説明

画像表示装置

【課題】スペーサをリアプレートとフェースプレートに対して垂直に配置し、維持することによって、変形や破損を防止した画像表示装置を提供する。
【解決手段】スペーサ4がリアプレート2又はフェースプレート1との当接側に突起21を有し、該突起21を有する側において、スペーサ4とプレートとの間に緩衝材20を配置し、該緩衝材20として適度な弾性率を有するものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子放出素子を備えた画像表示装置に関し、特に、電子放出素子を有するリアプレートと発光部材を有するフェースプレートとの間にスペーサを有する画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型化・軽量化が可能な画像表示装置として、表面伝導型電子放出素子などの電子放出素子を用いた平面型の画像表示装置が提案されている。このような表示装置は、電子放出素子を備えたリアプレートと、電子の照射によって発光する発光部材を備えたフェースプレートとを対向配置させ、周縁部に枠材を介して封止することにより、真空容器を形成してなる。そして、真空容器内部と外部との気圧差による基板の変形や破損を防止するため、スペーサと呼ばれる支持体を基板間に介在させている。スペーサは通常、真空容器内に複数配置されるが、容器の破損防止及び良質の画像表示を行う上で、複数のスペーサに高さの均一性が求められる。特許文献1には、リアプレートまたはフェースプレートとスペーサとの間に、スペーサの高さ公差緩和のため柔軟金属部材を配置した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3699565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
真空容器の破損を防止し、優れた画質を保つ上では、スペーサをリアプレートやフェースプレートに対して垂直に配置し、傾かないように維持する必要がある。
【0005】
本発明の課題は、スペーサをリアプレートとフェースプレートに対して垂直に配置し、プレートに対して傾くことを抑制することによって、変形や破損を防止した画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電子放出素子を有するリアプレートと、該電子放出素子から放出された電子の照射を受けて発光する発光部材を有するフェースプレートと、前記リアプレートとフェースプレートとの間に位置し、前記リアプレート又はフェースプレートに対向する側に突起を有するスペーサと、前記リアプレート又はフェースプレートと前記突起との間に位置する緩衝材とを有する画像表示装置であって、
前記突起の高さをL[m]、前記スペーサの外周に接する緩衝材の厚みをt[m]、緩衝材の弾性率をa[MPa]、前記緩衝材と前記スペーサとの当接部に係る力の総量をF[MPa・m2]、前記当接部の総面積をS[m2]とした時、以下の式(1)を満たすことを特徴とする。
【0007】
F/S<a<(t/(0.6×L))×(F/S) (1)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スペーサの突起によって、スペーサがプレートに対して傾いてしまうことが抑制され、高画質表示で変形や破損が防止された信頼性の高い画像表示装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の画像表示装置の一例の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の画像表示装置の概略構成を示す模式図である。
【図3】本発明に係るスペーサと緩衝材を説明するための模式図である。
【図4】本発明に係る緩衝材の作用を説明するための模式図である。
【図5】本発明の実施例のリアプレートの平面模式図である。
【図6】本発明の実施例の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の特徴である、緩衝材の弾性率とスペーサの当接面の突起形状に対する関係について、説明する。
【0011】
