説明

画像表示装置

【課題】高い表示性能を有する画像表示装置を提供する。
【解決手段】画像表示装置は、外面及び内面を有するとともに、内面に赤、緑、青を含む3色以上の蛍光体層を有する蛍光体スクリーン16が設けられている第1基板11と、第1基板と隙間を置いて対向配置されているとともに、蛍光体層を励起する励起源が配置された第2基板12と、を備えた外囲器10と、第1基板の内面と蛍光体スクリーンとの間に設けられたカラーフィルター30と、を具備している。カラーフィルターは、蛍光体スクリーンの緑の蛍光体層16Gにそれぞれ対向して配置され、緑の蛍光体層からの発光の内、最大発光スペクトル波長の±20nmの範囲の波長を有する光に対する透過率が、波長300乃至400nmの光の波長に対する透過率に比較して高いフィルター層30Gを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、3色以上の蛍光体層を有する蛍光体スクリーンを備えた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、陰極線管(以下、CRTと称する)に代わる次世代の軽量、薄型の表示装置として様々な平面型の画像表示装置が注目されている。例えば、フィールド・エミッション・デバイス(以下、FEDと称する)の一種として、表面伝導型電子放出ディスプレイ(以下、SEDと称する)の開発が進められている。
【0003】
このSEDは、所定の間隔をおいて対向配置された第1基板および第2基板を備え、これらの基板は矩形状の側壁を介して周辺部を互いに接合することにより真空外囲器を構成している。第1基板の内面には3色の蛍光体層およびメタルバックが形成され、第2基板の内面には、蛍光体を励起する電子放出素子として、各画素に対応する多数の電子放出素子が配列されている。
【0004】
SEDにおいて、明所コントラストや色純度を向上させるために、蛍光体と基板内面との間にカラーフィルターを設けたものが提案されている(例えば、特許文献1)カラーフィルターは蛍光体の発光を効率的に透過させ、外光の不要な成分を吸収する。そのため、輝度低下を抑制しつつ、効率的に拡散反射率を低減することができ、明所コントラストを向上させることができる。また、カラーフィルターは、色純度を劣化させている光を吸収するため、色純度も向上する。
【0005】
SEDにおいて、画像を表示する場合、蛍光体層にアノード電圧が印加され、電子放出素子から放出された電子ビームをアノード電圧により加速して蛍光体層へ衝突させることにより、蛍光体が発光して画像を表示する。実用的な表示特性を得るためには、通常の陰極線管と同様の蛍光体を用い、アノード電圧を数kV以上望ましくは5kV以上に設定することが必要となる。
【特許文献1】特開2003−215327
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したSEDにおいて、300〜400nmの波長で励起する蛍光体を用いた場合、室内照明や太陽光などの外光で蛍光体が発光するため、黒表示時でも発光してしまい明所コントラストを低下させてしまう。特に緑は視感度が高いため、わずかな発光でも明所コントラストを低下させてしまう。その結果、画像表示装置の表示品位が低下する。
【0007】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、高い表示性能を有する画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、この発明の態様に係る画像表示装置は、外面及び内面を有するとともに、内面に赤、緑、青を含む3色以上の蛍光体層を有する蛍光体スクリーンが設けられている第1基板と、前記第1基板と隙間を置いて対向配置されているとともに、前記蛍光体層を励起する励起源が配置された第2基板と、を備えた外囲器と、前記第1基板の内面と前記蛍光体スクリーンとの間に設けられたカラーフィルターと、を具備している。前記カラーフィルターは、前記蛍光体スクリーンの緑の蛍光体層にそれぞれ対向して配置され、緑の蛍光体層からの発光の内、最大発光スペクトル波長の±20nmの範囲の波長を有する光に対する透過率が、波長300乃至400nmの光の波長に対する透過率に比較して高いフィルター層を備えている。
【発明の効果】
【0009】
