示する。
【0013】
下記特許文献1には、高圧電源の負極側にアノード電流検出抵抗を設け、検出されたアノード電流の電流値をA/D変換し、その電流値が予め設定した基準値と合致するように、表示パネルの駆動波形を制御することが記載されている。
【0014】
また、下記特許文献2には、電子放出素子の駆動電圧と駆動電流を検出して、その電圧と電流との積を算出し、その算出結果が予め設定した値と同じになるように駆動波形を補償することが記載されている。
【特許文献1】特開2001−202059号公報
【特許文献2】特開平11−354009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
表示パネルの輝度を決める要素としては、(1)電子源への印加電圧Vに対する電子源へ流れる電流Iの特性(以下「V−I特性」という。)、(2)電子源から放出される電子の割合(エミッション効率)、(3)蛍光体の発光効率の3つがある。要素(2)と(3)の経時変化に対しては、画面全体の輝度変化となって現れる。しかし、要素(1)の電流Iの経時変化は、画面全体の輝度変化に加えて、走査配線抵抗や走査電極選択回路のインピーダンスによって引き起こされる電圧降下量の変化によって、スメアと呼ばれる輝度段差が発生するので、この電圧降下量に対処することが望まれる。
【0016】
実際には、表示パネルの輝度の変化は、上記要素(1)(2)(3)の変化が同時に生じている場合が多く、エミッション電流検出のみでは、ある階調の輝度は所定輝度とできるが、その他の階調では所定輝度とならない場合がある。
【0017】
また、電子源のV−I特性の変化に対しては、電圧降下量を再設定する必要がある。言い換えれば、V−I特性変化は、スメアという形で画面に現れる。スメアは、画面全体の輝度変化よりも顕著に認識される現象である。
【0018】
本発明の目的は、電子源のV−I特性が経時変化を起こしたとしても、スメア発生を抑えて、画質劣化がなく、信頼性の高い画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、互いに平行な複数本の走査配線と、それと直交する複数本のデータ配線と、これらの配線の交点に接続された複数の電子放出素子と、前記電子放出素子からの電子により発光する蛍光体とからなる表示パネルと、前記走査配線に供給する走査電極電圧を補正する走査電極電圧補正手段と、前記補正された走査電極電圧を走査配線に印加する走査電極選択手段と、前記走査配線及びデータ配線に流れる電流とその抵抗による電圧降下の影響を演算する電圧降下補正手段と、前記演算結果に基づいてデータ配線を駆動するデータ電極駆動手段と、前記電子放出素子からの放出電子を加速して蛍光体へ照射させるための高圧手段とを備えた画像表示装置において、前記表示パネルに異なる表示パターンを表示した時に前記走査配線に流れる第1の電流値と第2の電流値を検出する電流検出手段と、前記第1の電流値と第2の電流値とを差分演算する差分演算手段とを設け、前記差分演算結果に基づいて、前記電圧降下補正手段が、走査電極電圧補正手段とデータ電極駆動手段を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上、本発明によれば、FEDのように、高電圧を印加して加速した電子を蛍光体に照射する表示パネルを用いた画像表示装置において、表示パネルの経時変化に伴う画質劣化を抑えて、最適な画像表示を可能とする。したがって、信頼性の高い画像表示装置を提供することができる。また、電子放出素子をマトリックス状に配置したディスプレイでは、電子放出素子の経時変化が発生して、表示画像の品質に影響を与えるので、本発明は、マトリックス方式ディスプレイに好適である。なお、本発明では、薄膜電子源を実施例として挙げたが、カーボナノチューブや表面伝導電子放出素子等の他の冷陰極素子を用いた画像表示装置に対しても有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を用いて、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0022】
本発明に係る画像表示装置について、図1と図2を用いて説明する。図1は、本実施例の回路構成図である。図2は、薄膜電子源特性の経時変化の例を示している。
【0023】
図1において、図10と同じ符号は同じものを示す。走査電極電圧補正回路16は、走査電極選択回路30に走査電極電圧を供給している。電源3は、走査電極電圧補正回路16へ電力を供給する電源である。コンデンサ27は、電源リップル成分を除去するコンデンサである。
【0024】
