説明

画像表示装置

【課題】電子放出源やその駆動回路への放電の影響を抑えつつ、表示装置の各部位での輝度のばらつきを抑制する。
【解決手段】画像表示装置のリアプレートは、マトリクス状に形成され線順次駆動される電子放出源と、電子放出源が線順次駆動される際に駆動される走査線と、を備えている。フェイスプレートは、アノード電極26の外側に、アノード電極の互いに対向する2辺に沿って走査線と並進して設けられ、各々がアノード電極と接続され、いずれか一方が給電端子と接続された第一及び第二の電位規定部材7,8と、アノード電極の外側に、アノード電極の他の2辺の少なくとも一方に沿って位置し、第一の電位規定部材と第二の電位規定部材とを接続する抵抗部材6と、を有している。第一及び第二の電位規定部材、アノード電極及び抵抗部材の基準長さ当たりの平均抵抗値を各々R1、R2、R3、としたときに、R1<R2<R3の関係を満たしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像表示装置に関し、特にアノード電極への電位印加構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アノード電極の周囲にアノード電極に電位を印加するための電極(共通電極)を有する画像表示装置が開示されている。アノード電極は複数の蛍光体層を覆う複数のメタルバックで形成されている。メタルバック同士は抵抗材で相互に接続されており、抵抗材のもつ大きな電気抵抗によって放電時の放電電流が抑制される。共通電極は互いに間隔をあけて配置された複数の電極膜と、複数の電極膜を連結する環状の抵抗膜と、を有している。このため、共通電極のどの部位で放電が生じても、放電電流を抑制することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−159449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される共通電極は、その構造が部位によらずほぼ一定であり、共通電極のどの部位でも、同程度でかつ比較的大きな抵抗値を有している。このような共通電極では、共通電極での電圧降下が大きく、アノード電極に印加される電位がアノード電極の部位によって大きく変動する。この現象は、画像表示装置の各部位での輝度のばらつき(輝度ムラ)につながる。共通電極は放電防止のため、ある程度の抵抗値を有していることが望ましいため、共通電極の抵抗値を下げることには限界がある。一方、放電が生じた場合の画像表示装置への影響度は、装置内のどの部品が放電による影響を受けるかに依存し、特に、電子放出源やその駆動回路などの機能上重要な部品が放電による影響を受けた場合に、画像表示装置への影響が大きい。
【0005】
本発明は、電子放出源やその駆動回路への放電の影響を抑えつつ、表示装置の各部位での輝度のばらつきを抑制することが可能な画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像表示装置は、マトリクス状に形成され線順次駆動される電子放出源と、電子放出源が線順次駆動される際に駆動される走査線と、を備えたリアプレートと、電子が衝突することで発光する発光部材と、発光部材を覆い、電子放出源よりも高い電位に規定される矩形形状のアノード電極と、アノード電極に電位を供給する給電端子と、を備え、電子放出源から放出された電子がアノード電極によって加速されて発光部材に衝突するようにされたフェイスプレートと、を有している。フェイスプレートは、アノード電極の外側に、アノード電極の互いに対向する2辺に沿って走査線と並進して設けられ、各々がアノード電極と接続され、いずれか一方が給電端子と接続された第一及び第二の電位規定部材と、アノード電極の外側に、アノード電極の他の2辺の少なくとも一方に沿って位置し、第一の電位規定部材と第二の電位規定部材とを接続する抵抗部材と、を有している。第一及び第二の電位規定部材の基準長さ当たりの平均抵抗値のうち大きい方をR1、抵抗部材の基準長さ当たりの平均抵抗値をR2、アノード電極の、抵抗部材の長手方向と平行な方向における基準長さ当たりの平均抵抗値をR3、としたときに、R1<R2<R3の関係を満たしている。
【0007】