上記構成によれば、外光の300乃至400nmの波長の光をカラーフィルターで吸収するため、外光による蛍光体の励起を抑制することができ、かつ、緑の発光スペクトルの最大波長付近の透過率は高くしてあるため、輝度低下はほとんどない。その結果、明所コントラストが向上し、高い表示性能を有した画像表示装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下図面を参照しながら、この発明を、平面型の画像表示装置としてSEDに適用した実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1および図2に示すように、このSEDは、絶縁基板としてそれぞれ矩形状のガラス板からなる前面基板11、および背面基板12を備え、これらの基板は、例えば、1〜3mmの隙間を置いて対向配置されている。第1基板および第2基板として機能する前面基板11および背面基板12は、矩形枠状の側壁13を介して周縁部同士が接合され、内部が真空状態に維持された扁平な矩形状の真空外囲器10を構成している。接合部材として機能する側壁13は、例えば、低融点ガラス、低融点金属等の封着材23により、前面基板11の周縁部および背面基板12の周縁部に封着され、これらの基板同士を接合している。
【0012】
真空外囲器10の内部には、前面基板11および背面基板12に加わる大気圧荷重を支えるため、複数の板状の支持部材14が設けられている。これらの支持部材14は、外囲器10の一辺と平行な方向にそれぞれ延在しているとともに、上記一辺と直交する方向に沿って所定の間隔を置いて配置されている。各支持部材14の長手方向両端部は、それぞれ側壁13と隙間を置いて対向している。なお、支持部材は、板状に限らず、柱状としてもよい。
【0013】
図2および図3に示すように、前面基板11の内面には、表示面として機能する蛍光体スクリーン16が形成されている。この蛍光体スクリーン16は、赤、緑、青の蛍光体層16R、16G、16B、およびこれらの蛍光体層間に位置した黒色の遮光層20を並べて構成されている。赤、緑、青の3色の蛍光体層16R、16G、16Bは、第1方向に隙間を置いて交互に並んで形成され、同一色の蛍光体層が第1方向と直交する第2方向に隙間を置いて配列されている。蛍光体層16R、16G、16Bはそれぞれ、赤、緑、青の単色でサブピクセルを構成し、3色のサブピクセルを合わせて一画素を構成している。
なお、蛍光体層16R、16G、16Bはドット状に限らず、ストライプ状としてもよい。
【0014】
蛍光体スクリーン16上には、アルミニウム膜等からなるメタルバック層17が形成され、更に、メタルバックに重ねてゲッタ膜19が形成されている。本実施形態によれば、メタルバック層17は、縦方向および横方向に分断され、互いに電気的に分離した複数の分断領域を有している。電気的に分断したメタルバック層17は、蛍光体層16R、16G、16Bに夫々重なって設けられている。
【0015】
図2に示すように、蛍光体層R12、G13、B14と前面基板11の内面との間には、カラーフィルター30が設けられている。カラーフィルター30は、赤、緑、青のフィルター層30R、30G、30Bを有し、これらのフィルター層は蛍光体層16R、16G、16Bにそれぞれ対応して形成されている。
【0016】
蛍光体スクリーン16の緑の蛍光体層16Gにそれぞれ対向して配置された複数の緑のフィルター層30Gは、緑の蛍光体層16Gからの発光の内、最大発光スペクトル波長の±20nmの範囲の波長を有する光に対する透過率が、波長300乃至400nmの光の波長に対する透過率に比較して高く形成されている。蛍光体スクリーン16の緑の蛍光体層16Gは、波長300乃至400nmの範囲に最大強度が含まれる光で励起される。
【0017】
背面基板12の内面上には、蛍光体スクリーン16の蛍光体層16R、16G、16Bを励起する励起源として、それぞれ電子を放出する多数の表面伝導型の電子放出素子18が設けられている。これらの電子放出素子18は、画素毎に対応して複数列および複数行に配列されている。各電子放出素子18は、図示しない電子放出部、この電子放出部に電圧を印加する一対の素子電極等で構成されている。また、背面基板12の内面には、電子放出素子18に電位を供給する多数本の配線21がマトリック状に設けられ、その端部は真空外囲器10の外部に引出されている。
【0018】
