説明

画像記録用組成物、画像記録装置、および画像記録方法

【課題】画像の変形を抑制し得る画像記録用組成物の提供。
【解決手段】吸液粒子と、刺激に反応して硬化する硬化性材料と、温度上昇に伴い粘度が増加する感熱性増粘材料と、を含有する画像記録用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録用組成物、画像記録装置、および画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット法による画像記録方法として、インクジェット方式で中間転写体上に画像を形成し、該画像を記録媒体上に転写して最終画像を得る画像記録方法が試されている。
【0003】
例えば、任意選択の着色剤と、放射硬化性モノマーまたはプレポリマー、光開始剤、反応性ワックスおよびゲル化剤を含む相変化インクビヒクルと、を含む紫外線硬化性相変化インク組成物を、中間転写部材の上に堆積させ、イメージ区域の中に触覚イメージ区域、または触覚イメージ区域と通常イメージとの組み合わせを形成させる工程と、前記触覚イメージ区域またはその一部の中の複数の位置に、前記インクの複数の層を堆積させることによって、前記触覚イメージを形成させる工程と、前記堆積されたインクを前記中間転写部材から可撓性の包装用基材、樹脂ラベル基材、ポップ基材へ転写する工程と、前記インクを硬化させる工程と、を含む印刷方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、印字ヘッドから吐出されるインクに電気粘性効果を有する紫外線硬化型インクを用いた例が示され、中間転写ドラム上に着弾したインク滴には電極対から発生される電界がによって電気粘性効果を発現して粘度が高くなる方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
更に、液滴を画像信号に応じて中間転写体に付与して該中間転写体上に可視画像を形成し、次いで、該可視画像を被記録媒体上に転写する記録方法であって、前記中間転写体の表面に予め前記液滴により溶解又は膨潤可能でかつ該液滴の粘度を上昇させることができかつ前記中間転写体から剥離可能なインク吸収性粉末の層を形成し、次いで、前記粉末の上に前記液滴を付与して前記中間転写体上に可視画像を形成し、次いで、該中間転写体上に形成された前記可視画像を記録紙に転写することを特徴とする記録方法において、中間転写媒体としてインクに対し吸水性を有しかつ増粘性、ゲル化を示す部材(中間転写部材)と紫外線吸収剤を含有したことを特徴とする記録方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−059424号公報
【特許文献2】特開2006−102975号公報
【特許文献3】特開2000−141864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、画像の変形を抑制し得る画像記録用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
吸液粒子と、
刺激に反応して硬化する硬化性材料と、
温度上昇に伴い粘度が増加する感熱性増粘材料と、
を含有する画像記録用組成物である。
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記感熱性増粘材料が分子内に反応性の基を有する請求項1に記載の画像記録用組成物である。
【0010】
請求項3に係る発明は、
前記硬化性材料として硬化性プレポリマーを含有する請求項1または請求項2に記載の画像記録用組成物である。
【0011】
請求項4に係る発明は、
中間転写体と、
請求項1に記載の画像記録用組成物を前記中間転写体上へ供給し被硬化層を形成する供給装置と、
前記中間転写体上に供給された前記被硬化層に、水性溶媒を含む液滴を吐出する吐出装置と、
前記液滴の吐出された前記被硬化層を前記中間転写体から記録媒体へ転写する転写装置と、
前記吐出装置により前記被硬化層に前記液滴が吐出された後、前記転写装置により前記被硬化層が前記記録媒体に転写される以前において、前記被硬化層の温度を上昇させる温度上昇装置と、
前記被硬化層へ刺激を付与する刺激付与装置と、
を備えた画像記録装置である。
【0012】
請求項5に係る発明は、
前記温度上昇装置が、前記中間転写体の少なくとも一部を30℃以上100℃以下の温度に加熱することで、該中間転写体上の前記被硬化層の温度を上昇させる請求項4に記載の画像記録装置である。
【0013】
請求項6に係る発明は、
前記温度上昇装置が、前記中間転写体の前記被硬化層が形成される側の表面とは反対の表面側から該中間転写体を加熱する請求項4または請求項5に記載の画像記録装置である。
【0014】
請求項7に係る発明は、
前記画像記録用組成物の温度上昇前の粘度が3000mPa・s以下であり、温度上昇に伴って粘度が増加した後の粘度が1500mPa・s以上50000mPa・s以下であって且つ前記温度上昇前の粘度よりも高い粘度である請求項4〜請求項6の何れか1項に記載の画像記録装置である。
【0015】
請求項8に係る発明は、
請求項1に記載の画像記録用組成物を中間転写体上へ供給し被硬化層を形成する供給工程と、
前記中間転写体上に供給された前記被硬化層に、水性溶媒を含む液滴を吐出する吐出工程と、
前記液滴の吐出された前記被硬化層を前記中間転写体から記録媒体へ転写する転写工程と、
前記吐出工程で前記被硬化層に前記液滴が吐出された後、前記転写工程で前記被硬化層が前記記録媒体に転写される以前において、前記被硬化層の温度を上昇させる温度上昇工程と、
前記被硬化層へ刺激を付与する刺激付与工程と、
を備えた画像記録方法である。
【0016】
請求項9に係る発明は、
前記温度上昇工程は、前記中間転写体の少なくとも一部を30℃以上100℃以下の温度に加熱することで、該中間転写体上の前記被硬化層の温度を上昇させる請求項8に記載の画像記録方法である。
【0017】
請求項10に係る発明は、
前記温度上昇工程は、前記中間転写体の前記被硬化層が形成される側の表面とは反対の表面側から該中間転写体を加熱する請求項8または請求項9に記載の画像記録方法である。
【0018】
請求項11に係る発明は、
前記画像記録用組成物の温度上昇前の粘度が3000mPa・s以下であり、温度上昇に伴って粘度が増加した後の粘度が1500mPa・s以上50000mPa・s以下であって且つ前記温度上昇前の粘度よりも高い粘度である請求項8〜請求項10の何れか1項に記載の画像記録方法である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によれば、温度上昇に伴い粘度が増加する感熱性増粘材料を含有しない場合に比べて、画像の変形を抑制し得る画像記録用組成物が提供される。
【0020】
請求項2に係る発明によれば、感熱性増粘材料が分子内に反応性の基を有しない場合に比べて、記録媒体上に固定された後の画像の潜像維持性に優れる画像記録用組成物が提供される。
【0021】
請求項3に係る発明によれば、硬化性プレポリマーを含有しない場合に比べて、画像の変形を抑制し得る画像記録用組成物が提供される。
【0022】
請求項4に係る発明によれば、温度上昇に伴い粘度が増加する感熱性増粘材料を含有した画像記録用組成物を用いない場合に比べて、変形を抑制した画像を形成し得る画像記録装置が提供される。
【0023】
請求項5に係る発明によれば、温度上昇装置が中間転写体の少なくとも一部を30℃以上100℃以下の温度に加熱することで該中間転写体上の被硬化層の温度を上昇させる装置でない場合に比べて、変形を抑制した画像を形成し得る画像記録装置が提供される。
【0024】
請求項6に係る発明によれば、温度上昇装置が中間転写体の被硬化層が形成される表面側から加熱する装置である場合に比べて、変形を抑制した画像を形成し得る画像記録装置が提供される。
【0025】
請求項7に係る発明によれば、画像記録用組成物の温度上昇前の粘度が3000mPa・s以下であり、これに対し温度上昇に伴って粘度が増加した後の粘度が1500mPa・s以上50000mPa・s以下であって且つ温度上昇前の粘度よりも高い粘度でない場合に比べて、変形を抑制した画像を形成し得る画像記録装置が提供される。
【0026】
請求項8に係る発明によれば、温度上昇に伴い粘度が増加する感熱性増粘材料を含有した画像記録用組成物を用いない場合に比べて、変形を抑制した画像を形成し得る画像記録方法が提供される。
【0027】
請求項9に係る発明によれば、温度上昇工程が中間転写体の少なくとも一部を30℃以上100℃以下の温度に加熱することで該中間転写体上の被硬化層の温度を上昇させる工程でない場合に比べて、変形を抑制した画像を形成し得る画像記録方法が提供される。
【0028】
請求項10に係る発明によれば、温度上昇工程が中間転写体の被硬化層が形成される表面側から加熱する工程である場合に比べて、変形を抑制した画像を形成し得る画像記録方法が提供される。
【0029】
請求項11に係る発明によれば、画像記録用組成物の温度上昇前の粘度が3000mPa・s以下であり、これに対し温度上昇に伴って粘度が増加した後の粘度が1500mPa・s以上50000mPa・s以下であって且つ温度上昇前の粘度よりも高い粘度でない場合に比べて、変形を抑制した画像を形成し得る画像記録方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施の形態に係る記録装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の画像記録用組成物、画像記録装置、および画像記録方法の実施形態について詳細に説明する。
【0032】
<画像記録用組成物>
本実施の形態に係る画像記録用組成物は、吸液粒子と、刺激に反応して硬化する硬化性材料と、温度上昇に伴い粘度が増加する感熱性増粘材料と、を含有する。
【0033】
画像記録用組成物は、予め中間転写体上に供給して被硬化層を形成した状態で該被硬化層にインク等の液滴が吐出されて画像が形成され、画像形成後の被硬化層が中間転写体から記録媒体へ転写され且つ被硬化層に刺激が付与されて硬化されることで、記録媒体上に画像が固定される。
但し、被硬化層に液滴が吐出されると、被硬化層中の吸液粒子が該液滴を吸液することによる膨潤や、吸液粒子での吸液によって粘度変化が生じ、これに起因して画像に変形が生じることがあった。