検出抵抗20は、電源3から流れ込む電流、すなわち、走査配線を介してデータ配線に流れる走査線電流を検出する。加減算器5は、検出抵抗20の両端子の電圧が入力されて、検出抵抗20の両端電位差に比例した検出信号12を出力する。検出信号12は、デジタル−アナログ(A/D)変換器2を用いてデジタルの検出データ21へ変換される。これら検出抵抗20、加減算器5及びA/D変換器2は電流検出回路40を構成している。
【0025】
差分演算器1は、表示パネル215に黒ないし低階調の画像パターンを表示した場合に、A/D変換器2から出力される検出データ21と、それ以外の階調を有する画像パターンを表示した場合に、A/D変換器2から出力される検出データ21とを蓄え、それらの差分を演算した差分データ8を電圧降下補正回路6へ入力する。
【0026】
電圧降下補正回路6は、差分データ8に基づいて、走査電極電圧補正回路16が出力する走査電極電圧を補正するための補正信号10を生成する。この補正信号10に基づいて、走査電極電圧補正回路16は、走査電極選択回路30に補正された走査電極電圧を供給する。
【0027】
また、電圧降下補正回路6には、画像データ207が入力されており、走査配線抵抗とデータ配線抵抗に伴う電圧降下量を画像データ207に演算する。その際に、演算パラメータとして、差分データ8を用いてデータ電極駆動データ11を生成し、スメアを抑制する。
【0028】
電源3から走査電極電圧補正回路16へ供給されている電流は、走査線電流Iscanとその他の電流、例えば、バイアス電流Ibiasが加算されたものである。ここで、検出抵抗20の抵抗値をRdet、検出抵抗20の電圧をVdetとして次式(1)が成り立つ。
Vdet=Rdet(Iscan+Ibias)・・・・・・・・・(1)
【0029】
式(1)を用いて、黒表示での検出電圧Vdet1と白表示での検出電圧Vdet2を次式(2)と(3)として表す。それらの差分は式(4)で与えられる。
Vdet1=Rdet(Iscan1+Ibias)・・・・・・・・・・・・(2)
Vdet2=Rdet(Iscan2+Ibias)・・・・・・・・・・・・(3)
Vdet2−Vdet1=Rdet(Iscan2−Iscan1)・・・・・(4)
【0030】
式(4)において、Iscan1は黒表示での走査線電流であり、Iscan1≒0である。したがって、式(4)は、次式(5)と考えることができる。
Vdet2−Vdet1=Rdet×Iscan2・・・・・・・・(5)
【0031】
式(5)の右辺は、白表示での走査線電流Iscan2と検出抵抗20の抵抗値Rdetとの積であり、差分演算によって、走査線電流に比例した検出電圧が得られることになる。すなわち、走査電極電圧補正回路16のバイアス電流の影響をキャンセルして、正確な走査線電流を検出することができる。
【0032】
図2における電子源の特性変化は、2つの要因による変化を表している。1つの要因は、電子源電流が流れ始めるしきい電圧VthのVth1への変化(図2(a))である。このような、Vthの変化に対しては、補正信号10を用いて、走査電極電圧補正回路16が出力する走査電極電圧を補正する。
【0033】
もう一つの要因は、Vthより印加電圧が大きい領域において、所定電圧を印加しても電子源電流が所定値に達しない傾きの変化(図2(b))である。この傾きの変化に対しては、差分データ8を用いて、電圧降下補正回路6が出力するデータ電極駆動データ11を補正することで、データ電極駆動回路7が出力するデータ電極電圧が補正される。なお、2つの要因が同時に存在する場合は、走査電極電圧の補正とデータ電極電圧の補正を同時に行えばよい。
【0034】
検出方法としては、前述の黒表示での電流値とそれ以外の階調を有する画像パターンでの電流値との差分を求める方法を適用して、精度良く走査線電流値を検知することができる。
【0035】
本実施例によれば、電子放出素子をマトリックス状に配置したディスプレイにおいて、電子源特性を高精度に検出できるので、経時劣化が発生してもスメアが発生しない。したがって、信頼性が高く、かつ、高画質の画像表示装置を提供できる。
【実施例2】
【0036】
本発明に係る画像表示装置について、図3を用いて説明する。図3は、本実施例の回路構成図であり、説明を容易にするため、2本の走査線とそれらを駆動する回路の構成を示す。
【0037】
図3において、図1と同じ符号は同じものを示す。走査電極選択回路30は、帰還スイッチSF1とSF2を用いて、走査電極S1とS2の走査電極電圧を監視する。走査電極補正回路16は、負帰還増幅器13と加算器15を用いて構成する。走査電極S1とS2の走査電極電圧を負帰還増幅器13の逆相入力端子へ入力することで、負帰還動作を行い、走査電極電圧の安定化を図っている。この負帰還動作により、走査電極S1とS2の走査電極電圧は、負帰還増幅器13の正相入力端子電圧Vrefと同電位となる。なお、表示パネル215は、各画素の走査配線抵抗2031〜2034と各電子源2011〜2014から構成されている。
【0038】