本発明の画像表示装置は、電子放出素子を有するリアプレートと、該電子放出素子から放出された電子の照射を受けて発光部材を有するフェースプレートとを備えており、電子放出素子としては、FED、表面伝導型電子放出素子(SED)などが挙げられる。そして、上記リアプレートとフェースプレートとの間にはスペーサが配置し、本発明においては、係るスペーサがリアプレート又はフェースプレートに対向する側に突起を有し、該突起とプレートとの間に緩衝材を配置している。
【0012】
図1は、本発明の画像表示装置の一例の表示パネル(気密容器)の構成を模式的に示す図である。図1は単純マトリクス配置の電子源を用いて構成した画像表示装置の表示パネルの一例を示す模式図であり、一部を切り欠いた状態で示す。図1において、1はガラス基板であるフェースプレートであり、内面に発光部材としての蛍光体である蛍光膜6とアノードであるメタルバック7が形成されている。また、2はリアプレートであり、電子放出素子8とX方向配線9、Y方向配線10とを形成した電子源基板5を備えている。3は支持枠であり、この支持枠3にリアプレート2、フェースプレート1がフリットガラス等を介して取り付けられ、気密容器(外囲器)を構成している。尚、本例ではリアプレート2上に電子源基板5が載置されているが、当該構成は、電子源基板5の強度を補強するためにリアプレート2を用いたものである。よって、十分な強度が得られるのであれば、リアプレート2に直接電子放出素子8や配線を形成しても構わない。
【0013】
電子放出素子8としては、例えば、表面伝導型やFE型或いはMIM型などの冷陰極素子が用いられる。リアプレート2に形成される上記電子放出素子8からの電子ビームはフェースプレート1に供給される所望の加速電圧によって加速され、フェースプレート1に照射される。その際、フェースプレート1に形成された蛍光膜6に電子が衝突することにより、蛍光体が発光、フェースプレート1に画像を映し出す構成となっている。
【0014】
フェースプレート1とリアプレート2との間には、支持体としてスペーサ4を設置することにより、大気圧に対して十分な強度を持たせた構成とされる。尚、本発明においては、スペーサ4とフェースプレート1又はリアプレート2との間に緩衝材を配置する以外の構成については、従来と同様である。
【0015】
図2は、図1の装置をさらに概略化して示した図であり、(a)は平面模式図、(b)は(a)のA−A’断面模式図、(c)はスペーサ4と電子源基板5との当接付近の拡大模式図であり、図中の20は緩衝材、21はスペーサ4の突起である。
【0016】
図2(a)、(b)に示すように、本発明の画像表示装置はリアプレート2とフェースプレート1と支持枠3とがフリットガラスによって気密に接着されており、該支持枠3の内側の寸法をX方向W1、Y方向W2とする。スペーサ4はY方向に間隔P1で配置された板状(X方向長さM、Y方向長さT)であり、フェースプレート1とリアプレート2の間を距離Dに一定に保つ。スペーサ4は前述したように、フェースプレート1及びリアプレート2にかかる大気圧P(0.1MPa)に相当する外力を支持する。その全荷重は大気圧に画像表示装置の内部断面積であるA(=W1×W2)を乗じた荷重(P×A)に相当する。その荷重を複数のスペーサ4が分散して支持すると考える。
【0017】
図2(c)を用いて、スペーサ4とリアプレート2が当接する様子を説明する。スペーサ4とリアプレート2との間には、弾性率a、厚さtの緩衝材20を設置してある。また、スペーサ4の緩衝材20がある方の当接面には高さLの突起21が存在する。厚さtと突起高さLについて、図3を用いて詳細に説明する。
【0018】
緩衝材20の厚さtは、緩衝材20が配置されている面(図2においては電子源基板5の表面)から、スペーサ4の外周に接する緩衝材20の厚さである。該厚さが不均一の場合には、図3(a)で示すように、スペーサ4の外周に接している緩衝材20の最も薄い位置での厚みとする。
【0019】