また、被硬化層に液滴が付与された箇所(画像部)と液滴が付与されていない箇所(非画像部)との粘度差によって、画像部で隆起が生じ、その結果記録媒体に転写された後の画像においても表面に凹凸、画像劣化、印字部と非印字部との膜厚変化が発生することがあった。
【0034】
これに対し、本実施形態に係る画像記録用組成物は、温度上昇に伴い粘度が増加する感熱性増粘材料が含有される。そのため、該画像記録用組成物が中間転写体上で被硬化層として形成され且つ液滴が吐出された後に、温度上昇を生じさせて画像記録用組成物の粘度を増加させることで非画像部の増粘が生じ、非画像部の流動性、吸液粒子の2次凝集性が抑制される。その結果、画像部を形成する吸液粒子の膨潤、凝集、膜厚変化による変形が抑えられ、また画像部を形成する吸液粒子の粘度変化による変形も抑えられるものと推察される。
また、画像部と非画像部との粘度差も抑制され、画像部での隆起が抑えられ、その結果記録媒体に転写された後の画像における滲み、吸液粒子凝集による表面の凹凸も抑制されるものと考えられる。
【0035】
尚、従来においては、前記インク等の液滴の中に増粘材料を添加する態様が試されていたが、この態様では増粘させようとする箇所は画像部であるのに対し、本実施形態は非画像部を増粘させることで前述の画像変形、へこみ、偏肉や、画像部の隆起が抑制されると推察されるものであり、その作用は異なる。
【0036】
ここで、上記画像変形や前記画像部の隆起は、被硬化層に液滴が吐出された後から該被硬化層が刺激の付与によって硬化される前までの期間においてより顕著に発生しているものと考えられる。よって、本実施形態に係る画像記録用組成物によって形成された被硬化層における温度上昇は、該被硬化層に液滴が吐出された後、該被硬化層が記録媒体に転写される以前において行うことがより好ましい。
【0037】
・被硬化層の硬化後の面内変動
尚、本実施形態に係る画像記録用組成物によって中間転写体上に形成される被硬化層の塗布膜厚は1μm以上100μm以下が好ましく、更には5μm以上50μm以下がより好ましい。また、本実施形態に係る画像記録用組成物を用いることで前述の通り画像部での隆起が抑制され、硬化後の膜厚は5μm以上50μm以下が好ましく、且つ硬化後の被硬化膜の面内変動は10%以内であることが好ましい。
【0038】
ここで、前記硬化後の被硬化層の膜厚は、触針式サーフコム(東京精密製590A)表面粗さ計による4mmトラバースで非画像部と画像部との段差膜厚より求められる。
また、前記硬化後の被硬化層の面内変動は、上記表面粗さ計を用いて画像部と非画像部を計測し、その表面粗さ(10点平均粗さRz(μm))を求めることで面内変動(%)が算出される。
【0039】
次いで、本実施形態に係る画像記録用組成物を構成する各成分について詳細に説明する。
【0040】
(感熱性増粘材料)
感熱性増粘材料は温度上昇に伴い粘度が増加する材料であれば、特に限定されることなく用いられる。
感熱性増粘材料の例としては、アルキルオキシド付加物の界面活性剤(ポリエチレングリコールジアクリレート架橋重合体等)、ポリアクリル酸塩架橋体(ポリアクリルニトリルケン化物等)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド変性ビニルポリマー、ポリビニルアルコール(架橋重合体、アクリル−酢酸ビニルケン化物等)、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース架橋重合体、アクリロニトリル、スチレンスルホン酸グラフト重合体等)、多糖類(多糖高分子化合物等)、デンプン−アクリル酸、アクリロニトリル、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸グラフト重合体等が挙げられる。
【0041】
また、会合性の感熱性増粘材料には不連続な水不飽和基、疎水基を含む水溶性ポリマー類で分子間会合でき、ラテックスのごとき分散粒子表面と会合、吸着することによりこれらの相互作用で増粘する。会合性感熱性増粘材料にはセルロース類やポリアクリレートをベースにエチレンオキサイド(EO)をベースにしたウレタン、アニオン性アクリレート共重合体などがある。
高分子ゲル形成においてはデンプンやアガロースなどの多糖類からなるゲル、ゼラチンなどのタンパク質やポリヘプタイドからなるゲルに化学修飾を施すことによる複合ゲルがある。また、高分子重合反応からなるゲルにおいては、架橋重合体としてポリアニオンやポリカチオンに架橋剤を反応させて作る場合、電解質モノマー(アミド基、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、リン酸基、3級アミン、4級アミンなどの親水性、その他解離性官能基を含むモノマー)と架橋モノマーとの共重合によってつくる場合がある。更に、ポリアクリルアミドゲルの加水分解によってアニオンゲルや高分子電解質ゲルは後からアルカリ処理により加水分解し高分子鎖内に解離基を導入する方法で酢酸ビニル、アクリル酸メチル−酢酸ビニル共重合体、ポリアクリルニトリル共重合体ケン化物を作る場合などがある。
【0042】
更に感熱性増粘材料としては、窒素含有環(モルホリン、アジリジン、ピロリジン、ピロリン、ピリジン、ピペリジン環などを有する)を含むアルキルオキシド付加物のビニル系カルボン酸エステル、およびモルホリンの水溶性ビニル系重合体またはエチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体付加物等も挙げられる。イオン性ゲル膨潤性をもつカルボン酸、スルホン酸、リン酸などのイオン性モノマーや、3級、4級アミンなどのカチオン性モノマーを含むアクリル、メタクリル官能基をもつ単一、複数の紫外線硬化部位をもつモノマーを用いてもよい。
【0043】
また天然の感熱性増粘材料で、アルギネート、ポリサッカライド、デンプン、カルボキシメリツセルロース、グアールガム粉末等も使用し得る。
【0044】
更に、カチオン性樹脂を用いた場合、ポリエチレンアミン、ポリプロピレンアミンなどのポリアルキルアミン類、第3級アンミン、第4級アンモニウム塩を有するアクリル樹脂モノマーとの重合物(ポリアクリルアミド−ジアリルアミン共重合物、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン付加物)などとアクリル酸樹脂、メタクリル酸樹脂類とイオン性結合により増粘性を有するものとの混合物を使用してもよい。
【0045】
また、N−イソプロピルアクリルアミド、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシメチルセルロース、ポリオキシエチレン−ポリプロピレン−ポリオキシエチレントリブロックポリマー、水性ポリウレタン樹脂等も挙げられる。
【0046】
尚、前記感熱性増粘材料の中でも、分子内に反応性の基を有しているものが好ましく、例えばアクリル基およびメタクリル基から選択される少なくとも一方を有する感熱性増粘材料が好ましい。反応性の基(特にラジカル重合反応性基)を有していることにより、画像記録用組成物の増粘にだけでなく硬化にも寄与する。また液滴の吐出、転写終了後もその粘性を保持して記録媒体内にとどまり、画像維持に役立つ。
【0047】
尚、感熱性増粘材料の画像記録用組成物中への添加量は、0.1質量%以上であることが好ましく、更には3質量%以上であることがより好ましい。また分子内に反応性の基を有していない感熱性増粘材料の場合、その上限値としては30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。一方分子内に反応性の基を有している感熱性増粘材料の場合、その上限値としては50質量%以下であることが好ましい。
【0048】
(吸液粒子)
画像記録用組成物は、インク中の着色剤を固定化する材料として、インクを吸液する吸液粒子を含む。この吸液粒子は、吸液性材料を主成分として含む。なお「主成分」とは、全体に対し50質量%以上含む成分をいう。また吸液性材料とは、吸液性材料とインクを重量比30:100で24時間混合した後、混合液中からフィルターにより吸液性材料を取り出した時、吸液性材料の重量がインク混合前に対して5%以上増加するものである。
【0049】
吸液性材料としては、例えば樹脂(以下、吸液樹脂と称する場合がある)や、表面親インク性を持たせた無機粒子(例えば、シリカ、アルミナ、ゼオライトなど)等があげられ、用いるインクに応じて選択される。
具体的には、インクとして水性インクを用いる場合は、吸液性材料として吸水樹脂材料を用いることが望ましい。また、インクとして油性インクを用いる場合は、吸液性材料として吸油材料を用いることが望ましい。
【0050】
吸水材料としては、具体的には、例えば、ポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸およびその塩、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸およびその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸およびその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸およびその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−カルボン酸およびその塩構造を有する脂肪族または芳香族置換基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とから生成するエステルから構成される共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−カルボン酸およびその塩構造を有する脂肪族または芳香族置換基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とから生成するエステルから構成される共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸およびその塩から構成される共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル−カルボン酸およびその塩構造を有する脂肪族または芳香族置換基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とから生成するエステルから構成される共重合体、ポリマレイン酸およびその塩、スチレン−マレイン酸およびその塩から構成される共重合体等、前記それぞれの樹脂のスルホン酸変性体、それぞれの樹脂のリン酸変性体等、等が挙げられ、望ましくは、ポリアクリル酸およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸およびその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸およびその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−カルボン酸およびその塩構造を有する脂肪族または芳香族置換基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とから生成するエステルから構成される共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸およびその塩から構成される共重合体、が挙げられる。これら樹脂は、複数の反応基を含むジビニルベンゼン等で架橋されていてもよい。