本発明によれば、比較的抵抗の小さい(抵抗値R1)第一及び第二の電位規定部材がアノード電極と接続されている。第一及び第二の電位規定部材における電圧降下は小さいため、アノード電極の部位による電位の変動が抑えられる。さらに、第一の電位規定部材と第二の電位規定部材とを接続する抵抗部材の抵抗値R2がアノード電極の平均抵抗値R3よりも低くされているため、給電端子と接続されていないほうの電位規定部材の電圧降下も抑えられる。以上によって、画像表示装置の各部位での輝度のばらつきが抑制される。一方、第一及び第二の電位規定部材は、電子放出源が線順次駆動される際に駆動される走査線と並進して設けられている。走査線は、多数の電子放出源を同時駆動するために、大きな電流を受け入れることができる。このため、万が一、第一及び第二の電位規定部材と走査線との間で放電が発生した時にも、電子放出源及び駆動用回路への放電による影響を最小限に抑えることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電子放出源やその駆動回路への放電の影響を抑えつつ、表示装置の各部位での輝度のばらつきを抑制することが可能な画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のフェイスプレートを示す模式的平面図である。
【図2】本発明の画像表示装置の模式的断面図である。
【図3】本発明のリアプレートの画素部を示す模式的平面図である。
【図4】本発明の画像表示装置のスペーサ部を示す模式的断面図である。
【図5】本発明による輝度ムラ低減の効果を示す模式図である。
【図6】本発明のフェイスプレートの抵抗測定方法を示す模式的平面図である。
【図7】本発明の抵抗部材の構成を示す模式的平面図である。
【図8】本発明のフェイスプレートの電流経路を示す模式的平面図である。
【図9】本発明による輝度ムラ低減の程度を示すグラフである。
【図10】本発明の比較例を表す模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の画像表示装置は、電子放出源からの電子ビームを照射して画像を形成する電界電子放出ディスプレイ(FED)に適用できる。特に、フェイスプレートとリアプレートが近接して配置され高電界が印加される平面型のFEDでは、放電が発生しやすく、また放電電流が増加しやすいために、特に好適に用いられる。
【0011】
本発明の実施の形態について,FEDの中でも特に表面伝導型電子放出素子を用いた画像表示装置(以下SED)を例に挙げ,図を用いて具体的に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像表示装置のフェイスプレートを示す模式的平面図である。図2は、図1のA−A’線における画像表示装置の断面を示す模式的断面図である。
【0013】
図2に示すように、フェイスプレート1とリアプレート2と側壁3とにより真空気密容器30が形成されている。真空気密容器30の内部は減圧され、真空状態を保っている。フェイスプレート1は、後述する蛍光体の発光によって生じた光を透過させるために、ソーダライムガラスやアルカリフリーガラスやアルカリ成分を調整した高ひずみ点ガラスなどからなるガラス基板が用いられる。リアプレート2は、フェイスプレート1と線膨張係数を合わせるために、フェイスプレート1と同様なガラス基板が好適に用いられる。側壁3は、フェイスプレート1やリアプレート2と同様のガラス部材や、線膨張係数を合わせた金属部材で形成される。側壁3は、不図示のフリットガラスや低融点金属で、フェイスプレート1及びリアプレート2に固定されている。
【0014】
フェイスプレート1には、電子が衝突することで発光する発光部材が形成されている。この発光部材は、例えば蛍光体材料が塗布された蛍光体層4である。蛍光体層4には、電子線の照射を受けて発光する蛍光体材料を用いることができる。カラーディスプレイを得るためには、CRT分野で用いられるP22蛍光体が、色再現性や輝度の観点から好適に用いられる。
【0015】