スペーサ4の突起21の高さLは、スペーサ4の緩衝材20との当接面に存在する突起21の高さである。詳細に言うと、スペーサ4の最外周に囲われたZ方向に平行な面の内側の凸部を突起21と言い、例えばスペーサ4のZ方向に平行な表面に凹凸が形成されている場合には図3(b)に示す長さを高さLとする。また、突起21が非対称である場合は、図3(c)に示すように、突起21の最も長い場所を高さL[m]とする。さらに突起21の頂点からスペーサ4の最外周面までの距離をs[m]として、
L/s<1.75×10-3
を満たすようなスペーサ4の場合、傾いたとしても、最大±0.1°となり、後述するように殆ど影響がなくなる。また、突起21の形状によって、L/sが複数存在する場合は、その最大値が上記の関係式を満たせば良い。
【0020】
ここで、前記スペーサ4の全ての当接部にかかる力の総量をF[MPa・m2]、前記スペーサ4の全ての当接部の面積(XY方向に平行な断面の面積)をS[m2]とすると
F=P×A
となり、さらに、緩衝材20のへこみ量Δt[m]は次のように求められる。
【0021】
Δt=(t/a)×(F/S)
【0022】
へこみ量Δtは、スペーサ4の突起21によって緩衝材20に形成された凹部のX方向の深さであり、スペーサ4の外周に接する緩衝材20が最も薄い個所から、緩衝材20に埋め込まれた突起21の最も深い個所までのX方向の長さである。緩衝材20の形が不均一の場合は、図3(d)に示すへこみ量Δtとなる。
【0023】
ここで、緩衝材20の役割について説明する。図4(a)は、緩衝材20が無い場合のスペーサ4と基板5の当接の様子である。スペーサ4の当接面には、突起21や傾斜が存在するため、基板5(実際には配線)に垂直にあたらない可能性がある。この時、スペーサ4には、回転のモーメントが働き、図4(b)のようにスペーサ4は傾いてしまう。このスペーサ4の傾きは、スペーサ4近傍の電界を歪め、電子軌道に影響を与え、画質劣化を引き起こしたり、傾きが大きい場合には、工程中或いは工程後のパネルが完成した後で、スペーサ4自体が倒れてしまうことにより、パネル破壊を引き起こすことがある。本発明者等は、この傾きに対する影響を調べた結果、スペーサ4の傾きが±0.1°を超えると画質に影響を与え出し、さらに、±0.3°を超えるとスペーサ4が倒れてしまう場合が増加することを確認した。図4(c)、(d)は、緩衝材20がある場合である。緩衝材20が適正な弾性率であるならば、緩衝材20が凹むことによって、スペーサ4端部の突起21によって生じる回転のモーメントを小さくできる。その条件としては、先ず、緩衝材20の厚さtより、緩衝材20のへこみ量Δtが小さくなければならない。これは、あまりに弾性率a[MPa]が小さいと、柔らかすぎて、スペーサを支えきれなくなるからである。従って、
t>Δt=(t/a)×(F/S)
であり、よって、
F/S<a
となる。
【0024】
また、弾性率aの上限としては、あまりに硬すぎても突起21を吸収できないので、突起21の形状に応じて、適切に柔らかくならなければならない。本発明者等は、鋭意検討の結果、スペーサ4の傾きを小さくするためには、
Δt>α×L
とした時に、α=0.6が必要であることを実験によって求めた。これは定性的には、緩衝材20が凹むことによりスペーサ4と緩衝材20の接点が増加し、点荷重であったものが分布荷重となり、さらに、突起21によってスペーサ4に働くモーメントも分散化することによって、スペーサ4が倒れにくくなることを示している。この時、スペーサ4の傾きは、±0.3°以内に抑えることが可能となる。
【0025】
従って
Δt=(t/a)×(F/S)>0.6×L
よって、
a<t/(0.6×L)×(F/S)
が導かれ、上式と合わせて
F/S<a<t/(0.6×L)×(F/S)
となる。
【0026】
以上から、本発明の画像表示装置においては、
F/S<a<t/(0.6×L)×(F/S) (1)
を満たすものとする。
【0027】
本発明において、上記式(1)を満たす範囲で、スペーサ4の傾きをさらに低減するために、
Δt>α×L
とした時に、α=1が望ましいことを実験によって求めた。これは、図4(d)のように、定性的には緩衝材20が凹むことによって、突起21が完全に緩衝材20の中に埋まることを示している。この場合、突起21によってスペーサに働くモーメントは、ほとんどなくなり、更にスペーサ4が倒れなくなることを示している。この時、スペーサの傾きは、±0.1°以内に抑えることが可能となり、さらに高画質化を達成することができる。
