説明

画像記録装置、画像記録方法

【課題】主走査方向に移動する記録ヘッドから記録媒体へ液体を噴射してライン画像を形成する主走査を複数回行って、副走査方向に隣接するライン画像を互いに異なる主走査により形成する画像記録技術において、ライン画像間における隙間の発生を抑制する。
【解決手段】主走査方向に記録ヘッドを移動させつつ記録ヘッドから液体を噴射させて主走査方向に延びる1ライン分のライン画像を形成する主走査と、副走査方向に記録ヘッドを移動させる副走査とを交互に実行することで、複数の主走査を実行して、副走査方向に隣接するライン画像を互いに異なる主走査により形成する制御部と、記録媒体に形成されたマークの副走査方向への変位を検出する検出部とを備え、制御部は、副走査で記録ヘッドを副走査方向へ移動させる移動量を、検出部の検出結果に基づいて調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、記録媒体に液体を噴射して画像を記録する技術に関し、特に、主走査方向に移動する記録ヘッドから記録媒体へ液体を噴射してライン画像を形成する主走査を複数回行うことで、記録媒体に画像を記録する画像記録技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プラテン上に支持された記録媒体に対して、記録ヘッドが備えるノズルから液体であるインクを噴射して、記録媒体に画像を印刷する画像記録装置が記載されている。この画像記録装置の記録ヘッドは、記録媒体の幅方向(副走査方向)に並ぶ複数のノズルを備えるとともに、副走査方向に直交する主走査方向へ移動自在に構成されている。そして、記録ヘッドは、主走査方向に移動しながら各ノズルから記録媒体へ向けて液体を噴射する主走査を実行する。この主走査によって、記録媒体では、1つのノズルにより形成された主走査方向に延びる1ライン分の画像(ライン画像)が副走査方向に複数並ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−292129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような画像記録装置では、複数回の主走査を実行することで、より高解像度な画像を得ることができる。具体的には、上記の主走査と、副走査方向へ記録ヘッドを移動させる副走査とを交互に実行して、複数回の主走査を実行すれば良い。つまり、主走査が1回完了すると、副走査が実行されて、記録ヘッドが副走査方向に移動する。また、この副走査に続いて、主走査が再び実行されて、記録ヘッドが主走査方向に移動する。これにより、先程の主走査により既に形成された複数のライン画像の間に、新たな主走査によるライン画像が形成される。この要領で主走査と副走査とを交互に実行して、複数の主走査を実行することで、先に形成されたライン画像の間に新たにライン画像を形成して、より高解像度な画像を印刷することができる。
【0005】
しかしながら、このようにして印刷を行った場合、水分や温度によって記録媒体が副走査方向に伸びてしまうことに起因して、次のような問題が発生するおそれがあった。つまり、上記のようにして複数の主走査を実行して、先に形成された複数のライン画像の間に新たなライン画像を形成する構成では、異なるタイミングで実行された主走査により形成されたライン画像が副走査方向に互いに隣接する。そのため、隣接するライン画像に注目したとき、一方のライン画像を形成した主走査から、他方のライン画像を形成する主走査までの期間に記録媒体が副走査方向に伸びて、これら一方と他方のライン画像の間に液体(インク)の抜けた隙間が発生してしまうおそれがあった。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、主走査方向に移動する記録ヘッドから記録媒体へ液体を噴射してライン画像を形成する主走査を複数回行って、副走査方向に隣接するライン画像を互いに異なる主走査により形成する画像記録技術において、ライン画像間における隙間の発生を抑制する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる画像記録装置は、上記目的を達成するために、記録媒体を支持する支持部材と、主走査方向および副走査方向に移動自在であり、支持部材に支持された記録媒体に液体を噴射する記録ヘッドと、主走査方向に記録ヘッドを移動させつつ記録ヘッドから液体を噴射させて主走査方向に延びる1ライン分のライン画像を形成する主走査と、副走査方向に記録ヘッドを移動させる副走査とを交互に実行することで、複数の主走査を実行して、副走査方向に隣接するライン画像を互いに異なる主走査により形成する制御部と、記録媒体に形成されたマークの副走査方向への変位を検出する検出部とを備え、制御部は、副走査で記録ヘッドを副走査方向へ移動させる移動量を、検出部の検出結果に基づいて調整することを特徴としている。
【0008】
この発明にかかる画像記録方法は、上記目的を達成するために、主走査方向に記録ヘッドを移動させつつ記録ヘッドから液体を噴射させて主走査方向に延びる1ライン分のライン画像を記録媒体に形成する主走査と、副走査方向に記録ヘッドを移動させる副走査とを交互に実行することで、複数の主走査を実行して、副走査方向に隣接するライン画像を互いに異なる主走査により形成する画像記録方法において、副走査で記録ヘッドを副走査方向へ移動させる移動量は、記録媒体に形成されたマークの副走査方向への変位を検出した結果に基づいて調整されることを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明(画像記録装置および画像記録方法)では、主走査方向に記録ヘッドを移動させつつ記録ヘッドから液体を噴射して主走査方向に伸びる1ライン分のライン画像を形成する主走査と、副走査方向に記録ヘッドを移動させる副走査とが交互に実行される。このようにして複数の主走査が実行されて、副走査方向に隣接するライン画像が互いに異なる主走査により形成される。そのため、異なるタイミングで実行された主走査により形成されたライン画像が、副走査方向に隣接して並ぶこととなる。そして、このような構成では、記録媒体が副走査方向へ伸びた場合に、上述のような隙間が発生するおそれがあった。
【0010】
このような問題に対して、この発明は、ライン画像を形成する位置を副走査方向に調整することで対応している。つまり、上記のように構成された発明では、ライン画像の副走査方向への位置は、当該ライン画像を形成するために主走査を行う記録ヘッドの副走査方向への位置を変えることで、調整可能である。具体的には、副走査において記録ヘッドを副走査方向に移動させる移動量を調整することで、この副走査に続いて実行される主走査での記録ヘッドの副走査方向への位置を変えて、ライン画像の副走査方向への位置を調整できる。したがって、記録媒体の副走査方向への伸びに応じて、副走査での記録ヘッドの移動量を調整できれば、上述の隙間の発生を抑制することができる。そこで、この発明は、記録媒体に形成されたマークの副走査方向への変位を検出する構成を備える。そして、この検出結果に基づいて、副走査において記録ヘッドを副走査方向へ移動させる移動量が調整される。その結果、上述の隙間の発生を抑制することが可能となっている。
【0011】
なお、マークは、記録ヘッドが記録媒体に液体を噴射することで、記録媒体に形成されるように画像記録装置を構成しても良い。このような構成では、マークを形成するタイミングや位置を適宜調整できるといった利点がある。
【0012】
この際、制御部は、記録ヘッドによるマークの形成後に実行する副走査において記録ヘッドを副走査方向へ移動させる移動量を、検出部の検出結果に基づいて調整するように画像記録装置を構成すると良い。
【0013】
また、マークは、主走査の実行中に主走査方向に移動する記録ヘッドが記録媒体に液体を噴射することで、記録媒体に形成されるように画像記録装置を構成しても良い。このような構成は、主走査の実行中にマークを形成することができるため、マークを形成するための動作を別途実行する必要がなく、印刷速度の向上を図るにあたって有利となる。
【0014】
この際、その実行中にマークの形成が行われる主走査では、当該マークを形成してからライン画像を形成するように画像記録装置を構成しても良い。つまり、上述のように記録媒体に液体を噴射してライン画像を形成する構成では、ライン画像を形成する度に記録媒体に付着する液量が増して、記録媒体が副走査方向へ伸びていく傾向にある。この場合、ライン画像の形成により発生する記録媒体のこのような伸びを、マークの変位に反映させることが好適となる。これに対して、その実行中にマークの形成が行われる主走査では、当該マークを形成してからライン画像を形成するように構成しておけば、このライン画像の形成の際に発生する記録媒体の伸びを、マークの変位に反映させることができる。その結果、上述の隙間の発生を、より確実に抑制することが可能となる。
