説明

画像解析装置及び画像解析プログラム

【課題】 眼底画像から、血管交叉部における定量的な特性値を算出し、これらの算出結果に基づいて、血管の異常の判定を、客観的で非常に信頼性高く行うことのできる画像解析装置を提供する。
【解決手段】 画像解析装置は、交叉部における静脈の屈曲度と口径の分布とを、交叉部の周囲で抽出した静脈の血管壁のデータを用いて算出する。そして、屈曲度と口径の分布の算出結果から、血管の異常の疑いの有無を判断し、判断結果を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像解析装置と画像解析プログラムに関する。特に、眼底画像に撮影されている血管の交叉部の状態を解析して、血管の異常の疑いの有無を判断し、その判断結果を表示するための画像解析装置と画像解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼底画像に撮影されている血管の交叉部の状態を解析することによって、動脈硬化の有無を判定できることが知られている。動脈硬化性の変化が生じている眼底の血管は、多くの場合、交叉部で静脈が細くなり、しかも急激に屈曲しているからである。
【0003】
眼底画像の血管部の状態を解析して異常の疑いの有無を判定するために、従来は、医師等の検者が眼底画像を1枚1枚目視で確認し、所定の判定基準に従って血管部の異常の疑いの有無を判定してきた。しかし、検診等で得られた大量の眼底画像を全て目視で確認することは、時間がかかりすぎて効率が悪いという問題点があった。また、検者ごとに動脈硬化性の変化に対する判定基準が微妙に異なるために、特に血管部の輪郭線が曖昧に撮影された画像において、判定結果にばらつきが生じる恐れがあった。
【0004】
特許文献1には、眼底画像に不鮮明に撮影されている血管部から、輪郭線を自動的に抽出して、血管の解析精度を向上させる技術が開示されている。又、非特許文献1には、眼底画像から血管が撮影されている部分を抽出し、複数の血管が交叉している交叉部付近の血管部と、交叉部から所定の距離だけ離れた血管部の口径比を算出し、この値を基に血管部の異常を判定する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−269539号公報
【非特許文献1】JAMIT2006 OP14-6「眼底画像における高血圧症診断支援のための血管交叉部の自動解析」(第25回日本医用画像工学会大会における発表、高橋 亮、畑中裕司、中川俊明、林 佳典、藤田 廣志ほか)
【0005】
非特許文献1に開示される技術は、血管部の異常の疑いの有無を、定量的に、しかも効率よく判定することを可能とした技術である。しかし、非特許文献1の技術では、血管部の2箇所の口径から口径比を算出しているため、口径比の算出に用いられなかった部分の口径の変化を見落とす恐れがあった。また、眼底画像のコントラストが低い場合には、2箇所の口径の値の誤差が大きくなり、これに伴って口径比の誤差も大きくなるために、判定結果の信頼性が損なわれる恐れがあった。
【0006】
一方、血管の異常の判定を行う上で、血管の口径の変化と同様に重要な、交叉部における静脈の屈曲度については、これまで眼底画像からの定量化がほとんど行われてこなかった。眼底画像では、交叉部の静脈が、交叉するもう一方の血管によって隠れた状態で撮影されることが多く、尚且つ交叉部のコントラストが全体に低くなることから、たとえ特許文献1の技術をもってしても、交叉部における静脈の屈曲度を正確に算出することが困難であったためである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来は、眼底画像に撮影されている血管部の状態を判定するために、目視による検査が最も広く行われてきた。そして、迅速且つ信頼性高く判定を行うために、血管の交叉部付近の口径比を算出して、判定に利用する技術が開示されてきた。しかし、血管の状態を更に迅速且つ信頼性高く判定できる技術が求められていた。