【0051】
また吸油材料としては、具体的には、例えば、ヒドロキシステアリン酸、コレステロール誘導体、ベンジリデンソルビトールといった低分子ゲル化剤や、ポリノルボルネン、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエン共重合体、各種ロジン類等が挙げられ、望ましくは、ポリノルボルネン、ポリプロピレン、ロジン類が挙げられる。
【0052】
また、吸液粒子としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、ポリビニルアルコールにイオン結合してなるアルキルアミン化合物、ヒドロキシ化合物、スルホン酸、リン酸化合物、3,4級アミン塩化合物などの酸性を有する化合物を用いることも好ましい。
【0053】
吸液粒子は、固体の粒子状のものでもよく、エマルジョン等のように液体が被硬化層に分散した状態のものでもよく、半溶解した状態(例えばポリマーの架橋が切れて分子鎖が伸びた状態)や一部被硬化性媒体に相溶・膨潤したものでもよい。
【0054】
吸液粒子の径(体積平均粒径)は、体積平均粒径が0.05μm以上25μmの範囲であることが望ましく、0.05μm以上5μm以下がより望ましい。
【0055】
吸液粒子の比重は、画像記録用組成物に含まれる硬化性材料の比重よりも、相対的に小さいほうが好ましい。吸液粒子の画像記録用組成物全体に対する比率は、質量比で、1%以上60%以下が望ましく、より望ましくは10%以上50%以下であり、さらに望ましくは20%以上40%以下である。
【0056】
吸液粒子が吸液性材料を含む樹脂粒子である場合、樹脂粒子の調製方法としては、例えば、吸液性材料を含む樹脂・モノマーをボールミルにより粉砕する方法等が挙げられる。
【0057】
(硬化性材料)
硬化性材料としては、例えば、紫外線硬化性材料、電子線硬化性材料、熱硬化性材料等が挙げられる。なお、硬化性材料は、これらに限られず、例えば湿気、酸素等により硬化する硬化性材料を適用してもよい。なお、ここで言う硬化性材料は、硬化後は不可逆である。中でも、紫外線硬化性材料であってLED等の特定波長で反応するものが好ましく、画像部の形態保持、硬化速度の高速化に優れ、中間転写体状に形成された被硬化層が記録媒体に転写される際に中間転写体と記録媒体との接触でラミネートした状態で酸素阻害の影響が低減され、且つ反応速度の向上により高速転写記録を成し得る。
【0058】
紫外線硬化性材料を硬化することにより得られる「紫外線硬化性樹脂」としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイミド樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂などが挙げられる。紫外線硬化性材料は、紫外線硬化性のモノマー、紫外線硬化性のマクロマー、紫外線硬化性のオリゴマー、および紫外線硬化性のプレポリマーの少なくとも1種を含んでいる。また、紫外線硬化反応を進行させるための紫外線重合開始剤を含んでいることが望ましい。さらに、必要に応じて、重合反応をより進行させるための、反応助剤、重合促進剤、分散剤等を含んでいてもよい。
【0059】
ここで、紫外線硬化性のモノマーとしては、例えば、1つ以上の反応性基を含むアルコール/多価アルコール/アミノアルコール類のアクリル酸エステル、アルコール/多価アルコール類のメタクリル酸エステル、アクリル脂肪族アミド、アクリル脂環アミド、アクリル芳香族アミド類等のラジカル硬化性材料;エポキシモノマー、オキセタンモノマー、ビニルエーテルモノマー等のカチオン硬化性材料;などが挙げられる。上記紫外線硬化性のマクロマー、紫外線硬化性のオリゴマー、紫外線硬化性のプレポリマーとしては、これらモノマーを重合させたものの他、エポキシ、ウレタン、ポリエステル、ポリエーテル骨格に、アクリロイル基やメタクリロイル基の付加した、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリエステルメタクリレート等のラジカル硬化性材料が挙げられる。
【0060】
電子線硬化性材料を硬化することにより得られる「電子線硬化性樹脂」としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。そして、電子線硬化性材料として、電子線硬化性のモノマー、電子線硬化性のマクロマー、電子線硬化性のオリゴマー、及び電子線硬化性のプレポリマーの少なくとも1種を含んでいる。
【0061】
ここで、電子線硬化性のモノマー、電子線硬化性のマクロマー、電子線硬化性のオリゴマー、電子線硬化性のプレポリマーとしては、紫外線硬化性の材料と同じものが挙げられる。
【0062】
熱硬化性材料を硬化することにより得られる「熱硬化性樹脂」としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂などが挙げられる。そして、熱硬化性材料として、熱硬化性のモノマー、熱硬化性のマクロマー、熱硬化性のオリゴマー、及び熱硬化性のプレポリマーの少なくとも1種を含んでいる。また重合の際に硬化剤を添加してもよい。また、熱硬化反応を進行させるための熱重合開始剤を含んでもよい。
【0063】
ここで、熱硬化性のモノマーとしては、例えば、フェノール、ホルムアルデヒド、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン、シアヌリル酸アミド、尿素、グリセリン等のポリアルコール、無水フタル酸、無水マレイン酸、アジピン酸等の酸などが挙げられる。熱硬化性のマクロマー、熱硬化性のオリゴマー、熱硬化性のプレポリマーとしては、これらのモノマーを重合させたものや、ウレタンプレポリマー、エポキシプレポリマー、ポリエステルプレポリマーなどが挙げられる。
【0064】
以上のように、硬化性材料は、紫外線、電子線、熱等の外部エネルギーにより硬化(例えば、重合反応が進行することによる硬化)するものであれば何でもよい。
【0065】
尚、前記硬化性材料として、分子量1000以上50000以下の硬化性プレポリマーを含有することが好ましい。プレポリマー含むことにより、感熱性増粘材料との相互作用が発生し、画像記録用組成物の増粘効果が更に効率的に生じる。
【0066】
(界面活性剤)
次に、本実施の形態の画像記録用組成物には、界面活性剤を含有してもよい。
【0067】
本実施の形態の画像記録用組成物に含まれる界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、アニオン性界面活性剤、またはノニオン性界面活性剤を用いることが望ましく、増粘材料の影響を抑制しないノニオン性界面活性剤が特に望ましい。
【0068】
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩およびスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が使用され、望ましくは、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩等が用いられる。
【0069】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アルキルアルカノールアミド、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、アセチレングリコール、アセチレングリコールのポリオキシエチレン付加物等が挙げられ、望ましくは、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、アセチレングリコール、アセチレングリコール、ポリジメリチルシロキサン側鎖をもつポリオキシエチレン付加物で紫外線硬化反応性アクリル・メタクリル残基を側鎖に1つ以上もつものが挙げられる。
【0070】
その他、ポリシロキサンオキシエチレン付加物等の(メタ)アクリル変性シリコーン系界面活性剤や、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル等のフッ素系界面活性剤、スピクリスポール酸やラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタント等も界面活性剤として使用される。
【0071】
これらの界面活性剤は単独で使用してもよいし、混合して使用してもよい。また界面活性剤の親水性/疎水性バランス(Hydrophile− Lipophile Barance、以下「HLB」と称する)は、溶解性等を考慮すると、両親媒性で8以上18以下の領域で使用することが望ましい。
【0072】
上記親水基/疎水基バランス(HLB)は、以下の式(グリフィン法)により定義される。
・HLB=20×(親水部の式量の総和/分子量)
【0073】
