説明

画像記録用組成物、画像記録用インクセット、及び記録装置

【課題】にじみの少ない画像が形成されると共に、保存安定性にも優れた画像記録用組成物を提供すること。
【解決手段】インクを受容し、インク中の色材を固定化する機能を有すると共に、外部からの刺激により硬化し、電解質構造を有する硬化性樹脂前駆体を含有する画像記録用組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録用組成物、画像記録用インクセット、及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを利用した記録方式では、浸透媒体や非浸透媒体などの多様な記録媒体に対し記録を行うために、中間転写体に記録した後、記録媒体に転写する方式が提案されている。
【0003】
例えば、中間体上に保持層を形成し、保持層中にインクを供給し、被記録剤にインク像のみを転写する記録方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
印刷版上のインク又は飛翔インク滴が中間転写体に転写されるのに先だって、中間転写体の表面に液体を付着させ、その液体上にインクを付着させてから、中間転写体上のインクを液体とともに被印刷体に転写することを特徴とする記録方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
中間転写体に対して、着色インクの流動性を低下させる第1材料を付与する工程と、第1材料が付与された中間転写体に対して着色インクを記録ヘッドより付与し、インク像を形成する形成工程と、インク像を記録媒体へ転写する転写工程と、転写工程の前に、画像の耐擦過性を向上させる第2材料を中間転写体に付与するインクジェット記録方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−229112号公報
【特許文献2】特開2001−212956号公報
【特許文献3】特開2005−170036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、にじみの少ない画像が形成されると共に、保存安定性にも優れた画像記録用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
インクを受容し、該インク中の色材を固定化する機能を有すると共に、外部からの刺激により硬化し、電解質構造を有する硬化性樹脂前駆体を含有する画像記録用組成物である。
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記硬化性樹脂前駆体が水溶性である請求項1に記載の画像記録用組成物である
【0010】
請求項に係る発明は、
インクを受容し、該インク中の色材を固定化する機能を有すると共に、外部からの刺激により硬化し、電解質構造を有する硬化性樹脂前駆体を含有する画像記録用組成物と、インクと、を有する画像記録用インクセットである。
【0011】
また参考例(その1)として示す発明は、
前記インクが少なくとも色材を含有すると共に、前記画像記録用組成物に含有される前記硬化性樹脂前駆体が前記色材と逆の極性の官能基を含有する請求項3に記載の画像記録用インクセットである。
【0012】
また参考例(その2)として示す発明は、
前記インクが少なくとも色材と分散剤とを含有すると共に、前記画像記録用組成物に含有される前記硬化性樹脂前駆体が前記分散剤と逆の極性の官能基を含有する請求項3に記載の画像記録用インクセットである。
【0013】
また参考例(その3)として示す発明は、
前記画像記録用組成物に含有される前記硬化性樹脂前駆体のpHが、前記インクのpHよりも低い請求項3に記載の画像記録用インクセットである。
【0014】
請求項に係る発明は、
中間転写体と、
インクを受容し、該インク中の色材を固定化する機能を有すると共に、外部からの刺激により硬化し、電解質構造を有する硬化性樹脂前駆体を含有する画像記録用組成物を前記中間転写体上に供給する供給手段と、
前記中間転写体上に供給された前記画像記録用組成物により形成された被硬化層にインクを吐出する吐出手段と、
前記インクが吐出された前記被硬化層を前記中間転写体から記録媒体に転写する転写手段と、
前記被硬化層を硬化させる刺激を供給する刺激供給手段と、
を有する記録装置である。
【0015】
請求項5に係る発明は、
前記中間転写体を加熱する手段を有する請求項に記載の記録装置である。
【0016】
請求項に係る発明は、
ンクを受容し、該インク中の色材を固定化する機能を有すると共に、外部からの刺激により硬化し、電解質構造を有する硬化性樹脂前駆体を含有する画像記録用組成物を記録媒体上に供給する供給手段と、
前記記録媒体上に供給された前記画像記録用組成物により形成された被硬化層にインクを吐出する吐出手段と、
前記被硬化層を硬化させる刺激を供給する刺激供給手段と、
を有する記録装置である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、にじみの少ない画像が形成されると共に、保存安定性にも優れる。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、インクの吸液性に優れる
【0019】
請求項に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、にじみの少ない画像が形成されると共に、画像記録用組成物の保存安定性にも優れる。
【0020】
参考例(その1)として示す発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、、にじみの少ない画像が形成されると共に、保存安定性にも優れる。
【0021】
参考例(その2)として示す発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、にじみの少ない画像が形成されると共に、保存安定性にも優れる。
【0022】
参考例(その3)として示す発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、にじみの少ない画像が形成されると共に、保存安定性にも優れる。
【0023】
請求項に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、にじみの少ない画像が長期に渡って形成される。
【0024】
請求項に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、画像耐久性に優れた画像が形成される。
【0025】
請求項に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、にじみの少ない画像が長期に渡って形成される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態に係る記録装置を示す構成図である。
【図2】第2実施形態に係る記録装置を示す構成図である。
【図3】第3実施形態に係る記録装置を示す構成図である。
【図4】第4実施形態に係る記録装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
<画像記録用組成物およびインク>
本実施形態に係る画像記録用組成物は、インクを受容し、インク中の色材を固定化する機能を有すると共に、外部からの刺激により硬化する硬化性樹脂前駆体を含有する。
【0028】
尚、「インク中の色材を固定化する機能」とは、インク中の色材との相互作用により、インクの溶媒中および硬化性樹脂前駆体中において、色材の溶解性、分散性および流動性の少なくとも一つを低下させ、色材の拡散を抑制する機能を表す。
【0029】
ここで、硬化性樹脂前駆体が「インク中の色材を固定化する機能」を有するか否かを確認する方法は、以下によって行われる。
まず、色材の溶液あるいは分散液と、対象となる硬化性樹脂前駆体とを混合した混合物を調製する。
(1)色材の溶液あるいは分散液が通過可能なポア径のフィルターで、混合物のろ過を試み、色材が通過するかどうかを確認する。色材が通過できなければ、色材の溶解性、分散性が低下していると判断し、「インク中の色材を固定化する機能」を有すると判断する。
(2)上記混合物の粘度を測定し、色材の溶液あるいは分散液、硬化性樹脂前駆体それぞれの単体の粘度に比べて、混合物の粘度が高ければ、流動性が低下していて、「インク中の色材を固定化する機能」を有すると判断する。
以上、(1)および(2)の方法どちらか一方でも「インク中の色材を固定化する機能」を有すると判断された場合は、「インク中の色材を固定化する機能」を有する硬化性樹脂前駆体と認定される。
【0030】
本実施形態に係る画像記録用組成物は、記録装置において中間転写体または記録媒体に供給されて被硬化層を形成し、該被硬化層にインクが吐出される。
【0031】
より具体的には、中間転写体または記録媒体に本実施形態に係る画像記録用組成物が供給されて被硬化層が形成され、その後該被硬化層にインクが吐出される。その際、該インク中の色材は、硬化性樹脂前駆体の「インク中の色材を固定化する機能」によって固定化され、溶解性、分散性および流動性の少なくとも一つが低下すると考えられる。それにより、インクの溶媒中および硬化性樹脂前駆体中における色材の拡散が抑制され、滲みが抑制されて、その結果にじみの少ない高精細な画像が形成されるものと推察される。
また、本実施形態に係る画像記録用組成物は、インク中の色材を固定化する機能を有する硬化性樹脂前駆体を含有するため、従来用いられていた「吸液粒子」を添加する必要がないか、或いは、「吸液粒子」の添加を必要最低限にまで低減できる。そのため、画像記録用組成物中における吸液粒子の沈降や、吸液粒子の吸湿などによる増粘あるいはゲル化などによって生じる保存安定性の低下が、効果的に抑制されると考えられる。
【0032】
[水溶性の硬化性樹脂前駆体]
また、本実施形態に係る画像記録用組成物に含まれる前記硬化性樹脂前駆体は水溶性であることがより好ましい。尚、硬化性樹脂前駆体が水溶性であるとは、水に対し10質量%混合した際に、分離せずに混ざり合った溶液を形成することをいう。
【0033】
硬化性樹脂前駆体が水溶性であることにより、吐出されたインクが画像記録用組成物により形成される被硬化層上ではじかれることなく、効率的に吸液され、被硬化層中に良好に浸透する。
【0034】
尚、本実施形態における硬化性樹脂前駆体を水溶性に調整する方法としては、例えば、水溶性の骨格を有する化合物に硬化反応を起こす官能基を導入する、または硬化性の材料を水と親和性のある官能基を有する構造の物質で変性する等の方法が挙げられる。
【0035】
[インク中の色材を固定化する具体的方法]
次いで、本実施形態における硬化性樹脂前駆体が有するインク中の色材を固定化する機能について、その具体的方法を詳細に説明する。本実施形態において以下の(1)〜(3)の方法が挙げられる。尚、本実施形態における画像記録用組成物は、インク中の色材を固定化する方法として以下の第1の具体的方法を備える。以下に示す第2および第3の具体的方法は参考例として示す方法である。
≪第1の具体的方法≫硬化性樹脂前駆体が電解質構造を有する
≪第2の具体的方法≫硬化性樹脂前駆体が、インクに含まれる色材および/または分散剤と逆の極性の官能基を含有する
≪第3の具体的方法≫硬化性樹脂前駆体のpHがインクのpHよりも低い
【0036】
以下、第1〜第3の具体的方法について、それぞれ説明する。
【0037】
≪第1の具体的方法≫
硬化性樹脂前駆体が電解質構造を有する場合
本実施形態に係る画像記録用組成物に含有される硬化性樹脂前駆体が電解質構造を有することにより、該硬化性樹脂前駆体によって形成された被硬化層に吐出されるインク中の色材が固定化される。
このメカニズムは必ずしも明確ではないが、以下のように推察される。即ち、硬化性樹脂前駆体が電解質構造を有することにより、色材と他の色材との電気的反発力が低減され、その結果色材が凝集して固定化されるものと推察される。
【0038】
・電解質構造を有する硬化性樹脂前駆体
上記硬化性樹脂前駆体が有する「電解質構造」とは、水等の溶媒により、解離して電荷を帯びる構造を表す。
例えば、上記電解質構造の具体例としては、金属塩構造等が挙げられる。
【0039】
また、第1の具体的方法に係る電解質構造を有する硬化性樹脂前駆体における「硬化性」とは、紫外線、電子線、熱等の外部からの刺激によって硬化する性質を意味する。なお、硬化性樹脂前駆体を硬化させる外部からの刺激はこれらに限られず、例えば湿気、酸素等も適用されうる。
電解質構造を有する硬化性樹脂前駆体は、紫外線、電子線、熱等の外部からの刺激により硬化(例えば、重合反応が進行することによる硬化)するものであれば何でもよい。硬化性樹脂前駆体の中でも、画像記録の高速化という観点を考慮すると、硬化速度の速い材料(例えば、重合の反応速度が速い材料)が望ましい。この硬化性材料としては、例えば、放射線硬化型の硬化性樹脂前駆体(上記紫外線硬化性樹脂前駆体、電子線硬化性樹脂前駆体等)が挙げられる。
【0040】