フェイスプレート1は、発光部材を覆い、電子放出源10よりも高い電位に規定される矩形形状のアノード電極26を有している。アノード電極26は、蛍光体層4、メタルバック5及びアノード抵抗部材9が配置されている領域である。蛍光体層4には、CRTなどで公知の、発光部材を覆う、マトリクス状に配置された複数のメタルバック5が形成されている。メタルバック5は、蛍光体層4に所望の加速電圧を印加することと、蛍光体層4の発光で生じた光を反射し光の取り出し効率を増すこと、を目的として設けられている。メタルバック5は、光の反射を実現でき、かつ電子線が透過できる材料で形成されていればよく、アルミニウムの薄膜が電子透過性及び反射率に優れており、好適に用いることができる。
【0016】
メタルバック5に所望の電位を供給する配線として、アノード抵抗部材9が設けられている。アノード抵抗部材9は、メタルバック5に入射される電子ビームの電流を流さなければならないため、ある程度以下の抵抗値が必要となる。一方、アノード抵抗部材9は、リアプレート2とフェイスプレート1間の放電電流を抑制するために、ある程度以上の抵抗値を有することが好ましい。これらのことからアノード抵抗部材9の抵抗値には、好ましい範囲が存在する。アノード抵抗部材9の材料としては、所望の抵抗値が得られる材料であればよいが、酸化ルテニウムやITO、ATOなどの材料が、抵抗値の制御が容易であり、好適に用いることができる。
【0017】
アノード抵抗部材9に高圧電源からの給電を行なう部材が、アノード電極26の外周側に設けられている。これらの部材は、図1に示すように、抵抗部材6と、第一の電位規定部材7と、第二の電位規定部材8であり、本発明の特徴的な要素となっている。
【0018】
第一及び第二の電位規定部材7,8は、アノード電極26の外側に、アノード電極26の互いに対向する2辺に沿って走査線12と並進して設けられ、各々がアノード電極26と接続されている。これらの電位規定部材7,8のいずれか一方は給電端子25と接続されている。本実施形態では、第一の電位規定部材7が、高圧端子(不図示)を介して高圧電源(不図示)からの電位をアノード電極26に供給する給電端子25を有している。第二の電位規定部材8は、第一の電位規定部材7と略平行で、かつアノード電極26の反対側の外周に配置されている。第一の電位規定部材7及び第二の電位規定部材8は、典型的にはアノード電極26の辺に沿うように配置され、アノード電極26の辺と略等しい長さで配置することが好ましい。
【0019】
電位規定部材7,8は、電子ビームの電流に基づく電圧降下が事実上ほとんどないように低抵抗な材料で形成されている。電位規定部材7,8の材料としては、金属の薄膜もしくは金属粉が混入されたペーストの焼結材を用いることができる。作成方法の容易さから、銀粉末とガラスフリットとビヒクルを添加したペーストを焼結した材料を好適に用いることができる。
【0020】
抵抗部材6は、第一の電位規定部材7と第二の電位規定部材8とを電気的に接続している。抵抗部材6は、アノード電極26の外側に、アノード電極26の他の2辺、すなわち第一の電位規定部材7と第二の電位規定部材8が設けられていない辺の少なくとも一方に沿って位置している。本実施形態では、抵抗部材6はアノード電極26を挟んだ両側に設けられているが、1つだけ設けられていてもよい。抵抗部材6の抵抗値は、第一の電位規定部材7や第二の電位規定部材8よりも高くされている。抵抗部材6の抵抗値を、第一の電位規定部材7及び第二の電位規定部材8の抵抗値より高くすることにより、電位規定部材7,8同士の電気的接続を行ないつつ、抵抗部材6の近傍で放電が発生した際の放電電流を抑制することができる。抵抗部材6の材料としては、アノード抵抗部材9と同様に、所望の抵抗値が得られる材料であればよい。酸化ルテニウムやITO、ATOなどの材料が、抵抗値の制御が容易であることから、好適に用いることができる。抵抗値を調整するために、抵抗部材6の内部に抵抗の低い電極を設けることによって、実効的な抵抗を下げることもできる。
【0021】
抵抗部材の長手方向と平行な方向に延びるメタルバック5の各列29において、第一の電位規定部材7と複数のメタルバック5と第二の電位規定部材8とは、複数のメタルバック抵抗部材9によって直列に順次接続されている。また、第二の電位規定部材8は抵抗部材6を介して、給電端子25を備えた第一の電位規定部材7に接続されている。このため、各列29のメタルバックには、第一の電位規定部材7から、及び抵抗部材6を介して第二の電位規定部材8から電位が印加され、電子放出源10から放出された電子がアノード電極26によって加速されて、発光部材(蛍光体層4)に衝突する。