【0028】
従って、
Δt=(t/a)×(F/S)>1.0×L
よって、
a<t/L×(F/S)
が導かれ、上式と合わせて
F/S<a<(t/L)×(F/S)
となる。
【0029】
以上から、本発明の画像表示装置においては、
F/S<a<(t/L)×(F/S) (2)
を満たすことが望ましい。
【0030】
本発明において、緩衝材20の素材としては上記(1)式、好ましくは(2)式を満たすものであれば特に限定されないが、具体的にはAg,Alなどの金属、ZnOなどの金属酸化物が用いられる。また、係る緩衝材20をリアプレート2側に配置し、さらに、スペーサ4が2本以上の配線上にわたって当接するような場合には、該緩衝材20として絶縁部材を用いることで、配線間を絶縁することができる。
【0031】
上記実施形態においては、緩衝材20をスペーサ4のリアプレート2との当接側に配置したが、スペーサ4の突起21がフェースプレート1側にある場合には、スペーサ4のフェースプレート1との当接側に緩衝材20を配置すればよい。また、上記実施形態においては、板状のスペーサ4を示したが、本発明においては円柱、角柱、XY平面において十字型などの形状であっても好ましく用いられる。
【実施例】
【0032】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳述する。以下の各実施例においては、マルチ電子ビーム源として、素子電極間の導電性膜に電子放出部を有するn×m個(n=480、m=100)の表面伝導型電子放出素子を、m本のX方向配線とn本のY方向配線とによりマトリクス配線した電子源を用いた。
【0033】
(実施例1)
本例では、図2に示した構成の画像表示装置を形成した。スペーサ4としては、長さ(X方向)108mm、幅(X方向)2mm、厚み(Y方向)0.26mm、端面の突起21の高さLが最大3μmでリアプレート2と同質のガラスで板状のものを用意した。
【0034】
フェースプレート1の厚さT1=2.8mm、リアプレート2の厚さT2=2.8mm、基板間隔D=2mmである。支持枠3の内寸はX方向がW1=112mm、Y方向がW2=72mmである。支持枠3とフェースプレート1及びリアプレート2はフリットガラス(不図示)により気密に接着した。スペーサ4は、Y方向にピッチP1=20mmで均一に配置し、本数は3本とした。これらの構成部材によって画像表示装置を構成した。
【0035】
本例の表示パネル作製について、図5を用いて詳述する。先ず、予め緩衝材20、X方向配線9、Y方向配線10、層間絶縁層55、及び表面伝導型電子放出素子の素子電極51,52と導電性膜54を形成した電子源基板5を、リアプレート2に固定した。緩衝材20としては、表1(a)の4種類(Ag(1)、ZnO、Al、Cu)を用意した。厚みは全て20μmである。
【0036】
スペーサ4を基板5のX方向配線9(線幅=300μm)上に緩衝材20を介して、等間隔で、X方向配線9と平行に固定した。その後、基板5の2mm上方に、内面に蛍光膜6とメタルバック7が付設されたフェースプレート1を支持枠3を介して配置し、リアプレー卜2、フェースプレート1、及び、支持枠3の各接合部を固定した。基板5とリアプレート2の接合部、リアプレート2と支持枠3の接合部、及びフェースプレート1と支持枠3の接合部は、フリットガラス(不図示)を塗布し、大気中で400℃乃至500℃で10分以上焼成することで封着した。
【0037】
本例において、
F=P×A
=0.1[Mpa]×(W1×W2)
=0.1[Mpa]×112×10-3[m]×72×10-3[m]
=8.064×10-4[MPa・m2
【0038】
また、当接部の面積は、スペーサ4の断面積のおよそ1/100であった。これは、X方向配線9がそれ以外の下層の配線によって高さ分布が生じ、実際にスペーサ4と当接する部分が減少するためである。
【0039】
尚、当接部の面積は、表示装置を分解し、緩衝材20に生じたスペーサ4の圧痕をレーザー顕微鏡(キーエンス社製VK−8500)を用いて測定した。具体的には、レーザー顕微鏡で1〜2mm四方の当接部の高さプロファイルを10〜100箇所取得し、スペーサ4と当接することによって形状が変化している領域の面積を算出した。これを全てのスペーサ4に対して行い、当接部の総面積を算出した。従って、