上記第1の具体的方法に係る電解質構造を有する硬化性樹脂前駆体の具体例としては、例えば、金属モノ(メタ)アクリレート、金属ジ(メタ)アクリレート、金属トリ(メタ)アクリレート等の高電解質の硬化性樹脂前駆体が挙げられる。より具体的には、亜鉛変性アクリレート等が挙げられる。
(尚、上記に示した具体例は、何れも放射線の照射によって硬化する性質を有する硬化性樹脂前駆体である。)
【0041】
尚、第1の具体的方法に係る硬化性樹脂前駆体における単位分子量辺りの電解質構造の含有量としては、1官能基数以上5官能基数以下であることが好ましく、1官能基数以上4官能基数以下であることがより好ましく、1官能基数以上3官能基数以下であることが特に好ましい。
上記硬化性樹脂前駆体における単位分子量辺りの電解質構造の含有量は、以下のごとく測定される値であり、本明細書に記載の数値は以下の方法により測定したものである。
分子構造式が既知の場合、構造式中の電解質に相当する官能基の数を数えるだけでよく、一方未知の場合は、硬化性樹脂前駆体を単離し、化学分析により構造式を求め、電解質に相当する官能基の数を算出する。
【0042】
硬化性樹脂前駆体は、Siやフッ素等による変性がされていてもよい。また硬化性材料は、多官能のプレポリマーを含有されていてもよい。
【0043】
また、第1の具体的方法に係る画像記録用組成物中における、上記電解質構造を有する硬化性樹脂前駆体の含有量としては、例えば、50質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
【0044】
尚、第1の具体的方法における前記硬化性樹脂前駆体と後述のインクとの組合せとしては、金属塩構造を有するアクリレートとアニオン性インク等が挙げられる。
【0045】
・重合開始剤
第1の具体的方法に係る画像記録用組成物には、放射線(紫外線、電子線)や熱等の外部からの刺激による硬化反応を進行させるための重合開始剤を含んでいることが望ましい。また、必要に応じて、重合反応をより進行させるための、反応助剤、重合促進剤等を含んでいてもよい。
【0046】
放射線照射による硬化反応がラジカル反応によって進行するタイプである場合、放射線重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、チオキサントン系、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシケトン、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノケトン、α−アミノアルキルフェノン、モノアシルフォスフィンオキサイド、ビスアシルフォスフィンオキサイド、ヒドロキシベンゾフェノン、アミノベンゾフェノン、チタノセン型、オキシムエステル型、オキシフェニル酢酸エステル型などが挙げられる。
また、放射線照射による硬化反応がカチオン反応により進行するタイプである場合、放射線重合開始剤としては、例えば、アリールスルホニウム塩、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、アレン−イオン錯体誘導体、トリアジン系開始剤等が挙げられる。
さらに、熱重合開始剤としては、例えば、プロトン酸/ルイス酸等の酸、アルカリ触媒、金属触媒などが挙げられる。
【0047】
・吸液粒子
第1の具体的方法に係る画像記録用組成物は、前述の通り、吸液粒子を添加する必要がないか、或いは、吸液粒子の添加を必要最低限にまで低減できる。即ち、保存安定性との効果を得る観点では、吸液粒子を含有しないことが特に好ましい。ただし、上記画像記録用組成物には吸液粒子を添加してもよい。
次に、上記吸液粒子について説明する。
【0048】
吸液粒子としては、水性溶媒を吸収するものであれば何でもよい。
ここで「水性溶媒を吸収する」とは、吸液量が100ml/100g以上であることを意味する。また「吸液量」とは、吸液材料100gにより吸収される液体の量(ml)を意味し、以下のようにして測定する。
具体的には、水層に吸液粒子を静置したのち、サンプル全体に水が浸透するまで待ち、吸水サンプルを引き上げ、メッシュ上に5分間放置したのち、重量を測定し、吸液粒子との差分を吸液量とした。また、JIS K5101−13−1に準じた方法でも良い。
水性溶媒に対する吸液粒子の吸液量は、具体的には、例えば、200ml/100g以上になるように調整することが望ましい。
【0049】
吸液粒子の粒子径(体積平均粒子径)は、例えば、0.5μm以上5μm以下の範囲で用いられる。
【0050】
吸液粒子の具体例としては、例えば、ポリアクリル酸及びその塩、ポリメタクリル酸及びその塩、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸及びその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸及びその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸及びその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−カルボン酸及びその塩構造を有する脂肪族または芳香族置換基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とから生成するエステルから構成される共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−カルボン酸およびその塩構造を有する脂肪族または芳香族置換基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とから生成するエステルから構成される共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸およびその塩から構成される共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル−カルボン酸およびその塩構造を有する脂肪族または芳香族置換基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とから生成するエステルから構成される共重合体、ポリマレイン酸およびその塩、スチレン−マレイン酸及びその塩から構成される共重合体等、前記それぞれの樹脂のスルホン酸変性体、それぞれの樹脂のリン酸変性体等、等が挙げられる。望ましくは、ポリアクリル酸およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸およびその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸およびその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−カルボン酸およびその塩構造を有する脂肪族または芳香族置換基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とから生成するエステルから構成される共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸およびその塩から構成される共重合体、が挙げられる。これら樹脂は、未架橋でも架橋されていてもよい。
【0051】
これらの吸液粒子は懸濁重合、エマルション重合、溶液重合などにより作製され、そのままの形状での使用や、ボールミルやサンドミル、凍結粉砕などによる粉砕工程、溶剤による再沈降等の処理を施してもよい。
【0052】
上記吸液粒子の、画像記録用組成物全体における含有量は、例えば、0質量%以上15質量%以下の範囲で用いられる。
【0053】
・その他の固定化成分
また、第1の具体的方法に係る画像記録用組成物には、硬化性樹脂前駆体や吸液粒子の他に、インクの成分を被硬化層上や内部で固定化するその他の成分(以下、「その他の固定化成分」と称する場合がある)をさらに含んでいてもよい。ただし、保存安定性との効果を得る観点では、吸液粒子と同様に、その他の固定化成分も含有しないことが特に好ましい。
【0054】
第1の具体的方法においては、吸液粒子やその他の固定化成分を含有する場合には、予め画像記録用組成物に混合しているが、例えば、吸液粒子やその他の固定化成分を含む溶液を別途調整し、当該溶液を吐出する手段等により画像記録用組成物により形成される被硬化層に吐出することにより、被硬化層に吸液粒子やその他の固定化成分を含ませても良い。吸液粒子やその他の固定化成分を含む溶液を被硬化層に吐出する工程は、インクを被硬化層に吐出する前に行うことが望ましい。
【0055】
その他の固定化成分としては、例えば、インクの成分(例えば色材)を吸着する成分、インクの成分(例えば色材)を凝集または増粘させる成分等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
インクの成分(例えば色材)を吸着する成分としては、シリカ、アルミナ、ゼオライトなどが挙げられる。当該成分の比率としては0質量%以上5質量%以下の範囲が挙げられる。
【0057】
インクの成分(例えば色材)を凝集または増粘させる成分としては、無機電解質、有機酸、無機酸、有機アミンなどの凝集剤が挙げられる。
【0058】
凝集剤は単独で使用しても、あるいは2種類以上を混合して使用しても構わない。また、凝集剤の含有量としては、0質量%以上5質量%以下の範囲が挙げられる。
【0059】
また、画像記録用組成物には、上記硬化反応に寄与する主成分(硬化性樹脂前駆体、重合開始剤等)を溶解または分散するための水や有機溶媒を含んでいてもよい。
【0060】
また、画像記録用組成物は、硬化後の層を着色制御する目的で、各種色材を含んでいてもよい。
【0061】
また、画像記録用組成物は、粘度を調整する等の目的から、熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。該熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボーネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン、ポリエーテル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレンとそのアクリルモノマー共重合体及びそのブレンド物等が挙げられる。
【0062】
尚、画像記録用組成物の粘度としては、例えば5mPa・s以上30000mPa・s以下で用いられる。また、画像記録用組成物の粘度は、インクの粘度よりも高いことがよい。
上記粘度は、以下の方法により測定される値であり、本明細書に記載の粘度は下記方法により測定された値である。
粘度計としてはTV−22(東機産業製)を用いて、ずり速度=2.25から750(1/s)で、15℃での粘度(mPa・s)を計測したものである。尚、本明細書における表記はずり速度10s−1のものである。
【0063】
また、画像記録用組成物は、常温(25℃)において低揮発性または不揮発性であることがよい。ここで、低揮発性とは大気圧下において沸点が200℃以上であることを意味する。また、不揮発性とは大気圧下において沸点が300℃以上であることを意味する。
【0064】
・インク
次いで、第1の具体的方法において用いられるインクについて詳細に説明する。
インクは水性インク、油性インク共に使用することができるが、環境性の点で水性インクが使用される。水性インク(以下、単にインクと称する)は、記録材に加え、インク溶媒(例えば、水、水溶性有機溶媒)を含んでいる。また、必要に応じて、その他、添加剤を含んでいてもよい。
【0065】
まず、記録材について説明する。記録材としては、主に色材が挙げられる。色材としては、染料、顔料のいずれも用いることができるが、顔料であることがよい。顔料としては有機顔料、無機顔料のいずれも使用でき、黒色顔料ではファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料等が挙げられる。黒色とシアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料のほか、赤、緑、青、茶、白等の特定色顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料、プラスチックピグメント等を使用してもよい。また、本実施形態のために、新規に合成した顔料でも構わない。
【0066】
また、シリカ、アルミナ、又は、ポリマービード等をコアとして、その表面に染料又は顔料を固着させた粒子、染料の不溶レーキ化物、着色エマルション、着色ラテックス等を顔料として使用することも可能である。
【0067】
黒色顔料の具体例としては、Raven7000(コロンビアン・カーボン社製)、Regal400R(キャボット社製)、Color Black FW1(デグッサ社製)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
シアン色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Blue−1,−2,−3,−15,−15:1,−15:2,−15:3,−15:4,−16,−22,−60等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