【0022】
図3に、リアプレート2の電子放出源近傍の模式的平面図を示す。図4に、図1のB−B’線における画像表示装置の模式的断面図を示す。図3〜4を参照すると、リアプレート2には、マトリクス状に形成された電子放出源10と、情報配線11と、走査線12と、電子放出源10に情報配線11及び走査線12から給電する電極13と、配線間絶縁層14と、が設けられている。図2を参照すると、リアプレート2には、電子放出源の駆動用回路27が設けられている。第一及び第二の電位規定部材7,8と対向する部位には、電子放出源及び駆動用回路のいずれとも接続されていない放電用配線28が設けられている。電子放出源10は単純マトリクス駆動され、フェイスプレート1に電子ビームを照射する。
【0023】
図4に断面で示した部分には、フェイスプレート1とリアプレート2にかかる大気圧を支持するためのスペーサ15が配置される場合がある。スペーサ15はアノード抵抗部材9と走査線12とに接触している。スペーサ15は不図示の固定方法(接着剤や固定部材)にて両端で固定されている。このような構成においては、スペーサ15はアノード電極26で形成される画像領域と、抵抗部材6と、を跨ぐように配置される。
【0024】
次に、本発明の特徴である電位規定部材7,8、抵抗部材6及びアノード抵抗部材9について、更に詳細に説明する。
【0025】
まず、第一の電位規定部材7及び第二の電位規定部材8の配置について、図5を用いて説明する。電子ビームの照射によって発生する電流は、不図示の高圧電源からアノード電極26を介して、リアプレート2の電子放出源10に流れ込む。この際、共通電極として第一の電位規定部材7及び第二の電位規定部材8が存在していないと、電圧降下に大きなばらつきが発生し、画像の輝度ムラを生じる。図5に電圧降下によって生じる輝度分布の模式図を示す。図5(a)は、電位規定部材7,8が存在していない場合の画像表示領域の輝度分布(すなわち、アノード電極26の輝度分布)を示す。各メタルバック5には、これらを接続するアノード抵抗部材9だけを介して、電位が供給される。このため、高圧端子16側では、アノード抵抗部材9での電圧降下が小さく輝度が高いが、高圧端子16と反対側のコーナー部ではアノード抵抗部材9での電圧降下が大きく輝度が低くなる。
【0026】
図5(b)は、第一の電位規定部材7のみを配置した場合の輝度分布を示す。第一の電位規定部材7の抵抗R1が低いため、左右方向の電圧降下が小さくなり輝度分布のばらつきも左右方向では小さくなる。しかしながら、アノード電極26を挟んだ電位規定部材7の反対側の位置では電圧降下が大きく、輝度が低くなる。このため、上下方向での大きな輝度ムラは依然として生じている。
【0027】
図5(c)は、アノード電極26を挟んだ第一の電位規定部材7の反対側の位置に第二の電位規定部材8を配置し、これらの電位規定部材7,8を抵抗部材6で接続した場合の輝度分布を示す。この場合、R1は第一の電位規定部材7と第二の電位規定部材8のうち、大きいほうの抵抗値を意味する。アノード抵抗部材9の抵抗値R3よりも抵抗部材6の抵抗R2のほうが低い場合には、第二の電位規定部材8の電圧降下が小さくなり、図5(c)に示すように電位規定部材7,8近傍での輝度低下が小さくなる。画像領域中央では輝度が最も低下するが、その低下量は小さく、画像表示領域内の輝度ムラが抑えられる。従って、R1<R2<R3の関係を満たすことで、電圧降下を小さくし画像領域の輝度ムラを小さくすることができる。なお、R1、R2、R3の定義及び抵抗の大きさの範囲については、後ほど詳細に説明する。
【0028】
第一の電位規定部材7及び第二の電位規定部材8を配置する向きについて説明する。単純マトリクス駆動で電子放出源10を線順次に駆動する場合、走査線12に沿った方向には、同時に複数の電子放出源10からの電子がメタルバック5に注入される。そのため、電位規定部材7,8を走査線12に直交する向きで配置すると、同時に流れる電流が重なり合うように流れるため、電圧降下が大きくなってしまう。従って、第一の電位規定部材7及び第二の電位規定部材8は、線順次駆動される際に同時に駆動される走査線12と平行な方向に延びていることが好ましい。
