説明

画像表示装置

【課題】アノード端子周辺のさらなる耐圧向上を実現する画像表示装置を提供する。
【解決手段】画像表示装置は、互いに対向配置されたカソードプレート2およびアノードプレート3を備えた外囲器1と、カソードプレート2の非画像形成部2bに形成された貫通孔15を通じて密閉空間の内部に導入された高電圧導入部14,18と、カソードプレート2の内面側の高電圧導入部14,18から所定の沿面距離を隔てて形成された第1の環状ガード電極19と、カソードプレート2の外面側の高電圧導入部14,18から所定の沿面距離を隔てて形成された第2の環状ガード電極19と、を有している。高電圧導入部14,18は、第1の環状ガード電極19が、第2の環状ガード電極21に対してカソードプレート2の画像形成部2aから離れる方向に偏心して配置されるように、カソードプレート2に対して非対称に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に関し、特に、電子放出素子や発光体を備え、電子放出素子から電子を放出させるための高電圧を内部に導入する画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アノードプレート、カソードプレート、および枠部材からなる真空外囲器を備えた画像表示装置において、真空外囲器の内部に高電圧を供給する手段が開示されている。この手段は、詳細には、カソードプレートの画像表示領域(画像形成部)の外側に設けられた高電圧導入部である。高電圧導入部は、真空外囲器内部のアノードプレート内面に設けられたアノード電極に対して、真空外囲器外部から高電圧を導入する役目を果たしている。
【0003】
図4に、このような高電圧導入部の一例を示す。高電圧導入部は、カソードプレート102の貫通孔115を貫通して設けられたアノード端子114を有し、アノード端子114は、アノードプレート103の真空外囲器内面のアノード電極112に電気的に接続されている。カソードプレート102の真空外囲器内面および外面には、アノード端子114を囲むように、アノード端子114と所定の距離を隔てて環状ガード電極119,121が形成されている。真空外囲器外面上でのアノード端子114とガード電極121との距離(沿面距離)は、真空外囲器内面上でのアノード端子114とガード電極119との距離よりも長くなっている。このような構成により、高電圧導入部の高電圧印加に対する安定性(耐圧)を向上させることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−139978号公報
【非特許文献1】「放電ハンドブック」、社団法人電気学会、平成10年8月、上巻、p.323
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような画像表示装置では、表示性能向上のために、アノード端子に印加するアノード電圧を増加させることが求められているが、アノード電圧の増加のためには、高電圧導入部の耐圧をさらに向上させる必要がある。これは、アノード端子とガード電極との沿面距離を延長することで達成することができる。
【0006】
沿面距離を延長する方法として、一つには、画像形成部に対するアノード端子の位置を変えずに、アノード端子とガード電極との距離が大きくなるように、ガード電極を径方向外側に広げることが考えられる。しかしながら、この方法では、真空外囲器内面のガード電極が、画像形成部や、特に電子放出素子駆動用の配線に近づくことになる。そのため、万が一高電圧導入部で放電が発生した場合、配線に誘導電流が流れ、さらには電子放出素子や駆動回路を破壊してしまう可能性がある。
【0007】
これに対して、ガード電極を配線に近づけずに、すなわちガード電極と配線との距離を変えずに、アノード端子を画像形成部から遠ざけることで、アノード端子とガード電極との距離を大きくすることが考えられる。しかしながら、この方法にも、以下のような問題がある。
【0008】
大気中の沿面耐圧は、真空中の沿面耐圧と比べて低くなっているため、ガード電極の直径、すなわちアノード端子とガード電極との沿面距離は、真空外囲器の内面よりも外面で大きくする必要がある。例えば、非特許文献1には、ガラスを含む様々な部材の沿面耐圧の値が記載されているが、概算すると、真空中の沿面耐圧が、大気中の沿面耐圧よりも約5倍程度高くなっている。したがって、真空外囲器外面での沿面距離は、真空外囲器内面での沿面距離の5倍程度であることが望ましい。一方で、真空外囲器の外側では、ガード電極が画像表示装置の筐体や駆動回路等の構成部品と干渉しないことが求められる。また、ガード電極は、耐圧機能上、カソードプレートの範囲内に配置さればければならない。このような条件を限られたカソードプレートのサイズの中で満足しようとすると、アノード端子の位置は、真空外囲器の外側の沿面耐圧によって決められてしまうことになる。そのため、アノード端子を画像形成部から遠ざけることには限界があり、真空外囲器内面での沿面距離を十分に確保できない可能性がある。
【0009】
以上のように、アノード端子周辺のさらなる耐圧向上のために、真空外囲器内面での、アノード端子とガード電極との沿面距離を、上述のような方法で単純に延長することは困難である。そこで、沿面距離延長のための新たな方策が求められている。
【0010】