S=0.26×10-3[m]×108×10-3[m]×3×0.01
=8.42×10-7[m2
F/S=8.064×-4[MPa・m2]/8.42×10-7[m2
=958MPa
【0040】
一方、t=20μm、L=3μmであるので、
(t/(0.6×L))×F/S
=(20×10-6/0.6×3×10-6)×958[MPa]
=11.11×958[MPa]
=10643[MPa]
となる。即ち、前記式(1)は、
958MPa<a<10643MPa
となる。
【0041】
また、
(t/L)×(F/S)
=(20×10-6/3×10-6)×958[MPa]
=6.67×958[MPa]
=6390[MPa]
となる。即ち、前記式(2)は、
958MPa<a<6390MPa
となる。
【0042】
【表1】

【0043】
Alの弾性率はa=7550MPaであり、上記式(1)を満たしている。この時、突起21の高さL=3μmのうち、Alの緩衝材20の中に埋まっている部分の厚みΔtは、
Δt=(t/a)×(F/S)
=(20×10-6[m]/7550[MPa])×958[MPa]
=2.54×10-6[m]
となる。よって、突起21の6割以上が埋まっており、スペーサ4の傾きを±0.3°以下に抑制することができた。
【0044】
表1には、他の材質におけるΔtの数値を示した。また、図6(a)は、実施例1における弾性率aと、Δtの関係を表したものである。ZnO、Ag(1)については、Alと同様に、式(1)を満たし、スペーサ4表面の突起21によって、スペーサ4が基板5に対して傾いてしまうのを抑制し、スペーサ4を基板5にほぼ垂直に設置することができた。この時も、これらのスペーサ4の傾きは、±0.3°以下であった。しかし、Cuについては、式(1)を満たしていないため、
Δt=(t/a)×(F/S)
=(20×10-6/13780[MPa])×958[MPa]
=1.39×10-6[m]
となり、突起21の6割以上が埋まっていないため、該突起21によって、スペーサ4がプレート1,2に対して傾いてしまうことを抑制できず、スペーサ4の傾きは±0.3°を超えてしまう。そのため、画質劣化が生じていたり、工程中或いは工程後のパネルが完成した後で、スペーサ4が倒れてしまうケースがあった。
【0045】
また、Ag(1)、ZnOについては式(2)も満たしているため、Δtはいずれも突起21の高さL=3μmを超えており、突起21が全て緩衝材20に埋まり、スペーサ4の傾きを±0.1°以下に抑えることができた。
【0046】
(実施例2)
本発明の実施例2について、実施例1と異なる点のみ説明する。本例では、緩衝材20として、表2の3種類(Ag(1)、Ag(2)、ZnO)を用意した。厚みは全て10μmである。また、スペーサ4としては、長さ(X方向)108mm、幅(Z方向)2mm、厚み(Y方向)0.26mm、端面の突起21の高さLが最大2μmで、リアプレート2と同質のガラスで、板状のものを用意した。尚、Ag(1)とAg(2)とは、緩衝材20の作製法が異なるため、弾性率が異なるものである。
【0047】
本例においては、実施例1と同様に、
F=8.064×10-4[MPa・m2
S=8.42×10-7[m2
F/S=958[MPa]
である。
【0048】
一方、t=10μm、L=2μmであるので、
(t/(0.6×L))×(F/S)
=(10×10-6[m]/0.6×2×10-6[m])×958[MPa]
=8.33×958[MPa]
=7980[MPa]
である。即ち、前記式(1)は、
958MPa<a<7980MPa
となる。
【0049】
また、
(t/L)×(F/S)
=(10×10-6[m]/2×10-6[m])×958[MPa]
=5×958[MPa]
=4790[MPa]
となる。即ち、前記式(2)は、
958MPa<a<4790MPa
となる。
【0050】
【表2】

【0051】
Ag(1)の弾性率はa=4346MPaであり、上記式(1)及び(2)を満たしている。この時、突起21の高さL=2μmのうち、緩衝材Ag(1)の中に埋まっている部分の厚みΔtは、