【0029】
次に、アノード電極26の配置について図1,4を用いて説明する。平面型FEDの場合、フェイスプレート1とリアプレート2との間に高電圧(高電界)が加わるため、放電が発生する場合がある。フェイスプレート1とリアプレート2は静電容量を形成しているため、放電時には静電容量に蓄積された電荷量分の電流が流れ、画像表示装置に深刻な欠陥を生じさせる場合がある。そこで、画像領域を形成するアノード電極26は、低抵抗なメタルバック5同士がアノード抵抗部材9で接続されている。アノード抵抗部材9の、抵抗部材6の長手方向における基準長さ当たり抵抗値は、メタルバック5の、抵抗部材6の長手方向における基準長さ当たり抵抗値より大きくされている。アノード抵抗部材9は、放電電流を制限できる程度の抵抗値を有していることが好ましい。フェイスプレート1の面内方向の抵抗値を上げることにより、放電時に静電容量に実効的に流れ込む電流を小さくし、放電電流を抑制することができる。
【0030】
一方、第一の電位規定部材7や第二の電位規定部材8は、その機能上、抵抗を低くしなければならない。従って、第一の電位規定部材7及び第二の電位規定部材8で放電が発生した場合、リアプレート2の、電位規定部材7,8と対向する部分に流れ込む放電電流が増大する場合がある。
【0031】
ここで、放電電流が流れ込み欠陥を発生してしまうのは、電子放出源10やその駆動用回路(駆動IC)27であり、特に第一の電位規定部材7及び第二の電位規定部材8と平行に延びる走査線12への放電が問題となる。しかし、図3に示すように、走査線12と信号線11とを比較すると、走査線12のほうが太く抵抗が低い。これは、電子放出源10が単純マトリクスで線順次駆動され、走査線12上の電子放出源10が同時に駆動されるため、走査線12により多くの電流が流れるためである。従って、万が一走査線12に放電が生じても、走査線12は大電流を吸収しやすいため、電子放出源10やその駆動用回路27への影響は限定的である。
【0032】
さらに、図3に示すように、第一の電位規定部材7や第二の電位規定部材8の、リアプレート2側の対向部分に、低抵抗でかつ電子放出源10や駆動用回路27につながらない放電用配線(放電バイパス用の配線)28を設けてもよい。これによって、画像表示装置への重大な欠陥が一層防止しやすくなる。しかも、前述のとおり、第一の電位規定部材7及び第二の電位規定部材8は、走査線12と平行に形成するほうが好ましいため、放電バイパス用の配線28は走査線12と同様に形成することができ、その形成も容易である。
【0033】
一方、抵抗部材6が配置される個所には、図4に示すようにスペーサ15が配置される場合がある。これは、スペーサ15を配置する場所が走査線12上であることと、スペーサ15を固定する個所は画像領域外が好ましいこととによる。スペーサ15の端部では、画像領域内のように平行平板形状で電界分布が形成されず、電位分布がひずむことが知られており、そのような場所では放電が生じる可能性が高い。このように、走査線12と直交するアノード電極26の周縁部は、電子放出源10に接続された走査線12に近く、かつ放電が生じやすい領域となっている。そこで、この部分に配置される抵抗部材6の抵抗値R2を、電位規定部材7,8の抵抗値R1よりも大きく(R1<R2)することにより、放電電流を抑制し、電子放出源10や駆動用回路27への放電による影響を低減することができる。なお、R1は、電位規定部材7,8の抵抗値のうち大きいほうの抵抗値とする。
【0034】
次に、第一及び第二の電位規定部材7,8、抵抗部材6及びアノード電極26の抵抗値(R1,R2,R3)の定義及び測定方法について、図6,7を用いて説明する。これらの抵抗値は、各部材の基準長さ当たりの平均抵抗値で定義される。具体的には、メタルバックの各列29で、一つのメタルバック5と、このメタルバック5を挟んで両側から隣接する1組のメタルバック抵抗部材9を考える。次に、抵抗部材6の長手方向で、両側から隣接するメタルバック抵抗部材9の各中央部をとり、この中央部を両端として定められる区間(図6に示す破線で囲まれた領域)を考える。一例では、この区間の長さが基準長さ18である。アノード電極26内の1絵素が一つのメタルバック5に対応する場合は、抵抗部材6の延びる方向と平行な向きに測った絵素の長さが基準長さ18となる。第一及び第二の電位規定部材7,8、抵抗部材6及びアノード電極26の平均抵抗値は、この基準長さ18当たりの抵抗値として定義される。
