説明

画像表示装置

【課題】オーバードライブ駆動に伴う疑似輪郭の発生を抑制できる、液晶パネルを備えた画像表示装置を提供する。
【解決手段】画像表示装置1は、複数の画素を有する液晶パネル11と、液晶パネル11のうち、オーバードライブ駆動を実行する対象画素について、予め定められたゲイン設定値から、オーバードライブ駆動に使用するゲイン使用値を決定し、ゲイン使用値に基づいて対象画素に液晶駆動電圧を印加するオーバードライブ駆動部50とを備え、オーバードライブ駆動部50は、対象画素のうち、映像信号から得られる現フレームの階調値が中間階調値であると判定した画素について、ゲイン設定値よりも小さな値にゲイン使用値を決定するゲイン抑制動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液晶パネルを備えた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタやテレビ受像機などの画像表示装置として、液晶パネルを備えた画像表示装置が普及している。しかし、液晶の応答性は低いので、この種の画像表示装置は動画の表示特性が高くない。例えば、この種の画像表示装置では、残像が生じる等の問題が現れる。このような問題を解決するために、表示対象の現フレームの階調値が一つ前のフレームの階調値から変化した画素に対して、現フレームのそのままの階調値に対応する電圧より変化の大きい電圧を印加するオーバードライブ駆動が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2616652号公報(特開平6−189232号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、オーバードライブ駆動に伴う疑似輪郭の発生を抑制できる、液晶パネルを備えた画像表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示にかかる画像表示装置は、映像信号に基づいて画像を表示する画像表示装置であって、複数の画素を有する液晶パネルと、液晶パネルのうち、オーバードライブ駆動の実行条件が成立する対象画素について、予め定められたゲイン設定値から、オーバードライブ駆動に使用するゲイン使用値を決定し、ゲイン使用値に基づいて対象画素に液晶駆動電圧を印加するオーバードライブ駆動部とを備え、オーバードライブ駆動部は、対象画素のうち、映像信号から得られる現フレームの階調値が中間階調値であると判定した画素について、ゲイン設定値よりも小さな値にゲイン使用値を決定するゲイン抑制動作を行う。
【0006】
本開示にかかるプログラムを格納した記憶媒体は、液晶パネルのうち、オーバードライブ駆動を実行する対象画素について、予め定められたゲイン設定値を取得する設定値取得ステップと、対象画素について、ゲイン設定値から、対象画素に印加する液晶駆動電圧の決定に使用するゲイン使用値を決定する使用値決定ステップとを実行させ、使用値決定ステップでは、対象画素のうち、映像信号から得られる現フレームの階調値が中間階調値であると判定した画素について、ゲイン設定値よりも小さな値にゲイン使用値を決定するプログラムを格納する。
【発明の効果】
【0007】
本開示にかかる画像表示装置は、オーバードライブ駆動に伴う疑似輪郭の発生を抑制するのに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施の形態の画像表示装置のブロック図
【図2】第1の実施の形態の画像表示装置のゲイン情報記憶部に記憶されているゲイン情報のデータ構造を示す図
【図3】第1の実施の形態の画像表示装置で行われるオーバードライブ駆動の手順を示すフローチャート
【図4】ゲイン抑制動作を行う第1の実施の形態と、ゲイン抑制動作を行わない比較例との違いを説明するための図
【図5】第2の実施の形態の画像表示装置で行われるオーバードライブ駆動の手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0010】
なお、発明者は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するものであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0011】
(第1の実施の形態)
[1−1.構成]
先ず、本実施の形態の画像表示装置1の構成を説明する。図1は、本実施の形態の画像表示装置1のブロック図である。図1に示す通り、画像表示装置1は、スクリーン100に映像を投影するプロジェクタである。画像表示装置1は、液晶パネル11と、照明部12と、入力処理部13と、階調値記憶部14と、ゲイン特定部15と、現フレーム判定部16と、前フレーム判定部17と、ゲイン情報記憶部18と、種類判定部19と、制御部20と、乗算部21と、駆動部22とを有する。ゲイン特定部15、現フレーム判定部16、前フレーム判定部17、ゲイン情報記憶部18、制御部20、乗算部21、および駆動部22は、オーバードライブ駆動部50を構成している。
【0012】
液晶パネル11は、図示しないが、一対の偏光板と、その一対の偏光板の間に位置する一対のガラス基板と、その一対のガラス基板の間に位置する液晶層とを有する。一方のガラス基板には、複数の走査線及び複数のデータ線が設けられている。他方のガラス基板には、共通電極が設けられている。上述の構成により、液晶パネル11は、複数の走査線のそれぞれと複数のデータ線のそれぞれとが交わる複数の交差点に対応する複数の画素を有している。複数の走査線、複数のデータ線、及び複数の画素は、図1では省略されている。なお、液晶パネル11は、RGBのそれぞれについて設けられている。なお、説明を簡単に行うために、図1では、一つの液晶パネル11のみを記載し、残りの二つの液晶パネル11の記載は省略している。
【0013】
照明部12は、白色光をRGBそれぞれの色に分光したのち、分光後の光をRGBそれぞれの液晶パネル11に照明する。
【0014】
入力処理部13は、外部から映像信号が入力される。入力処理部13は、入力された映像信号をRGB信号へ変換する。例えば、映像信号がHDMI入力の信号である場合、入力処理部13は、映像信号をデコードしRGB信号へと変換する。例えば、映像信号がYPbPrのコンポーネント信号である場合、入力処理部13は、マトリクス変換を行うことによって映像信号をRGB信号へと変換する。例えば、映像信号がコンポジット信号である場合、入力処理部13は、ビデオデコードを行うことによって映像信号をRGBのコンポーネント信号へと変換する。