マゼンタ色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Red−5,−7,−12,−48,−48:1,−57,−112,−122,−123,−146,−168,−177,−184,−202, C.I.Pigment Violet −19等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
黄色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Yellow−1,−2,−3,−12,−13,−14,−16,−17,−73,−74,−75,−83,−93,−95,−97,−98,−114,−128,−129,−138,−151,−154,−180等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
ここで、色材として顔料を使用した場合には、併せて顔料分散剤を用いることが望ましい。使用可能な顔料分散剤としては、高分子分散剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0072】
高分子分散剤としては、親水性構造部と疎水性構造部とを有する重合体が好適に用いられる。親水性構造部と疎水性構造部とを有する重合体としては、縮合系重合体と付加重合体とが使用できる。縮合系重合体としては、公知のポリエステル系分散剤が挙げられる。付加重合体としては、α,β−エチレン性不飽和基を有する単量体の付加重合体が挙げられる。親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体と疎水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体を組み合わせて共重合することにより目的の高分子分散剤が得られる。また、親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体の単独重合体も用いることができる。
【0073】
親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体としては、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、りん酸基等を有する単量体、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン化ビニルナフタレン、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート、ビスメタクリロキシエチルホスフェート、メタクリロオキシエチルフェニルアシドホスフェート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
【0074】
疎水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等が挙げられる。
【0075】
高分子分散剤として用いられる、望ましい共重合体の例としては、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。また、これらの重合体に、ポリオキシエチレン基、水酸基を有する単量体を共重合させてもよい。
【0076】
上記高分子分散剤としては、例えば重量平均分子量で2000以上50000以下のものが挙げられる。
【0077】
これら顔料分散剤は、単独で用いても、二種類以上を併用しても構わない。顔料分散剤の添加量は、顔料により大きく異なるため一概には言えないが、一般に顔料に対し、合計で0.1質量%以上100質量%以下が挙げられる。
【0078】
色材として水に自己分散可能な顔料を用いることもできる。水に自己分散可能な顔料とは、顔料表面に水に対する可溶化基を数多く有し、高分子分散剤が存在しなくとも水中で分散する顔料のことを指す。具体的には、通常のいわゆる顔料に対して酸・塩基処理、カップリング剤処理、ポリマーグラフト処理、プラズマ処理、酸化/還元処理等の表面改質処理等を施すことにより、水に自己分散可能な顔料が得られる。
【0079】
また、水に自己分散可能な顔料としては、上記顔料に対して表面改質処理を施した顔料の他、キャボット社製のCab−o−jet−200、Cab−o−jet−300、IJX−157、IJX−253、IJX−266、IJX−273、IJX−444、IJX−55、Cab−o−jet−250C、Cab−o−jet−260M、Cab−o−jet−270Y、Cabot260、オリエント化学社製のMicrojet Black CW−1、CW−2等の市販の自己分散顔料等も使用できる。
【0080】
自己分散顔料としては、その表面に官能基として少なくともスルホン酸、スルホン酸塩、カルボン酸、又はカルボン酸塩を有する顔料であることが望ましい。より望ましくは、表面に官能基として少なくともカルボン酸、又はカルボン酸塩を有する顔料である。
【0081】
更に、樹脂により被覆された顔料等を使用することもできる。これは、マイクロカプセル顔料と呼ばれ、大日本インキ化学工業社製、東洋インキ社製などの市販のマイクロカプセル顔料だけでなく、本実施形態に試作されたマイクロカプセル顔料等を使用することもできる。
【0082】
また、高分子物質を上記顔料に物理的に吸着又は化学的に結合させた樹脂分散型顔料を用いることもできる。
【0083】
記録材としては、その他、親水性のアニオン染料、直接染料、カチオン染料、反応性染料、高分子染料等や油溶性染料等の染料類、染料で着色したワックス粉・樹脂粉類やエマルション類、蛍光染料や蛍光顔料、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、フェライトやマグネタイトに代表される強磁性体等の磁性体類、酸化チタン、酸化亜鉛に代表される半導体や光触媒類、その他有機、無機の電子材料粒子類などが挙げられる。
【0084】
これらの記録材の中でも、上記硬化性溶液(画像記録用組成物)に含まれるカチオン性樹脂によるインクの拡散を抑えインク滲みを有効に抑制する点から、記録材としては、アニオン性分散剤(例えば、上記アニオン性界面活性剤)を用いた顔料、アニオン性官能基(例えば上記スルホン酸、スルホン酸塩、カルボン酸、又はカルボン酸塩)を有する自己分散型顔料、及びアニオン性染料であることが最も望ましい。
【0085】
記録材の含有量(濃度)は、例えばインクに対して5質量%以上30質量%以下の範囲が挙げられる。
【0086】
記録材の体積平均粒径は、例えば10nm以上1000nm以下の範囲が挙げられる。
【0087】
記録材の体積平均粒径とは、記録材そのものの粒径、又は記録材に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した粒径をいう。体積平均粒径の測定装置には、マイクロトラックUPA粒度分析計9340(Leeds&Northrup社製)を用いた。その測定は、インク4mlを測定セルに入れ、所定の測定法に従って行った。なお、測定時の入力値として、粘度にはインクの粘度を、分散粒子の密度は記録材の密度とした。
【0088】
次に、水溶性有機溶媒について説明する。水溶性有機溶媒としては、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が使用される。
【0089】
水溶性有機溶媒の具体例としては、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2−へキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、キシリトールなどの糖アルコール類、キシロース、グルコース、ガラクトースなどの糖類等が挙げられる。
【0090】
多価アルコール類誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0091】
含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が、アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が挙げられる。
含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0092】
水溶性有機溶媒としては、その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を用いることもできる。
【0093】
水溶性有機溶媒は、少なくとも1種類以上使用してもよい。水溶性有機溶媒の含有量としては、例えば1質量%以上70質量%以下の範囲が挙げられる。
【0094】
次に、水について説明する。水としては、特に不純物が混入することを防止するため、イオン交換水、超純水、蒸留水、限外濾過水を使用することが望ましい。
【0095】
次に、その他の添加剤について説明する。インクには、界面活性剤を添加することができる。
【0096】
これら界面活性剤の種類としては、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、望ましくは、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が用いられる。
【0097】
これらの界面活性剤は単独で使用しても混合して使用してもよい。また界面活性剤の親水性/疎水性バランス(HLB)は、溶解性等を考慮すると、例えば3以上20以下の範囲が挙げられる。
【0098】
これらの界面活性剤の添加量は、例えば0.001質量%以上5質量%以下、望ましくは0.01質量%以上3質量%以下の範囲が挙げられる。
【0099】
また、インクには、その他、浸透性を調整する目的で浸透剤、インク吐出性改善等の特性制御を目的でポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等や、導電率、pHを調整するために水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属類の化合物等、その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、及びキレート化剤等も添加することができる。
【0100】
次に、インクの好適な特性について説明する。まず、インクの表面張力は、例えば20mN/m以上45mN/m以下の範囲が挙げられる。
【0101】
ここで、表面張力としては、ウイルヘルミー型表面張力計(協和界面科学株式会社製)を用い、23℃、55%RHの環境において測定した値を採用した。
【0102】
インクの粘度は、例えば1.5mPa・s以上30mPa・s以下の範囲が挙げられる。
【0103】
ここで、粘度としては、TV−20(東機産業製)を測定装置として用いて、測定温度は23℃、せん断速度は750s−1の条件で測定した値を採用した。
【0104】
なお、インクは、上記構成に限定されるものではない。記録材以外に、例えば、液晶材料、電子材料など機能性材料を含むものであってもよい。
【0105】
また、上記いずれの実施形態でも、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色のインクジェット記録ヘッドから画像データに基づいて選択的にインク滴が吐出されてフルカラーの画像が記録媒体に記録される形態を説明したが、記録媒体上への文字や画像の記録に限定されるものではない。すなわち、本実施形態は、工業的に用いられる液滴吐出(噴射)装置全般に対して適用される。
【0106】
≪第2の具体的方法≫
硬化性樹脂前駆体が、インクに含まれる色材および/または分散剤と逆の極性の官能基を含有する場合
本実施形態に係る画像記録用組成物に含有される硬化性樹脂前駆体が、インクに含まれる色材および/または分散剤と逆の極性の官能基を含有することにより、該硬化性樹脂前駆体によって形成された被硬化層に吐出されるインク中の色材が固定化される。
このメカニズムは必ずしも明確ではないが、以下のように推察される。即ち、色材と硬化性樹脂前駆体とのイオン反応により、色材と硬化性樹脂前駆体との不溶塩が形成され、その結果色材が固定化されるものと推察される。
【0107】
・インクに含まれる色材および/または分散剤と逆の極性の官能基を含有する硬化性樹脂前駆体
上記硬化性樹脂前駆体が有する逆の極性の官能基とは、色材および/または分散剤がアニオン性である場合にはカチオン性の官能基を表し、一方色材および/または分散剤がカチオン性である場合にはアニオン性の官能基を表す。尚、インクはアニオン性であることが好ましいため、上記硬化性樹脂前駆体としてはカチオン性の官能基を有することがより好ましい。
【0108】
例えば、上記カチオン性の官能基としては、アミンおよびその塩、アンモニウム塩等が挙げられ、一方、アニオン性の官能基としては、有機酸等が挙げられる。
【0109】