なお、界面活性剤は、ノニオン系でHLB制御による吸液粒子、モノマー相溶性の理由から、シリコーン成分により変性されていることが望ましい。このシリコーン成分としては、具体的には、ジメチルシロキサン誘導体で側鎖変性されPPG,PEO成分とアクリル残基をもつ光反応性ももち、ある程度の粘性も必要である等が挙げられる。これらの界面活性剤をシリコーン成分により変性する方法としては、公知の方法を用いればよい。
【0074】
シリコーン成分により変性された界面活性剤としては、ポリエチレングリコール成分およびポリプロピレングリコール成分の少なくとも一方を側鎖として有する、ジメチルシリコーンポリマー(HLB=9から18)が挙げられる。
【0075】
なお、界面活性剤としては、紫外線硬化性基を有する界面活性剤を用いてもよい。この紫外線硬化性基としては、上記に「紫外線硬化性のモノマー」として挙げたモノマーが有する官能基が挙げられる。
【0076】
本実施の形態の画像記録用組成物中における、界面活性剤の含有量は、0.1質量%以上30質量%以下が望ましく、または0.5質量%以上10質量%以下が更に望ましい。
【0077】
(画像記録用組成物に含まれる、その他の材料)
本実施の形態の画像記録用組成物には、更に下記の材料を加えた構成であってもよい。
【0078】
本実施の形態の画像記録用組成物は、官能基を有し、溶解度パラメータ(sp値)が7以上9.6以下の疎水性モノマーを更に含むことが望ましく、8以上9.6以下の疎水性モノマーを1種類以上含むことがさらに望ましい。
sp値が9.6以下のモノマー類としてはネオペンチルグリコールジアクリレートおよびその誘導体、ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールの多官能体、各種エチレンオキサイド変性フェノキシアクリレート類、アルコキシアルキルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、じシクロペンタジエンアクリレートなどが挙げられる。
【0079】
画像記録用組成物中における、上記sp値を示す疎水性モノマーの総含有量は、1質量%以上30質量%以下の範囲内であることが望ましく、5質量%以上30質量%以下の範囲内であることが特に望ましい。
【0080】
本実施の形態の画像記録用組成物に、上記疎水性モノマーが併用されることによって、画像記録用組成物の高粘度化が抑制される。また、本実施の形態の画像記録用組成物に、上記疎水性モノマーが併用されることによって、被硬化層に吐出されたインクによる画像領域の吸液阻害や、画質ムラ、濃度ムラなども抑制されると考えられる。
【0081】
溶解度パラメータが上記範囲の疎水性のモノマーは、1種以上を混合して用いてもよいが、この疎水性モノマーは、単官能、2官能、または3官能であることが望ましく、単官能または2官能であることが更に望ましい。
【0082】
この疎水性モノマーが有する官能基としては長鎖アルコキシ類をもつ、アルキル基や環状アルキル基、分岐アルコキシ基、シクロヘキシル、ジメチルシロキサン誘導体、という特性を示す官能基が挙げられ、具体的には、ラウリル基、ドデシル基、ヘキサメチレン基、ペンタエリスリトール誘導体、トリメチロールプロパン誘導体、シクロヘキシル誘導体,ブタンジオール、低分子ポリエチレングリコール(分子量200)誘導体等が挙げられる。
【0083】
これらの中でも、疎水性モノマーが有する官能基としては、ラウリル基、およびドデシル基が望ましい。
【0084】
また、この疎水性モノマーは、アルキレンオキサイド構造を含んだ構成であることが望ましく、プロピレンオキサイド構造、およびエチレンオキサイド構造の少なくとも一方を含むことが更に望ましく、プロピレンオキサイド構造、およびエチレンオキサイド構造の双方を含むことが特に望ましい。
【0085】
以下、官能基を有し、sp値が9.6以下の疎水性モノマーの一例を以下に示す。尚、( )内の数字はsp値である。なお、sp値は、fedorsの方式により化合物の構造式より求められる。
【0086】
テトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)(9.6)、シクロヘキシルアクリレート(CHA)(9.6)、イソボニルメタクリレート(IBXMA)(9.6)、エチルヘキシルアクリレート(HA)(8.9)、ドデシルメタクリレート(DMA)(8.8)、およびラウリルアクリレート(LA)(8.7)フェノキシ(エチレングリコール)n=4以上アクリレート(9.4)等の単官能疎水性モノマーやエトキシエチレンオキサイドアクリレート(8.3)、ジプロピレングリコール1000以上のジアクリレート(8.6)、1,6−ヘキサジオールアクリレート(9.6)、ポリオール主鎖を有するジアクリレート類(PEG200)(8.8),PEG400(8.5),PEG600(8.4)等、何れもダイセルサイテック社製)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(9.4)グリシドールジメタクリレート(9.1)等の2官能の疎水性モノマーや、
メトキシポリエチレングリコール(n=8):(9.3)、ペンタメチルピペリジルメタクリレート(8.7)、テトラヒドロフルアクリレート(9.2)、ジシクロペンタニルアクリレート(9.3)、ジまたはトリプロピレンクリコールアクリレート(9以上9.5以下)、アクリル酸ビニロキシエトキシ)エチル(8.7)、およびそのメタクリル酸誘導体(8.7)、エチレンオキサンド変性ポリプロピレングリコールジメタクリレート(8.2)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(9.4)、ポリプピレングリコール(8.2)、グリセンプロポキシトトリアクリレート(9.2)、トリメチロールエトキシトリアクリレート(9.1)など、各種ポリエーテル変性、脂環式アクリレート類からなるものが挙げられる。
【0087】
また、画像記録用組成物には重合開始剤を含んでいることが望ましい。さらに、画像記録用組成物は、必要に応じて、重合反応をより進行させるための、反応助剤、重合促進剤等を含んでいてもよい。
【0088】
画像記録用組成物における紫外線硬化反応がラジカル反応により進行する場合には、紫外線重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、チオキサントン系、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシケトン、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノケトン、α−アミノアルキルフェノン、モノアシルフォスフィンオキサイド、ビスアシルフォスフィンオキサイド、ヒドロキシベンゾフェノン、アミノベンゾフェノン、チタノセン型、オキシムエステル型、オキシフェニル酢酸エステル型などが挙げられる。
また画像記録用組成物における紫外線硬化反応がカチオン反応により進行する場合には、紫外線重合開始剤としては、例えば、アリールスルホニウム塩、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、アレン−イオン錯体誘導体、トリアジン系開始剤等が挙げられる。
【0089】
また、本実施形態に係る画像記録用組成物には、ワックスやゴム状物質類を混合しても良い。
【0090】
また、本実施形態に係る画像記録用組成物には、インクの成分を被硬化層上や内部で固定化する成分(以下、「固定化成分」と称する場合がある)をさらに含んでいてもよい。
【0091】
固定化成分としては、例えば、インクの成分(例えば色材)を吸着する成分、インクの成分(例えば色材)を凝集または増粘させる成分等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0092】
また、画像記録用組成物には、上記硬化反応に寄与する成分を溶解または分散するための水や有機溶媒を含んでいてもよい。
【0093】
また、画像記録用組成物は、硬化層を着色制御する目的で、各種色材を含んでいてもよい。
【0094】
また、画像記録用組成物は、粘度を調製する等の目的から、熱可塑性樹脂を含有してもよい。該熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボーネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン、ポリエーテル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレンとそのアクリルモノマー共重合体およびそのブレンド物等が挙げられる。
【0095】
本実施の形態の画像記録用組成物の表面張力は、例えば、20mN/m以上50mN/m以下の範囲が挙げられる。
【0096】
また、画像記録用組成物は、常温(25℃)において低揮発性または不揮発性であることがよい。ここで、低揮発性とは大気圧下において沸点が200℃以上であることを意味する。また、不揮発性とは大気圧下において沸点が300℃以上であることを意味する。
【0097】
(インク)
次いで、本実施形態において用いられるインクについて詳細に説明する。なお、このインクは、本実施形態に係る記録装置において被硬化層に吐出される液滴に相当する。
インクは水性インク、油性インク共に使用し得るが、環境性の点で水性インクが使用される。水性インク(以下、単にインクと称する)は、記録材に加え、インク溶媒(例えば、水、水溶性有機溶媒)を含んでいる。また、必要に応じて、その他、保湿材、顔料、回目活性剤、防腐剤、増粘剤等などの添加剤を含んでいてもよい。
【0098】
まず、記録材について説明する。記録材としては、主に色材が挙げられる。色材としては、染料、顔料のいずれも用いられるが、顔料であることがよい。これらの色材としては、公知の材料を用いればよい。
【0099】
記録材としては、その他、親水性のアニオン染料、直接染料、カチオン染料、反応性染料、高分子染料等や油溶性染料等の染料類、染料で着色したワックス粉・樹脂粉類やエマルション類、蛍光染料や蛍光顔料、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、フェライトやマグネタイトに代表される強磁性体等の磁性体類、酸化チタン、酸化亜鉛に代表される半導体や光触媒類、その他有機、無機の電子材料粒子類などが挙げられる。
【0100】