本発明は、アノード端子周辺のさらなる耐圧向上を実現する画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、画像形成部と該画像形成部の周囲に設けられた非画像形成部とを有するカソードプレートと、カソードプレートに対向配置されたアノードプレートと、を有し、カソードプレートとアノードプレートとの間に密閉空間が形成された外囲器であって、カソードプレートが、画像形成部の、密閉空間に面するカソードプレート内面側に設けられた電子放出素子を有し、アノードプレートが、密閉空間に面するアノードプレート内面に電子放出素子に対向して設けられた発光体と、アノードプレート内面の、発光体が形成された領域を含みこの領域よりも広い領域に設けられたアノード電極と、を有する、外囲器と、カソードプレートの非画像形成部に形成された貫通孔を通じて密閉空間の内部に導入され、アノード電極に電気的に接続された高電圧導入部と、カソードプレート内面に設けられ、カソードプレート内面側の高電圧導入部から所定の沿面距離を隔てて形成された第1の環状ガード電極と、カソードプレートの、カソードプレート内面と反対側のカソードプレート外面に設けられ、カソードプレート外面側の高電圧導入部から所定の沿面距離を隔てて形成された第2の環状ガード電極と、を有する画像表示装置において、高電圧導入部は、第1の環状ガード電極が、第2の環状ガード電極に対して画像形成部から離れる方向に偏心して配置されるように、カソードプレートに対して非対称に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アノード端子周辺のさらなる耐圧向上を実現する画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態における画像表示装置を示す概略図である
【図2】本発明の他の実施形態における画像表示装置を示す断面図である。
【図3】本発明の画像表示装置を備えたテレビジョン装置を示す構成図である。
【図4】従来の画像表示装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1から図4を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
まず、本発明の一実施形態における画像表示装置を説明する。図1(a)は、本実施形態の画像表示装置を示す部分破断斜視図である。図1(b)は、図1(a)において破線円で囲まれた領域付近を拡大して示す部分破断平面図であり、図1(c)は、図1(b)のA−A’線に沿った概略断面図である。以下の説明では、図1に示すように、基板に平行な面をxy平面とし、基板に直交する方向をz方向とする。
【0016】
本実施形態の画像表示装置は、表示パネル1と、アノード電位規定手段16と、ガード電位規定手段20と、駆動回路と、を有している。
【0017】
表示パネル1は、内部に密閉空間が形成された外囲器である。すなわち、表示パネル1は、カソードプレート2と、カソードプレート2に対向配置されたアノードプレート3と、カソードプレート2およびアノードプレート3の間に位置し、それらの間に密閉空間を形成する枠部材4とから構成されている。本実施形態では、表示パネル1は、密閉空間内が真空にされた真空外囲器として構成され、その圧力は、1×10-5Pa以下であることが好ましい。以下では、簡単のために、真空外囲器の内部は「真空」という用語(真空内、真空側など)を使って表す。したがって、例えば、カソードプレートにおいて、真空側表面とは、密閉空間に面するカソードプレート内面を意味し、アノードプレートにおいて、真空側表面とは、密閉空間に面するアノードプレート内面を意味する。また、真空外囲器の外部は「大気」という用語(大気中、大気側など)を使って表す。したがって、例えば、カソードプレートにおいて、大気側表面とは、密閉空間に面するカソードプレート内面と反対側のカソードプレート外面を意味する。なお、カソードプレート2とアノードプレート3との間には、枠部材4の他に、両者の間隔を規定するためのスペーサが設けられていてもよい。
【0018】
アノード電位規定手段16は、大気側で、後述する表示パネル1のアノード端子14に電気的に接続されており、接地電位に対してアノード電位Vaを規定するための手段である。アノード電位規定手段16は、具体的には、アノード電位Vaを発生可能な電気回路(電源回路)であり、典型的には、家庭用交流電源(例えば100V)からアノード電位Vaを生成可能な、変圧器や整流器を含んでいる。
【0019】
なお、本明細書において、「電気的に接続される」とは、2つの部材が、直接、あるいは導電性の部材を介して、互いに機械的に接続されることで、導通していることを意味するものとする。また、ここでいう「機械的に接続される」とは、2つの部材が、接着、接合、当接、接触によって接続されることを含む。
【0020】
ガード電位規定手段20は、大気側で、後述するカソードプレート2の第1の環状ガード電極19に電気的に接続されており、アノード電位Vaよりも低いガード電位Vrを規定するための手段である。ガード電位規定手段20には、アノード電位Vaよりも低いガード電位Vrを生成可能な電気回路を用いることができる。しかしながら、その場合、万が一アノード電位Vaに規定された部材との間で放電が生じると、この電気回路が損傷する可能性がある。そのため、ガード電位規定手段20としては、接地配線を用いることが好ましい。この場合、ガード電位Vrは接地電位(0V)となる。
【0021】
駆動回路は、後述するカソードプレート2の電子放出素子6を駆動するための、すなわち、電子を放出させるための回路であって、少なくともカソード電位規定手段9と、必要に応じてゲート電位規定手段10と、を含む電気回路である。
【0022】
次に、表示パネル1のカソードプレート2およびアノードプレート3の構成について詳細に説明する。
【0023】
カソードプレート2は、絶縁性の第1の基板5と、第1の基板5の真空側表面に設けられた電子放出素子6と、第1の基板5の真空側表面上をy方向およびx方向にそれぞれ延びる列配線7および行配線8と、を有している。図1(a)では、1つの電子放出素子6が点線で囲まれて示されている。第1の基板5としては、少なくとも表面が絶縁性を有する基板であればよく、ガラス基板、あるいは基板の上に絶縁層を設けたものが好適に使用可能である。