また、第2の具体的方法に係る硬化性樹脂前駆体における「硬化性」とは、第1の具体的方法においても記載した通り、紫外線、電子線、熱等の外部からの刺激によって硬化する性質を意味する。なお、硬化性樹脂前駆体を硬化させる外部からの刺激はこれらに限られず、例えば湿気、酸素等も適用されうる。
上記硬化性樹脂前駆体は、紫外線、電子線、熱等の外部からの刺激により硬化(例えば、重合反応が進行することによる硬化)するものであれば何でもよい。硬化性樹脂前駆体の中でも、画像記録の高速化という観点を考慮すると、硬化速度の速い材料(例えば、重合の反応速度が速い材料)が望ましい。この硬化性材料としては、例えば、放射線硬化型の硬化性樹脂前駆体(上記紫外線硬化性樹脂前駆体、電子線硬化性樹脂前駆体等)が挙げられる。
【0110】
上記第2の具体的方法に係る硬化性樹脂前駆体において、カチオン性の官能基を有する前駆体の具体例としては、例えば、N,N−ジアルキルアミノアルキルアクリレートおよびその有機酸塩/ハライド塩/有機ハライド塩、N,N−ジアルキルアミノアルキルアクリルアミドおよびその有機酸塩/ハライド塩/有機ハライド塩、ポリエステルアクリレートのアミン変性物、ポリウレタンアクリレートのアミン変性物、ビニルピリジン等のカチオン性を有する硬化性樹脂前駆体が挙げられる。
より具体的には、アミン変性ポリエステルアクリレートオリゴマー、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアミノアルキルアクリレート塩酸塩、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロリド4級塩、ビニルピリジン、ペンタメチルピペリジルメタクリレ−ト等が挙げられる。
【0111】
上記第2の具体的方法に係る硬化性樹脂前駆体において、アニオン性の官能基を有する前駆体の具体例としては、例えば、β−カルボキシエチルアクリレート、カルボン酸変性ポリエーテルアクリレート、カルボン酸変性ポリエステルアクリレート、カルボン酸変性ウレタンアクリレート、スルホン酸変性ポリエステルアクリレート等のアニオン性を有する硬化性樹脂前駆体が挙げられる。
(尚、上記に示した具体例は、何れも放射線の照射によって硬化する性質を有する硬化性樹脂前駆体である。)
【0112】
尚、第2の具体的方法に係る硬化性樹脂前駆体における単位分子量辺りの官能基の含有量としては、1官能基数以上5官能基数以下であることが好ましく、1官能基数以上4官能基数以下であることがより好ましく、1官能基数以上3官能基数以下であることが特に好ましい。
上記硬化性樹脂前駆体における単位分子量辺りの官能基の含有量は、以下のごとく測定される値であり、本明細書に記載の数値は以下の方法により測定したものである。分子構造式が既知の場合、構造式中のアニオン性の官能基またはカチオン性官能基に相当する官能基の数を数えるだけでよく、未知の場合は、硬化性樹脂前駆体を単離し、化学分析により構造式を求め、アニオン性の官能基またはカチオン性官能基に相当する官能基の数を算出する。
【0113】
硬化性樹脂前駆体は、Siやフッ素等による変性がされていてもよい。
【0114】
また、第2の具体的方法に係る画像記録用組成物中における、上記硬化性樹脂前駆体の含有量としては、50質量%以上100質量%以下で用いることが出来る。
【0115】
尚、第2の具体的方法における前記硬化性樹脂前駆体と後述のインクとの組合せとしては、アミン塩構造を有するアクリレートとアニオン性インク、カルボン酸構造を有するアクリレートとカチオン性インク、スルホン酸構造を有するアクリレートとカチオン性インク等が挙げられる。
【0116】
・重合開始剤
第2の具体的方法に係る画像記録用組成物には、第1の具体的方法にも記載した通り、放射線(紫外線、電子線)や熱等の外部からの刺激による硬化反応を進行させるための重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤の具体例としては、前記第1の具体的方法に記載したものが用いられる。
【0117】
・吸液粒子およびその他の固定化成分
第2の具体的方法に係る画像記録用組成物は、前述の通り、吸液粒子を添加する必要がないか、或いは、吸液粒子の添加を必要最低限にまで低減できる。即ち、保存安定性との効果を得る観点では、吸液粒子を含有しないことが特に好ましい。ただし、上記画像記録用組成物には吸液粒子を添加してもよい。
また、第2の具体的方法に係る画像記録用組成物には、硬化性樹脂前駆体や吸液粒子の他に、インクの成分を被硬化層上や内部で固定化するその他の固定化成分をさらに含んでいてもよい。ただし、保存安定性との効果を得る観点では、吸液粒子と同様に、その他の固定化成分も含有しないことが特に好ましい。
上記吸液粒子および上記その他の固定化成分の具体例としては、前記第1の具体的方法に記載したものが用いられる。
【0118】
・インク
次いで、第2の具体的方法において用いられるインクについて詳細に説明する。
第2の具体的方法においては、インクとして、前記第1の具体的方法に用いたものが用いられる。但し、インクに含まれる色材および/または分散剤の極性を、用いられる硬化性樹脂前駆体が有する官能基の極性と逆の極性に調整する必要がある。特に、インクに含まれる成分として色材と分散剤とを用いる場合には、分散剤の極性を調整してもよい。一方、インクに含まれる色材として水に自己分散可能な顔料を用いる場合には、色材の極性を調整してもよい。
【0119】
インクに含まれる色材の極性をアニオン性またはカチオン性に調整する方法としては、例えば、アニオン性またはカチオン性の官能基を有する自己分散顔料を用いる方法、アニオン性染料またはカチオン性染料を用いる方法等が挙げられる。
【0120】
ここで、アニオン性の官能基を有する自己分散顔料としては、例えば、キャボット社製のCab−o−jet−200、Cab−o−jet−300、IJX−444、Cab−o−jet−250C、Cab−o−jet−260M、Cab−o−jet−270Y、Cabot260、オリエント化学社製のMicrojet Black CW−1、CW−2等が挙げられる。
また、アニオン性染料としては、例えば、C.I.ダイレクトブルー−86,−87、−142,−168、−199,−218,−307、
C.I.ダイレクトレッド−75,−94,−95,−227、
C.I.ダイレクトバイオレット−107、
C.I.ダイレクトイエロー−86,−132、−142,−144、
C.I.アシッドブルー−9,−249,−254、
C.I.アシッドレッド−198、−249,−289、
C.I.アシッドイエロー−23、
C.I.リアクティブブルー−32、
C.I.リアクティブレッド−29,−59、
ILFORD社製M−377、C.I.フードイエロー−3、Y−104、
C.I.ダイレクトブラック−19,−154,−168,−195
C.I.フードブラック−1,−2等が挙げられる。
【0121】
一方、カチオン性の官能基を有する自己分散顔料としては、例えば、顔料表面をアミン変性したカーボンブラック等が挙げられる。
また、カチオン性染料としては、ローダミンB、ズダンブラック等が挙げられる。
【0122】
インクに含まれる分散剤の極性をアニオン性またはカチオン性に調整する方法としては、例えば、アニオン性またはカチオン性の分散剤を用いる方法が挙げられる。
ここで、アニオン性またはカチオン性の分散剤としては、前記第1の具体的方法に記載のアニオン性界面活性剤やカチオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0123】
尚、第2の具体的方法に用いられるインクについては、その他の構成は前記第1の具体的方法に記載される通りであるため、それ以外の説明を省略する。
【0124】
≪第3の具体的方法≫
硬化性樹脂前駆体のpHがインクのpHよりも低い
本実施形態に係る画像記録用組成物に含有される硬化性樹脂前駆体のpHが、インクのpHよりも低いことにより、該硬化性樹脂前駆体によって形成された被硬化層に吐出されるインク中の色材が固定化される。
このメカニズムは必ずしも明確ではないが、以下のように推察される。即ち、インクが硬化性樹脂前駆体に浸透した際、硬化性樹脂前駆体のpHがインクのpHよりも低いことによって、インク中の色材に含まれる解離基の解離度が低下する。そのため、色材の溶解性や分散安定性が低下し、色材が凝集することによって、色材が固定化されるものと推察される。
【0125】
・pHがインクのpHよりも低い硬化性樹脂前駆体
第3の具体的方法においては、上記の通り、硬化性樹脂前駆体のpHがインクのpHよりも低いことが必須であり、更にインクは弱塩基性〜弱酸性領域で用いることができ、具体的にはpH5以上9以下で用いることができる一方、硬化性樹脂前駆体のpHは3以上5以下の範囲で用いることができる。
【0126】
尚、上記硬化性樹脂前駆体のpHおよびインクのpHは、以下のごとく測定される値であり、本明細書に記載の数値は以下の方法により測定したものである。
温度23±0.5℃、湿度55±5%RH環境下において、pH/導電率計(メトラー・トレド社製MPC227)により測定する。
【0127】
インクのpHを調整する方法は、後述する。
【0128】
また、第3の具体的方法に係る硬化性樹脂前駆体における「硬化性」とは、第1の具体的方法においても記載した通り、紫外線、電子線、熱等の外部からの刺激によって硬化する性質を意味する。なお、硬化性樹脂前駆体を硬化させる外部からの刺激はこれらに限られず、例えば湿気、酸素等も適用されうる。
上記硬化性樹脂前駆体は、紫外線、電子線、熱等の外部からの刺激により硬化(例えば、重合反応が進行することによる硬化)するものであれば何でもよい。硬化性樹脂前駆体の中でも、画像記録の高速化という観点を考慮すると、硬化速度の速い材料(例えば、重合の反応速度が速い材料)が望ましい。この硬化性材料としては、例えば、放射線硬化型の硬化性樹脂前駆体(上記紫外線硬化性樹脂前駆体、電子線硬化性樹脂前駆体等)が挙げられる。
【0129】
上記第3の具体的方法に係る硬化性樹脂前駆体の具体例としては、例えば、アクリレート/メタクリレートのハーフエステル、酸変性されたポリエステルアクリレート、酸変性されたポリウレタンアクリレート、酸変性されたポリエーテルアクリレート等のアニオン性基を有する硬化性樹脂前駆体が好適に用いられる。
より具体的には、カルボン酸変性アクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート等が挙げられる。
(尚、上記に示した具体例は、何れも放射線の照射によって硬化する性質を有する硬化性樹脂前駆体である。)
【0130】
硬化性樹脂前駆体は、Siやフッ素等による変性がされていてもよい。
【0131】
また、第3の具体的方法に係る画像記録用組成物中における、上記硬化性樹脂前駆体の含有量としては、50質量%以上100質量%以下で用いることが出来る。
【0132】
尚、第3の具体的方法における前記硬化性樹脂前駆体と後述のインクとの組合せとしては、カルボン酸変性アクリレートとpH6.5以上pH7.5以下に調整されたカルボン酸基を有する自己分散顔料インク、カルボン酸変性アクリレートとpH6.5以上pH7.5以下に調整されたカルボン酸基を有する分散剤にて分散された顔料インク等が挙げられる。
【0133】
・重合開始剤
第3の具体的方法に係る画像記録用組成物には、第1の具体的方法にも記載した通り、放射線(紫外線、電子線)や熱等の外部からの刺激による硬化反応を進行させるための重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤の具体例としては、前記第1の具体的方法に記載したものが用いられる。
【0134】
・吸液粒子およびその他の固定化成分
第3の具体的方法に係る画像記録用組成物は、前述の通り、吸液粒子を添加する必要がないか、或いは、吸液粒子の添加を必要最低限にまで低減できる。即ち、保存安定性との効果を得る観点では、吸液粒子を含有しないことが特に好ましい。ただし、上記画像記録用組成物には吸液粒子を添加してもよい。
また、第3の具体的方法に係る画像記録用組成物には、硬化性樹脂前駆体や吸液粒子の他に、インクの成分を被硬化層上や内部で固定化するその他の固定化成分をさらに含んでいてもよい。ただし、保存安定性との効果を得る観点では、吸液粒子と同様に、その他の固定化成分も含有しないことが特に好ましい。
上記吸液粒子および上記その他の固定化成分の具体例としては、前記第1の具体的方法に記載したものが用いられる。
【0135】
・インク
次いで、第3の具体的方法において用いられるインクについて詳細に説明する。
第3の具体的方法においては、インクとして、前記第1の具体的方法に用いたものが用いられる。但し、インクのpHを、用いられる硬化性樹脂前駆体のpHよりも高く調整する必要がある。
【0136】
上記インクのpHを調整する方法としては、例えば、pH調整剤の添加が挙げられ、具体的には、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、ホウ酸、リン酸、亜リン酸、乳酸等の酸や水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、アンモニア等の塩基、およびリン酸塩、シュウ酸塩、アミン塩やグッドバッファー等のpH緩衝剤を添加する方法等が挙げられる。