【0015】
階調値記憶部14は、入力処理部13によって得られたRGB信号をもとに形成される複数のフレームのうち、表示させる対象の現フレーム(処理対象のフレーム)の一つ前のフレーム(以下、「前フレーム」と記載する。)における複数の画素のそれぞれの階調値を記憶する。上述の通り、複数の画素は液晶パネル11に含まれている。
【0016】
ゲイン特定部15は、メモリとして構成されたルックアップテーブル(以下、「LUT」という。)を備えている。LUTは、オーバードライブ駆動の際に使用するゲイン特定表を記憶している。ゲイン特定表を用いることにより、液晶パネル11の複数の画素のそれぞれについて、前フレームの階調値と現フレームの階調値との組み合わせから、予め定められたゲイン設定値が特定される。ゲイン設定値は、現フレームの階調値と前フレームの階調値とを読み出しパラメータとして、LUTに記憶されている。ゲイン設定値は、乗算部21によって用いられるゲイン使用値の基になる値である。例えば、ゲイン特定表は、前フレームの64個の階調値と現フレームの64個の階調値との全ての組み合わせに対して、ゲイン設定値を格納する表であり、各組み合わせについて、6ビットのステップ数でゲイン設定値を特定している。
【0017】
加えて、ゲイン特定部15は、液晶パネル11の複数の画素のうち、オーバードライブ駆動の実行条件が成立する対象画素について、ゲイン特定表をもとに、前フレームの階調値と現フレームの階調値との組み合わせに応じて、ゲイン設定値を読み出して、ゲイン設定値を特定する。更に、ゲイン特定部15は、特定したゲイン設定値に、制御部20による制御にしたがった割合(後述するゲイン調節係数)を乗じることにより、乗算部21によって用いられるゲイン使用値を最終的に特定する。なお、ゲイン特定部15は、前フレームの階調値として、階調値記憶部14によって記憶されている前フレームの階調値を用い、現フレームの階調値として、入力処理部13によって得られるRGB信号に基づく現フレームの階調値を用いる。LUTは、ゲイン特定部で使用するメモリの一例である。
【0018】
現フレーム判定部16(処理対象フレーム判定部)は、液晶パネル11の複数の画素のうち、オーバードライブ駆動の実行条件が成立する対象画素について、現フレームの階調値が中間階調値である第1条件が成立するか否かを判定する。中間階調値は、全ての階調値のうち2番目に小さい階調値から2番目に大きい階調値までの範囲の階調値を意味するではなく、この範囲の一部となる所定の範囲の階調値である。本実施の形態では、例えば、中間階調値は、階調を256段階に分割した場合の階調値が30以上で階調値が128以下の範囲の階調値である。現フレーム判定部16は、現フレームの階調値として、入力処理部13によって得られるRGB信号に基づく現フレームの階調値を用いる。
【0019】
前フレーム判定部17は、液晶パネル11の複数の画素のそれぞれについて、前フレームの階調値と現フレームの階調値との差異(以下、「階調値差異」という。)が所定の実行条件範囲内であるというオーバードライブ駆動の実行条件が成立するか否かを判定する。階調値差異は、前フレームの階調値と現フレームの階調値との差の絶対値である。また、実行条件範囲は、予め定められた範囲(例えば、0以上20以下の範囲)である。
【0020】
さらに、前フレーム判定部17は、液晶パネル11の複数の画素のうち、オーバードライブ駆動の実行条件が成立する対象画素について、前フレームの階調値が中間階調値であるという第2条件が成立するか否かを判定する。加えて、前フレーム判定部17は、液晶パネル11の複数の画素のうち、オーバードライブ駆動の実行条件が成立する対象画素について、階調値差異が所定の判定範囲内にあるという第3条件が成立するか否かを判定する。所定の判定範囲は、乗算部21によって用いられるゲイン使用値を低下させるか否かを判定するための条件として、予め決められた範囲であって、例えば、8ビット(bit)256階調の場合は、「10」以内の範囲(つまり、0以上10以下の範囲)に設定してもよい。なお、この判定範囲は、この数値範囲に限定されない。また、この判定範囲は、上記実行条件範囲よりも狭い範囲であって、その全体が実行条件範囲に含まれる。なお、前フレーム判定部17は、前フレームの階調値として、階調値記憶部14によって記憶されている前フレームの階調値を用い、現フレームの階調値として、入力処理部13によって得られるRGB信号に基づく現フレームの階調値を用いる。
【0021】
ゲイン情報記憶部18は、入力処理部13に入力される映像信号の種類のそれぞれについて、乗算部21によって用いられるゲイン使用値を決定するための情報(以下、「ゲイン情報」と記載する。)を記憶する。具体的には、ゲイン情報記憶部18は、図2に示すデータ構造のゲイン情報を記憶する。図2は、本実施の形態の画像表示装置1のゲイン情報記憶部18に記憶されているゲイン情報のデータ構造を示す図である。ゲイン情報では、複数の映像信号の種類のそれぞれについて、ゲイン設定値に乗じるゲイン調節係数が決められている。このゲイン調節係数は、オーバードライブ駆動に伴って疑似輪郭が生じるおそれがある場合にゲイン使用値を低下できるように、予め定められた係数である。このゲイン調節係数により、低階調から高階調へ変化する際の液晶駆動電圧の上昇が抑制され、高階調から低階調へ変化する際の液晶駆動電圧の低下が抑制される。
【0022】
本実施の形態では、図2に示すように、(A−1)入力処理部13に入力される映像信号がダイナミックモードの信号である場合のゲイン調節係数は0.5である。この場合は、ゲイン使用値が、ゲイン特定表によって特定されるゲイン設定値の0.5倍になる。(A−2)映像信号がシネマモードの信号である場合のゲイン調節係数は1.0である。この場合は、ゲイン調節係数が、ゲイン設定値を変更させないことを特定するゲイン情報になる。(B−1)映像信号がPCの信号である場合のゲイン調節係数は0.5である。この場合は、ゲイン使用値が、ゲイン特定表によって特定されるゲイン設定値の0.5倍になる。(B−2)映像信号がHDMI(High-Definition Multimedia Interface)、コンポジットビデオ又はコンポーネントの信号である場合のゲイン調節係数は1.0である。この場合は、ゲイン調節係数が、ゲイン設定値を変更させないことを特定するゲイン情報になる。