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであって、交叉部における静脈の屈曲度と口径とを算出して、この算出結果を血管の異常の判定に利用することにより、血管の異常の判定を、定量的な特性に基づいて、客観的で非常に信頼性高く行うことのできる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、被験者の眼底を撮影した画像に撮影されている血管の交叉部を解析する画像解析装置に関する。本発明の画像解析装置は、眼底画像の中で、血管の交叉部を含む交叉領域を決定する交叉領域決定手段と、交叉領域に含まれる血管が、動脈であるか静脈であるかを判定する動静脈判定手段と、交叉領域に含まれる血管の血管壁を抽出する血管壁抽出手段と、抽出された静脈の血管壁の位置のデータから、交叉領域の静脈の口径の分布と屈曲度とを算出する静脈解析手段とを備えている。本発明の画像解析装置の静脈解析手段は、交叉部における静脈の血管壁の位置を交叉領域の抽出された血管壁の位置のデータに基づいて計算し、交叉部における静脈の口径の分布と屈曲度とを算出することを特徴とする。
【0010】
本発明の画像解析装置は、交叉領域に伸びる血管から血管壁を抽出する。そして、その中の静脈の位置のデータを基にして、交叉部で隠されている部分の静脈の血管壁の位置を推定する。推定された交叉部の血管壁の位置を含む、交叉領域の血管の血管壁の位置のデータからは、静脈の口径の分布と屈曲度を算出することができる。
【0011】
請求項2の発明の画像解析装置は、交叉領域に含まれる静脈の口径の分布と屈曲度の算出結果から、眼底の血管の異常の疑いの有無を判断する血管状態判断手段と、血管状態判断手段の判断結果を表示する表示手段を更に備えていることを特徴とする。
【0012】
異常が生じている眼底の静脈は、交叉部で口径が細くなり、しかも急激に屈曲していることが多い。本発明の画像解析装置は、交叉領域に含まれる静脈の口径の分布と屈曲度を算出して、この算出結果が異常な特性を示しているか否かを判断し、この判断結果を表示することができる。
【0013】
請求項3の発明は、被験者の眼底を撮影した画像のデータから、眼底の血管の交叉部を解析する画像解析プログラムに関する。本発明の画像解析プログラムは、眼底画像の中で、血管の交叉部を含む交叉領域を決定し、交叉領域に含まれる血管が、動脈であるか静脈であるかを判定し、交叉領域に含まれる血管の血管壁を抽出し、抽出された血管の中の静脈の血管壁の位置のデータを算出し、算出された血管壁の位置のデータから、交叉部における静脈の血管壁の位置のデータを計算し、算出された位置のデータに基づいて、交叉領域の静脈の口径の分布と屈曲度を計算する処理をコンピュータに実行させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の画像解析装置及び画像解析プログラムによって、従来は眼底画像から算出することが困難であった、血管の交叉部における静脈の口径の分布と屈曲度を算出することが可能となった。
【0015】
更に、本発明の画像解析装置が算出した血管の交叉部における静脈の口径の分布と屈曲度の値に基づいて、血管の異常の疑いの有無を信頼性高く判定し、判定結果を表示することが可能となった。
【実施例】
【0016】
以下、本発明の画像解析装置によって眼底画像の血管を解析した実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
(実施例1)本実施例における画像解析装置1のブロック構成図を図1に示す。画像解析装置1は1台のコンピュータで構成されている。画像解析装置1は、血管抽出処理部2と、交叉領域決定処理部4と、動静脈判定処理部6と、血管壁抽出処理部8と、静脈解析処理部10と、血管状態判断処理部12と、表示処理部16とを備えている。これらの処理部は、コンピュータの記憶部に実行可能な形式で記憶されており、コンピュータのCPUで実行されることにより、眼底画像の解析が進められる。
【0018】
更に、画像解析装置1は、眼底画像を入力することができる入力部14と、入力された眼底画像や、画像解析装置1が行った解析の結果を表示することができる出力部18とを備えている。
【0019】