【0137】
尚、第3の具体的方法に用いられるインクについては、その他の構成は前記第1の具体的方法に記載される通りであるため、それ以外の説明を省略する。
【0138】
<記録装置>
好ましい実施形態に係る記録装置は、中間転写体と、前述の画像記録用組成物を前記中間転写体上に供給する供給手段と、前記中間転写体上に供給された前記画像記録用組成物により形成された被硬化層に、前述のインクを吐出する吐出手段と、前記インクが吐出された前記被硬化層を前記中間転写体から記録媒体に転写する転写手段と、前記被硬化層を硬化させる刺激を供給する刺激供給手段と、を有する。
尚、前記中間転写体を加熱する手段を有していてもよい。
【0139】
また、好ましい実施形態に係る記録装置の別の態様は、前述の画像記録用組成物を記録媒体上に供給する供給手段と、前記記録媒体上に供給された前記画像記録用組成物により形成された被硬化層に、前述のインクを吐出する吐出手段と、前記被硬化層を硬化させる刺激を供給する刺激供給手段と、を有する。
【0140】
次いで、好ましい実施形態に係る記録装置について図面を参照しつつ説明する。なお、同じ機能を有する部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0141】
図1は、第1実施形態に係る記録装置を示す構成図である。
【0142】
第1実施形態に係る記録装置101は、図1に示すように、例えば、中間転写ドラム(中間転写体)10、中間転写ドラム10上に外部からの刺激(エネルギー)により硬化する硬化性樹脂前駆体を少なくとも含有する硬化性溶液(画像記録用組成物)12Aを供給して硬化性溶液12Aにより形成された被硬化層12Bを形成する溶液供給装置12と、被硬化層12B上にインク滴14Aを吐出し画像Tを形成するインクジェット記録ヘッド14と、記録媒体Pを中間転写ドラム10に重ね合わせ圧力を加えることにより画像Tが形成された被硬化層12Bを記録媒体P上に転写する転写装置16と、記録媒体P上に転写された被硬化層12Bを硬化する刺激を供給する刺激供給装置18と、を含んで構成されている。
【0143】
また、中間転写ドラム10の回転方向における転写装置16の下流には、中間転写ドラム10表面に残留する被硬化層12Bの残留物の除去、当該残留物以外の異物(記録媒体Pの紙粉等)等の付着物の除去を行うためのクリーニング装置20が配置されている。
【0144】
中間転写ドラム10は、例えば円筒状基体と、当該基体表面に被覆される表面層と、を有する構成が挙げられる。中間転写ドラム10は、記録媒体Pの幅と同等又はそれ以上の幅(軸方向長さ)を有している。
円筒状基体の材質としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、銅等が挙げられる。
表面層の材質としては、例えば、各種の樹脂[例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、フッ素系樹脂等]、各種のゴム(例えば、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)等が挙げられる。表面層は、単層構成でもよいし、積層構成でもよい。
【0145】
溶液供給装置12は、例えば、硬化性溶液12Aを収納する筐体12C内に、当該硬化性溶液12Aを中間転写ドラム10へ供給する供給ローラ12Dと、供給された硬化性溶液12Aにより形成された被硬化層12Bの層厚を規定するブレード12Eと、を含んで構成されている。
【0146】
溶液供給装置12は、その供給ローラ12Dが中間転写ドラム10に連続的に接触するようにしてもよいし、中間転写ドラム10から離間する構成としてもよい。また、溶液供給装置12は、独立した溶液供給システム(図示せず)より硬化性溶液12Aを筐体12Cへ供給させ、硬化性溶液12Aの供給がとぎれないようにしてもよい。
【0147】
ここで、硬化性溶液12Aとしては、前述の本実施形態に係る画像記録用組成物が用いられる。
【0148】
溶液供給装置12は、上記構成に限られず、公知の供給法(塗布法:例えば、バーコーター塗布、スプレー方式の塗布、インクジェット方式の塗布、エアーナイフ方式の塗布、ブレード方式の塗布、ロール方式の塗布等)などを利用した装置が適用される。
【0149】
インクジェット記録ヘッド14は、例えば、中間転写ドラム10の回転方向上流側から、ブラックインクを吐出するための記録ヘッド14Kと、シアンインクを吐出するための記録ヘッド14Cと、マゼンタインクを吐出するための記録ヘッド14Mと、イエローインクを吐出するための記録ヘッド14Yと、の各色の記録ヘッドを含んで構成されている。無論、記録ヘッド14の構成は上記構成に限られず、例えば、記録ヘッド14Kのみで構成してもよいし、記録ヘッド14C、記録ヘッド14M、及び記録ヘッド14Yのみで構成してもよい。
【0150】
各記録ヘッド14は、例えば、記録媒体Pの幅と同等又はそれ以上の幅を持つライン型インクジェット記録ヘッドが望ましいが、従来のスキャン型のインクジェット記録ヘッドを用いてもよい。各記録ヘッド14のインク吐出方式は、圧電素子駆動型、発熱素子駆動型等、インク吐出可能な方式であれば制限はない。
【0151】
各記録ヘッド14は、例えば、中間転写ドラム10の回転方向上流側から記録ヘッド14K、記録ヘッド14C、記録ヘッド14M、及び記録ヘッド14Yの順で直列に配置されている。
【0152】
各記録ヘッド14は、中間転写ドラム10表面とヘッドのノズル面との距離が例えば0.3乃至0.7mm程度にして配置されている。また、各記録ヘッド14は、例えば、その長手方向が中間転写ドラムの回転方向と交差(望ましくは直交)して配設されている。
【0153】
転写装置16は、中間転写ドラム10に対し押し当てて配置される加圧ロール16Aを含んで構成されている。加圧ロール16Aは、例えば、上記中間転写ドラム10の材料構成に記載の構成とされる。
【0154】
刺激供給装置18は、適用する硬化性溶液12Aに含まれる硬化性樹脂前駆体の種類に応じて選択される。具体的には、例えば、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化性樹脂前駆体を適用する場合、刺激供給装置18としては硬化性溶液12A(これにより形成された被硬化層12B)に紫外線を照射する紫外線照射装置を適用する。また、電子線の照射により硬化する電子線硬化性樹脂前駆体を適用する場合、刺激供給装置18として硬化性溶液12A(これにより形成された被硬化層12B)に電子線を照射する電子線照射装置を適用する。また、熱の付与により硬化する熱硬化性樹脂前駆体を適用する場合、刺激供給装置18として硬化性溶液12A(これにより形成された被硬化層12B)に熱を付与する熱付与装置を適用する。
【0155】
ここで、紫外線照射装置としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、デイープ紫外線ランプ、マイクロ波を用い外部から無電極で水銀灯を励起するランプ、紫外線レーザー、キセノンランプ、UV−LEDなどが適用される。
【0156】
ここで、紫外線の照射条件としては、紫外線硬化性樹脂前駆体を含む硬化性溶液12A(これにより形成された被硬化層12B)が硬化される条件であれば、特に制限はなく、紫外線硬化性樹脂前駆体種、被硬化層12Bの厚みなどに応じて選択し得るが、例えば、高圧水銀灯120W/cm出力密度で2s照射等である。
【0157】
また、電子線照射装置としては、例えば、走査型/カーテン型等があり、カーテン型はフィラメントで生じた熱電子を、真空チャンバー内のグリッドによって引き出し、さらに高電圧(例えば70乃至300kV)によって、一気に加速させ、電子流となり、窓箔を通過して、大気側に放出する装置である。電子線の波長は一般的に1nmより小さく、またエネルギーは大きいもので数MeVに及ぶが、電子線の波長数がpmのオーダーでエネルギーが数十乃至数百keVが適用される。
【0158】
ここで、電子線の照射条件としては、電子線硬化性樹脂前駆体を含む硬化性溶液12A(これにより形成された被硬化層12B)が硬化される条件であれば、特に制限はなく、電子線硬化性樹脂前駆体種、被硬化層12Bの厚みなどに応じて選択し得るが、例えば、電子線量は5乃至100kGyレベル等である。
【0159】
また、熱付与装置としては、例えば、ハロゲンランプ、セラミックヒータ、ニクロム線ヒータ、マイクロ波加熱、赤外線ランプなどが適用される。また、熱付与装置としては、電磁誘導方式の加熱装置も適用できる。
【0160】
ここで、熱の付与条件としては、熱硬化性樹脂前駆体を含む硬化性溶液12A(これにより形成された被硬化層12B)を硬化することが可能な条件であれば、特に制限はなく、熱硬化性樹脂前駆体種、被硬化層12Bの厚みなどに応じて選択し得るが、例えば、空気中において、200℃環境で5min等である。
【0161】
なお、それぞれ硬化された状態とは、被硬化層12Bが刺激供給装置18により硬化された硬化層に浸透性の用紙(普通紙)を重ね、200g荷重をかけても転写がおこらない状態をいう。
【0162】
記録媒体Pとしては、浸透媒体(例えば、普通紙や、コート紙等)、非浸透媒体(例えば、アート紙、樹脂フィルムなど)、いずれも適用される。記録媒体は、これらに限られず、その他、半導体基板など工業製品も含まれる。
【0163】
以下、本実施形態に係る記録装置101の画像記録プロセスにつき、説明する。
【0164】
本実施形態に係る記録装置101では、中間転写ドラム10が回転駆動され、まず、溶液供給装置12により、中間転写ドラム10表面に硬化性溶液12Aを供給して、被硬化層12Bを形成する。
【0165】
ここで、被硬化層12Bの厚みは、特に制限はないが、例えば、本実施形態では、1μm以上50μm以下で調整される。
【0166】
また、例えば、被硬化層12Bの厚みをインク滴14Aが被硬化層12Bの最下層まで到達しない程度とすれば、記録媒体Pへの転写後では被硬化層12Bのうちインク滴14Aが存在する領域が露出せず、インク滴14Aが存在しない領域が硬化後には保護層として機能する。
【0167】
次に、インクジェット記録ヘッド14によりインク滴14Aを吐出し、中間転写ドラム10上に供給された被硬化層12Bに当該インク滴14Aを付与する。インクジェット記録ヘッド14は所定の画像情報に基づき、被硬化層12Bの所定の位置にインク滴14Aを付与する。
【0168】
この際、インクジェット記録ヘッド14によるインク滴14Aの吐出は、中間転写ドラム10上で行われる。つまり、ドラム表面がたわみのない状態で被硬化層12Bにインク滴14Aの吐出がなされる。
【0169】
次に、転写装置16により記録媒体Pを中間転写ドラム10と挟み込んで、被硬化層12Bに圧力を加えることで、記録媒体P上に、インク滴14Aにより画像が形成された被硬化層12Bが転写される。
【0170】
次に、刺激供給装置18により、被硬化層12Bを硬化させることで、インク滴14Aによる画像Tが硬化性樹脂により記録媒体P上で定着される。これにより、インク滴14Aによる画像Tが含まれる硬化性樹脂層(画像層)が記録媒体Pに形成される。
【0171】
そして、被硬化層12Bが記録媒体Pへ転写された後の中間転写ドラム10表面に残った被硬化層12Bの残留物や異物をクリーニング装置20により除去し、再び、中間転写ドラム10上に、溶液供給装置12により硬化性溶液12Aを供給して被硬化層12Bを形成し、画像記録プロセスが繰り返される。
【0172】
以上のようにして、本実施形態に係る記録装置101では、画像記録が行われる。
【0173】
図2は、第2実施形態に係る記録装置を示す構成図である。
【0174】
第2実施形態に係る記録装置102は、図2に示すように、第1実施形態における中間転写ドラム10の代わりに中間転写ベルト(中間転写体)22を配置した形態である。
【0175】
中間転写ベルト22は、例えば、2つの支持ロール22A、及び加圧ロール16B(転写装置16)により内周面側から張力を掛けつつ回転可能に支持されて配設されている。
【0176】
中間転写ベルト22は、記録媒体Pの幅と同等又はそれ以上の幅(軸方向長さ)を有している。
中間転写ベルト22は、例えば、各種の樹脂[例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、フッ素系樹脂等]、各種のゴム(例えば、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)により構成される。中間転写ベルト22は、ステンレス等の金属材料により構成してもよい。中間転写ベルト22は、単層構成でもよいし、積層構成でもよい。また、中間転写ベルト22は、フッ素樹脂・シリコーンゴム等の離型性の材料により表面層を有していてもよい。
【0177】
各記録ヘッド14は、張力が掛けられて回転支持された中間転写ベルトにおける非屈曲領域上で、且つ中間転写ベルト22表面とヘッドのノズル面との距離が例えば0.7乃至1.5mm程度にして配置されている。
【0178】
転写装置16は、中間転写ベルト22を挟んで対向配置された一対の加圧ロール16A,16Bを含んで構成されている。