【0015】
また、副走査方向に隣接するライン画像を形成する複数の主走査のうち、最初に実行される主走査の実行中にマークが形成されるように画像記録装置を構成しても良い。このように構成することで、各主走査で画像ラインが形成される際に発生する記録媒体の伸びを、マークの変位に反映させることができる。その結果、上述の隙間の発生を、より確実に抑制することが可能となる。
【0016】
ところで、記録媒体の伸び方は、副走査方向への位置によって異なる場合がある。そこで、複数のマークが副走査方向において互いに異なる位置に形成されるように画像記録装置を構成しても良い。これによって、副走査方向の異なる位置における記録媒体の伸び方の違いが、マークの変位により検出可能となる。その結果、上述の隙間の発生を、より確実に抑制することが可能となる。
【0017】
また、検出部は、検出領域の長手方向が副走査方向に平行に配置されたラインセンサーを有し、ラインセンサーがマークを検出した結果に基づいて、マークの副走査方向への変位を検出するように画像記録装置を構成しても良い。このようなラインセンサーを用いることで、マークの副走査方向への変位を確実に捉えることができる。
【0018】
また、記録媒体は紙系の媒体であっても良い。このような紙系の媒体は、記録ヘッドから噴射される液体等の水分によって伸びやすく、その結果、上述のような隙間が発生するおそれがある。そこで、本発明を適用することで、この隙間の発生を抑制することが好適となる。
【0019】
また、記録媒体はフィルム系の媒体であっても良い。このようなフィルム系の媒体は、温度によって伸びやすい。特に、支持部材が支持する記録媒体を加熱する構成では、温度による伸びが顕著となるおそれがある。そこで、本発明を適用することで、この隙間の発生を抑制することが好適となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用可能な印刷システムの一例を示す模式図。
【図2】記録ユニットの構成を部分的に示す平面図。
【図3】図1の印刷システムが備える電気的構成を模式的に示すブロック図。
【図4】第1実施形態における印刷動作を模式的に示す図。
【図5】第2実施形態における印刷動作を模式的に示す図。
【図6】第4実施形態における印刷動作を模式的に示す図。
【図7】第5実施形態における印刷動作を模式的に示す図。
【図8】第6実施形態における印刷動作を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
第1実施形態
図1は、本発明を適用可能な印刷システムの一例を示す模式図である。なお、図1や以下の図面では必要に応じて、装置各部の配置関係を明確にするために、Z軸を鉛直軸とするXYZ直交座標が併記されている。以下の説明では、各座標軸(の矢印)が向く方向を正方向とし、その反対方向を負方向とし、Z軸の正側を上側とし、Z軸の負側を下側として適宜取り扱う。
【0022】
印刷システム100は、パーソナルコンピューター等の外部装置から受信した画像データに基づいて印刷データを生成するホスト装置200と、ホスト装置200から受信した印刷データに基づいて画像を印刷するプリンター300とを備える。このプリンター300は、ロール状に巻かれた長尺なシートSを繰り出しつつ、このシートSに対してインクジェット方式を用いて画像を印刷するものである。
【0023】
図1に示すように、プリンター300は、略直方体形状を有する本体ケース1を備える。本体ケース1内部には、シートSを巻いたロールR1からシートSを繰り出す繰出部2と、繰り出されたシートSにインクを噴射して印刷を行う印刷室3と、インクが付着したシートSを乾燥させる乾燥部4と、乾燥後のシートSをロールR2として巻き取る巻取部5とが配置されている。
【0024】
より詳しくは、本体ケース1内は、XY平面に平行に(すなわち水平に)配置された平板状の基台6によってZ軸方向へ上下に区画されており、基台6の上側が印刷室3となっている。印刷室3内の略中央部では、プラテン30が基台6の上面に固定されている。プラテン30は矩形状を有しており、XY平面に平行なその上面によって、シートSを下側から支持する。そして、記録ユニット31が、プラテン30上に支持されたシートSに対して印刷を行う。
【0025】
一方、基台6の下側には、繰出部2、乾燥部4および巻取部5が配置されている。繰出部2は、プラテン30に対してX軸負方向の下側(図1の左斜め下)に配置されており、回転自在な繰出軸21を備えている。そして、この繰出軸21にシートSが巻きつけられて、ロールR1が支持されている。一方、巻取部5は、プラテン30に対してX軸正方向の下側(図1の右斜め下)に配置されており、回転自在な巻取軸51を備えている。そして、この巻取軸51にシートSが巻き取られて、ロールR2が支持されている。また、乾燥部4は、X軸方向における繰出部2と巻取部5との間で、プラテン30の直下に配置されている。なお、乾燥部4は、繰出部2および巻取部5に対してはやや上側にある。
【0026】
そして、繰出部2から巻取部5へと搬送されるシートSが、7本のローラー71〜77により案内されながら、印刷室3と乾燥部4とを順番に通過する。つまり、繰出部2が備える繰出軸21のX軸正方向にはローラー71が配置されており、繰出軸21からX軸正方向に繰り出されたシートSは、ローラー71に巻き掛けられて上へと案内される。
【0027】
ローラー71の上側であって印刷室3の内部には、後述するコロナ処理機8のアース電極ローラー81と2本のローラー72、73がX軸正方向にこの順に並んでいる。アース電極ローラー81は、2本のローラー72、73に対してやや下側にある。そのため、ローラー71から上へと案内されたシートSは、アース電極ローラー81に巻き掛けられて斜め上へと向きを変えた後に、2本のローラー72、73へ巻き掛けられる。
【0028】
これらローラー72、73は、プラテン30を挟むようにしてX軸方向にまっすぐ並んで(すなわち水平に)配置されており、それぞれの頂部がプラテン30の上面(シートSを支持する面)と同一の高さとなるように位置調整されている。したがって、ローラー72に巻き掛けられたシートSは、ローラー73に到るまでの間、プラテン30の上面に摺接しつつ水平(X軸方向)に移動する。そして、ローラー73に巻き掛けられたシートSは、下へと案内される。
【0029】
ローラー73の下側(基台6より下側)には、2本のローラー74、75がX軸負方向にこの順に並んでいる。ローラー74とローラー75とに巻き掛けられたシートSは、両ローラー74、75の間においてX軸方向に平行に(すなわち水平に)案内される。また、ローラー74、75の間には乾燥部4が配置されている。したがって、ローラー74に巻き掛けられたシートSは、X軸負方向に向きを変えるとともに、ローラー75に到るまでの間に乾燥部4の内部を通過する。
【0030】
ローラー75の下側では、2本のローラー76、77がX軸正方向にこの順に並んでいる。そして、ローラー76に巻き掛けられたシートSは、X軸正方向に向きを変えてローラー77に到る。また、ローラー77に巻き掛けられたシートSは、ローラー77のX軸正方向に配置された巻取部5の巻取軸51に巻き取られる。
【0031】
このように、繰出部2から繰り出されたシートSは、印刷室3や乾燥部4を通過して巻取部5に巻き取られる。そして、このシートSに対して、印刷室3での印刷処理や乾燥部4の乾燥処理が施される。
【0032】
印刷室3での印刷処理は、プラテン30の上側に配置された記録ユニット31により実行される。この記録ユニット31は、印刷室3内のX軸負方向の端部(図1の左端部)に配置されたインクカートリッジCRから図示しないインク供給機構によって供給されたインクを、インクジェット方式によりシートSに噴射して印刷を行う。具体的には、この記録ユニット31は、キャリッジ32と、キャリッジ32の下面に取り付けられた平板状の支持板33と、支持板33の下面に取り付けられた複数の記録ヘッド34とを備える。
【0033】
図2は、記録ユニットの構成を部分的に示す平面図である。図2に示すように、支持板33の下面では、15個の記録ヘッド34がY軸方向に等ピッチで2行千鳥で並んでいる。これらの記録ヘッド34は、ノズル35からインクを噴射するものであり、互いに同一の構成を備えている。そこで以下では、1つの記録ヘッド34で代表して、その構成の詳細について説明する。
【0034】
記録ヘッド34の下面では、複数(例えば180個)のノズル35がY軸方向に等ピッチで直線状に並んで1つのノズル列35Lが構成されるとともに、複数のノズル列35LがX軸方向に等ピッチで並んでいる。記録ヘッド34の下面で並ぶ複数のノズル列35Lは、互いに異なるインク色に対応しており、例えば8色のインクを用いた場合は、8列のノズル列35Lが記録ヘッド34の下面に並ぶ。そして、同じノズル列35Lに属するノズル35は互いに同じ色のインクを噴射する一方、異なるノズル列35Lに属するノズル35は互いに異なる色のインクを噴射する。なお、ノズル35は、インクの詰まった微細管に取り付けられたピエゾ素子に電圧を印加して変形させることで、インクを管外に噴射するピエゾ方式によるものである。