【0023】
(C−1)映像信号がシネマに対応しない信号(例えば、50p(プログレッシブ信号)、60p、50i(インターレース信号)又は60iの信号)である場合のゲイン調節係数は0.5である。この場合は、ゲイン使用値が、ゲイン特定表によって特定されるゲイン設定値の0.5倍になる。(C−2)映像信号がシネマに対応する信号(例えば、24pの信号)である場合のゲイン調節係数は1.0である。この場合は、ゲイン調節係数が、ゲイン設定値を変更させないことを特定するゲイン情報になる。(D−1)映像信号が3次元立体映像信号である場合のゲイン調節係数は0.5である。この場合は、ゲイン使用値が、ゲイン特定表によって特定されるゲイン設定値の0.5倍になる。(D−2)映像信号が2次元の映像信号である場合のゲイン調節係数は1.0である。この場合は、ゲイン調節係数が、ゲイン設定値を変更させないことを特定するゲイン情報になる。
【0024】
図1に示すように、種類判定部19は、入力処理部13に入力された映像信号の種類を判定する。例えば、種類判定部19は、入力処理部13に入力された映像信号によって構成されるストリームのヘッダを解析することにより、入力処理部13に入力された映像信号の種類を判定する。
【0025】
制御部20は、液晶パネル11の複数の画素のうち、オーバードライブ駆動の実行条件が成立する対象画素について、現フレーム判定部16、前フレーム判定部17及び種類判定部19によって行われる判定の結果と、ゲイン情報記憶部18によって記憶されるゲイン情報とをもとに、乗算部21によって用いられるゲイン使用値を最終的に特定するようにゲイン特定部15を制御する。
【0026】
制御部20の具体的な機能は次の通りである。制御部20は、液晶パネル11の対象画素のそれぞれについて、現フレーム判定部16によって現フレームの階調値が中間階調値であると判定され、前フレーム判定部17によって前フレームの階調値が中間階調値であると判定され、かつ前フレーム判定部17によって階調値差異が上記判定範囲内にあると判定された場合、予め定めたゲイン設定値を低下させるゲイン抑制動作を行う。つまり、制御部20は、第1条件、第2条件および第3条件が全て成立する対象画素について、ゲイン抑制動作を行う。制御部20は、ゲイン抑制動作として、ゲイン特定表をもとに前フレームの階調値と現フレームの階調値との組み合わせによって特定されるゲイン設定値に、ゲイン情報記憶部18によって記憶されているゲイン情報のうちの種類判定部19によって判定された映像信号の種類に対応するゲイン調節係数(ゲインの割合)を乗じるように、ゲイン特定部15を制御する。
【0027】
例えば、液晶パネル11のある対象画素について、現フレームの階調値が中間階調値であると判定され、前フレームの階調値が中間階調値であると判定され、かつ上記階調値差異が上記判定範囲内にあると判定された場合、入力処理部13に入力された映像信号が3次元立体映像信号であると種類判定部19において判定されたとき、制御部20は、図2に示すゲイン情報にしたがって、前フレームの階調値と現フレームの階調値との組み合わせによって特定されるゲイン設定値にゲイン調節係数(0.5)を乗じるように、ゲイン特定部15を制御する。乗算部21には、ゲイン設定値にゲイン調節係数を乗じることによって得られたゲイン使用値が入力される。
【0028】
他方、制御部20は、液晶パネル11の対象画素のそれぞれについて、現フレームの階調値が中間階調値ではないと判定されたか、前フレームの階調値が中間階調値ではないと判定されたか、又は、階調値差異が上記判定範囲内にないと判定された場合、ゲイン特定表をもとに前フレームの階調値と現フレームの階調値との組み合わせによって特定されるゲイン設定値そのものを乗算部21に出力するように、ゲイン特定部15を制御する。つまり、制御部20は、第1条件、第2条件、および第3条件の中に少なくとも1つでも成立しない条件がある対象画素については、ゲイン抑制動作を行わずに、ゲイン設定値がそのままゲイン使用値として乗算部21へ入力されるように、ゲイン特定部15を制御する。
【0029】
乗算部21は、入力処理部13からRGB信号を受け取るとともに、ゲイン特定部15から、RGB信号に乗算するために用いられるゲイン使用値を受け取る。乗算部21は、液晶パネル11の対象画素のそれぞれについて、ゲイン特定部15から受けたゲイン使用値を、入力処理部13から受け取ったRGB信号に乗じることより、駆動部22が行う電圧印加処理に用いられる駆動値を算出する。なお、乗算部22は、オーバードライブ駆動を行わない画素については、RGB信号に基づいて、駆動部22が行う電圧印加処理に用いられる駆動値を決定する。
【0030】
駆動部22は、液晶パネル11の複数の画素のそれぞれについて、乗算部21によって算出された駆動値をもとに電圧(液晶駆動電圧)を印加する。
【0031】
[1−2.動作]
次に、本実施の形態の画像表示装置1の動作を説明する。図3は、本実施の形態の画像表示装置1で行われるオーバードライブ駆動の手順を示すフローチャートである。なお、図3では、オーバードライブ駆動を実行する対象画素を決定するステップを省略している。このステップは、例えば、ステップS2とステップS3との間に行われる。
【0032】
先ず、入力処理部13に映像信号が入力され、入力処理部13が、入力された映像信号をRGB信号に変換する(ステップS1)。階調値記憶部14は、入力処理部13によって得られたRGB信号をもとに形成される複数のフレームのうち、現フレームの一つ前のフレーム(前フレーム)における複数の画素のそれぞれの階調値を記憶する(ステップS2)。
【0033】
続いて、ステップS3では、第1条件が成立するか否かが判定される。具体的に、現フレーム判定部16は、液晶パネル11の対象画素のそれぞれについて、現フレームの階調値が中間階調値であるか否かを判定する。第1条件が成立すると現フレーム判定部16によって判定された場合(ステップS3でYesの場合)、ステップS4で、第2条件および第3条件が成立するか否かが判定される。具体的に、前フレーム判定部17は、対象画素のそれぞれについて、前フレームの階調値が中間階調値であるか否かを判定すると共に、かつ階調値差異が上記判定範囲内にあるか否かを判定する。