【0179】
本実施形態に係る記録装置102では、インクジェット記録ヘッド14によりインク滴14Aを吐出し、中間転写ベルト22上に形成された被硬化層12Bに当該インク滴14Aを付与する。
【0180】
この際、インクジェット記録ヘッド14によるインク滴14Aの吐出は、張力が掛けられて回転支持された中間転写ベルト22における非屈曲領域上で行われる。つまり、ベルト表面がたわみのない状態で被硬化層12Bにインク滴14Aの吐出がなされる。
【0181】
これら以外は、第1実施形態に記載の構成が採用されるので、説明を省略する。
【0182】
図3は、第3実施形態に係る記録装置を示す構成図である。
【0183】
第3実施形態に係る記録装置103は、図3に示すように、第1実施形態において、インク滴14Aによる画像が形成された被硬化層12Bを記録媒体Pへ転写する前に、当該被硬化層12Bを半硬化させる刺激を供給する第2の刺激供給装置24をさらに配置した形態である。
【0184】
第2の刺激供給装置24は、例えば、中間転写ベルト22の回転方向におけるインクジェット記録ヘッド14よりも下流側であって、転写装置16よりも上流側に配置されている。
【0185】
第2の刺激供給装置24は、刺激供給装置18のごとく、適用する硬化性溶液12Aに含まれる硬化性樹脂前駆体の種類に応じて選択される。具体的には、例えば、紫外線硬化性樹脂前駆体を適用する場合、第2の刺激供給装置24としては硬化性溶液12A(これにより形成された被硬化層12B)に紫外線を照射する紫外線照射装置を適用する。また、電子線硬化性樹脂前駆体を適用する場合、第2の刺激供給装置24として硬化性溶液12A(これにより形成された被硬化層12B)に電子線を照射する電子線照射装置を適用する。また、熱硬化性樹脂前駆体を適用する場合、第2の刺激供給装置24として硬化性溶液12A(これにより形成された被硬化層12B)に熱を付与する熱付与装置を適用する。
【0186】
第2の刺激供給装置24における紫外線照射条件、電子線照射条件、熱付与条件は、インクジェット記録ヘッド14によりインク滴14Aを付与された中間転写ドラム10上の被硬化層12Bが、半硬化した状態で転写装置16により記録媒体Pに転写される条件であれば、特に制限はなく、硬化性樹脂前駆体種、被硬化層の厚みなどに応じて選択し得る。
【0187】
本実施形態においては、第2の刺激供給装置24をインクジェット記録ヘッド14よりも下流側であって転写装置16よりも上流側に配置しているが、第2の刺激供給装置24をインクジェット記録ヘッド14よりも上流側に配置してもよい。第2の刺激供給装置24をインクジェット記録ヘッド14よりも上流側に配置すると、被硬化層12Bが半硬化され粘度が上昇した後に、インクジェット記録ヘッド14によりインク滴14Aが被硬化層12Bに吐出される。よって、被硬化層12B内におけるインク滴14Aの拡散がより抑制されるため、さらに高精細な画像が形成される。
【0188】
ここで、「半硬化した状態」とは、硬化性樹脂前駆体が、前記「硬化された状態」には達していないが、中間転写体に供給した時よりも硬化され完全な液体状態ではない状態をいう。「半硬化した状態」の確認方法の1つとしては、以下の方法が挙げられる。具体的には、被硬化層12Bに浸透性の用紙(例えば普通紙)を重ねた場合、荷重をかけない時は被硬化層12Bが用紙側に全く転写されず、200g荷重をかけたときに一部転写された場合を、「半硬化した状態」と判断する。
【0189】
以上説明した本実施形態に係る記録装置103では、インクジェット記録ヘッド14によりインク滴14Aを吐出し、中間転写ドラム10上に供給された被硬化層12Bに当該インク滴14Aを付与した後、第2の刺激供給装置24により、当該被硬化層12Bを半硬化させる。そして、転写装置16により当該被硬化層12Bを記録媒体Pに転写する。この転写の際、被硬化層12Bは、半硬化の状態、つまりある程度剛性を持った状態で記録媒体Pに転写される。
【0190】
これら以外は、第1実施形態に記載の構成であるため、説明を省略する。
【0191】
図4は、第4実施形態にかかる記録装置を示す構成図である。
【0192】
第4実施形態に係る記録装置104は、図4に示すように、記録媒体Pに画像を直接形成する形態(直接記録方式)である。
【0193】
記録装置104は、例えば、記録媒体P上に外部からの刺激(エネルギー)により硬化する硬化性樹脂前駆体を含有する硬化性溶液(画像記録用組成物)12Aを供給して硬化性溶液12Aにより形成された被硬化層12Bを形成する溶液供給装置12と、被硬化層12B上にインク滴14Aを吐出し画像Tを形成するインクジェット記録ヘッド14と、被硬化層12Bを硬化する刺激を供給する刺激供給装置18と、を含んで構成されている。
【0194】
また記録装置104は、上記記録媒体Pを搬送する搬送ベルト13を備えている。搬送ベルト13としては、例えば、第2実施形態における中間転写ベルト22に用いられた無端ベルトが用いられる。搬送ベルト13は、例えば、3つの支持ロール13Aにより内周面側から張力を掛けつつ回転可能に支持されて配設されている。搬送ベルト13は、回転移動することにより、収容容器(図示略)などから送られてきた記録媒体Pを矢印の方向に搬送する。
【0195】
記録装置104では、まず溶液供給装置12により、搬送ベルト13によって搬送されている記録媒体Pの表面上に、硬化性溶液12Aを供給して被硬化層12Bを形成する。次に、所定の画像情報に基づき、インクジェット記録ヘッド14によりインク滴14Aを吐出し、記録媒体P上に形成された被硬化層12Bにインク滴14Aを付与することにより画像Tを形成する。最後に刺激供給装置18によって被硬化層12Bを硬化させることにより、インク滴14Aによる画像Tが含まれる硬化性樹脂層(画像層)が記録媒体Pに形成される。
【0196】
これら以外は、第1実施形態に記載の構成が採用されるので、説明を省略する。
【0197】
以上説明した上記いずれの実施形態に係る記録装置では、硬化性溶液(画像記録用組成物)12Aを中間転写ドラム10、中間転写ベルト22、又は記録媒体Pに塗布して被硬化層12Bを形成する。そして、この被硬化層12Bにインク滴14Aを付与して画像Tを形成した後(第1実施形態乃至第3実施形態においては、さらに記録媒体Pへ転写した後)、画像Tが形成された被硬化層12Bを完全に硬化させる。この際、被硬化層12Bに含有される硬化性樹脂前駆体が硬化することにより「硬化性樹脂」となる。このため、記録媒体Pが非浸透媒体であるか浸透媒体であるかを問わず、多様な記録媒体Pに対して、画像形成がなされる。
【0198】
特に第1実施形態乃至第3実施形態に係る記録装置では、中間転写方式を採用しているため、画像Tが形成された中間転写体(中間転写ドラム10、中間転写ベルト22)上の被硬化層12Bが、記録媒体Pに転写される工程を経る。そのため、例えば被硬化層12Bの厚みをインク滴14Aが被硬化層12Bの最下層まで到達しない程度とした場合、記録媒体Pに転写された被硬化層12Bは、インク滴14Aが存在する領域(画像Tの領域)が露出せず、インク滴14Aが存在しない領域が硬化後に保護層として機能することにより、画像保存性が向上する。これに対し、第4実施形態に係る記録装置では、硬化性溶液12Aを直接記録媒体Pに供給する方式(直接記録方式)を採用しているため、簡易な構成であり、より高速かつ低コストで画像形成がなされる。
【実施例】
【0199】
以下、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例により特に制限されるものではない。尚、以下において「部」とは、特に断りのない限り質量基準である。
【0200】
参考例1
「硬化性液体(画像記録用組成物)」
・アミン変性ポリエステルアクリレートオリゴマー 35部
(第2の具体的方法に係るカチオン性を有する硬化性樹脂前駆体/
単位分子量辺りの官能基の含有量2個)
・N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド 65部
(興人社製/第2の具体的方法に係るカチオン性を有する硬化性樹脂前駆体/
単位分子量辺りの官能基の含有量1個)
・2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン 1部
(光重合開始剤)
上記組成について、ペイントシェーカーにて混合/攪拌を行い、硬化性液体とした。
【0201】
「Bkインク」
・カーボンブラック 5部
(コロンビアン・カーボン社製、商品名:Raven5750)
・アニオン性顔料分散剤 1部
(BASF社製、商品名:スチレン−アクリル酸ブチル−アクリル酸
ポリマーNa中和/第2の具体的方法に係るアニオン性の分散剤)
・ポリエチレングリコール200(和光純薬社製) 20部
・グリセリン 20部
・サーフィノール465(日信化学社製) 2.0部
・純水 52部
上記組成を混合し、さらにNaOHを加えてpH調整後、2μmフィルターでろ過し、Bkインクを得た。
【0202】
「Cyanインク」
・銅フタロシアニン顔料(ピグメントブルー15:3) 4部
・アニオン性顔料分散剤 0.5部
(スチレン−メタクリル酸−2−エチルヘキシル−アクリル酸
ポリマーNa中和/第2の具体的方法に係るアニオン性の分散剤)
・ジエチレングリコール 30部
・サーフィノール465(日信化学社製) 1.5部
・純水 60部
上記組成を混合し、さらにNaOHを加えてpH調整後、2μmフィルターでろ過し、Cyanインクを得た
【0203】
「Magentaインク」
・キナクリドン系マゼンタ顔料(ピグメントレッド15:3) 5部
・アニオン性顔料分散剤 1.0部
(スチレン−アクリル酸ポリマーNa中和/
第2の具体的方法に係るアニオン性の分散剤)
・プロピレングリコール 10部
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル 20部
・オキシエチレンオレイルエーテル 0.5部
・純水 63部
上記組成を混合し、さらにNaOHを加えてpH調整後、2μmフィルターでろ過し、Magentaインクを得た。
【0204】
「Yellowインク」
・アゾ系イエロー顔料(ピグメントイエロー74) 4部
・アニオン性顔料分散剤 1.5部
(スチレン−メタクリル酸メチル−メタクリル酸ポリマーNa中和/
第2の具体的方法に係るアニオン性の分散剤)
・テトラエチレングリコール 10部
・グリセリン 15部
・1,2−ヘキサンジオール 4部
・2−2−ブトキシエトキシエタノール 5部
・純水 60部
上記組成を混合し、さらにNaOHを加えてpH調整後、2μmフィルターでろ過し、Yellowインクを得た。
【0205】
前記硬化性液体をグラビアコーターにより、フッ素コートされた樹脂ベルト(中間転写ベルト)上に塗布し、膜厚10μmの被硬化層を形成した。次いで、上記4種のインクをそれぞれピエゾヘッド(解像度600dpi(dpi:1インチ当たりのドット数))にて前記被硬化層上に印字した。その後、UV領域の波長の光吸収性の小さい樹脂ベルトとアート紙(王子製紙社製、商品名:OK金藤)を密着させつつ、出力1.5kWのメタルハライドランプでUV照射することにより、被硬化層をアート紙上へ転写し同時に硬化定着を行った。
その結果、被硬化層へのインク吸収性が高く、また画像滲みも無く、耐久性に優れた画像が得られた。
【0206】
また、硬化性液体を光の遮蔽された暗所に保管し、その後、前述のように印字操作を行ったところ、保管前と変わらずに良好な結果が得られた。
【0207】
〔比較例1〕
参考例1の硬化性液体の代わりに、以下の組成の硬化性液体を用いた以外は参考例1に記載の方法により印字操作を行った。
「硬化性液体」
・ポリウレタンアクリレート 30部
(荒川化学社製、商品名:ビームセット/
色材を固定化する機能を有しない硬化性樹脂前駆体)
・1,6−ヘキサジオールジアクリレート 70部
(色材を固定化する機能を有しない硬化性樹脂前駆体)
・2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン 1部
(光重合開始剤)
上記組成について、ペイントシェーカーにて混合/攪拌を行い、硬化性液体とした。
【0208】
その結果、中間転写ベルト上に形成された被硬化層がインクをはじいてしまい、画像形成が出来なかった。
【0209】
〔比較例2〕
参考例1の硬化性液体の代わりに、以下の組成の硬化性液体を用いた以外は参考例1に記載の方法により印字操作を行った。
「硬化性液体」
・ポリエチレングリコール600ジアクリレート 50部
(色材を固定化する機能を有しない硬化性樹脂前駆体)
・エチレングリコールジメタクリレート 50部
(色材を固定化する機能を有しない硬化性樹脂前駆体)
・2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン 1部
(光重合開始剤)
上記組成について、ペイントシェーカーにて混合/攪拌を行い、硬化性液体とした。
【0210】
その結果、中間転写ベルト上に形成された被硬化層中に吐出したインク中の色材が、被硬化層中で流動し、滲みが大きく、歪みのある画像しか得られなかった。
【0211】
〔比較例3〕