記録材の含有量(濃度)は、例えばインクに対して5質量%以上30質量%以下の範囲が挙げられる。
【0101】
記録材の体積平均粒径は、例えば10nm以上1000nm以下の範囲が挙げられる。
記録材の体積平均粒径とは、記録材そのものの粒径、または記録材に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した粒径をいう。体積平均粒径の測定装置には、マイクロトラックUPA粒度分析計9340(Leeds&Northrup社製)を用いた。その測定は、インク4mlを測定セルに入れ、定められた測定法に従って行った。なお、測定時の入力値として、粘度にはインクの粘度を、分散粒子の密度は記録材の密度とした。
【0102】
次に、水溶性有機溶媒について説明する。水溶性有機溶媒としては、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が使用される。
【0103】
水溶性有機溶媒は、少なくとも1種類以上使用してもよい。水溶性有機溶媒は、含有量としては例えば1質量%以上70質量%以下の範囲で用いられる。
【0104】
次に、水について説明する。水としては、特に不純物が混入することを防止するという観点から、イオン交換水、超純水、蒸留水、限外濾過水を使用することが望ましい。
【0105】
次に、その他の添加剤について説明する。インクには、界面活性剤を添加してもよい。
【0106】
これら界面活性剤の種類としては、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、望ましくは、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が用いられる。
【0107】
また、インクには、その他、浸透性を調製する目的で浸透剤、インク吐出性改善等の特性制御を目的でポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等や、導電率、pHを調製するために水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属類の化合物等、その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調製剤、導電剤、紫外線吸収剤、およびキレート化剤等も添加される。
【0108】
次に、インクの好適な特性について説明する。まず、インクの表面張力は、例えば20mN/m以上45mN/m以下の範囲が挙げられる。
【0109】
ここで、表面張力としては、ウイルヘルミー型表面張力計(協和界面科学株式会社製)を用い、23℃、55%RHの環境において測定した値を採用した。
【0110】
インクの粘度は、例えば1.5mPa・s以上30mPa・s以下の範囲が挙げられる。ここで、粘度としては、レオマット115(Contraves製)を測定装置として用いて、測定温度は23℃、せん断速度は1400s−1の条件で測定した値を採用した。
【0111】
なお、インクは、上記構成に限定されるものではない。記録材以外に、例えば、液晶材料、電子材料など機能性材料を含むものであってもよい。
【0112】
<記録装置および記録方法>
本実施形態に係る記録装置は、中間転写体と、前述の画像記録用組成物を前記中間転写体上へ供給し被硬化層を形成する供給装置と、前記中間転写体上に供給された前記被硬化層に、水性溶媒を含む液滴を吐出する吐出装置と、前記液滴の吐出された前記被硬化層を前記中間転写体から記録媒体へ転写する転写装置と、前記吐出装置により前記被硬化層に前記液滴が吐出された後、前記転写装置により前記被硬化層が前記記録媒体に転写される以前において、前記被硬化層の温度を上昇させる温度上昇装置と、前記被硬化層へ刺激を付与する刺激付与装置と、を備える。
【0113】
また本実施形態に係る記録方法は、前述の画像記録用組成物を中間転写体上へ供給し被硬化層を形成する供給工程と、前記中間転写体上に供給された前記被硬化層に、水性溶媒を含む液滴を吐出する吐出工程と、前記液滴の吐出された前記被硬化層を前記中間転写体から記録媒体へ転写する転写工程と、前記吐出工程で前記被硬化層に前記液滴が吐出された後、前記転写工程で前記被硬化層が前記記録媒体に転写される以前において、前記被硬化層の温度を上昇させる温度上昇工程と、前記被硬化層へ刺激を付与する刺激付与工程と、を備える。
【0114】
尚、前記温度上昇装置が、前記中間転写体の少なくとも一部を30℃以上100℃以下の温度に加熱することで、該中間転写体上の前記被硬化層の媒体温度を上昇させることが好ましい。
更に、前記温度上昇装置が、前記中間転写体の前記被硬化層が形成される側の表面とは反対の表面側から該中間転写体を加熱することが好ましい。
【0115】
また、前記画像記録用組成物の温度上昇前の粘度が3000mPa・s以下であり、温度上昇に伴って粘度が増加した後の粘度が1500mPa・s以上50000mPa・s以下であって且つ前記温度上昇前の粘度よりも高い粘度であることが好ましい。
また、画像記録用組成物の粘度は、インクの粘度よりも高いことがよい。
上記粘度は、以下の方法により測定される値であり、本明細書に記載の粘度は下記方法により測定された値である。粘度計としてはTV−22(東機産業製)を用いて、ずり速度=2.25から750(1/s)で、15℃での粘度(mPa・s)を計測したものである。尚、本明細書における表記はずり速度10s−1のものである。
【0116】
以下においては、本実施形態に係る画像形成装置101の構成を、図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る画像形成装置101の構成を示す概略図である。
【0117】
本実施形態に係る画像形成装置101は、図1に示すように、後述する画像記録用組成物の層(以下、被硬化層という)12Bが形成される被形成体の一例としての転写ベルト10と、転写ベルト10に形成された被硬化層12Bが転写される記録媒体Pを搬送する搬送手段(図示省略)と、を備えている。
【0118】
搬送手段としては、記録媒体Pを静電力等により外周面に付着させて搬送する搬送ベルト・搬送ドラムや、記録媒体Pを挟んで搬送する搬送ロール対で構成される。なお、記録媒体Pは、図1において矢印A方向に搬送される。
【0119】
被硬化層12Bが転写される記録媒体Pとしては、例えば、用紙(具体的には普通紙、インクジェットコート紙、アート紙、合成紙等)などが用いられる。なお、記録媒体Pとしては、用紙に限られず、例えば、樹脂等で形成されたフィルム(具体的にはポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート)などであってもよく、被硬化層12Bが転写し得るものであればよい。
【0120】
転写ベルト10は、環状に形成され、シーム(継ぎ目)の無い無端ベルトで構成されている。なお、転写ベルト10としては、シーム有りのベルトであってもよい。
【0121】
転写ベルト10の内周側には、転写ベルト10が巻き掛けられる被巻掛部材の一例としての複数の巻掛ロール16B、10C、10A、10Bが設けられている。巻掛ロール16Bは、後述の硬化装置18に対して、記録媒体Pの搬送方向における上流側(図1において左側)に配置され、巻掛ロール10Cは、巻掛ロール16B及び硬化装置18に対して、記録媒体Pの搬送方向における下流側(図1において右側)に配置されている。
【0122】
巻掛ロール10Aは、巻掛ロール10Cに対して、記録媒体Pの搬送方向における下流側(図1において右側)であって、後述の平板22の配置側とは反対側(図1において上側)に配置されている。巻掛ロール10Bは、巻掛ロール16Bに対して、記録媒体Pの搬送方向における上流側(図1において左側)であって、後述の平板22の配置側とは反対側(図1において上側)に配置されている。
【0123】
また、転写ベルト10は、記録媒体Pの幅と同等又はそれ以上の幅(軸方向長さ)を有している。
【0124】
転写ベルト10の材料としては、一般に転写ベルトとして用いられている公知の材料、例えば、各種の樹脂(例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリカーボネート、フッ素系樹脂等)、各種のゴム(例えば、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)、ステンレス等の金属材料等が挙げられる。転写ベルト10は、単層構成でもよいし、同種の材料又は異種の材料による積層構成でもよい。
【0125】
なお、転写ベルト10は、被硬化層12Bを剥離しやすくするための剥離層(離型層)を表面(外周面)に有していてもよい。剥離層に用いられる材料としては、例えば、フッ素系樹脂材料・シリコーンゴム、オレフィン樹脂(PP,PE,COP,TMPなど)、ポリプロピレングリコール、油性モノマー、パラフィンワックス等が挙げられる。
【0126】
本実施形態においては、後述の硬化装置18が転写ベルト10の内周側に設けられているため、刺激は転写ベルト10を介して被硬化層12Bに供給される。すなわち、転写ベルト10は、刺激を被硬化層12Bへ伝える機能を有する。例えば、下記のように、刺激として紫外線や電子線を用いる場合には、転写ベルト10は紫外線や電子線を透過する機能を有し、刺激として熱を用いる場合には、転写ベルト10は熱を伝達させる機能を有する。また、転写ベルト10は、耐刺激性の高いものが望ましい。
【0127】
例えば、硬化装置18が紫外線照射装置である場合、転写ベルト10は、紫外線透過性が高く、紫外線に対する耐久性が高いものが望ましい。具体的には、例えば、転写ベルト10の紫外線透過率が70%以上であることが望ましい。転写ベルト10の紫外線透過率が上記範囲であることにより、被硬化層12Bの硬化反応に必要な紫外線エネルギーが効率よく被硬化層12Bに供給されると共に、転写ベルト10が紫外線を吸収すること等による熱の発生、オゾン劣化、紫外線劣化、剛性低下、着色劣化が抑制される。
【0128】
この転写ベルト10を形成する材料としては、具体的には、例えば、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、TPX(ポリ―4−メチルペンテン―1)、ポリオレフィン系(PP,COP,PE)フィルム等が挙げられる。これらは、単層で用いられてもよく、また複数材料の積層構造により用いられてもよい。