【0034】
対象画素のそれぞれについて、第2条件および第3条件が両方とも成立すると前フレーム判定部17によって判定された場合(ステップS4でYesの場合)、種類判定部19は、入力処理部13に入力された映像信号の種類を判定する(ステップS5)。
【0035】
続いて、制御部20は、ゲイン特定表をもとに前フレームの階調値と現フレームの階調値との組み合わせによって特定されるゲイン設定値を読み出し、そのゲイン設定値に、ステップS5の判定結果によって決まるゲイン調節係数を乗じるように、ゲイン特定部15を制御する(ステップS6)。具体的には、制御部20は、ゲイン情報記憶部18から、ステップS5の判定により分かった映像信号の種類に対応するゲイン調節係数を取得する。そして、制御部20は、取得したゲイン調節係数をゲイン特定部15へ出力し、そのゲイン調節係数をゲイン設定値に乗じるようにゲイン特定部15を制御する。
【0036】
ステップS7では、ゲイン使用値が特定される。ステップS6からステップS7へ移行する場合は、ゲイン特定部15は、液晶パネル11の対象画素のそれぞれについて、制御部20による制御にしたがい、自身が保持しているゲイン特定表において前フレームの階調値と現フレームの階調値との組み合わせによって特定されるゲイン設定値に、ゲイン情報記憶部18によって記憶されているゲイン情報のうち種類判定部19によって判定された映像信号の種類に対応するゲイン調節係数(ゲインの割合)を乗じることより得られた値を、乗算部21によって用いられるゲイン使用値として特定する(ステップS7)。
【0037】
乗算部21は、入力処理部13からRGB信号を受け取るとともに、ゲイン特定部15からゲイン使用値を受け取る。そして、乗算部21は、液晶パネル11の対象画素のそれぞれについて、RGB信号にゲイン使用値を乗じることにより、駆動部22が行う電圧印加処理に用いられる駆動値を算出する(ステップS8)。
【0038】
駆動部22は、液晶パネル11の対象画素のそれぞれについて、乗算部21が算出した駆動値をもとに電圧を印加する(ステップS9)。
【0039】
ところで、液晶パネル11の対象画素のそれぞれについて、現フレームの階調値が中間階調値でないと現フレーム判定部16によって判定された場合(ステップS3でNoの場合)、制御部20は、前フレームの階調値と現フレームの階調値との組み合わせによって特定されるゲイン設定値そのものを、ゲイン使用値として乗算部21に出力するように、ゲイン特定部15を制御する(ステップS10)。その後の動作手順は、上述のステップS7に進む。
【0040】
同様に、液晶パネル11の対象画素のそれぞれについて、前フレームの階調値が中間階調値ではなく、又は階調値差異が上記判定範囲内にはないと前フレーム判定部17によって判定された場合(ステップS4でNoの場合)も、制御部20は、前フレームの階調値と現フレームの階調値との組み合わせによって特定されるゲイン設定値そのものを、ゲイン使用値として乗算部21に出力するようにゲイン特定部15を制御する(ステップS10)。その後の動作手順は上述のステップS7に進む。
【0041】
駆動部22による電圧印加処理よって液晶パネル11に現フレームの映像が形成され、照明部12が液晶パネル11に光を照射することによって、画像表示装置1は、スクリーン100に映像を投影する。以上により、1回の現フレームの映像表示に関するオーバードライブ駆動が終了する。
【0042】
ここで、図4を使用して、ゲイン抑制動作を行う本実施の形態と、ゲイン抑制動作を行わない比較例との違いを説明する。図4(a)は、前フレームの階調値(入力レベル)の4つの数値範囲に対する、ゲイン設定値、ゲイン調節係数およびゲイン使用値を示す表である。本実施の形態の上述の説明では、前フレームの階調値と現フレームの階調値との組み合わせからゲイン設定値を特定しているが、図4(a)は、説明を簡単にするために、前フレームの階調値だけからゲイン設定値が特定されるように記載している。比較例では、ゲイン設定値がそのままゲイン使用値になる。なお、図4(a)では、階調値が0以上63以下の第1範囲のゲイン使用値と、階調値が128以上191以下の第3範囲のゲイン使用値とに対して、階調値が64以上127以下の第2範囲のゲイン使用値が小さくなっているが、4つの数値範囲について、上から順番に、ゲイン使用値が小さくなるようにゲイン調節係数を決めてもよいし、例えば、第2範囲のゲイン使用値が第3範囲のゲイン使用値に等しくなるようにゲイン調節係数を決めてもよい。
【0043】
一方、図4(b)には、画面上において点線で囲む領域の6つの連続するR画素について、上から順番に、前フレームの階調値(c)、現フレームの階調値(d)、比較例のオーバードライブ駆動の結果得られる実際の階調値(以下、「比較例の実際階調値」という。)、本実施の形態のオーバードライブ駆動の結果得られる実際の階調値(以下、「本実施の形態の実際階調値」という。)が記載されている。
【0044】
比較例の実際階調値では、左から2番目の画素(以下、「2番画素」という。)と左から3番目の画素(以下、「3番画素」という。)とについて、階調値差異が同じであっても、3番画素は、2番画素に比べてゲイン使用値(=ゲイン設定値)が大きすぎるために、2番画素の実際の階調値(=122)と3番画素の実際の階調値(=114)との差が比較的大きくなっている。そのため、2番画素と3番画素の境界で、疑似輪郭が生じている。
【0045】
それに対して、本実施の形態の場合は、3番画素について、現フレームの階調値(=120)が中間階調値(64以上127以下の値)である第1条件、前フレームの階調値(=124)が中間階調値(64以上127以下の値)である第2条件、および、階調値差異(=4)が判定範囲(0以上10以下の範囲)である第3条件を全て満たし、ゲイン抑制動作が行われる。その結果、3番画素のゲイン使用値は、比較例よりも小さくなり、2番画素の実際の階調値(=122)と3番画素の実際の階調値(=119)との差が小さくなる。そのため、2番画素と3番画素の境界で疑似輪郭が生じていない。
【0046】
<効果等>
以上説明したように、本実施の形態によれば、オーバードライブ駆動に伴う疑似輪郭の発生を抑制することができる。