【0035】
図1に戻って説明を続ける。上述のように構成された記録ユニット31のキャリッジ32は、支持板33および記録ヘッド34と一体的に移動自在となっている。具体的には、印刷室3内には、X軸方向に延びる第1ガイドレール36が設けられており、キャリッジ32は、第1CRモーターMx(図3)の駆動力を受けると、第1ガイドレール36に沿ってX軸方向に移動する。さらに、印刷室3内には、Y軸方向に延びる第2ガイドレール(図示省略)が設けられており、キャリッジ32は、第2CRモーターMy(図3)の駆動力を受けると、第2ガイドレールに沿ってY軸方向に移動する。
【0036】
そして、プラテン30の上面で停止するシートSに対して、記録ユニット31のキャリッジ32をXY面内で二次元的に移動させて、印刷が実行される。具体的には、記録ユニット31は、キャリッジ32をX軸方向(主走査方向)に移動させつつ記録ヘッド34の各ノズル35からシートSにインクを噴射する動作(主走査)を実行する。この主走査では、1つのノズルが噴射するインクにより形成されたX軸方向に延びる1ライン分の画像(ライン画像)が、Y軸方向に間隔を空けつつ複数並んで、二次元の画像が印刷される。そして、この主走査と、キャリッジ32をY軸方向(副走査方向)に移動させる副走査とが交互に実行されて、複数回の主走査が実行される(ラテラルスキャン方式)。
【0037】
つまり、記録ユニット31は1回の主走査を完了すると、副走査を行なってキャリッジ32をY軸方向に移動させる。続いて、記録ユニット31は、この副走査によって移動した位置から、キャリッジ32をX軸方向(の先程の主走査とは反対向き)に移動させる。これによって、先程の主走査により既に形成された複数のライン画像それぞれの間に、新たな主走査によるライン画像が形成される。そして、これら主走査と副走査とが交互に実行される。つまり、このプリンター300では、キャリッジ32をX軸方向に移動させつつノズル35からインクを噴射して、複数のライン画像から成る中間生成画像を形成する動作(主走査)を、Y軸方向への位置を変えながら(副走査)、複数回数実行することで、中間生成画像を重ね合わせた画像が形成される。
【0038】
このように、複数回の主走査を実行することで、1回の印刷が実行される。ここで、1回の主走査を「パス」と称することとし、複数回のパスにより実行される1回の印刷を「フレーム」と称することとする。また、1回のパスでシートSに形成される中間生成画像を「1パス画像」と称することとする。
【0039】
このような主走査と副走査を交互に繰り返して行う理由は、解像度を向上させるためである。つまり、M回のパスを実行して、M個の1パス画像を重ね合わせることで、1パス画像のM倍の解像度を有する1フレーム分の画像を得ることが可能となる。そこで、記録ユニット31は、印刷すべき画像の解像度に応じた回数のパスを実行して1フレームの印刷を実行する。
【0040】
ちなみに、キャリッジ32は、X軸方向に往復移動可能である。そこで、記録ユニット31は、キャリッジ32の往路および復路のそれぞれでパスを実行することで、複数のパスを効率的に実行している。
【0041】
上述のような1フレームの印刷は、シートSをX軸方向に間欠的に移動させながら繰り返し実行される。具体的には、プラテン30の上面のほぼ全域にわたる所定範囲が印刷領域となっている。そして、この印刷領域のX軸方向への長さに対応する距離(間欠搬送距離)を単位として、シートSをX軸方向へ間欠的に搬送するとともに、間欠搬送中にプラテン30の上面に停止するシートSに対して1フレームの印刷が行われる。具体的に言えば、プラテン30に停止するシートSに1フレームの印刷が終わると、シートSが間欠搬送距離だけX軸方向に搬送されて、シートSの未印刷の面がプラテン30に停止する。続いて、この未印刷面に新たに1フレームの印刷が実行され、これが完了すると、再びシートSが間欠搬送距離だけX軸方向に搬送される。そして、これら一連の動作が繰り返し実行される。
【0042】
なお、間欠搬送中にプラテン30の上面に停止しているシートSを平坦に保つために、プラテン30は、その上面に停止しているシートSを吸引する機構を備える。具体的には、プラテン30の上面には、図示しない多数の吸引孔が開口するとともに、プラテン30の下面には、吸引部37が取り付けられている。そして、吸引部37が動作することで、プラテン30の上面の吸引孔に負圧が発生して、シートSがプラテン30の上面に吸引される。そして、吸引部37は、印刷のためにシートSがプラテン30上に停止している間は、シートSを吸引することで、シートSを平坦に保つ一方、印刷が終了すると、シートSの吸引を止めて、シートSのスムーズな搬送を可能とする。
【0043】
さらに、プラテン30の下面には、ヒーター38が取り付けられている。このヒーター38は、プラテン30を所定温度(例えば45度)に加熱するものである。これにより、シートSは、記録ヘッド34から印刷処理を受けるのと並行して、プラテン30の熱によって1次乾燥されることとなる。そして、この1次乾燥により、シートSに着弾したインクの乾燥が促進される。
【0044】
こうして、プラテン30の上面において、1フレームの印刷を受けるとともに1次乾燥されたシートSは、シートSの間欠搬送に伴って移動して乾燥部4へ到達する。この乾燥部4は、乾燥用に加熱した空気により、シートSに着弾したインクを完全に乾燥させる乾燥処理を実行する。そして、この乾燥処理を受けたシートSは、シートSの間欠搬送に伴って巻取部5に到達して、ロールR2として巻き取られる。
【0045】
以上のようにして、記録ユニット31および乾燥部4によって、シートSに対して印刷・乾燥処理が施される。また、プリンター300は、上述した記録ユニット31や乾燥部4ほかに、コロナ処理機8やメンテナンスユニット9といった機能部を備える。続いて、これらの構成および動作の詳細について説明する。
【0046】
コロナ処理機8は、プラテン30に対してシートSの搬送方向の上流側に配置されており、プラテン30に進入する前のシートSの表面を改質するものである。具体的には、このコロナ処理機8は、ローラー72に対してシートSの搬送方向の上流側でシートSを巻き掛けるアース電極ローラー81と、シートSを挟んでアース電極ローラー81に対向するコロナ放電電極82と、コロナ放電電極82を覆う電極カバー83とを備える。コロナ放電電極82は、放電バイアス発生部84(図3)から放電バイアスの印加を受けて、アース電極ローラー81との間にコロナ放電を起こす。このコロナ放電によって、シートSの表面が改質されて、インクに対するシートSの濡れ性が向上する。このように印刷処理に先立ってシートSに表面改質を施しておくことで、印刷処理におけるシートSへのインクの定着性を高めることができる。
【0047】
メンテナンスユニット9は、プラテン30からX軸負方向に外れた位置に設けられており、非印刷時にホームポジション(メンテナンスユニットの直上位置)に退避する記録ヘッド34に対してメンテナンスを行う。このメンテナンスユニット9は、15個の記録ヘッド34に対して一対一の対応関係で設けられた15個のキャップ91と、キャップ91を昇降する昇降部93とを有する。
【0048】
このメンテナンスユニット9で実行されるメンテナンスとしては、キャッピング、クリーニングおよびワイピングがある。キャッピングは、昇降部93によりキャップ91を上昇させて、ホームポジションにある記録ヘッド34をキャップ91で覆う処理である。このキャッピングにより、記録ヘッド34が有するノズル35内でインクの粘性が増大するのを抑制することができる。また、クリーニングは、記録ヘッド34をキャッピングした状態で、キャップ91内に負圧を発生させることにより、ノズル35から強制的にインクを排出する処理である。このクリーニングにより、粘性が増大したインクやインク中の気泡等をノズル35から除去することができる。ワイピングは、記録ヘッド34においてノズル35の開口が並ぶ面(ノズル開口形成面)を、図示しないワイパーにより拭く処理である。このワイピングにより、記録ヘッド34のノズル開口形成面からインクを拭き取ることができる。
【0049】
以上が、印刷システム100が備える装置構成の概要である。続いて、上述した図1に図3を加えて、図1の印刷システムが備える電気的構成について詳述する。ここで、図3は、図1の印刷システムが備える電気的構成を模式的に示すブロック図である。
【0050】
上述したとおり、印刷システム100は、プリンター300のほか、これを制御するホスト装置200を備える。このホスト装置200は、例えばパーソナルコンピューターにより構成されており、プリンター300の動作を制御するプリンタードライバー210を内蔵するほか、プリンター300との通信機能を司る転送制御部220を備える。なお、プリンタードライバー210は、ホスト装置200の備えるCPU(Central Processing Unit)がプリンタードライバー210用のプログラムを実行することで構築される。