【0024】
本明細書では、「絶縁性」を有する部材は、「導電性」を有する部材よりも体積抵抗率が大きい部材として定義される。「絶縁性」を有する部材として、実用的には、その体積抵抗率が106Ωm以上の材料、すなわち絶縁体からなる部材を用いることが好ましい。また、「導電性」を有する部材として、その体積抵抗率が10-3Ωm以下である材料からなる部材を用いることが好ましく、体積抵抗率が10-5Ωm以下である材料、すなわち導電体からなる部材を用いることがより好ましい。なお、以下の説明で、「配線」、「電極」、「端子」は、導電性を有する部材である。また、「電位」は、接地電位を基準(0V)とした電位差として定義される。
【0025】
電子放出素子6は、多数、例えば100万個以上設けられ、第1の基板5の真空側表面上で、典型的にはマトリクス状に配列されている。各電子放出素子6は、少なくともカソード電極(図示せず)と、必要に応じてカソード電極からの電子放出を制御するゲート(図示せず)と、を有しており、それぞれ行配線8と列配線7とに接続されている。電子放出素子6としては、スピント型、表面伝導型、MIM型、MIS型などの電界放出素子を用いることができ、その種類は特に限定されない。
【0026】
列配線7および行配線8は、それぞれ第1の基板5の縁部に向かって延び、大気側に引き出されている。列配線7と行配線8とは、絶縁層(図示せず)を介して交差し、電子放出素子6の数に応じて、必要数が電子放出素子6の間を格子状に配置されている。図1は、第1の基板5の上に、列配線7と、絶縁層と、行配線8とがこの順で積層された場合を例示的に示している。列配線7と行配線8のそれぞれの幅は、図1では、列配線7の方が狭くなっているが、これに限定されず、行配線8の方が狭くなっていてもよく、あるいは互いに同じであってもよい。また、図1に示す実施形態では、上述したように、列配線7が電子放出素子6のゲートに接続され、行配線8が電子放出素子6のカソード電極に接続されているが、その逆であってもよい。すなわち、列配線7が電子放出素子6のカソード電極に接続され、行配線8が電子放出素子6のゲートに接続されていてもよい。
【0027】
行配線8は、大気側でカソード電位規定手段9に接続され、カソード電位Vcに規定される。また、列配線7は、大気側でゲート電位規定手段10に接続され、ゲート電位Vgに規定される。ゲート電位Vgは、カソード電位Vcよりも高電位である。カソード電位Vcとゲート電位Vgとの電位差(駆動電圧)Vdに応じて、電子放出素子6から電子が放出される。駆動電圧Vdは、典型的には100V以下である。例えば、接地電位に対してカソード電位Vcを負電位に、ゲート電位Vgを正電位にすることにより、所望の駆動電圧Vdを得ることができる。
【0028】
表示パネル1のアノードプレート3は、透明な、つまり光に対して透過性のある絶縁性の第2の基板11と、第2の基板11の真空側表面に設けられたアノード電極12と、を有している。
【0029】
アノード電極12は、膜状、層状、あるいは板状の導電性の部材である。アノード電極12の一例としては、メタルバックと呼ばれる金属薄膜が挙げられ、メタルバックの材料としては、アルミニウムが好適に使用可能である。また、アノード電極12として、ITO(Indium Tin Oxide)やZnO等の透明な導電性材料を用いることもできる。アノード電極12は、後述するアノード端子14を介してアノード電位規定手段16によってアノード電位Va、または同等の電位に規定される。
【0030】
さらに、アノードプレート3は、第2の基板11の真空側表面に設けられた、蛍光体や燐光体等の発光体13を有している。図1には、アノード電極12としてメタルバックを用いた場合が示されており、その場合、発光体13は、メタルバック(アノード電極12)と第2の基板11との間に設けられている。一方、アノード電極として透明な導電性材料を用いる場合には、アノード電極を第2の基板11の真空側表面上に設け、その上に発光体を設けることもできる。いずれの場合も、アノード電極12は、第2の基板11の真空側表面において、発光体13が形成された領域を含み、この領域よりも広い領域に設けられている。
【0031】
発光体13は、電子放出素子6から放出された電子の照射を受けて発光し画像を表示するために設けられている。すなわち、発光体13は、電子放出素子6から放出された電子が、アノード電位Vaに規定されるアノード電極12によって形成された電界で加速され、発光体13に衝突することによって発光する。このために、発光体13は、第2の基板11の真空側表面の、電子放出素子6に対向する位置に設けられている。発光体13を発光させるために必要な、実用的なアノード電位Vaは、1kV以上100kV以下、好ましくは5kV以上30kV以下、より好ましくは10kV以上25kV以下の範囲である。
【0032】
複数の電子放出素子6のそれぞれと、それに対向する位置に配置された発光体13とによって、1つのピクセルまたはサブピクセルを構成することができる。フルカラー表示を行う場合には、それぞれが赤、緑、青の発光色を呈するいくつかのサブピクセルを並べることによって、1つのピクセルを構成することができる。その場合、発光体13として、それぞれが赤、緑、青の発光色を呈する3種類の発光体を用いることができる。また、第2の基板11の真空側表面上に、サブピクセルおよびピクセルを画定するブラックマトリクスを配置することができる。また、発光体13と第2の基板11との間に、カラーフィルターを設けることもできる。
【0033】
アノードプレート3には、アノード電極12から間隔を置いてアノード電極12の外縁を囲むように、第2の基板11の真空側表面上に、別の電位規定電極が設けられていてもよい。この電位規定電極は、接地電位に規定されることが好ましい。