ここで、オーバードライブ駆動を実行する画像表示装置において、オーバードライブ駆動のゲイン設定値を特定するためのLUTを用いる場合は、画像表示装置を構成する各素子の簡素化が求められて、LUTに大きな容量を有するメモリが用いられない場合がある。すなわち、LUTにおけるゲイン特定表の分割数が小さく、かつゲイン設定値のステップ数が少ない場合がある。その場合、ゲイン抑制動作を行わずにオーバードライブ駆動を実行すると、表示される画像に疑似輪郭が現れる可能性が高くなる。特に、現フレームが中間階調値の画素において、ゲインの変化がより顕著に見えてしまい、疑似輪郭が視認される可能性が高くなる。
【0047】
それに対し、本実施の形態の画像表示装置1は、上述の通り、液晶パネル11の各対象画素について、時間的に前後する二つのフレームの階調値がいずれも中間階調値であって、階調値差異が上記判定範囲内にある場合、両フレームの階調値の組み合わせによって特定されるゲイン設定値を低下させたゲイン使用値を用いてオーバードライブ駆動を実行する。したがって、本実施の形態の画像表示装置1は、たとえ、LUTに大きな容量を有するメモリが用いられなくても、ゲイン使用値が大きすぎて中間階調値が大きく変化することを抑制できる。そのため、本実施の形態の画像表示装置1を用いれば、メモリの容量が制約される場合においても、オーバードライブ駆動を実行することによる疑似輪郭を生じにくくするという優れた効果が奏される。
【0048】
特に、入力処理部13に入力される信号が3次元立体映像信号である場合、フレーム周波数が高い。そのため、同じ容量のメモリで比較した場合に、2次元映像信号よりも3次元立体映像信号の方が疑似輪郭が生じやすい。他方、3次元立体映像信号を処理する画像表示装置は、高いフレーム周波数に対応する構成要素に処理能力の集中化が図られるので、画像表示装置の構成を簡素化するために、LUTに大きな容量を有するメモリを用いないことが考えられる。そのような場合においても、本実施の形態によれば、3次元立体映像信号を処理する場合、オーバードライブ駆動を実行することによる疑似輪郭を生じにくくするという効果をより顕著に奏することができる。
【0049】
(第2の実施の形態)
[2−1.構成]
本実施の形態について説明する。なお、以下では、第1の実施の形態と実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0050】
本実施の形態の画像表示装置1は、第1の実施の形態と同様に、液晶パネル11と、照明部12と、入力処理部13と、階調値記憶部14と、ゲイン特定部15と、現フレーム判定部16と、前フレーム判定部17と、ゲイン情報記憶部18と、種類判定部19と、制御部20と、乗算部21と、駆動部22とを有する。ゲイン特定部15、現フレーム判定部16、前フレーム判定部17、ゲイン情報記憶部18、制御部20、乗算部21、および駆動部22は、オーバードライブ駆動部50を構成している。
【0051】
液晶パネル11は、複数の画素を有している。なお、液晶パネル11は、RGBのそれぞれについて設けられている。また、照明部12は、白色光をRGBそれぞれの色に分光したのち、分光後の光をRGBそれぞれの液晶パネル11に照明する。また、入力処理部13は、入力された映像信号をRGB信号へ変換する。また、階調値記憶部14は、前フレームにおける複数の画素のそれぞれの階調値を記憶する。ゲイン特定部15は、ゲイン特定表を格納するLUTを有する。
【0052】
現フレーム判定部16は、液晶パネル11のうち、オーバードライブ駆動の実行条件が成立する対象画素のそれぞれについて、現フレームの階調値が中間階調値であるという第1条件が成立するか否かを判定する。一方、前フレーム判定部17は、対象画素のそれぞれについて、階調値差異が所定の判定範囲内にあるという第3条件が成立するか否かを判定する。本実施の形態の前フレーム判定部17は、第2条件が成立するか否かの判定を行わない。
【0053】
ゲイン情報記憶部18は、図2に示すゲイン情報を記憶する。また、種類判定部19は、入力処理部13に入力された映像信号の種類を判定する。制御部20は、現フレーム判定部16、前フレーム判定部17及び種類判定部19によって行われる判定の結果と、上記ゲイン情報とをもとに、乗算部21によって用いられるゲイン使用値を最終的に特定するようにゲイン特定部15を制御する。
【0054】
制御部20の具体的な機能は次の通りである。制御部20は、第1条件および第3条件の両方が成立する場合に、ゲイン抑制動作を行う。制御部20は、ゲイン抑制動作として、ゲイン特定表をもとに前フレームの階調値と現フレームの階調値との組み合わせによって特定されるゲイン設定値に、ゲイン情報のうちの種類判定部19によって判定された映像信号の種類に対応するゲイン調節係数(ゲインの割合)を乗じるように、ゲイン特定部15を制御する。他方、制御部20は、第1条件および第3条件の中に少なくとも1つでも成立しない条件がある場合は、ゲイン抑制動作を行わずに、ゲイン設定値がそのままゲイン使用値として乗算部21へ入力されるように、ゲイン特定部15を制御する。
【0055】
乗算部21は、入力処理部13からRGB信号を受け取る。さらに、乗算部21は、ゲイン使用値をゲイン特定部15から受け取る。乗算部21は、対象画素のそれぞれについて、ゲイン使用値をRGB信号に乗じることより、駆動部22が行う電圧印加処理に用いられる駆動値を算出する。駆動部22は、液晶パネル11の複数の画素のそれぞれについて、乗算部21によって算出された駆動値をもとに電圧を印加する。
【0056】
[2−2.動作]
次に、本実施の形態の画像表示装置1の動作を説明する。図5は、本実施の形態の画像表示装置1で行われるオーバードライブ駆動の手順を示すフローチャートである。なお、図5では、図3と同様に、オーバードライブ駆動を実行する対象画素を決定するステップを省略している。
【0057】
先ず、入力処理部13に映像信号が入力され、入力処理部13が、入力された映像信号をRGB信号に変換する(ステップS51)。階調値記憶部14は、入力処理部13によって得られたRGB信号をもとに形成される複数のフレームのうち、前フレームにおける複数の画素のそれぞれの階調値を記憶する(ステップS52)。
【0058】