参考例1の硬化性液体の代わりに、以下の組成の硬化性液体を用いた以外は参考例1に記載の方法により印字操作を行った。
「硬化性液体」
・ポリウレタンアクリレート 20部
(荒川化学社製、商品名:ビームセット/
色材を固定化する機能を有しない硬化性樹脂前駆体)
・ポリエチレングリコール600ジアクリレート 50部
(色材を固定化する機能を有しない硬化性樹脂前駆体)
・ポリアクリル酸部分ナトリウム塩 30部
(日本触媒社製、商品名:アクアリック/吸液粒子)
・ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー 1.5部
(分散剤)
・イルガキュア184(チバスペシャリティケミカルス社製/光重合開始剤) 2部
上記組成について、プライマリーミキサーを用いて混合/攪拌を行い、硬化性液体とした。
【0212】
その結果、上記硬化性液体を調製した直後は、画像滲みも無く、耐久性に優れた画像が得られた。しかし、硬化性液体を光の遮蔽された暗所に保管したところ、ポリアクリル酸部分ナトリウム塩の一部において沈降およびゲル化が見られた。その後、前述の方法により印字操作を行ったところ、中間転写ベルト上での被硬化層がムラのある状態で形成され、且つ吸液性が低下し、画像の乱れを生じた。
【0213】
参考例2
参考例1の硬化性液体の代わりに、以下の組成の硬化性液体を用いた以外は参考例1に記載の方法により印字操作を行った。
「硬化性液体」
・N,N−ジアルキルアミノアルキルアクリレート塩酸塩 30部
(興人社製、商品名:DMAEA−Q/第2の具体的方法に係るカチオン
性を有する硬化性樹脂前駆体/単位分子量辺りの官能基の含有量1個)
・ポリウレタンアクリレートオリゴマー 20部
(ダイセルサイテック社製、商品名:エベクリル/
色材を固定化する機能を有しない硬化性樹脂前駆体)
・アクリロイルモルホリン 50部
(興人社製、商品名:ACMO/
色材を固定化する機能を有しない硬化性樹脂前駆体)
・イルガキュア754(チバスペシャリティケミカルス社製/光重合開始剤) 1部
上記組成について、ペイントシェーカーにて混合/攪拌を行い、硬化性液体とした。
【0214】
その結果、参考例1のごとく、被硬化層へのインク吸収性が高く、また画像滲みも無く、耐久性に優れた画像が得られた。
また、硬化性液体を光の遮蔽された暗所に保管し、その後、前述のように印字操作を行ったところ、保管前と変わらない結果が得られた。
【0215】
参考例3
「硬化性液体」
・酸変性アクリレート(酸価150) 25部
(サートマー社製、商品名:SB/第3の具体的方法に係るアニオン
性基を有する硬化性樹脂前駆体/pH3.5)
・β−カルボキシエチルアクリレート 30部
(ダイセルサイテック社製/
第3の具体的方法に係るアニオン性基を有する硬化性樹脂前駆体)
・ウレタンオリゴマー 30部
(ダイセルサイテック社製、商品名:エベクリル/
色材を固定化する機能を有しない硬化性樹脂前駆体)
・ポリエチレングリコール400ジアクリレート 15部
(色材を固定化する機能を有しない硬化性樹脂前駆体)
・2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン 1部
(光重合開始剤)
上記組成について、ペイントシェーカーにて混合/攪拌を行い、硬化性液体とした
【0216】
「Bkインク」
・カルボン酸基を有する自己分散可能なカーボンブラック 5部
(キャボット社製、商品名:CAB−O−JET300black/
第3の具体的方法に係る色材)
・アクリル酸エステル−アクリル酸(部分Na塩)コポリマー 2部
・トリエチレングリコール 25部
・プロピレングリコール 15部
・N−メチル−2−ピロリドン 15部
・オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー 1.0部
(BASF社製、商品名:プルロニック)
・純水 40部
上記組成を混合し、さらにNaOHを加えてpH調整後、2μmフィルターでろ過し、Bkインクを得た。このインクのpHを測定したところ、8.0であった。
【0217】
「Cyanインク」
・カルボン酸基を有する自己分散可能な銅フタロシアニン顔料 3.5部
(キャボット社製、商品名:CAB−O−JET250C/
第3の具体的方法に係る色材)
・アクリル酸エステル−アクリル酸(部分Na塩)コポリマー 1部
・ジエチレングリコール 15部
・テトラエチレングリコール 20部
・1,2−ペンタンジオール 10部
・純水 50部
上記組成を混合し、さらにNaOHを加えてpH調整後、2μmフィルターでろ過し、Cyanインクを得た。このインクのpHを測定したところ、8.0であった。
【0218】
「Magentaインク」
・カルボン酸基を有する自己分散可能なキナクリドン系マゼンタ顔料 6部
(キャボット社製、商品名:CAB−O−JET260M/
第3の具体的方法に係る色材)
・アクリル酸エステル−アクリル酸(部分Na塩)コポリマー 1.5部
・ジプロピレングリコール 7部
・グリセリン 15部
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル 10部
・オルフィンE1010(日信化学社製) 0.5部
・純水 62部
上記組成を混合し、さらにNaOHを加えてpH調整後、2μmフィルターでろ過し、Magentaインクを得た。このインクのpHを測定したところ、7.8であった。
【0219】
「Yellowインク」
・カルボン酸基を有する自己分散可能なアゾ系イエロー顔料 5部
(キャボット社製、商品名:CAB−O−JET270Y/
第3の具体的方法に係る色材)
・アクリル酸エステル−アクリル酸(部分Na塩)コポリマー 2.5部
・ポリエチレングリコール400 10部
(和光純薬社製)
・2−ピロリドン 5部
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル 7部
・オキシエチレンステアリルエーテル 2部
・ポリエーテル変性ジメチルシリコーンポリマー 2部
(信越化学社製)
・純水 66部
上記組成を混合し、さらにNaOHを加えてpH調整後、2μmフィルターでろ過し、Yellowインクを得た。このインクのpHを測定したところ、7.8であった。
【0220】
前記硬化性液体をロールコーターにより、フッ素コートされた樹脂ベルト(中間転写ベルト)上に塗布し、膜厚15μmの被硬化層を形成した。次いで、上記4種のインクをそれぞれピエゾヘッド(解像度600dpi(dpi:1インチ当たりのドット数))にて被硬化層上に印字した。その後、UV領域の波長の光吸収性の小さい樹脂ベルトとアート紙(王子製紙社製、商品名:OK金藤)を密着させつつ、出力1.5kWのメタルハライドランプでUV照射することにより、被硬化層をアート紙上へ転写し同時に硬化定着を行った。
その結果、被硬化層へのインク吸収性が高く、また画像滲みも無く、耐久性に優れた画像が得られた。
【0221】
また、硬化性液体を光の遮蔽された暗所に保管し、その後、前述のように印字操作を行ったところ、保管前と変わらずに良好な結果が得られた。
【0222】
参考例4
参考例3の硬化性液体の代わりに、以下の組成の硬化性液体を用いた以外は参考例3に記載の方法により印字操作を行った。
「硬化性液体」
・ビニルピリジン 35部
(和光純薬社製/第2の具体的方法に係るカチオン性を有する
硬化性樹脂前駆体/単位分子量辺りの官能基の含有量1個)
・ポリウレタンアクリレートオリゴマー 20部
(ダイセルサイテック社製、商品名:エベクリル/
色材を固定化する機能を有しない硬化性樹脂前駆体)
・ヒドロキシエチルアクリルアミド 43部
(第2の具体的方法に係るカチオン性を有する硬化性樹脂前駆体/
単位分子量辺りの官能基の含有量1個)
・イルガキュア127(チバスペシャリティケミカルス社製/光重合開始剤)1.5部
上記組成について、ペイントシェーカーにて混合/攪拌を行い、硬化性液体とした。
【0223】
その結果、参考例3のごとく、被硬化層へのインク吸収性が高く、また画像滲みも無く、耐久性に優れた画像が得られた。
また、硬化性液体を光の遮蔽された暗所に保管し、その後、前述のように印字操作を行ったところ、保管前と変わらない結果が得られた。
【0224】
実施例1
「硬化性液体」
・亜鉛変性アクリレート 10部
(サートマー社製/第1の具体的方法に係る電解質構造を有する
硬化性樹脂前駆体/単位分子量辺りの電解質構造の含有量2)
・ウレタンオリゴマー 45部
(荒川化学社製、商品名:ビームセット/
色材を固定化する機能を有しない硬化性樹脂前駆体)
・ジメチルアクリルアミド 45部
(第2の具体的方法に係るカチオン性を有する硬化性樹脂前駆体/
単位分子量辺りの官能基の含有量1個)
・ダロキュア1173(チバスペシャリティケミカルス社製/光重合開始剤) 2部
上記組成について、ペーストミキサーにて混合/攪拌を行い、硬化性液体とした。
【0225】
「Bkインク」
・カルボン酸基を有する自己分散可能なカーボンブラック 5部
(キャボット社製、商品名:CAB−O−JET300)
・1,3−ブタンジオール 10部
・ネオペンチルグリコール 10部
・トリエタノールプロパン 20部
・サーフィノール485(エアプロダクツ社製) 1.0部
・サーフィノール440(エアプロダクツ社製) 1.0部
・純水 50部
上記組成を混合し、さらにNaOHを加えてpH調整後、2μmフィルターでろ過し、Bkインクを得た。
【0226】
「Cyanインク」
・カルボン酸基を有する自己分散可能な銅フタロシアニン顔料 4部
(キャボット社製、商品名:CAB−O−JET250C)
・ポリエチレングリコール300 15部
(和光純薬社製)
・ジエチレングリコール 10部
・オキシエチレンラウリルエーテル 1部
・サーフィノール465(エアプロダクツ社製) 0.5部
・純水 70部
上記組成を混合し、さらにNaOHを加えてpH調整後、2μmフィルターでろ過し、Cyanインクを得た。
【0227】
「Magentaインク」
・カルボン酸基を有する自己分散可能なキナクリドン系マゼンタ顔料 5部
(キャボット社製、商品名:CAB−O−JET260M)
・プロピレングリコール 5部
・トリエチレングリコール 10部
・1.2−ヘキサンジオール 10部
・オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル 0.5部
(ダイキン社製、商品名:ユニダイン)
・純水 70部
上記組成を混合し、さらにNaOHを加えてpH調整後、2μmフィルターでろ過し、Magentaインクを得た。
【0228】
「Yellowインク」
・カルボン酸基を有する自己分散可能なアゾ系イエロー顔料 4部
(キャボット社製、商品名:CAB−O−JET270Y)
・グリセリン 10部
・ジグリセリンオキシエチレン付加物 8部
(阪本薬品社製)
・オキシエチレン−オキシプロピレンブロックコポリマー 1.5部
(三洋化成工業社製、商品名:ニューポール)
・純水 70部
上記組成を混合し、さらにNaOHを加えてpH調整後、2μmフィルターでろ過し、Yellowインクを得た。
【0229】
前記硬化性液体をダイコーターにより、フッ素コートされた樹脂ベルト(中間転写ベルト)上に塗布し、膜厚12μmの被硬化層を形成した。次いで、上記4種のインクをそれぞれピエゾヘッド(解像度600dpi(dpi:1インチ当たりのドット数))にて被硬化層上に印字した。その後、樹脂ベルトとアート紙(王子製紙社製、商品名:OK金藤)とを密着させて被硬化層をアート紙上へ転写し、更に出力1.5kWのメタルハライドランプでUV照射することにより、アート紙上で硬化定着させた。
その結果、被硬化層へのインク吸収性が高く、また画像滲みも無く、耐久性に優れた画像が得られた。
【0230】
また、硬化性液体を光の遮蔽された暗所に保管し、その後、前述のように印字操作を行ったところ、保管前と変わらずに良好な結果が得られた。
【0231】
参考例5
「硬化性液体」
参考例1に記載の組成のものを用い、参考例1に記載の方法により方法で、硬化性液体を得た。
【0232】
「Bkインク」
・C.I.ダイレクトブラック154(アニオン性) 4部
・ジエチレングリコール 15部
・グリセリン 15部
・サーフィノール465(エアプロダクツ社製) 2.0部
・純水 65部
上記組成を混合し、さらにNaOHを加えてpH調整後、0.45μmフィルターでろ過し、Bkインクを得た。
【0233】
「Cyanインク」
・C.I.ダイレクトブルー199(アニオン性) 3.5部
・ジエチレングリコール 15部
・グリセリン 15部
・サーフィノール465(エアプロダクツ社製) 2.0部
・純水 65部
上記組成を混合し、さらにNaOHを加えてpH調整後、0.45μmフィルターでろ過し、Cyanインクを得た。
【0234】
「Magentaインク」
・C.I.ダイレクトレッド70(アニオン性) 3部
・ジエチレングリコール 15部
・グリセリン 15部
・サーフィノール465(エアプロダクツ社製) 2.0部
・純水 65部
上記組成を混合し、さらにNaOHを加えてpH調整後、0.45μmフィルターでろ過し、Magentaインクを得た。
【0235】