【0034】
以上のように、カソードプレート2およびアノードプレート3には、それぞれ電子放出素子6および発光体13が設けられている。これらの電子放出素子6および発光体13によって、カソードプレート2およびアノードプレート3に、それぞれ画像形成部2a,3aを規定することができる。すなわち、カソードプレート2は、真空側表面に電子放出素子が設けられた領域である画像形成部2aと、画像形成部2aの周囲に設けられた非画像形成部2bとから構成されている。また、アノードプレート3は、真空側表面に発光体が設けられた領域である画像形成部3aと、画像形成部3aの周囲に設けられた非画像形成部3bとから構成されている。本実施形態では、それぞれの画像形成部2a,3aは、カソードプレート2およびアノードプレート3に直交する方向(法線方向)から見たとき、互いに一致した領域であるが、これに限定されるものではなく、必ずしも一致した領域でなくてもよい。
【0035】
カソードプレート2の非画像形成部2bには、図1(b)および図1(c)に示すように、棒状のアノード端子14が設けられている。以下、アノード端子14およびその周辺の構成について詳細に説明する。
【0036】
アノード端子14は、カソードプレート2の第1の基板5に形成された貫通孔15を貫通して設けられている。アノード端子14は、真空側で、アノードプレート3のアノード電極12に電気的に接続され、大気側では、アノード電位規定手段16に接続され、アノード電位Vaに規定される。アノード電位Vaは、カソード電位Vcおよびゲート電位Vgよりも高電位である。
【0037】
アノード端子14は、典型的には金属ピンあるいは金属バネ等の導電性の部材であるが、その形状は特に限定されない。また、アノード端子14は、図1に示す例では一体の部材として構成されているが、電気的に一体として機能していればよく、複数の部材を組み合わせて構成されたものであってもよい。アノード端子14は、接着剤17によって第1の基板5に固定されている。接着剤17は、貫通孔15を完全に塞ぎ、それにより真空封止の役割も有している必要がある。そのため、接着剤17には、ガラスフリットを好適に用いることができる。また、接着剤17は、後述する理由から、導電性であることが好ましく、したがって、導電性ガラスフリットであることがより好ましい。
【0038】
図1(b)および図1(c)に示すように、貫通孔15の真空側開口(内面開口部)の周囲には、それを囲むようにアノード環状補助電極18が設けられている。さらに、アノード環状補助電極18の周囲には、アノード環状補助電極18と所定の距離を隔てて、第1の環状ガード電極19が形成されている。
【0039】
アノード環状補助電極18は、アノード電位Vaに規定された領域と、第1の環状ガード電極19との間の距離を均一にするために設けられている。すなわち、塗布状態を制御するのが難しい接着剤17と、第1の環状ガード電極19との距離が場所によって変化するのを防止するために設けられている。したがって、アノード環状補助電極18は、ガラスフリット、より好適には導電性ガラスフリットからなる接着剤17を介して、アノード端子14に電気的に接続され、アノード端子14と同電位のアノード電位Vaに規定される。接着剤17は、アノード環状補助電極18からはみ出さないように、アノード環状補助電極18の領域内に塗布されていることが好ましい。
【0040】
本実施形態では、このアノード環状補助電極18と、アノード端子14とによって、アノード電極12に高電圧を導入する高電圧導入部が構成される。
【0041】
第1の環状ガード電極19は、大気側に引き出された配線を通じてガード電位規定手段20に接続され、ガード電位Vrに規定される。ガード電位Vrは、アノード電位Vaよりも低い電位である。ガード電位Vrは、少なくともゲート電位Vgよりも低いことが好ましく、接地電位と同電位であることがより好ましい。これにより、第1の環状ガード電極19は、アノード端子14によって生じる電界を遮蔽して、電界が電子放出素子6や列配線7および行配線8などの部材に与える影響を低減する機能を有することができる。
【0042】
第1の環状ガード電極19には、体積抵抗率が10-3Ωm以下である材料を用いることができ、体積抵抗率が10-5Ωm以下である材料(導電体)を用いることが好ましい。第1の環状ガード電極19の好適な材料として、Cu、Ag、Au、Al、Ti、Ptなどの金属、あるいはこれらの金属を含む合金、ITO、ZnO等の化合物が挙げられる。第1の環状ガード電極19の形成方法としては、予め第1の環状ガード電極19の形状を有する部材を用意し、その部材を第1の基板5の真空側表面上に配置して形成する方法を用いることができる。しかしながら、アノード電極12との放電を抑制するために、第1の環状ガード電極19の厚みはできるだけ薄いことが好ましく、実用的には100μm以下であることが好ましい。そのために、真空成膜法、印刷法、メッキ法等の公知の方法を用いることができる。特に、作製の容易性の観点からは、第1の環状ガード電極19の材料として、第1の基板5の真空側表面上に設けられる列配線7や行配線8の材料と同じ材料を用いることが好ましい。これにより、列配線7または行配線8と同じ工程で第1の環状ガード電極19を形成することが可能となる。
【0043】
第1の環状ガード電極19は、環状に形成されていれば、その内周形状が多角形であってもよく、あるいは、円や楕円等であってもよい。特に、第1の環状ガード電極19の内周形状は、円形であることが好ましい。ここでいう「円形」とは、「円」だけでなく、その幾何学的中心(または幾何学的重心)から径方向の距離の最小値と最大値との比が0.95以上である「ほぼ円とみなせる形状」を含む。
【0044】