続いて、ステップS53では、対象画素について、第1条件が成立するか否かが判定される。第1条件が成立すると現フレーム判定部16によって判定された場合(ステップS53でYesの場合)、ステップS54で、対象画素について、第3条件が成立するか否かが判定される。対象画素について、第3条件が成立すると前フレーム判定部17によって判定された場合(ステップS54でYesの場合)、種類判定部19は、入力処理部13に入力された映像信号の種類を判定する(ステップS55)。
【0059】
続いて、制御部20が、対象画素について、ゲイン特定表をもとに前フレームの階調値と現フレームの階調値との組み合わせによって特定されるゲイン設定値に、ステップS55の判定結果によって決まるゲイン調節係数を乗じるようにゲイン特定部15を制御する(ステップS56)。続いて、ステップS57では、ゲイン使用値が特定される。
【0060】
乗算部21は、入力処理部13からRGB信号を受け取るとともに、ゲイン特定部15からゲイン使用値を受け取る。そして、乗算部21は、液晶パネル11の対象画素のそれぞれについて、RGB信号にゲイン使用値を乗じることにより、駆動部22が行う電圧印加処理に用いられる駆動値を算出する(ステップS58)。駆動部22は、液晶パネル11の対象画素のそれぞれについて、乗算部21が算出した駆動値をもとに電圧を印加する(ステップS59)。
【0061】
他方、ステップS53で第1条件が成立しないと判定された場合(ステップS53でNoの場合)、制御部20は、前フレームの階調値と現フレームの階調値との組み合わせによって特定されるゲイン設定値そのものを、ゲイン使用値として乗算部21に出力するようにゲイン特定部15を制御する(ステップS60)。その後の動作手順は、上述のステップS57に進む。
【0062】
同様に、ステップS54において第3条件が成立しないと判定された場合(ステップS54でNoの場合)も、制御部20は、前フレームの階調値と現フレームの階調値との組み合わせによって特定されるゲイン設定値そのものを乗算部21に出力するように、ゲイン特定部15を制御する(ステップS60)。その後の動作手順は上述のステップS7に進む。
【0063】
駆動部22による電圧印加処理よって液晶パネル11に現フレームの映像が形成され、照明部12が液晶パネル11に光を照射することによって、画像表示装置1は、スクリーン100に映像を投影する。以上により、1回の現フレームの映像表示に関するオーバードライブ駆動が終了する。
【0064】
<効果等>
以上説明したように、本実施の形態によれば、オーバードライブ駆動に伴う疑似輪郭の発生を抑制することができる。
【0065】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1〜2を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施の形態1〜2で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
そこで、以下、他の実施の形態についてまとめて説明する。
【0066】
実施の形態1〜2では、オーバードライブ駆動部50の一例として、ゲイン特定部15、現フレーム判定部16、前フレーム判定部17、ゲイン情報記憶部18、制御部20、乗算部21、および駆動部22を説明した。しかし、オーバードライブ駆動部50は、これに限定されない。
【0067】
また、実施の形態1〜2では、画像表示装置1で映像信号をRGB信号へ変換していた。しかし、このような信号変換は必須ではない。例えば、外部から画像表示装置1にRGB信号が入力される場合は、入力処理部における信号変換を省略することができる。
【0068】
また、実施の形態1〜2では、ゲイン使用値を得るために、ゲイン設定値に乗じる係数がゲイン調節係数だけであった。しかし、ゲイン調節係数以外の係数をゲイン設定値に乗じて、ゲイン使用値を決定してもよい。例えば、ゲイン抑制動作に関係なく、液晶パネル11の膜厚による個体差を調節する係数をゲイン設定値に乗じてもよい。この場合は、この係数とゲイン調節係数とをゲイン設定値に乗じることでゲイン使用値が得られる。
【0069】
また、実施の形態1〜2では、階調値差異が所定の判定範囲内であるか否かを判定していた。しかし、各対象画素について、現フレーム及び前フレームの階調値が中間階調値であると判定されれば、階調値差異が上記判定範囲内になくても、制御部20は、ゲイン特定表をもとに両フレームの階調値の組み合わせによって特定されるゲイン設定値に、ゲイン情報のうちの種類判定部19によって判定された映像信号の種類に対応するゲイン調節係数(ゲインの割合)を乗じてゲイン使用値を低下するように、ゲイン特定部15を制御してもよい。その場合においても、オーバードライブ駆動を実行することによる疑似輪郭を生じにくくするという優れた効果が奏される。
【0070】
同様に、各対象画素について、現フレームが中間階調値であると判定されれば、前フレームの階調値が中間階調値でなくても、又は階調値差異が上記判定範囲内になくても、制御部20は、ゲイン特定表をもとに両フレームの階調値の組み合わせによって特定されるゲイン設定値に、ゲイン情報のうちの種類判定部19によって判定された映像信号の種類に対応するゲイン調節係数(ゲインの割合)を乗じてゲイン使用値を低下するように、ゲイン特定部15を制御してもよい。その場合においても、オーバードライブ駆動を実行することによる疑似輪郭を生じにくくするという優れた効果が奏される。
【0071】
また、実施の形態1〜2では、制御部20は、対象画素のそれぞれについて、ゲイン特定表をもとに、現フレームの階調値と前フレームの階調値との階調値の組み合わせによって特定されるゲイン設定値に、ゲイン情報のうちの種類判定部19によって判定された映像信号の種類に対応する割合を乗じてゲイン使用値を低下するように、ゲイン特定部15を制御する。しかしながら、制御部20は、ゲイン情報記憶部18によって記憶されているゲイン情報を用いずに、ゲイン特定部15を制御してもよい。
【0072】
具体的には、制御部20は、複数の対象画素のそれぞれについて、現フレームが中間階調値であると判定された場合等、ゲイン抑制動作を実行する際、ゲイン特定表をもとに現フレームの階調値と前フレームの階調値との階調値の組み合わせによって特定されるゲイン設定値に、「0.4」等の予め決められた「1.0」未満の係数を乗じてゲイン使用値を低下するように、ゲイン特定部15を制御してもよい。つまり、映像信号の種類に関係なく、同じゲイン調節係数を使用してもよい。その場合においても、オーバードライブ駆動を実行することによる疑似輪郭を生じにくくするという優れた効果が奏される。