「Yellowインク」
・C.I.ダイレクトイエロー132(アニオン性) 3部
・ジエチレングリコール 15部
・グリセリン 15部
・サーフィノール465(エアプロダクツ社製) 2.0部
・純水 65部
上記組成を混合し、さらにNaOHを加えてpH調整後、0.45μmフィルターでろ過し、Yellowインクを得た。
【0236】
前記硬化性液体をグラビアコーターにより、フッ素コートされた樹脂ベルト(中間転写ベルト)上に塗布し、膜厚10μmの被硬化層を形成した。次いで、上記4種のインクをそれぞれピエゾヘッド(解像度600dpi(dpi:1インチ当たりのドット数))にて前記被硬化層上に印字した。その後、UV領域の波長の光吸収性の小さい樹脂ベルトとアート紙(王子製紙社製、商品名:OK金藤)を密着させつつ、出力1.5kWのメタルハライドランプでUV照射することにより、被硬化層をアート紙上へ転写し同時に硬化定着を行った。
その結果、被硬化層へのインク吸収性が高く、またごくわずかににじみが検出されたものの画像上問題になるレベルでは無かった。参考例1に比べて、若干耐光性の劣るところはあったものの、耐久性に優れた画像が得られた。
【0237】
また、硬化性液体を光の遮蔽された暗所に保管し、その後、前述のように印字操作を行ったところ、保管前と変わらずに良好な結果が得られた。
【0238】
参考例6
「硬化性液体」
・アミン変性ポリエステルアクリレートオリゴマー 55部
(サートマー社製/第2の具体的方法に係るカチオン性を有する
硬化性樹脂前駆体/単位分子量辺りの官能基の含有量1個)
・グリセリンプロポキシトリアクリレート 40部
(色材を固定化する機能を有しない硬化性樹脂前駆体)
・イルガキュア651(チバスペシャリティケミカルス社製/光重合開始剤)1.5部
上記組成について、ペイントシェーカーにて混合/攪拌を行い、硬化性液体とした。
【0239】
Bk、Cyan、Magenta、Yellowの各インクは、参考例1に記載の組成のインクを使用した。
【0240】
前記硬化性液体をグラビアコーターにより、フッ素コートされた樹脂ベルト(中間転写ベルト)上に塗布し、膜厚12μmの被硬化層を形成した。次いで、上記4種のインクをそれぞれピエゾヘッド(解像度600dpi(dpi:1インチ当たりのドット数))にて前記被硬化層上に印字した。その後、UV領域の波長の光吸収性の小さい樹脂ベルトとアート紙(王子製紙社製、商品名:OK金藤+)を密着させつつ、出力1.5kWのメタルハライドランプでUV照射することにより、被硬化層をアート紙上へ転写し同時に硬化定着を行った。
その結果、インクの被硬化層への浸透が遅く、また画質上問題となるレベルではないが、画像滲みが検出された。尚、画像の耐久性は優れていた。
【0241】
また、硬化性液体を光の遮蔽された暗所に保管し、その後、前述のように印字操作を行ったところ、保管前と変わらずに良好な結果が得られた。
【0242】
参考例7
「硬化性液体」
・N,N−ジメチルアクリルアミド 15部
(色材を固定化する機能を有しない硬化性樹脂前駆体)
・N,N,−ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロリド4級塩 5部
(興人社製/第2の具体的方法に係るカチオン性を有する
硬化性樹脂前駆体/単位分子量辺りの官能基の含有量8)
・ポリエチレングリコール600ジアクリレート 5部
(和光純薬社製/色材を固定化する機能を有しない硬化性樹脂前駆体)
・(4−ベンゾイルベンジル)塩化トリメチルアンモニウム 0.5部
(光重合開始剤)
・純水 75部
上記組成について、混合/攪拌を行い、硬化性液体とした。
【0243】
Bk、Cyan、Magenta、Yellowの各インクは、実施例1に記載の組成のインクを使用した。
【0244】
前記硬化性液体をグラビアコーターにより、フッ素コートされた樹脂ベルト(中間転写ベルト)上に塗布し、膜厚20μmの被硬化層を形成した後、中間転写ベルトを加熱して硬化性液体中の水を揮発させた。次いで、上記4種のインクをそれぞれピエゾヘッド(解像度600dpi(dpi:1インチ当たりのドット数))にて前記被硬化層上に印字した。その後、UV領域の波長の光吸収性の小さい樹脂ベルトとアート紙(三菱社製、商品名:特菱アート)を密着させつつ、出力1.5kWのメタルハライドランプでUV照射することにより、被硬化層をアート紙上へ転写し同時に硬化定着を行った。
その結果、インク吸収性が高く、また画像滲みも無く、耐久性に優れた画像が得られた。
【0245】
また、硬化性液体を光の遮蔽された暗所に保管し、その後、前述のように印字操作を行ったところ、保管前と変わらずに良好な結果が得られた。
【0246】
参考例8
硬化性液体およびBk、Cyan、Magenta、Yellowの各インクは、参考例7に記載の組成のものを使用し、中間転写ベルトを加熱しない以外は、参考例7に記載の方法により操作を行った。
【0247】
その結果、インク吸収性が高く、画像滲みも無かったが、硬化するまでに時間がかかり、硬化後の画像の耐久性も若干劣っていた。
【0248】
参考例9
「硬化性液体」
・酸変性アクリレート(酸価150) 25部
(サートマー社製/第3の具体的方法に係るアニオン性基を有する
硬化性樹脂前駆体/pH3.2)
・ポリエステルオリゴマー 20部
(ダイセルサイテック社製/
色材を固定化する機能を有しない硬化性樹脂前駆体)
・ウレタンオリゴマー 30部
(荒川化学社製、商品名:ビームセット/
色材を固定化する機能を有しない硬化性樹脂前駆体)
・ポリエチレングリコール400ジアクリレート 25部
(新中村化学工業社製/
色材を固定化する機能を有しない硬化性樹脂前駆体)
・2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン 1部
(光重合開始剤)
上記組成について、ペイントシェーカーにて混合/攪拌を行い、硬化性液体とした。
【0249】
「Bkインク」
・カルボン酸基を有する自己分散可能なカーボンブラック 5部
(キャボット社製、商品名:CAB−O−JET300/
第3の具体的方法に係る色材)
・ジエチレングリコール 10部
・N−メチル−2−ピロリドン 5部
・オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー 1.0部
(三洋化成工業社製、商品名:ニューポール)
・純水 80部
上記組成を混合し、さらにNaOHを加えてpH調整後、2μmフィルターでろ過し、Bkインクを得た。このインクのpHを測定したところ、8.1であった。
【0250】
「Cyanインク」
・カルボン酸基を有する自己分散可能な銅フタロシアニン顔料 4.5部
(キャボット社製、商品名:CAB−O−JET250C/
第3の具体的方法に係る色材)
・トリエチレングリコール 10部
・1,2−ペンタンジオール 5部
・純水 80部
上記組成を混合し、さらにNaOHを加えてpH調整後、2μmフィルターでろ過し、Cyanインクを得た。このインクのpHを測定したところ、7.9であった。
【0251】
「Magentaインク」
・カルボン酸基を有する自己分散可能なキナクリドン系マゼンタ顔料 6部
(キャボット社製、商品名:CAB−O−JET260M/
第3の具体的方法に係る色材)
・グリセリン 10部
・リエチレングリコールモノブチルエーテル 5部
・オルフィンE1010(日信化学社製) 0.5部
・純水 80部
上記組成を混合し、さらにNaOHを加えてpH調整後、2μmフィルターでろ過し、Magentaインクを得た。このインクのpHを測定したところ、7.7であった。
【0252】
「Yellowインク」
・カルボン酸基を有する自己分散可能なアゾ系イエロー顔料 4部
(キャボット社製、商品名:CAB−O−JET270Y/
第3の具体的方法に係る色材)
・2−ピロリドン 5部
・グリセリン 5部
・オキシエチレンオキシエチレンブロックコポリマー 2部
(BASF社製、商品名:プルロニック)
・純水 85部
上記組成を混合し、さらにNaOHを加えてpH調整後、2μmフィルターでろ過し、Yellowインクを得た。このインクのpHを測定したところ、7.1であった。
【0253】
前記硬化性液体をロールコーターにより、フッ素コートされた樹脂ベルト(中間転写ベルト)上に塗布し、膜厚12μmの被硬化層を形成した。次いで、上記4種のインクをそれぞれピエゾヘッド(解像度600dpi(dpi:1インチ当たりのドット数))にて被硬化層上に印字した。その後、中間転写ベルトを加熱し、インク中のベヒクルを一部揮発させた。次いで、樹脂ベルトとアート紙(三菱製紙社製、商品名:特菱アート)とを密着させて被硬化層をアート紙上へ転写し、更に出力1.5kWのメタルハライドランプでUV照射することにより、アート紙上で硬化定着させた。
その結果、被硬化層へのインク吸収性が高く、また画像滲みも無く、耐久性に優れた画像が得られた。
【0254】
また、硬化性液体を光の遮蔽された暗所に保管し、その後、前述のように印字操作を行ったところ、保管前と変わらずに良好な結果が得られた。
【0255】
〔評価〕
・インク吸収性
以下の方法により、インク吸収性を評価した。
2×2cmのソリッドパッチをインクジェットヘッドから印字し、被硬化層にインクがしみこむまでの時間を測定した。
○:1秒未満
△:1秒以上5秒以下
×:5秒を超える
【0256】
・画像滲み
以下の方法により、画像滲みを評価した。
2×2cmのソリッドパッチを印字し、硬化後の画像について下記の官能評価を行った。
○:ソリッドの輪郭が乱れなく直線を示した。
△:若干の輪郭に乱れがみられるが、画質上問題の無いレベルであった。
×:輪郭が大きく乱れ、波を打っていた。
【0257】
・硬化性液体の保存安定性
以下の方法により、硬化性液体の保存安定性を評価した。
硬化性液体を調製後、光の遮蔽された暗所に6ヶ月間放置し、放置後、上記インク吸収性と画像にじみの評価試験を実施し、硬化性液体調製直後と比較評価した。
○:調製直後と6ヵ月後の判別がつかない結果であった。
△:6ヵ月後の方が硬化性液体調製直後に比べて、悪化傾向が見られたが、問題の無いレベルであった。
×:6ヵ月後の方が硬化性液体調製直後に比べて、著しく悪化しており、問題のあるレベルであった。
【0258】
【表1】



【符号の説明】
【0259】
10 中間転写ドラム(中間転写体)
12 溶液供給装置
12A 硬化性溶液(画像記録用組成物)
12B 被硬化層
12C 筐体
12D 供給ローラ
12E ブレード
13 搬送ベルト
13A 支持ロール
14 インクジェット記録ヘッド
16 転写装置
16A 加圧ロール
16B 加圧ロール
18 刺激供給装置
20 クリーニング装置
22 中間転写ベルト(中間転写体)
22A 支持ロール
24 第2の刺激供給装置
101 記録装置
102 記録装置
103 記録装置
104 記録装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを受容し、該インク中の色材を固定化する機能を有すると共に、外部からの刺激により硬化し、電解質構造を有する硬化性樹脂前駆体を含有する画像記録用組成物。
【請求項2】
前記硬化性樹脂前駆体が水溶性である請求項1に記載の画像記録用組成物。
【請求項3】
インクを受容し、該インク中の色材を固定化する機能を有すると共に、外部からの刺激により硬化し、電解質構造を有する硬化性樹脂前駆体を含有する画像記録用組成物と、インクと、を有する画像記録用インクセット。
【請求項4】
中間転写体と、
インクを受容し、該インク中の色材を固定化する機能を有すると共に、外部からの刺激により硬化し、電解質構造を有する硬化性樹脂前駆体を含有する画像記録用組成物を前記中間転写体上に供給する供給手段と、
前記中間転写体上に供給された前記画像記録用組成物により形成された被硬化層にインクを吐出する吐出手段と、
前記インクが吐出された前記被硬化層を前記中間転写体から記録媒体に転写する転写手段と、
前記被硬化層を硬化させる刺激を供給する刺激供給手段と、
を有する記録装置。
【請求項5】
前記中間転写体を加熱する手段を有する請求項に記載の記録装置。
【請求項6】
インクを受容し、該インク中の色材を固定化する機能を有すると共に、外部からの刺激により硬化し、電解質構造を有する硬化性樹脂前駆体を含有する画像記録用組成物を記録媒体上に供給する供給手段と、
前記記録媒体上に供給された前記画像記録用組成物により形成された被硬化層にインクを吐出する吐出手段と、
前記被硬化層を硬化させる刺激を供給する刺激供給手段と、
を有する記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−21202(P2011−21202A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225148(P2010−225148)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【分割の表示】特願2008−248981(P2008−248981)の分割
【原出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】