本実施例の画像解析装置1によって解析される眼底画像の一例を、図2に示す。本実施例で解析される眼底画像はデジタルのカラー画像であって、そこには、視神経乳頭部21と、網膜22と、視神経乳頭21から伸びて網膜22の上方を走行する複数の血管24が撮影されている。画像解析装置1は、眼底画像20の血管24の中の、特に静脈の解析を行って、異常があるか否かを判断する。
【0020】
画像解析装置1が、眼底画像20に対して実施する解析のフローを図3に示す。以下、図3のフローに沿って、詳細な解析内容の説明を行う。画像解析装置1の入力部14は、ステップS2で、眼底画像20の画素データを入力する。本実施例における眼底画像20の画素データは、画素毎にR(赤)、G(緑)、B(青)のデータを含んでいる。
【0021】
画像解析装置1の血管抽出処理部2は、ステップS4において、眼底画像20の中から血管24を識別する。血管24の識別は、入力された眼底画像20の画素値データを2値化することで行われる。2値化は、血管部に固有の画素値を有する画素と、血管部以外の画素値を有する画素を識別し、識別された各々の画素毎に0又は1のデータを割り当てることで実行される。更に、血管抽出処理部2は、識別された血管24に細線化処理を施して、血管24を幅が1画素である線分に変換する。そして、その細線の位置情報を、血管24の位置の情報として一時記憶する。
【0022】
ステップS6で、画像解析装置1の交叉領域決定処理部4は、血管の抽出処理が行われた眼底画像20に対して、血管24の交叉部26の検出と、交叉領域28の設定を行う。交叉領域決定処理部4は、血管24の位置の情報を用いて、2本の血管24が交叉する交叉部26を検出する。そして、交叉部26が中心となるように、所定の面積を持つ正方形の交叉領域28を設定する。交叉領域決定処理部4は、交叉部26が多数検出された場合には、血管抽出処理部2が眼底画像20を処理して得られた2値化のデータを参照し、より太い血管24同士が交叉している交叉部26を検出して、1又は2以上の交叉領域28を設定することができる。
【0023】
ステップS8で、画像解析装置1の動静脈判定処理部6は、交叉領域決定処理部4が設定した交叉領域28の画素値を詳細に解析して、交叉領域28に含まれる血管24が、動脈であるか静脈であるかを判定する。動脈と静脈とではその色度が異なるため、R,G,B値の詳細な比較によって、交叉する血管が動脈であるのか、若しくは静脈であるのかを判定することができる。本実施例における動静脈判定処理部6は、判定の結果、交叉部26で同一の種類の血管が交叉していることが明かとなった交叉領域28については、その領域設定を解除する。そして、動脈と静脈が交叉していると判定された交叉領域28については、血管24の位置の情報と、血管24が動脈であるか静脈であるかという血管の種類の情報とを関連づけて、再度一時記憶する。
【0024】
ステップS10で、画像解析装置1の血管壁抽出処理部8は、交叉領域28に含まれる動脈と静脈の血管壁を抽出する。図2に示すように、血管24は、血管24以外の網膜22の領域と比較すると、R、G、B値に基づいて算出される輝度値が低くなる。又、網膜22と血管24の境界となる部分では、輝度値の変化量が大きく、その境界は明瞭である。そこで、輝度値の変化が大きい領域の画素毎の画素データを評価し、所定のしきい値以下の輝度を有する画素を選択して、この画素の連続した点を連ねることにより、血管24の血管壁を決定することができる。
【0025】
図4に、交叉領域28の中に含まれると判定された動脈30と静脈32について、血管壁抽出処理部28が行った血管壁の抽出結果の一例を示す。血管壁抽出処理部8による輝度の変化としきい値を用いた処理によっては、交叉部のコントラストの低い部分の血管壁は抽出されにくい。このため、本実施例の静脈32については、交叉部26を挟んで、対向する2対の血管壁33,34,35,36が抽出されている。血管壁33,34,35,36を構成する点列の位置のデータは、交叉領域28に定義されている2次元の局所座標系の座標値で記憶されている。
【0026】