本実施例では、図2(a)に示したしきい電圧Vthの経時変化を補正する動作について説明する。
【0039】
まず、最初の水平走査期間において、走査電極S1を選択する際には、走査選択スイッチSH1と帰還スイッチSF1がオンして、非選択スイッチSL1はオフしている。このとき、走査電極S2を選択する走査選択スイッチSH2と帰還スイッチSF2はオフ、非選択スイッチSL2がオンして、走査電極S2は非選択電圧に固定され非選択状態にある。
【0040】
次の水平走査期間では、走査選択スイッチSH2と帰還スイッチSF2がオン、非選択スイッチSL2がオフして、走査電極S2が選択状態となる。このとき、走査電極S1を選択する走査選択スイッチSH1と帰還スイッチSF1はオフ、非選択スイッチSL1はオンして、走査電極S1は非選択状態にある。
【0041】
ここで、走査線電流は、電源3から負帰還増幅器13の電源供給端子14を介して、負帰還増幅器13内の出力回路と走査選択スイッチSH1とSH2を通して、表示パネル215へ流れる。負帰還増幅器13の電源供給端子14と電源3と間には、検出抵抗20を接続する。検出抵抗20には、負帰還増幅器13の電源電流が流れる。すなわち、検出抵抗20により走査線電流が検出される。
【0042】
加減算器5は、検出抵抗20の両端子の電位が入力されて、検出抵抗20の両端電位差に比例した検出信号12を出力する。この検出信号12を、A/D変換器2を用いてデジタルの検出データ21へ変換し、差分演算器1へ入力する。差分演算器1は、黒表示時の検出データと黒以外の画像パターンでの検出データの差分を演算する。この差分データ8は、電圧降下補正回路6へ入力される。
【0043】
電圧降下補正回路6は、差分データ8に基づいて、走査電極電圧補正回路16の出力電圧を補正する補正信号10を生成する。この補正信号10と基準電圧源211の電圧とを加算器15で加算して、基準走査電極電圧Vrefを生成する。
【0044】
基準走査電極電圧Vrefを負帰還増幅器13の正相入力端子へ入力し、走査電極電圧がVrefと等しくなるように負帰還動作が行われる。負帰還増幅器13のバイアス電流をキャンセルする動作については、実施例1において説明した式(1)から式(5)と同様であり、説明は省略する。
【0045】
本実施例によれば、実施例1と同様に、信頼性が高く、かつ、高画質の画像表示装置を提供できる。
【実施例3】
【0046】
本発明に係る画像表示装置について、図4を用いて説明する。図4は、本実施例の回路構成図であり、負帰還増幅器13の内部に検出抵抗20を設けた構成である。図中、図3と同じ符号は同じものを示す。負帰還増幅器13は、前置差動増幅器17と出力回路50(検出抵抗20、トランジスタ26,28,29、電流源24及び電圧源25)で構成する。
【0047】
出力回路50のバイアス電流は、電圧源25のバイアス電圧値により決まる。走査線電流は、検出抵抗20とトランジスタ28を通り、走査電極選択回路30を介して、走査電極S1又はS2へ流れ込む。
【0048】
検出抵抗20の電流は、走査線電流と出力回路50のバイアス電流を含んでいる。この場合のバイアス電流、走査線電流及び検出電圧の関係は、実施例1にて説明した式(1)から(5)と同じに表現でき、出力回路50のバイアス電流の影響をキャンセルすることができる。
【0049】
さらに、検出抵抗20をコンデンサ27とトランジスタ28との間に設けた構成であるので、電源3側に接続したコンデンサ27と検出抵抗20とにより形成される時定数による電流応答の遅れがなく、走査線毎の走査線電流が検出できる。
【0050】
各走査線の走査線電流は、電流検出回路40で検出され、その検出データ21は、差分演算器1にて演算され、その差分データ8はメモリ18に記憶される。電圧降下補正回路6は、この差分データ8を走査線毎に読み出し、この差分データ8に基づいて、補正信号10とデータ電極駆動データ11を演算する。
【0051】
本実施例によれば、実施例1,2と同様に、各走査線の電子源特性の変化を検出できるので、走査線毎の補正量が最適化される。したがって、より信頼性が高く、かつ、高画質の画像表示装置を提供できる。
【実施例4】
【0052】
本発明に係る画像表示装置について、図5を用いて説明する。図5は、本実施例の回路構成図であり、検出抵抗20と並列に短絡手段(スイッチ素子)19を接続し、電流を供給する電源は電圧可変型電源60としている。図3と同じ構成は同一番号を付け説明は省略する。
【0053】
検出抵抗20には、走査線電流と負帰還増幅器16のバイアス電流が流れる。したがって、検出動作を行う場合には、これまでの実施例で説明したように、検出抵抗20の抵抗値と流れる電流との積としてのVdetが電圧降下として発生する。負帰還増幅器13のバイアス電流をキャンセルする動作については、実施例1において説明した式(1)から式(5)と同様である。