【0129】
また、本実施形態においては、被硬化層12Bに接する表面における転写ベルト10の表面自由エネルギー(γ)が低いことが望ましい。特に、表面自由エネルギー(γ)は、被硬化層12Bに接する表面における記録媒体Pの表面自由エネルギー(γ)よりも低いことが望ましく、下記式が成り立つ条件であることがより望ましい。
式:γ−γ>10
【0130】
表面自由エネルギーの値は、例えば、以下の方法により求められる。
具体的には、接触角計CAM−200(KSV社製)を用い、水、ジヨードメタン接触角よりZisman法を用いた装置内臓のプログラム計算にて算出した。
【0131】
なお、被形成体としては、転写ベルト10に限られず、例えば、転写ドラム等の転写体であってもよく、被硬化層12Bが形成し得ると共に被硬化層12Bが剥離し得るものであればよい。
【0132】
転写ベルト10の外周側(図1において側方)には、転写ベルト10の表面に離型剤24Aを供給して、離型剤層24Bを転写ベルト10の表面に形成する離型剤層形成装置24が設けられている。具体的には、離型剤層形成装置24は、転写ベルト10において巻掛ロール10Aが巻き掛けられている部分に対して対向しており、転写ベルト10における上記部分に対し、供給工程・吐出工程・転写工程の一連の工程を経る毎に離型剤24Aを供給して離型剤層24Bを形成するようになっている。
【0133】
また、離型剤層形成装置24は、転写ベルト10の幅方向(転写ベルト10の回転方向と直交する方向)に沿って長さを有しており、その幅方向に沿った長さが、転写ベルト10における被吐出領域以上(被画像形成領域以上)とされている。
【0134】
離型剤層形成装置24は、例えば、被硬化層形成装置12の上流部に離型剤24Aを収容する筐体24Cと、筐体24C内に設けられ離型剤24Aを転写ベルト10へ供給する供給ローラ24Dと、供給ローラ24Dから転写ベルト10へ供給された離型剤24Aにより形成された離型剤層24Bの層厚を規定するブレード24Eと、を含んで構成されている。離型剤層形成装置24は、必要に応じて、離型剤24Aを加熱溶融させる加熱手段(図示せず)を含んでいてもよい。
【0135】
離型剤層形成装置24は、供給ローラ24Dが転写ベルト10に連続的に接触するようにしてもよいし、転写ベルト10から離間する構成としてもよい。また離型剤層形成装置24としては、上記構成に限られず、公知の塗布法(例えば、バーコーター塗布、スプレー方式の塗布、インクジェット方式の塗布、エアーナイフ方式の塗布、ブレード方式の塗布、ロール方式の塗布等)などを利用した装置を適用してもよい。
【0136】
離型剤24Aとしては、具体的には、シリコーン系オイル、フッ素系オイル、炭化水素系・ポリアルキレングリコール、脂肪酸エステル、フェニルエーテル、リン酸エステル等が挙げられ、これらの中でもシリコーン系オイル、フッ素系オイル、ポリアルキレングリコールが望ましい。
【0137】
なお、本実施形態では、転写ベルト10の表面に離型剤層24Bを形成する構成について説明したが、転写ベルト10として、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)等の表面離型性の良好な材料を用いた場合には、離型剤層24Bを形成する必要はない。
【0138】
離型剤層形成装置24に対する転写ベルト10の回転方向下流側には、刺激に反応して硬化すると共に吸液材料や硬化性材料、感熱性増粘材料等を含む画像記録用組成物を転写ベルト10の表面に供給して被硬化層12Bを形成する形成部の一例としての被硬化層形成装置12が設けられている。
【0139】
具体的には、被硬化層形成装置12は、転写ベルト10において巻掛ロール10Aと巻掛ロール10Bとの間の部分に対向しており、転写ベルト10における上記部分に対し、画像記録用組成物を供給して被硬化層12Bを形成するようになっている。
【0140】
また、被硬化層形成装置12は、転写ベルト10の幅方向(転写ベルト10の回転方向と直交する方向)に沿って長さを有しており、その幅方向に沿った長さが、転写ベルト10における被吐出領域以上(被画像形成領域以上)とされている。
【0141】
なお、被硬化層形成装置12は、転写ベルト10の外周側(図1において上側)において巻掛ロール10Aの上方に配置され、転写ベルト10における巻掛ロール10Aに巻き掛けられている部分に対して被硬化層12Bを形成する構成であってもよい。
【0142】
被硬化層形成装置12は、例えば、画像記録用組成物を収容する筐体12Cと、筐体12C内に設けられ画像記録用組成物を転写ベルト10へ供給する供給ローラ12Dと、供給ローラ12Dから転写ベルト10へ供給された画像記録用組成物により形成された被硬化層12Bの層厚を規定するブレード12Eと、を含んで構成されている。
【0143】
被硬化層形成装置12は、その供給ローラ12Dが転写ベルト10に連続的に接触するようにしてもよいし、転写ベルト10から離間する構成としてもよい。また、被硬化層形成装置12は、独立した溶液供給システム(図示せず)より画像記録用組成物を筐体12Cへ供給させ、画像記録用組成物の供給が間欠的または連続してとぎれないようにしてもよい。
【0144】
被硬化層形成装置12としては、上記構成に限られず、公知の供給法(塗布法:例えば、ダイコータ、バーコーター塗布、スプレー方式の塗布、インクジェット方式の塗布、エアーナイフ方式の塗布、ブレード方式の塗布、ロール方式の塗布、コッマコーター方式の塗布、フローコーター方式の塗布等)などを利用した装置を適用してもよい。
【0145】
被硬化層形成装置12に対する転写ベルト10の回転方向下流側には、被硬化層形成装置12によって形成された被硬化層12Bの表面にインク(インク滴)14Aを吐出して、画像を形成する画像形成部の一例としてのインクジェット記録ヘッド14が、転写ベルト10の外周側(図1において上側)に設けられている。具体的には、インクジェット記録ヘッド14は、転写ベルト10において巻掛ロール10Aと巻掛ロール10Bとの間の平坦部分(非屈曲部分)に対向しており、転写ベルト10における上記部分に対してインクを吐出して画像を形成するようになっている。
【0146】
インクジェット記録ヘッド14は、例えば、転写ベルト10の回転方向上流側から順に、黒色のインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッド14Kと、シアン色のインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッド14Cと、マゼンタ色のインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッド14Mと、イエロー色のインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッド14Yと、を備えて構成されている。
【0147】
具体的には、インクジェット記録ヘッド14は、インクジェット方式によってインク滴を複数のノズルから吐出する記録ヘッドであり、圧電式(ピエゾ)、サーマル式などにより駆動され、相対移動する被硬化層12Bの表面にインク滴を吐出するように構成されている。
【0148】
また、インクジェット記録ヘッド14は、転写ベルト10の幅方向(転写ベルト10の回転方向と直交する方向)に沿って長さを有しており、その幅方向に沿った吐出幅が、転写ベルト10における被吐出領域以上(被画像形成領域以上)とされている。すなわち、インクジェット記録ヘッド14は、転写ベルト10に対してその幅方向に相対移動することなく、被吐出領域(被画像形成領域)の幅方向(主走査方向)の1ラインを形成し得るよう構成されている。
【0149】
インクジェット記録ヘッド14では、制御手段の一例としてのメインコントローラによって、使用するノズル及び吐出タイミングが画像情報に基づき決定され、インク滴を吐出することにより、画像情報に応じた画像を形成するようになっている。インクジェット記録ヘッド14における具体的な制御及びインクジェット記録ヘッド14が吐出するインクについては、後述する。
【0150】
なお、インクジェット記録ヘッド14としては、上記の構成に限られず、転写ベルト10の幅方向に移動しながらインクを吐出して、被吐出領域(被画像形成領域)の幅方向(主走査方向)の1ラインを形成し得るスキャン型のインクジェット記録ヘッドであってもよく、被硬化層12Bに対して画像が形成し得るものであればよい。
【0151】
インクジェット記録ヘッド14に対する転写ベルト10の回転方向下流側には、温度上昇手段としての加熱装置30が設けられている。図1における加熱装置30は、加熱ロールと該加熱ロールによって加熱される加熱ベルト(例えば金属製の伝熱ベルト等)と、転写ベルト10に対向配置される対向ロールとによって構成されている。尚、温度上昇手段としての加熱装置30には、この他にも、IH(電磁誘導加熱)、ハロゲンヒーター、電熱加熱、レーザー照射による輻射熱、加熱ベルト接着、加熱媒体の裏面伝熱接触等の方式を用いた加熱装置が用いられる。
また、加熱装置30は、インクジェット記録ヘッド14により被硬化層12Bにインクが吐出された後、転写装置により被硬化層12Bが記録媒体Pに転写される以前の領域において、被硬化層12Bの温度を上昇させ得る位置に配置され、特に中間転写ベルト10の内周面側に配置されることが好ましい。
【0152】
インクジェット記録ヘッド14に対する転写ベルト10の回転方向下流側には、インク滴14Aが吐出された被硬化層12Bを記録媒体Pへ加圧する加圧部材16と、記録媒体Pを平らに保つための平板(プラテン)22と、が設けられている。
【0153】
平板22は、具体的には、転写ベルト10の下部(巻掛ロール16Bから離れて巻掛ロール10Cに接触する部分)に対して対向して配置されている。
【0154】
加圧部材16は、具体的には、転写ベルト10が巻き掛けられた巻掛ロール16Bと、転写ベルト10を挟んで巻掛ロール16Bと対向して配置された加圧ロール16Aと、を備えて構成されている。加圧部材16では、加圧ロール16Aが巻掛ロール16B側へ圧力を加えた状態で、記録媒体Pが転写ベルト10と加圧ロール16Aとで挟まれて搬送される。さらに、記録媒体Pは、転写ベルト10の下部(巻掛ロール16Bから離れて巻掛ロール10Cに接触する部分)と、平板22とで挟まれて搬送される。