【0051】
また、ホスト装置200は、プリンタードライバー用のプログラムが記憶されたメディア230にアクセスして、当該プログラムを読み出すメディア駆動部240を備える。このメディア230としては、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリー等の種々のメディアを用いることができる。
【0052】
さらに、ホスト装置200は、作業者とのインターフェースとして、液晶ディスプレイ等で構成されるモニター250と、キーボードやマウス等で構成される操作部260とを備える。なお、タッチパネル式のディスプレイをモニター250として用いて、このモニター250のタッチパネルで操作部260を構成しても良い。モニター250には、印刷対象の画像のほかにメニュー画面が表示されている。したがって、作業者は、モニター250を確認しつつ操作部260を操作することで、メニュー画面から印刷設定画面を開いて、印刷媒体の種類、印刷媒体のサイズ、印刷品質、版数等の各種の印刷条件を設定することができる。
【0053】
印刷媒体(すなわちシートS)の種類は、紙系とフィルム系に大別される。具体例を挙げると、紙系には上質紙、キャスト紙、アート紙、コート紙等があり、フィルム系には合成紙、PET(Polyethylene terephthalate)、PP(polypropylene)等がある。印刷媒体のサイズとしては、シートSの幅(Y軸方向の幅)が設定される。印刷品質は、印刷する解像度に応じて用意された複数の印刷モードから1つの印刷モードを選択することで、設定することができる。例を挙げれば次のとおりである。つまり、上記プリンター300では、1フレームで実行されるパスの数を変えることで解像度を変化できる。そこで、1フレームで実行されるパスの数が異なる複数の印刷モードを用意しておき、印刷する解像度に応じたパス数の印刷モードを選択できるように構成すれば良い。これにより、選択した印刷モードのパス数に応じた解像度で印刷を実行することができる。なお、印刷モードに代えて解像度を直接入力することで、印刷品質を設定するように構成しても良い。版数は、印刷媒体の同一エリアに複数の版(画像)を重ねて印刷する際に設定されるものであり、具体的には、重ねて印刷する版の数が設定される。ちなみに、複数の版が設定されている場合は、モニター250に版毎の画像を表示することができる。
【0054】
そして、プリンタードライバー210は、上述のような、モニター250の表示や、操作部260からの入力の処理を制御するホスト制御部211を備える。つまり、ホスト制御部211は、メニュー画面や印刷設定画面等の各種画面をモニター250表示させるともに、各種画面において操作部260から入力された内容に応じた処理を行う。これにより、ホスト制御部211は、作業者からの入力に応じてプリンター300を制御するために必要な制御信号を生成する。
【0055】
また、プリンタードライバー210は、外部装置から受信した画像データに対して画像処理を施して、印刷データを生成する画像処理部213を備える。具体的には、解像度変換処理、色変換処理、ハーフトーン処理等といった画像処理が実行される。
【0056】
そして、ホスト制御部211で生成された制御信号や、画像処理部213で生成された印刷データは転送制御部220を介して、プリンター300の本体ケース1内に設けられたプリンター制御部400に転送される。この転送制御部220は、プリンター制御部400との間で双方向のシリアル通信が可能となっており、プリンター制御部400に制御信号や印刷データを転送するとともに、その応答信号をプリンター制御部400から受信してホスト制御部211に送信する。
【0057】
プリンター制御部400は、ヘッドコントローラー410とメカコントローラー420とを備える。ヘッドコントローラー410は、プリンタードライバー210から送信されてきた印刷データに基づいて、記録ヘッド34を制御する機能を司る。具体的には、ヘッドコントローラー410は、記録ヘッド34のノズル35からのインク噴射を、印刷データに基づいて制御する。この際、ノズル35からインクを噴射するタイミングは、キャリッジ32のX軸方向への移動に基づいて制御される。つまり、印刷室3内には、キャリッジ32のX軸方向の位置を検出するリニアエンコーダーE32が設けられている。そして、ヘッドコントローラー410は、リニアエンコーダーE32の出力を参照することで、キャリッジ32のX軸方向への移動に応じたタイミングで、ノズル35からインクを噴射させる。
【0058】
一方、メカコントローラー420は、シートSの間欠搬送やキャリッジ32の駆動を制御する機能を主として司る。具体的には、メカコントローラー420は、繰出部2、ローラー71〜77および巻取部5で構成されるシート搬送系を駆動する搬送モーターMsを、搬送モーターMsの回転を検出するエンコーダーEmcの出力に基づいて制御して、シートSの間欠搬送を実行する。また、メカコントローラー420は、第1CRモーターMxを制御することで、主走査のためのX軸方向への移動をキャリッジ32に実行させるとともに、第2CRモーターMxを制御することで、副走査のためのY軸方向への移動をキャリッジ32に実行させる。
【0059】
そして、ヘッドコントローラー410とメカコントローラー420とが同期を取りつつ、これらの制御を適宜実行することで、間欠搬送されるシートSに対して、解像度に応じた回数のパスが実行されて、1フレーム分の印刷が実行される。これにより、所望の解像度を有する1フレーム分の画像がシートSに印刷される。
【0060】
また、メカコントローラー420は、印刷処理のための上記制御のほかに種々の制御を実行できる。具体的には、メカコントローラー420は、電源スイッチSWのオン/オフを検出して、電源スイッチSWがオンした場合には、プリンター300の各部の起動処理を実行する。また、メカコントローラー420は、プラテン30上面の温度を検出する温度センサーS30の出力に基づいて、ヒーター38をフィードバック制御したり、乾燥部4の内部の温度を検出する温度センサーS4の出力に基づいて、乾燥部4をフィードバック制御したりといった温度制御を実行する。さらに、メカコントローラー420は、吸引部37を制御してプラテン30の吸引孔に発生する負圧を調整したり、メンテナンスユニット9を制御して所定のメンテナンスを実行したり、放電バイアス発生部84を制御して放電バイアスの値を調整したりといった各動作を実行可能である。
【0061】
以上が、図1の印刷システムが備える電気的構成の概要である。続いて、第1実施形態で実行される印刷動作の詳細について、図4を用いて説明する。図4は、第1実施形態における印刷動作を模式的に示す図である。同図の例では、X軸方向に所定幅を有する有効印刷領域IRに、1フレーム分の画像を4パスで印刷する動作が示されている。なお、「1パス目」〜「4パス目」の各欄にて、破線で示したキャリッジ32はパスの開始地点にあるキャリッジ32を表しており、実線で示したキャリッジ32はパスの終了地点にあるキャリッジ32を表している。同図に示すように、有効印刷領域IRのX軸負方向の外側とX軸正方向外側の間で、キャリッジ32を(記録ヘッド34と一体的に)2往復させることで、4パスが実行されて、1フレーム分の画像が印刷される。
【0062】
同図の「1パス目」の欄に示すように、1パス目では、キャリッジ32がシートSの有効印刷領域IRの上側をX軸正方向へ通過するとともに、記録ヘッド34の各ノズル35から液体(インク)が噴射される。これによって、シートSでは、複数のライン画像L1がY軸方向に間隔を空けて並ぶ。こうして1パス目の主走査が完了すると、副走査が実行されて、キャリッジ32がY軸正方向へ移動距離Y32だけ移動する。
【0063】
この副走査が完了すると、同図の「2パス目」の欄に示すように、キャリッジ32がシートSの有効印刷領域IRの上側をX軸負方向へ通過するとともに、記録ヘッド34の各ノズル35から液体が噴射される。これによって、シートSでは、1パス目に形成された複数のライン画像L1それぞれの間に新たなライン画像L2が1本ずつ形成される。こうして2パス目の主走査が完了すると、副走査が実行されて、キャリッジ32がY軸正方向へ移動距離Y32だけ移動する。続いて、「1パス目」「2パス目」と同じ要領で「3パス目」「4パス目」が実行されて、有効印刷領域IRに1フレーム分の画像が印刷される。
【0064】
このように4パスを実行することで、1本のノズル35が4本のライン画像L1〜L4をY軸方向に隣接して形成する。そして、この動作を複数のノズル35のそれぞれが実行することで、ライン画像L1〜L4がY軸方向に繰り返し並んで形成される。こうして、1パス画像の4倍の解像度を有する1フレーム分の画像が印刷される。