ステップS12で、画像解析装置1の静脈解析処理部10は、動脈30と交叉しているために抽出されなかった静脈32の血管壁の位置を、血管壁33,34,35,36の位置のデータを用いて推定し、補完する。交叉部26における静脈32の一方の血管壁の補完は、血管壁33を構成する点列の位置のデータと血管壁35を構成する点列の位置のデータとの間をスプラインで接続することによって行われる。同様に、交叉部26における静脈32の他方の血管壁の補完は、血管壁34を構成する点列の位置のデータと血管壁36を構成する点列の位置のデータとの間をスプラインで接続することによって行われる。図5に、静脈解析処理部10によって補完された、血管壁33と血管壁35の間の血管壁37と、血管壁34と血管壁36の間の血管壁38を表示した、交叉領域28の図を示す。
【0027】
更に、静脈解析処理部10は、血管壁33,34,35,36の位置のデータに、推定された血管壁37と血管壁38の位置のデータを追加し、これらの血管壁のデータから静脈32の口径の分布を算出する(ステップS14)。静脈32の口径の分布は、一方の血管壁33,35,37から、他方の血管壁34,36,38に伸ばした垂線の長さによって算出され、出力される。静脈解析処理部10によって出力された静脈32の口径の分布の一例を、図6に示す。次に、静脈解析処理部10は、交叉部26以外の部分に属する静脈の口径の平均値と、交叉部26の静脈の口径の最小値の値を算出する。
【0028】
更に、本実施例における静脈解析処理部10は、算出された血管壁37と血管壁38の位置のデータを用いて、交叉部26における静脈の屈曲度を算出する。屈曲度の算出方法を、図7を用いて説明する。静脈解析処理部10は、図7(a)に示す血管壁37を、図7(b)のように2本の直線45と直線46で近似する。そして静脈解析処理部10は、直線45,46のなす角θ1を、血管壁37の屈曲度とする。同様に静脈解析処理部10は、血管壁38を直線47と直線48で近似し、この2本の直線47,48のなす角θ2を、血管壁38の屈曲度とする。そしてθ1とθ2の平均値を求めることで、交叉部26における静脈32の屈曲度を算出する(ステップS16)。
【0029】
血管状態判断処理部12は、多数の眼底画像を用いて行った静脈の諸特性の解析の結果と、血管の異常の疑いの有無との相関関係を検討した結果得られた、静脈の口径の基準値と屈曲度の基準値とを記憶している。これらの基準値は、異常がない血管がほぼ80%含まれる値を示している。本実施例において、血管状態判断処理部12が記憶している静脈の口径の基準値とは、交叉部26以外の部分の静脈の平均口径に対する、交叉部26の静脈の口径の最小値の割合を、百分率で示した値である。本実施例におけるこの基準値は、60%となっている。又、屈曲度の基準値は120°となっている。
【0030】
血管状態判断処理部12は、静脈解析処理部10が算出した、交叉部26以外の部分の静脈の平均口径と交叉部26の口径の最小値とを用いて、平均口径に対する最小値の割合を求める。そして、求めた割合の値を、静脈の口径の基準値と比較する。又、交叉部26における屈曲度の値を、交叉部の基準値と比較する。平均口径に対する交叉部の口径の最小値の割合が60%以上である場合と、屈曲度の値が120°よりも大きな場合は、静脈32に異常はなく、静脈の状態は正常な範囲にあるとの判断がなされる。平均口径に対する交叉部の口径の最小値の割合と、屈曲度の値の少なくともいずれか一方に異常がある場合は、異常の疑いありとの判断がなされる(ステップS18)。
【0031】
表示処理部16は、血管状態処理部12の処理が終了すると、解析を行った眼底画像20と、静脈解析処理部10によって算出された静脈32の口径の分布及び屈曲度と、血管状態判断処理部12による判断の結果を、出力部18に表示する(ステップS20)。出力部18に表示される結果表示画面40の一例を、図8に示す。結果表示画面40には、解析を行った眼底画像20と、交叉領域28で抽出された血管壁の図と、算出された静脈の口径の分布と、交叉部における屈曲度と、異常の疑いの有無に関する判断の結果が表示されている。交叉部26以外の部分の静脈の平均口径に対する交叉部26の口径の最小値の割合は、ここでは、「交叉部の口径割合の最小値」として表示されている。
【0032】