【0035】
測定方法としては、回り込みによる抵抗値の変化を防ぐために、当該個所を切り出すか、抵抗性の部分を切断して測定を行なう。抵抗測定時の測定位置19で、テスターなどを用いて抵抗を測定し、それぞれの部材の、基準長さ当たりの抵抗値を求める。図7に示すように、抵抗調整のために、第一及び第二の電位規定部材7,8や抵抗部材6を、抵抗材20aと電極20bとの複合構成で形成する場合がある。このような場合には、上述のように抵抗測定時の基準長さ18をとると、電極20bの抵抗を測定する場合も発生する。このような場合には、抵抗材20aと電極20bの繰り返しピッチなどを勘案して測定個所を決定し、第一及び第二の電位規定部材7,8や抵抗部材6の基準長さ18当たりの平均抵抗を測定する。例えば、抵抗材20aと電極20bの繰り返しピッチをL,ピッチL当たりの抵抗をRとすれば、抵抗値はR/L×基準長さとなる。メタルバック5とメタルバック抵抗部材9の基準長さ当たりの抵抗値を求める際は、メタルバック5だけが存在する区間やメタルバック抵抗部材9だけが存在する区間を考え、その区間の抵抗値を基準長さ当たりの抵抗値として換算すればよい。
【0036】
以上をまとめると、第一及び第二の電位規定部材7,8と、抵抗部材6と、アノード電極26の抵抗には、R1<R2<R3の関係がある。ここで、R1は、第一及び第二の電位規定部材7,8の基準長さ18当たりの平均抵抗値のうち、いずれか大きい方の値である。R2は、抵抗部材6の平均基準長さ18当たりの抵抗値である。R3は、アノード電極26の抵抗部材の長手方向と平行な方向における基準長さ18当たりの平均抵抗値である。
【0037】
さらに、R1、R2、R3の関係について、図8を用いて詳細に説明する。本発明の効果は、R1,R2,R3がR1<R2<R3の関係を満たしていれば得られる。しかしながら、本発明の効果をより高めるためには、R1及びR2はR3に対して相当程度小さくすることが望ましい。図8に、画像表示装置の電子放出源10を線順次駆動し、発光させた場合の電流経路を示す。図中、矢印の方向は、電子の流れる向きを示している。電子ビームの照射部21から、電子は複数の経路をたどって流れる。電子は不図示の高圧端子を介して高圧電源に流れ込む。第一の経路として、電流が電子ビーム照射部分21から電位規定部材7に向かって流れる経路22が存在する。次に、第二の経路として、電流が一旦第二の電位規定部材8に向かって流れた後、抵抗部材6を通り、第一の電位規定部材7に流れ込む経路23,24が存在する。なお、経路24はアノード電極26を挟んだ両側に抵抗部材6がある場合に存在する。従って、電位規定部材7,8と抵抗部材6には同時に照射部21からの電流が同時に流れるため、経路22と比べ経路23、24には大きな電流が流れることになる。全面点灯した場合、X方向の画素数N分の電流が流れる。図5に示すように、横方向の電圧降下をほぼ無くすためには、R1はR3に対して2桁以上電圧降下を小さくすることが好ましく、X方向の画素数Nに対して、R1<R3/(100×N)程度の抵抗比が好ましい。経路23、24は電圧降下を抑制する観点からは、同様に抵抗が低いほうが好ましく、具体的には、抵抗部材6での電圧降下がアノード抵抗部材9での電圧降下と同等以下であると好ましい。従って、R2とR3の抵抗比は、同時に流れる電流量の比率程度であることが好ましい。抵抗部材6が両側にある場合、抵抗部材6に流れる電流量は同時駆動素子数の半分N/2であることから、R2<R3/(N/2)程度の抵抗比が望ましい。ただし、要求する輝度ムラならびに駆動条件によって要求される抵抗比は変化するため、上述の条件に限定されるわけではない。
【0038】
以上のように、本実施形態では、第一の電位規定部材7と第二の電位規定部材8(大きい方の抵抗値をR1とする。)を平行に配置し、これらを抵抗部材6(抵抗R2)で接続し、アノード電極26の抵抗値(R3)との関係がR1<R2<R3とされている。これによって、放電時のリスクを抑えつつ、画像領域内の電圧降下による輝度ムラを小さくすることができる。