【0065】
ところで、副走査においてキャリッジ32を移動させる移動距離Y32については、その初期設定値αがメカコントローラー420の内蔵するメモリー(図示省略)に記憶されている。ただし、この実施形態では、シートSに形成されたマークの変位を検出した結果に基づいて補正値Δαが求められ、初期設定値αに補正値Δαを加算した値が移動距離Y32として設定される。すなわち、副走査におけるキャリッジ32の移動距離Y32を適宜補正しながら、印刷動作が実行される。以下では、この移動距離Y32の補正動作について詳述する。
【0066】
1フレームを構成する4パスのうち最初のパス(すなわち、1パス目)では、ライン画像L1の形成に先立って、マークM1がシートSに形成される。つまり、1パス目の実行のためにキャリッジ32がX軸正方向への移動を開始すると、記録ヘッド34のノズル35から液体が噴射されて、有効印刷領域IRのX軸負方向の外側にマークM1が形成される。そして、このマークM1の形成後に、有効印刷領域IRにライン画像L1が形成される。なお、このマークM1の形成は、キャリッジ32に備えられた複数のノズル35のうち、Y軸方向の最上流にあるノズル35により行われる。したがって、マークM1は、Y軸方向の上流端に形成されることとなる。
【0067】
こうして形成されたマークM1は光学センサーSoにより検出される。つまり、有効印刷領域IRのX軸負方向の外側は、プラテン30の上面に対向して光学センサーSoが配置されている。この光学センサーSoは、プラテン30に対する位置が固定された状態で本体ケース1により支持されたラインセンサーである。具体的には、光学センサーSoは、その検出領域Rsの長手方向がY軸方向と平行となるように位置決めされており、検出領域Rsにある検出対象物(ここでは、マークM1)を検出する。そして、光学センサーSoは、検出対象物のY軸方向への位置に関する情報を、メカコントローラー420に送信する。これにより、メカコントローラー420は、シートS上に形成されたマークM1のY軸方向への変位をモニターすることができる。
【0068】
そして、メカコントローラー420は、こうして検出したマークM1のY軸方向への変位に基づいて、各副走査におけるキャリッジ32の移動距離Y32の補正値Δαを求める。つまり、マークM1のY軸方向への変位は、シートSのY軸方向への伸びを反映している。そこで、メカコントローラー420は、このシートSのY軸方向への伸びに応じて、各副走査におけるキャリッジ32のY軸方向への移動距離Y32を調整しつつ、1フレーム分の印刷を実行する。
【0069】
具体的には、1パス目でマークM1が形成されると、メカコントローラー420は、マークM1の初期位置(形成時点でのマークM1の位置)を記憶する。続いて、1パス目におけるライン画像L1の形成が完了すると、メカコントローラー420は、マークM1のこの時点での位置と初期位置とを比較して、ライン画像L1の形成によって生じたマークM1の変位量を求め、この変位量に応じて補正値Δαを決定する。具体的には、例えばマークM1の変位量が50[μm]であった場合には、補正値Δαを50[μm]に決定する。そして、初期設定値αにこの補正値Δαを加算した値が、1パス目と2パス目の間に実行される副走査でのキャリッジ32の移動距離Y32として設定される。これにより、当該副走査では、キャリッジ32が移動距離Y32(=α+Δα)だけY軸方向に移動する。
【0070】
ちなみに、ライン画像L1の形成完了時点におけるマークM1の変位量が極小である場合には、初期設定値αがそのまま、1パス目と2パス目の間に実行される副走査でのキャリッジ32の移動距離Y32として設定される。そして、当該副走査では、キャリッジ32が移動距離Y32(=α)だけY軸方向に移動する。なお、以後に示す移動距離Y32の設定動作においても、マークの変位量が小さい場合は、初期設定値αがそのまま副走査でのキャリッジ32の移動距離Y32として設定されるものとする。
【0071】
このようにして、1パス目の後の副走査が実行されると、続いて2パス目が実行される。この2パス目においてライン画像L2の形成が完了すると、メカコントローラー420は、この時点におけるマークM1の初期位置からの変位量を求める。そして、上述と同様にして、2パス目と3パス目の間に実行される副走査でのキャリッジ32の移動距離Y32が、ライン画像L2の形成完了時点におけるマークM1の変位量に基づいて調整される。
【0072】
2パス目の後の副走査が完了すると、続いて3パス目が実行される。この3パス目においてライン画像L3の形成が完了すると、メカコントローラー420は、この時点におけるマークM1の初期位置からの変位量を求める。そして、上述と同様にして、3パス目と4パス目の間に実行される副走査でのキャリッジ32の移動距離Y32が、ライン画像L3の形成完了時点におけるマークM1の変位量に基づいて調整される。続いて、3パス目と4パス目の間の副走査が実行された後に、4パス目が実行されて、1フレーム分の印刷が完了する。
【0073】
なお、ここで示した例では、マークM1の変位量をそのまま補正値Δαに設定していたが、マークM1の変位量を補正値Δαに変換する方法は、これに限られず種々の変形が可能である。具体例を挙げると、各副走査でのキャリッジ32の移動距離を初期設定値αに固定した状態で各パスを実行して、この際に生じるライン画像L1〜L4のY軸方向への位置ずれを測定し、この測定結果から、ライン画像L1〜L4のY軸方向への位置ずれ量とマークM1の変位量との相関関係を求めてメカコントローラー420に予め記憶しておいても良い。そして、印刷を実行する際には、この相関関係に基づいてマークM1の変位量からライン画像L1〜L4のY軸方向への位置ずれを予測し、この予測値を打ち消すように補正値Δαを決定しても良い。
【0074】
以上のように構成された実施形態では、X軸方向(主走査方向)に記録ヘッド34を移動させつつ記録ヘッド34から液体を噴射してライン画像L1〜L4を形成する主走査と、Y軸方向(副走査方向)に記録ヘッド34を移動させる副走査とが交互に実行される。このようにして複数の主走査が実行されて、Y軸方向に隣接するライン画像L1〜L4が互いに異なる主走査(パス)により形成される。そのため、異なるタイミングで実行された主走査(パス)により形成されたライン画像L1〜L4が、Y軸方向に隣接して並ぶこととなる。そして、このような構成では、シートSがY軸方向へ伸びた場合に、上述のような隙間が発生するおそれがあった。
【0075】
このような問題に対して、この実施形態は、ライン画像L2〜L4を形成する位置をY軸方向に調整することで対応している。つまり、上記のように構成された実施形態では、ライン画像L2〜L4のY軸方向への位置は、当該ライン画像L2〜L4を形成するために主走査を行う記録ヘッド34のY軸方向への位置を変えることで、調整可能である。具体的には、副走査において記録ヘッド34をY軸方向に移動させる移動距離Y32を調整することで、この副走査に続いて実行される主走査での記録ヘッド34のY軸方向への位置を変えて、ライン画像L2〜L4のY軸方向への位置を調整できる。したがって、シートSのY軸方向への伸びに応じて、副走査での記録ヘッド34の移動距離Y32を調整できれば、上述の隙間の発生を抑制することができる。そこで、この実施形態は、シートSに形成されたマークM1のY軸方向への変位を検出する構成を備える。そして、この検出結果に基づいて、副走査において記録ヘッド34をY軸方向へ移動させる移動距離Y32が調整される。その結果、上述の隙間の発生を抑制することが可能となっている。
【0076】
また、この実施形態では、マークM1は、記録ヘッド34がシートSに液体を噴射することで、シートSに形成されている。このような構成では、マークM1を形成するタイミングや位置を適宜調整できるといった利点がある。
【0077】
また、この実施形態では、マークM1は、主走査の実行中にX軸方向に移動する記録ヘッド34がシートSに液体を噴射することで、シートSに形成されている。このような構成は、主走査の実行中にマークM1を形成することができるため、マークM1を形成するための動作を別途実行する必要がなく、印刷速度の向上を図るにあたって有利となる。
【0078】
ところで、上述のようにシートSに液体を噴射してライン画像L1〜L4を形成する構成では、ライン画像L1〜L4を形成する度にシートSに付着する液量が増して、シートSがY軸方向へ伸びていく傾向にある。この場合、ライン画像L1〜L4の形成により発生するシートSのこのような伸びを、マークM1の変位に反映させることが好適となる。
【0079】
そこで、この実施形態は、マークM1の形成が行われる1パス目の主走査において、当該マークM1を形成してからライン画像L1を形成している。したがって、ライン画像L1の形成の際に発生するシートSの伸びを、マークM1の変位に反映させることができる。その結果、上述の隙間の発生を、より確実に抑制することが可能となる。