【0073】
また、実施の形態1〜2では、ゲイン特定部15が有するゲイン特定表として、前フレームの64個の階調値と現フレームの64個の階調値との組み合わせによって構成される表を例示した。しかしながら、ゲイン特定部15が有するゲイン特定表は、上述の表に限定されない。
【0074】
また、実施の形態1〜2では、中間階調値は、階調を256段階に分割した場合の階調値が30以上で階調値が128以下の範囲の階調値である。しかしながら、中間階調値は、階調を256段階に分割した場合の階調値が30以上で階調値が80以下の範囲の階調値であってもよい。ある画像表示装置において、ゲイン抑制動作を行わずにオーバードライブ駆動を実行した場合、階調を256段階に分割したときの階調値が30以上で階調値が80以下の範囲の階調値の画素により、フレームに疑似輪郭がより顕著に視認される場合があった。したがって、中間階調値が階調を256段階に分割した場合の階調値が30以上で階調値が80以下の範囲の階調値であれば、たとえLUTに大きな容量を有するメモリが用いられなくても、ゲイン使用値が大きすぎて中間階調値が大きく変化することを抑制できる。すなわち、オーバードライブ駆動を実行することにより疑似輪郭を生じにくくするという優れた効果が奏される。
【0075】
また、実施の形態1〜2では、中間階調値は、階調を256段階に分割した場合の階調値が30以上で階調値が128以下の範囲の階調値である。それは、階調を1024段階に分割した場合、中間階調値は階調値が120以上で階調値が469以下の範囲の階調値を意味する。このように、中間階調値は、階調を256段階に分割した場合の階調値が30以上で階調値が128以下の範囲の各値に相当する値である。したがって、中間階調値が階調を256段階に分割した場合の階調値が30以上で階調値が80以下の範囲の階調値であると仮定すると、それは、中間階調値が階調を1024段階に分割した場合の階調値が120以上で階調値が320以下の範囲の階調値を意味する。いずれにしても、中間階調値は、階調を256段階に分割した場合の階調値30以上で階調値が128以下の範囲の階調値に限定されない。
【0076】
また、実施の形態1〜2では、前フレーム判定部17は、各対象画素について、階調値差異が所定の判定範囲内にあるか否かを判定し、その判定範囲として、階調値差異が8ビット(bit)256階調のうちの「10」以内の範囲を例示した。しかしながら、所定の判定範囲は、試験を行うことによって適宜決定すればよい。要するに、所定の判定範囲は、乗算部21によって用いられるゲイン使用値を低下させるための条件として予め決められた範囲であればよい。
【0077】
また、実施の形態1〜2では、映像信号の種類が図2の左側の映像信号(例えば、シネマモードの映像信号)の場合に、ゲイン調節係数を1.0としてゲイン抑制動作を行っている。しかし、このような場合に、ゲイン抑制動作自体を行わないようにしてもよい。つまり、オーバードライブ駆動部は、対象画素の現フレームの階調値が中間階調値であるなどのゲイン抑制動作の条件が成立しても、種類判定部によって判定された映像信号の種類が所定の映像信号である場合は、ゲイン抑制動作を実行しないようにしてもよい。
【0078】
また、実施の形態1〜2では、ゲイン情報記憶部18によって記憶されるゲイン情報として、図2のデータ構造によって示されるゲイン情報を例示した。ゲイン情報におけるゲイン調節係数は、映像信号の種類毎に試験を行うことによって適宜決定すればよい。例えば、ゲイン調節係数は、映像信号が3次元立体映像信号である場合に0.2であってもよい。
【0079】
また、実施の形態1〜2では、ゲイン情報記憶部18によって記憶されるゲイン情報におけるゲイン調節係数は、入力処理部13に入力される映像信号の種類毎に特定される。しかしながら、ゲイン調節係数には、現フレームの対象画素の階調値に応じて、決定してもよい。この場合に、現フレームの階調値が中間階調の範囲において低階調側に位置するほど、ゲイン設定値に対するゲイン使用値の低下量を大きくしてもよい。つまり、低階調側に位置するほど、ゲイン調節係数を小さくしてもよい。例えば、現フレームの対象画素の階調値が、階調を256段階に分割した場合の階調値が40等の低階調値である場合、ゲイン調節係数は、0.3倍であってもよい。
【0080】
また、上述した実施の形態1〜2では、図1に示す通り、画像表示装置1は、スクリーン100に映像を投影するプロジェクタである。しかしながら、本開示の画像表示装置は、プロジェクタであると限定されない。本開示の画像表示装置は、テレビ受像機やPCに接続される表示装置等であってもよい。その場合に、1つの液晶パネルにRGBの画素が設けられていてもよい。R画素とG画素とB画素により1つの画素ユニットが構成される。本開示の画像表示装置は、液晶が用いられた画像表示装置である。
【0081】
なお、実施の形態1〜2で述べた画像表示装置1が行うオーバードライブ駆動の手順のうち、オーバードライブ駆動の実行条件が成立する対象画素について、予め定められたゲイン設定値を取得する設定値取得ステップと、対象画素について、ゲイン設定値から、対象画素に印加する液晶駆動電圧の決定に使用するゲイン使用値を決定する使用値決定ステップとについては、記憶装置(ROM、RAM、ハードディスク等)に格納された所定のプログラムデータが、CPUによって解釈実行されることで実現されてもよい。使用値決定ステップでは、対象画素のうち、映像信号から得られる現フレームの階調値が中間階調値であると判定した画素について、ゲイン設定値よりも小さな値にゲイン使用値を決定する。この場合、プログラムデータは、記憶媒体を介して記憶装置内に導入されてもよいし、記憶媒体上から直接実行されてもよい。なお、記憶媒体は、ROMやRAMやフラッシュメモリ等の半導体メモリ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスクメモリ、CD−ROMやDVDやBD等の光ディスクメモリ、及びメモリカード等をいう。また、記憶媒体は、電話回線や搬送路等の通信媒体を含む概念である。また、プログラムデータは、通信回線を通じて、例えばダウンロードにより画像表示装置1に供給されてもよい。