また、第1の環状ガード電極19が、内周部分にアノード端子14側に向かって先鋭な形状を有していることは、その部分に電界が集中しやすいため好ましくない。したがって、第1の環状ガード電極19の内周縁は、できるだけ滑らかな曲線または曲面であることが好ましい。
【0045】
第1の環状ガード電極19の近傍に強い電界が形成されると、第1の環状ガード電極19から電子が電界放出される場合がある。その場合、ガード電位Vrに規定された第1の環状ガード電極19と、ガード電位Vrよりも高いアノード電位Vaに規定された部材(高電圧導入部14,18やアノード電極12)との間で放電が生じることがある。特に、高電圧導入部14,18と第1の環状ガード電極19との間の絶縁性表面で、沿面放電が生じやすくなる。したがって、第1の基板5の真空側表面上での、高電圧導入部14,18と第1の環状ガード電極19との間隔gvac(絶縁沿面距離)は、アノード電位Vaとガード電位Vrに応じて確保されている必要がある。
【0046】
第1の基板5の大気側表面上には、図1(c)に示すように、アノード端子14と所定の距離を隔てて、第2の環状ガード電極21が形成されている。第2の環状ガード電極21は、ガード電位規定手段(図示せず)に電気的に接続され、前記第1の環状ガード電極19と同電位に規定される。すなわち、第2の環状ガード電極21は、アノード電位Vaよりも低いガード電位Vrに規定される。これにより、第2の環状ガード電極21は、第1の環状ガード電極19と同様に、アノード端子14が生じる電界を遮蔽して、電界が表示パネル1外部の部材、例えば、画像表示装置の筐体や駆動回路などに与える影響を低減する機能を有することができる。第2の環状ガード電極21の内側には、貫通孔15の大気側開口(外面開口部)を囲むように、アノード端子14に電気的に接続された環状補助電極が設けられていてよい。
【0047】
第2の環状ガード電極21は、第1の環状ガード電極19と同様の材料を用いて形成することができ、第1の環状ガード電極19と同様の内周形状に形成することができる。第2の環状ガード電極21の形成方法としては、第1の環状ガード電極19と同様の方法を用いることができるが、特に、予め第2の環状ガード電極21の形状を有する部材を用意し、その部材を第1の基板5の大気側表面上に配置して形成する方法が容易であり好ましい。
【0048】
また、第1の基板5の大気側表面上での、第2の環状ガード電極21とアノード端子14との間隔gairは、ガード電位Vrとアノード電位Vaとに応じて必要なだけ空ける必要がある。非特許文献1によれば、上記間隔gairは、第1の環状ガード電極19とアノード端子14との間隔gvacの5倍程度以上であることが好ましい。
【0049】
ここで、図1(a)、図1(b)、および図4を参照して、本発明に係る高電圧導入部の特徴について説明する。
【0050】
図4に示す従来の画像表示装置では、第1の環状ガード電極119と、第2の環状ガード電極121と、アノード環状補助電極118とは、アノード端子114に対して実質的に同心状に配置されている。したがって、画像形成部102aから第1の環状ガード電極119の中心までの最短距離dvacは、画像形成部102aから第2の環状ガード電極121の中心までの最短距離dairに等しい。
【0051】
一方、本実施形態の画像表示装置では、アノード環状補助電極18が、図1(b)からもわかるように、アノード端子14に対して画像形成部2aから離れる方向に偏心して配置されている。そして、第1の環状ガード電極19は、このようなアノード環状補助電極18から所定の沿面距離gvacを隔てて形成されている。一方、第2の環状ガード電極21は、アノード端子14に対して実質的に同心状に配置されている。したがって、第1の環状ガード電極19は、第2の環状ガード電極21に対して、画像形成部2aから離れる方向に偏心して配置されることになる。すなわち、画像形成部2aから第1の環状ガード電極19の中心までの最短距離dvacは、画像形成部2aから第2の環状ガード電極21の中心までの最短距離dairよりも長くなっている。これにより、第2の環状ガード電極21の構成によって決定されるアノード端子14の位置はそのままに、第1の環状ガード電極19を画像形成部2aの外側へ向かって広げることができる。その結果、列配線7および行配線8と第1の環状ガード電極19との距離を変化させることなく、第1の環状ガード電極19の沿面距離gvacを広げることが可能となる。広げられる距離は、距離dvacと距離dairとの差、すなわち実質的には、アノード環状補助電極18をアノード端子14に対して偏心した距離である。このようにして、アノード端子14周辺のさらなる耐圧向上を実現することが可能となる。
【0052】
図2(a)および図2(b)はそれぞれ、本発明の画像表示装置におけるアノード端子14の周辺構成の他の実施形態を示す、図1(c)に対応した概略断面図である。図2において、図1に示す実施形態と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付す。
【0053】
図1に示す実施形態では、アノード端子14が、カソードプレート2に対してほぼ対称に設けられていたのに対して、アノード環状補助電極18が、アノード端子14に対して偏心して配置されていた。それにより、第1の環状ガード電極19を第2の環状ガード電極21に対して偏心して配置して、第1の環状ガード電極19の沿面距離gvacを広げることが可能となった。一方、図2(a)および図2(b)に示す実施形態では、アノード端子14自体をカソードプレート2に対して非対称に設けることで、図1に示す実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0054】