【0080】
また、この実施形態では、複数の主走査(4パス)のうち、最初に実行される主走査(1パス目)の実行中にマークM1が形成される。このように構成することで、各主走査で画像ラインL1〜L4が形成される際に発生するシートSの伸びを、マークM1の変位に反映させることができる。その結果、上述の隙間の発生を、より確実に抑制することが可能となる。
【0081】
また、この実施形態は、光学センサーSoは、検出領域Rsの長手方向がY軸方向に平行に配置されたラインセンサーを有し、このラインセンサーがマークを検出した結果に基づいて、マークM1のY軸方向への変位を検出している。このようなラインセンサーを用いることで、マークM1のY軸方向への変位を確実に捉えることができる。
【0082】
また、上述のように、シートSとしては紙系の媒体およびフィルム系の媒体の両方が使用可能である。なお、紙系の媒体は、記録ヘッド34から噴射される液体等の水分によって伸びやすく、その結果、上述のような隙間が発生するおそれがある。そこで、この実施形態のように構成することで、隙間の発生を抑制することが好適となる。また、フィルム系の媒体は、温度によって伸びやすい。特に、プラテン30でシートSを加熱する構成では、温度による伸びが顕著となるおそれがある。そこで、この実施形態のように構成することで、隙間の発生を抑制することが好適となる。
【0083】
第2実施形態
ところで、シートSの伸び方は、Y軸方向への位置によって異なる場合がある。そこで、これから説明する第2実施形態では、複数のマークM1がY軸向において互いに異なる位置に形成されおり、これによって、Y軸方向の異なる位置におけるシートSの伸び方の違いが、マークM1の変位により検出可能となっている。なお、上記の第1実施形態と第2実施形態の差異は主としてマークの形成態様であるので、以下ではこの差異を中心に説明して、共通部分については説明を適宜省略する。ただし、第1実施形態と共通する構成を備えることで、第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が奏されることは言うまでも無い。また、この点は、第2実施形態に続いて説明する第3〜第6実施形態についても同様である。
【0084】
図5は、第2実施形態における印刷動作を模式的に示す図である。図5の例においても、図4と同様に、有効印刷領域IRのX軸負方向の外側とX軸正方向の外側との間で、キャリッジ32を(記録ヘッド34と一体的に)2往復させることで、4パスが実行されて、1フレーム分の画像が印刷される。なお、図5においてキャリッジ32に関する表記(実線・破線)が示す意味は、図4のそれと同様である。
【0085】
第2実施形態においても、1フレームを構成する4パスのうち最初のパス(すなわち、1パス目)では、ライン画像L1の形成に先立って、マークM1がシートSに形成される。ただし、第1実施形態と異なり、キャリッジ32に備えられた複数のノズル35のそれぞれが、1つずつマークM1を形成する。これによって、複数のマークM1がY軸方向において異なる位置に形成される。
【0086】
そして、第2実施形態では、Y軸方向に複数のマークM1が並ぶ全域に渡って、光学センサーSo(ラインセンサー)の検出領域Rsが設けられており、複数のマークM1それぞれの位置に関する情報が光学センサーSoからメカコントローラー420に送信される。そして、メカコントローラー420は、この各マークM1の位置情報に基づいて、各副走査におけるキャリッジ32の移動距離の補正値Δαを求める。
【0087】
つまり、1パス目で複数のマークM1が形成されると、メカコントローラー420は、各マークM1の初期位置(形成時点での各マークM1の位置)を記憶する。続いて、1パス目におけるライン画像L1の形成が完了すると、メカコントローラー420は、この時点における各マークM1の初期位置からの変位量を求める。さらに、メカコントローラー420は、こうして求めた複数のマークM1の変位量の平均値を算出して、この平均値に応じて補正値Δαを決定する。そして、初期設定値αにこの補正値Δαを加算した値が、1パス目と2パス目の間に実行される副走査でのキャリッジ32の移動距離Y32として設定される。これにより、当該副走査では、キャリッジ32が移動距離Y32(=α+Δα)だけY軸方向に移動する。
【0088】
なお、マークM1の変位量の平均値を補正値Δαに変換する具体的手法は、第1実施形態で説明したマークM1の変位量を補正値Δαに変換する手法と同様である。つまり、第1実施形態でのマークM1の変位量の代わりに、マークM1の変位量の平均値を用いれば良い。
【0089】
このようにして、1パス目の後の副走査が実行されると、続いて2パス目が実行される。この2パス目においてライン画像L2の形成が完了すると、メカコントローラー420は、この時点における各マークM1の初期位置からの変位量を求める。そして、上述と同様にして、2パス目と3パス目の間に実行される副走査でのキャリッジ32の移動距離Y32が、ライン画像L2の形成完了時点における各マークM1の変位量の平均値に基づいて調整される。
【0090】
2パス目の後の副走査が完了すると、続いて3パス目が実行される。この3パス目においてライン画像L3の形成が完了すると、メカコントローラー420は、この時点における各マークM1の初期位置からの変位量を求める。そして、上述と同様にして、3パス目と4パス目の間に実行される副走査でのキャリッジ32の移動距離Y32が、ライン画像L3の形成完了時点における各マークM1の変位量の平均値に基づいて調整される。続いて、3パス目と4パス目の間の副走査が実行された後に、4パス目が実行されて、1フレーム分の印刷が完了する。
【0091】
以上のように第2実施形態においても、シートSに形成されたマークM1のY軸方向への変位を検出する構成を備える。そして、この検出結果に基づいて、副走査において記録ヘッド34をY軸方向へ移動させる移動距離Y32が調整される。その結果、上述の隙間の発生を抑制することが可能となっている。
【0092】
しかも、第2実施形態では、複数のマークM1がY軸方向において互いに異なる位置に形成されている。これによって、Y軸方向の異なる位置におけるシートSの伸び方の違いが、マークM1の変位により検出可能となる。その結果、上述の隙間の発生を、より確実に抑制することが可能となっている。
【0093】
なお、第2実施形態で示した例では、キャリッジ32に備えられた複数のノズル35の全てがマークM1を形成している。ただし、これら複数のノズル35の一部のノズル35(例えば、Y軸方向に1つ置きや2つ置きのノズル35)のみがマークM1を形成して、複数のマークM1をY軸方向において異なる位置に形成しても良い。
【0094】
第3実施形態
ところで、第2実施形態に示したように、シートSの伸び方がY軸方向への位置によって異なることに起因して、上述した隙間の発生態様が、シートSのY軸方向の正側と負側で異なる場合がある。具体的に説明すると次のとおりである。
【0095】
つまり、シートSの膨張は、Y軸方向の中央部を中心として、Y軸方向の両端間が広がるようにして発生する。したがって、シートSのY軸方向の正側はより正側へ広がって移動するとともに、シートSのY軸方向の負側はより負側へ広がって移動する。このような伸びを見せるシートSに対して、記録ヘッド34は、Y軸方向の負側から正側に移動しつつ(副走査)、各移動先でインクの噴射を実行する(主走査)。したがって、副走査に伴う記録ヘッド34の移動方向は、シートSのY軸方向の負側半分ではシートSが広がる方向に対して逆になる一方、シートSのY軸方向の正側半分ではシートSが広がる方向に対して順になる。その結果、シートSの伸びる方向と逆に記録ヘッド34が移動するシートSのY軸方向の負側半分において、上述の隙間の発生が特に顕著となる場合があった。
【0096】
そこで、第2実施形態を次のように変形しても良い。つまり、第2実施形態では、複数のマークM1の変位量の平均値に応じて補正値Δαを決定していた。この際、加重平均により求めた平均値から補正値Δαを決定しても良い。具体的には、シートSのY軸方向の負側半分に形成されたマークM1の変位量に対して、シートSのY軸方向の正側半分に形成されたマークM1の変位量よりも重い重み付けを行って、複数のマークM1の変位量の加重平均を求める。そして、この加重平均に基づいて決定された補正値Δαだけ、副走査でのキャリッジ32の移動距離Y32を初期設定値αから補正すると良い。これにより、シートSのY軸方向の負側半分において特に顕著となっていた隙間の発生を、効果的に抑制することができる。
【0097】
第4実施形態