【0155】
これにより、転写ベルト10及び記録媒体Pが加圧ロール16A及び巻掛ロール16Bにより挟み込まれた位置(以下、「接触開始位置」と称する場合がある)から、巻掛ロール10C及び平板22により挟み込まれた位置(以下、「剥離位置」と称する場合がある)までの転写領域において、転写ベルト10の表面の被硬化層12Bが記録媒体Pに接触した状態で転写・硬化・剥離が行われる。
【0156】
加圧部材16に対する転写ベルト10の回転方向下流側には、インクジェット記録ヘッド14によって画像が形成された被硬化層12Bを記録媒体Pに転写する転写部の一例としての硬化装置18が、転写ベルト10の内周側に設けられている。この硬化装置18では、転写領域において、記録媒体Pに接触した状態の被硬化層12Bに刺激を付与することにより被硬化層12Bを硬化させて、その被硬化層12Bを転写ベルト10から記録媒体Pへ転写するように構成されている。
【0157】
なお、硬化装置18の配置位置は、転写ベルト10の内周側に限られず、転写ベルト10の外周側に配置されていてもよい。この場合では、転写ベルト10は、刺激を被硬化層12Bへ伝える機能を有する必要はない。記録媒体Pが刺激を被硬化層12Bへ伝える機能を有する必要がある。
【0158】
硬化装置18の種類は、適用する画像記録用組成物に含まれる硬化性材料の種類に応じて選択される。具体的には、例えば、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化性材料を適用する場合、硬化装置18としては画像記録用組成物(被硬化層12B)に紫外線を照射する紫外線照射装置を適用する。
【0159】
また、電子線の照射により硬化する電子線硬化性材料を適用する場合、硬化装置18として画像記録用組成物(被硬化層12B)に電子線を照射する電子線照射装置を適用する。
【0160】
また、熱の付与により硬化する熱硬化性材料を適用する場合、硬化装置18として画像記録用組成物(被硬化層12B)に熱を付与する熱付与装置を適用する。
【0161】
ここで、紫外線照射装置としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、デイープ紫外線ランプ、マイクロ波を用い外部から無電極で水銀灯を励起するランプ、紫外線レーザー、キセノンランプ、UV−LEDなどが適用される。
【0162】
また、電子線照射装置としては、例えば、走査型/カーテン型等があり、カーテン型はフィラメントで生じた熱電子を、真空チャンバー内のグリッドによって引き出し、さらに高電圧(例えば70乃至300kV)によって、一気に加速させ、電子流となり、窓箔を通過して、大気側に放出する装置である。
【0163】
また、熱付与装置としては、例えば、ハロゲンランプ、セラミックヒータ、ニクロム線ヒータ、マイクロ波加熱、赤外線ランプ、電磁誘導方式の加熱装置などが適用される。
【0164】
硬化装置18に対する転写ベルト10の回転方向下流側には、転写ベルト10の表面に残留している画像記録用組成物や離型剤24Aを除去する除去装置20が、転写ベルト10の外周側に設けられている。具体的には、除去装置20は、転写ベルト10の側部(巻掛ロール10Cから離れて巻掛ロール10Aに接触するまでの部分)に対向している。
【0165】
除去装置20は、転写ベルト10に接触して、転写ベルト10に残留した画像記録用組成物を掻き取る除去部材20Aを備えている。除去部材20Aは、例えば、ゴム材料で形成された板状のブレードで構成されている。また、除去装置20は、除去部材20Aが掻き取った画像記録用組成物や離型剤24Aを収容する収容部20Bを備えている。収容部20Bは、転写ベルト10への対向側が開放された箱体で構成され、除去部材20Aが掻き取って落下した画像記録用組成物や離型剤24Aを受ける受け部となっている。
【0166】
次に、本実施形態に係る画像形成動作を説明する。
【0167】
本実施形態に係る画像形成装置101では、転写ベルト10が回転駆動され、まず、離型剤層形成装置24により転写ベルト10の表面に離型剤層24Bが形成され、この離型剤層24Bの表面に、被硬化層形成装置12により画像記録用組成物が供給されて、被硬化層12Bが形成される。
【0168】
次に、インクジェット記録ヘッド14により、後述するメインコントローラの制御によって該被硬化層12Bの表面へ、形成対象の画像データの画像の各画素に応じたドットを記録するためのインク滴14Aが吐出される。これによって、この被硬化層12Bには、吐出されたインク滴により記録されたドットにより画像領域が形成される。
【0169】
なお、本実施形態では、この被硬化層12Bの表面にインク滴14Aが吐出されることで記録されたドットの形成された領域を、「画像領域」と称して説明する。
【0170】
そして、さらに被硬化層12Bは、温度上昇手段としての加熱装置30によって加熱された転写ベルト10によって温度が上昇され、感熱性増粘材料によって被硬化層12Bの粘度が上昇する。
【0171】
なお、このインクジェット記録ヘッド14によるインク滴14Aの吐出は、張力の掛けられた状態で回転支持された転写ベルト10における非屈曲領域の表面で行われる。また、加熱装置30が配置される位置も、ベルト熱膨張による速度変化に追従した一定の張力の掛けられた状態で回転支持された転写ベルト10における非屈曲領域に対し加熱し得る位置であることが好ましい。つまり、ベルト表面がたわみのない状態で被硬化層12Bにインク滴14Aが吐出される。
【0172】
次に、加圧ロール16A及び巻掛ロール16Bにより記録媒体Pと転写ベルト10とを挟み込んで圧力をかける。このとき、転写ベルト10の表面の被硬化層12Bが記録媒体Pに接触する(接触開始位置)。その後、巻掛ロール10C及び平板22によって挟まれた位置(剥離位置)までは、被硬化層12Bが転写ベルト10及び記録媒体Pの両方に接触した状態が維持される。
【0173】
次に、硬化装置18によって、転写ベルト10及び記録媒体Pの両方に接触した状態の(接触中の)被硬化層12Bに、転写ベルト10を介して刺激が供給されることで、被硬化層12Bが硬化し、転写ベルト10の表面の被硬化層12Bが記録媒体Pに転写される。
【0174】
刺激付与量としては、被硬化層12Bが、完全に硬化する量であることが望ましい。具体的には、例えば刺激が紫外線である場合、転写効率及び発熱抑制の観点から、積算光量で10mJ/cm以上1000mJ/cm以下範囲が望ましい。
【0175】
また、被硬化層12Bが、転写ベルト10から剥離し得る程度に硬化する量の刺激付与量を与える場合には、初期の転写/剥離後に被硬化層12Bが完全に硬化する為、さらに刺激を付与すれば良い。
【0176】
なお、本実施形態では、硬化装置18によって、転写ベルト10及び記録媒体Pの両方に接触した状態の被硬化層12Bに転写ベルト10を介して刺激を付与することで、被硬化層12Bを硬化させる場合を説明するが、さらに、記録媒体Pに転写された後の被硬化層12Bを完全に硬化させるための硬化装置(図示省略)を更に備えた構成としてもよい。
【0177】
次に、剥離位置において被硬化層12Bが転写ベルト10から剥離されることにより、インク滴14Aによる画像領域Tの形成された硬化性樹脂層(画像潜像層)が記録媒体Pに形成される。
【0178】
そして、被硬化層12Bが記録媒体Pへ転写された後の転写ベルト10表面に残った画像記録用組成物や離型剤24Aの残留物や異物を除去装置20により除去する。以上のように、本実施形態に係る画像形成装置101における一連の画像形成動作が行われる。
【実施例】
【0179】
以下、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例により特に制限されるものではない。
【0180】
<実施例1>
−画像記録用組成物−
・硬化性材料(ウレタンプレポリマー、M1600、
東亜合成製、分子量10000) 10質量%
・硬化性材料(シリコーン変性ウレタン、CN990、
大阪有機化学製、分子量25000) 5質量%
・感熱性増粘材料(N−イソプロピルアクリルアミド、反応性基あり、
NIPAM、興人製) 10質量%
・TMP−EOTAc(新中村化学製) 40質量%
上記組成物を混合し、これに吸液粒子(スルホン酸変性架橋ポリアクリル酸Na、アクアリックCS7s、粒経2.8μm)30質量%を配合した後、ボールミル攪拌により48時間混合させて、開始剤(IC184、チバスペシャリティーケミカルズ製)5質量%を加え、画像記録用組成物を作製した。
粘度を、前述の方法により測定したところ700mPa・sであった。
【0181】
−画像記録評価試験−
図1に示すインクジェット画像記録装置において、ETFE/PET接着積層ベルト(膜厚110μm)を中間転写ベルト(幅365mm×366mmφ)として装着した。
上記中間転写ベルト表面に、前記より得た画像記録用組成物をダイコート法により連続塗布して膜厚33μmの被硬化層を形成した。さらにインク(セイコーエプソン社製、商品名:IC6−CL32)を吐出装置から被硬化層に吐出させて印字した後、温度上昇装置としてのハロゲンヒーターによって中間転写ベルト内周面側から中間転写ベルトを60℃に加熱した。次いで、刺激付与装置としての紫外線照射装置(160Wハロゲンランプ)から紫外線を5秒間照射して被硬化層をUV硬化すると共に、記録媒体(PETタック紙、王子タック社製、商品名:PET−C50)上に加重1kGでロール加圧転写して、画像を固定した。
以下に示す各物性の測定と、評価試験の結果を表1に示す。
【0182】
・粘度
ハロゲンヒーターによって上記の通り加熱した後の被硬化層(画像記録用組成物)を採取し、前述の方法により粘度を測定した。加熱後の粘度、および粘度変化比率(加熱後の粘度/加熱前の粘度)を下記表1に示す。
また併せて、増粘が発現する温度(増粘性転移温度)を下記方法により測定した。
(増粘性転移温度)
インクが吐出された被硬化層(画像記録用組成物)を、25℃と、定められた温度(せん断速度100−1/s)と、各実施例・比較例での中間転写ベルトの加熱温度と、において粘度を測定して算出する。
【0183】
・膜厚および面内変動
前記の通り紫外線照射によってUV硬化した後の被硬化層の膜厚および面内変動を、前述の方法により測定した。
【0184】
・硬度