図2(a)および図2(b)に示す実施形態では、いずれの場合も、アノード端子14は、真空側の軸心が大気側の軸心に対して画像形成部2aから離れる方向に偏心するように、折れ曲がって形成されている。アノード環状補助電極18および第1の環状ガード電極19は、アノード端子14の真空側の軸心に対して実質的に同心状に配置され、第2の環状ガード電極21は、アノード端子14の大気側の軸心に対して実質的に同心状に配置されている。すなわち、第1の環状ガード電極19は、第2の環状ガード電極21に対して、画像形成部2aから離れる方向に偏心して配置されることになる。これにより、図1に示す実施形態と同様に、画像形成部2aから第1の環状ガード電極19の中心までの最短距離dvacを、画像形成部2aから第2の環状ガード電極21の中心までの最短距離dairよりも長くすることができる。したがって、第2の環状ガード電極21の構成によって決定される、アノード端子14の大気側の軸心位置はそのままに、第1の環状ガード電極19を画像形成部2aの外側へ向かって広げることができる。このようにして、列配線7および行配線8と第1の環状ガード電極19との距離を変化させることなく、第1の環状ガード電極19の沿面距離gvacを広げることが可能となる。広げられる距離は、距離dvacと距離dairとの差、すなわち実質的には、アノード端子14の真空側の軸心を大気側の軸心に対して偏心した距離である。このようにして、図2に示す実施形態においても、アノード端子14周辺のさらなる耐圧向上を実現することが可能となる。
【0055】
図2(a)に示す実施形態と図2(b)に示す実施形態とでは、貫通孔15の真空側開口が大気側開口よりも画像形成部2aから離れた位置に開口している点は同じであるが、貫通孔15の内部が異なっている。
【0056】
図2(a)では、貫通孔15は、第1の基板5に対して斜めに直線状に貫通している。その角度θは、第1の基板5に垂直に貫通する場合を90°としたとき、実用的範囲としては45°以上90°未満であり、加工の容易性および貫通孔15の周辺の機械強度を考慮すると、60°以上であることが望ましい。一方、図2(b)では、貫通孔15はクランク状に形成されている。
【0057】
なお、図2に示す実施形態では、アノード端子14がカソードプレート2に対して非対称になるように折れ曲がっていることで、図1に示す実施形態と同様の効果が得られている。そのため、図2に示す実施形態では、高電圧導入部は、アノード端子14のみで構成することができ、貫通孔15の真空側開口のアノード環状補助電極18は、必ずしも設けられている必要はない。その一方で、図1に示す実施形態を、図2に示す実施形態と組み合わせて実施することも可能である。すなわち、図2に示す実施形態において、折れ曲がったアノード端子14に対して、アノード環状補助電極18をさらに偏心して配置することも可能である。
【0058】
本発明の画像表示装置は、テレビジョン装置に組み込むことができる。図3は、そのようなテレビジョン装置の一構成例を示す図である。図3において、図1に示す実施形態と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付す。
【0059】
テレビジョン装置23は、本発明の画像表示装置22と、I/F部26と、受信回路27と、を有している。
【0060】
画像表示装置22は、表示パネル1と、アノード電位規定手段16と、ガード電位規定手段20と、駆動回路24と、を有している。画像表示装置22は、複数の電子放出素子のうち、任意の電子放出素子を選択して駆動し、所望の階調で発光体13を発光させることができる。
【0061】
駆動回路24は、走査回路24aと変調回路24bとを有し、例えば、走査回路24aがカソード電位規定手段を含み、変調回路24bがゲート電位規定手段を含むように構成することができる。典型的には、走査回路24aは、表示パネル1の行配線に接続され、走査信号をカソード電位Vcとして出力し、変調回路24bは、表示パネル1の列配線に接続され、変調信号をゲート電位Vgとして出力する。変調信号は、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)、PAM(Pulse Amplitude Modulation)、およびPWMとPAMとの組み合わせのいずれかの変調方法によって、表示する階調に合わせて変調される。
【0062】
また、画像表示装置22は、入力された画像信号に対して表示パネル1に適した補正処理等を施すともに、補正された画像信号および各種制御信号を駆動回路24に出力する制御回路25を有している。補正処理として、例えば逆ガンマ補正を行うことができる。補正された画像信号に基づいて、駆動回路24が、駆動信号として走査信号および変調信号を表示パネル1に出力する。
【0063】
受信回路27は、画像情報を含むテレビジョン信号を受信する。テレビジョン信号は、衛星放送、地上波放送、ケーブルテレビ等の放送、インターネットやテレビ会議システム等の通信、カメラやスキャナ等の画像入力装置、画像情報が記憶されたビデオレコーダ等の画像記憶装置から受信することができる。受信回路27は、必要に応じて、チューナーおよびデコーダーの少なくとも一方を含むことができる。受信回路27は、テレビジョン信号から復号化した画像信号をI/F部26に出力する。
【0064】
I/F部26は、入力された画像信号を、画像表示装置22の表示フォーマットに変換して、画像表示装置22に出力する。これにより、表示パネル1には、テレビジョン信号に応じた画像が表示される。本実施形態の画像表示装置22によれば、表示パネル1内での放電による影響が低減されるため、信頼性の高いテレビジョン装置23を実現することができる。
【実施例】
【0065】
以下、具体的な実施例を挙げて、本発明を詳しく説明する。
【0066】
(実施例1)
本実施例では、図1に示す表示パネル1を製造した。
【0067】
まず、第1の基板として矩形状のガラス基板5を用意し、アノードプレート3を作製した。
【0068】