図6は、第4実施形態における印刷動作を模式的に示す図である。図6の例においても、有効印刷領域IRのX軸負方向の外側とX軸正方向の外側との間で、キャリッジ32を(記録ヘッド34と一体的に)2往復させることで、4パスが実行されて、1フレーム分の画像が印刷される。ただし、第4実施形態では、1パス目および3パス目のそれぞれにおいて、ライン画像L1、L3の形成に先立って、マークM1、M3がシートSに形成される。なお、図6においてキャリッジ32に関する表記(実線・破線)が示す意味は、図4のそれと同様である。
【0098】
第4実施形態における1パス目および2パス目の動作は、第1実施形態と同様であるので省略し、3パス目以後の動作について主に説明する。上述のとおり、第4実施形態では、この3パス目において、ライン画像L3の形成に先立ってマークM3が形成される。この際、メカコントローラー420は、3パス目でマークM3が形成されると、マークM3の初期位置(形成時点でのマークM3の位置)を記憶する。続いて、3パス目におけるライン画像L3の形成が完了すると、メカコントローラー420は、この時点におけるマークM3の初期位置からの変位量を求める。そして、3パス目と4パス目の間に実行される副走査でのキャリッジ32の移動距離Y32が、ライン画像L3の形成完了時点におけるマークM3の変位量に基づいて調整される。続いて、3パス目と4パス目の間の副走査が実行された後に、4パス目が実行されて、1フレーム分の印刷が完了する。
【0099】
以上のように第4実施形態においても、シートSに形成されたマークM1、M3のY軸方向への変位を検出する構成を備える。そして、この検出結果に基づいて、副走査において記録ヘッド34をY軸方向へ移動させる移動距離Y32が調整される。その結果、上述の隙間の発生を抑制することが可能となっている。
【0100】
第5実施形態
図7は、第5実施形態における印刷動作を模式的に示す図である。図7の例においても、有効印刷領域IRのX軸負方向の外側とX軸正方向の外側との間で、キャリッジ32を(記録ヘッド34と一体的に)2往復させることで、4パスが実行されて、1フレーム分の画像が印刷される。なお、図7においてキャリッジ32に関する表記(実線・破線)が示す意味は、図4のそれと同様である。
【0101】
第5実施形態では、1フレームを構成する4パスのうち1パス目〜3パス目において、ライン画像L1〜L3の形成に先立ってマークM1〜M3がシートSに形成される。これによって、マークM1、M3は、有効印刷領域IRのX軸負方向の外側に形成される一方、マークM2は、有効印刷領域IRのX軸正方向の外側に形成される。また、このようなマークM1〜M3の形成位置に対応して、有効印刷領域IRのX軸方向の両外側では、光学センサーSo(ラインセンサー)が配置されており、各光学センサーSoの検出領域Rs1、Rs2が位置している。これにより、検出領域Rs1においてマークM1、M3が検出されて、各マークM1、M3の位置情報がメカコントローラー420に出力される。また、検出領域Rs2においてマークM2が検出されて、各マークM2の位置情報がメカコントローラー420に出力される。
【0102】
このような構成を備えた第5実施形態では、nパス目から(n+1)パス目の間に実行される副走査におけるキャリッジ32の移動距離Y32が、nパス目に形成されたマークMnの変位に基づいて決定される。ここで、nは正の整数であるとともに、nパス目に形成されるマークをMnと表示した。また、この実施形態では、nパス目に形成されるライン画像をLnと適宜表示する。
【0103】
つまり、nパス目でマークMnが形成されると、メカコントローラー420は、マークMnの初期位置(形成時点でのマークMnの位置)を記憶する。続いて、nパス目におけるライン画像Lnの形成が完了すると、メカコントローラー420は、この時点におけるマークMnの初期位置からの変位量を求める。また、メカコントローラー420は、こうして求めたマークMnの変位量から補正値Δαを決定する。そして、初期設定値αにこの補正値Δαを加算した値が、nパス目と(n+1)パス目の間に実行される副走査でのキャリッジ32の移動距離Y32として設定される。これによって、当該副走査では、キャリッジ32が移動距離Y32(=α+Δα)だけY軸方向に移動する。そして、このような動作を、1〜3パス目において実行した後に4パス目が実行されて、1フレーム分の印刷が完了する。
【0104】
以上のように第5実施形態においても、シートSに形成されたマークMnのY軸方向への変位を検出する構成を備える。そして、この検出結果に基づいて、副走査において記録ヘッド34をY軸方向へ移動させる移動距離Y32が調整される。その結果、上述の隙間の発生を抑制することが可能となっている。
【0105】
第6実施形態
図8は、第6実施形態における印刷動作を模式的に示す図である。図8の例においても、有効印刷領域IRのX軸負方向の外側とX軸正方向の外側との間で、キャリッジ32を(記録ヘッド34と一体的に)2往復させることで、4パスが実行されて、1フレーム分の画像が印刷される。なお、図8においてキャリッジ32に関する表記(実線・破線)が示す意味は、図4のそれと同様である。
【0106】
上記実施形態と異なり、第6実施形態では、光学センサーSoがキャリッジ32に取り付けられており、キャリッジ32と一体的に移動する。この光学センサーSoは、キャリッジ32に対してX軸方向の負側に設けられており、その結果、光学センサーSoの検出領域Rsは、キャリッジSoのX軸方向の負側に位置する。このような構成を備える第6実施形態では、次のような印刷動作が実行される。
【0107】
1パス目では、マークM1が形成された後に、ライン画像L1が形成される。この際、キャリッジ32のX軸正方向への移動に伴って、光学センサーSoの検出領域RsがマークM1を通過する。これによって、光学センサーSoによりマークM1が検出されて、マークM1の位置情報がメカコントローラー420に出力される。一方、メカコントローラー420は、この時点でのマークM1の位置をマークM1の初期位置として記憶する。
【0108】
1パス目が完了すると、1パス目と2パス目の間の副走査が実行される。このときの副走査では、キャリッジ32は初期設定値αだけY軸方向に移動する(つまり、移動距離Y32=α)。この副走査が完了すると、続いて2パス目が実行される。この2パス目では、ライン画像L2の形成後のキャリッジ32の移動に伴って、光学センサーSoの検出領域RsがマークM1を通過する。これによって、光学センサーSoによりマークM1が検出されて、マークM1の位置情報がメカコントローラー420に出力される。一方、メカコントローラー420は、この時点におけるマークM1の初期位置からの変位を求める。
【0109】
また、メカコントローラー420は、こうして求めたマークM1の変位量に応じて補正値Δαを決定する。そして、初期設定値αにこの補正値Δαを加算した値が、2パス目と3パス目の間に実行される副走査でのキャリッジ32の移動距離Y32として設定される。そして、当該副走査では、キャリッジ32が移動距離Y32(=α+Δα)だけY軸方向に移動する。
【0110】
この副走査が完了すると、3パス目が実行される。また、3パス目が完了すると、3パス目と4パス目の間の副走査が実行される。この副走査では、キャリッジ32は、先程の2パス目と3パス目の間での移動距離Y32と同じだけ、Y軸方向に移動する。そして、この3パス目に続いて4パス目が実行されて、1フレーム分の印刷が完了する。
【0111】
以上のように第6実施形態においても、シートSに形成されたマークM1のY軸方向への変位を検出する構成を備える。そして、この検出結果に基づいて、副走査において記録ヘッド34をY軸方向へ移動させる移動距離Y32が調整される。その結果、上述の隙間の発生を抑制することが可能となっている。
【0112】
その他
以上のように、上記実施形態では、プリンター300が本発明の「画像記録装置」に相当し、シートSが本発明の「記録媒体」に相当し、インクが本発明の「液体」に相当し、プラテン30が本発明の「支持部材」に相当し、記録ヘッド34が本発明の「記録ヘッド」に相当し、ヘッドコントローラー410とメカコントローラー420とが協働して本発明の「制御部」として機能し、光学センサーSoとメカコントローラー420とが協働して本発明の「検出部」に相当し、X軸方向が本発明の「主走査方向」に相当し、Y軸方向が本発明の「副走査方向」に相当し、移動距離Y32が本発明の「移動量」に相当している。