前記の通り紫外線照射によってUV硬化した後の被硬化層のD硬度を、下記方法により測定した。
(D硬度測定方法)
アスカーD硬度計によりD硬度針を中間転写ベルト上にあるUV硬化した後の被硬化層に直接当てて表面硬度を計測した。
【0185】
・耐水性
前記の通り紫外線照射によってUV硬化した後の被硬化層に対し、水滴をシリンジより1滴滴下し60秒後ウエスでふき取った後の残渣状態(耐水性)を観察し、以下の評価基準に沿って評価した。
○:60秒放置後目視上、ふき取り痕跡が見えず
△:60秒放置後表面に水痕跡が拭きとり後わずかに見える
×:60秒放置後水痕跡が残り、表面が侵食された
【0186】
・接着性
前記の通り紫外線照射によってUV硬化した後の被硬化層に対し、碁盤目試験(JIS−K5400(1994年)に従いセロハンテープで剥離性(接着強度)を測定した。
【0187】
また、前記の通り紫外線照射によってUV硬化し固定された被硬化層を有する記録媒体から25mm幅の短冊状サンプルを作製し、前記記録媒体の端部と被硬化層の同じ側の端部とを摘んだ状態でそれぞれ逆の方向(記録媒体は該記録媒体が設けられている側、被硬化層は該被硬化層が設けられている側の方向)に速度30mm/minで引っ張り、引っ張りに対する接着強度を測定した。
【0188】
・耐折り曲げ性
前記の通り紫外線照射によってUV硬化し固定された被硬化層を有する記録媒体に対し、記録媒体(PETタック紙)を固定された被硬化層と共に180°折り曲げ、解放後のUV十紙面を観察するテスト(180°クラックテスト)を行い、以下の評価基準に沿って評価した。
○:折り目は残るが、クラック・剥離は発生せず密着した状態
△:折り目と傾斜した状態で剥離までは至らない状態
×:折り目で割れ、回復せず剥離を伴う状態
【0189】
・転写性
被硬化層が転写される前の記録媒体の質量と、被硬化層が転写された後の記録媒体の質量との差をもとに、中間転写ベルトから記録媒体へ転写された被硬化層の質量を測定し、転写効率を算出した。
【0190】
・画質(ライン画質)
前述の通り記録した画像において、細線のようなライン画像を形成し、得られた該ライン画像を観察して、以下の評価基準に沿ってライン画質を評価した。
○:細線の再現性よく、一定したライン幅に形成され濃度低下がない状態
△:細線の幅にやや細いところが部分的にあり、やや濃度低下がある状態
×:細線の再現性なく、部分的に切れた所があり、濃度低下が大きい状態
【0191】
・画質(濃度ムラ)
前述の通り記録した画像において、16諧調パラーンでパッチ濃度変化させた画像を形成し、得られた該画像を観察して、以下の評価基準に沿って濃度ムラを評価した。
○:パッチ濃度とインク吐出量との相関係数が0.90以上で安定した濃度を保持
△:パッチ濃度とインク吐出量との相関係数が0.7以上0.90未満でや不安定な濃度状態
×:パッチ濃度とインク吐出量との相関係数が0.7未満で不安定な濃度ムラを保持
【0192】
<実施例2>
実施例1において、硬化性材料(CN990)を、硬化性材料(ポリオール側鎖ジメチルシリコーン変性プレポリマー、UV3500、信越化学製、分子量2200)5質量%に、感熱性増粘材料(NIPAM)を、感熱性増粘材料(ポリオキシエチレン−ポリプロピレン−ポリオキシエチレントリブロックポリマー、反応性基トリアクリル、BASF製、PluronicF127)10質量%に、吸液粒子(アクアリックCS7s)を、吸液粒子(ポリスチレン−ブチルメタクリレート:和光純薬製とフタル酸エトキシメタクリレート3元乳化共重合体粒子、三菱化学社製、SBP136、粒径3.8μm)30質量%に、変更した以外は実施例1に記載の方法により、画像記録用組成物を作製した。
粘度を、前述の方法により測定したところ1200mPa・sであった。
【0193】
また実施例1の画像記録評価試験において、画像記録用組成物の中間転写ベルト上への塗布膜厚を25μmに、ハロゲンヒーターによって中間転写ベルト内周面側から中間転写ベルトを加熱する温度を70℃に変更した以外、実施例1に記載の方法により各物性の測定と評価試験とを行った。結果を表1に示す。
【0194】
<実施例3>
実施例1において、硬化性材料(CN990)を、硬化性材料(シリコーン変性プレポリマー、UV3570、信越化学製、分子量3000)5質量%に、感熱性増粘材料(NIPAM)を、感熱性増粘材料(増粘性多糖高分子化合物:ケルザン、CP KELCO社、反応性基アクリル基)5質量%に、変更し、更に希釈剤としてフェノキシアクリレートPOA(東亞合成社製、sp値=9.7)5質量%%を混合した以外は実施例1に記載の方法により、画像記録用組成物を作製した。
粘度を、前述の方法により測定したところ650mPa・sであった。
【0195】
また実施例1の画像記録評価試験において、画像記録用組成物の中間転写ベルト上への塗布膜厚を18μmに、ハロゲンヒーターによって中間転写ベルト内周面側から中間転写ベルトを加熱する温度を55℃に変更した以外、実施例1に記載の方法により各物性の測定と評価試験とを行った。結果を表1に示す。
【0196】
<実施例4>
実施例2において、感熱性増粘材料(PluronicF127)を、感熱性増粘材料(水性ポリウレタン樹脂、APC−55、日華化学製、反応性基ジアクリレート)10質量%に、変更した以外は実施例2に記載の方法により、画像記録用組成物を作製した。
粘度を、前述の方法により測定したところ1400mPa・sであった。
【0197】
また実施例1の画像記録評価試験において、画像記録用組成物の中間転写ベルト上への塗布膜厚を24μmに、ハロゲンヒーターによって中間転写ベルト内周面側から中間転写ベルトを加熱する温度を80℃に変更した以外、実施例1に記載の方法により各物性の測定と評価試験とを行った。結果を表1に示す。
【0198】
<比較例1>
実施例1において、感熱性増粘材料(NIPAM)を含有させず、TMP−EOTAcの量を40質量%から50質量%に変更した以外は実施例1に記載の方法により、画像記録用組成物を作製した。
粘度を、前述の方法により測定したところ1200mPa・sであった。
また実施例1の画像記録評価試験において、画像記録用組成物の中間転写ベルト上への塗布膜厚を20μmに変更し、ハロゲンヒーターによる中間転写ベルトの加熱を行わなかった以外、実施例1に記載の方法により各物性の測定と評価試験とを行った。結果を表1に示す。
【0199】
【表1】



【符号の説明】
【0200】
10 転写ベルト
12 被硬化層形成装置
12A 画像記録用組成物
12B 被硬化層
14 インクジェット記録ヘッド
18 硬化装置(転写部の一例)
30 加熱装置(温度上昇手段)
101 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸液粒子と、
刺激に反応して硬化する硬化性材料と、
温度上昇に伴い粘度が増加する感熱性増粘材料と、
を含有する画像記録用組成物。
【請求項2】
前記感熱性増粘材料が分子内に反応性の基を有する請求項1に記載の画像記録用組成物。
【請求項3】
前記硬化性材料として硬化性プレポリマーを含有する請求項1または請求項2に記載の画像記録用組成物。
【請求項4】
中間転写体と、
請求項1に記載の画像記録用組成物を前記中間転写体上へ供給し被硬化層を形成する供給装置と、
前記中間転写体上に供給された前記被硬化層に、水性溶媒を含む液滴を吐出する吐出装置と、
前記液滴の吐出された前記被硬化層を前記中間転写体から記録媒体へ転写する転写装置と、
前記吐出装置により前記被硬化層に前記液滴が吐出された後、前記転写装置により前記被硬化層が前記記録媒体に転写される以前において、前記被硬化層の温度を上昇させる温度上昇装置と、
前記被硬化層へ刺激を付与する刺激付与装置と、
を備えた画像記録装置。
【請求項5】
前記温度上昇装置が、前記中間転写体の少なくとも一部を30℃以上100℃以下の温度に加熱することで、該中間転写体上の前記被硬化層の温度を上昇させる請求項4に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記温度上昇装置が、前記中間転写体の前記被硬化層が形成される側の表面とは反対の表面側から該中間転写体を加熱する請求項4または請求項5に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記画像記録用組成物の温度上昇前の粘度が3000mPa・s以下であり、温度上昇に伴って粘度が増加した後の粘度が1500mPa・s以上50000mPa・s以下であって且つ前記温度上昇前の粘度よりも高い粘度である請求項4〜請求項6の何れか1項に記載の画像記録装置。
【請求項8】
請求項1に記載の画像記録用組成物を中間転写体上へ供給し被硬化層を形成する供給工程と、
前記中間転写体上に供給された前記被硬化層に、水性溶媒を含む液滴を吐出する吐出工程と、
前記液滴の吐出された前記被硬化層を前記中間転写体から記録媒体へ転写する転写工程と、
前記吐出工程で前記被硬化層に前記液滴が吐出された後、前記転写工程で前記被硬化層が前記記録媒体に転写される以前において、前記被硬化層の温度を上昇させる温度上昇工程と、
前記被硬化層へ刺激を付与する刺激付与工程と、
を備えた画像記録方法。
【請求項9】
前記温度上昇工程は、前記中間転写体の少なくとも一部を30℃以上100℃以下の温度に加熱することで、該中間転写体上の前記被硬化層の温度を上昇させる請求項8に記載の画像記録方法。
【請求項10】
前記温度上昇工程は、前記中間転写体の前記被硬化層が形成される側の表面とは反対の表面側から該中間転写体を加熱する請求項8または請求項9に記載の画像記録方法。
【請求項11】
前記画像記録用組成物の温度上昇前の粘度が3000mPa・s以下であり、温度上昇に伴って粘度が増加した後の粘度が1500mPa・s以上50000mPa・s以下であって且つ前記温度上昇前の粘度よりも高い粘度である請求項8〜請求項10の何れか1項に記載の画像記録方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−86310(P2013−86310A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227264(P2011−227264)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】