【0082】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須ではない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されているからといって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定を受けるべきではない。
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等な範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本開示は、プロジェクタやテレビ受像機等の画像表示装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 画像表示装置
11 液晶パネル
12 照明部
13 入力処理部
14 階調値記憶部
15 ゲイン特定部
16 現フレーム判定部
17 前フレーム判定部
18 ゲイン情報記憶部
19 種類判定部
20 制御部
21 乗算部
22 駆動部
50 オーバードライブ駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号に基づいて画像を表示する画像表示装置であって、
複数の画素を有する液晶パネルと、
前記液晶パネルのうち、オーバードライブ駆動を実行する対象画素について、予め定められたゲイン設定値から、前記オーバードライブ駆動に使用するゲイン使用値を決定し、該ゲイン使用値に基づいて前記対象画素に液晶駆動電圧を印加するオーバードライブ駆動部とを備え、
前記オーバードライブ駆動部は、前記対象画素のうち、前記映像信号から得られる現フレームの階調値が中間階調値であると判定した画素について、前記ゲイン設定値よりも小さな値に前記ゲイン使用値を決定するゲイン抑制動作を行う画像表示装置。
【請求項2】
前記オーバードライブ駆動部は、前記対象画素のうち、前記現フレームの階調値が中間階調値で、かつ、前記現フレームの階調値と前記現フレームの一つ前の前フレームの階調値との差が所定の判定範囲内であると判定した画素について、前記ゲイン抑制動作を行う
請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記オーバードライブ駆動の実行条件は、前記現フレームの階調値と前記前フレームの階調値との差が所定の範囲内であるという条件であり、
前記判定範囲は、前記実行条件の前記所定の範囲内に含まれる、該所定の範囲よりも狭い範囲である、
請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記オーバードライブ駆動部は、前記対象画素のうち、前記現フレームの階調値が中間階調値で、かつ、前記現フレームの一つ前の前フレームの階調値が中間階調値で、かつ、前記現フレームの階調値と前記前フレームの階調値との差が前記判定範囲内であると判定した画素について、前記ゲイン抑制動作を行う
請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記オーバードライブ駆動部は、前記対象画素のうち、前記現フレームの階調値が中間階調値で、かつ、前記現フレームの一つ前の前フレームの階調値が中間階調値であると判定した画素について、前記ゲイン抑制動作を行う
請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記映像信号の種類を判定する種類判定部を更に備え、
前記オーバードライブ駆動部は、前記ゲイン抑制動作において、前記種類判定部によって判定された映像信号の種類に応じて、前記ゲイン設定値に対する前記ゲイン使用値の低下量を決定する
請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記オーバードライブ駆動部は、前記映像信号が2次元映像信号である場合に比べて、前記映像信号が3次元映像信号である場合の前記低下量を大きくする
請求項6に記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記映像信号の種類を判定する種類判定部を更に備え、
前記オーバードライブ駆動部は、前記対象画素の現フレームの階調値が中間階調値であっても、前記種類判定部によって判定された映像信号の種類が所定の映像信号である場合は、前記ゲイン抑制動作を実行しない
請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記オーバードライブ駆動部は、前記ゲイン抑制動作において、前記現フレームの階調値が中間階調の範囲において低階調側に位置するほど、前記ゲイン設定値に対する前記ゲイン使用値の低下量を大きくする
請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記中間階調値は、階調を256段階に分割した場合の階調値が30以上で階調値が128以下の範囲の値である
請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項11】
複数の画素を有する液晶パネル備え、映像信号に基づいた映像を前記液晶パネルに表示する画像表示装置に、
前記液晶パネルのうち、オーバードライブ駆動を実行する対象画素について、予め定められたゲイン設定値を取得する設定値取得ステップと、
前記対象画素について、前記ゲイン設定値から、前記対象画素に印加する液晶駆動電圧の決定に使用するゲイン使用値を決定する使用値決定ステップとを実行させ、
前記使用値決定ステップでは、前記対象画素のうち、前記映像信号から得られる現フレームの階調値が中間階調値であると判定した画素について、前記ゲイン設定値よりも小さな値に前記ゲイン使用値を決定するプログラムを格納した記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−64982(P2013−64982A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−139948(P2012−139948)
【出願日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.HDMI
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】