【0054】
検出抵抗20による電圧降下Vdetは、負帰還増幅器13の出力ダイナミックレンジを低下させ、負帰還増幅器13の飽和を生じさせる。そこで、検出動作時には、電圧可変型電源60の電圧値を高い電圧設定値Vdd1に設定し、スイッチ素子20はオフとする。検出を行わない通常動作時には、Vdd1よりも低い電圧設定値Vdd2に設定し、スイッチ素子19はオンとする。
【0055】
Vdd1とVdd2の設定値は、通常動作に必要な電源電圧をVdd2とし、検出抵抗20の抵抗値と、そこに流れる最大電流値により、Vdd1を決定すればよい。検出動作時と通常動作時の電源電圧を切り換えることで、無駄な電力損失を抑えることができる。
【0056】
本実施例によれば、実施例1と同様の効果が得られるとともに、電源電圧を検出動作時と通常動作時とで切り換えて、それぞれの動作モードで電源電圧の最適設定を行い、無駄な電力損失を抑えることができる。したがって、低消費電力で信頼性が高く、高画質の画像表示装置を提供できる。
【実施例5】
【0057】
本発明に係る画像表示装置について、図6と図7を用いて説明する。図6は、本実施例の回路構成図であり、検出抵抗20を負帰還増幅器13の出力側と走査電極選択回路30の入力側との間に設けている。図1から図4と同じものには同一符号を付ける。図7は、図6の動作波形図であり、走査電極駆動電圧の水平走査周期波形である。
【0058】
図6において、検出抵抗20を流れる電流は走査線電流のみである。走査線電流の検出動作時はスイッチ素子19がオフ、検出動作を行わない通常動作時はスイッチ素子19がオンしている。
【0059】
検出動作時は、検出抵抗20の抵抗値Rdetと、走査電極選択回路30内の図3に示す走査選択スイッチのオン抵抗Ronと、走査配線の1本に繋がっている電子源容量とにより決まる時定数にて、図7に示す走査電極駆動波形31が立ち上がる。一方、通常動作時は、スイッチ素子19がオンしているので、検出動作時の時定数より小さい時定数で駆動波形32が急峻に立ち上がる。したがって、検出動作におけるA/D変換器2のサンプリングタイミングは、走査電極駆動波形が定常状態となるTspに行えば、走査線電流を安定して検出できる。よって、検出動作時の駆動波形の遅延は問題とならない。
【0060】
一方、通常動作時は、走査電極駆動波形の立ち上がり遅延は、輝度低下を招く原因であり、スイッチ素子19をオンすることで駆動波形の立ち上がり時間を急峻にしている。
【0061】
本実施例によれば、実施例2と同様に、電子放出素子をマトリックス状に配置したディスプレイにおいて、表示パネルの経時変化により電子源特性が劣化してもスメアが発生しない。さらに、駆動波形遅延を抑えて輝度低下を防止できる。したがって、信頼性が高く、高画質の画像表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施例1の回路構成図。
【図2】実施例1を説明するための電子源特性図。
【図3】本発明の実施例2の回路構成図。
【図4】本発明の実施例3の回路構成図。
【図5】本発明の実施例4の回路構成図。
【図6】本発明の実施例5の回路構成図。
【図7】実施例5を説明するための動作波形図。
【図8】電子放出素子をマトリックス状に配置した表示パネルの構造図。
【図9】薄膜電子源の電圧−電流特性図。
【図10】図8の表示パネルを駆動するための駆動回路の構成図。
【図11】図10の駆動回路の動作を説明するための動作波形図。
【符号の説明】
【0063】
1…差分演算器、2…アナログ−デジタル変換器、3…電源、5…加減算器、6…電圧降下補正回路、7…データ電極駆動回路、8…差分データ、10…補正信号、11…データ電極駆動データ、12…検出信号、13…差動増幅器、14…電源供給端子、加算器、15…加算器、16…走査電極電圧補正回路、17…前置差動増幅器、18…メモリ、19…スイッチ素子(短絡手段)、20…検出抵抗、21…検出データ、24…電流源、25…電圧源、26、28、29…トランジスタ、27…コンデンサ、30…走査電極選択回路、40…電流検出回路、50…出力回路、60…電圧可変型電源、
201…電子放出素子、202…データ配線、203…走査配線、204…同期信号、205…タイミングコントローラ、207…画像データ、208…コントロール信号、210…画像信号、211…第1の基準電圧源、212…第2の基準電圧源、214…コントロール信号、215…表示パネル、220…高圧回路、