このようなSEDでは、画像を表示する場合、蛍光体スクリーン16およびメタルバック層17にアノード電圧を印加するとともに、電子放出素子18から所定電流量の電子を放出する。そして、電子放出素子18から放出された電子をアノード電圧により加速して蛍光体スクリーンへ衝突させる。これにより、蛍光体スクリーン16の蛍光体層16R、16G、16Bが励起されて発光し、カラー画像を表示する。
【0019】
図4は、カラーフィルター30における緑のフィルター層30Gの光吸収スペクトルを示している。図5は、上記カラーフィルター30を用いていない場合の緑の発光スペクトルを示し、図6は、上記カラーフィルター30を用いた場合の緑の発光スペクトルを示している。図5および図6において、D1は白表示時の最大発光強度、D2は黒表示時の最大発光強度を示している。そして、D1とD2との比D1/D2が大きいほど表示画像のコントラストが良くなる。図4と図5とを比較すると、本実施形態のように上記カラーフィルター30を設けることにより、外光による緑の発光が抑制され、その結果、明所コントラストが改善されていることが分かる。
【0020】
このように構成されたSEDによれば、外光の300乃至400nmの波長の光をカラーフィルター30で吸収するため、外光による蛍光体の励起を抑制することができ、かつ、緑の発光スペクトルの最大波長付近におけるフィルター層の透過率が高く設定されているため、輝度低下はほとんどない。これにより、外光による緑蛍光体の発光を抑制できるため、黒表示時の輝度を抑制でき、その結果、明所コントラストの高く、長期間に渡って高い表示性能を維持可能な画像表示装置が得られる。
【0021】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0022】
この発明は、SEDに限らず、FED、PDP等の他の画像表示装置に適用してもよい。また、カラーフィルターは、少なくとも緑の蛍光体層と対向して設けられた緑のフィルター層を有していればよく、赤および青のフィルター層を省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、この発明の実施形態に係るSEDを示す斜視図。
【図2】図2は、図1の線A−Aに沿ったSEDの断面図。
【図3】図3は、上記SEDの蛍光体スクリーンを示す平面図。
【図4】図4は、上記SEDに設けられたカラーフィルターにおける緑フィルターの吸収スペクトルを示す図。
【図5】図5は、従来のカラーフィルターを用いた場合の発光スペクトルを示す図。
【図6】図6は、上記実施形態に係るカラーフィルターを用いた場合の発光スペクトルを示す図。
【符号の説明】
【0024】
10…真空外囲器、11…前面基板、12…背面基板、13…側壁、14…支持部材、
16…蛍光体スクリーン、 16R、16G、16B…蛍光体層、
17…メタルバック層、18…電子放出素子、20…遮光層、
30…カラーフィルター、30R、30G、30B…フィルター層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面及び内面を有するとともに、内面に赤、緑、青を含む3色以上の蛍光体層を有する蛍光体スクリーンが設けられている第1基板と、前記第1基板と隙間を置いて対向配置されているとともに、前記蛍光体層を励起する励起源が配置された第2基板と、を備えた外囲器と、
前記第1基板の内面と前記蛍光体スクリーンとの間に設けられたカラーフィルターであって、前記蛍光体スクリーンの緑の蛍光体層にそれぞれ対向して配置され、緑の蛍光体層からの発光の内、最大発光スペクトル波長の±20nmの範囲の波長を有する光に対する透過率が、波長300乃至400nmの光の波長に対する透過率に比較して高いフィルター層を備えたカラーフィルターと、
を具備した画像表示装置。
【請求項2】
上記蛍光体スクリーンの緑の蛍光体層は、波長300乃至400nmの範囲に最大強度が含まれる光で励起されることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−258067(P2008−258067A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100671(P2007−100671)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】