本実施例における画像解析装置1は、交叉部26の周囲で抽出した静脈32の血管壁のデータを用いて、交叉部26における静脈32の屈曲度と口径の分布とを算出することができる。そして、屈曲度と口径の分布との算出結果を利用することにより、血管の異常の疑いの有無の判断を、定量的な特性に基づいて、客観的で非常に信頼性高く行うことができる。
【0033】
(実施例2)本実施例における画像解析装置41のブロック構成図を、図9に示す。本実施例の画像解析装置41は1台のコンピュータで構成されており、交叉領域決定処理部42と、静脈壁抽出処理部44を備えている。更に、画像解析装置41は、実施例1の画像解析装置1と同様の構成を有する動静脈判定処理部6と、静脈解析処理部10と、血管状態判断処理部12と、表示処理部16とを備えている。画像解析装置41に含まれるこれらの処理部は、コンピュータの記憶部に実行可能な形式で記憶されており、コンピュータのCPUで実行されることにより、眼底画像の解析が進められる。
【0034】
画像解析装置41を構成するコンピュータには、入力された眼底画像や、画像解析装置41が行った解析の結果を表示することができる出力部18と、出力部18に表示された眼底画像20に対して、検者が交叉領域28の位置を指定することのできるマウス等のポインティングデバイスを含む入力部14を備えている。本実施例の画像解析装置41は、解析の最初のステップで、検者が解析の対象となる眼底画像20に交叉部26を含む交叉領域28を指定することを特徴とする。
【0035】
本実施例の画像解析装置41による画像解析の最初のステップでは、検者が、出力部18に表示された眼底画像20を確認しつつ、解析を実施したい交叉部26を含む交叉領域28を指定する。画像解析装置41の交叉領域決定処理部42は、指定された位置に対応する眼底画像20上の座標を入力して、画像20上に交叉領域28を設定する。ここで検者は、交叉領域28を指定する際に、交叉部26で交叉する動脈と静脈以外の血管が含まれないように交叉領域28を指定することにより、以下の処理を一層迅速且つ正確に進めることができる。
【0036】
画像解析装置41の静脈壁抽出処理部44は、交叉領域28に含まれる静脈32の血管壁を抽出する。静脈壁抽出処理部44は、まず、交叉領域28の画素値を詳細に解析して、静脈固有の色度を有する領域を静脈であると判定する。そして、静脈と判定された領域の端部付近で、輝度値の変化量が大きく、かつ所定のしきい値以下の輝度を有する画素を選択して、この画素を静脈壁であると決定する。このような画素群を全て抽出し、これらの点群を連ねることにより、静脈壁が抽出される。静脈の血管壁33,34,35,36が抽出された交叉領域28の画像を図10に示す。
【0037】
画像解析装置41の静脈解析処理部10は、実施例1と同様の処理を行うことにより、静脈の血管壁33,34,35,36の位置のデータを用いてスプラインで補完して交叉部26を含む血管壁37,38の位置のデータを得る。図11に、静脈の血管壁37,38が補完された交叉領域28の図を示す。静脈解析処理部10は、交叉領域28における静脈の血管壁33〜38の位置のデータに基づいて、静脈32の口径の分布と、交叉部における屈曲度を算出する。これらの算出結果に基づいて、血管状態判断処理部12は、静脈32に異常の疑いがあるか否かの判断を行う。判断の結果は、実施例1と同様に、表示処理部16が処理を行って、出力部18に結果表示画面40を用いて表示される。
【0038】
本実施例の画像解析装置41は、交叉領域28の指定を検者が行うことにより、検者が異常であるか否かの判断を最も行いたい交叉部26を自ら選択して、その結果を迅速に知ることができる。また、本実施例の画像解析装置41は、静脈壁のみを抽出して、動脈壁は抽出しないため、さらに迅速に解析結果を得ることができる。
【0039】
以上、実施例において本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、本実施例における画像解析装置の各処理部は、それぞれモジュール化されてコンピュータの外部装置として構成することができる。本発明の画像解析装置は、眼底画像の撮影手段を備えることにより、画像データの入力をより迅速に行うことができる。更に、画像解析装置によって出力される画面の構成についても、検者の用途に合わせて、様々に変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施例1の画像解析装置1のブロック構成図である。