具体的には、まず、ガラス基板5の頂点近傍に直径2mmの貫通孔15を設けた後、ガラス基板5上に、公知の方法により複数の表面伝導型電子放出素子6を形成した。このとき、矩形状の画像形成部2aの角部に位置する、貫通孔15に最も近接した電子放出素子6は、貫通孔15に対して45°(+x方向を0°とし、+y方向を90°とする)の方向に配置した(図1(b)参照)。次に、ガラス基板5上に、Agペーストを用いたスクリーン印刷法、および絶縁性ペーストを用いたスクリーン印刷法によって、列配線7と層間絶縁層(図示せず)と行配線8とからなるマトリクス配線を形成した。次に、Agペーストを用いたスクリーン印刷法によって、貫通孔15を囲むように、直径6mmの円形のアノード環状補助電極18と、内径12mm、外径14mmの円環状の第1の環状ガード電極19とを厚さ10μmで形成した。アノード環状補助電極18は、その中心を貫通孔15の中心に対して225°の方向に1mmずれるようにし、第1の環状ガード電極19は、アノード環状補助電極18と同心円状に形成した。したがって、第1の環状ガード電極19とアノード環状補助電極18との間隔gvacは3mmとした。また、それぞれ列配線7および行配線8と平行になるように、第1の環状ガード電極19から大気側へ引き出される2つの配線を形成した。このとき、列配線7と第1の環状ガード電極19との最近接距離と、行配線8と第1の環状ガード電極19との最近接距離とを共に1mmとした。
【0069】
以上の構成により、本実施例では、画像形成部2aから第1の環状ガード電極19の中心までの最短距離dvacは10.9mmであり、画像形成部2aから第2の環状ガード電極21の中心までの最短距離dairは9.9mmであった。すなわち、dvac>dairであった。
【0070】
このようにして作製したカソードプレート2の貫通孔15に、直径1mmのアノード端子14を挿入した。アノード端子14は、機械的な強度の観点から、基板(ガラス)5と熱膨張係数が近いことが望ましい。そのため本実施例では、アノード端子14の材料として、426合金を用いた。ガラス基板5のマトリクス配線(列配線7および行配線8)を設けた面の側から、貫通孔15を塞ぐように、ガラス基板5上に導電性の接着剤17を塗布し、アノード端子14を固定した。接着剤17の塗布は、アノード端子14とアノード環状補助電極18とが電気的に接続されるように、かつ接着材17がアノード環状補助電極18からはみださないように行った。
【0071】
次に、第2の基板として透明な矩形状のガラス基板11を用意し、アノードプレート3を作製した。
【0072】
具体的には、まず、ガラス基板11上に、感光性カーボンブラックからなる導電性の黒色部材を形成し、露光、パターニングによって、導電性の黒色部材に、発光体13が配置される開口を形成した。その開口内に、スクリーン印刷法によって、発光体13として赤、緑、青各色の蛍光体をそれぞれ厚さ10μmになるように形成して、導電性の黒色部材の開口部分に発光体13を充填した。最後に、アノード電極12として、導電性の黒色部材および蛍光体の上の全面に、アルミニウム膜を蒸着法によって100nm堆積させた。
【0073】
次に、枠部材4を用意し、カソードプレート2とアノードプレート3との間隔が1.6mmに規定されるように、枠部材4を間に挟んで、カソードプレート2とアノードプレート3とを接着した。接着部分を低融点金属を用いて気密に封着し、内部に密閉空間が形成される外囲器を作製した。
【0074】
このようにして作製した外囲器を、外囲器に別途設けた排気孔から排気した後、その排気孔を封止して、内部が真空に保持された真空外囲器を得た。そして、アノード端子14に、10kV以上の電圧を発生することができる電源を接続して、表示パネル1を完成させた。
【0075】
完成した表示パネル1に対して、アノード端子14から高電圧の導入を試みた。具体的には、列配線7、行配線8、第1の環状ガード電極19、および第2の環状ガード電極21を接地して、アノード端子14に30kVの電圧を印加した。表示パネル1は10パネルほど用意し、それぞれに対して30kVまでの電圧印加を行ったところ、15kVまでの電圧印加では、すべてのパネルで放電は発生しなかった。一方、15kV以上の電圧印加では、全てのパネルで放電が発生したが、放電電流は、いずれのパネルにおいても第1の環状ガード電極19に流れ、列配線7、行配線8にはほとんど流れなかったことが確認された。
【0076】
その後、アノード端子14に12kVを印加するとともに、電子放出素子6を駆動して蛍光体を発光させたところ、良好な表示が得られた。
【0077】
(比較例)
比較例として、図4に示す表示パネル102を製造した。
【0078】
比較例は、アノード環状補助電極18をアノード端子14と実質的に同心状に配置している点で、実施例1と異なっている。それに伴い、第1の環状ガード電極19もアノード端子14と同心状に配置され、それにより、内径および外径が共に、実施例1と比べて小さくなっている。すなわち、比較例では、アノード環状補助電極18は、実施例1と同様に直径を6mmとしたが、第1の環状ガード電極19は、内径を10mm、外径を12mmとした。したがって、第1の環状ガード電極19とアノード環状補助電極18との間隔gvacは2mmであった。列配線7と第1の環状ガード電極18との最近接距離と、行配線8と第1の環状ガード電極18との最近接距離とを、実施例1と同様に、共に1mmとした。
【0079】
以上の構成により、比較例では、画像形成部2aから第1の環状ガード電極19の中心までの最短距離dvacは9.9mmであり、画像形成部2aから第2の環状ガード電極の中心までの最短距離dairは9.9mmであった。すなわち、dvac=dairであった。
【0080】