2011〜2014…電子源、2031〜2034…1画素相当の走査線抵抗。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な複数本の走査配線と、それと直交する複数本のデータ配線と、これらの配線の交点に接続された複数の電子放出素子と、前記電子放出素子からの電子により発光する蛍光体とからなる表示パネルと、前記走査配線に供給する走査電極電圧を補正する走査電極電圧補正手段と、前記補正された走査電極電圧を走査配線に印加する走査電極選択手段と、前記走査配線及びデータ配線に流れる電流とその抵抗による電圧降下の影響を演算する電圧降下補正手段と、前記演算結果に基づいてデータ配線を駆動するデータ電極駆動手段と、前記電子放出素子からの放出電子を加速して蛍光体へ照射させるための高圧手段とを備えた画像表示装置において、
前記表示パネルに黒ないし低階調の画像パターンを表示した時に前記走査配線に流れる第1の電流値とそれ以外の階調を有する画像パターンを表示した時に前記走査配線に流れる第2の電流値とを検出する電流検出手段と、前記第1の電流値と第2の電流値とを差分演算する差分演算手段とを設け、前記差分演算結果に基づいて、電圧降下補正手段は、走査電極電圧補正手段もしくはデータ電極駆動手段を制御することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記電流検出手段は、前記走査電極電圧補正手段の電源電流を検出することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記電流検出手段は、走査電極電圧補正手段における出力手段と直列に接続され、前記出力手段に流れる電流を検出することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記電流検出手段を、走査電極電圧補正手段と走査電極選択手段との間に設けて、走査電極電圧補正手段の出力電流を検出することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記電流検出手段と並列に、前記電流検出手段を短絡するための短絡手段を設け、前記短絡手段は、電流検出を行う場合に開放状態となり、電流検出を行わない場合に短絡状態となることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項1】
互いに平行な複数本の走査配線と、それと直交する複数本のデータ配線と、これらの配線の交点に接続された複数の電子放出素子と、前記電子放出素子からの電子により発光する蛍光体とからなる表示パネルと、前記走査配線に供給する走査電極電圧を補正する走査電極電圧補正手段と、前記補正された走査電極電圧を走査配線に印加する走査電極選択手段と、前記走査配線及びデータ配線に流れる電流とその抵抗による電圧降下の影響を演算する電圧降下補正手段と、前記演算結果に基づいてデータ配線を駆動するデータ電極駆動手段と、前記電子放出素子からの放出電子を加速して蛍光体へ照射させるための高圧手段とを備えた画像表示装置において、
前記表示パネルに黒ないし低階調の画像パターンを表示した時に前記走査配線に流れる第1の電流値とそれ以外の階調を有する画像パターンを表示した時に前記走査配線に流れる第2の電流値とを検出する電流検出手段と、前記第1の電流値と第2の電流値とを差分演算する差分演算手段とを設け、前記差分演算結果に基づいて、電圧降下補正手段は、走査電極電圧補正手段もしくはデータ電極駆動手段を制御することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記電流検出手段は、前記走査電極電圧補正手段の電源電流を検出することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記電流検出手段は、走査電極電圧補正手段における出力手段と直列に接続され、前記出力手段に流れる電流を検出することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記電流検出手段を、走査電極電圧補正手段と走査電極選択手段との間に設けて、走査電極電圧補正手段の出力電流を検出することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記電流検出手段と並列に、前記電流検出手段を短絡するための短絡手段を設け、前記短絡手段は、電流検出を行う場合に開放状態となり、電流検出を行わない場合に短絡状態となることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の画像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−139566(P2008−139566A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325728(P2006−325728)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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