【0039】
以下、具体的な実施例をあげて本発明を詳しく説明する。
【0040】
(実施例1)
本実施例は、図1に示される画像表示装置の例である。リアプレート、スペーサ及び画像表示装置の全体構成については、上述の実施の形態にて説明した通りである。ここでは、本実施例の特徴部分であるフェイスプレート1を形成する構成部材のうち、メタルバック5、抵抗部材6、第一の電位規定部材7、第二の電位規定部材8、アノード抵抗部材9のみについて説明を行なう。
【0041】
本実施例に使用したフェイスプレート1は以下のように作製した。
【0042】
(工程1:ブラックマトリクス形成)
洗浄したガラス基板(旭硝子製PD200)の表面に,黒色ペースト(黒色顔料及びガラスフリットを含有)をマトリクス状にスクリーン印刷し,120℃で乾燥後、550℃で焼成して厚さ5μmのブラックマトリクス(不図示)を形成した。スクリーン印刷は、X方向ピッチが200μm、Y方向ピッチが600μm、X方向に300絵素、Y方向に100絵素、開口サイズX×Yが150μm×300μmの条件で行った。
【0043】
(工程2:アノード抵抗部材9形成)
次に、ブラックマトリクス上に、酸化ルテニウムの配合された高抵抗ペーストをスクリーン印刷法にて塗布し、図1に示すアノード抵抗部材9のパターンを形成した。焼成後のパターンは、線幅が100μm、膜厚が5μmであった。このパターンを120℃で10分乾燥させ、アノード抵抗部材9となる部分を形成した。この際、後述するメタルバック5を作製せずに500℃で焼成し、1絵素分の抵抗値を測定したところ、1MΩであった。
【0044】
(工程3:電位規定部材形成)
次に、銀粉末及びフリットガラスを含有した低抵抗ペーストをスクリーン印刷法にて塗布し、幅300μmの第一の電位規定部材7及び第二の電位規定部材8のパターンを形成した。このパターンを120℃で10分乾燥させ、電位規定部材7,8となる部分を形成した。この際、後述する工程を経ずに500℃で焼成し、長さ600μm分の抵抗値を測定したところ、30mΩであった。
【0045】
(工程4:抵抗部材6形成)
次に、工程2よりも抵抗を低く調整した酸化ルテニウムの配合された高抵抗ペーストをスクリーン印刷法にて塗布し、幅600μmの抵抗部材6のパターンを形成した。このパターンを120℃で10分乾燥させ、550℃で焼成して抵抗部材6を形成した。抵抗部材6を部分的に切り出して抵抗値を測定したところ、10kΩであった。
【0046】
(工程5:蛍光体層4形成)
ブラックマトリクスの開口部分で、アノード抵抗部材9の間にあたる部分に、蛍光体ペーストを用いて蛍光体層4を形成した。蛍光体にはP22蛍光体(赤:Y22S:Eu、青ZnS:Ag,Al、緑ZnS:Cu,Al)を用いた。蛍光体層4は所望の個所にスクリーン印刷法で形成し、120度で乾燥させた。
【0047】
(工程6:メタルバック5形成)
次に、CRTで公知のアクリルエマルジョンを用いたフィルミングを用いて中間膜を形成し、その後メタルマスクを用いて、真空蒸着法にて、メタルバックとなるアルミニウム膜を厚さ0.1μmにて成膜した。その後、450度で焼成して中間膜を熱分解し、メタルバック5を形成した。メタルバック5はアノード抵抗部材9と接続させた。
【0048】
このようにして作製したフェイスプレートを用いて画像表示装置を作成し、加速電圧10kVを印加して、画像表示を行なったところ、輝度ムラが小さく良好な画像が得られた。
【0049】
強制的に放電させるために、加速電圧を上昇させていったところ、15kVにて抵抗部材6で放電が発生したが、画像の欠陥は生じなかった。
【0050】
(実施例2)
次に、実施例2について説明する。実施例1と異なる点は、抵抗部材6の構成である。本実施例では、アノード抵抗部材9と同時に幅600μmの抵抗材20aを形成し、メタルバック5と同時に幅500μm、長さ1mm、間隔200μmの電極20bを形成した。形成した抵抗部材6の抵抗を測定したところ、図7に示す基準長さ当たりの抵抗値は10kΩであった。このような作製手順をとることで、工程を1つ減らすことができた。
【0051】
このようにして作製したフェイスプレートを用いて画像表示パネルを形成し、表示画像を観察したところ、実施例1と同様に良好な画像が得られ、強制的に放電させても画像欠陥は生じなかった。