比較例の表示パネル102を10パネルほど用意し、それぞれに対して、実施例1と同様に30kVまでの電圧印加を行ったところ、15kV以下の電圧印加で、半数近くのパネルに放電が発生した。
【0081】
(実施例2)
実施例2として、図2(a)に示す表示パネル1を製造した。
【0082】
実施例2は、アノード環状補助電極18と第1の環状ガード電極19とを、アノード端子14と同心状に配置している点で、実施例1と異なっている(比較例とは同様である)。しかしながら、アノード端子14の真空側の軸心が、大気側の軸心に対して画像形成部2aから離れる方向に偏心していることで、第1の環状ガード電極19の、アノード環状補助電極18に対する配置および構成は、実施例1と同様である。すなわち、本実施例では、実施例1と同様に、アノード環状補助電極18は、直径を6mmとし、第1の環状ガード電極19は、内径を12mm、外径を14mmした。したがって、第1の環状ガード電極19とアノード環状補助電極18との間隔gvacは3mmであった。列配線7と第1の環状ガード電極19との最近接距離と、行配線8と第1の環状ガード電極19との最近接距離とを、実施例1と同様に、共に1mmとした。
【0083】
以上の構成により、本実施例では、画像形成部2aから第1の環状ガード電極19の中心までの最短距離dvacは10.9mmであり、画像形成部2aから第2の環状ガード電極21の中心までの最短距離dairは9.9mmであった。すなわち、dvac>dairであり、これは、実施例1と同様であった。
【0084】
実施例2の表示パネル1を10パネルほど用意し、それぞれに対して、実施例1と同様に30kVまでの電圧印加を行ったところ、実施例1と遜色のない結果が得られた。
【符号の説明】
【0085】
2 カソードプレート
14 アノード端子
19 第1の環状ガード電極
21 第2の環状ガード電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成部と該画像形成部の周囲に設けられた非画像形成部とを有するカソードプレートと、該カソードプレートに対向配置されたアノードプレートと、を有し、前記カソードプレートと前記アノードプレートとの間に密閉空間が形成された外囲器であって、前記カソードプレートが、前記画像形成部の、前記密閉空間に面するカソードプレート内面側に設けられた電子放出素子を有し、前記アノードプレートが、前記密閉空間に面するアノードプレート内面に前記電子放出素子に対向して設けられた発光体と、前記アノードプレート内面の、前記発光体が形成された領域を含み該領域よりも広い領域に設けられたアノード電極と、を有する、外囲器と、
前記カソードプレートの前記非画像形成部に形成された貫通孔を通じて前記密閉空間の内部に導入され、前記アノード電極に電気的に接続された高電圧導入部と、
前記カソードプレート内面に設けられ、該カソードプレート内面側の前記高電圧導入部から所定の沿面距離を隔てて形成された第1の環状ガード電極と、
前記カソードプレートの、前記カソードプレート内面と反対側のカソードプレート外面に設けられ、該カソードプレート外面側の前記高電圧導入部から所定の沿面距離を隔てて形成された第2の環状ガード電極と、
を有する画像表示装置において、
前記高電圧導入部は、前記第1の環状ガード電極が、前記第2の環状ガード電極に対して前記画像形成部から離れる方向に偏心して配置されるように、前記カソードプレートに対して非対称に設けられていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記高電圧導入部が、前記貫通孔を貫通し、前記カソードプレートに対して対称に設けられた棒状のアノード端子と、前記アノード端子を囲むように前記カソードプレート内面に設けられ、前記アノード端子に電気的に接続された環状補助電極と、を有し、
前記環状補助電極が、前記アノード端子の軸心に対して前記画像形成部から離れる方向に偏心して配置されている、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記高電圧導入部が、前記貫通孔を貫通し、前記カソードプレートに対して非対称に設けられた棒状のアノード端子を有し、
前記アノード端子は、前記カソードプレート内面側の軸心が、前記カソードプレート外面側の軸心に対して前記画像形成部から離れる方向に偏心して配置されている、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記貫通孔が、前記カソードプレートに対して非対称に形成され、該貫通孔は、前記カソードプレート内面側の内面開口部が、前記カソードプレート外面側の外面開口部よりも、前記画像形成部から離れた位置に開口している、請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記貫通孔が、前記外面開口部から前記内面開口部に向かって直線状に形成されている、請求項4に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記貫通孔が、前記外面開口部から前記内面開口部に向かってクランク状に形成されている、請求項4に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記画像形成部が矩形状であり、前記貫通孔が、前記非画像形成部の、前記画像形成部の角部に対向する位置に設けられている、請求項1から6のいずれか1項に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−234668(P2012−234668A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101336(P2011−101336)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】