Δt=(t/a)×(F/S)
=(10×10-6[m]/4346[MPa])×958[MPa]
=2.2×10-6[m]
となる。よって、突起21の全てが埋まっており、スペーサ4表面の突起21によって、スペーサ4が基板5に対して傾いてしまうのを抑制し、スペーサ4を基板5にほぼ垂直に設置することができた。この時、スペーサ4の傾きは、±0.1°以下であった。
【0052】
表2には、他の材質におけるΔtの数値を示した。また、図6(b)は、実施例2における弾性率aと、Δtの関係を表したものである。ZnOについては、Ag(1)と同様に、式(1)及び(2)を満たし、スペーサ4表面の突起21によって、スペーサ4が基板5に対して傾いてしまうのを抑制し、スペーサ4を基板5にほぼ垂直に設置することができた。この時、スペーサの傾きは、±0.1°以下であり、このスペーサ4を用いた画像表示装置は、良好な画質を得られた。
【0053】
Ag(2)は、式(1)を満たすものの、式(2)を満たしていない。即ち、
Δt=(t/a)×(F/S)
=(10×10-6[m]/6111[MPa])×958[MPa]
=1.57×10-6[m]
となる。よって、突起21の6割以上は埋まっているが、全てが埋まっていないため、スペーサ4表面の突起21による、スペーサ4の基板5に対する傾きは±3°以下の範囲であった。
【0054】
(実施例3)
本発明の実施例3について、実施例1と異なる点のみ説明する。本実施例と実施例1との違いは、スペーサ4を基板5のX方向配線9(線幅=300μm)に対して、垂直、即ちY方向配線10の直上に位置するように、緩衝材20を介して、等間隔で、Y方向配線10と平行に固定した。緩衝材20として、弾性率がa=1140MPaで絶縁性のZnOを厚みt=10μmで用いた。
【0055】
本例においては、実施例1と同様に、式(2)
F/S=957MPa<a<(t/L)×F/S=4790MPa
を満たしている。よって、スペーサ4表面の突起21によって、スペーサ4が基板5に対して傾いてしまうのを抑制し、スペーサ4を基板5にほぼ垂直に設置することができ、さらに、複数の配線に跨って設置されているにも関らず、配線間の絶縁を保つことができた。
【符号の説明】
【0056】
1:フェースプレート、2:リアプレート、3:支持枠、4:スペーサ、5:電子源基板、8:電子放出素子、20:緩衝材、21:突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子放出素子を有するリアプレートと、該電子放出素子から放出された電子の照射を受けて発光部材を有するフェースプレートと、前記リアプレートとフェースプレートとの間に位置し、前記リアプレート又はフェースプレートに対向する側に突起を有するスペーサと、前記リアプレート又はフェースプレートと前記突起との間に位置する緩衝材とを有する画像表示装置であって、
前記突起の高さをL[m]、前記スペーサの外周に接する緩衝材の厚みをt[m]、緩衝材の弾性率をa[MPa]、前記緩衝材と前記スペーサとの当接部に係る力の総量をF[MPa・m2]、前記当接部の総面積をS[m2]とした時、以下の式(1)を満たすことを特徴とする画像表示装置。
F/S<a<(t/(0.6×L))×(F/S) (1)
【請求項2】
前記突起の高さをL[m]、前記スペーサの外周に接する緩衝材の厚みをt[m]、緩衝材の弾性率をa[MPa]、前記緩衝材と前記スペーサとの当接部に係る力の総量をF[MPa・m2]、前記当接部の総面積をS[m2]とした時、以下の式(2)を満たす請求項1に記載の画像表示装置。
F/S<a<(t/L)×(F/S) (2)
【請求項3】
前記緩衝材が絶縁部材である請求項1又は2に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−28977(P2011−28977A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172974(P2009−172974)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】