【0052】
(比較例1)
次に、本発明の比較例を説明する。比較例1は、第二の電位規定部材2と抵抗部材6がないことを除き、基本的な構成は実施例1と同様である。図10(a)のようにフェイスプレートを作製し、画像表示装置に組み立てて、表示画像を観察した。
【0053】
実施例1と比較例1の違いを図9に示す。図9は点灯画像の輝度ムラを示す図で、横軸がY方向のアドレス、縦軸に面内の輝度ムラ(最も明るいところを100%)として示している。比較例では面内で10%程度輝度が低下しているのに対し、実施例1は6%程度の輝度低下であった。また実施例1では、縦1ライン点灯の場合、最も暗くなる部分でも1.5%程度の輝度低下であった。
【0054】
(比較例2)
次に比較例2について説明する。比較例2では、図10(b)のように、電位規定電極7をアノード電極26を囲うように形成した。このようにして作製したフェイスプレートを用いて画像表示装置を作成し表示画像を観察したところ、輝度ムラは2%以下であった。しかしながら、強制的に放電させるために、加速電圧を上昇させていったところ、15kVにて電位規定部材のうち縦方向の部分にて放電が発生し、重大な画素欠陥が生じた。
【符号の説明】
【0055】
5 メタルバック
6 抵抗部材
7 第一の電位規定部材
8 第二の電位規定部材
9 アノード抵抗部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に形成され線順次駆動される電子放出源と、該電子放出源が線順次駆動される際に駆動される走査線と、を備えたリアプレートと、
電子が衝突することで発光する発光部材と、該発光部材を覆い、前記電子放出源よりも高い電位に規定される矩形形状のアノード電極と、該アノード電極に前記電位を供給する給電端子と、を備え、前記電子放出源から放出された電子が該アノード電極によって加速されて前記発光部材に衝突するようにされたフェイスプレートと、を有し、
前記フェイスプレートは、
前記アノード電極の外側に、該アノード電極の互いに対向する2辺に沿って前記走査線と並進して設けられ、各々が該アノード電極と接続され、いずれか一方が前記給電端子と接続された第一及び第二の電位規定部材と、
前記アノード電極の外側に、該アノード電極の他の2辺の少なくとも一方に沿って位置し、前記第一の電位規定部材と前記第二の電位規定部材とを接続する抵抗部材と、を有し、
前記第一及び第二の電位規定部材の基準長さ当たりの平均抵抗値のうち大きい方をR1、前記抵抗部材の基準長さ当たりの平均抵抗値をR2、前記アノード電極の、前記抵抗部材の長手方向と平行な方向における基準長さ当たりの平均抵抗値をR3、としたときに、R1<R2<R3の関係を満たしている、画像表示装置。
【請求項2】
前記アノード電極は、
前記発光部材を覆うマトリクス状に配置された複数のメタルバックと、
前記抵抗部材の長手方向と平行な前記メタルバックの各列で、前記第一の電位規定部材と複数の前記メタルバックと前記第二の電位規定部材とを直列に順次接続する複数のメタルバック抵抗部材と、を有し、
前記基準長さは、前記メタルバックの各列で、一つの前記メタルバックを挟んで両側から隣接する1組の前記メタルバック抵抗部材の、前記抵抗部材の長手方向における各中央部を両端として定められる区間の長さに等しい、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記アノード抵抗部材の、前記抵抗部材の長手方向における基準長さ当たり抵抗値は、前記メタルバックの、前記抵抗部材の長手方向における基準長さ当たり抵抗値より大きい、請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記リアプレートは、前記第一及び第二の電位規定部材と対向する部位に、前記電子放出源及び該電子放出源の駆動用回路のいずれとも接続されていない放電用配線を有している、請求項1から3のいずれか1項に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図5】
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