【0113】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、画像記録装置として、インクジェット式のプリンター300が採用されているが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置を採用しても良い。また、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置全般に本発明を適用可能である。この場合、液滴とは、液体噴射装置から吐出される液体の状態を指し、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含む。また、ここで言う液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれば良い。例えば、液相の状態にある物質が液体に含まれ、粘性の高いあるいは低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体が液体に含まれる。また、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散あるいは混合されたものが液体に含まれる。また、液体の代表的な例としては、上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは、一般的な水性インク、油性インク、ジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。
【0114】
また、上記実施形態では、1フレームで実行される各副走査ではいずれもY軸正方向にのみキャリッジ32を移動させて、4本のライン画像L1〜L4をこの順番でY軸正方向に並べて形成していた。しかしながら、副走査においてキャリッジ32が移動可能な方向はY軸正方向に限られない。すなわち、1フレームで実行される各副走査において、Y軸負方向にキャリッジ32を移動させて、4本のライン画像L1〜L4をこの順番でY軸負方向(つまり、上記実施形態と逆方向)に並べて形成しても良い。あるいは、Y軸正方向にキャリッジ32を移動させる副走査と、Y軸負方向にキャリッジ32を移動させる副走査の両方を1フレーム中に実行しても良い。具体例を挙げると次のとおりである。
【0115】
つまり、1パス目のライン画像L1を形成した後に、3ライン分のライン画像の幅に相当する移動距離Y32だけY軸正方向にキャリッジ32を移動させる副走査を行って、2パス目のライン画像L2を形成する。これによって、例えば図4のライン画像L4に相当する位置に、2パス目のライン画像L2が形成される。その後、2パス目〜3パス目および3パス目〜4パス目のそれぞれで実行される副走査では、1ライン分のライン画像の幅に相当する移動距離Y32だけY軸負方向にキャリッジ32を移動させて、3パス目および4パス目を実行する。これによって最終的には、ライン画像L1、L4、L3、L2がこの順番でY軸正方向に並べて形成される。そして、このような印刷処理においても、副走査におけるキャリッジ32の移動距離Y32を、シートSに形成されたマークのY軸方向への変位に基づいて調整することで、上述の隙間の発生を抑制することが可能となる。
【0116】
また、上記実施形態では、4パスで1フレームの印刷を実行する場合を主に例示して説明を行った。しかしながら、1フレームの印刷を構成するパスの数は複数であれば良く、4パスに限られない。
【0117】
また、上記実施形態では、マークM1〜M3を記録ヘッド34によってシートSに形成していた。しかしながら、記録ヘッド34とは別にマークM1〜M3を形成する機能部を設けても良い。あるいは、予めマークM1〜M3の形成されているシートSを用いることもできる。
【0118】
マークM1〜M3の形状については、例えばX軸方向に延びる罫線状のもの等、種々の態様のものを採用することができる。また、マークM1〜M3の寸法についても適宜変更可能である。さらに、上記実施形態では、有効印刷領域IRのX軸方向の外側にマークM1〜M3を形成していた。しかしながら、マークM1〜M3の位置についても適宜変更可能であり、マークM1〜M3の位置変更に応じて光学センサーSoの配置を変えておけば、マークM1〜M3の変位を検出して、副走査でのキャリッジ32の移動距離Y32を調整するといったこの発明の構成を実現できる。
【0119】
また、上記実施形態では、検出部を構成するにあたりラインセンサーを用いていた。しかしながら、ラインセンサー以外のセンサーを用いて検出部を構成しても良い。要するに、シートSに形成されたマークM1〜M3を検出できるものであれば足りる。
【0120】
また、上記実施形態では、ピエゾ方式を用いたインクジェットプリンターに対して本発明を適用した場合について説明した。しかしながら、サーマル方式を用いたインクジェットプリンターに対しても本発明を適用可能であることは言うまでもない。
【0121】
また、上記実施形態では、キャリッジ32をX軸方向に往復走査させて印刷動作を行う場合を例示して説明を行った。しかしながら、キャリッジ32をX軸方向の片方向にのみ走査させて印刷動作を行う構成に対しても、本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0122】
100…印刷システム、 200…ホスト装置、 300…プリンター、 400…プリンター制御部、 410…ヘッドコントローラー、 420…メカコントローラー、 30…プラテン、 31…記録ユニット、 32…キャリッジ、 33…支持板、 34…記録ヘッド、 35…ノズル、 35L…ノズル列、 IR…有効印刷領域、 L1,L2,L3,L4…ライン画像、 M1,M2,M3…マーク、 So…光学センサー、 S…シート、 X…主走査方向、 Y…副走査方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を支持する支持部材と、
主走査方向および副走査方向に移動自在であり、前記支持部材に支持された前記記録媒体に液体を噴射する記録ヘッドと、
前記主走査方向に前記記録ヘッドを移動させつつ前記記録ヘッドから液体を噴射させて前記主走査方向に延びる1ライン分のライン画像を形成する主走査と、副走査方向に前記記録ヘッドを移動させる副走査とを交互に実行することで、複数の前記主走査を実行して、前記副走査方向に隣接する前記ライン画像を互いに異なる前記主走査により形成する制御部と、
前記記録媒体に形成されたマークの前記副走査方向への変位を検出する検出部と
を備え、
前記制御部は、前記副走査で前記記録ヘッドを前記副走査方向へ移動させる移動量を、前記検出部の検出結果に基づいて調整することを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記マークは、前記記録ヘッドが前記記録媒体に液体を噴射することで、前記記録媒体に形成される請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記記録ヘッドによる前記マークの形成後に実行する前記副走査において前記記録ヘッドを前記副走査方向へ移動させる移動量を、前記検出部の検出結果に基づいて調整する請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記マークは、前記主走査の実行中に前記主走査方向に移動する前記記録ヘッドが前記記録媒体に液体を噴射することで、前記記録媒体に形成される請求項2または3に記載の画像記録装置。
【請求項5】
その実行中に前記マークの形成が行われる前記主走査では、当該マークを形成してから前記ライン画像を形成する請求項4に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記副走査方向に隣接する前記ライン画像を形成する前記複数の主走査のうち、最初に実行される前記主走査の実行中に前記マークが形成される請求項4または5に記載の画像記録装置。
【請求項7】
複数の前記マークが前記副走査方向において互いに異なる位置に形成される請求項1ないし6のいずれか一項に記載の画像記録装置。
【請求項8】
前記検出部は、検出領域の長手方向が前記副走査方向に平行に配置されたラインセンサーを有し、前記ラインセンサーが前記マークを検出した結果に基づいて、前記マークの前記副走査方向への変位を検出する請求項1ないし7のいずれか一項に記載の画像記録装置。
【請求項9】
前記記録媒体は紙系の媒体である請求項1ないし8のいずれか一項に記載の画像記録装置。
【請求項10】
前記記録媒体はフィルム系の媒体である請求項1ないし8のいずれか一項に記載の画像記録装置。
【請求項11】
前記支持部材は、支持する前記記録媒体を加熱する請求項10に記載の画像記録装置。
【請求項12】
主走査方向に記録ヘッドを移動させつつ前記記録ヘッドから液体を噴射させて前記主走査方向に延びる1ライン分のライン画像を記録媒体に形成する主走査と、副走査方向に前記記録ヘッドを移動させる副走査とを交互に実行することで、複数の前記主走査を実行して、前記副走査方向に隣接する前記ライン画像を互いに異なる前記主走査により形成する画像記録方法において、
前記副走査で前記記録ヘッドを前記副走査方向へ移動させる移動量は、前記記録媒体に形成されたマークの前記副走査方向への変位を検出した結果に基づいて調整されることを特徴とする画像記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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