【図2】実施例1,2で解析される眼底画像20を示す図である。
【図3】実施例1の画像解析装置1が実行する血管の解析の処理の内容を示すフロー図である。
【図4】血管壁の抽出が行われた交叉領域28を示す図である。
【図5】静脈32の血管壁の補完が行われた交叉領域28を示す図である。
【図6】静脈32の口径の分布の算出結果を示す図である。
【図7】屈曲度の算出のために、交叉部26における血管壁37,38を直線45,46,47,48で近似した状態を示す図である。
【図8】異常の疑いの有無の判断結果を表示する結果表示画面40の図である。
【図9】実施例2の画像解析装置41のブロック構成図である。
【図10】静脈壁の抽出が行われた交叉領域28を示す図である。
【図11】静脈32の血管壁の補完が行われた交叉領域28を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1,41 画像解析装置
2 血管抽出処理部
4,42 交叉領域決定処理部
6 動静脈判定処理部
8 血管壁抽出処理部
10 静脈解析処理部
12 血管状態判断処理部
14 入力部
16 表示処理部
18 出力部
20 眼底画像
21 視神経乳頭部
22 網膜
24 血管
26 交叉部
28 交叉領域
30 動脈
32 静脈
33,34,35,36,37,38 血管壁
40 結果表示画面
44 静脈壁抽出処理部
45,46,47,48 血管壁を近似した直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の眼底を撮影した眼底画像に撮影されている血管の交叉部を解析する画像解析装置であって、
前記画像の中で、血管の交叉部を含む交叉領域を決定する交叉領域決定手段と、
前記交叉領域に含まれる血管が、動脈であるか静脈であるかを判定する動静脈判定手段と
前記交叉領域に含まれる血管の血管壁を抽出する血管壁抽出手段と、
抽出された静脈の血管壁の位置のデータから、交叉領域の静脈の口径の分布と屈曲度とを算出する静脈解析手段とを備えており、
前記静脈解析手段は、交叉部における静脈の血管壁の位置を交叉領域の抽出された血管壁の位置のデータに基づいて計算し、交叉部における静脈の口径の分布と屈曲度とを算出することを特徴とする画像解析装置。
【請求項2】
交叉領域に含まれる静脈の口径の分布と屈曲度の算出結果から、眼底の血管の異常の疑いの有無を判断する血管状態判断手段と、
前記血管状態判断手段の判断結果を表示する表示手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の画像解析装置。
【請求項3】
被験者の眼底を撮影した画像のデータから、眼底の血管の交叉部を解析する画像解析プログラムであって、
前記画像の中で、血管の交叉部を含む交叉領域を決定し、
前記交叉領域に含まれる血管が、動脈であるか静脈であるかを判定し、
前記交叉領域に含まれる血管の血管壁を抽出し、
抽出された静脈の血管壁の位置のデータを算出し、
算出された血管壁の位置のデータから、交叉部における静脈の血管壁の位置のデータを計算し、算出された位置のデータに基づいて、交叉領域の静脈の口径の分布と屈曲度を計算する処理をコンピュータに実行させるための画像解析プログラム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図2】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−79682(P2008−79682A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260340(P2006−260340)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(304019399)国立大学法人岐阜大学 (289)
【出願人】(599144712)タック株式会社 (25)
【Fターム(参考)】